上記従来の楽器においては、振動板の振動が共鳴箱によって増幅されて放音されるだけであり、音量が比較的小さい。
本発明は上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、振動体をはじいて発音する楽器であって、大きな音を発することができる楽器を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、はじかれて振動する振動体(21n)と、前記振動体をはじいて励振する励振手段(17n)と、前記振動体の振動波形を検出して前記振動波形を表す振動信号を出力する検出手段(32n)と、前記振動信号を増幅する増幅手段(33n)と、前記増幅された振動信号に基づいて発音する放音手段(36)と、前記励振手段が前記振動体をはじいて振動開始させる際、前記励振手段が駆動開始されて前記励振手段が前記振動体に当接する前のタイミングにおいて前記振動体が振動しているとき、前記励振手段が前記振動体に当接して前記振動体の振動が抑制されるまで前記増幅手段を無効化した後、前記増幅手段を有効化する制御手段(37)と、を備えた楽器(1)としたことにある。なお、「増幅手段を無効化する」とは、増幅手段の動作を停止させることのみならず、増幅手段の増幅度を十分に小さく設定し、実質的に増幅手段が停止しているとみなすことができる状態に設定することを含む。また、「振動体が振動している」とは、振動体の振幅がある程度大きい状態を意味し、振幅が十分に小さく、実質的に振動していないとみなせる状態は除かれる。
本発明に係る楽器では、振動体の振動を表す信号が増幅されて放音手段から音として発せられる。よって、本発明に係る楽器は、上記特許文献1の楽器よりも大きな音を発することができる。
また、振動体が振動している最中に再び励振手段が駆動され、励振手段が振動体に近づいたとき、励振手段が振動中の振動体に軽く触れて異音(ビビリ)が発生する虞がある。このとき、増幅手段が有効化されている場合には、前記異音が増幅されて放音手段から音として発せられる。そこで、本発明においては、制御手段は、振動体が振動している最中に再び励振手段が駆動されたとき、励振手段が振動体に当接して振動体の振動が抑制されるまで増幅手段を無効化する。これにより、前記異音が増幅されて放音手段から音として発せられることを防止できる。
また、本発明の他の特徴は、前記制御手段は、初期状態において前記増幅手段を無効化し、前記励振手段が駆動開始されたことを検出して前記増幅手段を有効化し、前記励振手段が駆動開始されて前記増幅手段を有効化したタイミング(T0)から前記励振手段が再び駆動開始されたタイミング(TM1)までの経過時間(tn)に基づいて、前記振動体が振動しているか否かを判定する、楽器としたことにある。
この場合、前記制御手段は、前記経過時間が、前記増幅手段を有効化した状態に保持する期間の長さである所定の第1保持時間(ptn)より短いとき、前記振動体が振動していると判定するとよい。
また、この場合、前記第1保持時間は、前記振動体の振動の減衰時間に基づいて設定されているとよい。なお、「振動体の減衰時間」とは、振動体を所定の強さではじいたとき、その振幅が「0」(又は所定の小さな振幅以下)になるまでにかかる時間を意味する。
また、この場合、前記制御部は、前記振動体が振動していると判定したとき、前記増幅手段を所定の第2保持時間(ptv)だけ無効化するとよい。
また、この場合、前記励振手段は、移動して前記振動体をはじく可動部(11n、17n)を備え、前記可動部の移動速度に応じて、前記第2保持時間が設定されているとよい。
制御手段は、励振手段が駆動されたとき、振動検出部を用いて振動体が振動しているか否かを判定することは可能である。しかし、この場合、制御手段は、振動体の振幅を、しばらくの間、監視する必要がある。本発明では、制御手段は、励振手段が駆動開始されて増幅手段を有効化したタイミングから励振手段が再び駆動開始されたタイミングまでの経過時間に基づいて、振動体が振動しているか否かを判定する。よって、制御手段は、振動体の振幅を監視する必要がない。そのため、高い演算能力を備えた制御手段を用いる必要が無い。
本発明の一実施形態に係る楽器1について説明する。楽器1は、図1及び図2に示すように、鍵盤装置10、音源部20及びサウンドシステム30を備える。鍵盤装置10、音源部20及びサウンドシステム30は、楽器1の筐体に固定されている。
鍵盤装置10は、鍵11n=C3,C#3,・・・,C5、フレーム12、鍵支持部13n=C3,C#3,・・・,C5、ストッパ14,15、コイルばね16n=C3,C#3,・・・,C5、爪17n=C3,C#3,・・・,C5、及び連結部材18n=C3,C#3,・・・,C5を備える。本実施形態では、鍵盤装置10は、25個(2オクターブ分)の鍵11nを備えているが、鍵の数はこれに限られず、任意に設定可能である。なお、以下の説明において、各部品の符号の添え字である「n」は、その部品に割り当てられた音高を表す。
鍵11nは、前後方向に延設されている。鍵11n=C3,C#3,・・・,C5は、横方向(図2の紙面に垂直な方向)に並べられている。図2に例示する鍵11nは、ピアノの白鍵と同様の形状を有するが、ピアノの黒鍵と同様の形状を有していても良い。つまり、鍵11nは、割り当てられた音高に応じた形状を有していれば良い。鍵11nは、合成樹脂製であり、射出成形法を用いて一体的に形成されている。鍵11nは、その長手方向における中間部にて、フレーム12に設けられた鍵支持部13nに支持されている。フレーム12は、鍵盤装置10を構成する部材を支持する。鍵支持部13nは、横方向(鍵11nの並び方向)に平行に延びる軸部131nを有している。鍵11nは、軸部131nの軸線回りに回動可能に支持されている。鍵11nの前端部及び後端部の下方には、鍵11nの回動範囲を規定するストッパ14,15がそれぞれ設けられている。ストッパ14,15は、合成ゴム、フエルトなどの衝撃吸収部材で構成され、最低音の鍵11n=C3から最高音の鍵11n=C5に亘るように横方向に延設されている。鍵11nの前端部の下方には、コイルばね16nが設けられている。鍵11nの前端が下方へ押されると、鍵11nは軸部131n回り(図2において反時計回り)に回動する。その際、鍵11nの前端部がコイルばね16nに当接してコイルばね16nを押し縮める。そして、鍵11nの前端部の下面がストッパ14に当接して、鍵11nの回動が規制される。つぎに、鍵11nが解放されると、前記押し縮められたコイルばね16nの反発力により、鍵11nの前端部が上方へ押されて、鍵11nが軸部131n回り(図2において時計回り)に回動する。そして、鍵11nの後端部の下面がストッパ15に当接して、鍵11nの回動が規制される。
鍵11nの後端部には、振動板21nをはじく爪17nが組み付けられている。爪17nは、楔形状を有する。すなわち、後方へ向かうに従って、その厚さ(上下方向の寸法)が徐々に小さくなっている。鍵11nの後端部の上面と爪17nの上面とが薄板状の連結部材18nによって連結されている。すなわち、連結部材18nの前側部の下面が鍵11nの後端部の上面に接合され、連結部材18nの後側部の下面が爪17nの前端部の上面に接合されている。自然状態(爪17nに外力が加えられない状態)において、鍵11nの上面と爪17nの上面は、略同一平面内に位置している。連結部材18nは、可撓性を有する。すなわち、図3に示すように、爪17nの後端に上方への力が作用すると、連結部材18nの後側部が上側へ湾曲するように変形し、爪17nの上面が鍵11nの上面に対して傾斜した状態になる。一方、連結部材18nの後端に下方への力が作用した場合には、爪17nの前端面が鍵11nの後端面に当接するので、連結部材18nは湾曲せず、鍵11nに対する爪17nの姿勢は自然状態と同一である。なお、連結部材18nは、金属製又は合成樹脂製のヒンジであってもよい。また、爪17nと連結部材18nとが一体的に形成されていてもよい。なお、爪17nは、本発明の励振手段の可動部に相当する。
複数の鍵11nの後方には、音源部20が配置されている。音源部20は、振動板21n=C3,C#3,・・・,C5、及び共鳴箱22を備える。振動板21nは、鍵11nの後方に配置されている。振動板21nは、金属製である。振動板21nは、本体部211nと基端部212nとを有する。本体部211nは前後方向に延びる板状に形成されている。本体部211nの板厚方向が上下方向に一致している。本体部211nの長手方向の寸法は、割り当てられた音高に応じて設定されている。すなわち、本体部211nの固有周波数が、割り当てられた音高の周波数に対応している。本体部211nの後端が基端部212nの前端に接続されている。基端部212nの幅方向の寸法は、本体部211nの幅方向の寸法よりも大きい。基端部212nは、共鳴箱22の上面に固定されている。基端部212nが共鳴箱22に固定された状態において、本体部211nは、共鳴箱22の前端から前方へ突出している。本体部211nの前端部は、爪17nの後端部の少し上方に位置している。鍵11nが押されて図2において反時計回りに鍵11nが回動し、爪17nによって本体部211nの前端部がはじかれる。その後、その鍵11nが解放されて、図2において時計回りに鍵11nが回動すると、爪17nが本体部211nの前端に当接するが、爪17nの後端が上方へ押されて連結部材18nが湾曲する。つまり、爪17nが本体部211nを押さえつけない。そのため、本体部211nが振動している最中に、鍵11nが解放されたとしても、爪17nが本体部211nの振動を停止させたり、大きな異音(ビビリ)を発生させたりすることなく、鍵11n及び爪17nが元の位置(図2の状態)に戻る。
共鳴箱22は、木製の箱であり、本体部211nの振動に共鳴して音を発する。共鳴箱22は、最低音の鍵11n=C3の後方に位置する部分から最高音の鍵11n=C5の後方に位置する部分に亘るように横方向に長く形成されている。ただし、鍵11nごとに個別の共鳴箱が設けられても良い。
サウンドシステム30は、図4に示すように、鍵操作検出器31n=C3,C#3,・・・,C5、振動検出器32n=C3,C#3,・・・,C5、プリアンプ33n=C3,C#3,・・・,C5、加算器34、パワーアンプ35、スピーカ36、及び制御部37を備える。
鍵操作検出器31nは、鍵11nの下方に配置されている。鍵操作検出器31nは、前後方向に離間した第1スイッチ及び第2スイッチからなる。鍵11nが押されて、鍵操作検出器31nの上面が鍵11nの下面に当接して押圧されると、前記第1スイッチ及び第2スイッチがこの順にオフ状態からオン状態へ切り替わる。両スイッチの状態の切り替わりタイミングの時間差は、押鍵速度に対応している。鍵11nが解放されると、前記第2スイッチ及び第1スイッチがこの順にオン状態からオフ状態へ切り替わる。両スイッチの状態の切り替わりタイミングの時間差は、離鍵速度に対応している。
振動検出器32nは、振動板21nの本体部211nの下方に配置されている。振動検出器32nは、上下方向に延びる棒状の磁石と、その周りに巻かれたコイルからなる。振動検出器32nの上方にて本体部211nが振動すると、その振動に応じて振動検出器32nの周辺(とくに上方)の磁界が変動する。その磁界の変動に応じた電流がコイルに流れる。このコイルに流れる電流が本体部211nの振動波形を表す振動信号VSnとしてプリアンプ33nに供給される。
プリアンプ33nは、後述する制御部37によって設定された増幅度AMnに応じて振動信号VSnを増幅して加算器34に供給する。加算器34は、各プリアンプ33n=C3,C#3,・・・,C5から供給された信号を加算してパワーアンプ35に供給する。パワーアンプ35は、加算器34から供給された信号を増幅してスピーカ36に供給する。スピーカ36は、パワーアンプ35から供給された信号に従って放音する。
制御部37は、演算部、記憶部、タイマーなどを備えたコンピュータである。制御部37は、各鍵操作検出器31nの前記2つのスイッチの状態の切り替わりタイミングに基づいて、増幅度AMnを決定してプリアンプ33nに供給する。具体的には、図5に示すように、制御部37は、初期状態(電源投入時)において、増幅度AMnを第1所定値(例えば「0倍」)に設定する。つまり、制御部37は、プリアンプ33nを無効化する。制御部37は、鍵11nが押されたこと(前記第2スイッチがオフ状態からオン状態に切り替わったこと)を検出すると、増幅度AMnを第2所定値(例えば、「100倍」)に変更する(図5参照)。つまり、制御部37は、プリアンプ33nを有効化する。そして、制御部37は、そのタイミングT0からの経過時間tnを計測する。なお、本実施形態では、第2所定値は、音高nに関わらず、全てのプリアンプ33nに共通である。
つぎに、制御部37は、タイミングT0から所定の保持時間ptnだけ増幅度AMnを第2所定値に保持する。制御部37は、タイミングT0からの経過時間tnが前記保持時間ptnに達したタイミングT1にて、増幅度AMnを第1所定値に変更する。つまり、制御部37は、プリアンプ33nを無効化する。保持時間ptnは、振動板21nの振動の減衰時間と同等に(又は振動板21nの振動の減衰時間よりも少し長く)設定されている。音高nが高いほど、振動板21nの振動の減衰時間が短い。したがって、音高nが高いほど、保持時間ptnが短く設定されている。
ただし、図6に示すように、鍵11nが押されたことを検出したタイミングT0からの経過時間tnが保持時間ptnに達する前のタイミングTM1において再び鍵11nが押されたことを検出したとき、制御部37は、振動板21nが未だ振動していると判定する。この場合、制御部37は、タイミングTM1において、増幅度AMnを強制的に第1所定値に変更する。そして、制御部37は、タイミングTM1から所定の保持時間ptvだけ増幅度AMnを第1所定値に保持する。制御部37は、タイミングTM1からの経過時間が前記保持時間ptvに達したタイミングTM2にて、増幅度AMnを第2所定値に変更する。保持時間ptvは、押鍵速度に応じて設定される。具体的には、各押鍵速度において、鍵11nが押されたことを検出してから、爪17nが振動板21nに当接して前記振動が抑制されるまでの第1の時間Δt1、及び鍵11nが押されたことを検出してから、爪17nが振動板21nをはじくまでの第2の時間Δt2を予め計測しておく。そして、各押鍵速度における保持時間ptvを、前記計測した第1の時間Δt1よりも少し長く、且つ前記計測した第2の時間Δt2よりも少し短く設定する。なお、押鍵速度が小さいほど、爪17nが振動板21nに近づく速度が小さい。そのため、押鍵速度が小さいほど、保持時間ptvが長く設定される。
上記のように構成した楽器1によれば、振動板21nの振動を表す信号が増幅されてスピーカ36から音として発せられる。よって、楽器1は、上記特許文献1の楽器よりも大きな音を発することができる。
また、振動板21nが振動している最中に再び鍵11nが押され、爪17nが振動板21nに近づいたとき、爪17nが振動中の振動板21nに軽く触れて異音(ビビリ)が発生する虞がある。例えば、図6におけるタイミングTM1及びタイミングTM2の間にて、異音が発生する虞がある。タイミングTM1において増幅度AMnを第1所定値に変更することなく第2所定値に保った場合には、前記異音が増幅されてスピーカ36から発せられる。そこで、本実施形態においては、制御部37は、鍵11nが押されたことを検出して増幅度AMnを第2所定値に変更した後、所定の保持時間ptnが経過する前に再び鍵11nが押されたことを検出したとき、振動板21nが未だ振動していると判定する。そして、制御部37は、増幅度AMnを強制的に第1所定値に戻す。つぎに、制御部37は、鍵11nが再び押されたタイミングTM1から押鍵速度に応じた保持時間ptvが経過するタイミングTM2まで、増幅度AMnを第1所定値に保持する。これにより、前記異音が増幅されてスピーカ36から発せられることを防止できる。
また、制御部37は、鍵11nが押されたことを検出したとき、振動検出器32nを用いて振動板21nが振動しているか否かを判定することは可能である。しかし、この場合、制御部37は、振動板21nの振幅を、しばらくの間、監視する必要がある。本発明では、制御部37は、鍵11nが押されたことを検出して増幅度AMnを第2所定値に変更したタイミングT0から鍵11nが再び押されたことを検出したタイミングTM1までの経過時間tnに基づいて、振動板21nが振動しているか否かを判定する。よって、制御部37は、振動板21nの振幅を監視する必要がない。そのため、高い演算能力を備えた制御部37を用いる必要が無い。
また、保持時間ptvは、鍵11nが再び押されてから、爪17nが振動板21nをはじくまでの時間よりも短い。つまり、振動板21nが再びはじかれて振動開始する前に、増幅度AMnが第2所定値に設定される。よって、振動板21nがはじかれた直後の特徴的な振動(高調波を多く含んだ振動)を増幅して放音できる。
また、増幅度AMnを制御することなく、増幅度AMnを大きな第2所定値(例えば「100倍」)に常に保った場合には、非演奏時(非振動時)におけるノイズが増幅されてスピーカ36から発せられる虞がある。本実施形態では、制御部37は、鍵11nが押されたことを検出してから保持時間ptnを経過したタイミングT1にて、増幅度AMnを第2所定値よりも小さな第1所定値(例えば「0倍」)に戻す。なお、音高(固有周波数)が高い振動板21nの振動は、音高が低い振動板21nの振動に比べて速く減衰する。そこで、音高が高いほど、保持時間ptnを短く設定している。これにより、振動板21nの振動の減衰に同期して増幅度AMnを第1所定値に戻すことができ、非演奏時におけるノイズが増幅されてスピーカ36から発せられることを防止できる。
また、制御部37が、振動検出器32nを用いて振動板21nの振動が十分に減衰したことを検出して増幅度AMnを第1所定値に戻す場合、制御部37は、振動板21nの振幅を監視する必要がある。本実施形態では、制御部37は、鍵11nが押されたことを検出してから保持時間ptnが経過したとき、増幅度AMnを第1所定値に戻す。よって、制御部37は、振動板21nの振幅を監視する必要がない。そのため、高い演算能力を備えた制御部37を用いる必要が無い。
また、振動板21nを振動させる機構と、増幅度AMnを変更するタイミングを決定するための操作子とが別々に設けられている場合には、両者の動作タイミングを一致させなければ、振動板21nの振動波形(振幅)の変化と増幅度AMnの変化とを同期させることができない。これに対し、本実施形態の鍵11nは、振動板21nを振動させる機構の一部として機能するとともに、増幅度AMnを変化させるタイミングを決定するための操作子としても機能する。よって、本実施形態の構成によれば、振動板21nの振動波形(振幅)の変化と増幅度AMnの変化とを容易に同期させることができる。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
上記実施形態は、金属製の振動板21nをはじいて発音させる楽器に本発明を適用した例である。しかし、本発明はこれに限られず、例えば、弦をはじいて発音させる楽器にも適用可能である。
また、オルゴール、ハープシコードなどにおいて、振動体をはじく際の振動体の撓みが大きいほど音量は大きくなり、且つその音の高調波成分が大きくなる。そこで、例えば、図7に示すように、プリアンプ33nと加算器34との間に低域通過型、低域遮断型などのフィルタFLnを設け、フィルタFLnのカットオフ(通過帯域)周波数を押鍵速度に応じて設定してもよい。例えば、低域通過型のフィルタFLnを採用した場合において、押鍵速度が大きいほど、カットオフ周波数を高く設定する。これによれば、押鍵速度に応じて、音色を変更することができる。
また、上記実施形態では、鍵11nが押されたことを検出したタイミングT0からの経過時間tnが保持時間ptnに達する前のタイミングTM1において再び鍵11nが押されたことを検出したとき、制御部37は、そのタイミングTM1において、増幅度AMnを強制的に第1所定値に変更する。しかし、タイミングTM1から所定の時間が経過したとき、増幅度AMnを強制的に第1所定値に変更してもよい。この場合、前記所定の時間は、上記の第1の時間Δt1よりも短く設定すればよい。
また、上記実施形態では、制御部37は、鍵11nが押されたことを検出した後、増幅度AMnを第2所定値に設定し、所定の時間tnが経過するまで、増幅度AMnを第2所定値に保持している。そして、増幅度AMnを第2所定値から第1所定値に急激(例えば、ステップ状)に変化させている。この場合、スピーカ36から発せられる音に関して違和感が生じる虞がある。例えば、ノイズ成分が急激に減少したように聞こえる場合がある。そこで、図8に示すように、制御部37は、増幅度AMnを、第2所定値から第1所定値に向かって徐々に減衰させても良い。この場合、単位時間当たりの増幅度AMnの減衰量は、第1所定値と第2所定値との差を保持時間ptnで除した値に設定される。また、図9に示すように、制御部37は、増幅度AMnを、第2所定値から、第1所定値と第2所定値との間の第3所定値に向かって徐々に減衰させ、タイミングT1にて第1所定値に変更しても良い。また、制御部37は、増幅度AMnを直線的に減衰させるのではなく、例えば、指数関数的に減衰させてもよい。これにより、上記のような違和感を生じ難くすることができる。
また、上記実施形態では、第2所定値は、全てのプリアンプ33nに共通であるが、プリアンプ33nごとに第2所定値を異ならせても良い。増幅度AMnを第2所定値から第1所定値に向かって減衰させる場合には、その減衰時間を、第2所定値に応じて設定すると良い。また、第2所定値に応じて、減衰率を設定しても良い。これによれば、例えば、所定の音域の音量を大きくすることができる。
また、楽器1は、従来の電子楽器と同様のダンパーペダルを備えていても良い。この場合、制御部37は、ダンパーペダルのオン・オフ状態を検出する。制御部37は、鍵11nが解放され、且つダンパーペダルがオフ状態であるとき、増幅度AMnを第2所定値から第1所定値に戻す。すなわち、鍵11nが解放されたとしても、ダンパーペダルが踏まれていれば(オン状態であるとき)、制御部37は、増幅度AMnの値を、第2所定値から変更しない。
また、振動板21nをはじく機構(鍵盤装置10)の構成は、上記実施形態に限られない。たとえば、上記特許文献1に記載の鍵盤装置のように、円盤の周囲に爪が設けられた部材を一定の方向に回転させる機構を備えた鍵盤装置を採用しても良い。また、鍵11nに代えて、スライドレバー、押しボタンスイッチなどを採用しても良い。
また、鍵操作検出器31nの構成は、上記実施形態に限られない。例えば、鍵11nの押鍵深さ、揺動角度などを検出する検出器を鍵操作検出器31nとして用いてもよい。また、振動検出器32nの構成は、上記実施形態に限られない。例えば、本体部211nの歪を検出する検出器を振動検出器32nとして用いてもよい。また、爪17nと振動板21nとの距離を計測する計測器を設け、制御部37は、前記計測器による計測結果に基づいて増幅度AMnを制御して、振動中の振動板21nに爪17nが軽く触れて発生する異音の発生を防止しても良い。
また、楽器1は、予め設定された発音情報(曲データ)に従って鍵11nを駆動するアクチュエータを備えていても良い。また、楽器1は、予め設定された発音情報に従って振動板21nを直接的にはじくアクチュエータを備えていても良い。
また、上記実施形態においては、楽器1は、振動板21n=C3,C#3,・・・,C5にそれぞれ対応したプリアンプ33n=C3,C#3,・・・,C5を備えている。しかし、プリアンプ33の数が振動板21の数よりも少なくても良い。この場合、所定のルールに従って、振動板21に対してプリアンプ33を割り当てればよい。例えば、振動中の振動板21のうち、振動開始時刻が最も古い振動板21に割り当てられたプリアンプ33を、新たに振動開始した振動板21に割り当てるとよい。
また、上記実施形態では、楽器1は、共鳴箱22を備えているが、共鳴音が不要である場合には、共鳴箱22を削除しても良い。この場合、振動板21nを支持する支持部材を設ければよい。例えば、前記支持部材として、左右方向に延びるレール状の部材を設ければよい。また、例えば、前記支持部材として、振動板21nごとに、上下方向に延びる柱状の部材を設けても良い。
また、楽器1は、従来の電子楽器と同様に、電子的に合成された楽音を発生する装置を備え、前記振動板21nの振動を増幅して得られた楽音と、前記電子的に合成された楽音とが同時にスピーカ36から放音されてもよい。