以下、適宜図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。ただし、これらの実施の形態に記載されている装置等の形状、大きさ、寸法比、その相対配置などは、とくに特定的な記載がない限り、本発明の範囲を図示されているもののみに限定するものではない。単なる説明例として、模式的に図示しているに過ぎない。
また、以下の説明では、現像液の具体例として、半導体や液晶パネル基板の製造工程で主に使われる2.38%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(以下、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドをTMAHという。)を、適宜用いて説明する。ただし、本発明が適用される現像液はこれに限定されるものではない。本発明の現像液の管理方法や装置が適用できる他の現像液の例として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウムなどの無機化合物の水溶液や、トリメチルモノエタノールアンモニウムハイドロオキサイド(コリン)などの有機化合物の水溶液を挙げることができる。
以下の説明では、アルカリ成分濃度、溶解フォトレジスト濃度、吸収二酸化炭素濃度などの成分濃度は、重量百分率濃度(wt%)による濃度である。「溶解フォトレジスト濃度」とは、溶解したフォトレジストをフォトレジストの量として換算した場合の濃度をいい、「吸収二酸化炭素濃度」とは、吸収された二酸化炭素を二酸化炭素の量として換算した場合の濃度をいうものとする。
現像処理プロセスでは、現像液が露光処理後のフォトレジスト膜の不要部分を溶かすことにより、現像が行われる。現像液に溶解したフォトレジストは、現像液のアルカリ成分との間にフォトレジスト塩を生じる。このため、現像液を適切に管理していなければ、現像処理が進行するにつれて、現像液は現像活性を有するアルカリ成分が消費されて劣化し、現像性能が悪化していく。同時に、現像液中には溶解したフォトレジストがアルカリ成分とのフォトレジスト塩として蓄積されていく。
現像液に溶解したフォトレジストは、現像液中で界面活性作用を示す。このため、現像液に溶解したフォトレジストは、現像処理に供されるフォトレジスト膜の現像液に対するぬれ性を高め、現像液とフォトレジスト膜とのなじみを良くする。したがって、適度にフォトレジストを含む現像液では、現像液がフォトレジスト膜の微細な凹部内にもよく行き渡るようになり、微細な凹凸を有するフォトレジスト膜の現像処理を良好に実施できる。
また、近年の現像処理では、基板が大型化したことに伴い、大量の現像液が繰り返し使用されるようになったため、現像液が空気に曝される機会が増えている。ところが、アルカリ性現像液は、空気に曝されると空気中の二酸化炭素を吸収する。吸収された二酸化炭素は、現像液のアルカリ成分との間に炭酸塩を生じる。このため、現像液を適切に管理していなければ、現像液は現像活性を有するアルカリ成分が吸収された二酸化炭素により消費され減少する。同時に、現像液中には吸収された二酸化炭素がアルカリ成分との炭酸塩として蓄積されていく。
しかしながら、現像液中の炭酸塩は、現像液中でアルカリ性を示すため、現像作用を有している。
このように、現像液に溶解されたフォトレジストや吸収された二酸化炭素が、現像処理の現像活性を失活させるとする従来の認識とは異なり、実際には現像液の現像性能に寄与している。そのため、溶解フォトレジストや吸収二酸化炭素を完全に排除するような現像液管理をするのではなく、現像液中に溶解フォトレジストや吸収二酸化炭素を溶存することを許容しつつ、これらを最適な濃度に維持管理する現像液管理が必要である。
また、現像液中に生じたフォトレジスト塩や炭酸塩は、その一部が解離して、フォトレジストイオンや炭酸イオン、炭酸水素イオンなど、多様な遊離イオンを生じる。そして、これらの遊離イオンは、現像液の導電率に様々な寄与率で影響を及ぼしている。
これらの点につき、本発明者が、現像液管理について鋭意研究したところ、炭酸塩やレジスト塩も現像液中で一部が遊離して現像作用に寄与すること、および、失活すると思われていたこれらの成分からの現像作用への寄与をも併せて考慮した現像液管理が現像液の導電率値を管理することによって実現できること、さらに、このような導電率の管理値は吸収二酸化炭素濃度及び溶解フォトレジスト濃度により様々に異なっていること、の知見を得た。
そこで発明者は、現像液としてTMAH水溶液の管理を行う場合を想定して、溶解フォトレジスト濃度、吸収二酸化炭素濃度を様々に変化させて、フォトレジストに対する所望の現像性能と、現像液の導電率値との関係を求めた。
吸収二酸化炭素濃度を0.0〜1.3(wt%)の間で変化させ、溶解フォトレジスト濃度を0.0〜0.40(wt%)(0.0〜1.3(abs)相当)の間で変化させたTMAH水溶液の現像液のサンプルを調製した。発明者は、これらのサンプルについて、現像液の導電率、吸収二酸化炭素濃度、および、溶解フォトレジスト濃度を測定し、現像性能、導電率、吸収二酸化炭素濃度、および、溶解フォトレジスト濃度成分との相関を確かめる実験を行った。吸収二酸化炭素濃度を一つの項目とし縦又は横に配列し、溶解フォトレジスト濃度を他の項目とし、横又は縦に配列したマトリックス(組み合わせ表)を作成した。吸収二酸化炭素濃度と溶解フォトレジスト濃度との組み合わせ毎に、フォトレジストに対する所望の現像性能を満足する、現像液の導電率を求め、各欄に記入し、マトリックスを完成させた。
ここで、所定の現像性能とは、現像工程で実現しようとしている線幅や残膜厚が実現されるときの現像液の現像性能を意味する。
代表的な各サンプルの吸収二酸化炭素濃度、溶解フォトレジスト濃度、および、導電率の測定結果を例示する。吸収二酸化炭素濃度が0.0(wt%)で、溶解フォトレジスト濃度が0.0(wt%)(0.0(abs)相当)である場合(いわゆる新液)、所定の現像性能を発揮できる現像液の導電率は54.58(mS/cm)であった。
吸収二酸化炭素濃度が0.0(wt%)で、溶解フォトレジスト濃度が0.25(wt%)(0.8abs相当)である場合、所定の現像性能を発揮できる現像液の導電率は54.55(mS/cm)であり、溶解フォトレジスト濃度が0.40(wt%)(1.3abs相当)である場合、現像液の導電率は54.53(mS/cm)であった。
また、溶解フォトレジスト濃度が0.0(wt%)(0.0(abs)相当)で、吸収二酸化炭素濃度が0.6(wt%)である場合、現像液の導電率は54.60(mS/cm)であり、吸収二酸化炭素濃度が1.3(wt%)である場合、現像液の導電率は54.75(mS/cm)であった。
また、吸収二酸化炭素濃度が0.6(wt%)で、溶解フォトレジスト濃度が0.22(wt%)(0.7abs相当)である場合、現像液の導電率は54.60(mS/cm)であり、溶解フォトレジスト濃度が0.40(wt%)(1.3abs相当)である場合、現像液の導電率は54.58(mS/cm)であった。
また、吸収二酸化炭素濃度が1.3(wt%)で、溶解フォトレジスト濃度が0.22(wt%)(0.7abs相当)である場合、現像液の導電率は54.75(mS/cm)であり、溶解フォトレジスト濃度が0.40(wt%)(1.3abs相当)である場合、現像液の導電率は54.75(mS/cm)であった。
なお、上述の実験においては、ある濃度領域において、吸収二酸化炭素濃度が大きくなると、導電率の管理値が大きくなる傾向にあり、溶解フォトレジスト濃度が大きくなると、導電率の管理値が小さくなる傾向が見られた。
上述の実験では、各サンプルの現像液の導電率は導電率計により測定した値を用いた。吸収二酸化炭素濃度は滴定分析法によりを測定した値を用いた。溶解フォトレジスト濃度は重量調製値を用いた。滴定は、塩酸を滴定試薬とする中和滴定である。滴定装置として、三菱化学アナリテック社製の自動滴定装置GT−200を使用した。
なお、上述の導電率、吸収二酸化炭素濃度、及び溶解フォトレジスト濃度は、導電率、吸収二酸化炭素濃度、及び溶解フォトレジスト濃度と現像性能との関係性を見出すためであり、各数値に限定されない。
上述したように、現像性能を発揮できる導電率は、吸収二酸化炭素濃度及び溶解フォトレジスト濃度により様々に異なっていることが理解できる。このように、現像液の管理において、吸収二酸化炭素、及び溶解フォトレジストを含む現像液では、導電率を管理値とし、さらに吸収二酸化炭素濃度、及び溶解フォトレジスト濃度を測定し、各測定結果に基づいて導電率の管理値を異ならせることにより、所定の現像性能を発揮させることができる。
つまり、現像液の溶解フォトレジスト濃度、及び吸収二酸化炭素濃度を指標として特定される濃度領域ごとに、所定の現像性能となることが予め確認された現像液の導電率値を有する導電率データ(マトリックス)を記憶し、導電率データ(マトリックス)を利用することで、所定の現像性能を発揮させることができる、現像液の管理が可能となる。
また、発明者が、現像液管理について鋭意研究したところ、炭酸塩やレジスト塩も現像液中で一部が遊離して現像作用に寄与すること、および、失活すると思われていたこれらの成分からの現像作用への寄与をも併せて考慮した現像液管理が現像液のアルカリ濃度値を管理することによって実現できること、さらに、このようなアルカリ濃度の管理値は吸収二酸化炭素濃度及び溶解フォトレジスト濃度と相関関係のある吸光度により様々に異なっていること、の知見を得た。
そこで発明者は、現像液としてTMAH水溶液の管理を行う場合を想定して、アルカリ性を示す現像液の導電率に基づいて測定されるアルカリ濃度と、現像液の溶解フォトレジスト濃度と相関関係のある吸光度と、現像液の吸収二酸化炭素濃度を様々に変化させて、フォトレジストに対する所望の現像性能と、現像液のアルカリ濃度との関係を求めた。
吸収二酸化炭素濃度を0.0〜1.3(wt%)の間で変化させ、溶解フォトレジスト濃度と相関関係のある吸光度を0.0〜1.3(abs)の間で変化させたTMAH水溶液の現像液のサンプルを調製した。発明者は、これらのサンプルについて、現像液のアルカリ濃度、吸収二酸化炭素濃度、および、吸光度を測定し、現像性能、アルカリ濃度、吸収二酸化炭素濃度、および、吸光度との相関を確かめる実験を行った。吸収二酸化炭素濃度を一つの項目とし縦又は横に配列し、吸光度を他の項目とし、横又は縦に配列したマトリックス(組み合わせ表)を作成した。吸収二酸化炭素濃度と吸光度との組み合わせ毎に、フォトレジストに対する所望の現像性能を満足する、現像液のアルカリ濃度を求め、各欄に記入し、マトリックスを完成させた。
ここで、所定の現像性能とは、現像工程で実現しようとしている線幅や残膜厚が実現されるときの現像液の現像性能を意味する。
代表的な各サンプルの吸収二酸化炭素濃度、吸光度、および、アルカリ濃度の測定結果を例示する。吸収二酸化炭素濃度が0.0(wt%)で、吸光度が0.0(abs)である場合(いわゆる新液)、所定の現像性能を発揮できる現像液のアルカリ濃度は2.380(wt%)であった。
吸収二酸化炭素濃度が0.0(wt%)で、吸光度が0.8absである場合、所定の現像性能を発揮できる現像液のアルカリ濃度は2.379(wt%)であり、吸光度が1.3absである場合、現像液のアルカリ濃度は2.378(wt%)であった。
また、吸光度が0.0(abs)で、吸収二酸化炭素濃度が0.6(wt%)である場合、現像液のアルカリ濃度は2.381(wt%)であり、吸収二酸化炭素濃度が1.3(wt%)である場合、現像液のアルカリ濃度は2.388(wt%)であった。
また、吸収二酸化炭素濃度が0.6(wt%)で、吸光度が0.7absである場合、現像液のアルカリ濃度は2.381(wt%)であり、吸光度が1.3absである場合、現像液のアルカリ濃度は2.380(wt%)であった。
また、吸収二酸化炭素濃度が1.3(wt%)で、吸光度が0.7absである場合、現像液のアルカリ濃度は2.388(wt%)であり、吸光度が1.3absである場合、現像液のアルカリ濃度は2.388(wt%)であった。
なお、上述の実験においては、ある濃度領域において、吸収二酸化炭素濃度が大きくなると、アルカリ濃度の管理値が大きくなる傾向にあり、吸光度が大きくなると、アルカリ濃度の管理値が小さくなる傾向が見られた。
上述の実験では、各サンプルの現像液のアルカリ濃度は、導電率計で導電率を測定することにより求めることができる。具体的には、TMAH水溶液の新液(現像前のTMAH水溶液)のアルカリ濃度と導電率値との相関関係(例えば直線関係)を予め検量線として作成しておく。この検量線に基づいて、導電率値からアルカリ濃度を求めることができる。
吸収二酸化炭素濃度は滴定分析法によりを測定した値を用いた。滴定は、塩酸を滴定試薬とする中和滴定である。滴定装置として、三菱化学アナリテック社製の自動滴定装置GT−200を使用した。吸光度の測定には吸光光度計を用いた。
なお、上述のアルカリ濃度、吸収二酸化炭素濃度、及び吸光度は、アルカリ濃度、吸収二酸化炭素濃度、及び吸光度と現像性能との関係性を見出すためであり、各数値に限定されない。
上述したように、現像性能を発揮できるアルカリ濃度は、吸収二酸化炭素濃度、及び吸光度により様々に異なっていることが理解できる。このように、現像液の管理において、吸収二酸化炭素、及び溶解フォトレジストを含む現像液では、アルカリ濃度を現像液の管理値とし、さらに吸収二酸化炭素濃度、及び吸光度を測定し、各測定結果に基づいてアルカリ濃度の管理値を異ならせることにより、所定の現像性能を発揮させることができる。
つまり、現像液の吸光度、及び吸収二酸化炭素濃度を指標として特定される濃度領域ごとに、所定の現像性能となることが予め確認された現像液のアルカリ濃度値を有するアルカリ濃度データ(マトリックス)を記憶し、アルカリ濃度データ(マトリックス)を利用することで、所定の現像性能を発揮させることができる。
次に、具体的な実施例について、図面を参照しながら説明する。
〔第一実施形態〕
図1は、本実施形態の現像液管理装置Dの説明をするための現像工程の模式図である。本発明の現像液管理装置Dが、現像工程設備A、補充液貯留部B、循環攪拌機構Cなどとともに図示されている。
まず、現像工程設備Aについて簡単に説明する。
現像工程設備Aは、主に、現像液貯留槽61、オーバーフロー槽62、現像室フード64、ローラーコンベア65、現像液シャワーノズル67などからなる。現像液貯留槽61には現像液が貯留されている。現像液は、補充液が補充されて組成管理される。現像液貯留槽61は、液面計63とオーバーフロー槽62とを備え、補充液を補給することによる液量の増加を管理している。現像液貯留槽61と現像液シャワーノズル67とは、現像液管路80により接続されている。現像液貯留槽61内に貯留された現像液が現像液管路80に設けられた循環ポンプ72によりフィルター73を介して現像液シャワーノズル67に送液される。ローラーコンベア65は、現像液貯留槽61の上方に備えられ、フォトレジスト膜の製膜された基板66を搬送する。現像液は現像液シャワーノズル67から滴下される。ローラーコンベア65により搬送される基板66は滴下される現像液の中を通過することで現像液に浸される。その後、現像液は、現像液貯留槽61に回収され、再び貯留される。このように、現像液は、現像工程で循環して繰り返し使用される。なお、小型のガラス基板における現像室内は、窒素ガスを充満させるなどにより、空気中の二酸化炭素を吸収しないような処理が施される場合もある。なお、劣化した現像液は廃液ポンプ71を作動することにより廃液(ドレン)される。
循環攪拌機構Cについて説明する。循環攪拌機構Cは、主として、現像液貯留槽61内に貯留された現像液を循環し、攪拌するためのものである。
現像液貯留槽61の底部と現像液貯留槽61の側部とは、途中に循環ポンプ74とフィルター75とが設けられた循環管路85により接続されている。循環ポンプ74を作動させると、現像液貯留槽61に貯留されたエッチング液は、循環管路85を介して循環する。現像液は、循環管路85を介して現像液貯留槽61の側部から現像液貯留槽61に戻され、貯留された現像液を攪拌する。
また、合流管路84を介して循環管路85に補充液が流入した場合、この流入した補充液は、循環管路85内において循環する現像液と混合されながら、現像液貯留槽61内に供給される。
次に、本実施形態の現像液管理装置Dについて説明する。本実施形態の現像液管理装置Dは、アルカリ性を示す現像液の溶解フォトレジスト濃度及び吸収二酸化炭素濃度を指標として特定される濃度領域ごとに所定の現像性能となることが予め確認された現像液の導電率値を有する導電率データを用いて、現像液の溶解フォトレジスト濃度の測定値、及び吸収二酸化炭素濃度の測定値により特定される濃度領域の導電率を制御目標値として、現像液の導電率が制御目標値となるように現像液に補充液を補給する方式の現像液管理装置である。
現像液管理装置Dは、測定部1と、制御手段21とを備えている。現像液管理装置Dはサンプリング配管15及び出口側配管16により現像液貯留槽61と接続されている。
測定部1は、サンプリングポンプ14と、導電率計11、及び溶解フォトレジスト濃度を測定する第1濃度測定手段12、及び吸収二酸化炭素濃度を測定するための第2濃度測定手段13を、備えている。導電率計11、第1濃度測定手段12、及び第2濃度測定手段13は、サンプリングポンプ14の後段に直列に接続される。測定部1は、さらに、測定精度を高めるために、サンプリングした現像液を所定の温度に安定させる温度調節手段(図示せず)を備えていることが望ましい。この際、温度調節手段は、測定手段の直前に設けられていることが好ましい。サンプリング配管15は、現像液管理装置Dの測定部1のサンプリングポンプ14に接続されており、出口側配管16は、測定手段末端の配管と接続されている。
また、図1では、導電率計11、第1濃度測定手段12、及び第2濃度測定手段13が、直列に接続された態様を図示したが、導電率計11、第1濃度測定手段12、及び第2濃度測定手段13の接続はこれに限定されない。並列接続でもよいし、それぞれが独立に送液経路を備えて測定するのでもよい。導電率計11、第1濃度測定手段12、及び第2濃度測定手段13の順番についても、特にその先後を問わない。各測定手段の特徴に応じて適宜最適な順番で測定すればよい。
制御手段21は、データ記憶部23と制御部31とを備えている。データ記憶部23には、アルカリ性を示す現像液の溶解フォトレジスト濃度及び吸収二酸化炭素濃度を指標として特定される濃度領域ごとに所定の現像性能となることが予め確認された、使用する現像液の導電率値を有する導電率データが格納されている。
制御手段21は、測定部1の導電率計11、第1濃度測定手段12、及び第2濃度測定手段13と信号線により接続されている。測定部1で測定された導電率値、溶解フォトレジスト濃度値、及び、吸収二酸化炭素濃度値が制御手段21へと送られる。
制御手段21の制御部31は、現像液に補充液を送液する流路に設けられた制御弁41〜43と、信号線により接続されている。図1では、制御弁41〜43は、現像液管理装置Dの内部部品として図示したが、制御弁41〜43は、本実施形態の現像液管理装置Dの部品として必須のものというわけではない。制御部31は、制御弁41〜43の動作を制御して、現像液に補充液を補給できるように、制御弁41〜43と連絡していればよい。制御弁41〜43は、現像液管理装置Dの外に存在するのでもよい。
続いて、本実施形態の現像液管理装置Dの動作について説明する。
現像液貯留槽61からサンプリングされた現像液は、測定部1内に送液され、温度調節される。現像液は、その後、導電率計11、第1濃度測定手段12、及び第2濃度測定手段13に送液され、導電率、溶解フォトレジスト濃度、及び吸収二酸化炭素濃度が測定される。各測定データは制御手段21に送られる。
制御部31には、現像液の溶解フォトレジスト濃度及び吸収二酸化炭素濃度を指標として特定される濃度領域ごとに所定の現像性能となることが予め確認された現像液の導電率値を有する導電率データの導電率値に対応する、導電率の管理値が設定されている。制御部31は、測定部1から受け取った測定データにより、以下のように制御を行う。
制御部31は、測定部1から受け取った溶解フォトレジスト濃度と吸収二酸化炭素濃度とに基づいて、データ記憶部23に記憶されている導電率データのうち、測定された溶解フォトレジスト濃度及び測定された吸収二酸化炭素濃度により特定される濃度領域の導電率値を求める。求めた導電率値を現像液の導電率の制御目標値として設定する。
制御部31は、測定部1から受け取った測定された導電率と、制御目標値として設定された導電率とを比較し、比較結果に応じて次のような管理を行う。すなわち、制御目標値として設定された導電率が、測定された導電率と同じ場合、基本的に現像液に補充液を加えない。また、制御目標値として設定された導電率が、測定された導電率より大きい場合、現像液に導電率を上げるように作用をする補充液を補給すればよい。また、制御目標値として設定された導電率が、測定された導電率より小さい場合、現像液に導電率を下げるように作用をする補充液を補給すればよい。
ここで、現像液に補給される補充液としては、例えば、現像液の原液や新液、純水などがある。
補充液は、補充液貯留部Cの補充液貯留槽91、92に貯留されている。補充液貯留槽91、92は、バルブ46、47を備えた窒素ガス用管路86が接続されており、この管路を介して供給される窒素ガスにより加圧されている。また、補充液貯留槽91、92にはそれぞれに補充液用管路81、82が接続され、通常開いた状態のバルブ44、45を介して補充液が送液される。補充液用管路81、82及び純水用管路83には制御弁41〜43が備えられており、制御弁41〜43は制御部3により開閉制御される。制御弁が動作することにより、補充液貯留槽91、92に貯留されていた補充液が圧送され、また、純水が送液される。その後、補充液は合流管路84を経て、循環攪拌機構Dと合流し、現像液貯留槽61に補給され攪拌される。
補給により補充液貯留槽91、92内に貯留された補充液が減少すると、その内圧が下がって供給量が不安定となるため、補充液の減少に応じてバルブ46、47を適宜開いて窒素ガスを供給し、補充液貯留槽91、92の内圧が保たれるように維持される。補充液貯留槽91、92が空になったときは、バルブ44、45を閉じて、補充液を満たした新しい補充液貯留槽と交換するか、または、別途調達した補充液を空になった補充液貯留槽に再び充填する。
制御弁41〜43の制御は、例えば、次のように行われる。制御弁の開時に流れる流量が調整されていれば、制御弁を開けている時間を管理することにより、補給すべき液量の補充液を補給することができる。制御部31は、測定部1から受け取った測定された導電率と、制御目標値として設定された導電率に基づいて、補給すべき液量の補充液が流れるように、所定時間制御弁を開けるように制御弁に制御信号を発する。
制御の方式は、制御量を目標値に合わせる制御に用いられる各種の制御方法を採用し得る。特に、比例制御(P制御)、積分制御(I制御)、微分制御(D制御)、及び、これらを組み合わせた制御(PI制御など)が好ましい。より好ましくは、PID制御が適している。
以上により、本実施形態に係る現像液管理装置Dによれば、現像液がどのような溶解フォトレジスト濃度及び吸収二酸化炭素濃度となろうとも、現像液中の導電率で、現像液を管理することにより、現像作用に活性を有する成分が維持されるので、所望の現像性能を維持でき、所望の線幅及び残膜厚を維持できる現像処理を実現できる。
また、本実施形態に係る現像液管理装置Dによれば、現像性能が予め確認された現像液の導電率値の導電率データを使用して制御目標管理値とすることで、現像液の溶解フォトレジスト濃度が0.0〜0.40(wt%)(0.0〜1.3(abs)相当)であり、かつ吸収二酸化炭素濃度が0.0〜1.3(wt%)であっても、所望の現像活性を有する現像液として使用することができる。すなわち、本実施形態に係る現像液管理装置Dによれば、現像液の溶解フォトレジスト濃度が0.25(wt%)以上(0.8(abs)相当)、かつ吸収二酸化炭素濃度が0.6(wt%)以上であっても、現像液を廃液することなく使用でき、現像液の廃液量を減らすことが可能となる。
上述において、現像液の導電率、吸収二酸化炭素濃度、及び溶解フォトレスト濃度と、導電率データを用いた例を説明した。これに限定されることなく、現像液のアルカリ濃度、吸収二酸化炭素濃度、及び吸光度と、アルカリ濃度データを用いて、現像液を管理することができる。
〔第二実施形態〕
図2は、本実施形態の現像液管理装置Dの説明をするための現像工程の模式図である。本発明の現像液管理装置Dが、現像工程設備A、補充液貯留部B、循環攪拌機構Cなどとともに図示されている。なお、第一実施形態の構成と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する場合がある。
現像液管理装置Dの測定部1は、導電率計11、現像液の溶解フォトレジスト濃度と相関のある現像液の特性値と、現像液の吸収二酸化炭素濃度と相関のある現像液の特性値とを測定する複数の測定装置を備えている。例えば、溶解フォトレジスト濃度と相関のある現像液の特性値を測定する第1特性値測定手段12Aとして、例えばλ=560nmにおける吸光度を測定する吸光光度計を備えている。吸収二酸化炭素濃度と相関のある現像液の特性値を測定する第2特性値測定手段13Aとして、現像液の密度を測定する密度計を備えている。
ここで、「相関のある」現像液の特性値とは、その特性値がその成分濃度と関係があり、その成分濃度の変化に応じて特性値が変わるような関係にあることをいう。例えば、現像液の成分濃度のうち少なくとも成分濃度Aと相関のある現像液の特性値aとは、特性値aが成分濃度を変数とする関数により求められるときに、変数の一つに少なくとも成分濃度Aを含むことをいう。特性値aが成分濃度Aのみの関数であってもよいが、通常は、成分濃度Aのほかに、成分濃度BやCなどを変数とする多変数関数となっているときに、多変量解析法(例えば、重回帰分析法)を用いる意義が大きい。
制御手段21は、データ記憶部23、制御部31、及び演算部32を備えている。演算部32は、測定部1で測定された現像液の複数の特性値から、多変量解析法により、現像液の溶解フォトレジスト濃度の測定値及び吸収二酸化炭素濃度の測定値を算出する。
本実施形態では、現像液貯留槽61からサンプリングされた現像液は、測定部1内に送液され、温度調節される。現像液は、その後、導電率計11、第1特性値測定手段12A吸、及び第2特性値測定手段13Aに送液され、導電率、吸光度、及び密度が測定される。各測定データは制御手段21に送られる。
演算部32は、測定部1で測定された吸光度、及び密度から多変量解析法により、現像液の溶解フォトレジスト濃度の測定値及び吸収二酸化炭素濃度の測定値を算出する。この際、導電率、吸光度、及び密度から多変量解析法により溶解フォトレジスト濃度の測定値及び吸収二酸化炭素濃度の測定値を算出することもできる。
制御部31は、演算部32で算出された溶解フォトレジスト濃度と吸収二酸化炭素濃度とに基づいて、データ記憶部23に記憶されている導電率データのうち、測定された溶解フォトレジスト濃度及び測定された吸収二酸化炭素濃度により特定される濃度領域の導電率値を求める。求めた導電率値を現像液の導電率の制御目標値として設定する。
その他の構成、動作などは、第一実施形態と同様であるので、省略する。
次に、現像液の複数の特性値から、溶解フォトレジスト濃度の測定値及び吸収二酸化炭素濃度を、多変量解析法により算出する手法について説明する。
発明者は、演算手法に多変量解析法(例えば、重回帰分析法)を用いれば、従来法を用いた場合より、精度よく現像液の各成分の濃度を算出できること、及び、従来困難であった吸収二酸化炭素濃度が測定できること、を見出した。多変量解析法(例えば、重回帰分析法)により算出した現像液の成分濃度(溶解フォトレジスト、及び濃度吸収二酸化炭素濃度)を用いれば、予め現像性の確認された溶解フォトレジスト濃度、及び吸収二酸化炭素濃度と導電率値を有する導電率データから、目的の導電率値を容易に得ることが可能となる。
2.38%TMAH水溶液の管理を行う場合を想定して、アルカリ成分濃度、溶解フォトレジスト濃度、吸収二酸化炭素濃度を様々に変化させたTMAH水溶液を模擬現像液サンプルとして調製した。発明者は、これらの模擬現像液サンプルについて測定した各種特性値から、重回帰分析法によりその成分濃度を求める実験を行った。以下に、重回帰分析法による一般的な演算手法を説明し、そのあと、発明者の行った実験に基づいて、重回帰分析法を用いた現像液の成分濃度の演算手法について説明する。
重回帰分析法は校正と予測の二段階からなる。n成分系の重回帰分析法において、校正標準溶液をm個用意したとする。i番目の溶液中に存在するj番目の成分の濃度をCijと表す。ここで、i=1〜m、j=1〜nである。m個の標準溶液について、それぞれ、p個の特性値(例えば、ある波長における吸光度とか導電率などの特性値)Aik(k=1〜p)を測定する。濃度データと特性データは、それぞれ、まとめて行列の形(C,A)に表すことができる。
これらの行列を関係づける行列を校正行列といい、ここでは記号S(Skj ;k=1〜p、j=1〜n)で表す。
既知のCとA(Aの内容は、同質の測定値のみならず異質の測定値が混在しても構わない。例えば、導電率と吸光度と密度。)からSを行列演算により算出するのが校正段階である。この時、p>=n、且つ、m>=npでなければならない。Sの各要素は全て未知数であるから、m>npであることが望ましく、その場合は次のように最小二乗演算を行う。
ここで、上付きのTは転置行列を、上付きの−1は逆行列を意味する。
濃度未知の試料液についてp個の特性値を測定し、それらをAu(Auk;k=1〜p)とすれば、それにSを乗じて求めるべき濃度Cu(Cuj;j=1〜n)を得ることができる。
これが予測段階である。
発明者は、使用済みのアルカリ性現像液(2.38%TMAH水溶液)を、アルカリ成分、溶解フォトレジスト、吸収二酸化炭素の3成分からなる多成分系(n=3)とみなして、当該現像液の特性値として3つの特性値(p=3)、すなわち、現像液の導電率値、特定波長における吸光度値、及び、密度値から、上記重回帰分析法により各成分濃度を算出する実験を行った。発明者は、2.38%TMAH水溶液を現像液の基本組成として、アルカリ成分濃度(TMAH濃度)、溶解フォトレジスト濃度、吸収二酸化炭素濃度を様々に変化させた11個の校正標準溶液を調製した(m=11で、p>=nかつm>npを満たす)。
実験は、11個の校正標準溶液について、導電率値、波長λ=560nmにおける吸光度値、及び、密度値を現像液の特性値として測定し、各成分濃度を線形重回帰分析法(Multiple Linear Regression − Inverse Least Squares;MLR−ILS)により演算した。
測定は、校正標準溶液を25.0℃に温度調整して、行った。温度調整は、25℃付近に温度管理された恒温水槽に校正標準溶液の入ったボトルを長時間浸しておき、ここからサンプリングして、さらに測定直前に温度コントローラにて再度25.0℃にする、という方式である。導電率計は自社製の導電率計を採用した。白金黒処理を施した自社製の導電率フローセルを用いて測定した。導電率計には、別途校正作業により確認された導電率フローセルのセル定数が入力されている。吸光光度計も自社製のものを採用した。波長λ=560nmの光源部と測光部とガラスフローセルとを備える吸光光度計である。密度測定には、U字管フローセルを励振して測定される固有振動数から密度を求める固有振動法を採用した密度計を用いた。測定された導電率値、吸光度値、密度値の単位は、それぞれ、mS/cm、Abs.(Absorbance)、g/cm3である。
演算は、11個の校正標準溶液のうち一つを未知試料に見立てて、残り10標準で校正行列を求め、仮定した未知試料の濃度を算出して既知の値(他の正確な分析手法により測定した濃度値や重量調製値)と比べる手法(一個抜き交差確認法;Leave−One−Out法)によるものである。
MLR−ILS計算を行った結果を表1に示す。
MLR−ILS計算に当たっては、TMAH水溶液が強アルカリ性で二酸化炭素を吸収して劣化しやすいことに鑑み、演算に用いる濃度行列には、アルカリ成分濃度や吸収二酸化炭素濃度を正確に分析できる滴定分析法により校正標準溶液を別途測定した値を用いた。ただし、溶解フォトレジスト濃度に関しては、重量調製値を用いた。
滴定は、塩酸を滴定試薬とする中和滴定である。滴定装置として、三菱化学アナリテック社製の自動滴定装置GT−200を使用した。
以下、表2に、濃度行列を示す。
このときの校正標準溶液の特性値の測定結果を表3に示す。吸光度の欄は、波長λ=560nmにおける吸光度値(光路長d=10mm)である。
校正行列を表4に示す。
表5に、表2の濃度測定値と表1のMLR−ILS計算値との比較を示す。
表5の通り、重回帰分析法により求められたTMAH濃度、溶解フォトレジスト濃度、吸収二酸化炭素濃度は、いずれも滴定分析により測定したTMAH濃度や吸収二酸化炭素濃度、及び、調整重量から求めた溶解フォトレジスト濃度と、いずれもかなり近似した値となっている。
このように、アルカリ性現像液の導電率、特定波長における吸光度、及び、密度を測定して、多変量解析法(例えば、重回帰分析法)を用いることにより、現像液のアルカリ成分濃度、溶解フォトレジスト濃度、及び、吸収二酸化炭素濃度を測定できることが理解される。
多変量解析法(例えば、重回帰分析法)は、複数の成分の濃度を演算して求めるのに有効である。現像液の複数の特性値a、b、c、…を測定して、それらの測定値から多変量解析法(例えば、重回帰分析法)により成分濃度A、B、C、…を求めることができる。この際、求めるべき成分濃度につき、少なくともこの成分濃度と相関のある特性値が、少なくともひとつは測定されて演算に用いられることが必要である。
また、成分濃度は、全体に対するその成分の相対量を示す尺度である。繰り返し使用される現像液のような経時的に成分が増減する混合液の成分濃度は、その成分単独で決まらず、通常、他の成分の濃度の関数となる。そのため、現像液の特性値と成分濃度の関係は、平面的なグラフで表示することが困難なことが多い。このような場合には、検量線を用いる演算法などでは、現像液の特性値から成分濃度を算出することができない。
しかし、多変量解析法(例えば、重回帰分析法)によれば、算出しようとする成分濃度と相関のある複数の特性値の測定値が一組揃えば、これを演算に用いて、成分濃度が一組算出される。従来の知見では一見すると測定困難な成分濃度であっても、特性値を測定することで成分濃度を測定できる、という顕著な効果を、多変量解析法(例えば、重回帰分析法)による成分濃度測定では得ることができる。
以上のとおり、本発明の演算手法によれば、現像液のアルカリ成分濃度、溶解フォトレジスト濃度、及び、吸収二酸化炭素濃度を、現像液の特性値(例えば、導電率、特定波長における吸光度、及び、密度)の測定値に基づいて算出することができる。本発明の演算手法によれば、従来法に比べ、高精度に各成分濃度を算出することができる。
また、本発明では多変量解析法(例えば、重回帰分析法)を用いているので、現像液の成分濃度を算出する演算に、現像液の特定の成分濃度と直線関係にない現像液の特性値をも採用することができる。
また、本発明によれば、特許文献2の発明では必要な、高精度測定を可能とするための非常に多数のサンプルの準備と予備測定が、必要ない。(前述の実験例のとおり、成分数n=3の現像液であれば、測定する特性値の数p=3として、m>=npを満たすサンプル数p(例えばp=11個のサンプル)を準備して測定すれば、十分である。成分数n=2ならばサンプル数はさらに少なくてよい。)
さらに、本発明は多変量解析法(例えば、重回帰分析法)を用いているので、従来は測定が困難であった現像液の吸収二酸化炭素濃度を、精度よく算出することができる。
本実施形態では、現像液の溶解フォトレジスト濃度と相関のある現像液の特性値として、λ=560nmにおける吸光度を例示したが、これに限定されない。他の特定波長における吸光度、すなわち、可視領域、より好ましくは360〜600nmの波長領域、の特定波長、より好ましくは波長λ=480nm、における吸光度を、特性値として利用することもできる。これらの波長域に含まれる特定波長における吸光度は溶解レジスト濃度と比較的良好な対応関係にあるためである。
また、現像液の吸収二酸化炭素濃度と相関のある現像液の特性値として、密度を例示したが、これに限定されない。現像液の溶解フォトレジスト濃度や吸収二酸化炭素濃度と相関のある現像液の特性値として、現像液の導電率と組み合わせて測定する特性値に採用し得る特性値には、例えば、上記特定波長における吸光度や密度の他に、超音波伝播速度、屈折率、滴定終点、pHなどを挙げることができる。
〔第三実施形態〕
図3は、本実施形態の現像液管理装置Dの説明をするための現像工程の模式図である。本発明の現像液管理装置Dが、現像工程設備A、補充液貯留部B、循環攪拌機構Cなどとともに図示されている。なお、第一実施形態、及び第二実施形態の構成と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する場合がある。
本実施形態の現像液管理装置Dは、測定部1と、制御手段21、及び演算手段36を備えている。本実施形態では、第二実施形態とは異なり、制御手段21と、演算を行う演算手段36とが、別体の装置で構成されている。
測定部1は、導電率計11、第1特性値測定手段12A、及び第2特性値測定手段13Aを備えている。演算手段36は、第1特性値測定手段12A、及び第2特性値測定手段13Aにより測定された吸光度、及び密度から多変量解析法により、現像液の溶解フォトレジスト濃度の測定値及び吸収二酸化炭素濃度の測定値を算出する。この際、導電率、吸光度、及び密度から多変量解析法により溶解フォトレジスト濃度の測定値及び吸収二酸化炭素濃度を算出することができる。
制御部31は、演算手段で算出された溶解フォトレジスト濃度と吸収二酸化炭素濃度とに基づいて、データ記憶部23に記憶されている導電率データのうち、測定された溶解フォトレジスト濃度及び測定された吸収二酸化炭素濃度により特定される濃度領域の導電率値を求める。求めた導電率値を現像液の導電率の制御目標値として設定する。
その他の構成、動作などは、第二実施形態と同様であるので、省略する。
〔第四実施形態〕
図4は、本実施形態の現像液管理装置Dの説明をするための現像工程の模式図である。本発明の現像液管理装置Dが、現像工程設備A、補充液貯留部B、循環攪拌機構Cなどとともに図示されている。なお、第一実施形態、第二実施形態、及び第三実施形態の構成と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する場合がある。
本実施形態の測定部1は、導電率計11、第1濃度測定手段12、及び密度計13Bを備える。制御手段21はデータ記憶部23と演算部33とを備える。演算部33は、現像液の吸収二酸化炭素濃度と密度との間の対応関係に基づいて密度計13Bにより測定された現像液の密度から現像液の吸収二酸化炭素濃度を算出する。
制御部31は、測定部1で測定された溶解フォトレジスト濃度と、演算部33で算出された吸収二酸化炭素濃度とに基づいて、データ記憶部23に記憶されている導電率データのうち、測定された溶解フォトレジスト濃度及び測定された吸収二酸化炭素濃度により特定される濃度領域の導電率値を求める。求めた導電率値を現像液の導電率の制御目標値として設定する。
その他の構成、動作などは、第一実施形態と同様であるので、省略する。
現像液の密度値と吸収二酸化炭素濃度値との関係について説明する。発明者は、鋭意研究を続けた結果、次の知見を得た。すなわち、現像液のアルカリ成分濃度や溶解フォトレジスト濃度によらず、現像液の密度値と吸収二酸化炭素濃度値との間には比較的良好な対応関係(直線関係)が得られること、である。また、この対応関係(直線関係)を用いれば密度計により現像液の密度を測定することで従来困難であった吸収二酸化炭素濃度が測定できること、である。
発明者は、多変量解析法を用いた現像液の成分濃度の演算に用いた11個の校正標準溶液を模擬現像液サンプルとし、これらについてアルカリ成分濃度(TMAH濃度)、溶解フォトレジスト濃度、吸収二酸化炭素濃度、および、密度を測定し、成分濃度と密度との相関を確かめる実験を行った。
以下の表6に、各サンプルの成分濃度と密度の測定結果を示す。表6は、表5の濃度測定値(wt%)と表3の密度(g/cm3)とを対比させた表である。
図5に、表6に示した各サンプルの吸収二酸化炭素濃度と密度とのグラフを示す。このグラフは、二酸化炭素濃度(wt%)を横軸にとり、密度(g/cm3)を縦軸にとり、各サンプルの値をプロットしたグラフである。プロットした各点から、最小二乗法により回帰直線を求めた。
図5から、現像液の吸収二酸化炭素濃度は、アルカリ成分濃度や溶解フォトレジスト濃度が様々であるにも関わらず、現像液の密度との間に良好な直線関係があることが理解できる。この実験結果により、この現像液の二酸化炭素濃度と密度との間の対応関係(直線関係)を用いれば、現像液の密度を測定することにより現像液の吸収二酸化炭素濃度を算出することが可能であることを、発明者は知見したのである。
したがって、アルカリ成分濃度(TMAH濃度)や溶解レジスト濃度にかかわらず、この対応関係(直線関係)により、密度計を用いることにより、現像液の吸収二酸化炭素濃度を測定することができる。
演算部33で、現像液の密度と吸収二酸化炭素濃度の関係を利用することで、容易に現像液の吸収二酸化炭素濃度を測定することができる。
〔第五実施形態〕
図6は、本実施形態の現像液管理装置Dの説明をするための現像工程の模式図である。本発明の現像液管理装置Dが、現像工程設備A、補充液貯留部B、循環攪拌機構Cなどとともに図示されている。なお、第一実施形態、及び第二実施形態の構成と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する場合がある。
本実施形態の現像液管理装置Dは、測定部1と、制御手段21、及び演算手段37を備えている。本実施形態では、第四実施形態とは異なり、制御手段21と、演算を行う演算手段37とが、別体の装置で構成されている。本実施形態の測定部1は、導電率計11、第1濃度測定手段12、及び密度計13Bを備える。演算手段37は、現像液の吸収二酸化炭素濃度と密度との間の対応関係に基づいて密度計13Bにより測定された現像液の密度から現像液の吸収二酸化炭素濃度を算出する。
制御部31は、測定部1で測定された溶解フォトレジスト濃度と、演算手段37で算出された吸収二酸化炭素濃度とに基づいて、データ記憶部23に記憶されている導電率データのうち、測定された溶解フォトレジスト濃度及び測定された吸収二酸化炭素濃度により特定される濃度領域の導電率値を求める。求めた導電率値を現像液の導電率の制御目標値として設定する。
その他の構成、動作などは、第四実施形態と同様であるので、省略する。
以上のとおり、本実施形態の現像液管理装置Dによれば、現像液がどのような溶解フォトレジスト濃度及び二酸化炭素濃度となろうとも、現像液中の現像作用に活性を有する成分が一定に維持されるので、所望の現像性能を維持でき、所望の線幅及び残膜厚を維持できる現像処理を実現できる。
次に、本実施形態の現像液管理装置Dの変形例について、説明する。
図1〜4,6では、現像液管理装置Dの測定部1は、制御手段21や演算手段36,37と一体に構成される現像液管理装置Dを描いたが、本実施形態の現像液管理装置Dはこれに限定されない。測定部1を別体の構成とすることもできる。
測定部1において、それぞれの採用する測定原理に応じて最適な設置方法があるので、例えば、測定部1を現像液管路80にインライン接続したり、現像液貯留槽61に測定プローブを浸漬するように設置したりするのでもよい。導電率計11、第1濃度測定手段12、第1特性値測定手段12A、第2濃度測定手段13、第2特性値測定手段13A、及び密度計13Bの各測定手段がそれぞれ別個に設置されるのでもよい。本実施形態の現像液管理装置Dは、各測定手段が制御手段21や演算手段36,37との測定データのやり取りができるように相互に連絡した態様となっていれば実現可能である。
各測定手段が採用した測定原理に応じて、試薬添加が必要であれば、各測定手段がそのための配管を備えていてもよいし、廃液が必要であれば、各測定手段がそのための管路を備えていてもよい。各測定手段が直列に接続されていなくても、本実施形態の現像液管理装置Dは実現可能である。
図1〜4,6では、現像液に補給される補充液を送液する流路に設けられた制御弁41〜43が現像液管理装置Dの内部部品となるように、現像液管理装置Dが補充液用管路81、82及び純水用管路83と接続された態様を描いたが、本実施形態の現像液管理装置Dはこれに限定されない。現像液管理装置は制御弁41〜43を内部部品として備えていなくてもよく、現像液に補充液を補給するための管路81〜83と接続されていなくてもよい。
本実施形態の現像液管理装置Dにおける制御手段21と、補充液を補給するための管路に設けられた制御弁41〜43とは、制御弁41〜43が現像液管理装置Dの制御手段21により発せられた制御信号を受け取って制御されるように相互に連絡した態様となっていればよい。制御弁が現像液管理装置Dの内部部品となっていなくても、本実施形態の現像液管理装置Dは実現可能である。
本発明の現像液管理装置は、上記のような各種の変形例が許容されるにもかかわらず、現像液の溶解フォトレジスト濃度及び二酸化炭素濃度を指標として特定される濃度領域ごとに所定の現像性能となることが予め確認された前記現像液の導電率値を有する導電率データを備え、現像液の溶解フォトレジスト濃度の測定値及び吸収二酸化炭素濃度の測定値により特定される濃度領域の導電率データの導電率値を制御目標値として、現像液の導電率が前記制御目標値となるように前記現像液に補給される補充液を送液する。
以上のとおり、本発明の現像液の管理方法、及び現像液管理装置によれば、現像液がどのような溶解フォトレジスト濃度及び二酸化炭素濃度となろうとも、現像液中の現像作用に活性を有する成分が一定に維持されるので、所望の現像性能を維持でき、所望の線幅及び残膜厚を維持できる現像処理を実現できる。
現像液管理装置の好ましい態様として、溶解フォトレジスト濃度、吸収二酸化炭素濃度を多変量解析法により算出するため、溶解フォトレジスト濃度、吸収二酸化炭素濃度を精度良く求めることができる。これらの溶解フォトレジスト濃度、及び吸収二酸化炭素濃度に基づいて導電率データから目標となる導電率値を求めることができる。
さらに、現像液管理装置の好ましい態様として、現像液の吸収二酸化炭素濃度と密度との間の対応関係に基づいて密度計により測定された現像液の密度から現像液の吸収二酸化炭素濃度を算出する。これにより、より簡便に現像液の吸収二酸化炭素濃度を求めることができる。この吸収二酸化炭素濃度、及び別途と求められた溶解フォトレジスト濃度に基づいて、導電率データから目標となる導電率値を求めることができる。