JP6631945B2 - 油汚染土壌の浄化促進材及びこれを用いた浄化処理方法 - Google Patents
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そのため、安価に汚染土壌を浄化する方法が求められており、その方法として土壌中の微生物を用いる浄化処理方法(バイオレメディエーション)が注目されている。
バイオレメディエーションによる浄化処理の施工方法としては、主に、汚染土壌を盛土にして予め土壌中に埋めた通気管から強制的に土壌内に空気を供給するバイオパイルや、重機によって撹拌することで土壌を空気に触れさせるランドファーミングが実用されている。
(1)油汚染土壌中に微生物(油分解菌)が存在しない
(2)土壌の温度が低い(例えば、10℃以下)
(3)土壌のpH値が中性域でない(例えば、pH値が4以下、または11以上)
(4)土壌の通気性が低い(例えば、粘性土のような細粒分が多い土質の土壌)
例えば、(2)は、土壌中の微生物(油分解菌)による浄化速度が土壌の温度に大きく支配され、土壌の温度が低いと浄化速度が遅く、浄化処理に要する期間が長くなるという問題があるため、浄化処理に要する費用への影響が大きい。
この問題に対しては、特許文献1において、糖類及び/又は人工腐植土(コンポスト)を石油汚染土壌に添加することで、土壌の温度が低い冬期でも、土壌中の微生物(油分解菌)を活性化させ、浄化処理に要する期間を短期化させる浄化処理方法に関する発明が開示されている。
特に、沖縄県内の代表的土壌である国頭マージや島尻マージは細粒分が多く、土壌の含水率が高くなると通気管に目詰まりが発生し、その結果、吸引装置を用いても空気が循環しなくなることが課題であった。
もともと土壌中の微生物(油分解菌)を用いた浄化技術は、微生物の増殖力や汚染油の分解力が十分ではないために、土壌に栄養源等を添加して浄化効率を高めることで実用できるのだが、それに加え、土壌改良が必要となれば、バイオレメディエーションによる浄化処理には莫大な時間とそれに伴い高額な費用がかかり、実用できなくなってしまう。
仮に、通気性を向上させるために土壌におが屑等を混合させたとしても、土壌のpH値が低いために微生物が活性化しにくいという問題がある。
また、農林水産省による木材統計調査によると、沖縄県の製材生産量は国内で最も少ないことから、おが屑の流通量も少なく、通気性向上材としておが屑を利用することは難しい。
琉球石灰岩の有効間隙率は、本土で産出される他の石灰岩が0.2%程度であるのに対し、数%から数10%と非常に多孔質であり、通気性にも優れている(筑波大学陸域環境研究センター報告No.1(2000), 石灰岩タブレットを用いた溶解実験)。
琉球石灰岩は、沖縄県内では、道路舗装用のアスファルトに混ぜる骨材や、建材として用いられているが、骨材や建材として用いることができない細かい粒径のものは廃棄されるため、今後、未利用資源として活用できる可能性が期待できる。
そこで、本発明では、酸性で通気性が低い土壌(例えば沖縄県の国頭マージ、島尻マージ)に対しても、バイオレメディエーションによる浄化処理を比較的短期間に行うことができる浄化促進材及びこれを用いた浄化処理方法を提供することを課題とする。
土壌中に琉球石灰岩の破砕物を混合させることで、土壌の通気性を高めると同時に、土壌のpH値を微生物が活動するのに適した中性に調整することができる。
その結果、油汚染土壌は、微生物による浄化活動の結果、汚染油が浄化される。
琉球石灰岩の粒径は、琉球石灰岩の破砕作業や、土壌中への琉球石灰岩の混合といった浄化処理に係る施工性と施工効率を考えれば5mm程度が望ましいが、琉球石灰岩は、どのような粒径または粒形であっても、油汚染土壌に混合させるだけで土壌の通気性を高めるとともに、土壌のpH値を微生物の活動に適した中性に調整することができる。
その結果、微生物による油汚染土壌に対する汚染油の浄化効果が促進される。
一般的には、ある程度の大きさの石灰岩の破砕物を土壌中に混合させると、破砕物と土壌との間に間隙が生じ、土壌の通気性が高まる。
しかし、細粒分含有率が高く、保水性があって通気性が極めて低い国頭マージや島尻マージに、微粉末化した石灰岩を土壌中に混合しても、微粉末化と土壌との間に間隙が生じることがなく、むしろ微粉末化した石灰岩が間隙を埋めてしまうことで、土壌の通気性が高まることはない。
しかし、琉球石灰岩は、他の石灰岩に比べて、径が小さい微細な細孔を数多く有する。
その微細な細孔を多く有することが理由かは明らかでないが、本願発明者は、粒径が100μm以下に微粉末化した琉球石灰岩を油汚染土壌に混合させることで、破砕した琉球石灰岩よりも汚染油の浄化速度が向上することを見出した。
したがって、粒径が100μm以下、もしくは10〜1μm以下の微粉末化した琉球石灰岩を油汚染土壌に混合して汚染油の浄化を行えば、他の石灰岩や貝殻との浄化の違いはより顕著に現れることになる。
これらのことから、油汚染土壌に琉球石灰岩の破砕物、特に微粉末体を混合することによって油の浄化速度が向上するのは、琉球石灰岩の破砕物や微粉末体が有する微細な細孔が、油分解菌の生物膜として油分解菌を担持でき、油分解菌の微生物量を大きく増加させることで、土壌中の微生物による油の分解が顕著に促進されることに加え、油汚染土壌のpH値が中性域に変化することで油を分解する微生物の浄化活性が高まるとともに、油汚染土壌中に含まれる水分量が低下することで油を分解する微生物の代謝活動に必要となる通気性が確保されたためであると考えられる。
このように、本願発明者は、琉球石灰岩の破砕物または微粉末体を油汚染土壌に混合させることで、酸性で含水率が高く通気性が低い土壌(例えば沖縄県の国頭マージ、島尻マージ)でも効果的且つ短期間に浄化できることを見出した。
そして、本発明によれば、特別の微生物を投入することなく、油に汚染された土壌を迅速に浄化処理することができる。
そこで、油汚染土壌(国頭マージまたは島尻マージを含む)に対して重量比10〜30%の琉球石灰岩(破砕物及び粒径が100μm以下のものを含む)を混合した油汚染土壌に、さらに、油汚染土壌(国頭マージまたは島尻マージを含む)の油に対して重量比1〜15%の栄養塩(窒素、リンを含む)を添加する。
栄養塩を添加することで、琉球石灰岩からなる浄化促進材を混合させた油汚染土壌に対する油分解菌の浄化処理速度が一層向上し、国頭マージや島尻マージのように酸性で水分を多く含み通気性が低い土壌でも、油汚染に対するバイオレメディエーションによる浄化処理を比較的短期間に行うことができる。
これにより、水分を多く含み、通気性が低い油汚染土壌でも、浄化処理効率を向上させることができる。
(2)油汚染土壌に琉球石灰岩を混合させることで、例えば沖縄県の国頭マージ、島尻マージのような酸性の土壌でも、土壌のpH値を微生物浄化に適した中性に調整でき、油汚染土壌中に存在する汚染油を分解する微生物の浄化活動の促進が期待できる。
(3)油汚染土壌に混合させる琉球石灰岩が破砕物または微粉末であるため、油汚染土壌を撹拌する際の施工性が向上し、浄化処理に要する期間を短縮できる。また、油汚染土壌中に栄養塩を添加する場合にも均一に添加できる。
なお、本発明において、浄化対象である油汚染土壌を汚染する油の種類は、主としてガソリン、灯油、軽油、重油等の燃料油や、潤滑油、グリース等の機械油のほか、植物性又は動物性の食用油なども含むものとする。
本発明における油汚染土壌(油に汚染された土壌)は、例えば、製油所跡地、ガソリンスタンド跡地、油槽所跡地などが挙げられるが、汚染の形態を問わず、油に汚染された(油を含む)土壌であれば、本発明の浄化促進材またはこれを用いた浄化処理方法の浄化対象とすることができる。
以下に説明する浄化試験では、油に汚染されていない土壌を採取して、これを試料とし、さらにこの試料に軽油を添加したものを油汚染土壌とした。
試料Aの粒度組成は、粗砂分1.3%、中砂分2.2%、細砂分7.0%、シルト63.6%、粘土分25.9%である。
試料Bの粒度組成は、細礫分7.7%、粗砂分10.6%、中砂分15.3%、細砂分14.9%、シルト45.6%、粘土分5.9%である。
両試料とも、シルト分と粘土分を多く含んでおり、pH値は酸性を示している(試料Aは4.6、試料Bは5.2)。
また、試料Aと試料Bにおける地山乾燥密度は、それぞれ1.11g/cm3(1.04〜1.15g/cm3)、1.42g/cm3(1.25〜1.67g/cm3)であり、自然含水率は、それぞれ27.7%(23.5〜31.6%)、23.5%(17.1〜28.7%)である。
両試料ともに、土壌中の水分が高くなり、含水率が概ね25%を超えると練返し状態に至るため、通気性が阻害されることが確認された。
これらの粒度組成と土壌特性から、試料Aは国頭マージ、試料Bは島尻マージに分類される。
試料A(国頭マージ)と試料B(島尻マージ)のそれぞれについて、風乾後、5mmのふるいに通し、TPH濃度が15,000mg/kgになるように軽油を添加したものを模擬汚染試料A、同Bとした。
通気試験装置は、上部に通気性のあるシリコ栓が装着され、下部には送風用チューブが取り付けられている(図6)。
通気試験装置には、送気ポンプを用いて、送風用チューブを通じて試料の下部側から空気が供給されるようになっており、通気量は50〜100mL/minに設定した。
なお、窒素(N)及びリン(P)は、各試験体に含まれる油(C)に対してC:N:P=100:10:2(重量比)の割合で添加したが、C:N:P=100:10〜15:1〜3(重量比)が好ましい。
測定は、最初だけ試験開始日から3日後に行い、それ以降は試験開始日から7日後、14日後、21日後、28日後または30日後に行い、二硫化炭素で各試験体に含まれる油(C)を抽出するGC-FID 法によりTPH濃度を測定した。
汚染土壌の浄化に関しては、TPH除去に係る反応速度は1次反応であることを前提として、動力学モデルによるTPH収支から次式が成り立ち、(2)式のTPH除去速度恒数(k)に土中微生物濃度(S)を乗じた値(以下、この値を「TPH除去定数」という。)が求められる。
「TPH除去速度」は、「単位時間当たりのTPH除去量」であり、本実施例の測定結果を示す各図においては1日当たりのTPH除去量を示している。
「TPH除去速度恒数(k)」は、単位土中微生物濃度当たりのTPH除去速度定数であり、単位土中微生物濃度当たりのTPH除去効率を示している。
「TPH除去定数」は、TPH除去速度恒数(k)に土中微生物濃度を乗じた値であり、TPH除去効率を示している。
TPH濃度の測定値が検出限界値(100 mg/kg)以下の場合には、TPH濃度の測定値を100 mg/kgとしてTPH除去定数を算定する。
そして、含水率が高い試験体ほど、琉球石灰岩からなる浄化促進材の混合割合を増やすことで、TPH除去率が高まることが確認された(図9。浄化促進材は「琉球石灰岩砕」を使用している。)。
したがって、含水率が高い油汚染土壌に対する汚染油の浄化処理に対しては、土壌中の水分を速やかに低下させることが浄化処理に要する時間を短くできるポイントになることが明らかになった。
また、浄化促進材の違いによるTPH除去定数を比較すると、琉球石灰岩(琉球石灰岩の破砕物)は、浄化促進材を試料に混合しない試験体(ブランク)及び他の浄化促進材に比べて、ほぼ全ての試験条件下において概ね2倍程度以上の高い値のTPH除去定数が得られた(例えば図11)。
したがって、琉球石灰岩以外の浄化促進材は、浄化能力の限界値が低く、汚染油の浄化には向いていないが、琉球石灰岩からなる浄化促進材は、破砕物及び微粉末体のいずれも、他の浄化促進材よりも高い浄化能力を有し、より多くの琉球石灰岩を土壌に混合させることで汚染油の浄化を促進できることが明らかになった。
このことから、油汚染土壌に5mm以下の破砕物や100μm以下の微粉末体を混合することで、油汚染土壌が中性域に変化するとともに、油汚染土壌に含まれる水分が低下し、油分解微生物の浄化活性が高まって顕著にTPH除去性能が向上したのは、油分解微生物の代謝活動に必要な通気性が確保されたためと考えられる。
特に、100μm以下の琉球石灰岩の微粉末体が有する多孔質性は、琉球石灰岩の表面に油分解菌を生物膜として担持させ、油分解菌の微生物量を大きく増加させる結果、土壌中の微生物による油分解活動が顕著に促進されたものと推察される。
この結果から、ベンゼンは、土壌中の微生物によって浄化されたのではないと考えられる。
下幅・下長それぞれ約3.2m、上幅・上長それぞれ約1.2m、高さ約0.8mの盛土を複数形成して、これを試験土壌(4.5m3)とした。
試験土壌の採取地は、室内試験で使用した試料Aと同一である。
試験土壌は、油に汚染されていない試料Aを20mmのふるいに通し、含水率が23%になるように含水調整を行ったうえで、TPH濃度が15,000mg/kgになるように軽油を添加し、これを油汚染土壌として使用した。
(試験土壌1)
栄養塩類として窒素(N)、リン(P)を添加、通気有。
(試験土壌2)
栄養塩類として窒素(N)、リン(P)を添加、通気無。
(試験土壌3)
栄養塩類として窒素(N)、リン(P)を添加、浄化促進材として20mmのふるいに通した琉球石灰岩砕を添加、通気有。
(試験土壌4)
栄養塩類として窒素(N)、リン(P)を添加、浄化促進材として20mmのふるいに通した琉球石灰岩砕を添加、通気無。
(試験土壌5)
何も添加しない(コントロール)。
試験土壌1及び3の「通気有」は、土壌中に埋設したソイルパイルからの吸気を意味し、ソイルパイル下部に配管した有孔通気管を通じて、吸気ポンプを用いて空気が吸引されるようになっており、通気量は室内浄化試験と同じ条件で行った。
試験土壌1、3及び5の「通気無」は、重機による撹拌のみを意味し、試験土壌の切り替えし撹拌作業を7日間隔で定期的に行った。
試験土壌1乃至4の「栄養塩類として添加する窒素(N)、リン(P)」は、室内浄化試験と同様、試験土壌の重量1kg当たり7.5mL(0.2g-N/ml)、6mL(0.05g-P/ml)を試験土壌に添加した。
なお、窒素(N)及びリン(P)は、各試験土壌に含まれる油(C)に対してC:N:P=100:10:2(重量比)の割合で添加したが、C:N:P=100:10〜15:1〜3(重量比)が好ましい。
測定した結果は、図14及び15のとおりである。
琉球石灰岩からなる浄化促進材は、原石となる琉球石灰岩を削り出し、ブレーカーで小割したのち、スクリーンして所望の粒径のものを選別することができる。
本実施例では、5mm以下と100μm以下の粒径のものを、それぞれ琉球石灰岩砕、琉球石灰岩粉末として使用した。
スクリーンした琉球石灰岩は、それ単体を浄化促進材とすることもできるし、砕砂と混合させたものを浄化促進材とすることもできる。
浄化促進材は、油汚染土壌に混合することで、浄化の効果が期待できるが、油汚染土壌との重量比で10%以上、油汚染土壌に混合することが望ましく、30%まで混合しても浄化効果を発揮できる。
琉球石灰岩からなる浄化促進材を油汚染土壌に混合させることで、油汚染土壌の通気性が向上し、土壌中に含まれる微生物の活性に必要な空気の供給効率が高まる。
また、栄養塩を添加することで、さらに微生物の浄化活性が高まる。
これにより、浄化処理速度が向上し、国頭マージや島尻マージのように酸性で水分を多く含み通気性が低い土壌でも、油汚染に対するバイオレメディエーションによる浄化処理を、比較的短期間に行うことができる。
浄化処理は、さらに油汚染土壌を撹拌し、油汚染土壌内に配管して強制通気を行うことで、浄化処理効率を向上させることができる。
そして、本発明に係る浄化処理方法は、次のとおり浄化処理を行う。
浄化対象である油汚染土壌を掘削して山(畝)を作り(盛土を形成し)、これと同時もしくはこの後に、琉球石灰岩(琉球石灰岩砕、琉球石灰岩粉末を含む。)を混合し、さらに必要に応じて栄養塩を添加する。
そして、土壌の微生物浄化には、土壌の含水率を下げ、通気性をよくすることが重要であることから、山(畝)にした油汚染土壌に雨水等が浸透しないように土壌の上からシートを被せる。
なお、シートは、油汚染土壌の攪拌作業時以外は、常時土壌に被せておくことが望ましいが、シートを被せる代わりに、屋根等で油汚染土壌が雨水に曝されない場所で浄化を行うこともできる。
また、浄化処理中の油汚染土壌の通気性向上のため、定期的に油汚染土壌を重機等で攪拌することが望ましいが、攪拌に代えて、前述の屋外試験のように、土壌中に埋設したソイルパイル下部に配管した有孔通気管から吸気し、土壌の通気性を向上させる手段を講じることもできる。
なお、本願発明において「通気」の語は、排気もしくは吸気またはこの両方を意味するものとする。
Claims (2)
- 油汚染土壌に対する微生物浄化に際して土壌に混合する浄化促進材が、
破砕して粒径5mm以下にした琉球石灰岩である
ことを特徴とする油汚染土壌の浄化促進材。 - 油汚染土壌に対して、粒径5mm以下の琉球石灰岩を、重量比10〜30%混合させることを特徴とする油汚染土壌の浄化処理方法。
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