以下、本発明に係る車両制御装置及び回避動作制御方法について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係る車両制御装置10は、図1に示すように、車両12(以下、自車12という)に搭載されて、自車12の運転支援又は自動運転を実施する。例えば、車両制御装置10は、自車12の走行中に、自車12の周辺環境を認識している。そして、他車や歩行者等の回避対象14に自車12が接近していることを検出すると、車両制御装置10は、回避対象14を回避する危険回避の運転支援(以下、回避動作という)を自動的に行う。
また、車両制御装置10は、運転切替スイッチのオン/オフに加えて、ステアリングホイール(ハンドル:以下、ステアリング16という)にかかる運転者の把持力に基づき、手動運転と運転支援とを切り替えるオーバライドを実施する構成となっている。さらに車両制御装置10は、回避動作において、把持力の強弱を判別処理することで、自車12の制御内容を変更する構成となっている。以下では、この運転支援を行う車両制御装置10ついて、代表的に説明していく。
[自車12の全体構成]
車両制御装置10は、自車12の走行時に処理を行うシステムの主要部である車両制御システム18(電子制御ユニット:制御部)を備え、さらに通信線を介して車両制御システム18に接続される入力装置20及び出力装置22を備える。入力装置20には、外界センサ24、自車状態センサ26、把持力検出センサ28、及び図示しないナビゲーション装置や通信装置等が含まれる。出力装置22には、制動装置30、操舵装置32、シートベルト装置34、及び図示しない駆動力装置等が含まれる。
入力装置20の外界センサ24は、自車12の外側の状況を認識するセンサ機器群であり、例えば1以上のカメラと、1以上のレーダとで構成され得る。カメラ及びレーダは、それぞれの特性に応じて自車12の周辺環境を検出し、この検出情報を車両制御システム18に出力する。なお、外界センサ24は、1種類の機器で構成されてもよく、他の機器が適用されてもよい。他の機器としては、例えば、赤外線センサ、超音波センサ、LIDAR(光検出機器)があげられる。
自車状態センサ26は、走行時等に自車12の状態を検出して、車両制御システム18にその検出結果を出力するセンサ機器群である。このセンサ機器群としては、加速度を検出する加速度センサ、自車12の垂直軸周りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車12の車速を検出する車速センサ、自車12の向きを検出する方位センサ、自車12の勾配を検出する勾配センサ等があげられる。
ここで、運転者による自車12の手動運転時には、自車12の操作デバイスをドライバが操作して、出力装置22(制動装置30、操舵装置32、駆動力装置)を動作させる。操作デバイスとしては、上記のステアリング16の他に、図示しないアクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、及び方向指示レバー等があげられる。操作デバイスの各構成には、運転者による操作の有無や操作量、操作位置を検出し、その検出結果を車両制御システム18に出力する操作検出センサ(自車状態センサ26の一部)が設けられている。
把持力検出センサ28は、運転者(自車12の乗員)によるステアリング16の把持の有無、及びステアリング16にかかる把持力を検出する機能を有する。この種の把持力検出センサ28は、特に限定されるものではないが、例えば、運転者の静電容量を検出する静電容量センサを適用することができる。
図2に示すように、静電容量型の把持力検出センサ28は、ステアリング16のリム部に設けられて運転者の接触を直接検出するセンサ層36と、ステアリング16の中心軸部内等に設けられてセンサ層36に電気的に接続する検出回路部38とを備える。
検出回路部38は、センサ層36に所定の電界を付与することで、運転者がセンサ層36に触れた際の静電容量の変化を検出する。検出回路部38は、例えば、発振器Oを有すると共に、車両制御システム18及びグランド(車体)に電気的に接続されている。この検出回路部38は、センサ層36の静電容量に応じた電圧値を車両制御システム18に送出する。
把持力検出センサ28(センサ層36、検出回路部38)は、例えば、発振器O、インダクタンスL及びキャパシタンスCを並列接続した共振回路に構成され得る。キャパシタンスCは、センサ層36から検出回路部38を介してグランドに至るまでの等価的な静電容量である。この場合、運転者が、グランドとの間で静電容量Chを持っていたとすると、運転者によるセンサ層36の非把持状態の共振周波数f0と、把持状態の共振周波数f1とは、以下の式(1)及び式(2)によって表される。
f0=1/2π(LC)1/2…(1)
f1=1/2π(L(C+Ch))1/2…(2)
そのため、把持力検出センサ28は、センサ層36に運転者が接触していない非接触状態と、センサ層36に運転者が接触している接触状態とで異なった出力を行う。また、運転者がセンサ層36を強く把持している場合は、軽く把持している場合と比べて、接触面積が増えて静電容量を増加させる(図4も参照)。よって、把持力検出センサ28は、運転者がセンサ層36に軽く触れた把持力が弱い状態と、運転者がセンサ層36を強く握った弱い状態とで出力を異ならせることができる。また、把持力検出センサ28は、運転者が両手で把持している状態と、片手で把持している状態とについても、接触面積の変化に基づき静電容量を異ならせる。
なお、把持力検出センサ28は、上記の構成に限定されず、種々の構成を適用し得る。例えば、導電層を挟む一対の電極間の厚み(距離)が運転者の把持力に応じて変動することに基づき静電容量を変化させる圧力センサを、ステアリング16の表面に設けた構成でもよい。
図1に戻り、車両制御装置10は、運転支援や自動運転を実施する際に、上述した操作デバイスを運転者が操作せずに、車両制御装置10の制御下に自車12を走行等させる。この際、車両制御システム18は、自車12の周辺環境に基づき行動計画を生成し、この行動計画に沿って走行系の出力装置22(操舵装置32、制動装置30、駆動力装置等)を適宜制御する。
操舵装置32は、走行時に自車12の進路を維持、変更、調整等する装置であり、図示しないEPS(電動パワーステアリング)ECUと、EPS装置とを含む。この操舵装置32は、手動運転時に、運転者のステアリング16の操作量に応じて車輪(操舵輪)の方向量を適宜変化させる。また、操舵装置32は、運転支援や自動運転時に、車両制御システム18から入力される車両制御値に従って車輪の向きを変更する。
制動装置30は、例えば、油圧式ブレーキを併用する電動サーボブレーキであって、図示しないブレーキECUと、ブレーキアクチュエータとを含む。この制動装置30は、手動運転時に、運転者のブレーキペダルの操作量に応じて制動量を適宜設定する。また、制動装置30は、運転支援や自動運転時に、車両制御システム18から入力される車両制御値に従って車輪を制動する。
車両制御装置10のシートベルト装置34は、ベルト40と、このベルト40の引き出し又は巻き上げを行う図示しないモータと、モータの駆動を制御する図示しないシートベルトECUとを含む。つまり、本シートベルト装置34は、ベルト40が運転者に引き出されて装着される以外に、車両制御システム18やシートベルトECUの駆動制御下にモータが駆動することで、ベルト40の引き出し量又は巻き上げ量を調整する。
[車両制御システム18の構成]
車両制御システム18は、ハードウエアとして図示しないプロセッサ、入出力インターフェース及び記憶装置を備えるECU(Electronic Control Unit)として構成されている。図3に示すように、車両制御システム18は、周辺認識部42、走行計画部44及び出力装置制御部46等の機能実現部を内部に構築している。なお本実施形態において、機能実現部は、記憶装置に記憶されているプログラムをプロセッサが実行することにより構成されるソフトウエア機能部であるが、集積回路等からなるハードウエア機能部により実現されてもよい。
周辺認識部42は、外界センサ24が検出した検出情報(画像情報等)を受信して、この検出情報を適宜処理することで、検出情報に含まれる自車12の周辺の対象物を抽出する。対象物を抽出する際には、レーダ等の検出結果、自車状態センサ26から送信される自車状態情報等を参照して、自車12に対する対象物の相対的な位置関係(自車12に対する対象物の向きや距離)も認識する。
周辺認識部42が認識する対象物としては、例えば、自車12が走行する道路のレーンマーク(白線、黄色線、マーカ等)、ガードレール、縁石、停止線、信号機、標識、交通参加者(他車や歩行者)、他の障害物等があげられる。また、周辺認識部42は、抽出した対象物と自車12との相対的な位置関係に応じて、自車12が回避動作を行うべき回避対象14であるか否かを判定する回避対象判定部42aを有している。この回避対象14には、上述した他車や歩行者の他にも、緊急的に、自車12の走行を停止(制動)又は自車12の進路を逸らすことが必要な種々の対象物が当てはまる。
回避対象判定部42aは、検出情報に回避対象14が含まれていると判定した場合に、走行計画部44に回避動作指令AOを出力する。この回避動作指令AOは、対象物の認識情報(自車12に対する回避対象14との相対的な位置関係が含まれたもの)を有している。
走行計画部44は、自車12の走行時における経路及び速度の目標値(自車12の軌道)を生成し、生成した目標値を出力装置制御部46に出力する機能部である。例えば、軌道の生成においては、周辺認識部42が抽出した対象物の情報、自車状態センサ26が検出した自車状態情報、或いは把持力検出センサ28が検出したステアリング16の把持力に基づき複数の軌道を算出及び評価し、最適なものを選択する。そして、出力装置制御部46は、この走行計画部44から出力された軌道に基づき、出力装置22(制動装置30、操舵装置32、シートベルト装置34等)を駆動する駆動信号を生成して、目的の出力装置22に駆動信号を出力する。
運転支援により回避動作を行う場合には、回避対象14の前で自車12を減速又は停止させる事故低減ブレーキ(縦方向制御:以下、縦系制御という)、又は回避対象14から自車12を逸らす事故低減ステアリング(横方向制御:以下、横系制御という)を行う(図1参照)。すなわち走行計画部44は、縦系制御において制動力を主に作用させる軌道を生成し、横系制御において回避対象14から自車12を離す操舵力を主に作用させる軌道を生成する。走行計画部44の内部には、回避動作を制御するための機能部として、判定処理部50、縦系制御処理部52、オーバライド判定部54、第1横系制御処理部56及び第2横系制御処理部58が構築される。
判定処理部50は、周辺認識部42の回避動作指令AOに基づき、回避動作の具体的な制御内容を設定する。そのため、判定処理部50の内部には、さらに指令取得部60、回避動作判定部62、把持状態判定部64及び制御設定部66が設けられる。
指令取得部60は、走行計画部44による回避動作以外の制御時に待機状態となっており、周辺認識部42からの回避動作指令AOの受信に基づき動作して、判定処理部50の処理を実施させる。
回避動作判定部62は、周辺認識部42の認識情報に含まれる対象物、及び自車状態センサ26の自車状態情報に基づき、回避動作における縦系制御及び横系制御のうち一方(又は両方)を選択する。例えば、回避動作判定部62は、回避対象14が走行中の他車であり自車12の車速がこの他車の車速に対して相対的に速い場合、走行路の走行可能範囲に対して回避対象14の占める範囲が大きい場合、走行路の隣接車線(追越車線や対向車線)に他車が検出されている場合等の状況を判別すると縦系制御を選択する。また例えば、回避動作判定部62は、自車12が走行路可能範囲から外れるように進行している場合、回避対象14に対して自車12の車速が充分に速い場合、走行路の走行可能範囲に対して回避対象14の占める範囲が小さい場合等の状況を判別すると横系制御を選択する。
把持状態判定部64は、回避動作の開始時に、把持力検出センサ28が検出した静電容量の検出値に基づき、その制御内容をさらに詳細に設定するために設けられる。走行計画部44は、把持力検出センサ28の検出値を所定タイミング毎に(例えば数msec間隔で)取得している。把持状態判定部64は、この検出値と、第1閾値記憶部64a(メモリの記憶領域)に記憶された強弱判定閾値Th1とを比較して、ステアリング16にかかる把持力の強弱を判定する。
ここで、把持力検出センサ28は、例えば図4に示すように、小刻みに乱高下する静電容量を検出している。そのため、把持状態判定部64は、把持力検出センサ28から静電容量の検出値を複数取得すると、今回の検出値と、直近の複数の検出値を用いて重み付けのない移動平均SMAをとる処理を行う。例えば、把持状態判定部64は、下記の式(3)を用いて検出値の平滑化を図っている。
SMA=(PM+PM-1+…+PM-9)/10 …(3)
上記の式のうち、PMは今回の終値であり、PM-1、…、PM-10は直近の9個のデータの終値である。なお、移動平均SMAの算出に使用する直近の検出値の個数は任意に設定してよい。
把持状態判定部64は、算出した移動平均SMAと、第1閾値記憶部64aから強弱判定閾値Th1を読み出して、移動平均SMAと強弱判定閾値Th1との比較を行う。そして、移動平均SMAが強弱判定閾値Th1よりも大きい場合には、運転者によるステアリング16の把持力が強いと判定し、移動平均SMAが強弱判定閾値Th1以下の場合には、運転者によるステアリング16の把持力が弱い(又は非把持)と判定する。
なお、把持状態判定部64は、強い把持又は弱い把持の検出結果から移動平均SMAが短期間に移行するような判定を抑制することが好ましい。そのため、把持状態判定部64は、移動平均SMAが一定時間(例えば数秒)強弱判定閾値Th1よりも大きくなることを条件に、弱い把持力から強い把持への移行を判定するとよい。同様に強い把持から弱い把持への移行も、移動平均SMAが一定時間強弱判定閾値Th1以下となることを条件にするとよい。
図3に戻り、判定処理部50の制御設定部66は、回避動作判定部62による縦系制御又は横系制御の判定と、把持状態判定部64による把持力の強弱の判定とに基づき回避動作における具体的な制御内容を設定する。この制御設定部66は、縦系制御処理部52、第1横系制御処理部56及び第2横系制御処理部58のうちいずれかを選択して処理を実施させる。
縦系制御処理部52は、制動装置30を制御して自車12に制動力をかける縦系制御の軌道を生成する機能部である。これにより図1及び図5Aに示すように、自車12が自動的に減速及び停止を行って、回避対象14との衝突回避が図られる。また縦系制御の実施時に、縦系制御処理部52は、シートベルト装置34の駆動を制御して、自車12の制動と共にベルト40を巻き上げることで、運転者の安全を図ってもよい。
そして、走行計画部44は、縦系制御の実施中に、運転者の所定操作を検出すると、オーバライド制御を実施する構成となっている。既述したように、オーバライドは、運転支援又は自動運転から手動運転への切替、或いは手動運転から運転支援又は自動運転への切替を指すものである。回避動作では、車両制御システム18が自動的に起動して危険回避のための動作を制御していることから、オーバライドとしては、車両制御装置10の制御から運転者に操作権限を委譲することにあたる。
オーバライドの実施条件は、通常、車両制御装置10に複数種類設けられる。本実施形態では、運転者がステアリング16を強く把持する(つまり運転者からステアリング16を操作する意志が示される)ことで、運転支援から手動運転への切替を行うように構成されている。そのため、走行計画部44内に設けられたオーバライド判定部54(図3参照)は、縦系制御の実施中に、把持力検出センサ28の検出値を所定タイミング毎に受信して、運転者の把持力を監視している。
オーバライド判定部54は、監視において、第2閾値記憶部54a(メモリの記憶領域)に記憶されたオーバライド判定閾値Th2を読み出し、把持力検出センサ28の静電容量の検出値(移動平均SMA)とオーバライド判定閾値Th2とを比較する。図6に示すように、オーバライド判定閾値Th2は、ステアリング16の強弱判定閾値Th1よりも高い値に設定されている。オーバライド判定部54は、このオーバライド判定閾値Th2よりも監視している検出値が大きくなると、運転支援から手動運転への切り替えを行う。
例えば、図5A中では、自車12の手動運転時に、自車12が前方の他車(回避対象14)に接近する場合について例示している。この場合判定処理部50は、縦系制御処理部52により縦系制御を実施させる。そして縦系制御中において、運転者によるステアリング16の把持力が弱い(又は非把持の)場合、オーバライド判定部54は、把持力検出センサ28の検出値がオーバライド判定閾値Th2以下となることから、オーバライドを非実施とする。そのため、縦系制御処理部52は、回避動作の指令を受けた際の縦系制御を継続的に実施し、自車12を減速して回避対象14の前で停止させる。
これに対し、運転者によるステアリング16の把持力が強くなり、把持力検出センサ28の検出値がオーバライド判定閾値Th2よりも高くなると、オーバライド判定部54は、図5Bに示すようにオーバライドを実施する。これにより縦系制御中に、運転者によるステアリング16の操舵に基づき、自車12を他車から逸れるように移動させることができる。なお、縦系制御の実施中に、オーバライドを行う場合には、操舵の権限のみを委譲して、制動装置30による自車12の制動を継続してもよい。これにより危険回避を一層確実に行うことができる。
一方、図1、図3及び図7Aに示すように、走行計画部44の第1横系制御処理部56は、操舵装置32を制御して自車12を横方向に向かわせる横系制御の軌道を生成する機能部である。この横系制御により、自車12は、回避対象14から自動的に逸れつつ、走行路の左右境界線内にとどまるように誘導される。第1横系制御処理部56は、回避動作判定部62により横系制御の判定がなされると共に、把持状態判定部64により運転者がステアリング16を強く把持している旨の判定がなされることに基づき動作する。
また、第1横系制御処理部56は、横系制御の軌道を生成すると共に、内部に備える閾値変更部56aによりオーバライド判定閾値Th2を一時的に変更するように構成されている。具体的には、閾値変更部56aは、第2閾値記憶部54aを記憶されているオーバライド判定閾値Th2を読み出して、このオーバライド判定閾値Th2を上昇させる処理を行う。
閾値変更部56aは、例えば図6中の1点鎖線に示すように、オーバライド判定閾値Th2に所定値を加えることで、横系制御時のオーバライド判定閾値Th2を再設定する(以下、再設定閾値Th3という)。なお、第2閾値記憶部54aは、横系制御を実施する際の専用のオーバライド判定閾値を予め有し、第1横系制御処理部56による制御時に、オーバライド判定部54は、この専用オーバライド判定閾値を読み出す構成でもよい。
例えば、図7A中では、手動運転時における脇見運転等により、走行路の側道を歩く歩行者に自車12が向かう場合について例示している。この場合判定処理部50は、第1横系制御処理部56により横系制御を実施させ、回避対象14から逸れるように転舵を行う。この際に、縦系制御と同様に、運転者の把持力が強いことで、オーバライドを実施してしまうと、実施中の回避動作を途中で停止してしまう。
そのため、第1横系制御処理部56は、横系制御の実施時に、オーバライド判定閾値Th2よりも高い再設定閾値Th3を設定することで、自動運転から手動運転に簡単に切り替えられないようにする。つまり横系制御の実施時に、オーバライド判定部54は、把持力検出センサ28の静電容量の検出値(移動平均SMA)と、再設定閾値Th3とを比較し、検出値が再設定閾値Th3を超えるか否かを判定している。
これにより図7Bに示すように、運転者の把持力がある程度強くても、回避対象14を回避するための回避動作を良好に継続させることができる。なお、オーバライド判定部54は、再設定閾値Th3よりも検出値が大きくなること(つまり運転者が強い意志でステアリング16を操作すること)を判定した場合に、オーバライドを実施する。これにより運転者自身の手動運転でも回避動作を行うができる。
図3に戻り、走行計画部44の第2横系制御処理部58は、第1横系制御処理部56と同様に、操舵装置32を制御して自車12を横方向に向かわせる横系制御の軌道を生成する機能部である。ただし、第2横系制御部は、回避動作判定部62により横系制御の判定がなされると共に、把持状態判定部64により運転者がステアリング16を弱く把持している旨の判定がなされることに基づき動作する。
ここで、運転者がステアリング16を弱く把持している場合は、横系制御の実施において、車両制御システム18の運転支援から運転者に操作権限を委譲してしまうと、運転者が直ぐに対応できないおそれがある。そのため、第2横系制御処理部58による横系制御の実施時には、オーバライドを行わないように制御して、回避対象14から自車12を逸らす回避動作を実施する。
また、第2横系制御処理部58は、横系制御の実施時に、シートベルト装置34の駆動を制御して、自車12の制動と共にベルト40を巻き上げる制御を行う。すなわち、ステアリング16の弱い把持状態を検出した場合には、運転者が回避動作によって生じる自車12の横方向の揺れに不充分な姿勢をとっている可能性がある。このため、第2横系制御処理部58がシートベルト装置34を巻き上げて、自車12の運転者に対するベルト40の締め付けを回避動作前よりも強めることで、回避動作時に運転者を保持してその安全性を高めることができる。
[車両制御装置10による回避動作制御方法]
本実施形態に係る車両制御装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下その作用効果について図8のフローチャートを例にして説明する。
車両制御装置10は、自車12の走行中に、外界センサ24により自車12の周辺環境を検出し、その検出情報を車両制御システム18に出力している(検出ステップ)。また車両制御装置10は、自車12の走行中に、把持力検出センサ28により運転者によるステアリング16の把持力(静電容量の検出値)を検出し、その検出情報を車両制御システム18に出力している(把持力検出ステップ)。
そして、車両制御システム18の周辺認識部42は、外界センサ24の検出情報に含まれる対象物を抽出し認識している。この際、周辺認識部42の回避対象判定部42aは、自車12が回避動作を行うべき回避対象14を判定すると、走行計画部44に回避動作指令AOを出力する。
走行計画部44の判定処理部50は、回避動作指令AOが出力されていない通常時に待機状態となっている。判定処理部50の指令取得部60は、周辺認識部42から回避動作指令AOを受信したか否かを判定しており(ステップS1)、回避動作指令AOを受信しない場合には、その判定を繰り返す。そして、回避動作指令AOを受信した場合には、回避動作を行う処理(制御内容設定ステップ)を行うために、ステップS2に進む。
ステップS2において、判定処理部50の把持状態判定部64は、回避動作指令AOの受信時における把持力検出センサ28の検出値と、強弱判定閾値Th1とを比較し、運転者によるステアリング16の把持力が強いか弱いかを判定する。そして、把持力が強い場合にはステップS3に進み、把持力が弱い場合にはステップS6に進む。
ステップS3において、判定処理部50の回避動作判定部62は、回避対象14に対する自車12の回避動作について、縦系制御又は横系制御を判定する。そして、縦系制御の場合にはステップS4に進み、横系制御の場合にはステップS5に進む。
ステップS4において、判定処理部50の制御設定部66は、縦系制御処理部52によって縦系制御を実施させる。この際、縦系制御処理部52は、自車12の制動を行う軌道を生成し、出力装置制御部46がこの軌道に沿うように制動装置30の制御を行う。これにより図5Aに示すように、自車12が回避対象14の前で停止するように回避動作を行う。
また、縦系制御の実施時に、オーバライド判定部54は、読み出したオーバライド判定閾値Th2と、把持力検出センサ28の検出値とを比較して運転者がオーバライドを行うか否かを判定している。そして図5Bに示すように、運転者がステアリング16を強く把持することを判定した場合には、オーバライドを実施する。これにより、運転者の手動運転による回避動作に良好に移行する。
これに対し、ステップS3において横系制御が判定されると、判定処理部50の制御設定部66は、第1横系制御処理部56によって横系制御を実施させる(ステップS5)。この際、第1横系制御処理部56は、回避対象14から自車12が逸れる軌道を生成し、出力装置制御部46がこの軌道に沿うように操舵装置32の制御を行う。これにより図7Aに示すように、自車12が回避対象14から離間する方向に進む。
また、第1横系制御処理部56の閾値変更部56aは、オーバライド判定閾値Th2を高い値(再設定閾値Th3)に変更する。そのため横系制御の実施時に、図7Bに示すように、運転者がステアリング16をある程度強く把持しても、把持力検出センサ28の検出値が再設定閾値Th3を超えないことで、オーバライド判定部54は、オーバライドを非実施とする。これにより、車両制御システム18は横系制御による回避動作に良好に継続することができる。
一方、ステップS2において把持力が弱いことが判定された後、判定処理部50の回避動作は、ステップS3と同様に、回避対象14に対する自車12の回避動作について、縦系制御又は横系制御を判定する(ステップS6)。そして、縦系制御の場合にはステップS7に進み、横系制御の場合にはステップS8に進む。
ステップS7において、判定処理部50の制御設定部66は、縦系制御処理部52によって縦系制御を実施させる。この際の縦系制御は、ステップS4で説明した制御内容と同様である。なお、把持力が弱い場合の縦系制御では、自車12の運転者が急ブレーキに充分に対応できず前のめりになる可能性が高いので、シートベルト装置34によりベルト40の巻き上げを行うことがより好ましい。
これに対し、ステップS6において横系制御が判定されると、判定処理部50の制御設定部66は、第2横系制御処理部58によって横系制御を実施させる(ステップS8)。この際、第2横系制御処理部58は、回避対象14から自車12が逸れる軌道を生成し、またシートベルト装置34によりベルト40の巻き上げを行うように、出力装置制御部46に指令を行う。これにより、横系制御の実施時にベルト40がきつく締められることになり、横系制御により運転者の姿勢が不安定になることを抑制することができる。
なお、上記の回避動作制御方法は、一例を示したものであり、種々の処理フローをとり得ることは勿論である。例えば、ステップS2、S3、S6の実施順は、逆であってもよい。つまり、先に回避動作判定部62により縦系制御又は横系制御の判定を行い、その後に把持状態判定部64により把持力の強弱を判定する構成でもよい。
以上のように、本実施形態に係る車両制御装置10は、周辺環境の情報及び把持力の情報に基づき自車12の制御内容を設定することで、回避対象14を回避する回避動作をより適切に行うことができる。すなわち、車両制御装置10は、運転者の把持力が強い場合に、自動運転又は運転支援から運転者の手動運転に切り替えるオーバライドを簡単に実施しないように設定することで、回避動作を良好に継続することができる。これにより、回避対象14に対する自車12の対応を安定的に実施して、衝突軽減等を一層確実に行うことができる。
この場合、車両制御装置10の車両制御システム18が、回避動作の制御内容として把持力の情報に基づきオーバライド判定閾値Th2を変化させることで、オーバライドを抑制することができる。特に、車両制御装置10は、回避対象14から自車12が逸れるように進行させる横系制御において、ステアリング16の把持力に基づくオーバライドを簡単に実施しないようにすることができる。またステアリング16の把持力が弱い場合には、シートベルト装置34を駆動して運転者のベルト40を巻き上げることで、運転者を強固に保持して該運転者が横方向に移動するのを抑制することができる。
さらに、判定処理部50によって縦系制御及び横系制御の実施を判定することで、回避動作の種類が多様となり回避対象14をより適切に回避することができる。またさらに、車両制御システム18は、把持力検出センサ28の検出値を平滑化することで、把持力検出センサ28の検出値が乱高下して上述した閾値を短時間に超えることを排除して、運転者の把持力を良好に判定することができる。
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、発明の要旨に沿って種々の改変が可能である。例えば、上記の機能は、車両制御装置10が自車12の車速を調整する速度制御(加速、減速、速度維持等)と、自車12の進行方向を調整する舵角制御とを一体的に行う自動運転を実施する場合にも適用できる。
また、強弱判定閾値Th1やオーバライド判定閾値Th2は、製品提供時に予め設定される他に、自車12の走行中に学習することで、自動的に設定(補正)されてもよい。例えば、車両制御装置10は、自車12の走行中に運転者の平均的な把持力(静電容量)を求めておき、この平均的な把持力よりも多少高い静電容量をオーバライド判定閾値Th2に設定する。これにより、ステアリング16の把持力が運転者毎に異なっても、運転者に応じた閾値(強弱判定閾値Th1、オーバライド判定閾値Th2、再設定閾値Th3)を適切に設定することができる。
さらに、車両制御装置10は、回避動作において縦系制御を実施する際にも、ステアリング16の把持力の強弱に基づいて制御内容を変更する構成であってもよい。例えば、車両制御装置10は、運転者によるブレーキの踏込み量に基づき、オーバライドを実施する構成である場合に、運転者の把持力が強いことを検出すると、ブレーキの踏込み量を判定するオーバライド判定閾値を高くする補正を行う。これにより、運転者がブレーキをある程度踏込んでもオーバライドが実施されず、縦系制御を継続して自車12を停止させることができる。