JP6643692B1 - はんだペースト - Google Patents

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Abstract

【課題】製造効率や保存安定性を損なうことなく、ボイドの発生の少ないはんだ付けを実現でき、かつ、増粘抑制効果を有し、濡れ性に優れ、液相線温度と固相線温度との温度差が小さく高い機械的特性を有するはんだペーストを提供すること。【解決手段】樹脂、グリコール系溶剤及び有機酸エステルを含む、はんだ付け用フラックス;及びAs:25〜300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、及び残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式:275≦2As+Bi+Pb (1)0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2)[上記(1)式及び(2)式中、As、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]を満たすはんだ合金;を含む、はんだペースト。【選択図】なし

Description

本発明は、はんだペーストに関する。
近年、電子部品の表面実装等においては、あらかじめ常温で塗布又は接着しておいたはんだを、後から加熱溶融してはんだ付けする、リフローはんだ付けが行われている。
はんだペーストを用いたリフローはんだ付けの場合、はんだペーストは、主に、はんだ粉末と、樹脂成分、溶剤及び各種添加剤を含むフラックスとからなり、これをスクリーン印刷等によって接合予定部分に塗布、加熱することによってはんだ付けが行われる。
ところで、フラックスに添加される添加剤の中には有機酸等の揮発成分も含まれるところ、揮発成分ははんだ付けの際の加熱によりガス化する。また、無鉛系はんだを用いる場合にははんだ付け温度が高温となるため、揮発成分以外のフラックス成分も分解することがある。そのため、リフローはんだ付けにおいては、このような揮発ガスや分解ガスに起因するボイドがはんだ付け部に発生するという問題がある。
この点、特許文献1には、低分子二塩基酸ジアルキルエステル化合物を添加してフラックスの分解を防ぐことによってボイドの発生を低減することが開示されている(特許文献1)。
また、近年、電極の小型化が進むにつれて、はんだペーストの印刷面積も狭小化が進んでいることから、購入したはんだペーストを使い切るまでの時間は長期化している。はんだペーストは、はんだ粉末とフラックスを混錬したものであり、保管期間が長期に渡る場合には、保管状況によってははんだペーストの粘度が上がってしまい、購入当初の印刷性能を発揮することができないことがある。
そこで、例えば特許文献2には、はんだペーストの経時変化を抑制するため、Snと、Ag、Bi、Sb、Zn、In及びCuからなる群から選択される1種又は2種以上と、を含み、かつ、所定量のAsを含むはんだ合金が開示されている。同文献には、25℃で2週間後の粘度が作製当初の粘度と比較して140%未満である結果が示されている。
特開2007−136491号公報 特開2015−98052号公報
しかしながら、特許文献1で使用されている低分子二塩基酸ジアルキルエステル化合物を含むフラックスは、増粘抑制の観点からは未だ十分であるとはいえない。
特許文献2には、As含有量が多いと溶融性が劣る結果が示されており、当該溶融性は、溶融はんだの濡れ性に相当すると考えられる。一般に、溶融はんだの濡れ性を向上させるためには高活性のフラックスを用いる必要がある。特許文献2に記載のフラックスにおいて、Asによる濡れ性の劣化が抑制されるためには、高活性のフラックスを用いればよいと考えられる。しかし、高活性のフラックスを用いるとフラックスの粘度上昇率が上がってしまう。また、特許文献2の記載を鑑みると、粘度上昇率の上昇を抑えるためにはAs含有量を増加させる必要がある。特許文献2に記載のはんだペーストが更に低い粘度上昇率と優れた濡れ性を示すためには、フラックスの活性力とAs含有量を増加しつづける必要があり、悪循環を招くことになる。
また、微細な電極を接合するためには、はんだ継手の機械的特性等を向上させる必要がある。元素によっては、含有量が多くなると液相線温度が上昇して液相線温度と固相線温度が広がり、凝固時に偏析して不均一な合金組織が形成されてしまう。はんだ合金がこのような合金組織を有すると、引張強度などの機械的特性が劣り外部からの応力により容易に破断してしまう。この問題は、近年の電極の小型化にともない顕著になってきている
そこで、本発明は、製造効率や保存安定性を損なうことなく、ボイドの発生の少ないはんだ付けを実現でき、かつ、増粘抑制効果を有し、濡れ性に優れ、液相線温度と固相線温度との温度差が小さく高い機械的特性を有するはんだペーストを提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、はんだ付け時におけるフラックスの溶融粘度が低ければ、仮に揮発ガスや分解ガスが発生したとしても樹脂成分が固化する前に速やかにはんだ付け部から抜け出すことができ、ボイドとして残存することがないことに気が付いた。
そして、はんだ付け時のフラックスの溶融粘度は、フラックス中に存在している溶剤の量と関係があり、はんだ付けの際(接合時)の加熱により揮発するなどして溶剤量が減ると溶融粘度は上昇するが、溶剤が十分な量残存していれば溶融粘度は低く、その結果、はんだ付け時に揮発ガスや分解ガスが発生してもはんだ付け部から抜けきることが判明した。
もっとも、はんだ付け時にフラックス中に溶剤が十分な量残存するよう、溶剤として低揮発性のものを用いると、はんだ付け時における溶融粘度を低くすることはできるが、今度は、接合時に加熱をしても十分に乾燥させることができず、はんだ付け部表面がべたつき、ごみ等が付着するという別の問題が生じる。
そこで、接合後の乾燥性にも留意しながら、さらなる研究を重ねた結果、溶剤としてグリコール系溶剤と有機酸エステルとを併用した場合には、乾燥性及びはんだ付け時における低溶融粘度という相反する要求を両立するフラックスとすることができ、ボイド発生の問題を解決できることを見出した。
しかも、有機酸エステルは、グリコール系溶剤やロジン樹脂等の一般的なフラックスの主成分との相溶性も良好であるため、フラックスに添加しても、その製造効率や保存安定性を損なうこともない。
また、本発明者らは、BiとPbがAsと同様の増粘抑制効果を発揮する知見を得た。この理由は定かではないが、以下のように推察される。
増粘抑制効果はフラックスとの反応を抑制することにより発揮されることから、フラックスとの反応性が低い元素として、イオン化傾向が低い元素が挙げられる。一般に、合金のイオン化は、合金組成としてのイオン化傾向、すなわち標準電極電位で考える。例えば、Snに対して貴なAgを含むSnAg合金はSnよりもイオン化し難い。このため、Snよりも貴な元素を含有する合金はイオン化し難いことになり、はんだペーストの増粘抑制効果が高いと推察される。
ここで、特許文献2では、Sn、Ag、Cuの他に、Bi、Sb、Zn、及びInが等価な元素として掲げられているが、イオン化傾向としては、In及びZnはSnに対して卑な元素である。つまり、特許文献2にはSnより卑な元素を添加しても増粘抑制効果が得られることが記載されていることになる。このため、イオン化傾向に則して選定された元素を含有するはんだ合金は、特許文献2に記載のはんだ合金と比較して同等以上の増粘抑制効果が得られると考えられる。また、前述のように、As含有量が増加すると濡れ性が劣化してしまう。
本発明者らは、増粘抑制効果として知見したBi及びPbについて詳細に調査した。Bi及びPbははんだ合金の液相線温度を下げるため、はんだ合金の加熱温度が一定である場合、はんだ合金の濡れ性を向上させる。ただ、含有量によっては固相線温度が著しく低下するため、液相線温度と固相線温度との温度差であるΔTが広くなりすぎる。ΔTが広くなりすぎると凝固時に偏析が生じてしまい、機械的強度等の機械的特性の低下に繋がってしまう。ΔTが広がる現象は、Bi及びPbを同時に添加した場合に顕著に表れることから、厳密な管理が必要である。
Sn、SnCuはんだ合金、及びSnAgCuはんだ合金において、増粘抑制効果、優れた濡れ性、及びΔTの狭窄化、のすべてが優れた結果を示すためには、As、Bi、及びPbの含有量を個々に管理するのではなく、これらの元素の含有量を総合的に管理する必要があると考えた。そこで、本発明者らは、これらの3元素の含有量に関して種々の検討を行った結果、偶然にも、各元素の含有量が所定量の範囲内において所定の関係式を満たす場合に、増粘抑制効果、濡れ性、及びΔTの狭窄化のすべてが優れた結果を示す知見を得た。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
樹脂、グリコール系溶剤及び有機酸エステルを含む、はんだ付け用フラックス;及び
As:25〜300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、及び残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式:
275≦2As+Bi+Pb (1)
0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2)
[上記(1)式及び(2)式中、As、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]
を満たすはんだ合金;
を含む、はんだペースト。
[2]
さらに、有機酸を含む、上記[1]に記載のはんだペースト。
[3]
さらに、活性剤を含む、上記[1]に記載のはんだペースト。
[4]
前記有機酸エステルの含有量が、0質量%超20質量%以下である、上記[1]〜[3]いずれかに記載のはんだペースト。
[5]
前記有機酸エステルの含有量が、5〜15質量%の範囲内である、上記[4]に記載のはんだペースト。
[6]
前記グリコール系溶剤の含有量(質量%)に対する、前記有機酸エステルの含有量(質量%)の比(有機酸エステル含有量/グリコール系溶剤の含有量)が、0.01〜1.25である、上記[1]〜[5]いずれかに記載のはんだペースト。
[7]
前記グリコール系溶剤の含有量(質量%)に対する、前記有機酸エステルの含有量(質量%)の比(有機酸エステル含有量/グリコール系溶剤の含有量)が、0.15〜0.72である、上記[6]に記載のはんだペースト。
[8]
ロジン系樹脂を30〜60質量%、グリコール系溶剤を10〜60質量%、有機酸エステルを0.5〜30質量%、及び、有機酸を1〜15質量%の範囲内で含む、はんだ付け用フラックス;及び
As:25〜300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、及び残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式:
275≦2As+Bi+Pb (1)
0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2)
[上記(1)式及び(2)式中、As、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]
を満たすはんだ合金;
を含む、はんだペースト。
[9]
前記グリコール系溶剤の含有量(質量%)に対する、前記有機酸エステルの含有量(質量%)の比(有機酸エステル含有量/グリコール系溶剤の含有量)が、0.01〜1.25である、上記[8]記載のはんだペースト。
[10]
さらに、チキソ剤及び/又は酸化防止剤を含む、上記[1]〜[9]いずれかに記載のはんだペースト。
[11]
前記有機酸エステルが、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジイソプロピル、マレイン酸ジブチル、セバシン酸ジメチル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジブチル、及びセバシン酸シオクチルからなる群より選ばれる1種以上である、上記[1]〜[10]いずれかに記載のはんだペースト。
[12]
前記合金組成はが、下記(1a)式:
275≦2As+Bi+Pb≦25200 (1a)
[上記(1a)式中、As、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]
を満たす、上記[1]〜[11]のいずれかに記載のはんだペースト。
[13]
前記合金組成が、下記(1b)式:
275≦2As+Bi+Pb≦5300 (1b)
[上記(1b)式中、As、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]
を満たす、上記[1]〜[12]のいずれかに記載のはんだペースト。
[14]
前記合金組成が、下記(2a)式:
0.02≦2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦0.9 (2a)
[上記(2a)式中、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]
を満たす、上記[1]〜[13]のいずれかに記載のはんだペースト。
[15]
さらに、前記合金組成が、Ag:0〜4質量%及びCu:0〜0.9質量%の少なくとも1種を含有する、上記[1]〜[14]のいずれかに記載のはんだペースト。
[16]
さらに、酸化ジルコニウム粉末を有する、上記[1]〜[15]のいずれかに記載のはんだペースト。
[17]
前記酸化ジルコニウム粉末を前記はんだペーストの全質量に対して0.05〜20.0質量%含有する、上記[16]に記載のはんだペースト。
[18]
As:25〜300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、及び残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式:
275≦2As+Bi+Pb (1)
0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2)
[上記(1)式及び(2)式中、As、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]
を満たすはんだ合金をはんだ付けするための、
樹脂、グリコール系溶剤及び有機酸エステルを含むフラックス。
[19]
As:25〜300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、及び残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式:
275≦2As+Bi+Pb (1)
0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2)
[上記(1)式及び(2)式中、As、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]
を満たすはんだ合金をはんだ付けするための、
ロジン系樹脂を30〜60質量%、グリコール系溶剤を10〜60質量%、有機酸エステルを0.5〜30質量%、及び有機酸を1〜15質量%の範囲内で含むフラックス。
本発明によれば、製造効率や保存安定性を損なうことなく、ボイドの発生の少ないはんだ付けを実現でき、かつ、増粘抑制効果を有し、濡れ性に優れ、液相線温度と固相線温度との温度差が小さく高い機械的特性を有するはんだペーストを提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
本実施形態は、樹脂、グリコール系溶剤及び有機酸エステルを含む、はんだ付け用フラックス;及び
As:25〜300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、及び残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式:
275≦2As+Bi+Pb (1)
0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2)
[上記(1)式及び(2)式中、As、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]
を満たすはんだ合金;
を含む、はんだペーストに関する。
<フラックス>
はんだ付け用フラックスは、樹脂(ベース樹脂)及び溶剤と、必要に応じて各種添加剤を含むものであって、溶剤として、少なくともグリコール系溶剤及び有機酸エステルを含む。
樹脂としては、従来はんだ付け用フラックスに使用されている各種樹脂を使用することができる。このような樹脂としては、例えば、ロジン系樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、及び、これらの混合物が挙げられ、この中でも、ロジン系樹脂が一般的によく用いられている。
ロジン系樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン等の天然ロジンや、その誘導体(重合ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、酸変性ロジン、ロジンエステル等)が挙げられる。
フラックス中の樹脂の含有量に限定はなく、例えば、10〜80質量%の範囲内とすることができ、20〜70質量%の範囲内としてもよいし、30〜60質量%の範囲内としてもよい。
本実施形態においては、溶剤として、少なくともグリコール系溶剤及び有機酸エステルを用いる。このような有機酸エステルは沸点が適度な範囲にあり、一般的なはんだ付けで採用される接合温度においては、接合初期にはフラックス中に残存してフラックスの溶融粘度を低く保ち、分解ガス等の解放を容易にしつつ、接合後期にはある程度揮発する。
ここで、グリコール系溶剤とは、グリコール(脂肪族又は脂環式炭化水素の2つの相異なる炭素原子に1つずつ水酸基が結合している構造を有する化合物)又はその誘導体からなる溶剤をいう。本実施形態において、グリコール系溶剤の種類に限定はなく、例えば、はんだ付け用フラックスに一般的に使用されているものを用いることができ、具体例としては、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、フェニルグリコール、ヘキシルジグリコール、2−エチルヘキシルジグリコールに加え、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルカルビトール)、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコールエーテル類が挙げられる。これらのうち、炭素数2〜24のアルコールのグリコールエーテル(具体的には、モノグリコールエーテル(炭素数:4〜26)、ジグリコールエーテル(炭素数:6〜28)、オリゴグリコールエーテル(炭素数:2+2×n〜24+2×n))が好ましく、炭素数4〜16のアルコールのグリコールエーテルがより好ましく、炭素数6〜8のアルコールのグリコールエーテルが特に好ましい。
グリコール系溶剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
フラックス中のグリコール系溶剤の含有量(複数種類のグリコール系溶剤を用いる場合はその総含有量)にも限定はなく、例えば、10〜60質量%の範囲内としてもよいし、15〜50質量%の範囲内としてもよいし、20〜45質量%の範囲内としてもよい。
本実施形態においては、溶剤として、上記グリコール系溶剤に加えて有機酸エステルを併用する。これにより、はんだ付け時において溶融粘度の低いフラックスを実現することができる。
有機酸エステルを含むフラックスは、ソルダペーストの保管中におけるはんだ合金粉末と活性剤との反応を抑制し得るため、活性剤の活性度や配合量を調整せずともその活性力は残存され、はんだ付け時における良好なぬれ性を確保し、ボイドの発生を抑制することができる。
有機酸エステルとしては、例えば、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジイソプロピル、マレイン酸ジブチル、セバシン酸ジメチル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸シオクチル等が挙げられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
フラックス中の有機酸エステルの含有量(複数種類の有機酸エステルを用いる場合はその総含有量)に限定はないが、0.5質量%以上としてもよいし、1質量%以上としてもよいし、5質量%以上とすることもできる。一方、フラックスやソルダペーストの乾燥不良をなくし、べたつきを抑えるという点からは含有量は少ない方が好ましく、例えば、30質量%以下としてもよいし、20質量%以下としてもよいし、15質量%以下とすることもできる。
また、グリコール系溶剤の含有量(質量%)に対する有機酸エステルの含有量(質量%)(複数種類用いる場合はその総量)の比(有機酸エステル含有量/グリコール系溶剤の含有量)にも限定はないが、ボイド発生の防止の点からは、0.01〜1.25であることが好ましく、0.15〜1.25であることがより好ましく、0.15〜0.72であることがさらに好ましい。
本実施形態においては、グリコール系溶剤及び有機酸エステルに加えてさらに、他の公知の溶剤を併用することもできる。このような溶剤としては、例えば、ベンジルアルコール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、テルピネオール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール類;トルエン、キシレン、n−ヘキサン等の炭化水素類;酢酸イソプロピル、安息香酸ブチル等のエステル類が挙げられ、これらの一種又は二種以上用いることができる。
本実施形態のフラックスは、樹脂及び溶剤に加えて、活性剤、チキソ剤(チキソトロピック剤)及び酸化防止剤や、防錆剤、消泡剤、つや消し剤、界面活性剤、着色剤等のフラックスに添加されることのある各種添加剤を含有することができる。
活性剤としては、例えば、有機酸類、アミン類、有機ハロゲン化合物類、アミンハロゲン化水素酸塩類、ホスホン酸類、燐酸エステル類等のフラックスにおいて一般に使用されているものを、一種又は二種以上を組合せて用いることができる。
フラックス中の活性剤の含有量に限定はなく、例えば、0〜30質量%の範囲内であってもよいし、0〜20質量%の範囲内であってもよい。
このうち、有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、安息香酸、グリコール酸等のモノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、ピメリン酸、ジグリコール酸等のジカルボン酸又はその無水物;乳酸、クエン酸、酒石酸等のオキシ酸;ダイマー酸、水添ダイマー酸、トリマー酸、水添トリマー酸、ピコリン酸等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。また、炭素数8以上の高級飽和又は不飽和脂肪酸等も使用できる。
これらの有機酸の中には揮発性のものや、その沸点がはんだ付け温度よりも低いものも多く含まれるところ、そのようなものははんだ付けの際にボイドの原因となるガスを発生しやすい。しかし、本実施形態においては、ガスが発生したとしてもボイドとしてはんだ付け部に残存することがないので、本実施形態はフラックスが揮発性や沸点の低い有機酸を含む場合に特に有効である。
フラックス中の有機酸の含有量に限定はなく、例えば、1〜15質量%の範囲内であってもよく、3〜10質量%の範囲内であってもよい。
アミンとしては、例えば、ジフェニルグアニジン、ジトリルグアニジン、ナフチルアミン、トリエタノールアミンや、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられる。
フラックス中のアミンの含有量に限定はなく、例えば、0〜10質量%の範囲内であってもよく、0〜5質量%の範囲内であってもよい。
有機ハロゲン化合物としては、例えば、臭素化された有機化合物が挙げられ、具体的には、1−ブロモ−2−ブタノール、1−ブロモ−2−プロパノール、3−ブロモ−1−プロパノール、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、1,3−ジブロモ−2−プロパノール、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4ジオール等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。
フラックス中の有機ハロゲン化合物の含有量に限定はなく、例えば、0〜10質量%の範囲内であってもよく、0〜5質量%の範囲内であってもよい。
アミンハロゲン化水素酸塩類としては、例えば、臭化水素酸(HBr)、塩化水素酸(HCl)、フッ化水素酸(HF)等のハロゲン化水素酸と、アニリン、ジフェニルグアニジン、ジエチルアミン、イソプロピルアミン等のアミン化合物とを組合せた塩が挙げられる。また、アミンハロゲン化水素酸塩類同等物として、テトラフルオロホウ酸(HBF4)と、アミン化合物とを組合せた塩も用いることができる。
フラックス中のアミンハロゲン化水素酸塩類等の含有量に限定はなく、例えば、0〜5質量%の範囲内であってもよく、0〜2質量%の範囲内であってもよい。
なお、本実施形態において、上述した有機酸類、アミン類、有機ハロゲン化合物類、アミンハロゲン化水素酸塩類や、ホスホン酸類、燐酸エステル類等は、活性剤として添加することができるが、それ以外の役割を果たすこともあり、そのような意図で添加してもよい。
本実施の形態のフラックスは、チキソ剤を含んでいてもよい。
チキソ剤としては、ワックス系チキソ剤、アマイド系チキソ剤、ソルビトール系チキソ剤等が挙げられる。ワックス系チキソ剤としては例えばヒマシ硬化油等が挙げられる。アマイド系チキソ剤としては、モノアマイド系チキソ剤、ビスアマイド系チキソ剤、ポリアマイド系チキソ剤が挙げられ、具体的には、ラウリン酸アマイド、パルミチン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド、飽和脂肪酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、不飽和脂肪酸アマイド、p−トルエンメタンアマイド、芳香族アマイド、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、飽和脂肪酸ビスアマイド、メチレンビスオレイン酸アマイド、不飽和脂肪酸ビスアマイド、m−キシリレンビスステアリン酸アマイド、芳香族ビスアマイド、飽和脂肪酸ポリアマイド、不飽和脂肪酸ポリアマイド、芳香族ポリアマイド、置換アマイド、メチロールステアリン酸アマイド、メチロールアマイド、脂肪酸エステルアマイド等が挙げられる。ソルビトール系チキソ剤としては、ジベンジリデン−D−ソルビトール、ビス(4−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール等が挙げられる。
また、本実施の形態のフラックスは、チキソ剤としてエステル化合物を含んでいてもよい。エステル化合物としては、例えば、ヒマシ硬化油等が挙げられる。
フラックスに含まれるチキソ剤の合計量は、0質量%以上15質量%以下であることが好ましく、0質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。また、アマイド系チキソ剤の含有量は好ましくは0質量%以上12質量%以下であり、エステル化合物の含有量は好ましくは0質量%以上8.0質量%以下、より好ましくは0質量%以上4.0質量%以下である。
酸化防止剤としては、例えば、フラックス又はその他の各種分野で使用されているヒンダードフェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリマー型酸化防止剤等を使用することができ、これらの一種又は二種以上用いることができる。
フラックス中の酸化防止剤の含有量に限定はなく、例えば、0〜10質量%の範囲内であってもよいし、0〜5質量%の範囲内であってもよい。
本実施形態のはんだ付け用フラックスの好ましい組成の一例としては、ロジン系樹脂を30〜60質量%、グリコール系溶剤を20〜45質量%、有機酸エステルを5〜20質量%、有機酸を1〜15質量%の範囲内で含むものが挙げられる。
<はんだ合金>
Asは、はんだペーストの粘度の経時変化を抑制することができる元素である。Asはフラックスとの反応性が低く、またSnに対して貴な元素であるために増粘抑制効果を発揮することができると推察される。Asが25質量ppm未満であると、増粘抑制効果を十分に発揮することができない。As含有量の下限は25質量ppm以上であり、好ましくは50質量ppm以上であり、より好ましくは100質量ppm以上である。一方、Asが多すぎるとはんだ合金の濡れ性が劣化する。As含有量の上限は300質量ppm以下であり、このましくは250質量ppm以下であり、より好ましくは200質量ppm以下である。
Bi及びPbはフラックスとの反応性が低く増粘抑制効果を示す元素である。また、これらの元素は、はんだ合金の液相線温度を下げるとともに溶融はんだの粘性を低減させるため、Asによる濡れ性の劣化を抑えることができる元素である。
Bi及びPbの少なくとも1元素が存在すれば、Asによる濡れ性の劣化を抑えることができる。本実施形態に係るはんだ合金がBiを含有する場合、Bi含有量の下限は0質量ppm超えであり、好ましくは25質量ppm以上であり、より好ましくは50質量ppm以上であり、さらに好ましくは75質量ppm以上であり、特に好ましくは100質量ppm以上であり、最も好ましくは250質量ppm以上である。本実施形態に係るはんだ合金がPbを含有する場合、Pb含有量の下限は0質量ppm超えであり、好ましくは25質量ppm以上であり、より好ましくは50質量ppm以上であり、さらに好ましくは75質量ppm以上であり、特に好ましくは100質量ppm以上であり、最も好ましくは250質量ppm以上である。
一方、これらの元素の含有量が多すぎると、固相線温度が著しく低下するため、液相線温度と固相線温度との温度差であるΔTが広くなりすぎる。ΔTが広すぎると、溶融はんだの凝固過程において、BiやPbの含有量が少ない高融点の結晶相が析出するために液相のBiやPbが濃縮される。その後、さらに溶融はんだの温度が低下すると、BiやPbの濃度が高い低融点の結晶相が偏析してしまう。このため、はんだ合金の機械的強度等が劣化することになる。特に、Bi濃度が高い結晶相は硬くて脆いため、はんだ合金中で偏析すると機械的強度等が著しく低下する。
このような観点から、本実施形態に係るはんだ合金がBiを含有する場合、Bi含有量の上限は25000質量ppm以下であり、好ましくは10000質量ppm以下であり、より好ましくは1000質量ppm以下であり、さらに好ましくは600質量ppm以下であり、特に好ましくは500質量ppm以下である。本実施形態に係るはんだ合金がPbを含有する場合、Pb含有量の上限値は8000質量ppm以下であり、好ましくは5100質量ppm以下であり、より好ましくは5000質量ppm以下であり、さらに好ましくは1000質量ppm以下であり、特に好ましくは850質量ppm以下であり、最も好ましくは500質量ppm以下である。
本実施形態に係るはんだ合金は、下記(1)式を満たす必要がある。
275≦2As+Bi+Pb (1)
上記(1)式中、As、Bi、及びPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
As、Bi及びPbは、いずれも増粘抑制効果を示す元素である。これらの合計が230質量ppm以上である必要がある。(1)式中、As含有量を2倍にしたのは、AsがBiやPbと比較して増粘抑制効果が高いためである。
(1)式が275未満であると、増粘抑制効果が十分に発揮されない。(1)式の下限は275以上であり、好ましくは300以上であり、より好ましくは700以上であり、さらに好ましくは900以上である。一方、(1)の上限は、増粘抑制効果の観点では特に限定されることはないが、ΔTを適した範囲にする観点から、好ましくは25200以下であり、より好ましくは15200以下であり、さらに好ましくは10200以下であり、特に好ましくは8200以下であり、最も好ましくは5300以下である。
上記好ましい態様の中から上限及び下限を適宜選択したものが、下記(1a)式及び(1b)式である。
275≦2As+Bi+Pb≦25200 (1a)
275≦2As+Bi+Pb≦5300 (1b)
上記(1a)及び(1b)式中、As、Bi、及びPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
本実施形態に係るはんだ合金は、下記(2)式を満たす必要がある。
0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2)
上記(2)式中、Bi、及びPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
Bi及びPbは、Asを含有することによる濡れ性の劣化を抑制するが、含有量が多すぎるとΔTが上昇してしまうため、厳密な管理が必要である。特に、Bi及びPbを同時に含有する合金組成では、ΔTが上昇しやすい。本実施形態では、BiとPbの含有量に所定の係数を乗じた値の合計を規定することにより、ΔTの上昇を抑制することができる。(2)式ではPbの係数がBiの係数より大きい。PbはBiと比較してΔTへの寄与度が大きく、含有量が少し増加しただけでΔTが大幅に上昇してしまうためである。
(2)式が0であるはんだ合金は、Bi及びPbの両元素を含有しないことになり、Asを含有したことによる濡れ性の劣化を抑制することができない。(2)式の下限は0超えであり、好ましくは0.02以上であり、より好ましくは0.03以上であり、さらに好ましくは0.05以上であり、特に好ましくは0.06以上であり、最も好ましくは0.11以上である。一方、(2)式が7を超えるとΔTの温度域が広くなりすぎるため、溶融はんだの凝固時にBiやPbの濃度が高い結晶相が偏析して機械的強度等が劣化する。(2)の上限は7以下であり、好ましくは6.56以下であり、より好ましくは6.40以下であり、さらに好ましくは5.75以下であり、さらにより好ましくは4.18以下であり、特に好ましくは2.30以下であり、最も好ましくは0.90以下である。
上記好ましい態様の中から上限及び下限を適宜選択したものが、下記(2a)式である。
0.02≦2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦0.9 (2a)
上記(2a)式中、Bi及びPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
Agは、結晶界面にAg3Snを形成してはんだ合金の機械的強度等を向上させることができる任意元素である。また、Agはイオン化傾向がSnに対して貴な元素であり、As、Pb、及びBiと共存することによりこれらの増粘抑制効果を助長する。Ag含有量は好ましくは0〜4%であり、より好ましくは0.5〜3.5%であり、さらに好ましくは1.0〜3.0%である。
Cuは、はんだ継手の接合強度を向上させることができる任意元素である。また、Cuはイオン化傾向Snに対して貴な元素であり、As、Pb、及びBiと共存することによりこれらの増粘抑制効果を助長する。Cu含有量は好ましくは0〜0.9%であり、より好ましくは0.1〜0.8%%であり、さらに好ましくは0.2〜0.7%である。
本実施形態に係るはんだ合金の残部はSnである。前述の元素の他に不可避的不純物を含有してもよい。不可避的不純物を含有する場合であっても、前述の効果に影響することはない。また、後述するように、本実施形態では含有しない元素が不可避的不純物として含有されても前述の効果に影響することはない。Inは、含有量が多すぎるとΔTが広がるため、1000質量ppm以下であれば前述の効果に影響することはない。
<はんだペースト>
はんだペースト中のはんだ合金及びフラックスの含有量に限定はなく、例えば、はんだ合金を5〜95質量%、フラックスを5〜95質量%とすることができる。
本実施形態に係るはんだペーストは、酸化ジルコニウム粉末を含有することが好ましい。酸化ジルコニウムは、経時変化に伴うペーストの粘度上昇を抑制することができる。これは、酸化ジルコニウムを含有することにより、はんだ粉末表面の酸化膜厚がフラックス中に投入する前の状態を維持するためと推測される。詳細は不明であるが、以下のように推察される。通常、フラックスの活性成分は常温でもわずかに活性を持っているため、はんだ粉末の表面酸化膜が還元により薄くなり、粉末同士が凝集する原因になっている。そこで、はんだペーストに酸化ジルコニウム粉末を添加することで、フラックスの活性成分が酸化ジルコニウム粉末と優先的に反応し、はんだ粉末表面の酸化膜が凝集しない程度に維持されると推察される。
このような作用効果を十分に発揮するためには、はんだペースト中の酸化ジルコニウム粉末の含有量ははんだペーストの全質量に対して0.05〜20.0%であることが好ましい。0.05%以上であると上記作用効果を発揮することができ、20.0%以下であると金属粉末の含有量を確保することができ、増粘防止効果を発揮することができる。酸化ジルコニウムの含有量は好ましくは0.05〜10.0%であり、より好ましい含有量は0.1〜3%である。
はんだペースト中の酸化ジルコニウム粉末の粒径は5μm以下であることが好ましい。粒径が5μm以下であるとペーストの印刷性を維持することができる。下限は特に限定されることはないが0.5μm以上であればよい。上記粒径は、酸化ジルコニウム粉末のSEM写真を撮影し、0.1μm以上の各粉末について画像解析により投影円相当径を求め、その平均値とした。
酸化ジルコニウムの形状は特に限定されないが、異形状であればフラックスとの接触面積が大きく増粘抑制効果がある。球形であると良好な流動性が得られるためにペーストとしての優れた印刷性が得られる。所望の特性に応じて適宜形状を選択すればよい。
本実施形態のはんだ付け用フラックス及びはんだペーストの製造方法に限定はなく、原料を同時に又は順次、任意の方法で混合することにより製造することができる。
フラックスの製造にあたっては、最終的にフラックスの全成分が混合されればよく、グリコール系溶剤と有機酸エステルは予め混合して混合溶剤としておいてもよいし、別々のタイミングでフラックスの他の成分と混合してもよいし、グリコール系溶剤と有機酸エステルを含むフラックスの全成分を同時に混合してもよい。
また、はんだペーストの製造にあたっても、必ずしも、フラックスを予め調製して、これをはんだ合金とを混合する必要はなく、最終的にフラックスの全成分、はんだ合金及び必要に応じてはんだペーストに添加される添加剤とが混合されるのであれば混合の順番は問わず、フラックスの成分の一部とはんだ合金とを混合した後、フラックスの残りの成分を添加するなどしてもよい。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
<フラックスの検討>
原料を表に示す配合で混合し、実施例A1〜A74及び比較例A1、A2のフラックスを調製した。なお、各原料は相溶し、容易に混合することができた。
実施例、比較例のフラックスについて、ボイド発生率及びはんだぬれ性を以下の手順で評価した。
(1)ボイド発生率
各実施例、比較例のフラックスとSn−3.0Ag−0.5Cu(SAC305)組成のはんだ粉末(平均粒子径φ:21μm)をフラックス:はんだ粉末=11:89の質量比で混合したはんだペーストを作製した。
次いで、ペーストを、8mm×8mmのCu−OSP電極(N=15)の上にメタルマスクを用いて120μm高さに印刷した。その後、大気雰囲気下にてリフローした。リフロープロファイルは、190℃で2分保持し、その後260℃まで1.5℃/秒で昇温、とした。
リフロー後のはんだ付け部(はんだバンプ)の透過画像をUNi−HiTE SYSTEM社製Microfocus X−ray System XVR−160を用いて観察し、ボイド発生率を求めた。具体的には、はんだバンプについて上部から下部に向かって透過観察を行い、円形のはんだバンプ透過画像を得、その色調のコントラストに基づき金属充填部とボイド部を識別して自動解析によりボイド面積率を算出し、これをボイド発生率とした。このようにして求めたボイド発生率を用いて、以下の基準でボイドの発生しにくさを評価した。
15個のはんだ付け部全てにおいてボイド発生率が15%以下である場合:○○
15個のはんだ付け部中にボイド発生率が15%超のものが含まれるが、いずれも20%以下である場合:○
15個のはんだ付け部中にボイド発生率が20%超のものが含まれる場合:×
(2)はんだぬれ性
JIS Z 3198−4:2003に準じて、フラックスのはんだぬれ性を評価した。
具体的には、150℃で1時間焼成した幅5mm×長さ25mm×厚み0.5mmの銅板の表面の長さ方向の下端から3mmまでの部分に各実施例、比較例のフラックスを針先で塗布し、下記の条件ではんだ槽に浸せきし、ゼロクロスタイムを測定した。
<浸せき条件>
はんだ組成:Sn−3.0Ag−0.5Cu
はんだ槽温度:250℃ JIS Z 3198−4:2003
浸せき速度:5mm/秒 JIS Z 3198−4:2003
浸せき深さ:2mm JIS Z 3198−4:2003
測定時間:10秒 JIS Z 3198−4:2003
はんだぬれ性は以下の基準で評価した。
ゼロクロスタイムが5.5秒以下:○
ゼロクロスタイムが5.5秒超:×
(3)総合評価
〇:上記の各評価が全て〇〇又は〇
×:上記の各評価において×あり
結果を表1〜5に示す。溶剤として有機酸エステルとグリコール系溶剤を併用した実施例A1〜A74のフラックスは、良好な低ボイド発生率を有し、しかもはんだぬれ性も良好であった。
Figure 0006643692
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Figure 0006643692
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<はんだ合金の検討>
実施例A1で調製したフラックスと、表6〜表11に示す合金組成からなりJIS Z 3284−1:2004における粉末サイズの分類(表2)において記号4を満たすサイズ(粒度分布)のはんだ合金とを混合してはんだペーストを作製した。フラックスとはんだ合金との質量比は、フラックス:はんだ粉末=11:89である。各はんだペーストについて、粘度の経時変化を測定した。また、はんだ粉末の液相線温度及び固相線温度を測定した。さらに、作製直後のはんだペーストを用いて濡れ性の評価を行った。詳細は以下のとおりである。
(4)経時変化
作製直後の各はんだペーストについて、株式会社マルコム社製:PCU−205を用い、回転数:10rpm、25℃、大気中で12時間粘度を測定した。12時間後の粘度がはんだペーストを作製後30分経過した時の粘度と比較して1.2倍以下であれば、十分な増粘抑制効果が得られたものとして「○」と評価し、1.2倍を超える場合には「×」と評価した。
(5)ΔT
フラックスと混合する前のはんだ合金について、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、型番:EXSTAR DSC7020を用い、サンプル量:約30mg、昇温速度:15℃/minにてDSC測定を行い、固相線温度及び液相線温度を得た。得られた液相線温度から固相線温度を引いてΔTを求めた。ΔTが10℃以下の場合に「○」と評価し、10℃を超える場合に「×」と評価した。
(6)濡れ性
作製直後の各はんだペーストをCu板上に印刷し、リフロー炉でN2雰囲気中、1℃/sの昇温速度で25℃から260℃まで加熱した後、室温まで冷却した。冷却後のはんだバンプの外観を光学顕微鏡で観察することで濡れ性を評価した。溶融しきれていないはんだ粉末が観察されない場合に「○」と評価し、溶融しきれていないはんだ粉末が観察された場合に「×」と評価した。
(7)総合評価
〇:上記の各評価が全て〇
×:上記の各評価において×あり
Figure 0006643692
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表6〜11に示すように、全ての実施例Bでは、増粘抑制効果、ΔTの狭窄化、及び優れた濡れ性を示すことがわかった。
これに対して、比較例B1、B10、B19、B28、B37、及びB46は、Asを含有しないため、増粘抑制効果が発揮されなかった。
比較例B2、B11、B20、B29、B38、及びB47は、(1)式が下限未満であるため、増粘抑制効果が発揮されなかった。
比較例B3、B4、B12、B13、B21、B22、B30、B31、B39、B40、B48、及びB49は、As含有量が上限値を超えているため、濡れ性が劣る結果を示した。
比較例B5、B7、B9、B14、B16、B18、B23、B25、B27、B32、B34、B36、B41、B43、B45、B50、B52、及びB54は、Pb含有量及び(2)式が上限値を超えているため、ΔTが10℃を超える結果を示した。
比較例B6、B15、B24、B33、B42、及びB51は、(2)式が上限値を超えているため、ΔTが10℃を超える結果を示した。
比較例B8、B17、B26、B35、B44、及びB53は、Bi含有量及び(2)式が上限値を超えているため、ΔTが10℃を超える結果を示した。
<フラックスとはんだ合金の組み合わせ>
実施例A1のフラックスに代えて、実施例A2〜A74の各種フラックスをそれぞれ使用し、実施例Bの各種はんだ合金とそれぞれ組み合わせた場合も、ボイド発生率、増粘抑制効果、ΔT、及び濡れ性において良好な結果が得られた。

Claims (14)

  1. 樹脂、グリコール系溶剤有機酸エステル、及び有機酸を含む、はんだ付け用フラックス;及び
    As:25〜300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、及び残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式:
    275≦2As+Bi+Pb (1)
    0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2)
    [上記(1)式及び(2)式中、As、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]
    を満たすはんだ合金;
    からなり、
    前記フラックス中の前記グリコール系溶剤の含有量が、10〜60質量%であり、
    前記フラックス中の前記有機酸エステルの含有量が、0.5質量%以上30質量%以下であり、
    前記グリコール系溶剤の含有量(質量%)に対する、前記有機酸エステルの含有量(質量%)の比(有機酸エステル含有量/グリコール系溶剤の含有量)が、0.01〜1.92であり、
    前記フラックス中の前記有機酸の含有量が、1〜15質量%である、はんだペースト。
  2. 樹脂、グリコール系溶剤有機酸エステル、及び活性剤を含む、はんだ付け用フラックス;及び
    As:25〜300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、及び残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式:
    275≦2As+Bi+Pb (1)
    0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2)
    [上記(1)式及び(2)式中、As、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]
    を満たすはんだ合金;
    からなり、
    前記フラックス中の前記グリコール系溶剤の含有量が、10〜60質量%であり、
    前記フラックス中の前記有機酸エステルの含有量が、0.5質量%以上30質量%以下であり、
    前記グリコール系溶剤の含有量(質量%)に対する、前記有機酸エステルの含有量(質量%)の比(有機酸エステル含有量/グリコール系溶剤の含有量)が、0.01〜1.92であり、
    前記フラックス中の前記活性剤の含有量が、0質量%超え30質量%以下である、はんだペースト。
  3. 前記有機酸エステルの含有量が、0.5質量%以上20質量%以下である、請求項1又は2に記載のはんだペースト。
  4. 前記有機酸エステルの含有量が、5〜15質量%の範囲内である、請求項に記載のはんだペースト。
  5. 前記グリコール系溶剤の含有量(質量%)に対する、前記有機酸エステルの含有量(質量%)の比(有機酸エステル含有量/グリコール系溶剤の含有量)が、0.01〜1.25である、請求項1〜いずれか一項に記載のはんだペースト。
  6. 前記グリコール系溶剤の含有量(質量%)に対する、前記有機酸エステルの含有量(質量%)の比(有機酸エステル含有量/グリコール系溶剤の含有量)が、0.15〜0.72である、請求項に記載のはんだペースト。
  7. ロジン系樹脂を30〜60質量%、グリコール系溶剤を10〜60質量%、有機酸エステルを0.5〜30質量%、及び、有機酸を1〜15質量%の範囲内で含む、はんだ付け用フラックス;及び
    As:25〜300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、及び残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式:
    275≦2As+Bi+Pb (1)
    0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2)
    [上記(1)式及び(2)式中、As、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]
    を満たすはんだ合金;
    からなり、
    前記グリコール系溶剤の含有量(質量%)に対する、前記有機酸エステルの含有量(質量%)の比(有機酸エステル含有量/グリコール系溶剤の含有量)が、0.01〜1.92である、はんだペースト。
  8. 前記グリコール系溶剤の含有量(質量%)に対する、前記有機酸エステルの含有量(質量%)の比(有機酸エステル含有量/グリコール系溶剤の含有量)が、0.01〜1.25である、請求項記載のはんだペースト。
  9. さらに、チキソ剤及び/又は酸化防止剤を含む、請求項1〜いずれか一項に記載のはんだペースト。
  10. 前記有機酸エステルが、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジイソプロピル、マレイン酸ジブチル、セバシン酸ジメチル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジブチル、及びセバシン酸シオクチルからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1〜いずれか一項に記載のはんだペースト。
  11. 前記合金組成が、下記(1a)式:
    275≦2As+Bi+Pb≦25200 (1a)
    [上記(1a)式中、As、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]
    を満たす、請求項1〜10のいずれか一項に記載のはんだペースト。
  12. 前記合金組成が、下記(1b)式:
    275≦2As+Bi+Pb≦5300 (1b)
    [上記(1b)式中、As、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]
    を満たす、請求項1〜11のいずれか一項に記載のはんだペースト。
  13. 前記合金組成が、下記(2a)式:
    0.02≦2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦0.9 (2a)
    [上記(2a)式中、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]
    を満たす、請求項1〜12のいずれか一項に記載のはんだペースト。
  14. さらに、前記合金組成が、Ag:0〜4質量%及びCu:0〜0.9質量%の少なくとも1種を含有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載のはんだペースト。
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