JP6608320B2 - 生体情報計測装置 - Google Patents

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Description

本発明は、生体情報計測装置に関するものである。
特許文献1には、体圧分布情報と呼吸周期相当の圧力変動分布情報に基づいて、圧力検出素子群の中から心拍測定用素子を選定し、選定された素子によって心拍周期相当の圧力変動を検出することが記載されている。
特許文献2には、生体のそれぞれ異なる部分で振動を測定し、それぞれ測定された振動の強度を周波数毎に算出し、それぞれ算出された振動の強度を周波数毎に加算し、加算された振動の強度が閾値以上となった各周波数を心拍情報として検出することが記載されている。
特開2015−188698号公報 特許第4864497号公報
本発明は、従来とは異なる方法により、簡易な構成で生体情報を高精度に計測する生体情報計測装置を提供することを目的とする。
生体情報計測装置は、面状に形成される圧力センサセルと、前記圧力センサセルによる検出値に基づいて、前記圧力センサセルに面する身体の生体情報を演算する演算装置とを備える。前記演算装置は、所定のサンプリング周期Tbで前記静電容量型センサによる検出値を一次信号として取得し、第一時間長Nに含まれる前記一次信号の加算値である二次信号を演算すると共に、前記二次信号の演算を第二時間間隔a(a≦N)ずつずらしながら順次実行し、前記二次信号に基づいて前記生体情報を演算する。
当該装置は、圧力センサセルの検出値の加算値としての二次信号を演算している。加算値としての二次信号は、一次信号の中の高調波ノイズ成分を除去した信号に相当する。つまり、一次信号を加算する処理が、実質的に、ローパスフィルタとして機能する。このように、取得対象の生体情報より高調波ノイズ成分が容易に除去される。従って、高精度に生体情報を計測できる。
本実施形態の計測装置の全体構成図である。 センサユニットの分解斜視図である。 センサユニットの取り付け位置の説明図である。 センサユニットを示し、第二センサとしての圧力センサセルを示す図である。 演算装置の処理のフローチャートである。 体圧分布を示す図である。 切替装置により計測対象とされる圧力センサユニットの順序を示す図である。 演算装置の構成図である。 二次信号を示す図である。 一次信号Dのグラフである。 二次信号Sum(n)のグラフである。 三次信号Sig3_1のグラフである。 三次信号Sig3_2のグラフである。
<1.実施形態>
(1−1.体圧分布及び生体情報の計測装置1の構成)
体圧分布及び生体情報の計測装置1(以下、計測装置と称する)の構成について、図1−図3を参照して説明する。計測装置1は、面状に形成されたセンサユニット10の付与された身体の体圧分布及び生体情報を計測する。本実施形態における計測装置1は、生体情報として、脈波及び呼吸成分を計測する。計測装置1は、センサユニット10、電源装置20、入力側回路30、出力側回路40、切替装置50、及び、演算装置60を備える。
センサユニット10は、可撓性を有し、面状に形成される。センサユニット10は、面法線方向に、圧縮変形可能である。例えば、センサユニット10は、図2に示すように、8列の第一電極11と、16列の第二電極12と、誘電層13とを備える。なお、第一電極11と第二電極12の列数は、適宜変更可能である。
第一電極11は、帯状に形成され、相互に平行に配置される。第二電極12は、センサユニット10の面法線方向に、第一電極11に対して距離を隔てて配置される。第二電極12は、帯状に形成され、相互に平行に配置される。第二電極12の延在方向は、第一電極11の延在方向に対して直交する方向である。誘電層13は、弾性変形可能な面状に形成され、第一電極11と第二電極12との間に配置される。
第一電極11及び第二電極12は、エラストマー中に導電性フィラーを配合させることにより成形される。第一電極11及び第二電極12は、可撓性を有し、伸縮自在な性質を有する。第一電極11及び第二電極12を構成するエラストマーには、例えば、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴムなどが適用される。また、第一電極11及び第二電極12に配合される導電性フィラーには、導電性を有する粒子であればよく、例えば、炭素材料や金属等の微粒子が適用される。
誘電層13は、エラストマーにより成形され、可撓性を有し且つ伸縮自在な性質を有する。誘電層13を構成するエラストマーには、例えば、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴムなどが適用される。
従って、第一電極11と第二電極12との交差位置がマトリックス状に位置する。センサユニット10は、マトリックス状の電極交差位置において、静電容量型センサとして機能する圧力センサセル10aを備える。本実施形態においては、センサユニット10は、横16列、縦8列に配列された128個の圧力センサセル10aを備える。そして、128個の圧力センサセル10aが、面状に配列されている。
そして、センサユニット10が面法線方向に圧縮する力を受けた場合には、誘電層13が圧縮変形することにより、第一電極11と第二電極12の離間距離が短くなる。つまり、第一電極11と第二電極12との間の静電容量が大きくなる。
ここで、センサユニット10は、図3に示すように、例えば、シート70の座面71前方の内部に配置される。詳細には、センサユニット10は、座面71前方の表皮の裏面側に配置される。本実施形態においては、センサユニット10は、第二電極12の延在方向がシート70の前後方向に一致するように、座面71に配置される。また、センサユニット10は、左右の大腿部に相当する範囲に配置される。つまり、センサユニット10は、着座する人の左右の大腿部によって、体圧を受ける。そして、第二電極12の延在方向は、大腿部の延在方向、さらには、大腿動脈の延在方向に一致する。つまり、センサユニット10は、大腿動脈の脈波や呼吸成分の影響を受ける。
なお、センサユニット10は、シート70の座面71前方の他に、座面71後方、背面72やヘッドレスト73に配置してもよい。センサユニット10が座面後方に配置される場合は、センサユニット10は、人の背部により体圧を受け、人の臀部における動脈の脈波や呼吸成分の影響を受ける。また、背面72に配置される場合には、センサユニット10は、人の背部により体圧を受け、人の背部における動脈の脈波や呼吸成分の影響を受ける。また、センサユニット10がヘッドレスト73に配置される場合には、センサユニット10は、人の頭部により体圧を受け、例えば首部における動脈の脈波や呼吸成分の影響を受ける。
電源装置20は、所定の電圧を発生し、センサユニット10の第一電極11に対して所定電圧を印加する。
入力側回路30は、複数のスイッチにより構成される。各スイッチの一端は、電源装置20に接続されており、各スイッチの他端は、対応する第一電極11に接続される。図1においては、前側から3列目から6列目までの第一電極11に対応するスイッチがONされ、他はOFFされている。この状態では、前側から3列目から6列目までの第一電極11に、所定電圧が印加される。
出力側回路40は、複数のスイッチにより構成される。各スイッチの一端は、対応する第二電極12に接続され、各スイッチの他端は、後述する演算装置60に接続される。図1においては、左側から6列目の第二電極12に対応するスイッチがONされ、他はOFFされている。
切替装置50は、入力側回路30及び出力側回路40の各スイッチのON/OFFの切替を実行する。そして、切替装置50は、計測対象とする圧力センサセル10aを、電源装置20及び演算装置60に接続させる。なお、切替装置50による実行処理の詳細は、後述する。
演算装置60は、計測対象の圧力センサセル10aによる検出値を取得して、当該検出値に基づいて圧力センサセル10aに面する身体の体圧分布、脈波及び呼吸成分を演算する。演算装置60は、検出値取得部61と、体圧分布を演算する体圧分布演算装置62と、脈波と呼吸成分を演算する脈波と呼吸成分の演算装置63とを備える。
検出値取得部61は、切替装置50による実行処理の情報を取得すると共に、各実行状態におけるセンサユニット10による検出値を取得する。つまり、検出値取得部61は、計測対象の圧力センサセル10aの静電容量の変化を取得する。
体圧分布演算装置62は、体圧分布の計測対象の圧力センサセル10aの静電容量の変化を取得して、個々の圧力センサセル10aの位置における外力を演算することで、体圧分布を演算する。脈波と呼吸成分の演算装置63は、脈波と呼吸成分の計測対象の圧力センサセル10aの静電容量の変化を取得して、脈波の影響により受ける力の変化を演算することで、脈波を演算する。さらに、脈波と呼吸成分の演算装置63は、当該圧力センサセル10aの静電容量の変化を取得して、呼吸の影響により受ける力の変化を演算することで、呼吸成分を演算する。体圧分布演算装置62及び脈波と呼吸成分の演算装置63の詳細は、後述する。
(1−2.切替装置50の実行処理)
切替装置50の実行処理について、図4を参照して説明する。切替装置50は、入力側回路30及び出力側回路40の切り替えを実行する。ここで、マトリックス状に位置する128個の圧力センサセル10aの中で、体圧分布計測を目的とする場合における圧力センサセル10aと、脈波及び呼吸成分の計測を目的とする場合における圧力センサセル10aとは、異なる。
図4には、面状且つマトリックス状に配列される128個の圧力センサセル10aが示される。図4において、X方向及びY方向には、各軸の座標値が示されており、以下において、(16,8)と記載した場合には、図4の右下の位置、すなわちX座標が16であり、Y座標が8である位置を意味する。
体圧分布計測を目的とする場合において、マトリックス状に位置する128個全ての圧力センサセル10aのそれぞれが計測対象となる。つまり、体圧分布計測を目的とする場合において、切替装置50は、128個の圧力センサセル10aそれぞれを個々のセンサ(第一センサ)として機能させるように、入力側回路30及び出力側回路40を切り替える。以下において、体圧分布計測を目的とする場合に機能する個々のセンサを、第一センサと称する。つまり、本実施形態において、体圧分布計測を目的とする場合において、センサユニット10は、128個の第一センサを有することになる。また、切替装置50により第一センサとして機能させるモードを、第一モードと称する。
一方、脈波及び呼吸成分の計測を目的とする場合において、マトリックス状に位置する全ての圧力センサセル10aが計測対象でなく、一部の圧力センサセル10aのみが計測対象となる。そして、脈波及び呼吸成分の計測を目的とする場合において、二個以上の圧力センサセル10aを一個のセンサ(第二センサ)として機能させるように、入力側回路30及び出力側回路40を切り替える。以下において、脈波及び呼吸成分の計測を目的とする場合に機能する個々のセンサを、第二センサと称する。
本実施形態においては、図4において、「A」「B」「C」「D」で示されるそれぞれが、脈波及び呼吸成分の計測を目的とする第二センサとして機能する部位である。つまり、センサユニット10は、4個の第二センサを有することになる。また、切替装置50により第二センサとして機能させるモードを、第二モードと称する。
(1−3.体圧分布、脈波、呼吸成分における計測周期)
次に、第一センサによる体圧分布の計測周期と、第二センサによる脈波及び呼吸成分の計測周期について、説明する。
体圧分布計測を目的とする場合には、体圧を受けていない状態の第一センサの検出値と、体圧を受けた状態の第一センサの検出値とを取得すれば足りる。従って、体圧分布演算装置62は、体圧を受けた状態において、個々の第一センサの1回の検出値を取得すれば、体圧分布を演算することができる。
ここで、体圧分布演算装置62は、個々の第一センサの複数回の検出値を取得することで、体圧分布の変化を把握することができる。つまり、体圧分布計測に要求される計測周期は、それほど高いものではない。従って、128個の第一センサについて、それほど高い周期でない計測を行ったとしても、十分に体圧分布の変化を把握できる。
一方、脈波は、一般に1分間に50〜100回であり、多い場合には1分間に100回以上となる。そして、脈波を計測するためには、脈波の周期に比べて格段に短い周期での第二センサの検出値を取得する必要がある。また、呼吸数は、一般に、1分間に10数回〜20数回である。つまり、脈波と呼吸成分の演算装置63は、非常に短い周期での第二センサの検出値を取得しなければ、脈波及び呼吸成分を演算することはできない。
従って、第二センサによる脈波及び呼吸成分の計測周期は、第一センサによる体圧分布の計測周期より極めて短くしなければならない。図4において、切替装置50は、例えば、(1,1)の圧力センサセル10aを第一センサとして機能させる場合の周期より、「A」で示す二個以上の圧力センサセル10aを第二センサとして機能させる場合の周期を短くするように制御する。
(1−4.演算装置60の処理)
演算装置60の処理について、図5−図6を参照して説明する。演算装置60は、上述したように、検出値取得部61、体圧分布演算装置62、脈波と呼吸成分の演算装置63を備える。
図5に示すように、検出値取得部61が、切り替えながら実行される第一モード及び第二モードによる検出値を取得する(S1)。つまり、切替装置50が、128個の圧力センサセル10aそれぞれを個々の第一センサとして機能させる第一モードと、「A」〜「D」の圧力センサセル10aそれぞれを第二センサとして機能させる第二モードとを切り替えながら実行する場合に、検出値取得部61が、それぞれの検出値を取得する。
体圧分布演算装置62は、第一モードにおける検出値に基づいて、128個の圧力センサセル10aのそれぞれの位置における体圧を演算する(S2)。つまり、体圧分布演算装置62は、128個の圧力センサセル10aのそれぞれの静電容量を演算して、各位置における体圧を演算する。そして、体圧分布演算装置62は、センサユニット10における体圧分布を得る。
体圧分布演算装置62により得られる体圧分布は、図6にて、ハッチングにて示す。例えば、図6には、体圧が閾値以上となる位置に、ハッチングを付している。また、閾値を複数段階設定することで、体圧の強弱度合の分布を表すこともできる。そして、再び、同一位置の第一センサについての検出値を取得すると、当該位置における体圧を更新する。つまり、体圧分布の計測周期に応じて、体圧分布が更新される。
脈波と呼吸成分の演算装置63は、第二モードにおける「A」〜「D」のそれぞれの検出値に基づいて、脈波及び呼吸成分を演算する(S3)。ただし、脈波は、非常に小さな振動であるため、脈波の影響により変化する静電容量も小さい。また、呼吸による体圧変動量も非常に小さいため、呼吸の影響により変化する静電容量も小さい。なお、脈波による静電容量の変化は、呼吸による静電容量の変化よりもさらに小さい。そこで、脈波と呼吸成分の演算装置63は、検出値に基づいて、脈波及び呼吸以外の成分を除去する処理を行い、脈波及び呼吸成分を計測できるようにする。この処理の詳細は、後述する。
ここで、脈波及び呼吸の演算において、4個の第二センサの検出値を用いるが、1個の第二センサの検出値を用いるようにしてもよい。例えば、脈波と呼吸成分の演算装置63は、4個の第二センサの検出値の中で、脈波及び呼吸成分を最も検出できる第二センサの検出値を選択することもできる。また、脈波と呼吸成分の演算装置63は、4個の第二センサの検出値による得られる脈波及び呼吸成分の波形の全てを出力するようにしてもよい。
(1−5.切替装置50による詳細処理)
次に、切替装置50による詳細処理について、図7を参照して説明する。上述したように、センサユニット10は、第一モードにおける128個の第一センサと、第二モードにおける4個の第二センサとを有する。計測の1サイクルにおいて、128個の第一センサのそれぞれによる1回ずつの計測と、4個の第二センサのそれぞれによる複数回の計測を行う。
具体的には、図7に示すように、切替装置50は、入力側回路30及び出力側回路40を切り替えて、計測対象の圧力センサセル10aを切り替える。ここで、1サイクルの周期Taは、例えば、4msである。すなわち、計測の1サイクルの周波数は、250Hzである。
切替装置50は、1サイクルにおいて、個々の第一センサとして機能させる第一モードを1回ずつ順次実行させる。切替装置50は、1サイクルにおいて、第一モードとして、(1,1)→(1,2)→・・・・→(16,7)→(16,8)を順次実行する。つまり、同一の第一センサによる計測周期Taは、1サイクルの周期Taと同一の4msとなる。
一方、切替装置50は、1サイクルにおいて、「A」〜「D」の第二センサとして機能させる第二モードを順次実行させる。より詳細には、切替装置50は、1サイクルにおいて、個々の第二センサとして機能させる第二モードを、所定周期で複数回ずつ順次実行させる。切替装置50は、1サイクルにおいて、「A」→「B」→「C」→「D」の順に実行すると共に、その処理を二回以上繰り返す。本実施形態においては、切替装置50は、「A」→「B」→「C」→「D」の処理を、16回実行する。従って、同一の第二センサによる計測周期Tbは、0.25msとなる。すなわち、同一の第二センサによる計測周波数は、4kHzとなる。
さらに、第二モードは、一定の第二モード基準周期Tcで実行される。つまり、第二センサ「A」、「B」の計測間隔、第二センサ「B」、「C」の計測間隔、第二センサ「C」、「D」の計測間隔、第二センサ「D」、「A」の計測間隔は、同一の第二モード基準周期Tcとなる。第二センサが、4種類であるため、第二モード基準周期Tcは、0.0625msとなる。すなわち、第二モードの基準周波数は、16kHzとなる。
ここで、ノイズの影響を確実に除去するために、第二センサによる計測周期Tbは、所定のノイズの周期の2分の1以下に設定されている。ここでのノイズは、例えば、電源に由来する高次の高調波ノイズであり、60Hz電源では20次で1.2kHz程度の高調波ノイズを含む。最大で2kHz程度のノイズを想定した場合、当該周期は、0.5msである。そこで、第二センサによる計測周期Tbは、0.25msとしている。
(1−6.脈波と呼吸成分の演算装置63の詳細構成)
脈波と呼吸成分の演算装置63の構成について、図8、図9及び図10A−図10Dを参照して説明する。ここで、図10A−図10Dにおいて、横軸はサンプリング回数であって時間に相当し、縦軸はデータ数値である。図8に示すように、脈波と呼吸成分の演算装置63は、1サイクル加算部631、37サイクル加算部632、第一差分演算部633、呼吸成分記憶部634、第二差分演算部635、脈波記憶部636を備える。
1サイクル加算部631は、所定のサンプリング周期Tbで「A」の第二センサによる検出値を一次信号Dとして取得する。ここでは、所定のサンプリング周期Tbは、0.25msである。つまり、1サイクル加算部631は、0.25ms毎に計測された「A」の第二センサによる検出値を一次信号Dとして記憶する。一次信号Dの挙動は、図10Aに示すデータである。つまり、一次信号Dは、非常に多くのノイズを含んでいる。
さらに、1サイクル加算部631は、「A」の一次信号Dを、1サイクル分、加算する。ここでは、1サイクルにおいて、「A」の第二センサによる計測は、16回実施される。1サイクルの周期Taは、4msである。つまり、1サイクル加算部631は、4msの期間における「A」の第二センサによる16回分の検出値を加算する。
また、1サイクル加算部631は、「B」〜「D」の第二センサについても同様に、それぞれ加算する。そして、1サイクル加算部631は、「A」〜「D」のそれぞれの第二センサについて、各サイクルのデータを、記憶しておく。
37サイクル加算部632は、1サイクル加算部631により得られた1サイクル分のデータを、連続する37サイクル分、加算する。37サイクル分加算されたデータは、二次信号Sum(n)として記憶される。つまり、37サイクル加算部632は、148msの期間(第一時間長N)に含まれる「A」の第二センサによる592回分の検出値(一次信号D)を加算して、二次信号Sum(n)を生成する。
さらに、37サイクル加算部632は、第二時間間隔a(a≦N)ずつずらしながら、二次信号Sum(n)の生成を順次実行する。本実施形態においては、第二時間間隔aは、1サイクル分としている。つまり、第二時間間隔aは、4msである。従って、図9に示すように、1サイクル分ずつずらしながら、二次信号Sum(1)、Sum(2)、Sum(3)、・・・、Sum(n)が生成される。そして、37サイクル加算部632は、「B」〜「D」の第二センサについても同様に、それぞれ二次信号Sum(n)を生成する。
なお、第二時間間隔aは、37サイクル分に相当する第一時間長N以下にする。特に、高精度に脈波及び呼吸成分を計測するためには、第二時間間隔aは、37サイクル分に相当する第一時間長Nに比べて十分に短くするとよい。
二次信号Sum(n)の挙動は、図10Bに示すように、一次信号Dに比べると、ノイズが大幅に低減している。特に、第二センサによる計測周期Tbの2分の1以下のノイズ成分は、加算処理によって、除去される。二次信号Sum(n)において、短周期に変化する成分が脈波による変化を表しており、長周期の振動が呼吸による変化を表している。つまり、二次信号Sum(n)は、脈波及び呼吸成分を表す信号となっている。具体的には、図10Bにおいて、丸印の箇所(下方に凹んでいる箇所)が脈波に対応する箇所であり、矢印の箇所(大きく上に突出している箇所)が呼吸成分に対応する箇所である。つまり、所定時間において、丸印の箇所の数が脈拍数となり、矢印の箇所の数が呼吸数となる。
第一差分演算部633、第二差分演算部635は、第三時間間隔M1、M2(M1、M2≧a)だけずれた二個の二次信号Sum(n)の差分である三次信号Sig3_1、Sig3_2を演算する。
第一差分演算部633は、直前の二個の二次信号Sum(m)、Sum(m−1)の差分である三次信号Sig3_1を演算する。つまり、三次信号Sig3_1は、第三時間間隔M1として、1サイクル分の時間間隔(第二時間間隔aに等しい)、すなわち4msだけずれた二個の二次信号Sum(m)、Sum(m−1)の差分である。
第一差分演算部633により演算される三次信号Sig3_1の挙動は、図10Cに示すように、二次信号Sum(n)の挙動とそれほど変わりない。つまり、三次信号Sig3_1には、脈波及び呼吸成分を表す信号である。具体的には、図10Cにおいて、丸印の箇所(下方に凹んでいる箇所)が脈波に対応する箇所であり、矢印の箇所(大きく上に突出している箇所)が呼吸成分に対応する箇所である。ここで、三次信号Sig3_1は、二次信号Sum(n)に比べて、絶対値が小さくなっている。そのため、三次信号Sig3_1は、二次信号Sum(n)よりも、データ容量が小さく、高速処理を行うことができる。
第二差分演算部635は、相対的に長い時間だけずれた二個の二次信号Sum(m)とSum(1)の差分である三次信号Sig3_2を演算する。ここで、第三時間間隔M2は、第一差分演算部633にて用いる第三時間間隔M1よりも十分に長い。本実施形態では、第三時間間隔M2は、250msである。250msとは、一般的な脈波が1Hz程度であるとすると、その脈波の4分の1である。つまり、この第三時間間隔M2は、脈波の最大振幅の半分程度に相当する周期に等しい。従って、第三時間間隔M2だけずれた二個の二次信号Sum(m)、Sum(1)の差分は、比較的、脈波の影響分を大きく抽出作用がある。
第二差分演算部635により演算される三次信号Sig3_2の挙動は、図10Dに示すような挙動となる。図10Dにおいて、丸印の箇所(下方に凹んでいる箇所)が脈波に対応する箇所であり、矢印の箇所(大きく上に突出している箇所)が呼吸成分に対応する箇所である。三次信号Sig3_2は、二次信号Sum(n)と比べると、呼吸の変化に対して脈波による変化が際立っている。さらに、三次信号Sig3_2は、二次信号Sum(n)に比べて、絶対値が小さくなっている。そのため、三次信号Sig3_1は、二次信号Sum(n)よりも、データ容量が小さく、高速処理を行うことができる。
呼吸成分記憶部634は、第一差分演算部633により演算された三次信号Sig3_1を、呼吸成分を表すデータとして記憶する(図10C)。オペレータは、呼吸成分記憶部634に記憶された三次信号Sig3_1における長周期の振動回数をカウントすることで、呼吸数を得ることができる。
脈波記憶部636は、第二差分演算部635により演算された三次信号Sig3_2を、脈波を表すデータとして記憶する(図10D)。オペレータは、脈波記憶部636に記憶された三次信号Sig3_2において脈波に対応する箇所の回数をカウントすることで、脈拍数を得ることができる。
<2.実施形態の変形態様>
上記実施形態においては、脈波記憶部636は、第二差分演算部635により演算された三次信号Sig3_2を、脈波を表すデータとして記憶した。ここで、上述したように、第一差分演算部633により演算された三次信号Sig3_1には、呼吸による変化のみならず、脈波による変化も表されている。そこで、呼吸成分記憶部634が、呼吸成分と脈波とを表すデータを記憶することとしてもよい。この場合、脈波と呼吸成分の演算装置63は、第二差分演算部635及び脈波記憶部636の存在しない構成となる。
また、呼吸成分記憶部634は、単に三次信号Sig3_1を記憶するだけであるが、この他に、三次信号Sig3_1に基づいて呼吸数をカウントする機能を付加することもできる。つまり、呼吸成分記憶部634は、三次信号Sig3_1における長周期の振動回数をカウントすることにより、呼吸数を得ることができる。
また、脈波記憶部636は、単に三次信号Sig3_2を記憶するだけであるが、この他に、三次信号Sig3_2に基づいて脈拍数をカウントする機能を付加することもできる。つまり、脈波記憶部636は、三次信号Sig3_2における脈波に対応する箇所の回数をカウントすることにより、脈拍数を得ることができる。なお、脈波記憶部636は、第一差分演算部633により演算された三次信号Sig3_1に基づいて、脈拍数をカウントするようにしてもよい。
また、脈波記憶部636及び呼吸成分記憶部634は、二次信号Sum(n)を脈波及び呼吸成分を表すデータとして記憶してもよく、二次信号Sum(n)に基づいて脈拍数及び呼吸数をカウントしてもよい。ただし、上述したように、二次信号Sum(n)は、データ容量が大きいため、容量に応じた記憶装置や処理装置が必要となる。
<3.実施形態の効果>
上記実施形態における計測装置1は、面状に形成される圧力センサセル10aと、圧力センサセル10aによる検出値に基づいて圧力センサセル10aに面する身体の生体情報を演算する演算装置60とを備える。演算装置60は、第二センサによる計測周期(所定のサンプリング周期)Tbで圧力センサセル10aによる検出値を一次信号Dとして取得する。演算装置60は、続いて、第一時間長N(37サイクル分の時間長)に含まれる一次信号Dの加算値である二次信号Sum(n)を演算すると共に、二次信号Sum(n)の演算を第二時間間隔a(a≦N)ずつずらしながら順次実行する。さらに、演算装置60は、二次信号Sum(n)に基づいて生体情報を演算する。
計測装置1は、圧力センサセル10aの検出値の加算値としての二次信号Sum(n)を演算している。加算値としての二次信号Sum(n)は、一次信号Dの中の高調波ノイズ成分を除去した信号に相当する。つまり、一次信号Dを加算する処理が、実質的に、ローパスフィルタとして機能する。このように、取得対象の生体情報より高調波ノイズ成分が容易に除去される。従って、高精度に生体情報を計測できる。
さらに、演算装置60は、第三時間間隔M(M≧a)だけずれた二個の二次信号Sum(n)の差分である三次信号Sig3を演算し、三次信号Sig3に基づいて生体情報を演算している。このように、二個の二次信号Sum(n)の差分である三次信号Sig3は、二次信号Sum(n)に比べると、絶対値が小さくなっている。そのため、三次信号Sig3は、二次信号Sum(n)よりも、データ容量が小さく、高速処理を行うことができる。
そして、第一差分演算部633で演算される三次信号Sig3_1は、第三時間間隔Mを、二次信号Sum(n)を生成するためのずらし時間である第二時間間隔aに等しくしたときの信号である。つまり、直前の二次信号Sum(n)との差分が、三次信号Sig3_1となる。これにより、三次信号Sig3_1は、二次信号Sum(n)に比べると、絶対値が小さくなっている。
また、第二差分演算部635で演算される三次信号Sig3_2は、第三時間間隔Mを、二次信号Sum(n)の加算時間である第一時間長Nより長い時間としたときの信号である。これにより、目的外の信号成分を除去することができ、目的の生体情報の成分を大きくすることができる。従って、目的の生体情報を確実に得ることができる。
また、演算装置60は、生体情報として脈波及び呼吸成分を演算することができる。つまり、第一差分演算部633により、確実に、呼吸成分を演算することができる。一方、第二差分演算部635により、確実に、脈波を演算することができる。また、第一差分演算部633により、脈波を演算することもできる。呼吸成分も脈波も、非常に微小な振動であるが、上記の演算処理により確実に得ることができる。なお、演算装置60は、生体情報として脈波のみを演算するようにしてもよいし、呼吸成分のみを演算するようにしてもよい。
第二センサによる計測周期Tb(サンプリング周期)は、所定のノイズ周期の2分の1以下に設定される。例えば、所定のノイズとは、電源に由来する高次の高調波ノイズなどである。第二センサによる計測周期Tbを、所定のノイズ周期の2分の1以下に設定することで、第二センサによる検出値には、確実に、所定のノイズの影響分が含まれ、ノイズの影響分と、計測目的の成分とを区別することができる。従って、確実に、生体情報を得ることができる。
また、計測装置1は、面状に配列される二個以上の圧力センサセル10aと、サンプリング周期Tbよりも長い周期Taである1サイクルにおいて、それぞれの圧力センサセル10aを個々の第一センサとして機能させる第一モードを順次実行すると共に、二個以上の圧力センサセル10aを一個の第二センサとして機能させる第二モードをさらに実行する切替装置50とを備える。そして、演算装置50は、第一モードにおける第一センサのそれぞれの検出値に基づいて、圧力センサセル10aに面する身体の体圧分布を演算すると共に、第二モードにおける第二センサの検出値に基づいて、身体の生体情報を演算する。
体圧分布の演算には、個々の圧力センサセル10aによる検出値が用いられる。一方、生体情報の演算には、二個以上の圧力センサセル10aを一個のセンサとして機能させた場合の検出値が用いられる。
体圧の振幅は、生体情報の振幅に比べて大きい。そのため、体圧による圧力変動を検出するためには、圧力センサセル10a一個であっても十分である。そこで、体圧計測の時には、個々の圧力センサセル10aの検出値を用いることで、体圧分布を高分解能で計測することができる。
一方、生体情報による圧力変動を検出するためには、圧力センサセル10a一個のような小さな領域では、十分ではない。そこで、生体情報による圧力変動を検出する際には、二個以上の圧力センサセル10aを一個の第二センサとして機能させたときの検出値を用いている。つまり、生体情報の計測の時には、第二センサによる検出領域を大きくすることにより、微小振動である生体情報の影響を受けやすい状態としている。これにより、微小振動である生体情報を、高精度に計測できる。
また、圧力センサセル10aは、第一電極11と、第一電極11に対向する第二電極12と、第一電極11と第二電極12との間に配置され生体情報の変動に伴って弾性変形する誘電層13とを備える静電容量型センサとした。これにより、圧力センサセル10aは、体圧及び生体情報の変動を検出することができる。さらに、電極間の静電容量は、対向する電極面積に比例する。そのため、対向する電極面積が小さいと、検出される静電容量が小さくなる。つまり、生体情報の計測のための第二センサが、二個以上の圧力センサセル10aにより構成されることにより、大きな静電容量を検出できる。その結果、上述したように、第二センサにより、生体情報を高精度に計測できるようになる。
1:体圧分布及び生体情報の計測装置、 10:センサユニット、 10a:圧力センサセル、 11:第一電極、 12:第二電極、 13:誘電層、 20:電源装置、 30:入力側回路、 40:出力側回路、 50:切替装置、 60:演算装置、 61:検出値取得部、 62:体圧分布演算装置、 63:脈波と呼吸成分の演算装置、 70:シート、 71:座面、 72:背面、 73:ヘッドレスト、 631:1サイクル加算部、 632:37サイクル加算部、 633:第一差分演算部、 634:呼吸成分記憶部、 635:第二差分演算部、 636:脈波記憶部、 D:一次信号、 Sum(n):二次信号、 Sig3:三次信号、 Sig3_1:第一差分演算部による三次信号、 Sig3_2:第二差分演算部による三次信号、 a:第二時間間隔、 M:第三時間間隔、 M1:第一差分演算部の処理における第三時間間隔、 M2:第二差分演算部の処理における第三時間間隔、 N:第一時間長、 Ta:第一センサによる計測周期(1サイクルの周期)、 Tb:第二センサによる計測周期(サンプリング周期)、 Tc:第二モード基準周期

Claims (9)

  1. 面状に形成される圧力センサセルと、
    前記圧力センサセルによる検出値に基づいて、前記圧力センサセルに面する身体の生体情報を演算する演算装置と、
    を備える生体情報計測装置であって、
    前記演算装置は、
    所定のサンプリング周期Tbで前記圧力センサセルによる検出値を一次信号として取得し、
    第一時間長Nに含まれる前記一次信号の加算値である二次信号を演算すると共に、前記二次信号の演算を第二時間間隔a(a≦N)ずつずらしながら順次実行し、
    前記二次信号に基づいて前記生体情報を演算する、生体情報計測装置。
  2. 前記演算装置は、
    第三時間間隔M(M≧a)だけずれた二個の前記二次信号の差分である三次信号を演算し、
    前記三次信号に基づいて前記生体情報を演算する、請求項1に記載の生体情報計測装置。
  3. 前記第三時間間隔Mは、前記第二時間間隔aに等しい、請求項2に記載の生体情報計測装置。
  4. 前記第三時間間隔Mは、前記第一時間長Nより長い時間である、請求項2に記載の生体情報計測装置。
  5. 前記演算装置は、前記生体情報として脈波を演算する、請求項1−4の何れか一項に記載の生体情報計測装置。
  6. 前記演算装置は、前記生体情報として脈波及び呼吸成分を演算する、請求項1−3の何れか一項に記載の生体情報計測装置。
  7. 前記サンプリング周期Tbは、所定のノイズ周期の2分の1以下に設定される、請求項1−6の何れか一項に記載の生体情報計測装置。
  8. 前記生体情報計測装置は、
    面状に配列される二個以上の前記圧力センサセルと、
    前記サンプリング周期Tbよりも長い周期Taである1サイクルにおいて、それぞれの前記圧力センサセルを個々の第一センサとして機能させる第一モードを順次実行すると共に、二個以上の前記圧力センサセルを一個の第二センサとして機能させる第二モードをさらに実行する切替装置と、
    を備え、
    前記演算装置は、
    前記第一モードにおける前記第一センサのそれぞれの検出値に基づいて、前記圧力センサセルに面する身体の体圧分布を演算すると共に、
    前記第二モードにおける前記第二センサの検出値に基づいて、前記身体の生体情報を演算する、請求項1−7の何れか一項に記載の生体情報計測装置。
  9. 前記圧力センサセルは、第一電極と、前記第一電極に対向する第二電極と、前記第一電極と前記第二電極との間に配置され前記生体情報の変動に伴って弾性変形する誘電層とを備える静電容量型センサである、請求項1−8の何れか一項に記載の生体情報計測装置。
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