以下、本発明の複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図1〜図5を参照して説明する。
図1に示すチャージポンプ回路1は、例えば車両に搭載される電子制御装置などに設けられるものであり、入力端子Piを通じて入力される入力電圧VINを昇圧した昇圧電圧を出力する。本実施形態のチャージポンプ回路1は、互いに電圧値が異なる昇圧電圧VCP1および昇圧電圧VCP2を出力する構成となっている。入力電圧VINは、例えば車両に搭載されたバッテリから供給されるバッテリ電圧である。定常時における入力電圧VIN、昇圧電圧VCP1および昇圧電圧VCP2の大小関係は、下記(1)式に示す関係となる。
VIN<VCP1<VCP2 …(1)
チャージポンプ回路1は、2つの出力端子Po1、Po2を備えており、出力端子Po1から入力電圧VINを昇圧した昇圧電圧VCP1が出力されるとともに、出力端子Po2から入力電圧VINを昇圧した昇圧電圧VCP2が出力される。昇圧電圧VCP1、VCP2は、図示しない負荷回路に供給される。なお、昇圧電圧VCP1は第1昇圧電圧に相当し、昇圧電圧VCP2は第2昇圧電圧に相当する。
出力端子Po1、Po2と回路の基準電位である0Vが与えられるグランド線Lgとの間には、それぞれ平滑用のコンデンサCo1、Co2が接続されている。本実施形態では、チャージポンプ回路1は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)として構成されている。なお、平滑用のコンデンサCo1、Co2、後述するコンデンサC1、C2などのコンデンサは、ASICの外付けの構成でもよいし、ASICに内蔵する構成でもよい。
入力端子Piと出力端子Po2との間には、入力端子Pi側をアノードとしてダイオードD1、D2、D3が直列接続されている。また、入力端子Piと出力端子Po1との間には、入力端子Pi側をアノードとしてダイオードD1、D4が直列接続されている。ダイオードD1、D2同士が接続された接続点であるノードN1には、コンデンサC1の一方の端子が接続されている。ダイオードD2、D3同士が接続された接続点であるノードN2には、コンデンサC2の一方の端子が接続されている。なお、ダイオードD1〜D3は、入力端子Piと出力端子Po2との間に直列接続された複数のスイッチング素子に相当する。
コンデンサC1の他方の端子は、駆動回路2の出力端子に接続されている。駆動回路2は、ドライバ3およびツェナーダイオードZD1を備えている。ドライバ3には、電源線Ldおよびグランド線Lgを介して電源電圧VDDが供給されている。また、ドライバ3の入力ノードNiには、チャージポンプ回路1の外部からクロック端子Pcを通じて与えられるクロック信号CLK1が、スイッチSW1を介して供給されている。
なお、スイッチSW1のオンとオフは、後述する異常検出部4から出力される切替信号Saにより制御される。この場合、スイッチSW1は、ハイレベル(例えば5V)の切替信号Saが与えられるとオン(以下、ONとも称す)するとともに、ロウレベル(例えば0V)の切替信号Saが与えられるとオフ(以下、OFFとも称す)するように構成されている。
ドライバ3は、入力ノードNiに与えられるクロック信号CLK1に応じて、その出力をハイレベル(VDD)とロウレベル(0V)とに交互に切り替える構成となっている。また、ドライバ3は、スイッチSW1がオフとなってクロック信号CLK1の供給が停止されると、その出力をハイレベルまたはロウレベルに固定する構成、あるいは、その出力をハイインピーダンス状態とする構成になっている。
このようなドライバ3の具体的な構成としては、例えば図2〜図4に示すような構成を採用することができる。図2に示すドライバ3Aは、Pチャネル型のMOSトランジスタであるトランジスタQ11、Nチャネル型のMOSトランジスタであるトランジスタQ12および抵抗R11を備えている。
トランジスタQ11のソースは電源線Ldに接続され、そのドレインはトランジスタQ12のドレインに接続されている。トランジスタQ12のソースはグランド線Lgに接続されている。トランジスタQ11、Q12の各ゲートは、入力ノードNiに接続されている。トランジスタQ11、Q12の各ドレインは、出力ノードNoに接続されている。
抵抗R11は、トランジスタQ11、Q12の各ゲートとグランド線Lgとの間に接続されている。抵抗R11は、クロック信号CLK1の供給が停止されるなどして入力ノードNiがオープンになった際、トランジスタQ11、Q12のゲート電位をロウレベル(0V)に固定するために設けられている。
このように、ドライバ3Aは、CMOSインバータ回路の構成となっている。したがって、ドライバ3Aでは、入力がハイレベルのときにはトランジスタQ12がオンすることで出力がロウレベルとなり、入力がロウレベルのときにはトランジスタQ11がオンすることで出力がハイレベルとなる。
また、ドライバ3Aでは、入力がオープンになると、トランジスタQ11、Q12の各ゲートは、抵抗R11によってロウレベルに固定される。そのため、ドライバ3Aでは、入力がオープンのとき、トランジスタQ11がオンすることで出力がハイレベルに固定される。
図3に示すドライバ3Bは、図2に示したドライバ3Aと同様、CMOSインバータ回路の構成となっている。ただし、ドライバ3Bは、ドライバ3Aに対し、抵抗R11に代えて抵抗R12を備えている点が異なる。抵抗R12は、電源線LdとトランジスタQ11、Q12の各ゲートとの間に接続されている。抵抗R12は、入力ノードNiがオープンになった際、トランジスタQ11、Q12のゲート電位をハイレベル(VDD)に固定するために設けられている。
上記構成のドライバ3Bでは、ドライバ3Aと同様、入力がハイレベルのときにはトランジスタQ12がオンすることで出力がロウレベルとなり、入力がロウレベルのときにはトランジスタQ11がオンすることで出力がハイレベルとなる。また、ドライバ3Bでは、入力がオープンになると、トランジスタQ11、Q12の各ゲートは、抵抗R12によってハイレベルに固定される。そのため、ドライバ3Bでは、入力がオープンのとき、トランジスタQ12がオンすることで出力がロウレベルに固定される。
図4に示すドライバ3Cは、図1に示したドライバ3Aと同様、CMOSインバータ回路の構成となっている。ただし、ドライバ3Cは、ドライバ3Aに対し、抵抗R11に代えて抵抗R13、R14、スイッチSW11、SW12を備えている点が異なる。抵抗R13は、電源線LdとトランジスタQ11のゲートとの間に接続されている。抵抗R13は、入力ノードNiがオープンになった際、トランジスタQ11のゲート電位をハイレベル(VDD)に固定するために設けられている。抵抗R14は、トランジスタQ12のゲートとグランド線Lgとの間に接続されている。抵抗R14は、入力ノードNiがオープンになった際、トランジスタQ12のゲート電位をロウレベル(0V)に固定するために設けられている。
スイッチSW11は、入力ノードNiとトランジスタQ11のゲートとの間に接続されている。スイッチSW12は、入力ノードNiとトランジスタQ12のゲートとの間に接続されている。スイッチSW11、SW12のオンとオフは、切替信号Saにより制御される。この場合、スイッチSW11、SW12は、ハイレベルの切替信号Saが与えられるとオンするとともに、ロウレベルの切替信号Saが与えられるとオフするように構成されている。したがって、スイッチSW11、SW12は、入力ノードNiにクロック信号CLK1が供給される期間にはオンされるとともに、入力ノードNiへのクロック信号CLK1の供給が停止される期間、つまり入力がオープンになる期間にはオフされる。
上記構成のドライバ3Cでは、ドライバ3Aと同様、入力がハイレベルのときにはトランジスタQ12がオンすることで出力がロウレベルとなり、入力がロウレベルのときにはトランジスタQ11がオンすることで出力がハイレベルとなる。また、ドライバ3Cでは、入力がオープンになると、トランジスタQ11のゲートが抵抗R13によってハイレベルに固定されるとともに、トランジスタQ12のゲートが抵抗R14によってロウレベルに固定される。そのため、ドライバ3Cでは、入力がオープンのとき、トランジスタQ11、Q12の両方がオフとなり、その結果、出力がハイインピーダンス状態となる。
図1に示すように、ツェナーダイオードZD1のアノードはグランド線Lgに接続され、そのカソードはドライバ3の出力ノードNoに接続されるノードN3に接続されている。なお、ノードN3は、駆動回路2の出力端子となる。つまり、ツェナーダイオードZD1は、駆動回路2の出力端子とグランド線Lgとの間に、グランド線Lg側をアノードとして接続されている。そのため、駆動回路2の出力端子の電圧、ひいてはコンデンサC1の他方の端子に与えられる電圧は、ツェナーダイオードZD1のツェナー電圧Va(以下、単に電圧Vaとも呼ぶ)に制限される。
そして、電圧Vaは、電源電圧VDDの定常値よりも低い電圧値に設定されている。そのため、コンデンサC1の他方の端子には、クロック信号CLK1に基づく駆動回路2の動作により、電圧Vaおよび0Vが交互に印加される。なお、この場合、電圧Vaが第1電圧に相当し、0Vが第1電圧より低い第2電圧に相当する。
コンデンサC2の他方の端子は、駆動回路5の出力端子に接続されている。駆動回路5は、ドライバ6およびツェナーダイオードZD2、ZD3およびスイッチSW3を備えている。なお、この場合、ツェナーダイオードZD2のツェナー電圧は、電圧Vaであり、駆動回路2のツェナーダイオードZD1と同じになっている。ドライバ6には、電源線Ldおよびグランド線Lgを介して電源電圧VDDが供給されている。ドライバ6には、クロック信号CLK1を反転バッファ7により反転した信号(以下、クロック信号CLK2と呼ぶ)が、スイッチSW2を介して供給されている。
なお、スイッチSW2のオンとオフは、異常検出部4から出力される切替信号Sbにより制御される。また、スイッチSW3のオンとオフは、異常検出部4から出力される切替信号Saにより制御される。この場合、スイッチSW2は、ハイレベルの切替信号Sbが与えられるとオンするとともに、ロウレベルの切替信号Sbが与えられるとオフするように構成されている。また、この場合、スイッチSW3は、ハイレベルの切替信号Saが与えられるとオンするとともに、ロウレベルの切替信号Saが与えられるとオフするように構成されている。
ドライバ6は、クロック信号CLK2に応じて、その出力をハイレベルとロウレベルとに交互に切り替える構成となっている。また、ドライバ6は、スイッチSW2がオフとなってクロック信号CLK2の供給が停止されると、その出力をハイレベルまたはロウレベルに固定する構成、あるいは、その出力をハイインピーダンス状態とする構成になっている。
このようなドライバ6の具体的な構成としては、ドライバ3と同様、図2〜図4に示すような構成を採用することができる。ただし、この場合、図2〜図4の構成において、入力ノードNiに与えられる信号は、クロック信号CLK2となる。また、図4の構成において、スイッチSW11、SW12のオンとオフを制御するための信号は、切替信号Sbとなる。
ツェナーダイオードZD2のアノードはグランド線Lgに接続され、そのカソードはツェナーダイオードZD3のアノードに接続されている。ツェナーダイオードZD3のカソードは、ドライバ6の出力ノードNoに接続されるノードN4に接続されている。なお、ノードN4は、駆動回路5の出力端子となる。つまり、ツェナーダイオードZD2、ZD3は、駆動回路5の出力端子とグランド線Lgとの間に、グランド線Lg側をアノードとして直列接続されている。また、ツェナーダイオードZD2の端子間には、スイッチSW3が接続されている。
このような構成により、駆動回路5の出力端子の電圧は、スイッチSW3がオンの期間にはツェナーダイオードZD3のツェナー電圧Vb(以下、単に電圧Vbとも呼ぶ)に制限され、スイッチSW3がオフの期間には電圧VbにツェナーダイオードZD2のツェナー電圧Vaを加えた電圧(以下、電圧Va+Vbと呼ぶ)に制限される。そして、電圧Vbは、電圧Va+Vbが電源電圧VDDの定常値よりも低い電圧値となるように設定されている。
そのため、スイッチSW3がオンの期間、コンデンサC2の他方の端子には、クロック信号CLK2に基づく駆動回路5の動作により、電圧Vbおよび0Vが交互に印加される。また、スイッチSW3がオフの期間、コンデンサC2の他方の端子には、クロック信号CLK2に基づく駆動回路5の動作により、電圧Va+Vbおよび0Vが交互に印加される。なお、この場合、電圧Vbおよび電圧Va+Vbが第1電圧に相当し、0Vが第1電圧より低い第2電圧に相当する。
このように、チャージポンプ回路1は、2段昇圧の構成となっており、入力端子Piと出力端子Po1、Po2との間に接続された2つの昇圧段8、9を備えている。すなわち、昇圧段8は、ダイオードD1、コンデンサC1および駆動回路2を備え、その出力ノードとなるノードN1は、逆流阻止用のダイオードD4を順方向に介して出力端子Po1に接続されている。
また、昇圧段9は、ダイオードD2、コンデンサC2および駆動回路5を備え、その出力ノードとなるノードN2は、逆流阻止用のダイオードD3を順方向に介して出力端子Po2に接続されている。この場合、昇圧段8は、最終段以外の昇圧段に相当するとともに、第1昇圧電圧を出力する第1昇圧段に相当する。また、昇圧段9は、第1昇圧段よりも後段の昇圧段に相当するとともに、最終段の昇圧段に相当する。
上記構成では、スイッチSW1がオンとなって駆動回路2にクロック信号CLK1が供給されると、駆動回路2の動作によりコンデンサC1の他方の端子に第1電圧および第2電圧が交互に印加される。このような動作により、昇圧段8による昇圧動作が実行される。これに対し、スイッチSW1がオフとなって駆動回路2に対するクロック信号CLK1の供給が停止されると、駆動回路2による上記動作が行われず、その結果、昇圧段8による昇圧動作が停止される。
また、上記構成では、スイッチSW2がオンとなって駆動回路5にクロック信号CLK2が供給されると、駆動回路5の動作によりコンデンサC2の他方の端子に第1電圧および第2電圧が交互に印加される。このような動作により、昇圧段9による昇圧動作が実行される。これに対し、スイッチSW2がオフとなって駆動回路5に対するクロック信号CLK2の供給が停止されると、駆動回路5による上記動作が行われず、その結果、昇圧段9による昇圧動作が停止される。
このように、上記構成のチャージポンプ回路1では、スイッチSW1、SW2のオンとオフの制御により、2つの昇圧段8、9による昇圧動作を停止することができるようになっている。すなわち、本実施形態では、スイッチSW1、SW2により、昇圧段8、9による昇圧動作を停止することができる動作停止部10が構成されている。この場合、動作停止部10は、駆動回路2、5に対するクロック信号CLK1、CLK2の供給を停止することにより昇圧動作を停止する構成となっている。なお、スイッチSW2は、ドライバ6へのクロック信号CLK2の供給経路を開閉できるように設けられていればよく、例えば、反転バッファ7の入力側に設けられていてもよい。
また、上記構成のチャージポンプ回路1では、昇圧段9は、ツェナーダイオードZD2の端子間に接続されたスイッチSW3のオンとオフの制御により、コンデンサC2の他方の端子に印加する第1電圧の電圧値を切り替えることができる構成となっている。昇圧段9の昇圧能力は、コンデンサC2の他方の端子に印加される第1電圧の電圧値に応じて変化する。つまり、昇圧段9は、スイッチSW3のオンとオフの制御により、その昇圧能力を切り替えることができる構成となっている。
したがって、本実施形態では、スイッチSW3およびツェナーダイオードZD2により、昇圧段9の昇圧能力を切り替える昇圧能力切替部11が構成されている。この場合、スイッチSW3がオンのときには第1電圧が電圧Vbとなり、スイッチSW3がオフのときには第1電圧が電圧Vbよりも高い電圧Va+Vbとなる。昇圧段9の昇圧能力は、第1電圧が高いほど高められる。したがって、上記構成では、スイッチSW3がオンからオフに切り替えられることにより、昇圧段9の昇圧能力が高められることになる。
チャージポンプ回路1は、昇圧電圧VCP1、VCP2の異常を検出する異常検出部4を備えている。なお、ここで言う「異常」とは、昇圧電圧が所望する電圧値よりも上昇する上昇異常や低下する低下異常などのことである。異常検出部4は、このような異常の検出結果に基づいて、切替信号Sa、Sbを生成して出力する。したがって、異常検出部4は、異常の検出結果に基づいてスイッチSW1〜SW3のオンとオフを制御する。
具体的には、異常検出部4は、昇圧電圧VCP1および昇圧電圧VCP2のいずれについても異常を検出していないとき(以下、正常時と呼ぶ)、切替信号Sa、Sbをいずれもハイレベルにする。これにより、スイッチSW1〜SW3が全てONとなり、昇圧段8、9による昇圧動作が実行されるとともに、昇圧段9における第1電圧が電圧Vbとなる。
異常検出部4は、昇圧電圧VCP1の異常を検出したとき(以下、VCP1異常時と呼ぶ)、切替信号Saをロウレベルにするとともに切替信号Sbをハイレベルにする。これにより、スイッチSW1がOFFとなり、昇圧段8による昇圧動作が停止される。この場合、スイッチSW2がONであるため、昇圧段9による昇圧動作は継続して実行される。また、スイッチSW3がOFFとなることから、昇圧段9における第1電圧が電圧Va+Vbとなり、その昇圧能力が高められる。
異常検出部4は、昇圧電圧VCP2の異常を検出したとき(以下、VCP2異常時と呼ぶ)、切替信号Saをハイレベルにするとともに切替信号Sbをロウレベルにする。これにより、スイッチSW2がOFFとなり、昇圧段9による昇圧動作が停止される。この場合、スイッチSW1がONであるため、昇圧段8による昇圧動作は継続して実行される。
次に、上記構成の作用について参照して説明する。
[1]正常時の回路動作
正常時、切替信号Sa、Sbはいずれもハイレベルであるため、スイッチSW1〜SW3がONになる。そのため、駆動回路2、5に対してクロック信号CLK1、CLK2が供給され、昇圧段8、9による昇圧動作が実行される。また、このとき、昇圧段9における第1電圧は電圧Vbとなる。
このような正常時における昇圧電圧VCP1および昇圧電圧VCP2は、それぞれ下記(2)式および(3)式により表される。ただし、ダイオードD1〜D4の順方向電圧をいずれもVFとする。
VCP1=VIN−2・VF+Va …(2)
VCP2=VIN−3・VF+Va+Vb …(3)
なお、本実施形態では、上記(2)式により表される正常時における昇圧電圧VCP1の電圧値が所望する目標電圧値となるように、電圧Vaの値が決定されている。また、本実施形態では、上記(3)式により表される正常時における昇圧電圧VCP2の電圧値が所望する目標電圧値となるように、電圧Vaの値および電圧Vbの値が決定されている。なお、電圧Vaの値および電圧Vbの値は、互いに異なる値でもよいし、同じ値であってもよい。
[2]VCP1異常時の回路動作
VCP1異常時、切替信号Saがロウレベルであるとともに切替信号Sbがハイレベルであるため、スイッチSW1、SW3がOFFになるとともにスイッチSW2がONになる。そのため、駆動回路2に対するクロック信号CLK1の供給が停止され、昇圧段8による昇圧動作が停止される。また、駆動回路5に対してクロック信号CLK2が供給され、昇圧段9による昇圧動作が実行される。さらに、このとき、昇圧段9における第1電圧は電圧Va+Vbとなる。
このようなVCP1異常時における昇圧電圧VCP1および昇圧電圧VCP2は、それぞれ下記(4)式および(5)式により表される。
VCP1=VIN−2・VF …(4)
VCP2=VIN−3・VF+Va+Vb …(5)
上記(5)式から、VCP1異常時における昇圧電圧VCP2が、正常時における昇圧電圧VCP2と同様の電圧となっていることが分かる。
[3]VCP2異常時の回路動作
VCP2異常時、切替信号Saがハイレベルであるとともに切替信号Sbがロウレベルであるため、スイッチSW1、SW3がONになるとともにスイッチSW2がOFFになる。そのため、駆動回路2に対してクロック信号CLK1が供給され、昇圧段8による昇圧動作が実行される。また、駆動回路5に対するクロック信号CLK2の供給が停止され、昇圧段9による昇圧動作が停止される。なお、このとき、昇圧段9における第1電圧はVbとなる。
このようなVCP2異常時における昇圧電圧VCP1および昇圧電圧VCP2は、それぞれ下記(6)式および(7)式により表される。
VCP1=VIN−2・VF+Va …(6)
VCP2=VIN−3・VF+Va …(7)
上記(6)式から、VCP2異常時における昇圧電圧VCP1が、正常時における昇圧電圧VCP1と同様の電圧となっていることが分かる。
[4]異常検出部4の処理内容
異常検出部4は、起動後、スイッチSW1〜SW3を全てONにし、その後、所定の周期毎に図5に示すような内容の処理を実行する。図5のステップS101では、昇圧電圧VCP1が正常であるか否かが判断される。なお、ステップS101は、昇圧電圧VCP1が異常であるか否かを判断する第1異常検出処理に相当する。
昇圧電圧VCP1が正常ではない場合、つまり昇圧電圧VCP1に異常が生じている場合、ステップS101で「NO」となり、ステップS102に進む。ステップS102では、異常検出部4は、スイッチSW1、SW3をOFFにする。これにより、昇圧段8による昇圧動作が停止されるとともに、昇圧段9の昇圧能力が高められる。ステップS102の実行後は、ステップS103に進む。
一方、昇圧電圧VCP1が正常である場合、ステップS101で「YES」となり、ステップS103に進む。ステップS103では、昇圧電圧VCP2が正常であるか否かが判断される。なお、ステップS103は、昇圧電圧VCP2が異常であるか否かを判断する第2異常検出処理に相当する。
昇圧電圧VCP2が正常ではない場合、つまり昇圧電圧VCP2に異常が生じている場合、ステップS103で「NO」となり、ステップS104に進む。ステップS104では、異常検出部4は、スイッチSW2をOFFにする。これにより、昇圧段9による昇圧動作が停止される。ステップS104の実行後は、処理が終了となる。一方、昇圧電圧VCP2が正常である場合、ステップS103で「YES」となり、処理が終了となる。
このように、本実施形態の異常検出部4は、昇圧電圧VCP1が異常であるか否かを判断する第1異常検出処理(ステップS101)を実行し、その後、昇圧電圧VCP2が異常であるか否かを判断する第2異常検出処理(ステップS103)を実行するようになっている。
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
本実施形態のチャージポンプ回路1は、入力端子Piと出力端子Po1、Po2との間に接続された2つの昇圧段8、9を備えた2段昇圧の構成である。そして、チャージポンプ回路1では、昇圧段8の出力ノードN1にダイオードD4を介して接続される出力端子Po1から昇圧電圧VCP1が出力されるとともに、昇圧段9の出力ノードN2にダイオードD3を介して接続される出力端子Po2から昇圧電圧VCP2が出力される。このような構成のチャージポンプ回路1によれば、2種類の昇圧電圧を出力することが可能であり、複数のチャージポンプ回路を設ける従来の構成に比べ、回路規模を大幅に削減することが可能となる。
また、上記構成のチャージポンプ回路1は、昇圧電圧VCP1を出力する昇圧段8よりも後段の昇圧段である昇圧段9の昇圧能力を切り替えることができる昇圧能力切替部11と、昇圧電圧VCP1および昇圧電圧VCP2の異常を検出する異常検出部4と、昇圧段8、9による昇圧動作を停止することができる動作停止部10とを備えている。
このような構成によれば、昇圧電圧VCP2に異常が生じたとしても、その異常は昇圧電圧VCP1の出力動作に影響を与えることがない。すなわち、異常検出部4により昇圧電圧VCP2の異常が検出されると、動作停止部10が昇圧段9による昇圧動作を停止する。このようにすれば、異常が生じている昇圧電圧VCP2の出力動作を停止しつつ、昇圧電圧VCP1の出力動作を継続して実施することができる。
また、上記構成によれば、昇圧電圧VCP1に異常が生じたとしても、その異常は昇圧電圧VCP2の出力動作に影響を与えることがない。すなわち、異常検出部4により昇圧電圧VCP1の異常が検出されると、動作停止部10が昇圧段8による昇圧動作を停止する。これにより、異常が生じている昇圧電圧VCP1の出力動作が停止される。ここで、昇圧電圧VCP2は、昇圧段8、9の昇圧動作によって生成されている。そのため、昇圧段8による昇圧動作が停止されると、昇圧電圧VCP2は、その分だけ低下してしまい、所望する電圧が得られなくなってしまう。
そこで、上記構成では、異常検出部4により昇圧電圧VCP1の異常が検出されると、昇圧能力切替部11が昇圧段8よりも後段の昇圧段9の昇圧能力を高めるように切り替える。このようにすれば、昇圧段8による昇圧動作が停止されたことによる昇圧電圧VCP2の低下分が、上記昇圧能力を高めたことにより補われ、その結果、所望する昇圧電圧VCP2が得られる。このように、上記構成では、異常が生じている昇圧電圧VCP1の出力動作を停止しつつ、昇圧電圧VCP2の出力動作を継続して実施することができる。
したがって、本実施形態のチャージポンプ回路1によれば、回路規模の増加を抑制しつつ複数種類の昇圧電圧を出力するとともに、複数の昇圧電圧のいずれか1つの異常が他の昇圧電圧の出力動作に影響を与えることを抑制することができるという優れた効果が得られる。
本実施形態では、VCP1異常時における昇圧電圧VCP2が、正常時における昇圧電圧VCP2と同様の電圧となるように、昇圧段8と、昇圧能力切替部11を含む昇圧段9とが構成されている。言い換えると、本実施形態では、昇圧能力切替部11は、異常検出部4により昇圧電圧VCP1の異常が検出された際、昇圧電圧VCP2が所望する目標電圧値となるように昇圧能力の切り替えを行うようになっている。したがって、本実施形態によれば、VCP1異常時においても、正常時と同様、所望する目標電圧値の昇圧電圧VCP2を出力することができる。
昇圧段9は、入力端子Piと出力端子Po2との間に直列接続されたダイオードD2、D3同士が接続された接続点であるノードN2に対して一方の端子が接続されたコンデンサC2と、クロック信号CLK2に基づいてコンデンサC2の他方の端子に第1電圧および第2電圧を交互に印加する駆動回路5と、を備えた構成である。そして、昇圧能力切替部11は、昇圧段9における第1電圧の電圧値を切り替えることにより昇圧能力の切り替えを行うようになっている。
具体的には、昇圧能力切替部11は、駆動回路5の出力端子とグランド線Lgとの間にツェナーダイオードZD3とともに直列接続されたツェナーダイオードZD2と、ツェナーダイオードZD2の端子間に接続されたスイッチSW3とから構成されている。このような構成によれば、一般的な2段昇圧の構成のチャージポンプ回路に対し、ツェナーダイオードZD2およびスイッチSW3を追加することにより、前述した効果を得ることが可能となる。したがって、本実施形態によれば、回路素子の大幅な増加を招くことなく、前述した効果を得ることができる。
動作停止部10は、駆動回路2、5に対するクロック信号CLK1、CLK2の供給を停止することにより昇圧動作を停止する構成となっている。具体的には、動作停止部10は、駆動回路2のドライバ3へのクロック信号CLK1の供給経路を開閉するスイッチSW1と、駆動回路5のドライバ6へのクロック信号CLK2の供給経路を開閉するスイッチSW2とから構成されている。このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、一般に、チャージポンプ回路1などで用いられるクロック信号CLK1、CLK2の振幅は例えば5Vなどであり、その信号レベルは比較的小さい。そのため、スイッチSW1、SW2としては、このような小信号のクロック信号CLK1、CLK2を扱える構成であればよい。したがって、本実施形態によれば、スイッチSW1、SW2として、低耐圧であり比較的簡単な構成のスイッチを用いることが可能となり、その分だけ、チャージポンプ回路1の回路規模を小さく抑えつつ、その製造コストを低減できる。
上述したように、動作停止部10は、ドライバ3、6へのクロック信号CLK1、CLK2の供給を断つことにより、昇圧動作を停止するようになっている。ドライバ3、6へのクロック信号CLK1、CLK2の供給が断たれることにより、その入力ノードNiが不定になると、ドライバ3、6の出力段を構成する2つのトランジスタが同時オンする可能性があり、そうすると短絡電流が流れるおそれがある。
しかし、本実施形態のドライバ3、6の具体的な構成例であるドライバ3A、3Bおよび3Cは、入力ノードNiがオープンになった際、その出力段のトランジスタQ11、Q12の一方または双方をオフに固定する構成となっている。したがって、本実施形態では、昇圧動作が停止される際、ドライバ3、6において電源線Ldおよびグランド線Lg間を流れる短絡電流が発生することがない。
また、図4に示したドライバ3Cによれば、入力ノードNiがオープンになった際、出力段のトランジスタQ11、Q12の双方をオフに固定することにより、その出力をハイインピーダンス状態とする構成になっているため、次のような効果も得られる。すなわち、特にコンデンサC1、C2が外付けの構成である場合、VCP1異常時およびVCP2異常時に、コンデンサC1、C2の他方の端子の電位が高い電位に固定される天絡や低い電位に固定される地絡などが発生する可能性がある。しかし、ドライバ3Cは、異常時、出力がハイインピーダンス状態となるため、その出力ノードNoに接続されるコンデンサC1、C2の他方の端子が高い電位や低い電位に固定されていたとしても、その出力段のトランジスタQ11、Q12に過大な電流が流れ、故障するおそれがない。
上記構成のチャージポンプ回路1では、駆動回路2に異常が生じた場合、昇圧段8による昇圧動作が正常に行われなくなることから昇圧電圧VCP1および昇圧電圧VCP2の双方が低下する。このようなケースでは、昇圧電圧VCP1の出力動作については停止する必要があるが、駆動回路5が正常であるならば、昇圧電圧VCP2の出力動作は継続されることが望ましい。
しかしながら、仮に、異常検出部4が、昇圧電圧VCP1が異常であるか否かを判断する第1異常検出処理よりも、昇圧電圧VCP2が異常であるか否かを判断する第2異常検出処理を先に実行したり、第1異常検出処理と第2異常検出処理を同時に実行したりすると、上述したケースにおいて、昇圧電圧VCP1および昇圧電圧VCP2の出力動作の両方が停止されてしまう。そこで、本実施形態の異常検出部4は、第1異常検出処理を実行し、その後、第2異常検出処理を実行するようになっている。
このようにすれば、第1異常検出処理により昇圧電圧VCP1が異常であると判定されると、昇圧段8による昇圧動作が停止されるとともに、昇圧能力が高められた状態で昇圧段9による昇圧動作が継続される。そのため、その後に実行される第2異常検出処理において、昇圧電圧VCP2が正常であると判定され、昇圧電圧VCP2の出力動作が継続される。このように、本実施形態によれば、駆動回路2に異常が生じた場合であり且つ駆動回路5が正常である場合、昇圧電圧VCP1の出力動作を停止する一方、昇圧電圧VCP2の出力動作については確実に継続して実行することができる。
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について図6を参照して説明する。
図6に示すように、本実施形態のチャージポンプ回路21は、第1実施形態のチャージポンプ回路1に対し、スイッチSW1、SW2に代えてスイッチSW21、SW22を備えている点などが異なる。
スイッチSW21は、ドライバ3の出力ノードNoとノードN3との間に接続されている。スイッチSW21のオンとオフは、スイッチSW1と同様、切替信号Saにより制御される。また、スイッチSW22は、ドライバ6の出力ノードNoとノードN4との間に接続されている。スイッチSW22のオンとオフは、スイッチSW2と同様、切替信号Sbにより制御される。
チャージポンプ回路21は、スイッチSW21、SW22のオンとオフの制御により、2つの昇圧段8、9の昇圧動作を停止することができるようになっている。すなわち、本実施形態では、スイッチSW21、SW22により、昇圧段8、9による昇圧動作を停止することができる動作停止部22が構成されている。この場合、動作停止部22は、駆動回路2、5によるコンデンサC1、C2への電圧の印加を停止することにより昇圧動作を停止する構成となっている。このような本実施形態の構成によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について図7を参照して説明する。
図7に示すように、本実施形態のチャージポンプ回路31は、第1実施形態のチャージポンプ回路1に対し、スイッチSW1、SW2に代えてスイッチSW31、SW32を備えている点などが異なる。
スイッチSW31は、コンデンサC1の他方の端子とノードN3との間に接続されている。スイッチSW31のオンとオフは、スイッチSW1と同様、切替信号Saにより制御される。また、スイッチSW32は、コンデンサC2の他方の端子とノードN4との間に接続されている。スイッチSW32のオンとオフは、スイッチSW2と同様、切替信号Sbにより制御される。
チャージポンプ回路31は、スイッチSW31、SW32のオンとオフの制御により、2つの昇圧段8、9の昇圧動作を停止することができるようになっている。すなわち、本実施形態では、スイッチSW31、SW32により、昇圧段8、9による昇圧動作を停止することができる動作停止部32が構成されている。この場合、動作停止部32は、駆動回路2、5によるコンデンサC1、C2への電圧の印加を停止することにより昇圧動作を停止する構成となっている。このような本実施形態の構成によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について図8を参照して説明する。
図8に示すように、本実施形態のチャージポンプ回路41は、第1実施形態のチャージポンプ回路1に対し、スイッチSW2の接続位置が変更されている点、駆動回路2、5に代えて駆動回路42、43を備えている点などが異なる。
この場合、スイッチSW2は、クロック端子Pcと反転バッファ7の入力端子との間に接続されている。駆動回路42は、ドライバ44を備えている。ドライバ44には、電源線Ld1およびグランド線Lgを介して電源電圧VDD1が供給されている。電源電圧VDD1は、第1実施形態における電圧Vaと等しい電圧に設定されている。なお、以下の説明では、電源電圧VDD1のことを電圧Vaとも呼ぶ。
ドライバ44は、その入力ノードNiに与えられるクロック信号CLK1に応じて、その出力ノードNoの電圧を電圧Vaと0Vとに交互に切り替える構成となっている。この場合、出力ノードNoは、駆動回路42の出力端子となる。そのため、コンデンサC1の他方の端子には、クロック信号CLK1に基づく駆動回路42の動作により、電圧Vaおよび0Vが交互に印加される。
駆動回路43は、ドライバ45およびスイッチSW41を備えている。スイッチSW41は、ドライバ45に対し、電源線Ld2およびグランド線Lgを介して電源電圧VDD2を供給する第1切替状態と、電源線Ld3およびグランド線Lgを介して電源電圧VDD3を供給する第2切替状態とを切り替える構成となっている。
電源電圧VDD2は、第1実施形態における電圧Vbと等しい電圧に設定されている。また、電源電圧VDD3は、第1実施形態における電圧Va+Vbと等しい電圧に設定されている。なお、以下の説明では、電源電圧VDD2のことを電圧Vbとも呼ぶとともに、電源電圧VDD3のことを電圧Va+Vbとも呼ぶ。
スイッチSW41の切替状態は、異常検出部4から出力される切替信号Saにより制御される。具体的には、スイッチSW41は、ハイレベルの切替信号Saが与えられると第1切替状態になるとともに、ロウレベルの切替信号Saが与えられると第2切替状態になるように構成されている。
上記構成のチャージポンプ回路41では、昇圧段9は、スイッチSW41の切替状態の制御により、コンデンサC2の他方の端子に印加する第1電圧の電圧値、ひいては昇圧能力を切り替えることができる構成となっている。したがって、本実施形態では、スイッチSW41により、昇圧段9の昇圧能力を切り替える昇圧能力切替部46が構成されている。
この場合、スイッチSW41が第1切替状態のときには第1電圧が電圧Vbとなり、スイッチSW41が第2切替状態のときには第1電圧が電圧Vbよりも高い電圧Va+Vbとなる。したがって、上記構成では、スイッチSW41が第1切替状態から第2切替状態に切り替えられることにより、昇圧段9の昇圧能力が高められることになる。
以上説明した本実施形態の構成によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、上記構成では、コンデンサC1、C2の他方の端子に印加される第1電圧は、電源電圧VDD1、VDD2、VDD3により定められる。電源電圧VDD1、VDD2、VDD3は、電源などにより生成されることになるため、それらの電圧値は任意の値に設定することができる。したがって、上記構成によれば、第1電圧の設定の自由度が高められるという効果が得られる。また、例えばバンドギャップ回路などから構成された温度特性が良好な電源により電源電圧VDD1、VDD2、VDD3を生成すれば、第1電圧、ひいては昇圧電圧VCP1および昇圧電圧VCP2の温度特性を良好にすることができるという効果が得られる。
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について図9および図10を参照して説明する。
図9に示すように、本実施形態のチャージポンプ回路51は、第1実施形態のチャージポンプ回路1に対し、入力電圧VINを検出する入力電圧検出部52が追加されている点などが異なる。この場合、スイッチSW1〜SW3のオンとオフは、異常検出部4から出力される切替信号Sa、Sbにより制御されるだけでなく、入力電圧検出部52から出力される切替信号Sc、Sd、Seによっても制御される。
具体的には、スイッチSW1は、ハイレベルの切替信号Scが与えられるとオンするとともに、ロウレベルの切替信号Scが与えられるとオフする。スイッチSW2は、ハイレベルの切替信号Sdが与えられるとオンするとともに、ロウレベルの切替信号Sdが与えられるとオフする。スイッチSW3は、ハイレベルの切替信号Seが与えられるとオンするとともに、ロウレベルの切替信号Seが与えられるとオフする。
入力電圧検出部52は、入力電圧VINの検出値に基づいて、切替信号Sc、Sd、Seを生成して出力する。したがって、入力電圧検出部52は、入力電圧VINの検出値に基づいてスイッチSW1〜SW3のオンとオフを制御する。なお、スイッチSW1〜SW3は、異常検出部4による制御と、入力電圧検出部52による制御とが相反する内容である場合、いずれか一方の制御を優先するように構成されている。本実施形態では、スイッチSW1〜SW3は、異常検出部4による制御に対し、入力電圧検出部52による制御を優先するように構成されている。
入力電圧検出部52は、入力電圧VINの検出値が入力電圧VINの正常範囲外の値になると、切替信号Sc、SdをいずれもロウレベルにしてスイッチSW1、SW2をOFFにする。これにより、入力電圧VINが正常範囲外の電圧値になると、全ての昇圧段8、9による昇圧動作が停止される。なお、本実施形態では、入力電圧VINの正常範囲の下限値Vminは6Vとなっており、その上限値Vmaxは20Vとなっている。つまり、本実施形態では、入力電圧VINの正常範囲は、6V〜20Vとなっている。
また、入力電圧検出部52は、入力電圧VINの検出値が上記正常範囲内において設定された所定の閾値Vth以上の値になると、切替信号Sc、SeをロウレベルにしてスイッチSW1、SW3をOFFにするとともに、切替信号SdをハイレベルにしてスイッチSW2をONにする。これにより、入力電圧VINが閾値Vth以上の値になると、昇圧段8による昇圧動作が停止されるとともに、昇圧能力が高められた状態で昇圧段9による昇圧動作が実行される。
上記した閾値Vthは、昇圧電圧VCP1が最大電圧となるような入力電圧VINの値に設定されるものであり、本実施形態では、例えば14Vに設定されている。昇圧電圧VCP1の最大電圧は、昇圧電圧VCP1の供給先となる回路素子の耐圧などにより定められるものであり、例えば20Vとなっている。また、本実施形態では、ツェナーダイオードZD1〜ZD3のツェナー電圧は、いずれも同一の電圧VZ(例えば8V)となっており、ダイオードD1〜D4の順方向電圧は、いずれも同一の電圧VF(例えば1V)となっている。
入力電圧検出部52は、所定の周期毎に図10に示すような内容の処理を実行する。
図10のステップS201では、入力電圧VINの検出値が下限値Vmin以上であるか否かが判断される。入力電圧VINの検出値が下限値Vmin未満である場合、ステップS201で「NO」となり、ステップS202に進む。ステップS202では、入力電圧検出部52は、スイッチSW1、SW2をOFFにする。これにより、昇圧段8、9による昇圧動作が停止される。ステップS202の実行後は、処理が終了となる。
一方、入力電圧VINの検出値が下限値Vmin以上である場合、ステップS201で「YES」となり、ステップS203に進む。ステップS203では、入力電圧VINの検出値が閾値Vth未満であるか否かが判断される。入力電圧VINの検出値が閾値Vth未満である場合、ステップS203で「YES」となり、ステップS204に進む。
ステップS204では、入力電圧検出部52は、スイッチSW1〜SW3をONにする。これにより、昇圧段8、9による昇圧動作が実行されるとともに、昇圧段9における第1電圧はVZに設定される。ステップS204の実行後は、処理が終了となる。この場合の昇圧電圧VCP1および昇圧電圧VCP2は、それぞれ下記(8)式および(9)式により表される。
VCP1=VIN+VZ−2・VF=12V〜20V …(8)
VCP2=VIN+2・VZ−3・VF …(9)
これに対し、入力電圧VINの検出値が閾値Vth以上である場合、ステップS203で「NO」となり、ステップS205に進む。ステップS205では、入力電圧VINの検出値が上限値Vmax以下であるか否かが判断される。入力電圧VINの検出値が上限値Vmaxより高い場合、ステップS205で「NO」となり、ステップS202に進む。一方、入力電圧VINの検出値が上限値Vmax以下である場合、ステップS205で「YES」となり、ステップS206に進む。
ステップS206では、入力電圧検出部52は、スイッチSW1、SW3をOFFにするとともに、スイッチSW2をONにする。これにより、昇圧段8による昇圧動作が停止されるとともに、昇圧段9による昇圧動作が実行される。また、このとき、昇圧段9における第1電圧は2・VZに設定される。ステップS206の実行後は、処理が終了となる。この場合の昇圧電圧VCP1および昇圧電圧VCP2は、それぞれ下記(10)式および(11)式により表される。
VCP1=VIN−2・VF=12V〜18V …(10)
VCP2=VIN+2・VZ−3・VF …(11)
以上説明したように、本実施形態のチャージポンプ回路51は、上述したように入力電圧VINの検出値に基づいてスイッチSW1〜SW3のオンとオフを制御する入力電圧検出部52を備えている。この場合、入力電圧検出部52は、入力電圧VINの検出値が入力電圧VINの正常範囲外の値になると、全ての昇圧段8、9による昇圧動作を停止するようにスイッチSW1〜SW3を制御する。また、入力電圧検出部52は、入力電圧VINの検出値が閾値Vth以上の値になると、昇圧段8による昇圧動作を停止するとともに、昇圧能力を高めた状態で昇圧段9による昇圧動作を実行するように、スイッチSW1〜SW3を制御する。
このようにすれば、入力電圧VINが上昇して昇圧電圧VCP1が最大電圧に達すると、昇圧段8による昇圧動作が停止される。これにより、昇圧電圧VCP1は、入力電圧VINの上昇にかかわらず、最大電圧(20V)以下の電圧に抑えられる。また、この場合、昇圧段9の昇圧動作は、その昇圧能力が高められた状態で継続される。そのため、昇圧電圧VCP2としては、常に所望する電圧を得ることができる。したがって、本実施形態によれば、昇圧電圧VCP1を供給先の素子の耐圧制約などにより設定される最大電圧以下に抑えつつ、昇圧電圧VCP2の電圧値を常に所望する電圧値とすることができる。
(第6実施形態)
以下、第6実施形態について図11を参照して説明する。
図11に示すように、本実施形態のチャージポンプ回路61は、第1実施形態のチャージポンプ回路1に対し、昇圧段数が変更されている点などが異なる。この場合、入力端子Piと出力端子Po2との間には、入力端子Pi側をアノードとしてダイオードD61、D62、D63、D64が直列接続されている。また、入力端子Piと出力端子Po1との間には、入力端子Pi側をアノードとしてダイオードD61、D65が直列接続されている。
ダイオードD61、D62同士が接続された接続点であるノードN61には、コンデンサC61の一方の端子が接続されている。ダイオードD62、D63同士が接続された接続点であるノードN62には、コンデンサC62の一方の端子が接続されている。ダイオードD63、D64同士が接続された接続点であるノードN63には、コンデンサC63の一方の端子が接続されている。なお、ダイオードD61〜D64は、入力端子Piと出力端子Po2との間に直列接続された複数のスイッチング素子に相当する。
コンデンサC61の他方の端子は、駆動回路62の出力端子に接続されている。駆動回路62は、ドライバ63およびツェナーダイオードZD61を備えている。ドライバ63は、ドライバ3などと同様の構成であり、その入力ノードには、スイッチSW1の開閉に応じて、クロック信号CLK1が供給される。
ツェナーダイオードZD61は、ツェナーダイオードZD1などと同様、駆動回路62の出力端子とグランド線Lgとの間に、グランド線Lg側をアノードとして接続されている。そのため、駆動回路62の出力端子の電圧、ひいてはコンデンサC61の他方の端子に与えられる電圧は、ツェナーダイオードZD61のツェナー電圧VZに制限される。
コンデンサC62の他方の端子は、駆動回路64の出力端子に接続されている。駆動回路64は、ドライバ65およびツェナーダイオードZD62を備えている。ドライバ65は、ドライバ3などと同様の構成であり、その入力ノードには、スイッチSW2の開閉に応じて、クロック信号CLK2が供給される。
ツェナーダイオードZD62は、ツェナーダイオードZD1などと同様、駆動回路64の出力端子とグランド線Lgとの間に、グランド線Lg側をアノードとして接続されている。そのため、駆動回路64の出力端子の電圧、ひいてはコンデンサC62の他方の端子に与えられる電圧は、ツェナーダイオードZD62のツェナー電圧VZに制限される。
コンデンサC63の他方の端子は、駆動回路66の出力端子に接続されている。駆動回路66は、ドライバ67およびツェナーダイオードZD63、ZD64およびスイッチSW3を備えている。ドライバ67は、ドライバ6などと同様の構成であり、その入力ノードには、スイッチSW2の開閉に応じて、クロック信号CLK1が供給される。
ツェナーダイオードZD63、ZD64は、ツェナーダイオードZD2、ZD3と同様、駆動回路66の出力端子とグランド線Lgとの間に、グランド線Lg側をアノードとして直列接続されている。また、ツェナーダイオードZD63の端子間には、スイッチSW3が接続されている。
このような構成により、駆動回路66の出力端子の電圧は、スイッチSW3がオンの期間にはツェナーダイオードZD64のツェナー電圧VZに制限され、スイッチSW3がオフの期間にはツェナーダイオードZD64のツェナー電圧VZにツェナーダイオードZD63のツェナー電圧VZを加えた電圧(=2・VZ)に制限される。
このように、チャージポンプ回路61は、3段昇圧の構成となっており、入力端子Piと出力端子Po1、Po2との間に接続された3つの昇圧段68、69、70を備えている。すなわち、昇圧段68は、ダイオードD61、コンデンサC61および駆動回路62を備え、その出力ノードとなるノードN61は、逆流阻止用のダイオードD65を順方向に介して出力端子Po1に接続されている。
また、昇圧段69は、ダイオードD62、コンデンサC62および駆動回路64を備えている。さらに、昇圧段70は、ダイオードD63、コンデンサC63および駆動回路66を備え、その出力ノードとなるノードN63は、逆流阻止用のダイオードD64を順方向に介して出力端子Po2に接続されている。
この場合、昇圧段68は、最終段以外の昇圧段に相当するとともに、第1昇圧電圧を出力する第1昇圧段に相当する。また、昇圧段70は、第1昇圧段よりも後段の昇圧段に相当するとともに、最終段の昇圧段に相当する。
上記構成では、スイッチSW1がオンとなって駆動回路62にクロック信号CLK1が供給されると、駆動回路62の動作によりコンデンサC61の他方の端子に第1電圧および第2電圧が交互に印加される。このような動作により、昇圧段68による昇圧動作が実行される。これに対し、スイッチSW1がオフとなって駆動回路62に対するクロック信号CLK1の供給が停止されると、駆動回路62による上記動作が行われず、その結果、昇圧段68による昇圧動作が停止される。
また、上記構成では、スイッチSW2がオンとなって駆動回路64にクロック信号CLK2が供給されるとともに駆動回路66にクロック信号CLK1が供給されると、駆動回路64の動作によりコンデンサC62の他方の端子に第1電圧および第2電圧が交互に印加されるとともに、駆動回路66の動作によりコンデンサC63の他方の端子に第1電圧および第2電圧が交互に印加される。このような動作により、昇圧段69、70による昇圧動作が実行される。
これに対し、スイッチSW2がオフとなって駆動回路64に対するクロック信号CLK2の供給が停止されるとともに駆動回路66に対するクロック信号CLK1の供給が停止されると、駆動回路64、66による上記動作が行われず、その結果、昇圧段69、70による昇圧動作が停止される。
また、上記構成のチャージポンプ回路61では、昇圧段70は、ツェナーダイオードZD63の端子間に接続されたスイッチSW3のオンとオフの制御により、コンデンサC63の他方の端子に印加する第1電圧の電圧値を切り替えることができる構成となっている。したがって、本実施形態では、スイッチSW3およびツェナーダイオードZD63により、昇圧段70の昇圧能力を切り替える昇圧能力切替部71が構成されている。この場合、スイッチSW3がオンのときには第1電圧が電圧VZとなり、スイッチSW3がオフのときには第1電圧が電圧VZよりも高い電圧2・VZとなる。
次に、上記構成の作用について参照して説明する。
[1]正常時の回路動作
正常時、切替信号Sa、Sbはいずれもハイレベルであるため、スイッチSW1〜SW3がONになる。そのため、駆動回路62、64、66に対してクロック信号CLK1、CLK2が供給され、昇圧段68、69、70による昇圧動作が実行される。また、このとき、昇圧段70における第1電圧は電圧VZとなる。
このような正常時における昇圧電圧VCP1および昇圧電圧VCP2は、それぞれ下記(12)式および(13)式により表される。ただし、ダイオードD61〜D65の順方向電圧をいずれもVFとする。
VCP1=VIN−2・VF+VZ …(12)
VCP2=VIN−4・VF+3・VZ …(13)
なお、本実施形態では、上記(12)式および(13)式により表される正常時における昇圧電圧VCP1および第2昇圧電圧VCP1の各電圧値が所望する目標電圧値となるように、電圧VZの値が決定されている。
[2]VCP1異常時の回路動作
VCP1異常時、切替信号Saがロウレベルであるとともに切替信号Sbがハイレベルであるため、スイッチSW1、SW3がOFFになるとともにスイッチSW2がONになる。そのため、駆動回路62に対するクロック信号CLK1の供給が停止され、昇圧段68による昇圧動作が停止される。また、駆動回路64、66に対してクロック信号CLK2、CLK1が供給され、昇圧段69、70による昇圧動作が実行される。さらに、このとき、昇圧段70における第1電圧は電圧2・VZとなる。
このようなVCP1異常時における昇圧電圧VCP1および昇圧電圧VCP2は、それぞれ下記(14)式および(15)式により表される。
VCP1=VIN−2・VF …(14)
VCP2=VIN−4・VF+3・VZ …(15)
上記(15)式から、VCP1異常時における昇圧電圧VCP2が、正常時における昇圧電圧VCP2と同様の電圧となっていることが分かる。
[3]VCP2異常時の回路動作
VCP2異常時、切替信号Saがハイレベルであるとともに切替信号Sbがロウレベルであるため、スイッチSW1、SW3がONになるとともにスイッチSW2がOFFになる。そのため、駆動回路62に対してクロック信号CLK1が供給され、昇圧段68による昇圧動作が実行される。また、駆動回路64、66に対するクロック信号CLK2、CLK1の供給が停止され、昇圧段69、70による昇圧動作が停止される。なお、このとき、昇圧段70における第1電圧はVZとなる。
このようなVCP2異常時における昇圧電圧VCP1および昇圧電圧VCP2は、それぞれ下記(16)式および(17)式により表される。
VCP1=VIN−2・VF+VZ …(16)
VCP2=VIN−4・VF+VZ …(17)
上記(16)式から、VCP2異常時における昇圧電圧VCP1が、正常時における昇圧電圧VCP1と同様の電圧となっていることが分かる。
以上説明した本実施形態のチャージポンプ回路61のように、3段昇圧且つ2つの昇圧電圧VCP1、VCP2を出力する構成であっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。つまり、本実施形態のチャージポンプ回路61によっても、回路規模の増加を抑制しつつ複数種類の昇圧電圧を出力するとともに、複数の昇圧電圧のいずれか1つの異常が他の昇圧電圧の出力動作に影響を与えることを抑制することができるという優れた効果が得られる。
(第7実施形態)
以下、第7実施形態について図12および図13を参照して説明する。
図12に示すように、本実施形態のチャージポンプ回路81は、第6実施形態のチャージポンプ回路61に対し、3種類の昇圧電圧を出力する構成となっている点が異なる。そのため、チャージポンプ回路81は、3つの出力端子Po1、Po2、Po3を備えている。
出力端子Po1、Po2、Po3からは、それぞれ入力電圧VINを昇圧した昇圧電圧VCP1、VCP2、VCP3が出力される。出力端子Po1、Po2、Po3とグランド線Lgとの間には、それぞれ平滑用のコンデンサCo1、Co2、Co3が接続されている。なお、昇圧電圧VCP1、VCP2は第1昇圧電圧に相当し、昇圧電圧VCP3は第2昇圧電圧に相当する。
この場合、入力端子Piと出力端子Po1との間には、入力端子Pi側をアノードとしてダイオードD61、D65が直列接続されている。また、入力端子Piと出力端子Po2との間には、入力端子Pi側をアノードとしてダイオードD61、D62、D81が直列接続されている。さらに、入力端子Piと出力端子Po3との間には、入力端子Pi側をアノードとしてダイオードD61、D62、D63、D64が直列接続されている。
コンデンサC61の他方の端子は、駆動回路82の出力端子に接続されている。駆動回路82は、ドライバ83およびツェナーダイオードZD81を備えている。ドライバ83は、ドライバ3などと同様の構成であり、その入力ノードには、スイッチSW81の開閉に応じて、クロック信号CLK1が供給される。スイッチSW81は、スイッチSW1などと同様の構成であり、そのオンとオフは後述する異常検出部84から出力される切替信号Sfにより制御される。
ツェナーダイオードZD81は、ツェナーダイオードZD1などと同様、駆動回路82の出力端子とグランド線Lgとの間に、グランド線Lg側をアノードとして接続されている。そのため、駆動回路82の出力端子の電圧、ひいてはコンデンサC61の他方の端子に与えられる電圧は、ツェナーダイオードZD81のツェナー電圧VZに制限される。
コンデンサC62の他方の端子は、駆動回路85の出力端子に接続されている。駆動回路85は、ドライバ86およびツェナーダイオードZD82、ZD83およびスイッチSW82を備えている。ドライバ86は、ドライバ6などと同様の構成であり、その入力ノードには、スイッチSW83の開閉に応じて、クロック信号CLK2が供給される。スイッチSW83は、スイッチSW1などと同様の構成であり、そのオンとオフは異常検出部84から出力される切替信号Sgにより制御される。
ツェナーダイオードZD82、ZD83は、ツェナーダイオードZD2、ZD3と同様、駆動回路85の出力端子とグランド線Lgとの間に、グランド線Lg側をアノードとして直列接続されている。また、ツェナーダイオードZD82の端子間には、スイッチSW82が接続されている。スイッチSW82は、スイッチSW1などと同様の構成であり、そのオンとオフは切替信号Sfにより制御される。
このような構成により、駆動回路85の出力端子の電圧は、スイッチSW82がオンの期間にはツェナーダイオードZD83のツェナー電圧VZに制限され、スイッチSW82がオフの期間にはツェナーダイオードZD83のツェナー電圧VZにツェナーダイオードZD82のツェナー電圧VZを加えた電圧(=2・VZ)に制限される。
コンデンサC63の他方の端子は、駆動回路87の出力端子に接続されている。駆動回路87は、ドライバ88およびツェナーダイオードZD84、ZD85、ZD86およびスイッチSW84、SW85を備えている。ドライバ88は、ドライバ6などと同様の構成であり、その入力ノードには、スイッチSW86の開閉に応じて、クロック信号CLK1が供給される。スイッチSW86は、スイッチSW1などと同様の構成であり、そのオンとオフは異常検出部84から出力される切替信号Shにより制御される。
ツェナーダイオードZD84、ZD85、ZD86は、ツェナーダイオードZD2、ZD3と同様、駆動回路87の出力端子とグランド線Lgとの間に、グランド線Lg側をアノードとして直列接続されている。また、ツェナーダイオードZD84の端子間にはスイッチSW84が接続され、ツェナーダイオードZD85の端子間にはスイッチSW85が接続されている。
スイッチSW84は、スイッチSW1などと同様の構成であり、そのオンとオフは、AND回路89から出力される切替信号Siにより制御される。なお、AND回路89は、切替信号Sf、Sgを入力し、その論理積を表す切替信号Siを出力するようになっている。また、スイッチSW85は、スイッチSW1などと同様の構成であり、そのオンとオフは、切替信号Sgにより制御される。
このような構成により、駆動回路87の出力端子の電圧は、スイッチSW84、SW85の両方がオンの期間にはツェナーダイオードZD86のツェナー電圧VZに制限され、スイッチSW84、SW85の一方がオフの期間にはツェナーダイオードZD86のツェナー電圧VZにツェナーダイオードZD84またはZD85のツェナー電圧VZを加えた電圧(=2・VZ)に制限される。また、駆動回路87の出力端子の電圧は、スイッチSW84、SW85の両方がオフの期間にはツェナーダイオードZD86のツェナー電圧VZにツェナーダイオードZD84およびZD85の各ツェナー電圧VZを加えた電圧(=3・VZ)に制限される。
このように、チャージポンプ回路81は、3段昇圧の構成となっており、入力端子Piと出力端子Po1、Po2、Po3との間に接続された3つの昇圧段90、91、92を備えている。すなわち、昇圧段90は、ダイオードD61、コンデンサC61および駆動回路82を備え、その出力ノードとなるノードN61は、逆流阻止用のダイオードD65を順方向に介して出力端子Po1に接続されている。
昇圧段91は、ダイオードD62、コンデンサC62および駆動回路85を備え、その出力ノードとなるノードN62は、逆流阻止用のダイオードD81を順方向に介して出力端子Po2に接続されている。昇圧段92は、ダイオードD63、コンデンサC63および駆動回路87を備え、その出力ノードとなるノードN63は、逆流阻止用のダイオードD64を順方向に介して出力端子Po3に接続されている。
この場合、昇圧段90、91は、最終段以外の昇圧段に相当するとともに第1昇圧電圧を出力する第1昇圧段に相当する。また、昇圧段92は、第1昇圧段よりも後段の昇圧段に相当するとともに、最終段の昇圧段に相当する。
上記構成では、スイッチSW81がオンとなって駆動回路82にクロック信号CLK1が供給されると、駆動回路82の動作によりコンデンサC61の他方の端子に第1電圧および第2電圧が交互に印加される。このような動作により、昇圧段90による昇圧動作が実行される。これに対し、スイッチSW81がオフとなって駆動回路82に対するクロック信号CLK1の供給が停止されると、駆動回路82による上記動作が行われず、その結果、昇圧段90による昇圧動作が停止される。
上記構成では、スイッチSW83がオンとなって駆動回路85にクロック信号CLK2が供給されると、駆動回路85の動作によりコンデンサC62の他方の端子に第1電圧および第2電圧が交互に印加される。このような動作により、昇圧段91による昇圧動作が実行される。これに対し、スイッチSW83がオフとなって駆動回路85に対するクロック信号CLK2の供給が停止されると、駆動回路85による上記動作が行われず、その結果、昇圧段91による昇圧動作が停止される。
上記構成では、スイッチSW86がオンとなって駆動回路87にクロック信号CLK1が供給されると、駆動回路87の動作によりコンデンサC63の他方の端子に第1電圧および第2電圧が交互に印加される。このような動作により、昇圧段92による昇圧動作が実行される。これに対し、スイッチSW86がオフとなって駆動回路87に対するクロック信号CLK1の供給が停止されると、駆動回路87による上記動作が行われず、その結果、昇圧段92による昇圧動作が停止される。
このように、上記構成のチャージポンプ回路81では、スイッチSW81、SW83、SW86のオンとオフの制御により、3つの昇圧段90、91、92による昇圧動作を停止することができるようになっている。すなわち、本実施形態では、スイッチSW81、SW83、SW86により、昇圧段90、91、92による昇圧動作を停止することができる動作停止部93が構成されている。
上記構成のチャージポンプ回路81では、昇圧段91は、ツェナーダイオードZD82の端子間に接続されたスイッチSW82のオンとオフの制御により、コンデンサC62の他方の端子に印加する第1電圧の電圧値を切り替えることができる構成となっている。したがって、本実施形態では、スイッチSW82およびツェナーダイオードZD82により、昇圧段91の昇圧能力を切り替える昇圧能力切替部94が構成されている。
また、昇圧段92は、ツェナーダイオードZD84の端子間に接続されたスイッチSW84およびツェナーダイオードZD85の端子間に接続されたスイッチSW85のオンとオフの制御により、コンデンサC63の他方の端子に印加する第1電圧の電圧値を切り替えることができる構成となっている。したがって、本実施形態では、スイッチSW84、SW85およびツェナーダイオードZD84、ZD85により、昇圧段92の昇圧能力を切り替える昇圧能力切替部95が構成されている。
チャージポンプ回路81は、昇圧電圧VCP1、VCP2、VCP3の異常を検出する異常検出部84を備えている。異常検出部84は、上記異常の検出結果に基づいて、切替信号Sf、Sg、Shを生成して出力する。したがって、異常検出部84は、異常の検出結果に基づいてスイッチSW81〜SW86のオンとオフを制御する。
具体的には、異常検出部84は、昇圧電圧VCP1、VCP2、VCP3のいずれについても異常を検出していないとき(以下、正常時と呼ぶ)、切替信号Sf、Sg、Shをいずれもハイレベルにする。これにより、スイッチSW81〜SW86が全てONとなり、昇圧段90、91、92による昇圧動作が実行されるとともに、昇圧段91、92における第1電圧が電圧VZとなる。
異常検出部84は、昇圧電圧VCP1の異常を検出したとき(以下、VCP1異常時と呼ぶ)、切替信号Sfをロウレベルにするとともに切替信号Sg、Shをハイレベルにする。これにより、スイッチSW81がOFFとなるため、昇圧段90による昇圧動作が停止される。また、スイッチSW83、SW86がONとなるため、昇圧段91、92による昇圧動作は継続して実行される。また、この場合、スイッチSW82がOFFとなることから、昇圧段91における第1電圧が電圧2・VZとなり、その昇圧能力が高められる。
異常検出部84は、昇圧電圧VCP2の異常を検出したとき(以下、VCP2異常時と呼ぶ)、切替信号Sf、Shをハイレベルにするとともに切替信号Sgをロウレベルにする。これにより、スイッチSW83がOFFとなるため、昇圧段91による昇圧動作が停止される。また、スイッチSW81、SW86がONとなるため、昇圧段90、92による昇圧動作は継続して実行される。また、この場合、スイッチSW85がOFFとなることから、昇圧段92における第1電圧が電圧2・VZとなり、その昇圧能力が高められる。
異常検出部84は、昇圧電圧VCP3の異常を検出したとき(以下、VCP3異常時と呼ぶ)、切替信号Sf、Sgをハイレベルにするとともに切替信号Shをロウレベルにする。これにより、スイッチSW86がOFFとなるため、昇圧段92による昇圧動作が停止される。また、スイッチSW81、SW83がONとなるため、昇圧段90、91による昇圧動作は継続して実行される。
異常検出部84は、昇圧電圧VCP1およびVCP2の異常を検出したとき(以下、VCP1+VCP2異常時と呼ぶ)、切替信号Shをハイレベルにするとともに切替信号Sf、Sgをロウレベルにする。これにより、スイッチSW81、SW83がOFFとなるため、昇圧段90、91による昇圧動作が停止される。また、スイッチSW86がONとなるため、昇圧段92による昇圧動作は継続して実行される。また、この場合、スイッチSW84、SW85がOFFとなることから、昇圧段92における第1電圧が電圧3・VZとなり、その昇圧能力が高められる。
異常検出部84は、昇圧電圧VCP1およびVCP3の異常を検出したとき(以下、VCP1+VCP3異常時と呼ぶ)、切替信号Sgをハイレベルにするとともに切替信号Sf、Shをロウレベルにする。これにより、スイッチSW81、SW86がOFFとなるため、昇圧段90、92による昇圧動作が停止される。また、スイッチSW83がONとなるため、昇圧段91による昇圧動作は継続して実行される。また、この場合、スイッチSW82がOFFとなることから、昇圧段91における第1電圧が電圧2・VZとなり、その昇圧能力が高められる。
異常検出部84は、昇圧電圧VCP2およびVCP3の異常を検出したとき(以下、VCP2+VCP3異常時と呼ぶ)、切替信号Sfをハイレベルにするとともに切替信号Sg、Shをロウレベルにする。これにより、スイッチSW83、SW86がOFFとなるため、昇圧段91、92による昇圧動作が停止される。また、スイッチSW81がONとなるため、昇圧段90による昇圧動作は継続して実行される。
次に、上記構成の作用について参照して説明する。
[1]正常時の回路動作
正常時、切替信号Sf、Sg、Shはいずれもハイレベルであるため、スイッチSW81〜SW86がONになる。そのため、駆動回路82、85、87に対してクロック信号CLK1、CLK2が供給され、昇圧段90、91、92による昇圧動作が実行される。また、このとき、昇圧段91、92における第1電圧は電圧VZとなる。
このような正常時における昇圧電圧VCP1、VCP2、VCP3は、それぞれ下記(18)式、(19)式および(20)式により表される。ただし、ダイオードD61〜D5、D81の順方向電圧をいずれもVFとする。
VCP1=VIN−2・VF+VZ …(18)
VCP2=VIN−3・VF+2・VZ …(19)
VCP3=VIN−4・VF+3・VZ …(20)
なお、本実施形態では、上記(18)式、(19)式、(20)式により表される正常時における昇圧電圧VCP1、VCP2、VCP3の各電圧値が所望する目標電圧値となるように、電圧VZの値が決定されている。
[2]VCP1異常時の回路動作
VCP1異常時、切替信号Sfがロウレベルであるとともに切替信号Sg、Shがハイレベルであるため、スイッチSW81、SW82がOFFになるとともに、他のスイッチがONになる。そのため、駆動回路82に対するクロック信号CLK1の供給が停止され、昇圧段90による昇圧動作が停止される。また、駆動回路85、87に対してクロック信号CLK2、CLK1が供給され、昇圧段91、92による昇圧動作が実行される。さらに、このとき、昇圧段91における第1電圧は電圧2・VZとなる。
このようなVCP1異常時における昇圧電圧VCP1、VCP2、VCP3は、それぞれ下記(21)式、(22)式および(23)式により表される。
VCP1=VIN−2・VF …(21)
VCP2=VIN−3・VF+2・VZ …(22)
VCP3=VIN−4・VF+3・VZ …(23)
上記(22)式および(23)式から、VCP1異常時における昇圧電圧VCP2、VCP3が、正常時における昇圧電圧VCP2、VCP3と同様の電圧となっていることが分かる。
[3]VCP2異常時の回路動作
VCP2異常時、切替信号Sf、Shがハイレベルであるとともに切替信号Sgがロウレベルであるため、スイッチSW83、SW85がOFFになるとともに、他のスイッチがONになる。そのため、駆動回路82、87に対してクロック信号CLK1が供給され、昇圧段90、92による昇圧動作が実行される。また、駆動回路85に対するクロック信号CLK2の供給が停止され、昇圧段91による昇圧動作が停止される。さらに、このとき、昇圧段92における第1電圧は電圧2・VZとなる。
このようなVCP2異常時における昇圧電圧VCP1、VCP2、VCP3は、それぞれ下記(24)式、(25)式および(26)式により表される。
VCP1=VIN−2・VF+VZ …(24)
VCP2=VIN−3・VF+VZ …(25)
VCP3=VIN−4・VF+3・VZ …(26)
上記(24)式および(26)式から、VCP2異常時における昇圧電圧VCP1、VCP3が、正常時における昇圧電圧VCP1、VCP3と同様の電圧となっていることが分かる。
[4]VCP3異常時の回路動作
VCP3異常時、切替信号Sf、Sgがハイレベルであるとともに切替信号Shがロウレベルであるため、スイッチSW86がOFFになるとともに、他のスイッチがONになる。そのため、駆動回路82、85に対してクロック信号CLK1、CLK2が供給され、昇圧段90、91による昇圧動作が実行される。また、駆動回路87に対するクロック信号CLK1の供給が停止され、昇圧段92による昇圧動作が停止される。
このようなVCP3異常時における昇圧電圧VCP1、VCP2、VCP3は、それぞれ下記(27)式、(28)式および(29)式により表される。
VCP1=VIN−2・VF+VZ …(27)
VCP2=VIN−3・VF+2・VZ …(28)
VCP3=VIN−4・VF+2・VZ …(29)
上記(27)式および(28)式から、VCP3異常時における昇圧電圧VCP1、VCP2が、正常時における昇圧電圧VCP1、VCP2と同様の電圧となっていることが分かる。
[5]VCP1+VCP2異常時の回路動作
VCP1+VCP2異常時、切替信号Shがハイレベルであるとともに切替信号Sf、Sgがロウレベルであるため、スイッチSW86がONになるとともに、他のスイッチがOFFになる。そのため、駆動回路87に対してクロック信号CLK1が供給され、昇圧段92による昇圧動作が実行される。また、駆動回路82、85に対するクロック信号CLK1、CLK2の供給が停止され、昇圧段90、91による昇圧動作が停止される。さらに、このとき、昇圧段92における第1電圧は電圧3・VZとなる。
このようなVCP1+VCP2異常時における昇圧電圧VCP1、VCP2、VCP3は、それぞれ下記(30)式、(31)式および(32)式により表される。
VCP1=VIN−2・VF …(30)
VCP2=VIN−3・VF …(31)
VCP3=VIN−4・VF+3・VZ …(32)
上記(32)式から、VCP1+VCP2異常時における昇圧電圧VCP3が、正常時における昇圧電圧VCP3と同様の電圧となっていることが分かる。
[6]VCP1+VCP3異常時の回路動作
VCP1+VCP3異常時、切替信号Sgがハイレベルであるとともに切替信号Sf、Shがロウレベルであるため、スイッチSW83、SW85がONになるとともに、他のスイッチがOFFになる。そのため、駆動回路85に対してクロック信号CLK2が供給され、昇圧段91による昇圧動作が実行される。また、駆動回路82、87に対するクロック信号CLK1の供給が停止され、昇圧段90、92による昇圧動作が停止される。さらに、このとき、昇圧段91における第1電圧は電圧2・VZとなる。
このようなVCP1+VCP3異常時における昇圧電圧VCP1、VCP2、VCP3は、それぞれ下記(33)式、(34)式および(35)式により表される。
VCP1=VIN−2・VF …(33)
VCP2=VIN−3・VF+2・VZ …(34)
VCP3=VIN−4・VF+2・VZ …(35)
上記(34)式から、VCP1+VCP3異常時における昇圧電圧VCP2が、正常時における昇圧電圧VCP2と同様の電圧となっていることが分かる。
[7]VCP2+VCP3異常時の回路動作
VCP2+VCP3異常時、切替信号Sfがハイレベルであるとともに切替信号Sg、Shがロウレベルであるため、スイッチSW81、SW82、SW84がONになるとともに、他のスイッチがOFFになる。そのため、駆動回路82に対してクロック信号CLK1が供給され、昇圧段90による昇圧動作が実行される。また、駆動回路85、87に対するクロック信号CLK2、CLK1の供給が停止され、昇圧段91、92による昇圧動作が停止される。
このようなVCP2+VCP3異常時における昇圧電圧VCP1、VCP2、VCP3は、それぞれ下記(36)式、(37)式および(38)式により表される。
VCP1=VIN−2・VF+VZ …(36)
VCP2=VIN−3・VF+VZ …(37)
VCP3=VIN−4・VF+VZ …(38)
上記(36)式から、VCP2+VCP3異常時における昇圧電圧VCP1が、正常時における昇圧電圧VCP1と同様の電圧となっていることが分かる。
[8]異常検出部84の処理内容
異常検出部84は、起動後、スイッチSW81〜SW86を全てONにし、その後、所定の周期毎に図13に示すような内容の処理を実行する。図13のステップS301では、昇圧電圧VCP1が正常であるか否かが判断される。昇圧電圧VCP1が正常である場合、ステップS301で「YES」となり、ステップS302に進む。
ステップS302では、昇圧電圧VCP2が正常であるか否かが判断される。昇圧電圧VCP2が正常である場合、ステップS302で「YES」となり、ステップS303に進む。ステップS303では、昇圧電圧VCP3が正常であるか否かが判断される。昇圧電圧VCP3が正常である場合、ステップS303で「YES」となり、処理が終了となる。
ステップS301で「NO」となった場合、つまり少なくとも昇圧電圧VCP1に異常が生じている場合、ステップS304に進む。ステップS304では、昇圧電圧VCP2が正常であるか否かが判断される。昇圧電圧VCP2が正常である場合、ステップS304で「YES」となり、ステップS305に進む。
ステップS305では、昇圧電圧VCP3が正常であるか否かが判断される。ここで、昇圧電圧VCP3が正常である場合、ステップS305で「YES」となり、ステップS306に進む。ステップS306に進むと、異常検出部84は、スイッチSW81、SW82をOFFにする。ステップS306の実行後は、処理が終了となる。
一方、ここで、昇圧電圧VCP3に異常が生じている場合、ステップS305で「NO」となり、ステップS307に進む。ステップS307に進むと、異常検出部84は、スイッチSW81、SW82、SW84、SW86をOFFにする。ステップS307の実行後は、処理が終了となる。
ステップS304で「NO」となった場合、つまり少なくとも昇圧電圧VCP1、VCP2に異常が生じている場合、ステップS308に進む。ステップS308では、昇圧電圧VCP3が正常であるか否かが判断される。ここで、昇圧電圧VCP3が正常である場合、ステップS308で「YES」となり、ステップS309に進む。ステップS309に進むと、異常検出部84は、スイッチSW81〜SW85をOFFにする。ステップS309の実行後は、処理が終了となる。
一方、ここで、昇圧電圧VCP3に異常が生じている場合、ステップS308で「NO」となり、ステップS310に進む。ステップS310に進むと、異常検出部84は、スイッチSW81〜SW86をOFFにする。ステップS310の実行後は、処理が終了となる。
ステップS302で「NO」となった場合、つまり昇圧電圧VCP1が正常であり且つ昇圧電圧VCP2が異常であると判断された場合、ステップS311に進む。ステップS311では、昇圧電圧VCP3が正常であるか否かが判断される。ここで、昇圧電圧VCP3が正常である場合、ステップS311で「YES」となり、ステップS312に進む。ステップS312に進むと、異常検出部84は、スイッチSW83、SW85をOFFにする。ステップS312の実行後は、処理が終了となる。
一方、ここで、昇圧電圧VCP3に異常が生じている場合、ステップS311で「NO」となり、ステップS313に進む。ステップS313に進むと、異常検出部84は、スイッチSW83、SW85、SW86をOFFにする。ステップS313の実行後は、処理が終了となる。
ステップS303で「NO」となった場合、つまり昇圧電圧VCP1、VCP2が正常であり且つ昇圧電圧VCP3が異常であると判断された場合、ステップS314に進む。ステップS314に進むと、異常検出部84は、スイッチSW86をOFFにする。ステップS314の実行後は、処理が終了となる。
以上説明した本実施形態のチャージポンプ回路81のように、3段昇圧且つ3つの昇圧電圧VCP1、VCP2、VCP3を出力する構成であっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。つまり、本実施形態のチャージポンプ回路81によっても、回路規模の増加を抑制しつつ複数種類の昇圧電圧を出力するとともに、複数の昇圧電圧のいずれか1つの異常が他の昇圧電圧の出力動作に影響を与えることを抑制することができるという優れた効果が得られる。
(第8実施形態)
以下、第8実施形態について図14を参照して説明する。
図14に示すように、本実施形態のチャージポンプ回路101は、第1実施形態のチャージポンプ回路1に対し、駆動回路2、5に代えて駆動回路102、103を備えている点、スイッチSW1、SW2および反転バッファ7に代えて反転バッファ104、105、OR回路106、107、NAND回路108、109およびAND回路110を備えている点、異常検出部4に代えて異常検出部111を備えている点などが異なる。
反転バッファ104は、異常検出部111から出力される切替信号Sjを入力し、それを反転した信号を出力する。反転バッファ105は、端子Psを介して外部から与えられる信号fCPSTOPを入力し、それを反転した信号を出力する。信号fCPSTOPは、チャージポンプ回路101の外部から与えられる信号である。
信号fCPSTOPとしては、例えば、チャージポンプ回路101と同じASIC上に設けられた入力電圧VIN、過熱などの異常を監視する異常監視機能部から出力される異常の検出結果を表す信号、外部のマイコンなどから出力される異常の検出結果を表す信号などが想定される。信号fCPSTOPは、クロック信号CLKや入力電圧VINなどに異常が生じている場合にはハイレベルになり、それらの異常が生じていない場合にはロウレベルになる。
OR回路106の第1の反転入力端子には、反転バッファ104の出力信号が入力されている。OR回路106の第2の反転入力端子には、クロック信号CLKが入力されている。OR回路106の第3の反転入力端子には、反転バッファ105の出力信号が入力されている。
NAND回路108の第1の非反転入力端子には、反転バッファ104の出力信号が入力されている。NAND回路108の反転入力端子には、クロック信号CLKが入力されている。NAND回路108の第2の非反転入力端子には、反転バッファ105の出力信号が入力されている。
AND回路110の非反転入力端子には、反転バッファ105の出力信号が入力されている。AND回路110の反転入力端子には、異常検出部111から出力される切替信号Skが入力されている。NAND回路109の反転入力端子には、クロック信号CLKが入力されている。NAND回路109の非反転入力端子には、AND回路110の出力信号が入力されている。OR回路107の第1の反転入力端子には、クロック信号CLKが入力されている。OR回路107の第2の反転入力端子には、AND回路110の出力信号が入力されている。
駆動回路102、103には、入力端子Piに接続される電源線Liを介して入力電圧VINが供給されるとともに、出力端子Po2に接続される電源線Lo2を介して昇圧電圧VCP2が供給されている。駆動回路102は、Nチャネル型のMOSトランジスタであるトランジスタQ101〜Q104、ツェナーダイオードZD101、ダイオードD101、D102および電流源112〜114を備えている。
トランジスタQ101のドレインは電源線Liに接続され、そのソースはトランジスタQ102のドレインに接続されている。トランジスタQ102のソースは、グランド線Lgに接続されている。トランジスタQ101、Q102の相互接続ノードN101は、駆動回路102の出力端子に相当するものであり、コンデンサC1の他方の端子に接続されている。
トランジスタQ101、Q102の各ゲートは、トランジスタQ103、Q104の各ドレインにそれぞれ接続されている。トランジスタQ103、Q104の各ソースは、グランド線Lgに接続されている。トランジスタQ103のゲートには、OR回路106の出力信号が与えられている。トランジスタQ104のゲートには、NAND回路108の出力信号が与えられている。
トランジスタQ101のゲートは、ダイオードD101、D102の各カソードに接続されている。ダイオードD101のアノードは、電流源112を介して電源線Lo2に接続されている。ダイオードD102のアノードは、電流源113を介して電源線Liに接続されている。トランジスタQ102のゲートは、電流源114を介して電源線Liに接続されている。
ツェナーダイオードZD101のカソードはトランジスタQ101のゲートに接続され、そのアノードはグランド線Lgに接続されている。これにより、トランジスタQ101がオンした際にコンデンサC1の他方の端子に与えられる電圧、つまり駆動回路102の第1電圧は、ツェナーダイオードZD101のツェナー電圧VZに制限される。
なお、上記第1電圧は、実際には、ツェナー電圧VZよりトランジスタQ101の閾値電圧Vtだけ低い電圧となる。しかし、閾値電圧Vtは、ツェナー電圧VZに対して十分に小さい電圧であることが一般的であるため、ここでは閾値電圧Vtについては考慮しないこととする。
駆動回路103は、Nチャネル型のMOSトランジスタであるトランジスタQ105〜Q109、ツェナーダイオードZD102、ZD103、ダイオードD103、D104および電流源115〜117を備えている。トランジスタQ105のドレインは電源線Liに接続され、そのソースはトランジスタQ106のドレインに接続されている。トランジスタQ106のソースは、グランド線Lgに接続されている。トランジスタQ105、Q106の相互接続ノードN102は、駆動回路103の出力端子に相当するものであり、コンデンサC2の他方の端子に接続されている。
トランジスタQ105、Q106の各ゲートは、トランジスタQ107、Q108の各ドレインにそれぞれ接続されている。トランジスタQ107、Q108の各ソースは、グランド線Lgに接続されている。トランジスタQ107のゲートには、NAND回路109の出力信号が与えられている。トランジスタQ108のゲートには、OR回路107の出力信号が与えられている。
トランジスタQ105のゲートは、ダイオードD103、D104の各カソードに接続されている。ダイオードD103のアノードは、電流源115を介して電源線Lo2に接続されている。ダイオードD104のアノードは、電流源116を介して電源線Liに接続されている。トランジスタQ106のゲートは、電流源117を介して電源線Liに接続されている。
ツェナーダイオードZD102のアノードはグランド線Lgに接続され、そのカソードはツェナーダイオードZD103のアノードに接続されている。ツェナーダイオードZD103のカソードは、トランジスタQ105のゲートに接続されている。つまり、ツェナーダイオードZD102、ZD103は、トランジスタQ105のゲートとグランド線Lgとの間に、グランド線Lg側をアノードとして直列接続されている。また、ツェナーダイオードZD102の端子間には、トランジスタQ109のドレイン・ソース間が接続されている。トランジスタQ109のゲートには、反転バッファ104の出力信号が与えられている。
このような構成により、トランジスタQ105がオンした際にコンデンサC2の他方の端子に与えられる電圧、つまり駆動回路103の第1電圧は、トランジスタQ109がオンの期間には、概ねツェナーダイオードZD103のツェナー電圧VZに制限される。また、駆動回路103の第1電圧は、トランジスタQ109がオフの期間には、概ねツェナーダイオードZD102およびZD103の各ツェナー電圧VZを合わせた電圧(=2・VZ)に制限される。
このように、チャージポンプ回路101は、2段昇圧の構成となっており、入力端子Piと出力端子Po1、Po2との間に接続された2つの昇圧段118、119を備えている。すなわち、昇圧段118は、ダイオードD1、コンデンサC1および駆動回路102を備え、その出力ノードとなるノードN1は、逆流阻止用のダイオードD4を順方向に介して出力端子Po1に接続されている。
また、昇圧段119は、ダイオードD2、コンデンサC2および駆動回路103を備え、その出力ノードとなるノードN2は、逆流阻止用のダイオードD3を順方向に介して出力端子Po2に接続されている。この場合、昇圧段118は、最終段以外の昇圧段に相当するとともに、第1昇圧電圧を出力する第1昇圧段に相当する。また、昇圧段119は、第1昇圧段よりも後段の昇圧段に相当するとともに、最終段の昇圧段に相当する。
上記構成では、信号fCPSTOPおよび切替信号Sjの双方がロウレベルであるとき、OR回路106およびNAND回路108からクロック信号CLKに対応した信号が出力され、その信号が駆動回路102に供給される。そうすると、駆動回路102では、上記信号に応じて、トランジスタQ101、Q102が相補的にオンオフされる。このような駆動回路102の動作により、コンデンサC1の他方の端子に第1電圧および第2電圧が交互に印加され、昇圧段118による昇圧動作が実行される。
これに対し、信号fCPSTOPおよび切替信号Sjの少なくとも一方がハイレベルであるとき、OR回路106およびNAND回路108の各出力信号がハイレベルとなる。そうすると、駆動回路102のトランジスタQ101、Q102がいずれもオフされて、その出力がハイインピーダンス状態となる。つまり、この場合、駆動回路102による上記動作が行われず、その結果、昇圧段118による昇圧動作が停止される。
上記構成では、信号fCPSTOPおよび切替信号Skの双方がロウレベルであるとき、NAND回路109およびOR回路107からクロック信号CLKに応じた信号が出力され、その信号が駆動回路103に供給される。そうすると、駆動回路103では、上記信号に応じて、トランジスタQ105、Q106が相補的にオンオフされる。このような駆動回路103の動作により、コンデンサC2の他方の端子に第1電圧および第2電圧が交互に印加され、昇圧段119による昇圧動作が実行される。
これに対し、信号fCPSTOPおよび切替信号Skの少なくとも一方がハイレベルであるとき、NAND回路109およびOR回路107の各出力信号がハイレベルとなる。そうすると、駆動回路103のトランジスタQ105、Q106がいずれもオフされて、その出力がハイインピーダンス状態となる。つまり、この場合、駆動回路103による上記動作が行われず、その結果、昇圧段119による昇圧動作が停止される。
したがって、本実施形態では、反転バッファ104、105、OR回路106、107、NAND回路108、109およびAND回路110により、昇圧段118、119による昇圧動作を停止することができる動作停止部120が構成されている。この場合、動作停止部120は、第1実施形態の動作停止部10と同様、駆動回路102、103に対するクロック信号CLKの供給を停止することにより昇圧動作を停止する構成となっている。
また、上記構成のチャージポンプ回路101では、昇圧段119は、ツェナーダイオードZD102の端子間に接続されたトランジスタQ109のオンとオフの制御により、コンデンサC2の他方の端子に印加する第1電圧の電圧値を切り替えることができる構成となっている。つまり、昇圧段119は、トランジスタQ109のオンとオフの制御により、その昇圧能力を切り替えることができる構成となっている。
したがって、本実施形態では、トランジスタQ109およびツェナーダイオードZD102により、昇圧段119の昇圧能力を切り替える昇圧能力切替部121が構成されている。この場合、トランジスタQ109がオンのときには第1電圧が電圧VZとなり、トランジスタQ109がオフのときには第1電圧が電圧VZよりも高い電圧2・VZとなる。昇圧段119の昇圧能力は、第1電圧が高いほど高められる。したがって、上記構成では、トランジスタQ109がオンからオフに切り替えられることにより、昇圧段119の昇圧能力が高められることになる。
チャージポンプ回路101は、第1実施形態の異常検出部4と同様に昇圧電圧VCP1、VCP2の異常を検出する異常検出部111を備えている。異常検出部111は、上記異常の検出結果に基づいて、切替信号Sj、Skを生成して出力する。具体的には、異常検出部111は、信号fCPSTOPがロウレベルであり、且つ昇圧電圧VCP1および昇圧電圧VCP2のいずれについても異常を検出していないとき(以下、正常時と呼ぶ)、切替信号Sj、Skをいずれもロウレベルにする。これにより、駆動回路102、103に対してクロック信号CLKが供給され、昇圧段118、119による昇圧動作が実行される。また、このとき、昇圧段119における第1電圧は電圧VZとなる。
異常検出部111は、VCP1異常時、切替信号Sjをハイレベルにするとともに切替信号Skをロウレベルにする。これにより、駆動回路102に対するクロック信号CLKの供給が停止され、昇圧段118による昇圧動作が停止される。また、このとき、駆動回路103に対してクロック信号CLKが供給され、昇圧段119による昇圧動作が実行される。また、このとき、昇圧段119における第1電圧が電圧2・VZとなり、その昇圧能力が高められる。
異常検出部4は、VCP2異常時、切替信号Sjをロウレベルにするとともに切替信号Skをハイレベルにする。これにより、駆動回路102に対してクロック信号CLKが供給され、昇圧段118による昇圧動作が実行される。また、このとき、駆動回路103に対するクロック信号CLKの供給が停止さ、昇圧段119による昇圧動作が停止される。
次に、上記構成の作用について参照して説明する。
[1]正常時の回路動作
正常時、切替信号Sj、Skはいずれもロウレベルであるため、駆動回路102、103に対してクロック信号CLKが供給され、昇圧段118、119による昇圧動作が実行される。また、このとき、昇圧段119における第1電圧は電圧VZとなる。
このような正常時における昇圧電圧VCP1および昇圧電圧VCP2は、それぞれ下記(39)式および(40)式により表される。
VCP1=VIN−2・VF+VZ …(39)
VCP2=VIN−3・VF+2・VZ …(40)
なお、本実施形態では、上記(39)式、(40)式により表される正常時における昇圧電圧VCP1、VCP2の各電圧値が所望する目標電圧値となるように、電圧VZの値が決定されている。
[2]VCP1異常時の回路動作
VCP1異常時、切替信号Sjがハイレベルであるとともに切替信号Skがロウレベルである。そのため、駆動回路102に対するクロック信号CLKの供給が停止され、昇圧段118による昇圧動作が停止される。また、駆動回路103に対してクロック信号CLKが供給され、昇圧段119による昇圧動作が実行される。さらに、このとき、昇圧段119における第1電圧は電圧2・VZとなる。
このようなVCP1異常時における昇圧電圧VCP1および昇圧電圧VCP2は、それぞれ下記(41)式および(42)式により表される。
VCP1=VIN−2・VF …(41)
VCP2=VIN−3・VF+2・VZ …(42)
上記(42)式から、VCP1異常時における昇圧電圧VCP2が、正常時における昇圧電圧VCP2と同様の電圧となっていることが分かる。
[3]VCP2異常時の回路動作
VCP2異常時、切替信号Sjがロウレベルであるとともに切替信号Skがハイレベルである。そのため、駆動回路102に対してクロック信号CLKが供給され、昇圧段118による昇圧動作が実行される。また、駆動回路103に対するクロック信号CLKの供給が停止され、昇圧段119による昇圧動作が停止される。なお、このとき、昇圧段119における第1電圧はVZとなる。
このようなVCP2異常時における昇圧電圧VCP1および昇圧電圧VCP2は、それぞれ下記(43)式および(44)式により表される。
VCP1=VIN−2・VF+VZ …(43)
VCP2=VIN−3・VF+VZ …(44)
上記(43)式から、VCP2異常時における昇圧電圧VCP1が、正常時における昇圧電圧VCP1と同様の電圧となっていることが分かる。
以上説明した本実施形態のチャージポンプ回路101によれば、昇圧電圧VCP1および昇圧電圧VCP2の一方に異常が生じたとしても、その異常が他方の出力動作に影響を与えることがない。したがって、本実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果、つまり回路規模の増加を抑制しつつ複数種類の昇圧電圧を出力するとともに、複数の昇圧電圧のいずれか1つの異常が他の昇圧電圧の出力動作に影響を与えることを抑制することができるという優れた効果が得られる。
本実施形態では、駆動回路102、103に対する電源電圧の供給が2重化されている。なお、電源電圧とは、ハイサイド側のトランジスタQ101、Q105をオン駆動するための電源電圧のことを言う。具体的には、本実施形態では、ダイオードD101およびD102によるワイヤードORにより、駆動回路102のトランジスタQ101のゲートに対し、昇圧電圧VCP2または入力電圧Viを供給することができる構成となっている。また、本実施形態では、ダイオードD103およびD104によるワイヤードORにより、駆動回路103のトランジスタQ105のゲートに対し、昇圧電圧VCP2または入力電圧Viを供給することができる構成となっている。
このような構成によれば、チャージポンプ回路101の起動時、昇圧電圧VCP2が十分に上昇するまでの期間であっても、駆動回路102、103は入力電圧ViによってトランジスタQ101、Q105をオン駆動することができる。したがって、本実施形態によれば、チャージポンプ回路101の出力電圧(昇圧電圧VCP1、VCP2)が所望する電圧値に達するまでの時間を短くする、つまり起動時における出力電圧の立ち上がり速度が向上するという効果が得られる。
(第9実施形態)
以下、第9実施形態について図15を参照して説明する。
図15に示すように、本実施形態のチャージポンプ回路201は、第8実施形態のチャージポンプ回路101に対し、電流制限部202およびダイオードD201が追加されている点、駆動回路102に供給される電圧の一部が変更されている点などが異なる。なお、図15では、動作停止部120および昇圧能力切替部121の図示を簡略化し、それぞれ機能ブロックとして示している。また、図15では、駆動回路102、103について、一部の構成を省略して示している。
電流制限部202は、入力端子PiからダイオードD1およびD4を介して出力端子Po1へと至る経路および入力端子PiからダイオードD1、D2およびD3を介して出力端子Po2へと至る経路の電流を制限する。なお、以下では、これら経路のことを主経路と呼ぶこととする。電流制限部202は、主経路に過大な電流が流れることにより回路素子が故障することを防止するために設けられている。なお、主経路に過大な電流が流れる状況としては、出力端子Po1、Po2がグランド線Lgなどに短絡する地絡が発生した状況などが想定される。
電流制限部202は、主経路に直列に介在するトランジスタQ201を備えている。トランジスタQ201は、Nチャネル型MOSトランジスタであり、そのドレインが入力端子Piに接続されるとともに、そのソースがダイオードD1のアノードに接続されている。電流制限部202は、図示しないシャント抵抗などを介して主経路に流れる電流を検出し、その検出値と所定の過電流閾値とを比較することにより、出力端子Po1、Po2の地絡を検出する。
上記過電流閾値は、出力端子Po1、Po2のいずれにも地絡が発生していない通常時において主経路に流れる電流の最大値よりも大きく且つ出力端子Po1、Po2の少なくとも一方に地絡が発生した地絡時において主経路に流れる電流の最小値よりも小さい値に設定されている。
電流制限部202は、電流の検出値が過電流閾値以下であるとき、つまり通常時、トランジスタQ201を常時オン駆動する。なお、通常時、トランジスタQ201は、その導通損失を低く抑えるため、そのオン抵抗が低くなるようにフルオン駆動される。また、電流制限部202は、電流の検出値が過電流閾値を超えたことを検出すると、トランジスタQ201のゲート電圧を制御することにより、そのオン状態、つまりオン抵抗を調整し、主経路に流れる電流を制限する。
ダイオードD201は、前段の昇圧段118の出力ノードN1に繋がる出力端子Po1と後段の昇圧段119の出力ノードN2に繋がる出力端子Po2との間に出力端子Po1側をアノードとして接続されている。ダイオードD201は、出力端子Po1、Po2同士の電位関係が逆転する異常が生じた際、出力端子Po1の電位を出力端子Po2の電位を基準とした所定のクランプ値に固定するためのものであり、電位固定部に相当する。上記クランプ値は、ダイオードD201の順方向電圧Vfに相当する値となる。なお、上記した電位関係が逆転する異常としては、例えば、出力端子Po2が地絡したときに「出力端子Po1の電位>出力端子Po2の電位」となって生じることが想定される。
この場合、駆動回路102には、出力端子Po1に接続される電源線Lo1を介して昇圧電圧VCP1が供給されている。つまり、本実施形態では、昇圧段118が備える駆動回路102には、その昇圧段118の出力ノードN1に繋がる出力端子Po1から出力される電圧が動作用の電源電圧として供給されている。また、昇圧段119が備える駆動回路103には、その昇圧段119の出力ノードN2に繋がる出力端子Po2から出力される電圧が動作用の電源電圧として供給されている。なお、上記電源電圧とは、ハイサイド側のトランジスタQ101、Q105をオン駆動するための電圧のことである。
以上説明したように、本実施形態のチャージポンプ回路201は、第8実施形態のチャージポンプ回路101が備える各構成に加え、電流制限部202を備えている。このような構成によれば、出力端子Po1、Po2が地絡した際、電流制限部202により前述したような電流制限動作が実行されることにより、地絡時に主経路に流れる電流が所望する制限値以下に制限され、回路の保護を図ることができる。ただし、第8実施形態のチャージポンプ回路101に対し、電流制限部202だけが追加された構成(以下、第1比較例と呼ぶ)では、出力端子Po1だけが地絡した際、次のような問題が生じるおそれがある。
すなわち、出力端子Po1が地絡すると、出力端子Po1の電位はほぼ0Vとなる。また、この場合、電流制限部202により主経路に流れる電流が制限されることから、出力端子Po2の電位つまり昇圧電圧VCP2が低下に転じる。しかし、出力端子Po2に接続される負荷が軽い場合や負荷が無い場合などには、昇圧電圧VCP2の低下が非常に緩やかなものとなり、出力端子Po2の電位は昇圧電圧VCP2の定常値に近い電位に維持される。
このようなことから、第1比較例では、出力端子Po1が地絡した際、昇圧段118の駆動回路102に対して通常時と同程度の昇圧電圧VCP2が供給される。そのため、駆動回路102は、出力端子Po1が地絡した場合でも、ハイサイド側のトランジスタQ101を含む全てのトランジスタを通常時と同様にオンオフすることができる。したがって、コンデンサC1の他方の端子に入力電圧Viおよび0Vが交互に与えられてしまい、それに伴って出力ノードN1の電位が変動し、コンデンサC1から出力端子Po1へと断続的に流れるリップル電流が発生する。
その結果、第1比較例では、出力端子Po1が地絡した際に主経路に流れる電流には上記リップル電流の成分に相当する大きな変動が生じる、つまり主経路に流れる電流が発振する。このような電流の大きな変動は、回路を構成する素子が故障する問題や放射ノイズが増加する問題などに繋がるおそれがある。
そこで、本実施形態では、出力端子Po1から出力される昇圧電圧VCP1が、駆動回路102の電源電圧となるような構成としている。このような構成によれば、出力端子Po1だけが地絡した際、駆動回路102に供給される昇圧電圧VCP1がほぼ0Vとなるため、駆動回路102の動作が停止される。したがって、本実施形態によれば、出力端子Po1だけが地絡した際に主経路に流れる電流が発振することが防止され、主経路に流れる電流を一定の制限値に制限することができる。
ただし、第1比較例に対し、駆動回路102に昇圧電圧VCP1が電源電圧として供給されるように変更しただけの構成(以下、第2比較例と呼ぶ)では、出力端子Po2だけが地絡した際、次のような問題が生じるおそれがある。すなわち、出力端子Po2が地絡すると、出力端子Po2の電位はほぼ0Vとなる。
また、この場合、電流制限部202により主経路に流れる電流が制限されることから、出力端子Po1の電位つまり昇圧電圧VCP1が低下に転じる。しかし、出力端子Po1に接続される負荷が軽い場合や負荷が無い場合などには、昇圧電圧VCP1の低下が非常に緩やかなものとなり、出力端子Po1の電位は昇圧電圧VCP1の定常値に近い電位に維持される。
このようなことから、第2比較例では、出力端子Po2が地絡した際、昇圧段118の駆動回路102に対して通常時と同程度の昇圧電圧VCP1が供給される。そのため、駆動回路102は、出力端子Po2が地絡した場合でも、ハイサイド側のトランジスタQ101を含む全てのトランジスタを通常時と同様にオンオフすることができる。したがって、コンデンサC1の他方の端子に入力電圧Viおよび0Vが交互に与えられてしまい、それに伴って出力ノードN1の電位が変動し、コンデンサC1から出力端子Po2へと断続的に流れるリップル電流が発生する。
その結果、第2比較例では、出力端子Po2が地絡した際に主経路に流れる電流には上記リップル電流の成分に相当する大きな変動が生じる、つまり主経路に流れる電流が発振する。このような電流の大きな変動は、回路を構成する素子が故障する問題や放射ノイズが増加する問題などに繋がるおそれがある。
そこで、本実施形態では、出力端子Po1およびPo2の間に出力端子Po1側をアノードとして接続されたダイオードD201が設けられている。このような構成によれば、出力端子Po2だけが地絡した際、出力端子Po1の電位、つまり昇圧電圧VCP1は、出力端子Po2の電位である0Vを基準としたクランプ値、具体的にはダイオードD201の順方向電圧Vfまで低下する。
この場合、駆動回路102のハイサイド側のトランジスタQ101のゲートには、電流源112およびダイオードD101を順方向に介して昇圧電圧VCP1が与えられている。そのため、駆動回路102は、その最低動作電圧が順方向電圧Vfより高い電圧となっており、電源電圧として順方向電圧Vfが供給されたとしても、通常通りの動作を行うことができない。このようなことから、本実施形態では、出力端子Po2だけが地絡した際、駆動回路102の動作が停止される。したがって、本実施形態によれば、出力端子Po2だけが地絡した際に主経路に流れる電流が発振することが防止され、主経路に流れる電流を一定の制限値に制限することができる。
本実施形態でも、第8実施形態と同様、駆動回路102、103に対する電源電圧の供給が2重化されている。したがって、本実施形態によっても、第8実施形態と同様、チャージポンプ回路201の出力電圧(昇圧電圧VCP1、VCP2)が所望する電圧値に達するまでの時間を短くする、つまり起動時における出力電圧の立ち上がり速度が向上するという効果が得られる。
(第10実施形態)
以下、第10実施形態について図16を参照して説明する。
第9実施形態のチャージポンプ回路201は、2段昇圧且つ2つの昇圧電圧VCP1、VCP2を出力する構成であったが、3段以上の昇圧且つ3つ以上の昇圧電圧を出力する構成であっても、第9実施形態と同様の工夫を加えることができる。
図16に示すように、本実施形態のチャージポンプ回路301は、第9実施形態のチャージポンプ回路201に対し、昇圧段の段数を3段に変更するとともに、3つの昇圧電圧VCP1、VCP2、VCP3を出力するように変更した構成となっている。この場合、昇圧電圧VCP1、VCP2は第1昇圧電圧に相当し、昇圧電圧VCP3は第2昇圧電圧に相当する。
チャージポンプ回路301は、3段昇圧の構成となっており、入力端子Piと出力端子Po1、Po2、Po3との間に接続された3つの昇圧段118、119、302を備えている。この場合、昇圧段118、119は、最終段以外の昇圧段に相当するとともに、第1昇圧電圧を出力する第1昇圧段に相当する。また、昇圧段302は、最終段の昇圧段に相当する。出力端子Po3とグランド線Lgとの間には、平滑用のコンデンサCo3が接続されている。
昇圧段302は、ダイオードD301、コンデンサC301および駆動回路303を備え、その出力ノードとなるノードN301は、逆流阻止用のダイオードD302を順方向に介して出力端子Po3に接続されている。駆動回路303は、駆動回路102、103と同様の構成であり、その出力段を構成するNチャネル型のMOSトランジスタであるトランジスタQ301、Q302、電流源304、305、ダイオードD303、D304などを備えている。
トランジスタQ301、Q302の相互接続ノードN302は、駆動回路303の出力端子に相当するものであり、コンデンサC301の他方の端子に接続されている。トランジスタQ301のゲートは、ダイオードD303、D304の各カソードに接続されている。ダイオードD303のアノードは、電流源304を介して出力端子Po3に接続される電源線Lo3に接続されている。ダイオードD304のアノードは、電流源305を介して電源線Liに接続されている。
このような構成により、駆動回路303には、出力端子Po3に接続される電源線Lo3を介して昇圧電圧VCP3が供給されている。つまり、本実施形態では、昇圧段302が備える駆動回路303には、その昇圧段302の出力ノードN301に繋がる出力端子Po3から出力される電圧が動作用の電源電圧として供給されている。
本実施形態では、出力端子Po2、Po3同士の電位関係が逆転する異常が生じた際、出力端子Po2の電位を出力端子Po3の電位を基準とした所定のクランプ値に固定する電位固定部として、ダイオードD305が設けられている。ダイオードD305は、前段の昇圧段119の出力ノードN2に繋がる出力端子Po2と後段の昇圧段302の出力ノードN301に繋がる出力端子Po3との間に出力端子Po2側をアノードとして接続されている。この場合、クランプ値は、ダイオードD305の順方向電圧Vfに相当する値となる。
以上説明したように、本実施形態のチャージポンプ回路301は、第9実施形態のチャージポンプ回路201と同様、電流制限部202を備えているため、地絡時に主経路に流れる電流が所望する制限値以下に制限され、回路の保護を図ることができる。また、昇圧段302が備える駆動回路303には、その昇圧段302の出力ノードN301に繋がる出力端子Po3から出力される電圧が動作用の電源電圧として供給されている。さらに、出力端子Po2、Po3同士の間に出力端子Po2側をアノードとして接続されたダイオードD305が設けられている。このような構成によれば、第9実施形態と同様の効果、つまり出力端子Po1、Po2、Po3のうちいずれか1つだけが地絡した際に主経路に流れる電流が発振することが防止され、主経路に流れる電流を一定の制限値に制限することができるという効果が得られる。
なお、この場合、出力端子Po3だけが地絡した際、出力端子Po2の電位はダイオードD305の順方向電圧Vfに固定されるものの、出力端子Po1の電位はダイオードD305の順方向電圧VfにダイオードD201の順方向電圧を加えた電圧(=2・Vf)に固定される。そのため、出力端子Po1の電位、つまり昇圧電圧VCP1が電源電圧として供給される駆動回路102は、その最低動作電圧が順方向電圧Vfの2倍の電圧(=2・Vf)より高い電圧である構成にしておく必要がある。このような構成にしておけば、出力端子Po3だけが地絡した際、駆動回路102、103および303の全ての動作が停止されるため、主経路に流れる電流の発振を確実に防止することができる。
また、この場合、駆動回路303に対する電源電圧の供給経路は、駆動回路102、103に対する電源電圧の供給経路と同様に2重化されている。したがって、本実施形態によっても、チャージポンプ回路301の出力電圧(昇圧電圧VCP1、VCP2、VCP3)が所望する電圧値に達するまでの時間を短くする、つまり起動時における出力電圧の立ち上がり速度が向上するという効果が得られる。
(第11実施形態)
以下、第11実施形態について図17を参照して説明する。
図17に示すように、本実施形態のチャージポンプ回路401は、第10実施形態のチャージポンプ回路301に対し、ダイオードD401が追加されている点が異なる。ダイオードD401は、出力端子Po1、Po3同士の電位関係が逆転する異常が生じた際、出力端子Po1の電位を出力端子Po3の電位を基準とした所定のクランプ値に固定する電位固定部に相当する。ダイオードD401は、前段の昇圧段118の出力ノードN1に繋がる出力端子Po1と後段の昇圧段302の出力ノードN301に繋がる出力端子Po3との間に出力端子Po1側をアノードとして接続されている。この場合、クランプ値は、ダイオードD401の順方向電圧Vfに相当する値となる。
以上説明した本実施形態によっても、第10実施形態と同様の効果が得られる。さらに、本実施形態によれば、次のような効果が得られる。すなわち、この場合、出力端子Po3だけが地絡した際、出力端子Po1の電位は、ダイオードD401の順方向電圧Vfに固定される。そのため、駆動回路102を含めた全ての駆動回路は、その最低動作電圧が順方向電圧Vfより高い電圧である構成でよい。したがって、本実施形態によれば、駆動回路の回路設計に関する自由度を高めることができるという効果が得られる。
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、あるいは拡張することができる。
上記各実施形態で示した数値などは例示であり、それに限定されるものではない。
昇圧能力切替部は、第1昇圧段よりも後段の昇圧段の少なくとも1つの昇圧能力を切り替えることができる構成であればよく、その具体的な構成は適宜変更することができる。
動作停止部は、複数の昇圧段による昇圧動作を停止することができる構成であればよく、その具体的な構成は適宜変更することができる。
駆動回路は、外部から供給されるクロック信号に基づいてコンデンサの他方の端子に第1電圧および第2電圧を交互に印加する構成であればよく、その具体的な構成は適宜変更することができる。
チャージポンプ回路の段数は、4段以上であってもよい。また、4つ以上の昇圧段を備えたチャージポンプ回路は、少なくとも2種類の昇圧電圧を出力する構成とすればよい。
複数のスイッチング素子としては、ダイオードD1〜D5、D61〜D65、D81に限らずともよく、例えばMOSトランジスタなどのスイッチング素子に置き換えてもよい。
電位固定部としては、ダイオードD201、D305、D401に限らずともよく、他の回路素子を用いた構成によって同様の機能を実現するようにしてもよい。
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。