本明細書及び添付の特許請求の範囲中で使用する、単数形の用語は、文脈が明らかに他のことを示さない限り複数形を含む。したがって、例えば「免疫抑制成分」への言及は複数のこのような成分を含み、「レトロウイルス複製ベクター」への言及は、当業者に知られる1つ以上のレトロウイルス複製ベクター及びそれらの同等物という言及を含む。
他に定義しない限り、本明細書中で使用する全ての技術用語及び科学用語は、当業者に一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書中に記載するものと類似又は同等である多くの方法及び試薬があるが、例示的な方法及び材料を本明細書中に示す。
本明細書中で言及する全ての刊行物は、本明細書の記載に関連して使用され得る方法を記載し開示する目的で、参照により完全に本明細書に組み込まれる。これらの刊行物は、本出願の出願日より前のそれらの開示のために単に提供される。本明細書中の如何なる事項も、本発明者らが従来の開示よりこのような開示に先立つ資格がないことを認めるものとして解釈されない。更に、本開示中に明示的に定義された用語と類似又は同一である1つ以上の刊行物中に示された任意の用語に関して、本開示において明示的に提供される用語の定義が、全ての態様において制御する。
更に、他に言及しない限り「又は」の使用は「及び/又は」を意味する。同様に、「含む」、「含める」、「含み」及びその変化形は交換可能であり、限定的であることを意図するものではない。
様々な実施形態の記載が用語「含んでいる(comprising)」を使用する場合、当業者は、幾つかの具体的な場合、用語「から本質的になる」又は「からなる」を使用して実施形態を代替的に記載することができると理解するであろうことを、更に理解されたい。
レトロウイルスは様々な方法で分類されているが、命名法は最近十年間で標準化された(その開示が参照により本明細書に組み込まれる、ワールドワイドウェブ(www)上のncbi.nlm.nih.gov/ICTVdb/ICTVdB/におけるICTVdB-The Universal Virus Database,v4、及び教科書「Retroviruses」Coffin,Hughs及びVarmus編、Cold Spring Harbor Press 1997を参照)。本明細書中に記載される組成物は、オルソレトロウイルス、又はより典型的にはガンマレトロウイルス、及び更により具体的には、ある特定の実施形態において哺乳動物オンコレトロウイルス(例えばMLV、GLV、及びFELVなど)から得られる、又はそれらに由来する。
本明細書中で使用する用語「I型インターフェロン」は、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-デルタ、インターフェロン-Ω及びインターフェロン-タウを含めた、任意の哺乳動物種のネイティブ配列I型インターフェロンの全亜型を含むものと定義する。同様に、用語「ヒトI型インターフェロン」は、共通の細胞受容体に結合するヒトインターフェロン-α、インターフェロン-β、及びインターフェロン-Ωクラスを含めた、ネイティブ配列ヒトI型インターフェロンの全亜型を含むものと定義する。
他に明白に示さない限り、用語「インターフェロン-α」、「IFN-α」、及び「ヒトインターフェロン-α」、「ヒトIFN-α」及び「hIFN-α」を、ネイティブ配列ヒトインターフェロン-αの全亜型を含めたネイティブ配列ヒトαインターフェロンの全種を指すために、本明細書中で用いる。天然(ネイティブ配列)ヒトインターフェロン-αは、高度の構造相同性で別個の遺伝子によりコードされる23種以上の密接に関連したタンパク質を含む(Weissmann及びWeber、Prog.Nucl.Acid.Res.Mol.Biol.、33:251、1986;J.Interferon Res.、13:443-444、1993;Robertsら、J.Interferon Cytokine Res.、18:805-816、1998)。ヒトIFN-α遺伝子座は2つのサブファミリーを含む。第一のサブファミリーは、IFN-αA(IFN-α2)、IFN-αB(IFN-α8)、IFN-α(IFN-α10)、IFN-αD(IFN-α1)、IFN-αE(IFN-α22)、IFN-αF(IFN-α21)、IFN-αG(IFN-α5)、及びIFN-αH(IFN-α14)、並びに少なくとも80%の相同性を有する偽遺伝子を含めた、少なくとも14の機能的な非対立遺伝子からなる。第二のサブファミリー、α11又はΩは、少なくとも5つの偽遺伝子とIFN-α遺伝子と70%の相同性を示す1つの機能的遺伝子を含有する(Weissmann及びWeber、1986、上記)(本明細書中では「IFN-α111」又は「IFN-Ω」として表す)。
本開示は、I型インターフェロン経路の調節により、自己免疫障害を治療するのに有用な組成物及び方法を提供する。これらの組成物は単独、又は他のインターフェロン調節組成物と組合せて使用することができる。
一般に、抗癌剤としての複製ウイルスの潜在的制約は、ウイルスの免疫による消失前に腫瘍塊内で充分なウイルス拡散が達成されることである。レトロウイルス複製ベクター(RRV)の非細胞溶解性によって、アデノウイルス又はワクシニアウイルスに基づくウイルスなどの腫瘍溶解性ウイルスと比較して、それらは自然免疫応答を引き起こしにくくなるようである。RRVは比較的非炎症性の微弱な免疫原であり、げっ歯類腫瘍モデルでは、健常組織以外の広範囲での複製を伴わずに、標的腫瘍中で複製するようである。この持続性の性質は、免疫能を有するラットとマウスでの脳腫瘍モデル、及び高度なグリオーマがあるイヌ対象において実証されている。更に、広宿主性マウス複製レトロウイルス調製物を正常なサルに注入することによって、検出可能なウイルスが迅速に除去される。更に、これらと同じRRVの性質がヒトにおいて観察されている(例えば、Toca511を用いた臨床試験、Tocagen Inc.、San Diego、CA)。Toca511は広宿主性エンベロープタンパク質を含むRRVであり、感染腫瘍中で5-フルオロシトシンを5-フルオロウラシルに変換するよう設計された酵母由来シトシンデアミナーゼをコードする。
RRVの腫瘍特異性は、ガンマレトロウイルスによる増殖性感染のための細胞標的中での複製の必要性と、腫瘍細胞における細胞の自然免疫シグナル伝達経路の一般的な欠陥の組合せから生じると以前から推測されている。自然免疫応答は、免疫防御の直接的な系を構成するのに加えて、適応免疫にとって不可欠な先駆であると考えられる。更に、APOBEC3G、テセリン及び他の宿主の制限因子などのウイルス制限活性は一般に、パターン認識受容体(PRR)を介した自然免疫シグナル伝達経路の活性化によって誘導される、I型IFNによって誘導される下流エフェクターである。
本開示は、RRVがこれまでに知られているより炎症性が低く、相対的に弱められた自然免疫系を刺激する能力を有することを実証する。これらのRRVの性質は、適応免疫応答による腫瘍からのウイルス除去の欠如、及び更にこれらの腫瘍における許容的ウイルス複製に一部分は原因がある。
自然免疫応答は、細胞表面上又は細胞区画内に存在するPRRと病原体関連分子パターン(PAMP)の相互作用によって主に媒介される。ウイルス成分を検出するPRRには、toll様受容体(TLR2、TLR3、TLR4、TLR7、TLR8及びTLR10)、RIG-I様受容体(RIG-1及びMDA5)、PKR、DAI及びSTINGがある。PRRの誘導によって、IFNα/βが産生され、オートクリン又はパラクリン型でI型IFNシグナル伝達経路を活性化し、続いてこれが細胞中での抗ウイルス状態の活性化をもたらす。
様々な型の癌細胞は、細胞死を回避及び/又は細胞増殖を促進するために、I型IFNシグナル伝達経路に欠陥があり、それによってこのような癌細胞内でのウイルス感染及び複製に最適なニッチがもたらされる。IRF3及びSTAT1を含めたI型IFNシグナル伝達の欠陥、並びにI型IFN受容体の欠失が、ヒトグリオーマ細胞を含めた腫瘍細胞において報告されている。腫瘍細胞が腫瘍の増殖をサポートするためにI型IFNシグナル伝達において欠陥を有し、これらの欠陥によってI型IFNに感受性があるウイルスの複製が可能になるという概念は、水胞性口炎ウイルス(VSV)などの腫瘍溶解性ウイルスにおいて実証されている。
本開示は、RRVの要素がI型IFN依存的活性を調節する際に有用であることを実証する。本開示は、ヒト腫瘍細胞と正常細胞における、RRV感染とI型IFN依存的抗ウイルス応答の間の相関関係を示す。本明細書中に示す結果は、RRVの複製は外因性インターフェロン処理によって顕著に阻害されるが、RRV感染がレンチウイルスベクターを含めた他のウイルスより炎症性の低い事象であることを実証する。このデータは、広宿主性MLVベースのRRVが、IFN応答性ヒトグリオーマ腫瘍由来細胞又は培養非形質転換線維芽細胞及び内皮細胞において、I型IFN応答を直接的には引き起こさないことを証明する。さらにこのデータは、RRV粒子と関連する免疫抑制成分が形質細胞様樹状細胞(pDC)中でTLRの活性化を能動的に抑制する、最初の直接的証拠も提示している。癌細胞中でのI型IFNに対する低減された応答性と組合せたRRVによるI型IFN産生の抑制は、ウイルス除去なしでの腫瘍中の広宿主性MLVベースのRRVの選択的複製と一致する。
本開示は、他の一般的なウイルスベクターと比較したRRVに対するインターフェロン応答の質的な差を実証し、これは正所性グリオーママウスモデル及びヒト患者中の膠芽腫において観察された効率的腫瘍特異的拡散及び有効性と一致する。本明細書中に記載した試験では、腫瘍促進細胞(例えば、腫瘍微小環境の一部が類似したヒトグリオーマ及び他の腫瘍細胞、線維芽細胞、内皮細胞及びpDC)は、ウイルスベクターに感染すると、MLVベースのRRVとI型IFN依存的抗ウイルス応答の間で相互作用を示した。
本開示は、RRVが外因性IFNαとβに感受性があること、及び癌細胞(例えばHT1080とU87-MG)中で観察された遺伝子誘導に対する低レベルの応答性が、腫瘍細胞はI型IFN経路に欠陥を有するという概念と一致することを更に実証する。しかしながら、本明細書中に示した試験では、MLVベースのRRVは腫瘍細胞又は非形質転換線維芽細胞及び初代内皮細胞いずれかのウイルス感染によってI型IFN媒介抗ウイルス応答を誘導しなかったし、IFN媒介抗ウイルス応答の欠如は、細胞がI型IFNを産生できないことに原因があるわけではない。
更に本開示は、IFNα/βの非存在下において、RRV-GFPはIFNα/β耐性細胞中で親細胞ほど効率よく複製しなかったことを更に実証する。したがって、これらのin vitro系において、宿主細胞におけるI型IFNシグナル伝達のより過度な欠陥は、MLVベースのRRVによる増殖性感染に必ず必要というわけではないが、IFNシグナル伝達の欠如は、in vivoの腫瘍において許容的な役割を果たし得る。更に、ヒト細胞中で観察されたIFN誘導の能動的抑制は、線維芽細胞及び内皮細胞中でも起こり得ると考えられる。特に、細胞自然免疫応答に関与するHMGB、TREX1、cGAS及びDHX9/36を含む近年発見されたサイトゾル核酸センサーも、この遮断において役割を果たし得る。
I型IFNはFriend系統のMLV(FV)による感染の初期段階における抗ウイルス免疫の重要因子として関係づけられているが、TLR7及びMyd88はマウスにおいてレトロウイルス感染に対する抗体応答を仲介する役割を果たし得る。I型IFNによる先天性応答の活性化は、耐性マウス系統ではそれらの強く、持続性の抗体応答のため不要であり得る。ウイルス特異的抗MLV抗体を産生する際のTLR7の必要性はTLR7ノックアウトマウスにおいて実証された。更にIFNαRノックアウトモデルを使用して、I型IFN応答が耐性マウス中で適応免疫応答を引き起こすのに必要でなかったことが示された。おそらく、MLVベースのレトロウイルス感染の状況では、ヒトは耐性マウス系統と同様にはたらき、したがってI型IFNα/β応答は不要であり、且つ休止免疫細胞における高いベースラインレベルのAPOBEC3Gが初期ウイルス複製、それに続く強い抗体応答を制御し得る。
抗MLV応答におけるMyd88及びTLR7の機能的役割の現在の理解、並びにレトロウイルスRNAがウイルス進入後エンドソーム区画中でTLR7と相互作用するという推測にもかかわらず、本明細書中で示した試験では、ウイルスベクターがpDCに曝露される前に熱不活性化されていない限り、pDC中のTLR7は、広宿主性、VSV-G又は両方のエンベロープ糖タンパク質を有する複製性又は欠失型レトロウイルスベクターにより活性化されたことは見出されなかった。興味深いことに、レトロウイルスRNAの非存在下でのpDCにおけるIFNα産生を誘導するウイルス様粒子(VLP)の能力は、レトロウイルスRNA以外に、Toca511中に存在する別のPAMPがあることを示唆する。更に、広宿主性及びVSV-Gエンベロープ糖タンパク質並びにVLPで偽型化したMLVベースのレトロウイルス非複製ベクターを使用した実験によって、RRVと関連する広宿主性エンベロープ糖タンパク質以外の他の免疫抑制成分の同定をもたらした。したがって、ウイルスRNA以外の他のPAMP及びMLVベースのウイルス粒子と関連する免疫抑制成分の存在を示す。更に、加熱処理したMLVベースのウイルス粒子の曝露は、暗号化されたPAMPの曝露と免疫抑制成分の不活性化を同時にもたらし、pDCにおけるIFNα産生をもたらす。加熱処理下でヒトpDCにおいてIFNα産生を誘導することができる、これらの試験において作製したMLVベースの非複製ベクターが糖-gagを発現しないことに留意することも重要である。RRVから発現された糖-gagのN末端断片はMLVウイルス粒子中に取り込まれることが示されており、標的細胞中でAPOBEC3の機能を阻害する役割を果たす。データは、I型IFNに調節される活性と異なる機構を介して、このAPOBEC3の阻害が起こることを示唆する。更に、HIV-1ベクターとVLPの両方が(おそらく、それぞれTLR7及びTLR7非依存性経路によって媒介される)DCにおけるIFNα産生を誘導できることを考えれば、Toca511がpDC中でレンチウイルスベクターに誘導されるIFNα産生を能動的に阻害できることを示す本発明のデータは、この阻害がTLR7及びTLR7非依存性経路中の共通下流成分を介し得ることを示唆する。
異なる細胞型から作製したレトロウイルス粒子は、異なる細胞タンパク質を取り込むことが知られているので、データは、免疫抑制及び免疫刺激成分はおそらくウイルス構成要素に起因することを示唆する。この仮説は、ヒト細胞株から作製したベクターと類似した性質を有するイヌ科生産細胞株から生産したベクターからの結果によって更に支持される。ウイルス構成要素が免疫抑制の活性成分であることのさらなる支持は、293Tにおける一過性トランスフェクションによって生産された広宿主性エンベロープタンパク質関連微小胞とウイルスRNAを欠く加熱処理VLPのコインキュベーションが、pDC中でのIFNα産生の誘導を抑制しなかったことを示す結果に由来する。しかしながら、異なる細胞から生成したウイルス粒子における異なる宿主タンパク質が、この遮断を媒介し得る可能性がある。
本開示は、加熱処理下でヒトpDCにおいてIFNα産生を誘導することができる、本明細書の試験において作製した複製能欠失型MLVベースのベクターが、グリコール-gag(Pr80gag)を発現しないことも示す。したがって別の実施形態では、Pr80gagはRRVウイルス粒子と関連するインターフェロン制御成分(複数可)においてほとんど又は全く役割を果たさない。更に、HIV-1ベクターとVLPの両方が(おそらく、それぞれTLR7及びTLR7非依存性経路によって媒介される)DCにおけるIFNα産生を誘導できることを考えれば、本明細書中に示すデータは、Toca511がpDC中でレンチウイルスベクターに誘導されるIFNα産生を能動的に阻害できることを示し(図5E参照)、この阻害がTLR7及びTLR7非依存性経路中の共通下流成分を介し得ることを示唆する。
本開示は、腫瘍細胞、非形質転換線維芽細胞、初代内皮細胞又はpDCにおけるI型IFN応答は、広宿主性MLVベースのRRVによって誘導されないことを示す。したがって、本明細書中で示す発見は、細胞増殖がRRV複製をサポートする際の重要な決定因子であり、VSV、他の腫瘍溶解性ウイルス及びレンチウイルスベクターと異なり、RRVが細胞培養において細胞の自然免疫活性を誘導しないことを確証する。しかしながら本開示は、本明細書中で試験した細胞を介するもの以外にin vivoのI型IFN誘導機構が存在し、それが正常組織中でウイルス複製を抑制し、幾つかのマウス腫瘍モデル、及びグリオーマがあるイヌ及びヒトにおいて観察される腫瘍特異的複製を可能にし得ることを除外するわけではない。更に本開示は、潜在的腫瘍部位が、ウイルス複製を制御するin vivoのI型IFN誘導が存在するか否かについて重要な役割を果たすことを示す。更に、腫瘍中での選択的複製に貢献し得る適応免疫の下方調節などの免疫特権をもたらす、腫瘍における多くの機構が記載されている。
上記事項及び以下の実施例に基づいて、本開示はRRV粒子と関連する免疫抑制成分(複数可)の同定を提供する。本組成物は、ガンマレトロウイルス由来のウイルス様粒子(VLP)を含む。VLPは構造的及び/又は機能的gag及びpolポリペプチドを含む。特定の実施形態において、広宿主性エンベロープ糖タンパク質はRRV粒子と関連する免疫抑制成分ではない。したがって一実施形態において、VLPはエンベロープを欠く。本開示のVLPは、異種プロモーター(例えばCMVプロモーター、例えば図11D参照)と作動可能に連結したgag-pol遺伝子を含むポリヌクレオチドを含む複製能欠失型ウイルス系を、適切な細胞型に形質導入することによって生産され得る。エンベロープを除去してコアVLPを得ることができる(K.B.Andersen、Virus Research175:134-142(2013)。コアVLP(gag自己構築コアVLPはまた、gagタンパク質の細菌発現及び自己構築により作製することができる(Y.Morikawa J.Biol.Chem279:31964-31972、2004)。
本明細書中で使用する用語「ウイルス様粒子」又は「VLP」は、以下で更に論じる数種のウイルスのいずれかに由来する、非複製のウイルスの殻を指す。VLPは一般に、限定されるものではないが、カプシド、コート、殻、表面及び/又はエンベロープタンパク質と呼ばれるタンパク質などの1つ以上のウイルスタンパク質、又はこれらのタンパク質に由来する粒子形成ポリペプチドで構成される。適切な発現系におけるタンパク質の組換え発現によってVLPは自然に形成し得る。個々のVLPを生産するための方法は当技術分野で知られており、以下でより完全に議論される。ウイルスタンパク質の組換え発現後のVLPの存在は、当技術分野で知られる従来の技術を使用して、例えば電子顕微鏡検査、X線結晶構造解析などにより検出することができる。例えば、Bakerら、Biophys.J.(1991)60:1445-1456;Hagenseeら、J.Virol.(1994)68:4503-4505を参照されたい。例えば、VLPは密度勾配遠心分離法によって単離することができ、及び/又は特徴的な密度のバンドによって同定することができる。或いは、低温電子顕微鏡観察を、問題のVLP調製物の硝子状水性サンプルについて、及び適切な露光条件下で記録されたイメージについて実施することができる。
一実施形態において、本開示のウイルス様粒子(VLP)はgag及びpolポリペプチドを含むが、複製の能力はなく、幾つかの場合、(i)エンベロープ、及び/又は(ii)ウイルスゲノム(例えば、ウイルス核酸)を欠くウイルス粒子を含む。具体的実施形態において、本開示のVLPは粒子形成ポリペプチド(例えば、gagポリペプチド)を含むネイキッドなウイルス粒子であり、polポリペプチドを更に含むことができる。別の実施形態において、VLPはgag及びpolポリペプチドを含む。
本開示は、gag-polポリヌクレオチド及びポリペプチド配列を示す(それぞれ配列番号1(gag-polポリヌクレオチド)及び配列番号2(gag)及び配列番号3(pol))。これらのgag-pol配列は例示的であり、他のガンマレトロウイルスに由来する、又は高度の同一性と機能性を共有する他のgag-pol、gag又はpol配列は、当業者によって容易に同定可能である(例えば、その各々がgag及びpolポリヌクレオチドとポリペプチドを含む配列を与える、受託番号J02255、M93134、NC001819、NC_001885、及びAB67261を参照されたい。各受託番号と関係がある配列は本明細書に組み込まれる)。
本開示は、(i)配列番号2及び/若しくは3を含むか又はこれらからなるVLP、(ii)配列番号2及び/若しくは3を含むか又はこれらからなるポリペプチド、(iii)配列番号2及び/若しくは3と少なくとも85%、87%、90%、92%、95%、98%、99%、99.5%の同一性を有するポリペプチドを含むか又はこれらからなるVLP、並びに(iv)配列番号2及び/若しくは3と少なくとも85%、87%、90%、92%、95%、98%、99%、99.5%の同一性を有するポリペプチドを含む免疫抑制組成物を提供し、それらは1型インターフェロン経路及び/又はIFNα及び/又はβの産生の阻害によって免疫抑制する。
特定のウイルスタンパク質由来の「粒子形成ポリペプチド」は、VLP形成に有利な条件下でVLPを形成する能力を有する、完全長又はほぼ完全長のウイルスタンパク質、及びその断片、又は内部欠失があるウイルスタンパク質を意味する。したがって、このポリペプチドは、参照分子の完全長配列、断片、切断型及び部分配列、並びにアナログ及び前駆体型を含むことができる。したがってこの用語は、ポリペプチドがVLPを形成する能力及び/又はI型インターフェロン経路を抑制する能力を保持する限り、配列に対する欠失、付加及び置換を意図する。したがってこの用語は、コートタンパク質の変異はウイルス分離株間で起こることが多いため、特定のポリペプチドの天然の変異を含む。この用語は、タンパク質がVLPを形成する能力及び/又はI型インターフェロン経路を抑制する能力を保持する限り、参照タンパク質において天然では生じない欠失、付加及び置換も含む。
用語「gagポリタンパク質」又は「gagタンパク質」、「proポリタンパク質」又は「proタンパク質」、及び「polポリタンパク質」又は「polタンパク質」は、レトロウイルスgag、pro及びpol遺伝子によってコードされ、一つの前駆体「ポリタンパク質」として典型的に発現される多数のタンパク質を指す。本明細書中で使用する用語「ポリタンパク質」は、gag、pro又はpolポリタンパク質の全体又は任意の一部分を含むものとする。ウイルスRNAの翻訳は、通常gag-pol前駆体と呼ばれるが、現在より適切にgag-pro-pol前駆体と呼ばれている融合タンパク質の合成をもたらすこともある。
本明細書中で使用する「gagポリペプチド」は、本明細書中に記載するウイルス様粒子の形成を担うレトロウイルス由来の構造ポリペプチドである。幾つかの実施形態において、gagポリペプチドを意図的に突然変異させてある特徴に影響を与えることができる。典型的なレトロウイルスゲノムは、3つの主な遺伝子産物:構造タンパク質をコードするgag遺伝子、逆転写酵素及び関連タンパク質分解ポリペプチダーゼをコードするpol遺伝子、並びに感染細胞の表面及び更に成熟状態の放出ウイルス粒子の表面において、そのコードする糖タンパク質膜タンパク質が検出されるenvをコードする。全てのレトロウイルスのgag遺伝子は全体的構造類似性を有し、レトロウイルスの各群内ではアミノ酸レベルで保存されている。gag遺伝子は逆転写酵素以外のコアタンパク質をもたらす。
MLVに関して、gag前駆体ポリタンパク質はPr65Gagであり、前駆体におけるその順序がNH2-p15-pp12-p30-p10-COOHである4タンパク質に切断される。これらの切断はウイルスプロテアーゼによって媒介され、ウイルスに応じてウイルス放出の前後に起こり得る。MLVgagタンパク質はグリコシル化型及び非グリコシル化型で存在する。グリコシル化型は、非グリコシル化Pr65Gag用AUGコドンから上流に位置する異なるインフレーム開始コドンから合成されるgPr80Gagから切断される。グリコシル化Gagを合成しないMLVの欠失突然変異体は依然感染性であり、非グリコシル化Gagはウイルス様粒子を依然形成し得る。
構造上、原型gagポリタンパク質は、レトロウイルスgag遺伝子中と同じ順序で一般に存在する3つの主要タンパク質:マトリックスタンパク質(MA)、カプシドタンパク質(CA)、及びヌクレオカプシドタンパク質(NC)に分けられる。成熟タンパク質へのgagポリタンパク質のプロセシングはレトロウイルスによりコードされたプロテアーゼによって触媒され、新たに出芽したウイルス粒子が成熟すると起こる。機能上、gagポリタンパク質は3つのドメイン:gagポリタンパク質を細胞膜へとターゲティングする膜結合ドメイン、gag重合を促進する相互作用ドメイン、及び宿主細胞からの発生期ビリオンの放出を容易にする後期ドメインに分けられる。構築を媒介するgagタンパク質の型はポリタンパク質である。したがって本明細書中に含まれるgagポリペプチドは、VLPの形成及び放出用の機能性エレメントを含む。当業者は、gagポリペプチド及びポリヌクレオチドに関する、目的、クローニング、発現及び配列を容易に理解する(例えば、Hansenら、J.Virol.、64:5306-5316、1990;Willら、AIDS、5:639-654、1991;Wangら、 J.Virol.、72:7950-7959、1998;McDonnellら、J.Mol.Biol.、279:921-928、1998;Schultz及びRein、J.Virol.、63:2370-2372、1989;Accolaら、J.Virol.、72:2072-2078、1998;Borsettiら、J.Virol.、72:9313-9317、1998;Bowzardら、J.Virol.、72:9034-9044、1998;Krishnaら、J.Virol.、72:564-577、1998;Willsら、J.Virol.、68:6605-6618、1994;Xiangら、J.Virol.、70:5695-5700、1996及びGarnierら、J.Virol.、73:2309-2320、1999を参照)。
本開示のVLPにおいて使用するように、gagポリペプチドはVLP形成用の機能性エレメントを含むことができる。gagポリペプチドは、1つ以上の他のポリペプチドのコード配列をgagポリペプチドコード配列にスプライシングすることによって作製することができる1つ以上の他のポリペプチドを任意に含むことができる。gagポリペプチドへの他のポリペプチドの挿入に有用な部位はC末端である。
本開示のpolポリペプチドは当技術分野で知られている。pol遺伝子は、RNA依存性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)、プロテアーゼ及びインテグラーゼタンパク質をコードする。(例えば、gag-polポリタンパク質としてではなくpolタンパク質として)低率ではあるが、polタンパク質がウイルスカプシド単独中で取り込まれ得ることが実証された。
同一性、関連性、相同性などの百分率を決定する方法は当技術分野で知られている。2つ以上の核酸又はポリヌクレオチドの配列関係を説明するために、以下の用語が使用される。(a)「参照配列」、(b)「比較ウインドウ」、(c)「配列同一性」、(d)「配列同一性の百分率」、及び(e)「実質的同一性」。
本明細書中で使用する「参照配列」は、配列比較の基準として使用される定義された配列である。参照配列は、特定の配列のサブセット又は全体、例えば完全長cDNA若しくは遺伝子配列のセグメント、又は完全cDNA若しくは遺伝子配列であってよい。
本明細書中で使用する「比較ウインドウ」は、ポリヌクレオチド配列の連続した及び特定のセグメントを指すものであり、比較ウインドウ内のポリヌクレオチド配列は、2配列の最適なアライメントのために(付加又は欠失を含まない)参照配列と比較して付加又は欠失(即ちギャップ)を含み得る。一般に、比較ウインドウは少なくとも20の長さの連続したヌクレオチドであり、任意に30、40、50、100又はそれより長い可能性がある。当業者は、ポリヌクレオチド配列中にギャップを含めることに起因する参照配列との高い類似性を回避するため、ギャップペナルティを典型的に導入しマッチ数から差し引くことを理解している。
比較用配列のアライメントの方法は当技術分野でよく知られている。したがって、任意の2配列間の同一性百分率の決定は数学的アルゴリズムを使用して実施することができる。このような数学的アルゴリズムの非制限的な例は、Myers及びMiller(Myers及びMiller、CABIOS、4、11(1988))のアルゴリズム、Smithら(Smithら、Adv.Appl.Math.、2、482(1981))の局所相同性アルゴリズム、Needleman及びWunsch(Needleman及びWunsch、JMB、48、443(1970))の相同性アライメントアルゴリズム、Pearson及びLipman(Pearson及びLipman、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85、2444(1988))の類似性検索法、Karlin及びAltschul(Karlin及びAltschul、Proc.Natl.Acad.Sci.USA90、5873(1993))中と同様に改変された、Karlin及びAltschul(Karlin及びAltschul、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87、2264(1990))のアルゴリズムである。
コンピュータによるこれらの数学的アルゴリズムの実行を配列の比較に利用して、配列同一性を決定することができる。このような実行は、PC/GeneプログラムにおけるCLUSTAL(Intelligenetics,Mountain View,Califから入手可能)、ALIGNプログラム(バージョン2.0)及びGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、及びWisconsin Geneticsソフトウェアパッケージ、バージョン8におけるTFASTA(Genetics Computer Group(GCG),575 Science Drive、Madison、Wis.、USAから入手可能)を含むが、これらだけには限られない。これらのプログラムを使用したアライメントは、デフォルトパラメータを使用して実施することができる。CLUSTALプログラムは、Higginsら(Higginsら、CABIOS、5、151(1989));Corpetら(Corpetら、Nucl.Acids Res.、16、10881(1988);Huangら(Huangら,CABIOS、8、155(1992)及びPearsonら(Pearsonら、Meth.Mol.Biol.、24、307(1994))によって充分記載されている。ALIGNプログラムはMyers及びMiller、上記のアルゴリズムに基づく。Altschulら(Altschul ら、JMB、215、403(1990))のBLASTプログラムはKarlin及びAltschul、上記のアルゴリズムに基づく。
BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを介して公に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列内の同じ長さのワードとアライメントされたとき、あるプラスの値の閾値スコアTと合致するか又はそれを満たすクエリ配列中の長さ「W」の短いワードを同定することによって、高スコア配列ペア(HSP)を最初に同定することを含む。「T」は近隣ワードスコア閾値と呼ばれる。これらの初期近隣ワードヒットは、それらを含有する更に長いHSPを見つける検索を開始するための種として働く。その後、累積アライメントスコアを増大することができる限り、ワードヒットを各配列に沿って両方向に延長する。累積スコアは、ヌクレオチド配列に関しては、パラメータ「M」(一対の合致残基に関する報酬スコア、常に>0)及び「N」(ミスマッチ残基に関するペナルティスコア、常に<0)を使用して計算する。アミノ酸配列に関しては、スコアリングマトリックスを使用して累積スコアを計算する。累積アライメントスコアがその得られる最大値から量「X」だけ減少するとき、1つ以上のマイナススコアの残基アライメントの蓄積が原因で累積スコアがゼロ以下になるとき、又はいずれかの配列の末端に達したとき、各方向におけるワードヒットの延長は止まる。
配列同一性の百分率の計算に加えて、BLASTアルゴリズムは2配列間の類似性の統計解析も実施する。BLASTアルゴリズムによって与えられる類似性の一測定値は最小合計確率(P(N))であり、これが2ヌクレオチド又はアミノ酸配列間の合致が偶然起こり得る確率の指標を与える。例えば、試験核酸配列と参照核酸配列の比較における最小合計確率が約0.1未満、約0.01未満、又は更に約0.001未満である場合、試験核酸配列は参照配列と類似していると考えられる。
比較目的でギャップアライメントを得るため、(BLAST2.0における)Gapped BLASTを利用することができる。或いは、(BLAST2.0における)PSI-BLASTを使用して、分子間の距離関係を検出する反復的検索を実施することができる。BLAST、Gapped BLAST、PSI-BLASTの利用時には、各プログラムのデフォルトパラメータを使用することができる(例えばヌクレオチド配列用にBLASTN、タンパク質用にBLASTX)。(ヌクレオチド配列用の)BLASTNプログラムは、デフォルトとして11のワード長(W)、10の期待値(E)、100のカットオフ、M=5、N=-4、及び両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列用に、BLASTPプログラムは、デフォルトとして3のワード長(W)、10の期待値(E)、及びBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用する。アライメントは手動検査によって実施することもできる。
本開示の目的で、本明細書中に開示するプロモーター配列との配列同一性の百分率を決定するためのヌクレオチド配列の比較は、BlastNプログラム(バージョン1.4.7以降)をそのデフォルトパラメータで使用して、又は任意の同等のプログラムを使用して行ってもよい。「同等のプログラム」とは、問題の任意の2配列に関して、そのプログラムによってもたらされる対応するアライメントと比較したとき、同一のヌクレオチド又はアミノ酸残基の合致及び同一の配列同一性の百分率を有するアライメントをもたらす、任意の配列比較プログラムを意図したものである。
本明細書中で使用する、2つの核酸又はポリペプチド配列の文脈における「配列同一性」又は「同一性」は、配列比較アルゴリズム又は目視により測定して、特定の比較ウインドウにわたり最大限対応するようにアライメントしたときに同一である2配列中の、残基の特定の百分率を指す。タンパク質に関して配列同一性の百分率を使用するとき、同一ではない残基位置は保存的アミノ酸置換によって異なることが多く、ここでアミノ酸残基は類似の化学的性質(例えば、電荷又は疎水性)を有する他のアミノ酸残基に置換され、したがって分子の機能性を変えないことは理解される。配列が保存的置換において異なるとき、配列同一性は、置換の保存的性質の訂正のため、百分率を上方に調節することができる。このような保存的置換によって異なる配列は「配列類似性」又は「類似性」を有すると言える。この調節を行うための手段は当業者にはよく知られている。これは典型的に、完全なミスマッチではなく部分的なミスマッチとして保存的置換をスコアリングすることを含み、これによって配列同一性の百分率が増大する。したがって例えば、同一アミノ酸に1のスコアが与えられ、非保存的置換にゼロのスコアが与えられる場合、保存的置換にはゼロと1の間のスコアが与えられる。保存的置換のスコアは、例えばPC/Geneプログラム(Intelligenetics、Mountain View、Calif)において実行されるように計算される。
本明細書中で使用する「配列同一性の百分率」は、比較ウインドウ上の2つの最適にアライメントされた配列の比較によって決定された値を意味し、ここで比較ウインドウ内のポリヌクレオチド配列の一部は2配列の最適なアライメントたのめに、(付加又は欠失を含まない)参照配列と比較して付加又は欠失(即ちギャップ)を含む可能性がある。百分率は、同一核酸塩基又はアミノ酸残基が両配列中に存在する位置の数を決定して合致する位置の数を得て、比較ウインドウ内の合計位置数で合致位置の数を割り、その結果に100を掛けて配列同一性の百分率を得ることによって計算する。
用語ポリヌクレオチド配列の「実質的同一性」は、標準パラメータを使用して記載されるアライメントプログラムの1つを使用して、ポリヌクレオチドが、参照配列(例えば配列番号1)と比較して少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、又は94%、又は更に少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する配列を含むことを意味する。当業者は、コドン縮重、アミノ酸類似性、リーディングフレームの位置などを考慮することによって、これらの値を適切に調節し、2ヌクレオチド配列によってコードされる対応するタンパク質の同一性を決定することができることを理解している。これらの目的でのアミノ酸配列の実質的同一性は、少なくとも70%、80%、90%、又は更に少なくとも95%の配列同一性を通常意味する。
ヌクレオチド配列が実質的に同一である別の指標は、ストリンジェントな条件下で2分子が互いにハイブリダイズする場合である。一般にストリンジェントな条件は、規定イオン強度及びpHで特定の配列に関して、熱的融点(Tm)より約5℃低くなるように選択される。しかしながらストリンジェントな条件は、本明細書中で他に記載しない限り、望ましいストリンジェンシーの程度に応じて約1℃〜約20℃の範囲の温度を包含する。ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸は、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一である場合、依然として実質的に同一である。これは例えば、遺伝子コードによって許容される最大コドン縮重を使用して核酸のコピーを作製するとき起こり得る。2つの核酸配列が実質的に同一である1つの指標は、第一の核酸によってコードされるポリペプチドが第二の核酸によってコードされるポリペプチドと免疫交差反応性であるときである。
ペプチドの文脈での用語「実質的同一性」は、ペプチドが、特定の比較ウインドウにわたり参照配列と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、又は94%、又は更に95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する配列を含むことを示す。ある特定の実施形態において、Needleman及びWunsch(Needleman及びWunsch、JMB、48、443(1970))の相同性アライメントアルゴリズムを使用して最適アライメントを実施する。2つのペプチド配列が実質的に同一である1つの指標は、1つのペプチドが第二のペプチドに対して産生した抗体と免疫反応性であることである。したがって、ペプチドは第二のペプチドと実質的に同一であり、例えば2つのペプチドは保存的置換によってのみ異なる。したがって本発明は、本明細書中に示す核酸分子及びペプチドと実質的に同一である核酸分子及びペプチドも提供する。
配列比較用に、典型的には一配列が、試験配列と比較する参照配列として働く。配列比較アルゴリズムを使用するとき、試験配列と参照配列はコンピュータへの入力値であり、必要な場合は部分配列座標を示し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを示す。次いで配列比較アルゴリズムによって、示されたプログラムパラメータに基づき参照配列と比較した、試験配列(複数可)に関する配列同一性の百分率を計算する。
前述の通り、2つの核酸配列が実質的に同一である別の指標は、ストリンジェントな条件下で2分子が互いにハイブリダイズすることである。語句「特異的にハイブリダイズする」は、その配列が複合混合物(例えば全細胞の)DNA又はRNA中に存在するとき、ストリンジェントな条件下での特定のヌクレオチド配列のみと分子の結合、二本鎖形成、又はハイブリダイゼーションを指す。「実質的に結合」はプローブ核酸と標的核酸の間の相補的ハイブリダイゼーションを指し、標的核酸配列の望ましい検出を達成するためにハイブリダイゼーション媒体のストリンジェンシーを低下させることによって提供され得る少数のミスマッチを包含する。
サザン及びノーザンハイブリダイゼーションなどの核酸ハイブリダイゼーション実験の文脈での、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」及び「ストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄条件」は配列依存的であり、様々な環境パラメータに応じて異なる。長い配列は高温で特異的にハイブリダイズする。熱的融点(Tm)は、50%の標的配列が完全に合致するプローブにハイブリダイズする(規定イオン強度及びpHの下での)温度である。特異性は、典型的にはハイブリダイゼーション後洗浄と相関しており、その重要な要素は、最終洗浄溶液のイオン強度及び温度である。DNA-DNAハイブリッドに関して、Meinkoth及びWahl(1984) の等式;Tm81.5℃+16.6(logM)+0.41(%GC)-0.61(%form)-500/L(式中、Mは一価カチオンのモル濃度であり、%GCはDNA中のグアノシン及びシトシンヌクレオチドの百分率であり、%formはハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドの百分率であり、且つLは塩基対中のハイブリッドの長さである。)からTmを近似値化することができる。Tmは1%のミスマッチ毎に約1℃低下し、したがってTm、ハイブリダイゼーション、及び/又は洗浄条件を調節し望ましい同一性の配列をハイブリダイズさせることが可能である。例えば、90%を超える同一性を有する配列を求める場合、Tmを10℃低下させることが可能である。一般にストリンジェントな条件は、規定イオン強度及びpHで特異的配列及びその相補配列に関して、Tmより約5℃低くなるように選択される。しかしながら、非常にストリンジェントな条件はTmより1、2、3、若しくは4℃低いハイブリダイゼーション及び/又は洗浄温度を利用することができ、中程度にストリンジェントな条件はTmより6、7、8、9、若しくは10℃低いハイブリダイゼーション及び/又は洗浄温度を利用することができ、低ストリンジェンシー条件はT.sub.mより11、12、13、14、15、若しくは20℃低いハイブリダイゼーション及び/又は洗浄温度を利用することができる。当業者は、等式、ハイブリダイゼーション及び洗浄組成物、並びに所望の温度を使用して、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシー及び/又は洗浄溶液の変型が本質的に記載されていることを理解している。望ましい程度のミスマッチが45℃未満(水溶液)又は32℃(ホルムアミド溶液)の温度をもたらす場合、高温を使用することができるようにSSC濃度を増大させる。一般に、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション及び洗浄条件は、規定イオン強度及びpHで特異的配列に関してTmより約5℃低くなるように選択される。
高度にストリンジェントな洗浄条件の一例は、約15分間72℃で0.15MのNaClである。ストリンジェントな洗浄条件の一例は、15分間65℃で0.2×SSCの洗浄である。高ストリンジェンシー洗浄を低ストリンジェンシー洗浄に続けて、バックグラウンドプローブシグナルを除去することが多い。例えば100ヌクレオチドを超える二本鎖に関する中ストリンジェンシー洗浄の一例は、15分間45℃で1×SSCの洗浄である。(例えば、約10〜50ヌクレオチドの)短いヌクレオチド配列に関して、ストリンジェントな条件はpH7.0〜8.3で約1.5M未満、約0.01〜1.0M未満の塩濃度、Na(又は他の塩)イオン濃度を典型的に含み、(例えば50ヌクレオチドを超える)長いプローブに関して、温度は典型的には少なくとも約30℃及び少なくとも約60℃である。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの不安定化剤を加えることによって達成することもできる。一般に、特定のハイブリダイゼーションアッセイにおいて無関係なプローブに関して観察される比より2倍(又はそれより大きい)シグナル対ノイズ比は、特異的ハイブリダイゼーションの検出を示す。ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸は、それらがコードするタンパク質が実質的に同一である場合、依然として実質的に同一である。これは例えば、遺伝子コードによって許容される最大コドン縮重を使用して核酸のコピーを作製するとき起こる。
非常にストリンジェントな条件は、特定プローブに関してTmと等しくなるように選択される。サザン又はノーザンブロットにおけるフィルター上での100を超える相補的残基を有する相補的核酸の、ハイブリダイゼーションに関するストリンジェントな条件の一例は、37℃における50%ホルムアミド、例えば50%ホルムアミド、1MのNaCl、1%SDS中でのハイブリダイゼーション、及び60〜65℃における0.1×SSC中での洗浄である。例示的な低ストリンジェンシー条件は、37℃における30〜35%ホルムアミド、1MのNaCl、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)のバッファー溶液でのハイブリダイゼーション、及び50〜55℃における1×SSC〜2×SSC(20×SSC=3.0MNaCl/0.3Mクエン酸三ナトリウム)中での洗浄を含む。例示的な中ストリンジェンシー条件は、37℃における40〜45%ホルムアミド、1.0MのNaCl、1%SDS中でのハイブリダイゼーション、及び55〜60℃における0.5××SSC〜1×SSC中での洗浄を含む。
本開示は、複製の能力がなくIFN産生を抑制する及び/又はI型IFN経路を抑制する、ガンマレトロウイルス由来の組成物を含む組成物を提供する。一実施形態では、組成物は、MLVなどのガンマレトロウイルス由来のgag及びpolポリペプチドを含むか又はこれらからなるウイルス様粒子を含む。別の実施形態では、VLPはウイルス粒子とgag及びpolポリペプチドからなる。別の実施形態では、組成物はガンマレトロウイルス由来のgag及びpolポリペプチドを含む。
本開示の組成物を使用して、免疫障害を有する対象を治療することができる。本明細書中で使用する用語「免疫障害」及び同様の用語は、自己免疫障害を含めた、動物の免疫系によって引き起こされる疾患、障害又は状態を意味する。免疫障害は、免疫成分を有し実質的又は完全に免疫系に媒介される疾患、障害又は状態を含む。一実施形態において、免疫疾患又は障害はI型インターフェロン媒介免疫疾患又は障害である。別の実施形態において、免疫疾患又は障害はIFNαと関係がある。自己免疫障害は、個体独自の免疫系が自己を誤って攻撃し、それによって個体独自の身体の細胞、組織、及び/又は器官を標的化する障害である。例えば、自己免疫反応は多発性硬化症では神経系を対象とし、クローン病では腸を対象とする。全身性エリテマトーデス(ループス)などの他の自己免疫障害では、罹患組織及び器官は同じ疾患を有する個体間で異なる可能性がある。ループスを有する人は罹患した皮膚と関節を有する可能性があり、一方別の人は罹患した皮膚、腎臓、及び肺を有する可能性がある。最後に、免疫系による特定の組織に対する損傷は、1型糖尿病における膵臓のインスリン産生細胞の破壊と同様に持続的であり得る。本発明の化合物及び方法を使用して改善することができる具体的な自己免疫障害として、限定するものではないが、神経系の自己免疫障害(例えば、多発性硬化症、重症筋無力症、ギヤンバレー症候群などの自己免疫ニューロパチー、及び自己免疫ぶどう膜炎)、血液の自己免疫障害(例えば、自己免疫溶血性貧血、悪性貧血、及び自己免疫血小板減少症)、血管の自己免疫障害(例えば、側頭動脈炎、抗リン脂質症候群、ウエゲナー肉芽腫症、及びベーチェット病などの脈管炎)、皮膚の自己免疫障害(例えば、乾癬、疱疹状皮膚炎、尋常性天疱瘡、及び白斑)、胃腸系の自己免疫障害(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎、原発性胆汁性肝硬変、及び自己免疫性肝炎)、内分泌腺の自己免疫障害(例えば、1型又は免疫媒介糖尿病、グレーブス病、橋本甲状腺炎、自己免疫性卵巣炎及び精巣炎、及び副腎の自己免疫障害)、並びに(結合組織及び筋骨格系疾患を含めた)多臓器の自己免疫障害(例えば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、強直性脊椎炎などの脊椎関節炎、及びシェーグレン症候群)が挙げられる。更に、移植片対宿主病及びアレルギー障害などの他の免疫系媒介疾患も、本明細書中の免疫障害の定義内に含まれる。幾つかの免疫障害は炎症によって引き起こされるので、免疫障害と考えられる障害と炎症障害の間には若干の重複がある。本開示の目的では、このような重複がある障害の場合、それは免疫障害又は炎症障害のいずれかであると考えることができる。本明細書中の「免疫障害の治療」は、自己免疫障害、その症状、又はそれに関する素因を治癒、軽減、改変、作用、又は予防する目的での、免疫障害、このような疾患の症状、又はこのような疾患に関する素因を有する対象への本開示の化合物又は組成物の投与を指す。
本開示の化合物を使用して、炎症障害を有する対象を予防又は治療することができる。本明細書中で使用する「炎症障害」は、身体組織の炎症又は炎症成分の保有によって特徴付けられる、疾患、障害又は状態を意味する。これらは局所炎症応答及び全身炎症を含む。このような炎症障害の例として、皮膚移植片拒絶を含めた移植片拒絶、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、及び骨再吸収の増加と関係がある骨疾患、回腸炎、潰瘍性大腸炎、バレット症候群、及びクローン病などの炎症性腸疾患、喘息、成人型呼吸窮迫症候群、及び慢性閉塞性気道疾患などの炎症性肺障害、角膜ジストロフィー、トラコーマ、オンコセルカ症、ぶどう膜炎、交感性眼炎及び眼内炎を含めた眼部の炎症障害、歯肉炎及び歯周炎を含めた歯肉の慢性炎症障害、結核、らい病、尿毒症性合併症、糸球体腎炎及びネフローゼを含めた腎臓の炎症障害、硬化性皮膚炎、乾癬及び湿疹を含めた皮膚の炎症障害、神経系の慢性脱髄性疾患、多発性硬化症、AIDS関連神経変性及びアルツハイマー病、感染性髄膜炎、エンセファロミエロパシー、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、及びウイルス性又は自己免疫性脳炎を含めた中枢神経系の炎症障害、自己免疫障害、免疫複合体脈管炎、全身性エリテマトーデス(systemic lupus and erythematodes)、全身性エリテマトーデス(SLE)、及び心筋症、虚血性心疾患、高コレステロール症、アテローム性動脈硬化症などの心臓の炎症性疾患、並びに、子かん前症を含めた、有意な炎症成分がある様々な他の疾患、慢性肝不全、脳及び脊髄損傷、癌が挙げられる。グラム陽性菌若しくはグラム陰性菌ショック、出血性若しくはアナフィラキシーショック、又は炎症性サイトカインに応答する癌の化学療法によって誘導されるショック、例えば炎症促進性サイトカインと関連するショックによって例示される、身体全体の炎症が存在する可能性もある。このようなショックは、例えば癌の化学療法において使用する化学療法剤により誘導され得る。
本明細書中の「免疫障害の治療」は、炎症障害、その症状、又はそれに関する素因を治癒、軽減、改変、作用、又は予防する目的での、炎症障害、このような障害の症状、又はこのような障害に関する素因を有する対象への本発明の化合物又は組成物の投与を指す。
それを必要とする患者における免疫抑制のため又は炎症状態及び免疫障害を治療若しくは予防するための方法は、本開示の組成物(例えば、局所投与の場合の10ngのp30タンパク質から静脈内経路による投与の場合の1gの範囲の用量で、VLPを含む組成物、ウイルス粒子含有gag-polポリペプチドなど:治療する指標、治療及び/又は投与の経路の目的に応じて中間用量を使用することもできる、以下参照)を投与対象の患者に投与することを更に含むことができ、有効量の1つ以上の他の活性剤を更に含むことができる。このような活性剤は、免疫抑制のため又は炎症状態若しくは免疫障害用に従来使用されている活性剤を含み得る。これらの他の活性剤は、本開示の組成物と組合せて投与したとき他の利点をもたらす活性剤でもあり得る。例えば他の治療剤は、限定するものではないが、ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、鎮痛薬、免疫抑制剤、及びこれらの適切な混合物を含み得る。このような併用療法治療では、本開示の組成物と他の薬剤(複数可)の両方を従来法によって対象(例えば、哺乳動物、ヒトなど、オス又はメス)に投与する。作用物質は単一の剤形又は別々の剤形で投与することができる。他の治療剤の有効量及び剤形は当業者によく知られている。他の治療剤の最適有効量範囲を決定することは、充分当業者の技術範囲内にある。
別の治療剤を対象に投与する本開示の一実施形態において、本開示の組成物の有効量は、他の治療剤を投与しないときのその有効量未満である。別の実施形態において、従来の作用物質の有効量は、本開示の組成物を投与しないときのその有効量未満である。このようにして、いずれかの作用物質の高用量の関係する望ましくない副作用を最小にすることができる。(用量レジメンの改善及び/又は薬剤コストの低下を非制限的に含めた)他の考えられる利点は当業者には明らかである。
自己免疫及び炎症状態に関する一実施形態において、他の治療剤はステロイド性又は非ステロイド性抗炎症薬であってよい。特に有用な非ステロイド性抗炎症薬には、限定するものではないが、アスピリン、イブプロフェン、ジクロフェナク、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、フルブフェン、ケトプロフェン、インドプロフェン、ピロプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラモプロフェン、ムロプロフェン、トリオキサプロフェン、スプロフェン、アミノプロフェン、チアプロフェン酸、フルプロフェン、ブクロキシ酸、インドメタシン、サリンダック、トルメチン、ゾメピラック、チオピナック、ジドメタシン、アセメタシン、フェンチアザック、クリダナック、オキシピナック、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸、トルフェナム酸、ジフルリサル、フルフェニサル、ピロキシカム、スドキシカム、イソキシカム;アスピリン、サリチル酸ナトリウム、コリンマグネシウムトリサリシレート、サルサレート、ジフルニサル、サリシルサリチル酸、スルファサラジン、及びオルサラジンを含めたサリチル酸誘導体;アセトアミノフェン及びフェナセチンを含めたパラ-アミノフェノール誘導体;インドメタシン、サリンダック、及びエトドラックを含めたインドール及びインデン酢酸;トルメチン、ジクロフェナク、及びケトロラックを含めたヘテロアリール酢酸;メフェナム酸、及びメクロフェナム酸を含めたアンスラニル酸(フェナム酸);オキシカム(ピロキシカム、テノキシカム)、及びピラゾリジンジオン(フェニルブタゾン、オキシフェンサルタゾン)を含めたエノール酸;及びナブメトンを含めたアルカノン、並びにそれらの薬学的に許容される塩及びそれらの混合物が挙げられる。NSAIDのより詳細な記載に関しては、それらの全容が参照により本明細書に組み込まれる、Paul A.Insel,Analgesic-Antipyretic and Antiinflammatory Agents and Drugs Employed in the Treatment of Gout、Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics 617-57(Perry B.Molinhoff及びRaymond W.Ruddon編、第9版 1996)及びGlen R.Hanson,Analgesic,Antipyretic and Anti-inflammatory Drugs、Remington:The Science and Practice of Pharmacy II巻 1196-1221(A.R.Gennaro編 第19版 1995)を参照されたい。
免疫抑制剤には、グルココルチコイド、コルチコステロイド(プレドニゾン又はソルメドロールなど)、T細胞ブロッカー(シクロスポリンA及びFK506など)、プリンアナログ(アザチオプリン(イムラン)など)、ピリミジンアナログ(シトシンアラビノシドなど)、アルキル化剤(ナイトロジェンマスタード、フェニルアラニンマスタード、ブスルファン、及びシクロホスファミド)、葉酸アンタゴニスト(アミノプテリン及びメトトレキサートなど)、抗体(ラパマイシン、アクチノマイシンD、マイトマイシンC、プラマイシン、及びクロラムフェニコールなど)、ヒトIgG、抗リンパ球グロブリン(ALG)、及び抗体(抗CD3(OKT3)、抗CD4(OKT4)、抗CD5、抗CD7、抗IL-2受容体、抗α/βTCR、抗ICAM-1、抗CD20(リツキサン)、抗IL-12及びイムノトキシンに対する抗体など)がある。
前述及び他の有用な併用療法は、当業者によって理解され認識されている。このような併用療法の考えられる利点には、異なる有効性プロファイル、毒性副作用を最小にするのにそれぞれの個別活性成分をより少なく使用する能力、有効性の相乗的な改善、投与若しくは使用しやすさの改善及び/又は化合物の調製物又は製剤の全体的費用の減少がある。
一実施形態において、本開示のVLPをステロイド組成物と組合せて投与することができる。別の実施形態において、VLPを単独又はステロイドと組合せて、遺伝子療法又は遺伝子送達用ウイルスベクターを投与する前に対象に投与することができる。一実施形態において、VLPを単独又はステロイド若しくは他の免疫抑制組成物と組合せてToca511の送達前に投与する(その開示が本明細書に組み込まれる米国特許第8,722,867号を参照)。このようにして、Toca511に対する免疫応答が抑制される。
用語「有効量」は、哺乳動物における疾患、障害又は望ましくない生理学的状態(例えば、I型インターフェロン経路活性化、IFNα産生など)を(予防を含めて)治療するのに有効な、本開示の組成物(例えばVLP)の活性成分の量を指す。本開示中、「有効量」の本開示の組成物によってIDDM若しくはSLEなどの自己免疫障害を低減、鈍化又は遅延することができ、IDDM若しくはSLEなどの自己免疫障害の発症を低減、予防又は阻害する(即ち、ある程度鈍化及び好ましくは停止する)ことができ、及び/又はIDDM若しくはSLEなどの自己免疫障害と関係がある1つ以上の症状をある程度軽減することができる。
本開示の方法において、用語「制御」及びその文法上の変化形は、望ましくない事象、例えば自己反応性T細胞の生成及び自己免疫の発症などの生理学的状態の予防、部分的若しくは完全阻害、低減、遅延又は鈍化を指すために用いられる。
「治療」は療法的治療と予防又は予防的措置の両方を指す。治療の必要な人は、既にその障害がある人、及びその障害を有する傾向がある人、又はその障害を予防すべき人を含む。本開示の目的では、有益又は望ましい臨床結果には、限定されるものではないが、検出可能であれ検出不能であれ、症状の緩和、疾患の程度の低下、安定状態の(即ち悪化していない)疾患状態、疾患進行の遅延又は鈍化、疾患状態の改善又は一時的軽減(palliation)、及び(部分的又は完全な)寛解がある。
「治療」は、治療が施されていない場合の予想生存期間と比較した、生存期間の延長を意味する場合もある。治療の必要な人は、既にその状態若しくは障害がある人、及びその状態若しくは障害を有する傾向がある人、又はその状態若しくは障害を予防すべき人を含む。
「薬学的に許容される」担体、賦形剤、又は安定剤は、利用する用量及び濃度において、それらに曝される細胞又は哺乳動物に無毒なものである。生理学的に許容される担体は水性pH緩衝溶液であることが多い。生理学的に許容される担体の例には、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸を含めた抗酸化剤;低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含めた単糖、二糖、及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトール又はソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;及び/又はTWEEN、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICSなどの非イオン性界面活性剤がある。
治療目的の「哺乳動物」は、ヒト、家畜及び農用動物、及び動物園用、競技用、又はペット用動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシなどを含めた、哺乳動物として分類される任意の動物を指す。典型的には、哺乳動物はヒトである。
更に別の実施形態において、本開示は、患者中のIFN-αの発現と関係がある疾患又は状態を治療するための方法であって、免疫抑制性である有効量のVLP又はガンマレトロウイルス由来組成物を患者に投与することを含む方法を提供する。投与は、例えば抗IFN-α抗体などの、追加の免疫抑制剤を含むことができる。患者は哺乳動物患者、典型的にはヒト患者である。疾患は、インスリン依存型糖尿病(IDDM)、全身性エリテマトーデス(SLE)、又は自己免疫性甲状腺炎などの自己免疫疾患である。
以下の実施例は、本開示を限定するものではなく例示することを意図している。これらの実施例は使用され得るものの典型であるが、当業者に知られている他の手順を代替的に使用することができる。
材料。以下の細胞株をアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から入手した:ヒト線維肉腫細胞(HT1080)、ヒト星状細胞腫細胞U87-MG(HTB-14)、ヒト前立腺癌細胞PC3(CRL-1435)、ヒト前立腺癌腫細胞LN-CaP(CRL-1740)、ヒトT-リンパ球Sup-T1(CRL-1942)、ヒト線維芽細胞株WI-38(CCL-75)とCCD-1070Sk(CRL-2091)、及び正常胎児胸腺由来のイヌ科細胞Cf2Th(CRL-1430)。初代HUVECはVec Technologiesから入手した。293T細胞は非市販品から入手した。Friedmannら(Proc Natl Acad Sci USA 90:8033-8037,1993)中に記載されたように高レベルのMoloney MLV gag及びpolを発現する293GP細胞。組み込まれたpBA9bプロウイルスを含有する293GP/pBA9b細胞は、VSV-G偽型化MLVベクターで形質導入した293GP細胞に由来する。
細胞培養。293T、293GP、293GP/pBA9b、HT1080、U87-MG、PC3及びCf2Th細胞を、10%FBS(Hyclone)、ピルビン酸ナトリウム、グルタマックス、及びペニシリン/ストレプトマイシン、及び抗生物質(ペニシリン100IU/mL、ストレプトマイシン50μg/mL)を含有する完全DMEM培地中で培養した。LN-CaP細胞とSup-T1細胞は、10%FBS、グルタマックス、及びペニシリン/ストレプトマイシンを含有する完全RPMI培地中で培養した。WI-38細胞は、10%FBS、グルタマックス、及びペニシリン/ストレプトマイシンを含有するMEM培地中で培養した。初代HUVECはMCDB-131C培地(VecTechnologies)中で培養した。
200U/mLで外因性I型IFN、組換えIFNα2a又は組換えIFNβ(PBL Interferon Source、それぞれ製品番号11100-1及び11415-1)を用いてU87-MG細胞を処理した実験。サイトカインを、初期感染期間中及び各細胞継代時に(2日毎に)培養培地に施した。IFNα及びIFNβ耐性U87-MG細胞の選択は、12ウェルプレート中での親U87-MG細胞の播種によって実施した。細胞を、約21日間の培養中、高濃度(1000U/mL)の外因性IFNα又はIFNβの存在下において選択した。培養における21日間の選択後、細胞を回復させIFNα/βの非存在下で増殖させた。
ポリ(I:C)によりU87-MG細胞を処理し、12ウェルプレート中にウェル当たり1×105個の細胞でトランスフェクション前日に細胞を接種した実験。次いで細胞に、HD FuGene HDトランスフェクション試薬(Roche、カタログ番号04709691001)を使用し10μgのポリ(I:C)(Sigmaカタログ番号P0913)をトランスフェクトした。トランスフェクション後約8時間で、上清を酵素結合サンドイッチアッセイ(ELISA、PBL Interferon Source)用に収集しIFNαとIFNβの量を定量化した。
MLVベースのベクターの生成。Toca511及びRRV-GFPは、広宿主性エンベロープ遺伝子及びenv遺伝子下流のEMCV IRES-導入遺伝子カセットを有するMoloney MLVベースのRRVである(例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、ベクターの配列と構造、製造の方法、使用及び感染性を記載した、Perez ODら Mol Ther20(9):1689-1698(2012)、米国特許第6,410,313号、米国特許第8,652,460号、米国特許第8,722,867号、及び米国特許第8,741,279号を参照)。pBA9bプラスミドはMLVベースの複製能欠失型レトロウイルスベクターである(例えば、Sheridan PLらMol Ther2(3):262-275(2000)を参照)。MLVgag-pol、広宿主性エンベロープ遺伝子及びVSV-G遺伝子をコードする発現ベクターも利用した。RRV-GFPとToca511のウイルスストックを安定状態のヒト生産者細胞株から作製し、次いでカラム精製した。(それぞれToca511-G、MLV-A、MLV-G、及びMLV-A+Gとして示す)水胞性口炎ウイルスの糖タンパク質-Gベクターで偽型化したToca511(VSV-G)、4070A広宿主性エンベロープタンパク質で偽型化した複製能欠失型MLVベースのレトロウイルスベクター(MLV-A)、VSV-Gで偽型化したレトロウイルスベクター(MLV-G)、広宿主性エンベロープタンパク質で偽型化したレトロウイルスベクター(MLV-A+G)のウイルスストックを、1cm2当たり2×105個の細胞で播種した293T細胞における一過性トランスフェクションによって生成した。細胞播種後20時間でリン酸カルシウム法を使用し、プラスミドDNA(Toca511-Gに関してpAC3-yCD2及びCMV-VSVG、MLV-Aに関してCMV-gag-pol、pBA9b、CMV-ampho、MLV-Gに関してCMV-gag-pol、pBA9b、CMV-VSVG、並びにMLV-A+Gに関してCMV-gag-pol、pBA9b、CMV-ampho及びCMV-VSVG)を用いて細胞をトランスフェクトした。トランスフェクション後18時間で、細胞をPBSで2回洗浄し新たな完全培地でインキュベートした。ウイルス上清をトランスフェクション後約42時間で収集し、0.45μmフィルターを介して濾過した。濾過したウイルス上清に一晩4℃において5U/mLでベンゾナーゼ(Sigma)処理を施し、(TLR9応答を刺激し得る)プラスミドDNAによるあらゆる汚染を排除し、次に250分間18,000rpmで遠心分離した。Toca511-G及びMLV-A+Gウイルス粒子に関しては、スクロースクッションを用いた高速遠心分離精製を実施し、取り込まれなかったウイルス糖タンパク質を除去した。全ての濃縮ウイルス粒子を調整バッファー中に懸濁した。
RRVウイルス力価をPerez ODら Mol Ther20(9):1689-1698(2012)中に記載されたように測定した。手短には、ベクター調製物を、希釈系ベクターの1サイクル感染によりPC3細胞において力価測定した。1サイクル感染はAZTを用いた処理、次に組み込みプロウイルス数を定量化するための組み込みウイルスベクターに特異的な標的細胞ゲノムDNAのqPCRによって行った。1ミリリットル当たりの形質導入単位(TU/mL)で報告したウイルス力価は、1×105個コピーから1×101個コピーのプラスミドDNAの範囲の標準曲線に由来する、並びに各反応中で使用した反応当たりの既知量のゲノムDNAインプット、細胞数、及びウイルスストックの希釈係数に由来するCt値の計算によって測定した。
この試験において生産したVLPは、エンベロープ糖タンパク質及びウイルスRNAを欠くウイルス様粒子、又はエンベロープ糖タンパク質を欠くがpBA9bウイルスRNAでパッケージ化されたウイルス様粒子(VLP/pBA9b)である。高レベルのMoloney MLVgag及びpolを発現する95%を超えるコンフルエント状態の293GP(Sharmaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94:10803-10808、1997)、又は50のMOIにおいてVSV-G偽型化MLVベクターで形質導入した293GP/pBA9b細胞由来の上清を収集し、0.45μmフィルターを介して濾過し、次に4℃において30分間19,500×gで遠心分離した。全ての濃縮ウイルス粒子を調整バッファー中に懸濁した。
コアVLPの生産。コアVLP粒子を2つの方法で生産する。A)前に記載したように作製したエンベロープVLPを希釈洗浄剤で処理して、コアタンパク質gagpol粒子に影響を与えずに膜を溶かす。或いは、合成又は細菌中でMLVgagタンパク質を合成し、コアVLP粒子の自己構築を可能にすることによりコアVLPを作製することができる(Morikawa op.cit)。活性を、以下及び図面中に記載したように形質細胞様樹状細胞を用いた試験によって、確認することができる。
レンチウイルスベクターの生産。GFPをコードしVSV-Gで偽型化したHIV-1系レンチウイルスベクター(LV-G)を、Dull Tら、J Virol 72(11):8463-8471(1998)中に以前に記載されたように、293T細胞における一過性トランスフェクションによって生成した。ウイルス上清をトランスフェクション後36時間で収集し、次いで一晩4℃において5U/mLでベンゾナーゼ処理した。その後、ウイルス上清を超遠心分離によって濃縮し、濃縮した。Ostertag Dら、Neuro Oncol 14(2):145-159(2012)中に記載されたように、ウイルスストックを調整バッファー中に再懸濁した。合計体積1mL中の濃縮ウイルスストックからの連続1:10希釈液で293T細胞に形質導入することによって、ウイルス力価測定アッセイを実施した。細胞は形質導入後48時間で回収し、フローサイトメトリーにより分析してGFP陽性細胞の百分率を測定した。TU/mLとして報告したウイルス力価は(GFP陽性細胞の割合%×播種した細胞数×希釈係数)によって決定した。
GFP発現によりモニタリングしたウイルス複製。HT1080、U87-MG、LN-CaP、Sup-T1、WI-38及び初代ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)におけるウイルス複製をモニタリングするため、T25フラスコ中の2×105個の細胞に0.01のMOIでRRV-GFPを感染させた。3〜4日毎に、ウイルス複製を連続的にモニタリングするため一部の細胞を新たな培養培地で継代し、一部の細胞を回収しフローサイトメトリーによりGFP発現を測定した。フローサイトメトリー用に回収した細胞をPBSで洗浄し、5分間1000rpmで遠心分離した。細胞ペレットは1%パラホルムアルデヒド含有PBS中に再懸濁した。GFP陽性細胞の割合は、GFP陰性細胞を除外するための正確な選別を使用しフローサイトメトリーにより決定した。GFP陽性細胞の百分率は、FL1チャネル(BD Biosciences)を使用しCantonIIによって測定した。ウイルス複製動態は、経時的にGFP陽性細胞の百分率をプロットすることによって得た。
ウイルス粒子の内在化アッセイ。pDCバイオアッセイに使用した同量のウイルス粒子(Toca511とVLP)は、Vybrant SFDA-SE Cell Tracerキット(Molecular Probes)を使用しCFDA-SEで標識した。標識したVLPは一晩4℃においてPBSで透析しpDCに加えた。細胞内蛍光コンジュゲートされたCFSEを、FL-1チャネルを使用しフローサイトメトリーにより示した時点で検出する。
ウイルス粒子のデグリコシダーゼ、トリプシン及びホスホリパーゼC処理。Toca511を、50μLの合計体積において、製造者のプロトコールに従いデグリコシダーゼ(Promegaカタログ番号V493A)で、40μg/mLのトリプシン(Sigma-Aldrichカタログ番号T1426)で、又は50μg/mLのホスホリパーゼC(PLC)(Sigma-Aldrichカタログ番号P8804)で処理した。全ての反応物は37℃で30分間インキュベートした。インキュベーションの最後に、1mLのPBSを各サンプルに加え、次に4℃において30分間19,500gで遠心分離した。サンプルはイムノブロッティング又はpDCバイオアッセイ用に20μLのPBS中に再懸濁した。
qRT-PCRによる細胞RNAの相対的発現量。RNeasyキット及びDNaseI処理剤(Qiagen)を使用して細胞からRNAを抽出した。逆転写はHigh Capacity cDNA逆転写キット(ABI)を使用し100ngの合計RNAで実施した。定量PCR(qPCR)は、製造者のプロトコールに従い、TaqMan Universal PCR Master Mix、No AmpErase UNG(ABI、P/N番号4324018)及びTaqman遺伝子発現プライマー(ABI)、(EIF2AK2/PKR用にID番号Hs00169345_ml、APOBEC3G用にHs00222415_ml、及びGAPDH用にHs99999905_ml)を使用して実施した。各遺伝子の相対的発現量は2-ΔΔ(Ct)として表す(appliedbiosystems.com参照)。
PCRアレイ発現アッセイ。RNeasyキット及びDNaseI処理剤(Qiagen)を使用して細胞からRNAを抽出した。逆転写はFirst Strand cDNA合成キット(Qiagen)を使用して実施した。ヒトIFNα/β応答経路RT2プロファイラPCRアレイ(Qiagenカタログ番号PAHS-016D)に関するqPCR反応はRT2 SYBR Green Master Mixを使用して設定し、製造者(Qiagen)のプロトコールに従い実施した。各実験試験のデータ解析値、スキャッタープロット、制御倍率は、Qiagenによって提供されるウエブベースのソフトウェアを使用して得た(http:]][[//pcrdataanalysis.sabiosciences.com/pcr/arrayanalysis.phpを参照)。調節倍率の境界は2に設定した。2を超える調節倍率値は上方調節を示し、マイナス2を下回るの調節倍率値はマイナス又は下方調節を示す。
イムノブロッティング。1ミリリットルの濾過したウイルス上清を、30分間14,000rpmで0.4mL、20%のスクロースクッションによって濃縮した。ウイルスペレットはPBS及び2×ローディングバッファー中に再懸濁し、次いでPAGE電気泳動に供した。抗MLVp30、抗gp70及び抗VSV-G抗体を使用して、それぞれMLVカプシドタンパク質、エンベロープタンパク質及びVSV-Gの発現を検出した。MLVベースのウイルス粒子への広宿主性エンベロープタンパク質及び/又はVSV-Gの取り込みは、抗MLVp30(ATCC、カタログ番号CRL-1912)、抗gp70(83A25)及び抗VSV-G(Abcam、カタログ番号ab50549)抗体並びにHRPにコンジュゲートした対応する二次抗体を使用して検出し、それぞれMLVカプシドタンパク質(CA)、エンベロープタンパク質及びVSV-Gの発現を検出した。
ヒトPBMCからの形質細胞様樹状細胞の単離及びIFNαの定量。バッフィーコートをSan Diego Blood Bankから入手した。PBMCを、Ficoll-Paque(Cellgro、カタログ番号MT-25-072-CVRF)を使用し密度勾配遠心分離法によって、健常なヒトドナーの血液から精製した。pDCの単離は磁気ビーズ(Milteny Biotec、カタログ番号130-092-207)を使用して陰性選択により後に助長した。10ng/mLにおいて組換えIL3(R & D Systems、カタログ番号203-IL)の存在下でAIMV(Invitrogenカタログ番号12055-091)中に細胞を維持した。(95%を超える)pDCの純度を、抗CD45及び抗CD303抗体(Miltenyi Biotecカタログ番号130-080-201及び130-090-905)を使用しフローサイトメトリーによって確認した。細胞は1、10若しくは100のMOIにおいてレトロウイルスベクターと、又は陽性対照として40のMOIにおいてレンチウイルスベクターとインキュベートした。感染後約36時間で、酵素結合サンドイッチアッセイ(ELISA、PBL Interferon Source)用に上清を収集しIFNαの量を定量した。合成オリゴヌクレオチドCpGODN2395はInvivoGenから入手した(カタログ番号tlrl-odnc)。1μMの最終濃度を使用してpDC中のTLR9を活性化させた。
培養ヒト腫瘍細胞、非形質転換及び初代細胞におけるGFP発現RRVベクターの複製動態。FACS分析及びenv下流のIRES-GFPカセットを含有するRRV(RRV-GFP)を使用して、経時的に感染培養細胞においてウイルス拡散をモニタリングした。U87-MG(神経膠芽腫)、HT1080(線維肉腫)、LNCaP(前立腺)、及びSup-T1(T細胞白血病)を含めた樹立ヒト腫瘍細胞株のパネルにおけるRRV-GFPのウイルス複製の程度を最初に調べた。更に、樹立初代細胞(ヒト非形質転換肺線維芽細胞WI-38、及びヒト臍帯静脈内皮細胞HUVEC)におけるRRV-GFPのウイルス複製を調べた。RRV-GFPは全腫瘍細胞中(図1A〜D参照)、且つ予想外に、完全I型IFNシグナル伝達経路を有する非形質転換及び初代細胞中で効率よく複製した(図1E及び1F参照)。ベクターが最大感染率に到達するのに要した時間は、細胞増殖率、効率的ウイルス拡散及び増殖性感染の主要決定因子にある程度依存して6〜28日の範囲で変化した。RRV-GFPの複製動態はLNCaP及びWI-38細胞において非常に低速であり、これは培養中のそれらの低い細胞増殖率と関係がある。それにもかかわらずベクターは、それぞれ感染後28日及び24日までに80〜90%の感染率に達した。まとめると、データは、in vitroではRRV-GFPが増殖腫瘍細胞及び初代線維芽細胞及び内皮細胞において複製することを示した。
GFP発現RRVの複製は外因性IFNα/βによって誘導される抗ウイルス応答に感受性である。MLVベースのRRVなどの単純レトロウイルスに関して、腫瘍細胞に対する選択性は、腫瘍細胞の増殖に少なくとも部分的に依存する。ウイルス複製の割合が細胞増殖と常に関係があるわけではないが、増殖はウイルス複製に必要である。I型IFN経路は抗ウイルス機能の調節において直接的役割を果たすが、それは標的細胞に対するその抗増殖効果のみに依存する抗ウイルス効果も有し得る。抗ウイルス作用の2つの考えられる型を区別するため、ヒト腫瘍由来細胞株及び初代線維芽細胞(WI-38)のパネルを調べ、それらの細胞が外因性IFNα/βによる抗ウイルス応答に感受性であったかどうか決定した。2つのタンパク質に関する遺伝子、PKR及びAPOBEC3Gの基底及びIFNα誘導型発現を最初に比較した。PKRはI型IFN経路の活性化をモニタリングするのに一般に使用されるIFNα/β応答性遺伝子であり、APOBEC3Gはレトロウイルスの複製を阻害することが示されている。細胞は(200U/mLで)外因性IFNαを用いて処理し、処理後8、16及び24時間で回収しqRT-PCRにより遺伝子発現を測定した。PKR及びAPOBEC3G遺伝子の発現は8時間で早くも誘導され、外因性IFNαを用いた処理後24時間まで持続した(図2A及び2B参照)。外因性IFNαに対する応答性は非形質転換WI-38細胞で最高であり、HT1080及びU87-MG細胞では中程度であり、293T細胞で最も低かった。
次いでさらなる実験を実施して、RRV-GFPの複製が外因性IFNα/β処理に感受性であったかどうか決定した。おそらくI型IFN経路の何らかの欠陥によるこの特定の細胞株における急速なウイルス複製のため、U87-MG細胞をこの実験用に選択した。図2C及び2D中に示すように、ウイルス複製はIFNβの同時添加によって完全に阻害され、一方IFNαで処理した細胞において残りのウイルス複製が観察された。まとめて考慮すると、データは、HT-1080及びU87-MG腫瘍細胞は外因性I型IFNα/βに応答していたが、IFN応答性遺伝子の誘導レベルは、これらの細胞中ではWI-38線維芽細胞におけるものと比較して低いようであることを示す。更にU87-MG細胞中では、IFN媒介抗ウイルス応答がウイルス複製の顕著な弱化をもたらした。
IFNα及びIFNβ耐性細胞の選択と特徴付け。自然免疫の回避は効率的なウイルス複製をもたらす可能性があるので、IFN応答性腫瘍細胞のプールからのI型IFN耐性細胞の選択は、腫瘍内のウイルス複製を更に助長し得ると考えた。IFNα及びIFNβ耐性U87-MG細胞を選択し、これらを調べて、RRV-GFPが耐性細胞中で更に効率的に複製するかどうか決定した。培養における21日間の選択後、細胞を回復させ、IFNα/βの非存在下で増殖させた。その後、耐性細胞に外因性I型IFNの非存在下でRRV-GFPを感染させ、ウイルス複製が親細胞中よりIFN耐性細胞中でより効率的だったかどうか調べた。これらの結果は、外因性IFNα/βの非存在下において、IFNα耐性細胞(U87IRA)はIFN感受性親細胞と比較してウイルス拡散の有意な弱化を示し、一方IFNβ耐性細胞(U87IRB)はウイルス拡散のわずかな弱化を示したことを示した(図3A及び3B参照)。前に記したように、耐性細胞株は親U87-MG細胞株よりゆっくりと増殖するので、ウイルス拡散の弱化は細胞増殖の変化と関係している可能性がある。
IFNα及びIFNβ耐性細胞におけるI型IFN媒介抗ウイルス応答の機能を調べるため、RRV-GFPの複製動態を外因性IFNα及びIFNβの存在下で測定した。図3C中に示したように、IFNαの存在下及び非存在下でのRRV-GFPの拡散はIFNα耐性細胞中において同等であった。対照的に、IFNβ耐性細胞における感染初期段階中、RRV-GFPはIFNβの存在下でより効率的に拡散するようである(図3D参照)。このデータは、外因性IFNα/βの存在下でRRV-GFPの拡散が強く阻害された、親細胞における発見とは対照的である(図2参照)。更に、シグナル伝達経路の弱化による外因性IFNα/βの作用に対する耐性は、PCRアレイによりPKRとAPOBEC3G(図3E〜F参照)及びI型IFN経路特異的遺伝子(表1参照)のIFN誘導性遺伝子発現の欠如を示すことによって確認した。まとめると、データは、おそらく低速増殖細胞の同時選択が原因で、ウイルス複製はこれらの細胞中で外因性IFNα/βの非存在下において増強されなかったが、細胞が外因性IFNα/βに対して非感受性になることを実証する。
Toca511RRVはU87-MG細胞においてIFNα/β応答を引き起こさない。前述の発見は、RRV-GFPは進入時又はそのライフサイクル中に、宿主細胞中のIFNα/β応答を直接的には引き起こさないことを示唆する。RRV-GFPがベクター又は導入遺伝子特異的ではなかったことに由来するこれらの結果を確認するため、Toca511に対するIFNα/β応答を、10のMOIにおいてToca511を感染させたU87-MG細胞における経路特異的遺伝子発現の測定によって評価した。Toca511感染、又はIFNβ処理後16時間で、PCRアレイによる遺伝子発現分析用に細胞を回収した。外因性IFNβで処理した細胞においてBst2、CXCL10、PKR、IFIとIFITM、ISG、Mx及びOASを含めた幾つかのI型IFNα/β誘導性遺伝子は、未処理細胞のもの比較して100倍を超えて上方調節された(図6A及び表2参照)。
対照的に、Toca511を感染させた細胞において観察したIFNα/β誘導性遺伝子に全体的誘導はなかった(図6B及び表3参照)。
ウイルス複製のデータに加えて、遺伝子発現PCRアレイのデータが、単純MLVベースのRRVは、IFN応答性U87-MG腫瘍細胞においてI型IFN応答を直接的には引き起こさないという考えを更に支持する。RRV(例えばToca511)のウイルスゲノムは広範な二次構造(extensive secodary structure)を有する2つの同一一本鎖RNAコピーを含むので、核酸成分はおそらく宿主細胞中でのそのライフサイクル中に潜在的PAMPモチーフとして作用し得る。U87-MG細胞は機能的TLR経路を有するが、第9p21-22染色体に位置するIFN遺伝子クラスターにおける欠失と再編成が原因でIFNα/β産生に欠陥があると考えられる。
TLRとI型IFNシグナル伝達経路の相互作用を更に調べるため、及びU87-MG細胞におけるToca511の複製許容を支持する機構を説明するために、U87-MG細胞を試験して、これらの細胞が、大部分の細胞中で発現されウイルスdsRNAの重要なセンサーとして働くTLR3の活性化により、IFNα/βを産生できたかどうか調べた。U87-MG細胞は陽性対照としてToca511又はポリ(I:C)(TLR3、RIG-1及びMDA5のアゴニスト)で処理した。RRV-GFPの複製を支持するヒト皮膚初代線維芽細胞CCD-1070Skを用いて同じ実験を実施した(図7参照)。線維芽細胞は重要なIFNβ産生細胞である。図4A中に示したように、IFNβ産生はポリ(I:C)で処理した両細胞株において有意に誘導されたが、一方IFNβ産生はToca511をで処理した場合には、それぞれ感染後8、16及び24時間で検出不能であった。対照的にIFNα発現は、ポリ(I:C)又はToca511で処理したCCD-1070Sk細胞又はU87-MG細胞のいずれにおいても検出されなかった(図4B参照)。CCD-1070Sk細胞及びU87-MG細胞中でのIFNβによる二次的誘導の結果としてのIFNα発現の非存在は、IFNα産生前のサンプル収集がおそらく原因であったが、U87-MG細胞中でのIFNα誘導の非存在は、第9p21-22染色体におけるIFNα遺伝子クラスターの欠失にも原因があった可能性がある。
まとめると、データは、TLR(IFN産生)とI型IFNシグナル伝達経路の両方がこれらの細胞中で少なくとも部分的に機能状態であるときでさえ、U87-MGはMLVベースのRRVの複製を支持することを示す。これらの結果に関する一つの考えられる説明は、RRVにおけるTLR3に対する潜在的リガンドの非存在又はカムフラージュであり得る。
Toca511と関連する活性免疫抑制成分はヒトpDCにおいてIFNα/β応答を遮断する。RRVがTLR7及びTLR9などの他のPRRを誘導し得る可能性、及びこれが腫瘍微小環境内の非悪性細胞中でin vivoで起こり得る可能性を排除することはできなかった。したがって、(幾つかの腫瘍型における腫瘍微小環境の成分である)ヒト初代形質細胞様樹状細胞のRRVに対する抗ウイルス応答を調べた。
pDCは、TLR7とTLR9を示差的に発現するヒト樹状細胞の部分集合である。レンチウイルスベクターと同様に、RRVウイルス粒子内に封入された一本鎖RNAウイルスゲノムの複製及びウイルス粒子内の逆転写から生じる非メチル化二本鎖DNAは、それぞれTLR7とTLR9のPAMPモチーフとしておそらく働き得る。TLR活性化GUリッチ配列、及びウイルスゲノムのpsi領域に位置する20ヌクレオチド長の幾つかの同定されたGUリッチモチーフ(60〜80%の範囲)についてToca511の配列を調べた(図8参照)。
Toca511のウイルスゲノムがヒトpDC中で潜在的にTLR7のPAMPモチーフであり得るかどうか調べるため、pDCを健常個体のPBMCから単離し1、10及び100のMOIでToca511に曝露した。これらの細胞は複製せず、したがって増殖的ウイルス感染は予想し得なかった。実験中、ODN2395(TLR9のアゴニスト)及び水胞性口炎ウイルス糖タンパク質で偽型化したレンチウイルスベクター、LV-G(TLR7のアゴニスト)を、pDCにおけるIFNα産生の誘導に関する陽性対照として含めた。データは、Toca511は高いMOIでさえヒトpDCにおいてIFNα産生を誘導しなかったが、一方有意なレベルのIFNα産生をODN2395及びLV-Gで処理した細胞において検出したことを実証する(図5A参照)。LV-Gで処理したpDCによるIFNαの産生は、水胞性口炎ウイルス糖タンパク質で偽型化したレンチウイルスベクターを用いたマウスpDCの形質導入がIFNα産生を誘導したことを実証する。更に、RRVとLV-Gに曝露したマウスpDC調製物を使用してpDCの実験を実施し、その結果はヒトpDC調製物を用いてここで示した結果と本質的に同じであった(図9参照)。
次に、細胞進入に関与するウイルス糖タンパク質が、進入及び細胞免疫センサーへのそれらの曝露時のウイルス粒子の細胞内レベルの局在を決定する際に役割を果たす可能性を調べた。この目的のため、ウイルス粒子上に、広宿主性タンパク質とVSV-Gタンパク質の両方を有するToca511を作製し、Toca511をエンドサイトーシス経路に再誘導した。図5B中に示したように、広宿主性envとVSV-Gタンパク質の両方がウイルス粒子中に効率的に取り込まれ、VSV-Gが同時発現されたとき広宿主性envの取り込みはわずかに減少した。更にqPCRによって、宿主ゲノム中へのプロウイルスDNAの組み込みをもたらした、ウイルス進入及び1ラウンドの形質導入を再誘導するVSV-Gの機能を、広宿主性エンベロープRRVではなくVSV-G偽型化RRVに許容性があるCHO-K1細胞を使用して確認した。エンドソームTLR(TLR7/8又はTLR9)の活性化を引き起こし得るエンドサイトーシス経路にウイルス粒子を優先的に誘導するVSV-Gで偽型化したToca511を次いで調べた。培養したヒトpDCを、Toca511又はVSV-Gと共にエンベロープ化したToca511で処理した。先のデータと一致して、Toca511自体はヒトpDCがIFNαを産生するのを刺激せず、VSV-Gと共にエンベロープ化したToca511もヒトpDCにおいてエンドソームTLRを活性化しなかった(図5C参照)。
Toca511と関連する免疫抑制成分は熱不活性化によってヒトpDCにおいてIFNα/β応答を引き起こせなくなる可能性がある。Toca511がヒトpDCにおいてIFN型応答を引き起こさないという発見に関する一つの説明は、免疫抑制成分がRRV粒子と関連しているということである。加熱による古典的ウイルス不活性化法が抑制成分を不活性化し、それによってIFNα/β発現を誘導できるかどうか調べるため、培養中のpDCに暴露する前に30分間56℃での加熱によりToca511を処理した。データは、未処理Toca511と対照的に、熱不活性化Toca511はpDCによる顕著なIFNα産生を誘導したことを明らかにした(図5D参照)。VSV-Gと共にエンベロープ化したToca511を熱不活性化で処理した場合も同様の結果が得られた(図5D参照)。データは、活性免疫抑制成分がToca511に関連しており、それが加熱処理によって不活性化され得るという証拠を与える。
次いで、pDCへの曝露前に熱不活性化Toca511を1:1の比(形質導入単位)で未処理Toca511又はレンチウイルスベクターとコインキュベートした実験を実施した。データは、Toca511と熱不活性化Toca511又はVSV-Gで偽型化したレンチウイルスベクターのコインキュベーションが、ヒトpDCにおいてIFNα産生の遮断をもたらしたことを示した(図5E参照)。まとめるとデータは、ウイルス粒子と関連する活性免疫抑制成分が存在すること、及びウイルス粒子の熱不活性化によって免疫抑制機能が抑止され、これがpDCにおいてIFNαの産生をもたらすことを示す。熱不活性化データは、pDCにおける細胞の先天的応答の活性化に増殖性感染が必要とされないことも示す。
Toca511に関連する免疫抑制成分は広宿主性エンベロープ糖タンパク質の存在によるものではない。免疫抑制成分が広宿主性エンベロープ糖タンパク質に存在するかどうか調べるため、広宿主性(MLV-A)、VSV-G糖タンパク質(MLV-G)、又は広宿主性エンベロープとVSV-G糖タンパク質(MLV-A+G)で偽型化した3個の複製能欠失型レトロウイルスベクターを作製した。これらのベクターを作製する際に使用したウイルスRNAゲノム(pBA9b)は、幾つかのGUリッチ配列モチーフが存在するpsi領域においてToca511と100%の配列相同性を有する(図8参照)。先のデータと一致して、3個のベクターはいずれも、pDCがIFNαを産生することを刺激しなかった(図5F参照)。しかしながら、これらのベクターを熱不活性化に供すると、3個のベクター全てが、pDCがIFNαを産生することを刺激した(図5G参照)。まとめるとデータは、MLVベースのベクターと関連する免疫抑制成分は、pDCにおけるエンドソームTLRの活性化、及びその後のI型IFN産生の誘導を遮断すること、及びウイルス粒子(Toca511、Toca511-G、MLV-A、MLV-G、及びMLV-A+G)と関連する免疫抑制成分の機能が主要な活性プロセスであることを示した。更に重要なことに、VSV-G糖タンパク質で偽型化した複製能欠失型ベクターに暴露したpDCにおけるIFNα産生の欠如は、ウイルス粒子と関連する免疫抑制成分が広宿主性エンベロープ糖タンパク質に起因するものではなかったことを示している。
成分がウイルス粒子のタンパク質成分を改変し得る酵素処理に感受性であるかどうか調べるため、pDC刺激に対するデグリコシダーゼ、PLC及びトリプシンの影響を調べた。図5H中に見られるように、加熱処理Toca511由来のgagポリタンパク質の電気泳動パターンは非加熱処理のものと同等であった。デグリコシダーゼ、PLC又はトリプシンとToca511のコインキュベーションによって、gagポリタンパク質及び/又はエンベロープタンパク質の電気泳動パターンは更に変わる。例えば、デグリコシダーゼとトリプシン両方の処理によって、gagポリタンパク質の濃度の変化及び分子サイズの縮小及び/又はgp70バンドの消失が生じた。Toca511をデグリコシダーゼ、PLC又はトリプシンで処理し、培養中のpDCに暴露する前に加熱処理したToca511とコインキュベートした。データは、デグリコシダーゼ又はPLC処理ではなくトリプシン処理Toca511と加熱処理したToca511のコインキュベーションによってToca511の主要免疫抑制活性が抑止され、pDCにおけるIFNα産生を部分的に誘導したことを明らかにした(図5I)。
まとめると、データは、Toca511ウイルス粒子と関連する活性な免疫抑制成分が存在すること、及びToca511ウイルス粒子の加熱又はトリプシン処理によって免疫抑制機能が抑止され、これがpDCにおけるIFNα産生をもたらすことを示す。トリプシンのデータによって、免疫抑制成分がタンパク質成分であるという考えがさらに強まる。データは、pDCにおける細胞の先天的応答の活性化に増殖性感染が必要とされないことも示す。
Toca511と関連する免疫抑制成分は糖-gag又は広宿主性エンベロープ糖タンパク質の存在のいずれによるものでもない。レトロウイルスから発現される糖-gag(Pr80gag)はウイルス粒子中に取り込まれることが示されており、標的細胞中でAPOBEC3の機能を阻害する際に役割を果たす。更に、数種のMLVエンベロープタンパク質のTMサブユニット中に位置する免疫抑制ペプチドが記載されている。ウイルス粒子中に免疫抑制成分が存在するかどうか調べるため、糖-gagを発現しない、広宿主性(MLV-A)、VSV-G糖タンパク質(MLV-G)、又は広宿主性エンベロープとVSV-G糖タンパク質(MLV-A+G)で偽型化した3個のレトロウイルス非複製ベクターを作製した。これらのベクターを作製する際に使用したウイルスRNA(pBA9b)は、幾つかのGUリッチ配列モチーフが存在するpsi領域においてToca511と100%の配列相同性を有する。先のデータと一致して、3個のベクターはいずれもpDCがIFNαを産生することを刺激しなかった(図10A)。しかしながら、これらのベクターを熱処理に供すると、3個のベクター全てが、pDCがIFNαを産生することを刺激した(図10B)。
エンベロープ糖タンパク質が免疫抑制成分の一部であり得るかどうか更に調べるため、pBA9bでパッケージ化した(VLP/pBA9b)、又はpBA9bベクターを含まない(VLP)非エンベロープVLPを作製した。観察したデータと一致して、VLP及びVLP/pBA9bはpDCにおいてIFNα産生を誘導しなかったが、一方加熱処理したVLP及びVLP/pBA9bは誘導した(図10C)。まとめると、データは、MLVベースのウイルス粒子と関連する免疫抑制成分がpDCにおけるI型IFN産生を遮断すること、及びウイルス粒子(Toca511、Toca511-G、MLV-A、MLV-G、及びMLV-A+G)と関連する免疫抑制成分の機能が主要な活性プロセスであることを示す。更に、MLV-A、MLV-G、及びMLV-A+Gベクターが糖-gagの非存在下ではpDCにおいてIFNα産生を刺激できないことは、糖-gagが免疫抑制成分の一部ではないことを示唆する。更に、免疫抑制機能はおそらく広宿主性エンベロープ糖タンパク質に起因するものではない。最後に、pDCにおいてIFNα産生を誘導する、pBA9bウイルスRNAを含まない加熱処理後のVLPの能力は、ウイルス粒子中に存在する、ウイルスRNA以外の別のPAMPがおそらく存在することも示唆する。
pDCによるToca511及びVLPの内在化。pDCにおいてIFNα産生を誘導する、pBA9bウイルスRNAを有するか又は欠くVLPの能力は、エンベロープタンパク質の非存在下でVLPが効率よく内在化されることは予想されないため、PRRが細胞表面上に位置し得ることを示唆する。CFSE標識Toca511及びVLPを使用して、pBA9bウイルスRNAを欠いたToca511及びVLPを内在化する新たに単離した未熟pDCの能力を調べた。図10Dは、平均蛍光強度(MFI)により測定した結果、(加熱処理した又は加熱処理しなかった)Toca511とVLPの両方がpDCによって迅速に内在化されたことを示し、これはpDCにおける内在化プロセスがPit-2受容体と無関係であることを示唆している。それにもかかわらず、加熱処理したVLPの内在化は常により効率が低かった。興味深いことに、加熱処理したVLP以外、インキュベーション後6時間の経過でMFIの低下を観察した。一つの考えられる説明は、内在化後のウイルスタンパク質のターンオーバー(turnover)である。Toca511とVLPの両方がいずれもpDCによって内在化され得ることから考えると、未同定のPRRの細胞区画は細胞表面に限られない。
Toca511関連非ウイルス核酸PAMPは、デグリコシダーゼ、トリプシン及びPLC処理に感受性である。Toca511と関連する未同定の非ウイルス核酸PAMPを更に特徴付けるため、核酸ではなくタンパク質を変更し得る酵素処理に対する、ウイルス粒子の成分の感受性を、調べた。pDC刺激に対するデグリコシダーゼ、PLC及びトリプシンの影響を調べた。図10E中に見られるように、図5H中に示したウイルスタンパク質の変更は、加熱処理後にpDCにおいてIFNα産生を誘導する、その能力の消失と関係がある。トリプシンのみに感受性であるToca511と関連する免疫抑制成分と対照的に、Toca511ウイルス粒子と関連する免疫刺激成分はデグリコシダーゼ、PLC及びトリプシンに感受性である。全てまとめると、データは、免疫刺激成分と免疫抑制成分の両方が同様に構造要素、したがってウイルスタンパク質ベースであるが、免疫刺激成分の場合、更に脂質及び/又は炭水化物成分を含むことを示唆する。
幾つかの実施形態を本明細書中に記載してきた。それにもかかわらず、本開示の精神及び範囲から逸脱せずに様々な改変がなされ得ることが理解される。したがって、他の実施形態は以下の特許請求の範囲内にある。