JP6590382B2 - レーザ光のためのパワーバランス装置、レーザ加工装置 - Google Patents
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Description
また、偏光方位角調整時に偏光子を回転調整した場合、光の屈折が原因で光軸中心に僅かなずれが生じ、被加工物の加工品質が劣化する場合があるという問題があった。
また、上記特許文献2に記載の構成は、波長1μm程度のYAGレーザ光用であり、遠赤外光を透過することはできない。遠赤外光を透過する複屈折材料は硫化カドミウム(CdS)があるが、毒物で、取扱困難である。
また、上記特許文献3に記載の構成では、透過光を使わず、S偏光だけを利用しており、効率が悪い。
図1はこの発明の実施の形態1によるレーザ加工装置の構成の一例を示す図である。
<レーザ加工装置の構成>
レーザ加工装置100は、分光部である偏光ビームスプリッタ7によって1つのレーザ光2を2つの分散レーザ光8A,8Bに分光する。概略的に、2つの分散レーザ光8A,8Bはそれぞれ独立に走査されることによって、最終的にfθレンズ11A,11Bを介して、XYテーブル12A,12B上の2つの被加工物13A,13Bを同時に穴あけ加工する。
被加工物13Aに対する分散レーザ光8Aの照射位置を、ガルバノスキャナ10AxがX方向に移動させ、ガルバノスキャナ10AyはY方向に移動させる。同様に、被加工物13Bに対する分散レーザ光8Bの照射位置を、ガルバノスキャナ10BxがX方向に移動させ、ガルバノスキャナ10ByはY方向に移動させる。なお、上記X方向、Y方向はXYテーブルと同様に、被加工物13A,13Bの平面内の互いに直交する座標であり、後述する偏光位相差板200でのxyz方向とは異なる。
遠赤外光を透過できるサブ波長格子構造の偏光位相差板200は、例えば上記特許文献4にも示されるような構造を有する。図2は、図1のサブ波長格子構造の偏光位相差板200の一例の構成を示す斜視図である。レーザ光が入射される偏光位相差板200は、基板202と、基板202の一対の対向する主面の一方の主面に、基板202と同一材料で形成された回折格子201とを備える。回折格子201は、x,y方向を基板面とする互いに直交する方向を示すx,y,z方向の、x方向と平行に直線状に延びる複数の凸部203を、y方向に沿って設定周期Pに従った設定間隔で整列形成して構成されている。
x方向の偏光成分(TE偏光)に関する有効屈折率と、
y方向の偏光成分(TM偏光)に関する有効屈折率と、
が互いに異なるようになり、いわゆる構造性複屈折が生ずる。その結果、TE偏光とTM偏光との間で伝搬速度差が生じ、この伝搬速度差に対応した位相差(リターデーション)に応じて楕円偏光が発生する。
P:回折格子の周期(間隔)
λ:入射光の波長
n:基板材料の屈折率
具体的には、
基板202の基板材料は硫化亜鉛(ZnS)で、
凸部203の高さHすなわち溝の深さは4.01μm、
テーパ形状206の傾斜角度αは22.2度、
フィリングファクタfは0.468で、
リターデーションはλ/8(=π/4)である。
なお、フィリングファクタfは、凸部203の高さHの半分の位置(H/2)における、凸部203の幅Wの周期Pに対する比率、即ち、f=W/Pの値である。
基板202の回折格子201のない他方の主面には、反射防止膜207を施している。反射防止膜207の材料はゲルマニウムである。
レーザ発振器1は、遠赤外光である例えば直線偏光のCO2レーザ光からなるレーザ光2(λ=9.29μm)をパルス波として出射するレーザ装置である。レーザ発振器1から出射されたレーザ光2は、1つまたは複数の反射ミラー6を介してサブ波長格子位相差板である偏光位相差板200に導かれる。反射ミラー6は、レーザ光2や分散レーザ光8A,8Bを反射して光路下流へ導くミラーである。反射ミラー6は、レーザ加工装置100内の光路上の種々の位置に配置されている。
分光用偏光ビームスプリッタである偏光ビームスプリッタ7は、ビーム状の1本のレーザ光2を2本の分散レーザ光8A,8Bに分光するビームスプリッタ等の偏光子である。偏光ビームスプリッタ7は、レーザ光2のP波成分を透過し、S波成分を反射する性質を持っている。
つぎに、レーザ加工装置100の動作処理手順について説明する。レーザ発振器1から導かれてくる偏光方位角θのレーザ光2は、サブ波長格子構造の偏光位相差板200を透過後、ビーム可変部5を介してマスク4に導かれる。
マスク4では、レーザ光2の所望部分のみを透過させることによって、レーザ光2をレーザ加工に適したビームモード形状に整形する。マスク4で整形されたレーザ光2は、1つまたは複数の反射ミラー6で反射されて偏光ビームスプリッタ7に導かれる。
偏光ビームスプリッタ7では、レーザ光2のP波偏光成分が、偏光ビームスプリッタ7を透過して分散レーザ光8Aとして出射される。また、レーザ光2のS波偏光成分が、偏光ビームスプリッタ7で反射されて分散レーザ光8Bとして出射される。2つの被加工物13A,13Bの加工穴品質にばらつきを生じさせないようにするためには、分散レーザ光8Aのエネルギーと分散レーザ光8Bのエネルギーが等しいことが必要である。
熱レンズ効果は、偏光子である図1のサブ波長格子構造の偏光位相差板200の基板材料内を高いパワーのレーザ光が透過した場合に、基板材料が局所的に温度上昇することによって偏光子の屈折率分布が生じ、これにより、偏光子がレンズの作用をする現象である。
なお例えば上記特許文献1の場合は、偏光方位角調整用偏光子において熱レンズ効果が派生する。
図6は、この発明による偏光位相差板200に対応する従来の偏光子17を透過するP波成分を、偏光子17の光路下流へ導いた場合の熱レンズ現象を説明するための図である。図6の(a)では、熱レンズ現象が発生していない場合のレーザビーム強度分布を示している。また、図6の(b)では、熱レンズ現象が発生した場合のレーザビーム強度分布を示している。
この実施の形態1においても、上記特許文献1と同様に偏光位相差板200においてレーザ光が厚みのある基板を透過する点は同じであるため、基板の径方向の温度勾配により、同様に熱レンズ現象が発生すると考えられる。
これに対しては、この発明に係る調査の結果、上記特許文献1に係る偏光ビームスプリッタに使われているTFP(薄膜偏光子)は、実際に使用されているものは、厚み1μm以上のThF4(フッ化トリウム)が何層にも積み重ねられた構造であった。具体的にはThF4(フッ化トリウム)の層が4層以上に積み重ねられている。ThF4の膜状態での吸収係数を測定した結果、19[cm-1]であり、母材であるZnSe(セレン化亜鉛)(5e-4[cm-1])の38000倍であった。ThF4の膜厚の合計が5μm程度、ZnSeの基板厚みが5mmとした場合、ThF4の方が38倍もレーザ光を吸収することになる。TFPで吸収された熱は、薄膜のため、径方向への熱伝導性が悪く、径方向の温度差を発生させる。すなわち、TFPでの熱の吸収による影響が支配的であることが分かった。
これに対して、この実施の形態1では、サブ波長格子構造の偏光位相差板200を用いたパワーバランス装置としたことで、遠赤外光において透過率の高い基板材料だけで構成でき、TFPを排除できる。この結果、熱レンズ現象の影響を受けずに、安定した加工品質の加工穴を被加工物13A,13Bに形成することが可能となる。
さらに、この実施の形態1では、図2に示す偏光位相差板200の基板202の母材すなわち材料にZnS(硫化亜鉛)を使用している。赤外透過用材料の中では、屈折率の小さいZnSを基板に用いることで、フレネル反射を防止し、YF3(フッ化イットリウム)等の吸収率の高い材料の膜を格子上に設けなくても、吸収の少ないZnS単一材料で波長板すなわち偏光位相差板200を構成でき、熱レンズの発生を抑制できる。
また、ZnSeの熱伝導率が18[W/(mK)]であるのに対し、ZnSの熱伝導率が27.2[W/(mK)]と大きいため、温度分布が生じにくく、熱レンズの発生を抑えられる。
上記特許文献1は偏光方角調整装置の光軸回りの回転角によって、上記特許文献3は光軸に対する反射面の角度によって、下流の光軸が変化するが、この実施の形態1の構成では、偏光位相差板200の芯ズレや傾きによって、透過する光の光軸は変化しない。このため、精度の低い回転機構でよく、コストを低減できる。
上記特許文献2の位相差板は、π、π/2の例が開示されている。サブ波長格子構造では、πやπ/2のリターデーションを得るためには、細くて深い高アスペクト比の微細構造が必要なため加工が難しい問題があった。
図1に示す偏光ビームスプリッタ(PBS)7の9A,9Bで示された分離方向を方向a、bとし、
偏光ビームスプリッタ7に入射する直線偏光の光の偏光方位角をθ、
偏光位相差板200のリターデーションをφ、
図2のTM偏光方向である進相軸角度をψ、
とすると、入射光e0は
入射光のパワーに対する各偏光のパワーの差ΔPは、
上記式(5)より、ψを変えることによるΔPの調整幅は、第2項が固定値で、第1項のcos(4ψ−2θ)が−1から1の値をとるため、
このように、パワーバランス装置に限っては90度よりも遙かに小さなリターデーションでも実用上問題なく、これによって、偏光位相差板200の凸部203の高さHである溝の深さを浅くでき、製造が可能となる。
また、リターデーションφが小さいほど、回転させた時の調整幅が狭い、すなわち、回転角位置ズレに対するバランス変動が小さいことになるので、回転機構を安価に製造できるメリットもある。
なお実施の形態1において、サブ波長格子構造の偏光位相差板200と回転機構220がレーザ用のパワーバランス装置を構成する。
図3はこの発明の実施の形態2によるレーザ加工装置の構成の一例を示す図である。図4は図3のレーザ用のパワーバランス装置300の一例の内部構成を示す透視側面図である。図3のこの実施の形態2のレーザ加工装置では、図1の実施の形態1のサブ波長格子構造の偏光位相差板200と回転機構220の機能をまとめて含むレーザ用のパワーバランス装置300が設けられている。レーザ用のパワーバランス装置300は図4に示すように、ミラーである銅ミラー210の上にサブ波長格子構造の偏光位相差板200を格子構造が表に向くように重ねて、ミラーホルダ214内に収納し、さらにOリング211をミラーホルダ214の押さえ板212と偏光位相差板200の表面との間に挿入して挟み込むようにして固定する構造を有する。
また、ミラーホルダ214には、ミラーホルダ214全体を銅ミラー210の反射面の法線回りに回転させることができる回転機構213を備えている。
その他の基本的な構成は、図1の上記実施の形態1のものと同じである。
図4のような構成により、サブ波長格子構造の偏光位相差板200の背面と銅ミラー210の反射面が接しているため、偏光位相差板200で吸収された熱は銅ミラー210方向に流れ偏光位相差板200は冷却される。熱の流れる方向が径方向でなく矢印HEで示すように光軸方向のため、径方向の温度勾配の発生を抑制できる。結果、熱レンズの発生を防止でき、さらにハイパワーなレーザ加工が可能となる。
また、偏光位相差板のリターデーションをπ/2未満としたことにより、偏光位相差板の格子のアスペクト比が小さくなり、製造が容易となる。
また、偏光位相差板の材料をZnSとしたので、熱レンズの発生を防止できる。
また、偏光位相差板にミラーをと重ねたことで、偏光位相差板背面をミラーと接触させ冷却できるため、熱レンズの発生を防止でき、また偏光位相差板200のリターデーションは半分でよい。
Claims (3)
- 対向する一対の主面の一方の主面側に、基板材料と同一材料からなる複数の凸部が設定周期Pでそれぞれ平行に直線状に延びた回折格子が形成され、前記回折格子の構造性複屈折を利用可能に形成された、遠赤外光のレーザ光が入射される偏光位相差板であって、前記回折格子の前記周期PがP<λ/n(λは入射光の波長、nは前記基板材料の屈折率)を満たすものと、
前記偏光位相差板を回転させる回転機構と、
を備え、
前記偏光位相差板のリターデーションがπ/2未満であり、
前記偏光位相差板の主面の背面側に接触して重ねられたミラーを備えた、
レーザ光のためのパワーバランス装置。 - 前記偏光位相差板の材料がZnSからなる、請求項1に記載のレーザ光のためのパワーバランス装置。
- 請求項1または2に記載のレーザ光のためのパワーバランス装置と、
前記パワーバランス装置の偏光位相差板に対して前記レーザ光を発生するレーザ発振器と、
前記偏光位相差板から被加工物までの光路上で、前記レーザ光を2つのレーザ光に分光する分光部と、
を備えたレーザ加工装置。
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