JP6639449B2 - 黄色ブドウ球菌およびセレウス菌用選択性抗菌剤の製造方法。 - Google Patents
黄色ブドウ球菌およびセレウス菌用選択性抗菌剤の製造方法。 Download PDFInfo
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Description
しかし、特許文献1では、抗真菌性素材中に多くの成分が含有されていることを明示しつつ、抗菌活性の有効成分や対象菌種の特定は行われていない。
しかし、タール成分は、これに含まれるベンゾピレン類などに起因する毒性や発がん性のリスクも伴っている。EUでは、食品中のベンゾピレン濃度基準は1〜5ppbであり、WHOの水質ガイドラインの基準は0.7ppbとされている。
しかし、この技術は、乾留液の原液をさらに処理する付加的な処理プロセスを必要とする。
しかし、この方法では、高密度な竹繊維の内部に含まれる竹酢液をスムーズに外部に排出できず、能率よく竹酢液を分離できない欠点がある。
しかし、特許文献4、5には、いずれも、竹酢液中に残存するタール分やベンゾピレンの含有量は開示されていない。また、特許文献4、5の技術は、いずれも圧力容器を必要とする。
しかし、この抗菌組成物を得る方法は、化学処理を必要とするため、大量の化学物質を使用しなければならず、抽出後の溶剤分離・処理などの付加的なプロセスを必要とする。
実質的に密閉可能な容器(以下、これを単に容器ということがある)には、例えば、開閉可能な蓋が設けられ、あるいは、搬入・搬出可能に設けられ、竹を配置および取出し可能に構成される。
カバーを設けたコンベアー(以下、これを単にコンベアーということがある。)には、例えばコンベアーの両端に水蒸気導入部および水蒸気導出部が設けられる。また、コンベアーのカバーは、コンベアーの周囲の空間を実質的に密閉可能に覆うように構成される。竹は、例えばコンベアーの一端から搬入、配置され、コンベアーの他端から搬出、取出しされる。
常圧過熱水蒸気のメリットは、(1)乾留と異なり、温度制御が精密にできるという点である。このメリットにより、目的とする抗菌剤成分がそれらの必要な濃度で生成することができ、タール分の混入などを排除することもできる。(2)圧力が常圧、すなわち大気圧であるため、反応容器の耐圧が不要であり、スケールアップが容易であるという点である。また、(3)常圧過熱水蒸気によって分解除去される成分が、水蒸気流に乗って留出回収されるため、分解生成物が反応容器内で液化滞留しない点である。さらに、(4)加圧水蒸気の場合に問題となる加圧状態のまま冷却した際の、反応器内部での凝縮液の生成や、冷却に長い時間を要する点が、常圧水蒸気処理の場合、処理中、一定の範囲の流量で水蒸気が流通するので、容器内部凝縮は起こらず、さらにこれを冷却凝縮する際は、よりコンパクトな冷却凝縮装置で実施可能である。
常圧過熱水蒸気が0.2(kg/竹1kg)を下回る流量の場合、竹への熱供給が不足し、抗菌剤成分の生成量が不十分となるおそれがある。一方、1.0(kg/竹1kg)を超える流量の場合、分解反応および分解生成物の留出はより速やかに進行するものの、過剰な水蒸気の一部は反応に関与せずに流通し、冷却凝縮して得られる選択性抗菌剤の濃度を低下させるだけでなく、冷却凝縮装置の長大化を余儀なくされるおそれがある。
好適に利用される冷却凝縮方法としては、冷却用の水中に直接導いて水溶液化する、直接液化法(水溶液化法)、あるいは充填剤を擁した容器中に直接水蒸気を導いて、充填剤表面上で冷却凝縮させる直接冷却方式、さらには、熱交換器(凝縮器)を用い、管壁等を介して間接的に水蒸気を冷却凝縮する間接冷却方式がある。
直接冷却方式に用いられる冷却用充填剤は、凝縮液によって溶解される成分が無いものであれば、いかなる冷却用充填剤も使用可能である。たとえば、ガラス製のリング、セラミック製のリングやボール、バイオマスチップ、竹炭/木炭チップ、250℃でも変形しない耐熱性プラスチック製のリングや球状、棒状、繊維状の成形体などが好適に用いられる。この直接冷却方式に用いられる充填剤を擁する容器の内表面の材質も、金属を含まないガラス製、グラスライニング、セラミック製、竹/木製、あるいは250℃でも変形しない耐熱性プラスチック製などが好適に用いられる。
間接冷却方式は、空冷、水冷、および蒸発式凝縮器など公知の冷却凝縮装置が使用できる。空冷凝縮器としては、薄板のフィンがあるプレートフィンチューブ形で、自然風あるいはファンを用いて強制的に冷却することができる。水冷凝縮器としては、横形と縦形のシェルアンドチューブおよびダブルチューブ(二重管)型などが利用できる。蒸発式凝縮器としては、アンモニアやフルオロ系冷媒などが好適に用いられる。これらの間接冷却方式の中で、装置のシンプルさや保守の容易さなどから、空冷および水冷式凝縮器がより好適に使用される。さらに、間接冷却方式に用いられる凝縮器の少なくとも水蒸気と接触する表面部分の材質は、金属を含まないガラス製、グラスライニング、セラミック製、竹または木製、あるいは250℃でも変形しない耐熱性プラスチック製などが好適に用いられる。
食中毒原因菌選択性抗菌剤は、好ましくは、ギ酸を40mg/L(リットル)以上、酢酸を1000mg/L以上,コハク酸およびリンゴ酸のうちのいずれか一方または双方を500mg/L以上、フルフラール化合物を100mg/L以上を含有する。リンゴ酸は、220℃以下の温度域で生成する。フルフラール化合物は、フルフラールのほかにフルフリルアルコールを含む。
各成分の上限値は特に設定されないが、いずれも酸性物質であるため、その取扱い易さの点から、それぞれ、20000mg/Lを超えない範囲が好適である。この値を超える場合には、水を用いて、取扱いに適した濃度に適宜希釈することも好適な実施態様である。
後述する実施例では、食中毒原因菌(食中毒原因細菌)としてBacillus cereus(セレウス菌)およびStaphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)の2種、ならびに参照細菌として食中毒原因菌ではない常在菌であるEscherichia coli(大腸菌)およびBacillus subtilis(枯草菌(納豆菌))の2種、合わせて4種について検討し、本実施の形態例に係る食中毒原因菌選択性抗菌剤の食中毒原因菌に対する選択性が確認されている。
Bacillus cereus(セレウス菌):土壌や汚水など自然界に多く存在。食中毒の原因菌である。
Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌):様々な表皮感染症や食中毒、また肺炎、髄膜炎、敗血症等の感染症の起因菌である。
Escherichia coli(大腸菌):環境中に存在するバクテリアの主要な種の一つで、腸内細菌でもある。
Bacillus subtilis(枯草菌(納豆菌)):土壌中や、空気中に飛散している常在細菌で枯草の表面などから分離される。
また、実施例では、Mucor(ケカビ属)、Trichoderma(トリコデルマ)、Penicillium(アオカビ)のカビ3種については本実施の形態例に係る食中毒原因菌選択性抗菌剤が作用しないことが確認されている。単細胞生物である細菌に対して選択性を有する一方多細胞生物である真菌類、いわゆるカビに対して作用しないことから、食中毒原因菌選択性抗菌剤は、多細胞生物であるヒトに対する過剰な毒性を有しないと推定される。
Mucor(ケカビ属):接合菌の中でもっとも普遍的に見られるものであり、土壌、糞、食品、その他、様々な湿った有機物の上に出現する。種によっては広く様々な場所に出現するものもあり、糞など特定の基質に特によく出現するものもある。特に強い病原性を示すというものはない。
Trichoderma(トリコデルマ):一般に森林土壌など、植物遺体の多い環境には非常に多いもので、枯れ木や朽ち木などにもよく繁茂する。土壌菌の分離を行う場合に、よく寒天培地上を覆いつくす。また、そのような場合、このカビが出現した培地では他のカビの出現が減ると言われる。これは、このカビが他の菌の生育を妨げる物質を分泌する、いわゆる他感作用を持つためである。この性質を利用し、他のカビによる病害を防ぐことも考えられている。ハイイロカビやフハイカビによる病害を防ぐ目的で作物の根元に接種する方法も実用化されている。抗生物質を産出する種も存在する。
Penicillium(アオカビ):最も普遍的に見られるカビの一つであり、常に空中に胞子が飛散している。ほとんどのアオカビは、健康なヒトには感染せず非病原性である。
炭は、特に限定するものではなく、例えば、竹炭、木炭、もみ殻炭等を用いることができる。また、炭100質量部に対する食中毒原因菌選択性抗菌剤の配合量は、30質量部未満では効果が不十分となるおそれがあり、300質量部を超えると成形体の物理的強度が低下し、その形状を維持できなくなるおそれがある。
ここで、食中毒原因菌選択性抗菌剤含有成形体を製造する方法としては、一般公知の方法が何ら制限なく、利用可能である。好適な方法を例示すれば、生分解性を有する高分子材料、例えばポリビニルアルコール0.1〜10質量部の水溶液をバインダーとして練り合わせた後、型枠に流し込み、常圧下、0〜200℃の温度範囲で乾燥処理して成形体前駆体を得る。その後、成形体前駆体に食中毒原因菌選択性抗菌剤30〜300質量部を含浸することで食中毒原因菌選択性抗菌剤含有成形体を得ることができる。
孟宗竹(直径約10〜15cm、長さ約30cm、重量8kg)を、仕様を以下に示す常圧過熱水蒸気式加水分解装置(直本工業株式会社 NHL-1型)を用いて、200℃、210℃、220℃、230℃の異なる温度で、常圧過熱水蒸気流量6kg/h(0.75kg/竹1kg)で5時間常圧過熱水蒸気処理を行った。
<常圧過熱過熱水蒸気処理装置>
蒸気発生部: ヒーター容量 6.3kW
最高換算蒸発量 9.45kg/h
最高使用圧力 0.11MPa
竹処理槽: ヒーター容量 8kW
庫内寸法 W590x D385x H555mm3
その際に発生した加水分解生成物を含む排出蒸気を約3mのシリコンチューブ式水冷コンデンサーを用いて冷却凝縮し選択性抗菌剤として回収した。水蒸気処理開始から1時間ごとに回収を行い、それぞれの時間毎の含有成分を、島津製作所製の高圧液体クロマトグラフ(HPLC)で分析した。ポンプには、DGU-14AとLC-10AT VP、カラムオーブンにはCTO-10AC VPを用いた。竹酢液サンプルは10倍に希釈し、マイクロシリンジで10μLを採取し、カラムとしてYMC-Triart(C-18、S-3μm、12nm)を装着したHPLCに注入し測定した。分析条件は、溶離液がりん酸緩衝液(20mM)、流量が0.425ml/min、カラム温度が37℃、検出器としてUV検出器(島津製作所製、SPD-10A VP)用いて行った。
ギ酸を40mg/L以上、酢酸を1000mg/L以上,コハク酸および/またはリンゴ酸を500mg/L以上、フルフラール化合物を100mg/L以上という条件は、処理温度200℃および210℃の温度では、1〜5時間の留出物で達成され、220℃では、1〜4時間の留出液、230℃では、1〜2時間の留出液で達成された。
孟宗竹(直径10〜15cm、長さ約30cm、重量8kg)を、常圧過熱水蒸気処理装置(直本工業株式会社製NHL-1型)を用いて210℃で3時間、常圧過熱水蒸気流量:2kg/h(0.25kg/竹1kg)で水蒸気処理を行った。同装置から排出される蒸気を約1mのガラスチューブ式水冷コンデンサーを用いて冷却凝縮し選択性抗菌剤として回収した。開始から1時間毎に3時間までの3種類をサンプルとして回収した。回収したサンプルをそれぞれ20gとり、エバボレーターを用い水分を蒸発させて濃縮操作を行った。表5に回収時間の異なる竹酢液それぞれのサンプルの濃縮物の重量を示す。
濃縮物をアセトニトリルに溶かし、50倍濃縮液とし、液体クロマトグラフ(島津製作所 SPD-10A VP)により、ベンゾピレンの量を測定した。液体クロマトグラフの測定条件は、下記のとおりである。ベンゾピレンの検量線は、異なる濃度のベンゾピレン標準試料を用いて、同じ条件で測定した液体クロマトグラフのそれぞれのピーク積分値から作成し、サンプル濃縮物に含まれるベンゾピレンを定量的に算出するために用いた。
<液体クロマトグラフの測定条件>
カラム: 島津製作所製VP-ODS(150mm×4.6mmi.d.)
温度; 37℃
検出器: 島津製作所製SPD-10A VP
キャリアー: アセト二トリル/10mMリン酸緩衝液=8/2(v/v)
流量: 0.8ml/min
サンプル注入量: 25μl
選択性抗菌剤の製造実施例1の210℃で1時間から5時間で流出した選択性抗菌剤を用いて抗菌性評価試験を行った。抗菌性評価試験に使った菌類は、食中毒原因細菌2種(Bacillus cereus、Staphylococcus aureus)、常在細菌2種(Escherichia coli、Bacillus subtilis)およびカビ3種(Mucor(ケカビ属)、Trichoderma(トリコデルマ)、Penicillium(アオカビ))である。
次に、カビ3種については、ポテトデキストロース寒天(PDA)培地上での増殖挙動の変化を観察した。先に、PDA培地上に本発明の選択抗菌剤150μLをコンラージ棒を用いて展開した。その培地面中央に、各カビを白金耳を用いて接種した。参照サンプルとして、抗菌剤を展開していない培地上に、同様にカビを接種した。すべてのカビは30℃で48時間培養した。その結果、いずれのカビも参照サンプルと同様に培地上で増殖し、明確な増殖抑制は観察されなかった。
孟宗竹由来の竹炭(バンブーテクノ社製)を粉砕し、粒子径10μm〜2mmの範囲にふるい分けした。得られた竹炭粉末(25g)とポリビニルアルコール(PVA、重合度1000、けん化度98%)水溶液(濃度10%、25g)とを混和し、均一に練り合わせ、若干の流動性を持った塑性固体とした。これを、直方形のアルミ製型枠中に充填した。
これを約3日間自然乾燥した後、型枠から取出し、電気炉中、120℃で1時間、乾燥処理を行った。得られた竹炭成形体(重量6.12g)を、過剰量の選択性抗菌剤製造実施例1の210℃で1時間から5時間で流出した選択性抗菌剤中に浸漬し、1昼夜、含侵処理を行った。含侵処理中に、竹炭成形体の崩壊などは一切起こらなかった。その後、成形体を取出し、外面に付着した選択的抗菌剤をふき取った後、秤量した結果、選択的抗菌剤の含浸率は102質量%であった。
Claims (1)
- 密閉可能な容器に配置した竹を180〜250℃の温度範囲の常圧過熱水蒸気0.2〜1.0kg/竹1kgの流量で処理し、竹酢成分を含みかつタール分を含まない水蒸気を生成し、少なくとも前記水蒸気と接触する面を、該水蒸気を冷却凝縮させた液中に金属イオンが混入しないように非金属で形成した流路に、前記水蒸気を流通させながら水冷により冷却凝縮して、ギ酸を40mg/L以上、酢酸を1000mg/L以上、コハク酸およびリンゴ酸のいずれか一方または双方を500mg/L以上、フルフラール化合物を100mg/L以上含有し、ベンゾピレン類の含有量が0.7ppb以下の竹酢液を生成することを特徴とする黄色ブドウ球菌およびセレウス菌用選択性抗菌剤の製造方法。
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