JP6640640B2 - 金型およびそれを用いる繊維強化樹脂成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
一方、工業的に物品を大量生産するにおいて、様々な要因により突発的に品質変動が起きることは珍しくなく、例えば、樹脂系材料の成形品の生産においては、材料分解物の装置内への残留や蓄積が成形品外観へ影響を与えることが挙げられる。
以上より、コールドプレス成形で良外観な繊維強化樹脂成形品を得る方法には看過できない課題が残されている。
上型と下型とを有する金型であって、コールドプレス成形に用いられ、
上型および下型のうちの少なくともいずれかの動作により、成形材料を内包可能な略閉空間が形成される構造を有し、
上型と下型との型締めにより形成される成形キャビティは、基準面と、基準面に45°以上のコーナー角を形成して連なる立ち面を少なくとも1つ有し、
以下a)〜c)を同時に満たすガス流路があることを特徴とする金型(溶融状態の樹脂材料が、ゲートを通じて下型の型面上に分配供給されるものを除く)。
a)ガス流路は、上型キャビティ面または下型キャビティ面から、上型または下型を貫通して、上型または下型の非キャビティ面に通じており、上型および下型のうちの少なくともいずれかの動作により、略閉空間が形成された際に、ガス流路が、略閉空間から成形型外部に通じている構造となる。
b)上型キャビティ面または下型キャビティ面におけるガス流路の口は、成形材料が配置される金型表面に設けられ、少なくともその一部の幅が1〜100μmである。
c)上型キャビティ面または下型キャビティ面において、基準面と立ち面との境界部から、ガス流路の口までの沿面距離が100mm以下である。
重量平均繊維長が1mm〜100mmの強化繊維と、マトリクス樹脂としての熱可塑性樹脂とを含み、動的粘弾性測定における周波数10rad/secの粘度に対する周波数1rad/secの粘度の比が2以上である繊維強化樹脂材を可塑状態にしたものを、成形材料として用いて、
上記の金型において、上型および下型のうちの少なくともいずれかの動作により、成形材料を内包した略閉空間を形成せしめ、
更に、上型と下型とを型締めしてコールドプレス成形する操作を含む、
基準面と、基準面に45°以上のコーナー角を形成して連なる立ち面を少なくとも1つ有する形状の繊維強化樹脂成形品の製造方法。
本発明の金型は上型と下型とを有する金型であって、上型および下型のうちの少なくともいずれかの動作(以下、金型動作と略することがある)により、繊維強化樹脂材を内包可能な略閉空間が形成される構造を有し、
上型と下型との型締めにより形成される成形キャビティは、基準面と、基準面に45°以上のコーナー角を形成して連なる立ち面を少なくとも1つ有し、
以下a)〜c)を同時に満たすガス流路があることを特徴とする。
b)上型キャビティ面または下型キャビティ面におけるガス流路の口は、少なくともその一部の幅が1〜100μmである。
c)上型キャビティ面または下型キャビティ面において、基準面と立ち面との境界部から、ガス流路の口までの沿面距離が100mm以下である。
・金型動作開始から上型と下型との型締めの前に、上型または下型のどちらか一方に設置されたシャーが対面するもう一方に接触して封止部となる、
・上型または下型に設置されたシリコン、PTFE、ウレタンまたはポリイミドからなるパッキンが対面するもう一方に接触して封止部となる、
・金型に設置した繊維強化樹脂材を耐熱樹脂製フィルムや耐熱樹脂製バックで覆い上型と接触することで封止部となる、
・金型のシャー構造の外側にバネを内蔵した嵌合構造を設置し嵌合部が合わさることで封止部となる、
などの作用にて形成される空間であって、成形材料が金型に配置されている場合ならば、金型を開放する操作無しには、成形材料を当該空間から取り出し難い空間である。
本発明の金型は、上型と下型との型締め完了の前に略閉空間が形成される構造を有するものであると好ましい。これは、当該構造により、樹脂系成形材料が完全に金型面に押し付けられる前に円滑に樹脂系材料周辺の排気を行うことができ好ましいからである。
本発明の金型では、ガス流路が、上型キャビティ面または下型キャビティ面から、上型または下型を貫通して、上型または下型の非キャビティ面に通じており、上型および下型のうちの少なくともいずれかの動作により、略閉空間が形成された際に、ガス流路が、略閉空間から金型外部に通じている構造となる。ガス流路が通じている上型または下型の非キャビティ面は金型の外表面の一部であると金型の構造が簡素となって良いが、可能であれば、金型の外表面の一部ではないところが非キャビティ面である構造の金型でもよい。
本発明の金型において、ガス流路の口は、金型を用いた成形により得られる成形品の外観の向上効果を更に高める目的で、補助溝を有していても良い。補助溝はコストアップや金型構造上の制約となるガス流路の口を必要最低限に抑えるための手段である。
本発明の金型は、樹脂系材料を成形することによる樹脂系成形品の製造に好適である。特に、本発明の金型は、後に示されるような繊維強化樹脂材を圧縮成形、特にコールドプレス成形することにより繊維強化樹脂成形品の製造方法に好適である。
上記の金型において、上型および下型のうちの少なくともいずれかの動作により、成形材料を内包した略閉空間を形成せしめ、
更に上型と下型とを型締めしてコールドプレス成形する操作を含む、
基準面と、基準面に45°以上のコーナー角を形成して連なる立ち面を少なくとも1つ有する形状の繊維強化樹脂成形品の製造方法の発明も包含される。
本発明の製造方法により得られる繊維強化樹脂成形品は、基準面と、基準面に45°以上のコーナー角を形成して連なる立ち面を少なくとも1つ有する形状のものである。当該形状は、前記の本発明の金型の成形キャビティの形状に起因するものであり、基準面、コーナー角、立ち面の好ましい形状や寸法は、金型の成形キャビティの基準面などについて述べたとおりである。
本発明の繊維強化樹脂成形品の製造方法は、金型のガス流路に排気装置が接続されており、金型に成形材料を内包した略閉空間が形成される前後のタイミングに、成形キャビティの容積(dm3)に対する排気速度(dm3/min)の比が10(min−1)以上となる条件にて、上型と下型との間の空間、略閉空間、または成形キャビティから排気を行うものであると好ましい。ここで、「上型と下型との間の空間」とは、略閉空間を形成する為の上型および下型のうちの少なくともいずれかの動作の開始後、かつ、略閉空間が形成される前の、上型と下型との間の空間を言い、準略閉空間ということもできる。
金型ガス流路に排気装置を接続する場合の接続径や接続長さ、および、該金型のタッチ面積やタッチ力、ならびにタッチ箇所の材質は、製品体積に対する該排気速度の比が本発明の範囲であれば適宜選択できる。本発明の排気に用いられる排気装置は、製品体積に対する該排気速度の比が本発明の範囲であれば特に限定するものではないが、代表的なものは真空ポンプであり、例えば、油回転ポンプ、エジェクターポンプ、揺動ピストン型真空ポンプ、回転翼型ドライ真空ポンプ、クロール型ドライ真空ポンプ、油拡散ポンプ、メカニカルブースターポンプ等が挙げられ、これらを単独でも複数組み合わせて使用しても良く、排気速度を更に高める目的でこれらポンプにて真空にした真空タンクをガス流路との間に接続しても構わない。ここでいう真空ポンプは減圧ポンプの意味であり、特に高い真空度の達成が可能なポンプに限定されない。
本発明の繊維強化樹脂成形品の製造方法は、排気のタイミングが、上型と下型がタッチしてから等、金型に成形材料を内包した略閉空間が形成されてから、0.1秒以内であることが好ましく、0.05秒以内であることがより好ましく、0.01秒以内であることがガス排気による外観向上効果を高めるため、特に好ましい。排気のタイミングが上記のとおり0.1秒以内であると金型に触れている繊維強化樹脂材の表面温度があまり低下せず、繊維強化樹脂材の内部に閉じ込められた空気やガスを排気することが容易になり、成形品の外観改善効果が十分になる。
本発明で使用する成形材料としての繊維強化樹脂材は、強化繊維とマトリクス樹脂である熱可塑性樹脂とを含む。
繊維強化樹脂材におけるマトリクス樹脂である熱可塑性樹脂の存在量は、熱可塑性樹脂の種類や強化繊維の種類等に応じて適宜決定することができるものであり、特に限定されるものでは無いが、通常、強化繊維100重量部に対して3重量部〜1000重量部の範囲内が好ましい。繊維強化樹脂材における強化繊維100重量部あたりの熱可塑性樹脂の存在量としてより好ましくは30重量部〜200重量部、更に好ましくは30重量部〜150重量部である。マトリクス樹脂が強化繊維100重量部に対し3重量部以上であると含浸が十分に進みドライの強化繊維が少なくなる傾向にあり好ましい。また1000重量部以下であると強化繊維の量が充分で構造材料として適切になることが多く好ましい。本発明の繊維強化樹脂成形品や繊維強化樹脂材において、強化繊維100重量部当たりの熱可塑性樹脂の存在量が異なる部位がある場合、繊維強化樹脂成形品など全体で上記の重量部範囲に該当するものであると好ましい。なお、本発明に関して重量との表記を便宜上用いているが、正確にいうと質量である。
本発明に用いられる繊維強化樹脂材においては、1枚の繊維強化樹脂材中に、異なる配向状態の強化繊維が含まれていてもよい。
なお、本発明に用いられる繊維強化樹脂材が複数の層が積層された構成を有する場合、上記厚みは各層の厚みを指すのではなく、各層の厚みを合計した繊維強化樹脂材全体の厚みを指すものとする。
繊維強化樹脂材が上記積層構造を有する態様としては、同一の組成を有する複数の層が積層された態様であってもよく、又は互いに異なる組成を有する複数の層が積層された態様であってもよい。
3層以上が積層される場合には、任意のコア層と、当該コア層の表裏面上に積層されたスキン層とからなるサンドイッチ構造としてもよい。
本発明の繊維強化樹脂成形品の製造方法に用いられる繊維強化樹脂材は、その動的粘弾性測定における周波数10rad/secの粘度に対する周波数1rad/secの粘度の比(本発明に関し、単に粘度比と称されることがある)が2以上であることが肝要である。該粘度比が2以上であると、繊維強化樹脂成形品に発生するバリを抑制することができ、外観に優れた繊維強化樹脂成形品を得ることができる。該粘度比は好ましくは2.5以上であり、更に好ましくは3以上である。該粘度比の上限は特に限定されないが、敢えて設定するなら該粘度比は100以下であると好ましく、50以下であるとより好ましく10以下であると更に好ましく、5以下であると特に好ましい。該粘度比は、同じ単位で表された、周波数10rad/secの粘度および周波数1rad/secの粘度から求められることは言うまでもない。
本発明の繊維強化樹脂成形品や繊維強化樹脂材に含まれる強化繊維として好ましいものは炭素繊維であるが、マトリクス樹脂の種類や繊維強化樹脂材の用途等に応じて、炭素繊維以外の無機繊維又は有機繊維のいずれも用いることができる。
上記炭素繊維以外の無機繊維としては、例えば、活性炭繊維、黒鉛繊維、ガラス繊維、タングステンカーバイド繊維、シリコンカーバイド繊維(炭化ケイ素繊維)、セラミックス繊維、アルミナ繊維、天然繊維、玄武岩などの鉱物繊維、ボロン繊維、窒化ホウ素繊維、炭化ホウ素繊維、及び金属繊維等を挙げることができる。
上記ガラス繊維としては、Eガラス、Cガラス、Sガラス、Dガラス、Tガラス、石英ガラス繊維、ホウケイ酸ガラス繊維等からなるものを挙げることができる。
上記有機繊維としては、例えば、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、アクリル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリアリレート等の樹脂材料からなる繊維を挙げることができる。
本発明においては、2種類以上の強化繊維を併用してもよい。この場合、複数種の無機繊維を併用してもよく、複数種の有機繊維を併用してもよく、無機繊維と有機繊維とを併用してもよい。
上記炭素繊維としては、一般的にポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、石油・石炭ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、リグニン系炭素繊維、フェノール系炭素繊維、気相成長系炭素繊維などが知られているが、本発明においてはこれらのいずれの炭素繊維であっても好適に用いることができる。
強化繊維とマトリクス樹脂との密着強度は、ストランド引張せん断試験における強度が5MPa以上であることが望ましい。この強度は、マトリクス樹脂の選択に加え、例えば強化繊維が炭素繊維である場合、炭素繊維の表面酸素濃度比(O/C)を変更する方法や、炭素繊維にサイジング剤を付与して、炭素繊維とマトリクス樹脂との密着強度を高める方法などで改善することができる。
本発明に用いられる強化繊維としては、上記のとおり強度や寸法の等方性に優れる重量平均繊維長100mm以下の不連続繊維だけでなく、目的に応じて連続繊維を用いてもよい。
強化繊維の平均繊維長は、例えば、繊維強化樹脂材から無作為に抽出した100本の繊維の繊維長を、ノギス等を用いて1mm単位まで測定し、下記式(m)および式(f)に基づいて求めることができる。繊維強化樹脂材からの強化繊維の抽出法は、例えば、繊維強化樹脂材に500℃×1時間程度の加熱処理を施し、炉内にて樹脂を除去することによって行うことができる。
個数平均繊維長Ln=ΣLi/j (m)
(ここで、Liは強化繊維の繊維長、jは強化繊維の本数である)
重量平均繊維長Lw=(ΣLi2)/(ΣLi) (f)
なお、ロータリーカッターで切断した場合など、繊維長が一定長の場合は数平均繊維長を重量平均繊維長とみなせる。
本発明に用いられる強化繊維の単繊維径は、強化繊維の種類に応じて適宜決定すればよく、特に限定されるものではない。
強化繊維として炭素繊維が用られる場合、平均単繊維径は、通常、3μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、4μm〜12μmの範囲内であることがより好ましく、5μm〜8μmの範囲内であることがさらに好ましい。
ここで、上記平均単繊維径は、その名のとおり強化繊維の単繊維の直径を指すものであるが、強化繊維が単繊維の束状物である場合は、平均単繊維径を平均繊維径と略称することもある。
強化繊維の平均単繊維径は、例えば、JIS R7607(2000)に記載された方法によって測定することができる。
本発明に用いられる強化繊維は、単繊維状のもののみであってもよく、単繊維束状のもののみであってもよく、両者が混在していてもよい。ここで示す単繊維束とは2本以上の単繊維が集束剤や静電気力等により近接している事を示す。単繊維束状の強化繊維を用いる場合、各単繊維束を構成する単繊維の数は、各単繊維束においてほぼ均一であってもよく、あるいは異なっていてもよいが、強化繊維が単繊維数の異なる強化繊維単繊維束の混合物である繊維強化樹脂材は、成形性に優れ、前記の本発明の金型による繊維強化樹脂成形品の製造方法に極めて好適である。
一般的に、炭素繊維は、数千本〜数万本の単繊維が集合した単繊維束状となっている。強化繊維として炭素繊維などを用いる場合に、単繊維束状のまま使用すると、単繊維束の交絡部が局部的に厚くなり薄肉の繊維強化樹脂材を得ることが困難になる場合がある。このため、単繊維束状の強化繊維を用いる場合は、単繊維束を拡幅したり、又は開繊したりして使用するのが通常である。
臨界単繊維数=600/D (1)
(ここでDは強化繊維の平均単繊維径(μm)である)
で定義する臨界単繊維数以上の本数の単繊維で構成される強化繊維(A)について、強化繊維全量に対する割合が20Vol%以上となる量であることが好ましく、30Vol%以上となる量であることがより好ましく、更に好ましくは40Vol%以上であり、特に好ましくは50Vol%以上となる量である。強化繊維(A)以外の強化繊維として、単繊維の状態または臨界単繊維数未満の本数の単繊維で構成される単繊維束、以下、強化繊維(B)と称する場合がある、が存在してもよい。本発明の強化繊維は、特定の単繊維数以上で構成される強化繊維(A)の厚みを低減させ、かつ強化繊維単位重量(g)当たりの強化繊維(A)の束数を特定の範囲とすることで繊維強化樹脂材の厚み斑を小さくできるため、成形することで薄肉でも機械物性に優れた繊維強化樹脂成形品を得ることが可能である。なお、本発明に関して、上記の臨界単繊維数を臨界単糸数、平均単繊維径を平均繊維径、強化繊維(A)を強化繊維束(A)と称することもある。
前記のとおり、強化繊維(A)は強化単繊維の束状物であるので、便宜上、強化繊維束(A)と称されることもある。同様に、強化繊維(A)の平均単繊維数が平均繊維数と略称されることがある。
本発明の繊維強化樹脂成形品や繊維強化樹脂材においては、マトリクス樹脂として熱可塑性樹脂が含まれている。また、本発明においてはマトリクス樹脂として、熱可塑性樹脂を主成分とする範囲において、熱硬化性樹脂を併用してもよい。
上記熱可塑性樹脂は特に限定されるものではなく、繊維強化樹脂成形品の用途等に応じて所望の軟化温度を有するものを適宜選択して用いることができる。
上記熱可塑性樹脂としては、通常、軟化温度が180℃〜350℃の範囲内のものが用いられるが、これに限定されるものではない。本発明について熱可塑性樹脂の軟化温度とは、結晶性熱可塑性樹脂については結晶溶解温度、いわゆる融点であり、非晶性熱可塑性樹脂についてはガラス転移温度である。
上記ポリスチレン樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)等からなる群より選ばれる1種類以上のものを挙げることができる。
上記ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ボリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、液晶ポリエステル等を挙げることができる。
上記(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレートを挙げることができる。
上記変性ポリフェニレンエーテル樹脂としては、例えば、変性ポリフェニレンエーテル等を挙げることができる。
上記ポリスルホン樹脂としては、例えば、変性ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂等からなる群より選ばれる1種類以上のものを挙げることができる。
上記ポリエーテルケトン樹脂としては、例えば、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂からなる群より選ばれる1種類以上のものを挙げることができる。
上記フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等を挙げることができる。
本発明に用いられる繊維強化樹脂材は、公知の方法を用いて製造することができる。
マトリクス樹脂として熱可塑性樹脂を用いる場合は、例えば、1.強化繊維をカットする工程、2.カットされた強化繊維を開繊させる工程、3.開繊させた強化繊維と繊維状又は粒子状のマトリクス樹脂を混合し等方性基材とした後、これを加熱圧縮して熱可塑性樹脂の含浸をすすめ繊維強化樹脂材を得る工程により製造することができるが、この限りではない。
繊維強化樹脂材を500℃×1時間、炉内にてマトリクス樹脂を燃焼除去し、処理前後の試料の質量を秤量することによって強化繊維分とマトリクス樹脂の質量を算出した。次に、各成分の比重を用いて強化繊維とマトリクス樹脂の体積を算出し、下記式(u)に従って繊維強化樹脂材の強化繊維体積割合(Vf)を百分率にて算出した。
Vf(%)=100×強化繊維体積/(強化繊維体積+熱可塑性樹脂体積) (u)
米国特許第8946342号公報に記載の方法に準じて実施した。
下の装置
・装置:TAインスツルメンツ社製ARES−G2
・温度:235℃
・固定治具:25mmφパラレルプレート
・測定モード:周波数掃引
・ギャップ:1.5mm
・周波数:0.1〜100rad/sec
・歪み:5%
絶乾処理した繊維強化樹脂材を用い、空気雰囲気下の昇温速度5℃/minでTG−DTA測定を行い、各温度での熱分解速度を算出した。
表1および表2に示すとおりのガス流路の口タイプ、ガス流路の口幅、沿面距離、成形キャビティ形状(成形品形状)および成形キャビティ容積(成形品体積)となる金型を用いた。なお、実施例1、実施例3〜6および比較例1〜3のガス流路の口の配置や形状を示したものを図1、実施例2および実施例7のガス流路の口の配置や形状を示したものを図2、実施例8のガス流路の口の配置や形状を示したものを図3、実施例9のガス流路の口の配置や形状を示したものを図4、実施例10のガス流路の口の配置や形状を示したものを図5に示す。
表1および表2に示す排気速度、成形キャビティ容積に対する該排気速度の比および排気タイミングとなるよう、排気装置として真空ポンプを含む排気システムを用いて、真空ポンプを金型のガス流路に接続して実施例4〜7にて排気操作を行った。当該実施例似て用いて排気システムの概要を示したものを図6に示す。実施例4〜7以外の実施例および比較例は排気システムを用いない大気開放である。
成形に用いた金型温調機の加圧中の返媒温度を記載した。
本発明の繊維強化樹脂成形品のバリ高さは、キーエンス製キーエンス製ビデオマイクロスコープ(VHX−1000)を用いて測定倍率600倍にて深度合成測定し、最もバリ高さが高い数値を繊維強化樹脂成形品のバリ高さとした。
繊維強化樹脂成形品の表面を目視で観察し、該成形品表面に存在する泡が弾けたような外観不良部のすべてとコーナー部付近に不均一に盛り上がった凹凸部のすべてを各々囲うようにホワイトペンで記載し、悪化外観を囲う図形を該成形品表面に描いた。描いた図形の最も長い最長対角線を測定し、その対角線に直交する直交対角線を測定し、最長対角線と直交対角線の積を悪化外観面積とし、すべての図形の面積を積算し、ガス流路の口が存在しコーナー角45°以上のコーナー部で囲まれた面積とのパーセンテージを繊維強化樹脂成形品の悪化外観面積%とした。
フルショットした場合を○(良好)、ショートショットした場合を×(不良)として判定した。
[製造例1]
強化繊維として、東邦テナックス社製のPAN系炭素繊維“テナックス”(登録商標)STS40−24KS(平均単繊維径7μm、単繊維数24000本)をナイロン系サイジング剤処理したものを使用し、マトリクス樹脂として、ユニチカ社製のナイロン6樹脂A1030を用いて、米国特許公開公報第2015−0152231号に記載された方法に準拠し、炭素繊維目付1441g/m2、ナイロン6樹脂目付1704g/m2である、面内等方的に重量平均繊維長が30mmの炭素繊維が2次元ランダム配向した等方性基材を作成した。 得られた等方性基材を、上部に凹部を有する金型を用いて260℃に加熱したプレス装置にて、2.0MPaにて5分間加熱し、厚さ2.3mmの強化繊維体積割合(Vf)=35%、粘度比3で、強化繊維が2次元ランダム配向した繊維強化樹脂材を得た。
米国特許公開第2015/0191583号の記載に基づき、以下のとおり繊維強化樹脂材を得た。
含浸助剤として、p−ヒドロキシ安息香酸2−ヘキシルデシルエステル(花王株式会社製のエキセパールHD−PB)を用い、これを不揮発分12重量%にエマルジョン化した溶液内に、炭素繊維としてPAN系炭素繊維ストランド(東邦テナックス社製STS40 24K相当、単繊維直径7.0μm、単繊維本数 24000本、引張強度4000MPa)を通過させた後、炭素繊維に過剰に付着した溶液を、ニップロールにて取り除いた。更に、この含浸助剤が付着した炭素繊維を180℃に加熱された熱風乾燥炉内を2分間かけて通過させることにより乾燥させ、易含浸炭素繊維を得た。この易含浸炭素繊維を200℃に加熱した直径60mmの2本の金属製ロールに沿わせ、再度の加熱処理を行い、炭素繊維に、含浸助剤がより均一に付着した易含浸炭素繊維とした。この易含浸炭素繊維の含浸助剤に含有量は6重量%(炭素繊維100重量部あたり6.4重量部)であった。
繊維強化樹脂材は製造例1のものを、金型は図1のものを用い(ガス流路容積は0.2dm3)、加熱温度は300℃、金型温度は150℃であり、製品体積に対し80体積%となる繊維強化樹脂材を金型内に配置し、前記の製造方法の手順にて繊維強化樹脂成形品を製造した。加熱温度300℃であり、300℃空気雰囲気下での熱分解速度は0.09重量%/secである。その他詳細は前記および表1記載のとおりである。繊維強化樹脂材における強化繊維の目付、重量平均繊維長、強化繊維(A)量の割合、2次元ランダム配向性などの強化繊維の状態は、成形品においてもほぼ維持されていた。
得られた成形品の外観は良好であり、かつバリ高さが抑制された優れた繊維強化樹脂成形が得られた。
繊維強化樹脂材として製造例2を用いたこと以外は、実施例1と同様に成形品の製造およびその評価を行った。加熱温度300℃であり、300℃空気雰囲気下での熱分解速度は0.15重量%/secであった。繊維強化樹脂材における強化繊維の目付、重量平均繊維長、強化繊維(A)量の割合、2次元ランダム配向性などの強化繊維の状態は、成形品においてもほぼ維持されており、得られたバリ高さと悪化外観面積%の結果は表1に示す。
得られた成形品のバリ長さが非常に長いため、悪化外観面積%は小さいものの外観判定は不合格であった。
実施例2〜11および比較例2〜5として、表1〜2や以下に記載のとおり一部条件を変更したほかは実施例1と同様に成形品の製造および評価を行った。繊維強化樹脂材における強化繊維の目付、重量平均繊維長、強化繊維(A)量の割合、2次元ランダム配向性などの強化繊維の状態は、成形品においてもほぼ維持されており、得られた成形品のバリ高さと悪化外観面積%の結果は表1〜2に示す。
実施例3は、実施例1よりガス流路の口の幅が狭い金型を用いて、繊維強化樹脂成形品の製造を行った態様であり、得られた成形品は、やや悪化外観面積%が実施例1より大きいものの50%以下の保っており、バリ高さが大幅に低減したため、実施例1と遜色ない外観を有している。
実施例4〜6は、実施例3において、排気システムをガス流路に接続した態様であり、得られた成形品は、実施例3に比べて悪化外観面積%が低くなり、実施例1より優れた外観を有している。
実施例7は、実施例4のガス流路の口に補助溝がある態様であり、得られた成形品は、実施例4に比べて悪化外観面積%が低くなり、実施例1より極めて優れた外観を有している。
比較例3は、ガス流路の口の沿面距離が、本発明の発明特定事項である数値範囲より小さいものである態様であり、得られた成形品は、悪化外観面積%が大きく、外観判定は不合格である。
比較例4は、ガス流路が無い金型を用いた他は実施例1と同様に操作を行った態様であり、得られた成形品は、バリはないが悪化面積%が大きく、外観判定は不合格である。
実施例9は、実施例8のエジェクターピンが、更に補助溝を有している態様であり、得られた成形品は、実施例8より優れた外観を有している。
実施例10は、実施例8のエジェクターピンの先に多孔質金属を取り付け、幅が20μmであるガス流路の口としたものであり、得られた成形品は、優れた外観を有している。
実施例11は加熱温度を260℃とした他は実施例1と同様に成形品を製造した態様である。260℃空気雰囲気下での熱分解速度は0.02重量%/秒であった。実施例11で得られた成形品は実施例1のものに比べバリ高さと悪化外観面積%が小さく、優れた外観を有しているが、ショートショットとなり、成形性に劣る結果であった。
2.下型
3.シャー
4.略閉空間
5.ガス流路の口
6.ガス流路
7.補助溝
8.基準面に対するコーナー角
9.ガス流路の口となるエジェクターピン
10.ガス流路の口となる多孔質金属
11.電磁弁
12.デジタル真空計
13.真空タンク
14.真空ポンプ
15.コントローラー
16.基準面
17.立ち面
Claims (3)
- 上型と下型とを有する金型であって、コールドプレス成形に用いられ、
上型および下型のうちの少なくともいずれかの動作により、成形材料を内包可能な略閉空間が形成される構造を有し、
上型と下型との型締めにより形成される成形キャビティは、基準面と、基準面に45°以上のコーナー角を形成して連なる立ち面を少なくとも1つ有し、
以下a)〜c)を同時に満たすガス流路があることを特徴とする金型(溶融状態の樹脂材料が、ゲートを通じて下型の型面上に分配供給されるものを除く)。
a)ガス流路は、上型キャビティ面または下型キャビティ面から、上型または下型を貫通して、上型または下型の非キャビティ面に通じており、上型および下型のうちの少なくともいずれかの動作により、略閉空間が形成された際に、ガス流路が、略閉空間から金型外部に通じている構造となる。
b)上型キャビティ面または下型キャビティ面におけるガス流路の口は、成形材料が配置される金型表面に設けられ、少なくともその一部の幅が1〜100μmである。
c)上型キャビティ面または下型キャビティ面において、基準面と立ち面との境界部から、ガス流路の口までの沿面距離が100mm以下である。 - 上型および下型のうちの少なくともいずれかの動作による、上型と下型とによる型締め完了より前に、成形材料を内包可能な略閉空間が形成される構造を有する請求項1に記載の金型。
- 上型キャビティ面または下型キャビティ面におけるガス流路の口が、深さ10〜500μmの補助溝を有する請求項1または2に記載の金型。
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