JP6596118B2 - 地域集中探索型天敵製剤 - Google Patents

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Description

本発明は、農業害虫に対する生物的防除に関する。特に、放飼後の土地定着率が高い地域集中探索型天敵製剤、及び地域集中探索型天敵を簡易に選抜し、作出する方法に関する。
アザミウマ(Thrips)は、野菜、果樹、茶をはじめとする様々な農作物に深刻な被害を与える難防除害虫である。従来、この昆虫の防除にはチアメトキサム、エマメクチン安息香酸塩、フェニトロチオン等を有効成分とする化学農薬が主に使用されてきた。しかし、化学農薬主体の防除は、薬剤抵抗性個体の出現、環境汚染、及び農作物への残留等が問題となっており、もはや限界がきている。
近年では、環境に配慮する関心の高まりから環境と調和した持続的な防除技術への移行が求められており、化学農薬の代替防除技術として生物的防除が注目されている。
生物的防除は、自然生態系における捕食被食関係や宿主寄生体関係に基づき、天敵を生物農薬(天敵製剤)に利用して害虫、病原性微生物又は雑草等を防除する方法である。
アザミウマに対する生物的防除用天敵には、従来スワルスキーカブリダニ(Amblyseius swirskii)が最もよく利用されてきた。しかし、本種は、15℃を下回る低温度下では活動が鈍り、防除効果が著しく低下するという問題があった。
また、ハナカメムシ科(Anthocoridae)の昆虫もアザミウマの防除において非常に有効な天敵製剤となり得る。特に日本の土着天敵であるタイリクヒメハナカメムシ(Orius strigicollis)は、アザミウマの捕食量が多く、11℃の低温下でも活動可能であり、さらに短日下での休眠が浅いことが知られていることから(非特許文献1)、促成栽培を中心とする施設園芸下での天敵製剤として有効で、既に実用化もされている。しかし、本種には放飼後の初期定着率や増殖率が低いという大きな問題がある(非特許文献2)。これは、当該分野で、対象害虫の発生初期に天敵を放飼すること(非特許文献3)や天敵放飼前に化学農薬散布によって対象害虫の密度を予め抑圧させること(非特許文献4)が推奨されているため、放飼直後に餌となるアザミウマが不足する結果、本種が死亡したり、施設外へ逃亡することが主な原因と考えられている。そのため、タイリクヒメハナカメムシを利用し、アザミウマ等の対象害虫を効果的に防除するには放飼直後の定着率を向上させることが大きな課題となっている。
上記課題の解決策として、アカメガシワクダアザミウマ(Haplothrips brevitubus)をブースター天敵(補強天敵資材)として放飼する方法が開発され、その実用化が検討されている(非特許文献5)。アカメガシワクダアザミウマは、アザミウマの密度が低い天敵放飼初期状況下において、タイリクヒメハナカメムシの代替餌になるだけでなく、それ自身が他のアザミウマを捕食する天敵製剤となり得る点で優れている。また、土着天敵のハナカメムシ科の昆虫の定着や繁殖を促進させるインセクタリープランツを活用した植生管理技術の開発も進められている(非特許文献6)。インセクタリープランツは、天敵涵養植物とも呼ばれ、天敵が働きやすい環境条件を提供することによって作物上での定着率を高めることができる。しかし、これらの方法にも問題がある。一般に生物的防除は、化学的防除よりもコスト高となる傾向にあるが、アカメガシワクダアザミウマのような代替餌やインセクタリープランツの導入は、コストをさらに増大させてしまう。また、インセクタリープランツの導入は、農作物に加え、それ自身の栽培管理が必要となり、多大な労力を要してしまう。
他の解決策として、育種改良した天敵の系統を用いる方法が知られている。例えば、ナミテントウ(Harmonia axyridis)やフタモンテントウ(Adalia bipunctata)をアブラムシの天敵製剤として使用する場合、飛翔不能系統を育成することによって、作物上での定着率を向上させる方法がある(特許文献1、非特許文献7及び8)。タイリクヒメハナカメムシも同様に飛翔能力を不能化することで作物定着率の向上が期待されるが、本種をはじめとするハナカメムシ科の昆虫は成虫の体長が1〜2mm程度しかなく小型であるため、成虫の体長が約5〜8mmのナミテントウ等と比べて歩行による分散能力が劣っている。そのため飛翔能力が欠損すると分散能力が過剰に抑制されてしまい、防除効果が逆に低下してしまうという問題が生じる。さらに、飛翔能力の不能化による定着率の向上は、成虫段階でのみ得られる効果であり、小型であっても分散能力に優れた種の場合には幼虫段階で分散してしまい、十分な定着効果を得ることができないという問題も残る。
特開2010-183902
柿元一樹ら, 2003, Japanese Journal of Applied Entomology and Zoology 47(1): 19-28. 柿元一樹ら, 2007, Japanese Journal of Applied Entomology and Zoology 51(1): 29-37. 日本植物防疫協会, 2002, 生物農薬ハンドブック2002, 東京, 205pp. 梅川学ら編, 2005, IPMマニュアル―環境負荷低減のための病害虫総合管理技術, 中央農業総合研究センター, つくば, 236pp. 井上栄明ら,2008,植物防疫 62(11): 601-606. 永井一哉・飛川光治,2012,Japanese Journal of Applied Entomology and Zoology 56(2): 57-64. Seko et al., 2008, Biological Control 47(2):194-198. Lommen et al., 2008, Biological Control 47(3):340-346.
本発明の課題は、コストや労力の増加を伴うことなく、放飼後の天敵の土地定着率を高める方法を開発し、提供することである。
一般に、捕食者は、餌となる寄主(又は被食者)が多い場合にはあまり徘徊せずに周辺を丁寧に探索し(地域集中探索)、寄主が少ないと認識した場合には直線的に素早く動いて別の餌場に移動する(広域探索)。これらの寄主探索行動は、餌密度に依存してスイッチすることが多くの生物で知られている(Jander, 1975, Annual Review of Ecology and Systematics, 6:171-188)。また、その探索行動をスイッチするタイミングは個体間で異なることが一部の昆虫類で確認されている(Ferran et al., 1994, Journal of Insect Behavior, 7(5): 633-647)。
上記課題を解決するために、本発明者らは、天敵そのものの機能を強化させて放飼後の土地定着率を高める方法を着想し、その方法に基づく発明を完成させるに至った。具体的には、対象害虫密度が低い条件下でも広域探索にスイッチせず、地域集中探索に特化した行動特性を持つ個体を選抜し、その系統を作出することによって、定着率を向上させる方法である。当該方法を確立するためには地域集中探索時間が長い個体を効率的に選抜する必要があるが、そのような行動特性を持つ個体を集団の中から特定し、選抜することは容易ではない。しかしながら、本発明者らは、研究の結果、一定時間あたりの天敵の地域集中探索時間と歩行及び/又は飛翔活動量との間には高い負の相関関係があることを見出し、集団の中から歩行及び/又は飛翔活動量の低い個体を抽出することによって地域集中探索時間の長い個体を簡便かつ効率的に選抜できることに成功した。本発明は、当該知見と実験結果に基づいて完成されたものであって、以下を提供する。
(1)生物的防除用天敵としての昆虫綱(Insecta)又はクモ綱(Arachnida)に属する個体群からなる母集団において、一定時間あたりの歩行及び/又は飛翔活動量が低い下位35%の個体を抽出する工程を含む地域集中探索型天敵の選抜方法。
(2)前記個体群が空腹状態にある、(1)に記載の選抜方法。
(3)前記母集団が50〜300個体で構成される、(1)又は(2)に記載の選抜方法。 (4)前記天敵がハナカメムシ科、カスミカメムシ科(Miridae)、ナガカメムシ科(Lygaeidae)、テントウムシ科(Coccinellidae)及びカブリダニ科(Phytoseiidae)からなる群のいずれかの科に属する、(1)〜(3)のいずれかに記載の選抜方法。
(5)(1)〜(4)に記載の選抜方法で得られた個体を親個体の少なくとも一方として交配を行う第1交配工程、及び前記第1交配工程後に得られる交雑個体からなる母集団において一定時間あたりの歩行及び/又は飛翔活動量が低い下位35%の個体を抽出する第1交雑個体抽出工程を含む地域集中探索型天敵の作出方法。
(6)第1交雑個体抽出工程で得られた個体を親個体として同系交配を少なくとも1回行う同系交配工程、及び前記交配工程後に得られる交雑個体からなる母集団において、一定時間あたりの歩行及び/又は飛翔活動量が低い下位35%の個体を抽出する第2交雑個体抽出工程、を含む地域集中探索型天敵の作出方法。
(7)生物的防除用天敵としての昆虫綱又はクモ綱に属する個体群からなる母集団において一定時間あたりの歩行及び/又は飛翔活動量が低い下位35%の個体及び/又はその後代を含む地域集中探索型天敵製剤。
(8)前記天敵がハナカメムシ科、テントウムシ科、カスミカメムシ科、ナガカメムシ科及びカブリダニ科からなる群のいずれかの科に属する、(7)に記載の天敵製剤。
なお、一般に、生物的防除では放飼後の天敵定着性が常に問題となるものの、意外なことに、餌探索能力の集団内変異に着目して、地域集中探索時間が長い系統を選抜及び育成することによって定着率を向上させる方法は、当該分野ではこれまで全く知られていなかった。
本発明の作出方法によれば、地域集中探索型天敵を簡便に選抜することができる。
本発明の地域集中探索型天敵製剤によれば、コストや労力の増加を伴うことなく、放飼後の天敵の定着率の高い生物的防除用天敵を提供することができる。
タイリクヒメハナカメムシの地域集中探索時間と歩行距離との関係を示す図である。Aは雄成虫個体、Bは雌成虫個体での結果である。 母集団(180個体)におけるタイリクヒメハナカメムシ成虫(雌雄)の1時間あたりの歩行活動量と個体数の関係を示す図である。この結果に基づいて歩行及び/又は飛翔活動量が低い下位30%の個体群、すなわち地域集中探索時間の長い個体群(A群)と歩行及び/又は飛翔活動量が高い上位30%の個体群、すなわち地域集中探索時間の短い個体群(B群)を抽出した。 図2で抽出されたタイリクヒメハナカメムシのA群及びB群をそれぞれ施設ナス栽培圃場に放飼した後の経過日数と区あたりに存在するタイリクヒメハナカメムシの個体数の関係を示す。 図2で抽出されたタイリクヒメハナカメムシのA群及びB群をそれぞれ施設ナス栽培圃場に放飼した後の経過日数と作物1株あたりのミナミキイロアザミウマの個体数の関係を示す。 ナミテントウの地域集中探索時間と歩行距離との関係を示す図である。 母集団(130個体)におけるナミテントウ成虫(雄)の地域集中探索時間と個体数の関係を示す図である。この結果に基づいて地域集中探索時間の長い上位30%の個体群(A群)及び地域集中探索時間の短い下位30%の個体群(B群)を抽出した。 図6で抽出されたナミテントウのA群及びB群をそれぞれ施設ナス栽培圃場に放飼した後の経過日数と区あたりに存在するナミテントウの個体数の関係を示す。 図6で抽出されたナミテントウのA群及びB群をそれぞれ施設ナス栽培圃場に放飼した後の経過日数と作物1葉あたりのワタアブラムシの個体数の関係を示す。
1.地域集中探索型天敵選抜方法
1−1.概要
本発明の第1の態様は、地域集中探索型天敵選抜方法に関する。本態様の方法によれば、生物的防除用天敵として利用される個体群から、放飼後の土地定着率の高い地域集中探索型の性質を有する個体を簡便に選抜することができる。
1−2.方法
本態様の方法は、必須工程として抽出工程を含む。本態様において「抽出工程」とは、生物的防除用天敵の個体群からなる母集団において一定時間あたりの歩行及び/又は飛翔活動量が低い個体を抽出する工程である。
「生物的防除」とは、前述のように、自然生態系における捕食被食関係や宿主寄生体関係を利用して対象生物を防除する方法である。本明細書において「対象生物」とは、防除すべき生物である。例えば、農業害虫が挙げられる。具体的には、アザミウマ目(Thysanoptera)に属する種(例えば、ミカンキイロアザミウマ(Frankliniella occidentalis)、ヒラズハナアザミウマ(Frankliniella intonsa)、クロトンアザミウマ(Heliothrips haemorrhoidalis)、ミナミキイロアザミウマ(Thrips palmi)、ネギアザミウマ(Thrips tabaci)、クロゲアザミウマ(Thrips nigroplosus)、チャノキイロアザミウマ(Scirtothrips dorsalis)及びアカメガシワクダアザミウマを含む)、アブラムシ上科(Aphidoidea)に属する種(例えば、ワタアブラムシ(Aphis gossypii)、ダイズアブラムシ(Aphis glycines)、マメアブラムシ(Aphis craccivora)、エンドウヒゲナガアブラムシ(Acyrthosiphon pisum)、イチゴネアブラムシ(Aphis forbesi)、ユキヤナギアブラムシ(Aphis spiraecola)、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)、バラミドリアブラムシ(Rhodobium porosum)、オカボノアブラムシ(Rhopalosiphum rufiabdominalis)、ダイコンアブラムシ(Brevicoryne brassicae)、ニセダイコンアブラムシ(Lipaphis erysimi)、ネギアブラムシ(Neotoxoptera formosana)、タイワンヒゲナガアブラムシ(Uroleucon formosanum)、イチゴケナガアブラムシ(Chaetosiphon fragaefolii)、チューリップヒゲナガアブラムシ(Macrosiphum euphorbiae)、トウモロコシアブラムシ(Rhopalosiphum maidis)、ムギクビレアブラムシ(Sitobion akebiae)、ムギヒゲナガアブラムシ(Sitobion akebiae)、ジャガイモヒゲナガアブラムシ(Aulacorthum solani)、ミカンクロアブラムシ(Toxoptera citricida)、リンゴコブアブラムシ(Ovatus malisuctus)及びモモコフキアブラムシ(Hyalopterus pruni)を含む)、コナジラミ科(Aleyrodidae)に属する種(例えば、タバココナジラミ(Bemisia tabaci)、シルバーリーフコナジラミ(Bemisia argentifolii)、オンシツコナジラミ(Trialeurodes vaporariorum)又はミカントゲコナジラミ(Aleurocanthus spiniferus)を含む)、グンバイムシ科(Tingidae)に属する種、カイガラムシ上科(Coccoidea)に属する種(例えば、ワタフキカイガラムシ(Icerya purchasi Maskell)、ルビーロウカイガラムシ(Ceroplastes rubens)又はタマカイガラムシ(Eulecanium kunoense)を含む)、ヨコバイ科(Cicadellidae)に属する種、及びハダニ科(Tetranychidae)に属する種(例えば、ナミハダニ(Tetranychus urticae)、カンザワハダニ(Tetranychus kanzawai)、オウトウハダニ(Amphitetranychus viennensis)、ミカンハダニ(Panonychus citri)、リンゴハダニ(Panonychus ulmi)及びクローバービラハダニ(Bryobia praetiosa)を含む)が該当する。
「天敵(生物)」とは、被食者を捕食する生物又は寄主に寄生する生物(寄主に寄生し、最終的にその寄主を殺す捕食寄生生物を含む)をいう。また、本明細書において「生物的防除用天敵」とは、前記対象生物を被捕食者又は寄主とする生物的防除に利用することのできる天敵である。本明細書で使用し得る天敵は、生物的防除用として利用し得ることを前提とするため、本明細書では生物的防除用天敵を原則として天敵と同義的に扱うこととする。
本態様の選抜方法において使用し得る天敵として、昆虫綱(Insecta)又はクモ綱(Arachnida)に属する生物が挙げられる。例えば、ハナカメムシ科(Anthocoridae)に属する種、カスミカメムシ科(Miridae)に属する雑食性の種、ナガカメムシ科(Lygaeidae)に属する種、サシガメ科(Reduviidae)に属する種、寄生バチ下目(Prasitica)に属する種、ヤドリバエ科(Tachinidae)に属する種、ヒラタアブ亜科(Syrphinae)に属する種、テントウムシ科(Coccinellidae)に属する肉食性の種、クモ目(Araneae)に属する種、及びダニ目(Acari)に属する肉食性の種は好適な天敵である。いずれの天敵を使用するかは、防除すべき対象生物の種類により適宜定まる。例えば、アザミウマ目やアブラムシ上科に属する種の天敵としては、ハナカメムシ科(Anthocoridae)に属する種が挙げられる。特にアザミウマ目に属する種の天敵としては、ヒメハナカメムシ属(Orius)に属する種、例えば、タイリクヒメハナカメムシ(Orius strigicollis)、ナミヒメハナカメムシ(Orius sauteri)、コヒメハナカメムシ(Orius minutus)、ツヤヒメハナカメムシ(Orius nagaii)、ミナミヒメハナカメムシ(Orius tantillus)、シノビハナカメムシ(Orius insidiosus)、トリスチコロルヒメハナカメムシ(Orius tristicolor)又はオウシュウヒメハナカメムシ(Orius laevigatus)が好適な生物資材となる。また、アブラムシ上科に属する種やカイガラムシ上科に属する種の天敵としては、テントウムシ科に属する肉食性の種、例えば、ナミテントウ(Harmonia axyridis)、フタモンテントウ(Adalia bipunctata)、ナナホシテントウ(Coccinella septempunctata)、ダンダラテントウ(Menochilus sexmaculatus)、アカホシテントウ(Chilocorus rubidus)、ヒメアカホシテントウ(Chilocorus kuwanae)、ヒメカメノコテントウ(Propylaea japonica)、オオテントウ(Synonycha grandis)、ヨツボシテントウ(Phymatosternus lewisii)、ベダリアテントウ(Rodolia cardinalis)、アカヘリテントウ(Rodolia rufocincta)、ベニヘリテントウ(Rodolia limbata)又はシロジュウシホシテントウ(Calvia quatuordecimguttata)が好適な生物資材となる。さらに、ハダニ科に属する種やアザミウマ目に属する種の天敵としては、カブリダニ科(Phytoseiidae)に属する種、例えば、スワルスキーカブリダニ、ミヤコカブリダニ(Amblyseius californicus)、ケナガカブリダニ(Amblyseius womersleyi)、ニセラーゴカブリダニ(Amblyseius eharai)、ククメリスカブリダニ(Amblyseius cucumeris)、キイカブリダニ(Gynaeseius liturivorus)、ヘアカブリダニ(Neoseiulus barkeri)又はチリカブリダニ(Phytoseiulus persimilis)が好適な生物資材となる。また、ハダニ科に属する種、アザミウマ目に属する種及びアブラムシ上科に属する種のいずれにも好適な天敵生物資材としては、ナガカメムシ科に属する種、例えば、オオメカメムシ(Piocoris varius)が挙げられる。そして、コナジラミ科に属する種の天敵としては、カスミカメムシ科に属する種、例えば、タバコカスミカメ(Nesidiocoris tenuis)、クロヒョウタンカスミカメ(Pilophorus typicus)又はコミドリチビトビカスミカメ(Campylomma chinensis)が好適な生物資材となる。
本態様の選抜方法で用いる天敵は、野生型である必要はない。例えば、天敵がテントウムシ科に属する種のように比較的大型の昆虫か、又は小型であっても歩行能力の優れた昆虫の場合には、飛翔不能系統であってもよい。
本態様の選抜方法で用いる母集団は、単一種で構成される。前記母集団を構成する個体は、捕食又は寄生する対象生物が同じであれば成虫若しくは幼虫、又は雌雄を問わない。ただし、母集団を構成する各個体の成長段階は同程度であることが好ましい。また、母集団を構成する個体数の数は、特に限定はしない。通常、母集団は大きいほどよいが、一方で個々の個体について歩行及び/又は飛翔活動量を測定する必要があることから、例えば、3個体〜1000個体、20個体〜500個体、又は50個体〜300個体の範囲が好ましい。
本態様の選抜方法で用いる母集団を構成する個体は、餌となる被食者又は寄主密度が多い環境に置かれていなかった個体、すなわち、空腹状態の個体が好ましい。被食者又は寄主密度が多い環境に置かれた個体は、通常、地域集中探索行動をとるためである。母集団の個体を空腹状態にする方法は、特に限定はしない。例えば、半日〜数日給餌しない絶食方法が挙げられる。ただし、飢餓状態の個体は逆に活動量が低下し得ることから過剰に絶食させないように留意する。飢餓状態を避けるためには、例えば、本工程に供する前に絶食処理後の各個体に少量給餌する方法が挙げられる。例えば、ハナカメムシ科個体であれば、半日間絶食させた後、本工程前に1頭あたりにアザミウマ目個体を1〜数頭給餌すればよい。その他、1日あたりの給餌量を制限した個体を本工程に供してもよい。
本工程では、母集団を構成する各個体について、一定時間あたりの歩行及び/又は飛翔活動量を測定する。歩行及び/又は飛翔活動量の測定方法は、直接的方法又は間接的方法のいずれであってもよい。歩行活動量や飛翔活動量は、それぞれ歩行距離や飛行距離に基づいて算出することができる。例えば、一定時間の天敵の行動をビデオ撮影し、その行動軌跡を画像処理ソフトウェア、例えばImage Hyper II等の昆虫行動解析ソフトで解析することによって歩行及び/又は飛翔活動量を歩行距離又は飛翔距離として直接的に測定すればよい。また、測定容器に入れた個体が一定時間内に所定の位置を通過した際にセンサーによりその通過回数をカウントすることによって、カウント数として個体の歩行及び/又は飛翔活動を測定することもできる。このような測定は、例えば、Drosophila Activity Monitoring Systemのような昆虫行動測定システムを用いることで達成できる。この測定システムを用いれば、天敵の歩行及び/又は飛翔活動量を一度に多数測定することができるため便利である。
測定を行う一定時間には特に制限はない。例えば、5分間、10分間、15分間、20分間、25分間、30分間、35分間、40分間、45分間、50分間、55分間及び1時間等でよいが、これに限定はしない。
母集団における各個体の一定時間あたりの歩行及び/又は飛翔活動量を上記測定によって明らかにした後、母集団の中で歩行及び/又は飛翔活動量が低い個体、すなわち下位35%、好ましくは30%、25%又は20%の範囲に属する個体を抽出する。例えば、母集団が100個体から構成される場合、歩行及び/又は飛翔活動量の低い下位35個体を抽出すればよい。この抽出工程によって抽出された個体が地域集中探索時間の長い個体、すなわち、地域探索型天敵となり得る。
1−3.効果
本態様の選抜方法によれば、地域集中探索型天敵を簡便に選抜することができる。この選抜方法で得られる個体は、成虫、幼虫を問わないことから、幼虫期の定着率の向上にもつながる他、カブリダニ科に属する種のように飛翔性のない天敵に対しても適用できる。
2.地域集中探索型天敵作出方法
2−1.概要
本発明の第2の態様は、地域集中探索型天敵作出方法に関する。本態様の方法は、第1態様で選抜した地域集中探索型天敵を用いて、地域集中探索型の形質が安定化した系統(地域集中探索型系統)を作出することを特徴とする。本態様の作出方法によれば、放飼した個体の後代であっても、餌密度にかかわらず定着率の高い形質を有する地域集中探索型系統の生物的防除用天敵を作出し、提供することができる。
2−2.方法
本態様の作出方法は、必須工程として「第1交配工程」及び「第1交雑個体抽出工程」を、また選択工程として「同系交配工程」及び「第2交雑個体抽出工程」を含む。以下、それぞれの工程について説明をする。
(1)第1交配工程
「第1交配工程」は、第1態様に記載の選抜方法で得られた地域集中探索型天敵の個体を親個体の少なくとも一方として交配を行う工程である。交配に用いる地域集中探索型天敵の個体は、雌雄を問わない。また交配に用いる他方の親個体は、地域集中探索型天敵の個体であってもよいし、野生型個体、他の行動特性を有する個体、又は低温耐性若しくは高い繁殖力等の所望の変異を有する個体であってもよい。
本工程における交配方法は、当該分野で公知の方法によって行えばよく、特に制限をしない。通常は、雌雄を同一容器内に投入し、自然交配させればよい。交配後は、当該分野で公知の方法によって採卵した後、公知の方法で交雑第1世代(F1)を飼育する。
なお、地域集中探索型と広域探索型の行動の違いは餌密度に応じた行動のスイッチングに関与する遺伝子によって決定されていると考えられる。この場合、本工程後に得られるF1個体の遺伝子型は、ヘテロである可能性がある。さらに、地域集中型が広域型に対して劣性である場合、次の第1交雑個体抽出工程で、目的とする地域集中探索型系統を得ることができない可能性もある。したがって、必要であれば、本工程の補助工程として、F1個体間で兄妹交配を1回行い、得られた交雑第2世代(F2)を次の第1交雑個体抽出工程の交雑個体とすることもできる。
(2)第1交雑個体抽出工程
「第1交雑個体抽出工程」は、前記第1交配工程後に得られる交雑個体からなる母集団において一定時間あたりの歩行及び/又は飛翔活動量が低い個体、すなわち下位35%、好ましくは30%、25%又は20%の範囲に属する個体を抽出する工程である。本工程は、母集団を構成する個体群が第1交配工程で得られた交雑個体であることを除けば、第1態様の抽出工程に記載の方法に準じる。本工程で得られた個体を地域集中探索型系統として抽出することができる。
(3)同系交配工程
「同系交配工程」は、前記第1交雑個体抽出工程で得られた個体を親個体として同系交配を行う工程である。本工程は、選択工程であり、必要に応じて第1交雑個体抽出工程後に行えばよい。本明細書において「同系交配」(sib mating)とは、対象とする形質(より具体的にはその形質の原因遺伝子)が同一である個体間の交配をいう。本態様の場合、交配する雌雄が共に地域集中探索型の系統間の交配となる。また、同腹の雌雄どうしで、対象とする性質が同一である兄妹交配も同系交配に含まれる。
本工程は少なくとも1回行う。複数回、例えば、5回以上、7回以上、又は9回以上を繰り返して行ってもよい。同系交配の回数の上限は特に制限はしないが、通常は15回以下で足りる。また、同系交配は、各回を連続して行う必要はなく、本態様の作出方法において目的とする地域集中探索型の形質に関して総計で5回以上選抜すればよい。したがって、本工程は、同系交配単位で他の工程間に分散することができる。例えば、同系交配を2回行った後、次の第2交雑個体抽出工程を行い、再び同系交配を2回以上行うこともできる。
(4)第2交雑個体抽出工程
「第2交雑個体抽出工程」は、前記交配工程後に得られる交雑個体からなる母集団において、一定時間あたりの歩行及び/又は飛翔活動量が低い個体、すなわち下位35%、好ましくは30%、25%又は20%の範囲に属する個体を抽出する工程である。本工程は、第1交雑個体抽出工程に記載の方法に準じて行えばよい。
2−3.効果
本態様の作出方法によれば、放飼直後であっても餌密度にかかわらず定着率の高い遺伝的に固定された地域集中探索型系統の生物的防除用天敵を作出することができる。また、同系交配工程と第2交雑個体抽出工程を行うことで、地域集中探索型をより固定化した系統を得ることができる。
3.地域集中探索型天敵製剤
3−1.概要
本発明の第3の態様は、地域集中探索型天敵製剤に関する。本態様の天敵製剤によれば、放飼直後であっても餌密度にかかわらず定着率の高い地域集中探索型系統の生物的防除用天敵を提供することができる。
3−2.構成
本明細書において「天敵製剤」とは、天敵を利用した生物農薬をいう。本態様の天敵製剤は、第1態様に例示した昆虫綱又はクモ綱に属する天敵の生きた個体を有効成分として包含する。個体の成長段階は問わない。例えば、成虫、蛹(完全変態の昆虫の場合)、幼虫、卵、又はその組み合わせのいずれであってもよい。また、原則として雌雄のいずれであってもよい。
本態様の天敵製剤に含まれる天敵は、天敵製剤の対象害虫に応じて適宜定まる。例えば、アザミウマ目やアブラムシ上科に属する種の天敵製剤であれば、ハナカメムシ科に属する種が挙げられる。特にアザミウマ目に属する種が対象害虫の場合、ヒメハナカメムシ属に属する種、例えば、上記第1態様に例示した種が好適な有効成分となる。また、ハダニ科に属する種やアザミウマ目に属する種が対象害虫の場合、上記第1態様に例示したカブリダニ科に属する種が好適な有効成分となる。さらに、アブラムシ上科に属する種やカイガラムシ上科に属する種が対象害虫の場合、上記第1態様に例示したテントウムシ科に属する肉食性の種が好適な有効成分となる。また、ハダニ科に属する種、アザミウマ目に属する種及びアブラムシ上科に属する種が対象害虫の場合、ナガカメムシ科に属する種が好適な有効成分となる。そして、コナジラミ科に属する種が対象害虫の場合、カスミカメムシ科に属する肉食性の種が好適な有効成分となる。
本態様の天敵製剤は、歩行及び/又は飛翔活動量が低い生物的防除用天敵を含む。歩行及び/又は飛翔活動量が低い天敵個体は、天敵個体群からなる母集団において一定時間あたりの歩行及び/又は飛翔活動量が低い個体、例えば、下位35%、好ましくは30%、25%又は20%の範囲に属する個体及び/又はその後代である。この個体は、本発明の第1態様で得られた個体であってもよい。また、その後代は、本発明の第2態様で得られた個体であってもよい。
本態様の天敵製剤は、前記有効成分である天敵の他に、その天敵の餌となる被食生物又は寄主、天敵の足場又は固定担体としてのオガクズや紙片を含むことができる。使用方法を記載した説明書を含んでいてもよい。天敵製剤は、天敵が死滅しない通気性のある容器に封入しておけばよい。
3−3.効果
本態様の地域集中探索型天敵製剤によれば、餌密度にかかわらず放飼後の定着率が高く、補強天敵資材を必要としないことから対象害虫を低コストで安定的に防除できる天敵製剤を提供することができる。
<実施例1:タイリクヒメハナカメムシの地域集中探索時間と歩行距離との関係>
(目的)
天敵における地域集中探索時間と歩行距離との関係について検証した。
(方法)
生物的防除用天敵にはタイリクヒメハナカメムシを用いた。半日間絶食させて空腹状態にしたタイリクヒメハナカメムシの成虫にミナミキイロアザミウマの成虫を1頭捕食させた後、タイリクヒメハナカメムシの歩行活動をビデオカメラで撮影した。その動画を、昆虫行動解析ソフト(Image Hyper II、サイエンスアイ株式会社)を用いて行動の軌跡を追い、ミナミキイロアザミウマを捕食後、一定時間(25分間=1500秒)内における地域集中探索時間とその歩行距離を測定した。タイリクヒメハナカメムシが地域集中探索状態にあるか広域探索状態にあるかの判断は、地域集中探索状態の個体が非直線的に歩行するのに対して、広域探索状態にある個体は直線的に歩行する性質を利用した。すなわち、直径50mmのシャーレ内で、ミナミキイロアザミウマを捕食し終えたタイリクヒメハナカメムシの成虫が非直線的に歩き始めてから(地域集中探索状態の始点)、シャーレの縁に沿ってまっすぐ歩くようになるまで(広域探索状態の始点)の時間を地域集中探索時間とした。
(結果)
図1に結果を示す。各個体の一定時間内の歩行距離と地域集中探索時間の関係を解析すると、タイリクヒメハナカメムシは雄成虫(A)及び雌成虫(B)ともに高い負の相関関係があることが明らかとなった。つまり、この結果は、集団の中から歩行活動量の低い個体を抽出することで地域集中探索時間の長い個体を選抜できることを示している。
<実施例2:タイリクヒメハナカメムシにおける地域集中探索型個体選抜方法>
(目的)
本発明の選抜方法を用いて歩行及び/又は飛翔活動量の低いタイリクヒメハナカメムシの個体を選抜し、その効果を確認する。
(方法)
生物的防除用天敵にはタイリクヒメハナカメムシを用い、歩行及び/又は飛翔活動量の測定個体数は雌雄合計で180頭とした。基本的な操作は、実施例1に準じた。ただし、測定方法については、母集団を構成する個体数が多いため実施例1に記載のように昆虫行動解析ソフトを用いて個体ごとの地域集中探索時間を測定する方法では時間と労力を要する。そこで、ショウジョウバエの活動測定に用いられている昆虫行動測定装置(Drosophila Activity Monitor 2;TriKinetics社)を用いて、タイリクヒメハナカメムシ成虫の歩行活動量を測定した。この装置は、ガラスチューブ内でタイリクヒメハナカメムシが歩行及び/又は飛翔し、センサーの間を通過した回数をカウントすることによって、各個体の歩行及び/又は飛翔活動量を測定する仕組みである。歩行及び/又は飛翔活動量の測定時間は1時間とした。測定結果を図2に示す。この結果に基づいて一定時間あたりの歩行及び/又は飛翔活動量が低い下位30%の個体群(A群)及び歩行及び/又は飛翔活動量が高い上位30%の個体群(B群)を抽出した。
続いて、A群及びB群をほぼ同数のミナミキイロアザミウマが存在する施設ナス栽培圃場にそれぞれ放飼し、放飼後の区あたりに存在するタイリクヒメハナカメムシの数、及びミナミキイロアザミウマに対する防除効果を比較した。
(結果)
結果を図3及び4に示す。図3より、母集団において歩行及び/又は飛翔活動量が低い下位30%のA群は、同母集団の歩行及び/又は飛翔活動量が高い上位30%のB群よりも放飼後の区あたりに存在する個体数が多いことが明らかとなった。これは、本発明によって選抜された歩行及び/又は飛翔活動量が低く、地域集中探索時間が長いタイリクヒメハナカメムシ(A群)は、歩行及び/又は飛翔活動量が高く、地域集中型探索時間が短いタイリクヒメハナカメムシ(B群)と比べて定着率が高いことを示している。
また、図4から、作物1株あたりのミナミキイロアザミウマの個体数は、A群の方がB群よりも少なく、選抜された歩行及び/又は飛翔活動量が低いタイリクヒメハナカメムシによってミナミキイロアザミウマを効率的に防除できることが立証された。
<実施例3:ナミテントウの地域集中探索時間と歩行距離との関係>
(目的)
本発明の地域集中探索型天敵の選抜方法における一般性を確認した。前記実施例1及び2ではタイリクヒメハナカメムシ天敵として用いたが、他の天敵でも歩行活動量と地域集中探索時間の長さとの間に負の相関関係があることを確認した。
(方法)
生物的防除用天敵にはナミテントウを用いた。ナミテントウは、タイリクヒメハナカメムシと同じ昆虫綱に属する種であるが、タイリクヒメハナカメムシがカメムシ目(Hemiptera)に属する種であるのに対して、コウチュウ目(Coleoptera)に属し、系統的には非常に離れている。
基本的な方法は、実施例1に従った。1日間絶食させて空腹状態にした飛翔不能系統のナミテントウ雄成虫に餌としてエンドウヒゲナガアブラムシの成虫を1頭捕食させた後、ナミテントウの歩行活動をビデオカメラで撮影した。その動画を、昆虫行動解析ソフト(Image Hyper II、サイエンスアイ株式会社)を用いて行動の軌跡を追い、餌を捕食後、一定時間(30分間=1800秒)内における地域集中探索時間とその歩行距離を測定した。ナミテントウが地域集中探索状態にあるか広域探索状態にあるかの判断は、実施例1と同様に、地域集中探索状態の個体と広域探索状態にある個体の性質を利用した。
(結果)
図5に結果を示す。この図から、ナミテントウにおいてもタイリクヒメハナカメムシと同様に一定時間内の歩行距離と地域集中探索時間との関には高い負の相関関係があることが明らかとなった。したがって、実施例1の結果は特定の種に特異的にみられる現象ではなく、天敵において共通する現象であることが立証された。
<実施例4:ナミテントウにおける地域集中探索型個体の選抜とその効果>
(目的)
実施例2においてタイリクヒメハナカメムシで確認された効果がナミテントウにおいても同様にみられるか否かを確認した。
(方法)
生物的防除用天敵には実施例3と同様に飛翔不能系統のナミテントウを用いた。歩行活動量の測定個体数は130頭とした。基本的な操作は、実施例3に準じた。歩行活動量の測定時間は1時間時間とした。測定結果を図6に示す。この結果に基づいて一定時間あたりの歩行活動量が低い、すなわち地域集中探索時間の長い上位30%の個体群(A群)及び歩行活動量が高い、すなわち地域集中探索時間の短い(=広域探索型である)下位30%の個体群(B群)を抽出した。
続いて、A群及びB群をほぼ同数のワタアブラムシが存在する施設ナス栽培圃場にそれぞれ放飼し、放飼後の区あたりに存在するナミテントウの数、及びワタアブラムシに対する防除効果を比較した。
(結果)
結果を図7及び8に示す。図7より、A群は、B群よりも放飼後の区あたりに存在する個体数が多いことが明らかとなった。これは、実施例2で検証したタイリクヒメハナカメムシの例と矛盾しない。また、図8から、作物1葉あたりのワタアブラムシの個体数は、A群の方がB群よりも少なかった。この結果も実施例2で検証したタイリクヒメハナカメムシによるミナミキイロアザミウマの防除効果と矛盾しない。
したがって、母集団において一定時間あたりの歩行及び/又は飛翔活動量が低い、すなわち地域集中探索時間の長い上位30%の天敵個体群は、その種類を問わず地域集中探索型天敵であり、その被食者や寄主を効率的に防除できることが立証された。

Claims (6)

  1. 生物的防除用天敵としての昆虫綱(Insecta)又はクモ綱(Arachnida)に属する個体群からなる集団において餌密度にかかわらず、放飼後の一定時間あたりの歩行活動量が低い下位35%の個体を遺伝的に定着率の高い個体として抽出する抽出工程を含む地域集中探索型天敵の選抜方法で得られる地域集中探索型天敵の使用
  2. 前記個体群が空腹状態にある、請求項1に記載の使用
  3. 前記母集団が50〜300個体で構成される、請求項1又は2に記載の使用
  4. 前記天敵がハナカメムシ科(Anthocoridae)、カスミカメムシ科(Miridae)、ナガカメムシ科(Lygaeidae)、テントウムシ科(Coccinellidae)及びカブリダニ科(Phytoseiidae)からなる群のいずれかの科に属する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用
  5. 請求項1に記載の抽出工程で得られた地域集中探索型天敵の個体を少なくとも一方の親個体として交配を行う第1交配工程、及び
    前記第1交配工程後に得られる交雑個体からなる母集団において、一定時間あたりの歩行活動量が低い下位35%の個体を抽出第1交雑個体抽出工程
    を含む地域集中探索型天敵の作出方法で得られる地域集中探索型天敵の使用
  6. 前記第1交雑個体抽出工程で得られ個体を親個体として同系交配を少なくとも1回行う同系交配工程及び
    前記同系交配後に得られる交雑個体からなる母集団において、一定時間あたりの歩行活動量が低い下位35%の個体をさらに抽出する第2交雑個体抽出工程
    を含む地域集中探索型天敵の作出方法で得られる、請求項5に記載の使用
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