JP6613176B2 - 発電システム - Google Patents

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Description

本発明は、発電システムに関する。
風力発電、水力発電、太陽光発電、太陽熱発電、地熱発電等に代表される再生可能エネルギーを用いた発電プラント(以下、再生可能エネルギー発電プラント)では、再生可能エネルギーから得られる発電量が季節、天候、時間帯等により変動し、また、電力需要の変動への対応幅も小さい。そのため、再生可能エネルギー発電プラントを備えた発電システムでは、蒸気タービン発電プラント(例えば、コンバインドサイクル発電プラント)を併用して系統電力を安定化させている。この蒸気タービン発電プラントに備えられた蒸気タービンには、燃料消費量を抑えつつ系統電力を安定化させるべく、起動時間の短縮(高速起動)が求められている。
蒸気タービンの起動では、タービンロータ(回転体)及びタービンロータを収納するケーシング(静止部)は高温の蒸気に晒されることにより加熱され、熱膨張により特にタービン軸方向に伸びる(熱伸び)。タービンロータとケーシングは構造も熱容量も異なるため、タービンロータの熱伸びとケーシングの熱伸びには差(熱伸び差)が生じる。この熱伸び差が大きくなると、タービンロータとケーシングとが接触し損傷する可能性がある。
ケーシングはタービンロータに比べて熱容量が大きいため、一般的には、起動開始時のケーシングの温度が低いほど熱伸び差が大きくなる。そこで、蒸気タービンの停止後経過時間あるいはケーシング内部の温度に応じて、ホットモード、ウォームモード、コールドモード等の複数の起動モードを使い分けて、蒸気タービンの起動を制御する方法がある。
しかしながら、複数の起動モードのうち、ホットモード以外の起動モード(例えば、ウォームモード及びコールドモード)では、蒸気タービンが十分に予熱されていないため熱伸び差が生じ易く、蒸気タービンの起動時間を長く設定せざるを得ない。そこで、複数のコンバインドサイクル発電プラントを配管で接続し、稼働しているコンバインドサイクル発電プラントから起動させるコンバインドサイクル発電プラントに蒸気を供給して蒸気タービンを予熱する方法が提唱されている(特許文献1等を参照)。
米国特許6519927号公報
特許文献1では、系統内の複数のコンバインドサイクル発電プラントが全て停止している場合、起動させるコンバインドサイクル発電プラントの蒸気タービンを予熱することができず、起動に時間を要する可能性がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、他に稼働中の蒸気タービン発電プラントがなくても、短時間で起動して再生可能エネルギー発電プラントの出力変動に柔軟に対応できる発電システムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る発電システムは、熱源媒体で低温媒体を加熱して高温媒体を生成する熱源装置、前記高温媒体との熱交換により蒸気を発生させる蒸気発生装置、及び前記蒸気で駆動する蒸気タービンを備える蒸気タービン発電プラントと、再生可能エネルギー発電プラントと、前記再生可能エネルギー発電プラントで利用される一部の再生可能エネルギーを利用して生成した熱媒体を供給する供給源と、前記蒸気タービン及び前記蒸気発生装置の少なくとも一方に取り付けられた予熱装置と、前記供給源と前記予熱装置を接続する予熱ラインと、前記予熱ラインに設けられた調整弁と、前記蒸気タービンの停止日時及び起動開始日時に基づき、前記蒸気タービン及び前記蒸気発生装置の少なくとも一方の予熱を開始すべき日時である予熱開始日時、及び前記熱媒体の蓄積開始日時を予測演算する予測部と、前記予測部で予測された予熱開始日時を入力し、前記予熱開始日時に前記調整弁に信号を出力する蒸気タービン熱制御装置と、前記蓄積開始日時を入力する熱媒体蓄積量制御装置と、前記予熱ラインに設けられ、前記熱媒体を利用して二次熱媒体を生成し蓄積する熱媒体蓄積装置と、前記熱媒体蓄積量制御装置からの信号を入力し、前記熱媒体蓄積装置に供給する前記熱媒体の流量を調整する熱媒体蓄積量調整装置とを備えることを特徴とする。
また、本発明に係る発電システムは、熱源媒体で低温媒体を加熱して高温媒体を生成する熱源装置、前記高温媒体との熱交換により蒸気を発生させる蒸気発生装置、及び前記蒸気で駆動する蒸気タービンを備える蒸気タービン発電プラントと、再生可能エネルギー発電プラントと、前記再生可能エネルギー発電プラントで利用される一部の再生可能エネルギーを利用して生成した熱媒体を供給する供給源と、前記蒸気タービン及び前記蒸気発生装置の少なくとも一方に取り付けられた予熱装置と、前記供給源と前記予熱装置を接続する予熱ラインと、前記予熱ラインに設けられた調整弁と、前記蒸気タービンの停止日時及び起動開始日時に基づき、前記蒸気タービン及び前記蒸気発生装置の少なくとも一方の予熱を開始すべき日時である予熱開始日時、及び前記熱媒体の蓄積開始日時を予測演算する予測部と、前記予測部で予測された予熱開始日時を入力し、前記予熱開始日時に前記調整弁に信号を出力する蒸気タービン熱制御装置と、前記蓄積開始日時を入力する熱媒体蓄積量制御装置と、前記予熱ラインに設けられ、前記熱媒体を蓄積する熱媒体蓄積装置と、前記熱媒体蓄積量制御装置からの信号を入力し、前記熱媒体蓄積装置に供給する前記熱媒体の流量を調整する熱媒体蓄積量調整装置とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、他に稼働中の蒸気タービン発電プラントがなくても、短時間で起動して再生可能エネルギー発電プラントの出力変動に柔軟に対応できる発電システムを提供することができる。
本発明の第1実施形態に係る発電システムの概略構成図である。 電力需要予測装置による予測演算方法を説明するための図である。 電力需要予測装置による予測演算の手順を示すフローチャートである。 本発明の第2実施形態に係る発電システムの概略構成図である。 本発明の第3実施形態に係る発電システムの概略構成図である。 本発明の第4実施形態に係る発電システムの概略構成図である。 本発明の第5実施形態に係る発電システムの概略構成図である。 電力需要予測装置による予測演算方法を説明するための図である。 本発明の第6実施形態に係る発電システムの概略構成図である。
<第1実施形態>
(構成)
1.発電システム
図1は、本実施形態に係る発電システムの概略構成図である。
図1に示すように、発電システム100は、蒸気タービン発電プラント200、熱媒体供給システム300及び予熱システム400を備えている。
2.蒸気タービン発電プラント
蒸気タービン発電プラント200は、熱源装置1、蒸気発生装置2、蒸気タービン3、発電機4、熱源媒体量調整装置14、蒸気加減弁15、及び蒸気タービン起動制御装置21を備えている。本実施形態では、熱源装置1がガスタービンである場合(つまり、蒸気タービン発電プラント200がコンバインドサイクル発電プラントである場合)を例に挙げて説明する。
熱源装置1は、熱源媒体5(例えば、水素含有燃料等を含むガス燃料、液体燃料)に保有される熱量を用いて低温媒体6(空気等)を加熱し高温媒体7(ガスタービン排ガス)を生成して蒸気発生装置2に供給する。蒸気発生装置2(排熱回収ボイラ)は内部に熱交換器を備え、熱源装置1で生成された高温媒体7の保有熱との熱交換により給水を加熱して蒸気8を発生させる。蒸気タービン3は、蒸気発生装置2で発生した蒸気8により駆動される。蒸気タービン3には、温度計13が設けられている。温度計13は、蒸気タービン3のケーシング等のメタル温度を計測する。発電機4は、蒸気タービン3と同軸に連結され、蒸気タービン3の回転出力を電力に変換する。発電機4の電力は電力系統22に供給される。
熱源媒体量調整装置14(燃料調整弁)は、熱源装置1に対する熱源媒体5の供給経路に設けられている。熱源媒体量調整装置14は、熱源装置1に供給される熱源媒体5の流量を調節して、熱源装置1で生成される高温媒体7の保有熱量を操作する。熱源媒体5の供給経路の熱源媒体量調整装置14に対して熱源媒体5の流れ方向の下流側には、流量計11が設けられている。流量計11は、熱源装置1に供給される熱源媒体5の流量を計測する。蒸気加減弁15は、蒸気発生装置2と蒸気タービン3を接続する蒸気配管に設けられている。蒸気加減弁15は、蒸気タービン3に供給される蒸気8の流量を調節する。蒸気配管の蒸気加減弁15に対して蒸気8の流れ方向の下流側(蒸気タービン3側)には、圧力計12が設けられている。圧力計12は、蒸気配管を流れる蒸気8の圧力を計測する。熱源媒体量調整装置14及び蒸気加減弁15は、蒸気タービン発電プラント200の発電出力量を調整する調整装置として機能する。
蒸気タービン起動制御装置21は、蒸気タービン発電プラント200のプラント状態量を入力し、入力したプラント状態量に基づき蒸気タービン発電プラント200を制御する指令値を出力する。蒸気タービン起動制御装置21に入力されるプラント状態量の入力値としては、例えば、蒸気タービン発電プラント200の構成要素や蒸気の温度や圧力、流量等の状態量を示す各種計測値がある。本実施形態では、蒸気タービン起動制御装置21は、プラント状態量の入力値として流量計11、圧力計12及び温度計13の計測値16を入力し、操作量指令値17として熱源媒体量調整装置14に対する燃料調整指令値及び蒸気加減弁15に対する蒸気加減指令値を出力する。
3.熱媒体供給システム
熱媒体供給システム300は、蒸気タービン発電プラント200以外で発生するエネルギーを利用して熱媒体を生成し、予熱システム400に供給する。熱媒体供給システム300は、再生可能エネルギー発電プラント500(本実施形態では、太陽熱発電プラント)を備えている。
再生可能エネルギー発電プラント500は、再生可能エネルギー取込装置18、再生可能エネルギー用蒸気発生装置19、再生可能エネルギー用蒸気タービン20及び再生可能エネルギー用発電機23を備えている。
再生可能エネルギー取込装置18は、不図示の集熱器及び集熱媒体(例えば、油、水等の液体、塩)を有している。再生可能エネルギー取込装置18は、集熱器を介して取り込んだ再生可能エネルギー(太陽熱)を集熱媒体に供給して熱媒体(不図示)を生成し、再生可能エネルギー用蒸気発生装置19に供給する。つまり、本実施形態では、再生可能エネルギー取込装置18は、再生可能エネルギーを利用して生成した熱媒体を供給する供給源として機能する。再生可能エネルギー用蒸気発生装置19は内部に熱交換器を備え、熱媒体の保有熱との熱交換により給水を加熱して蒸気を発生させる。再生可能エネルギー用蒸気タービン20は、再生可能エネルギー用蒸気発生装置19で発生した蒸気により駆動される。再生可能エネルギー用発電機23は、再生可能エネルギー用蒸気タービン20と同軸に連結され、再生可能エネルギー用蒸気タービン20の回転出力を電力に変換する。再生可能エネルギー用発電機23の電力は、電力系統22に供給される。
4.予熱システム
予熱システム400は、ポンプ9、電力需要予測装置24、蒸気タービン熱制御装置25、蒸気タービン予熱調整弁26、移送管28,29、及びケーシング予熱管32を備えている。
移送管(第1移送管)28は、再生可能エネルギー発電プラント500の再生可能エネルギー取込装置18とポンプ9を接続し、移送管(第2移送管)29は、ポンプ9とケーシング予熱管32を接続している。第1,2移送管28,29は、再生可能エネルギー取込装置18で生成された一部の熱媒体を再生可能エネルギー用蒸気発生装置19に供給する配管とは別の配管であり、再生可能エネルギー取込装置18で生成された熱媒体をケーシング予熱管32に供給する。つまり、本実施形態では、第1,2移送管28,29は、再生可能エネルギー取込装置18とケーシング予熱管32を接続する予熱ラインとして機能する。
ポンプ9は、吸込み口が第1移送管28を介して再生可能エネルギー取込装置18に接続し、吐出口が第2移送管29を介してケーシング予熱管32に接続している。ポンプ9は、例えば、モータ(不図示)により駆動される。ポンプ9が駆動されると、ポンプ9は再生可能エネルギー取込装置18で生成された熱媒体を第1移送管28を介して吸い込み、第2移送管29に吐出してケーシング予熱管32に供給する。
蒸気タービン予熱調整弁(調整弁)26は、第2移送管29に設けられている。蒸気タービン予熱調整弁26は蒸気タービン熱制御装置25に電気的に接続しており、蒸気タービン熱制御装置25からの信号27A,27Bに応じて第2移送管29の開通及び遮断を切り換える。具体的に、蒸気タービン予熱調整弁26は、蒸気タービン熱制御装置25からの信号(開通信号)27Aを入力したときは第2移送管29を開通し、蒸気タービン熱制御装置25からの信号(遮断信号)27Bを入力したときは第2移送管29を遮断する。
ケーシング予熱管32は、蒸気タービン3のケーシングの外壁面に取り付けられた熱交換器である。ケーシング予熱管32は、再生可能エネルギー取込装置18から供給された熱媒体を利用して、蒸気タービン3のケーシングを加熱する。つまり、本実施形態では、ケーシング予熱管32は蒸気タービン3のケーシングを加熱する予熱装置として機能する。
電力需要予測装置(予測部)24は、蒸気タービン3の停止日時、起動開始日時及び起動完了日時に関する実績及び予定のデータを記憶部(不図示)に記憶している。電力需要予測装置24は、記憶部に記憶した蒸気タービン3の停止日時、起動開始日時及び起動完了日時に関する実績及び予定のデータを用いて、次回のケーシング予熱開始日時及び蒸気タービン起動開始日時(ケーシング予熱完了日時)を予測演算し、蒸気タービン熱制御装置25に出力する。電力需要予測装置24の予測演算方法については後述する。本実施形態において、予測演算するケーシング予熱開始日時とは、蒸気タービン3の起動が完了する日時(蒸気タービン起動完了日時)から逆算して予熱時間と起動時間の分だけ遡った日時若しくはそれより前の日時でかつ現在日時よりも先の日時を言う。
蒸気タービン熱制御装置25は、電力需要予測装置24で予測演算されたケーシング予熱開始日時及び蒸気タービン起動開始日時を入力する。蒸気タービン熱制御装置25は、入力したケーシング予熱開始日時に、蒸気タービン予熱調整弁26に信号27Aを出力して第2移送管29を開通させる。一方、蒸気タービン熱制御装置25は、入力した蒸気タービン起動開始日時に、蒸気タービン予熱調整弁26に信号27Bを出力して第2移送管29を遮断させつつ蒸気タービン起動制御装置21に信号(起動開始信号)27Cを出力して蒸気タービン3を起動させる。
図2は、電力需要予測装置24による予測演算方法を説明するための図である。図2の横軸は時間を示していて、原点を現在時刻としている。なお、図2は、今後一定期間電力需要が増加する一方、再生可能エネルギー発電プラント500の発電能力が低下し、電力不足の状態に陥ることが予測される場合を例示している。
電力需要予測線51は、現在から一定期間先の電力需要の予測値を示している。再生可能エネルギー発電能力予測線52は、再生可能エネルギー発電プラント500の発電能力(再生可能エネルギー発電プラント500が出力可能な電力量)の予測値を示している。電力需要予測線51及び再生可能エネルギー発電能力予測線52は、季節、時間帯の変化及び過去の実績をパラメータにして、電力需要予測装置24により予測される。なお、本実施形態では、再生可能エネルギー発電プラント500の発電能力は、再生可能エネルギー発電プラント500で何らかの手段により蓄えられた余剰エネルギーを用いて得られる電力量も含む。
ケーシング温度予測線53は、蒸気タービン3のケーシングの温度の予測値を示している。図2に示すように、蒸気タービン3のケーシングの温度は、ケーシングの予熱が開始されるまでは、蒸気タービン3が停止してからの経過時間に伴い自然冷却により常温に向かって徐々に低下する。
再生可能エネルギー発電出力予測線54は、再生可能エネルギー発電プラント500の発電出力(電力需要に応じて再生可能エネルギー発電プラント500が出力する電力量)の予測値を示している。例えば、電力需要が再生可能エネルギー発電プラント500の発電能力を上回る場合、再生可能エネルギー発電出力は再生可能エネルギー発電能力となる。一方、電力需要が再生可能エネルギー発電プラント500の発電能力を下回る(つまり、再生可能エネルギー発電能力より小さい電力量で需要電力をまかなえる)場合、再生可能エネルギー発電出力は再生可能エネルギー発電能力より小さくなる。このとき、再生可能エネルギー発電能力と再生可能エネルギー発電出力の差は、再生可能エネルギー発電プラント500の余剰エネルギーとして不図示の蓄熱装置等に蓄えられる。
蒸気タービン発電プラント出力予測線55は、蒸気タービン発電プラント200の発電出力(蒸気タービン発電プラント200が出力する電力量)の予測値を示している。
合計出力予測線56は、再生可能エネルギー発電プラント500が出力する電力量と蒸気タービン発電プラント200が出力する電力量との合計値を示している。つまり、合計出力予測線56は、再生可能エネルギー発電出力予測線54と蒸気タービン発電プラント出力予測線55とを足し合わせて得られる。
次に、電力需要予測装置24による予測演算方法について説明する。
例えば、図2における現在のように、再生可能エネルギー発電プラント500が稼働し、蒸気タービン発電プラント200が停止している時点において、電力需要予測装置24が、図2に例示した電力需要予測線51、再生可能エネルギー発電能力予測線52、及び合計出力予測線56を予測したとする。この場合、電力需要予測装置24は、電力需要予測線51と再生可能エネルギー発電能力予測線52とが交差する時点(図2の時点A)以降、電力不足に陥ると予測し、蒸気タービン発電プラント200を稼働させる必要があると判断する。
ところで、ホットモードで蒸気タービン3を起動した場合、蒸気タービン発電プラント200の発電出力を示す曲線及び蒸気タービン3の起動開始から起動完了までの時間は一定となるため、電力需要予測装置24の記憶部に予め記憶しておくことができる。したがって、電力需要予測装置24は、電力需要予測線51、再生可能エネルギー発電能力予測線52、蒸気タービン発電プラント200の発電出力を示す曲線及び蒸気タービン3の起動開始から起動完了までの時間に基づき、時点Aで蒸気タービン発電プラント200の発電出力と再生可能エネルギー発電プラント500の発電出力との合計発電出力が電力需要を下回らないように、蒸気タービン起動開始日時を予測演算する。
一方、蒸気タービン3のケーシングを予熱する場合、予熱開始からケーシングの温度がホットモードに達する予熱完了までの時間(予熱時間)、予熱に必要な総エネルギー量及びケーシング温度予測線53は、予熱開始時点のケーシングの温度に応じた関数(つまり、予熱開始時点のケーシングの温度をパラメータとして含む関数)で表すことができる。また、予熱開始時点のケーシングの温度は、蒸気タービン停止日時から予熱開始までの時間に応じた関数(つまり、蒸気タービン停止日時から予熱開始までの時間をパラメータとして含む関数)で表すことができる。したがって、電力需要予測装置24は、蒸気タービン停止日時と蒸気タービン起動開始日時に基づき、上述した関数を用いて、仮のケーシング予熱開始日時及び予熱に必要な総エネルギー量を演算する。
そして、電力需要予測装置24は、仮のケーシング予熱開始日時から蒸気タービン起動開始日時までの余剰エネルギーの積算値を演算し、余剰エネルギーが予熱に必要な総エネルギー量を上回るように、仮のケーシング予熱開始日時を前倒しする(つまり、現在側に修正する)。仮のケーシング予熱開始日時を前倒しすると、ケーシング温度予測線53に示すように予熱開始時のケーシングの温度が変わるため、予熱に必要な総エネルギー量も変化する。電力需要予測装置24は、仮のケーシング予熱開始日時を前倒ししながら、仮のケーシング予熱開始日時から蒸気タービン起動開始日時までの余剰エネルギーの積算値の計算を繰り返し、最適なケーシング予熱開始日時(ケーシング予熱開始日時の最適値)を予測演算する。本実施形態において、最適なケーシング予熱開始日時とは、再生可能エネルギー発電プラント500の余剰エネルギーが予熱に必要な総エネルギー量を下回ることなく、かつ余剰エネルギーと予熱に必要な総エネルギー量との差が最小となる日時を言う。
なお、上述の説明では、図2に示すように、現在からケーシング予熱開始日時まで蒸気タービン3が停止している場合を想定し、電力需要予測装置24が電力需要予測線51と再生可能エネルギー発電能力予測線52との差に基づいて蒸気タービン起動開始日時を予測演算する場合を説明した。しかしながら、例えば、現在からケーシング予熱開始日時までの間に蒸気タービン3が停止するような場合は、電力需要予測装置24は、電力需要予測線51と合計出力予測線56との差に基づいて蒸気タービン起動開始日時(つまり、蒸気タービン3の再起動開始日時)を予測演算する。
(動作)
図3は、電力需要予測装置24による予測演算の手順を示すフローチャートである。
図3に示すように、電力需要予測装置24は、予測演算を開始するに先立ち、記憶部に記憶された過去の予測演算データをクリアして初期化する(ステップS1)。
続いて、電力需要予測装置24は、電力需要予測線51、再生可能エネルギー発電能力予測線52、及び合計出力予測線56を予測し(ステップS2)、蒸気タービン発電プラント200を稼働させる必要があるか否か判断する(ステップS3)。具体的に、蒸気タービン発電プラント200を稼働させる必要があると判断した場合(Yes)、電力需要予測装置24はステップS3からステップS4に手順を移す。反対に、蒸気タービン発電プラント200を稼働させる必要がないと判断した場合(No)、電力需要予測装置24は予測演算の手順を終了して予測演算データをクリアする。
ステップS3において蒸気タービン発電プラント200を稼働させる必要があると判断された場合、電力需要予測装置24は、蒸気タービン起動開始日時を予測演算する(ステップS4)。
次に、電力需要予測装置24は、蒸気タービン停止日時と蒸気タービン起動開始日時とに基づき、蒸気タービン3の予熱の要否を判定する(ステップS5)。具体的に、電力需要予測装置24は、蒸気タービン停止日時から蒸気タービン起動開始日時までの時間に基づき、蒸気タービン起動開始日時におけるケーシングの温度Tcを予測演算する。そして、蒸気タービン起動開始日時におけるケーシングの温度Tcがホットモードの条件を満たす設定温度Th未満の場合(Yes)、電力需要予測装置24は蒸気タービン3を予熱する必要があると判定し、ステップS5からステップS6に手順を移す。反対に、ケーシングの温度Tcが設定温度Th以上の場合(No)、電力需要予測装置24は蒸気タービン3を予熱する必要はないと判定し、予測演算の手順を終了して予測演算データをクリアする。
ステップS5において蒸気タービン3を予熱する必要があると判断された場合、電力需要予測装置24は、蒸気タービン停止日時と蒸気タービン起動開始日時に基づき、仮のケーシング予熱開始日時及び予熱に必要な総エネルギー量を予測演算する(ステップS6)。
続いて、電力需要予測装置24は、最適なケーシング予熱開始日時を予測演算する(ステップS7)。
続いて、電力需要予測装置24は、最適なケーシング予熱開始日時及び蒸気タービン起動開始日時を蒸気タービン熱制御装置25に出力する(ステップS8)。
電力需要予測装置24は、蒸気タービン起動開始日時まで、上述した動作(ステップS1〜ステップS8)を一定時間毎に繰り返す。なお、蒸気タービン熱制御装置25は、電力需要予測装置24から一定時間毎に繰り返し出力されるケーシング予熱開始日時等の情報を順次入力して上書きし、常に最新の情報を記憶する。
(効果)
(1)本実施形態に係る発電システム100では、蒸気タービン発電プラント200以外で発生するエネルギーを利用して生成した熱媒体をケーシング予熱管32に供給し、蒸気タービン3を予熱している。そのため、他に稼働中の蒸気タービン発電プラントがなくても、蒸気タービン3を予熱することができ、短時間で起動して再生可能エネルギー発電プラントの出力変動に柔軟に対応できる発電システムを提供することができる。
また、一般的に、蒸気タービンでは、流入する蒸気の温度が急激に上昇すると、ケーシングのメタル部分における温度分布が不均一となり熱変形が生じ得る。そのため、蒸気タービンの起動時においては、蒸気の温度上昇率が設定値以下となるように起動速度を制御する必要がある。これに対し、本実施形態では、蒸気タービン発電プラント200以外で発生するエネルギーを利用して生成した熱媒体により蒸気タービン3を予熱しているので、蒸気タービン3に流入する蒸気8の温度が急上昇する場合でもケーシングのメタル部分における温度分布が不均一となることを抑制することができ、速やかに起動させることができる。
(2)本実施形態に係る発電システム100では、蒸気タービン3の停止日時及び起動開始日時に基づいて予熱開始日時を予測演算し、予測演算した予熱開始日時に予熱を開始している。そのため、蒸気タービン3の起動開始日時に応じて蒸気タービン3を予熱することができる。
(3)本実施形態に係る発電システム100では、再生可能エネルギー発電プラントの発電出力を電力需要に充当しつつ、再生可能エネルギー発電プラントで利用される一部の再生可能エネルギーを利用して熱媒体を生成し、蒸気タービン3を予熱して起動時間を短縮している。そのため、電力需要に対して再生可能エネルギー発電プラントの発電出力を最大限に利用し、かつ、系統電力を安定化させることができる。
また、一般的に、コンバインドサイクル発電プラント等の蒸気タービン発電プラントは、発電用の定格出力においてエネルギー効率が最大となるように設計されている。そのため、定格出力に満たない予熱及び起動時間が長くなるほど化石燃料の利用効率が低下する(つまり、発電量に対して化石燃料の供給量が増加する)。これに対し、本実施形態では、上述したように、再生可能エネルギーを利用して蒸気タービン3を予熱しているので、化石燃料を短時間のホットモード起動及び定格出力の発電にのみ使用することができ、化石燃料の利用効率を向上させることができる。
<第2実施形態>
(構成)
図4は、本実施形態に係る発電システムの概略構成図である。図4において、上記第1実施形態と同等の部分には同一の記号を付し、適宜説明を省略する。
本実施形態に係る発電システム101は、熱媒体蓄積システム601を更に備える点で第1実施形態に係る発電システム100と異なる。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
図4に示すように、熱媒体蓄積システム601は、熱媒体蓄積装置34、熱媒体蓄積量制御装置35、ポンプ36及び熱媒体蓄積量調整装置37を備えている。
本実施形態では、第1移送管28は、第1,2,3供給配管28A,28B,28Cを備えている。第1供給配管28Aは再生可能エネルギー取込装置18とポンプ36を接続し、第2供給配管28Bはポンプ36と熱媒体蓄積装置34を接続し、第3供給配管28Cは熱媒体蓄積装置34とポンプ9を接続している。
ポンプ36は、吸込み口が第1供給配管28Aに接続し、吐出口が第2供給配管28Bに接続している。ポンプ36は、例えば、モータ(不図示)により駆動される。ポンプ36が駆動されると、ポンプ36は再生可能エネルギー取込装置18で生成された熱媒体を第1供給配管28Aを介して吸い込み、第2供給配管28Bに吐出して熱媒体蓄積装置34に供給する。
熱媒体蓄積装置(本実施形態では、蓄熱槽)34は熱交換器を備えていて、再生可能エネルギー取込装置18から供給された熱媒体との熱交換により、蓄積した熱媒体を加熱して二次熱媒体(不図示)を生成して蓄積し、第2,3供給配管28B,28Cを介してケーシング予熱管32に供給する。
熱媒体蓄積量調整装置(熱媒体量調整弁)37は、第2供給配管28Bの途中に設けられている。熱媒体蓄積量調整装置37は、熱媒体蓄積量制御装置35に電気的に接続しており、熱媒体蓄積量制御装置35からの信号(駆動信号)27Dに応じて開度が調整される。つまり、熱媒体蓄積量調整装置37は、熱媒体蓄積量制御装置35からの信号27Dを入力し、再生可能エネルギー取込装置18から熱媒体蓄積装置34に供給される熱媒体の流量を調整する。
本実施形態では、電力需要予測装置24は、次回のケーシング予熱開始日時及び蒸気タービン起動開始日時に加えて、熱媒体蓄積装置34内の二次熱媒体の残量(熱媒体残量)と、電力需要予測線51、再生可能エネルギー発電能力予測線52及び次回のケーシング予熱開始日時とに基づいて熱媒体蓄積開始日時を予測演算し、熱媒体蓄積量制御装置35に出力する。本実施形態において、予測演算する熱媒体蓄積開始日時は、現在を基点として、蒸気タービン3の起動が完了すべき日時から逆算して予熱時間、起動時間、及び熱媒体蓄積装置34の熱媒体残量が0の状態(つまり、熱媒体蓄積装置34内に二次熱媒体が蓄積されていない状態)から熱媒体残量が満たされる状態(つまり、熱媒体蓄積装置34内に二次熱媒体が最大量蓄積されている状態)までに必要な時間の分だけ遡った日時若しくはそれより前の日時でかつ現在日時よりも先の日時を言う。
熱媒体蓄積量制御装置35は、電力需要予測装置24で予測演算された熱媒体蓄積開始日時を入力する。熱媒体蓄積量制御装置35は、入力した熱媒体蓄積開始日時に、熱媒体蓄積量調整装置37に信号27Dを出力して熱媒体蓄積量調整装置37の開度を調整し、熱媒体蓄積装置34に熱媒体を供給する。
(効果)
本実施形態では、第1実施形態と同様の効果に加えて以下の効果が得られる。
本実施形態では、電力需要予測装置24により予測演算された熱媒体蓄積開始日時に熱媒体蓄積装置34に熱媒体を供給して二次熱媒体の生成及び蓄積を開始するため、予熱に必要な総エネルギーを予め確保しておくことができる。したがって、例えば、予熱時間が長期化し、実際の余剰電力が予測から変動してずれた場合でも、蒸気タービン起動開始日時までに予熱に必要な総エネルギーを確保し、蒸気タービン3を十分に予熱することができる。
<第3実施形態>
(構成)
図5は、本実施形態に係る発電システムの概略構成図である。図5において、上記第2実施形態と同等の部分には同一の記号を付し、適宜説明を省略する。
本実施形態に係る発電システム102は、予熱システム402がケーシング予熱管32の代わりに電熱線41を、第1,2移送管28,29の代わりに電線42,44,45を、蒸気タービン予熱調整弁26の代わりにスイッチ39を備え、熱媒体蓄積システム602がポンプ36を備えていない点で、第2実施形態に係る発電システム101と異なる。その他の構成は、第2実施形態と同様である。
電線42は、再生可能エネルギー用発電機23と熱媒体蓄積装置34を接続し、再生可能エネルギー用発電機23で発生した余剰電力の一部を熱媒体として熱媒体蓄積装置34に供給している。つまり、本実施形態では、再生可能エネルギー用発電機23が再生可能エネルギーを利用して生成した熱媒体を供給する供給源として機能する。電線44は熱媒体蓄積装置34とスイッチ39を接続し、電線45はスイッチ39と電熱線41を接続している。電線44,45は、熱媒体蓄積装置34に蓄えられた余剰電力を電熱線41に供給する。つまり、本実施形態では、電線42,44,45は、再生可能エネルギー用発電機23と電熱線41を接続する予熱ラインとして機能する。
電熱線41は、電線44,45を介して熱媒体蓄積装置34から供給された余剰電力を利用して、蒸気タービン3のケーシングを加熱する。つまり、本実施形態では、電熱線41は、蒸気タービン3のケーシングを加熱する予熱装置として機能する。
スイッチ39は、蒸気タービン熱制御装置25に電気的に接続しており、蒸気タービン熱制御装置25からの信号27A,27Bに応じて入り位置(電線44と電線45を接続する位置)と切り位置(電線44と電線45の接続を切断する位置)を切り換える。具体的に、スイッチ39は、蒸気タービン熱制御装置25からの信号27Aを入力したときは切り位置から入り位置に切り換わって電線44と電線45を接続し、蒸気タービン熱制御装置25からの信号27Bを入力したときは入り位置から切り位置に切り換わって電線44と電線45の接続を切断する。
熱媒体蓄積装置(本実施形態では、蓄電池)34は、電線42を介して再生可能エネルギー用発電機23から供給された余剰電力を蓄える。
なお、本実施形態では、発電システム102が熱媒体蓄積装置34及び熱媒体蓄積量調整装置37を備える構成を例示したが、熱媒体蓄積装置34及び熱媒体蓄積量調整装置37を備えていなくても良い。その場合、再生可能エネルギー用発電機23で発生した余剰電力の一部を電線42,44,45を介して電熱線41に直接供給する。また、電力需要予測装置24は、第1実施形態で説明した手順で仮のケーシング予熱開始日時を予測演算した後、再生可能エネルギー発電出力予測線54と電力需要予測線51とに基づいて最適なケーシング予熱開始日時を予測演算する。
(効果)
本実施形態では、第2実施形態と同様の効果に加えて以下の効果が得られる。
本実施形態では、再生可能エネルギー用発電機23で発生した余剰電力の一部を電熱線41に供給し、蒸気タービン3のケーシングを加熱している。そのため、太陽光発電プラント、風力発電プラント、水力発電プラント等の熱利用以外の発電方式の発電プラントを再生可能エネルギー発電プラント500として採用することができる。
また、本実施形態では、第1,2移送管28,29の代わりに電線42,44,45、ケーシング予熱管32の代わりに電熱線41を設けているため、上述の各実施形態に比べて配管の本数を減らすことができる。したがって、発電システムの保守性を向上させることができる。更に、上述のように、余剰電力を熱媒体としているため、液体や固体等を熱媒体とする場合に比べて、予熱装置への供給量等を容易に制御することができる。
<第4実施形態>
(構成)
図6は、本実施形態に係る発電システムの概略構成図である。図6において、上記第3実施形態と同等の部分には同一の記号を付し、適宜説明を省略する。
本実施形態に係る発電システム103は、予熱システム403がエネルギー変換システム703を備え、電熱線41の代わりにケーシング予熱管32を備えている点で、第3実施形態に係る発電システム102と異なる。その他の構成は、第3実施形態と同様である。
エネルギー変換システム703は、エネルギー変換装置43、ポンプ47、熱媒体供給装置48、第1,2,3配管49,50,57、及び電線58を備えている。
第1配管49は熱媒体供給装置48とポンプ47を接続し、第2配管50はポンプ47とエネルギー変換装置43の熱交換器46を接続し、第3配管57は熱交換器46とケーシング予熱管32を接続している。
ポンプ47は、吸込み口が第1配管49に接続し、吐出口が第2配管50に接続している。ポンプ47は、例えば、モータ(不図示)により駆動される。ポンプ47が駆動されると、ポンプ47は第1配管49を介して熱媒体を吸い込み、第2配管50に吐出して熱交換器46に供給する。
エネルギー変換装置(ヒートポンプ)43は熱交換器46を備えていて、電線44を介して熱媒体蓄積装置34から供給された余剰電力を利用して、熱媒体供給装置48から供給された熱媒体を加熱して二次熱媒体(不図示)を生成し、第3配管57を介してケーシング予熱管32に供給する。つまり、本実施形態では、電線44、エネルギー変換装置43及び第3配管57は、再生可能エネルギー用発電機23とケーシング予熱管32を接続する予熱ラインとして機能する。
電線58は、エネルギー変換装置43と熱媒体蓄積装置34を接続している。電線58は、熱媒体蓄積装置34からエネルギー変換装置43に供給され、熱媒体を加熱した余剰電力を熱媒体蓄積装置34に戻す。
なお、第3実施形態と同様、本実施形態においても、発電システム103は熱媒体蓄積装置34及び熱媒体蓄積量調整装置37を備えていなくても良い。発電システム103が熱媒体蓄積装置34及び熱媒体蓄積量調整装置37を備えていない場合には、電力需要予測装置24による予測演算の手順は第1実施形態と同様の手順で実行され、備えている場合には、第2実施形態と同様の手順で実行される。
本実施形態のように構成した場合でも、第3実施形態と同様の効果が得られる。
<第5実施形態>
(構成)
図7は、本実施形態に係る発電システムの概略構成図である。図7において、上記第1実施形態と同等の部分には同一の記号を付し、適宜説明を省略する。
本実施形態に係る発電システム104は、予熱システム404がドラム予熱管61、ドラム予熱調整弁62及び移送管63を備えている点で、第1実施形態に係る発電システム100と異なる。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
ドラム予熱管61は、蒸気発生装置2のドラムの外壁面に取り付けられた熱交換器である。ドラム予熱管61は、再生可能エネルギー取込装置18から供給された熱媒体を利用して、蒸気発生装置2のドラムを加熱する。つまり、本実施形態では、ケーシング予熱管32は蒸気タービン3のケーシングを加熱する予熱装置、ドラム予熱管61は蒸気発生装置2のドラムを加熱する予熱装置として機能する。
移送管(第3移送管)63は、第2移送管29の蒸気タービン予熱調整弁26に対して熱媒体の流れ方向の上流側で分岐し、蒸気発生装置2のドラム予熱管61に接続している。つまり、第3移送管63は、再生可能エネルギー取込装置18とドラム予熱管61を接続している。
ドラム予熱調整弁62は、ドラム予熱管61に設けられている。ドラム予熱調整弁62は蒸気タービン熱制御装置25に電気的に接続しており、蒸気タービン熱制御装置25からの信号27E,27Fに応じて第3移送管63の開通及び遮断を切り換える。具体的に、ドラム予熱調整弁62は、蒸気タービン熱制御装置25からの信号(開通信号)27Eを入力したときは第3移送管63を開通し、蒸気タービン熱制御装置25からの信号(遮断信号)27Fを入力したときは第3移送管63を遮断する。つまり、本実施形態では、蒸気タービン熱制御装置25は、蒸気タービン予熱調整弁26に対して信号27A,27Bを出力し、ドラム予熱調整弁62に対して信号27E,27Fを出力する。
本実施形態では、電力需要予測装置24は、ケーシング予熱開始日時及び蒸気タービン起動開始日時に加えて、ドラム予熱開始日時を予測演算する。
(動作)
図8は、電力需要予測装置24による予測演算方法を説明するための図である。図8の横軸は時間を示していて、原点を現在時刻としている。
ドラム温度予測線71は、蒸気発生装置2のドラムの温度の予測値を示している。図8に示すように、蒸気発生装置2のドラムの温度は、ドラムの予熱が開始されるまでは、高温媒体7の供給が停止してからの経過時間に伴い自然冷却により常温に向かって徐々に低下する。蒸気タービン発電プラント出力予測線55は、図2に示したものと同様である。
熱源装置1に点火して高温媒体7を発生させた後、高温媒体7の発生量を可能な限り迅速に増加させて、蒸気タービン起動開始日時の時点で高温媒体7の発生量を定格状態とする条件下では、ドラム予熱完了から蒸気タービン起動開始までの時間は一定となる。したがって、電力需要予測装置24は、図2に示した電力需要予測線51、再生可能エネルギー発電能力予測線52及び蒸気タービン発電プラント出力予測線55に基づき、ドラム予熱完了日時を予測演算する。
一方、ドラムの予熱開始から予熱完了までの時間(ドラム予熱時間)、予熱に必要な総エネルギー量及びドラム温度予測線71は、ドラム予熱開始時点のドラムの温度に応じた関数(つまり、予熱開始時点のドラムの温度をパラメータとした関数)で表すことができる。また、ドラム予熱開始時点のドラムの温度は、高温媒体7の供給停止日時からドラム予熱開始日時までの時間に応じた関数(つまり、高温媒体7の供給停止日時からドラム予熱開始日時までの時間をパラメータとして含む関数)で表すことができる。したがって、電力需要予測装置24は、高温媒体7の供給停止日時と予測演算したドラム予熱完了日時とに基づき、上述した関数を用いて、仮のドラム予熱開始日時(不図示)及びドラムの予熱に必要な総エネルギー量を演算する。
そして、電力需要予測装置24は、第1実施形態と同様の方法により、仮のケーシング予熱開始日時及び仮のドラム予熱開始日時を予測演算する。次に、電力需要予測装置24は、仮のケーシング予熱開始日時と仮のドラム予熱開始日時のうち早い(現在に近い)日時(以下、日時a)、及びケーシング予熱完了日時とドラム予熱完了日時のうち遅い(現在から離れた)日時(以下、日時b)を演算する。続いて、電力需要予測装置24は、日時aから日時bまでの余剰エネルギーの積算値(以下、エネルギーE)を演算し、エネルギーEがケーシングの予熱に必要な総エネルギー量とドラムの予熱に必要な総エネルギー量との合計を上回るように、仮のケーシング予熱開始日時及び仮のドラム予熱開始日時を前倒しする。仮のケーシング予熱開始日時及び仮のドラム予熱開始日時を前倒しすると、ケーシング温度予測線53及びドラム温度予測線71に示すように予熱開始時のケーシング及びドラムの温度が変わるため、ケーシングの予熱に必要な総エネルギー量とドラムの予熱に必要な総エネルギー量との合計も変化する。続いて、電力需要予測装置24は、仮のケーシング予熱開始日時及び仮のドラム予熱開始日時を前倒ししながら、エネルギーEの演算を繰り返し、最適なケーシング予熱開始日時及び最適なドラム予熱開始日時(ドラム予熱開始日時の最適値)を予測演算する。そして、電力需要予測装置24は、ケーシング予熱開始日時、蒸気タービン起動開始日時、ドラム予熱開始日時、及びドラム予熱完了日時を蒸気タービン熱制御装置25に出力する。
蒸気タービン熱制御装置25は、電力需要予測装置24からのケーシング予熱開始日時、蒸気タービン起動開始日時、ドラム予熱開始日時、及びドラム予熱完了日時を入力する。蒸気タービン熱制御装置25は、入力したドラム予熱開始日時に、ドラム予熱調整弁62に信号27Eを出力して第3移送管63を開通させる。一方、蒸気タービン熱制御装置25は、入力したドラム予熱完了日時に、ドラム予熱調整弁62に信号27Fを出力して第3移送管63を遮断させる。そして、蒸気タービン熱制御装置25は、入力した蒸気タービン起動開始日時に蒸気タービン起動制御装置21に信号27Cを出力して蒸気タービン3を起動させる。
本実施形態では、電力需要予測装置24は、蒸気タービン起動開始日時まで上述した動作を一定時間毎に繰り返す。また、蒸気タービン熱制御装置25は、電力需要予測装置24から一定時間毎に繰り返し出力されるケーシング予熱開始日時、蒸気タービン起動開始日時、ドラム予熱開始日時、及びドラム予熱完了日時の情報を順次入力して上書きし、常に最新の情報を記憶する。
(効果)
本実施形態では、第1実施形態と同様の効果に加えて以下の効果が得られる。
本実施形態では、再生可能エネルギー取込装置18から供給された熱媒体を利用して、蒸気発生装置2のドラムを予熱することができるため、第1実施形態に比べてより迅速にコンバインドサイクル発電プラントを起動させることができる。
また、一般的に、蒸気発生装置では、流入する高温媒体の温度が急激に上昇すると、ドラムのメタル部分における温度分布が不均一となり熱変形が生じ得る。そのため、蒸気発生装置の起動時においては、高温媒体の温度上昇率が規定値以下となるように起動速度を抑制する必要がある。これに対し、本実施形態では、蒸気タービン発電プラント200以外で発生するエネルギーを利用して生成した熱媒体により蒸気発生装置2を予熱しているので、蒸気発生装置2に流入する高温媒体7の温度が急上昇する場合でも、ドラムのメタル部分における温度分布が不均一となることを抑制することができ、速やかに起動させることができる。
<第6実施形態>
(構成)
図9は、本実施形態に係る発電システムの概略構成図である。図9において、上記第1実施形態と同等の部分には同一の記号を付し、適宜説明を省略する。
本実施形態に係る発電システム105は、予熱システム405が第1,2移送管28,29の代わりに移送管59を備え、ポンプ9及びケーシング予熱管32を備えていない点で、第1実施形態に係る発電システム100と異なる。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
移送管(第4移送管)59は、再生可能エネルギー用蒸気発生装置19と、蒸気発生装置2と蒸気タービン3を接続する蒸気配管とを接続し、再生可能エネルギー用蒸気発生装置19で発生した蒸気の一部を熱媒体として蒸気配管を介して蒸気タービン3に供給している。つまり、本実施形態では、再生可能エネルギー用蒸気発生装置19が再生可能エネルギーを利用して生成した熱媒体を供給する供給源として機能する。第4移送管59に供給される蒸気は、再生可能エネルギー用蒸気発生装置19で発生した蒸気から再生可能エネルギー発電プラント500の発電出力に使用される分を差し引いた余剰分の一部である。また、上述したように、蒸気タービンの起動では、回転体であるタービンロータと静止体であるケーシングとが接触して損傷する可能性があるため、いくつかの制約が設けられている。従って、本実施形態では、第4移送管59から蒸気配管に供給される蒸気の流量が制約条件より低くなるようにしてある。
なお、本実施形態に係る発電システム105に第4実施形態の熱媒体蓄積装置34及びエネルギー変換装置43を追加し、熱媒体蓄積装置34から第4移送管59を介して供給された蒸気を利用して、エネルギー変換装置43において熱媒体供給装置48から供給された熱媒体(蒸気)を加熱し、ケーシング予熱管32に供給しても良い。この場合、第4移送管59を供給配管まで引き延ばす必要がないので、本実施形態に比べて第4移送管59を短くすることができ、発電システムの管理が容易になる。
(効果)
本実施形態では、第1実施形態と同様の効果に加えて以下の効果が得られる。
本実施形態では、ケーシング予熱管32等を設ける必要がないため、その分、製造コストの増加を抑制することができる。
<その他>
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することも可能である。
上述した各実施形態では、電力系統22に蒸気タービン発電プラント200及び再生可能エネルギー発電プラント500のみが接続している構成を説明した。しかしながら、本発明の本質的効果は、他に稼働中の蒸気タービン発電プラントがなくても、短時間で起動して再生可能エネルギー発電プラントの出力変動に柔軟に対応できる発電システムを提供することであり、この本質的効果を得る限りにおいては、必ずしも上述した構成に限定されない。例えば、再生可能エネルギー発電プラント500の代わりに、原子力発電プラント、化石燃料を用いたコージェネレーションプラント等を電力系統22に接続しても、上述した本質的効果が得られる。
また、上述した各実施形態では、再生可能エネルギー発電プラント500として太陽熱発電プラントを適用した場合を説明した。しかしながら、上述した本発明の本質的効果を得る限りにおいては、必ずしも太陽熱発電プラントである必要はない。例えば、地熱発電プラント、廃棄物燃焼発電プラント、バイオマス燃焼発電プラント等を適用することもできる。
1 熱源装置
2 蒸気発生装置
3 蒸気タービン
5 熱源媒体
6 低温媒体
7 高温媒体
18 再生可能エネルギー取込装置(供給源)
19 再生可能エネルギー用蒸気発生装置(供給源)
23 再生可能エネルギー用発電機(供給源)
24 電力需要予測装置(予測部)
25 蒸気タービン熱制御装置
26 蒸気タービン予熱調整弁(調整弁)
28,29 第1,2移送管(予熱ライン)
32 ケーシング予熱管(予熱装置)
34 熱媒体蓄積装置
35 熱媒体蓄積量制御装置
37 熱媒体蓄積量調整装置
41 電熱線(予熱装置)
42,44,45 電線(予熱ライン)
43 エネルギー変換装置
61 ドラム予熱管(予熱装置)
100,101,102,103,104,105 発電システム
200 蒸気タービン発電プラント
500 再生可能エネルギー発電プラント

Claims (4)

  1. 熱源媒体で低温媒体を加熱して高温媒体を生成する熱源装置、前記高温媒体との熱交換により蒸気を発生させる蒸気発生装置、及び前記蒸気で駆動する蒸気タービンを備える蒸気タービン発電プラントと、
    再生可能エネルギー発電プラントと、
    前記再生可能エネルギー発電プラントで利用される一部の再生可能エネルギーを利用して生成した熱媒体を供給する供給源と、
    前記蒸気タービン及び前記蒸気発生装置の少なくとも一方に取り付けられた予熱装置と、
    前記供給源と前記予熱装置を接続する予熱ラインと、
    前記予熱ラインに設けられた調整弁と、
    前記蒸気タービンの停止日時及び起動開始日時に基づき、前記蒸気タービン及び前記蒸気発生装置の少なくとも一方の予熱を開始すべき日時である予熱開始日時、及び前記熱媒体の蓄積開始日時を予測演算する予測部と、
    前記予測部で予測された予熱開始日時を入力し、前記予熱開始日時に前記調整弁に信号を出力する蒸気タービン熱制御装置と、
    前記蓄積開始日時を入力する熱媒体蓄積量制御装置と、
    前記予熱ラインに設けられ、前記熱媒体を利用して二次熱媒体を生成し蓄積する熱媒体蓄積装置と、
    前記熱媒体蓄積量制御装置からの信号を入力し、前記熱媒体蓄積装置に供給する前記熱媒体の流量を調整する熱媒体蓄積量調整装置と
    を備えることを特徴とする発電システム。
  2. 熱源媒体で低温媒体を加熱して高温媒体を生成する熱源装置、前記高温媒体との熱交換により蒸気を発生させる蒸気発生装置、及び前記蒸気で駆動する蒸気タービンを備える蒸気タービン発電プラントと、
    再生可能エネルギー発電プラントと、
    前記再生可能エネルギー発電プラントで利用される一部の再生可能エネルギーを利用して生成した熱媒体を供給する供給源と、
    前記蒸気タービン及び前記蒸気発生装置の少なくとも一方に取り付けられた予熱装置と、
    前記供給源と前記予熱装置を接続する予熱ラインと、
    前記予熱ラインに設けられた調整弁と、
    前記蒸気タービンの停止日時及び起動開始日時に基づき、前記蒸気タービン及び前記蒸気発生装置の少なくとも一方の予熱を開始すべき日時である予熱開始日時、及び前記熱媒体の蓄積開始日時を予測演算する予測部と、
    前記予測部で予測された予熱開始日時を入力し、前記予熱開始日時に前記調整弁に信号を出力する蒸気タービン熱制御装置と、
    前記蓄積開始日時を入力する熱媒体蓄積量制御装置と、
    前記予熱ラインに設けられ、前記熱媒体を蓄積する熱媒体蓄積装置と、
    前記熱媒体蓄積量制御装置からの信号を入力し、前記熱媒体蓄積装置に供給する前記熱媒体の流量を調整する熱媒体蓄積量調整装置と
    を備えることを特徴とする発電システム。
  3. 請求項に記載の発電システムにおいて、前記熱媒体を利用して二次熱媒体を生成するエネルギー変換装置を備えることを特徴とする発電システム。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の発電システムにおいて、前記予熱装置は、前記蒸気タービンのケーシングに取り付けたケーシング予熱管であることを特徴とする発電システム。
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