JP6602066B2 - Yag系蛍光体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、エネルギーコストに優れ且つ短時間にYAG系蛍光体を製造可能とする技術に関する。
LEDは、その変換効率の高さや長寿命といった特長から、白熱電球や蛍光灯に代わる次世代照明として注目されており、現在では、発光素子から発生した光を蛍光体で色変換させて出力させるLEDが主流となっている。
このようなLEDで用いられる蛍光体の代表的なものとして、Ceで賦活したYAG系蛍光体がある。Ce賦活YAG(YAG:Ce)蛍光体は、Y23とAl23の複合酸化物であるY3Al512(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)中の一部のY原子をCe原子に置換した蛍光体であり、青色の光(波長約460nm)を吸収し黄色の光(波長約530nm)を放出する特性をもった物質で、1990年代の初めに開発された青色LEDとの組み合わせにより、青色光と黄色光を組み合わせた擬似白色光を得ることができるため、現在では白色LEDに広く使用されている(例えば、特許文献1(特許第3503139号明細書)および特許文献2(特許第3700502号明細書))。
このような蛍光体は、その製造時に大きなエネルギーを必要とする。例えば、特許文献3(特開2014−148677号公報)の段落0003には、「YAG蛍光体は、一般に、固相反応法を介し、(約1600℃を上回る)高い温度で調製される。」旨の記載があり、このような高温熱処理には数時間を要する。
特許第3503139号明細書 特許第3700502号明細書 特開2014−148677号公報 特開2005−305320号公報
Zuhair A. Munir et al. Self-propagating exothermic reactions: The synthesis of high-temperature materials by combustion, Materials Science Reports, 3, (1989), p277-365. 燃焼合成研究会,「燃焼合成の化学:材料合成・加工の瞬間プロセス」、p32-33(1992年)。 Y. Song et al, "Predicting the Adiabatic Temperature of Transparent Y3Al5O12 Prepared via Combustion Synthesis under Ultra-High Gravity", Materials Transactions, 51, (2010), p2230-2235. 日本金属学会、金属化学入門シリーズ1「金属物理化学」(1996), p31-33. T.Hirano et al. Self-propagating high-temperature synthesis of Sr-doped LaMnO3perovskite as oxidation catalyst, Alloys and Compounds, 441, (2007), p263-266. V. Bachmann et al. Temperature Quenching of Yellow Ce3+ Luminescence in YAG:Ce, Chem. Mater., 21, (2009), p2077-2084. C.W.Won et al. Efficient solid-state route for the preparation of spherical YAG:Ce phosphor particles, Alloys and Compounds, 509, (2011), p2621-2626.
従来の合成方法に比較して省エネルギー且つ短時間での材料合成を可能とする技術として、燃焼合成法が知られている。この合成法は、燃焼反応時に生じる燃焼波の自己伝播を利用して連続的に材料合成を行うもので、化合物を合成する際の自己発熱を利用することから、別名SHS法(Self-propagating High-temperature Synthesis)とも呼ばれる。
燃焼合成法では、原料となる素粉末間の発熱反応を秒単位の短時間で連鎖反応的に進行させ、目的化合物を連続的かつ短時間に合成するため、外部からのエネルギー供給がほぼ皆無であり、製造時間が短縮でき、製造装置の構造も簡単なものとなり、材料合成にかかるコストを低減することができる等の特長を有する。
しかし、これまで、燃焼合成法のYAG系蛍光体の合成への適用例の報告は殆どなく、蛍光特性に優れるYAG蛍光体を合成するための条件についての検討はなされていないのが実情である。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、燃焼合成法でYAG系蛍光体を製造する際の好適な条件を明らかにし、エネルギーコストに優れ且つ短時間にYAG系蛍光体を製造可能とする技術を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係るYAG系蛍光体の製造方法は、酸化イットリウム(Y23)粉末と酸化アルミニウム(Al23)粉末と金属Al粉末を含む素粉末を原料とし、前記金属Al粉末の酸化熱を利用してYAG(Y3Al512)系蛍光体を燃焼合成する。
好ましくは、前記原料中のY23粉末と前記Al23粉末と前記金属Al粉末の比をモル比でY23:Al23:Al=1.5:x:(5−2x)としたときに、前記xを1.5〜1.8の範囲に設定する。
ある態様では、前記原料中に、さらにセリウム酸化物(CeO2)粉末を添加し、前記Y23粉末と前記CeO2粉末と前記Al23粉末と前記金属Al粉末の比をモル比でY23:CeO2:Al23:Al=(1.5−α):2α:x:(5−2x)としたときに、前記xを1.5〜1.8の範囲に設定する。
このとき、好ましくは、2α/[2(1.5−α)+2α]で定義される前記αと(1.5−α)の比を、1.0%以上で5.0%以下に設定する。
これらの態様において、さらに好ましくは、前記xを1.70〜1.75の範囲に設定する。
前記原料に、さらに酸素供給剤として過塩素酸物を加えるようにしてもよい。
例えば、前記酸素供給剤はNaClO4である。
ある態様では、前記原料に、更にフッ化バリウム(BaF2)粉末を添加する。
好ましくは、前記BaF2粉末の添加量を、原料の素粉末の全量に対して4〜6wt%の範囲に設定する。
また、好ましくは前記Al23粉末および金属Al粉末として、純度99.99%以上のものを用いる。
本発明に係るYAG系蛍光体は、上述の何れかの方法で合成されたYAG系蛍光体である。
本発明により、燃焼合成法でYAG系蛍光体を製造する際の好適な条件を明らかにされ、その結果、エネルギーコストに優れ且つ短時間にYAG系蛍光体を製造可能とする技術が提供される。
原料に含有させるAl23の素粉末の添加量xをパラメータとした場合の断熱火炎温度である。 燃焼合成装置の概略図で、(a)は上面図、(b)は断面図である。 x=1.5〜1.9の条件で燃焼合成して得られた試料の光学写真である。 燃焼合成された試料のうちの、x=1.5〜1.8のYAG:Ce(Ce含有量は1at%)のX線回折チャートである。 燃焼合成された試料のうちの、x=1.5〜1.8のYAG:Ce(Ce含有量は1at%)の発光強度測定結果である。 x=1.70の条件で燃焼合成して得られたYAG:Ce(Ce含有量は1.0at%)のX線回折チャートである。 x=1.725の条件で燃焼合成して得られたYAG:Ce(Ce含有量は1.0at%)のX線回折チャートである。 x=1.75の条件で燃焼合成して得られたYAG:Ce(Ce含有量は1.0at%)のX線回折チャートである。 x=1.70の条件で燃焼合成して得られたYAG:Ce(Ce含有量は1.0at%)の発光強度測定結果である。 x=1.725の条件で燃焼合成して得られたYAG:Ce(Ce含有量は1.0at%)の発光強度測定結果である。 x=1.75の条件で燃焼合成して得られたYAG:Ce(Ce含有量は1.0at%)の発光強度測定結果である。 x=1.70、x=1.725、x=1.75の条件で燃焼合成された3つのYAG:Ceの発光強度を比較した図である。 x=1.725の条件で燃焼合成された5つのYAG:Ce(Ce:1.0at%、2.0at%、3.0at%、4.0at%、5.0at%)のX線回折チャートである。 5つのYAG:Ceの発光強度を比較した図である。 フラックスとしてBaF2を加えて燃焼合成したYAG:Ce試料とBaF2を添加しないで燃焼合成したYAG:Ce試料のX線回折チャートである。 図15に示した5つのうちの、BaF2をフラックスとして燃焼合成を行って得られた4つのYAG:Ceの発光強度を比較した図である。
以下に、図面を参照して本発明に係るYAG系蛍光体の製造方法について説明する。なお、以降の説明では賦活剤としてCeを例示するが、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)、クロム(Cr)等であってもよい。
燃焼合成法においては、断熱火炎温度の制御が重要である。断熱火炎温度が1800K以下の温度では反応の伝播が生じず、逆にこれより高い温度では原料の融着等により目的化合物が生成しないことが知られている(非特許文献1)。
本発明者らは、誠意検討した結果、燃焼合成法によりYAG系蛍光体を製造するに際し、金属Al粉末の酸化熱を利用することを検討し、本発明を成すに至った。すなわち、本発明に係るYAG系蛍光体の製造方法では、Y23粉末とAl23粉末と金属Al粉末を含む素粉末を原料とし、金属Al粉末の酸化熱を利用してYAG系蛍光体を燃焼合成する。
さらに、本発明者らは、燃焼合成反応によって得られるYAG:Ce蛍光体を燃焼合成する際に、その特性を優れたものとするために好適な、Al23の添加量、原料となる素粉末の純度、Ce濃度、フラックスとしてのBaF2の添加量についても検討した。
[Al23の添加量の検討]
本発明者らは、反応温度を制御するための希釈剤として、YAGのAl源としてのAl23を利用することを検討し、その適正な添加量の検討を行った。
そのための実験に先立ち、下記の要領で断熱火炎温度(Tad)の計算を行った。
断熱火炎温度とは、完全断熱下における燃焼時の最高到達温度のことを指す。断熱火炎温度は、反応開始温度(To)での原料系と生成物系のエンタルピー差(-ΔHT0)として定義される生成エンタルピーのすべてが、生成物の温度上昇に用いられたと仮定した場合の下式(1)〜(4)から求めることができる(非特許文献2)。
ここで、Cp(s)は固体生成物の熱容量、Cp(l)は溶融状態の熱容量、Cp(g)は気体状態の熱容量、Tmは生成物の融点、Tbは生成物の沸点、ΔHm は融解熱、ΔHeは蒸発熱、νmは生成物が融解した際の融解した割合、νeは生成物が蒸発した際の蒸発した割合である。
下式(5)は、Al23の添加量をパラメータとした場合の、YAGの燃焼合成反応の化学反応式である。
なお、上式(5)において、yは約(7.5-3x)/4(y ≒ (7.5-3x)/4)である。
YAGの燃焼合成における生成エンタルピーの計算には、表1の各エンタルピーの値(何れも単位はkJ/mol)を用いた。ここで、ΔH0 298は生成熱、ΔHmは融解熱、ΔHeは蒸発熱である。なお、YAGの生成熱ΔH0 298の値および融解熱ΔHmの値は、非特許文献3による。
また、下式(6)〜(11)を用いて、生成物のモル比熱(Cp)を計算した(非特許文献3および非特許文献4を参照)。
上記表1に示したデータを用い、副産物としてのNaClも含むYAGの生成エンタルピーを計算し、上式(6)〜(11)を用いて上式(1)〜(4)が成立する温度Tを求め、これを断熱火炎温度Tadとした。
上記手順で、x=1.5〜2.25の範囲で断熱火炎温度Tadを計算し、xをパラメータとした反応の断熱火炎温度変化の概略図を作成した。
図1は、上述の方法で作製した、原料に含有させるAl23の素粉末の添加量xをパラメータとした場合の断熱火炎温度である。この図1から、完全断熱下では、xが約2.0以下で反応時にYAGが融解することが読み取れる。
上述のようにして求めた断熱火炎温度のAl23素粉末添加量依存性を目安として、蛍光特性の高いYAG:Ce蛍光体を得るためのAl23素粉末の添加量xを検討した。
原料として、Y23粉末(関東化学製:純度99.99%)、CeO2粉末(高純度化学製:純度99.99%、平均径0.2μm)、金属Al粉末(高純度化学製:純度99.9%、平均径3μm)、Al23粉末(キシダ化学製:純度99.0%)、NaClO4粉末(ALDRICH製:純度98.0%)を原料とし、Ceを1.0at%含有するYAG蛍光体(YAG:Ce)を燃焼合成した。その際の反応式は、下式(12)となる。ここで、上記NaClO4は酸素供給剤として用いており、これに限らず他の過塩素酸物を用いてもよい。
なお、上式(12)において、yは約(7.485-3x)/4 (y ≒ (7.485-3x)/4)である。
YAG合成の際の断熱火炎温度(図1)を目安とし、x=1.5〜1.9の範囲で、上式(12)で定まる化学量論比にしたがって各素粉末を秤量した。秤量した素粉末を転動式ボールミルで混合(100rpmで4時間)した後、混合粉末をグラファイト製蓋付き坩堝(縦12cm×横4cm×深さ3.5cm)に封入し、燃焼合成装置内に断熱材とともに設置した。燃焼合成装置内をロータリーポンプで真空にした後、常圧Ar雰囲気にし、カーボンホイルに通電して着火した。
図2は、上述の燃焼合成装置100の概略図で、図2(a)は上面図、図2(b)は断面図である(非特許文献5を参照)。図中、符号10は原料としての混合素粉末(試料)、符号20は坩堝、符号30は断熱材、符号40はカーボンホイル、符号50はロータリーポンプ、符号60はガス導入口、符号70はガス排出口、符号80はコントロールボックスである。
着火した後、安全のため、装置100内で坩堝20を4時間ほど冷まし、試料10を取り出した。得られた試料10は、着火部分を取り除きタングステンカーバイド鋼製乳鉢で手粉砕した。粉砕した試料10を湯とともにビーカーに入れ、マグネチックスターラーで撹拌洗浄し、吸引濾過器でろ過し、乾燥機内で乾燥させた。最後に、乾燥後の粉末をふるいにかけ、粒径が150〜355μmの範囲の粉末を回収して評価サンプルとした。
これらのサンプルについてX線回折法(MiniFlex Rigaku)で生成物を同定し、蛍光分光計(FP-6200 JASCO)で蛍光強度を測定した。サンプルのXRD測定結果および発光強度測定結果から、最適なxの値を決定した。
図3は、上述の条件(x=1.5〜1.9)で燃焼合成して得られた試料の光学写真である。
白色の物質は副産物として生成したNaClである。これは粉砕後に湯で洗浄することで除去可能である。x=1.5および1.6の試料は、坩堝内での反応温度がYAGの融点を大きく超えてしまったために生成物が融解し、写真で確認できるような融着状態になったと考えられる。また、NaClはその生成と同時に気化し、その気化に伴って試料が飛散してしまった可能性もある。
また、x=1.8までは反応が伝播しているが、x=1.9では反応は伝播しなかった様子が見て取れる。このことから、YAG:Ceの燃焼合成は、x=1.5〜1.8の範囲で可能であると結論付けた。
よって、原料中のY23粉末とAl23粉末と金属Al粉末の比をモル比でY23:Al23:Al=1.5:x:(5−2x)としたときに、xを1.5〜1.8の範囲に設定することが好ましい。
YAGにCeをドープする場合には、Y23粉末とCeO2粉末とAl23粉末と金属Al粉末の比をモル比でY23:CeO2:Al23:Al=(1.5−α):2α:x:(5−2x)としたときに、xを1.5〜1.8の範囲に設定することが好ましい。なお、後述するように、2α/[2(1.5−α)+2α]で定義されるαと(1.5−α)の比は、1.0%以上で5.0%以下に設定することが好ましい。
x=1.7〜1.8の試料の表面に見られる灰色の部分は、未反応物もしくは中間生成物のYAP(YAlO3)が残存しているものと考えられる。また、x=1.8のものに比べ、x=1.7〜1.75のものでは、表面の残存物が少ないように見受けられる。
図4は、上述の条件で燃焼合成された試料のうちの、x=1.5〜1.8のYAG:Ce(Ce含有量は1at%)のX線回折チャートである。○マークで示したピークはYAGのピークに一致している。何れの試料においても、回折ピークは略YAGのものと一致しており、上述の燃焼合成で得られた試料はYAG構造をとっていることがわかる。
なお、x=1.750および1.800の試料から得られたチャート中において、2θ=35°近傍に極めて弱いピーク(△マークで示した)が認められるが、これは、YAP(YAlO3)からのものと考えられる。YAPは固相反応法でYAGを合成する際に頻繁に生成する化合物であり、熱処理温度が不十分である場合に生成しやすい。
図5は、上述の条件で燃焼合成された試料のうちの、x=1.5〜1.8のYAG:Ce(Ce含有量は1at%)の発光強度測定結果である。460nmの青色光を試料に照射した際に約530nmの黄色光が得られている。x=1.5のものの発光強度は比較的低いが、x=1.6以上のもの、特にx=1.7以上のものでは高い発光強度が得られている。これらの試料中、最も高い発光強度を示した試料は、x=1.7のものであった。
これらの発光強度測定の結果、および、上述したようにx=1.7〜1.75のものでは表面の残存物が少ないように見受けられた結果を踏まえ、xは1.70〜1.75の範囲に設定するのが好ましいと判断した。
[原料となる素粉末純度の検討]
原料となる素粉末の純度が、燃焼合成で得られるYAG系蛍光体の品質(発光特性)に及ぼす影響について検討した。
具体的には、上述した素粉末のうち、Y23粉末(関東化学製:純度99.99%)、CeO2粉末(高純度化学製:純度99.99%、平均径0.2μm)、NaClO4粉末(ALDRICH製:純度98.0%)の純度はそのままとし、金属Al粉末として4Nの純度99.99%(高純度化学製:純度99.99%、平均径45μm)のものを用い、Al23粉末も同様に4Nの純度99.99%(高純度化学製:純度99.99%)のものを用いた。そして、xの値が1.70、1.725、1.75となるように各素粉末を秤量し、YAG:Ceを燃焼合成した。
図6〜8はそれぞれ、x=1.70、x=1.725、x=1.75の条件で燃焼合成して得られたYAG:Ce(Ce含有量は1.0at%)のX線回折チャートである。
なお、比較のために、3Nの金属Al粉末(高純度化学製:純度99.9%、平均径3μm)と2NのAl23粉末(キシダ化学製:純度99.0%)を用いて燃焼合成して得られたYAG:Ce(Ce含有量は1.0at%)のX線回折チャートも示した。
これらの図に示されたX線回折チャートを見る限り、低純度原料から燃焼合成された試料と高純度原料から燃焼合成された試料の間に差異は確認できない。
図9〜11はそれぞれ、高純度原料を用い、x=1.70、x=1.725、x=1.75の条件で燃焼合成して得られたYAG:Ce(Ce含有量は1.0at%)の発光強度測定結果で、比較のために、低純度原料から燃焼合成されたYAG:Ce(Ce含有量は1.0at%)の発光強度測定結果も示した。
x=1.70、x=1.725、x=1.75の3条件の何れにおいても、高純度原料から燃焼合成された試料の発光強度は、低純度原料から燃焼合成された試料のそれよりも高い値となっている。
図12は、これら3つのYAG:Ceの発光強度を比較した図で、その強度に有意な差は認められない。
つまり、燃焼合成で得られるYAG系蛍光体の品質(発光特性)向上のためには、Al23粉末およびAl粉末として、純度99.99%以上のものを用いることが好ましい。
[Ce濃度の検討]
原料として、Y23粉末(関東化学製:純度99.99%)、CeO2粉末(高純度化学製:純度99.99%、平均径0.2μm)、金属Al粉末(高純度化学製:純度99.99%、平均径45μm)、Al23粉末(高純度化学製:純度99.99%)、NaClO4粉末(ALDRICH製:純度98.0%)を原料とし、Ceを1.0at%、2.0at%、3.0at%、4.0at%、および5.0at%含有するYAG蛍光体(YAG:Ce)を燃焼合成した。この時の条件は、x=1.725とした。それぞれの合成時の反応式は、下式(13)〜(17)のとおりである。
図13は、上述の条件で燃焼合成された5つの試料のX線回折チャートである。図4を参照して説明したように、○マークで示したピークはYAGのピークに一致している。何れの試料においても、回折ピークは略YAGのものと一致しており、上述の燃焼合成で得られた試料はYAG構造をとっていることがわかる。
Ce含有量の設計値を5%とした試料からは、比較的強いYAP起因のピークが認められる。これは、CeO2の添加量が比較的多いために、反応温度が低下して中間生成物が多く生成したことによるものと推察される。
図14は、これら5つのYAG:Ceの発光強度を比較した図で、Ce含有量の設計値を1%とした試料の発光強度は相対的に低いが、それ以外のものの発光強度は概ね同じであり、その中ではCe含有量の設計値を4%とした試料の発光強度が最も高い。
Ce含有量の設計値を5%とした試料の発光強度が、4%とした試料のそれよりも低下しているように見て取れるが、これは濃度消光等の原因による可能性がある。
一般に、蛍光体中の発光に関与するイオン(ここではCeイオン)の量が多量になると発光量が増大する傾向が認められるが、当該イオンが過多になると逆に発光強度は低下する。この現象は、発光するイオンが過多になってしまったために発光以外のエネルギー授受が発生したり、もしくは、イオンからの発光光を他のイオンが吸収してしまうといった濃度消光や再吸収と呼ばれる現象が知られている(非特許文献6)。
また、発光帯(530nm付近)の波長が、僅かながら長波長側に赤方遷移(red shift)していることが読み取れる。発光帯の赤方遷移は、YAG:Ce蛍光体のCe濃度が上昇するにつれてより大きくなると知られており、この現象はCe3+イオンの5d→4f遷移による発光に関与しているとされている(非特許文献6)。
以降の実験では、最も高い発光強度を示した、Ce含有量の設計値を4%とする条件を燃焼合成条件として採用した。
[フラックスとしてのBaF2の添加量の検討]
フラックスは、複合酸化物等を合成する際に、その合成に必要な温度を引き下げ、均質性を高める効果があることが知られており、BaF2、CaF2、NaCl等が用いられる。このうち、BaF2は、比較的安価であり融点が1626Kと比較的高いこと、また、湯で洗浄することでほぼ取り除くことができるという利点がある(特許文献4や非特許文献7を参照)。そこで、本発明者らは、フラックスとしてのBaF2の添加量の検討を行った。
フラックスとしてBaF2(和光純薬製、純度99.9%)の粉末を3.0〜6.0wt%加え、上述の式(16)で示した燃焼合成を行ってYAG:Ce試料(Ce含有量4at%)を得た。また、比較のため、BaF2を添加しない以外は同様の条件での燃焼合成も行った。
図15は、これら5つのYAG:Ce試料のX線回折チャートである。BaF2を5.0wt%加えて燃焼合成を行って得られた試料においては、2θ=34°付近のYAP起因のピークが殆ど認められない。
図16は、上記5つのうちの、BaF2をフラックスとして燃焼合成を行って得られた4つのYAG:Ceの発光強度を比較した図で、BaF2の添加量を3wt%とした試料の発光強度は相対的に低いが、BaF2添加量4〜6wt%のものの発光強度は概ね同じであり、その中ではBaF2添加量5wt%の試料の発光強度が最も高い。この結果から、BaF2の添加量は、4〜6wt%の範囲に設定するのが好ましいと判断した。
[固相反応法で合成したYAG系蛍光体との比較]
燃焼合成法により得られたYAG系蛍光体の上述発光特性を、固相反応法で合成したYAG系蛍光体の発光特性と比較した。
そのための試料として、下式(18)の反応式に則り、YAG:Ce(Ce含有量1.0at%)を合成した。
混合した素粉末(約1g)をアルミナ製の坩堝に入れ、空気雰囲気で1450℃で4時間熱処理した。
得られたYAG:Ce試料の発光特性(発光強度)を評価したところ、燃焼合成法により得られたYAG系蛍光体の発光強度よりも低いことを確認した。
本発明により、燃焼合成法でYAG系蛍光体を製造する際の好適な条件が明らかにされ、その結果、エネルギーコストに優れ且つ短時間にYAG系蛍光体を製造可能とする技術が提供される。
10 混合素粉末(試料)
20 坩堝
30 断熱材
40 カーボンホイル
50 ロータリーポンプ
60 ガス導入口
70 ガス排出口
80 コントロールボックス
100 燃焼合成装置

Claims (9)

  1. 酸化イットリウム(Y23)粉末と酸化アルミニウム(Al23)粉末と金属Al粉末を含む素粉末を原料とし、前記金属Al粉末の酸化熱を利用してYAG(Y3Al512)系蛍光体を燃焼合成する、YAG系蛍光体の製造方法であって、
    前記原料中のY 2 3 粉末と前記Al 2 3 粉末と前記金属Al粉末の比をモル比でY 2 3 :Al 2 3 :Al=1.5:x:(5−2x)としたときに、前記xを1.5〜1.8の範囲に設定する、YAG系蛍光体の製造方法。
  2. 前記原料中に、さらにセリウム酸化物(CeO2)粉末を添加し、前記Y23粉末と前記CeO2粉末と前記Al23粉末と前記金属Al粉末の比をモル比でY23:CeO2:Al23:Al=(1.5−α):2α:x:(5−2x)としたときに、前記xを1.5〜1.8の範囲に設定する、請求項1に記載のYAG系蛍光体の製造方法。
  3. 2α/[2(1.5−α)+2α]で定義される前記αと(1.5−α)の比を、1.0%以上で5.0%以下に設定する、請求項に記載のYAG系蛍光体の製造方法。
  4. 前記xを1.70〜1.75の範囲に設定する、請求項1〜3の何れか1項に記載のYAG系蛍光体の製造方法。
  5. 前記原料に、さらに酸素供給剤として過塩素酸物を加える、請求項1〜の何れか1項に記載のYAG系蛍光体の製造方法。
  6. 前記酸素供給剤はNaClO4である、請求項に記載のYAG系蛍光体の製造方法。
  7. 前記原料に、更にフッ化バリウム(BaF2)粉末を添加する、請求項2〜6の何れか1項に記載のYAG系蛍光体の製造方法。
  8. 前記BaF2粉末の添加量を、原料の素粉末の全量に対して4〜6wt%の範囲に設定する、請求項に記載のYAG系蛍光体の製造方法。
  9. 前記Al23粉末および金属Al粉末として、純度99.99%以上のものを用いる、請求項1〜の何れか1項に記載のYAG系蛍光体の製造方法。
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