以下に、図面を参照して本発明に係る光増幅器、光増幅システム、波長変換器および光通信システムの実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する構成要素には適宜同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法や寸法の比率などは現実のものとは異なる場合があることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
はじめに、本発明の参考実施の形態について説明する。以下に説明する本発明の参考実施の形態によれば、利得スペクトルの平坦性と広帯域性とを実現しつつ、さらに高利得である光増幅器を実現できる。
なお、本明細書におけるOPAは、以下のような光増幅器を意味する。すなわち、ポンプ光と被増幅光であるシグナル光とを増幅媒体である増幅用光ファイバに入力する。増幅用光ファイバ中では、ポンプ光とシグナル光とから、増幅用光ファイバの非線形光学効果によりアイドラ光が発生する。また、シグナル光はパラメトリック増幅される。このアイドラ光の波長λidler[nm]は、ポンプ光の波長λpump[nm]とシグナル光の波長λsignal[nm]と次の関係を持つ。
1/λidler=2/λpump-1/λsignal
また、本明細書におけるPSAは、以下のような光増幅器を意味する。すなわち、PSAでは、ポンプ光とシグナル光に加えて、シグナル光に対して1/10倍〜10倍のパワーを持つアイドラ光を増幅用光ファイバに入力する。増幅用光ファイバの出力では、ポンプ光と、パラメトリック増幅されたシグナル光と、パラメトリック増幅されたアイドラ光が出力される。このアイドラ光の波長は、OPAのアイドラ光と同じく、次の関係で決まる。
1/λidler=2/λpump-1/λsignal
(参考実施の形態1)
図1は、本発明の参考実施の形態1に係る光増幅器100およびその増幅特性測定系の模式的な構成図である。図1に示すように、OPAである光増幅器100は、光増幅体10と、ポンプ光源部20と、光合分波器30とを備えている。
光増幅器100の光合分波器30には、測定のための波長可変レーザ装置からなるシグナル光源41が、偏波コントローラ42を介して接続されている。また、光増幅器100の増幅用光ファイバ12には、スペクトル、利得、およびNFの測定のための光スペクトラムアナライザ300が、光減衰器200を介して接続されている。
つぎに、光増幅器100の構成について、ポンプ光源部20、光増幅体10、光合分波器30の順番で、より具体的に説明する。
ポンプ光源部20は、ポンプ光源21と、位相変調器22と、光ファイバ増幅器23と、光バンドパスフィルタ24と、白色雑音源25と、広帯域RF増幅器26とを備えている。ポンプ光源21、位相変調器22、光ファイバ増幅器23、および光バンドパスフィルタ24は光ファイバで接続されている。この接続に使用する光ファイバは、偏波保持光ファイバであることが好ましい。
ポンプ光源21は、光増幅体10に供給すべき所定のポンプ光波長のポンプ光を出力する。ポンプ光源21は、波長可変レーザ装置で構成されるが、分布帰還型(DFB)レーザや、ファブリペロー(FP)レーザや、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)で構成されてもよい。白色雑音源25は、電気信号として、1.2GHz広帯域の白色雑音信号を出力する。なお、白色雑音源25は、2GHzの白色雑音信号を出力するものでもよいし、互いに異なる周波数の複数の正弦波を白色雑音信号として出力するものでもよい。広帯域RF増幅器26は、白色雑音源25が出力する白色雑音信号を増幅して位相変調器22に出力する。位相変調器22は、ポンプ光と、増幅された白色雑音信号とが入力され、増幅された白色雑音信号でポンプ光を所定の位相変調度で位相変調し、光ファイバ増幅器23に出力する。なお、ポンプ光を位相変調することによって、ポンプ光のスペクトル幅が広がるので、光増幅体10内でのSBS(stimulated Brillouin scattering)の発生またはその強度を抑制できる。なお、ポンプ光源21がスペクトル幅が広いFPレーザやVCSELを用いたものである場合には、DFBレーザを用いた場合よりも、位相変調度が低くてもよい場合がある。
光ファイバ増幅器23は、たとえばEDFAまたはEYDFA(Erbium Ytterbium Doped Fiber Amplifier)であって、位相変調器22によって位相変調されたポンプ光を光増幅して光バンドパスフィルタ24に出力する。光バンドパスフィルタ24は、透過中心波長がポンプ光波長と一致しており、光ファイバ増幅器23によって増幅されたポンプ光から、光ファイバ増幅器23で発生したASE(Amplified Spontaneous Emission)成分を除去して出力する。光バンドパスフィルタ24の透過波長帯域はたとえば1nm以下と狭いことが好ましい。
なお、ポンプ光源部20において、ポンプ光源21から先の任意の位置に、光アイソレータを挿入してもよい。
つぎに、光増幅体10について説明する。光増幅体10は、増幅用光ファイバ11、12と、増幅用光ファイバ11、12の間に挿入された相対位相シフタ13とを備えている2段構成の光増幅体である。
図2は、図1に示す増幅用光ファイバ11の模式的な断面図である。図3は、図1に示す増幅用光ファイバ11の屈折率プロファイルを模式的に示す図である。なお、増幅用光ファイバ12も増幅用光ファイバ11と同様の構成を有するので、説明を省略する。
増幅用光ファイバ11は、中心コア部11aaと、中心コア部11aaの周囲に形成され中心コア部11aaよりも屈折率が低い外側コア層11acと、中心コア部11aaと外側コア層11acとの間に形成され中心コア部11aaよりも屈折率が低くかつ外側コア層11acよりも屈折率の高い緩衝コア層11abとを有するコア部11aと、外側コア層11acの周囲に形成され中心コア部11aaよりも屈折率が低くかつ外側コア層11acよりも屈折率が高いクラッド部11bとを有し、波長1550nmにおける有効コア断面積が18μm2以下であり、たとえば10.27μm2以上である。また、増幅用光ファイバ11は、クラッド部11bの周囲に形成された被覆11cを有する(特許文献3参照)。
コア部11a及びクラッド部11bはSiO2ガラスをベースとするものである。コア部11aについては、屈折率を調整するために添加するGeO2やフッ素(F)などの屈折率調整用ドーパントの添加量や半径方向の添加量の分布などを調整して、所望の形状の屈折率プロファイルを形成できる。この際、GeO2を添加すると屈折率を高くし、Fを添加すると屈折率を低くすることができる。クラッド部11bについては、たとえば純SiO2ガラスからなるが、GeO2やFなどの屈折率調整用ドーパントを添加して、所望の屈折率としても良い。なお、実質的に純SiO2ガラスからなるとは、屈折率調整用ドーパントを含まないことを意味し、屈折率に影響を及ぼさないCl元素などは含まれていてもよい。また、被覆11cは、通常は2層の紫外線硬化型樹脂からなるものであるが、特に限定はされない。
クラッド部11bの外径は通常は125μmであるが、100μm以下にすることもできる。その場合、増幅用光ファイバ11をボビンなどに巻回する場合の直径を小さくできる。また、被覆11cの外径は通常は250μmであるが、クラッドの外径を小さくすることで、150μm以下にすることもできる。その場合、増幅用光ファイバ11の体積が小さくなる。したがって、増幅用光ファイバ11を小径のボビンに巻回して筐体に収容すれば、小型の非線形光デバイスが実現できる。
また、図3に示すように、増幅用光ファイバ11において、中心コア部11aaは直径がd1であって、屈折率プロファイルP1を有し、最大屈折率はnc1である。外側コア層11acは外径がd3であって、屈折率プロファイルP3を有し、最小屈折率はnc3である。緩衝コア層11abは外径がd2であって、屈折率プロファイルP2を有し、最大屈折率はnc2である。クラッド部11bは屈折率プロファイルP4を有し、屈折率はnclである。なお、ngは純SiO2ガラスの屈折率である。
ここで、増幅用光ファイバ11の屈折率プロファイルを特徴づけるプロファイルパラメータを定義する。まず、外側コア層11acの外径d3に対する中心コア部11aaの直径d1の比であるd1/d3をRa11、外側コア層11acの外径d3に対する緩衝コア層11abの直径d2の比であるd2/d3をRa12と定義する。次に、クラッド部11bに対する中心コア部11aaの最大比屈折率差をΔ11、クラッド部11bに対する外側コア層11acの最小比屈折率差をΔ12、クラッド部11bに対する緩衝コア層11abの最大比屈折率差をΔ14と定義する。また、純SiO2ガラスの屈折率に対するクラッド部11bの比屈折率差をΔcladとする。クラッド部が実質的に純SiO2ガラスからなる場合は、Δcladは0%である。本明細書においては、Δ11、Δ12、Δ14、Δcladは、式(1)〜(4)で定義する。
Δ11=[(nc1−ncl)/nc1]×100 (%) (1)
Δ12=[(nc3−ncl)/nc3]×100 (%) (2)
Δ14=[(nc2−ncl)/nc2]×100 (%) (3)
Δclad=[(ncl−ng)/ncl]×100 (%) (4)
増幅用光ファイバ11においては、中心コア部11aaの直径に対する緩衝コア層11abの外径の比、つまりd3/d1は1.2以上2.0以下である。また、Δ11は1.8%以上であり、より好ましくは2.2%以上であり、また3.0%以下ある。また、外側コア層11acの外径は9.4μm以上であり、また21.4μm以下である。また、外側コア層11acの外径に対する中心コア部11aaの直径の比、つまりd1/d3は0.20以上であり、また0.40以下である。また、外側コア層11acの外径に対する緩衝コア層11abの外径の比、つまりd2/d3は0.24以上であり、また0.80以下である。また、Δ12は−1.2%以上−0.2%以下であり、より好ましくは−1.2%以上−0.4%以下である。また、Δ14は0.1%以上0.6%以下であり、より好ましくは0.3%以上0.6%以下である。
また、中心コア部11aa、緩衝コア層11abは、いわゆるα型の屈折率プロファイルを有し、α値としてそれぞれα11、α14を有する。α値とは、屈折率プロファイルの形状を表す指数であり、式(5)、式(6)で定義される。α値が大きくなるほど、コアの屈折率プロファイルの中央部が丸みを持つ、すなわち、三角形から四角形に移行していくことになる。
n2(r)=nc12{1−2(Δ11/100)・(2r/d1)^α11} (5)
ただし、0≦r<d1/2
n2(r)=nc22{1−2(Δ14/100)・((r−r14max)/(d2/2−r14max))^α14} (6)
ただし、r14max≦r<d2/2
ここで、rは光ファイバの中心からの半径方向の位置を示す。また、r14maxとは、d1/2≦r<d2/2の範囲で、クラッド部11bに対する比屈折率差が最も大きい点における光ファイバの中心からの半径方向の位置であり、r14maxが1点ではなく広範囲に及ぶ場合は、その中での中心の点とする。図3においては、r14max=d1/2である。また、n(r)は位置rにおける屈折率を表す。
また、増幅用光ファイバ11の伝送特性については、波長1500nm以上の信号光をシングルモードで伝送させるために、カットオフ波長は1500nm未満である。また、長手方向の零分散波長の変動は長さ100mあたり0.5nm(0.5nm/100m)の範囲内、好ましくは0.2nm/100mの範囲であり、波長1550nmにおいて長手方向での波長分散の変動幅は長さ1kmあたり1ps/nm/km以下であるから、光ファイバ長を長くしても波長分散特性が長手方向で安定しており、非線形光学現象を効率よく利用できる。また、波長1550nmにおいて波長分散の絶対値は5ps/nm/km以下であり、より好ましくは1ps/nm/km以下であるから、FWMなどの非線形光学現象の発生効率が高い。また、波長1550nmにおける波長分散の絶対値が5ps/nm/km以下の範囲において、外側コア層11acの外径(すなわちコア部11aの外径)が1%変動したときの波長1550nmにおける波長分散の変動は0.7ps/nm/km以下であるから、波長分散の絶対値が長手方向で安定して小さい光ファイバとなる。また、波長1550nmにおいて波長分散スロープの絶対値は0.02以上0.06ps/nm2/km以下であるから、広い波長帯域で波長分散の絶対値が小さい光ファイバとなる。また、波長1550nmにおいて伝送損失は1.5dB/km以下であるから、光の損失が小さく非線形光学現象の発生効率が高い。また、波長1550nmにおいて偏波モード分散は0.2ps/km1/2以下であるから、信号光が短パルス光であっても光ファイバを伝搬する間のパルス波形の劣化が抑制される。また、波長1550nmにおける非線形係数(n2/Aeff)は40×10-10/W以上であるから、非線形光学現象の発生効率が高い。ここで、n2は非線形屈折率、Aeffは有効コア断面積である。
なお、本明細書においては、カットオフ波長(λc)とは、ITU−T(国際電気通信連合)G.650.1で定義するファイバカットオフ波長をいう。有効コア断面積は、ITU−T G.650.2で定義する有効コア断面積であり、その測定方法はITU−T G.650.1で定義するモードフィールド径(MFD)の測定方法と同様にして行い、測定結果からITU−T G.650.2の定義に従って算出される。その他、本明細書で特に定義しない用語についてはITU−T G.650.1における定義、測定方法に従うものとする。また、本明細書において用いる非線形係数(n2/Aeff)は、XPM法による測定値である。
図4は、図1に示す増幅用光ファイバ11、12を準備するための元光ファイバの零分散波長の長手方向での分布の一例を示す図である。図4に示すように、長さが2000mの元光ファイバには、長手方向の零分散波長の変動が0.5nm/100mの範囲内の部分があるので、この元光ファイバを用いて、増幅用光ファイバ11、12を準備することができる。なお、光ファイバの零分散波長の長手方向での分布は、非特許文献4に開示されている非線形OTDR法により、光ファイバの長手方向での波長分散の変動を測定することにより求めることができる。
相対位相シフタ13は、たとえばファイバブラッググレーティング(FBG)で構成されており、そのブラッグ波長が増幅用光ファイバ11、12の零分散波長の近傍に設定されているものである。
光合分波器30は、ポンプ光源部20と光増幅体10とシグナル光源41とを接続している。光合分波器30はポンプ光とシグナル光とを合波する機能を有する。光合分波器30は、たとえば20dB光カプラや光バンドパスフィルタであるが、特に限定はされない。光合分波器30が20dB光カプラである場合は、ポンプ光源部20と光増幅体10とは低光損失で接続され、光増幅体10とシグナル光源41とは20dB程度の光損失で接続される。
つぎに、光増幅器100の動作について説明する。ポンプ光源部20は、位相変調されて光増幅され、かつASE成分が除去されたポンプ光(以下では単にポンプ光と呼ぶ)を出力する。ここで、ポンプ光の波長は、増幅用光ファイバ11、12の零分散波長の近傍に設定される。一方、シグナル光源41は、シグナル光を出力する。シグナル光の波長は、光増幅器100の増幅帯域内の波長に設定される。光合分波器30は、ポンプ光とシグナル光とを合波し、光増幅体10に増幅用光ファイバ11から入力させる。
光増幅体10は、ポンプ光が入力された増幅用光ファイバ11、12の非線形光学効果によって、シグナル光をパラメトリック増幅し、増幅用光ファイバ12側から出力する。
ここで、相対位相シフタ13は、増幅用光ファイバ11から伝搬してきた光の相対位相φrelを、入力するポンプ光のパワーや増幅用光ファイバ11、12の長さや非線形係数、分散特性などに応じて、適切な量だけずらす。増幅用光ファイバ11、12の長さや分散は、必要とされる利得スペクトル波形に応じて適切に設定する。
たとえば、相対位相シフタ13は、特許文献2等に示されるように、相対位相シフタ13の前段側に接続された増幅段の増幅用光ファイバ11から出力される光の相対位相φrelが0.5πより大きくなるように、増幅用光ファイバ11の非線形定数γと長さLとポンプ光の入力パワーPとの積γPLが設定されており、相対位相シフタ13は、相対位相φrelを0.5πよりも小さい値に変化させて後段の増幅用光ファイバ12に出力する。
相対位相シフタ13の設置により、増幅用光ファイバ11、12の間に相対位相シフタを挿入しない場合では得られない利得スペクトルの平坦性が実現する。また、同時に相対位相シフタが無い場合より低い雑音指数(NF:Noise Figure)が得られる。
ここで、相対位相φrelは、シグナル光の位相φsignal[radian]、アイドラ光の位相φidler[radian]、ポンプ光の位相φpump[radian]を用いて、以下の式で記述される量である。
φrel=Δk+φsignal+φidler-2φpump[radian]
ここで、Δk=ksignal+kidler-2kpumpで定義される。ksignal、kidler、kpumpは各光の波数である。
上記のように、相対位相φrelは、複数の光の位相により規定される量である。したがって、相対位相シフタとしては、たとえばポンプ光の位相のみをずらすもの、シグナル光の位相のみをずらすもの、アイドラ光の位相のみをずらすもの、またはポンプ光の位相、シグナル光の位相、アイドラ光の位相のうちに2つ以上をずらすもののいずれを用いてもよい。本参考実施の形態1における相対位相シフタ13は、ポンプ光の位相のみをずらすものである。
特に、この光増幅器100では、増幅用光ファイバ11、12として、長手方向の零分散波長の変動が0.5nm/100mの範囲内、好ましくは0.2nm/100mの範囲内である分散安定光ファイバを用いることによって、利得スペクトルの平坦性と広帯域性とを実現しつつ、さらに高利得であるという増幅特性が実現されている。
なお、光増幅器100の増幅用光ファイバ11、12には、以下に説明する温度調整機構を設けてもよい。図5は、図1に示す増幅用光ファイバ11、12に適用できる温度調整機構の模式的な構成図である。この温度調整機構14は、増幅用光ファイバ11または12を巻き付けるための、たとえばアルミニウム等の熱伝導性が高い材料からなるボビン14aと、ボビン14aに巻き付けられたヒータ線14bと、ボビン14aに取付けられたサーミスタや熱電対等の温度検出素子14cと、ボビン14aを収容する凹部を有する、断熱性材料からなる筐体14d、14eとを備えている。
この温度調整機構14を使用する場合には、ボビン14aに増幅用光ファイバ11または12を巻き付け、さらにボビン14aにヒータ線14bを巻き付けた状態で、ボビン14aを筐体14d、14eに収容する。そして、不図示の電源からヒータ線14bに電流を流して発熱させ、増幅用光ファイバ11または12を所定の設定温度に加熱する。なお、増幅用光ファイバ11または12の温度は温度検出素子14cによって測定されている。増幅用光ファイバ11または12の温度は、測定した温度に基づいてヒータ線14bに流す電流を調整することによって、設定した温度±2℃以内となるように調整されることが好ましい。
増幅用光ファイバ11または12の零分散波長は、温度を上昇させると長波長側にシフトする。したがって、増幅用光ファイバ11または12の温度を調整することによって、その零分散波長を調整することができる。したがって、たとえば所望のポンプ光波長を使用したい場合に、周囲温度(たとえば25℃±5℃の室温)における零分散波長がその所望のポンプ光波長よりも5nmの範囲内で短波長側(たとえば1〜2nm程度短波長側)にある増幅用光ファイバ11または12を使用し、温度調整機構14で増幅用光ファイバ11または12を加熱して零分散波長を精密に長波長側にシフトさせることによって、その零分散波長を所望のポンプ光波長に対して最適な値(たとえば光増幅器100の利得帯域が最大になる値)に近づける、好ましくは一致するように調整することができる。なお、このような温度調整による零分散波長の調整は、増幅用光ファイバ11および12のいずれか一方のみに行ってもよいが、両方に行うことが好ましい。増幅用光ファイバ11および12の両方に対して行う場合には、それぞれの周囲温度における零分散波長に応じて、所望の最適な零分散波長にシフトすべく、それぞれに最適な調整をすることがより好ましい。
なお、相対位相シフタ13が主にポンプ光の位相をずらす相対位相シフタである場合に、光増幅器100が平坦かつ広帯域な利得スペクトル特性を持つには、増幅用光ファイバ11および12の零分散波長と、ポンプ光の波長と、ポンプ光の位相をずらす相対位相シフタ13の波長(たとえば、位相シフトの波長変化率が最大となる波長)が、±1nm程度の範囲で一致することが望ましい。
より具体的には、増幅用光ファイバ11および12については、温度調節や張力調節により零分散波長を調節できる。ポンプ光源21がDFBレーザやFPレーザやVCSELなどの半導体レーザ素子で構成される場合、半導体レーザ素子の温度調節や駆動電流の調節によりその発振波長を調節することができる。また、相対位相シフタ13がFBGの場合は、FBGのブラッグ波長を温度調節や張力調節により調節することができる。これらの3つの特性波長(零分散波長、発振波長、ブラッグ波長)の1つから3つを、任意に組み合わせて調節することにより、光増幅器100において平坦かつ広帯域な利得スペクトルを得ることができる。従って、光増幅器100は、増幅用光ファイバ11および12に掛かる張力を調整する張力調整機構、半導体レーザ素子の温度を調整する温度調整機構または半導体レーザ素子の駆動電流を調整する駆動電流調整機構、またはFBGの温度を調整する温度調整機構もしくはFBGに掛かる張力を調整する張力調整機構を備えることが好ましい。
たとえば、相対位相シフタ13を構成するFBGとして反射波長の温度依存性をキャンセルしたアサーマルFBGを用いる場合は、上記機構により、該FBGのブラッグ波長に、増幅用光ファイバ11および12の零分散波長と、半導体レーザ素子の発振波長とを合わせるように調節することができる。また、増幅用光ファイバ11および12の零分散波長を固定した場合は、上記機構により、相対位相シフタ13を構成するFBGのブラッグ波長と半導体レーザ素子の発振波長とを調節して、零分散波長に合わせるようにすることができる。
なお、ここで、FBGは、温度調整機構としてのペルチェ素子やヒータなどの上に、銅、アルミ、セラミックなどからなるヒートシンクを介して配置し、ペルチェ素子やヒータなどに熱的に接触するように固定することで、温度調節することができる。また、サーミスタなどの温度センサをヒートシンク上に設け、温度をモニタしながら温度調節をすることで、より精密に温度調節を行うことができる。
つぎに、本参考実施の形態1に係る光増幅器100に温度調整機構14を適用した参考実施例1の光増幅器を作製して、図1に示す測定系にてその特性を測定した。なお、増幅用光ファイバ11、12は、周囲温度が25℃の室温では、零分散波長が1562.6nmであったが、温度調整機構14によって126.5℃に加熱し、零分散波長を1565.6nmに調整した。波長1550nmにおける分散スロープが0.04ps/nm2/km、波長1550nmにおける伝送損失が1.2dB/km、波長1550nmにおける非線形定数が21.4/W/kmであった。また、増幅用光ファイバ11、12の長さはそれぞれ100m、130mであった。増幅用光ファイバ11、12の長手方向の零分散波長の変動は0.5nm/100mの範囲内であった。これらの増幅用光ファイバ11、12は、ITU−T G.652に準拠する通信用の標準シングルモード光ファイバと0.1dB以下の接続損失で融着することができた。
また、光増幅体10に入力されるポンプ光のパワーは約31.76dBm、ポンプ光波長は1565.6nmであった。ポンプ光源部20における光バンドパスフィルタ24の透過波長帯域は0.8nmであった。光増幅体10に入力されるシグナル光のパワーは約−20dBmであった。相対位相シフタ13はFBGであり、ブラッグ波長1565.9nmであり、増幅用光ファイバ11、12の温度調整後の零分散波長よりも0.3nmだけ長波長であった。また、FBGの反射帯域線幅は0.65nmであり、ブラッグ波長での透過損失は−39dBであった。このとき、ポンプ光の位相は、0.35π±0.15π程度ずれていると考えられる。
図6は、作製した参考実施例1の光増幅器の利得、NFの波長依存性を示す図である。横軸は入力したシグナル光の波長を示している。なお、本明細書において、利得、NF特性は、光合分波器等の光損失等の影響を除いた値、すなわち光増幅体のネット値である。図6に示すように、作製した参考実施例1の光増幅器では、利得が20.7dBであり、1dB利得帯域がCバンドをカバーできる38nmであり、1dB利得帯域内でのNFが4.5dB以下という増幅特性が得られた。すなわち、作製した参考実施例1の光増幅器では、きわめて高い利得スペクトルの平坦性、Cバンドをカバーできる広帯域性、および20dB以上の高利得性が実現されるとともに、きわめて低いNFが得られた。また、後述する長手方向の零分散の変動が大きい増幅用光ファイバを用いた場合と比較して、利得スペクトルの平坦性と広帯域性とを実現しつつ、さらに高利得であるという増幅特性が実現されている。
図7は、作製した参考実施例1の光増幅器でポンプ光波長および増幅用光ファイバ11、12の温度を調整した場合のASEスペクトルを示す図である。なお、シグナル光は入力していない。実線は、増幅用光ファイバ11、12の温度を室温として、ポンプ光波長を1562.6nm(すなわち室温での零分散波長)に設定した場合を示している。破線は、増幅用光ファイバ11、12の温度を128.7℃として、ポンプ光波長を室温の場合よりも2.4nmだけ長い1565.0nmに設定した場合を示している。
ポンプ光を示すピークの周囲にある広帯域なスペクトルが光増幅器のASEスペクトルを示している。OPAである光増幅器ではASEスペクトルの形状がほぼ利得スペクトルの形状に対応する。なお、ASEスペクトルにおいて長波長側に向かって強度が低下する形状であるのは、測定系における光減衰器200の光減衰量(約−20dB)が長波長側に向かって大きくなる特性であることを反映している。
図7に示すように、実線と破線とではASEスペクトルがほぼ重なっている。このことは、室温において零分散波長とポンプ光波長が一致している状態から、ポンプ光波長を変更したときに、これに応じて増幅用光ファイバ11、12の温度を調整してその零分散波長をずらし、ポンプ光波長に近づけることによって、室温において零分散波長とポンプ光波長が一致している状態のASEスペクトル(あるいは利得スペクトル)と同様の形状のASEスペクトル(あるいは利得スペクトル)が得られることを示している。増幅用光ファイバ11、12の温度を調整する技術によれば、ポンプ光波長と零分散波長とを容易に±0.5nmの範囲に近づけることができる。
図8は、作製した参考実施例1の光増幅器の利得、NFの入力シグナル光強度依存性を示す図である。なお、縦軸は、入力するシグナル光の強度が−20dBmである場合の利得、NFとの差分を示している。図8に示すように、入力するシグナル光の強度が−10dBm以下では、利得もNFもほぼ一定であったが、−10dBm以上では利得の減少とNFの増加とが観測された。
図9は、作製した参考実施例1の光増幅器の構成において相対位相シフタを削除し、増幅用光ファイバ11と12とを直接融着接続した場合の利得、NFの波長依存性を示す図である。図9に示すように、相対位相シフタが無い場合は、図6に示す相対位相シフタが有る場合よりも利得の平坦性は低下したものの、NFの改善が見られた。
つぎに、比較のために、本発明者らが非特許文献2で開示した光増幅器の特性を説明する。図25は、開示した光増幅器およびその増幅特性測定系の模式的な構成図である。この光増幅器1000は、図1に示す参考実施の形態1に係る光増幅器100において、光増幅体10を光増幅体1010に置き換えた構成を有している。光増幅体1010は、増幅用光ファイバ1011、1012、1013と、増幅用光ファイバ1011、1012、1013の間に挿入された相対位相シフタ1014、1015とを備えている3段構成の光増幅体である。
増幅用光ファイバ1011、1012、1013は、零分散波長が室温で1567.0nmであった。波長1550nmにおける分散スロープが0.017ps/nm2/km、波長1550nmにおける伝送損失が0.8dB/km、波長1550nmにおける非線形定数が12/W/kmであった。また、増幅用光ファイバ1011、1012、1013の長さはそれぞれ120m、150m、200mであった。増幅用光ファイバ1011、1012、1013の長手方向の零分散波長の変動は0.5nm/100mよりも大きかった。
また、光増幅体1010に入力されるポンプ光のパワーは約32.2dBm、ポンプ光波長は1567.2nmであった。ポンプ光源部20における光バンドパスフィルタ24の透過波長帯域は0.8nmであった。光増幅体1010に入力されるシグナル光のパワーは約−20dBmであった。相対位相シフタ1014、1015はオールパス型誘電体多層膜フィルタであった。相対位相シフタ1014、1015の挿入損失は波長1550nmでそれぞれ1.0dB、1.2dBであったが、これらの挿入損失は、ポンプ光およびシグナル光の波長に対してもほぼ同様の値であった。
図26は、図25に示す光増幅器の利得、NFの波長依存性を示す図である。横軸は入力したシグナル光の波長を示している。また、「1st HNLF out」、「2nd HNLF out」、「3rd HNLF out」は、それぞれ、増幅用光ファイバ1011、1012、1013の出力側での特性を示している。
図26に示すように、光増幅器1000は、3段構成を採用することによって、実用的な利得である20dBを越えた21dBの利得を実現しているが、利得の1dB帯域は25nmであり、Cバンドをカバーするには到らなかった。
以上説明したように、本発明の参考実施の形態1によれば、利得スペクトルの平坦性と広帯域性とを実現しつつ、さらに高利得である光増幅器を実現できる。
(変形例)
図10は、本発明の参考実施の形態1の変形例に係る光増幅器100Aおよびその増幅特性測定系の模式的な構成図である。図10に示すように、本変形例に係る光増幅器100Aは、参考実施の形態1に係る光増幅器100において、光合分波器30を光合分波器30Aに置き換えたものである。
光合分波器30Aは、3ポートの光バンドパスフィルタで構成されている。この光バンドパスフィルタは、ポンプ光を通過し、ポンプ光の波長以外の光を反射する特性を有するものである。なお、この光バンドパスフィルタは、C/Lバンド光カプラに置き換えてもよい。C/Lバンド光カプラとは、ローパスフィルタもしくはハイパスフィルタを利用して、CバンドとLバンド(たとえば1565nm〜1620nm)の両バンドの光を合波する機能を持つ光カプラである。C/Lバンド光カプラを用いた場合は、ポンプ光は、光合分波器30AのLバンド用ポート側から入力される。光合分波器30Aを用いることで、20dB光カプラである光合分波器30を用いた場合よりも、シグナル光との合波時のポンプ光の光損失を低減でき、たとえば0.5dBだけ高い強度のポンプ光を光増幅体10に入力させることができる。
つぎに、本変形例に係る光増幅器100Aに温度調整機構14を適用した参考実施例2の光増幅器を作製して、図10に示す測定系にてその特性を測定した。なお、参考実施例2の光増幅器は、光合分波器30Aは、3ポートの光バンドパスフィルタで構成し、光増幅体10に入力させたポンプ光の強度が0.5dBだけ高い以外は、参考実施例1の光増幅器と同じ構成であり、同じ測定条件で測定を行った。ただし、増幅用光ファイバ11、12の温度調整をさらに精度良く行った。
図11は、作製した参考実施例2の光増幅器の利得、NFの波長依存性を示す図である。横軸は入力したシグナル光の波長を示している。図11に示すように、作製した参考実施例2の光増幅器では、利得が23dBであり、1dB利得帯域がきわめて広くCバンドを十分にカバーできる50nm(1515nm〜1565nm)であり、1dB利得帯域内でのNFが4.5dB以下という増幅特性が得られた。すなわち、作製した参考実施例2の光増幅器では、きわめて高い利得スペクトルの平坦性、Cバンドを十分にカバーできるきわめて広い広帯域性、および20dB以上の高利得性が実現されるとともに、きわめて低いNFが得られた。
ところで、作製した参考実施例2の光増幅器において、増幅用光ファイバ11、12の温度調整を行ってその零分散波長をポンプ光波長から0.1nm〜0.2nmだけ短波長側にずらしたところ、以下の特性が得られた。
図12は、作製した参考実施例2の光増幅器において、零分散波長を調整した場合の利得、NFの波長依存性を示す図である。図12に示すように、零分散波長を調整した場合に、図11の場合と比較して、利得の平坦性は低下したものの、NFはきわめて改善し、1525nm〜1560nmの広い範囲で約3dBとなった。
このように、増幅用光ファイバ11、12の零分散波長をポンプ光波長から適度に短波長側にずらすことで、利得の平坦性は低下するものの、きわめて改善されたNFを得ることを、本発明者らは発見した。なお、図12の状態の光増幅器は、利得の平坦性は低下しているが、1510nm〜1560nmのきわめて広い帯域で20dB以上の利得が実現されている。したがって、図12の状態の光増幅器の出力側に、図12の利得波長特性を反転させた透過波長特性(たとえば利得が高い波長では透過率が低い波長特性)を有し、出力後の利得波長特性を平坦にする利得平坦化光フィルタを配置すれば、きわめて広い帯域で20dB以上の利得を実現しつつ、さらにきわめて低NFの光増幅器を実現することができる。
なお、このようにきわめて低いNFが実現される理由は明らかではないが、図12において波長1520nmに発生した利得が高い領域は、ポンプ光波長が増幅用光ファイバ11、12の異常分散領域にあることによって発生した変調不安定性(MI)による利得であると考えらえる。したがって、図12の状態の光増幅器では、増幅用光ファイバ11、12の零分散波長をポンプ光波長から適度に短波長側にずらすことで、MIが適度に発生し、波長依存性の有るMIの利得によって利得の平坦性の低下が発生するものの、その低下量は適度に抑制されつつ、きわめて低NFの状態が実現されていると考えられる。
(参考実施の形態2)
図13は、本発明の参考実施の形態2に係る光増幅器の模式的な構成図である。図13に示すように、本参考実施の形態2に係るOPAである光増幅器100Bは、光増幅体10と、ポンプ光源部20Aと、光合分波器30と、光合分波器31と、光サーキュレータ51と、偏波合分波器52と、接続偏波保持光ファイバ61、62とを備えている。
ポンプ光源部20Aは、ポンプ光源21Aと、光アイソレータ22Aと、偏光子23Aと、波長板24Aとを備えている。ポンプ光源21Aは、たとえば図1に示すポンプ光源部20と同様の構成を有しており、所定のポンプ光波長のポンプ光を光アイソレータ22Aに出力する。光アイソレータ22Aは、ポンプ光を偏光子23A側に透過するとともに偏光子23A側から伝搬してきた戻り光のポンプ光源21Aへの入力を遮断する。偏光子23Aは光アイソレータ22Aを透過したポンプ光を直線偏光とする。波長板24Aは、1/2波長板または1/4波長板などであり、直線偏光となったポンプ光の偏波方向を回転させる。波長板24Aによるポンプ光の偏波方向の回転角度は波長板24Aの角度調整によって調整することができる。
光合分波器30は、ポンプ光源部20Aから入力されたポンプ光と、外部から入力されたシグナル光とを合波し、光サーキュレータ51に出力する機能を有する。光合分波器30はたとえば20dB光カプラやC/Lバンド光カプラであるが、特に限定はされない。たとえば、光合分波器30Aと同様に3ポートの光バンドパスフィルタでもよい。
光サーキュレータ51は、光合分波器30からポンプ光とシグナル光とを入力されて、これを偏波合分波器52に透過する。偏波合分波器52は、シグナル光およびポンプ光を互いに直交する偏波状態を有する偏波成分に偏波分離し、接続偏波保持光ファイバ61、62にそれぞれ出力する。
接続偏波保持光ファイバ61、62は、光増幅体10の両端に接続している。すなわち、接続偏波保持光ファイバ61は光増幅体10の増幅用光ファイバ11側に接続しており、接続偏波保持光ファイバ62は光増幅体10の増幅用光ファイバ12側に接続している。
偏波合分波器52によって偏波分離されたシグナル光およびポンプ光の角各偏波成分は、光増幅体10に、それぞれ増幅用光ファイバ11側、増幅用光ファイバ12側から入力されて、増幅用光ファイバ11、12を互いに逆向きに伝搬する。増幅用光ファイバ11、12は、伝搬中のシグナル光をパラメトリック増幅する。互いに逆向きに伝搬しつつ増幅された各偏波成分は、光増幅体10の入力した側とは逆側の増幅用光ファイバから出力し、それぞれ接続偏波保持光ファイバ61、62を伝搬する。偏波合分波器52は、接続偏波保持光ファイバ61、62を伝搬した各偏波成分が入力され、これらを偏波合成し、光サーキュレータ51に出力する。
光サーキュレータ51は、入力された、偏波合成され増幅されたシグナル光および偏波合成されたポンプ光を光合分波器31に出力する。光合分波器31はたとえば20dB光カプラやC/Lバンド光カプラであるが、特に限定はされない。たとえば、光合分波器30Aと同様に3ポートの光バンドパスフィルタでもよい。光合分波器31は、光サーキュレータ51から入力された増幅されたシグナル光とポンプ光とを分波し、それぞれ別のポートから出力する。たとえば、光合分波器31は、増幅されたシグナル光を図中直線で示されたポートから出力し、ポンプ光を図中曲線で示されたポートから出力する。
なお、ポンプ光は通常1W以上の高強度の光であるので、ポートから出力後は、公知の光処理器によって処理される。このような光処理器は、たとえば光を吸収してそのエネルギーを熱に変換し、変換した熱を放熱する機能を有するものである。
本参考実施の形態2に係る光増幅器100Bは、参考実施の形態1と同様に、長手方向の零分散波長の変動が少ない増幅用光ファイバ11、12を備える。また、光増幅器100Bは、入力されたポンプ光およびシグナル光を偏波分離し、互いに直交する偏波成分を、増幅用光ファイバ11、12を互いに逆向きに伝搬するように増幅用光ファイバ11、12に入力させ、増幅用光ファイバ11、12を互いに逆向きに伝搬して増幅された互いに直交する偏波成分を偏波合成する構成を有している。これによって、光増幅器100Bは、参考実施の形態1において得られる効果を奏するとともに、入力するシグナル光が任意の偏波状態を有していたとしても偏波依存性の少ない利得を与えることができる、いわゆる偏波無依存型の光増幅器として機能する。なお、入力するポンプ光の偏波方向は、波長板24Aの角度調整によって、光増幅器100Bの偏波依存性が低い、好ましくは最小の状態となるような偏波方向とすることが好ましい。また、光増幅体10は、中心対称性を有する構成とすることが好ましい。たとえば、増幅用光ファイバ11、12が同じ特性を有する光ファイバであれば、増幅用光ファイバ11、12は等しい長さであり、相対位相シフタ13が光増幅体10の長手方向の中央に配置されることが好ましい。
なお、上記参考実施の形態1、2またはその変形例に係る光増幅器は、増幅用光ファイバ11、12の間に1つの相対位相シフタ13が挿入された2段構成の光増幅体10を備えている。しかしながら、光増幅体は2段構成に限らず、1段構成でも3段構成以上でもよい。たとえば、光増幅体としては、図14に示すように、増幅用光ファイバ11、12、15の間に、それぞれ相対位相シフタ13、16が挿入された光増幅体10Aを用いてもよい。このような光増幅体10Aは、増幅段ST1、ST2、ST3の3段構成の光増幅体である。なお、増幅用光ファイバ15は、増幅用光ファイバ11、12と同様の構成を有するものでよく、相対位相シフタ16は相対位相シフタ13と同様の構成を有するものでよい。なお、参考実施の形態2の構成に適用する3段以上の構成の光増幅体については、2段構成の場合と同様に、増幅用光ファイバの増幅特性や長さ、相対位相シフタの位相シフト量等について、長手方向で中心対称になるように構成、配置することが好ましい。たとえば、増幅媒体が3段構成、すなわち、3つの増幅用光ファイバを用い、位相シフト量が同じ2つの相対位相シフタが各増幅用光ファイバの間に接続されてなる場合は、各増幅用光ファイバが同じ特性を有するものとすると、両側に配置される増幅用光ファイバを同じ長さとし、中央に配置される増幅用光ファイバをそれよりも長くすると良い。これにより、いずれの方向を伝搬する偏波成分についても、相対位相シフタの挿入損失に起因する利得の減少を、中央の増幅用光ファイバを長くすることで補償することができる。
また、相対位相シフタとしては、FBGを用いたものに限らず、誘電体多層膜フィルタと反射型モジュールにて構成されたオールパスフィルタ型の相対位相シフタを用いてもよい。このようなオールパスフィルタ型の相対位相シフタは、ポンプ光波長を調節することで位相シフト量を調節できる。また、特定波長の反射が無いので好ましい。
なお、相対位相シフタがモジュール化されたものである場合、そのピッグテールファイバとして使用する光ファイバとしては、使用するポンプ光波長±10nmの範囲に零分散波長がある、もしくは分散スロープが0.06ps/nm2/km以下である、またはその両方の特性を有する光ファイバが望ましい。その理由は、ピッグテールファイバの波長分散により相対位相が変動し、位相整合状態を壊すことを避けるためである。また、ピッグテールファイバを増幅用光ファイバと融着接続する場合は、ピッグテールファイバのモードフィールド径(MFD)が、増幅用光ファイバのMFDの±50%の範囲で一致していることが好ましい。その理由は、MFDを当該範囲で一致させることによって、ピッグテールファイバと増幅用光ファイバとの融着接続損失を0.5dB以下にできるからである。
ところで、OPAに波長多重(WDM)シグナル光を入力すると、増幅用光ファイバの非線形光学効果によって不要な4光波混合(FWM)光が発生し、FWM光とシグナル光とのクロストークにより、WDMシグナル光に含まれる各シグナル光が劣化し、NFが増大する。
非特許文献3では、WDMシグナル光の代わりにASE光をシグナル光として、OPAにおけるFWM光によるNF特性を調べた結果、ポンプ光の強度と増幅されたASE光との強度差が20dB以上であれば、NFの増大が抑制されると報告している。
これに対して、本発明者らが鋭意検討したところ、OPAにおいて、光増幅器に入力されるポンプ光の強度とWDMシグナル光の総強度との強度比が24dB以上である場合に、実使用上十分なWDMシグナル光の劣化量であることを見出した。
以下、WDM増幅特性実験の結果を用いて具体的に説明する。図15は、参考実施の形態1に係る光増幅器およびそのWDM増幅特性測定系の模式的な構成図である。なお、ここでは、WDMシグナル光源として、8つのシグナル光源41−1〜41−8に、それぞれ偏波コントローラ42−1〜42−8を接続した、シグナル光源41−1〜41−8から出力された互いに異なる波長(1550nm〜1560nmの範囲内で約1.2nm間隔)を有するシグナル光をAWG43にて合波し、8チャネルのWDMシグナル光を発生させ、参考実施の形態1に係る光増幅器100に入力させた。また、参考実施の形態1に係る光増幅器100として、作製した参考実施例1の光増幅器を用いた。また、ポンプ光のポンプ光波長は、8チャネルのWDMシグナル光の波長に対して5nm以上離間して設定されている。
図16は、入力させる8チャネルWDM信号光のスペクトルを示す図である。なお、各偏波コントローラ42−1〜42−8は、光増幅器における各シグナル光の利得が最大になるようにそれぞれ調整した。その他は、図6に結果を示した実験と同様の条件とした。なお、入力されるポンプ光の強度は32.2dBmとした。
図17〜図22は、増幅された8チャネルWDMシグナル光のスペクトルを示す図である。図17〜図22は、光増幅器に入力されるWDMシグナル光の1チャネル当たりの光強度が、それぞれ−11dBm/ch、−16dBm/ch、−21dBm/ch、−26dBm/ch、−41dBm/ch、−51dBm/chの場合である。なお、光減衰器200はの減衰量は−19dB(−11dBm/ch、−16dBm/chの場合)または−20dB(それ以外の場合)であったので、光増幅器から出力された実際の光強度は各図の縦軸の数値に19dBまたは20dBを加算した値である。
図17〜図22に示すように、8チャネルWDMシグナル光の強度が高いほど、発生するFWM光の強度が高く、特に−21dBm/chより高い場合にはFWM光による8チャネルWDMシグナル光の劣化が顕著であった。しかしながら、実使用で想定される−21dBm/chの場合は、8チャネルWDMシグナル光とFWM光との強度差が20dB以上あり、実用的な光増幅器として利用可能な程度のFWM光の発生量であった。なお、8チャネルWDMシグナル光の強度が−21dBm/chより低い場合は、FWM光の発生量は顕著に低下していった。
このとき、光増幅器に入力される8チャネルWDMシグナル光の総強度は、(−21+20+9)dBm=8dBmである。一方、ポンプ光強度は32.2dBmである。したがって、ポンプ光の強度と波長多重シグナル光の総強度との強度比は(32.2dBm−8dBm)=24.2dBであった。このように、光増幅器に入力されるポンプ光の強度とWDMシグナル光の総強度との強度比が24dB以上である場合に、実使用上十分なWDMシグナル光の劣化量であった。
つぎに、図23は、参考実施例1の光増幅器の8チャネルWDMシグナル光入力時の利得、NFの波長依存性を示す図である。なお、1チャネル当たりのシグナル光の強度は、−56dBm/chから−11dBm/chまで変化させている。図23に示すように、参考実施例1の光増幅器は、8チャネルWDMシグナル光入力時でも、十分な利得が得られた。なお、NFについては、8チャネルWDMシグナル光のシグナル光間の波長間隔が狭いため、ノイズフロアが実際より大きく測定されてしまったため、実際の値よりも大きいと考えられる。そこで、8チャネルWDMシグナル光にかえて、4チャネルWDMシグナル光(1550nm〜1560nmの範囲内で約2.4nm間隔)を用いて、同様なWDM増幅特性実験を行った。
図24は、参考実施例1の光増幅器の4チャネルWDMシグナル光入力時の利得、NFの波長依存性を示す図である。なお、1チャネル当たりのシグナル光の強度は、−56dBm/chから−11dBm/chまで変化させている。図24に示すように、NFについては、実使用で想定される−21dBm/chの場合に4.5dBより小さいNFが得られた。また、シグナル光の強度が−21dBm/chより大きい場合は、ノイズフロアが実際より大きく測定されてしまったため、実際の値よりも大きいと考えられる。
(実施の形態1)
図27は、本発明の実施の形態1に係る光増幅器の模式的な構成図である。図27に示すように、本実施の形態1に係るOPAである光増幅器1000は、図13に示す参考実施の形態2に係る光増幅器100Bの構成において、ポンプ光源部20Aをポンプ光源部20Bに置き換え、かつ光合分波器31に終端部1001を接続した構成を有する。
ポンプ光源部20Bは、ポンプ光源部20Aの構成において、偏光子23Aをポンプ光増幅器としての光ファイバ増幅器23に置き換えた構成を有する。なお、本実施の形態1では、光ファイバ増幅器23は入力された偏波状態を保持しながら光増幅する偏波保持型光増幅器であるとする。光ファイバ増幅器23たとえばEDFAであるが、ダブルクラッド型EDFAやダブルクラッド型EYDFA(erbium and ytterbium doped fiber amplifier) でもよい。光ファイバ増幅器23は入力されたポンプ光のパワーをたとえば7Wになるまで増幅できる。
波長板24Aは、1/2波長板であるとする。ここで、ポンプ光源21Aから光合分波器30までを接続し、ポンプ光の経路となる光ファイバは全て偏波保持光ファイバであるとする。ポンプ光源21Aから出力されたポンプ光は直線偏光状態で波長板24Aに到達するが、波長板24Aはその光軸が直線偏波の光の偏波方向を45度回転させるように設定されている。これにより、波長板24Aを出力したポンプ光のパワーはその後に接続された偏波保持光ファイバの2つの主軸である互いに直交する第1の偏波軸と第2の偏波軸(Slow軸とFast軸)に等分配される。
また、光合分波器30と光サーキュレータ51を接続する光ファイバ、光合分波器31と光サーキュレータ51を接続する光ファイバも偏波保持光ファイバであるとする。また、光合分波器30、31はいずれも光バンドパスフィルタで構成されている。
ここで、光合分波器31には、図中曲線で示されたポートに終端部1001が接続されている。図中曲線で示されたポートは、光サーキュレータ51から入力された増幅されたシグナル光とポンプ光とを分波し、ポンプ光を出力するポートである。
例えば、光合分波器31は、図中左側のポートから入力されたシグナル光を透過して図中右側の直線で示されたポートに結合させ、図中左側のポートから入力されたポンプ光は反射して図中曲線で示されたポートに結合させるような波長特性を有する誘電体多層膜フィルタを有してなる。また、該誘電体多層膜フィルタは、さらにパラメトリック増幅によって生じた波長変換光を反射して図中曲線で示されたポートに結合させるような波長特性を有していても良い。
光増幅器1000は、ポンプ光源21Aからのポンプ光の増幅用光ファイバ11,12への入力経路と、残留ポンプ光の経路とを異ならせるように構成されている。すなわち、残留ポンプ光は、光合分波器31図中曲線で示されたポートから出力する経路で伝搬する。
終端部1001は、残留ポンプ光のエネルギーを熱エネルギーに変換して処理する。これにより、光増幅器1000では、残留ポンプ光がポンプ光源部20Bの構成要素である光ファイバ増幅器23に戻って光ファイバ増幅器23にダメージを与えることを抑制または防止できる。
ここで、図28は、偏波保持型の光ファイバ増幅器23の増幅特性の一例を示す図である。図28は、光ファイバ増幅器23により励起光のパワーを7Wにまで増幅した場合のスペクトルを示している。図28では、ポンプ光のスペクトルのフロアが光増幅前より拡大するという問題が発生している。このフロアの拡大は、シグナル光のスペクトル線幅を拡大してしまうなどの悪影響をシグナル光に与えるものである。このフロアの拡大は、光ファイバ増幅器23で発生する非線形現象によるものと考えられる。
(実施の形態2)
図29は、上記問題を解決できる本発明の実施の形態2に係る光増幅器の模式的な構成図である。図29に示すように、本実施の形態2に係るOPAである光増幅器1000Aは、実施の形態1に係る光増幅器1000の構成において、ポンプ光源部20Bをポンプ光源部20Cに置き換えた構成を有する。
ポンプ光源部20Cは、ポンプ光源部20Bの構成において、偏波保持型の光ファイバ増幅器23を、偏波保持分離器27と、2つの偏波保持型の光ファイバ増幅器23と、偏波合成器28とが接続された構成に置き換えた構成を有する。
偏波保持分離器27は、ポンプ光源21Aから位相変調器22を介して入力されたポンプ光を、偏波を保持したまま光パワーを、たとえば,等分配する。2つの光ファイバ増幅器23は、互いに直交する第1、第2の偏波軸(Slow軸とFast軸)を備え、分離されたそれぞれの偏波保持されたまま伝搬したポンプ光を光増幅する。偏波合成器28は、増幅された偏波成分を合成して光合分波器30に出力する。ポンプ光の偏波成分のそれぞれは、増幅用光ファイバ11、12の互いに直交する第1、第2の偏波軸(Slow軸とFast軸)のいずれかに一致するように増幅用光ファイバ11、12に入力される。このとき、光合分波器30に入力するまでにSlow軸を伝搬してきたポンプ光源が増幅用光ファイバ11、12のSlow軸を伝搬するようにしてもよいし、光合分波器30に入力するまでにSlow軸を伝搬してきたポンプ光源が増幅用光ファイバ11、12のFast軸を伝搬するようにしてもよい。各偏波成分のポンプ光は、増幅用光ファイバ11、12を互いに逆向きに伝搬する。
この光増幅器1000Aでは、ポンプ光を2つの偏波成分に分離し、2つの光ファイバ増幅器23により、分離されたそれぞれの偏波成分のポンプ光を光増幅するようにしているので、1つの光ファイバ増幅器23あたりで増幅するポンプ光のパワーは、光増幅器1000の1つの光ファイバ増幅器23で増幅するポンプ光のパワーより低くてよく、たとえば1つあたり2W程度まででもよい。これにより、1つの光ファイバ増幅器23あたりのポンプ光のパワーが低くなるので、光ファイバ増幅器23での非線形現象の発生が抑制され、フロアの拡大も抑制される。
ところで、光合分波器30と光サーキュレータ51を接続する光ファイバの長さaと、光合分波器31と光サーキュレータ51を接続する光ファイバの長さbとは、等しいことが好ましい。このとき、光合分波器30と光サーキュレータ51を接続する光ファイバのSlow軸を伝搬した信号光が、光サーキュレータ51から光増幅体10を経由して出力された後に、光合分波器31と光サーキュレータ51を接続する光ファイバのFast軸を伝搬するように構成する。さらに、光合分波器30と光サーキュレータ51を接続する光ファイバのFast軸を伝搬した信号光が、光サーキュレータ51から光増幅体10を経由して出力された後に、光合分波器31と光サーキュレータ51を接続する光ファイバのSlow軸を伝搬するように構成する。これにより、Fast軸とSlow軸との間の群速度差により生じる位相差を補償することができる。なお、長さaとbは、必ずしも同じでなくてもよく、例えばシグナル光の変調速度が25Gbpsであれば、30mm程度の差があっても、上記位相差の補償効果を得られる。
(実施の形態3)
図30は、本発明の実施の形態3に係る光増幅器の模式的な構成図である。この光増幅器1000Bは、特許文献4の図6に示した光ファイバ増幅器の構成において、ポンプ光源部20Cと、終端部1002と、光サーキュレータ1003を追加した構成を有する。なお、光ファイバ増幅部1119は、増幅媒体である光ファイバに相対位相シフタが挿入されたものである。任意偏波を持つシグナル光は、光ファイバ1110を介して、光サーキュレータ1111から、光ファイバ1113、1114を通過しC/Lカプラである光カプラ1105のCバンドポートから入力される。一方で、ポンプ光は、ポンプ光源部20Cから入力され、C/Lカプラである光カプラ1105のLバンドポートから入力される。
さて、ポンプ光とシグナル光は合波された後、光ファイバ1118を伝播し、偏波分離器1108において、偏波分離される。合波された光の片方偏波は透過しTポートから、もう片方は反射しR-ポートから光ファイバ増幅部1119の偏波軸の一つに入力される。ここで、TポートもしくはT-ポートのどちらかは光ファイバ増幅部1119と偏波軸を90度ずらした結合をしている。これにより、合波された光の各偏波成分は、光ファイバ増幅部1119の2つの偏波軸のうち片方の偏波軸を、伝播方向が互いに逆であるように伝播する。そして、光ファイバ増幅部1119においてシグナル光は、光パラメトリック増幅される。光ファイバ増幅部1119を伝播した光は、偏波分離器1108に再び入力し、光ファイバ1118を伝播し、光カプラ1105に再び入力する。ここで、ポンプ光と、光ファイバ増幅部1119で発生したアイドラ光は、Lバンドポートに出力され、シグナル光はCバンドポートから出力される。シグナル光は光ファイバ1114、1113を順次伝播後、光サーキュレータ1111を通過し、光ファイバ1112から出力される。
ここで、光ファイバ1114は偏波保持型であるが、非偏波保持型であっても良い。また、光カプラ1105として、C/Lカプラの代わりに偏波保持カプラやWDMカプラやAWG(Arrayed Waveguide Grating)を用いても、同様の効果が得られる。この場合は、光サーキュレータ1111の出力ポートに、増幅した光のみを透過させる光フィルタを挿入する必要がある。
光増幅器1000Bでは、光サーキュレータ1003はポンプ光源部20Cと光カプラ1105との間に設けられている。これにより、ポンプ光源部20Cから第1ポートに入力されたポンプ光は、第2ポートから光カプラ1105を介して光ファイバ増幅部1119の増幅用光ファイバに出力される。一方、残留ポンプ光は第2ポートから入力されて第3ポートから出力され、各第3ポートに接続された終端部1002に出力される。
このように、光増幅器1000Bも、ポンプ光源21Cからのポンプ光の増幅用光ファイバへの入力経路と、ポンプ光の残留ポンプ光の経路とを異ならせるように構成されている。
終端部1002は、残留ポンプ光のエネルギーを熱エネルギーに変換して処理する。これにより、光増幅器1000Bでは、残留ポンプ光がポンプ光源21Aに戻ってポンプ光源にダメージを与えることを抑制または防止できる。
なお、光サーキュレータ1003およびこれに接続される終端部1002を設ける位置は、各光ファイバ増幅器23と偏波合成器28との間でもよい。
(実施の形態4)
図31は、実施の形態4に係る光増幅器の模式的な構成図である。図31に示すように、本実施の形態4に係るOPAである光増幅器1000Cは、実施の形態2に係る光増幅器1000Aの構成において、ポンプ光源部20Cをポンプ光源部20Dに置き換え、光合分波器30、31を削除し、光増幅体10を、接続偏波保持光ファイバ61、62の途中にたとえばC/Lカプラなどの波長分割多重(WDM)カプラ1004,1005を設け、かつ相対位相シフタ13を削除した光増幅体10Bに置き換えた構成を有する。ポンプ光源部20Dは、ポンプ光源部20Cから偏波合成器28を削除した構成を有し、2つの光ファイバ増幅器23、23から出力されるポンプ光はWDMカプラ1004,1005により光増幅体10Bに出力される。具体的には、2つの光ファイバ増幅器23、23により増幅されたポンプ光源の偏波成分のそれぞれは、WDMカプラ1004,1005によりにより、増幅用光ファイバ11,12の偏波軸のそれぞれに一致するように入力される。
光増幅器1000Cでは、偏波保持分離器27により偏波保持したままでありかつパワーが、たとえば、等分配された2つのポンプ光を、同じ偏波軸(たとえばSlow軸)を通過させて、増幅用光ファイバ11,12に入力させることができる。これにより、ポンプ光の2つの偏波成分間での群速度差の発生が抑制または防止される。また、ポンプ光が伝搬する部材の数が少ないので、ポンプ光の損失を少なくできる。
(実施の形態5)
図32は、実施の形態5に係る光増幅器の模式的な構成図である。図32に示すように、本実施の形態5に係るOPAである光増幅器1000Dは、光増幅器1000Cの光ファイバ増幅器23,23とWDMカプラ1004,1005との間にそれぞれ光サーキュレータ1003およびこれに接続される終端部1002を設けた構成である。なお、光増幅体10Bは光増幅体10に置き換えられている。これにより、ポンプ光の2つの偏波成分間での群速度差の発生が抑制または防止されるとともに、残留ポンプ光がポンプ光源部20Dの光ファイバ増幅器23に戻って光ファイバ増幅器23ダメージを与えることを抑制または防止できる。
(実施の形態6)
図33は、本発明の実施の形態6に係る光増幅器の模式的な構成図である。図33に示すように、本実施の形態6に係るOPAである光増幅器1000Eは、実施の形態2に係る光増幅器1000Aの構成において、光合分波器31を光合分波器31Aに置き換え、光増幅体10を光増幅体10Bに置き換えた構成を有する。
ここで、光合分波器31Aは、多層膜フィルタを用いたものであり、終端部1001に接続されたポートは、マルチモード光ファイバで構成されている。これにより、後述する終端部1001の構成において、終端部1001が備えるマルチモード光ファイバへの残留ポンプ光の結合損失が低いので、光合分波器31Aの結合損失による発熱や光軸ずれを防ぐことができる。
(実施の形態7)
図34は、実施の形態5に係る光増幅器の模式的な構成図である。図34に示すように、本実施の形態7に係るOPAである光増幅器1000Fは、光増幅器1000Dの2つの光サーキュレータ1003およびこれに接続される終端部1002を2つの光アイソレータ1006に置き換え構成である。ここで、光アイソレータ1006は、光ファイバ増幅器23から入力された増幅されたポンプ光を出力するとともに、該出力側から残留ポンプ光が入力されると、該残留ポンプ光を外部に出力するように構成されている。さらに、終端部は、光アイソレータ1006に、外部に出力された残留ポンプ光が入力されるように設けられている。すなわち、光アイソレータ1006は、その内部が、ポンプ光源21Aからのポンプ光の増幅用光ファイバ11,12への入力経路と、残留ポンプ光の経路とを異ならせるように構成されている。これにより、残留ポンプ光がポンプ光源部20Dの光ファイバ増幅器23に戻って光ファイバ増幅器23にダメージを与えることを抑制または防止できる。
(終端部の構成例)
図35は、終端部1001の一例の模式的な構成図である。終端部1001は、例えば光合分波器31、30A、または光サーキュレータ1003に接続される。図中、残留ポンプ光が伝搬するファイバおよびその方向のみ示し、ポンプ光、シグナル光が伝搬するファイバおよび伝搬する方向については、他の図で示しているので記載を割愛する。
終端部1001は、終端部1001に残留ポンプ光を入力させる光ファイバに接続されるマルチモード光ファイバ1001aと、マルチモード光ファイバ1001aに接続され、光ファイバから被覆が除去された被覆除去光ファイバ1001bと、被覆除去光ファイバ1001bの外周を覆い、被覆除去光ファイバ1001bのコアの屈折率以上の屈折率を有し、かつ残留ポンプ光を透過する特性を有する光透過材1001cと、光透過材1001cに接触するように設けられたヒートシンク1001dと、を備える。
終端部1001に残留ポンプ光を入力させる光ファイバは、シングルモード光ファイバでも良いし、マルチモード光ファイバでもよい。被覆除去光ファイバ1001bは、マルチモード光ファイバ1001aの先端側の被覆の一部を除去して構成してもよい。光透過材1001cは例えば光学樹脂である。ヒートシンク1001dは例えばアルミニウムなどの金属である。
終端部1001に入力された残留励起光はマルチモード光ファイバ1001aを伝搬し、被覆除去光ファイバ1001bにおいて漏洩して光透過材1001cを伝搬し、ヒートシンク1001dに到達する。残留ポンプ光はヒートシンク1001dにおいて熱エネルギーに変換され、放熱される。
ここで、終端部1001に残留ポンプ光を入力させる光ファイバとマルチモード光ファイバ1001aとを軸ずれ融着接続すると、マルチモード光ファイバ1001aにおいてより高次の伝搬モードが励振されるので、被覆除去光ファイバ1001bにおいて効率的な漏洩を行うことができる。
図36は、終端部の一例の模式的な構成図である。終端部1001Aは、例えば光合分波器31、30A、または光サーキュレータ1003に接続される。
終端部1001Aは、終端部1001Aに残留ポンプ光を入力させる光ファイバに接続される、曲げ部を有する曲げ光ファイバ1001Aaと、曲げ光ファイバ1001Aaの少なくとも曲げ部の外周を覆い、曲げ光ファイバ1001Aaの外周領域の屈折率よりも高い屈折率を有し、かつ残留ポンプ光を透過する特性を有する光透過材1001Abと、光透過材1001Abに接触するように設けられたヒートシンク1001Acと、ヒートシンク1001Acを載置する基台1001Adとを備える。
曲げ光ファイバ1001Aaにおいて、曲げ部は、残留ポンプ光に対して曲げ損失が生じるように曲げられた部分であり、そこを伝搬する残留ポンプ光を漏洩する。曲げ光ファイバ1001Aaは、例えば直径5cm以下の曲げ径で曲げられた部分を有するシングルモード光ファイバである。漏洩した残留励起光は光透過材1001Abを伝搬し、ヒートシンク1001Acに到達する。残留ポンプ光はヒートシンク1001dにおいて熱エネルギーに変換され、放熱される。
なお、上記のように、光透過材1001Abは、曲げ光ファイバ1001Aaの外周領域の屈折率よりも高い屈折率を有している。たとえば、曲げ光ファイバ1001Aaの外周領域が曲げ光ファイバ1001Aaの被覆からなる場合は、透過材1001Abは、曲げ光ファイバ1001Aaの被覆の屈折率よりも高い屈折率を有しているものである。一方、曲げ光ファイバ1001Aaの被覆が除去されており、その外周領域が曲げ光ファイバ1001Aaのクラッドからなる場合は、透過材1001Abは、曲げ光ファイバ1001Aaのクラッドの屈折率よりも高い屈折率を有しているものである。
図35、36は、終端部1001の構成例であるが、終端部1002についても、図35、36と同様の構成を適用できる。
図37は、終端部としての光アイソレータ1006の一例の模式的な構成図である。光アイソレータ1006は、入力部1006aと、コリメータレンズ1006bと、偏光子1006cと、ファラデー回転子1006dと、磁石1006eと、水晶施光子1006fと、偏光子1006gと、集光レンズ1006hと、出力部1006iと、ミラー1006j、1006kと、終端部1006l、1006mとを備えている。
ここで、磁石1006eに囲まれたファラデー回転子1006dと両側の偏光子1006c、100gとからなる光非相反部の作用により、ポンプ光源21A側から入力部1006aに入力されたポンプ光は、実線で示す光路で出力部1006iから出力するが、出力部1006iに入力された戻り光(残留ポンプ光)は、破線で示すようにポンプ光とは異なる光路を伝搬したのち、外部の終端部1006l、1006mに出力される。終端部1006l、1006mは、例えばアルミニウムからなり、光アイソレータ1006の本体とは、たとえば熱的に分離されることで、光アイソレータ1006の本体への熱伝達を防止するように構成されている。残留ポンプ光は終端部1006l、1006mにおいて熱エネルギーに変換され、放熱される。
図37は、光アイソレータ1006の構成例であるが、終端部1002についても、図37と同様の構成を適用できる。
なお、特許文献1、2と同様に、上記実施の形態に係る光増幅器を、EDFAの前段やRaman効果を利用した光増幅システムの後段に設置して、光増幅システムを構成してもよい。
また、特許文献1、2と同様に、上記実施の形態に係る光増幅器を利用した、光通信システムを構築することも可能である。
図38は、実施の形態8に係る光通信システムの模式的な構成図である。光通信システム10000は、光送信器10001と、光受信器10002と、光増幅器1000Eと、バンドパスフィルタ10003とを備えている。光増幅器1000Eは、光送信器10001と光受信器10002とを接続する光伝送路に挿入されており、バンドパスフィルタ10003は、光増幅器1000Eの光受信器10002側に設けられる。
光送信器10001は、波長が互いに異なる光信号が多重されたWDM光信号を出力する。光増幅器1000Eは、WDM光信号をパラメトリック増幅して出力する。光受信器10002は、パラメトリック増幅されたWDM光信号を受信する。バンドパスフィルタ10003は、光増幅器1000EがWDM光信号をパラメトリック増幅したときに発生する波長変換光(丸数字1で示す領域)を除去するようにその光透過特性が設定されている。これによりパラメトリック増幅されたWDM光信号への波長変換光の混入を抑制または防止することができる。なお、ポンプ光(丸数字2で示す領域)は、光増幅器1000Eに備えられた光合分波器31Aにより除去するように光合分波器31Aの光透過特性が設定されている。
なお、光合分波器31Aにより、ポンプ光と波長変換光との両方(丸数字3で示す領域)を除去するように光合分波器31Aの透過波長特性を設定すれば、バンドパスフィルタ10003は削除してもよい。
また、上記構成において、光合分波器31A(およびバンドパスフィルタ10003)によりポンプ光とシグナル光波長帯を遮断し、波長変換光のみ取り出すようにすることで、波長変換器として動作させることもできる。
なお、光通信システム10000では、光増幅器として光増幅器1000Eを備えているが、光増幅器1000Eに代えて上記各実施の形態に係る光増幅器のいずれを備えるようにしてもよい。
また、特許文献1、2と同様に、上記実施の形態に係る光増幅器は、PSA(phase sensitive amplifier:位相感応型光増幅器) としても使用できる。
なお、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。