JP6603105B2 - 放送通信システム、放送通信装置及び放送通信方法 - Google Patents
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Description
FMラジオ放送に用いられる音声デジタルSTL(Studio to Transmitter Link)/TTL(Transmitter to Transmitter Link)装置は、音声信号のデジタル変調/復調及び送受信を行うものであり、放送所において、放送本局からのデジタル変調された音声信号を受信復調して、FM放送波に変調して、放送波を出力する放送機に出力するものである。
また、中継放送所として動作する場合は、上述した動作に加えて、復号された音声信号を再びデジタル変調して、別の放送所に送信する中継局としても動作するものである。
そこで、従来のFM同期放送では、放送本局や複数の中継局において、それぞれ遅延時間を調整して、放送機から同一のタイミングで一斉に放送波を出力するようにしている。
従来の放送通信システムの概略構成について図12を用いて説明する。図12は、従来の放送通信システムの概略構成例を示す説明図である。
図12に示すように、従来の放送通信システムは、放送本局と、中継局1と、中継局2とを備えた多段中継のシステムである。
尚、放送本局の構成を単に「送信装置」と称することがある。また、放送本局にも、中継局と同様の受信装置及び放送波を出力するFM送信装置が設けられている場合があるが、ここでは図示を省略する。
中継局1の構成について説明する。
中継局1は、STL受信装置(STL RX)121と、データ分配部122と、TTL送信装置(TTL TX)123と、遅延調整装置124と、FM送信機(FM TX)125とを備えている。
尚、中継局(中継局1,2)の構成を単に「受信装置」と称することがある。
データ分配部122は、STL受信装置121で受信した信号を、次段の中継局2に伝送する高周波信号と、元の音声信号であるベースバンド信号とに分配する。
TTL送信装置(TTL TX)123は、分配された高周波信号を再度変調してマイクロ波として中継局2に送信する。
FM送信装置125は、入力されたベースバンド信号を変調して、FM放送信号として発放する。
また、ベースバンド信号は、遅延調整装置124で固定遅延量D1だけ遅延されて出力され、FM送信装置125からFM放送信号として出力される。
中継局2は、STL受信装置131と、遅延調整装置132と、FM送信装置133とを備えている。中継局2の遅延調整装置132には、固定遅延量D2が記憶されている。
そして、従来の放送通信システムでは、FM放送波を出力する複数の中継局の伝搬路遅延量をオシロスコープ等の測定器を用いて予め測定し、測定結果に基づいて、最も伝送遅延の大きい中継局でも同じタイミングで出力できるように、各中継局の音声信号の遅延時間を決定して、各遅延調整装置に設定するようにしていた。
また、放送本局のFM送信機には、マイクロ波の出力から各中継局でFM放送波が出力されるタイミングまでの時間が遅延調整装置に設定されている。
つまり、従来の放送通信システムでは、放送本局及び各中継局の遅延時間は固定値となっていた。
また、光ケーブルを用いたRF伝送でも季節や温度変化によるケーブル長の変化等に起因する遅延時間の変動が生じる場合がある。
このような場合には、伝搬路遅延が予め測定した遅延時間と異なるため、各中継局において音声信号の出力タイミングがずれてしまい、同期放送ができなくなるおそれがある。
尚、放送通信システムの従来技術としては、特開2006−14140号公報「遅延設定用データ送信装置、TS−STL/TTL受信放送所地上デジタル放送波遅延時間測定調整装置およびIF−STL/TTL受信放送所地上デジタル放送波遅延時間測定調整装置」(日本放送協会、特許文献1)、特開2006−5615号公報「単一周波数網地上ディジタル放送システム、単一周波数網の同期方式、及び送信装置」(営電株式会社、特許文献2)、特開2004−320348号公報「放送信号の送信時刻測定装置及びその測定方法、この送信時刻測定装置を用いた送信装置及び中継装置、及び遅延時間測定装置」(株式会社東芝、特許文献3)、特開2003−32207号公報「地上波ディジタル放送のSFNシステム及びその伝送遅延制御方法」(日本電気株式会社、特許文献4)がある。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る放送通信システム及び放送通信方法は、放送本局の送信装置が、GPS信号から得られる例えば1秒に1回のパルス信号(1PPS(Pulse Per Second)信号)に同期する時間情報を、AES/EBU音声信号のユーザビット領域に多重して送信し、中継局の受信装置が、GPS信号から得られる1PPS信号と受信信号から取り出した1PPSの時間情報とを比較して伝送遅延時間を求め、伝送遅延時間に基づいて、予め設定されている基準遅延時間までの時間をタイミング調整時間として算出して、受信信号から取り出した音声信号を当該タイミング調整時間だけ遅延させて変調し、放送波として出力するものであり、フェージングや季節変化によって伝送遅延時間が変動した場合でも、それに応じて適切なタイミング調整時間を算出することができ、複数の中継局から同一タイミングで放送波を出力して、最良な単一周波数FM同期放送を実現することができるものである。
本発明の第1の実施の形態に係る放送通信システム(第1のシステム)について図1を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る放送通信システムの概略構成図である。
図1に示すように、第1のシステムは、放送本局と、中継局(1)と、中継局(2)とを備えている。
第1のシステムでは、放送本局には送信装置10が設けられ、中継局(1)には受信装置20とFM送信装置200が設けられ、中継局(2)には受信装置30とFM送信装置300が設けられている。
また、送信装置10、受信装置20,30には、それぞれGPS受信部が設けられており、同一の基準タイミングを受信するものである。
時間情報は、後述するように、GPS信号から生成した1PPS信号に同期した情報である。
第1のシステムでは、最も遠方にある中継局(2)の伝送遅延時間を考慮して発報のタイミングを設定しており、送信装置1から出力される音声信号から発報のタイミングまでの時間を、遅延基準時間として受信装置20,30に記憶しておく。
ここでは、遅延基準時間を2000μsとしている。
FM送信装置200は、音声信号を変調してFM放送信号として出力する。
FM送信装置300は、音声信号を変調してFM放送信号として出力する。
第1のシステムにおける遅延時間の調整について説明する。
受信装置20では、送信装置の時間情報(S1)と、自己が生成した1PPS信号のタイミング(S2)に基づいて伝送遅延時間(S2−S1、例えば500μs)を算出する。
そして、予め設定されている遅延基準時間(2000μs)から伝送遅延時間を差し引いて、タイミング調整時間を算出する。
ここでは、2000−500=1500μs であり、受信装置20では、音声信号を1500μsだけ遅延させてFM送信装置200に出力する。
つまり、受信装置30では、音声信号を1000μsだけ遅延させてFM送信装置300に出力する。
次に、第1のシステムで用いられるAES/EBUデジタルオーディオデータの構造について図2を用いて説明する。図2は、AES/EBUデジタルオーディオデータの構造を示す説明図である。AES/EBUデータは、請求項における放送通信データに相当している。
また、1オーディオフレームは、2つの32ビットオーディオサブフレームで構成されており、サブフレームA、サブフレームBと呼ばれる。ステレオ信号ならばLチャンネル、Rチャンネルの音声データがそれぞれ格納されている。
次に、AES/EBUデジタルオーディオサブフレーム構造について図3を用いて説明する。図3は、AES/EBUデジタルオーディオサブフレームの構造を示す説明図である。
サブフレームは、プリアンブル、補助データ、オーディオデータワード、有効ビット、ユーザビット、チャネルステータスビット、パリティビットの7つの領域から構成されている。
プリアンブル(同期ワード)は、新しいフレームのスタートを示すデータであり、4ビットで構成される。このプリアンブルが、それぞれオーディオブロックのスタート、オーディオブロックのスタート以外のサブフレームAのスタート、サブフレームBのスタートのフラグとなるビットシーケンスである。
オーディオデータワードは、本線のオーディオ信号が格納されているデータであり、4ビットの補助データを使用することで、最大24ビットまで割当てることができる。
"0"にセットすることで、オーディオデータワードがD/A変換可能な有効データであることを表し、"1"にセットすることで、受信側はオーディオ信号をミュートにすることができる。
ユーザビットのデータは、受信側の装置で8ビット(1バイト)×24列のメモリアレイに送られる。このメモリアレイでは、サブフレーム毎に、オーディオブロックのスタートからフレーム番号順に192のビットを格納する。
パリティビット(1ビット)は、偶数パリティを表示し、奇数個の伝送誤りを検知するためのデータである。
次に、放送本局に設けられた送信装置10の構成について図4を用いて説明する。図4は、送信装置10の構成ブロック図である。
図4に示すように、送信装置10は、GPS受信部と、基準信号発生部11と、AES/EBUデータ変換部12と、STL送信装置13とを備えている。
GPS受信部は、GPS信号を受信する。
基準信号発生部11は、GPS信号に同期した基準パルス(1PPS信号)を発生する。
具体的には、AES/EBUデータ変換部12は、1PPS信号をトリガとして、1PPS信号を受信したタイミングで、当該オーディオフレームのAES/EBU信号のユーザビット領域のビットを"1"に変換する。
そして、第1のシステムでは、これを受信側の遅延量調整のための遅延差検出として利用する。
STL送信装置13は、ユーザビットが変換されたフレームを含むAES/EBU信号を、多重、変調して、マイクロ回線を通して中継局(1)へ送信する。
次に、受信装置の構成について図5を用いて説明する。図5は、受信装置の構成を示す構成ブロック図である。
尚、ここでは、別の中継局への中継を行わない受信装置の構成を示しており、図1に示した中継局(2)の構成に相当している。ここでは、中継局(2)として説明するが、中継局(1)も図5とほぼ同等の構成を備えている。
尚、中継局(1)では、送信装置10からの信号を受信するため、TTL受信装置31の代わりにSTL受信装置を備えている。
ABS/EBUデータ復元部32は、ABS/EBUデータのユーザビットをメモリアレイに格納して、時間情報を解析すると共に、音声信号を後述する遅延調整装置34に出力する。
受信装置のABS/EBUデータ復元部32は、メモリアレイをスキャンして、ユーザビットが"1"となったフラグをトリガとしてパルスを発生し、遅延調整装置34に出力する。
ABS/EBUデータ復元部32から出力されるパルス信号は、送信装置10で生成した1PPS信号に同期した信号であるが、伝送によって遅延が生じた1PPS信号となっている。
ここでは、ABS/EBUデータ復元部32からの1PPS信号のタイミングをS2とする。ABS/EBUデータ復元部32からの1PPS信号は、請求項に記載した受信パルス信号に相当している。
基準信号発生部33は、GPS信号に同期した基準パルス信号(1PPS信号)を発生する。ここで、受信側で生成した1PPS信号のタイミングをS1とする。
遅延調整装置34は、音声信号をFM放送機に出力するタイミングを調整するものであり、比較部341と、遅延発生部342とを備えている。
尚、後述するように、送信装置10からの時間情報は、途中で中継されてもそのまま保存されるので、末端の受信装置では、送信装置10から中継局を経て受信装置で受信されるまでの伝送遅延時間を算出可能となる。
例えば、受信装置のABS/EBUデータ復元部32において受信パルス信号をデジタル的な信号として生成した場合には、基準信号発生部33におけるGPS信号に同期した基準パルス信号をデジタル変換してデジタル的な信号として生成すれば、デジタルデータとしての比較となる。つまり、各パルス信号はそれぞれの信号同士を比較できるためのものであればよい。
これにより、受信装置では、マイクロ回線で受信した信号をタイミング遅延時間だけ遅延させてFM放送波として出力でき、全ての受信装置で同一タイミングで放送波を発放するものである。
受信装置では、TTL受信装置31でマイクロ回線から受信された信号は、AES/EBUデータ復元部32で送信装置で書き込まれた時間情報が抽出され、それに基づいて生成された1PPS信号が遅延調整装置34の比較部341に入力される。
そして、遅延発生部342において、遅延基準時間−伝送遅延時間がタイミング調整時間として算出され、音声信号が当該タイミング調整時間だけ遅延されてFM送信機35に出力されて、放送波として出力される。
このようにして受信装置の動作が行われる。
ここで、伝送遅延時間の算出について図6を用いて説明する。図6は、伝送遅延時間の算出を示す模式説明図である。
図6に示すように、受信装置の基準信号発生部33で生成した1PPS信号と、AES/EBUデータ復元部32からの1PPS信号(受信パルス信号)とを比較すると、タイミングS2は、伝搬路遅延によってS1に比べて遅れている。
比較部341は、基準信号発生部33からの1PPS信号を受信すると、S1のタイミングを保持し、AES/EBUデータ復元部32からの1PPS信号を受信すると、S2のタイミングを保持して、伝送遅延時間をS2−S1として算出する。
伝送遅延時間の算出は、いずれの方法で行ってもよい。
次に、多段中継を行う場合の受信装置の構成について図7を用いて説明する。図7は、多段中継を行う場合の受信装置の構成を示す構成ブロック図であり、図1に示した中継局(1)の構成を示している。
図7に示すように、中継局(1)の受信装置は、図5に示した中継局(2)の受信装置と同等の受信動作を行う構成として、STL受信装置21と、AES/EBUデータ復元部22と、GPS受信部と、基準信号発生部23と、遅延調整装置24と、FM送信装置25とを備え、更に、後段の中継局への中継動作を行う構成として、データ分配部26及びTTL送信装置27を備えている。
図5と同様の構成部分については説明を省略する。
尚、多段中継を行う受信装置においても、図5に示した受信装置と同様にタイミング調整時間を算出して、放送波の出力タイミングを調整するものである。
データ分配部26は、STL受信装置21で受信した信号を2つに分配し、一方はAES/EBUデータ復元部22に出力し、他方はTTL送信装置27に出力する。
データ分配部26においては、音声信号と共に、ユーザビットも分配伝送される。
つまり、送信装置10からの時間情報はそのまま保存されて、後段の中継局に送信されるようになっている。
尚、中継局(1)の受信装置は、送信本局の送信装置10のように、自らが生成した1PPS信号のタイミングを示す時間情報を埋め込むことは行わないものである。
そして、後段の中継局においても、図5で説明したように、遅延調整装置で、自己が生成した基準信号と、AES/EBUデータ復元部で解析された時間情報とを比較して、タイミング調整時間を算出することにより、適切な遅延時間だけ音声信号を遅延させて放送波を出力できるものである。
このように、第1のシステムでは、複数段に亘って中継する構成としてもFM同期放送を実現することができるものである。
放送局によっては、放送の信頼性を向上させるために、マイクロ回線だけでなく、光回線を備えて二重系とし、光回線でもAES/EBUデータを伝送する場合もある。
このような場合、例えば、通常はマイクロ回線からの信号を用いて放送を行うが、何らかの障害が発生して、マイクロ波信号を正常に受信できなかった場合に、光回線で受信した信号を用いて放送を実現するものである。
図8に示すように、光回線を用いた受信装置は、図5に示したマイクロ回線を用いた受信装置の構成に加えて、光信号受信部46と、AES/EBU切替器47とを備えている。
尚、音声信号の出力タイミングを調整するタイミング調整時間の算出方法は、図5に示した受信装置と同様である。
光信号受信部46は、光回線を介して受信した光信号を電気信号に変換して、復調する。
AES/EBU切替器47は、STL受信装置41からの受信信号を監視して、同期信号を正常に受信した場合には、STL受信装置41からのAES/EBU信号を出力し、正常に受信しなかった場合には、光信号受信部46からの信号に切り替えて、光回線経由で受信したAES/EBU信号を出力する。
そして、光回線を用いた受信装置においても、光回線経由で受信したAES/EBU信号の時間情報に基づいて、遅延調整装置44でタイミング調整時間を精度よく算出して、音声信号を適切に遅延させてFM送信装置に出力し、FM同期放送を実現できるものである。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る放送通信システム(第2のシステム)について説明する。
第2のシステムは、送信装置において、送信データに時刻情報を埋め込む処理が為された時刻と、各中継局に設けられた受信装置での変調開始時刻とを時間情報として音声データに多重して送信し、各中継局の受信装置で音声信号の変調開始のタイミングを調整するものである。
第2のシステムにおける送信装置(第2の送信装置)の特徴部分について図9を用いて説明する。図9は、本発明の第2の実施の形態に係る放送通信システムの送信装置AES/EBUデータ変換部の構成ブロック図である。
図9に示すように、第2の送信装置は、GPS受信部と、基準信号発生部51と、AES/EBUデータ変換部52とを備えている。尚、図9では、信号を伝送するSTL送信装置や光送信装置等の伝送手段は省略している。
GPS受信部は、GPS信号を受信する。
基準信号発生部51は、受信したGPS信号に同期した基準信号として1PPS信号を生成する(3A)。
AES/EBU変換部53は、入力された音声信号(3A)を図2,3に示したAES/EBUオーディオデータ(3B)に変換する。
時刻情報付加部54は、AES/EBU信号(3B)に、後述する同期時刻印と、変調開始時刻印とを多重して(3F)伝送手段に出力する。
同期時刻印は、オーディオブロック毎にAES/EBUデータ変換部52で時刻情報が書き込まれた時刻を示す情報であり、送信時刻とみなすことができる。
同期時刻印発生部55は、基準信号発生部51からの1PPS信号(3C)の立ち上がりからの経過時間をカウントして、同期時刻印(3D)を生成し、定期的に(常時)時刻情報付加部54と変調開始時刻印発生部56に出力する。
具体的には、変調開始時刻印発生部56は、同期時刻印発生部55からの同期時刻印に、遅延時間設定情報(3E)に基づく遅延時間を加算して変調開始時刻とし、当該情報を変調開始時刻印(3G)として時刻情報付加部54に出力する。
これにより、音声データに、当該オーディオブロックが送信装置で処理された時刻(送信時刻情報)及び当該オーディオブロックを受信装置で変調開始すべき時刻の情報が付加されるものである。
次に、第2の放送通信システムにおける受信装置(第2の受信装置)について図10を用いて説明する。図10は、第2の送信装置の構成を示す構成ブロック図である。
図10に示すように、第2の受信装置は、GPS受信部と、基準信号発生部61と、同時放送用変調器62とを備えている。尚、変調部69の出力段に放送機が設けられているが、ここでは省略している。同様に、送信装置の伝送手段に対応する受信手段が設けられているが、省略する。
そして、AES/EBU時刻情報抽出部63は、同期時刻印(4C)を伝送時間計算部65に出力すると共に、変調開始時刻印(4E)をタイミング調整時間決定部66に出力する。
尚、AES本線信号から分離された音声信号は、遅延時間調整部67に出力される。
具体的には、同期時刻印は送信時の時刻を示しており、現在時刻情報は受信時の時刻を示しているので、両者の差分(現在時刻情報−同期時刻印)が伝送遅延時間となる。後述するように、伝送遅延時間は受信装置から、例えば定期的に送信装置にフィードバックされて、システムの保守管理に用いられるものである。
また、伝送時間計算部65は、現在時刻情報をそのままタイミング調整時間決定部66に出力する。
タイミング調整時間は、音声信号を変調開始時刻印で設定された変調開始時刻に変調するには、どれだけ遅延させればよいかを示す時間である。タイミング調整時間の算出については後述する。
変調部69は、アナログ音声信号を変調して、FM放送波(4H)として出力する。
次に、第2の受信装置におけるタイミング調整時間の算出方法について図9,10,11を用いて説明する。図11は、第2の受信装置におけるタイミング調整時間の算出方法を示す説明図である。
図11(a)は、GPS信号に基づいて生成された1PPS信号を示す。この信号は放送本局でも中継局でも同じタイミングの基準信号として生成される。
また、その際に、受信装置側でいつ変調を開始するかを指定する変調開始時刻印(時刻tm)も埋め込まれる。
また、タイミング調整部66において、タイミング調整時間がtm−t2として算出される。
各受信装置において、遅延時間調整部67で音声信号をタイミング調整時間(tm−t2)だけ遅延させてから変調を開始することにより、全ての受信装置で同一時刻tmに同一の音声信号を発放することができるものである。
これにより、複数の受信装置における同期放送用変調器は、別々の伝送路を経て受信された信号を、同一時刻tmに出力でき、同期放送を実現することができるものである。
例えば、システム運用開始時には、放送本局において、十分長い遅延時間設定情報を設定して、変調開始時刻tmをかなり遅い時刻としていた場合でも、中継局から受け取った伝送遅延時間がそれほど長くないことが判明した場合には、遅延時間設定情報をより短時間として、変調開始時刻tmをより早い時刻に設定することができるものである。
このように、実際の伝送路の状況を反映させて、放送通信を決め細かく調整することが可能となるものである。
本発明の第1の実施の形態に係る放送通信システム、放送通信装置、及び放送通信方法によれば、送信装置において、AES/EBU音声信号のユーザビット領域に、送信装置で生成した送信側1PPS信号に同期した時間情報を多重して送信し、受信装置において、受信信号から時間情報を抽出し、時間情報に同期した1PPS信号を受信1PPS信号として生成し、当該受信1PPS信号と自己がGPS信号に基づいて生成した1PPS信号との差に基づいて伝送遅延時間を求め、予め設定された基準遅延時間から伝送遅延時間を差し引いてタイミング調整時間を算出し、音声信号を当該タイミング調整時間だけ遅延させてからFM送信機に出力するようにしているので、フェージングや季節変化によって伝搬路の状況が変動しても、それに追随して実際の状況に応じた精度の高い伝送遅延時間を算出でき、複数の中継局で同一のタイミングで放送波を出力する同期放送を実現することができる効果がある。
Claims (3)
- 送信装置から受信装置へ送信された音声信号を放送信号として同一周波数を用いて同期放送を行うFMラジオ放送の放送通信システムであって、
入力音声信号を含む放送通信データに時間情報を書き込む際に、送信側で受信したGPS信号の基準信号の立ち上がりからの経過時間に基づいて現在時刻を示す同期時刻印を生成し、前記時間情報として、前記同期時刻印と、受信側における放送波への変調開始時刻を指定する変調開始時刻印とを複数のフレームから成るオーディオブロック毎に前記各フレームのAES/EBUのユーザビットに書き込んで多重化して送信する送信装置と、
受信側で受信したGPS信号の基準信号の立ち上がりからの経過時間に基づいて、前記送信装置から放送通信データを受信した時刻を受信時刻として算出し、前記受信した放送通信データから前記オーディオブロック毎に前記入力音声信号と前記AES/EBUのユーザビットに書き込まれた前記時間情報とを分離し、前記受信時刻と前記時間情報に含まれる同期時刻印との差分を伝送遅延時間として算出し、前記時間情報に含まれる変調開始時刻印と前記受信時刻との差分をタイミング調整時間として算出し、当該タイミング調整時間に基づいて前記入力音声信号を前記オーディオブロック毎に遅延させてから放送波への変調を開始する受信装置とを備えたことを特徴とする放送通信システム。 - 送信装置から送信された音声信号を受信して、放送信号として出力するFMラジオ放送の放送通信装置であって、
前記送信装置において、送信側で受信したGPS信号の基準信号の立ち上がりからの経過時間に基づいて算出された現在時刻を示す同期時刻印と、受信側における放送波への変調開始時刻を指定する変調開始時刻印とが時間情報として複数のフレームから成るオーディオブロック毎に前記各フレームのAES/EBUのユーザビットに書き込まれて送信された放送通信データを受信して、前記オーディオブロック毎に前記入力音声信号と前記時間情報とを分離する受信部と、
受信側で受信したGPS信号の基準信号の立ち上がりからの経過時間に基づいて、前記放送通信データを受信した時刻を受信時刻として算出する現在時刻認識部と、
前記受信時刻と前記オーディオブロック毎に前記時間情報に含まれる前記同期時刻印との差分を伝送遅延時間として算出する伝送時間計算部と、
前記時間情報に含まれる前記変調開始時刻印と前記受信時刻との差分をタイミング調整時間として算出するタイミング調整時間決定部と、
前記タイミング調整時間に基づいて前記入力音声信号を前記オーディオブロック毎に遅延させる遅延時間調整部と、
前記遅延時間調整部で遅延された音声信号をアナログ音声信号に変換するアナログ音声変換部と、
前記アナログ音声信号を放送波に変調する変調部とを備えたことを特徴とする放送通信装置。 - 送信装置から受信装置へ送信された音声信号を放送信号として同一周波数を用いて同期放送を行うFMラジオ放送の放送通信システムにおける放送通信方法であって、
前記送信装置が、入力音声信号を含む放送通信データに時間情報を書き込む際に、送信側で受信したGPS信号の基準信号の立ち上がりからの経過時間に基づいて現在時刻を示す同期時刻印を生成し、前記時間情報として、前記同期時刻印と、受信側における放送波への変調開始時刻を指定する変調開始時刻印とを複数のフレームから成るオーディオブロック毎に前記各フレームのAES/EBUのユーザビットに書き込んで多重化して送信し、
前記受信装置が、受信側で受信したGPS信号の基準信号の立ち上がりからの経過時間に基づいて、前記送信装置から放送通信データを受信した時刻を受信時刻として算出し、前記受信した放送通信データから前記オーディオブロック毎に前記入力音声信号と前記時間情報とを分離し、前記受信時刻と前記時間情報に含まれる同期時刻印との差分を伝送遅延時間として算出し、前記時間情報に含まれる変調開始時刻印と前記受信時刻との差分をタイミング調整時間として算出し、当該タイミング調整時間に基づいて前記入力音声信号を遅延させてから放送波への変調を開始すると共に、前記伝送遅延時間を前記送信装置にフィードバックすることを特徴とする放送通信方法。
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