JP6641506B2 - データの送信を行う方法及びデバイス - Google Patents

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Description

本発明は、包括的には、MIMOチャネルベースの無線通信システムにおいて複数の送信機と複数の受信機との間でデータを送信するために適用されるプリコーダーを分散形式で求めることに関する。
無線通信システムは、それらの環境に対してそれらの性能を改善するために、協働に依拠することができる。1つの例によれば、そのような協働は、ノードデバイス、通常は基地局又はeNodeB等のアクセスポイントが、MIMOチャネルを介した通信の全体のロバスト性を改善するために協働するMIMO(多入力多出力)チャネルベースの通信ネットワークの状況において見ることができる。
そのような協働を行うために、検討対象の無線通信システムの送信機は、当該送信機から既定の一組の受信機へのMIMOチャネルを介した送信の性能を改善するために当該送信機によって適用されるプリコーダーを求めるCSI(チャネル状態情報)関連データ及び/又はチャネル推定関連データに依拠する。そのようなプリコーダーは、通常、集中形式で求められ、求められたプリコーダーのパラメーターは、その後、上記送信機から上記受信機へのMIMOチャネルを介した送信中に上記求められたプリコーダーを更に適用するために、上記送信機に向けて伝播される。
システムアーキテクチャの観点及び処理リソース使用量のバランスの観点から、送信機間において分散形式でプリコーダーパラメーターを求めることを可能にする方法を提供することは有利である。しかしながら、それを行うと、CSIT(送信機におけるCSI)不一致が一般に現れる。これは、送信機が独自に計算したプリコーダーパラメーターの間に大きな相違をもたらす場合がある。したがって、協働によって目標とされる性能向上は、予想されるほど高くない。なぜならば、送信機が独立して求めたプリコーダーパラメーターは、CSIT不一致とともに増大する残留干渉をもたらすからである。
従来技術の前述の欠点を克服することが望まれている。CSIT不一致が存在し得る場合であっても、上記送信機間において分散形式で求められたプリコーダーに依拠することによって、MIMOチャネルベースの無線通信システムにおいて既定の一組の送信機から既定の一組の受信機に向けた送信性能の改善を可能にする解決策を提供することが特に望まれている。
そのために、本発明は、送信を行うために適用されるプリコーダーを分散形式で求めることによって、無線通信システムのグローバルMIMOチャネルH=[H,・・・,HKr)]を介してK個の複数の送信機とK個の複数の受信機との間でデータの上記送信を行う方法であって、上記プリコーダーは、上記送信機によってそれぞれ適用され、全体プリコーダーVを併せて形成し、
上記K個の複数の送信機の中の各第jの送信機は、
グローバルMIMOチャネルHに関してK個の送信機のそれぞれが被る送信機におけるチャネル状態情報CSITの誤差の長期統計を収集することであって、この長期統計は、CSIT誤差のランダムな変動を表すことと、
短期CSIT関連データを取得し、グローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^(j)を作成することと、
取得された短期CSIT関連データから全体プリコーダーVの推定値V~(j)を求めることと、
上記第jの送信機の観点からの全体プリコーダーVのビューである精緻化されたプリコーダーV(j)=[V (j),・・・,VKr (j)]を取得するために、CSIT誤差の収集された長期統計に基づき、さらに、グローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^(j)に基づき、さらに、グローバルMIMOチャネルHを介した上記送信の性能を表す性能指数に基づき、全体プリコーダーVの推定値V~(j)=[V~ (j),・・・,V~Kr (j)]を精緻化することと、
上記K個の複数の送信機の中の上記第jの送信機に関係する精緻化されたプリコーダーV(j)の部分によって形成されるプリコーダーを適用することによって、データを送信することと、
を行う、方法に関する。
したがって、CSIT不一致が存在し得る場合であっても、無線通信システムのグローバルMIMOチャネルを介した送信の性能は、分散形式で求められたプリコーダーに依拠することによって改善される。したがって、CSIT不一致に対するロバスト性は、中央ユニットがプリコーダーを計算する必要なく達成される。
特定の特徴によれば、性能指数は、以下の式
Figure 0006641506
のとおりに、グローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^(j)に関して上記第jの送信機の観点からのグローバルMIMOチャネルHを介して達する総和レート(sum rate:合計レート)の下限LBSR(j)であり、
ここで、
Figure 0006641506
であり、
Figure 0006641506
は、数学的期待値を表し、MSE (j)(F (j),・・・,FKr (j))は、送信されるデータと、CSIT誤差の長期統計と一致する推定誤差Δ(1),Δ(2),・・・,Δ(Kt)の実現値の対応するフィルタリングされた受信ベクトルとの間の平均二乗誤差行列を表す。
したがって、上記送信によって提供される受信機のレートの総和は、求められたプリコーダーによって改善される。
特定の特徴によれば、性能指数は、以下の式
Figure 0006641506
のとおりに、EMSE (j)(F (j),・・・,FKr (j))のk=1〜Kのトレースの総和MINMSE(j)であり、
ここで、
Figure 0006641506
であり、
Figure 0006641506
は、数学的期待値を表し、MSE (j)(F (j),・・・,FKr (j))は、送信されるデータと、CSIT誤差の長期統計と一致する推定誤差Δ(1),Δ(2),・・・,Δ(Kt)の実現値の対応するフィルタリングされた受信ベクトルとの間の平均二乗誤差行列を表す。
したがって、受信機によって感知される平均二乗誤差の平均値(average mean square error)は、求められたプリコーダーによって改善される。
特定の特徴によれば、全体プリコーダーVの推定値V~(j)を精緻化することは、以下の式
(j)=f(V~ (j),F (j))=V~ (j) (j)
のとおりに、乗法的精緻化ストラテジーにおいて、精緻化関数f()及びk=1〜Kの精緻化行列F (j)のセット{F (j)}によって行われる。
したがって、特に、ブロック対角化プリコーディングに関して、そのような乗法的精緻化によって、CSIT不一致を補正することが可能になる。
特定の特徴によれば、全体プリコーダーVはブロック対角化プリコーダーであり、送信機は、受信機と少なくとも同数のアンテナを累積的に有し、全体プリコーダーVの推定値V~(j)を精緻化することは、したがって、以下の式
Figure 0006641506
のとおりに、特異値分解演算を適用することによって取得される行列V~ (j)のセット{V~ (j)}に関する精緻化行列F (j)のセット{F (j)}を最適化することを含み、
ここで、H^[k] (j)は、上記第jの送信機の観点からのK個の受信機の中の第kの受信機の集約された干渉チャネル推定値のビューH^[k]を表し、
Figure 0006641506
であり、V~ (j)は、全ての送信機によって同様に適用される既定の選択ルールに従って、特異値分解演算から得られる行列V~'' (j)の所定のN個の列のセットを選択することによって取得され、各受信機は、N個の数の受信アンテナを有する。
したがって、分散ブロック対角プリコーダーは、CSIT不一致に対してロバストになる。
特定の特徴によれば、全体プリコーダーVは、ブロック対角形状を有する干渉認識協調ビームフォーミングプリコーダーであり、K=Kであり、各送信機は、各受信機の受信アンテナの数Nと等しい数Mの送信アンテナを有し、各送信機は、k=jであるようにK個の受信機の中の単一の受信機とのみ通信し、V=E’であるようになっている部分行列Wk’は、以下の式
H^(k)=U’D’W’のようなE H^(k)によって定義される上記チャネル行列に対して適用される特異値分解演算から、E H^(k)によって定義されるチャネル行列の固有ベクトルビームフォーミングとして計算され、
ここで、Eは、以下の式として定義され、
=[0M×(k−1)M,IM×M,0M×(Kt−k)M
M×(k−1)Mは、ゼロのみを含むM×(k−1)M部分行列であり、0M×(Kt−k)Mは、ゼロのみを含むM×(K−1)M部分行列であり、IM×Mは、M×M単位部分行列である。
したがって、分散協調ビームフォーミングプリコーダーは、CSIT不一致に対してロバストになる。
特定の特徴によれば、全体プリコーダーVの推定値V~(j)を精緻化することは、以下の式
(j)=f(V~ (j),F (j))=V~ (j)+F (j)
のとおりに、加法的精緻化ストラテジーにおいて、精緻化関数f(・,・)及びk=1〜Kの精緻化行列F (j)のセット{F (j)}によって行われる。
したがって、特に、正則化されたゼロフォーシングプリコーダーに関して、加法的精緻化によって、CSIT不一致を補正することが可能になる。
特定の特徴によれば、全体プリコーダーVは、正則化されたゼロフォーシングプリコーダーであり、全体プリコーダーVの推定値V~(j)は、以下のように表すことができ、
Figure 0006641506
ここで、α(j)は、上記第jの送信機の観点からのグローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^(j)の統計に従って最適化される正則化係数を表すスカラーであり、α(j)は、上記第jの送信機によって、K個の送信機の中の他の送信機と共有される。
したがって、正則化されたゼロフォーシングプリコーダーは、CSIT不一致に対してロバストになる。
特定の特徴によれば、全体プリコーダーVの推定値V~(j)を精緻化することは、以下の電力制約の下で行われ、
Figure 0006641506
ここで、各受信機は、N個の数の受信アンテナを有する。
したがって、送信電力は抑えられる。
本発明は、送信を行うために適用されるプリコーダーを分散形式で求めることによって、無線通信システムのグローバルMIMOチャネルH=[H,・・・,HKr)]を介してK個の複数の送信機とK個の複数の受信機との間でデータの上記送信を行うデバイスであって、上記プリコーダーは、上記送信機によってそれぞれ適用され、全体プリコーダーVを併せて形成し、
該デバイスは、上記K個の複数の送信機の中の各第jの送信機であり、
グローバルMIMOチャネルHに関してK個の送信機のそれぞれが被る送信機におけるチャネル状態情報CSITの誤差の長期統計を収集する手段であって、この長期統計は、CSIT誤差のランダムな変動を表す、収集する手段と、
短期CSIT関連データを取得し、グローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^(j)を作成する手段と、
取得された短期CSIT関連データから全体プリコーダーVの推定値V~(j)を求める手段と、
上記第jの送信機の観点からの全体プリコーダーVのビューである精緻化されたプリコーダーV(j)=[V (j),・・・,VKr (j)]を取得するために、CSIT誤差の収集された長期統計に基づき、さらに、グローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^(j)に基づき、さらに、グローバルMIMOチャネルHを介した上記送信の性能を表す性能指数に基づき、全体プリコーダーVの推定値V~(j)=[V~ (j),・・・,V~Kr (j)]を精緻化する手段と、
上記K個の複数の送信機の中の上記第jの送信機に関係する精緻化されたプリコーダーV(j)の部分によって形成されるプリコーダーを適用することによって、データを送信する手段と、
を備える、デバイスにも関する。
本発明は、通信ネットワークからダウンロードすることができ、及び/又は、コンピューター若しくは処理デバイスが読み出すことができる媒体に記憶することができるコンピュータープログラムにも関する。このコンピュータープログラムは、当該プログラムがプロセッサによって実行されると、前述の方法の実施を引き起こす命令を含む。本発明は、記憶された情報が情報記憶媒体から読み出され、プロセッサによって実行されると、前述の方法の実施を引き起こす一組の命令を含むコンピュータープログラムを記憶する上記情報記憶媒体にも関する。
これらの通信システム及びコンピュータープログラムに関係した特徴及び利点は、対応する前述の方法に関して既述したものと同一であるので、ここでは繰り返さない。
本発明の特徴は、一例示の実施形態の以下の説明を読むことによってより明らかになり、この説明は、添付図面に関して作成されたものである。
本発明を実施することができる無線通信システムを概略的に表す図である。 無線通信システムにおいて用いられる通信デバイスのハードウェアアーキテクチャの一例を概略的に表す図である。 無線通信システムにおいて複数の送信機から複数の受信機に向けてデータを送信するために適用されるプリコーダーを分散形式で求めるアルゴリズムを概略的に表す図である。 プリコーダーを精緻化するのに用いられる精緻化行列を求める反復アルゴリズムを概略的に表す図である。
図1は、本発明を実施することができる無線通信システム100を概略的に表している。
無線通信システム100は複数の送信機を備え、図1には、そのうちの2つ120a、120bが表されている。無線通信システム100は複数の受信機を更に備え、図1には、そのうちの2つ110a、110bが表されている。例えば、送信機120a、120bは、無線電気通信ネットワークのアクセスポイント又は基地局であり、受信機110a、110bは、上記アクセスポイント又は上記基地局を介して無線電気通信ネットワークにアクセスする移動端末である。
送信機120a、120bは、これらの複数の送信機120a、120bから無線リンク111a、111b、111c、111dを介して複数の受信機110a、110bに向けた送信を行うときの性能を改善するように互いに協働する。無線リンク111aは、送信機120aから受信機110aへの送信チャネルを表し、無線リンク111bは、送信機120aから受信機110bへの送信チャネルを表し、無線リンク111cは、送信機120bから受信機110aへの送信チャネルを表し、無線リンク111dは、送信機120bから受信機110bへの送信チャネルを表す。送信機120a、120bは、送信チャネル観測結果についての長期統計を交換することができるようにするために、図1Aにリンク121によって示すように相互接続されている。リンク121は、有線とすることもできるし、無線とすることもできる。
上記協働は、上記送信を行うときに送信機120a、120bにそれぞれのプリコーダーを適用させることによって達成される。各送信機が上記送信の範囲内で適用しなければならないプリコーダーを求めるように、上記プリコーダーは無線通信システム内において分散形式で求められる。より詳細には、各送信機(複数の送信機の中でインデックスjによって識別される)は、上記複数の送信機のうちの他の送信機から独立して、上記送信を行うために上記複数の送信機によって協働して適用されるべき全体プリコーダーVのそれ自体のビューV(j)を求める。この態様は、図3に関して以下で詳述される。
本明細書では、使用中の送信機120a、120bの数はKで示され、各送信機はM個の数の送信アンテナを有し、使用中の受信機110a、110bの数はKで示され、各受信機はN個の数の受信アンテナを有する。受信機110a、110bは、K個の送信機の中の複数の送信機から信号を同時に受信するように構成される。したがって、グローバルMIMOチャネルHが、K個の送信機とK個の受信機との間に作成される。グローバルMIMOチャネルHのうちの、K個の送信機の中の第jの送信機をK個の受信機の中の第kの受信機にリンクする部分は、本明細書ではHk,jで示されるN×M行列によって表される。Hk,jもMIMOチャネルを表すことに留意することができる。グローバルMIMOチャネルHのうちの、K個の送信機をK個の受信機の中の第kの受信機にリンクする部分は、j=1〜KのK個のMIMOチャネルHk,jを連結したものであり、したがって、本明細書ではHで示されるN×MK行列である。HもMIMOチャネルを表すことに更に留意することができる。
シンボルベクトルsのセットを考えることにする。長さNの各シンボルベクトルsは、所与の時点においてK個の複数の受信機の中の第kの受信機に送信しなければならないデータを表す。上記所与の時点においてK個の送信機によってK個の受信機に送信される全てのデータを含むスタックされたベクトルs=[s ,s ,・・・,sKr をsで更に示すことにする。ここで、Aは、ベクトル又は行列Aを転置したものを表す。
以下の全体プリコーダーVを更に考えることにし、V=[V,・・・,VKr]、
j=1〜KのE Vを、全体プリコーダーVのうちの、K個の送信機の中の第jの送信機によって適用される部分として更に定義することにする。ここで、Eは、E=[0M×(j−1)M,IM×M,0M×(Kt−j)MとなるようなM×NK行列であり、k=1〜KのVは、全体プリコーダーVのうちの、K個の受信機の中の第kの受信機に達するように適用しなければならない等価部分である。上記で既に定義した表記と一致して、V (j)は、以下では、K個の送信機の中の第jの送信機の観点からのプリコーダー等価部分Vのビューを表すことに留意されたい。
上記Eの数式における0M×(j−1)Mは、ゼロのみを含むEのM×(j−1)M部分行列を表し、0M×(Kt−j)Mは、ゼロのみを含むEのM×(K−j)M部分行列を表し、IM×Mは、M×M単位部分行列(本明細書における他の状況ではM×M単位行列とすることができる)を表すことに留意されたい。
結合処理CoMP(協調マルチポイント送信)手法では、全ての送信機が、所与の時点においてK個の受信機に向けて送信されるシンボルベクトルsのセットを完全に知っている。
=Kである協調プリコーディング手法では、K個の送信機の中の各送信機は、K個の受信機の中の1つの受信機と通信する。これは、K個の送信機の中の第jの送信機のみが、当該第jの送信機が通信するK個の受信機の中の第kの受信機(ただし、k=j)に送信されるシンボルベクトルsを知っていなければならないことを意味し、このことは、全体プリコーダーVがブロック対角形状を有することを暗に意味する。K個の送信機の中の各第jの送信機が、k≠jとなるようにK個の受信機の中の第kの受信機と通信しなければならない場合、全体プリコーダーVにブロック対角形状を持たせるために、インデックスjに関するK個の送信機の並べ替え及び/又はインデックスkに関するK個の受信機の並べ替えが行われる。
上記の記述を考慮すると、無線通信システム100のモデルを以下のように表すことができる。
Figure 0006641506
ここで、
−yは、シンボルベクトルsが上記第kの受信機に送信されたときに、K個の受信機の中の第kの受信機によって受信されるシンボルベクトルを表す。
−nは、シンボルベクトルsの送信中に上記第kの受信機が被る付加雑音を表す。
上記式において、項Hは、K個の受信機の中の第kの受信機の観点からの有用な信号を表し、項Hの和は、シンボルベクトルsの送信中にK個の受信機の中の第kの受信機が被る干渉を表していることが分かる。
個の受信機の中の第kの受信機によって、チャネル知識HVから受信フィルターを計算することができる。このチャネル知識は、全体プリコーダーVに従ってプリコーディングされたパイロットが、K個の送信機の中の関係している送信機(複数の場合もある)によって送信される場合には直接推定によって取得することもできるし、K個の送信機の中の関係している送信機(複数の場合もある)からのシグナリングによって全体プリコーダーVを取得することと、さらに、MIMOチャネルH上でプリコーディングなしに送信されたパイロットからこのMIMOチャネルHを推定することとによって取得することもできる。ゼロフォーシング受信フィルターを用いるとき、K個の受信機の中の第kの受信機は、以下のように定義される線形フィルターTを用いる。
Figure 0006641506
MMSE受信フィルターを用いるとき、K個の受信機の中の第kの受信機は、以下のように定義される線形フィルターTを用いる。
Figure 0006641506
次に、シンボルベクトルsを推定するフィルタリングされた受信ベクトルTについて、上記第kの受信機によって決定が行われる。
有効な受信フィルターがない場合(例えば、正則化されたゼロフォーシングが送信機によって適用されるとき)、T=Iであることに留意しなければならない。
個の送信機は、CSIT(送信機におけるチャネル状態情報)を取得するように構成される。無線通信システム100内のCSI関連データ及び/又はチャネル推定関連データの伝播ルールが、例えば、量子化演算に起因してCSIT誤差をもたらし、その上、K個の送信機間のCSIT不一致(すなわち、K個の送信機のそれぞれの観点からの異なるCSIT)をもたらすように、CSITは、K個の送信機の中の各送信機によって、以下のものから取得される。
−K個の受信機の中の1つ以上の受信機からのフィードバックCSI(チャネル状態情報)、及び/又は、
−上記送信機において行われ、チャネル相反特性を用いたチャネル推定、及び/又は、
−K個の送信機の中の1つ以上の他の送信機によって提供されるそのようなCSI若しくはそのようなチャネル推定。
量子化演算に加えて、K個の送信機によって有効に受信されたCSI関連データの差異は、CSITの相違がK個の送信機の中の送信機ごとに存在し、これがCSIT不一致をもたらすことを暗に意味することに留意することができる。
したがって、グローバルMIMOチャネルHは、K個の送信機の中の各第jの送信機を考慮して、以下のように表すことができる。
H=H^(j)+Δ(j)
ここで、H^(j)は、K個の送信機の中の第jの送信機の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューを表し、これは、上記第jの送信機によって取得されたCSITから上記第jの送信機によって取得され、Δ(j)は、有効なグローバルMIMOチャネルHと、上記第jの送信機の観点からのグローバルMIMOチャネルHの上記ビューH^(j)との間の推定誤差を表す。同様に、H^k,i (j)は、上記第jの送信機の観点からのMIMOチャネルHk,iのビューを示し、H^ (j)は、上記第jの送信機の観点からのMIMOチャネルHのビューを示す。
したがって、全体プリコーダーVのビューV(j)は、その場合、CSIT不一致に起因して、K個の送信機の中の送信機ごとに僅かに異なる場合がある。K個の送信機の中の第jの送信機は、次に、当該第jの送信機によって求められた全体プリコーダーVのビューV(j)から、当該送信機が上記送信の範囲内で適用しなければならないプリコーダーE (j)を抽出する。既述したように、これは、K個の送信機(j=1〜K)の中の各送信機によって独立して行われる。したがって、最適化は、CSIT不一致にかかわらず、かつ、K個の送信機の中の各第jの送信機が、当該送信機が適用しなければならないプリコーダーE (j)を独立して求めるにもかかわらず、K個の送信機からK個の受信機への送信の性能を改善するように十分に行われる。この態様は、図3に関して以下で詳述される。
図2は、無線通信システム100において用いられる通信デバイスのハードウェアアーキテクチャの一例を概略的に表している。図2に例示として示すハードウェアアーキテクチャは、無線通信システム100の各送信機120a、120b及び/又は無線通信システム100の各受信機110a、110bを表すことができる。
図示したアーキテクチャによれば、通信デバイスは、通信バス206によって相互接続された次の構成要素、すなわち、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラー又はCPU(中央処理装置)200;RAM(ランダムアクセスメモリ)201;ROM(読み出し専用メモリ)202;SD(セキュアデジタル)カードリーダー203、若しくはHDD(ハードディスクドライブ)又は記憶媒体上に記憶された情報を読み出すように適合された他の任意のデバイス;第1の通信インターフェース204及び可能な場合には第2の通信インターフェース205を備える。
通信デバイスが、K個の受信機の中の1つの受信機であるとき、第1の通信インターフェース204は、この通信デバイスがK個の送信機からグローバルMIMOチャネルHを介してデータを受信することを可能にする。第2の通信インターフェース205は、この場合、必要ではない。第1の通信インターフェース204は、この通信デバイスがチャネル状態情報をK個の送信機の中の1つ以上の送信機デバイスにフィードバックすることを更に可能にする。
通信デバイスが、K個の送信機の中の1つの送信機であるとき、第1の通信インターフェース204は、この通信デバイスが、K個の送信機の中の他の送信機と協働して、データを、グローバルMIMOチャネルHを介してK個の受信機に送信することを可能にする。第1の通信インターフェース204は、この通信デバイスが、K個の受信機の中の1つ以上の受信機によってフィードバックされたチャネル状態情報を受信することを更に可能にする。その上、第2の通信インターフェース205は、この通信デバイスが、K個の送信機の中の1つ以上の他の送信機とデータを交換することを可能にする。
CPU200は、ROM202又はSDカード等の外部メモリからRAM201内にロードされた命令を実行することが可能である。通信デバイスに電源が投入された後、CPU200は、RAM201から命令を読み出し、これらの命令を実行することが可能である。これらの命令は、本明細書において説明されるアルゴリズムのステップの一部又は全てをCPU200に実行させる1つのコンピュータープログラムを形成する。
本明細書において説明されるアルゴリズムの全てのステップは、PC(パーソナルコンピューター)、DSP(デジタル信号プロセッサ)又はマイクロコントローラー等のプログラマブルコンピューティングマシンによる一組の命令又はプログラムの実行によってソフトウェアで実施することもできるし、それ以外に、マシン又はFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)若しくはASIC(特定用途向け集積回路)等の専用構成要素によってハードウェアで実施することもできる。
図3は、複数の送信機120a、120bから複数の受信機110a、110bに向けてデータを送信するために適用される全体プリコーダーVを推定したものを、無線通信システム100内において分散形式で求めるアルゴリズムを概略的に表している。図3に示すアルゴリズムは、K個の送信機の中の各送信機によって独立して実行される。図3のアルゴリズムが、K個の送信機の中の第jの送信機とみなされる送信機120aによって実行されることを例示として考えることにする。
第1のステップS301において、送信機120aは、グローバルMIMOチャネルHに関してK個の送信機のそれぞれが被るCSIT誤差についての長期統計を収集する。この長期統計は、CSIT誤差のランダムな変動を示し、例えば、CSIT誤差の分散とすることができる。
CSIT誤差の所与の統計モデル、例えば中心ガウス分布を用いることによって、CSIT誤差の影響をシミュレーションする当該CSIT誤差の実現値を、収集された長期統計から生成することができる。上記統計モデルに基づくとともに上記収集された長期統計によってパラメーター化された解析的導出を行うことができる。
例えば、K個の送信機の中の各第jの送信機は、MIMOチャネル推定値H^k,i (j)と有効なMIMOチャネルHk,iとの間の、以下のように定義されるチャネル推定誤差に関連した分散行列Σk,i (j)を推定又は計算する。すなわち、この分散行列Σk,i (j)の各係数は、MIMOチャネル行列H^k,i (j)及びHk,iの対応する係数の間の誤差の分散である。この場合、チャネル推定誤差は、チャネル係数ごとに独立していると仮定されることに留意しなければならない。一変形形態では、MIMOチャネル行列H^k,i (j)及びHk,iの間の(係数ごとの)差H^k,i (j)−Hk,iをベクトル化したものの共分散行列が推定又は計算される。
送信機間でCSIT情報の交換がないとき、H^(j)は、K個の送信機の中の第jの送信機によるグローバルMIMOチャネルHの推定値を表す。上記長期統計は、CSITに関する誤差を表し、これは、有効な検討対象のMIMOチャネルに関して用いられているチャネル推定技法の既知の挙動ダイバージェンスと、関係している受信機(複数の場合もある)から上記第jの送信機への有効なCSIフィードバックとに従って計算することができる。例えば、K個の受信機の中の各第kの受信機がMIMOチャネルHを推定することを可能にするパイロットシンボルが、ダウンリンクにおいて送信されると、その結果生じる推定誤差は、上記MIMOチャネルHを介した信号対雑音プラス干渉比に比例し、対応する比例係数は、Ji-Woong Choi他「Optimum pilot pattern for channel estimation in OFDM systems」(IEEE Transactions on Wireless Communications, vol. 4, no. 5, pp. 2083-2088, Sept. 2005)の文献にあるようなパイロット密度から計算することができる。これによって、ダウンリンクチャネル推定誤差に関する統計を計算することが可能になる。チャネル相反性が考慮されるとき、K個の送信機の中の各第jの送信機は、アップリンク方向におけるチャネル推定値からCSITを知得することができ、ダウンリンクと同様の技法が、アップリンクチャネル推定誤差統計を計算するのに用いられる。フィードバックリンクが、関係している受信機(複数の場合もある)によって行われたチャネル推定から計算されるCSIフィードバックから送信機におけるCSITを取得するのに用いられるとき、CSIに関する量子化誤差統計は、この関係している受信機(複数の場合もある)によって長期に推定して上記第jの送信機にフィードバックすることもできるし、上記CSIに関する量子化誤差統計は、解析モデルから推論することもできる。実際は、各関係している受信機は、有効なCSI及び量子化関数を知っており、したがって、有効な量子化誤差を知っている。上記受信機は、次に、量子化誤差統計を或る期間にわたって計算することができ、これらの量子化誤差統計を上記第jの送信機にフィードバックすることができる。例えば、受信機は、量子化誤差の分布を表す量子化誤差のヒストグラムを作成し、このヒストグラムを第jの送信機にフィードバックする。例えば、受信機及び送信機は、量子化誤差が多変量ガウス分布であると仮定し、受信機は、第jの送信機にフィードバックされる平均ベクトル及び共分散分散を推定する。上記技法のいずれも、第jの送信機の観点からのグローバルMIMOチャネルHの推定値H^(j)に関連した上記CSIT誤差統計を取得するために組み合わせることができる。その後、K個の送信機の中の各第jの送信機が、グローバルMIMOチャネルHに関する、K個の送信機のそれぞれが被るCSIT誤差についての長期統計を収集するように、これらの長期統計を送信機の間で交換することができる(これは、K個の全ての送信機が同じ長期統計を共有することを意味する)。
別の例では、上記長期統計は、Qianrui Li他「A cooperative channel estimation approach for coordinated multipoint transmission networks」(IEEE International Conference on Communication Workshop (ICCW), pp.94-99, 8-12 June 2015)の文献に開示されているように収集される。この文献では、MIMOチャネルHk,iの、K個の送信機の中の各第jの送信機による推定値H^k,i (j)を計算するために、送信機ノード間でチャネル推定値の組み合わせが行われ、次に、この組み合わせは、MIMOチャネル行列H^k,i (j)とHk,iとの間の(係数ごとの)差H^k,i (j)−Hk,iに関連した平均二乗誤差を最小にするように最適化される。したがって、分散行列Σk,i (j)は、上記文献に記載された組み合わせ方法の結果である。
したがって、特定の実施形態では、送信機120aは、そのエントリーが、有効なMIMOチャネルHk,iと、K個の送信機の中の第jの送信機の観点からのMIMOチャネルHk,iの推定値H^k,i (j)との間の推定誤差Δk,i (j)のエントリーの分散である分散行列Σk,i (j)を収集する。
ステップS301が、K個の送信機のそれぞれによって実行されると、K個の全ての送信機は、CSIT誤差について同じ長期統計を共有する。ステップS301は、通常、前述のシンボルベクトルsのセットを送信するようにK個の送信機を有効に構成することを担当するプロセスから独立したプロセスにおいて実行される。
CSIT誤差についての前述の統計は、定義によれば、長期データであるので、K個の送信機のそれぞれが上記長期統計を受信することを確保するためのレイテンシーは、重要度が低いことに留意することができる。量子化は、通常、そのような長期統計を送信する制限因子ではない。これに反して、K個の送信機の中の各送信機がそれ自体のCSITを作成することができるようにK個の送信機によって用いられるデータを伝播するレイテンシーは、無線通信システム100が良好な反応性を有するために、最も重要である。その場合、少数のレベルを有する量子化が、そのようなCIST関連データを送信するのに必要である可能性があり、情報の質を大幅に低減する可能性がある。ところで、ステップS301において送信機120aによって受信されるCSIT誤差についての長期統計と、送信機120aがグローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^(j)を有するために必要とするCSIT関連データとの間の混同は回避されるであろう。
ステップS302において、送信機120aは、当該送信機120aがグローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^(j)を有するために必要とする最新(すなわち、短期)のCSIT関連データを取得する。送信機120aは、K個の送信機の中の1つ以上の送信機がグローバルMIMOチャネルHのそれら自体のそれぞれのビューを作成するのを助けるために、好ましくは、ステップS302において取得されたCSITを上記1つ以上の送信機と共有する。
ステップS302が、K個の全ての送信機によって独立して(実質的に並列に)実行されると、K個の送信機によって最終的に取得されたCSITは、K個の送信機の中の送信機ごとに異なり、これはCSIT不一致をもたらす。
ステップS303において、送信機120aは、全体プリコーダーVの送信機120a(K個の送信機の中の第jの送信機とみなされる)の観点からの初期バージョンV~(j)を、ステップS302において送信機120aによって取得されたCSIT関連データから求める。したがって、全体プリコーダーVの初期バージョンV~(j)は、全体プリコーダーVの推定値である。CSIT不一致が存在するので、全体プリコーダーVのこの初期バージョンV~(j)は、CSIT不一致とともに増大する残留干渉を伴う場合がある。
特定の実施形態では、全体プリコーダーVのタイプ、したがって、全体プリコーダーVの推定値V~(j)のタイプはともに、以下のものの中の1つのプリコーダータイプである。
−Rui Zhang「Cooperative Multi-Cell Block Diagonalization with Per-Base-Station Power Constraints」(IEEE Journal on Selected Areas in Communications, vol. 28, no. 9, pp. 1435-1445, December 2010)の文献において検討されているような結合処理を有する協調マルチポイント送信のためのブロック対角化プリコーダー;
−Chan-Byoung Chae他「Interference Aware-Coordinated Beamforming in a Multi-Cell System」(IEEE Transactions on Wireless Communications, vol. 11, no. 10, pp. 3692-3703, October 2012)の文献において検討されているような協調プリコーディングを有する協調マルチポイント送信のための干渉認識協調ビームフォーミングプリコーダー;及び、
−Jun Zhang他「A large system analysis of cooperative multicell downlink system with imperfect CSIT」(IEEE International Conference on Communications (ICC), pp.4813-4817, 10-15 June 2012)の文献において検討されているような結合処理を有する協調マルチポイント送信のための正則化されたゼロフォーシングプリコーダー。
これらのプリコーダーのタイプのそれぞれについての本発明の特定の実施形態が以下で詳述される。
送信機120a(K個の送信機の中の第jの送信機とみなされる)によって取得されたCSIT関連データからの全体プリコーダーVの初期バージョンV~(j)は、各プリコーダータイプに関して上記で言及した文献において示されるように求めることができることに留意しなければならない。
ステップS304において、送信機120aは、精緻化されたプリコーダーV(j)=[V (j),・・・,VKr (j)]を取得するために、全体プリコーダーVの初期バージョンV~(j)を、ステップS301において取得されたCSI誤差長期統計に従って精緻化する。この精緻化されたプリコーダーは、送信機120a(K個の送信機の中の第jの送信機とみなされる)の観点からの全体プリコーダーVのビューである。
特定の実施形態では、全体プリコーダーVの初期バージョンV~(j)を精緻化することは、精緻化関数f(・,・)及びk=1〜Kの精緻化行列F (j)のセット{F (j)}により送信機120aによって行われる。より詳細には、V~(j)=[V~ (j),・・・,V~Kr (j)]であることを考慮すると、全体プリコーダーVの初期バージョンV~(j)を精緻化することは、全体プリコーダーVの初期バージョンV~(j)のk=1〜Kの部分行列V~ (j)を精緻化することを意味する。ここで、各部分行列V~ (j)は、V(j)内の部分行列V (j)のV~(j)内において同等である。
したがって、各部分行列V~ (j)について、精緻化関数f(・,・)及び精緻化行列F (j)は、好ましくは、以下の電力制約、すなわち、
Figure 0006641506
の下で、
(j)=f(V~ (j),F (j))=V~ (j) (j)
等の乗法的精緻化ストラテジー、又は加法的精緻化ストラテジー、すなわち、
(j)=f(V~ (j),F (j))=V~ (j)+F (j)
において適用することができる。
上記関係から、各精緻化行列F (j)のサイズは、精緻化ストラテジーが加法的であるのか又は乗法的であるのかに依存することに留意しなければならない。
全体プリコーダーVの初期バージョンV~(j)を精緻化することは、k=1〜Kの精緻化行列F (j)のセット{F (j)}の最適化されたバージョンを求めることができるように、送信機120a(K個の送信機の中の第jの送信機とみなされる)の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^(j)と、送信機からグローバルMIMOチャネルHを介して受信機への送信の性能を表す性能指数との関数として更に行われる。そのような無線通信システムでは、グローバルMIMOチャネルHを介した送信の性能を表す性能指数は、通常、マルチユーザー性能メトリックである。
プリコーダーV(j)は、グローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^(j)から計算されたK個の送信機の中の各第jの送信機の観点からの全体プリコーダーVの初期バージョンV~(j)の精緻化されたバージョンであるので、K個の全ての送信機によって独立して計算されたプリコーダーV(j)間には不一致が存在することに留意しなければならない。したがって、精緻化操作は、性能指数によって特徴付けられる性能に対する不一致の影響を最小にするように設計されるべきである。送信機は、プリコーダーV(j)を設計するための2つのタイプの情報を有することに留意することができる。これらの情報は、第1のものとして、各第jの送信機の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^(j)によって表されるとともに、全体プリコーダーVの初期バージョンV~(j)を計算するのに利用されるローカルCSITと、全ての送信機間で共有され、したがって、上記精緻化操作に利用することができる、有効なグローバルMIMOチャネルHと上記ビューH^(j)との間の推定誤差に関する長期統計とである。統計ベースの精緻化が検討されているので、精緻化操作は、全体プリコーダーVの事前に求められた初期バージョンV~(j)を考慮した可能な全体プリコーダーVを特徴付ける中間確率変数V^(j)のセットと、有効なグローバルMIMOチャネルHと各第jの送信機の上記ビューH^(j)との間の推定誤差に関する長期統計とから、精緻化されたプリコーダーV(j)を計算する統計的方法である。さらに、精緻化ストラテジー(乗法的又は加法的)は、初期バージョンV~(j)をV(j)に統計的に補正することができるように定義することができる。上記精緻化ストラテジーは、性能に対する不一致の影響を統計的に低減するように最適化されるパラメーターを伴う。
したがって、各第jの送信機は、全ての送信機による精緻化後に、用いられている精緻化ストラテジー(乗法的又は加法的)と、CSIT誤差について収集された長期統計とに従うとともに、さらに、以下で詳述するように、上記第jの送信機の観点からの全体プリコーダーVの初期バージョンV~(j)と、グローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^(j)とに従って、全体プリコーダーVに関連した中間確率変数V^(j)(以下で定義される)の分布を計算することもできるし、その実現値を生成することもできる。
第1の特定の実施形態では、性能指数は、グローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^(j)に関して、送信機120a(K個の送信機の中の第jの送信機とみなされる)の観点からのグローバルMIMOチャネルHを介して達する総和レートの下限LBSR(j)である。総和レート下限LBSR(j)は、セット{F (j)}の関数である。送信機120aは、グローバルMIMOチャネルHをH^(j)であるとみなすことを考慮すると、その場合、総和レート下限LBSR(j)は、以下のように定義される。
Figure 0006641506
Figure 0006641506
は、数学的期待値を表し、MSE (j)(F (j),・・・,FKr (j))は、シンボルベクトルsと、例えば、CSIT誤差の中心ガウス分布を考慮することによってステップS301において取得されたCSIT誤差の長期統計と一致する推定誤差Δ(1),Δ(2),・・・,Δ(Kt)の実現値と、送信機120aの観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^(j)との対応するフィルタリングされた受信ベクトルT(既に説明済み)との間の平均二乗誤差行列を表す。以下でより詳細に説明するように、K個の受信機の中の全ての第kの受信機のMSE (j)を計算することによって、K個の送信機の中の検討対象の各第jの送信機は、検討対象の性能指数の最適化を行うことが可能になる。しかしながら、推定誤差Δ(1),Δ(2),・・・,Δ(Kt)の有効な実現値は未知である。したがって、ステップS301において収集されたCSIT誤差についての長期統計を用いることによって、MSE (j)の代わりにEMSE (j)に依拠することによる近似が行われる。
受信機フィルターTは、送信機において未知である全体プリコーダーV及びグローバルMIMOチャネルHの関数とすることができる。しかし、各第jの送信機は、その代わりに、以下で説明するように、中間確率変数V^(j)を取得するとともに、k=1〜Kの各受信フィルターTのそれ自体のビューT (j)を取得するために、グローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^(j)と、ステップS301において収集された長期統計と一致する推定誤差Δ(1),Δ(2),・・・,Δ(Kt)の実現値とに依拠することができる。備考として、中間確率変数V^(j)及び受信フィルターTのビューT (j)は、k=1〜Kの精緻化行列F (j)のセット{F (j)}の関数である。
EMSE (j)(F (j),・・・,FKr (j))は、パラメーターの固定セットF (j),・・・,FKr (j)について計算することができるので、行列の幾つかの候補セットをランダムに定義して、k=1〜Kの精緻化行列F (j)のセット{F (j)}を形成することと、送信機120aの観点からの総和レート下限LBSR(j)を最小にする候補セットを保持することとによって、総和レート下限LBSR(j)を最適化することができる。
好ましい実施形態では、最適化された総和レート下限LBSR(j)は、図4に関して以下で詳述する反復アルゴリズムによって取得される。
第2の特定の実施形態では、性能指数は、以下のように、k=1〜KのEMSE (j)(F (j),・・・,FKr (j))のトレースの総和である。この総和は、簡略化された数式MINMSE(j)を与え、したがって、より単純な実施態様を伴う。
Figure 0006641506
したがって、ステップS301において取得されたCSIT誤差の長期統計と一致する、推定誤差Δ(1),Δ(2),・・・,Δ(Kt)の実現値の数学的期待値に従った総和レート下限LBSR(j)又は簡略化された数式MINMSE(j)等のEMSE (j)の関数である性能指数の最適化によって、k=1〜Kの精緻化行列F (j)の適切なセット{F (j)}が取得され、さらに、(関係した加法的精緻化ストラテジー又は乗法的精緻化ストラテジーを適用することによって)精緻化行列F (j)の上記適切なセット{F (j)}から精緻化されたプリコーダーV(j)が取得される。
ステップS305において、送信機120aは、K個の送信機のうちの他の送信機と協働して、K個の受信機に向けたシンボルベクトルsのセットの送信を行う。これを行うために、送信機120aは、プリコーダーE (j)を適用する。
図3のアルゴリズムは、全ての送信機によって定期的に独立して適用することができる。図3のアルゴリズムは、グローバルMIMOチャネルHが既定の閾値を越えて変化したことを検出すると、全ての送信機によって独立して適用することができる。図3のアルゴリズムは、K個の送信機からK個の受信機に向けたデータの各送信の前に、全ての送信機によって独立して適用することができる。
ブロック対角化プリコーダーの特定の実施形態
この特定の実施形態では、全体プリコーダーVはブロック対角化プリコーダーである。その場合、KM≧KNであると仮定される。ブロック対角化の定義によれば、K個の受信機の中の第kの受信機を考えた場合、K個の受信機の中の他の全ての受信機のMIMOチャネルが被る干渉は、除去されることになっており、これは、理想的には、以下であることを意味する。
Figure 0006641506
個の受信機の中の第kの受信機の集約された干渉チャネルをH[k]で示すことにする。これは以下のように表される。
Figure 0006641506
同様に、K個の受信機の中の第kの受信機の集約された干渉チャネル推定値をH^[k]で示すことにする。これは以下のように表される。
Figure 0006641506
集約された干渉チャネルH[k]の上記数式に対して特異値分解(SVD)演算を適用すると、以下の式が得られる。
Figure 0006641506
ここで、
−U[k]は、N(K−1)×N(K−1)ユニタリー行列であり、
−D[k]は、N(K−1)×N(K−1)対角行列であり、
−V’[k]は、MK×N(K−1)行列であり、
−V”は、MK×MK−N(K−1)行列である。
全体プリコーダーVのうち、第kの受信機に向けてデータを送信するために適用しなければならない部分VのサイズはMK×Nであり、Vは、行列V”の所定のN個の列のセットを選択することによって取得される。この所定のセットは、既定の選択ルールによれば、V”のN個の最初の列又はV”のN個の最後の列のいずれかとすることができる。
個の送信機の中の第jの送信機の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^(j)を考えた場合、上記数式は以下のものとなる。
Figure 0006641506
ここで、H^[k] (j)は、K個の送信機の中の第jの送信機の観点からの、K個の受信機の中の第kの受信機の集約された干渉チャネル推定値のビューH^[k]を表し、V~'[k] (j)は、有効なグローバルMIMOチャネルHの代わりに推定値H^(j)を用いたときにV’[k]と等価なMK×N(K−1)行列であり、V~'' (j)は、有効なグローバルMIMOチャネルHの代わりに推定値H^(j)を用いたときにV”と等価なMK×MK−N(K−1)行列であり、V~ (j)は、既定の選択ルールに従って、行列V~'' (j)の所定のN個の列のセットを選択することによって取得され、この選択ルールは、全ての送信機によって同様に適用され、V~ (j)は、精緻化関数f(・,・)が前述の乗法的精緻化ストラテジーにおいて用いられるようになっているものであり、これは、以下のことを意味する。
(j)=V~ (j) (j)
ここで、F (j)は、好ましくは以下の制約下でのN×N行列である。
Figure 0006641506
プリコーディングストラテジーの結果、ブロック対角化特性は保存され、これは、以下のことを意味する。
Figure 0006641506
一方、ブロック対角化特性は、通常、グローバルMIMOチャネルH上での送信中に実現されないことに留意しなければならない。なぜならば、H^(j)とHとの間に不一致が存在するからである。したがって、送信機が、送信を行うのにプリコーダーのそれらの初期バージョンV~(j)を用いる場合、受信機に向けた送信間に干渉が存在する。この干渉は、適切な(乗法的又は加法的)精緻化ストラテジーを用いることによって、有効なグローバルMIMOチャネルHと上記ビューH^(j)との間の推定誤差についての長期統計に関する統計的知識を用いることによって低減することができる。
したがって、送信機120a(K個の送信機の中の第jの送信機とみなされる)の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^(j)に対してSVD演算を適用することによって、行列V~'[k] (j)及びV~ (j)を送信機120a(K個の送信機の中の第jの送信機とみなされる)によって求めることができる。
したがって、全体プリコーダーVの初期バージョンV~(j)を精緻化することは、送信機120a(K個の送信機の中の第jの送信機とみなされる)の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^(j)に対する特異値分解の適用によって取得される行列V~ (j)のセット{V~ (j)}に関する精緻化行列F (j)のセット{F (j)}を最適化することを含む。
まず、送信機によって知られている推定誤差Δ(1),Δ(2),・・・,Δ(Kt)の固定実現値のシステム性能メトリックが導出され、次に、確率変数である推定誤差Δ(1),Δ(2),・・・,Δ(Kt)に対する統計的解析が、ステップS301において収集されたそれらのそれぞれの長期統計に従って適用される。
個の送信機から受信された信号をフィルタリングするMMSEフィルターが、K個の受信機のそれぞれにおいて実施されることを考えると、第jの送信機の観点から、推定誤差Δ(1),Δ(2),・・・,Δ(Kt)の固定実現値について第kの受信機において計算されるMMSEフィルターの数式は、以下となる。
Figure 0006641506
ここで、V^ (j)は、K個の送信機の中の他の送信機も、推定誤差Δ(1),Δ(2),・・・,Δ(Kt)の固定実現値に従って精緻化を行ったことを考慮に入れることによってK個の受信機の中の第kの受信機に関係する中間確率変数V^(j)の部分である。
したがって、K個の送信機の中の各第jの送信機は、K個の中の各第lの受信機(l=1〜K)について以下の式を計算する。
Figure 0006641506
ここで、Δ (j)は、検討対象の第jの送信機の観点からの検討対象の第lの受信機の誤差推定値を表し、
Figure 0006641506
であり、H^ (j)は、検討対象の第jの送信機の観点からのMIMOチャネルHのビューを表し、H^[l] (j)は、検討対象の第jの送信機の観点からの検討対象の第lの受信機の集約された干渉チャネルH[l]の推定値を表す。
実際は、
H=H^(j)+Δ(j)
であることを想起されたい。これは、この場合、推定誤差Δ(1),Δ(2),・・・,Δ(Kt)の固定実現値が、検討対象の第jの送信機によって知られているとき、上記第jの送信機が、K個の送信機の中の他の任意の第j’の送信機の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^(j’)を以下のように計算することができることを意味する。
H^(j’)=H^(j)+Δ(j)−Δ(j’)
したがって、上記に表されたように、l=1〜KのV^ (j)を計算することによって、T (j)を計算することが更に可能になり、MSE (j)を以下のように定義することが更に可能になる。
Figure 0006641506
ここで、Iは単位行列である。
推定誤差Δ(1),Δ(2),・・・,Δ(Kt)の有効な固定実現値は、実際には送信機において未知であるが、推定誤差Δ(1),Δ(2),・・・,Δ(Kt)は、ステップS301において収集されたCSIT誤差に関する長期統計から計算することができる所与の発生確率に関連しているので、統計的解析を用いることができる。
各第jの送信機(送信機120a等)は、その場合、ステップS301において収集されたCSIT誤差に関する長期統計を考慮し、さらに、送信機120a(K個の送信機の中の第jの送信機とみなされる)の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^(j)に関して、Δ(1),Δ(2),・・・,Δ(Kt)の分布に対してモンテカルロシミュレーションを用いることによって、又は数値積分を用いることによってEMSE (j)(F (j),・・・,FKr (j))を計算することができる。
代替的に、数学的近似が、EMSE (j)(F (j),・・・,FKr (j))の閉形式の数式を以下のように提供する。
Figure 0006641506
は、Aのムーア・ペンローズ擬似逆行列であり、mdiag(・)は、所与のベクトルから対角行列を作成するものであり、diag(・)は、行列の対角エントリーを取り出し、それらのエントリーをベクトルにスタックするものである。
したがって、ステップS301において取得されたCSIT誤差の長期統計と一致する、推定誤差Δ(1),Δ(2),・・・,Δ(Kt)の実現値の数学的期待値に従った総和レート下限LBSR(j)又は簡略化された数式MINMSE(j)等のEMSE (j)の関数である性能指数の最適化によって、k=1〜Kの精緻化行列F (j)の適切なセット{F (j)}が取得され、さらに、前述の乗法的精緻化ストラテジーを適用することによって精緻化行列F (j)の上記適切なセット{F (j)}から精緻化されたプリコーダーV(j)が取得される。
好ましい実施形態では、最適化された総和レート下限LBSR(j)は、図4に関して以下で詳述する反復アルゴリズムによって取得される。
干渉認識協調ビームフォーミングプリコーダーの特定の実施形態
この特定の実施形態では、送信機の数Kが受信機の数Kと等しい、すなわち、K=Kであると仮定され、送信アンテナの数Mが受信アンテナの数Nと等しい、すなわち、M=Nであると仮定される。その上、K個の送信機のそれぞれは、K個の受信機の中の単一の受信機とのみ通信する。K個の受信機の中の任意の第kの受信機を考えると、該第kの受信機と通信するK個の送信機の中の第jの送信機は、k=jとなるものである。干渉認識協調ビームフォーミングプリコーダーのこの特定の実施形態において以下で用いられる数学的表現では、インデックスk(上記では、K個の受信機の中の任意の受信機を識別することにのみ用いられている)をインデックスjの代わりに用いることができる。干渉認識協調ビームフォーミングプリコーディングは、上記で詳述したブロック対角化プリコーディングのサブケースである。実際は、全体プリコーダーVが、サイズMのK個のブロックを有するブロック対角構造を有することを考えることによって、K個の送信機の中の各第kの送信機は、
=E
であるようなM×M部分行列W’によってプリコーディングされるシンボルベクトルsのみを知っている(K個の送信機の中の他の送信機によって送信しなければならないl≠kの他のシンボルベクトルsを知らない)と考えられる。
k=1〜Kの部分行列W’は、各第kの送信機の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^(k)に基づいて、ビームフォーミング及び/又は干渉アライメントを実施することによって取得される。例えば、部分行列W’は、Changho Suh他「Downlink Interference Alignment」(IEEE Transactions on Communications, vol. 59, no. 9, pp. 2616-2626, September 2011)の文献にあるように、干渉アライメント技法に従って計算される。別の例では、部分行列W’は、
H^(k)=U’D’W
であるようなE H^(k)によって定義されるチャネル行列の固有ベクトルビームフォーミングとして、K個の送信機の中の検討対象の第kの送信機によって上記チャネル行列に対して適用されるSVD演算から計算される。ここで、
−U’は、NK×NKユニタリー行列であり、
−D’は、NK×NK対角行列である。
その場合、最適化は、ブロック対角化プリコーディングに関して上述した手法と非常に類似している。
したがって、次に、ブロック対角化プリコーディングに関して上述した手法を、以下のように、同様に適用することができる。
まず、K個の送信機の中の各第jの送信機の観点からの全体プリコーダーVの初期バージョンV~(j)が、全体プリコーダーV及びその初期バージョンV~(j)がブロック対角構造を有するように、グローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^(j)から計算される。E V~(j)によって定義される各ブロックは、シンボルベクトルsのみをプリコーディングするための、各第jの送信機の観点からの第kの送信機において用いられるプリコーダーに関係しているとともに、干渉アライメント又は固有ベクトルビームフォーミング技法に従って事前に記述されるか又は求められる部分行列W’に関係している。
初期バージョンV~ (j)は、精緻化関数f(・,・)が前述の乗法的精緻化ストラテジーにおいて用いられるようになっているものであり、これは、
(j)=V~ (j) (j)
であることを意味する。ここで、F (j)は、好ましくは以下の制約下でのN×N行列である。
Figure 0006641506
各第jの送信機(送信機120a等)は、その場合、
Figure 0006641506
を用いることによって、ステップS301において取得されたCSIT誤差の長期統計と一致するΔ(1),Δ(2),・・・,Δ(Kt)の分布に対して、さらに、精緻化行列F (j)がそれぞれのブロック対角形状を示すという制約下で、送信機120a(K個の送信機の中の第jの送信機とみなされる)の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^(j)に関して、モンテカルロシミュレーションを用いることによって又は数値積分を用いることによってEMSE (j)(F (j),・・・,FKr (j))を計算することができる。
代替的に、数学的近似が、EMSE (j)(F (j),・・・,FKr (j))の閉形式の数式を以下のように提供する。
Figure 0006641506
したがって、ステップS301において取得されたCSIT誤差の長期統計と一致する、推定誤差Δ(1),Δ(2),・・・,Δ(Kt)の実現値の数学的期待値に従った総和レート下限LBSR(j)又はMINMSE(j)等のEMSE (j)の関数である性能指数の最適化によって、k=1〜Kの精緻化行列F (j)の適切なセット{F (j)}が取得され、さらに、前述の乗法的精緻化ストラテジーを適用することによって精緻化行列F (j)の上記適切なセット{F (j)}から精緻化されたプリコーダーV(j)が取得される。
好ましい実施形態では、最適化された総和レート下限LBSR(j)は、図4に関して以下で詳述する反復アルゴリズムによって取得される。
正則化されたゼロフォーシングプリコーダーの特定の実施形態
この特定の実施形態では、K個の送信機の中の各第jの送信機の観点からの全体プリコーダーVの推定値V~(j)は、K個の受信機の中の各第kの受信機に関して、以下のように表すことができる。
Figure 0006641506
ここで、α(j)は、チャネル反転後に干渉と有用な信号との間のバランスを考慮することを可能にするとともに、信号対干渉プラス雑音比(SINR)を最適化することを可能にする正則化係数を表すスカラーである。α(j)は、K個の送信機の中の検討対象の第jの送信機の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^(j)の統計に従って最適化される。α(j)は、上記第jの送信機によって、K個の送信機の中の他の送信機と共有される。α(j)は、例えば、Z. Wang他「Regularized Zero-Forcing for Multiantenna Broadcast Channels with User Selection」(IEEE Wireless Communications Letters, vol. 1, no. 2, pp. 129-132, April 2012)の文献にあるように取得される。V~ (j)は、精緻化関数f(・,・)が前述の加法的精緻化ストラテジーにおいて用いられるようになっているものであり、これは、
(j)=V~ (j)+F (j)
であることを意味する。ここで、F (j)は、MK×N行列である。
まず、送信機によって知られている推定誤差Δ(1),Δ(2),・・・,Δ(Kt)の固定実現値のシステム性能メトリックが導出され、次に、確率変数である推定誤差Δ(1),Δ(2),・・・,Δ(Kt)に対する統計的解析が、ステップS301において収集されたそれらのそれぞれの長期統計に従って適用される。
Δ(1),Δ(2),・・・,Δ(Kt)の固定実現値について、送信機120a(K個の送信機の中の第jの送信機とみなされる)の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^(j)に関して、V^ (j)を以下のように計算することができる。
Figure 0006641506
ここで、Re{X}は、複素入力Xの実部を表し、
Figure 0006641506
であり、これによって、MSE (j)を以下のように定義することが更に可能になる。
Figure 0006641506
EMSE (j)は以下のように定義されることを想起されたい。
Figure 0006641506
送信機120aは、その場合、ステップS301において取得されたCSIT誤差の長期統計と一致するΔ(1),Δ(2),・・・,Δ(Kt)の分布に対して、さらに、送信機120a(K個の送信機の中の第jの送信機とみなされる)の観点からのグローバルMIMOチャネルHのビューH^(j)に関して、モンテカルロシミュレーションを用いることによって又は数値積分を用いることによってEMSE (j)(F (j),・・・,FKr (j))を計算することができる。
したがって、ステップS301において取得されたCSIT誤差の長期統計と一致する、推定誤差Δ(1),Δ(2),・・・,Δ(Kt)の実現値の数学的期待値に従った総和レート下限LBSR(j)又はMINMSE(j)等のEMSE (j)の関数である性能指数の最適化によって、k=1〜Kの精緻化行列F (j)の適切なセット{F (j)}が取得され、さらに、前述の加法的精緻化ストラテジーを適用することによって精緻化行列F (j)の上記適切なセット{F (j)}から精緻化されたプリコーダーV(j)が取得される。
好ましい実施形態では、最適化された総和レート下限LBSR(j)は、図4に関して以下で詳述する反復アルゴリズムによって取得される。
図4は、LBSR(j)の最適化から、EMSE (j)(F (j),・・・,FKr (j))をどのように計算するのかに関する上記説明によって、精緻化行列F (j)を求める反復アルゴリズムを概略的に表している。図4のアルゴリズムは、K個の送信機の中の各第jの送信機によって実行される。図4のアルゴリズムが、K個の送信機の中の第jの送信機とみなされる送信機120aによって実行されることを例示として考えることにする。
図4のアルゴリズムの実行を開始するとき、送信機120aは、K個の受信機の中の各第kの受信機の行列V~ (j)、Σ (j)及びH^ (j)を知っていると考えられる。
ステップS401において、送信機120aは、K個の受信機の中の各第kの受信機の精緻化行列F (j)を初期化する。この初期化は、以下の制約下でランダムに設定することができる。
Figure 0006641506
代替的に、精緻化行列F (j)は、ブロック対角の場合にはN×N単位行列とみなされ、正則化されたゼロフォーシングの場合にはゼロのみを含むMK×N行列とみなされる。
次のステップS402において、送信機120aは、K個の受信機の中の各第kの受信機について、B (j)を以下のように計算する。
(j)=EMSE (j)(F (j),・・・,FKr (j)
次のステップS403において、送信機120aは、K個の受信機の中の各第kの受信機について、精緻化行列F (j)を、以下の制約が好ましくは満たされるように、
Figure 0006641506
以下のように調整する。
Figure 0006641506
次のステップS404において、送信機120aは、K個の受信機の中の各第kの受信機について、F (j),・・・,FKr (j)に関して収束に達したか否かを確認する。そのような収束に達した場合、図4のアルゴリズムが終了するステップS405が実行され、そうでない場合、ステップS402が繰り返され、B (j)が、直前に行われたステップS403において取得されたF (j),・・・,FKr (j)の値によって更新される。
MINMSE(j)の最適化は、精緻化行列F (j)を、EMSE (j)(F (j),・・・,FKr (j))をどのように計算するのかに関する上記説明によって求めるために行うこともできる。これによって、凸最適化問題が得られる。

Claims (12)

  1. 送信を行うために適用されるプリコーダーを分散形式で求めることによって、無線通信システムのグローバルMIMOチャネルH=[H,・・・,HKr)]を介してK個の複数の送信機とK個の複数の受信機との間でデータの前記送信を行う方法であって、
    前記プリコーダーは、前記送信機によってそれぞれ適用され、全体プリコーダーVを併せて形成し、
    前記K個の複数の送信機の中の各第jの送信機は
    期CSIT関連データを取得し、前記グローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^(j)を作成することと、
    前記取得された短期CSIT関連データから前記全体プリコーダーVの推定値V~(j)を求めることと、
    を行い、
    前記第jの送信機は、さらに、
    前記グローバルMIMOチャネルHに関して前記K 個の送信機のそれぞれが被る送信機におけるチャネル状態情報CSIT誤差の長期統計を収集することであって、該長期統計は、前記CSIT誤差の前記ランダムな変動を表すことと、
    前記第jの送信機の観点からの前記全体プリコーダーVのビューである精緻化されたプリコーダーV(j)=[V (j),・・・,VKr (j)]を取得するために、前記CSIT誤差の収集された長期統計に基づき、さらに、前記グローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^(j)に基づき、さらに、前記グローバルMIMOチャネルHを介した前記送信の性能を表す性能指数に基づき、前記全体プリコーダーVの前記推定値V~(j)=[V~ (j),・・・,V~Kr (j)]を精緻化することと、
    前記K個の複数の送信機の中の前記第jの送信機に関係する前記精緻化されたプリコーダーV(j)の部分によって形成されるプリコーダーを適用することによって、前記データを送信することと、
    を行うことを特徴する、方法。
  2. 前記性能指数は、以下の式
    Figure 0006641506
    のとおりに、前記グローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^(j)に関して前記第jの送信機の観点からの前記グローバルMIMOチャネルHを介して達する総和レートの下限LBSR(j)であり、
    ここで、
    Figure 0006641506
    であり、 (j) は、k=1〜K であって、精緻化行列であり、
    Figure 0006641506
    は、前記数学的期待値を表し、MSE (j)(F (j),・・・,FKr (j))は、送信される前記データと、前記CSIT誤差の長期統計と一致する推定誤差Δ(1),Δ(2),・・・,Δ(Kt)の実現値の対応するフィルタリングされた受信ベクトルとの間の平均二乗誤差行列を表す
    ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記性能指数は、以下の式
    Figure 0006641506
    のとおりに、EMSE (j)(F (j),・・・,FKr (j))のk=1〜Kのトレースの前記総和MINMSE(j)であり、
    ここで、
    Figure 0006641506
    であり、 (j) は、k=1〜K であって、精緻化行列であり、
    Figure 0006641506
    は、前記数学的期待値を表し、MSE (j)(F (j),・・・,FKr (j))は、送信される前記データと、前記CSIT誤差の長期統計と一致する推定誤差Δ(1),Δ(2),・・・,Δ(Kt)の実現値の対応するフィルタリングされた受信ベクトルとの間の前記平均二乗誤差行列を表す
    ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  4. 前記全体プリコーダーVの前記推定値V~(j)を精緻化することは、以下の式
    (j)=f(V~ (j),F (j))=V~ (j) (j)
    のとおりに、乗法的精緻化ストラテジーにおいて、精緻化関数f(・,・)及びk=1〜Kの精緻化行列F (j)のセット{F (j)}によって行われる
    ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記全体プリコーダーVはブロック対角化プリコーダーであり、
    前記送信機は、前記受信機と少なくとも同数のアンテナを累積的に有し、
    前記全体プリコーダーVの前記推定値V~(j)を精緻化することは、したがって、以下の式
    Figure 0006641506
    のとおりに、特異値分解演算を適用することによって取得される前記行列V~ (j)の前記セット{V~ (j)}に関する前記精緻化行列F (j)の前記セット{F (j)}を最適化することを含み、
    ここで、H^[k] (j)は、前記第jの送信機の観点からの前記K個の受信機の中の前記第kの受信機の集約された干渉チャネル推定値のビューH^[k]を表し、
    Figure 0006641506
    であり、V~ (j)は、全ての送信機によって同様に適用される既定の選択ルールに従って、前記特異値分解演算から得られる前記行列V~'' (j)の所定のN個の列のセットを選択することによって取得され、
    各受信機は、N個の数の受信アンテナを有する
    ことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
  6. 前記全体プリコーダーVは、ブロック対角形状を有する干渉認識協調ビームフォーミングプリコーダーであり、K=Kであり、
    各送信機は、各受信機の受信アンテナの数Nと等しい数Mの送信アンテナを有し、
    各送信機は、k=jであるように前記K個の受信機の中の単一の受信機とのみ通信し、
    =E
    であるようになっている部分行列W’は、以下の式
    H^(k)=U’D’W
    のようなE H^(k)によって定義される前記チャネル行列に対して適用される特異値分解演算から、E H^(k)によって定義される前記チャネル行列の前記固有ベクトルビームフォーミングとして計算され、
    ここで、Eは、以下の式として定義され、
    =[0M×(k−1)M,IM×M,0M×(Kt−k)M
    M×(k−1)Mは、ゼロのみを含むM×(k−1)M部分行列であり、0M×(Kt−k)Mは、ゼロのみを含むM×(K−1)M部分行列であり、IM×Mは、M×M単位部分行列である、
    ことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
  7. 前記全体プリコーダーVの前記推定値V~(j)を精緻化することは、以下の式
    (j)=f(V~ (j),F (j))=V~ (j)+F (j)
    のとおりに、加法的精緻化ストラテジーにおいて、精緻化関数f(・,・)及びk=1〜Kの精緻化行列F (j)のセット{F (j)}によって行われる
    ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記全体プリコーダーVは、正則化されたゼロフォーシングプリコーダーであり、
    前記全体プリコーダーVの前記推定値V~(j)は、以下のように表すことができ、
    Figure 0006641506
    ここで、α(j)は、前記第jの送信機の観点からの前記グローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^(j)の統計に従って最適化される正則化係数を表すスカラーであり、α(j)は、前記第jの送信機によって、前記K個の送信機の中の前記他の送信機と共有される
    ことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
  9. 前記全体プリコーダーVの前記推定値V~(j)を精緻化することは、以下の電力制約の下で行われ、
    Figure 0006641506
    ここで、f(・,・)は、精緻化関数であり、F (j) は、k=1〜K であって、精緻化行列であり、
    各受信機は、N個の数の受信アンテナを有する
    ことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. プログラマブルデバイスによって実行されると、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法を実施する、前記プログラマブルデバイスにロードすることができるプログラムコード命令を含む
    ことを特徴とする、コンピュータープログラム。
  11. プログラマブルデバイスによって実行されると、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法を実施する、前記プログラマブルデバイスにロードすることができるプログラムコード命令を含むコンピュータープログラムを記憶する
    ことを特徴とする、情報記憶媒体。
  12. 送信を行うために適用されるプリコーダーを分散形式で求めることによって、無線通信システムのグローバルMIMOチャネルH=[H,・・・,HKr]を介してK個の複数の送信機とK個の複数の受信機との間でデータの前記送信を行うデバイスであって、
    前記プリコーダーは、前記送信機によってそれぞれ適用され、全体プリコーダーVを併せて形成し、
    該デバイスは、前記K個の複数の送信機の中の各第jの送信機であり
    期CSIT関連データを取得し、前記グローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^(j)を作成する手段と、
    前記取得された短期CSIT関連データから前記全体プリコーダーVの推定値V~(j)を求める手段と、
    を備え、
    該デバイスは、さらに、
    前記グローバルMIMOチャネルHに関して前記K 個の送信機のそれぞれが被る送信機におけるチャネル状態情報CSIT誤差の長期統計を収集する手段であって、該長期統計は、前記CSIT誤差の前記ランダムな変動を表す、収集する手段と、
    前記第jの送信機の観点からの前記全体プリコーダーVのビューである精緻化されたプリコーダーV(j)=[V (j),・・・,VKr (j)]を取得するために、前記CSIT誤差の収集された長期統計に基づき、さらに、前記グローバルMIMOチャネルHのそれ自体のビューH^(j)に基づき、さらに、前記グローバルMIMOチャネルHを介した前記送信の性能を表す性能指数に基づき、前記全体プリコーダーVの前記推定値V~(j)=[V~ (j),・・・,V~Kr (j)]を精緻化する手段と、
    前記K個の複数の送信機の中の前記第jの送信機に関係する前記精緻化されたプリコーダーV(j)の部分によって形成されるプリコーダーを適用することによって、前記データを送信する手段と、
    を備えることを特徴する、デバイス。
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