JP6654773B2 - インターロイキン36受容体アンタゴニスト欠損症の治療薬 - Google Patents

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Description

本発明はインターロイキン36受容体アンタゴニスト欠損症の治療薬に関する。本発明の治療薬は、例えば、膿疱性乾癬、疱疹状膿痂疹、掌蹠膿疱症、アロポー稽留性指端皮膚炎、急性汎発性発疹性膿疱症、再発性環状紅斑様乾癬、関節症性乾癬の治療に用いられる。
乾癬は5つの類型、即ち、尋常性乾癬、関節症性乾癬(乾癬性関節炎)、滴状乾癬、乾癬性紅皮症及び膿疱性乾癬に大別される。関節症性乾癬、乾癬性紅皮症及び膿疱性乾癬はときに治療困難であり、治療法の開発のための研究が精力的に進められている。これまでの研究によって、膿疱性乾癬の大半がインターロイキン36受容体アンタゴニスト(以下、「IL-36RN」と略称することがある)をコードするIL36RN遺伝子の劣性遺伝という遺伝的素因に起因することが明らかになっている(非特許文献1を参照)。
IL36RN遺伝子ノックアウトマウスが作製され(非特許文献2を参照)、当該マウスにIL-36を過剰発現させる、或いはToll様受容体7のリガンド(アゴニスト)であるイミキモドを外用することによって皮膚炎が生ずることが報告された(非特許文献2、3を参照)。但し、このモデルでは臨床的(肉眼的)膿疱を来すことはなく、尋常性乾癬モデルマウスとして各種実験に利用されている。
膿疱性乾癬の患者ではしばしば関節症性乾癬を併発する。一方、関節症性乾癬患者の関節ではIL-36の発現が認められる(非特許文献4を参照)。また、IL36RN遺伝子変異(劣性)を認める膿疱性乾癬患者で関節症性乾癬を合併する症例が報告されている。一方で、コラーゲン誘導関節炎(CIA)モデルをはじめとした各種関節炎モデルを用いた実験の結果から、関節炎へのIL-36の関与を否定する報告が集積しており(例えば非特許文献5を参照)、「IL-36は関節炎に関与していない」という考えが定説となっている。
国際公開第99/46242号パンフレット
Sugiura K. et al. J Invest Dermatol. 2013 Nov;133(11):2514-21. Blumberg H. et al., J. Ex. Med. 2007 Oct;204 (11):2603-14. Tortola L. et al., J Clin Invest. 2012 Nov;122(11):3965-76. Frey S. et al., Ann Rheum Dis. 2013 Sep;72(9):1569-74. Damien Dietrich & Cem Gabay Nat Rev Rheumatol. 2014 Nov;10(11):639-40. Sugiura K, et al. J Invest Dermatol. 2014;134(6):1755-7. Sugiura K, et al. J Invest Dermatol. 2014 Sep;134(9):2472-4. Setta-Kaffetzi N, et al. J Invest Dermatol. 2013 May;133(5):1366-9. Abbas O, et al. Dermatology. 2013;226(1):28-31. Nakai N, et al. JAMA Dermatol. 2015;151(3):311-5. Miyake T, et al. Eur J Dermatol. 2015;25(4):349-50.
関節症性乾癬及び膿疱性乾癬は難治性であり、新たな治療法の提供が切望される。膿疱性乾癬の一類型又は類似の疾患である疱疹状膿痂疹、掌蹠膿疱症、アロポー稽留性指端皮膚炎、急性汎発性発疹性膿疱症、再発性環状紅斑様乾癬等についても対症療法が基本的な治療方針であり、治療効果の高い、新たな治療法の確立が望まれる。そこで本発明は、以上の疾患に対して有効な治療薬及び治療法を提供することを課題とする。
上記課題を解決すべく研究を進めるにあたって本願発明者らは、膿疱性乾癬の病態を再現するモデル動物(膿疱性乾癬モデル動物)、及び関節症性乾癬の病態を再現するモデル動物(関節症性乾癬モデル動物)の作製を試みた。これらのモデル動物があれば、候補治療薬の効果を動物レベルで評価できる。
本発明者らは、これまでの経験及び過去の報告を踏まえ、IL36RN遺伝子に着目して鋭意検討した。一つのケージで複数匹のマウス(雄)を飼育しているとファイティングすることが多いが、IL36RN遺伝子欠損マウス(雄)の場合、ファイティングによって関節炎が生じるという(野生型マウスや道化師様魚鱗癬モデルマウス(ABCA12遺伝子ノックアウトマウス)ではこのような現象は報告されていない)、驚くべき現象を観察した。「IL-36は関節炎に関与していない」という、上記定説を覆すともいえるこの現象について、外傷に伴う感染から自然免疫が賦活化し、関節炎が起こった可能性があると考察し、研究を進めた。具体的には、自然免疫に関与するToll様受容体4(TLR4)に着目し、そのリガンドであるリポ多糖(LPS)をIL36RN遺伝子欠損マウスの後足に皮下投与した。その結果、対照(野生型)群に比べ、著明な腫脹・肥厚(付着部炎の誘発)を認めた。即ち、IL36RN遺伝子欠損マウスにTLR4リガンドを投与することによって、関節症性乾癬の病態を誘導することに成功した。
一方、膿疱性乾癬と関節症性乾癬の関連性に鑑み、IL36RN遺伝子欠損マウスが膿疱性乾癬モデルの作製にも利用できる可能性があると考え、IL36RN遺伝子欠損マウスの背部皮下にLPSを投与し、経過を観察した。処置を受けたマウスは、驚くべきことに僅か数日で膿疱を来した。即ち、IL36RN遺伝子欠損マウスにTLR4リガンドを投与することによって、膿疱性乾癬の病態を誘導することにも成功した。
以上のように、膿疱性乾癬モデル動物と関節症性乾癬モデル動物の作製に成功した。そこで、次の段階として、これらのモデル動物を用いて評価系を構築し、有効な薬剤を見出すことを目指した。各種薬剤を評価した結果、IL-1b抗体、IL-17a抗体、IL-36a抗体、Cxcr2アンタゴニスト、IL36rn等が治療効果を示さないのとは対照的に、TLR4アンタゴニストとして知られるTAK-242(別名 Resatorvid)(例えば特許文献1を参照)が、著効を発揮した。即ち、膿疱性乾癬及び関節症性乾癬に対してTAK-242の有効性が示唆された。ここで、(1)評価系に用いたモデル動物はいずれもIL36RN遺伝子欠損という遺伝学的特徴を備えること、(2)膿疱性乾癬及び関節症性乾癬の発症にIL36RN遺伝子変異が関与することが報告されていること、(3)程度に差はあるものの、疱疹状膿痂疹、掌蹠膿疱症、アロポー稽留性指端皮膚炎、急性汎発性発疹性膿疱症、及び再発性環状紅斑様乾癬の発症にもIL36RN遺伝子変異が関与すること(例えば、非特許文献6〜11を参照)に加え、(4)TAK-242の作用及び標的(TLR4アンタゴニストであること)を総合すれば、膿疱性乾癬、関節症性乾癬、疱疹状膿痂疹、掌蹠膿疱症、アロポー稽留性指端皮膚炎、急性汎発性発疹性膿疱症、及び再発性環状紅斑様乾癬を含め、各種IL36RN遺伝子欠損症に対してTAK-242が有効であると考えられる。尚、TAK-242が膿疱性乾癬や関節症性乾癬に対して有効であることは、これらの病態を再現するモデル動物の作製に成功したが故に明らかとなった。換言すれば、膿疱性乾癬モデル動物と関節症性乾癬モデル動物なくしては得られなかった知見である。
以下の発明は上記の成果及び考察に基づく。
[1]TAK-242又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、IL36RN遺伝子欠損症の治療薬。
[2]IL36RN遺伝子欠損症が膿疱性乾癬、関節症性乾癬、疱疹状膿痂疹、掌蹠膿疱症、アロポー稽留性指端皮膚炎、急性汎発性発疹性膿疱症、及び再発性環状紅斑様乾癬からなる群より選択される疾患である、[1]に記載の治療薬。
[3]IL36RN遺伝子欠損症が膿疱性乾癬又は関節症性乾癬である、[1]に記載の治療薬。
[4]TAK-242又はその薬学的に許容される塩を治療上有効量、IL36RN遺伝子欠損症の患者に投与するステップを含む、IL36RN遺伝子欠損症の治療法。
[5]IL36RN遺伝子欠損症の治療薬を製造するための、TAK-242又はその薬学的に許容される塩の使用。
IL36RN(Il1f5)遺伝子ノックアウトマウスの作製に使用したプラスミド及び標的部位。 関節炎の誘導実験の結果。リポ多糖(LPS)の投与量毎に、3回目(2日目)の投与6時間後に後足の状態を野生型マウス(WT)とIL36RN(Il1f5)遺伝子ホモ欠損マウスの間で比較した。 IL36RN(Il1f5)遺伝子ホモ欠損マウスにおける関節炎の誘導。3回目(2日目)の投与6時間後に後足の厚さを測定した。 IL36RN(Il1f5)遺伝子ホモ欠損マウスにおける膿疱の誘導。LPS 50μgを投与したときの2日目(上段)及び4日目(下段)の背部の状態を、野生型マウス(WT)とIL36RN(Il1f5)遺伝子ホモ欠損マウスの間で比較して示す。 抗IL-1b抗体による治療効果。IL36RN(Il1f5)遺伝子ホモ欠損マウスに対して、LPSの投与1日前に抗IL-1b抗体60μgを投与し、その効果を調べた。上段は2日目の背部の状態。下段は5日目の背部の状態。 関節症性乾癬モデルを用いた実験の結果。LPSの投与によって関節炎を誘導し、各群の後足の厚さを測定した。LPS未投与のWTマウス(WT)、LPS未投与のIL36RN(Il1f5)遺伝子ホモ欠損マウス(ホモ欠損)、LPS投与のWTマウス(WT LPS)、LPS投与のIL36RN(Il1f5)遺伝子ホモ欠損マウス(ホモ欠損 LPS)、治療群(ホモ欠損 LPS+TAK)の間で厚さを比較した。 膿疱性乾癬モデルを用いた実験の結果。未治療群(IL36RN(Il1f5)遺伝子ホモ欠損マウスにLPSのみ投与)の皮膚の状態を示す。 膿疱性乾癬モデルを用いた実験の結果。未治療群(野生型(WT)マウスにLPSのみ投与)の皮膚の状態を示す。 膿疱性乾癬モデルを用いた実験の結果。治療群(IL36RN(Il1f5)遺伝子ホモ欠損マウスにLPSとTAK-242を投与)の皮膚の状態を示す。 膿疱性乾癬モデルを用いた実験の結果。肝臓を摘出し、状態を比較した。
本発明の第1の局面はIL36RN遺伝子欠損症の治療薬(説明の便宜上、以下では「本発明の医薬」と呼ぶことがある)及びその用途に関する。「治療薬」とは、標的の疾病ないし病態に対する治療的又は予防的効果を示す医薬のことをいう。治療的効果には、標的疾患/病態に特徴的な症状又は随伴症状を緩和すること(軽症化)、症状の悪化を阻止ないし遅延すること等が含まれる。後者については、重症化を予防するという点において予防的効果の一つと捉えることができる。このように、治療的効果と予防的効果は一部において重複する概念であり、明確に区別して捉えることは困難であり、またそうすることの実益は少ない。尚、予防的効果の典型的なものは、標的疾患/病態に特徴的な症状の再発を阻止ないし遅延することである。尚、標的疾患/病態に対して何らかの治療的効果又は予防的効果、或いはこの両者を示す限り、標的疾患/病態に対する治療薬に該当する。
本発明は、本発明者らが作製に成功した膿疱性乾癬モデル動物及び関節症性乾癬モデル動物による評価系を用いることによって得られた知見、即ち、重症敗血症の治療薬として開発されたTAK-242が、膿疱性乾癬の病態及び関節症性乾癬の病態に対して著効を発揮したこと、に基づく。TAK-242はTLR4アンタゴニストであり(Matsunaga N. et al., Mol. Pharmacol. 2011 vol. 79(1):34-41)、日米欧の三極で第3相臨床試験まで実施された。臨床試験の結果は概ね良好であり、TAK-242は重症敗血症あるいはショックか呼吸不全の患者においてサイトカインレベルを抑制せず、メトヘモグロビンを増加させるが、容認できるレベルであり、高用量TAK-242群でやや死亡率が低下したが、統計学的には有意ではなかった(Rice TW. et al., A randomized, double-blind, placebo-controlled trial of TAK-242 for the treatment of severe sepsis. Crit Care Med. 2010 Aug;38(8):1685-94.)。
本発明の医薬はTAK-242又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する。即ち、本発明の医薬の有効成分として、TAK-242の薬理学的に許容される塩を用いても良い。無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性アミノ酸との塩、酸性アミノ酸との塩など、様々な塩を採用することができる。無機塩基との塩の例は、アル力リ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩など)、アルミニウム塩、アンモニウム塩であり、有機塩基との塩の例は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロへキシルアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩であり、無機酸との塩の例は、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などとの塩であり、有機酸との塩の例は、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などとの塩であり、塩基性アミノ酸との塩の例は、アルギニン、リジン、オル二チンなどとの塩であり、酸性アミノ酸との塩の例は、アスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩である。
治療又は予防の対象となる疾患(標的疾患)は、IL36RN遺伝子欠損症に該当する限り、特に限定されない。IL36RN遺伝子欠損症とは、IL36RN遺伝子の異常(遺伝子を構成する一部の塩基の欠失や置換、別の塩基の挿入/付加など、或いはIL36RN遺伝子喪失)によって、IL36RN遺伝子が本来の機能を発揮できない状態が主因又は病因の少なくとも一部である疾患をいう。IL36RN遺伝子の異常はホモ(対立遺伝子の両方に異常を認める)又はヘテロ(対立遺伝子の片方に異常を認める)に生じる。「IL36RN遺伝子欠損症」に該当する疾患を例示すると、膿疱性乾癬、関節症性乾癬、疱疹状膿痂疹、掌蹠膿疱症、アロポー稽留性指端皮膚炎、急性汎発性発疹性膿疱症、再発性環状紅斑様乾癬等である。この中でも、膿疱性乾癬と関節症性乾癬は、本発明の医薬の治療対象として好適である。膿疱性乾癬は膿(うみ)を伴った皮膚病変が特徴的であり、汎発性のものでは発熱などの全身症状を伴い、重症では死に至る危険性がある。本邦では、膿疱性乾癬患者は乾癬患者全体の約1%を占める。他方、関節症性乾癬とは乾癬性関節炎とも呼ばれ、尋常性乾癬の諸症状(皮膚が赤く盛り上がる紅斑、細かいカサブタのような鱗屑、フケのようにボロボロとはがれ落ちる落屑が主な症状)に加え、全身の関節に炎症、強ばり、変形などが起こり、痛みを伴う、乾癬の一類型である。本邦では、関節症性乾癬患者は乾癬患者全体の6〜8%を占める。
本発明の医薬の製剤化は常法に従って行うことができる。製剤化する場合には、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)を含有させることができる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等を用いることができる。
製剤化する場合の剤形も特に限定されない。剤形の例は錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤、外用剤、及び座剤である。本発明の医薬はその剤形に応じて経口投与又は非経口投与(静脈内、動脈内、皮下、皮内、筋肉内、又は腹腔内注射、経皮、経鼻、経粘膜など)によって対象に適用される。また、全身的な投与と局所的な投与も対象により適応される。これらの投与経路は互いに排他的なものではなく、任意に選択される二つ以上を併用することもできる(例えば、経口投与と同時に又は所定時間経過後に静脈注射等を行う等)。本発明の医薬には、期待される治療効果を得るために必要な量(即ち治療上有効量)の有効成分が含有される。本発明の医薬中の有効成分量は一般に剤形によって異なるが、所望の投与量を達成できるように有効成分量を例えば約0.1重量%〜約99重量%の範囲内で設定する。
本発明の医薬の投与量は、期待される治療効果が得られるように設定される。治療上有効な投与量の設定においては一般に症状、患者の年齢、性別、及び体重などが考慮される。当業者であればこれらの事項を考慮して適当な投与量を設定することが可能である。例えば、成人(体重約60kg)を対象として一日当たりの有効成分量が1mg〜500mg、好ましくは5mg〜300mg、特に好ましくは10mg〜200mgとなるよう投与量を設定することができる。投与スケジュールとしては例えば一日一回〜数回、二日に一回、或いは三日に一回などを採用できる。投与スケジュールの作成においては、患者の病状や有効成分の効果持続時間などを考慮することができる。
以上の記述から明らかな通り本出願は、IL36RN遺伝子欠損症の患者に対して本発明の医薬を治療上有効量投与することを特徴とする治療法も提供する。
A.関節症性乾癬モデル及び膿疱性乾癬モデルの作製
関節症性乾癬の病態を再現するモデル動物(関節症性乾癬モデル)及び膿疱性乾癬の病態を再現するモデル動物(膿疱性乾癬モデル)の創出を試みた。
1.材料・方法
(1)IL36RN(Il1f5)遺伝子ノックアウトマウスの作製
ES細胞を用いてコンベンショナルなIl1f5(ヒトのIL36RN遺伝子に相当)遺伝子ノックアウトマウスを作製する。ES細胞にはHK3i細胞(C57BL/6N系統)を使用した。使用したプラスミド(ターゲティングベクター)の構成及び標的部位を図1に示す。Il1f5遺伝子のエクソン1(Ex1)の一部からエクソン3(Ex3)の一部にまたがる領域(配列番号1)をPr Neo pA(配列番号2)に置換した。
(2)TLR4のリガンド(アゴニスト)
本実験ではリポ多糖(LPS)(製品名Lipopolysaccharides from Escherichia coli O111:B4、SIGMA-ALDRICH社)を使用した。
(3)マウス系統
本実験ではC57BL/6N系統のマウスを使用した。
(4)関節炎/膿疱の誘発
関節炎/膿疱の誘発のために、IL36RN(Il1f5)遺伝子ホモ欠損マウスの関節近傍又は後足の足裏にLPSを下記の通り投与する。
(投与量)
関節炎:2μg/ml〜2mg/mlの濃度で20μl
膿疱:2μg/ml〜2mg/mlの濃度で50μl
(投与スケジュール)
関節炎:1日1回、3日間
膿疱:1日1回、1〜5日間
2.結果
(1)関節炎の誘導
複数のオスマウスを同ケージで飼育するとファイティングすることが多い。IL36RN遺伝子ホモ欠損マウス及びヘテロ欠損マウスではファイティングにより関節炎が起こった(WTマウスではこのような現象は認めていない)。この現象の機序として、外傷に伴う感染から自然免疫が賦活化し、関節症性乾癬と同様の関節炎が起こっている可能性を考え、TLR4アゴニストをIL36RN遺伝子ホモ欠損マウスの関節近傍に局所投与することにより関節炎を誘導することを試みた。まず、8〜12週齢、オスの野生型(WT)マウス及びIL36RN遺伝子ホモ欠損マウスの後足の関節近傍に、TLR4リガンド(アゴニスト)であるLPSを40ng〜40μg(容量20μl)の投与量で1日1回、3日間皮下注射した。そして、最終投与6時間後に後足の厚さを測定した。その結果、LPS 300ng以上で、IL36RN遺伝子ホモ欠損マウスにおいてWTマウスより優位に後足の腫脹・肥厚がみられた(図2、3)。
(2)膿疱の再現
8〜12週齢、オスの野生型(WT)マウス及びIL36RN遺伝子ホモ欠損マウスの除毛した背部皮膚に、LPSを100ng〜100μg(容量50μl)の投与量で1日1回、1〜5日間皮下注射し、皮膚の状態を観察した。50μg投与した群では、5日間投与後においてWTマウス、IL36RN遺伝子ホモ欠損マウスいずれにおいても著しい紅斑・膿疱がみられた(図4)。尚、3μg投与した群においても、Il36RN遺伝子欠損マウスでは著しい紅斑・膿疱が、また野生型においても軽度ではあるものの、紅斑・膿疱が観察された。
一方、投与1日前に抗IL-1b抗体(biolegend社: 製品番号 503502)60μgを腹腔投与することにより紅斑・膿疱は減少し、皮膚症状は軽快した(図5)。
更なる実験として、投与量と表現型との関係を検討したところ、LPS 10μgの投与(1回)によってIL36RN遺伝子ホモ欠損マウスで優位に翌日から紅斑、膿疱が出現した。また、LPS 3μgを連日、背部に皮下注射すると、注射後2日目よりホモで優位に紅斑・膿疱が出現した。この結果から、3μg〜10μgの投与(1日に1回)は、野生型マウスと比較して優位に、IL36RN遺伝子欠損マウスに病変を誘導する条件といえる。
3.考察
IL36RN遺伝子ホモ欠損マウスの関節近傍にTLR4リガンドを局所投与することによって、関節症性乾癬と同様の関節炎を誘導すること、即ち、関節症性乾癬モデルの作製に成功した。また、IL36RN遺伝子ホモ欠損マウスの皮膚にTLR4リガンドを局所投与することによって、膿疱の病変を再現すること、即ち膿疱性乾癬モデルの作製にも成功した。これらの乾癬モデルは、関節症性乾癬と膿疱性乾癬の病態解明、或いは治療薬の開発のための有用な実験動物となる。一方、上記の実験によって、従来の関節炎モデルで立証されてきた定説と異なり、関節症性乾癬の病態形成にIL-36が関与することが明らかとなった。この事実は、今後の治療戦略において重要な意義を持つ。また、作製に成功したモデル動物の活用を図る上でも重要である。
B.関節症性乾癬モデル及び膿疱性乾癬モデルを用いた薬剤の評価
上記の通り、TLR4アゴニストをIL36RN遺伝子ホモ欠損マウスの関節近傍に局所投与することにより関節症性乾癬の病態を再現することに成功した(関節症性乾癬モデル)。また、皮膚にTLR4アゴニストを投与することにより、膿疱性乾癬で見られる膿疱病変も再現できた(膿疱性乾癬モデル)。これらの動物モデルを用い、関節症性乾癬/膿疱性乾癬に有効な治療薬を見出すべく、TLR4アンタゴニストとして知られるTAK-242による治療を試みた。
1.材料・方法
(1)実験の概要
8〜12週齢、オスの野生型(WT)マウス(コントロール)及びIL36RNホモ欠損マウスを用いて実験を行う。TLR4アゴニストを関節近傍に局所投与することにより、Il36RN欠損マウスに関節炎を誘導する(関節症性乾癬モデル)。同様にTLR4アゴニストをWTマウス及びIL36RN欠損マウスの皮膚に投与することにより、膿疱性乾癬の皮膚病変である膿疱を再現する(膿疱性乾癬モデル)。再現された関節炎及び皮膚病変に対して、TLR4アンタゴニストであるTAK-242による治療を行う。
(2)関節症性乾癬モデル(関節炎)による評価
TLR4アゴニストであるリポポリサッカリド(LPS) (Sigma: L-3024)を、マウスの後足の関節近傍に300ng(容量20μl)を1日1回、3日間皮下注射し、最終投与6時間後に後足の厚さを測定する。また、後足の検体を採取する。治療群にはTLR4アンタゴニストであるTAK-242 (Chemscene: CS-0408)をLPS投与前日より4日間、5mg/kg/日の用量で腹腔内投与する。コントロール群には、溶媒であるDMSO(1%)をLPS投与前日より4日間、同用量で腹腔内投与する。
(3)膿疱性乾癬モデル(皮膚病変)による評価
除毛したマウスの背部皮膚にLPS 3μg(容量50μl)を1日1回、1〜5日間皮下注射する。治療群にはTAK-242をLPS投与前日より最終投与日まで毎日、5mg/kg/日の用量で腹腔投与する。コントロール群は、溶媒であるDMSO(1%)をLPS投与前日より最終投与日まで毎日、同用量で腹腔投与する。2日目のLPS投与4時間後及び24時間後に皮膚、血液、肝臓の検体を採取する。
2.結果・考察
(1)関節症性乾癬モデル(関節炎)による評価
LPS投与2日目(LPS投与6時間後)に各マウスの後足の厚さを測定した。その結果、TAK-242による治療で腫脹・肥厚が有意に軽減し(図6)、関節症性乾癬の治療・予防に対するTAK-242の有効性が示された。尚、比較実験として、3μgのLPSの投与(1日1回、3日間皮下注射)によって病態を誘導したマウスにIL-1b抗体、IL-17a抗体又はCxcr2アンタゴニストを投与したが、いずれも効果は認められなかった。
(2)膿疱性乾癬モデル(皮膚病変)による評価
LPS投与2日目(LPS投与4時間後)の皮膚の状態を観察した。未治療群(図7、8)では膿疱の形成が認められるのに対し、TAK-242による治療群では全ての個体(6/6)で膿疱が消失した(図9)。一方、2日目のLPS投与24時間後に肝臓を摘出し、観察した。未治療群(LPSのみ投与)では全個体(6/6)で肝臓の白色組織(壊死性血管炎)がみられた(図10左上、右上、右下)。TAK-242治療群では6匹中2匹(2/6)で肝臓に白色組織(壊死性血管炎)を認めた(図10左下)。LPSの代わりに水を皮下注した群では白色組織を認めた個体はなかった(0/4)。このように、膿疱性乾癬の病態の治療・予防にもTAK-242が有効であることが示された。尚、比較実験として、3μgのLPSの投与(1日1回、1〜5日間皮下注射)によって病態を誘導したマウスにIL-1b抗体、IL-17a抗体、IL-36a抗体又はCxcr2アンタゴニストの腹腔内投与、あるいはIL36rnの局所投与を行ったが、いずれも一定の治療効果は認められなかった。
本発明の治療薬は、難治性の疾患である関節症性乾癬/膿疱性乾癬に対して有効な治療戦略を提供する。これらの疾患を始め、様々なIL36RN遺伝子欠損症に対して本発明の治療薬が適用され得る。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。

Claims (2)

  1. TAK-242又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、膿疱性乾癬又は関節症性乾癬の治療薬。
  2. 膿疱性乾癬又は関節症性乾癬の治療薬を製造するための、TAK-242又はその薬学的に許容される塩の使用。
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