JP6638142B2 - 下注造塊方法 - Google Patents

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本発明は、鋳型内に溶鋼を下注ぎ方式で注入して鋼塊を製造する下注造塊方法に関するものである。
従来より、鋳型を用いて鋼塊を製造する造塊方法には、溶鋼の注入方向の違いから「下注ぎ方式」と「上注ぎ方式」の2種類がある。上注ぎ方式は、取鍋から溶鋼を、鋳型の上部より直接鋳型内に注ぎ込むものである。これに対して、「下注ぎ方式」は、湯道の末端にロート状の「拡径部」を設けておき、上下方向に沿って垂直に設けられた湯道から水平方向の湯道を経由して、鋳型の底部に設けられた注入口から溶鋼を鋳型内に注ぎ込むものとなっている。
ところで、上述した「下注ぎ方式」の造塊方法(以降、下注造塊方法という)では、通常、溶鋼の酸化防止や鋳片肌を改善する目的で、鋳型内にパウダー状の型内剤が使用される。ところが、鋳型の底部の注入口から溶鋼を上向きに噴出させる下注造塊方法では、鋳造初期に鋳型内で発生する注入流によって、鋳型内に添加された型内剤が溶鋼中に巻き込まれ、鋼塊内に捕捉されてしまうことがある。このような溶鋼への型内剤の巻き込みが生じると、鋼塊の底部の凝固殻に捕捉された型内剤が介在物欠陥を生じさせる原因となる。
このような型内剤の巻き込みを防止するために、鋳造初期の溶鋼の注入速度を低下させる方法もあるが、注入初期は湯道煉瓦の温度が低下しているため、あまり注入速度を低くすると湯道で溶鋼が凝固し、凝固した溶鋼が湯道の詰まりを発生させる可能性もある。
そこで、従来の下注造塊方法では、以下の特許文献1〜特許文献3に示すような手段を設けて型内剤の巻き込みを防止している。
例えば、特許文献1には、鋳型の底部に設けられた吐出口(注入口)から下方へ長さLまでの領域内の注入管1の孔内の形状が、横方向断面の径が吐出口を起点として下方向に向かって漸次曲線を描くように縮径し、かつ、この漸次縮径する曲線が注入管の中心軸を通過する縦方向断面において特定の式によって表される形状となっている下注造塊設備の湯道管が開示されている。
この特許文献1の溶融金属の注湯方法では、注入速度が変動する条件下でも注入速度を低下させることなく、また複雑な装置を設置して生産性低下やコスト上昇等を招来することがないような簡単な方法で、注湯中の鋳型内における溶鋼の湯面方向(直上方向)の流速を低減可能とされている。
また、特許文献2には、鋳型の下方に設けられた吐出口(注入口)から溶融金属を鋳型内に吐出する下注ぎ方式の注湯方法であって、溶融金属搬送容器から吐出口に連通して溶融金属を鋳型に供給する溶融金属の経路である注入管内に、溶融金属に旋回流を形成させる旋回流形成手段を1個又は複数個設けた下注ぎ方式の注湯方法が開示されている。
この特許文献2の溶融金属の下注ぎ方式の注湯方法において、注入速度を低下させることなく、注湯中の下注ぎ方式の注湯方法は、鋳型内の溶融金属の湯面を安定させて、スラグ類や非金属介在物の溶融金属への巻き込みや拡散、及び目玉による溶融金属の酸化を抑制すると共に、金属鋳塊の品質を低下させる原因となる非金属介在物の金属鋳塊中への分散を減じて、金属鋳塊の品質向上を図るものとされている。
さらに、特許文献3には、下注造塊方法に使用される湯道(吐出湯道)であって、吐出湯道の先端部の内径を本体部の内径より大径にし、吐出湯道の先端内径D1と本体部内径D2との比(D1/D2)を1.1以上としたものが開示されている。この特許文献3の湯道を用いれば、粗大介在物の発生が抑制され、清浄度の優れた鋳塊を製造することを可能になるとされている。
さらにまた、特許文献4には、鋳型に注入管を介して下方から溶鋼を装入して鋳塊を製造する下注ぎ造塊方法であって、鋳型内の溶鋼の浴面を被覆するための被覆材(型内剤)を添加すると同時、もしくは添加前後3分以内に金属Ca及び/又はCa合金を添加することとし、被覆材の成分含有量と添加した金属Ca及び/又はCa合金の含有量との関係を示す[%Ca]/([3[%Fe2O3]+[%FeO]+2[%SiO2]+[%Na2O])の値を0.05以上0.25以下を満たす(ただし、[%X]は、被覆材、金属Ca、Ca合金中Xの合計含有量(モル%)とする)ようにしたものが開示されている。この特許文献4の下注ぎ造塊方法は、型内剤の巻き込み防止を目的とするものではないものの、粗大介在物の発生を抑制し、清浄度の優れた鋳塊を製造することを可能とするものとされている。
特開2012−86233号公報 特開2007−216295号公報 特開平9−239494号公報 特開2014−73514号公報
ところで、特許文献1〜特許文献3の技術は、いずれも鋳型よりも下方において水平方向に沿って形成された湯道を上下方向に沿うように折り曲げ、折り曲げられた上下方向を向く湯道の上端に、上方に向かってテーパ状の拡径部を設けたものとなっている。このように湯道に折り曲げ部を設けると、後述するように折り曲げ部を通過した溶鋼に遠心力の作用で渦流が形成され、渦流を形成した分だけ鋳型内に噴出する溶鋼の勢いを削ぐことができるということを本発明者らは知得している。
しかしながら、特許文献1〜特許文献3に開示される拡径部の下端と、湯道の水平方向を向く部分の上端との上下方向の距離は長く形成されているか、不明とされていて、湯道の折り曲げ部で渦流が発生しても、鋳型内に噴出する際には渦流が治まってしまい、湯面の変動を抑制する効果を十分に発揮することはできない構成となっている。
また、特許文献2の技術は、耐火物で形成された旋回流形成手段が破損した場合に、破損した耐火物が鋼塊中に混入する虞があると共に旋回流形成手段内で溶鋼が凝固し、つまる虞があり、品質を安定させるという観点から好ましいものとは言えない。
さらに、特許文献3に示すように拡径部の開き角度を大きくし過ぎると、吐出湯道の耐火物が大型になり、耐火物の厚みが厚くなり、耐火物の原単位が上がって、製造コストの高騰を招来する虞がある。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、鋳型へ溶鋼を下注ぎで注入する際に、注入初期時に型内剤が溶鋼中に巻き込まれることを防止し、介在物欠陥の発生が抑制された高品質の鋼を製造することができる下注造塊方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の下注造塊方法は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の下注造塊方法は、鋳型底の内径が600mm〜1100mmとされ且つ型内剤が内装された鋳型に対して、鋳型底に設けられた注入口から溶鋼を湯道を通じて注入しつつ溶鋼の下注ぎ造塊を行うに際して、前記湯道における鋳型側の端部に、上方に行くほど拡径された拡径部を有する注入口を設けておき、前記注入口から溶鋼を、注入流量Qが0.92t/min〜1.73t/minとなるように注入するものであって、上下方向に対する前記拡径部の開き角度をθ(°)、前記注入口下端の内径をD(mm)とした場合に、以下の式(1)〜式(3)の関係が成立する形状に前記拡径部を形成しておくことを特徴とする
なお、以降の明細書において、「Q」は注入流量の一般の値を示したものであり、上述した式(1)の「Q」は拡径部下端の湯道径Dや開き角度θが決まっている時のQの最大値(Qのupper limit)を示すものである。
本発明の下注造塊方法によれば、鋳型へ溶鋼を下注ぎで注入する際に、注入初期時に添加された型内剤が溶鋼中に巻き込まれることを防止し、介在物欠陥の発生が抑制された高品質の鋼を製造することができる。
本実施形態の下注造塊装置における湯道の拡径部を示した図である。 第1実施形態の下注造塊装置における湯道の曲がった部分で発生する渦流を示した図である。 「注入口当たりの注入流量」と「超音波欠陥個数」との関係を示したグラフである。 ストレートノズルを用いた水モデル実験の湯面に対して、超音波距離測定センサーを用いて計測した湯面の変動量を、注入口直上と注入口と鋳型の側壁との中間位置とで比較した図である。 拡径ノズルを用いた水モデル実験の湯面に対して、超音波距離測定センサーを用いて計測した湯面の変動量を、注入口直上と注入口と鋳型の側壁との中間位置とで比較した図である。 水モデル実験における水槽内での湯面の変動状態を、ストレートノズルを用いた場合と、拡径ノズルを用いた場合とで画像で比較した図である。 ストレートノズルを用いた水モデル実験において、「鋳型底から湯面までの距離」と「湯面高さの差」との関係を示したグラフである。 拡径ノズルを用いた水モデル実験において、「鋳型底から湯面までの距離」と「湯面高さの差」との関係を示したグラフである。 ストレートノズルを用いた場合における、「鋳型底からの距離」と「湯面高さの差」との関係を示すデータに対してフィッティングを行った結果を示す図である。 拡径ノズルを用いた場合における、「鋳型底からの距離」と「湯面高さの差」との関係を示すデータに対してフィッティングを行った結果を示す図である。 フィッティングにより求められた計算式を、「鋳型底からの距離」と「湯面高さの差」との関係を示すグラフ上にプロットし、注入流量Qが0.92t/min〜1.73t/minの範囲で比較した図である。 ストレートノズルを用いた場合における、「注入流量Q」と「鋳型底から100mm位置の湯面高さの差」との関係を示すグラフである。 拡径部の角度θを0°〜10°まで変化させた場合における、「注入流量Q」と「鋳型底から100mm位置の湯面高さの差」との関係を示すグラフである。 開口径Dが55mmφで拡径部を用いた場合における「拡径部の角度θ」と「許容される最大の注入流量Q」との関係を示したグラフである。 「拡径部の角度θ」と「許容される最大の注入流量Q」との関係を、開口径Dが50mmφ〜80mmφの範囲で比較したグラフである。 「開口径D」と「式(1)の二次の係数」との関係を示したグラフである。 「「開口径D」と「式(1)の一次の係数」との関係を示したグラフである。 「「開口径D」と「式(1)の定数項」との関係を示したグラフである。 開口径D、注入流量Q、角度θを変化させた場合における「L1+L2の長さ」と「鋳型底から100mm位置の湯面高さの差」との関係を示すグラフである。 注入流量Qを1.56t/minにした状態で、開口径D、拡径部の角度θを変化させた場合における「L1+L2の長さ」と「鋳型底から100mm位置の湯面高さの差」との関係を示すグラフである。 L1+L2の長さを100mm及び150mmに一定とした状態で、L2のみを変化させた場合における「L2/D」と「鋳型底から100mm位置の湯面高さの差」との関係を示すグラフである。 本実施形態の下注造塊方法に用いられた下注造塊装置を模式的に示した図である。 本実施形態の下注造塊装置に設けられた注入管及び湯道の寸法を示す図である。 水モデル実験に用いられた下注造塊装置を示す図である。 図24のX−X線断面図である。
以下、図を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
鋼塊の造塊法としては、下注ぎ造塊法と上注ぎ造塊法の2種類がある。上注ぎ造塊法では鋳型の上部の開口部に取鍋から直接、溶鋼を注ぎ込んで鋳造するのに対し、下注ぎ造塊法では、図22に示すように、注入管2と呼ばれるロート状の注ぎ口が設けられた垂直の管に溶鋼を注ぎ込んで、湯道3を介して鋳型1に注湯することにより鋳造を行う。本発明では、上述した2つの造塊法のうち、下注ぎ造塊法を対象としている。
本発明の下注造塊方法は、下注ぎの注入管2を用いて鋳型1の底面(鋳型底)の注入口4から鋳型1内に溶鋼を注入する際に注入流量に応じて注入口4の形状(吐出口のテーパ形状)の開き角度θ(拡径度)と注入口4下端の内径Dを最適なものとし、注入初期時の型内剤の巻き込みを防止し高品質の鋼を製造するものとなっている。
すなわち、図1に示すように、下注造塊方法は、鋳型底の短径(内径)が600mm〜1100mmとされた鋳型1に対して、鋳型底に設けられた注入口4から溶鋼を湯道3を通じて注入しつつ溶鋼の下注ぎ造塊を行うに際して、湯道3における鋳型1側の端部に、上方に行くほど拡径された拡径部5を有する注入口4を設けておき、注入口4から溶鋼を、注入流量Qが0.92t/min〜1.73t/minとなるように注入するものであって、上下方向に対する拡径部5の開き角度をθ(°)、注入口4下端の内径をD(mm)とした場合に、以下の式(1)〜式(3)の関係が成立する形状に拡径部5を形成しておくことを特徴とするものである。
上述した式(1)、式(2)、式(3)で示す関係式を満足することで、本発明の下注造塊方法は、鋳型初期注入時に添加する型内剤の巻き込みを防止するとともに溶鋼の酸化を防ぎ、介在物欠陥を低減することができるものとなっている。
まず、下注造塊方法の説明に先立ち、下注造塊方法に用いられる下注造塊装置6について簡単に説明する。
図22は、下注造塊装置6の全体を示している。
図22に示すように、下注造塊装置6は、下注ぎ造塊法により溶鋼を鋳造するものであって、取鍋内の溶鋼を注入する注入管2と、注入管2の下端から左方に向かって水平に伸びる湯道3と、この湯道3に連通する鋳型1とを備えている。
詳しくは、下注造塊装置6の定盤には1本の注入管2が立設され、注入管2の下端であって定盤の内部には当該注入管2から枝分かれした湯道3が形成されていて、この湯道3の先端に注入口4(拡径部5)が形成されている。
上述した注入管2、湯道3、注入口4の内面はいずれも耐火物で構成され、鋳型1は鋳鉄で構成されている。また、鋳型1上部の押湯部(図示略)の内面にも耐火物が貼られている。
鋳型1は、上方に向かって開口した有底の容器であり、空洞とされた内部に溶鋼を注入して鋼塊を形成可能とされている。鋳型1の内部は、鋼塊の引き抜きを考慮して、底部の内径に比べて上端側の内径の方がやや大きくなるような形状、言い換えれば下方から上方に向かうにつれて広がるような形状に形成されている。また、鋳型1の内部の底は、短径と、短径より長い長径との2辺で構成される長方形状とされている。具体的には、鋳型1の底部の短径(内径)は、厚板製品の板厚と圧延比を考えて、600mm〜1100mmとされている。例えば、角形の鋳型1の場合であれば、底部側の鋳型1の短径が600mm〜1100mmとされていて、上端側の鋳型1の短径は底部側よりも長寸となっている。
鋳型1の底部の中央側には、取鍋の溶鋼を注入するための注入口4が、水平方向(鋳型1の底部の長径方向)に並んで2箇所形成されている。さらに、鋳型1の内部には、ビニール袋と厚紙で二重にくるまれたパウダー状の型内剤が、鎖などを用いて吊下された状態で取り付けられている。
型内剤は、鋳型1内に溶鋼の酸化防止や鋳片肌を改善する目的で添加されるものであり、溶融スラグ成分となる酸化物などを含んでいる。型内剤は、ビニール袋でくるまれた上から、さらに厚紙(厚手のクラフト紙など)で二重にくるまれており、鋳型1内の注入口4と鋳型壁との間に吊り下げ状態で配備されている。鋳型1中に溶鋼が注入されて湯面が上昇すると溶鋼の輻射熱によって厚紙とビニール袋が燃え、くるまれた型内剤が溶鋼中に落下することで、上述した型内剤は溶鋼中に添加される。
上述した下注造塊装置6を用いて造塊を行う場合には、取鍋の溶鋼を湯道3を通って注入口4から鋳型1内に注入する。やがて、鋳型1内に溶鋼が溜まって、湯面が上昇すると、上述した型内剤が溶鋼の湯面に供給される。
通常、従来の下注ぎ鋳造では鋳造の初期に鋳型内に上向きに噴出する注入流によって、溶鋼の酸化防止や鋳片肌を改善する目的で鋳型内に添加されたパウダー状の型内剤が溶鋼中に巻き込まれ、鋼塊内に捕捉される結果、鋼塊のボトム部の凝固殻に容易に捕捉され介在物欠陥を生じる。これを防止するためには初期注入速度を低下させる方法が考えられるが、注入初期は湯道煉瓦の温度が低下しているため、初期注入速度を低下させると湯道部で溶鋼が凝固し、詰まりを発生させる可能性がある。また、これを改善するために、従来技術では注入口の径を広げる方法も提案されているが、注入速度との関係が不明であり、注入口の径を広くしすぎると注入口の耐火物サイズも大きくなり、耐火物コストが増大してしまう虞もある。また、注入口の径を広げる方法の場合、拡径した注入口の長さ(長手方向に沿った長さ)が不明であり、長くしすぎると注入口の耐火物が肉厚になり、コストが増大するばかりか湯道の折り曲げ部(曲がった部分)で発生した渦流の勢いが減少してしまう可能性もあり、効果的とは言えない。
そこで、本発明では、図2に示すように鋳型1底部に水平方向を向くように設けられている湯道3が鋳型1の下方で鋳型1底部に向かって直角に曲がる際に作用する遠心力を利用している。つまり、湯道3が曲がった部分では、遠心力で管中央部の流体は曲がりの外側へ押しやられ、管壁近くの流体は壁に沿って曲がりの内側に回り込む。また、曲げ内側では圧力が低く、外側では高くなる(公益社団法人「日本冷凍空調学会」のホームページ、用語集 「曲がり管での2次流れ」、[平成28年1月08日検索]、インターネット〈URL:http://www.jsrae.or.jp/annai/yougo/114.html〉)。その結果、管横断面内の溶鋼中では1対の循環流(2次流れ)が生じる。この1対の循環流は理論上は管内において左右対称の流れになるはずであるが、実際には流れは非対称となり、湯道3が曲がった部分を通過した溶鋼に渦流が発生することになる。つまり、本発明の下注鋳造方法は、この湯道3が曲がった部分で発生した渦流を利用することによって拡径部5で注入流れを一層拡散し、もって型内剤の巻き込みを防止するものとなっている。
なお、「背景技術」において述べた従来の技術(例えば、特開2007-216295号公報)では、溶鋼の流れを旋回させるために螺旋状に捻れた旋回流発生手段(旋回羽)を設けているが、この旋回流発生手段は耐火物を使用して形成されており、破損した耐火物が鋳塊に混入する虞や破損した耐火物で湯道などが詰まる虞や、耐火物内で溶鋼が凝固して詰まる虞があり、場合によっては特別な耐火物を使用する必要がある。この点、本願発明の下注造塊方法では、特別な耐火物を使用することなく、拡径部で注入流れを拡散することができる。
また、湯道3が曲がった部分で発生した渦流は、曲がった部分を通過した後、湯道3の管内を進む際に管壁との摩擦により、次第に消失する。したがって、注入口4の拡径部5に沿って流れを渦流を利用して十分に拡散させるためには、渦流の存在する範囲内で拡径部5に注入流が流れ込むようにする必要がある。これらの条件から上述した式(1)〜式(3)の関係が導かれる。
次に、本発明の下注造塊方法が対象とする範囲、言い換えれば上述した式(1)〜式(3)の内容について説明する。
図1に示すように、本願発明の下注造塊方法は、鋳型底の内径(短径)が600〜1100mmとされた下注鋳型1を用いた場合を対象とするものであり、注入口の1箇所当たりの溶鋼の注入流量Qが0.92t/minから1.73t/minで注入する場合を対象とするものである。また、本願発明の下注造塊方法で規定される関係が成立するのは、鋳型1に注入された溶鋼が、底面(鋳型底)からの高さで500mmまでの範囲で、拡径部5の上端と水平部湯道煉瓦内径上端部との距離を一定範囲内とし、かつ拡径部5の長さ(上下方向に沿った長さ)を一定の長さ以上として注入流量を制御しながら注湯する場合に限られる。
つまり、本願発明の下注造塊方法は、鋳型1基当たりの注湯量が30t〜60tのインゴット鋳型を対象としており、通常このサイズの板用に使用される鋳型1の底部の短径(内径)は厚板製品の板厚と圧延比から600mm〜1100mmとなる。それゆえ、本願発明の下注造塊方法は、鋳型底の短径(内径)が600mm〜1100mmとされた鋳型1(下注鋳型)を用いた場合に限定される。
また、後述する水モデルを用いた検証実験で、注入流れの拡散効果が確認された水流量範囲は2.35L/min〜4.44L/minであり、この水流量範囲を溶鋼に換算すると溶鋼の流量範囲は0.92t/min〜1.73t/minに相当する。それゆえ、本願発明の下注造塊方法は、鋳型底の内径(短径)が600〜1100mmとされた下注造塊用の鋳型1を用いた場合に限定される。
さらに、本願発明の下注造塊方法が対象とする範囲は、1ヒート分の溶解量が90t〜300tで、鋳型1基の注湯量が30t〜60t、鋳造時間が15分〜30分の範囲である。なお、以降に示す実施例は鋳型1基の注入流量が1.84〜3.46t/minの範囲に関するものである。
上述した式(1)は、注入口4からの型内剤を巻き込まない最大の溶鋼の注入流量Qと、上方に行くほど拡径された拡径部5の開き角度(テーパー角)θと、注入口4の拡径部下端の湯道内径Dとの関係を数式で示したものである。つまり、本願発明の下注造塊方法では、鋳型1内に噴出する溶鋼の速度を低下させるため、注入口煉瓦の内径を先に行くほど広げる形状とする。この際、注入口4煉瓦のテーパー角θを大きくするほど鋳型内への注入速度が低下する効果があるが、θを10°以上にしても注入速度はあまり低下しなくなる。
また、注入口4からの溶鋼の注入速度が低下すると、湯面変動も低下するという効果が得られる。この湯面変動が低下するという効果は注入流量と関係があり、注入流量が増加するにつれ、注入口4煉瓦のテーパー角θの最小値は大きくしなければならない。また、拡径部5下端に繋がっている湯道3の内径D(mm)が小さいほど注入口煉瓦のテーパー角θの最小値は大きくしなければならない。
上述した関係をまとめたものが、式(1)の関係式である。
また、本願発明の下注造塊方法では、水平方向を向く湯道3が上下方向を向く方向に曲がった部分(鋳型1の底方向に向かって水平方向から直角に曲がった湯道)を経て、鋳型1内に溶鋼が導かれるが、この曲がった部分で渦流が生じる。この渦流が、注入口4から噴出する際に注入流が拡径部5で広がり鋳型1底内に噴き出すときに拡散されるので鋳型1内の湯面変動が減少する。
つまり、水平方向を向く湯道3から曲がった部分から鋳型底(鋳型1の底面)までの距離が短いと、渦流が注入口4の拡径部5の出口まで残存するが、この距離がある程度まで長くなると渦流が消滅してしまい、渦流による注入流の拡散効果がなくなる。この湯道3が曲がった部分から鋳型底までの距離であるL1+L2の上限を150mmとし、下限を煉瓦の強度から50mmとしたものが式(2)である。
さらに上述した式(3)は、拡径部5の長さであるL2が0.6Dより短いと、十分な拡散効果が得られず、湯面変動を減少できないことから導かれるものである。
次に、実施例及び比較例を用いて、上述した式(1)〜式(3)が導出される過程を、より詳しく説明する。
まず、式(1)〜式(3)の導出過程に先立ち、注入流による型内剤の巻き込み限界を決定する、言い換えれば欠陥が発生しない注入流量を求める。
図3に示すように、従来の下注造塊装置6で使用されていた内径が55mmφの拡径していない通常の注入口4を湯道3の終端に設けた場合に、鋼塊底部500mmまでの範囲で超音波欠陥が認められるかどうかを超音波試験で評価した。超音波試験により、1箇所当たりの注入口4の流量が0.92t/minの場合は鋼塊ボトム部で型内剤の巻き込みによる超音波欠陥が認められず、1箇所当たりの注入口4の流量が1.0t/min以上では鋼塊ボトム部での型内剤の巻き込みによる超音波欠陥が認められた。
なお、超音波欠陥を検査する超音波試験は鋼塊を160mm厚に圧延し、鋼塊ボトムから500mmに相当する範囲内の欠陥個数で評価したものである。以後、各寸法は実寸で表示されている。
上述したように1箇所当たりの注入口4の流量が1.0t/min以下の場合、超音波欠陥が生じておらず、このとき1/5のサイズの水モデルにより測定された鋳型底から100mm位置での湯面高さの差(湯面高さの変動幅)は60mmであったので、鋳型底から100mm位置での湯面高さの差が60mm以下となる範囲で湯面が変動する場合は超音波欠陥は発生しないものとした。
なお、上述したように湯面高さの差を求める際の高さの基準(鋳型底からの高さ)を100mm位置としたのは、鋳型底から100mmの高さまで溶鋼が供給された時点で型内剤が供給されると考えることができるため、型内剤の供給時点での湯面高さの差を基準としたものである。つまり、型内剤は、ビニール袋にくるまれたものをさらに厚紙(厚手の封筒に使用されるような紙)でくるんで、針金で縛り、鎖で鋳型1の上端からぶら下げる。この型内剤は、鋳型1底から約200mmの位置に通常セットされ、溶鋼が注入されると溶鋼の輻射熱によって加熱され、厚紙とビニールが燃えて、中身の型内剤が落下する。この型内剤の正確な添加位置(落下高さ)は注入直後の鋳型1内の観察が困難であるため厳密には測定できないが、鋳型1の上方からの観察では、溶鋼注入直後ではなく、また200mm位置でもない。そこで、本願発明の下注造塊方法では、湯面と200mm位置との中間の高さ、つまり鋳型底から100mm位置で型内剤が供給されているものと考え、この鋳型底から100mm位置で湯面高さの差を、型内剤の供給時点での値と考えて評価に用いている。
なお、上述した超音波試験は、探傷器UI-25(菱電エレクトロニクス(株)製)を用いたものであり、探傷子に2C30Nを使用し、探傷感度は標準試験片STB-G V15-2.8(JIS)を使用し、疵エコー高さ80%の設定で行ったものである。
次に、実施例及び比較例を用いて、式(1)〜式(3)の導出過程、及び本願発明の作用効果をさらに詳しく説明する。
「式(1)の導出過程」
まず、式(1)の導出過程及びこの式(1)の関係を満足した場合の作用効果を説明する。
以降に示す実施例及び比較例は、いずれも図6に示すような水モデルを用いて、湯面の高さの差を実際に発生させ、この湯面の差を超音波距離測定センサー8を用いて実際に測定したものである。
なお、図6の水モデルは、後述するフルード数が実機の鋳型1と一致する水槽9を用いたものである。水モデルに用いた水槽9の形状や寸法、及び実機と水モデルとの相似性については後ほど詳しく説明する。
具体的には、水モデルの水槽9内の湯面変動(水面変動)を超音波距離測定センサー8により注入口4直上と注入口4(鋳型1壁から実寸で800mm離れた位置)と鋳型1の側壁との中間位置(鋳型1の側壁から実寸で300mm離れた位置)の2点で測定している。図6の左側は拡径部を有さない通常の注入口(内径55mmφ、以降「ストレートノズル」という)を使用した時の湯面の変動状況を示している。また、図6の右側は拡径した注入口4(拡径部下端の内径55mmφ→上端の内径65mmφ、開き角度θ=3°、以降「拡径ノズル」という)を用いた場合である。拡径ノズルを使用した湯面の高さの差は、ストレートノズルを使用した湯面の高さの差よりも、小さくなっている。つまり、注入口4直上と注入口4と鋳型1の側壁との中間位置との湯面の高さの差が減少している。
図4に通常の拡径していないストレートノズルを使用した時における、注入口4直上と注入口4と鋳型1の側壁との中間位置との湯面高さの測定結果を示す。なお、図4、図5とも鋳型底からの距離は実寸に換算している。また、図5に拡径している拡径ノズルを使用した時における、注入口4直上と注入口4と鋳型1の側壁との中間位置での湯面高さの測定結果を示す。ここではL1=50mm、L2=50mmとしている。
この図4及び図5に示す湯面高さを計測した際の実験条件は、図6において湯面の高さを計測した際の実験条件と同じである。図4のストレートノズルを用いた場合は、図5の拡径ノズルを用いた場合に比較して、注入口4直上と中間位置(注入口4と鋳型1壁との中間位置)との湯面高さの差が大きくなっており、注入口4に拡径部5(拡径ノズル)を設けた効果が顕著に表れている。
次に、上述した図4、図5で得られた注入口4直上及び中間位置の2か所での湯面の変動量のうち、注入口4直上での湯面変動を10sec(実機で22.4sec相当)間隔で測定し、測定値の中で最大値を求めた。また、上述した中間位置での湯面変動を10sec(実機では22.4sec相当)間隔で測定し、測定値の平均値を求めた。この中間位置における10sec間隔での測定値の平均値は、注入口4の近傍に比べれば湯面変動が比較的穏やかな中間位置での測定値を平均したものであり、鋳型1の底面から湯面までの距離(湯面変動がない場合の鋳型1の底面から湯面までの距離)を示している。このようにして求められた注入口4の直上での湯面変動の最大値から、中間位置での湯面変動の平均値を差し引き、両者の差をとって注入口4の直上と中間位置との湯面高さの差を評価したものを、図7、図8に示した。なお、図7はストレートノズルの場合の湯面変動の状態(湯面高さの差)であり、図8は拡径ノズルの場合の湯面変動の状態(湯面高さの差)である。なお、図7、図8も湯面高さの差、鋳型底からの距離は実寸に換算している。以後の図も同様である。
図7、図8から明らかなように、鋳型1の底面から湯面までの距離が同一の場合、図5の拡径ノズル(開き角度θ=3°)を用いた注入口4の方が、図4のストレートノズルを用いた場合に比較して、湯面高さの差は小さくなっている。
実験結果には多少のバラつきがあるので、各実験条件(ノズルの種類)ごとに湯面変動の測定を3回繰り返し、3回分のデータに対してフィッティング(二次関数による近似)を行い、「鋳型1の底面から湯面までの距離」と「湯面高さの差」との関係を実験式として求めた。求められた実験式と測定データとの関係を、ストレートノズルを用いた場合については図9に、また拡径ノズルを用いた場合については図10に示す。
図9及び図10に示すように、「鋳型1底から湯面までの距離」を変数とした場合に、「湯面高さの差」をこの変数の2次関数として近似した場合に、高い相関性が得られている。また、図9の近似曲線に対して、図10の近似曲線の方が図9の近似曲線に比べて値が低くなっており、このことから拡径ノズル(開き角度θ=3°)を用いた場合には、ストレートノズルを用いた場合より湯面高さの差が抑えられることがわかる。
上述した図9及び図10は、いずれも注入流量が1.56t/minの場合であったが、注入流量を0.92t/min、1.28t/min 、1.73t/min に変更した場合にも、図11に示すように同様な傾向(「鋳型1の底面から湯面までの距離」を変数とする2次関数の曲線)が得られる。つまり、鋳型1の底面から湯面までの距離(鋳型1に注入された溶鋼の深さ)に対する、湯面高さの差の変化(湯面変動量の変化)は、注入流量によって値が異なるものの、いずれも曲線状の変化となる。加えて、注入流量を大きくすればするほど、湯面高さの差は大きくなる傾向がある。
すなわち、ストレートノズルを用いた場合と、拡径ノズルを用いた場合とでそれぞれ分けて考えれば、0.92t/min〜1.73t/minの各注入流量ごとで、鋳型1の底面から湯面までの距離x(mm)と、湯面高さの変動幅(湯面高さの差)z(mm)との関係は、それぞれ式(4)や式(5)のような数式として整理することができる(拡径部下端の内径55mmφの場合)。なお、式(4)(式(a)、式(b)、式(c)、式(d))はストレートノズルを用いた場合のものであり、式(5)(式(e)、式(f)、式(g)、式(h))は拡径ノズル(開き角度θ=3°)を用いた場合のものである。
上述したように湯面高さの差が数式として求まったところで、型内剤が鋳型1内の溶鋼に供給された時点での状況を考える。前述したように、鋳型1底から湯面までの距離(鋳型1内での溶鋼の深さ)が100mmのときに、型内剤が溶鋼中に供給されると考えることができるため、求められた式(4)及び式(5)にx=100mmを代入する。
上述した式(4)にx=100mmを代入すると、各注入流量ごとの鋳型1の底面から100mm位置における湯面高さの差、言い換えれば型内剤が供給された時点での湯面高さの差を計算することができる。図12に式(4)より求めたθ=0°の場合の鋳型1の底面から100mm位置での湯面高さの差と注入流量との関係を示す。また、θ=3°の場合に加えてθ=10°の場合についても同様に、各注入流量ごとの鋳型1底からの距離x(mm)と湯面高さの差y(mm)の関係式を求め、求められた関係式にx=100mmを代入し、各注入流量ごとの鋳型1底から100mm位置の湯面高さの差を計算すればよい。このようにして求めたθ=0°、3°、10°の場合の鋳型底から100mm位置での湯面高さの差と注入流量の関係を図13に示す。
また、図12及び図13に示したθ=0°、3°、10°の場合、さらにはθ=5°、7°の場合における、鋳型底から100mm位置での湯面高さの差z(mm)と注入流量Q(t/min)の関係を、フィッティング(二次関数による近似)を行って二次関数の式に直すと、以下の式(6)(式(i)、式(j)、式(k)、式(l) 、式(m))のようになる。
上述した超音波試験による欠陥調査で明らかとなったように、湯面高さの変動幅(湯面高さの差)が60mm以下の場合は、超音波探傷で欠陥は発生しなくなることが確認されている。そのため、式(6)中のzに60mmを代入することで、型内剤を巻き込まない範囲で許容される注入流量の最大値Qを、拡径部5の開き角度θの関数として式(7)中の式(o)(拡径部下端の内径55mmφの場合)のように求めることができる。
上述した式(7)中の式(o)(拡径部下端の内径55mmφの場合)に示される注入流量の最大値Qと拡径部5の開き角度θとの関係式を示すと、図14のようになる。また、上述した式(7)中の式(o)は注入口4の内径が55mmφの場合であったが、注入口4の内径が50mmφ、70 mmφ、80 mmφの場合についても、注入流量の最大値Qと拡径部5の開き角度θとの関係を図15に示すように求めることもできる。さらに、図14及び図15の実験結果をまとめると、表1のような結果となる。
なお、表1の結果は、いずれもL1=50mm、L2=50mmの場合である。
表1、図14及び図15に示すように、拡径部5の開き角度θに対する注入流量の最大値Qの変化傾向は、拡径部5の開き角度θが0°から大きくなるにつれて、注入流量の最大値Qも徐々に大きくなり、開き角度θが7°前後から注入流量の最大値Qの変化
も緩やかになるような傾向を示す。また、この注入流量の最大値Qの変化傾向は、注入口4の内径D(拡径部5の下端の内径D)によっても大きく変化する。
それゆえ、上述した式(7)におけるθの2次の項(2次の係数)、1次の項(1次の係数)、定数項(切片)のそれぞれについて拡径部5の下端の湯道内径Dとの関係を整理すると、それぞれ式(8)のように、各項はDの1次関数として示される。
なお、上述した式(8)に示すθの2次の項とDの関係を図16に、θの1次の項とDの関係を図17に、さらに定数項とDの関係を図18に示す。なお、θの2次の項は本来マイナスであるが、理解しやすくするためにθの1次の項や定数項に合わせて絶対値の形(プラスの形)で表示している。
図16〜図18を見ると、θの2次の項、θの1次の項、定数項は、いずれも注入口4の拡径部5の下端の湯道内径Dの1次関数として表現可能であることがわかる。
以上のことから、型内剤をまきこまない範囲で許容される注入流量の最大値Qを、式(8)を用いて整理すると、以下の式(1)を導出することができる。
以上までが、式(1)の導出過程についての説明である。
なお、表1の実験No.1〜No.80に示すように、上述した式(1)を満足する実施例(表1の実験No.5, No.9, No.13, No.17, No.21, No.25, No.26, No.29, No.30, No.33, No.37, No.41, No.42, No.45, No.46, No.49, No.53, No.54, No.57, No.58, No.61, No.62, No.63, No.65, No.69, No.70, No.73, No.74, No.77, No.78, No.79)においては、「湯面高さ≦60mm」の評価も○となっており、湯面の高さの差を60mm以下に抑えることができていることがわかる。また、このときの総合評価も、いずれも○であって、式(1)を満足する実施例では、欠陥も発生しないことが確認された。一方、上述した式(1)を満足しない比較例においては、「湯面高さ≦60mm」の評価は×となっており、湯面の高さの差を60mm以下に抑えることができておらず、欠陥の発生を確実に抑制できない可能性がある。
「式(2)の導出過程」
次に、実施例及び比較例を用いて、式(2)の導出過程及びこの式(2)の関係を満足した場合の作用効果を説明する。
上述した式(1)の導出過程では、L1=50mm、L2=50mmに固定した条件で、説明を行った。しかし、湯道3の直角に曲がった部分で発生する渦流を消失させないようにするためには、注入口4の拡径部5に沿って渦流が存在する範囲内で、溶鋼を鋳型1内に流し込むようにする必要がある。そのため、L1+L2の長さを変化させ、L1+L2がどれくらいの長さまで渦流の効果があるのかを実施例及び比較例を用いて評価した。
具体的には、L2=50mmとしてL2を一定とした状態で、L1のみをL1=50mm、100mm、150mm、200mmと変化させた。このようにすると、L1+L2の長さを100〜250mmの範囲で50mmづつ変化させることができる。このようにしてL1+L2の長さを変化させ、上述した水モデル実験により鋳型1底から100mm位置での湯面高さの差を測定した。
図19に、L1+L2=100mmの時に鋳型底から100mm位置での湯面高さの差が60mm以下となる条件下(D=55mmφ、Q=1.28t/min、θ=7°とD=70mmφ、Q=1.28t/min、θ=7°とD=80mmφ、Q=1.56t/min、θ=10°)でL1+L2を増加させた場合の結果を示す。図19を見ると、L1+L2の長さが150mmまでは60mm以下であるが、200mmを超えると許容値60mmを超える。
図19中においてθ=0°の値(白抜きの凡例の値)は開き角度をつけないノズル(ストレートノズル)の場合の結果で、L1+L2が100mm〜250mmの範囲で湯面高さの差が60mmを超えているが、湯面高さの差の値自体はL1+L1の長さが150mmを超える前後で少し増加しており、θ=0°の場合でもL1+L1の長さが影響を及ぼすことを示している。また、L1+L2の長さが200mmを超えた場合でもθ=0°の結果に比べて、θ=7°やθ=10°の結果は湯面高さの差が小さくなっている。これは注入口4に拡径部5を設けた効果によるものと考えられる。
つまり、本願発明のようにL1+L2を150mm以下とすることにより、湯道3の曲がった部分で生じた渦流が存在する範囲内で拡径部5に注入流を流し込むことができ、一層湯面高さを小さくできることがわかる。
また、図20には、鋳型1の底面から100mm位置で、湯面高さの差が60mmを超える条件下で、L1+L2を増加させた場合の結果を示している。図19と同様にL1+L2の長さが150mmまでと200mmを超えると領域とでは湯面高さの差に差が生じており、図20の場合でもL1+L2の長さを150mm以下にすることで同様に湯面高さを小さくできることがわかる。
以上の結果から、本願発明ではL1+L2の長さの上限を150mm以下とした。また、L1+L2の長さの下限は、通常はシャモットなどの煉瓦で形成された湯道3の強度の問題から、50mmとした。以上をまとめると、式(2)の関係が導かれる。
以上までが、式(2)の導出過程である。
上述した図19の結果を表2のNo.1〜24に、また図20の結果を表2のNo.25〜48に示した。
表2の結果から、上述した式(1)に示す関係式を満足するものであって、さらに式(2)に示す関係(L1+L2が50mm以上であって、且つ150mm以下)を満足する場合、言い換えれば実施例(表2の実験No.2, No.3, No.5, No.6, No.9, No.10)においては、湯道3の耐火物の強度を損なうことなく、湯道3が曲がった部分で生じた非対称な渦流を用いて湯面高さの変動をより抑えることができると判断される。一方、上述した式(2)に示す関係式を満足しないものや、式(2)に示す関係式を満足するものではあっても、式(1)の関係式を満足しないもの(比較例)は、湯面高さの変動が60mmを超え、欠陥の発生を確実に抑制できない可能性があることがわかる。
「式(3)の導出過程」
次に、実施例及び比較例を用いて、式(3)の導出過程及びこの式(3)の関係を満足した場合の作用効果を説明する。
上述した注入口4の拡径部5に沿って流れを拡散させるためには、拡径部5の長さについても、一定以上の長さが必要となる。そこで、湯道3の曲がった部分で発生する渦流によって注入口4から噴出する流れを十分に拡散可能なL2の長さの範囲を調査するため、L1+L2の長さを一定とした上で、L2の長さのみを変化させた。具体的には、式(2)の導出過程の説明で述べたように、湯面高さの差の大きな減少効果が得られるL1+L2の長さを100mm又は150mmにした上で、L2をそれぞれ、10〜50mm、30〜70mmの範囲で10mmピッチで変化させて、水モデル実験をい、鋳型1底から100mm位置での湯面高さの差を測定した。
図21に鋳型1底から100mm位置での湯面高さの差が60mm以下となる条件でL2を変化させた場合の結果を示す。なお、「100mm位置での湯面高さの差が60mm以下となる条件」とは、注入口4の内径D=55mmφ、注入流量Q=1.28t/min、拡径部5の開き角度θ=7°とした場合(図21中に菱形で示すもの)、注入口4の内径D=70mmφ、注入流量Q=1.28t/min、拡径部5の開き角度θ=7°とした場合(図21中に四角で示すもの)、注入口4の内径D=80mmφ、注入流量Q=1.56t/min、拡径部5の開き角度θ=10°とした場合(図21中に三角で示すもの)の3つである。
また、各凡例を塗りつぶしたデータがL1+L2を100mmとした場合のものであり、各凡例を塗りつぶしていないデータ(白塗りのデータ)がL1+L2を150mmとした場合のものである。L1+L2=100mmの場合は L2を10〜50mmの範囲で変化させており、L1+L2=150mmの場合はL2を30〜70mmの範囲で変化させている。
図21を見ると、図21の横軸に示されるL2/Dが0.6以上では、湯面高さの差が60mm以下となっており、L2/Dの比が0.6より小さくなると許容値である60mmよりも湯面高さの差が大きくなることがわかる。以上をまとめると、式(3)の関係が導かれる。
以上までが、式(3)の導出過程である。
上述した図21の結果を、表3のNo.1〜30に示す。
表3及び図21の結果から、上述した式(3)に示すように、L2を注入口4の拡径部下端の内径の0.6倍以上とする場合、言い換えれば実施例(表3の実験No.4, No.5, No.10, No.15, No.17〜No.20, No.23〜No.25, No.28〜No.30)の場合には、注入口4の拡径部5に沿って流れを拡散させることができ、湯面高さの変動をより抑えることができると判断される。しかしながら、式(1)〜式(3)のいずれかを満足しない比較例では、湯面高さの変動が60mmを超え、欠陥の発生を確実に抑制できない可能性があることがわかる。
上述した式(1)〜式(3)の関係を満足するように、鋳型1の底面の注入口4からの注湯を行えば、注湯初期の上向き噴流によって生じる湯面変動が小さくなり、湯面変動が原因で生じる鋳型1内への型内剤の巻き込みを抑制することが可能となり、介在物欠陥の発生を防止することが可能となる。
次に、上述した実施例及び比較例に用いた水モデルと、実際に製造に用いられる下注造塊装置6との相似性について説明する。
実施例及び比較例に用いた水モデルが実際に造塊で用いる下注造塊装置6(以降、実機という)との相似則にはフルード数を用いた。
まず、フルード数の算出方法について述べる。
図22に示すように、下注造塊装置6においては、注入管2の中心から遠い側の各鋳型1の鋳型底の注入口4中心までの距離をA1、注入管2の中心から近い側の鋳型1の鋳型底の注入口4中心までの距離をA2とする。下注造塊装置6には、鋳型Aと鋳型Bの2つの鋳型1が存在するが、これらは注入管2を境に左右対称であるため、注入管2の中心から距離A1及び距離A2に注入口4の中心が位置する点は、鋳型Aでも鋳型Bでも同じである。
さらに、図23に示すように、注入管2の内径をd0、注入管2から鋳型Aに向かう湯道3の内径をd1、注入管2から鋳型Bに向かう湯道3の内径をd1とする。この注入管2には、注入流量4×WR(注入口4の1個当たり注入流量WRの4倍)で溶鋼が注入されているものと考える。この注入流量4×WRは、取鍋底のノズルから注入管2に注入される溶鋼の流量を示すものであり、スライドバルブによって制御可能とされている。
ここで、流体の流速をV、代表寸法をL,動粘性係数をν、フルード数をFr、レイノルズ数をRe、重力の加速度をgとすると、フルード数とレイノルズ数は以下の式(9)のように示すことができる。
運動方程式を無次元化すると、(慣性項)+(粘性項)/Re+(外力項)=0となるので、フルード数Frは外力項に(1/Fr2)で入る。Reが大きくなれば、(粘性項)/Reが小さくなるため、Reは運動方程式より消去されることになり、Reを無視することが可能となる。
つまり、Re>4000となるような領域、言い換えれば通常は「乱流領域」と言われる領域では、上述したFr数近似を用いる(Re数の項を無視する)ことができる。上述した水モデルではRe>38,000となるので、乱流域となり、Fr数近似を適用することができる。
なお、上述した水モデルのフルード数Frは、下記の式(10)で示すことができる。
ここで、水モデル実験に用いた装置及び鋼塊(インゴット)を下注ぎ鋳造している実機と、水モデルのフルード数が一致する場合を、実機と水モデルが相似であると考える。
例えば、実機の代表寸法と水モデル実験の代表寸法の比を5:1とする場合、すなわち1/5の縮尺モデルの場合を考える。フルード数一致の観点から、V/L0.5を同じにする必要がある。縮尺を1/λ(=1/5)とすると、水モデルでの水の流速VMと、実機での溶鋼の流速VRとの間には、次の式(11)のような関係が成立する。なお、添え字の「R」は実機、「M」は水モデルを示している。
以上のことから、縮尺1/5の水モデル実験の場合には、溶鋼の場合に対して0.447倍の流速で水を流した場合に、実機と水モデルとの間にFr数の一致が得られることになる。
また、実機の流量QR及び時間TR、水モデルの流量QM及び時間TMの間には、式(12)の関係が成立する。
つまり、水モデルの流量QMは、実機の流量QRの1/52.5=0.0179倍とすればよい。
また、水モデルの流量QM(L/min)を、実機でのスループット(実機の流量)WR(t/min)に換算する場合、溶鋼の比重を7t/m3とすれば、式(13)のような関係を用いて換算することができる。
上述した式(9)〜式(13)の関係を用いれば、実機と水モデルとの間で、各特徴量を変換することが可能となる。
最後に、上述した実施例及び比較例は、以下の表4に示すような寸法や条件で行ったものである。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
1 鋳型
2 注入管
3 湯道
4 注入口
5 拡径部
6 下注造塊装置
8 超音波距離測定センサー
9 水槽

Claims (1)

  1. 鋳型底の内径が600mm〜1100mmとされ且つ型内剤が内装された鋳型に対して、鋳型底に設けられた注入口から溶鋼を湯道を通じて注入しつつ溶鋼の下注ぎ造塊を行うに際して、
    前記湯道における鋳型側の端部に、上方に行くほど拡径された拡径部を有する注入口を設けておき、
    前記注入口から溶鋼を、注入流量Qが0.92t/min〜1.73t/minとなるように注入するものであって、
    上下方向に対する前記拡径部の開き角度をθ(°)、前記注入口下端の内径をD(mm)とした場合に、以下の式(1)〜式(3)の関係が成立する形状に前記拡径部を形成しておく
    ことを特徴とする下注造塊方法。
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