以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、図面の厚み比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1は、本発明の実施の形態に係る燃料電池を説明するための側面図、図2は、図1に示されるシールプレートを説明するための平面図である。
図1に示される燃料電池10は、例えば、固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)からなり、電源として利用される。電源の用途は、例えば、定置用、携帯電話などの民生用携帯機器用、非常用、レジャーや工事用電源などの屋外用、搭載スペースが限定される自動車などの移動体用である。固体高分子形燃料電池は、小型化、高密度化および高出力化が可能であり、搭載スペースが限定される車両などの移動体の駆動用電源としての適用が好ましく、特に、システムの起動および停止や出力変動が頻繁に発生する自動車用途が特に好ましい。この場合、車体中央部の座席下、後部トランクルームの下部、車両前方のエンジンルームに搭載することが可能である。車内空間およびトランクルームを広く取る観点からは、座席下の搭載が好ましい。
燃料電池10は、スタック12、集電板80,81およびエンドプレート85,86を有する。スタック12は、シールプレート14および電池モジュール20を有する。
シールプレート14は、隣接する電池モジュール20の間に配置され、図2に示されるように、マニホールド穴15A,15B,15C,16A,16B,16C、外周シール部17および内部シール部18A,18C,19A,19Cを有している。シールプレート14は、例えば、導電性の金属板から形成される。
マニホールド穴15A,15B,15C,16A,16B,16Cは、隣接する電池モジュール20の間で、燃料ガス、冷媒および酸化剤ガスを流通させるために使用される。例えば、マニホールド穴15A,15B,15Cは、燃料ガス導入用、冷媒導入用、酸化剤ガス導入用であり、マニホールド穴16A,16B,16Cは、燃料ガス排出用、冷媒排出用、酸化剤ガス排出用である。燃料ガス、酸化剤ガスおよび冷媒は、例えば、水素ガス、酸素ガスおよび冷却水である。
外周シール部17は、シールプレート14の外周縁部に配置されるシール部材から構成され、当該外周縁部をシールしており、冷媒が外部に漏出することを防止している。内部シール部18A,18C,19A,19Cは、マニホールド穴15A,15C,16A,16Cの周縁部に配置されるシール部材から構成され、当該周縁部をシールしており、燃料ガスおよび酸化剤ガスが、外部に漏出することを防止している。
電池モジュール20は、後述するように、膜電極接着体とセパレータとを有する単セルの積層体を有する。電池モジュール20の積層数は、必要な容量などを考慮して適宜設定される。
集電板80,81は、スタック12で生じた起電力を出力するための出力端子が設けられており、電池モジュール20の積層方向Dに関するスタック12の両側に配置される。集電板80,81は、例えば、緻密質カーボンや銅板等のガス不透過性を有する導電性部材から形成される。
エンドプレート85,86は、剛性を備えた材料、例えば鋼などの金属材料から形成され、集電板80,81の外側に配置される。
なお、集電板80,81およびエンドプレート85,86は、燃料ガス、酸化剤ガスおよび冷媒を流通させるために、燃料ガス導入口、冷媒導入口、酸化剤ガス導入口、燃料ガス排出口、冷媒排出口および酸化剤ガス排出口を有する。
スタック12、集電板80,81およびエンドプレート85,86は、シールプレート14および電池モジュール20を押し圧状態に保持するために、締結されている。締結機構は、特に限定されず、例えば、内部を延長するタイロッドや外部を延長するテンションロッドと、ナットとの螺合を適用することが可能である。
次に、電池モジュール20を詳述する。
図3は、図1に示される電池モジュールを説明するための断面図、図4、図5および図6は、図3に示される膜電極接着体、カソードセパレータおよびアノードセパレータを説明するための平面図である。
電池モジュール20は、図3に示されるように、単セル22の積層体を有する。単セル22は、膜電極接着体30、カソードセパレータ50およびアノードセパレータ60を有する。なお、膜電極接着体30、カソードセパレータ50、アノードセパレータ60およびシールプレート14は、略同一形状である。
膜電極接着体30は、高分子電解質膜32、アノード触媒層34、カソード触媒層35、およびガス拡散層37,38から構成され、かつ、図4に示されるように、発電部分42および非発電部分44を有する。
高分子電解質膜32は、アノード触媒層34で生成したプロトンをカソード触媒層35へ選択的に透過させる機能と、アノード側に供給される燃料ガスとカソード側に供給される酸化剤ガスとを混合させないための隔壁としての機能と、を有する。
アノード触媒層34は、水素の酸化反応が進行する触媒層であり、触媒成分と、触媒成分を担持する導電性の触媒担体と、高分子電解質とを含んでおり、高分子電解質膜32の一方の側に配置される。カソード触媒層35は、酸素の還元反応が進行する触媒層であり、触媒成分と、触媒成分を担持する導電性の触媒担体と、高分子電解質とを含んでおり、高分子電解質膜32の他方の側に配置される。なお、アノード触媒層34およびカソード触媒層35は、少なくとも発電部分42に配置されている。
ガス拡散層37は、アノードセパレータ60とアノード触媒層34との間に位置し、アノード側に供給される燃料ガスを分散し、アノード触媒層34に供給するために利用される。ガス拡散層38は、カソードセパレータ50とカソード触媒層35との間に配置され、カソード側に供給される酸化剤ガスを分散し、カソード触媒層35に供給するために利用される。
発電部分42は、膜電極接着体30の略中央に位置する発電に寄与する領域である。非発電部分44は、発電部分42の周囲を取り囲んでいる発電に寄与しない領域であり、マニホールド穴45A,45B,45C,46A,46B,46C、外周シール部47および内部シール部48B,48C,49B,49Cを有する。
マニホールド穴45A,45B,45Cは、燃料ガス導入用、冷媒導入用、酸化剤ガス導入用であり、マニホールド穴46A,46B,46Cは、燃料ガス排出用、冷媒排出用、酸化剤ガス排出用である。
外周シール部47および内部シール部48B,48C,49B,49Cは、隣接するアノードセパレータ60を接着する接着剤から構成される。
外周シール部47は、膜電極接着体30の外周縁部に配置され、当該外周縁部をシールしており、燃料ガスが外部に漏出することを防止している。
内部シール部48B,48C,49B,49Cは、マニホールド穴46B,46C,46B,46Cの周縁部に配置され、当該周縁部をシールしており、冷媒および酸化剤ガスが、外部に漏出することを防止している。なお、図3に示される符号24および26は、燃料ガス導入用のマニホールド穴65Bおよび燃料ガス排出用のマニホールド穴66Bに連通している燃料ガスの流路、および、燃料ガスをアノード触媒層34に供給するために利用される流路を、それぞれ示している。また、流路26は、隣接するアノードセパレータ60の溝部63(後述)によって構成される。
カソードセパレータ50およびアノードセパレータ60は、単セルを電気的に直列接続する機能と、燃料ガス、酸化剤ガスおよび冷媒を互いに遮断する隔壁としての機能と、を有する。カソードセパレータ50およびアノードセパレータ60は、例えば、ステンレス鋼鈑にプレス加工を施すことで形成される。ステンレス鋼鈑は、複雑な機械加工を施しやすくかつ導電性が良好である点で好ましく、必要に応じて、耐食性の塗装を施すことも可能である。カソードセパレータ50およびアノードセパレータ60は、ステンレス鋼鈑から構成される形態に限定されず、ステンレス鋼鈑以外の金属材料、例えば、アルミニウム板やクラッド材を適用することも可能である。
カソードセパレータ50は、膜電極接着体30のカソード側に配置されるセパレータであり、カソード触媒層35に相対して配置され、かつ、図5に示されるように、発電部分52および非発電部分54を有する。
発電部分52は、膜電極接着体30の発電部分42の一方の面に接する領域であり、溝部53を有する。溝部53は、膜電極接着体30とカソードセパレータ50との間に位置する流路24を構成するための凹凸部を構成している(図3参照)。流路24は、酸化剤ガスをカソード触媒層35に供給するために利用される。
非発電部分54は、発電部分52の周囲を取り囲んでいる領域であり、膜電極接着体30の非発電部分44に対応し、マニホールド穴55A,55B,55C,56A,56B,56C、外周シール部57および内部シール部58A,58B,59A,59Bを有する。
マニホールド穴55A,55B,55Cは、燃料ガス導入用、冷媒導入用、酸化剤ガス導入用であり、マニホールド穴56A,56B,56Cは、燃料ガス排出用、冷媒排出用、酸化剤ガス導入用である。
外周シール部57および内部シール部58A,58B,58C,59A,59B,59Cは、隣接する膜電極接着体30を接着する接着剤から構成される。
外周シール部57は、カソードセパレータ50の外周縁部に配置され、当該外周縁部をシールしており、酸化剤ガスが外部に漏出することを防止している。
内部シール部58A,58B,59A,59Bは、マニホールド穴55A,55B,56A,56Bの周縁部に配置され、当該周縁部をシールしており、燃料ガスおよび冷媒が、外部に漏出することを防止している。なお、酸化剤ガス導入用のマニホールド穴55Cおよび酸化剤ガス導入用のマニホールド穴56Cは、流路24に連通している。
アノードセパレータ60は、膜電極接着体30のアノード側に配置されるセパレータであり、アノード触媒層34に相対して配置され、かつ、図5に示されるように、発電部分62および非発電部分64を有する。
発電部分62は、膜電極接着体30の発電部分42の他方の面に接する領域であり、溝部63を有する。溝部63は、膜電極接着体30とアノードセパレータ60との間に位置する流路26と、アノードセパレータ60と隣接する別の単セル22のカソードセパレータ50との間に位置する流路28と、を構成するための凹凸部を構成している(図3参照)。流路28は、冷媒を流通させるために利用される。
非発電部分64は、発電部分62の周囲を取り囲んでいる領域であり、膜電極接着体30の非発電部分44に対応し、マニホールド穴65A,65B,65C,66A,66B,66C、外周シール部67および内部シール部68A,68C,69A,69Cを有する。
マニホールド穴65A,65B,65Cは、燃料ガス導入用、冷媒導入用、酸化剤ガス導入用であり、マニホールド穴66A,66B,66Cは、燃料ガス排出用、冷媒排出用、酸化剤ガス排出用である。
外周シール部67および内部シール部68A,68C,69A,69Cは、隣接する別の単セル22のカソードセパレータ50を接着する接着剤から構成される。
外周シール部67は、アノードセパレータ60の外周縁部に配置され、当該外周縁部をシールしており、冷媒が外部に漏出することを防止している。
内部シール部68A,68C,69A,69Cは、マニホールド穴65A,65C,66A,66Cの周縁部に配置され、当該周縁部をシールしており、燃料ガスおよび酸化剤ガスが、外部に漏出することを防止している。なお、冷媒導入用のマニホールド穴65Bおよび冷媒排出用のマニホールド穴66Bは、流路28に連通している。
なお、シールプレート14のマニホールド穴15A,15B,15C,16A,16B,16C、膜電極接着体30のマニホールド穴45A,45B,45C,46A,46B,46C、カソードセパレータ50のマニホールド穴55A,55B,55C,56A,56B,56Cおよびアノードセパレータ60のマニホールド穴65A,65B,65C,66A,66B,66Cは、集電板80,81およびエンドプレート85,86の燃料ガス導入口、冷媒導入口、酸化剤ガス導入口、燃料ガス排出口、冷媒排出口および酸化剤ガス排出口に、それぞれ位置合せされており、連通している。
次に、高分子電解質膜32、アノード触媒層34およびカソード触媒層35の材質等を説明する。
高分子電解質膜32は、パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーから構成されるフッ素系高分子電解質膜、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂膜、リン酸やイオン性液体等の電解質成分を含浸した多孔質状の膜を、適用することが可能である。パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーは、例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン株式会社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)、Gore selectシリーズ(登録商標、日本ゴア株式会社)等である。多孔質状の膜は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)から形成される。
高分子電解質膜32の厚みは、特に限定されないが、強度、耐久性および出力特性の観点から5μm〜300μmが好ましく、より好ましくは10〜200μmである。
アノード触媒層34に用いられる触媒成分は、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば、特に限定されない。カソード触媒層35に用いられる触媒成分は、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば、特に限定されない。
具体的な触媒成分は、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、及びそれらの合金等から選択される。触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性などを向上させるために、少なくとも白金を含むものが好ましい。触媒成分は、同一である必要はなく、適宜選択することが可能である。なお、貴金属を含まない触媒を適用することも可能である。
触媒の導電性担体は、触媒成分を所望の分散状態で担持するための比表面積、および集電体として十分な電子導電性を有しておれば、特に限定されないが、主成分がカーボン粒子であることが好ましい。カーボン粒子は、例えば、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛から構成される。
アノード触媒層34およびカソード触媒層35に用いられる高分子電解質は、少なくとも高いプロトン伝導性を有する材料であれば、特に限定されず、例えば、ポリマー骨格の全部または一部にフッ素原子を含むフッ素系電解質や、ポリマー骨格にフッ素原子を含まない炭化水素系電解質が適用可能である。前記高分子電解質は、高分子電解質膜32に用いられる高分子電解質と同一であっても異なっていてもよいが、高分子電解質膜32に対するアノード触媒層34およびカソード触媒層35の密着性を向上させる観点から、同一であることが好ましい。
次に、本発明の実施の形態に係る燃料電池の製造方法および製造装置を説明する。
図7は、本発明の実施の形態に係る燃料電池の製造方法を説明するためブロック図、図8および図9は、図7に示される接着剤塗布工程および接着剤塗布工程に適用される塗布装置、プレス工程およびプレス工程に適用されるプレス装置、図10は、プレス装置によって形成される積層体の厚み形状と公差との関係を説明するための概略図、図11、図12、図13、および図14は、図7に示される、接着剤硬化工程および接着剤硬化工程に適用される接着剤硬化装置、リークテスト工程およびリークテスト工程に適用されるリークテスト装置、分別工程および分別工程に適用される分別装置、およびスタック形成工程およびスタック形成工程に適用されるスタック形成装置を説明するための概略図、図15は、図14に示されるスタック形成工程における選択を説明するための概略図である。
本発明の実施の形態に係る燃料電池の製造方法は、図7に示されるように、接着剤塗布工程、プレス工程、接着剤硬化工程、リークテスト工程、分別工程およびスタック形成工程を有する。
接着剤塗布工程においては、図8に示されるように、膜電極接着体30、カソードセパレータ50およびアノードセパレータ60に、接着剤塗布装置100、接着剤塗布装置102および接着剤塗布装置104によって接着剤が塗布される。接着剤は、例えば、加熱および加圧することにより硬化するエポキシ樹脂等の熱硬化型樹脂から構成される。接着剤の塗布位置は、図4に示される外周シール部47および内部シール部48B,48C,49B,49Cの配置位置、図5に示される外周シール部57および内部シール部58A,58B,58C,59A,59B,59Cの配置位置、および、図6に示される外周シール部67および内部シール部68A,68C,69A,69Cの配置位置である。
接着剤塗布装置100,102,104は、スプレー塗装装置から構成される。しかし、接着剤塗布装置100,102,104は、特にこの形態に限定されず、例えば、スクリーン印刷装置を適用することも可能である。
膜電極接着体30、カソードセパレータ50およびアノードセパレータ60は、接着剤の塗布が完了すると積層され、電池モジュールが形成される。なお、この時点では、接着剤は硬化しておらず、かつ、燃料電池10のスタック12に組み込まれていないため、積層体21で参照する。
プレス工程においては、図9に示されるように、接着剤が塗布された膜電極接着体30、カソードセパレータ50およびアノードセパレータ60の積層体21が、プレス装置110によって押圧(予備圧縮)される。この際、後述するように、非発電部分44,54,64に対する押圧は、非発電部分44,54,64の厚みが目標厚みになるように制御され、かつ、発電部分42,52,62に対する押圧は、発電部分42,52,62が目標荷重で押圧されるようにされ、そして、押圧の完了時において、積層体21の厚み形状が検出される。本実施の形態においては、厚み形状の検出結果に基づき、積層体21は、3つのグレードA,B,Cに分類され、分類結果は、積層体21自体にマークされる。
なお、グレードを規定する厚み形状は、図10に示されるように、積層体21における非発電部分44,54,64の厚みT2と発電部分42,52,62の厚みT1との差ΔTに基づいている。
非発電部分44,54,64は、目標厚みになるように押圧されるため、その厚みT2は、一定(定寸)である。一方、発電部分42,52,62は、目標荷重(一定の荷重)で押込まれるため、その厚みT1は、概して積層体21を構成する部品(カソードセパレータ、アノードセパレータおよび膜電極接着体)の厚さの公差に基づいて変化する(一定ではない)。したがって、差ΔT(=T1−T2)は、積層体21を構成する部品の厚さの公差に依存することになる。
例えば、発電部分42,52,62の厚みT1が大きい場合、発電部分42,52,62を構成する部品の厚さの公差も大きい。発電部分42,52,62と非発電部分44,54,64とは同一の部品であるため、非発電部分44,54,64を構成する部品の厚さの公差も大きい。しかし、非発電部分44,54,64は、定寸であるため、未硬化である接着剤の厚みが小さくなる。
この場合、燃料ガス、酸化剤ガスおよび冷媒の漏れに対する接着剤(非発電部分44,54,64)のシール性に問題を生じる虞がある。つまり、発電部分42,52,62の厚みT1が大きい場合、差ΔTも大きくなるため、差ΔT(グレード)を検出ことによって、接着剤(非発電部分44,54,64)のシール性を把握することも可能である。
接着剤硬化工程においては、図11に示されるように、積層体21に対するプレス装置110による押圧を維持した状態で、接着剤硬化装置160のチャンバー162に投入され、接着剤硬化装置160の加熱装置164によって加熱され、積層体21に含まれる接着剤が硬化される。加熱装置164は、赤外線ヒーターから構成される。しかし、加熱装置164は、特にこの形態に限定されず、例えば、温風ヒーターを適用することも可能である。
接着剤の硬化が完了すると、プレス装置110は、チャンバー162から搬出される。そして、積層体21に対するプレス装置110による押圧が解除され、積層体21が、プレス装置110から取り外される。
リークテスト工程においては、図12に示されるように、リークテスト装置170によって、積層体21のリークテストが実施される。具体的には、積層体21は、リークテスト装置170のチャンバー172に投入され、配管174,176が連結される。配管174は、トレーサガスの供給用であり、配管176は、トレーサガスの排出用である。配管174,176は、例えば、積層体21に存在するマニホールド穴45A,45B,45C,46A,46B,46C,55A,55B,55C,56A,56B,56C,65A,65B,65C,66A,66B,66Cを利用し、積層体21の内部に連通している。
トレーサガスは、配管174を経由して積層体21の内部に導入され、積層体21の内部を通過した後、配管176を経由して排出される。この際、積層体21からトレーサガスが漏出した場合、リークテスト装置170のガスセンサー178によって検出される。トレーサガスの漏出が検出された積層体21は、不良品であるため、除去される。
例えば、トレーサガスは、水素ガスであり、ガスセンサー178は、接触燃焼式水素センサー、半導体式水素センサーあるいは熱電式水素センサーである。なお、トレーサガスは、水素ガスに限定されず、必要に応じて、水素と窒素の混合ガスや、ヘリウムを適用することも可能である。
分別工程においては、図13に示されるように、積層体21は、分別装置180によって分別され、対応する搬送装置188A、188B,188Cに投入され、搬送装置188A、188B,188Cによってスタック形成工程に向かって搬送される。例えば、符号21A,21B,21は、グレードA,B,Cに分類された積層体21をそれぞれ示している。
分別装置180は、例えば、グレード検出装置182、把持ロボット184および制御部186を有する。グレード検出装置182は、カメラを有し、積層体21にマークされているグレードを光学的に検出可能に構成されている。把持ロボット184は、多軸のアームを有し、積層体21(21A、21B,21C)を把持し、移動させることを可能に構成されている。制御部186は、プログラムにしたがって各部の制御や各種の演算処理を実行するマイクロプロセッサ等から構成される制御回路であるCPUと、プログラム等を記憶する記憶装置とを有し、グレード検出装置182および把持ロボット184を制御するために使用される。記憶装置は、例えば、グレード検出装置182によるグレードの検出結果に基づいて、投入先の搬送装置188A、188B,188Cを決定し、把持ロボット184を制御して、決定された搬送装置188A、188B,188Cに向かって積層体21(21A、21B,21C)を移動させるように構成されるプログラムが記憶されている。
スタック形成工程においては、図14に示されるように、分別工程から搬送装置188A、188B,188Cによって搬送される積層体21(21A、21B,21C)と、搬送装置198によって別途搬送されるシールプレート14とが、スタック形成装置190によって積層され、スタック12が形成される。シールプレート14は、積層体21(21A、21B,21C)の間に取り外し可能に配置される。
スタック形成装置190は、例えば、把持ロボット192および制御部194を有する。把持ロボット192は、多軸のアームを有し、積層体21(21A、21B,21C)やシールプレート14を把持し、移動させ、集電板80上に載置(積層)可能に構成されている。制御部194は、プログラムにしたがって各部の制御や各種の演算処理を実行するマイクロプロセッサ等から構成される制御回路であるCPUと、プログラム等を記憶する記憶装置とを有し、把持ロボット192を制御するために使用される。
記憶装置は、グレードに基づき、積層体21(21A、21B,21C)の積層方向Dに関する厚みが一定となるように、積層体21(21A、21B,21C)を選択するプログラムが記憶されている。
例えば、プレス工程において形成された厚み形状が異なる3種類の積層体21A,21B,21Cを、スタック形成工程においてそのまま積層する場合、図15に示されるように、小さな厚み形状の積層体21Bを含むスタック12Bや、大きな厚み形状の積層体21Aを含むスタック12Aが形成される。この場合、スタック12Aは厚みが小さくてスタック形状の規格値を満たさない虞があり、スタック12Bは厚みが大きくてスタック形状の規格値を満たさない虞があり、また、積層体間のシール性にバラツキが生じる問題も有する。
しかし、本実施の形態においては、積層体21(21A、21B,21C)は、グレードに基づき、形成されるスタック12の積層方向Dに関する厚みが一定となるように、選択されている。したがって、形成されたスタック12が規格値を満たさないことが抑制される。なお、図15においては、グレードA、グレードBおよびグレードCの厚み形状の差を、便宜上、凸状のサイズの異(大、中、小)として示している。
積層体21の積層数が所定の値に達すると、集電板81およびエンドプレート86がさらに積層され、その後、エンドプレート85,86を介して、締結荷重が付与されて圧縮され、シールプレート14および積層体21(電池モジュール20)が、押し圧状態に保持される。
次に、プレス工程およびプレス工程に適用されるプレス装置を詳述する。
図16は、図9に示されるプレス装置を説明するための概略図、図17および図18は、図16に示される外側押圧機構および内側押圧機構を説明するための概略図、図19および図20は、プレス装置によって形成される積層体の厚み形状の別の一例およびさらに別の一例を説明するための概略図である。
プレス装置110は、図16に示されるように、基部115、外側押圧機構120、内側押圧機構130、距離センサー140、レーザーマーカー145および制御部150を有する。
基部115は、プレス装置110の底面部であり、未硬化状態の接着剤を含んでいる積層体21が配置される載置台を兼ねている。
外側押圧機構120は、支柱部122および第1押圧部124を有し、図17に示されるように、内側押圧機構130から独立して個別に制御され、積層体21における非発電部分44,54,64を押圧するために使用される。
支柱部122は、基部115に固定されており、第1押圧部124が積層方向Dに移動自在に取り付けられている。第1押圧部124は、積層方向Dに関し、基部115に対して近接離間自在に構成され、かつ、押込み距離調整機構128が連結されている。第1押圧部124の押圧面126は、基部115に配置される積層体21の非発電部分44,54,64と位置合せされている(非発電部分44,54,64のみを押圧するように構成されている)。押込み距離調整機構128は、例えば、リニアアクチュエーターを有し、積層方向Dに関する第1押圧部124の押込み距離を調整する駆動装置である。
内側押圧機構130は、支柱部132および第2押圧部134を有し、図18に示されるように、外側押圧機構120から独立して個別に制御され、積層体21における発電部分42,52,62を押圧するために使用される。
支柱部132は、外側押圧機構120と干渉しない位置で、基部115に固定されており、第2押圧部134が積層方向Dに移動自在に取り付けられている。第2押圧部134は、凸部135を有し、積層方向Dに関し、基部115に対して近接離間自在に構成され、かつ、定圧押圧機構138が連結されている。凸部135の押圧面136は、基部115に配置される積層体21の発電部分42,52,62と位置合せされている(発電部分42,52,62のみを押圧するように構成されている)。定圧押圧機構138は、例えば、油圧シリンダー装置を有し、積層方向Dに関し、第2押圧部134を目標荷重(一定の荷重)で押込む駆動装置である。
距離センサー140は、押圧部124による押圧および押圧部134による押圧の完了時において、距離Lを測定するために使用される。距離Lは、第1押圧部124と第2押圧部134との間における押圧方向(積層方向D)に関する距離(相対距離)である。距離センサー140の測定方式は、特に限定されず、例えば、距離変化による受光素子の結像位置を距離に換算する方式や、光が照射されてから受光されるまでの時間差を距離に換算する方式を適宜適用することが可能である。
なお、押圧部124による押圧および押圧部134による押圧の完了時において、第1押圧部124の押圧面126の位置は非発電部分44,54,64の厚みに対応し、第2押圧部134の押圧面136の位置は発電部分42,52,62の厚みに対応する。したがって、第1押圧部124と第2押圧部134との間における押圧方向(積層方向D)に関する距離Lに基づいて、積層体21の厚み形状を検出することが可能である。
例えば、非発電部分44,54,64の表面および発電部分42,52,62の表面(第1押圧部124の押圧面126および第2押圧部134の押圧面136)が、同一平面上(あるいは略同一平面上)にあることが検出される場合(図18参照)、積層体21は、フラットである。図19に示されるように、発電部分42,52,62の表面が積層体21から離間する方向に膨出している(積層体21から離間する方向に関し、第2押圧部134の押圧面136が第1押圧部124の押圧面126より遠位である)ことが検出される場合、積層体21は、凸状である。図20に示されるように、発電部分42,52,62の表面が積層体21に近接する方向に窪んでいる(積層体21に近接する方向に関し、第2押圧部134の押圧面136が第1押圧部124の押圧面126より近位である)ことが検出される場合、積層体は、凹状である。
厚み形状の検出結果は、積層体21を3つのグレードA,BおよびCに分類するために使用される。例えば、グレードAは、凹状の積層体21に対応し、グレードBは、フラットの積層体21に対応し、グレードCは、凹状の積層体21に対応する。凹状の積層体21、フラットの積層体21および凹状の積層体21は、符号21A、21Bおよび21Cによって参照される。
レーザーマーカー145(図16参照)は、検出されたグレードを積層体21に、レーザーによってマークする(マークを形成する)ために使用される。マークは、例えば、A、B、Cの文字である。レーザーによる物理的効果は、例えば、変色させることである。レーザーの媒体および発振方式は特に限定されない。
制御部150(図16参照)は、CPU152、記憶装置153および入力部154を有し、外側押圧機構120、内側押圧機構130、距離センサー140およびレーザーマーカー145を制御するために使用される。
CPU152は、プログラムにしたがって各部の制御や各種の演算処理を実行するマイクロプロセッサ等から構成される制御回路であり、プレス装置110の各機能は、それに対応するプログラムをCPU152が実行することにより発揮される。記憶装置153は、各種プログラムおよび各種データを記憶するために使用され、ROM(リードオンリーメモリー)、RAM(ランダムアクセスメモリー)、書き換え可能な不揮発性半導体メモリー(例えば、フラッシュメモリー)、ハードディスクドライブ装置等が適宜組み合わされて構成される。
入力部154は、文字を入力するためのキーボード等からなる複数のキーを有するキーボード部を有し、例えば、押込み距離調整機構128の目標厚みや、定圧押圧機構138の目標荷重を入力(設定)するために使用される。
目標厚みは、積層方向Dに関する、少なくとも膜電極接着体30、カソードセパレータ50およびアノードセパレータ60の厚さの公差の積み上げ最大値に基づいて設定される。したがって、厚さの公差の積み上げ最大値を有する積層体21がプレス工程に適用された場合であっても、非発電部分44,54,64における積層方向Dの厚みの下限値(必要なシール性を発揮するための最低限の厚み)が確保され、かつ、非発電部分44,54,64に過度の応力が付与されることが抑制され、破損することが避けられる。
次に、制御部150の記憶装置153に記憶されているプログラムを説明する。
図21は、図16に示される制御部の記憶装置に記憶されているプログラムを説明するためのフローチャートである。なお、図21に示されるフローチャートにより示されるアルゴリズムは、制御部150の記憶装置153にプログラムとして記憶されており、CPU152によって実行される。
まず、外側押圧機構120が内側押圧機構130から独立して個別に制御され、第1押圧部124によって積層体21の非発電部分44,54,64が押圧される(ステップS10)(図17参照)。なお、第1押圧部124の押込み距離は、押込み距離調整機構128によって、積層方向Dに関する非発電部分44,54,64の厚みが、目標厚みになるように、調整される。
その後、内側押圧機構130が外側押圧機構120から独立して個別に制御され、第2押圧部134によって積層体21における発電部分42,52,62が押圧される(ステップS20)(図18参照)。なお、発電部分42,52,62は、定圧押圧機構138によって、目標荷重で押圧される。
そして、距離センサー140によって、押圧部124による押圧および押圧部134による押圧の完了時において、距離Lが測定される(ステップS30)。距離Lは、外側押圧機構120の第1押圧部124と、内側押圧機構130の第2押圧部134との間における押圧方向(積層方向D)に関する距離(相対距離)であり、積層体21の厚み形状と対応関係を有する。
次に、距離Lが下限値VCより大きくかつ上限値VAより小さいか否かが判断される(ステップS40)。
下限値VCは、発電部分42,52,62の表面が積層体21に近接する方向に窪んでいる(積層体21に近接する方向に関し、第2押圧部134の押圧面136が第1押圧部124の押圧面126より近位である)状況に対応する距離に対応する。一方、上限値VAは、発電部分42,52,62の表面が積層体21から離間する方向に膨出している(積層体21から離間する方向に関し、第2押圧部134の押圧面136が第1押圧部124の押圧面126より遠位である)状況に対応する距離に対応する。
つまり、下限値VCは、積層体21が凹状であるかフラットであるかを検出するための閾値であり、上限値VAは、積層体21が凸状であるかフラットであるかを検出するための閾値である。言い換えると、上限値VAおよび下限値VCは、積層体21がフラットであると判断する範囲を定義している。
距離Lが下限値VCと上限値VAとの間の範囲にある(下限値VCより大きくかつ上限値VAより小さい)と判断される場合(ステップS40:YES)、積層体21はフラットであると分類されるため、レーザーマーカー145によって積層体21に対してグレードBのマークが形成され(ステップS50)、プロセスは終了する。
距離Lが下限値VCと上限値VAとの間の範囲にないと判断される場合(ステップS40:NO)、距離Lが上限値VA以上であるか否かが判断される(ステップS60)。
距離Lが上限値VA以上であると判断される場合(ステップS60:YES)、積層体21は凸状であると分類されるため、レーザーマーカー145によって積層体21に対してグレードAのマークが形成され(ステップS70)、プロセスは終了する。
距離Lが上限値VA未満であると判断される場合(ステップS60:NO)、距離Lは下限値VC以下であり、積層体21は凹状であると分類されるため、レーザーマーカー145によって積層体21に対してグレードCのマークが形成され(ステップS80)、プロセスは終了する。
プレス工程(プレス装置110)においては、上記のように、積層体21における発電部分42,52,62の押圧と非発電部分(シール部)44,54,64の押圧とを個別に制御することが可能であるため、例えば、発電部分42,52,62は、積層体21を積層して形成されるスタックにおいて良好な発電性能を達成するための押圧条件を適用し、非発電部分(シール部)44,54,64は、積層体21を積層して形成されるスタックにおいて良好な発シール性を達成するための押圧条件を適用することにより、発電性能およびシール性を両立させることが可能である。
次に、本発明の実施の形態に係る変形例1〜3を順次説明する。
図22は、本発明の実施の形態に係る変形例1を説明するためのフローチャートである。
積層体21の厚み形状は、3つのグレードに分類される形態に限定されず、例えば、図22に示されるように、凸状の積層体21の厚み形状を、凸状のサイズに応じて3つのグレードA1,A2,A3に細分化することも可能である。
具体的なアルゴリズムとしては、まず、上述のように、ステップS10〜S50が実施され、ステップS60において、距離Lが上限値VA以上であるか否かが判断される(ステップS60)。
そして、距離Lが上限値VA以上であると判断される場合(ステップS60:YES)、距離Lが第2上限値VA2以上であるか否かが判断される(ステップS71)。距離Lが第2上限値VA2未満であると判断される場合(ステップS71:NO)、レーザーマーカー145によって積層体21に対してグレードA1のマークが形成され(ステップS72)、プロセスは終了する。
距離Lが第2上限値VA2以上であると判断される場合(ステップS71:YES)、距離Lが第3上限値VA3以上であるか否かが判断される(ステップS73)。距離Lが第3上限値VA3未満であると判断される場合(ステップS73:NO)、レーザーマーカー145によって積層体21に対してグレードA2のマークが形成され(ステップS74)、プロセスは終了する。
距離Lが第3上限値VA3以上であると判断される場合(ステップS73:YES)、レーザーマーカー145によって積層体21に対してグレードA3のマークが形成され(ステップS75)、プロセスは終了する。
一方、ステップS60において、距離Lが上限値VA未満であると判断される場合(ステップS60:YES)、上述のように、積層体21に対してグレードCのマークが形成され(ステップS80)、プロセスは終了する。
なお、凹状の積層体21の厚み形状を、凹状のサイズに応じて細分化することも可能である。
図23は、本発明の実施の形態に係る変形例2を説明するためのフローチャートである。
押圧部124による押圧および押圧部134による押圧が完了した後で、必要に応じて、再押圧を実行することも可能である。例えば、積層体21の厚み形状に応じて、外側押圧機構120によって非発電部分44,54,64を再押圧することも可能である。
具体的なアルゴリズムとしては、まず、非発電部分44,54,64の押圧(ステップS100)、発電部分42,52,62の押圧(ステップS110)、距離Lの測定(ステップS120)、距離Lが下限値VCと上限値VAとの間の範囲にある(下限値VCより大きくかつ上限値VAより小さい)か否かが判断される(ステップS130)。
そして、距離Lが下限値VCと上限値VAとの間の範囲にある(下限値VCより大きくかつ上限値VAより小さい)と判断される場合(ステップS130:YES)、積層体21はフラットであると分類されるため、積層体21に対してグレードBのマークが形成され(ステップS140)、プロセスは終了する。距離Lが下限値VCと上限値VAとの間の範囲にないと判断される場合(ステップS130:NO)、距離Lが上限値VA以上であるか否かが判断される(ステップS150)。
距離Lが上限値VA以上であると判断される場合(ステップS150:YES)、積層体21は凸状であると分類されるため、積層体21に対してグレードAのマークが形成され(ステップS160)、プロセスは終了する。
距離Lが上限値VA未満であると判断される場合(ステップS150:NO)、外側押圧機構120が内側押圧機構130から独立して個別に制御され、第1押圧部124によって非発電部分44,54,64が再押圧される(ステップS170)。なお、距離Lが上限値VA未満であると判断される場合、距離Lは下限値VC以下であり、積層体21は凹状であると分類される。つまり、発電部分42,52,62よりも大きな厚みを有する非発電部分44,54,64が再押圧されることになる。また、再押圧によって第1押圧部124が過剰に押し込まれないように、再押圧は、公差範囲内で実施される。
そして、距離Lが再測定され(ステップS180)、その後、距離Lが下限値VCと上限値VAとの間の範囲にある(下限値VCより大きくかつ上限値VAより小さい)か否かが判断される(ステップS190)。
距離Lが下限値VCと上限値VAとの間の範囲にある(下限値VCより大きくかつ上限値VAより小さい)と判断される場合(ステップS190:YES)、積層体21はフラットであると分類されるため、積層体21に対してグレードBのマークが形成され(ステップS200)、プロセスは終了する。距離Lが下限値VCと上限値VAとの間の範囲にないと判断される場合(ステップS190:NO)、距離Lは下限値VC以下であり、積層体21は凹状であると分類されるため、レーザーマーカー145によって積層体21に対してグレードCのマークが形成され(ステップS210)、プロセスは終了する。
変形例2においては、上記のように、積層体の厚み形状が凹状であると分類された場合、発電部分よりも大きな厚みを有する非発電部分が、再押圧されるため、発電部分の厚みと非発電部分の厚みの差を減少させ、凹状の積層体の割合を低下(フラットの積層体の割合を増加)させることが可能である。
図24は、本発明の実施の形態に係る変形例3を説明するための概略図である。
図24に示されるプレス装置110Aは、第2押圧部134によって押圧される発電部分42,52,62の反力を検出するための反力検出装置156を、さらに有する。
反力検出装置156は、装置本体157、リード線158A,158Bおよびリード線159A,159Bを有する。装置本体157は、例えば、抵抗測定器であり、リード線158A,158Bおよびリード線159A,159Bが接続される交流4端子(不図示)を有する。リード線158A,158Bは、基部115に相対する積層体21表面に位置するセパレータの発電部分52に接続される。リード線159A,159Bは、第2押圧部134の凸部135に相対する積層体21表面に位置するセパレータの発電部分52に接続される。リード線158A,158,159A,159Bとセパレータとの接続は、例えば、セパレータの発電部分52に形成されるタブ挿入口を利用することにより実施される。
積層体21の発電部分42,52,62の電気抵抗は、第2押圧部134によって付加される荷重によって変化し、その値は、発電部分42,52,62の反力に対応している。したがって、反力検出装置156は、第2押圧部134によって押圧される発電部分42,52,62の反力を検出することが可能である。
プレス装置110Aの制御部150は、積層体21の発電部分42,52,62に対する目標荷重と、第2押圧部134によって押圧されている発電部分42,52,62の反力とが、一致するように、定圧押圧機構138を制御する。したがって、変形例3においては、設定された押圧の荷重を、積層体の発電部分に対して正確に付加することが可能である。
以上のように本実施の形態に係る燃料電池の製造装置におけるプレス装置および製造方法におけるプレス工程においては、積層体における非発電部分を押圧する第1押圧部と、積層体における発電部分を押圧する第2押圧部とは、個別に制御される(発電部分の押圧と非発電部分(シール部)の押圧とが個別に制御される)。したがって、例えば、発電部分は、積層体(電池モジュール)を積層して形成されるスタックにおいて良好な発電性能を達成するための押圧条件を適用し、非発電部分(シール部)は、積層体(電池モジュール)を積層して形成されるスタックにおいて良好な発シール性を達成するための押圧条件を適用することにより、良好な発電性能および良好なシール性を有する燃料電池を製造することができる。つまり、発電性能およびシール性を両立させ得る燃料電池の製造装置および製造方法を提供することが可能である。
非発電部分(シール部)の積層方向の厚みは、積層体(電池モジュール)を積層して形成されるスタックのシール性を左右する。したがって、プレス装置(プレス工程)において、非発電部分の厚みが目標厚みになるように、押込み距離調整機構を制御する場合、非発電部分の厚みが一定となるため、スタックのシール性を平均化することが可能である。
目標厚みは、少なくともセパレータおよび膜電極接着体の厚さの公差の積み上げ最大値に基づいて、設定されることが好ましい。この場合、厚さの公差の積み上げ最大値を有する積層体がプレス工程に適用された場合であっても、非発電部分における積層方向の厚みの下限値(必要なシール性を発揮するための最低限の厚み)が確保され、かつ、非発電部分に過度の応力が付与されることが抑制され、破損することが避けられる。つまり、積層方向の厚みに依存する非発電部分の強度(シール部の剥がれに対する強度)を確保することが可能である。
プレス装置(プレス工程)において、定圧押圧機構によって、発電部分を目標荷重で押圧することが好ましい。この場合、発電部分の押圧は、荷重に基づいて行われるため、発電部分に対して荷重を確実に付加すること(予備圧縮すること)が可能である。したがって、積層体(電池モジュール)を積層して形成されるスタックに締結荷重を付与して圧縮する際、隣接する積層体同士の接触抵抗を低減して発電性能を保証することが容易である。なお、発電部分に対して付加される荷重は、所望の接触抵抗を得るためのスタックの締結荷重と同等であることが好ましい。
プレス装置(プレス工程)において、目標荷重と、第2押圧部によって押圧される発電部分の反力とが、一致するように、定圧押圧機構を制御する場合、発電部分に対して目標荷重を正確に付加することが可能である。
プレス装置(プレス工程)において、第1押圧部と第2押圧部との間における押圧方向に関する距離を、距離センサーによって測定することが好ましい。この場合、第1押圧部の位置は非発電部分の厚みに対応し、第2押圧部の位置は発電部分の厚みに対応するため、第1押圧部と第2押圧部との間における押圧方向に関する距離(相対位置)に基づいて、積層体の厚み形状を検出することが可能である。また、積層体を押圧する際に積層体の厚み形状を検出することが可能であるため、別途設けられた測定装置(工程)によって積層体の厚み形状を検出する場合と比較し、工数を削減することが可能である。
積層体の厚み形状は、前記距離の測定結果に基づき、少なくとも3つのグレードに分類することが好ましい。この場合、スタックを形成する際、グレードに基づき、積層方向に関するスタックの厚みが一定となるように、積層体を選択することが可能となる。
燃料電池の製造装置は、接着剤を塗布するための接着剤塗布装置と、接着剤を硬化するための接着剤硬化装置と、をさらに有することが好ましい。この場合、セパレータおよび膜電極接着体に対する接着剤の塗布から接着剤の硬化までを連続的に実施することが可能である。
燃料電池の製造方法において、プレス工程の後において積層体に含まれる接着剤を硬化し、その後において、積層体が積層されているスタックを形成する際、積層体を、グレードに基づき、積層方向に関するスタックの厚みが一定となるように、選択することが好ましい。この場合、スタック毎の積層方向に関する厚みが平均化されるため(厚みのばらつきが削減されるため)、積層体(電池モジュール)間に位置するシールプレートのシール潰し代が小さくなることが抑制され、シール潰し代が小さくなることに起因するシール性低下のリスクが低減される。
プレス工程において、積層体の厚み形状が凹状であると分類された場合、非発電部分を、第1押圧部によって再押圧することが好ましい。この場合、発電部分よりも大きな厚みを有する非発電部分が、再押圧されるため、発電部分の厚みと非発電部分の厚みの差を減少させ、凹状の積層体の割合を低下(フラットの積層体の割合を増加)させることが可能である。したがって、スタックを形成する際、積層体(電池モジュール)の積層方向に関する厚みをさらに平均化する(厚みのばらつきをさらに削減する)ことが可能である。なお、再押圧は、公差範囲内で実施することが好ましい。
スタック形成工程においては、シールプレートを、積層体の間に取り外し可能に配置することが好ましい。これにより、シールプレートのシール部材が劣化した場合(積層体(電池モジュール)間のシール性が悪化した場合)、シールプレートを交換することにより、シール性を維持することが可能である。
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲で種々改変することができる。例えば、反力検出装置は、抵抗測定器を利用する形態に限定されず、必要に応じ、例えば、ロードセル、歪みゲージなどを適宜利用することも可能である。