JP6594617B2 - 燃料用油滓 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料用油滓に関する。より詳しくは、植物油脂の製造工程で副生するソーダ油滓を酸で中和した中和ソーダ油滓を原料とし、重油をはじめとする化石燃料と混合して効率よく使用される燃料用油滓に関する。
植物油脂の精製工程(図1の上半分のフロー参照)において脱酸工程で副生されるソーダ油滓は、水分を含み、かつ高粘性・ペースト状のものであるため、取扱いが困難であり、有益な利用方法が少なく、産業用廃棄物等として処分されることが多かった。そこで、現在では、いくつか有効利用法が提案されるようになってきている。例えば、石鹸や塗料の原料となる脂肪酸の製造に利用されており、一部の工場では工業化もされている。また、ソーダ油滓は栄養素を多く含むため、飼料原料としての利用可能性も検討されている。
このような飼料用油滓の例として、例えば、特許文献1には、ソーダ油滓を酸で中和した後、乾燥したものと、乾燥していないものとを混合し、製造コストを抑えるとともに、取扱いを容易とした飼料原料の製造方法が記載されている。また、特許文献2には、特定の水分及び脂肪酸ナトリウムを含有させることにより、取扱いに優れ、家畜や家禽の飼料効率を高めて、生産性を向上させた飼料用油滓が記載されている。しかしながら、これらはあくまで飼料用油滓であって、本発明のような燃料用油滓とは本質的に異なるものである。言い換えれば、本発明は、これら中和ソーダ油滓の燃料用用途を新たに見出したものである。
他方、ソーダ油滓から得られる残渣油を燃料として用いることも行われている。例えば、特許文献3には、ソーダ油滓を分解して得られるダーク油を重油に混合し、CO発生量を削減した低炭素化石燃料を製造する方法が記載されている。しかしながら、これは油滓を分解して得られるダーク油を使用するものであって、油滓そのものを燃料として使用するものではない。そのため、油滓を分解せずにそのまま燃料として用いる、本発明とは本質的に異なるものである。これまで油滓そのものを燃料用として使用する技術は知られていない。
特開2008−067672号公報 特開2008−194033号公報 特開2011−241366号公報
本発明の課題は、取扱いが容易であり、しかも、重油などの化石燃料と混ざりやすく、優れた混合安定性を有する燃料用油滓を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、植物油の精製工程で副生されるソーダ油滓を酸で中和した中和ソーダ油滓が、特定の水分含量を含有しているときに、優れた混合安定性を有し、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の一態様によれば、中和ソーダ油滓を原料とし、水分含量が10〜30質量%である、化石燃料に混合するための燃料用油滓を提供することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、燃料用油滓に含まれる可溶無窒素物の含量が10質量%以下であることを特徴とする、上記燃料用油滓を提供することができる。
本発明の一態様によれば、上記燃料用油滓を、化石燃料に含ませてなる、燃料を提供することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、化石燃料に対して、上記燃料用油滓を1〜20質量%含ませてなることを特徴とする、上記燃料を提供することができる。
本発明によれば、これまで産業廃棄物として処分されていたソーダ油滓を中和ソーダ油滓へ変換することで燃料用油滓として有効活用することができるようになった。また、本発明の燃料用油滓は、元のソーダ油滓と比べて流動性が良く取扱いが容易であり、さらに適度な水分含量に保たれているため、取扱いの容易性と燃焼効率の良好性の微妙なバランスが達成された燃料を提供することができる。しかも重油などの化石燃料と混ざりやすく、化石燃料と混合した際には浮遊物や沈殿物が生じにくいことから、性状に優れた燃料を求める需要者の要求を満足することができる。加えて、植物を原料としている燃料であるため、環境にやさしい燃料であり、重油に比べて安価であるため、コスト面でも魅力のある燃料である。
本発明の中和ソーダ油滓の製造フローを示す説明図である。以下、ナタネを例に挙げて説明する。図1の上半分が一般的なナタネ油の精製工程であり、下半分が中和ソーダ油滓及び混合ソーダ油滓の製造フローである。
1:ナタネソーダ油滓
2:ナタネ中和ソーダ油滓
3:ナタネ中和ソーダ油滓(未乾燥)
4:ナタネ中和ソーダ油滓(乾燥)
5:混合ソーダ油滓
11:ナタネ中和ソーダ油滓タンク
12:サービスタンク
13:強制撹拌式薄膜蒸発機
14:真空発生装置
15:スタテックミキサー
16:混合ソーダ油滓タンク
以下、本発明の「燃料用油滓」について順を追って説明する。
本発明における「燃料用油滓」について、中和ソーダ油滓を原料とし、水分含量が0〜40質量%であるものであれば特に限定されない。例えば、植物油の原油にリン酸と苛性ソーダを添加し、遠心分離などによって精製する際、精製された植物油を除いて得られるソーダ油滓に硫酸等の酸を添加して中和処理して得られる中和ソーダ油滓と、この中和ソーダ油滓に対し乾燥処理を施し、元の乾燥されていない前記中和ソーダ油滓と混合して水分含量を適度に調節した混合ソーダ油滓も、好適な例として、本発明の「燃料用油滓」に含まれる。ここで、中和ソーダ油滓の乾燥方法は特に制限されず、例えば、真空乾燥法、熱風乾燥法、凍結乾燥法、噴霧乾燥法などが用いられる。
(原料)
本発明の「燃料用油滓」の原料としては、植物油の精製工程において副生されるソーダ油滓を酸で中和した中和ソーダ油滓が用いられる。本発明の「燃料用油滓」は、基本的に「中和ソーダ油滓からなる」ことが好ましいが、燃料用油滓としての後述する好ましい性質(混合安定性等)を変えない範囲内で、他の油滓(例えば、中和される前のソーダ油滓や硫酸等を添加して酸性とした酸性油滓など)を適宜含有させることも可能である。例えば、燃料用油滓全体の0〜30質量%を中和ソーダ油滓から他の油滓に置き換えて使用することができる。植物油としては、食用油脂として使用が認められているものであれば、特に制限されない。例えば、ナタネ油、ダイズ油、アマニ油、サフラワー油、ゴマ油、コメ油、ヒマワリ油、パーム油などが挙げられる。本発明においては、特にナタネ油、ダイズ油を用いることが好ましい。以下、ナタネ油原油を例に、図1を参照しながら、本発明の「燃料用油滓」の原料となる中和ソーダ油滓及び混合ソーダ油滓の製造フローについて詳しく説明する。
(中和工程)
まず、精製工程の脱酸工程で副生されたナタネソーダ油滓1は、硫酸、塩酸、リン酸、クエン酸等の酸で中和(pH6〜8程度)され、ナタネ中和ソーダ油滓2が得られる。得られたナタネ中和ソーダ油滓2は、90℃前後でナタネ中和ソーダ油滓タンク11に貯留される。中和される前のナタネソーダ油滓1の水分含量はおおよそ50質量%程度であり、中和工程を経た直後のナタネ中和ソーダ油滓2の水分含量はおおよそ40〜50質量%程度である。
(乾燥工程)
ナタネ中和ソーダ油滓タンク11に貯留されたナタネ中和ソーダ油滓2は、ポンプにより移送され、サービスタンク12を経て(又は経ずに)、乾燥工程に付される。乾燥は、真空発生装置14(真空ポンプ、100torr)と連結した強制撹拌式薄膜蒸発機(回転翼式薄膜蒸発機ともいう)13を用いて行うことが好ましい。
強制撹拌式薄膜蒸発機としては、例えばルーワ(Luwa)式蒸発機や高粘度用薄膜蒸発機が挙げられる。ルーワ式蒸発機とは、処理物質を回転(ローター)翼により強制撹拌して加熱面上に薄膜・拡散降下させることにより、効率よく蒸発を行わせる装置であり、国内では木村化工機(株)他が取り扱っている。高粘度用薄膜蒸発機としては、例えば(株)神戸環境ソリューションの商品名「エクセバ」が挙げられる。
乾燥条件としては、例えば、蒸発機13の入口では65℃前後、出口では125℃前後とし、約200〜300kg/時間の処理流量にて行う。これにより、乾燥後の水分含量を0.5質量%以下、好ましくは0.2〜0.3質量%以下(0質量%も含む)にまで調節することができる。
(混合工程)
混合工程では、ナタネ中和ソーダ油滓タンク11から乾燥工程を経ずに移送されてきた未乾燥のナタネ中和ソーダ油滓3(=ナタネ中和ソーダ油滓2)と、乾燥工程で乾燥されたナタネ中和ソーダ油滓4とをスタテックミキサー15で直ちに混合して混合ソーダ油滓5を得る。
未乾燥のナタネ中和ソーダ油滓3と乾燥工程で乾燥されたナタネ中和ソーダ油滓4との混合比率は、例えば、1:3〜3:1の質量比で混合することが好ましい。より好ましくは、2:3〜3:2の質量比であり、1:1の質量比で混合することが特に好ましい。
混合の方法としては、好ましくは70〜90℃、より好ましくは70〜80℃、最も好ましくは70〜75℃の温度で、約100〜150kg/時間の流量で連続的に混合処理する方法などが挙げられる。得られた混合ソーダ油滓5は、混合ソーダ油滓タンク16に貯留された後、ローリーで出荷される。
これまで、乾燥工程を経た中和ソーダ油滓と乾燥工程を経ていない中和ソーダ油滓が、同じ種類の植物油の精製工程で副生されたソーダ油滓を酸で中和したものを用いる例を説明してきたが、前記中和ソーダ油滓は、異なる2種類の植物油の精製工程で副生されたソーダ油滓を中和したものであってもよい。すなわち、第一の植物油がナタネ油であり、第二の植物油がダイズ油であり、それぞれの精製工程で副生される第1のナタネソーダ油滓および第2のダイズソーダ油滓をそれぞれ酸で中和して第1のナタネ中和ソーダ油滓および第2のダイズ中和ソーダ油滓を得て、第1のナタネ中和ソーダ油滓を乾燥し、これに乾燥されていない第2のダイズ中和ソーダ油滓を混合することにより混合ソーダ油滓を得ることも好ましい態様として挙げられる。
上述した製造フローにより、製造された中和ソーダ油滓2及び混合ソーダ油滓5は、後述するように、適度な流動性を有しており、取扱いが容易であり、燃料用油滓として好適に使用することができる。また、得られた中和ソーダ油滓2及び混合ソーダ油滓5の水分含量は0〜40質量%であり、好ましくは10〜30質量%であり、さらに好ましくは15〜25質量である。そして、燃料用油滓に含まれる可溶無窒素物の含量は10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下である。水分含量及び可溶無窒素物の含量等は、乾燥された又は乾燥されていない中和ソーダ油滓の混合比率の調整や、植物油を得るための原料ロットの選択などによって、適宜所望の数値範囲内に調節することができる。なお、この際、適度な粘度としては、ディジタル粘度計((株)トキメック製、DVU−E11形)で測定(30℃)した値が、0.4〜1.5Pa・sであることが挙げられる。
未乾燥のナタネ中和ソーダ油滓3は、例えば、水分含量が40質量%の粘性のある流体であり、後述するように流動性は良好である。これを乾燥すると、例えば、水分含量が0質量%である粘性の高い(温度低下で固化する)流体となり、流動性が乏しくなる。したがって、乾燥されたナタネ中和ソーダ油滓と未乾燥のナタネ中和ソーダ油滓とを混合することにより、水分含量及び流動性が適度に調整された燃料用油滓を得ることができる。
本発明においては、燃料用油滓(中和ソーダ油滓及び混合ソーダ油滓)に含まれる水分含量が40質量%よりも多いと、流動性は良いが総発熱量は少なくなる。他方、水分含量が0質量%になると粘性が高くなり、ドロドロとしていて流動性は悪くなるが、総発熱量は多くなる。このような観点から、燃料用油滓の水分含量は、0〜40質量%が好ましく、特に、10〜30質量%、さらに15〜25質量%が好ましい。ここで、「水分含量0質量%」とは、実質的に0質量%とみなされる場合を含んでおり、例えば、水分含量が0.2質量%である場合は、0質量%とみなすことができる。したがって、本発明では、0.2質量%を水分含量の下限とすることもできる。
また、本発明においては、燃料用油滓(中和ソーダ油滓及び混合ソーダ油滓)に含まれる可溶無窒素物の含量が10質量%よりも多いと、燃焼した後に残る残留物の量が多くなり、きれいに燃焼しない。また、きれいに燃焼せず、燃焼後の残留物の量が多ければ、炉を傷める原因となる。このような観点から、燃料用油滓に含まれる可溶無窒素物の含量は、10質量%以下が好ましく、より5質量%以下が好ましく、さらに3質量%以下が好ましい。なお、可溶無窒素物の含量は、例えば、植物油を得るための原料ロットを選択することによって調節できる。
さらに、本発明においては、燃料用油滓(中和ソーダ油滓及び混合ソーダ油滓)に含まれる他の成分(例えば、粗脂肪、粗タンパク質、粗繊維、粗灰分、ナトリウム、リン脂質など)の含有量を適当な数値範囲に調節することによって、燃料としての効率性をより一層向上させることもできる。例えば、ナトリウムは炉を傷める原因となることがよく知られており、できる限り燃料に含まれていない方が望ましい。そこで、本発明の「燃料用油滓」を、例えば水洗してナトリウムを取り除いてから用いることにすれば、炉を傷める原因が少なくなり、より好ましい。
なお、本発明において、燃料用油滓に含まれる水分、粗脂肪、粗タンパク質、粗繊維、粗灰分、可溶無窒素物、ナトリウム、リン脂質、熱量は、以下の公知の方法を用いて定量することができる。
<水分>
水分の定量法としては、例えば、カールフィッシャー法が用いられる。カールフィッシャー法とは、水と選択的かつ定量的に反応するカールフィッシャー試薬を用いて行われる。カールフィッシャー試薬は、ヨウ素、二酸化硫黄、ピリジン及びメタノールを混合して調製されたものである。水1モルに対し、ヨウ素1モルが反応する。また、水分の定量としては、乾燥減量法、蒸留法、赤外吸収法、電解法その他の電気的な方法なども挙げられる。
<粗脂肪>
粗脂肪の定量法としては、例えば、酸分解ジエチルエーテル抽出法が用いられる。この方法では、粗脂肪を含む試料を塩酸によって分解し、ジエチルエーテルによって粗脂肪を抽出し、水層とエーテル層に分け、エーテル層に含まれる溶媒を除去して、乾燥することにより、粗脂肪を得るものである。この他、粗脂肪の定量法としては、ソックスレー抽出法、クロロホルム・メタノール抽出法なども挙げられる。
<粗タンパク質>
粗タンパク質の定量法としては、例えば、ケルダール法が用いられる。この方法は、窒素量を定量しタンパク質に換算する方法である。より具体的には、粗タンパク質を含む試料に濃硫酸を加えて加熱し、粗タンパク質などに含まれる窒素を硫酸アンモニウムに変換する。そして、これに過剰の水酸化ナトリウムを加えて加熱すると、アンモニアが発生するので、アンモニアをホウ酸溶液に捕集して、当該溶液を硫酸標準溶液にて滴定することで窒素量を測定する。測定された窒素量に窒素係数(6.25)をかけて粗タンパク質量が求められる。
<粗繊維>
粗繊維の定量法としては、例えば、ろ過法が用いられる。この方法では、まず粗繊維を含む試料に硫酸を加えて加熱し、ろ過する。次にろ紙の残留物を洗浄し水酸化ナトリウムを加えて加熱し、ろ過する。ろ紙の残留物を洗浄し乾燥して重量を測定し、次いで加熱灰化し乾燥して重量を測定し、両者の差から粗繊維量を算出する。
<粗灰分>
粗灰分の定量法としては、例えば、直接灰化法が用いられる。この方法では、粗灰分を含む試料を550〜600℃の温度で直接灰化させ、その重量を測定することで定量する。
<可溶無窒素物>
可溶無窒素物は、次の計算式:100−(水分+粗タンパク質+粗脂肪+粗繊維+粗灰分)によって定量される。
<ナトリウム>
ナトリウムの定量法としては、例えば、原子吸光光度法が用いられる。この方法では、ナトリウム原子に特異的な吸収を原子吸光光度計で測定し、試料中に含まれるナトリウム原子を定量する。試料からナトリウムを取り出す方法として、ナトリウムを含む試料を灰化し、塩酸によりナトリウムを抽出する方法(乾式灰化法)や、試料を直接希塩酸で振とう抽出する方法(塩酸抽出法)がある。
<リン脂質>
リン脂質の定量は、社団法人日本油化学会制定・基準油脂分析試験法(4.3.3.2−1996 リン脂質組成)に従って測定することができる。アセトン可溶物を差し引いた値(アセトン不溶物)として計算される。
<熱量>
熱量(カロリー)の定量は、例えば、ポンプ・カロリーメーター(爆発熱量計)を用いて測定することができる。
また、本発明の「燃料用油滓」は、原油などの化石燃料と混合し燃料として好適に使用される。化石燃料に対する配合割合は、化石燃料に対し1〜20質量%であることが好ましい。より好ましくは、1〜10質量%であり、さらに好ましくは、1〜5質量%である。この数値範囲で本発明の燃料用油滓を配合すると、混合安定性が優れたものとなり、性状の安定した燃料として安心して使用することができる。
ここで、「化石燃料」とは、鉱物資源の一種である原油を精製し製造された炭化水素を主成分として、他に少量の硫黄、酸素、窒素などの様々な物質を含む液状の油をいう。本発明における、化石燃料は特に制限されないが、このような化石燃料の好適な例としては、例えば、重油が挙げられる。なお、重油には、A重油、B重油、C重油の3種類があるが、本発明においては、いずれの重油であってもよい。
本発明の「燃料用油滓」を1〜20質量%含むように、重油に配合すると、界面活性剤や乳化剤等の添加剤を添加することなく、市販の混合槽で撹拌混合することのみで、混合安定性の良い燃料を得ることができる。本発明の「燃料用油滓」は化石燃料と非常に混ざりやすく、混ざった後も均一な状態を長く保つことができるから、重油燃焼炉用燃料をはじめとして、広範囲な用途が期待できる燃料となる。また、燃焼効率も優秀であり、重油の消費量を抑える省エネルギーな燃料となる。さらに、本発明の「燃料用油滓」は、植物原料由来の燃料なので、新たにCOを作り出さない(カーボンニュートラル)という特徴を持つ。したがって、本発明の「燃料用油滓」は、地球温暖化の防止に貢献する、環境にやさしい燃料である。加えて、本発明の「燃料用油滓」は、廃棄物の有効利用になるだけでなく、基本的に重油よりも安価であるから、コストを削減した燃料である。
次に、実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。以下において「%」とは、特別な記載がない場合、質量%を示す。
[実施例]
<ナタネ油:中和乾燥油滓>
製造日が異なる(植物油を得るための原料ロットが異なる)13種類の中和ナタネソーダ油滓を調製した。試料#1〜11は混合ソーダ油滓であり、試料#12は未乾燥の中和ナタネソーダ油滓であり、試料#13は乾燥後の中和ナタネソーダ油滓である。これらの栄養分析等を行った。その結果を表1〜2に示す。
Figure 0006594617
Figure 0006594617
<ダイズ油:中和乾燥油滓>
次に、製造日が異なる(植物油を得るための原料ロットが異なる)8種類の中和ダイズソーダ油滓を調製した。試料#1〜6は混合ソーダ油滓であり、試料#7は未乾燥の中和ダイズソーダ油滓であり、試料#8は乾燥後の中和ダイズソーダ油滓である。これらの栄養分析等を行った。その結果を表3〜4に示す。
Figure 0006594617
Figure 0006594617
<流動点、総発熱量、残留炭素分>
次に、中和ナタネソーダ油滓を例にして、流動点、総発熱量、残留炭素分について説明する。中和されていない、水分含量が50質量%の副生されたソーダ油滓(比較例)と、比較例を酸で中和した直後の乾燥されていない、水分含量が40質量%である中和ソーダ油滓(実施例1)と、実施例1の中和ソーダ油滓を乾燥した、水分含量が0質量%である乾燥中和ソーダ油滓(実施例3)と、実施例1と実施例3の中和ソーダ油滓を混合して水分含量を調節した、水分含量が20質量%である混合ソーダ油滓(実施例2)とを用意し、これらの流動点、総発熱量、残留炭素分を測定した。その結果を表5に示す。
Figure 0006594617
上記表5にあるように、比較例のソーダ油滓(中和前)は粘性が高く、ペースト状であり、流動点を測定できなかった。このように取扱いが大変不便なものであることが確認された。一方、ソーダ油滓を酸で中和した中和ソーダ油滓(実施例1〜3)はすべて、流動点が測定可能な程度にまで流動性が改善されており、中和処理によって取扱いが容易になることが判明した。ここで、流動点は、物体を冷やしていき、何℃で流動性を失うかという指標であるから、その値は低ければ低いほど流動性が高いことを示している。そうすると、上記表5の実施例1〜3では、水分含量が多い試料ほど低い値となっているから、燃料用油滓の水分含量を減らしていく(つまり乾燥していく)と、流動性が低下していくことが判明した。
一方、総発熱量は1g当たりどのくらいの熱量を発生できるかという指標であり、数値が高ければ高いほど、総発熱量が大きいこと(燃料としての効率性が良いこと)を示している。そうすると、上記表5の実施例1〜3では、水分含量が低い試料ほど数値が大きくなっているから、水分含量が低ければ低いほどを総発熱量が大きいことが判明した。なお、水分含量が50質量%の比較例と水分含量が40質量%の実施例1との間の差はわずかであり、ほぼ同じくらい総発熱量であると当業者には理解される。
また、残留炭素分は燃焼後の残留物の量であるから、低ければ低いほど良いものである。そうすると、上記表5の実施例1〜3では、水分含量が低い試料ほど数値が大きくなっているから、一見すると、水分含量が低ければ低いほどを残留炭素分の点で悪くなっているように見えなくもないが実際はそうではない。実質的な残留炭素分は水分を差し引いて計算されるべきであるからである。つまり、比較例は23.4%(11.7÷0.5)、実施例1は19.2%(11.5÷0.6)、実施例2は20.1%(16.1÷0.8)、実施例3は18.9%(18.9÷1)に換算すべきであるから、実施例1〜3の数値はいずれも比較例のそれよりも低い値となっており、中和することで残留炭素分も改善されていることが判明した。
以上のとおり、取扱いの容易性を考えた場合、水分含量は多いほど良いことになるが、燃料としての効率性を考えた場合、水分含量は低ければ低いほど良いことがわかった。つまり、取扱い容易性と燃料としての効率性は相反するものであり、両者のバランスを考慮する必要があることがわかった。そうすると、本発明の「燃料用油滓」の水分含量は0〜40質量%が好ましく、特に、10〜30質量%、さらに15〜25質量%が好ましい。
<混合安定性>
次に、本発明の「燃料用油滓(中和ソーダ油滓及び混合ソーダ油滓)」(実施例1〜3)が、中和されていない元のソーダ油滓(比較例)と比較して、重油に混ざりやすい性質であることを証明するため、A重油に前記油滓を1質量%、5質量%、10質量%、20質量%でそれぞれ添加し、その添加混合物の性質を以下の試験によって測定した。その結果を表6〜7に示す。なお、以下に示すように、本発明における「燃料用油滓」の混合安定性は、重油に当該油滓を混合したときの浮遊物の量及び沈殿物の量を測定することにより検討した。
[スポットテスト]
米国のJIS規格に相当するASTM規格のD4740試験に従って測定した。より詳細には、2倍程度に希釈した試料を90〜95℃で15〜20分加熱した後、ろ紙(テストペーパー)の上にスポットし、約100℃のオーブンで1時間乾燥した後、ろ紙上に描き出された模様を予め定められた指標に照らし合わせて5段階評価した。簡単にいうと、スポットテストは、浮遊物の量を測定するものである。
なお、上記5段階評価は以下のとおりである。なお、評価がNo.1〜No.2である場合、混合安定性が良いと評価される。
No.1:均質なスポット(インナーリングは認められない)
No.2:かすかに又は不完全にインナーリングが認められる
No.3:背景よりも少しだけダークな、薄いインナーリングが認められる
No:4:No.3よりも濃く、背景よりも幾分ダークなインナーリングが認められる
No.5:中心にとてもダークな固体かほとんど固体な部分が認められる。この中心部分は背景よりも明らかにダークである。
[トータルセジメント]
米国のJIS規格に相当するASTM規格のD4870試験に従って測定した。より詳細には、約100℃に加温した試料を上部又は下部の2つのフィルターでろ過し、それぞれのろ過前後の重量の差を所定の数式に当てはめることによって、総堆積物の実在割合を測定した。簡単にいうと、トータルセジメントは、沈殿物の量を測定するものである。
Figure 0006594617
Figure 0006594617
上記表6〜7のスポットテストによれば、A重油に中和していないソーダ油滓(比較例)を1〜20質量%で添加すると、浮遊物が多くなるため、混合安定性が悪いことが判明した。一方、A重油に中和されたソーダ油滓(実施例1〜3)を1〜20質量%で添加すると、添加量が多い場合に浮遊物が発生することはあるものの、概ね混合安定性の良い燃料が得られることが判明した。特に、水分含量20質量%の中和ソーダ油滓(実施例2)を用いた場合は、添加量1〜20質量%の全ての場合にわたって、浮遊物が少ないという良好な結果が得られており、これにより、混合安定性の良い燃料用油滓が得られることが明らかとなった。
次に、上記表6〜7のトータルセジメントによれば、A重油に中和していないソーダ油滓(比較例)を1〜20質量%で添加しても、沈殿物があまり生じなかったことから、重油に対してある程度馴染みやすい性質(分散安定性が良い)であることが判明した。一方、A重油に中和されたソーダ油滓(実施例1〜3)を1〜20質量%で添加すると、水分含量が0質量%(実施例3)であって添加量が10質量%を超える場合に、やや沈殿物の存在が認められたものの、概ね比較例と同程度又はそれ以上に沈殿物は少なく、混合安定性の良い燃料が得られたことが判明した。特に、水分含量20質量%の中和ソーダ油滓(実施例2)を用いた場合は、添加量1〜20質量%の全ての場合にわたって、沈殿物が少ないという良好な結果が得られており、これにより、混合安定性の良い燃料用油滓が得られることが明らかとなった。
なお、比較例の試料を5質量%で添加したスポットテストにおいて、混合安定性が良い(No.2)という結果が得られているが、これは、スポットテストでは、A重油の成分と燃料用油滓の成分のバランスが重要であり、たまたま両成分がバランス良く混合され、浮遊物が少ないという結果が得られたものと考える。

Claims (4)

  1. 中和ソーダ油滓を原料とし、水分含量が10〜30質量%である、化石燃料に混合するための燃料用油滓。
  2. 燃料用油滓に含まれる可溶無窒素物の含量が10質量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の燃料用油滓。
  3. 請求項1または2に記載の燃料用油滓を、化石燃料に含ませてなる、燃料。
  4. 化石燃料に対して、燃料用油滓を1〜20質量%含ませてなることを特徴とする、請求項3に記載の燃料。
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