以下、本発明による成形装置の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
[第1実施形態]
〈成形装置の構成〉
図1は、成形装置の概略構成図、図2は、図1のII−II線に沿うブロー成形金型及び上型、下型保持部の横断面図である。図1に示されるように、金属パイプ100(図5参照)を成形する成形装置10は、互いに対となる下型11及び上型12からなるブロー成形金型13と、下型11を保持するための下型保持部91及び上型12を保持するための上型保持部92と、下型11を保持した下型保持部91及び上型12を保持した上型保持部92の少なくとも一方(ここでは、上型保持部92)を移動させる駆動機構80と、下型11と上型12との間で仮想線で示す金属パイプ材料14を保持するパイプ保持機構30と、パイプ保持機構30で保持されている金属パイプ材料14に通電して加熱する加熱機構50と、下型11及び上型12の間に保持され加熱された金属パイプ材料14内に高圧ガス(気体)を供給するための気体供給部60と、パイプ保持機構30で保持された金属パイプ材料14内に気体供給部60からの気体を供給するための一対の気体供給機構(気体供給部)40,40と、ブロー成形金型13を強制的に水冷する水循環機構72と、を備える。なお、本実施形態に係る成形装置10は、下型11を上下に駆動させる下型駆動機構90を備えている。また、成形装置10は、上記駆動機構80の駆動、下型駆動機構90の駆動、上記パイプ保持機構30の駆動、上記加熱機構50の駆動、及び上記気体供給部60の気体供給をそれぞれ制御する制御部70と、を備えて構成されている。
下型11は、下型保持部91を介して大きな基台15に固定されている。下型11は、大きな鋼鉄製ブロックで構成され、その上面(上型12との分割面)に凹部16を備える。図1及び図2に示されるように、下型11を保持する下型保持部91は、上から順に、下型11を保持する第1の下ダイホルダ93、第1の下ダイホルダ93を保持する第2の下ダイホルダ94、第2の下ダイホルダ94を保持する下ダイベースプレート95を重ねて備え、この下ダイベースプレート95が基台15に固定される。そして、図1に示されるように、第1の下ダイホルダ93及び第2の下ダイホルダ94の軸線方向長(図1の左右方向長)は、下型11の軸線方向長とほぼ同程度の長さとなっている。
さらに、下型11の左右端(図1における左右端)近傍には電極収納スペース11aが設けられ、当該電極収納スペース11a内に、アクチュエータ(図示しない)によって上下に進退動可能に構成された一対の電極(第1電極17及び第2電極18)を備えている。これら第1電極17、第2電極18の上面には、金属パイプ材料14の下側外周面に対応した半円弧状の凹溝17a,18aが形成されていて(図3(c)参照)、当該凹溝17a,18aの部分に丁度金属パイプ材料14が嵌り込むように載置可能とされている。また、第1,第2電極17,18の正面(金型の外側方向の面)は凹溝17a,18aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面17b,18bが形成されている。また、下型11には冷却水通路19が形成されている。下型11の下面側には、第2の下ダイホルダ94及び下ダイベースプレート95を貫通して上下方向に延びる下型駆動機構90が設けられる。下型駆動機構90は、下型11の下面を支持する支持部101と、支持部101から下方へ延びる軸部102と、を備えている。軸部102の下端側は、図示されない駆動部に接続されている。
なお、下型11側に位置する一対の第1,第2電極17,18はパイプ保持機構30を構成しており、金属パイプ材料14を、上型12と下型11との間で昇降可能に支えることができる。なお、成形装置10には、金属パイプ材料14の温度を測定するための熱電対(不図示)が設けられている。例えば、熱電対は、金型13の横側から挿入されてよい。ただし、熱電対は測温手段の一例を示したに過ぎず、輻射温度計又は光温度計のような非接触型温度センサであってもよい。なお、通電時間と温度との相関が得られれば、測温手段は省いて構成することも十分可能である。
上型12は、その下面(下型11との分割面)に凹部24を備え、冷却水通路25を内蔵した大きな鋼鉄製ブロックである。図1及び図2に示されるように、上型12を保持する上型保持部92は、下から順に、上型12を保持する第1の上ダイホルダ96、第1の上ダイホルダ96を保持する第2の上ダイホルダ97、第2の上ダイホルダ97を保持する上ダイベースプレート98を重ねて備え、この上ダイベースプレート98がスライド82に固定される。そして、図1に示されるように、第1の上ダイホルダ96及び第2の上ダイホルダ97の軸線方向長(図1の左右方向長)は、上型12の軸線方向長とほぼ同程度の長さとなっている。また、上型保持部92が固定されたスライド82は、加圧シリンダ26によって吊られる構成とされ、ガイドシリンダ27によって横振れしないようにガイドされている。
上型12の左右端(図1における左右端)近傍には、下型11と同様な電極収納スペース12aが設けられ、この電極収納スペース12a内には、下型11と同じく、アクチュエータ(図示しない)で上下に進退動可能に構成された第1電極17と第2電極18を備えている。これら第1,第2電極17,18の下面には、金属パイプ材料14の上側外周面に対応した半円弧状の凹溝17a,18aが形成されていて(図3(c)参照)、当該凹溝17a,18aに丁度金属パイプ材料14が嵌合可能とされている。また、第1,第2電極17,18の正面(金型の外側方向の面)は凹溝17a,18aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面17b,18bが形成されている。よって、上型12側に位置する一対の第1,第2電極17,18もパイプ保持機構30を構成しており、上下一対の第1,第2電極17,18で金属パイプ材料14を上下方向から挟持すると、丁度金属パイプ材料14の外周を全周に渡って密着するように取り囲むことができるように構成されている。なお、可動部である第1電極17、第2電極18を上下動させる各アクチュエータの固定部は、下型保持部91、上型保持部92にそれぞれ保持・固定されている。
駆動機構80は、上型12及び下型11同士が合わさるように上型12及び上型保持部92を移動させるスライド82と、上記スライド82を移動させるための駆動力を発生する駆動部81と、上記駆動部81に対する流体量を制御するサーボモータ83と、を備えている。駆動部81は、加圧シリンダ26を駆動させる流体(加圧シリンダ26として油圧シリンダを採用する場合は動作油)を当該加圧シリンダ26へ供給する流体供給部によって構成されている。
制御部70は、駆動部81のサーボモータ83を制御することによって、加圧シリンダ26へ供給する流体の量を制御することにより、スライド82の移動を制御することができる。なお、駆動部81は、上述のように加圧シリンダ26を介してスライド82に駆動力を付与するものに限られず、例えば、スライド82に駆動部を機械的に接続させてサーボモータ83が発生する駆動力を直接的に又は間接的にスライド82へ付与するものであってもよい。例えば、偏心軸と、偏心軸を回転させる回転力を付与する駆動源(例えば、サーボモータ及び減速機等)と、偏心軸の回転運動を直線運動に変換してスライドを移動させる変換部(例えば、コネクティングロッド又は偏心スリーブ等)と、を有する駆動機構を採用してもよい。なお、本実施形態では、駆動部81がサーボモータ83を備えていなくともよい。
図2に示されるように、下型11の上端面及び上型12の下端面には、いずれも段差が設けられている。具体的には、下型11の上端面の中央には、断面矩形状の凹部16が形成され、上型12の下端面の中央で、下型11の凹部16に対向する位置には、断面矩形状の凹部24が形成されている。
下型保持部91を構成し下型11を保持する第1の下ダイホルダ93は、直方体の上端面93eの中央に、断面矩形状の凹部93aを備えるものであり、この凹部93aの底面93dの中央に設けられて第1の下ダイホルダ93を分割する隙間93c内に、下型11の略下半分を嵌入するようにして保持する。第1の下ダイホルダ93の凹部93aを形成する両脇の各凸部93b,93bと、第1の下ダイホルダ93の底面93dより上方に突出する下型11の略上半分の側面との間には空間S1,S2がそれぞれ設けられ、この空間S1,S2が、ブロー成形金型13を型閉じした際に、第1の上ダイホルダ96の後述する凸部96bが進入する空間とされる。
上型保持部92を構成し上型12を保持する第1の上ダイホルダ96は、直方体の両側において上側から下側に向けて階段状の段差を2段形成することにより、下方に向けて直方体が段階的に小さくなる段付きブロック状に構成される。この第1の上ダイホルダ96の下端面96dの中央には、断面矩形状の凹部96aが形成され、この凹部96a内に、上型12を収容するようにして保持する。従って、第1の上ダイホルダ96の凹部96aを形成する両脇の各凸部96b,96bは、その内側面が、上型12の側面に接するようになっている。また、凸部96b,96bは、上型12の下端面より下方に所定長突出し、ブロー成形金型13を型閉じした際に、第1の下ダイホルダ93の空間S1,S2にそれぞれ進入する部分となっている。また、ブロー成形金型13を型閉じした際に、第1の上ダイホルダ96の凸部96bの下端面(先端面)96dが、第1の下ダイホルダ93の凹部93aの底面93dに当接し、第1の上ダイホルダ96の凸部96bの両脇で凸部96bを形成し当該凸部96bの上方に位置する段差面96eが、第1の下ダイホルダ93の凸部93bの上端面93eに当接するようになっている。
図1に示されるように、加熱機構50は、第1電極17及び第2電極18と、電源51と、この電源51からそれぞれ延びて第1電極17及び第2電極18に接続している導線52と、この導線52に介設したスイッチ53と、を有してなる。制御部70は、上記加熱機構50を制御することによって、金属パイプ材料14を焼入れ温度(AC3変態点温度以上)まで加熱することができる。
一対の気体供給機構40の各々は、シリンダユニット42と、シリンダユニット42の作動に合わせて進退動するシリンダロッド43と、シリンダロッド43におけるパイプ保持機構30側の先端に連結されたシール部材44と、を有する。シリンダユニット42はブロック41を介して基台15上に載置固定されている。シール部材44の先端には先細となるようにテーパー面45が形成されており、第1,第2電極17,18のテーパー凹面17b,18bに丁度嵌合当接することができる形状に構成されている(図3参照)。シール部材44には、シリンダユニット42側から先端に向かって延在し、詳しくは図3(a),(b)に示されるように、気体供給部60から供給された高圧ガスが流れるガス通路46が設けられている。
図1に示されるように、気体供給部60は、高圧ガス源61と、この高圧ガス源61によって供給されたガスを溜めるアキュムレータ62と、このアキュムレータ62から気体供給機構40のシリンダユニット42まで延びている第1チューブ63と、この第1チューブ63に介設されている圧力制御弁64及び切替弁65と、アキュムレータ62からシール部材44内に形成されたガス通路46まで延びている第2チューブ67と、この第2チューブ67に介設されている圧力制御弁68及び逆止弁69とからなる。圧力制御弁64は、シール部材44の金属パイプ材料14に対する押力に適応した作動圧力のガスをシリンダユニット42に供給する役割を果たす。逆止弁69は、第2チューブ67内で高圧ガスが逆流することを防止する役割を果たす。
制御部70は、気体供給部60の圧力制御弁68を制御することにより、金属パイプ材料14内に所望の作動圧力のガスを供給することができる。また、制御部70は、図示されない熱電対から温度情報を取得し、加圧シリンダ26及びスイッチ53等を制御する。
水循環機構72は、水を溜める水槽73と、この水槽73に溜まっている水を汲み上げ、加圧して下型11の冷却水通路19及び上型12の冷却水通路25へ送る水ポンプ74と、配管75とからなる。省略したが、水温を下げるクーリングタワーや水を浄化する濾過器を配管75に介在させることは差し支えない。
〈成形装置を用いた金属パイプの成形方法〉
次に、成形装置10を用いた金属パイプの成形方法について説明する。図4は、材料としての金属パイプ材料14を投入するパイプ投入工程から、金属パイプ材料14に通電して加熱する通電加熱工程までを示す。より具体的には、図4(a)は、金型内に金属パイプ材料がセットされた状態を示す図、(b)は金属パイプ材料が電極に保持された状態を示す図である。また、図5は、図4に続く製造行程を示す図である。
先ず、焼入れ可能な鋼種の金属パイプ材料14を準備する。図4(a)に示すように、この金属パイプ材料14を、例えばロボットアーム等を用いて、下型11側に備わる第1,第2電極17,18上に載置(投入)する。第1,第2電極17,18には凹溝17a,18aが形成されているので、当該凹溝17a,18aによって金属パイプ材料14が位置決めされる。次に、制御部70(図1参照)は、パイプ保持機構30を制御することによって、当該パイプ保持機構30に金属パイプ材料14を保持させる。具体的には、図4(b)のように、第1電極17、第2電極18を進退動可能としているアクチュエータ(図示しない)を作動させ、各上下に位置する第1,第2電極17,18を接近・当接させる。この当接によって、金属パイプ材料14の両方の端部は、上下から第1,第2電極17,18によって挟持される。また、この挟持は、第1,第2電極17,18に形成される凹溝17a,18aの存在によって、金属パイプ材料14の全周に渡って密着するような態様で挟持されることとなる。
続いて、図1に示されるように、制御部70は、加熱機構50を制御することによって、金属パイプ材料14を加熱する。具体的には、制御部70は、加熱機構50のスイッチ53をONにする。そうすると、電源51から電力が金属パイプ材料14に供給され、金属パイプ材料14に存在する抵抗により、金属パイプ材料14自体が発熱する(ジュール熱)。このとき、熱電対の測定値が常に監視され、この結果に基づいて通電が制御され、気体供給機構40のシリンダユニット42を作動させることによって、シール部材44で金属パイプ材料14の両端をシールする(図3も併せて参照)。
図6は、ブロー成形金型及び第1の上ダイホルダの動作と金属パイプ材料の形状の変化を示す図、図7は、図6に続く図、図8は、図7に続く図である。
図6に示されるように、加熱後の金属パイプ材料14に対してブロー成形金型13が型閉じされていく。このとき、第1の下ダイホルダ93の空間S1,S2に第1の上ダイホルダ96の凸部96b,96bが進入し、下型11の凹部16と上型12の凹部24との間に、パイプ部(本体部)100aを形成するための隙間である略断面矩形状のメインキャビティ部MCが形成されると共に、下型11の上端面と上型12の下端面との間でメインキャビティ部MCの両脇に、メインキャビティ部MCに連通しフランジ部100b,100cを形成するための隙間であるサブキャビティ部SC1,SC2がそれぞれ形成される。
ここで、下型11の上端面と上型12の下端面との間のサブキャビティ部SC1,SC2は、型外へ開放されるように延びている一方で、このサブキャビティ部SC1,SC2は、第1の上ダイホルダ96の凸部96b,96bの内側面96fにより外側から塞がれた状態となっている。この第1の上ダイホルダ96のサブキャビティ部SC1,SC2を型外から塞ぐ凸部96b,96bは、型内で例えば金属パイプが破裂したときに生じる破片等の異物が、サブキャビティ部SC1,SC2を通り型外へ進行することを遮り放出されないように働く。従って、凸部96b,96bを有する第1の上ダイホルダ96は、シールド部材としての機能も兼ねる。
そして、この状態、すなわちブロー成形金型が完全に型閉じする前の状態で、金属パイプ材料14が、メインキャビティ部MC内に収まり、概ね、下型11の凹部16の底面及び上型12の凹部24の底面に接触した状態から、金属パイプ材料14内に気体供給部60によって高圧ガスを供給し、ブロー成形を開始する。
ここで、金属パイプ材料14は高温(950℃前後)に加熱されて軟化しているので、金属パイプ材料14内に供給されたガスは、熱膨張する。このため、例えば供給するガスを圧縮空気とし、950℃の金属パイプ材料14を熱膨張した圧縮空気によって容易に膨張させることができる。
これと並行してブロー成形金型13がさらに型閉じしていき、図7に示されるように、メインキャビティ部MC及びサブキャビティ部SC1,SC2が下型11と上型12との間でさらに狭められていく。
従って、金属パイプ材料14は、メインキャビティ部MC内で凹部16,24に倣うように膨張すると共に、金属パイプ材料14の一部(両側部)14a,14bが、サブキャビティ部SC1,SC2内にそれぞれ入り込むように膨張する。
そして、図8に示されるように、ブロー成形金型13がさらに型閉じしていき、第1の下ダイホルダ93の凹部93aの底面93dに、第1の上ダイホルダ96の凸部96bの下端面96dが当接すると共に、第1の下ダイホルダ93の凸部93bの上端面93eに、第1の上ダイホルダ96の段差面96eが当接し、且つ、第1の下ダイホルダ93の凸部93bの内側面と第1の上ダイホルダ96の凸部96bの外側面が当接し、第1の下ダイホルダ93と第1の上ダイホルダ96が密着した状態で、ブロー成形金型13の型閉じが完了する。
このとき、メインキャビティ部MC及びサブキャビティ部SC1,SC2は、図7に示す状態よりさらに狭められた状態とされ、この状態で、前述したように、サブキャビティ部SC1,SC2は、第1の上ダイホルダ96の凸部96b,96bの内側面96fにより外側から塞がれた状態となっている。
従って、加熱により軟化し高圧ガスが供給された金属パイプ材料14は、メインキャビティ部MCにおいて、当該メインキャビティ部MCの断面矩形状に合わせた断面矩形状のパイプ部100aとして成形されると共に、サブキャビティ部SC1,SC2において、金属パイプ材料14の一部が折り畳まれた断面長方形状のフランジ部100b,100cとして形成される。
このブロー成形時にあっては、ブロー成形されて膨らんだ金属パイプ材料14の外周面が下型11の凹部16に接触して急冷されると同時に、上型12の凹部24に接触して急冷(上型12と下型11は熱容量が大きく且つ低温に管理されているため、金属パイプ材料14が接触すればパイプ表面の熱が一気に金型側へと奪われる。)されて焼き入れが行われる。このような冷却法は、金型接触冷却又は金型冷却と呼ばれる。急冷された直後はオーステナイトがマルテンサイトに変態する(以下、オーステナイトがマルテンサイトに変態することをマルテンサイト変態とする)。冷却の後半は冷却速度が小さくなったので、復熱によりマルテンサイトが別の組織(トルースタイト、ソルバイトなど)に変態する。従って、別途焼戻し処理を行う必要がない。また、本実施形態においては、金型冷却に代えて、あるいは金型冷却に加えて、冷却媒体を金属パイプ100に供給することによって冷却が行われてもよい。例えば、マルテンサイト変態が始まる温度までは金型(上型12及び下型11)に金属パイプ材料14を接触させて冷却を行い、その後型開きすると共に冷却媒体(冷却用気体)を金属パイプ材料14へ吹き付けることにより、マルテンサイト変態を発生させてもよい。なお、本段落の説明は、金属パイプ材料14が鋼鉄である場合を例として説明したものである。
そして、以上のような成形方法により、図5に示されるように、パイプ部100a及びフランジ部100b,100cを有する金属パイプ100を成形品として得ることができる。なお、本実施形態では、メインキャビティ部MCは断面矩形状に構成されているため、金属パイプ材料14は当該形状に合わせてブロー成形されることにより、パイプ部100aは矩形筒状に成形される。ただし、メインキャビティ部MCの形状は特に限定されず、所望の形状に合わせて断面円形、断面楕円形、断面多角形等あらゆる形状を採用しても良い。
<電力供給部の構成>
本実施形態に係る成形装置10は、第1電極17及び第2電極18へ電力を供給する電力供給部120を備えている。以下、図9を参照して、本実施形態に係る電力供給部120とその周辺の構成について説明する。
図9に示す電力供給部120は、図1に示すような成形装置10に組み込まれ、一対の電極(第1電極17及び第2電極18)へ電力を供給する。これにより、金属パイプ材料14が通電加熱される。このとき、金型13や金型周辺の部材が磁化する場合がある。例えば、一対の電極のうち一方の第1電極17をプラス極とし、一対の電極のうち他方の第2電極18をマイナス極とした状態での通電加熱を一定期間続けると、金型13の所定の方向における磁化が進む。このような場合、金属パイプ材料14の通電加熱中に、磁化した金型13に対して、金型13が移動する方向であるスライド方向へ金型13が移動するような電磁力が作用する可能性がある。この電磁力が作用することで金型13が移動して通電加熱中の金属パイプ材料14に接触すると、金型13を介して漏電が生じることで、装置がダメージを受ける恐れがある。そこで、本実施形態に係る成形装置10の電力供給部120は、金型13の磁化を軽減すると共に電磁力による金型13の移動を抑制するため、第1電極17及び第2電極18へ供給する直流電流の向きを切り替え可能な切替部125を備えている。
次に、電力供給部120の具体的な構成について説明する。
電力供給部120は、図9に示すように、交流の電流を発生させる交流電源121と、インバータ122と、整流器としてのトランス123と、トランス123の正側出力端123Pに接続された第1の電源側ライン143aと、トランス123の負側出力端123Nに接続された第2の電源側ライン143bと、第1電極17に接続された第1の電極側ライン145aと、第2電極18に接続された第2の電極側ライン145bと、第1の電源側ライン143a及び第2の電源側ライン143bを第1の電極側ライン145a及び第2の電極側ライン145bに電気的に接続すると共に接続状態を切り替え可能な切替部125と、切替部125の切り替えを制御する制御部126と、を備えている。ここで、第1の電源側ライン143a、第2の電源側ライン143b、第1の電極側ライン145a、第2の電極側ライン145bには、ブスバーを用いてよいが、特に限定されない。
交流電源121は、三相交流を発生し、3本のケーブルによってインバータ122と接続されている。具体的には、U相はケーブル141aにより、V相はケーブル141bにより、W相はケーブル141cにより、インバータ122に伝送される。交流電源121としては、例えば、3ΦAC200Vや3ΦAC400Vのものが用いられるが、特に限定されない。
インバータ122は、2本のケーブルによって、整流器としてのトランス123と接続されている。具体的には、U相はケーブル142a、V相はケーブル142bにより、トランス123に伝送される。ここで、インバータ122からの出力は、例えば、単相AC300V800A,単相AC600V800Aとなるが、特に限定されない。
トランス123は、上述のように、第1の電源側ライン143a及び第2の電源側ライン143bによって、切替部125に接続されている。具体的には、トランス123の正側出力端123Pは第1の電源側ライン143aにより切替部125の端子125aに接続され、負側出力端123Nは第2の電源側ライン143bにより切替部125の端子125bに接続されている。トランス123は、交流の電流が供給されると直流の電流へ変換して出力する。そのため、交流電源121,インバータ122,トランス123をまとめて直流の電流を発生する直流電流発生部とみなしてよい。ここで、トランス123からの出力は、例えば、DC20V15000A,DC30V10000Aとなるが、特に限定されない。
切替部125は、上述のように、第1の電極側ライン145a及び第2の電極側ライン145bによって、パイプ保持機構30の第1電極17及び第2電極18に接続されている。具体的には、切替部125の端子125cからの出力は、第1の電極側ライン145aによって第1電極17に接続され、切替部125の端子125dからの出力は第2の電極側ライン145bによって第2電極18に接続されている。
また、切替部125は、電磁開閉器MC1(第1の電磁開閉器)と、電磁開閉器MC2(第2の電磁開閉器)と、を有する。電磁開閉器MC1は、動作した際に(ON時に)、第1の電源側ライン143aと第1の電極側ライン145aとを電気的に接続すると共に、第2の電源側ライン143bと第2の電極側ライン145bとを電気的に接続することが可能である。また、電磁開閉器MC2は、動作した際に(ON時に)、第1の電源側ライン143aと第2の電極側ライン145bとを電気的に接続すると共に第2の電源側ライン143bと第1の電極側ライン145aとを電気的に接続することが可能である。切替部125の具体的な内部構造は、以下の通りである。
切替部125の端子125aは、分岐点Aで分岐する切替部125の内部ケーブルにより、電磁開閉器MC1の端子MC1a及び電磁開閉器MC2の端子MC2aに接続されている。具体的には、端子125aに接続されているケーブル125e1が分岐点Aでケーブル125e2,125e3に分岐している。ケーブル125e2は、電磁開閉器MC1の端子MC1aに接続されている。ケーブル125e3は、電磁開閉器MC2の端子MC2aに接続されている。端子125bは、分岐点Bで分岐する切替部125の内部ケーブルにより、電磁開閉器MC1の端子MC1b及び電磁開閉器MC2の端子MC2bに接続されている。具体的には、端子125bに接続されているケーブル125f1が分岐点Aでケーブル125f2,125f3に分岐している。ケーブル125f2は、電磁開閉器MC1の端子MC1bに接続されている。ケーブル125f3は、電磁開閉器MC2の端子MC2bに接続されている。
また、電磁開閉器MC1の端子MC1cと電磁開閉器MC2の端子MC2dは、分岐点Cで分岐する内部ケーブルにより、端子125cに接続されている。具体的には、電磁開閉器MC1の端子MC1cに接続されているケーブル125g1と、電磁開閉器MC2の端子MC2dに接続されているケーブル125g2と、が分岐点Cでケーブル125g3に統合されている。ケーブル125g3は、端子125cに接続されている。電磁開閉器MC1の端子MC1dと電磁開閉器MC2の端子MC2cは、分岐点Dで分岐する内部ケーブルにより、端子125dに接続されている。具体的には、電磁開閉器MC1の端子MC1dに接続されているケーブル125h1と、電磁開閉器MC2の端子MC2cに接続されているケーブル125h2と、が分岐点Dでケーブル125h3に統合されている。ケーブル125h3は、端子125dに接続されている。
以上の構成により、電磁開閉器MC1は、トランス123の正側出力端123Pと第1電極17とを電気的に接続すると共に、トランス123の負側出力端123Nと第2電極18とを電気的に接続することが可能である。電磁開閉器MC2は、トランス123の正側出力端123Pと第2電極18とを電気的に接続すると共に、トランス123の負側出力端123Nと第1電極17とを電気的に接続することが可能である。すなわち、切替部125は、電磁開閉器MC1と電磁開閉器MC2とによって、トランス123の正側出力端123P及び負側出力端123Nと第1電極17及び第2電極18との電気的な接続状態を切り替え可能である。
制御部126は、電磁開閉器MC1及び電磁開閉器MC2のいずれか一方が動作するように制御を行う。具体的には、制御部126は、電磁開閉器MC1がONとなっている場合には電磁開閉器MC2がOFFとなり、電磁開閉器MC2がONとなっている場合には電磁開閉器MC1がOFFとなるように制御を行う。これにより、制御部126は、トランス123の正側出力端123Pと第1電極17とを電気的に接続すると共にトランス123の負側出力端123Nと第2電極18とを電気的に接続した第1の状態と、トランス123の正側出力端123Pと第2電極18とを電気的に接続すると共にトランス123の負側出力端123Nと第1電極17とを電気的に接続する第2の状態とを切り替える。第1の状態では、第1電極がプラス極となり、第2電極がマイナス極となる。第2の状態では、第1電極がマイナス極となり、第2電極がプラス極となる。そのため、制御部126が、所定の間隔で第1の状態と第2の状態との切替を切替部125に行わせることで、所定の間隔で金属パイプ材料を流れる直流電流の向きも切り替わる。
以上の構成により、電磁開閉器MC1及び電磁開閉器MC2の動作の切替えによる簡易な構成で、金属パイプ材料を流れる直流電流の向きを切り替えることができる。金型13内の所定の方向における磁化を打ち消すことができるため、金型13の磁化を軽減できると共に、電磁力の作用による金型の移動を抑制できる。制御部126は、切替部125に対して、通電加熱中に複数回の切替を行わせてもよいし、一回の通電加熱毎に切替を行わせてもよいし、複数回の通電加熱毎に切替を行わせてもよい。
また、電磁開閉器MC1と電磁開閉器MC2とを制御部126により制御する構成としているため、市販の機器を使用してできる簡易な構成で金型13の磁化を軽減できると共に、電磁力の作用による金型の移動を抑制できる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態において、成形装置10は、第1実施形態で示した電力供給部120の代わりに図10に示すような電力供給部130を採用する。この電力供給部130内の切替部135は、2つのトランス133A,133B(第1の整流器,第2の整流器)を有する。制御部136が、切替部135に接続状態を切り替えさせることにより通電するトランスを切り替え、金属パイプ材料を流れる直流電流の向きを切り替える。以下、図10を参照して、本実施形態に係る電力供給部130とその周辺の構成について具体的に説明する。なお、第1実施形態と内容が重複する部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
電力供給部130は、図10に示すように、交流の電流を発生させる交流電源121と、インバータ122と、インバータ122に接続された第1の電源側ライン152a及び第2の電源側ライン152bと、第1電極17に接続された第1の電極側ライン145aと、第2電極18に接続された第2の電極側ライン145bと、第1の電源側ライン152a及び第2の電源側ライン152bを第1の電極側ライン145a及び第2の電極側ライン145bに電気的に接続すると共に接続状態を切り替え可能な切替部135と、切替部135の切り替えを制御する制御部136と、を備えている。ここで、第1の電源側ライン152a及び第2の電源側ライン152bには、ケーブルを用いる。また、第1の電極側ライン145a及び第2の電極側ライン145bには、ブスバーを用いる。ただし、各ラインの構成は特に限定されない。交流電源121及びインバータ122については、第1実施形態の電力供給部120と同様の構成である。また、交流電源121とインバータ122との間の接続も第1実施形態の電力供給部120と同様の構成である。
インバータ122は、上述のように、第1の電源側ライン152a及び第2の電源側ライン152bによって、切替部135に接続されている。U相は第1の電源側ライン152aによって切替部135の端子135aに伝送され、V相は第2の電源側ライン152bによって切替部135の端子135bに伝送される。
切替部135は、上述のように、第1の整流器としてのトランス133Aと、第2の整流器としてのトランス133Bと、を有する。トランス133A及びトランス133Bは、交流の電流が供給されると直流の電流へ変換して出力する。トランス133Aは、正側出力端133APが第1の電極側ライン145aに接続され、負側出力端133ANが第2の電極側ライン145bに接続されている。また、トランス133Bは、正側出力端133BPが第2の電極側ライン145bに接続され、負側出力端133BNが第1の電極側ライン145aに接続されている。
また、切替部135は、電磁開閉器MC3(第1の電磁開閉器)と、電磁開閉器MC4(第2の電磁開閉器)と、を有する。電磁開閉器MC3は、動作した際に(ON時に)、第1の電源側ライン152a及び第2の電源側ライン152bと第1の整流器としてのトランス133Aとを電気的に接続することが可能である。すなわち、電磁開閉器MC3は、動作した際に、交流電源121と第1の整流器とを電気的に接続することが可能である。また、電磁開閉器MC4は、動作した際に(ON時に)、第1の電源側ライン152a及び第2の電源側ライン152bと第2の整流器としてのトランス133Bとを電気的に接続することが可能である。すなわち、電磁開閉器MC4は、動作した際に、交流電源121と第2の整流器とを電気的に接続することが可能である。切替部135の具体的な内部構造は、以下の通りである。
切替部135の端子135aは、分岐点Eで分岐する切替部135の内部ケーブルにより、電磁開閉器MC3の端子MC3a及び電磁開閉器MC4の端子MC4aに接続されている。具体的には、端子135aに接続されているケーブル135e1が分岐点Eでケーブル135e2,135e3に分岐している。ケーブル135e2は、電磁開閉器MC3の端子MC3aに接続されている。ケーブル135e3は、電磁開閉器MC4の端子MC4aに接続されている。端子135bは、分岐点Fで分岐する切替部135の内部ケーブルにより、電磁開閉器MC3の端子MC3b及び電磁開閉器MC4の端子MC4bに接続されている。具体的には、端子135bに接続されているケーブル135f1が分岐点Fでケーブル135f2,135f3に分岐している。ケーブル135f2は、電磁開閉器MC3の端子MC3bに接続されている。ケーブル135f3は、電磁開閉器MC4の端子MC4bに接続されている。電磁開閉器MC3の端子MC3c及び端子MC3dは、切替部135の内部のケーブル135e4,135f4により、整流器としてのトランス133Aに接続されている。電磁開閉器MC4の端子MC4c及び端子MC4dは、切替部135の内部のケーブル135e5,135f5により、整流器としてのトランス133Bに接続されている。
トランス133Aの正側出力端133APとトランス133Bの負側出力端133BNは、分岐点Gで分岐する内部ケーブルにより、端子135cに接続されている。具体的には、トランス133Aの正側出力端133APに接続されているケーブル135g1と、トランス133Bの負側出力端133BNに接続されているケーブル135g2と、が分岐点Gでケーブル135g3に統合されている。ケーブル135g3は、端子135cに接続されている。トランス133Aの負側出力端133ANとトランス133Bの正側出力端133BPは、分岐点Hで分岐する内部ケーブルにより、端子135dに接続されている。具体的には、トランス133Aの負側出力端133ANに接続されているケーブル135h1と、トランス133Bの正側出力端133BPに接続されているケーブル135h2と、が分岐点Hでケーブル135h3に統合されている。ケーブル135h3は、端子135dに接続されている。そのため、トランス133Aにおいて、正側出力端133APは第1電極17に接続され、負側出力端133ANは第2電極18に接続されている。また、トランス133Bにおいて、正側出力端133BPは第2電極18に接続され、負側出力端133BNは第1電極17に接続されている。
以上の構成により、電磁開閉器MC3は、交流電源121と整流器としてのトランス133Aとを電気的に接続することが可能である。電磁開閉器MC4は、交流電源121と整流器としてのトランス133Bとを電気的に接続することが可能である。すなわち、切替部135は、電磁開閉器MC3と電磁開閉器MC4とによって、トランス133A,トランス133Bに対する交流電源の電気的な接続状態を切り替え可能である。換言すれば、切替部135は、電磁開閉器MC3と電磁開閉器MC4とによって、トランス133A及びトランス133Bの正側出力端133AP,133BP、負側出力端133AN,133BNと第1電極17及び第2電極18との電気的な接続状態を切り替え可能である。
制御部136は、電磁開閉器MC3及び電磁開閉器MC4のいずれか一方が動作するように制御を行う。具体的には、制御部136は、電磁開閉器MC3がONとなっている場合には電磁開閉器MC4がOFFとなり、電磁開閉器MC4がONとなっている場合には電磁開閉器MC3がOFFとなるように制御を行う。これにより、制御部136は、交流電源121とトランス133Aとを電気的に接続した第3の状態と、交流電源121とトランス133Bとが電気的に接続された第4の状態とを切り替える。第3の状態となれば、トランス133Aから第1電極17及び第2電極18に電圧が付与されることとなる。そのため、第3の状態では、第1電極17がプラス極となり第2電極がマイナス極となる。一方、第4の状態となれば、トランス133Bから第1電極17及び第2電極18に電圧が付与されることとなる。そのため、第4の状態では、第1電極17がマイナス極となり第2電極がプラス極となる。従って、制御部136が、所定の間隔で第3の状態と第4の状態との切替を切替部135に行わせることで、所定の間隔で金属パイプ材料を流れる直流電流の向きも切り替わる。
以上の構成により、電磁開閉器MC1及び電磁開閉器MC2の動作の切替えによる簡易な構成で、金属パイプ材料を流れる直流電流の向きを切り替えることができる。金型13内の所定の方向における磁化を打ち消すことができるため、金型13の磁化を軽減できると共に、電磁力の作用による金型の移動を抑制できる。制御部136は、切替部135に対して、通電加熱中に複数回の切替を行わせてもよいし、一回の通電加熱毎に切替を行わせてもよいし、複数回の通電加熱毎に切替を行わせてもよい。
また、電磁開閉器MC3と電磁開閉器MC4とを制御部136により制御する構成としているため、市販の機器を用いた簡易な構成で、金型13の磁化を軽減できると共に、電磁力の作用による金型の移動を抑制できる。
本発明は上述の第1実施形態や第2実施形態に限定されるものではない。本発明に係る成形装置は、各請求項の要旨を変更しない範囲において、上述したものを任意に変更したものとすることができる。
ブロー成形金型13は無水冷金型と水冷金型の何れでもよい。ただし、無水冷金型は、ブロー成形終了後に金型を常温付近まで下げるときに、長時間を要する。この点、水冷金型であれば、短時間で冷却が完了する。したがって、生産性向上の観点からは、水冷金型が望ましい。