以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する各実施の形態は一例であり、本開示はこれらの実施の形態により限定されるものではない。
(実施の形態1)
[送信装置および受信装置の構成]
図3Aは、本開示の実施の形態1に係る送信装置10の構成を示す図であり、図3Bは、本開示の実施の形態1に係る受信装置20の構成を示す図である。
図3Aに示す送信装置10は、デジタル送信処理部11と、D/A(Digital to Analog)変換処理部12と、参照周波数発振部13と、LO(Local Oscillator)周波数発振部14と、離散時間アナログ回路15と、送信ミクサ(Mixer)16と、と、パワーアンプ(PA)17と、アンテナ18と、を有する。
デジタル送信処理部11は、送信データに、例えば、符号化処理及び変調処理を含む所定のデジタル送信処理を施し、ベースバンドデジタル送信信号を生成し、D/A変換処理部12に出力する。
D/A変換処理部12は、ベースバンドデジタル送信信号をベースバンドアナログ送信信号に変換し、離散時間アナログ回路15に出力する。D/A変換処理部12によって変換されたベースバンドアナログ送信信号は、不要な信号(例えば、高調波)を含む。
参照周波数発振部13は、離散時間アナログ信号処理に用いる参照周波数信号fREF1を生成し、離散時間アナログ回路15に出力する。また、参照周波数発振部13は、局部発振信号fLO1の生成に用いる参照周波数信号fREF_LO1を生成し、LO周波数発振部14に出力する。離散時間アナログ回路への参照周波数信号fREF1とLO周波数発振部への参照周波数信号fREF_LO1の周波数は、同じ周波数であっても良く、異なる周波数であってもよい。
LO周波数発振部14は、参照周波数信号fREF_LO1に基づいて、局部発振信号fLO1を生成して送信ミクサ16へ出力する。
離散時間アナログ回路15は、参照周波数信号fREF1に基づいて、ベースバンドアナログ送信信号に対して離散時間のアナログ信号処理によるフィルタリングを行い、不要な信号(例えば、高調波成分)を除去する。離散時間アナログ回路15は、フィルタリング後のベースバンドアナログ送信信号を送信ミクサ16に出力する。なお、離散時間アナログ回路15の構成および動作については後述する。
送信ミクサ16は、局部発振信号fLO1に基づいて、フィルタリング後のベースバンドアナログ送信信号をRF周波数にアップコンバートし、RF周波数にアップコンバートされたアナログ送信信号をパワーアンプ17に出力する。
パワーアンプ17は、RF周波数にアップコンバートされたアナログ送信信号の電力を増幅し、アンテナ18に出力する。
アンテナ18は、電力増幅後のアナログ送信信号を放射する。
図3Bに示す受信装置20は、アンテナ21と、低雑音増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)22と、参照周波数発振部23と、LO周波数発振部24と、受信ミクサ(Mixer)25と、離散時間アナログ回路26と、A/D(Analog to Digital)変換処理部27と、デジタル受信処理部28と、を有する。
アンテナ21は、図示していない送信局からRF周波数のアナログ受信信号を受信し、低雑音増幅器22へ出力する。
低雑音増幅器22は、受信したRF周波数のアナログ受信信号を増幅し、受信ミクサ25へ出力する。
参照周波数発振部23は、離散時間アナログ処理に用いる参照周波数信号fREF2を生成し、離散時間アナログ回路26に出力する。また、参照周波数発振部23は、参照周波数信号fREF_LO2をLO周波数発振部24に出力する。離散時間アナログ回路への参照周波数信号fREF2とLO周波数発振部への参照周波数信号fREF_LO2の周波数は同じ周波数でもよく、異なる周波数でもよい。
LO周波数発振部24は、参照周波数信号fREF_LO2に基づいて、局部発振信号fLO2を生成して受信ミクサ25へ出力する。
受信ミクサ25は、局部発振信号fLO2に基づいて、RF周波数のアナログ受信信号をベースバンドアナログ受信信号に周波数変換し、離散時間アナログ回路26に出力する。
離散時間アナログ回路26は、参照周波数信号fREF2に基づいて、ベースバンドアナログ受信信号に対して離散時間のアナログ信号処理によるフィルタリングを行う。離散時間アナログ回路26は、フィルタリング後のベースバンドアナログ受信信号をA/D変換処理部27に出力する。なお、離散時間アナログ回路26の構成および動作については後述する。
A/D変換処理部27は、フィルタリング後のベースバンドアナログ受信信号をベースバンドデジタル受信信号に変換し、デジタル受信処理部28に出力する。
デジタル受信処理部28は、ベースバンドデジタル信号に対して、例えば、復調処理及び復号処理等を含む所定のデジタル受信処理を行って受信データを生成し、出力する。
なお、図3Aに示す送信装置10および図3Bに示す受信装置20は、ダイレクトコンバージョンの構成として説明した。本実施の形態に係る送信装置10または受信装置20は、ミクサを1つ以上追加し、中間周波数(IF:Intermediate Frequency)を用いる方式でもよい。
また、参照周波数信号fREF1、fREF2は、1つの信号を共用しても良いし、参照発振周波数発振部13、23、又は、LO周波数発振部14、24は、送信装置10及び受信装置20において共用してもよい。なお、本実施の形態の構成は、他の実施の形態でも同様の構成を用いることができる。
[離散時間アナログ回路100の構成]
次に、本実施の形態に係る離散時間アナログ回路100の要部構成について説明する。
図4は、実施の形態1に係る離散時間アナログ回路100の要部構成の一例を示す図である。図4に示す離散時間アナログ回路100は、図3Aに示す送信装置10が有する離散時間アナログ回路15、および、図3Bに示す受信装置20が有する離散時間アナログ回路26に相当し、例えば、フィルタリングの処理を行う。
図4に示す離散時間アナログ回路100は、TA(Transconductance Amplifier:トランスコンダクタンスアンプ:電圧電流変換回路)110と、容量120と、電荷反転回路130と、クロック生成回路140と、を有する。離散時間アナログ回路100は、ベースバンドのアナログ信号が入力端子T_Vinから入力され、入力されたアナログ信号に対して、電荷反転回路130においてフィルタリングを行い、容量120および電荷反転回路130を経て、出力端子T_Voutから出力電圧信号Voutを出力する。
TA110は、電圧電流変換回路であり、入力されるアナログ信号を入力電圧信号Vinとし、入力電圧信号Vinを電流(gm×Vin)に変換する。なお、gmはTA110のトランスコンダクタンス(相互コンダクタンス)の値である。
容量120は、一方の端子がTA110の出力端子T_TAoutに接続され、他方の端子がGNDに接地される。容量120の容量値は、CH1である。
電荷反転回路130は、一方の端子がTA110の出力端子T_TAoutに接続され、他方の端子がGNDに接地される。電荷反転回路130は、電荷を保持する動作および電荷を反転して接続する動作を行う回路である。電荷反転回路130は、クロック生成回路140から供給される制御信号に基づいて電荷共有を行い、入力されるアナログ信号に対するフィルタリング処理を行う。なお、電荷反転回路130の具体的な構成については、後述する。
クロック生成回路140は、参照周波数発振部(図3Aおよび図3B参照)から出力された参照周波数信号(fREF1またはfREF2)からクロックS1〜S4(制御信号)を生成し、電荷反転回路130に供給する。なお、クロック生成回路140によって生成される制御信号については後述する。
[電荷反転回路130の構成]
電荷反転回路130の具体的な構成について説明する。図5Aは、実施の形態1に係る電荷反転回路130の構成の一例を示す図である。図5Bは、実施の形態1に係る電荷反転回路130の内部構成の一例を示す図である。図5Bに示す電荷反転回路130は、2個の容量131−1および131−2と、2個の容量131−1および131−2の接続を制御する8個のスイッチ132−1〜132−8を有する。
図5Aに示す電荷反転回路130は、両端に端子Aおよび端子Bを有する。図4に示す離散時間アナログ回路100において、電荷反転回路130の端子Aまたは端子Bのいずれか一方がTA110の出力端子T_TAoutに接続され、他方がGNDに接地される。以下では、電荷反転回路130の端子Aは、TA110の出力端子T_TAoutに接続された一例について説明する。
容量131−1は、端子X1および端子Y1を有し、容量131−2は、端子X2および端子Y2を有する。容量131−1および131−2は、互いに並列に設けられる。容量131−1および131−2の容量値は、それぞれCH2である。
スイッチ132−1は、端子X1と端子Aの接続を制御信号S1によって制御し、ハイ期間中は接続し、ロー期間中は切断する。スイッチ132−2は、端子Y1と端子Bの接続を制御信号S1によって制御し、ハイ期間中は接続し、ロー期間中は切断する。スイッチ132−3は、端子X2と端子Aの接続を制御信号S2によって制御し、ハイ期間中は接続し、ロー期間中は切断する。スイッチ132−4は、端子Y2と端子Bの接続を制御信号S2によって制御し、ハイ期間中は接続し、ロー期間中は切断する。スイッチ132−5は、端子X1と端子Bの接続を制御信号S3によって制御し、ハイ期間中は接続し、ロー期間中は切断する。スイッチ132−6は、端子Y1と端子Aの接続を制御信号S3によって制御し、ハイ期間中は接続し、ロー期間中は切断する。スイッチ132−7は、端子X2と端子Bの接続を制御信号S4によって制御し、ハイ期間中は接続し、ロー期間中は切断する。スイッチ132−8は、端子Y2と端子Aの接続を制御信号S4によって制御し、ハイ期間中は接続し、ロー期間中は切断する。
[クロック生成回路140によって生成される制御信号]
クロック生成回路140において生成される制御信号について説明する。図6は、制御信号のタイミングチャートである。制御信号S1〜S4は、パルス幅Ts、制御信号の周期TCKにより構成される。パルス幅Tsは、サンプル間隔と同一である。なお、図6では、矩形クロックを示しているが、電荷反転回路130は、波形がなまったクロックでも動作する。
図6に示すように、クロック生成回路140は、DUTY比(=パルス幅Ts/制御信号の周期TCK)が0.25であり、90度ずつ位相がずれた4相の制御信号S1、S2、S3およびS4を、電荷反転回路130へ供給する。
[離散時間アナログ回路100の動作]
離散時間アナログ回路100における動作について説明する。
離散時間アナログ回路100は、間隔Ts毎に電荷共有を繰り返し行い、サンプル値を生成する。離散時間アナログ回路100は、次の3種類の電荷を電荷共有する。
(1−a)TA110が入力電圧信号Vinを電流に変換した電荷、つまり、TA110の出力端子T_TAoutに出力される電荷(以下、入力電荷と記載)
(1−b)容量120が保持している1サンプル前の電荷
(1−c)電荷反転回路130が保持している2サンプル前の電荷
なお、3種類の共有において、電荷反転回路130は、保持している2サンプル前の電荷の極性を反転させることによって電荷共有する。
電荷反転回路130は、図6に示した制御信号S1〜S4に基づくスイッチ132−1〜132−8の制御(オンとオフ)によって、次の4つの動作を1周期(1TCK)内に行い、周期TCK毎に繰り返す。
第1の動作:制御信号S1がハイ期間中は、容量131−1の端子X1が端子Aに接続され、端子Y1が端子Bに接続される(以下、容量131−1の正相接続と記載)。
第2の動作:制御信号S2がハイ期間中は、容量131−2の端子X2が端子Aに接続され、端子Y2が端子Bに接続される(以下、容量131−2の正相接続と記載)。
第3の動作:制御信号S3がハイ期間中は、容量131−1の端子Y1が端子Aに接続され、端子X1が端子Bに接続される(以下、容量131−1の逆相接続と記載)。
第4の動作:制御信号S4がハイ期間中は、容量131−2の端子Y2が端子Aに接続され、端子X2が端子Bに接続される(以下、容量131−2の逆相接続と記載)。
つまり、容量131−1が正相接続され、容量131−2が逆相接続により電荷共有された電荷を保持する第1の動作、容量131−2が正相接続され、容量131−1が正相接続により電荷共有された電荷を保持する第2の動作、容量131−1が逆相接続され、容量131−2が正相接続により電荷共有された電荷を保持する第3の動作、および、容量131−2が逆相接続され、容量131−1が逆相接続により電荷共有された電荷を保持する第4の動作、という4つの動作が間隔Ts毎に行われる。
容量131−1および131−2は、正相接続(逆相接続)により電荷共有された電荷を逆相接続(正相接続)することによって、保持している電荷の極性を反転させて接続する動作を行う。
つまり、上記第1の動作から第4の動作によって、電荷反転回路130は、容量131−1が保持している電荷の極性を反転させて接続し、容量131−2の接続が開放されて電荷を保持する動作(第1の動作及び第3の動作)と、容量131−2が保持している電荷の極性を反転させて接続し、容量131−1の接続が開放されて電荷を保持する動作(第2の動作及び第4の動作)が、Ts期間毎に交互に繰り返される。
第1の動作から第4の動作について数学的に説明する。
TA110が入力電圧信号V
inを電流に変換したn時点の電荷(入力電荷)は(nは整数)、次式(1)で記述できる。
ここで、ω
inは入力電圧信号の角周波数である。
また、離散時間アナログ回路100におけるn時点での電荷共有の概略は、次式(2)の差分方程式により記述できる。
式(2)において、左辺第1項は入力電荷に相当し、第2項は容量120に保持された1サンプル前の電荷であり、左辺第3項は、容量131−1または131−2に保持された2サンプル前の電荷である。v
out(n)は、DUTY比1により保持される。z変換することにより、離散時間アナログ回路100の伝達関数は、概略、次式(3)によって表わされる。
ここで、H
I、H
H及びzは、次式(4)によって表わされる。
離散時間アナログ回路100の周波数特性について説明する。図7は、離散時間アナログ回路100の低域通過特性の回路シミュレーションの結果を示す図である。図7の横軸は周波数を示し、縦軸はGainを示す。また、図7は、CH1が300fFであり、CH2がパラメータとして変化する離散時間アナログ回路100の低域通過特性を示す。なお、離散時間アナログ回路100は、CH2を固定し、CH1をパラメータとしてもよい。
図7より、離散時間アナログ回路100は、広帯域信号が通過可能であり、CH2(またはCH1)を変化させることによって、通過帯域の帯域内偏差(レベル差)を調整できる。
[効果]
以上のように、本実施の形態によれば、図4および図5Bに示した構成、具体的には電圧電流変換回路であるTA110、3個の容量(容量120、容量131−1および131−2)、8個のスイッチ(スイッチ132−1〜132−8)、および、4種類のクロック(S1〜S4)におけるCH1とCH2の比の制御によって、図7に示す広帯域な通過特性を有し、帯域内偏差を調整可能なフィルタを実現することができる。
つまり、数GHzを超えるような広帯域な通過特性を実現しようとした場合、スイッチの寄生容量の影響が大きくなるが、本開示では、スイッチの数を減らすことができるため、離散時間アナログ回路100は、寄生容量を減らすことができる。また、離散時間アナログ回路100は、帯域内偏差を調整できるので、他の回路ブロックの周波数特性を含めて帯域内偏差を小さくすることが可能であり、イコライザとして機能させることもできる。また、離散時間アナログ回路100は、gm、CH2、CH2の値を調整することによりゲイン調整が可能なため、可変利得増幅器(VGA)としても使用できる。TA110の入力に増幅器を接続し、ゲインを増加させてもよい。
なお、離散時間アナログ回路100は、容量120(容量値CH1)、および、容量131−1、131−2(容量値CH2)を可変容量とすることで、特性の変更が容易となり、通信環境(例えば、周囲温度又は電源電圧の変化)又は回路素子のバラツキの影響に対して、適応的に特性変更が可能となる。
可変容量の構成としては、スイッチによって接続される容量数を制御する方法、電圧によってバラクタ容量に印加する電圧値を制御して、容量値を変化させる方法、といったものが挙げられる。これは以降の実施の形態でも同様である。つまり、従来の離散時間アナログ回路は、可変容量を構成する容量の数の増加によって、スイッチが増え、結果として、寄生容量の合計量が増えるが、本開示は、容量の数が従来の離散時間アナログ回路よりも少ないため、スイッチの合計数も少なく、結果として、従来構成よりも寄生容量の合計量が小さい。
また、スイッチ132−1〜132−8は、トランジスタによって構成してもよい。一般的なトランジスタの構成は、微細CMOSプロセスによって製造する場合、NMOSトランジスタを用いた構成、PMOSトランジスタを用いた構成、NMOSとPMOSを用いた相補型スイッチの構成が知られている(非特許文献2等参照)。
なお、出力端子T_Voutのモニタの方法としては、保持している電荷の移動を最小限に抑えるVCVS(Voltage-Controlled Voltage Source)のようなバッファ又はアンプを接続してモニタする方法を用いてもよい。
また、離散時間アナログ回路100は、容量120(容量値CH1)を省略した構成でもよい。式(4)においてCH1=0とした2次IIRの伝達関数を実現できる。なお、上記効果は、他の実施の形態にも同様の効果を有する。
(実施の形態2)
本開示の実施の形態2について説明する。本実施の形態は、実施の形態1の離散時間アナログ回路100を差動構成した回路構成である。
[離散時間アナログ回路200の構成と動作]
図8は、実施の形態2に係る離散時間アナログ回路200の要部構成の一例を示す図である。図8に示す離散時間アナログ回路200は、TA210と、容量220と、電荷反転回路230と、クロック生成回路240と、を有する。
離散時間アナログ回路200は、図4に示した離散時間アナログ回路100と異なり、正相と逆相の2系統からなる入力電圧信号Vinを入力とする、差動型の離散時間アナログ回路である。
TA210は、電圧電流変換回路であり、正相と逆相の2系統からなる入力電圧信号Vinを入力とし、入力電圧信号Vinを電流(gm×Vin)に変換し、正相と逆相の2系統の電流を出力する。
容量220は、TA210の正相の出力端子T_TAout1と逆相の出力端子T_TAout2の間に接続される。容量120の容量値は、CH1である。
電荷反転回路230は、図5Bに示した電荷反転回路130と同じ構成を有する。電荷反転回路230の端子Aは、TA210の正相の出力端子T_TAout1に接続され、端子Bは、TA210の逆相の出力端子T_TAout2に接続される。
クロック生成回路240は、図4に示したクロック生成回路140と同じ構成を有し、図6に示したクロック(制御信号)と同様のクロック(制御信号)を電荷反転回路230に供給する。
離散時間アナログ回路200は、離散時間アナログ回路100におけるGNDへの接地がTA210の逆相の出力端子T_TAout2への接続に置き換えられた構成である。離散時間アナログ回路200は、実施の形態1で説明した離散時間アナログ回路100の動作と同様の動作を行う。
また、離散時間アナログ回路200の伝達関数は、式(3)および式(4)で示した離散時間アナログ回路100の伝達関数と同様であり、図7と同様の周波数特性を実現できる。さらに、離散時間アナログ回路200は、差動構成であるため、差動合成後に偶数次成分を除去できる。
[効果]
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1の構成を差動構成にすることによって、実施の形態1と同様の周波数特性を実現でき、さらに、差動合成後に、偶数次成分を除去できる。
なお、本実施の形態において、容量220は、TA210の正相の出力端子T_TAout1と逆相の出力端子T_TAout2の間に接続されるとしたが、2つの容量がTA210の正相の出力端子T_TAout1と逆相の出力端子T_TAout2のそれぞれに接続されていてもよい。TA210の正相の出力端子T_TAout1と逆相の出力端子T_TAout2のそれぞれに接続される2つの容量の値は基本的には同じ値であるが、特性の自由度を高めるために互いに異なる値としてもよい。
(実施の形態3)
次に、本開示の実施の形態3について説明する。本実施の形態における離散時間アナログ回路は、実施の形態1の離散時間アナログ回路100を縦続接続することによって、高次化する構成を有する。
[多段離散時間アナログ回路300の構成と動作]
図9Aは、実施の形態3に係る多段離散時間アナログ回路300の構成の一例を示す図である。図9Bは、実施の形態3に係る多段離散時間アナログ回路300の内部構成の一例を示す図である。図9Aに示す多段離散時間アナログ回路300は、クロック生成回路320と、離散時間アナログ回路310がN個縦続接続(310−1〜310−N)される構成を有する。
図9Bに示す離散時間アナログ回路310は、図4に示した離散時間アナログ回路100と同様の構成を有し、図9Bに示すTA311および容量312は、それぞれ、図4に示したTA110および容量120と同様である。
図9Bに示す電荷反転回路313の構成は、図4および図5Bに示した電荷反転回路130の構成と同様である。
また、図9Bに示すクロック生成回路320は、図4に示したクロック生成回路140と同様であり、図6に示すクロック(制御信号)と同様のクロック(制御信号)をN個の離散時間アナログ回路310−1〜310−Nに供給する。
離散時間アナログ回路310は、実施の形態1で説明した離散時間アナログ回路100の動作と同様の動作を行う。また、離散時間アナログ回路310の伝達関数は、式(3)および式(4)で示した離散時間アナログ回路100の伝達関数と同様である。
多段離散時間アナログ回路300は、離散時間アナログ回路310のN個縦続接続される構成であるから、多段離散時間アナログ回路300の伝達関数の概略は、次式(5)となる。
gmk、CH1k、CH2kは、k段目の離散時間アナログ回路310−k(Nは自然数、k=1〜Nの整数)のgm、CH1、CH2であり、HIk、HHkはk段目の離散時間アナログ回路310−kの伝達関数であり、各段においてgm、CH1、CH2の値を適宜変更する。
次式(6)は、式(5)において、各段のg
mk、C
H1k、C
H2kを同じ値に変更した結果である。
多段離散時間アナログ回路300の周波数特性について説明する。図10は、多段離散時間アナログ回路300の低域通過特性の回路シミュレーションの結果を示す図である。図10の横軸は周波数を示し、縦軸は規格化されたGainを示す。また、図10は、縦続接続の段数が1(1stage)の低域通過特性と、縦続接続の段数が2(2stage)の低域通過特性を示す。
図10に示すように、多段離散時間アナログ回路300は、縦続接続の段数を増加させるほど、急峻なフィルタ特性を実現できる。
[効果]
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1で説明した離散時間アナログ回路を縦続に接続する構成によって、急峻なフィルタ特性を実現できる。実施の形態1で説明したように、離散時間アナログ回路310は小型で簡易な構成であるため、高次化のために段数を増加させてもスイッチや容量の数を抑えることができる。
なお、N個の離散時間アナログ回路310−1〜310−Nのそれぞれが有する容量の容量値は、全て同一であってもよいし、異なる値としてもよい。
(実施の形態4)
本開示の実施の形態4について説明する。本実施の形態は、実施の形態3の多段離散時間アナログ回路300を差動構成にした回路構成である。
[多段離散時間アナログ回路400の構成と動作]
図11Aは、実施の形態4に係る多段離散時間アナログ回路400の構成の一例を示す図である。図11Bは、実施の形態4に係る多段離散時間アナログ回路400の内部構成の一例を示す図である。図11Aに示す多段離散時間アナログ回路400は、クロック生成回路420と、離散時間アナログ回路410がN個縦続接続(410−1〜410−N)される構成を有する。
図11Bに示す離散時間アナログ回路410は、図8に示した離散時間アナログ回路200と同様の構成を有し、図11Bに示すTA411および容量412は、それぞれ、図8に示したTA210および容量220と同様である。
図11Bに示す電荷反転回路413の構成は、図4および図5Bに示した電荷反転回路130の構成と同様である。
また、図11Bに示すクロック生成回路420は、図4に示したクロック生成回路140と同様であり、図6に示したクロック(制御信号)と同様のクロック(制御信号)をN個の離散時間アナログ回路410−1〜410−Nに供給する。
多段離散時間アナログ回路400は、多段離散時間アナログ回路300におけるGNDへの接地がTA411の逆相の出力端子T_TAout2への接続に置き換えられた構成である。多段離散時間アナログ回路400は、実施の形態3で説明した多段離散時間アナログ回路300の動作と同様の動作を行う。また、多段離散時間アナログ回路400の伝達関数は、式(5)で示した多段離散時間アナログ回路300の伝達関数と同様であり、図10と同様の周波数特性を実現できる。さらに、多段離散時間アナログ回路400は、差動構成であるため、差動合成後に偶数次成分を除去できる。
[効果]
以上のように、本実施の形態によれば、差動型の離散時間アナログ回路を縦続に接続する構成によって、急峻なフィルタ特性を実現でき、さらに、差動合成後に、偶数次成分を除去することができる。
(実施の形態5)
次に、本開示の実施の形態5について説明する。本実施の形態は、実施の形態1で説明した離散時間アナログ回路100にスイッチを追加して、受信装置における広帯域なミクサとして使用する。
[受信装置の構成]
図12は、実施の形態5に係る受信装置30の構成を示すブロック図である。図12に示す受信装置30は、アンテナ31と、低雑音増幅器32と、参照周波数発振部33と、離散時間アナログ回路34と、A/D変換処理部35と、デジタル受信処理部36と、を有する。
受信装置30は、図3Bに示した受信装置20から受信ミクサ25およびLO周波数発振部24を削除した構成を有する。受信装置30の離散時間アナログ回路34は、受信装置20の離散時間アナログ回路26、受信ミクサ25、および、LO周波数発振部24の機能を有する。
受信装置30のアンテナ31、低雑音増幅器32、参照周波数発振部33、A/D変換処理部35、および、デジタル受信処理部36は、受信装置20のアンテナ21、低雑音増幅器22、参照周波数発振部23、A/D変換処理部27、および、デジタル受信処理部28と同様であるので、その説明を省略する。
離散時間アナログ回路34は、低雑音増幅器32から出力されたRF周波数のアナログ受信信号の周波数変換とフィルタリングを行う。
なお、図12に示す受信装置30は、ダイレクトコンバージョンの構成として説明した。本実施の形態に係る受信装置30は、ミクサを1つ以上追加し、中間周波数(IF:Intermediate Frequency)を用いる方式でもよい。離散時間アナログ回路34は、RF−IF間、IF−ベースバンド間、いずれのミクサとして用いても良い。複数のIFを使用する場合は、異なるIF間のミクサとして用いても良い。
[離散時間アナログ回路500の構成]
離散時間アナログ回路500の要部構成について説明する。
図13は、実施の形態5に係る離散時間アナログ回路500の構成の一例を示す図である。図13に示す離散時間アナログ回路500は、図12に示す受信装置30が有する離散時間アナログ回路34に相当し、RF周波数のアナログ信号を入力とし、RF周波数のアナログ受信信号の周波数変換処理及びフィルタリング処理を含む。
図13に示す離散時間アナログ回路500は、TA510と、容量520と、電荷反転回路530と、クロック生成回路540と、スイッチ550と、を有する。
離散時間アナログ回路500は、図4に示した離散時間アナログ回路100にスイッチ550が追加された構成を有する。また、クロック生成回路540は、クロック生成回路140に制御信号LOを供給する機能を追加した構成である。
TA510は、図4に示したTA110と同様であり、出力端子T_TAoutがスイッチ550の一端と接続される。
容量520は、図4に示した容量120と同様であり、スイッチ550を介してTA510の出力端子T_TAoutに接続する。
電荷反転回路530は、図4および図5Bに示した電荷反転回路130の構成と同様であり、スイッチ550を介してTA510の出力端子T_TAoutに接続する。
スイッチ550は、制御信号LOがハイ期間中はTA510、容量520および電荷反転回路530を接続し、制御信号LOがロー期間中は切断する。
クロック生成回路540は、参照周波数発振部33(図12参照)から出力された参照周波数信号fREF2からクロックS1〜S4(制御信号)を生成し、電荷反転回路530に供給する。また、クロック生成回路540は、参照周波数信号fREF2から、クロックLO(制御信号)を生成し、スイッチ550に供給する。なお、クロックS1〜S4用の参照周波数とクロックLO用の参照周波数は同じ周波数でもよいし、参照周波数発振部33から参照周波数信号fREF2とは分離して、異なる周波数を供給しても良い。
[クロック生成回路540によって生成される制御信号]
具体的に、クロック生成回路540において生成される制御信号について説明する。図14は、制御信号のタイミングチャートである。制御信号S1〜S4は、パルス幅Ts、周期TCKである。パルス幅Tsは、サンプル間隔と同一である。なお、図14では、矩形クロックを示しているが、電荷反転回路530は、波形がなまったクロックでも動作する。
図14に示すように、クロック生成回路540は、DUTY比(=パルス幅Ts/制御信号の周期TCK)が0.25であり、90度ずつ位相がずれた4相の制御信号S1、S2、S3、および、S4を、電荷反転回路530へ供給する。
また、クロック生成回路540は、周期Ts、DUTY比が0.5であり、180度位相がずれた2相の制御信号LO、LOBを供給する。具体的に、本実施の形態では、クロック生成回路540は、制御信号LOをスイッチ550へ供給する。制御信号LOBを使用する本実施の形態のバリエーションについては、後述にて説明する。
[離散時間アナログ回路500の動作]
離散時間アナログ回路500の動作について説明する。
離散時間アナログ回路500は、Ts間隔毎に電荷共有を繰り返し行い、サンプル値を生成する。具体的に、離散時間アナログ回路500は、次の3種類の電荷を電荷共有する。
(5−a)TA510が入力電圧信号Vinを電流に変換した電荷、つまり、TA510の出力端子T_TAoutからスイッチ550を介して出力される電荷(以下、入力電荷と記載)
(5−b)容量520が保持している1サンプル前の電荷
(5−c)電荷反転回路530が保持している2サンプル前の電荷
なお、3種類の電荷共有において、電荷反転回路530は、保持している2サンプル前の電荷の極性を反転させて接続する。電荷反転回路530の動作は、実施の形態1で説明した電荷反転回路130の動作と同様である。
離散時間アナログ回路500が離散時間アナログ回路100と異なる点は、制御信号LOが入力されるスイッチ550を有する点である。スイッチ550は、サンプル間隔Tsのうち、Ts/2の期間、オンになり、電流積分による入力電荷を生成する。スイッチ550によって、電流積分によるsinc関数のノッチがサンプリング周波数の整数倍m×fsから2m×fsに移動し、(2m’+1)×fs付近の周波数の信号が、DC付近に周波数変換される(mは0を除く整数、m’は整数)。ここで、基本波のミキシングは、fs付近の信号をDC付近に周波数変換することに相当する。
TA510が入力電圧信号V
inを電流に変換し、スイッチ550を介して出力するn時点の電荷(入力電荷)は、次式(7)で記述することができる。
ここで、ω
inは入力電圧信号の角周波数である。なお、式(7)の積分区間は、実施の形態1で説明した式(1)の積分区間と異なる。これは、スイッチ550がTs/2の期間、オンになり、電流積分による入力電荷を生成するためである。
また、離散時間アナログ回路500におけるn時点での電荷共有は、式(2)によって記述した差分方程式と同様である。
離散時間アナログ回路500の伝達関数の概略は、式(7)および式(2)から次式(8)のように記述できる。
ここで、H
I_MIX、H
H、z、U
1(ω)は、次式(9)で表わされる。
離散時間アナログ回路500の周波数特性について説明する。図15は、離散時間アナログ回路500の周波数特性の回路シミュレーションの結果を示す図である。図15は、サンプリング周波数fs=80GHz、基本波ミキシング(k=−1,1)における周波数特性の一例を示す。図15の横軸は、入力電圧信号Vinの周波数finを示し、縦軸はfin−fsへの変換利得を示す。
図15に示すように、離散時間アナログ回路500は、ゲイン−10dBに対して、20GHz以上の広帯域な通過特性を得ることができる。
[効果]
以上のように、本実施の形態によれば、図13に示した簡易な構成の離散時間アナログ回路500によって、RF周波数のアナログ信号をベースバンド信号に周波数変換することができ、図15に示すような20GHz以上の広帯域な通過特性を得ることができる。
なお、図13に示した離散時間アナログ回路500は、1つのスイッチ550をTA510の出力端子T_TAoutに設けるシングルエンド型ミクサの構成としたが、本実施の形態では、様々なバリエーションの構成が可能である。
[シングルバランス型ミクサの構成]
図16は、シングルバランス型ミクサを用いた離散時間アナログ回路600の構成の一例を示す図である。図16に示す離散時間アナログ回路600は、TA610と、容量620−1、620−2と、電荷反転回路630と、クロック生成回路640と、スイッチ650−1、650−2と、を有する。
図16に示す離散時間アナログ回路600は、TA610の出力端子T_TAoutから2つの出力端子T_Vout1、T_Vout2に分岐し、スイッチ650−1、650−2を出力端子T_Vout1、T_Vout2に並列に接続し、接地された容量620−1、620−2をスイッチ650−1、650−2と出力端子T_Vout1、T_Vout2の間に接続する。離散時間アナログ回路600は、スイッチ650−1、出力端子T_Vout1及び電荷反転回路630の端子Aを接続し、スイッチ650−2、出力端子T_Vout2及び電荷反転回路630の端子Bを接続する。
TA610は、図4に示したTA110と同様であり、容量620−1、620−2は、図4に示した容量120と同様である。また、電荷反転回路630は、図4および図5Bに示した電荷反転回路130と同様である。
スイッチ650−1は、図13に示したスイッチ550と同様に、制御信号LOがハイ期間中は、TA610の出力端子T_TAoutと、容量620及び電荷反転回路630とを接続し、制御信号LOがロー期間中は切断する。スイッチ650−2は、図14に示した制御信号LOBがハイ期間中は、TA610の出力端子T_TAoutと、容量620及び電荷反転回路630とを接続し、制御信号LOBがロー期間中は切断する。
クロック生成回路640は、クロック生成回路540と同様の構成を有し、図14にて説明した制御信号を供給する。クロック生成回路640は、制御信号S1、S2、S3、S4を、電荷反転回路630へ供給し、制御信号LOをスイッチ650−1へ供給し、制御信号LOBをスイッチ650−2へ供給する。
制御信号LO、LOBは、180度位相がずれた制御信号であるため、スイッチ650−1、650−2がオンとなる期間は、Ts間隔内において、それぞれTs/2である。
図16に示す離散時間アナログ回路600は、それぞれ180度位相がずれた制御信号LO、LOBに基づいて、スイッチ650−1、650−2がオンとオフを制御されることによって、シングルバランス型ミクサを構成する。
[ダブルバランス型ミクサの構成]
図17は、ダブルバランス型ミクサを用いた離散時間アナログ回路700の構成の一例を示す図である。図17に示す離散時間アナログ回路700は、TA710と、容量720−1、720−2と、電荷反転回路730と、クロック生成回路740と、スイッチ750−1〜750−4と、を有する。
図17に示す離散時間アナログ回路700は、実施の形態2で説明した差動構成の離散時間アナログ回路200と同様に、正相と逆相の2系統を有するRF周波数の入力電圧信号Vin1、Vin2を入力とする。
TA710は、正相入力電圧信号Vin1、逆相入力電圧信号Vin2を入力とし、入力電圧信号Vin1、Vin2を電流(gm×Vin)に変換し、正相電流正相Iout1、逆相の2系統の電流Iout2を出力する。
容量720−1、720−2は、図4に示した容量120と同様である。また、電荷反転回路630は、図4および5に示した電荷反転回路130と同様である。
スイッチ750−1、750−3の端子aは、TA710の正相の出力端子T_TAout1に並列に接続される。スイッチ750−2、750−4の端子aは、TA710の逆相の出力端子T_TAout2に並列に接続される。スイッチ750−1、750−4の端子bは、容量720−1及び電荷反転回路730の端子Aと接続する。スイッチ750−2、750−3の端子bは、容量720−2及び電荷反転回路730の端子Bと接続する。
スイッチ750−1は、制御信号LOがハイ期間中はTA710の正相の出力端子T_TAout1と、接地された容量720−1および電荷反転回路730の端子Aとを接続し、制御信号LOがロー期間中は切断する。スイッチ750−2は、制御信号LOがハイ期間中はTA710の逆相の出力端子T_TAout2と、接地された容量720−2及び電荷反転回路730の端子Bとを接続し、制御信号LOがロー期間中は切断する。
スイッチ750−3は、制御信号LOBがハイ期間中は、TA710の正相の出力端子T_TAout1と、接地された容量720−2及び電荷反転回路730の端子Bとを接続し、制御信号LOBがロー期間中は切断する。スイッチ750−4は、制御信号LOBがハイ期間中は、TA710の逆相の出力端子T_TAout2と、接地された容量720−1及び電荷反転回路730の端子Aとを接続し、制御信号LOBがロー期間中は切断する。
クロック生成回路740は、クロック生成回路540と同様の構成を有し、図14にて説明した制御信号を供給する。クロック生成回路740は、制御信号S1、S2、S3、S4を、電荷反転回路730へ供給し、制御信号LOをスイッチ750−1、750−2へ供給し、制御信号LOBをスイッチ750−3、750−4へ供給する。
図17に示す離散時間アナログ回路700は、制御信号LOがハイ期間中では、TA710の正相の出力端子T_TAout1が、容量720−1及び電荷反転回路730の端子Aと接続し、TA710の逆相の出力端子T_TAout2が、容量720−2及び電荷反転回路730の端子Bと接続する。そして、離散時間アナログ回路700は、制御信号LOBがハイ期間中では、TA710の逆相の出力端子T_TAout2が、容量720−1及び電荷反転回路730の端子Aと接続し、TA710の正相の出力端子T_TAout1が、容量720−2及び電荷反転回路730の端子Bと接続する。つまり、TA710の正相の出力端子T_TAout1と逆相の出力端子T_TAout2とが、Ts/2間隔毎に入れ替わる構成となる。
図17に示す離散時間アナログ回路700は、正相入力Vin1と逆相入力Vin2が、制御信号LO、LOBによって入れ替わる、ダブルバランス型ミクサを構成する。
なお、離散時間アナログ回路500のフィルタ特性の高次化は、図13の出力端子T_Voutと、図9Bの離散時間アナログ回路310の入力端子T_Vinとを縦続に接続し、多段の構成とすることで実現できる。離散時間アナログ回路600、700のフィルタ特性の高次化は、図16又は図17の出力端子T_Vout1、T_Vout2に、それぞれ、図11Bの離散時間アナログ回路410の入力端子T_Vin1、T_Vin2を縦続に接続し、多段の構成とすることで実現できる。
なお、離散時間アナログ回路500、600、700は、RF−IF、IF−IF(異なるIF間)、IF−BB(ベースバンド)のミクサとして動作することも可能である。したがって、離散時間アナログ回路500、600、700を多段に接続することで、IFを一つ以上使用するミクサを構成することも可能である。
また、離散時間アナログ回路500、600、700は、差動合成をしない場合、ベースバンド信号も通過する。このため、離散時間アナログ回路500、600、700は、ベースバンドフィルタとして使用できる。したがって、離散時間アナログ回路500、600、700は、図3Aの送信装置10、図3Bの受信装置20における離散時間アナログ回路15、26として動作可能である。
(実施の形態6)
次に、本開示の実施の形態6について説明する。本実施の形態は、実施の形態1において、電荷反転回路が有する容量の電位を出力としてモニタする構成である。
[離散時間アナログ回路800の構成]
図18は、実施の形態6に係る離散時間アナログ回路800の構成の一例を示す図である。図18に示す離散時間アナログ回路800は、TA810と、容量820と、電荷反転回路830と、クロック生成回路840と、を有する。
離散時間アナログ回路800は、図4に示した離散時間アナログ回路100と異なり、電荷反転回路830に含まれる容量の電圧を出力電圧信号Voutとして出力(モニタ)する。電荷反転回路830の構成については後述する。
図18に示すTA810および容量820は、それぞれ、図4に示したTA110および容量120と同様である。
また、図18に示すクロック生成回路840は、図4に示したクロック生成回路140と同様であり、図6に示したクロック(制御信号S1、S2、S3、S4)と同様のクロック(制御信号S1、S2、S3、S4)を離散時間アナログ回路800に供給する。
次に、電荷反転回路830の構成について説明する。図19Aは、実施の形態6に係る電荷反転回路830の構成の一例を示す図である。図19Bは、実施の形態6に係る電荷反転回路830の内部構成の一例を示す図である。図19Bに示す電荷反転回路830は、2個の容量831−1、831−2と、2個の容量831−1、831−2の接続を制御する12個のスイッチ832−1〜832−12を有する。
また、図19Aに示す電荷反転回路830は、端子A、端子B、および、端子Cを有する。図18に示す離散時間アナログ回路800において、電荷反転回路830の端子Aまたは端子Bのいずれか一方がTA810の出力端子T_TAoutに接続され、他方がGNDに接地される。以下では、電荷反転回路830の端子AがTA810の出力端子T_TAoutに接続され、電荷反転回路830の端子Bは接地し、電荷反転回路830の端子CはVoutを出力する構成を用いて説明する。
端子Cは、図18に示す離散時間アナログ回路800において、容量831−1、831−2の電圧を出力電圧信号Voutとして出力(モニタ)する端子である。
図19Bにおいて、容量831−1は、端子X1および端子Y1を有し、容量831−2は、端子X2および端子Y2を有する。容量831−1、831−2は、互いに並列に設けられる。容量831−1、831−2の容量値は、それぞれCH2である。
スイッチ832−1〜832−8は、それぞれ、図5Bに示したスイッチ132−1〜132−8と同様に、容量831−1、831−2の各端子と端子Aおよび端子Bの接続を制御する。
スイッチ832−9は、制御信号S1がハイ期間中は、容量831−2の端子Y2と端子Cを接続し、制御信号S1がロー期間中は切断する。スイッチ832−10は、制御信号S2がハイ期間中は容量831−1の端子X1と端子Cを接続し、制御信号S2がロー期間中は切断する。スイッチ832−11は、制御信号S3がハイ期間中は容量831−2の端子X2と端子Cを接続し、制御信号S3がロー期間中は切断する。スイッチ832−12は、制御信号S4がハイ期間中は容量831−1の端子Y1と端子Cを接続し、制御信号S4がロー期間中は切断する。
[離散時間アナログ回路800の動作]
離散時間アナログ回路800の動作について説明する。基本的な動作は、実施の形態1で説明した離散時間アナログ回路100の動作に、容量831−1、831−2の電圧を出力電圧信号Voutとして出力(モニタ)する動作が追加される。
離散時間アナログ回路800は、Ts間隔で電荷共有を繰り返し行い、サンプル値を生成する。離散時間アナログ回路800は、次の3種類の電荷を電荷共有する。
(6−a)TA810が入力電圧信号Vinを電流に変換した電荷、つまり、TA810の出力端子T_TAoutから出力される電荷(以下、入力電荷と記載)
(6−b)容量820が保持している1サンプル前の電荷
(6−c)電荷反転回路830が保持している2サンプル前の電荷
なお、3種類の電荷共有において、電荷反転回路830は、保持している2サンプル前の電荷の極性を反転させて接続する。
電荷反転回路830は、図6に示した制御信号S1〜S4に基づくスイッチ832−1〜832−12のオンとオフによって、次の動作を1周期(1TCK)中に行い、周期TCK毎に繰り返す。
(6−1)制御信号S1がハイ期間中は、容量831−1の端子X1が端子Aに接続され、端子Y1が端子Bに接続される。また、容量831−2の端子Y2が端子Cに接続される。
(6−2)制御信号S2がハイ期間中は、容量831−2の端子X2が端子Aに接続され、端子Y2が端子Bに接続される。また、容量831−1の端子X1が端子Cに接続される。
(6−3)制御信号S3がハイ期間中は、容量831−1の端子Y1が端子Aに接続され、端子X1が端子Bに接続される。また、容量831−2の端子X2が端子Cに接続される。
(6−4)制御信号S4がハイ期間中は、容量831−2の端子Y2が端子Aに接続され、端子X2が端子Bに接続される。また、容量831−1の端子Y1が端子Cに接続される。
上記(6−1)〜(6−4)の動作によって、容量831−1が、保持している電荷の極性を反転させて接続し、容量831−2の接続が開放されて電荷を保持する動作と、電荷を保持している容量の電位をモニタできるよう出力に接続する動作と、容量831−2が保持している電荷の極性を反転させて接続し、容量831−1の接続が開放されて電荷を保持する動作が、Ts期間毎に交互に繰り返される。モニタの方法としては、保持している電荷の移動を最小限に抑制したVCVS(Voltage-Controlled Voltage Source)のようにバッファ又はアンプを接続してモニタする。
離散時間アナログ回路800の伝達関数は、概略、次式(10)により表わされる。伝達関数において、周波数変換をしないベースバンドのフィルタ特性はk=0に相当する。
ここで、H
I、H
H、z及びU
1(ω)は、次式(11)により表わされる。
離散時間アナログ回路800は、実施の形態1の離散時間アナログ回路100と異なる点は、スイッチ832−9〜832−12を含み、上記(6−1)〜(6−4)において、電荷をTs期間保持する間に容量831−1、831−2の電位をモニタすることである。
つまり、離散時間アナログ回路800は、2個の容量831−1、831−2のいずれか一方が電荷共有された電荷をTs期間保持する間に、電荷共有された電荷をモニタするために、端子Cとの接続がTs間隔毎に切り替わる。
例えば、容量831−1は、制御信号S1のハイ期間中に、容量831−1の端子X1が端子Aに接続され、端子Y1が端子Bに接続されて電荷共有が行われ、その後、制御信号S2のハイ期間中に、電荷を保持する。離散時間アナログ回路800は、制御信号S2のハイ期間中に、容量831−1の端子X1が端子Cに接続され、容量831−1が保持している電荷をモニタする。
[効果]
実施の形態1のように、容量120および電荷反転回路130が接続するTA110の出力端子T_TAoutにおいて出力電圧信号Voutをモニタする方が簡易な構成となる。一方、本実施の形態のように容量831−1、831−2の電位をモニタすると、0次ホールドによって高周波での減衰を大きくすることができる。
上記で説明した本実施の形態は、実施の形態1における電荷反転回路が有する容量の電位を、出力としてモニタする構成として説明したが、本実施の形態は、他の実施の形態に対しても適用できる。
まず、本実施の形態を実施の形態2で説明した差動構成に適用する場合について説明する。図20は、実施の形態6に係る離散時間アナログ回路900の構成の別の一例を示す図である。図20に示す離散時間アナログ回路900は、TA910と、容量920と、電荷反転回路930と、クロック生成回路940と、を有する。
TA910、容量920、および、クロック生成回路940は、それぞれ、図8に示したTA210、容量220、および、クロック生成回路240と同様である。
次に、電荷反転回路930の構成について説明する。図21Aは、実施の形態6に係る電荷反転回路930の構成の別の一例を示す図である。図21Bは、実施の形態6に係る電荷反転回路930の内部構成の別の一例を示す図である。図21Bに示す電荷反転回路930は、2個の容量931−1、931−2と、2個の容量931−1、931−2の接続を制御する16個のスイッチ932−1〜932−16を有する。
また、図21Aに示す電荷反転回路930は、端子A、端子B、端子Cpおよび端子Cnを有する。図20に示す離散時間アナログ回路900において、電荷反転回路930の端子Aは、TA910の正相の出力端子T_TAout1に接続され、端子Bは、TA910の逆相の出力端子T_TAout2に接続される。
そして、端子Cpおよび端子Cnは、図20に示す離散時間アナログ回路900において、容量931−1、931−2の電圧を出力電圧信号Voutとして出力(モニタ)する端子である。
電荷反転回路930が有する容量931−1、931−2と、スイッチ932−1〜932−8の動作は、実施の形態1で説明した電荷反転回路130の動作と同様であるので、説明は省略する。
実施の形態2の差動型の離散時間アナログ回路200と異なる点は、スイッチ932−9〜932−16を含み、電荷をTs期間保持する間に容量931−1、931−2の電位を差動出力としてモニタすることである。
本実施の形態を、実施の形態5で説明したシングルエンド型ミクサに適用する場合について説明する。図22は、実施の形態6に係る離散時間アナログ回路1000の構成の別の一例を示す図である。
図22に示すTA1010、容量1020、クロック生成回路1040、および、スイッチ1050は、それぞれ、図13に示したTA510、容量520、クロック生成回路540、および、スイッチ550と同様である。また、電荷反転回路1030は、図19Bに示した電荷反転回路830と同様である。
図22に示す構成を用いることによって、実施の形態5で説明したシングルエンド型ミクサの離散時間アナログ回路において、電荷反転回路が電荷をTs期間保持する間に、電荷反転回路が有する容量の電位をモニタできる。
本実施の形態を、実施の形態5で説明したシングルバランス型ミクサに適用する場合について説明する。図23は、実施の形態6に係る離散時間アナログ回路1100の構成の別の一例を示す図である。
図23に示すTA1110、容量1120−1、1120−2、クロック生成回路1140、および、スイッチ1150−1、1150−2は、それぞれ、図16に示したTA610、容量620−1、620−2、クロック生成回路640、および、スイッチ650−1、650−2と同様である。また、電荷反転回路1130は、図21Bに示した電荷反転回路930と同様である。
図23に示す構成を用いることによって、実施の形態5で説明したシングルバランス型ミクサの離散時間アナログ回路において、電荷反転回路が電荷をTs期間保持する間に、電荷反転回路が有する容量の電位を差動出力としてモニタできる。
本実施の形態を実施の形態5で説明したダブルバランス型ミクサに適用する場合について説明する。図24は、実施の形態6に係る離散時間アナログ回路1200の構成の別の一例を示す図である。
図24に示すTA1210、容量1220−1、1220−2、クロック生成回路1240、および、スイッチ1250−1〜1250−4は、それぞれ、図17に示したTA710、容量720−1、720−2、クロック生成回路740、および、スイッチ750−1〜750−4と同様である。また、電荷反転回路1230は、図21Bに示した電荷反転回路930と同様である。
図24に示す構成を用いることによって、実施の形態5で説明したダブルバランス型ミクサの離散時間アナログ回路において、電荷反転回路が電荷をTs期間保持する間に、電荷反転回路が有する容量の電位を差動出力としてモニタできる。
(実施の形態7)
実施の形態1では、図4および図5Bに示した電荷反転回路130の容量131−1、130−2が、それぞれ、電荷共有された電荷をTs期間保持する構成について説明した。本実施の形態では、電荷反転回路の容量が、電荷共有された電荷をTs期間より長く保持するための構成について説明する。
[離散時間アナログ回路1300の構成]
図25は、実施の形態7に係る離散時間アナログ回路1300の構成の一例を示す図である。図25に示す離散時間アナログ回路1300は、TA1310と、容量1320と、電荷反転回路1330と、クロック生成回路1340と、を有する。
図25に示すTA1310および容量1320は、それぞれ、図4に示したTA110および容量120と同様である。
電荷反転回路1330は、端子AがTA1310の出力端子T_TAoutに接続され、の端子BがGNDに接地される。電荷反転回路1330は、電荷を保持し、電荷を反転して接続するための回路である。電荷反転回路1330は、クロック生成回路1340から供給される制御信号S1〜S6に基づいて電荷共有を行い、入力されるアナログ信号Vinに対するフィルタリング処理を行う。電荷反転回路1330の構成については、後述する。
クロック生成回路1340は、参照周波数発振部(図3Aおよび図3B参照)で生成された参照周波数信号(fREF1またはfREF2)から、クロック(制御信号S1〜S6)を生成し、電荷反転回路1330に供給する。クロック生成回路1340によって生成される制御信号S1〜S6については後述する。
電荷反転回路1330の構成について説明する。図26Aは、実施の形態7に係る電荷反転回路1330の構成の一例を示す図である。図26Bは、実施の形態7に係る電荷反転回路1330の内部構成の一例を示す図である。図26Bに示す電荷反転回路1330は、3個の容量1331−1〜1331−3と、3個の容量1331−1〜1331−3の接続を制御する12個のスイッチ1332−1〜1332−12を有する。
また、図26Aに示す電荷反転回路1330は、端子Aおよび端子Bを有する。図25に示す離散時間アナログ回路1300において、電荷反転回路1330の端子Aまたは端子Bのいずれか一方がTA1310の出力端子T_TAoutに接続され、他方がGNDに接地される。以下では、電荷反転回路1330の端子AがTA1310の出力端子T_TAoutに接続され、端子Bが接地される構成について説明する。
容量1331−1は、端子X1、Y1を有し、容量1331−2は、端子X2、Y2を有し、容量1331−3は、端子X3、Y3を有する。容量1331−1〜1331−3は、互いに並列に設けられる。容量1331−1〜1331−3の容量値は、それぞれCH2である。
スイッチ1332−1、1332−2は、制御信号S1により、端子X1、Y1と、端子A、Bとの接続を制御する。スイッチ1332−3、1332−4は、制御信号S2により、端子X2、Y2と、端子A、Bとの接続を制御する。スイッチ1332−5、1332−6は、制御信号S3により、端子X3、Y3と、端子A、Bとの接続を制御する。スイッチ1332−7、1332−8は、制御信号S4により、端子X1、Y1と、端子A、Bとの接続を制御する。スイッチ1332−9、1332−10は、制御信号S5により、端子X2、Y2と、端子A、Bとの接続を制御する。スイッチ1332−11、1332−12は、制御信号S6により、端子X3、Y3と、端子A、Bとの接続を制御する。
スイッチ1332−1〜1332−12は、供給される制御信号がハイ期間中においてオンする。なお、スイッチ1332−1〜1332−12の動作については後述する。
クロック生成回路1340によって生成される制御信号について説明する。図27は、制御信号のタイミングチャートである。制御信号は、パルス幅Ts、周期TCKである。パルス幅Tsは、サンプル間隔と同一である。図27では、矩形クロックを示しているが、電荷反転回路1330は、波形がなまったクロックでも動作する。
図27に示すように、クロック生成回路1340は、DUTY比(=パルス幅Ts/制御信号の周期TCK)が1/6であり、60度ずつ位相がずれた6相の制御信号S1〜S6を、電荷反転回路1330へ供給する。
[離散時間アナログ回路1300の動作]
次に、離散時間アナログ回路1300の動作について説明する。
離散時間アナログ回路1300は、Ts間隔で電荷共有を繰り返し行い、サンプル値を生成する。具体的に、離散時間アナログ回路1300は、次の3種類の電荷を電荷共有する。
(7−a)TA1310が入力電圧信号Vinを電流に変換した電荷、つまり、TA1310の出力端子T_TAoutから出力される電荷(以下、入力電荷と記載)
(7−b)容量1320が保持している1サンプル前の電荷
(7−c)電荷反転回路1330が保持している3サンプル前の電荷
なお、(7−a)〜(7−c)の電荷共有において、電荷反転回路1330は、保持している3サンプル前の電荷の極性を反転させて接続する。
電荷反転回路1330は、制御信号S1〜S6に基づくスイッチ1332−1〜1332−12のオンとオフによって、次の動作を1周期(1TCK)中に行い、周期TCK毎に繰り返す。
(7−1)制御信号S1がハイ期間中は、容量1331−1の端子X1が端子Aに接続され、端子Y1が端子Bに接続される。
(7−2)制御信号S2がハイ期間中は、容量1331−2の端子X2が端子Aに接続され、端子Y2が端子Bに接続される。
(7−3)制御信号S3がハイ期間中は、容量1331−3の端子X3が端子Aに接続され、端子Y3が端子Bに接続される。
(7−4)制御信号S4がハイ期間中は、容量1331−1の端子Y1が端子Aに接続され、端子X1が端子Bに接続される。
(7−5)制御信号S5がハイ期間中は、容量1331−2の端子Y2が端子Aに接続され、端子X2が端子Bに接続される。
(7−6)制御信号S6がハイ期間中は、容量1331−3の端子Y3が端子Aに接続され、端子X3が端子Bに接続される。
実施の形態1で説明した2個の容量を有する場合と同様に、上記(7−1)〜(7−6)の動作によって、容量1331−1が、保持している電荷の極性を反転させて接続し、容量1331−2、1331−3の接続が開放されて電荷を保持する動作と、容量1331−2が保持している電荷の極性を反転させて接続し、容量1331−1、1331−3の接続が開放されて電荷を保持する動作と、容量1331−3が保持している電荷の極性を反転させて接続し、容量1331−1、1331−2の接続が開放されて電荷を保持する動作とが、Ts期間毎に周期的に繰り返される。
つまり、図26Bの容量1331−1は、制御信号S1がハイ期間中に共有した電荷を、制御信号S2、S3がハイ期間中である2Ts期間において電荷を保持し、制御信号S4がハイ期間中に、反転して電荷共有し、制御信号S5、S6がハイ期間中である2Ts期間において反転した電荷を保持する。
ここで、上記動作について数学的に説明する。
TA1310が入力電圧信号Vinを電流に変換したn時点の電荷(入力電荷)は、式(1)と同様である。
また、離散時間アナログ回路1300におけるn時点での電荷共有の概略は、次式(12)の差分方程式で記述することができる。
式(12)において、左辺第1項は入力電荷に相当し、第2項は容量1320に保持された1サンプル前の電荷であり、左辺第3項は、容量1331−1〜1331−3に保持された3サンプル前の電荷である。離散時間アナログ回路1300では、v
out(n)がDUTY比1により保持される。離散時間アナログ回路1300の伝達関数のIIR(Infinite Impulse Response)の部分(式(3)、式(4)のH
Hに相当)は、z変換することにより、次式(13)により表わされる。
以上のように、本実施の形態によれば、電荷反転回路1330の容量1331−1〜1331−3が、電荷共有された電荷を2Ts期間保持する動作を行うことによって、離散時間アナログ回路1300の伝達関数のIIRの部分の分母に3次式を持つ高次の伝達関数を実現することができる。
(実施の形態8)
なお、上記で説明した各実施の形態では、電荷反転回路が電荷を保持する期間を長くすることによって、離散時間アナログ回路の伝達関数のIIRの部分の分母(以下、IIR関数と記載)に対して、より高次の伝達関数を実現できる。また、上記で説明した各実施の形態では、電荷反転回路の構成を変更することによって、IIR関数の各項の係数の正負を変更することができる。また、上記で説明した各実施の形態では、電荷反転回路の数を変更することによって、IIR関数の項数を変更することができる。以下では、これらのバリエーションの一例について説明する。
[離散時間アナログ回路1400の構成]
図28Aは、実施の形態8に係る容量1420を有する離散時間アナログ回路1400の構成の一例を示す図である。図28Bは、実施の形態8に係る容量1420を省略した離散時間アナログ回路1400の構成の一例を示す図である。
図28Aに示す構成では、離散時間アナログ回路1400は、容量1420を有するため、例えば、式(4)のように、IIR関数は、容量1420に起因する係数がマイナスの1次の項を有する。一方、図28Bに示す構成では、離散時間アナログ回路1400は、容量1420を有さないため、IIR関数は、L個の電荷回路1430によって1次の項も正負の係数を選択できる。
図28Aに示す離散時間アナログ回路1400は、TA1410と、容量1420と、L個の電荷回路1430(電荷回路1430−1〜1430−L)と、クロック生成回路1440と、を有する。
図28Aに示すTA1410および容量1420は、それぞれ、図4に示したTA110および容量120と同様である。電荷回路1430は、補正したい周波数特性に応じて、電荷保持接続回路または電荷反転回路のいずれかとして動作してもよいし、電荷保持接続回路及び電荷反転回路が混在して動作してもよい。
L個の電荷回路1430−1〜1430−Lは、それぞれ、端子A−1〜A−LがTA1410の出力端子T_TAoutに接続され、端子B−1〜B−LがGNDに接地される。L個の電荷回路1430−1〜1430−Lは、図31Bに示す電荷保持接続回路または図29Bに示す電荷反転回路の構成であり、電荷を保持してから電荷の極性を反転させずに接続する動作、又は、電荷を保持してから電荷の極性を反転して接続する動作、を行う回路である。電荷回路1430−1〜1430−Lが有する容量の個数(電荷を保持する期間)は、それぞれ異なっていてもよい。電荷回路1430−1〜1430−L内の容量の値も、それぞれ異なっていてもよい。
クロック生成回路1440は、参照周波数発振部(図3Aおよび図3B参照)で生成された参照周波数信号(fREF1またはfREF2)から、クロック(制御信号)を生成し、電荷回路1430−1〜1430−Lに供給する。クロック生成回路1440によって生成される制御信号については後述する。
ここで、電荷回路1430を、容量M個の電荷反転回路1430Aとして使用する構成について説明する。図29Aは、実施の形態8に係る電荷反転回路1430Aの構成の一例を示す図である。図29Bは、実施の形態8に係る電荷反転回路1430Bの内部構成の一例を示す図である。図29Bに示す電荷反転回路1430Aは、M個の容量1431−1〜1431−Mと、M個の容量1431−1〜1431−Mの接続を制御する4M個のスイッチ1432−1〜1432−4Mを有する。
電荷反転回路1430Aの構成は、実施の形態1で説明した2個の容量を有する電荷反転回路130の構成、および、実施の形態7で説明した3個の容量を有する電荷反転回路1330の構成を拡張した構成であるので、詳細な説明は省略する。
図29Bに示す電荷反転回路1430Aの構成に対するクロック生成回路1440によって生成される制御信号について説明する。図30は、図29Bに示す電荷反転回路1430Aに対する制御信号のタイミングチャートである。制御信号は、パルス幅Ts、周期TCKである。パルス幅Tsは、サンプル間隔と同一である。図30では、矩形クロックを示しているが、電荷反転回路1430Aは、波形がなまっていても動作する。
図30に示すように、クロック生成回路1440は、図29Bに示す電荷反転回路1430Aに対して、DUTY比(=パルス幅Ts/制御信号の周期TCK)が1/2Mであり、(360/2M)度ずつ位相がずれた2M相の制御信号S1〜S2Mを、電荷反転回路1430Aへ供給する。
電荷反転回路1430Aの動作は、実施の形態1で説明した2個の容量を有する電荷反転回路130の動作、および、実施の形態7で説明した3個の容量を有する電荷反転回路1330の動作と同様の動作であるので、詳細な説明は省略する。
電荷反転回路1430Aが有するM個の容量は、電荷共有された電荷を(M−1)Ts期間保持する動作と、保持された電荷の極性を反転させて外部に接続する動作とを交互に繰り返す。
つまり、電荷反転回路1430Aは、離散時間アナログ回路1400の電荷共有において、保持しているMサンプル前の電荷の極性を反転させて接続する。
図29Bに示す電荷反転回路1430Aを図28A、図28Bに示す電荷反転回路1430−1〜1430−Lのいずれかとして接続することによって、図28A、図28Bに示す離散時間アナログ回路1400のIIR関数は、正の係数のM次の項を有する。
なお、図28A、図28Bに示す電荷回路1430−1〜1430−Lは、図31Bに示す電荷保持接続回路1430Bの構成を用いることによって、IIR関数に負の係数のM次の項を構成できる。
図31Aは、実施の形態8に係る電荷保持接続回路1430Bの構成の一例を示す図である。図31Bは、実施の形態8に係る電荷保持接続回路1430Bの内部構成の一例を示す図である。図31Bに示す電荷保持接続回路1430Bは、端子Aおよび端子Bと、M個の容量1431−1〜1431−Mと、M個の容量1431−1〜1431−Mの接続を制御する2M個のスイッチ1432−1〜1432−2Mを有する。
図31Bに示す電荷反転回路1430Bの構成および動作について、容量1431−1を例にとって説明する。
容量1431−1は、端子X1、端子Y1を有し、スイッチ1432−1、1432−2と接続する。スイッチ1432−1は、制御信号S1のハイ期間中において、端子X1と端子Aを接続し、制御信号S1のロー期間中において、切断する。スイッチ1432−2は、制御信号S1のハイ期間中において、端子Y1と端子Bを接続し、制御信号S1のロー期間中において、切断する。
容量1432−2〜1432−Mについても、容量1431−1と同様である。ただし、それぞれの容量の接続は、位相が(360/M)度ずつずれた制御信号によって制御される。
図32は、図31Bに示す電荷保持接続回路1430Bに対する制御信号のタイミングチャートである。制御信号は、パルス幅Ts、周期TCKである。パルス幅Tsは、サンプル間隔と同一である。図32では、矩形クロックを示しているが、電荷保持接続回路1430Bは、波形がなまっていても動作する。
図32に示すように、クロック生成回路1440は、図31Bに示す電荷保持接続回路1430Bに対して、DUTY比(=パルス幅Ts/制御信号の周期TCK)が1/Mであり、(360/M)度ずつ位相がずれたM相の制御信号S1〜SMを、電荷反転回路1430Bへ供給する。
図31Bに示す電荷保持接続回路1430Bが有するM個の容量は、図32に示す制御信号により、電荷共有された電荷を(M−1)Ts期間保持する動作と、保持された電荷を同相により、外部に接続する動作とを交互に繰り返す。
つまり、図31Bに示す電荷保持接続回路1430Bは、離散時間アナログ回路1400の電荷共有において、保持しているMサンプル前の電荷を同相により接続する。
図31Bに示す電荷保持接続回路1430Bを図28A、図28Bに示す電荷回路1430−1〜1430−Lのいずれかとして接続することによって、図28A、図28Bに示す離散時間アナログ回路1400のIIRは、負の係数のM次の項を有する。
なお、容量1420は、M=1である電荷保持接続回路1430Bと等価である。
図29Bに示す電荷反転回路1430Aと図31Bに示す電荷保持接続回路1430Bのいずれかを、図28A、図28Bに示す電荷回路1430−1〜1430−Lとして接続することによって、図28A、図28Bに示す離散時間アナログ回路1400のIIRの項の数、係数の符号、および、次数を次式(14)のように自由に設計できる。なお、M、M’は任意の整数である。
つまり、図29Bに示す電荷反転回路1430Aと図31Bに示す電荷保持接続回路1430Bを、それぞれの次数を変更して複数組み合わせることによって、実現できるフィルタ特性の自由度を高めることができる。
なお、上記で説明した各実施の形態は、適宜組み合わせてもよい。例えば、実施の形態8で説明した、任意の伝達関数を実現できる離散時間アナログ回路を、実施の形態2で説明した差動構成にしてもよい。あるいは、実施の形態8で説明した、任意の伝達関数を実現できる離散時間アナログ回路を、実施の形態3で説明した多段構成にしてもよい。また、実施の形態8で説明した、任意の伝達関数を実現できる離散時間アナログ回路に、スイッチを追加して、受信装置における広帯域なミクサとして使用してもよい。
また、上記で説明した各実施の形態では、容量120が容量値CH1、電荷反転回路が有する容量の全てが、容量値CH2であるとして説明したが、各容量の容量値は変更してもよい。各容量の容量値が変更されることにより、離散時間アナログ回路の伝達関数は、所望の伝達関数にすることができる。
また、離散時間アナログ回路をミクサとして使用する場合のスイッチ(例えば、図13のスイッチ550)、離散時間アナログ回路をベースバンドフィルタとして用いる場合に必要となるミクサ、又は、IF周波数を使う場合に追加で必要となるミクサは、パッシブミクサとして構成できる。パッシブミクサは、スイッチのバイアス電位によって、線形性が変化する。パッシブミクサは、高い線形性を得るためには、ミクサのバイアス電位を適切に設定する必要がある。
図33Aは、バイアス供給方法を用いたシングルエンドミクサの第1構成の例を示す。図33Bは、バイアス供給方法を用いたシングルエンドミクサの第2構成の例を示す。図33Cは、バイアス供給方法を用いたシングルエンドミクサの第3構成の例を示す。
図33A〜図33Cに示す構成では、入力端子IN、出力端子OUTをソースまたはドレインに接続している。また、図33Aは、スイッチ(トランジスタ)のゲートにバイアス電位V1、ソースまたはドレインにバイアス電位V2を供給する構成である。図33Bは、スイッチ(トランジスタ)のゲートにバイアス電位V1、ソースまたはドレインにバイアス電位V2を供給する構成である。図33Cは、スイッチ(トランジスタ)のゲートにバイアス電位V1、ソースまたはドレインにバイアス電位V2、ソースまたはドレインにバイアス電位V3を供給する構成である。
パッシブミクサは、ミクサ(MOSスイッチ)のバイアス電位を、接続される他の回路に依存せずに決めるためには、ハイパスフィルタ(HPF)によってDC電位をカットして、設定したいバイアス電位を供給する。バイアス電位の基本的な供給方法は、図33A、図33Bでもよく、又は、図33C(V2=V3)でもよい。
パッシブミクサは、スイッチ(トランジスタ)がオン状態の場合に、トランジスタのドレインとソースの電位は同じになるため、図33A、図33Bのように、ドレインかソースのどちらかにDC電位を供給すればよい。ただし、パッシブミクサのゲインは、スイッチのオン抵抗に依存するため、図33CにおいてV2≠V3とすることで、ドレイン−ソース間に電位差を与えて電流を流す構成も有効である。
パッシブミクサは、バイアスの制御によってゲイン、リニアリティ、整合の調整が可能であるため、回路(例えば、無線装置、LPF又はミクサ)の動作状況に応じて、バイアス電位を適切に調整してもよい。なお、パッシブミクサは、入力端子INをソース、出力端子OUTをドレインとしても、入力端子をドレイン、出力端子をソースとしても良い。
図34Aは、バイアス供給方法を用いた高周波回路用シングルエンドミクサの第1構成の例を示す図であり、図34Bは、バイアス供給方法を用いた高周波回路用シングルエンドミクサの第2構成の例を示す図であり、図34Cは、バイアス供給方法を用いた高周波回路用シングルエンドミクサの第3構成の例を示す図である。
図34Aは、図33Aのスイッチ(トランジスタ)を高周波回路に適用するための構成であり、図34Bは、図33Bのスイッチ(トランジスタ)を高周波回路に適用するための構成であり、図34Cは、図33Cのスイッチ(トランジスタ)を高周波回路に適用するための構成である。図33A〜図33Cを高周波回路に適用する場合、図34A〜図34Cに示すように、バイアス電位を供給するラインは所定のインピーダンスを有する伝送線路3401として考慮する必要がある。
スイッチにバイアス電位を供給する伝送線路3401(インダクタとしてもよい)は、整合回路に利用することが可能である。図34A、図34B、図34Cは、伝送線路3401の終端にデカップリング容量3402を接続することで、ショートスタブとして機能する。
図35Aは、バイアス供給方法を用いたシングルバランスミクサの第1構成の一例を示す図であり、図35Bは、バイアス供給方法を用いたシングルバランスミクサの第2構成の一例を示す図であり、図35Cは、バイアス供給方法を用いたシングルバランスミクサの第3構成の一例を示す図である。
図35A、図35B、図35Cは、図34A、図34B、図34Cと同様に伝送線路3401を含んでいるが、伝送線路3401とデカップリング容量3402は、省略することができる。図35A、図35B、図35Cにおけるシングルバランスミクサは、図34A、図34B、図34Cにおけるシングルエンドミクサと同様に、ミクサ(MOSスイッチ)のドレイン−ソース間のDC電位は同じ電位にバイアスするが、ドレイン−ソース間に電位差を設けて設計してもよい。
図36Aは、バランを用いたシングルバランスミクサの第1構成を示す図であり、図36Bは、バランを用いたシングルバランスミクサの第2構成を示す図であり、図36Cは、バランを用いたシングルバランスミクサの第3構成を示す図であり、図36Dは、デカップリング容量3402と抵抗3403を用いたバイアス供給方法を示す図である。
図36A、図36B、図36Cは、シングルバランスミクサの出力端子にバランを追加してシングル出力する。図36Dのデカップリング容量3402と抵抗3403を接続してバイアスを供給する。
図36A、図36B、図36Cの構成は、バランも整合回路に使用できる。バイアス電位は、バランの入力側の中点から供給できる。なお、図36A、図36B、図36Cにおけるシングルバランスミクサは、出力端子をトランスとすることで、差動出力することもできる。図36A、図36B、図36Cにおける伝送線路3401とバランの中点の後段は、図36Dのデカップリング容量3402と抵抗3403を接続してバイアスを供給する。
図36A、図36B、図36Cにおけるシングルバランスミクサは、図34A、図34B、図34Cのシングルエンドミクサと同様に、ミクサ(MOSスイッチ)のドレイン−ソース間のDC電位は同じ電位にバイアスするが、ドレイン−ソース間に電位差を設けて設計してもよい。
図37Aは、伝送線路3401によりバイアスを供給するダブルバランスミクサの構成であり、図37Bは、バランを介してバイアスを供給するダブルバランスミクサの構成を示す。
ダブルバランスミクサは、入力端子、ローカル端子LO、出力端子を伝送線路またはバランまたはトランスのいずれを用いて構成してもよい。
図37A、図37Bのダブルバランスミクサは、バランも整合回路に使用できる。バイアスは、バランの入力側の中点から供給できる。図37A、図37Bにおける伝送線路とバランの中点の後段には、図36Dのデカップリング容量3402と抵抗3403とを接続して、バイアスを供給してもよい。図37A、図37Bのダブルバランスミクサは、図34A、図34B、図34Cのシングルエンドミクサと同様に、ミクサ(MOSスイッチ)のドレイン−ソース間のDC電位は同じ電位にバイアスするが、ドレイン−ソース間に電位差を設けて設計してもよい。
図34A〜図37Bにおいて、整合調整は、入力端子、ローカル端子LO、LOB、出力端子のいずれかでも良い。
また、各実施の形態で説明した離散時間アナログ回路において、ミキシング以外の電荷共有に使われるスイッチ(例えば、図5Bのスイッチ132−1〜132−8)は、適切なバイアスが供給されることによって、線形性が改善される。なお、バイアス供給方法は、図33A〜図37Bにおけるミクサ(MOSスイッチ)へのバイアス供給方法が流用できる。
(実施の形態9)
本実施の形態では、電圧電流変換回路(TA)の出力抵抗が低下した場合に、通過域のリプルが低下し、阻止域減衰量が低下することを抑制する離散時間アナログ回路の構成について説明する。
図38は、離散時間アナログ回路100の構成における接続状態の一例を示す図である。図38は、図4に示した離散時間アナログ回路100において、図5Bに示した電荷反転回路130の2個の容量のうち、1個の容量が接続している状態を示している。また、図4とは異なり、電圧電流変換回路(TA)110の出力抵抗が示されている。電圧電流変換回路(TA)110の出力抵抗が小さく、容量の電荷が小さい場合、TA110の出力抵抗Roと容量CH1と容量CH2による時定数が小さくなる。時定数が小さいと図6のTs期間内に、容量CH1と容量CH2に蓄積されていた電荷が漏れてしまうため、周波数特性が劣化する。
微細CMOSプロセスでは、低電源電圧においてアナログ回路を設計する必要があるため、カスコード構成のトランジスタを用いることは困難であり、高い出力抵抗を有する増幅器(例えば、電圧電流変換回路)を設計することが難しい。
図39Aは、TAの出力抵抗Roを考慮した離散時間アナログ回路100の低域通過特性の回路シミュレーションの結果を示す図であり、図39Bは、TAの出力抵抗Roを考慮した離散時間アナログ回路100の低域通過特性の回路シミュレーションの結果を最大利得で規格化した利得を示す図である。
図39Aにおいて、横軸は周波数を示し、縦軸は利得を示す。出力抵抗Ro=100Ωでの特性は、出力抵抗Ro=10kΩと出力抵抗Ro=1kΩの特性に比べて利得が小さい。つまり、TAは、出力抵抗が小さくなることによって、利得が低下する。
図39Bにおいて、横軸は周波数を示し、縦軸は最大利得で規格化した利得を示す。出力抵抗Ro=100Ωでの特性は、出力抵抗Ro=10kΩと出力抵抗Ro=1kΩの特性に比べて阻止域減衰量が小さい。TAは、出力抵抗が小さくなることによって、帯域内のリプル量が低下し、同じ通過帯域幅において阻止域の減衰量が低下する。
図40に理想電圧源と理想電圧源の等価回路を示す。理想電流源の出力抵抗Roは理想電圧源出力の直列抵抗Roに相当する。つまり、電圧電流変換回路(TA)の出力に、新たな抵抗を直列に接続することで、電圧電流変換回路(TA)の出力抵抗と新たに追加した抵抗の直列抵抗値を、電圧電流変換回路(TA)の出力抵抗とみなすことができる。これによって、電源電圧が低いままで電圧電流変換回路(TA)の出力抵抗を増加させることが可能となる。
図41は、実施の形態9に係る離散時間アナログ回路1500の要部構成の一例を示す図である。図41に示す離散時間アナログ回路1500は、図3Aに示した送信装置10が有する離散時間アナログ回路15、および、図3Bに示した受信装置20が有する離散時間アナログ回路26に相当し、例えば、フィルタリングの処理を行う。
図41に示す離散時間アナログ回路1500は、TA(Transconductance Amplifier:トランスコンダクタンスアンプ:電圧電流変換回路)1510と、容量CH11520と、電荷反転回路1530と、クロック生成回路1540と、直列抵抗1550と、を有する。離散時間アナログ回路1500は、ベースバンドのアナログ信号が入力端子T_Vinから入力され、入力されたアナログ信号に対して、電荷反転回路1530においてフィルタリングを行い、容量1520および電荷反転回路1530を経て、出力端子T_Voutから出力電圧信号Voutを出力する。
TA1510は、電圧電流変換回路であり、入力されるアナログ信号を入力電圧信号Vinとし、入力電圧信号Vinを電流(gm×Vin)に変換する。なお、gmはTA1510のトランスコンダクタンス(相互コンダクタンス)の値である。
容量1520は、一方の端子がTA1510の出力端子T_TAoutに接続され、他方の端子がGNDに接地される。
電荷反転回路1530は、一方の端子が離散時間アナログ回路1500の出力端子T_TVoutに接続され、他方の端子がGNDに接地される。電荷反転回路1530は、電荷を保持する動作および電荷を反転して接続する動作を行う回路である。電荷反転回路1530は、クロック生成回路1540から供給される制御信号に基づいて電荷共有を行い、入力されるアナログ信号に対するフィルタリング処理を行う。
クロック生成回路1540は、参照周波数発振部(図3Aおよび図3B参照)から出力された参照周波数信号(fREF1またはfREF2)からクロックS1〜S4(制御信号)を生成し、電荷反転回路1530に供給する。
なお、電荷反転回路1530の具体的な構成は、図5Aおよび図5Bに示した電荷反転回路130の構成と同様である。また、クロック生成回路1540において生成される制御信号は、図6に示した制御信号と同様である。離散時間アナログ回路1500は、実施の形態1に示した離散時間アナログ回路100と同様の動作を行う。
実施の形態1の離散時間アナログ回路100と異なる点は、TA1510の出力に直列抵抗1550を有することである。直列抵抗1550によってTA1510の出力抵抗を増加することができる。なお、直列抵抗1550の抵抗値は、Rsである。
図42に直列抵抗Rsに対する周波数特性のシミュレーション結果の一例を示す。横軸が周波数で、縦軸が最大利得で規格化した利得である。離散時間アナログ回路1500は、図42に示すように、同じ通過周波数帯域では、直列抵抗Rsを大きくすることによって、阻止減衰量を増加させることができる。
図43に実施の形態9の変形例の一例として、離散時間アナログ回路1600を示す。図41に示した離散時間アナログ回路1500との差異は、離散時間アナログ回路1600がTA1610−1、1610−2を複数有する点である。離散時間アナログ回路1600は、TA1610−1、TA1610−2の出力に、それぞれ直列に直列抵抗1650−1、1650−2を接続することによって、周波数特性の劣化を抑え、Gainを改善することができる。
なお、複数のTA1610の出力を合成した後に直列抵抗1650を接続してもよい。
図44にTAの数に対する周波数特性のシミュレーション結果の一例を示す。横軸が周波数で、縦軸が離散時間アナログ回路の利得である。図44の実線で示す1TAとは1つのTAを含む構成であり、図44の破線で示す2TAとは2個並列にしたTAを含む構成である。離散時間アナログ回路は、TAの数を増加することによって利得が増加する。
また、離散時間アナログ回路1500、1600を縦続に接続することで多段構成を実現し、フィルタ特性を高次化、ならびにゲイン増加をすることも可能である。
以上より、本実施の形態では、電圧電流変換回路(TA)の出力に直列に抵抗を接続することによって、TAの出力抵抗を増加させ、通過域のリプルと阻止域減衰量の低下を抑制できる。
本開示によれば、帯域内偏差の調整の自由度が高く、簡易な構成の離散時間アナログ回路を提供することができる。
(実施の形態10)
本開示の実施の形態10について説明する。本実施の形態は、実施の形態9の離散時間アナログ回路1500を差動構成した回路構成である。
[離散時間アナログ回路1700の構成と動作]
図45は、実施の形態10に係る離散時間アナログ回路1700の要部構成の一例を示す図である。図45に示す離散時間アナログ回路1700は、TA1710と、容量CH11720と、電荷反転回路1730と、クロック生成回路1740と、直列抵抗1750(1750−1、1750−2)と、を有する。
離散時間アナログ回路1700は、図41に示した離散時間アナログ回路1500と異なり、正相と逆相の2系統を有する入力電圧信号Vinが入力される、差動型の離散時間アナログ回路である。
TA1710は、電圧電流変換回路であり、正相と逆相の2系統を有する入力電圧信号Vinが入力され、入力電圧信号Vinを電流(gm×Vin)に変換し、正相と逆相の2系統の電流を出力する。
容量1720は、TA1710の正相の出力端子T_TAout1と逆相の出力端子T_TAout2の間に接続される。
電荷反転回路1730は、図5Bに示した電荷反転回路130と同じ構成を有する。電荷反転回路1730の端子Aは、TA1710の正相の出力端子T_TAout1に接続され、端子Bは、TA1710の逆相の出力端子T_TAout2に接続される。
クロック生成回路1740は、図4に示したクロック生成回路140と同じ構成を有し、図6に示したクロック(制御信号)と同様のクロック(制御信号)を電荷反転回路1730に供給する。
直列抵抗1750(1750−1、1750−2)は、低出力抵抗のTAを用いた場合でも周波数特性の劣化を防ぐ。
離散時間アナログ回路1700は、離散時間アナログ回路1500におけるGNDへの接地がTA1710の逆相の出力端子T_TAout2への接続に置き換えられた構成である。離散時間アナログ回路1700は、実施の形態9で説明した離散時間アナログ回路1500の動作と同様の動作を行う。
また、離散時間アナログ回路1700は、離散時間アナログ回路1500と同様に、図42に示した周波数特性を実現できる。さらに、離散時間アナログ回路1700は、差動構成であるため、差動合成後に偶数次成分を除去できる。
[効果]
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態9の構成を差動構成にすることによって、実施の形態9と同様の周波数特性を実現でき、さらに、差動合成後に、偶数次成分を除去できる。
なお、本実施の形態において、容量1720は、TA1710の正相の出力端子T_TAout1と逆相の出力端子T_TAout2の間に接続されるとしたが、2つの容量がTA1710の正相の出力端子T_TAout1と逆相の出力端子T_TAout2のそれぞれに接続されていてもよい。このとき、TA1710の正相の出力端子T_TAout1と逆相の出力端子T_TAout2のそれぞれに接続される2つの容量ならびに、直列抵抗1750−1、1750−2の値は同じ値でもよいし、特性の自由度を高めるために互いに異なる値としてもよい。
また、離散時間アナログ回路1700を縦続に接続することで多段構成を実現し、フィルタ特性を高次化、ならびにゲイン増加をすることも可能である。