JP6616271B2 - 燃料用木材チップの製造方法 - Google Patents
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Description
製材や合板等の木質材料製造では、古くから割れや狂いの発生を抑えた天然(天日)乾燥や加熱乾燥といったマイルドな乾燥技術が実用化されているが、付加価値の低い燃料製造には、より低コストで短時間に目標含水率まで乾燥できる処理技術を必要とする。しかしそのような手段は見いだされていない。
しかし、特許文献1に係る燃料用木材ペレットの製造方法の概要は、木粉に100MPa以上の超高圧を作用して木材の細胞を一気に圧搾して脱水処理することを内容とし、超高圧を必要とすることから設備費用が大であると共に運転費用が嵩む等の問題点を抱えている。また、複数台の製造装置を用いて複数回の脱水処理を実行するものであり、製造コストが高くなるという問題点がある。
そこで本発明者はこれら問題を解決すべく、先に燃料用木材チップの製造方法(特願2014-227327)を提案している。
そこで今回本発明者は、上記製造方法に対し、これを効率的に実施すべき装置の開発を模索したところ、該製造方法に使用する燃料用木材チップを型枠に充填した後に圧縮力を作用させると、型枠を外した状態としても型枠内にあった形状をほぼ維持したブロックを形成し、チップがばらけることがなく、該ブロックをそのまま圧縮してもほとんど崩れないで、脱水も効率的に行えることを見い出し、斯かる特性を活用して、簡潔で効率的な製造装置を基にした製造方法を具現したものである。
該製造装置に基づいて、イ)サクションプレート上に載せた型枠に向けてピストンを降下させて木材チップを圧密状態とする工程と、ロ)型枠をチップマットから外した状態としても元の姿勢のままの形態が維持される保形性が得られる時点で型枠を上昇させ、型枠の下端面とピストンの下端面とを面一にする工程と、ハ)型枠とピストンとを降下させて型枠による拘束を解除された木材チップを加圧する工程と、ニ)ピストンの圧力を最大圧縮圧力に保持する工程と、を備えてなることを特徴とする。
この拘束力によって、型枠を上昇させてチップマットから外れた状態となっても、チップが個々に分散してしまうことはなく、略もとの姿勢が維持される。
そして、この拘束力を維持したブロックに加圧力が作用すると、チップマットの厚さ方向に圧縮力が働き、細胞が押しつぶされ、内腔に存在した自由水が圧迫されて脱水が開始される。このとき、型枠による拘束の解除された木材チップの周囲には多量の水が流出される。
更に、最大圧縮圧力の維持により、残存する自由水が可及的に排出される。
上述の如く、木材加工工場からは大量の木材屑が排出され、又、森林からも林地残材などが多量に排出され、これらの有効な用途が求められている。これら低質材を燃料用として用いることができれば、有用な用途の一つとなり得るが、これら木材は生木が多く、そのままでは含水率が高いため燃料として不適とされてしまうことが少なくない。
この含水率は、針葉樹においては心材よりも辺材の方が高いとされるが、スギやトドマツなどでは心材も辺材と同等に高いものもあり、該発明で対象とする木材は針葉樹および広葉樹のこれら心・辺材を含むものである。
これら含水率の高いものに、後述する該発明の加圧脱水工程は有効に働くからである。
上記木材チップの形状は、具体的には、例えば、寸法がふるいの目開き32mmを通過し、8mmに溜まるチップの重量割合が全チップ重量の80%以上で、8mmを通過するものおよび63mmを通過し32mmに溜まるものがそれぞれ10%未満で、かつ長さが4〜120mmのものを指す。
そして、このチップマットの形成にあたっては、木材チップが繊維直角方向を厚さとする扁平又は細長とした場合は、後述する如く、自然落下させた場合にも多くが平行方向に配列して堆積した状態で形成されるものとなる。
即ち、木材中の水分は、細胞壁に含まれ木材実質と水素結合などの物理・化学的結合力で保持される結合水と、細胞内腔等の粗大な空隙に毛管力により保持される液状の自由水とが存在する。このうち加圧で容易に脱水できるのは自由水に限られるため、該発明では加圧脱水する対象を自由水とした。そして、この自由水は、壁孔(ピット)と呼ばれる小さな孔を通して隣接する細胞内腔間を移動できる。とくに繊維長軸方向に隣接する末端壁には多くの壁孔が分布し、繊維長軸方向への流動を容易にしている。他方、壁孔は強度的に弱点で、加圧による自由水の急激な膨圧発生に対して細胞破裂の起点ともなる。つまり、該発明は木材チップ内での細胞の配列と自由水の搾出に関係する細胞構造に着目したものである(図2参照)。
この第1工程が終了する段階で、後述するごとく、隣接するチップ間に摩擦や絡まりが生まれ、移動を抑制する拘束力が徐々に発生する。
このチップマット内に存する空気を抜いて第1工程が終了し圧縮応力の発生する第2工程のいずれかの時点で、例えばチップマット厚みが初期厚さの約5割(圧縮応力0.03MPa)に達した時点で、木材チップを囲う型枠を退避させても、後述する如くブロックの形態のままの保形性が維持される。
この第3工程にあっても、上記ブロックのままの保形性が維持される。
以上の工程を通じて、用いた木材チップの形状は、例えば寸法がふるいの目開き32mmを通過し、8mmに溜まるチップの重量割合が全チップ重量の80%以上で、8mmを通過するものおよび63mmを通過し32mmに溜まるものがそれぞれ10%未満で、かつ長さが4〜120mmのものである。
また最大設定応力と含水率の関係は、圧縮脱水処理前のチップ含水率はいずれも60〜70%の高率を示すが、処理後の含水率は最大設定応力が増すに従って約40%から約35%に減少し、とくに最大応力15MPa以上では60%を超える高含水率チップであっても目標の40%以下とすることが可能となる。
一方、25MPaを超える最高圧力の採用は、含水率のより低いチップ製造に有効であるが、設定圧力を高くするとプレス装置の大型化が不可避で、それに伴うチップ品質のメリットと装置導入の初期投資やランニングコストの高騰によるリスクとの兼ね合いで決定すべきと判断される。
先ず、上述の如く、木材中の水分には結合水と自由水とが存在し、自由水は壁孔(ピット)を通過して隣接細胞内腔間を移動できる。図2に示す如くとくに繊維長軸方向に隣接する末端壁には多くの壁孔が分布し、繊維長軸方向への流動を容易にしている。他方、壁孔は強度的に弱点で、加圧による自由水の急激な膨圧発生に対して細胞破裂の起点ともなる。そこで、木材チップの繊維長軸方向をプレス面に対し平行方向に配列して直角方向に加圧すると、細胞は直径方向に押しつぶされ、自由水も押されてその圧力によってついには強度的弱点である壁孔の破壊ひいては細胞破裂が引き起こされる。このような細胞破壊は1MPa程度の小さい圧力で発生し、圧力の増加により順次強度レベルの高い組織破壊に進展すると考えられる。因みに燃料用チップの品質は材料用木材と異なり組織破壊とは無関係であることを付言する。
このときの保持時間については15MPa〜25MPaの圧力の場合20秒では不足で、少なくとも30秒以上が必要であり、ただし30秒以上にしても脱水後の含水率はほとんど低下しないことから、30秒が適切と判断した。
斯くして、木材チップの含水率は40%以下とすることができ、燃料として使用するに適した含水率とすることが可能となる。
一方、脱水による到達含水率の最小値は30%とした。チップ燃料の含水率としては30〜40%にあれば品質的にも実用的にも十分であることによる。
該製造装置は、図4に示すように、型枠1,型枠駆動機構2,ピストン3,ピストン駆動機構4,位置決め機構5,サクションプレート6,吸引機構7,8の各部で構成されている。
この形態を運転する際には、図5に示すように、サクションプレート6に載せられた型枠1の内部に木材チップTを充填する。このとき、傾斜樋形のシュートSを使用すると、木材チップTの充填が容易となるとともに迅速に行うことができる。
即ち、チップマット内の空気が抜けて、チップ間の距離が徐々に縮まり、やがて互いが隣接し合う関係に至ると、チップ表面の組織が触れ合い、互いの食い込みや絡まりが生まれ、互いを拘束し合う関係となる。そこで、本来木材チップを囲んでその姿勢を維持すべき型枠1を上昇(退避)させ、該チップマットから外した状態としても、上記拘束力によってブロックが形成され、チップ個々が分散してしまうことなく略もとの姿勢のままの形態が維持される、保形性が得られるものとなる。
この型枠1の上昇(退避)のタイミングは、チップ表面の組織の状態や形状等によって異なるが、例えば上記製造方法で説明した形状のチップを用い、そのチップマットの厚みが初期厚さの約6割に至った段階で第1工程を終了させ、次なる第2工程で約0.03MPa程度の荷重を加え、その厚みが約5割に達した時点で型枠を退避させた場合、そのままブロックの形態が維持されることが確認された。
尚、このブロック形態の保形性とは、100%完全な形のままを維持するという意ではなく、後述するピストン退避後の加圧に伴う直交方向への木材チップの若干の膨らみ等を含むものである。
具体的には、図6(C)に示すよう、型枠駆動機構2とピストン駆動機構4とによって型枠1とピストン3とを降下させ型枠1による外側の拘束が解除された木材チップTを加圧し、この加圧による最大応力は、15MPa〜25MPaとする。
このとき、吸引機構7,8に木材チップTの底面の中心部と外側部とに分けて吸引経路を構成すると、大量の水が脱水される底面の中心部で強い吸引で確実に水を吸引し、少量の水が脱水される中心部よりも外側部で弱い吸引で、排水量に合わせて効率的に吸引される。
吸水過程でサクションプレートの吸引孔に木材チップが挟まった場合には、下方向に向けて拡開されたテーパ形や下方向に向けて段階的に大きくなる階段形に形成することで、吸引孔とチップとの間に摩擦(引っ掛かり)の少ない状態とし、自然な落下を促すことで、詰まりを防止することができる。
可動性を有して内部に木材チップが充填される型枠と、該型枠に充填された木材チップを降下して加圧するピストンと、型枠の下部に設置され木材チップから脱水された水が透過するサクションプレートと、サクションプレートに接続され木材チップから脱水され透過した水を吸引する吸引機構とから成る簡潔な機構で、上記燃料用木材チップの製造方法が具現され、特別な高圧を要することなく、極めて効率の良い木材チップの脱水を可能とすることができる。
この結果、上記簡潔で経済的な機構でありながら、効率的な工程の操作が促される。
2 型枠駆動機構
3 ピストン
4 ピストン駆動機構
5 位置決め機構
6 サクションプレート
7,8 吸引機構
T 木材チップ
Claims (2)
- 自由水を含む含水率50%以上で繊維直角方向を厚さとする扁平又は細長の木材チップを対象とし、相対する一対の一定面積を備えたプレス面が互いに等間隔をもって対面するプレス機によって、該木材チップの繊維長軸方向をプレス面に対し平行方向に配列して堆積したチップマットの厚さ方向からプレスで加圧脱水する工程を備える燃料用木材チップの製造方法であって、
可動性を有して内部に木材チップが充填される型枠と、該型枠に充填された木材チップを降下して加圧するピストンと、型枠の下部に設置され木材チップから脱水された水が透過するサクションプレートと、サクションプレートに接続され木材チップから脱水され透過した水を吸引する吸引機構とを有する製造装置を用いて、
該製造装置に基づいて、
イ)サクションプレート上に載せた型枠に向けてピストンを降下させて木材チップを圧密状態とする工程と、
ロ)型枠をチップマットから外した状態としても元の姿勢のままの形態が維持される保形性が得られる時点で型枠を上昇させ、型枠の下端面とピストンの下端面とを面一にする工程と、
ハ)型枠とピストンとを降下させて型枠による拘束を解除された木材チップを加圧する工程と、
ニ)ピストンの圧力を最大圧縮圧力に保持する工程と、
を行うことを特徴とする燃料用木材チップの製造方法。 - 請求項1の燃料用木材チップの製造方法において、型枠をチップマットから外した状態としても元の姿勢のままの形態が維持される保形性が得られる時点を、チップマットに約0.03MPa程度の荷重を加え、その厚みが約5割に達する時点とすることを特徴とする燃料用木材チップの製造方法。
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