しかしながら、例えば、特許文献1のような従来の装具の継手の構造では、歩行時の膝折れは防止できる反面、膝関節が完全に固定されるため、脚を振り出した際に膝関節を曲げることができないことからスムーズに歩行しにくい問題があった。また、例えば、装具は、膝を伸ばした状態や所定の角度で曲げた状態で固定保持する場合に限らず、靭帯や筋肉等をある程度動かせる角度範囲で制御(制限)しながら曲げ伸ばしできるような状態とする場合にも使用されるが、患部の症状、回復状況に応じて、その曲げ伸ばしできる角度範囲が様々に異なってくる。例えば、脚の手術等を行った際に、手術直後は動かないように固定しておき、回復状況によって膝を曲げ伸ばしできる制御範囲を10度、20度、30度、40度、50度、それ以上の角度と、次第に大きくしながらリハビリしていく場合がある。このような場合、従来の装具では、可動域に応じて継手部分をいちいち作り直す必要があったことから、煩雑になり、コストがかかる問題があった。
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、装具を装着する患者の患部の症状や回復状況等に対応して継手の軸回り可動域を任意に変更でき、使い勝手が良く実用性が高い装具の継手装置を提供することにある。
上記課題を解決するため本発明は、装具(100)の一部をなす第1部材12と、第1部材12に回動可能に接続する第2部材14と、第1部材12と第2部材14とを回動可能に枢支接続する枢軸16と、第1、第2部材12、14の軸回り回動について軸回りに複数の可動角度範囲(X)を設定する軸回り可動域設定機構18と、を含み、軸回り可動域設定機構18は、第1部材12に設けられ、円弧状長孔40を有するガイド部34と、第2部材14に固定され、第2部材14が第1部材12に対して回動する際に該第2部材14と一体的に軸回りに回動しながら第1部材12のガイド部34の円弧状長孔40に案内されて枢軸16周りに円弧移動する1個又は複数の移動体36と、第2部材14に対する移動体36の固定位置を選択的に変更可能とする固定位置変更機構52を含むと、を含む装具の継手装置10から構成される。移動体36を第2部材14に対して着脱交換可能な構成とするとよい。
また、移動体36は、円弧状長孔40に沿った方向の長さ(L)が異なる複数の円弧状範囲設定スライダ42(42A、42B、42C)からなることとしてもよい。
また、固定位置変更機構52は、円弧状長孔40内に配置される範囲設定スライダ42に枢軸16回り回転方向に沿って所定の間隔で穿孔された複数の貫通孔46と、範囲設定スライダ42のいずれかの貫通孔46を貫通して第2部材14に螺合して範囲設定スライダ42を固定する固定ネジ部材50と、を有することとしてもよい。
また、第1部材12と第2部材14とを枢軸16回りの所定の回動角度で固定する角度固定手段66を備えたこととしてもよい。
本発明の装具の継手装置によれば、装具の一部をなす第1部材と、第1部材に回動可能に接続する第2部材と、第1部材と第2部材とを回動可能に枢支接続する枢軸と、第1、第2部材の軸回り回動について軸回りに複数の可動角度範囲を設定する軸回り可動域設定機構と、を含むことから、1つの装具の継手装置で患部の症状等に対応して第1、第2部材の軸回り可動域を種々変更することができ、使い勝手が良く、コストも安くつき、実用性が高い。
また、軸回り可動域設定機構は、ガイド部と、第2部材に係止されつつガイド部に案内されて枢軸周りに円弧移動する1個又は複数の移動体と、を含む構成とすることにより、簡単な構成で軸回り可動域設定機構を具体的に実現できる。
また、ガイド部は、移動体の枢軸周り円弧移動を案内する円弧状長孔を有する構成とすることにより、移動体とガイド部を係合させて第1、第2部材の枢軸回りの回動を安定して実現して、装着者の安全性も高く、実用性をより向上できる。
また、移動体は、円弧状長孔に沿った方向の長さが異なる複数の円弧状範囲設定スライダからなる構成とすることにより、複数の範囲設定スライダを交換するだけで簡単に軸回り回動の可動域を変更することができ、簡単な構成で使い勝手が良い。
また、第2部材に対する移動体の固定位置を選択的に変更可能とする固定位置変更機構を含む構成とすることにより、移動体の固定位置を変更して固定することで1つの移動体で回動量が同じでも軸回り可動域の始点と終点を変更することができ、患部の症状等に対応して該可動域を変更調整することができる。
また、固定位置変更機構は、円弧状長孔内に配置される範囲設定スライダに枢軸回り回転方向に沿って所定の間隔で穿孔された複数の貫通孔と、範囲設定スライダのいずれかの貫通孔を貫通して第2部材に螺合して範囲設定スライダを固定する固定ネジ部材と、を有する構成とすることにより、固定位置変更機構を簡単な構成で実現できるとともに、範囲設定スライダの着脱交換、位置変更操作を簡単に行え、使い勝手がよい。
また、第1部材と第2部材とを枢軸回りの所定の回動角度で固定する角度固定手段を備えた構成とすることにより、患部の症状等に対応して、軸回り可動域設定機構による患部を所定の可動範囲で制御しながら曲げ伸ばしできる態様と、角度固定手段により患部を所定の角度で固定する態様とを、選択的に使用することができ、装具としての使用幅が広く、実用性をより向上できる。
以下添付図面を参照しつつ本発明の装具の継手装置の実施形態について説明する。本発明に係る装具の継手装置は、例えば、四肢や体幹等の動きに応じて回動できるように、装具を構成する部材どうしを回動可能に接続する装具用継手である。図1ないし図6は、本発明の装具の継手装置の第1の実施形態を示している。図1、図2、図4に示すように、本実施形態では、装具の継手装置10は、装具の一部をなす第1部材12と、第1部材12に接続する第2部材14と、第1部材12と第2部材14を接続する枢軸16と、軸回り可動域設定機構18と、を備えている。本実施形態では、例えば、長下肢装具100に継手装置10を利用した例で説明する。なお、装具の継手装置10が取り付けられる装具は、例えば、手や腕等の上肢に装着される上肢装具、脚や膝、足等の下肢に装着される下肢装具、胴体や腰等の体幹に装着される体幹装具等、その他任意の装具でもよい。
図1に示すように、長下肢装具100は、患者の太腿部から足までの略脚全体に装着される。長下肢装具100は、患者の大腿部に装着される大腿装着部101を構成している半月102及びカフバンド103と、患者の下腿部に装着される下腿装着部104を構成している半月105及びカフバンド106と、大腿装着部101、下腿装着部104の半月102、105及びカフバンド103、106の左右両側を接続して支えるように取り付けられた金属製の2本1対の支柱107と、該支柱107に支持ベルト108を介して支持された膝あて109と、支柱107の下端に回動自在又は所定の角度で回動が制御された状態で取り付けられた足部110と、を備えている。長下肢装置100のそれぞれの支柱107の上下中間位置部分に装着者の膝関節位置に対応するように、本実施形態に係る装具の継手装置10が設けられている。
図2、図3、図4、図5に示すように、本実施形態では、第1部材12は、例えば、支柱107の大腿装着部103側に接続される上部側の上支柱部材20と、上支柱部材20の下部に設けられた軸支部22と、を含む。上支柱部材20は、例えば、金属製で上下方向に長い帯板状に設けられている。軸支部22は、上支柱部材20の板面両側に取付けられ該上支柱部材20を延設するように取り付けられた金属製の一対の軸支板部材24、26を含む。第1軸支板部材24は、金属製のスペーサ28を介して上支柱部材20に溶接等により固定されている。第2軸支板部材26は、第1軸支板部材24とは反対面側に上支柱部材20に固定されている。第1、第2軸支体部材24、26を含む上支柱部材20の周囲には、後述のロック機構54の角枠状のストッパ枠60が板部材の長手方向すなわち上下方向に沿ってスライド可能に係合されている。第2部材14は、支柱107の下腿装着部105側に接続される下部側の下支柱部材30を含む。下支柱部材30は、例えば、金属製で上下方向に長い帯板状に設けられている。第2部材14の上端部は、略円盤状に拡大した拡大部32が形成されている。第2部材14は、拡大部32が上支柱部材20の下に第1、第2軸支板部材24、26の間に挟まれるように配置され、該拡大部32が第2部材14側の枢支部となっている。第1部材12の第1、第2軸支板部材24、26の下端部と、第2部材14の拡大部32と、が枢軸16を介して枢支接続されており、該枢軸16回りに第1部材12と第2部材14が互いに軸回り回動可能で遊動できるようになっている。
軸回り可動域設定機構18は、第1、第2部材12、14の軸回り回動について、軸回りに複数の可動域(可動角度範囲)Xを設定する軸回り可動角度設定手段である。図2、図4、図5に示すように、本実施形態では、軸回り可動域設定機構18は、例えば、第1部材12に取付けられるガイド部34と、第2部材に係止されつつガイド部34に案内される移動体36と、を含む。ガイド部34は、例えば、第1、第2軸支部材24、26の間でスペーサ28の下方に配置されるとともに、第2部材14の拡大部32と面合わせ状に設置された角度設定プレート38に設けられている。角度設定プレート38は、例えば、円盤形状の一部に円弧板を延設させたような曲線輪郭形状の金属板部材からなる。角度設定プレート38は、枢軸16を貫通させて該枢軸周りに回動可能に取り付けられているとともに、後述のロック機構54により、枢軸16周り回動が制御(規制)されたロック状態と、枢軸周り回動自在な状態とに、選択的に変更される。角度設定プレート38は、ガイド部34を備えた中間部材であり、この第1部材12側に取付けられる中間部材を介して第2部材14と連係している。角度設定プレート38に設けられたガイド部34は、下部側に円弧状長孔40を有している。ガイド部34は、円弧状長孔40によって移動体36を案内する。
移動体36は、第2部材14に係止されて第2部材14と一体的に枢軸16周りに回動するとともに、ガイド部34の円弧状長孔40に案内されて枢軸16周りに円弧移動する。すなわち、ガイド部34の円弧状長孔40内での移動体36の移動可能範囲に対応して、第1、第2部材12、14の軸回りに可動できる角度範囲、すなわち可動域Xが設定される。本実施形態では、図2、図4、図6に示すように、移動体36は、例えば、円弧状長孔40に沿った円弧状の範囲設定スライダ42からなる。範囲設定スライダ42は、例えば、円弧状長孔40の径方向幅に対応した幅で係合する略円弧輪郭形状の金属片部材からなり、円弧状長孔40に沿った方向の長さ(円弧方向長さL)を異ならせた複数個(42A、42B、42C)が形成されている。それらの複数の範囲設定スライダ42A、42B、42Cのうちの一つを選択して、固定手段44を介して第2部材14に対して着脱交換可能に固定される。例えば、円弧方向長さLが長い範囲設定スライド42Aを第2部材14に取付けると、円弧状長孔40内での移動スペースが小さくなることから、第1、第2部材12、14の軸回り可動域Xが比較的小さくなる。一方、円弧方向長さLが短い範囲設定スライド42Cを第2部材14に取付けると、円弧状長孔40内での移動スペースが大きくなることから、第1、第2部材12、14の軸回り可動域Xが比較的大きくなる。よって、異なる円弧方向長さLの範囲設定スライダ42に交換することにより、第1、第2部材12、14の軸回り可動域Xを簡単に変更することができる。
範囲設定スライダ42を第2部材14に固定させる固定手段44は、例えば、範囲設定スライダ42に穿孔された貫通孔46と、第2部材14に設けられたネジ孔48と、範囲設定スライダ42の貫通孔46と第2部材14のネジ孔48とを位置合わせした状態で該貫通孔46を貫通して第2部材14のネジ孔48に螺合する固定ネジ部材50と、を含む。本実施形態では、図6(a)、(b)に示すように円弧方向長さLがある程度長い範囲設定スライダ42A、42Bでは、貫通孔46は、円弧状長孔40内に配置された状態での枢軸16回り回転方向に沿って所定の間隔で複数個設けられている。よって、固定ネジ部材50で固定する範囲設定スライダ42の貫通孔46の位置を変更することにより、第2部材14に対する範囲設定スライダ42の固定位置を選択的に変更可能とする固定位置変更機構52を構成している。すなわち、固定位置変更機構52は、円弧状長孔40内に配置される範囲設定スライダ42に枢軸回り回転方向に沿って所定の間隔で穿孔された複数の貫通孔46と、範囲設定スライダ42のいずれかの貫通孔46を貫通して第2部材14に螺合して範囲設定スライダ42を固定する固定ネジ部材50と、を有する。
このように軸回り可動域設定機構18が構成されていることから、円弧方向の長さLが異なる複数の範囲設定スライダ42(42A、42B、42C)を着脱交換して第2部材14に固定することにより、第1、第2部材12、14の軸回り可動域Xの角度範囲の大きさを変更できる。例えば、本実施形態では、図6(a)に示すように、円弧方向の長さLが長い範囲設定スライダ42Aの場合には、図7(a)のように第1、第2部材12、14の軸回り可動域Xが20度に設定されており、長下肢装具100を患者が装着した場合には、20度の回動範囲で膝関節を動かすことができる。例えば、図6(b)のように、円弧状方向の長さLが中程度の範囲設定スライダ42Bの場合には、図7(b)に示すように、第1、第2部材12、14の軸回り可動域Xが30度に設定されており、長下肢装具100を患者が装着した場合には、30度の範囲で膝関節を動かすことができる。例えば、図6(c)に示すように、円弧方向の長さLが短い範囲設定スライダ42Cの場合には、図7(c)のように、第1、第2部材12、14の軸回り可動域Xが50度に設定されており、長下肢装具100を患者が装着した場合には、50度の範囲で膝関節を動かすことができる。さらに、固定位置変更機構52により、範囲設定スライダ42の複数の貫通孔46の位置を変更して第2部材14に固定することにより、範囲設定スライダ42のガイド部34の円弧状長孔40内の移動量が同じで、第1、第2部材の回動量が同じ度合いであっても、軸回り可動域Xの始点と終点を変更することができる。例えば、図6(a)に示す範囲設定スライダ42Aを第2部材14に固定した場合、第1、第2部材を直線状に伸ばした状態を0度とすると、図上、右側位置の第1の貫通孔46の位置で第2部材14に固定ネジ部材50で螺合した場合には、図7(a)に示すように、0度から20度の角度範囲で第1、第2部材12、14を遊動することができる。一方、範囲設定スライダ42Aを中央位置の第2の貫通孔46の位置で第2部材14に固定ネジ部材50で螺合すると、図8に示すように、15度から35度までの角度範囲で第1、第2部材を遊動することができる。範囲設定スライダ42Aを左側位置の第3の貫通孔46の位置で第2部材14に固定ネジ部材50で螺合すると、図9に示すように、30度から50度までの角度範囲で第1、第2部材を遊動することができる。よって、同じ20度の回動量を設定する1つの範囲設定スライダであっても、ある程度角度をつけた状態を始点、終点として複数の軸回り回動角度範囲Xを設定することもできる。なお、図6に示すように、例えば、範囲設定スライダ42の複数の貫通孔が円弧長さ方向の中央に対して非対象的に設けられているので、例えば、図6(d)(e)(f)に示すように、該範囲設定スライダ42を図6(a)(b)(c)とは裏返しにした状態で第2部材14に取付けることで、上記とは異なる角度範囲に設定することもできる。例えば、図6では、範囲設定スライダ42を裏返し反転して第2部材14に固定すると上記の設定(図6(a)、(b)、(c)の場合の設定)の角度範囲とはそれぞれ5度異なるように設けられている。
図2、図11に示すように、角度設定プレート38の枢軸16周り回転をロック制御するロック機構54は、例えば、角度設定プレート38の一部から径方向に突設した制御片56と、第1部材12側のスペーサ28に制御片56を受け入れるように設けられた凹部58と、上述の第1、第2軸支板部材24、26の周囲に係合するストッパ枠60と、ストッパ枠60の移動を半ロック状に制御するように第1軸支板部材24から突設された規制球体62と、移動するストッパ枠60の上限位置で規制するように第2軸支板部材26から突設された規制部64と、を含む。規制球体62は、例えば、第1軸支板部材24から突設するように弾性部材で付勢されつつ、第1軸支板部材に出没自在に設けられている。図2に示すように、角度設定プレート38の制御片56をスペーサ28の凹部58に受け入れられるような回動変位位置で、ストッパ枠60を下降させると、角度設定プレート38の枢軸16周り回転がロックされる。この際、ストッパ枠60は、規制球体62により位置保持される。図11に示すように、規制球体の規制力に抗して強制的にストッパ枠60を上昇させると、規制球体62が第1軸支板部材内に没してスライド枠60は規制片56よりも上側に移動してロック状態が解除され、角度設定プレート38が枢軸16回りに回動可能となる。これにより、例えば、長下肢装置100を装着した患者がリハビリ等する際には、ロック機構52をロックして軸回り可動域設定機構18により第1、第2部材12、14の軸回り回動を所定の制御された軸回り可動域Xに設定しておき、患者が椅子に座る際等の場合には、図11に示すように、ロック機構52によるロックを解除することで軸回り可動域設定機構18による所定の設定された可動域Xとは無関係に膝関節を曲げて座ることもできる。
さらに、本実施形態では、第1部材12と第2部材14とを枢軸16回りの所定の回動角度で固定する角度固定手段66を備えている。図10に示すように、角度固定手段66は、例えば、角度設定プレート38に軸回り回転方向に沿って所定の間隔で並設された複数の貫通孔68と、第2固定部材の拡大部32に軸回り回転方向に沿って所定の間隔で並設された複数のネジ孔70(図3参照)と、貫通孔68を貫通しつつネジ孔70に螺合する固定ネジ部材72と、を有する。第1、第2部材12、14を所望の角度となるように軸回りに回動させて、角度設定プレート38のいずれかの貫通孔68と第2部材14のいずれかのネジ孔70とを位置合わせして、軸回りの所定の角度とした状態で固定ネジ部材72を螺合して固定される。角度固定手段66と、上述した軸回り可動域設定機構18と、を選択的に使用することができ、これにより、患部の症状に応じて、角度固定手段66により膝関節が曲がらないように固定しておく状態としたり、軸回り可動域設定機構18により膝関節を所定の制御された軸回り可動域Xで曲げ伸ばしできる状態としたりして、患部の治療や機能サポート等することができる。なお、固定ネジ部材72は、軸回り可動域設定機構18の範囲設定スライダ42を固定する固定ネジ部材50と兼用することとしてもよい。
次に、図7ないし図11を参照しつつ、本実施形態に係る装具の継手装置10の作用について説明する。例えば、脚を手術した後や脳卒中による片麻痺などの患者の脚に、装具の継手装置10を備えた長下肢装具100が装着される場合において、リハビリ等で膝関節を所定の制御(制限)された角度範囲で曲げる必要がある際には、患部の症状に応じて円弧方向長さLが異なる複数の範囲設定スライダ42を選択して可動域Xを設定する。例えば、リハビリ初期の段階で膝関節をあまり動かせず小さな角度範囲で制御した場合には、図7(a)に示すように、円弧方向の長さLが比較的長い範囲設定スライダ42Aを第2部材14に固定し、20度の軸回り可動域Xで遊動状に回動自在とする。この際、範囲設定スライダ42Aには複数(例えば、3つ)の貫通孔46のいずれかを選択して固定ネジ部材50で第2部材14のネジ孔58に螺合される。範囲設定スライダ42の貫通孔46の取付け位置を変更することにより第2部材14に対する範囲設定スライダの固定位置を変更することができることから、同一の範囲設定スライダ42Aで第1、第2部材12、14の可動域が同じ回動量であっても、第1、第2部材12、14の可動域の始点と終点を変更することができる。その結果、例えば、長下肢装具100を装着した際に、図7(a)に示すように膝を伸ばした伸展位状態から20度までの角度範囲で曲げ伸ばしすることができる態様としたり、図8に示すように膝を15度曲げた状態から35度までの角度範囲で又は図9に示すように30度曲げた状態から50度までの角度範囲で曲げ伸ばしできる態様としたりすることができる。
さらに、図12に示すように、例えば、範囲設定スライダ42Aを上記の固定状態とは裏返し反転した状態で第2部材14に固定することで、同じ回動量でもさらに異なる角度範囲に設定することができる。例えば、図12では、膝を伸展位状態から5度曲げた状態から25度までの角度範囲で曲げ伸ばしできる態様とすることもでき、範囲設定スライダ42の貫通孔の位置を変更して、上記同様に角度範囲を変更設定することができる。
例えば、リハビリ中期の段階で膝関節を少し大きな角度範囲で制御(制限)して動かす必要がある場合には、上記の範囲設定スライダ42Aを取り外し、図7(b)に示すように、円弧方向の長さLが中程度の範囲設定スライダ42Bを第2部材14に固定する。この際も上記同様に貫通孔46のいずれかを選択して該範囲設定スライダ42Bの第2部材14に対する固定位置を調整して、固定ネジ部材50で第2部材14に固定される。これにより、例えば、第1、第2部材12、14の軸回り可動域を30度の角度範囲に設定して、上記の範囲設定スライダ42Aを取り付けた場合よりも大きな可動範囲で膝を曲げ伸ばしすることができる。また、例えば、リハビリ終期の段階で膝関節をより大きな角度範囲で制御して動かす必要がある場合には、上記の範囲設定スライダ42Bを取り外し、図7(c)に示すように、円弧方向の長さLが短い範囲設定スライダ42Cを第2部材14に固定する。これにより、例えば、第1、第2部材12、14の軸回り可動域Xを50度の角度範囲に設定して、上記よりもさらに大きな可動範囲で膝を曲げ伸ばしすることができる。このように、円弧方向の長さLが異なる複数の範囲設定スライダを着脱交換することができるとともに、範囲設定スライダ42の第2部材14に対する固定位置を変更可能とすることでることから、簡単に第1、第2部材12、14の軸回り可動域Xを種々変更することができ、簡単な構成でありながら患部の症状等に応じて使用することができる。その結果、装具コストが安くつき、使い勝手が良く、実用性を向上できる。
また、図10に示すように、患部の症状に応じて膝関節が曲がらないように長下肢装具100で固定する必要がある場合には、角度固定手段66により第1、第2部材12、14が軸回り回動しないように固定することができる。図10では、例えば、第1部材12と第2部材14をまっすぐ伸ばした状態で固定されており、角度設定プレート38の一つの貫通孔68と、第2部材14の一つのネジ孔70とを位置合わせして、固定ネジ部材72で固定されている。角度設定プレート38の異なる位置の貫通孔68や第2部材14の異なる位置のネジ孔70に変更して位置合わせして固定ネジ部材72で固定することにより、第1部材12と第2部材14を所定の角度で曲げた状態で固定することもできる。これにより、固定保持が必要な症状等を含む患部の症状に広く対応した装具の継手装置を提供することができる。
さらに、例えば、患者が長下肢装具100を装着してリハビリ等をしている最中に休憩で椅子に座ったりする場合には、図11に示すように、ロック機構54のストッパ枠60を上昇させるとガイド部34や角度固定手段66等を構成する角度設定プレート38が枢軸16周りに回動可能となり、患者は膝を90度まで曲げる座ることができる。これにより、上記のような軸回り可動域設定機構や角度固定手段66を備えて、膝の動きを制限させる構成であっても、必要に応じてロック機構54のロックを解除することにより、膝を自由に曲げることができ、より使い勝手を向上することができる。
なお、第1、第2部材12、14や軸回り可動域設定機構18、角度固定手段66等の各構成は、上記した実施形態に限らない。例えば、第1、第2部材12、14は、例えば、支柱部材等でなく、装具の種類に応じて適宜変更される。また、例えば、第1、第2部材12、14の軸回り可動域Xは、上記の角度範囲に限らず任意の角度範囲に設定してもよい。また、例えば、範囲設定スライダ42の円弧方向長さLは、設定される所望の軸回り可動域Xに対応して任意に設定されるとよい。また、例えば、範囲設定スライダ42の個数も1個、2個、又は4個以上の複数個としてもよい。また、例えば、複数の移動体36や複数の範囲設定スライダ42を組み合わせて第2部材14に同時に取付けて、軸回り可動域Xを変更設定する構成としてもよい。また、例えば、ガイド部34は角度設定プレート38に設ける構成に限らず、上支柱部材20や第1、第2軸支板部材24、26等に直接に円弧状長孔40を設けてガイド部34とする構成としてもよい。また、例えば、角度固定手段66は、ガイド部34の円弧状長孔40と同じ円弧方向長さの円弧状部材を該円弧状長孔40内に嵌合させる構成としてもよい。その際、円弧状部材に複数の貫通孔を設けたり、第2部材14に複数のネジ孔を設けたりして、固定する角度を変更調整できるようにしてもよい。
以上説明した本発明の装具の継手装置は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。