JP6645673B2 - β‐1,3‐1,6‐グルカンへの難水溶性物質の包接方法およびその方法に用いる包接剤 - Google Patents

β‐1,3‐1,6‐グルカンへの難水溶性物質の包接方法およびその方法に用いる包接剤 Download PDF

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Description

本発明は、包接添加剤を用いた中性水溶液中でのβ‐1,3‐1,6‐グルカンへの難水溶性物質の包接方法、およびその方法に用いる包接剤に関する。
特に、三重鎖構造のβ‐1,3‐1,6‐グルカンを一本鎖ランダムコイル構造へと融解したり化学修飾等を施したりせずに、水に難溶性の物質や安定性の低い物質などを包接させることにより、人体への経口摂取が難しかった物質を包含した健康食品や健康飲料、化粧品、医薬品などを安全に製造するものである。
難水溶性物質は食品や化粧品や医薬品の成分として配合したり、経口や経皮で摂取したりするには取り扱いが難しい場合が多く、利用を促進するために水溶液に可溶化することが望まれている。
しかし、難水溶性物質は、加温や撹拌という手段では、水に対する溶解度が低いままであり、たとえ調製時に一旦溶解しても、その後、経時的に沈澱を生じてしまい、水溶液としての保存安定性を保つことができないことが多い。そのため、難水溶性物質が有効成分としての配合量が制限されてしまい、生理、薬理機能を十分に発揮できる製品を得ることが困難な場合がある。そこで、難水溶性物質を水への可溶化するための技術開発が望まれている。
従来技術における難水溶性物質の水への可溶化方法の一つとして包接現象を利用した可溶化技術が有望視されている。包接されたゲスト分子はホスト分子内に入るため化学的性質が変化し、例えば、不安定なゲスト分子の安定性が増したり、水難溶性のゲスト分子の水可溶性が大きくなったり、揮発性のゲスト分子の揮発性が抑制されたりなどの優れた効能が得られる。食品関連の製品においては、香料などの揮散しやすい成分の徐放化、練りわさびなど分解しやすい成分の安定化、高濃度カテキンなどの苦味の改善など、包接により優れた効能を得ることができる。このため、包接機能を持つ化合物は食品工業、医薬品、化粧品、樹脂などの製品に使用されている。
包接能力を持つ物質は様々なものが知られているが、特に、シクロデキストリンとβ‐1,3‐1,6‐グルカンの包接能力が注目されている。
シクロデキストリン(環状オリゴ糖)は環構造の内部に空洞を持ち、空洞の大きさに合った大きさの化合物を物理的な引力によって取り込むことにより包接能力を発揮する。シクロデキストリンの空洞の中にはエーテル結合の酸素原子と水素原子があるため疎水性を示し、空洞のサイズに適した難水溶性物質を包接する能力を持つ。その一方、シクロデキストリンの空洞の端部には多数のヒドロキシル基があるため、シクロデキストリン自体は水に可溶である。そのためシクロデキストリンは難水溶性物質を包接したまま全体として水に可溶である。
シクロデキストリンには、α、β、γタイプがあり、それぞれに空洞の大きさが違うため、包接されやすい難水溶性物質が異なっている。例えば、α-シクロデキストリンであればベンゼン等が包接されやすく、例えば、β-シクロデキストリンであればナフタレン等が包接されやすく、例えば、γ-シクロデキストリンであれば、オルニチン、カルニチン、イソフラボン等が包接できることが知られている。
次に、β‐1,3‐1,6‐グルカンの包接について説明する。
β‐1,3‐1,6‐グルカンは、βグルカンの一種で、グルコースから構成される多糖体の一つである。β‐1,3‐1,6‐グルカンはカビ類、キノコ類、海草類などの多糖成分として知られている。β‐1,3‐1,6‐グルカンの分子構造は、グルコースがβ‐1,3‐グルコシド結合によってたくさん結合した鎖のような構造をしており、種によって導入率の異なるβ‐1,6‐グルコシド側鎖が部分的に導入されていると推定されており、天然の状態では水中においては、3本のβ‐1,3‐1,6‐グルカン分子主鎖が互いに影響し合って三重鎖旋構造を形成し、それが糸まり様の粒子状になっていると推定されている。
β‐1,3‐1,6‐グルカンは、強アルカリ性の溶液中やジメチルスルホキシド(DMSO)などの非プロトン性極性溶媒中では、三重鎖構造が解け、一本鎖のランダムコイル構造に解離することが知られている。この強アルカリ性やDMSOによる一本鎖のランダムコイル構造に解いた状態から溶液を中和や、希釈/透析すると、再度、元の三重鎖状態に戻ることが知られている。この一本鎖ランダムコイル構造に解いた状態から元の三重鎖状態に戻る過程において、他の分子を共存させると三重鎖の中に他の分子を取り込むことができる。つまり、β‐1,3‐1,6‐グルカンは包接ホストとして働き、他の分子を包接ゲストとして包接することができる。
特開2007−238734 Biomacromolecules,914−921頁、第4巻、2003 Carbohydrate Polymers、113−121頁、第44巻、2001 A. Hawe, M. Sutter, W. Jiskoot, Pharmaceutical Res.、1487−1499頁、第25巻、2008
しかし、上記従来のシクロデキストリン類による包接処理は、内部の空洞の大きさに適した難水溶性物質を包接する能力を利用するため、空洞の大きさによって包接しやすい分子が決まり包接できる分子が限定される傾向がある。また、シクロデキストリンはその空洞とゲスト分子の間の物理的な引力により包接するため、ゲスト化合物の包接が十分に進むためには撹拌などの作業や時間を要する場合があり、また、長時間の保存によってゲスト化合物が徐放が進むことがあり、ときには臭気や着色が増加するなどの問題がある。
次に、上記従来のβ‐1,3‐1,6‐グルカンによる包接処理は、三重鎖構造から一本鎖ランダムコイル構造への解きと、その逆の一本鎖ランダムコイル構造から三重鎖構造への巻き直しの過程でゲスト化合物を包接するため、シクロデキストリン類による包接処理よりも難水溶性物質のサイズの影響は少なく、幅広い大きさの難水溶性物質を包接することができる。さらに、pHの調整で包接が制御できるため、包接が十分に進むためにはシクロデキストリン類に比較して撹拌などの作業や時間が少なくて済むというメリットがある。
しかし、上記従来のβ‐1,3‐1,6‐グルカンによる包接処理は、“三重鎖構造から一本鎖ランダムコイル構造への解き”という工程と、“一本鎖ランダムコイル構造から三重鎖構造への巻き直し”という工程を含むものであった。そのため、上記工程後のβ‐1,3‐1,6‐グルカンは、従来のβ‐1,3‐1,6‐グルカンと異なる性質を示す可能性もあり、食品、化粧品、医薬品へ応用するに至っては別途安全性に関する認可をとる必要が生じてしまう。
上記問題を解決するために、本発明は、β‐1,3‐1,6‐グルカンを一本鎖ランダムコイルへと転化させることなく、包接添加剤を加えるだけという簡便な操作で難水溶性物質を包接させる新しい方法を提供するものである。
本発明の方法によれば、β‐1,3‐1,6‐グルカンに対して包接添加剤を加えるだけで使用するので、すでに食品添加物として認可されているβ‐1,3‐1,6‐グルカンについて融解や特別な化学修飾等を経ない方法であるため、新規な認可申請することなく、利用することができるものである。
本発明の難水溶性物質包接方法は、自然界に存在する植物、カビ、キノコ、海藻等から抽出される三重鎖構造をもつβ‐1,3‐1,6‐グルカンに対して広く適用することができる。
主原料となるβ‐1,3‐1,6‐グルカンの分子構造は、グルコースがたくさん結合した鎖のような構造をしていると推定されており、自然状態では3本の分子鎖が互いに水素結合により影響し合って三重鎖構造を形成して粒子状になっていると推定されている。ここで、β‐1,3‐1,6‐グルカンの三重鎖の内部は疎水性の空間となっており、難水溶性物質を包接する空間と見なすことができる。
本発明の方法は、三重鎖構造をもつβ‐1,3‐1,6‐グルカンを一本鎖ランダムコイル構造に転化、融解させることなく、三重鎖構造のまま水素結合の形成−解離を促進する包接添加剤を用いて、三重鎖構造の隙間を広くし、その隙間から難水溶性物質を三重鎖の内部に取り込んで包接させる方法である。
つまり、本発明で用いる包接添加剤は、多糖の分子鎖間の水素結合を解離させ、分子構造のいわゆる“隙間”を作り、難水溶性物質を三重鎖内部の疎水性空間へ入り込ませることを補助する分子となる。
具体的には、包接添加剤として、多糖の水酸基に対して水素結合能をもつ尿素、塩酸グアニジン、アセトアミド、アセトン、トリフルオロエタノール(TFE)、グリセロール、2‐アミノ‐2‐メチル‐1‐プロパノール(AMP)から選ばれたいずれか、または、それらの組み合わせを主成分とするものが好ましい。これら物質であれば、後述するように実験において示すように、包接添加剤が提供する多糖の分子鎖間の水素結合と置換し、難水溶性物質が包接されることが実証されている。
本発明の包接剤は、このように、三重鎖構造をもつβ‐1,3‐1,6‐グルカンに対して所定の包接添加剤を加えて難水溶性物質を三重鎖内部の疎水性空間へ入り込ませる“隙間”を作り出す包接剤である。
本発明では、この所定の包接添加剤を加えて“隙間”を作り込むことを“弛緩”と表現し、β‐1,3‐1,6‐グルカンを一度も一本鎖ランダムコイルへの融解を行わずに隙間を拡げることを“非融解弛緩”と表現し、その処理を施したβ‐1,3‐1,6‐グルカンを、“非融解弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカン”または、略して“非融解弛緩βグルカン”と呼ぶ。
本発明の難水溶性物質包接剤は、この非融解弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンを主成分とするものを難水溶性物質包接剤として利用する。
本発明の難水溶性物質包接剤は包接ホストとなり、この包接ホストに対して包接ゲストを一括投入して撹拌するのみという1工程処理で包接処理を行うことができるものである。従来方法によるβ‐1,3‐1,6‐グルカンを用いた包接方法では、包接ホストとして一旦、アルカリ溶液などの融解処理を通じて三重鎖構造を一本鎖のランダムコイル構造に融解する工程と、その後、アルカリ条件のまま包接ゲストを投入したのち、酸などの中和剤の投入・撹拌処理という包接する工程の2工程処理が必要であるところ、本発明の非融解弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンを主成分とする難水溶性物質包接剤では、一括投入の1工程処理のみで完了できる。
後述するように実験の結果、難水溶性物質を包接する包接力があることが実証され、包接ゲストの溶液に対して、投入して撹拌するだけで包接させることができることが実証されており、いわゆる1つの工程で包接処理を行うことができるという優れた性質を持つものである。従来の2つの工程を必要とした従来のβ‐1,3‐1,6‐グルカンの包接処理に比べて工程を簡素化することができ、全体の包接処理時間も短縮することができる。
ここで、非融解弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンの持つ包接の原理としては、三重鎖構造の隙間が弛緩して“隙間”が拡がっている構造となっているため、分子構造の“隙間”から難水溶性物質が入り込み、内部に捉えられるという包接モデルとして説明することができる。
なお、包接添加剤を添加して三重鎖構造のβ‐1,3‐1,6‐グルカンの隙間を拡げるが、一本鎖ランダムコイル構造へと融解してしまうものであれば、再度、酸などで中和する必要が生じるため、水素結合性分子としては、β‐1,3‐1,6‐グルカンの三重鎖構造の隙間は拡げるものの、一本鎖ランダムコイル構造には融解しない化合物を選択すべきである。
次に、包接添加剤として水素結合性官能基をもつアルコール化合物がある。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2‐メトキシエタノール、エチレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、キシリトール、グルコース、フルクトース、マルトース、スクロース、ラクトース、トレハロース、フェノール、ベンジルアルコール、トリフルオロエタノール、1,1,1,3,3,3‐ヘキサフルオロ‐2‐プロパノールのようなアルコール化合物がある。
また、包接添加剤として水素結合性官能基をもつアミド化合物がある。例えば、尿素、アセトアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、N‐メチルアセトアミド、N,N‐ジメチルホルムアミドのようなアミド化合物がある。
また、包接添加剤として水素結合性官能基をもつケトン化合物がある。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンのようなケトン化合物がある。
また、包接添加剤として水素結合性官能基をもつイミン化合物がある。例えば、アミジン、グアニジン、塩酸グアニジン、N‐ヒドロキシイミンのようなイミン化合物がある。
また、包接添加剤として水素結合性官能基をもつアミン化合物がある。例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、N,N‐ジイソプロピル‐N‐エチルアミン、エチレンジアミン、N‐メチルエチレンジアミン、N,N‐ジメチルエチレンジアミン、N,N’‐ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’‐トリメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’ ‐テトラメチルエチレンジアミン、ピペリジン、モルホリン、N‐メチルモルホリン、ピペラジン、スペルミン、スペルミジン、アニリンのようなアミン化合物がある。
また、包接添加剤として水素結合性官能基をもつカルボン酸化合物がある。例えば、酢酸、プロピオン酸、吉草酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、マレイン酸、ピルビン酸、安息香酸のようなカルボン酸化合物がある。
また、複数の水素結合性官能基を分子内に併せ持つものがある。例えば、アミノエタノール、2‐アミノ‐2‐メチルプロパノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N‐ヒドロキシエチルピペラジン、カテコールアミン、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、アミノ酸(アルギニン、リジン、グリシン、アラニン、ロイシン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸など)がある。
さらに、上記したものの縮合物もあり得る。
上記したものの組み合わせも可能である。
これら物質であれば、後述するように実験において、包接添加剤である水素結合性分子が提供する水素結合性官能基における極性の強さが適度であり、一本鎖ランダムコイル構造までに融解しないことが実証されている。
次に、包接ゲストとなる難水溶性物質としては多様なものがある。
包接され得る難水溶性物質として、難水溶性のビタミン及びその誘導体がある。例えば、ビタミンA、β‐カロテン、レチナール、レチノール、トコフェロール(ビタミンE)、ビタミンB12、ビタミンD、ビタミンKのようなビタミンがある。
また、包接される得る難水溶性物質として、カロテノイドおよびその誘導体がある。例えば、β―クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、ルテイン、リコピン、アスタキサンチンのようなものがある。
また、包接され得る難水溶性物質として、テルペンやリモノイドおよびそれらの誘導体がある。例えば、リモネンやリモニンなどの製油成分がある。
また、包接される得る難水溶性物質として、脂肪酸およびその誘導体がある。例えばEPA、DHA,α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸などのn-3系およびn-6系各脂肪酸のようなものがある。
また、包接され得る難水溶性物質として、ポリフェノール及びその誘導体がある。例えば、カテキン、アントシアニン、タンニン、セサミン、クルクミンのようなものがある。
また、包接され得る難水溶性物質として、難水溶性の薬剤及びその誘導体がある。例えば、プロトポルフィリンIX、サフィリンのような難水溶性の薬剤及びその誘導体がある。他にも難水溶性の薬剤や誘導体として該当するものは多数ある。
また、包接され得る難水溶性物質として、フラーレン、グラフェン、カーボンナノチューブのような難水溶性の炭素素材及びその誘導体がある。
また、包接され得る難水溶性物質として、オリゴ・ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレンのような導電性高分子及びその誘導体がある。
また、包接され得る難水溶性物質として、難水溶性のナノ粒子がある。ナノ粒子化された金、銀、白金、セレン化カドミウム、セレン化亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン及びその誘導体がある。これらは触媒や顔料や発光材料として有用なものが多く知られている。
上記したもののいずれか、または、それらの組み合わせとすることができる。
本発明の包接剤および包接方法によれば、三重鎖構造をもつβ‐1,3‐1,6‐グルカンを一本鎖ランダムコイル構造に転化、融解させることなく、三重鎖構造のまま包接添加剤を用いて水素結合の形成−解離を促進し、多糖の分子鎖間の水素結合を解離させ、分子構造のいわゆる“隙間”を作り、難水溶性物質を三重鎖内部の疎水性空間へ入り込ませることを可能となる。つまり、包接添加剤を加えるだけという簡便な操作でゲスト分子を包接させることができる。
本発明の包接剤および包接方法によれば、β‐1,3‐1,6‐グルカンに対して包接添加剤を加えるだけであるので、すでに食品添加物として認可されているβ‐1,3‐1,6‐グルカンについて融解や特別な化学修飾等を経ない方法であるため、新規な認可申請することなく、利用することができる。
包接添加剤である水素結合性分子の化学構造を示した図である。 本発明の非融解弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンの包接機能比較実験結果を示す図である。 比較実験としての、包接添加剤存在下、かつ、β‐1,3‐1,6‐グルカン非存在下におけるアゾ色素の分散比較実験結果を示す図である。 包接添加剤として尿素を用い、β‐1,3‐1,6‐グルカンの濃度を変化させた際のアゾ色素の分散挙動比較実験結果を示す図である。 包接添加剤として尿素を用い、β‐1,3‐1,6‐グルカンの濃度を一定として包接添加剤の濃度を変化させた際のアゾ色素の分散挙動比較実験結果を示す図である。
以下、本発明の難水溶性物質包接剤の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態、実施例は、一例に過ぎず、本発明の難水溶性物質包接剤の調製法、効果の実証を提示するものであって本特許の権利を制限するものではない。
以下、最初に、本発明の非融解弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンを用いた難水溶性物質包接剤の調製について述べる。次に、自然状態の非処理(非融解非弛緩:Native)のβ‐1,3‐1,6‐グルカンの包接力に対して、本発明の非融解弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンの方が包接能力の増大が見られるという本発明の有利な効果の検証を述べる。次に、非融解弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンの濃度による包接能力の変化の検証の順で述べる。
[本発明の難水溶性物質包接剤の調製]
以下、本発明の難水溶性物質包接剤の生成について述べる。
本発明の難水溶性物質包接剤は、β‐1,3‐1,6‐グルカンを主原料とし、所定の包接添加剤の添加による三重鎖構造の弛緩促進という方法で生成する。
非融解弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンの具体的な調製方法としては、β‐1,3‐1,6‐グルカンに対して水素結合性物質から選ばれた包接添加剤を加えることで、三重鎖構造を弛緩させて調製したものである。
[主原料]
主原料となるβ‐1,3‐1,6‐グルカンの分子構造は、グルコースがたくさん結合した分子鎖が影響し合って三重鎖構造を形成している。例えば、主鎖となるβ‐1,3‐1,6‐グルカンの結合量の違い(分子量の違い)やβ‐1,3‐1,6‐グルカンに部分的に導入されるβ‐1,6‐グルコシド側鎖の導入率などによって、さまざまなバリエーションがある。
一例として、β‐1,3‐1,6‐グルカン主鎖にβ‐1,6‐グルコシドの分岐鎖を73%もつβ‐1,3‐1,6‐グルカンを原料として用いた例を示す。原料として用いたβ‐1,3‐1,6‐グルカンの分子量を、サイズ排除クロマトグラフィー(担体:トヨパール(HW-65F)30mmφ×920mm、溶離液:0.7M水酸化ナトリウム水溶液、分子量スタンダード:プルラン(Shodex社製、P‐82))にて確認したところ、多糖主鎖一本あたりの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分散(Mw/Mn)は、それぞれ3,180,000、115,000、27.7であることが見積もられた。
β‐1,3‐1,6‐グルカンは自然状態の生理条件下では三重鎖構造を形成している。この三重鎖構造の内部は疎水性であり、且つ、その構造はβ‐1,3‐1,6‐グルカン主鎖のグルコース間で形成される水素結合ネットワークによって保持されている。難水溶性物質のβ‐1,3‐1,6‐グルカンへの包接は、三重鎖構造の内部に難水溶性物質が入り込むことにより達成される。
[包接添加剤の添加処理]
β‐1,3‐1,6‐グルカンの三重鎖構造はβ‐1,3‐1,6‐グルカン主鎖のグルコース間で形成される水素結合ネットワークによって保持されている。難水溶性物質のβ‐1,3‐1,6‐グルカンへの包接は、三重鎖構造の内部に難水溶性物質が入り込むことにより達成されるが、強固な三重鎖構造が形成されている状態では内部に入り込むことが難しく、入り込める箇所としては構造的な揺らぎが大きいポリマー鎖末端近傍に限定されていることが推測される。
本発明者らは、水素結合ネットワークの解離や交換を促す包接添加剤を加えれば、ポリマー鎖全体で難水溶性物質を包接する機会が生まれることを発見した。この包接添加剤は、水素結合性官能基を有する分子であり、螺旋を構築する水素結合ネットワークの形成・解離を制御することで螺旋の“幅”や“隙間”を拡張する効果が見られた。そこで、本発明者らは、水素結合ネットワークの形成・解離を促進する水素結合性官能基を有する包接添加剤を用いることで、β‐1,3‐1,6‐グルカンの螺旋の幅や隙間を拡げて包接機能を向上せしめた包接剤の生成を試みた。
包接添加剤として用いた分子は水素結合性官能基をもつ下記の図1に示す尿素、塩酸グアニジン、アセトアミド、アセトン、トリフルオロエタノール(TFE)、グリセロール、2‐アミノ‐2‐メチル‐1‐プロパノール(AMP)の7種類の製剤を調製した。
以下、これら製造した本発明の非融解弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンを主成分とする包接剤を用いて各種の実験を行って、諸機能を検証する。
[実験1]非融解弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンの包接能力の検証
次に、本発明の非融解弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンが難水溶性物質に対する包接機能を発揮することを検証した。
検証実験に用いた本発明の非融解弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンは、上記で製作した包接添加剤の異なる7種類の包接剤を用いた。
表1に示すように、包接添加剤として尿素、塩酸グアニジン、アセトアミド、アセトン、トリフルオロエタノール(TFE)、グリセロール、2‐アミノ‐2‐メチル‐1‐プロパノール(AMP)としたそれぞれ7種類の試験区分(番号3‐8)を用意した。比較のために、β‐1,3‐1,6‐グルカンも包接添加剤も含まない試験区分(番号1)とβ‐1,3‐1,6‐グルカンを含むが包接添加剤を含まない非融解非弛緩の試験区分(番号2)も用意した。
各々の試験区分において、本発明の非融解弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンの最終濃度がβ‐1,3‐1,6‐グルカン主鎖におけるグルコース濃度で0.01mMになるように溶解させた水溶液を調製し、また、包接添加剤を含む各サンプルは包接添加剤濃度が1wt%になるように溶解させた水溶液を調製した。そこに、難水溶性物質として360nmに吸収帯をもつアゾ色素(4‐(4’‐ニトロフェニルアゾ)アニソール)の最終濃度が0.1mMになるように、アゾ色素を10mMの濃度で溶解させたメタノールストック溶液を加え(添加したメタノールの最終体積分率は1vol%)、プレートシェーカー上で溶液に振動を与え続け、沈殿形成を促しながら、25℃で3時間振とうした。なお、この際、溶解・分散されなかったアゾ色素は沈殿した。
沈殿が完全に沈降するまで、振とう溶液を25℃で30分間静置した後、上澄みの吸光度(360nm)を測定した。上澄みの吸光度(360nm)の測定値は包接されて溶液中に存在するアゾ色素の量に比例している。
これら各試験区分を用いて包接機能を検証した。
Figure 0006645673
それぞれの吸光度360nmの測定結果を図2にまとめた。
図2に示すように、溶液中のアゾ色素の分散量は、試験番号1(包接剤なし、包接添加剤なし)がもっとも小さく、試験番号2(非融解非弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンあり、包接添加剤なし)が増加しているが、試験番号3〜9(非融解弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンあり、包接添加剤あり)のグループが大きく向上していることが分かった。この結果より以下のことが考察できる。
まず、試験番号1(包接剤なし、包接添加剤なし)の結果から、アゾ色素は難溶性であるが、包接ホストなしでもある程度は水に分散して存在することが分かる。
次に、試験番号2(非融解非弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンあり、包接添加剤なし)の結果から、自然状態(非融解非弛緩)のβ‐1,3‐1,6‐グルカンは、そのままでもある程度の包接機能を示し、難水溶性物質はおそらく構造的な揺らぎが大きいポリマー鎖末端近傍に限定されて包接されていると推測される。
次に、試験番号3から9(非融解弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカン)の結果から、いずれも試験番号2のものよりも包接量が大きく増加しており、自然状態のNative の非融解非弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンに対して水素結合性分子の包接添加物を添加したことにより、包接能力が向上していることが検証できた。つまり、本発明の非融解弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンは、包接添加剤により従来の自然状態のNative の非融解非弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンを変化させることに成功しており、包接力が向上している。これは、難水溶性物質がより多くグルカンの三重鎖構造の中に入り込みやすくなっていることを意味しており、いわゆる三重鎖構造の“隙間”を拡げたことに他ならない。
上記の実験は、アゾ色素を用いた検証であるが、アゾ色素は難水溶性物質として汎用的に包接の確認に用いられるものであり、アゾ色素を用いた包接の検証実験により、自然状態のNative の非融解β‐1,3‐1,6‐グルカンに比べて、本発明の非融解弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンの持つ難水溶性物質の包接機能の向上が検証できたと言える。
[実験2]包接添加剤自体のアゾ色素の溶解性の検証実験
次に、実験1の考察の一環として、念のために、包接添加剤のみではアゾ色素を溶解させないことを検証しておく。
検証実験に用いるものとして、アゾ色素に包接添加剤のみを添加した試験区分を用意した。つまり、表1のそれぞれの試験区分の製剤において、本発明の非融解弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンを含まない試験区分(番号10から16)を用意した(表2)。比較のために、実験1で使用したβ‐1,3‐1,6‐グルカンも包接添加剤も含まない試験番号1(包接剤なし、包接添加剤なし)とβ‐1,3‐1,6‐グルカンを含むが包接添加剤を含まない非融解非弛緩の試験番号2(非融解非弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンあり、包接添加剤なし)も用意して実験した。
各試験番号10から16のサンプルの調製は実験1にならって、包接添加剤濃度が1wt%になるように溶解させた水溶液を調製し、そこに、難水溶性物質として360nmに吸収帯をもつアゾ色素の最終濃度が0.1mMになるように、アゾ色素を10mMの濃度で溶解させたメタノールストック溶液を加え(添加したメタノールの最終体積分率は1vol%)、プレートシェーカー上で溶液に振動を与え続け、沈殿形成を促しながら、25℃で3時間振とうした。なお、この際、溶解・分散されなかったアゾ色素は沈殿する。沈殿が完全に沈降するまで、振とう溶液を25℃で30分間静置した後、上澄みの吸光度(360nm)を測定し、アゾ色素の分散挙動を比較した。
Figure 0006645673
それぞれの吸光度360nmの測定結果を図3にまとめた。
図3を考察すると以下のことが分かる。
図3にみるように、包接添加剤のみを含む溶液では試験区分では360nmの吸光度の優位な上昇は確認されなかった。
ここで、試験区分1の結果は、難水溶性物質であるアゾ色素自体の水への溶解結果を示すものであるところ、試験区分10〜15の結果は、アゾ色素の溶解量が試験区分1とほぼ同等またはかえって低下している。つまり、試験区分10〜15に示されるアゾ色素の溶解性は、アゾ色素そのものが示す水への溶解に起因するものであり、低下しているものは、添加した包接添加剤がかえってアゾ色素の溶解を阻害するように作用していることが分かる。
一方、試験区分16のみは、アゾ色素の溶解量が増えている。つまり、AMPは、アゾ色素の水への溶解を促進する性質があることが分かる。ここで、実験結果1でAMPの試験区分である試験番号9における溶液中に存在するアゾ色素の量のうち、実験結果2の試験区分16における溶液中に存在するアゾ色素の量はAMPが示すアゾ色素の水への溶解分が含まれていると仮定したとしても、差分となる増大分が認められる。この差分となる増大分が、本発明の非融解弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンの持つ難水溶性物質の包接機能の向上分と評価できる。
以上から、包接添加剤として、尿素、塩酸グアニジン、アセトアミド、アセトン、TFE、グリセロール、AMPのいずれも、水素結合性官能基を有する水素結合性分子を包接添加剤として、自然状態の非融解非弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンを本発明の非融解弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンとして変化させて包接能力を増大させたこととが導ける。言い換えると、包接添加剤を共存させることでβ−1,3−1,6−グルカンへのアゾ色素の包接量が増大したということを意味している。
以上、水素結合性分子を包接添加剤として加えた本発明の非融解弛緩のβ‐1,3‐1,6‐グルカンの包接処理能力は、明らかに非処理(非融解非弛緩)のβ‐1,3‐1,6‐グルカンの包接処理能力に比べて向上したことが検証できた。
[実験3]β‐1,3‐1,6‐グルカンの濃度と包接量の関係に関する実験
次に、β‐1,3‐1,6‐グルカンの濃度を変化させた際の本発明の非融解弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンの包接能力の変化について検証する。
試験区分としては比較実験も含めて以下のものを用意した。
β‐1,3‐1,6‐グルカンの濃度が0.001mMから1.0mMまで5種類の濃度の溶液を用意した。それぞれについて、包接添加剤の有無による自然状態であるNative の非融解非弛緩のβ‐1,3‐1,6‐グルカンの試験区分(表3)と、包接添加剤を加えた本発明の非融解弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンの試験区分(表4)を用意した。包接添加剤は代表的に尿素を選んだ。
同様に、比較のために、実験1で使用したβ‐1,3‐1,6‐グルカンも包接添加剤も含まない試験番号1(包接剤なし、包接添加剤なし)とβ‐1,3‐1,6‐グルカンを含むが包接添加剤を含まない非融解非弛緩の試験番号2(非融解非弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンあり、包接添加剤なし)も用意して実験した。
各試験番号17から24のサンプルの調製は実験1にならって、β−1,3−1,6−グルカンの最終濃度がβ−1,3−1,6−グルカン主鎖におけるグルコース濃度で0〜1.0mMになるように、また包接添加剤(尿素)を含むサンプルは尿素濃度が1wt%になるように溶解させた水溶液を調製した。そこに、アゾ色素の最終濃度が0.1mMになるよう、アゾ色素を10mMの濃度で溶解させたメタノールストック溶液を加え(添加したメタノールの最終体積分率は1vol%)、プレートシェーカー上で溶液に振動を与え続け、沈殿形成を促しながら25℃で3時間、振とうした。なお、この際、溶解・分散されなかったアゾ色素は沈殿した。沈殿が完全に沈降するまで、振とう溶液を25℃で30分間静置した後、上澄みの吸光度(360nm)を測定した。上澄みの吸光度(360nm)の測定値は包接されて溶液中に存在するアゾ色素の量に比例している。
実験に用いた試験区分をまとめると以下の[表3]および[表4]である。

Figure 0006645673

Figure 0006645673
それぞれの吸光度360nmの測定結果を図4にまとめた。
実験結果を図4に示す。
図4では、包接添加剤である尿素を含まない試験区分を●印でプロットし、尿素を含む試験区分を■印でプロットしている。
図4を見ると、β‐1,3‐1,6‐グルカンの濃度(主鎖グルコース濃度)が0mMから0.25mMの範囲において、尿素を1wt%含む試験区分において有意にアゾ色素の吸光度が向上しており、アゾ色素がより多く包接されていることが分かる。つまり、包接添加剤である尿素を含まない場合と比較して、包接添加剤である尿素を含む試験区分ではβ‐1,3‐1,6‐グルカンの濃度(主鎖グルコース濃度)が0mMから0.25mMの範囲で明らかにアゾ色素の分散量が上昇することが示された。
一方、0.25mMより大きい濃度範囲では濃度比の関係で包接添加剤存在下、非存在下で分散挙動に差がないことが示された。これは包接剤であるグルカンが過剰となり、包接添加剤によって弛緩しなくとも高分子鎖末端等に十分な包接領域があるためと推察される。
[実験4] 包接添加剤の濃度変化の影響に関する実験
次に、包接添加剤の添加濃度を変化させた際の本発明の非融解弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンの包接能力の変化について検証する。
試験区分としては比較実験も含めて以下のものを用意した。
包接添加剤の濃度が0.05wt%から1wt%まで5種類の濃度の溶液を用意した(表5)。それぞれについて、非融解弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンの濃度は、0.01mMであり。なお、包接添加剤は代表的に尿素を選んだ。
同様に、比較のために、実験1で使用したβ‐1,3‐1,6‐グルカンも包接添加剤も含まない試験番号1(包接剤なし、包接添加剤なし)とβ‐1,3‐1,6‐グルカンを含むが包接添加剤を含まない非融解非弛緩の試験番号2(非融解非弛緩β‐1,3‐1,6‐グルカンあり、包接添加剤なし)も用意して実験した。
各試験番号26から30のサンプルの調製は実験1にならって、β−1,3−1,6−グルカンの最終濃度がβ−1,3−1,6−グルカン主鎖におけるグルコース濃度で0.01mMになるように、また包接添加剤(尿素)を含むサンプルは尿素濃度が0〜20wt%になるように溶解させた水溶液を調製した。そこに、アゾ色素の最終濃度が0.1mMになるよう、アゾ色素を10mMの濃度で溶解させたメタノールストック溶液を加え(添加したメタノールの最終体積分率は1vol%)、プレートシェーカー上で溶液に振動を与え続け、沈殿形成を促しながら25℃で3時間、振とうした。なお、この際、溶解・分散されなかったアゾ色素は沈殿した。沈殿が完全に沈降するまで、振とう溶液を25℃で30分間静置した後、上澄みの吸光度(360nm)を測定した。上澄みの吸光度(360nm)の測定値は包接されて溶液中に存在するアゾ色素の量に比例している。
実験に用いた試験区分をまとめると以下の[表5]である。

Figure 0006645673
それぞれの吸光度360nmの測定結果を図5にまとめた。
図5に示すように、0.01から0.1wt%にかけて360nmの吸光度が上昇し、1wt%で飽和を迎えた。すなわち、包接添加剤が含まれていればβ−1,3−1,6−グルカンへの包接は促進され、0.01wt%以上、好ましくは0.1wt%以上の濃度で含まれればアゾ色素の包接量が向上することが示された。
つまり、包接添加剤の濃度が大きくなると、β‐1,3‐1,6‐グルカンの三重鎖構造の弛緩が進み、“隙間”が一層大きくなるが、ある程度のところでその“隙間”を拡げる作用も飽和することが確認できた。
以上、本発明の難水溶性物質包接剤の好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
本発明の難水溶性物質包接剤は、難溶性を示す難水溶性物質、一例として、β-カロテン、ビタミンE、カテキン、タンニン酸、プロトポルフィリンIX、フラーレン、ジチオフェンターチオフェン、酸化チタンナノ粒子、アゾ色素など多様な難水溶性物質に対して広く汎用的に可溶化処理に適用することができる。

Claims (8)

  1. 難水溶性物質を包接し得る包接剤であって、
    三重鎖構造のβ‐1,3‐1,6‐グルカンに対して、水素結合性官能基を備えた水素結合性分子であるアルコール化合物、アミド化合物、ケトン化合物、イミン化合物、アミン化合物、カルボン酸化合物、さらに、複数の水素結合性官能基を分子内に併せ持つ分子、またはその縮合物から選ばれたいずれか、または、それらの組み合わせを主成分とするものを包接添加剤として添加し、前記三重鎖構造のβ‐1,3‐1,6‐グルカンを一本鎖ランダムコイル構造へと融解させる条件の強アルカリ性溶液または非プロトン性極性溶液の添加剤を添加することなく、前記三重鎖構造のβ‐1,3‐1,6‐グルカンを非融解弛緩状態に変化させたものを主成分とした難水溶性物質包接剤。
  2. 前記水素結合性官能基を備えた水素結合性分子である、前記アルコール化合物が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2‐メトキシエタノール、エチレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、キシリトール、グルコース、フルクトース、マルトース、スクロース、ラクトース、トレハロース、フェノール、ベンジルアルコール、トリフルオロエタノール、1,1,1,3,3,3‐ヘキサフルオロ‐2‐プロパノールのいずれかまたはそれらの組み合わせであり、
    前記水素結合性官能基を備えた水素結合性分子である、前記アミド化合物が、尿素、アセトアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、N‐メチルアセトアミド、N,N‐ジメチルホルムアミドのいずれかまたはそれらの組み合わせであり、
    前記水素結合性官能基を備えた水素結合性分子である、前記ケトン化合物が、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンのいずれかまたはそれらの組み合わせであり、
    前記水素結合性官能基を備えた水素結合性分子である、前記イミン化合物が、アミジン、グアニジン、塩酸グアニジン、N‐ヒドロキシイミンのいずれかまたはそれらの組み合わせであり、
    前記水素結合性官能基を備えた水素結合性分子である、前記アミン化合物が、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、N,N‐ジイソプロピル‐N‐エチルアミン、エチレンジアミン、N‐メチルエチレンジアミン、N,N‐ジメチルエチレンジアミン、N,N’‐ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’‐トリメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’ ‐テトラメチルエチレンジアミン、ピペリジン、モルホリン、N‐メチルモルホリン、ピペラジン、スペルミン、スペルミジン、アニリンのいずれかまたはそれらの組み合わせであり、
    前記水素結合性官能基を備えた水素結合性分子である、前記カルボン酸化合物が、酢酸、プロピオン酸、吉草酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、マレイン酸、ピルビン酸、安息香酸のいずれかまたはそれらの組み合わせであり、
    前記複数の水素結合性官能基を分子内に併せ持つ分子が、アミノエタノール、2‐アミノ‐2‐メチルプロパノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N‐ヒドロキシエチルピペラジン、カテコールアミン、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、アミノ酸(アルギニン、リジン、グリシン、アラニン、ロイシン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸のいずれかまたはそれらの組み合わせである請求項1に記載の難水溶性物質包接剤。
  3. 前記難水溶性物質が難水溶性のビタミン及びその誘導体、カロテノイドおよびその誘導体、テルペンおよびその誘導体、脂肪酸およびその誘導体、ポリフェノール及びその誘導体、難水溶性の薬剤及びその誘導体、難水溶性の染色剤及びそれらの誘導体、難水溶性の炭素素材及びその誘導体、難水溶性の導電性高分子及びその誘導体、難水溶性のナノ粒子、難水溶性の顔料及びその誘導体のいずれか、または、それらの組み合わせである請求項1または2に記載の難水溶性物質包接剤。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の難水溶性物質包接剤を用いて包接させ、包接した難水溶性物質包含剤。
  5. 難水溶性物質を包接する方法であって、
    三重鎖構造のβ‐1,3‐1,6‐グルカンに対して、水素結合性官能基を有する水素結合性分子を包接添加剤として、前記三重鎖構造のβ‐1,3‐1,6‐グルカンを一本鎖ランダムコイル構造へと融解するには至らない条件にて添加して、前記三重鎖構造のβ‐1,3‐1,6‐グルカンを非融解弛緩状態に変化させたものを主成分としたものを難水溶性物質包接剤として使用し、
    前記難水溶性物質を包含する溶液に対して、前記難水溶性物質包接剤を投入し、包接させる難水溶性物質の包接方法。
  6. 前記水素結合性官能基を有する水素結合性分子である包接添加剤が、アルコール化合物、アミド化合物、ケトン化合物、イミン化合物、アミン化合物、カルボン酸化合物、さらに、複数の水素結合性官能基を分子内に併せ持つ分子、またはその縮合物から選ばれたいずれか、または、それらの組み合わせを主成分とするものである請求項5に記載の難水溶性物質の包接方法。
  7. 前記難水溶性物質が難水溶性のビタミン及びその誘導体、ポリフェノール及びその誘導体、難水溶性の薬剤及びその誘導体、難水溶性の染色剤及びそれらの誘導体、難水溶性の炭素素材及びその誘導体、難水溶性の導電性高分子及びその誘導体、難水溶性のナノ粒子、難水溶性の顔料及びその誘導体のいずれか、または、それらの組み合わせである請求項5または6に記載の難水溶性物質の包接方法。
  8. 請求項5から7のいずれか1項に記載の難水溶性物質の包接方法を用いて前記難水溶性物質を包接させ、包接した難水溶性物質包含剤の製造方法。
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