JP6654498B2 - ディジタル保護継電装置及びディジタル保護継電システム - Google Patents
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Description
IPネットワークでは高速大容量化と伝送装置のコストダウンが進展しており、IPネットワークは、高精度なサンプリング同期と信頼性が求められる保護継電装置間通信への適用が今後ますます加速することが予想される。
IPネットワークを適用したディジタル保護継電装置間においては、高精度なサンプリング同期性を担保することが非常に重要であり、ディジタル保護制御装置間で、時刻同期によるサンプリング同期制御が行われている。IPネットワークにおける時刻同期としては、NTP(Network Time Protocol)、SNTP(Simple Network Time Protocol)、PTP(Precision Time Protocol)等様々な手法が知られている。
PTPでは、時刻同期の基準となる自ディジタル保護継電装置と、時刻同期対象となる他ディジタル保護継電装置との間の時刻フレームに関する通信プロトコルが定められている。そして、時刻フレームを送受信して自ディジタル保護継電装置に対する他ディジタル保護継電装置の時刻オフセットを算出し、他ディジタル保護継電装置の時刻を補正する。
PTP方式の詳細は後述する実施の形態例で説明するが、具体的には、上りの伝送遅延tuと下りの伝送遅延tdとの差の時間から、差分tdiffを算出して、その差分tdiffに基づいて同期制御を行うものである。
上り下りの通信遅延時間が異なる場合、上り下り通信遅延時間差の1/2が各ディジタル保護継電装置間の時刻同期誤差として現れる。この上り下り通信遅延時間差を起因とした時刻同期誤差により、ディジタル保護継電装置間の送受信データの同時性が確保できず、正確な系統事故判別が行えなくなるといった問題がある。IPネットワークにおける上り下り通信遅延時間差は、IPネットワークに接続された中継装置の待ち合わせ遅延などが起因となりランダムに発生する。
しかし、TC方式による同期制御を行う場合、TC方式に対応した中継装置を用いる必要があるため、TC方式非対応の中継装置をTC方式対応の中継装置に更新するためのコストが掛かるという問題がある。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、送電線の電流電圧情報を取り込む入力変換器と、通信路を介して接続された自ディジタル保護継電装置から他ディジタル保護継電装置までの上り通信遅延時間と他ディジタル保護継電装置から自ディジタル保護継電装置までの下り通信遅延時間との差を計測する遅延時間差計測部と、通信路で時刻情報を含むフレームを送受信することにより、自ディジタル保護継電装置に対する他ディジタル保護継電装置の時刻オフセットを算出し、サンプルタイミングを補正する第1時刻同期補正部と、入力変換器が取り込んだアナログ電圧をもとに系統電圧周期を算出して、算出した系統電圧周期のデータを使ってサンプルタイミングを補正する第2時刻同期補正部と、遅延時間差計測部により計測された上りと下りの通信遅延時間差が一定値以上となる状態が所定時間以上継続した場合に、第1時刻同期補正部による時刻同期演算から、第2時刻同期補正部による時刻同期演算に切り替えるサンプリング制御方法切替部と、第1時刻同期補正部または第2時刻同期補正部により算出されたサンプリング同期補正量をもとに入力変換器が取り込んだ電流電圧情報のサンプリング同期制御を行うサンプリング制御部と、サンプリング制御部によるサンプリング同期制御で取得した電流電圧情報をもとに電力系統を保護するための演算を行う保護演算部と、保護演算部の演算結果をもとに電力系統に接続された遮断器を制御する遮断器制御部と、を備える。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
以下、本発明の第1の実施の形態の例を、図1〜図6を参照して説明する。
[1−1.ディジタル保護継電装置の構成例]
図1は、ディジタル保護継電装置1A,1Bの構成例を示す。
図1の例では、送電線L1の2カ所に遮断器3A,3Bが接続され、それぞれの遮断器3A,3Bがディジタル保護継電装置1A,1Bにより制御される。各ディジタル保護継電装置1A,1Bは、送電線L1に接続された変流器2A,2Bで得た電流データ及び電圧データを取り込む。2つのディジタル保護継電装置1A,1Bは、同一の構成である。
以下の説明で2つのディジタル保護継電装置1A,1Bを区別する必要がある場合には、自身のディジタル保護継電装置を「自ディジタル保護継電装置」、通信相手のディジタル保護継電装置を「他ディジタル保護継電装置」と称する。
通信部109には、中継装置42A又は42Bが接続され、自ディジタル保護継電装置の通信部109と他ディジタル保護継電装置の通信部109との間で通信が行われる。
それぞれのディジタル保護継電装置1A,1Bは、第1時刻同期補正部104と、第2時刻同期補正部105との2つの時刻同期補正部を持つ。
第1時刻同期補正部104は、ネットワークで接続された自ディジタル保護継電装置と他ディジタル保護継電装置との間で送受信する時刻フレームにより、他ディジタル保護継電装置のローカル時刻を自ディジタル保護継電装置のローカル時刻に同期する演算を行う。
第1時刻同期補正部104では、以下の式(1)の演算が行われる。
tdiff ={(t3−t2)−(t1−t0)}/2・・・式(1)
この演算の実行で、第1時刻同期補正部104は、自ディジタル保護継電装置に対する他ディジタル保護継電装置の時刻の差分tdiffを得る。そして、第1時刻同期補正部104は、算出した差分tdiffのデータをサンプリング制御部107に送る。
系統電圧推定周期算出部1053は、算出した推定系統電圧周期のデータをサンプリング制御部107に送る。
なお、第2時刻同期補正部105での補正処理の詳細は後述する(図3,図4)。
サンプリング制御方法切替部102は、遅延時間差計測部103より計測された上りと下りの通信遅延時間差に基づいて、時刻同期演算を使う補正部を、第1時刻同期補正部104と第2時刻同期補正部105のいずれかに設定する。
ΔTd=||Td1|−|Td2||・・・式(2)
なお、サンプリング制御部107は、クロック発生器106から供給されるクロックに同期して作動する。
次に、第2時刻同期補正部105での補正処理の詳細を、図3及び図4を参照して説明する。
まず、系統電圧周波数の零クロス時刻を算出する処理を、図3に基づいて説明する。
交流電圧は、図3Aに示すように値が負から正、正から負への変化を繰り返す。ここで、系統電圧の値が正から負(または負から正)に切り替わる前の点を通過する時刻を第1サンプル時刻TS1とし、切り替え後の点を通過する時刻を第2サンプル時刻TS2と称する。第2時刻同期補正部105は、第1サンプル時刻TS1での電圧値と第2サンプル時刻TS2での電圧値との間の近似直線を求め、その近似直線が電圧0になる点(零点)の零クロス時刻TXを得る。そして、図3Bに示すように、この零クロス時刻TXのタイミングで発生するパルスである時刻補正信号を得る。
第2時刻同期補正部105は、系統電圧の零クロス時刻TXを順次計測し(図4A)、零クロス時刻TXに同期した時刻補正信号(図4B)を得、その零クロス時刻TXが検出される間隔である、系統電圧の周期Taを得る。
第2時刻同期補正部105の系統電圧周期算出部1051は、周期Taから系統電圧周波数fを得る。系統電圧周波数fは、次の式(3)から算出する。
f=1/(2・Ta)・・・式(3)
次に、時刻同期演算を、第1時刻同期補正部104から第2時刻同期補正部105に切替える場合の例について説明する。
図5は、サンプリング制御方法切替部102の制御で、第1時刻同期補正部104から第2時刻同期補正部105へ時刻同期演算を切り替える際の処理例を示すフローチャートである。
そして、サンプリング制御方法切替部102は、他ディジタル保護継電装置1Bで検出した通信遅延時間差ΔTが、一定値以上の状態が所定時間以上継続したか否かを判断する(ステップS13)。
すなわち、まず自ディジタル保護継電装置1Aと他ディジタル保護継電装置1Bのそれぞれの系統電圧周期算出部1051が、系統電圧の零クロス時刻を記憶する(ステップS15)。次に、自ディジタル保護継電装置1Aと他ディジタル保護継電装置1Bのそれぞれの系統事故判別部1052は、系統事故が発生したか否かを判断する(ステップS16)。このステップS16における系統事故の発生の判断は、例えば系統電圧周波数が一定範囲を超えたか否かによって行われる。
そして、系統電圧周波数が一定範囲を超えていない場合(ステップS16のNO)と、ステップS17で推定系統電圧周期を算出した場合、他ディジタル保護継電装置1Bの第2時刻同期補正部105が時刻同期補正演算を実行する(ステップS18)。ここでは、系統電圧周波数が一定範囲を超えていない場合には、系統電圧周期算出部1051が算出した周期に基づいて第2時刻同期補正部105が時刻同期補正演算を実行する。また、ステップS17で推定系統電圧周期を算出した場合には、系統電圧推定周期算出部1053が算出した推定周期に基づいて第2時刻同期補正部105が時刻同期補正演算を実行する。
この通知を受信した自ディジタル保護継電装置1Aは、第2時刻同期補正部105が時刻同期補正演算を実行する(ステップS20)。ここでも、ステップS18の場合と同様に、系統電圧周期算出部1051が算出した周期に基づいて時刻同期補正演算を実行する場合と、系統電圧推定周期算出部1053が算出した推定周期に基づいて時刻同期補正演算を実行する場合とがある。
式(4)において、t0は事故が発生する直前の零クロス時刻、mは事故発生後に経過した系統電圧周期数、T_aveは事故発生前の系統電圧n周期分の平均値であり、式(5)から算出される。
T_est=t0+T_ave×m…式(4)
T_ave=(T1+T2+…Tn)/n…式(5)
図6は、系統事故が発生した場合のサンプルタイミングの算出の具体的な例を示した概念図である。
この例では、区間Tbに系統事故が発生して、図6Aに示す系統電圧がこの区間Tbで乱れた状態である。この系統事故は、系統事故判別部1052で判別される。
このとき、系統電圧推定周期算出部1053は、事故直前の零クロス時刻TXを基準とした推定系統電圧周期T_estを算出し、推定系統電圧周期T_estから系統事故発生区間Tbのサンプルタイミングの周期Tcを決定する。
したがって、系統事故が発生した場合でも、アナログディジタル変換部110でサンプリングするタイミングが適切に管理され、自ディジタル保護継電装置1Aと他ディジタル保護継電装置1Bとで同期して精度良くサンプリングできるようになる。
また、このように上りと下りの通信遅延時間差があるIPネットワークを通信路として適用できるため、通信路に接続する中継装置42A,42B(図1)として、伝送遅延を考慮した複雑且つ高価な中継装置を使用する必要がない。このため、既存のIPネットワークをそのまま適用できるようになり、通信システムの更新にコストが掛からないという効果を有する。
さらに、本実施の形態例の場合には、中継装置が通信遅延補正機能を担う必要がないため、万一、ディジタル保護継電装置間のサンプリング同期制御において故障が発生した場合、故障発生箇所をディジタル保護制御装置に限定できるといった効果もある。
次に、本発明の第2の実施の形態の例を、図7及び図8を参照して説明する。
この第2の実施の形態の例において、各ディジタル保護継電装置1A,1Bの構成については、図1に示すディジタル保護継電装置1A,1Bと同じであり、装置の構成の説明は省略する。第2の実施の形態の例においては、上りと下りの遅延時間差が発生した場合に、同期補正部を切替える代りに、第1時刻同期補正部104での演算結果を、第2時刻同期補正部105での演算結果で同期状態を補正する処理を行う。
図7は、第2の実施の形態の例での、サンプリング制御方法切替部102の制御で、第1時刻同期補正部104から第2時刻同期補正部105へ時刻同期演算を切り替える際の処理例を示すフローチャートである。この図7のフローチャートにおいて、図5のフローチャートと同一の内容の処理ステップについては、同一のステップ番号を付与し、その説明は割愛する。
この図7の例でも、図5のフローチャートと同様に、ディジタル保護継電装置1Aを自ディジタル保護継電装置、ディジタル保護継電装置1Bを他ディジタル保護継電装置とする。
次に、他ディジタル保護継電装置1Bの通信部109は、自ディジタル保護継電装置1Aの通信部109に対して、第1時刻同期補正部104の時刻同期結果を第2時刻同期補正部105の結果で補正したことを通知する(ステップS23)。
この通知を受信した自ディジタル保護継電装置1Aでは、自らの第1時刻同期補正部104での時刻同期演算結果についても、第2時刻同期補正部105による時刻同期演算結果で補正する(ステップS24)。
図8は、第2の実施の形態の例での、系統事故が発生した場合のサンプルタイミングの算出の具体的な例を示した概念図である。
この例では、区間Tfに系統事故が発生して、図8Aに示す系統電圧がこの区間Tfで乱れた状態である。また、この系統事故発生区間Tfを含む所定区間Teが、上りと下りの伝送遅延差が一定値以上発生した伝送遅延時間差発生区間である。
なお、本発明は上述した実施の形態例に限定されるものではなく、様々な変形例及び応用例が含まれる。例えば、上述した実施の形態例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも図1などで説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
Claims (5)
- 送電線の電流電圧情報を取り込む入力変換器と、
通信路を介して接続された自ディジタル保護継電装置から他ディジタル保護継電装置までの上り通信遅延時間と前記他ディジタル保護継電装置から前記自ディジタル保護継電装置までの下り通信遅延時間との差を計測する遅延時間差計測部と、
前記通信路で時刻情報を含むフレームを送受信することにより、前記自ディジタル保護継電装置に対する前記他ディジタル保護継電装置の時刻オフセットを算出し、サンプルタイミングを補正する第1時刻同期補正部と、
前記入力変換器が取り込んだアナログ電圧をもとに系統電圧周期を算出して、算出した系統電圧周期のデータを使ってサンプルタイミングを補正する第2時刻同期補正部と、
前記遅延時間差計測部により計測された上りと下りの通信遅延時間差が一定値以上となる状態が所定時間以上継続した場合に、前記第1時刻同期補正部による時刻同期演算から、前記第2時刻同期補正部による時刻同期演算に切り替えるサンプリング制御方法切替部と、
前記第1時刻同期補正部または前記第2時刻同期補正部により算出されたサンプリング同期補正量をもとに前記入力変換器が取り込んだ電流電圧情報のサンプリング同期制御を行うサンプリング制御部と、
前記サンプリング制御部によるサンプリング同期制御で取得した電流電圧情報をもとに電力系統を保護するための演算を行う保護演算部と、
前記保護演算部の演算結果をもとに電力系統に接続された遮断器を制御する遮断器制御部と、を備える
ディジタル保護継電装置。 - 前記第2時刻同期補正部は、
前記入力変換器が取り込んだアナログ電圧をもとに系統電圧周期を算出する系統電圧周期算出部と、
前記系統電圧周期算出部にて算出された系統電圧周期がある一定範囲を超えた場合に系統事故発生を判別する系統事故判別部と、
前記系統事故判別部にて系統事故が発生したと判別された場合に過去に取得した系統電圧周期から推定系統電圧周期を算出する系統電圧推定周期算出部を有する
請求項1に記載のディジタル保護継電装置。 - 前記サンプリング制御方法切替部は、前記遅延時間差計測部より計測された上りと下りの通信遅延時間差がある一定値未満となった場合に、前記第2時刻同期補正部による時刻同期演算から前記第1時刻同期補正部による時刻同期演算に切り替える
請求項1に記載のディジタル保護継電装置。 - 前記遅延時間差計測部により計測された上りと下りの通信遅延時間差がある一定値未満の場合は第1時刻同期補正部による時刻同期を行い、
前記遅延時間差計測部により計測された上りと下りの通信遅延時間差が一定値以上となる状態が所定時間以上継続した場合は前記第1時刻同期補正部の時刻同期結果を前記第2
時刻同期補正部の時刻同期結果で補正する
請求項1に記載のディジタル保護継電装置。 - 通信路を介して接続された複数のディジタル保護継電装置を備え、それぞれのディジタ
ル保護継電装置が送電線の遮断器を制御するディジタル保護継電システムにおいて、
それぞれの前記ディジタル保護継電装置は、
送電線の電流電圧情報を取り込む入力変換器と、
通信路を介して接続された自ディジタル保護継電装置から他ディジタル保護継電装置までの上り通信遅延時間と前記他ディジタル保護継電装置から前記自ディジタル保護継電装置までの下り通信遅延時間との差を計測する遅延時間差計測部と、
前記通信路で時刻情報を含むフレームを送受信することにより、前記自ディジタル保護継電装置に対する前記他ディジタル保護継電装置の時刻オフセットを算出し、サンプルタイミングを補正する第1時刻同期補正部と、
前記入力変換器が取り込んだアナログ電圧をもとに系統電圧周期を算出して、算出した系統電圧周期のデータを使ってサンプルタイミングを補正する第2時刻同期補正部と、
前記遅延時間差計測部により計測された上りと下りの通信遅延時間差が一定値以上となる状態が所定時間以上継続した場合に、前記第1時刻同期補正部による時刻同期演算から、前記第2時刻同期補正部による時刻同期演算に切り替えるサンプリング制御方法切替部と、
前記第1時刻同期補正部または前記第2時刻同期補正部により算出されたサンプリング同期補正量をもとに前記入力変換器が取り込んだ電流電圧情報のサンプリング同期制御を行うサンプリング制御部と、
前記サンプリング制御部によるサンプリング同期制御で取得した電流電圧情報をもとに電力系統を保護するための演算を行う保護演算部と、
前記保護演算部の演算結果をもとに電力系統に接続された遮断器を制御する遮断器制御部と、を備えた
ディジタル保護継電システム。
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