JP6586077B2 - コイタマダニ属のダニに対するワクチン - Google Patents

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Description

本発明は、概して、寄生生物学及び免疫学の分野に関し、特に、コイタマダニ属のダニに対するワクチンに関する。特に、本発明は、第1及び第2のタンパク質を含む組成物、かかる組成物のコイタマダニ属のダニに対するワクチンとしての使用、並びにコイタマダニ属のダニに対する標的のワクチン接種のための第1及び第2の単離されたタンパク質の使用に関する。
外寄生生物の寄生は、福祉的及び経済的な意味合いを有することから、今日、ヒト及び獣医学の健康に関する重要な関心事である。外寄生生物は非常に多様であるが、最も関連する害虫は節足動物、例えば、ハエ及びカのような昆虫、又はダニ及びノミのようなクモ類である。外寄生生物は、その発生の1又は複数の段階で、ヒト又は動物の宿主と接触してその宿主を餌にし、これは短い、延長された、及び/又は繰り返しの接触であってもよい。多くの外寄生生物は、それらの発達の1又は複数の段階において、宿主からの血液を餌とするため、外寄生生物は血液嗜好性又は吸血性と呼ばれる。この種の寄生生物は多くの弊害を有し、単純な不快感から死亡原因まで多岐にわたる。これは、寄生生物−宿主接触が、多様な力学的及び生物学的な相互作用を含み、皮膚の外寄生生物による貫通が発赤又は炎症を引き起こす場合があり、寄生生物は咬みついた際に唾液によって、血流を維持する、免疫応答を抑制する、及び知覚をマスクするための多数の生物学的化合物を注入する場合があり、これらの物質が過敏性の応答をもたらす可能性があり、何千もの外寄生生物による経時的な血液摂取の反復が宿主を貧血にする場合があり、また、寄生生物は寄生生物の口部、唾液、又はその排泄物から宿主に感染し得る微小の病原体のベクターとなり得る。伝染した病原体は、宿主において、いわゆる節足動物ベクター媒介(Arbo−)疾患を引き起こす可能性がある。
宿主に対する結果は、長期のストレス、寄生虫要因で誘導される毒性、咬傷又は二次感染による皮革又は皮膚に対する物理的損傷、貧血、及び/又は例えば、細菌又はボレリア、エーリキア、又はアナプラズマ等のリケッチアによる;デング熱、黄熱病、脳炎、ブルータングを引き起こす、フラビウイルス、ブンヤウイルス又はレオウイルス等のウイルスによる;又はマラリア原虫、バベシア、トリパノソーマ、リーシュマニア、条虫、扁形動物、線虫等の原虫及び蠕虫による多様な伝染病による感染の場合がある。また、動物からヒトへのかかる疾患の人畜共通の伝播という身に迫る危険が存在する。
そのため、外寄生生物の寄生は、ヒト又は動物の宿主の一般的な健康問題に影響を及ぼす。農業関連の動物宿主にとって、これは飼料効率及び成長速度等、並びに肉、卵、乳、羊毛、皮革、及び子の数の生産の量及び質等の経済的成果に大幅に影響を及ぼす。
重大な獣医学及び人畜共通感染に関連する節足動物の外寄生生物は、コイタマダニ属のダニである。これらは、様々な哺乳動物、すなわち、シカ、カモシカ等の野生動物、及び数種の齧歯類のみならず、ウシ、ウマ、ロバ、ヤギ、ヒツジ、ブタ及びイヌ等の飼い慣らされた家畜のいずれをも餌とする背中の硬いダニ(マダニ科)である。一部のコイタマダニ属のダニは、特異的な種の宿主に対する選択性、例えば、リピセファラス・ザンギネス(クリイロコマダニ、又はコマダニ)によるイヌに対する選択性を有する。経済的により重要なものは、ウシを餌とするコイタマダニ属のダニ、例えば、R.アペンディクラタス(クリイロミミダニ)、及びボーフィルス属の亜属由来のダニ、例えばR.(ボーフィルス)ミクロプルス(その古い名称でも知られる南部ウシダニ:ボーフィルス・ミクロプルス)、及びR.(ボーフィルス)アニュラタス(北アメリカダニ)である。
コイタマダニ属のダニは世界中に発生するが、主に(亜)熱帯地方に発生する。コイタマダニ属のダニは、例えば、バベシア、タイレリア、アナプラズマ、コクシエラ、ボレリア、リケッチア、ナイロウイルス等の一部は人畜共通感染の多様な疾患の病原菌媒介体となり得る。
ダニは季節性又は地域性の状況の変動において発生し、卵、幼虫、若虫、及び成虫の明確な生活環段階を有する。全サイクルは平均2週間〜4週間を要し、各段階は、マウスピース及び背板等のダニの体の特異的な形態学的特徴を呈する。また、ダニの運動性は典型的であり、ダニがその宿主に付着し、宿主から引き離される回数に反映される。総括として、Barker & Murrell(2002,Exp.& Appl.Acarol.,vol.28,p.55)を参照されたい。
ダニによる寄生及びその結果を減少する試みにおいて、時間をかけて様々な手段が適用されており、幾つかは他よりも成功した。ダニを退ける、殺傷する、又は傷害する化学薬品、例えば、殺ダニ剤の使用が最も有効である。これらは、例えば噴霧、浴びせるといった外部から、又は経口若しくは非経口の経路によって宿主に適用され得る。過去1世紀に亘り、この目的の多様な殺ダニ薬が開発されてきた。
かかる化学的な抗寄生生物の使用の主な欠点は、ダニにおいて抵抗性を生じることであり、それによりこれらの化合物が経時的に有効でなくなることである。その結果、時に、数週間毎に家畜を処置する必要があり、手間と費用がかかる。さらに、他の懸念として、使用者に対する毒性のおそれ、宿主に対する副作用、動物製品(肉、乳、皮革)中の残留物、また環境上の懸念が当てはまる。これは、Otranto & Wall(2008,Med.and Vet.Entomol.,vol.22,p.291)によって総括される。
化学的な駆虫薬の代替として、ワクチンが長年試験されてきたが、或る程度しか成功していない。外寄生生物ワクチンは、ダニの数の減少、又は宿主に付着する又は宿主から餌を得る期間の減少をもたらさなくてはならない。また、これは、外寄生生物の寄生が宿主に対して、皮革の損傷、貧血、毒性、又は伝染性疾患による感染等を引き起こし得る副作用を減少する。また、これは、その数、重量、及び雌ダニが産生し得る卵の生存能力に関してダニの繁殖力を減少し、群れに対する及び/又は地理的な領域における全体的な寄生圧力を減少する。
ダニワクチンの効力を、典型的には少数の成体を観察することによって、寄生レベルの視覚的な減少を意味する、その「ノックダウン効果」で表すことができる。おそらくは、これは幼虫及び若虫に対する致死効果によって生じる。
血液嗜好性の外寄生生物に対するワクチンの作用機構は間接的なものであり、外寄生生物の宿主は、特異的抗体が標的の血中で生じるように、外寄生生物由来の抗原を用いたワクチン接種の標的である。その後にワクチン接種した宿主の血液から餌を得る外寄生生物は、そのようにしてこれらの抗体を取り込む。ワクチン抗原が寄生生物の必須の生体分子に由来した場合、これらの抗体は、寄生生物内で必須の生物学的プロセスを妨害し、その成長及び生殖を障害する(Willadsen,2004,Parasitology,vol.129,p.S367)。
血粉に由来する抗体が時に外寄生生物に対する効果を有することを要求することから、かかるワクチンは、一部の化学的な防虫剤のように、ワクチン接種宿主と外寄生生物の間の最初の接触を予防することができない。しかしながら、この種のワクチンは、コイタマダニ属のダニがするように、同じ宿主に長期(時間、日、週)に亘り留まる外寄生生物に対して有効な場合がある。
外寄生生物に対する最初のワクチンは、寄生生物全体、又は特異的な体の部分の粗ホモジネートであった。その後、より特異的なタンパク質抗原が試験された。これらのワクチンの大部分がアジュバント化した油中水型エマルジョンとして使用された。これらのワクチンは、露出した又は隠れた抗原のいずれかを使用し、露出した抗原は、その口部又は唾液由来の抗原等の外寄生生物が接触する場合、宿主免疫系によって「見られる」ものである。隠れた抗原は外寄生生物に対してより内部にある抗原であり、したがって、通常は宿主の免疫系に提示されない。その結果、露出した寄生生物抗原に対する免疫性が外寄生生物との接触によって自然に定期的に追加免疫されるのに対し、隠れた寄生生物抗原に対する免疫性は人工的な追加免疫を必要とする。
コイタマダニ属のダニに対するワクチンでは、隠れた腸関連タンパク質を過去に試験した。これは、1990年代から家畜への使用のため商業的に入手可能な唯一の外寄生生物ワクチン、TickGARD(商標)(オーストラリア、ベンディゴのIntervet)、及びGavac(商標)(キューバ、ハバナのHeber Biotec;メキシコのRevetmex)の開発を導いた。これらのワクチンは、ウシ標的における使用のためアジュバント化された油中水型エマルジョンである。これらのワクチンは、R.(ボーフィルス)ミクロプルスの中腸に由来する隠れた抗原、Bm86、又は組換え発現系(それぞれ、エシェリキア・コリ、ピキア・パストリス)で産生されるその類縁体、Bm95を採用する。いずれのワクチンもR.(ボーフィルス)ミクロプルスダニの生存能力及び増殖をある程度減少する。したがって、これらのワクチンは、主に、殺ダニ剤耐性コイタマダニ属のダニによる寄生が高い地域において使用される。総括として、De la Fuente et al.(2007,Anim.Health Res.Rev.,vol.8,p.23)を参照されたい。
Bm86は、R.(ボーフィルス)ミクロプルスダニの中腸上皮の管腔側に位置する糖タンパク質である。Bm86は、国際公開第88/03929号パンフレットにおいて初めて記載された。全長Bm86は約650アミノ酸を有し、明らかな分子量は約89kDaである。上記タンパク質は、N末端シグナル配列、C末端膜貫通領域、及び多数のEGF様ドメインを有する(Lee & Opdebeeck,1994,Int.J.of Paras.,vol.25,p.241;Kamau et al.,2011,Insect Mol.Biol.,vol.20,p.105)。そのダニ生物学における機能は知られていない。
血粉中のBm86特異的抗体、及びおそらく補体因子は、ダニの腸細胞のBm86タンパク質に結合し、腸を損傷するプロセスを開始すると推測される(Kemp et al.,1989,Exp.Appl.Acarol.,vol.7,p.43)。
Bm86の多くのアミノ酸配列及びその類縁体は、使用される名称は一貫しているわけではなく、ミクロプルス由来ではなく他のコイタマダニ種に由来する相同なタンパク質がBm86タンパク質、又はBm86様タンパク質と呼ばれるか、又はR.ザンギネスダニから得られたBm86相同タンパク質に対してRs86等のそれ自体の種コードで指定される場合もあるが、例えばGenBankより公的に利用可能である。文献では、異なる種に由来する相同タンパク質は、時に「オルソログ」と呼ばれる。
Bm86の類縁体はマダニ科の全ての群において見られ、それらのアミノ酸配列は非常に保存され、リピセファラス属内でBm86類縁体間のアミノ酸配列同一性のレベルは少なくとも約71%である(Nijhof et al.,2010,Int.J.for Parasit.,vol.40,p.1587)。世界中(オーストラリア、アフリカ、メキシコ、南アメリカ)で収集されたR.(ボーフィルス)ミクロプルス種のダニから単離されたBm86の類縁体は、少なくとも約82%のアミノ酸配列同一性のレベルを共有する(Canales et al.,2008,BMC Biotech.,vol.8,doi:10.1186/1472−6750−8−14)。この高レベルの保存のため、コイタマダニ属のダニの一種に由来するBm86類縁体によるワクチン接種もまた、他のコイタマダニ属のダニを防御する。
Bm86タンパク質に由来する防御保存エピトープが記載されている(Odongo et al.,2007,Vaccine,vol.25,p.1287;Kopp etal.,2010,Vaccine,vol.28,p.261)。
Bm86に基づく外寄生生物ワクチンの効力を改善するため、幾つかの可能性を考慮し、一部のみが試験された。
一つの選択肢は、既存のワクチンの製剤を改良することであった。これは、TickGARD Plus(商標)において適用された(オーストラリア、ベンディゴのIntervet)(Anonymous,2002,Aust.Vet.J.,vol.80,p.394)。
別の選択肢は、例えば、口部又は血リンパ等のダニの異なる部位に由来する代替のワクチン抗原を使用することであった。可能性のある候補抗原の幾つかの一覧、例えば、Almazan et al.(2003,Vaccine,vol.21,p.1492−1501);Willadsen(上述の2004);De la Fuente & Kocan(2006,Paras.Immunol.,vol.28,p.275);Parizi et al.(2009,Rev.Bras.Parasitol.Vet.,vol.18,p.1);及びAlmazan et al.(2010,Paras.Res.,vol.106,p.471)が公開されている。
他は、統合されたダニ制御戦略における化学療法とワクチン接種の組み合せ(Otranto & Wall、上述の2008)、又は多成分ワクチンにおける抗原の組み合せのいずれかの組み合せを採用することを提案した。
その間に2つの隠れた抗原の幾つかの組み合せを試験したところ、或る場合では、陽性の効果が見られたが、任意の追加の防御に関してワクチン効果の全体的な改善は観察されなかった。試験した組み合せの例は、Bm86とBm91(R.(ボーフィルス)ミクロプルス由来のカルボキシペプチダーゼ)(Willadsen et al.,1996,Paras.Immunol.,vol.18,p.241)、Bm86とBMA7(ムチン様糖タンパク質)(McKenna et al.,1998,Paras.Immunol.,vol.20,p.325)、及びBm86と5’ヌクレオチダーゼ(Hope et al.,2010,Paras.Immunol.,vol.32,p.135)である。一つの研究は、RNAiアプローチを使用して、Rs86(Bm86類縁体)及びSubolesinからのmRNAのサイレンシングを試験した(de la Fuente et al.,2006,Paras.Res.,vol.99,p.108)。
4D8としても知られるSubolesinは、約20kDaの明らかな分子量を有するタンパク質であり、コイタマダニ属内でSubolesinは約161アミノ酸を有する。このタンパク質の明確な役割は知られていないが、唾液腺、腸、及び生殖組織といったダニの種々の組織で見られる。隠れた抗原として、節足動物間でより幅広い存在を有するようであるにもかかわらず、Bm86よりも少ないことを特徴とする(De la Fuente et al.,2006,Vaccine,vol.24,p.4082)。Subolesinは、細胞内の核局在に対して選択性を有し、これは昆虫に見られるSubolesinのオルソログが、転写因子であるAkirinタンパク質のファミリーに由来するという事実と一致する(Galindo et al.,2009,Dev.Comp.Immunol.,vol.33,p.612)。
Subolesin類縁体タンパク質の多数のアミノ酸配列はGenBankにおいて利用可能である。通常、それらのダニ起源にかかわらず、Subolesin又は4D8タンパク質と呼ばれる。様々なコイタマダニ種に由来する、及び様々な地域に由来するSubolesinタンパク質の分析は、これらのタンパク質が良好に保存され、少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性のレベルを共有することを明らかにした(De la Fuente et al.,2006,Vaccine、上述)。
コイタマダニ属のダニにおけるSubolesinの機能は、Subolesinワクチン接種宿主に由来する特異的抗体、又はRNAiアプローチによる遺伝子サイレンシングのいずれかによって実験的に抑制された。これは、その血粉の消化、産卵、脱皮、及び生存等のダニの成長及び発生を著しく干渉した。Subolesinはワクチン抗原として使用され、豊富な可能性のあるワクチン候補の1又は複数との混合ワクチンにおける使用に対して示唆されてきた。総括として、De la Fuente et al.(2011,Vet.Path.,vol.181,p.17)。Subolesinの防御エピトープがマッピングされている(Prudencio et al.,2010,Vaccine,vol.28,p.5398)。
それにもかかわらず、Subolesinを使用するダニに対する出来の良い混合ワクチンが今日まで記載されていない。興味深いことに、この分野における最近の努力の成果において、De la Fuente及び共同研究者らは、混合ワクチンを試験することから離れ、Subolesin又はBm86のタンパク質の単独ワクチンを使用することに戻り、かかる単独ワクチンと、殺ダニ剤の使用等の他のダニ制御手段とを組合せることを推奨した(Carreon et al.,2012,Vaccine,vol.30,p.273)。
種々の抗原及び組み合せの使用に対する全ての努力及び示唆にもかかわらず、ダニワクチンへの30年に亘る研究による結果がせいぜい平凡であるということは驚くべきことである。これは、TickGARD(商標)の生みの親であり、この分野の上級科学者であるP.Willadsen博士に抗原カクテルに基づくダニワクチンが良くても「確かな仮説」(但し証明されていない)であるが、ほとんどの場合には「根拠のない希望」であると結論付けさせた。「かかるカクテルが増強された効力を示す」という前提で、彼は「しかしながら、実験的証拠は非常に希少で矛盾する」とコメントした(Willadsen,2008,Trends in Paras.,vol.24p.164−167)。
その結果、上記分野はコイタマダニ属のダニに対してより有効なワクチンを緊急に必要とする。したがって、本発明は、従来技術の欠点を克服し、コイタマダニ属のダニに対する改良されたワクチンを提供することによって上記分野におけるこの必要性に適応させることを目的とする。
驚いたことに、コイタマダニ属のダニ由来の2つのタンパク質抗原、Bm86及びSubolesin、又はそれらの類縁体若しくは免疫学的断片の使用によって、その2つのタンパク質が標的の免疫系に別々に提示される場合に限り、この目的を達成することができ、結果として、従来技術の欠点を克服できたことがわかった。2つのタンパク質を単純な混合物中に合わせた場合、主にBm86に対して、中程度のレベルの抗体が形成されたに過ぎなかった。かかるワクチン接種は、チャレンジ寄生としてウシ宿主に置かれたコイタマダニ属のダニに対して部分的に防御的であるに過ぎなかった。
しかしながら、Bm86とSubolesinを標的の免疫系に同時に提示するが、互いに物理的に分離されている場合、本発明者らは、その標的が2つのタンパク質の各々に対して高レベルの抗体を形成したことを見出した。これらの抗体は驚くほど有利な複合された効果を有し、コイタマダニ属のダニによるチャレンジ寄生に対してワクチン接種した宿主の強力な免疫防御をもたらした。或る例では、ほとんどの完全なノックダウン効果が観察された。
現在、この発見をコイタマダニ属のダニに対するワクチンにおける有利な用途、実質的に2つの方法、すなわち、これら2つのタンパク質の単回又は二重の投与により使用することができる。
2つのタンパク質が単回投与において適用される場合、それらが最終ワクチン組成物中で物理的に別々のままである方法で製剤化される必要がある。
代替的には、2つのタンパク質が二重投与において適用される場合、それらは異なる経路によるか、又は異なる方法によって、同時であるが身体の別々の場所で投与される必要がある。
ダニの寄生を克服するために液性免疫系の十分な賦活を達成するため、なぜ2つのタンパク質m86及びSubolesin、又はそれらの類縁体若しくは免疫学的断片が標的免疫系に対して別々に提示される必要があるのかはわかっていない。本発明者らは、これらの観察を説明し得るいかなる理論又はモデルにも結び付けられることを望まないが、本発明者らは、その原因は、これら2つのタンパク質間の或る形態の干渉にあり、それによって一方が他方を標的の免疫系に対してマスキングする可能性があると推測する。
国際公開第88/03929号パンフレット
Barker & Murrell(2002,Exp.& Appl.Acarol.,vol.28,p.55) Otranto & Wall(2008,Med.and Vet.Entomol.,vol.22,p.291) Willadsen,2004,Parasitology,vol.129,p.S367 De la Fuente et al.(2007,Anim.Health Res.Rev.,vol.8,p.23) Lee & Opdebeeck,1994,Int.J.of Paras.,vol.25,p.241 Kamau et al.,2011,Insect Mol.Biol.,vol.20,p.105 Kemp et al.,1989,Exp.Appl.Acarol.,vol.7,p.43 Nijhof et al.,2010,Int.J.for Parasit.,vol.40,p.1587 Canales et al.,2008,BMC Biotech.,vol.8,doi:10.1186/1472−6750−8−14 Odongo et al.,2007,Vaccine,vol.25,p.1287 Kopp etal.,2010,Vaccine,vol.28,p.261 Anonymous,2002,Aust.Vet.J.,vol.80,p.394 Almazan et al.(2003,Vaccine,vol.21,p.1492−1501) De la Fuente & Kocan(2006,Paras.Immunol.,vol.28,p.275) Parizi et al.(2009,Rev.Bras.Parasitol.Vet.,vol.18,p.1) Almazan et al.(2010,Paras.Res.,vol.106,p.471) Willadsen et al.,1996,Paras.Immunol.,vol.18,p.241 McKenna et al.,1998,Paras.Immunol.,vol.20,p.325 Hope et al.,2010,Paras.Immunol.,vol.32,p.135 de la Fuente et al.,2006,Paras.Res.,vol.99,p.108 De la Fuente et al.,2006,Vaccine,vol.24,p.4082 Galindo et al.,2009,Dev.Comp.Immunol.,vol.33,p.612 De la Fuente et al.(2011,Vet.Path.,vol.181,p.17) Prudencio et al.,2010,Vaccine,vol.28,p.5398 Carreon et al.,2012,Vaccine,vol.30,p.273 Willadsen,2008,Trends in Paras.,vol.24p.164−167
その結果、本発明の前に当業者は、2つのタンパク質の簡単な組み合せを採用しようとし、これは有効な免疫保護を達成し得なかった。本発明者らは、かかる使用のワクチン接種に成功した結果が何ら存在しないことは言うまでもなく、そのことが、ダニワクチンにおけるBm86抗原とSubolesin抗原の組み合せの使用を記載する従来技術が存在しない理由であると考える。
単回投与としての上記2つのタンパク質抗原の適用に関して、
第1の態様では、本発明は、第1及び第2の単離されたタンパク質を含む組成物であって、前記第1の単離されたタンパク質が配列番号1によるアミノ酸配列と少なくとも71%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記第2の単離されたタンパク質が配列番号2によるアミノ酸配列と少なくとも96%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、上記2つのタンパク質が互いに物理的に分離されている、第1及び第2の単離されたタンパク質を含む組成物に関する。
本発明のタンパク質による組成物の第1及び第2の単離されたタンパク質の両方が抗原であり、免疫応答を誘導することができる。したがって、本発明による組成物は抗原性組成物である。本発明による組成物を、コイタマダニ属のダニに対するワクチンの産生に有利に使用することができる。
本明細書で使用される「含んでいる」の用語(「含む」、「含む」、及び「含んだ」等の変化も同じく)は、かかる要素又は組み合せが明記されていない、またかかる(1又は複数の)要素又は組み合せのいずれかの排除を指さない場合であっても、この用語が使用される本文の欄、段落、特許請求の範囲等に含まれる又はそれに包含される、本発明について考えられる全ての要素、及び任意の可能性のある組み合せにある要素を指す。その結果、任意のかかる本文の欄、段落、特許請求の範囲等は、「含んでいる」(又はその変化)の用語が「からなる」、「からなっている」、又は「本質的にからなる」等の用語で置き換えられる1又は複数の実施形態にも関することがある。
本発明について、「第1」及び「第2」の表示は、参照を容易にするためのみに使用され、任意の番号順又は依存関係を示すものではない。
「単離された」の用語は、意図的な動作又はヒトの介入により、例えば、生化学的精製のためのin vitro手法により、その天然の属性から単離されたと解釈される。
本発明について、「タンパク質」は、アミノ酸の分子鎖を指す。タンパク質は特定の長さ、構造又は形状ではなく、必要であれば、in vivo又はin vitroにおいて例えば、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、ペグ化、又は空間的折り畳みの変更により修飾され得る。タンパク質は、未変性若しくは成熟タンパク質、プレ若しくはプロタンパク質、又はタンパク質の一部であってもよい。タンパク質は生物学的又は合成起原であってもよい。特に、ポリペプチド及びペプチドは、タンパク質の定義に含まれる。
「アミノ酸配列同一性」は、2つのタンパク質間の進化的関係を示すよく知られた方法である。「アミノ酸配列同一性」は、2つのアミノ酸配列間の対応する位置を比較する場合に同一であるアミノ酸の割合によって示される。かかる整列は、簡便には、デフォルトパラメーターを使用する公的に利用可能なプログラムBlast(商標)又はClustalW(商標)等のコンピュータープログラムを使用して行われる。これらのプログラムは、典型的には、2つの配列が整列される方法を最適化し、2つのアミノ酸間の完全な一致の数及び割合により重複する領域を提示する。その結果、見出された重複領域は、配列番号1又は2が比較されるタンパク質配列の大きさに応じて、配列番号1又は2と同じ長さ、又はそれよりも短くてもよい。本発明について、アミノ酸配列同一性の示される割合は、配列番号1又は2の全長に対する比較に基づく。
本発明について、配列番号1は、メキシコ産R.(ボーフィルス)ミクロプルスにおいて同定されたBm86タンパク質に由来する部分アミノ酸配列を表す。このBm86タンパク質の完全なアミノ酸配列は、テキサス(米国)産単離株に対してアクセッション番号ADQ19685によりGenBankにおいて表されるものと同一である。配列番号1は、タンパク質の天然シグナル配列のN末端の20アミノ酸、また同様に、その膜貫通領域の22アミノ酸を欠くため、608アミノ酸のみを有する。このBm86タンパク質の切断型は、免疫防御性であり、簡便には、例えば、組換え発現系においてin vitroで産生され得る。
本発明について、配列番号1のBm86タンパク質は、本発明に同等に使用され得るBm86タンパク質類縁体の参照として役立つ。これらのタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列に対するそれらのアミノ酸配列同一性の割合によって同定され得る。
したがって、Bm86類縁体は、異なるコイタマダニ種に由来するタンパク質に基づく、又はそれに由来するタンパク質であり、重複領域において少なくとも71%の配列番号1に対するアミノ酸配列の相同性レベルを有する。これは、配列番号1の全長に亘るアミノ酸配列の整列によって、例えば、少なくとも608アミノ酸長である公的データベースにおけるタンパク質を用いて決定され得る。例えば、配列番号1と、GenBankアクセッション番号ADA55445のもと利用可能なR.アペンジカラタスの「腸細胞表面糖タンパク質」とを整列する。
Bm86の密接に関連する類縁体は、ボーフィルスの亜属のダニに由来するタンパク質である。これらは、一般的には、例えば、配列番号1と、GenBankアクセッション番号ABY58970のもと利用可能なR.デコロラタスに由来する「BD86様タンパク質」とを整列する場合、少なくとも82%の配列番号1の全長とのアミノ酸配列同一性を有する。
Bm86の更に密接関連する類縁体は、R.(ボーフィルス)ミクロプルス種のダニに基づく、又はそれに由来するアミノ酸配列を有するタンパク質である。これらは、一般的には、例えば、配列番号1と、GenBankアクセッション番号ADQ19687のもと利用可能なR.ミクロプルスの「Bm86糖タンパク質」とを整列する場合、少なくとも95%の配列番号1の全長とのアミノ酸配列同一性を有する。
したがって、本発明について、第1の単離されたタンパク質は、少なくとも71%の配列番号1とのアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質である。
好ましい実施形態では、本発明に対する第1の単離されたタンパク質は、少なくとも82%の配列番号1とのアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質である。
より好ましい実施形態では、本発明に対する第1の単離されたタンパク質は、少なくとも95%の配列番号1とのアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質である。
本発明による組成物の好ましい実施形態では、第1の単離されたタンパク質は、好ましくは、少なくとも71%、73%、75%、80%、82%、85%、87%、90%、92%、93%、95%、96%、97%、98%、99%、更には100%の配列番号1とのアミノ酸配列同一性を有する。
更に好ましい実施形態では、本発明による組成物の第1の単離されたタンパク質は、Bm86タンパク質又はその類縁体である。
同様の方法において、配列番号2は、メキシコ産R.(ボーフィルス)ミクロプルスにおいて同定されたSubolesin(4D8)タンパク質に由来する部分アミノ酸配列を表す。配列番号2は、アクセッション番号ABA62327のもとGenBankから利用可能である。配列番号2は、その免疫原性に関連しない天然Subolesinタンパク質のC末端セクションを欠くため、147アミノ酸を有する。この切断型Subolesinタンパク質は免疫防御性であり、簡便には、例えば、組換え発現系においてin vitroで産生され得る。
本発明について、配列番号2のSubolesinタンパク質は、本発明において同等に使用され得るSubolesinタンパク質の類縁体に対する参照として役立つ。これらのタンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列に対するアミノ酸配列同一性のそれらの割合によって特定され得る。
Subolesinタンパク質はBm86タンパク質よりはるかに保存されていることがわかり、具体的には、配列番号2に存在するSubolesinの一部が高度に保存されている。したがって、Subolesin類縁体は、異なるコイタマダニ種に由来するタンパク質に基づく、又はそれに由来するタンパク質であり、重複領域において少なくとも96%の配列番号2に対するアミノ酸配列相同性のレベルを有する。これは、配列番号2の全長に亘るアミノ酸配列の整列によって、例えば、少なくとも147アミノ酸長である公的なデータベースにおけるタンパク質を用いて決定され得る。例えば、配列番号2と、GenBankアクセッション番号ABA62332のもと利用可能なR.ザンギネスに由来する「保護抗原4D8」とを整列する。
Subolesinの更に密接に関連する類縁体は、コイタマダニ属に由来するボーフィルス亜属のダニ、更にはR.(ボーフィルス)ミクロプルス種のダニが起源であるタンパク質に基づく、又はそれに由来するアミノ酸配列を有するタンパク質である。これらのいずれもが、一般的には、例えば、配列番号2と、GenBankアクセッション番号AFH57342のもと利用可能なR.ミクロプルスのSubolesinとを整列する場合、少なくとも99%の配列番号2の全長とのアミノ酸配列同一性を有する。
したがって、本発明について、本発明の第2の単離されたタンパク質は、少なくとも96%の配列番号2とのアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質である。
好ましい実施形態では、本発明の第2の単離されたタンパク質は、少なくとも99%の配列番号2とのアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質である。
本発明による組成物の好ましい実施形態では、第2の単離されたタンパク質は、好ましくは、少なくとも96%、97%、98%、99%、更には100%の配列番号2とのアミノ酸配列同一性を有する。
更に好ましい実施形態では、本発明による組成物の第2の単離されたタンパク質は、Subolesin又はその類縁体である。
本発明について、「コイタマダニ」属、「ボーフィルス」亜属、又は「ミクロプルス」種のダニは、現在、それらの名称によって分類群に分類されているダニを指す。また、これは、例えば、亜種、菌株、単離株、遺伝子型、変異型、又はサブタイプ等何らかの方法でそれらから細分類されたダニを含む。かかるダニは、それらの形態学的、遺伝学的、及び生化学的な特徴等の分類群のメンバーの特徴構成、また同じく、生理学的、免疫学的、又は寄生の挙動等のそれらの生物学的特徴を共有する。典型的には、ダニの分類は、当該分野で知られている、(電子)顕微鏡、及び分子マーカーの選択的ヌクレオチドシーケンシング又はPCRに基づく。
本発明の主題であるダニは現在この属、亜属、又は種に分類されているが、新たな知見が新たな、又は異なる分類群への再分類をもたらすことから、これは変化に供され得る、分類学的分類であることが、当業者に明らかであろう。この可能性は、ボーフィルス属のコイタマダニ属の亜属への最近の系統発生的な再分類からも既に明らかである(Barker & Murrell,2002,Exp.Appl.Acarol.,vol.28,p.55)。しかしながら、これは関与する外寄生生物又はそのタンパク質のレパートリーを変化せず、その科学的名称又は分類のみを変更することから、かかる再分類されたダニは本発明の範囲に含まれたままである。
本発明による組成物の第1及び第2の単離されたタンパク質の(少なくとも1つの)提供に対して好ましいコイタマダニ属のダニは、コンパニオン動物の家畜等の獣医関連の動物に寄生するコイタマダニ属の種である。コイタマダニ属、具体的には、ザンギネス、エバルティス、アペンジカラタス、アヌラツス、デコロラタス、ガイギー、コールス、及びミクロプルスに由来する種のダニであることがより好ましい。
例えば、R.(ボーフィルス)種、アヌラツス、アウストラリス、デコロラツス、ガイギー、コールス、及びミクロプルスから選択されるコイタマダニ属のボーフィルス亜属に由来する種のダニがより好ましい。
R.(ボーフィルス)ミクロプルス種に由来するダニが最も好ましい。
したがって、好ましい実施形態では、本発明による組成物の第1及び第2の単離されたタンパク質は、コイタマダニ属由来のボーフィルス亜属の種のダニに由来するタンパク質に由来するか、又はそれに基づく。
或る実施形態では、本発明による組成物の第1及び第2の単離されたタンパク質は、各々異なるコイタマダニ属のダニ種に由来する。
例えば、第1のタンパク質、すなわち、Bm86タンパク質又はその類縁体は、R.(ボーフィルス)ミクロプルスに由来してもよく、第2のタンパク質、すなわち、Subolesin又はその類縁体はR.ザンギネスに由来してもよい。かかる抗原の組み合せは、それから得られるワクチンに対して多数のコイタマダニ属のダニ種に対して幅広い防御を提供し得る。
同様に、2つのタンパク質は、各々、異なるR.(ボーフィルス)ミクロプルスダニの単離株に由来してもよい。
したがって、好ましい実施形態では、本発明の組成物による第1及び第2の単離されたタンパク質は、各々、異なるR.(ボーフィルス)ミクロプルスダニ単離株に由来するか、又はそれに基づく。
本発明による組成物の好ましい実施形態では、第1の単離されたタンパク質は配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも82%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、及び/又は第2の単離されたタンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも96%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
本発明による組成物のより好ましい実施形態では、第1の単離されたタンパク質は配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、及び/又は第2の単離されたタンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
当業者に明らかであるように、本発明について記載される第1及び第2の単離されたタンパク質は、必ずしもBm86、それぞれ、Subolesin又はその類縁体の完全な天然タンパク質でなくてもよい。これらの断片が本発明に対する有利な効果を提供するのに適切な免疫原性の可能性をなおも有する限り、むしろ、これらのタンパク質がより短い形で、又は断片として使用され得る。実際、配列番号1及び2は、既に、それらの天然の親タンパク質の切断型を提示する。更に長さが減少しても有効な場合があり、当業者は、なおも免疫防御を提供するそれらの断片を同定することができる。しかしながら、免疫原性とするため、タンパク質断片は、最小の長さ、すなわち、MHC I受容体結合に対しては8〜11のアミノ酸であり、MHC II受容体結合に対しては11〜15のアミノ酸でなくてはならない(例えば、Germain & Margulies,1993,Annu.Rev.Immunol.,vol.11,p.403によって総括される)。
本発明による組成物の第1及び第2の単離されたタンパク質、またそれらの類縁体の免疫原性断片の有利な例は、防御エピトープの少なくとも1つを含む断片である。当業者であれば、例えば、周知のペプスキャン技術(Geysen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1984,vol.81,p.3998)により、又はコンピューター予測(Margalit et al.,1987,J.of Immunol.,vol.138,p.2213)を使用することにより、通例の方法を使用してかかる防御エピトープを十分に同定することができる。
かかる防御エピトープの例は、例えば、Bm86については、配列番号1の8〜38及び512〜542のアミノ酸ストレッチに対応する線形交差防御エピトープを記載するOdongo et al.(上述の2007)によって記載され、また、Kopp et al.(上述の2010)は、配列番号1の1〜22及び372〜396のアミノ酸ストレッチに対応する防御エピトープを記載する。
同様に、Subolesinについて、Prudencio et al.(上述の2010)は、配列番号2の98〜123のアミノ酸ストレッチを防御エピトープと同定した。
したがって、或る実施形態では、本発明による組成物は、本発明に関する第1又は第2の単離されたタンパク質に由来する免疫原性断片を含む。
免疫原性断片を、Bm86若しくはSubolesinから、又はこれらのタンパク質のいずれかに由来する類縁体から得ることができる。免疫原性断片を、それが由来するタンパク質又は類縁体に代えて、又はそれに加えて使用してもよい。
免疫原性断片の免疫応答を増強するため、これを担体分子と組合せてもよく、又はそれに連結してもよい。よく知られた担体は、破傷風トキソイド又はジフテリアトキソイド等の細菌毒素であり、代替的にはKLH、BSA、又は細菌細胞壁成分(由来の)脂質A等を使用してもよい。
本発明について好ましい免疫原性断片は、1〜22、8〜38、372〜396、及び512〜542から選択される配列番号1の少なくとも1つのアミノ酸ストレッチを含む、Bm86に由来する又はその類縁体に由来する断片である。
本発明について更に好ましい免疫原性断片は、Subolesin由来、又はその類縁体由来の断片であり、配列番号2の98〜123のアミノ酸ストレッチを含む。
同様の理由で、本発明による組成物の第1及び第2の単離されたタンパク質は、配列番号1若しくは2のアミノ酸配列よりも長くてもよく、又はそれらの天然タンパク質よりも長くてもよい。これは、アミノ酸伸長が患者の免疫防御能力を損なわない限り、意図的であっても意図されていなくてもよく、本発明に対して同等に許容可能である。タンパク質の意図的な伸長は、例えば、発現後のタンパク質精製若しくは検出の目的で発現レベルの改善のため、又はそのタンパク質をより免疫原性にするため使用されてもよい。伸長は、様々な方法、例えば、アミノ酸の生化学的融合によって行われてもよい。最も簡便には、これは、発現系において使用されるコーディング核酸を修飾することによって得られる。本発明による組成物のかかる融合された又は伸長された形態の第1及び/又は第2の単離されたタンパク質もまた、本発明の範囲に含まれる。
本発明について、「物理的に分離された」は、別々の物理的実体によって含まれることを意味する。本発明による組成物の第1及び第2の単離されたタンパク質について、これは、それらが別々の溶液に含まれ、及び/又は別々の薬学的担体中若しくはその上に含まれることを意味する。
別々の溶液の実施形態では、溶液は液体であることが好ましく、別々の溶液が1つ又は幾つかの容器に含まれ得る。例えば、本発明による組成物は、別々の水相として別々の溶液を含むエマルジョンであってもよい。
したがって、好ましい実施形態では、本発明による組成物はエマルジョンであり、本発明について記載される第1及び第2のタンパク質が別々の水相に含まれることを特徴とする。
本発明について「エマルジョン」は、2以上の相を含むコロイド液システムであり、そのうちの1つは連続しており、そのうちの1つは連続する相中に分散され、分散は、典型的にはマイクロメートル、更にはナノメートルサイズの小胞に及ぶ。
例えば、2つのタンパク質が1つの周囲の油相内にいずれも分散されている別々の水相に含まれる油中水型エマルジョンにおいて、又は、外部水相及び内部水相が各々2つのタンパク質のうちの1つを含み、油相によって分離されている水中油中水型エマルジョンにおいて、別々の水相に2つのタンパク質を有する、幾つかの有利な実施形態が存在する。
代替的には、2つのタンパク質は、上記タンパク質の1つを含み、他のタンパク質を含む連続する水相中に分散されるISCOMのミセル又はリポソーム等の微小胞を使用して分離され得る。
別々の薬学的担体に関連する実施形態について、2つのタンパク質の1又は他方を捕捉するのに使用され得る、様々な化合物及び高分子構造体が利用可能であり、この方法で、ワクチン接種に対する標的の免疫系に対してそれらを別々に提示する。
これら全ての実施形態は当業者が十分到達でき、いずれも通例の技術及び標準的な材料のみを使用して実施することができる。例えば、かかるエマルジョンを調製する方法及び材料は当該技術分野でよく知られており、例えば、薬局方等の政府規則、及び「Veterinary vaccinology」(P.Pastoret et al.ed.,1997,Elsevier,Amsterdam,ISBN:0444819681)、及び「Remington:the science and practice of pharmacy」(2000,Lippincot,USA,ISBN:683306472)等の周知のハンドブックにおいて記載される。詳細及び作業例は、実施例の欄において概説される。
かかるエマルジョン、典型的には、1又は複数の選択された表面活性化合物、又は乳化剤等の界面活性剤、溶解剤、両親媒性物質及び洗浄剤、又はコロイド粒子を含む化合物の使用によって形成され、安定される。界面活性剤のよく知られている例は、Span(商標)、Tween(商標)及びArlacel(商標)のファミリー由来の化合物である。所望の親水性−親油性バランス(HLB)値を有する界面活性剤を選択することにより、異なる相のエマルジョンを形成することができ、エマルジョンが、長期間、変動する温度において保存された場合であっても「壊れ」ないように、安定なままである。
水相は、注射用水等の精製水に基づいてもよく、塩及び/又はバッファーを含んでもよい。油相は、任意の薬学的に許容可能な油、例えば、Bayol(商標)、Markol(商標)、Montanide(商標)、若しくは軽パラフィン油等の鉱物油、魚油、肝油、プリスタン、スクワレン、若しくはスクワラン等の動物油、大豆油、ピーナッツ油、トウモロコシ油、綿実油、若しくはヒマワリ油等の植物油、又はMiglyol、Cetiol、若しくはMyritol油等の半合成油に基づいてもよい。
乳化剤を含む油相の既製の混合物もまた、商業的に入手可能であり、これらは、水相中で抗原と混合することのみを必要とする。例として、Montanide ISA 50V2及びMontanide ISA 206 V(Seppic)が挙げられ、これらは、ハイグレードの注射可能な鉱物油、並びにマンニトール及び植物起源の精製オレイン酸から得られる乳化剤を含む。
したがって、本発明による組成物の好ましい実施形態では、上記組成物は、連続する油相と、少なくとも2つの別々の水相を含む油中水型エマルジョンであり、ここで、水相の1つは本発明について記載される第1の単離されたタンパク質を含み、別の水相は本発明について記載される第2の単離されたタンパク質を含む。
「油中水型(w/o)エマルジョン」は当該技術分野でよく知られており、2つの液体相を含み、一方が他方の中に分散されている組成物を指し、ここでは、油相中に水相が分散されている。かかるエマルジョンを調製する幾つかの選択肢が知られている。本発明について、得られるエマルジョンにおいて、本発明による組成物の第1及び第2の単離されたタンパク質が安定に物理的に分離されたままである限り、どの方法を使用するかは重要ではない。例として、2つの異なった別々の水相を含む、1つの連続する油相が形成されるように、その後穏やかに複合され得る、1つが第1のタンパク質を含み、1つが第2のタンパク質を含む、2つの別々のw/oエマルジョンを調製することができる。
本発明による組成物の別の好ましい実施形態では、組成物は、油相を含む連続する外部水相を含み、その油相が少なくとも1つの内部水相を含み、本発明について記載される第1及び第2の単離されたタンパク質から選択される1つのタンパク質が外部水相に含まれ、本発明について記載される第1及び第2の単離されたタンパク質からの他のタンパク質が内部水相に含まれる、水中油中水型エマルジョンである。
「水中油中水型(w/o/w)エマルジョン」は当該技術分野でよく知られており、互いの中に分散された3つの液相を含む組成物を指し、ここでは、水相が油相に分散され、順にその油相が水相に分散されている。
さらに、かかるエマルジョンを調製する幾つかの選択肢が存在する。使用される方法は、得られたエマルジョンにおいて、各々が本発明による組成物の2つのタンパク質うち1つを含む両方の水相が分離されたままである限り、重要ではない。例えば、w/oエマルジョンは、2つのタンパク質のうち1つを含む水相を使用して調製され得る。その後、これを、2つのタンパク質のもう一方を含む水溶液と注意深く混合することができる。正しい条件のもとw/o/wエマルジョンを形成し、ここで、2つのタンパク質は、油相によって分割される別々の水相中に含まれる。ここでも当業者は、十分に安定なエマルジョンを作製するのに必要な化合物及び条件を選択することができる。
本発明による組成物の更に別の好ましい実施形態では、本発明について記載される第1及び第2の単離されたタンパク質は、別々の薬学的担体によって各々含まれる。
本発明について、「別々の薬学的担体によって含まれる」は、本発明による組成物の第1及び第2の単離されたタンパク質の各々が担体に付着している状態を指し、その付着は、標的の免疫系に対するそれらの別々の提示を確認しないことから、タンパク質が容易に離れないような方法でなくてはならない。
「により含まれる」の用語は、種々の構成で薬学的担体中に又はその上、例えば、担体の表面上に付着され得る、又はより内部に、例えば、グリッド若しくはゲル様構造中又は担体のマクロポーラス洞中に捕捉されることを示す。付着は、非共有結合的であり、典型的には、静電気力、及びファンデルワールス力等の原子とイオンの相互作用、疎水性相互作用、及び水素結合の組み合せから生じる。
「別々の、分離された」の用語は、タンパク質を標的の免疫系に対して別々に提示できるように、1つの種類、バッチ又は実体の担体が2つのタンパク質のうち1つのみを含まなければならないことを示すことを目的とする。それにもかかわらず、各タンパク質について使用される担体は、同一であっても異なってもよく、(1又は複数の)充填された担体は、同じ水相中にあってもよい。これは以下に例示される。
本発明における使用のための薬学的担体について幾つかの候補物質が知られている。例えば、水酸化アルミニウムゲル、若しくはリン酸アルミニウムゲル等のアルミニウム化合物、又はメチルセルロースゲル、例えば、Methocel(Dow)からの薬学的に許容可能なゲルが例として挙げられる。体液との接触によりゲルを形成することが可能である天然のイオン性炭水化物ポリマーは、例えば、GelSite(商標)ポリマーである。
代替的には、担体は高分子構造体であってもよく、本発明における使用について「高分子構造体」は、ポリマー構造又は粒子構造等の比較的大きな分子構造を指し、例えば、1000Da超、又は100nm超のサイズのかなりの大きさである。よく知られた例は、ISCOM(商標)、キトサン、デンドリマー、アルギン酸塩、ラテックス粒子、金粒子、又は合成ポリマー粒子であり、いずれも当該技術分野でよく知られている。
したがって、本発明による組成物の好ましい実施形態では、薬学的担体の少なくとも1つはアルミニウム化合物又は高分子構造体である。
第1及び第2の単離されたタンパク質が「別々の薬学的担体によって含まれる」本発明による組成物の例は、2つの容器の各々に高分子担体が添加され、各容器が2つのタンパク質の内の1つを含む溶液を含む場合に得られる。適切なインキュベーションの後、タンパク質を担体中又はその上に捕捉する。「充填された」担体を洗浄して、例えば、結合していないタンパク質を除去することができ、後に本発明による組成物となる、1つの溶液へと複合することができる。この方法では、2つのタンパク質は、同じ水相中に生じる場合であっても、それら自体を、ワクチン接種の際に標的の免疫系に対してなおも別々に提示する。この例では、担体は2つのタンパク質について同一であるが、それに代えて各タンパク質について異なる担体を使用する。この概念による変化を行うこと及び試験すること、かかる組成物の結果を更に最適化することは、十分に当業者の通例の能力の範囲内である。
本発明の範囲に含まれる更なる変化は、エマルジョンと薬学的担体の組み合せである。これは、例えば、本発明の第1又は第2の単離されたタンパク質のうち1つを薬学的担体、例えば、アルミニウムゲルによって含み、タンパク質充填アルミニウムゲルを水相によりw/oエマルジョンへと乳化する実施形態において適用され得る。
これは、有利には、上記タンパク質に対する標的の免疫応との更なる賦活を提供し得る。
記載されるように、本発明による組成物は、幾つかの形態をとることができ、幾つかの方法で調製され得る。
したがって、更なる態様では、本発明は、本発明による組成物を調製する方法であって、
本発明について記載される第1又は第2の単離されたタンパク質のいずれかを含む溶液又は薬学的担体を調製する工程、及び
その組成物が本発明について記載される第1及び第2の単離されたタンパク質の両方を含むように、これらの溶液及び/又は薬学的担体を1つの組成物へと複合する工程、
を含む方法に関する。
本発明の方法によれば、1つの組成物中に溶液又は担体を複合する工程は様々な方法で行われ得る。例えば、実験室又は医薬製剤工場において投与の(長時間の)前にこれを行うことができる。この複合の方法は、得られる組み合せの質及び安全性に対して最適な制御を提供する。
代替的には、複合は、(1又は複数の)溶液及び/又は(1又は複数の)担体の混合により、又は(1又は複数の)溶液及び/又は(1又は複数の)担体を含む既製のエマルジョンの混合により、投与直前に行われてもよい。これは、簡便には、ワクチン接種される標的のヒト又は動物のそばでワクチンを投与する者によって行われてもよく、いわゆる「その場で」の混合である。例えば、これは、各々がそれらの水相に異なる抗原を含有する、2つの等量のw/oエマルジョンを手で混合することを含む。これは、連続する油相及び分散した水相を含むw/oエマルジョンを生じ、異なる、別々の抗原、例えば、Bm86及びSubolesin、それらの類縁体又は免疫学的断片を含有する水相の液滴を有する。この方法は、複合される溶液の選択に対して最適な柔軟性を提供する。
したがって、本発明による方法の或る一つの実施形態では、上記方法は、
本発明について記載される第1又は第2の単離されたタンパク質のいずれかを含む別々のエマルジョン調製する工程、及び
これら別々のエマルジョンを複合エマルジョンに混合する工程、
を含む。
「混合する」は、エマルジョンが混合されるのを妨げないように、低強度の混合により行われる。例えば、これは、低速混合、例えば、100rpm未満によって、又は手で混合若しくは振盪することによって行われてもよい。
好ましい実施形態では、エマルジョンはw/oエマルジョンであり、かかるエマルジョンはその場での混合に最も適している。
上記溶液又は担体を1つの組成物に複合する工程の更なる代替として、接種に際して混合を提供するシングルポイントインジェクション装置を使用する適用により、複合を投与の際に行うことができる。
この実施例では、シングルポイントインジェクション装置は、別々のチャンバー又は容器の別々の溶液中に本発明について記載される第1及び第2の単離されたタンパク質を有する。かかるシングルポイントインジェクション装置は当該技術分野でよく知られており、例えば、異なる容器から供給される単一の針を備えた電気機械式インジェクターであってもよく、又は針が取り付けられ得る単一のノズルに導管用継手を介して対応する別々のチャンバーを備えた複合若しくは二重シリンジであってもよい。導管用継手における別々の溶液の組み合せにより、混合は単一部位の注射の間に起こる。その結果、これは、本発明による組成物又はワクチンの単回投与として適格であり、本発明の方法を組み込む。
更なる態様では、本発明は、本発明による方法によって取得可能な組成物に関し、その組成物は、互いに物理的に分離された本発明について記載される第1及び第2の単離されたタンパク質を含む。
本発明による方法における使用のための溶液の調製を様々な方法で行うことができ、いずれも当業者によく知られている。また、正確な調製方法は、得られる組成物が本発明の有利な効果を可能とする限り、重要ではない。
例えば、本発明の溶液は、典型的には適切なバッファー及び/又は安定化剤を含む、本発明について記載される第1又は第2の単離されたタンパク質の1つを含む水相であってもよい。
また、本発明に対する溶液は、本発明について記載される第1又は第2の単離されたタンパク質の1つを含むかかる水相、及び油相、例えば軽鉱物油を含むエマルジョンであってもよい。
軽鉱物油系のw/oエマルジョンの標準的な乳化は、典型的には、高剪断条件を使用する抗原を含む水相の油相への乳化によって行われる。簡便には、例えば、Silversonによる高速ミキサーを、水を油へと混合するため、例えば、室温にて3分間4000rpmで使用することができる。2つの液相を混合する速度、ミキサーのパワー及びrpm設定を制御し、容量及び調製されるエマルジョンの種類について最適化する。混合の間、最大値、例えば、40℃を超えないように、温度をモニターする。簡便には、かかるエマルジョンは、Montanide(商標)(Seppic)等の市販の原料に基づいてもよく、製造業者の指示書に従って調製されてもよい。
液滴直径及び安定性を制御するため、適切な界面活性剤をエマルジョン化、及び別々の相、例えば、Span(商標)、Tween(商標)、又はArlacel(商標)ファミリーに由来する化合物の安定化に使用する。界面活性剤は、典型的には、0.1%w/v〜10%w/vで使用される。低いHLB値を有する界面活性剤(例えば、Span(商標))は、典型的には油相に添加され、高HLB値を有する界面活性剤(例えば、Tween(商標))は水相に添加される。水対油の合計比は、許容可能な粘度の注射用エマルジョンを有するため、好ましくは30:70〜70:30であり、より好ましくはおよそ50:50である。
また、より複雑なエマルョン、例えば、w/o/wエマルジョンを、例えば、最初に高剪断を使用して水相(抗原を含む)を油相へと乳化した後、このw/oエマルジョンを(別の)抗原を含有する水相へと低〜中の剪断を使用して乳化することにより作製することができる。簡便には、Montanide(商標)ISA 206に基づくエマルジョンをこの目的に使用することができる。
また、アルミニウムゲル充填抗原を含有する水相を油性アジュバントへと混合して、増強された免疫賦活等を有するw/o又はw/o/wエマルジョンを作製することができる。
同様に、本発明による方法において使用される薬学的担体の調製を様々な方法で行うことができ、いずれも当業者によく知られている。例えば、抗原を含む様々なゲルを調製することができ、メチルセルロースゲルを供給業者の指示書、例えば、Methocel(商標)(Dow)に従って調製することができる。代替的には、それを非水性溶媒に分散した後、水と抗原を添加して混合することができる。
また、アルギネートマイクロスフェアを周知のプロトコルに従って生産することができ、最初にアルギン酸を水中で抗原と混合した後、例えば、噴霧乾燥することによってマイクロスフェアを調製し、高剪断条件を使用してマイクロスフェアを1%CaCl、pH5溶液中に安定化する。
キトサン系ゲルもまた製造業者の指示書に従って調製することができ、0.5%w/wゲルを、酢酸を含む水中のキトサンを使用して調製することができ、これを10%硫酸ナトリウム溶液と共に混合し、分散させるために超音波処理した後、中和することができる。滅菌の後、これを水相中の抗原とインキュベートする。
水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウム等のアルミニウムゲルを様々な供給業者から2%又は3%のストック溶液(例えば、ReheisのBrenntag)として購入することができる。バルク材料を作業可能な量に分割して、オートクレーブにより滅菌することができる。ゲルを、それらを共に室温で15分間、Tris(10mM)又はPBS等のバッファーを含む水中で撹拌することによって、抗原と混合することができる。最終ワクチンにおけるアルミニウムゲルの典型的な最終濃度は約0.1%w/vであってもよい。
本発明による組成物の第1及び第2の単離されたタンパク質は、様々な方法で産生又は取得され得るが、in vitro発現系によって産生されることが好ましい。
したがって、本発明による方法の好ましい実施形態では、第1の工程は、
発現系において第1又は第2の単離されたタンパク質をコードする核酸配列を発現する工程、及び
発現されたタンパク質を採取及び単離する工程、
を含む。
好適な発現系はよく知られており、一般的に利用可能である。例として、細菌、酵母、昆虫、植物、又は哺乳動物の起源の組換え発現系が挙げられ、例えば、エシェリキア・コリ、バシラス・サチリス、ラクトバチルス属、又はカウロバクター・クレセンタス、サッカロマイセス・セレビシエ、ピキア・パストリス、バキュロウイルス、ドロソフィラ、タバコ、又はHela細胞若しくはCHO細胞である。
また、代替的には、発現は、いわゆる無細胞発現系、例えば、大腸菌溶解物系(Roche)、又はウサギ網状赤血球溶解物系(Promega社)であってもよい。
当該技術分野でよく知られているように、タンパク質発現系は、目的のタンパク質をコードする核酸配列を活用する。かかるヌクレオチド配列は、遺伝子(すなわち、完全なタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム)であってもよく、遺伝子断片であってもよい。かかるヌクレオチド配列は、天然起源であってもよく、合成起源であってもよい。
ヌクレオチド配列からの発現を駆動するため、これは、選択された発現系内で機能性のプロモーター配列の制御下に(作動可能に連結され)なくてはならない。簡便には、多様な分子生物学的手段及びキットが、発現される核酸の操作を可能とする主な発現系の各々に対して利用可能である。
使用される発現系に対して、所望の抗原をコードするヌクレオチド配列を適合することは、一般的な方法である。例えば、挿入された遺伝子配列は、N末端シグナル配列及び任意の膜貫通領域を欠くことが好ましい。これらは、その発現系に適合する選択されるシグナルによって置換され得る。同様に、挿入された遺伝子のコドン使用頻度は、選択される発現系、例えば、大腸菌、又は昆虫細胞のコドン使用頻度と適合するように採用され得る。典型的には、これは、コードされるアミノ酸が変更されないように、「サイレント」突然変異によってのみ行われる。
好ましい実施形態では、本発明による組成物の第1及び第2の単離されたタンパク質は、異なる発現系において産生される。
これは、それらの発現条件の別々の最適化を可能とする。
更なる好ましい実施形態では、Bm86抗原は、組換えバキュロウイルス/昆虫細胞発現系により産生され、Subolesin抗原は大腸菌発現系により産生される。
これらの特定の発現系を採用することにより、本発明に対して単離された抗原としての使用のためのコイタマダニ属抗原が好ましく産生され、本発明によるワクチンにおいて適用された場合に増強された効力を示した。
本発明について記載される第1又は第2の単離されたタンパク質をコードする核酸は、幾つかの方法で得られ、例えば、ダニからの単離により、又は例えば特定のアミノ酸配列の逆翻訳に基づいて、in vitro合成により得られ得る。より簡便には、上記タンパク質は、GenBank等の公的なデータベースで利用可能な公開されたヌクレオチド配列に基づいて合成され得る。
クローニング、形質移入、組換え、選択、及び増幅を含む必要な分子生物学的技術は、当該技術分野でよく知られており、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(1989);Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier Science Publishing Co.,Inc.,N.Y.(1986);及び:Sambrook & Russell,2001,in:‘Molecular cloning:a laboratory manual’,3rd ed.New York,USA:Cold Spring Harbour Laboratory Press等のハンドブックにおいて広範囲に記載される。
代替的には、本発明による組成物の第1及び第2の単離されたタンパク質は、生組換え担体(LRC)微生物により提供され得る。これは、例えば、標的のヒト又は動物に投与され得る組換えの寄生生物、細菌、又はウイルスの実施形態を含む。LRC微生物は、その後、明らかな害を伴わずに標的において生存し、標的の免疫系に対して、本発明による組成物の第1及び第2の単離されたタンパク質を発現し、送達する。したがって、かかるLRC微生物の実施形態は、本発明の範囲に含まれる。
発現されたタンパク質の「採取及び単離」もまた、使用された発現系の種類に適した標準的な手法を使用する。特に、発現されたタンパク質が発現系の細胞から分泌される場合、培養上清を遠心分離によって採取し、続いて濃縮してもよい。代替的には、発現されたタンパク質が発現系の細胞内に留まる場合、これらの細胞を採取してもよく、タンパク質をこれらの細胞の抽出物、超音波処理物、又は溶解物として生成する。いずれも当該技術分野でよく知られている。
本発明による組成物の或る実施形態では、上記組成物自体がコイタマダニ属のダニに対するワクチンとしての使用に適していてもよい。例えば、油性化合物が本発明によるエマルジョンの調製に使用された場合、既に適切なアジュバントとして作用する。また、本発明による組成物は、それ自体が十分に安全で安定であり、及び市販のワクチンの薬学的要件に適合するのに有効であってもよい。
それにもかかわらず、本発明による組成物は、許容可能な効果的なワクチンとするため幾つかの添加剤又は更なる加工を必要とする場合がある。
したがって、更なる態様では、本発明は、コイタマダニ属のダニに対するワクチンとしての使用のための本発明による組成物に関する。
更なる態様では、本発明は、コイタマダニ属のダニに対するワクチン接種用の本発明による組成物に関する。
更なる態様では、本発明は、コイタマダニ属のダニに対するワクチンの製造に対する本発明による組成物の使用に関する。
更なる態様では、本発明は、本発明による組成物と薬学的に許容可能な構成成分とを含むコイタマダニ属のダニに対するワクチンに関する。
本発明による「コイタマダニ属のダニに対するワクチン」は、コイタマダニ属のダニの宿主となり得る好適な標的のヒト又は動物への投与のための免疫学的組成物である。上記ワクチンは、標的において、宿主に寄生したコイタマダニ属のダニに、これらのダニの数、健康、及び生殖能力を減少することによって直接影響を及ぼす免疫応答を誘導する。また、本発明によるワクチンは、ダニの寄生によって引き起こされる損傷部位及び副作用の数又は重症度、又はそれに対する標的の応答も減少し得る。
「ワクチン」の用語は、免疫学的に有効な量の1又は複数の抗原性化合物と薬学的に許容可能な構成成分の使用を意味する。本発明について抗原性化合物は、本発明による組成物の第1及び第2の単離されたタンパク質である。
何が本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンについて「免疫学的に有効な量」を構成するかは、使用されているワクチンの所望の効果及び具体的な特性に依存する。有効量の決定は、通例の実務家の技術に十分含まれ、例えば、ワクチン接種後、又はチャレンジ寄生後の標的の免疫学的応答をモニターすること、例えば、標的の臨床兆候及び血清学的パラメーターをモニターし、また同様に、ワクチン接種した宿主のダニを観察又は単離し、ワクチン接種していない宿主において見られる応答とこれらを比較することによる。
コイタマダニ属のダニによる寄生にヒト又は動物の宿主が実際に罹患しているかどうか、またどの程度重症であるかは、経験豊富な家畜育種家又は獣医等の有資格者によって確立され得る。成虫又は充血したコイタマダニ属のダニは約0.5cm〜3cmの大きさであることから、宿主において容易に観察され得る。コイタマダニ属のダニの若虫の段階による任意の寄生を特定するため、宿主から得られた試料の顕微鏡検査を必要とする場合がある。観察されたダニがコイタマダニ属に属すると決定することは、当業者によって行われ得る。
そのため、本発明によるワクチンの効力を評価する方法は、容易に利用可能であり、ワクチン接種した宿主とワクチン接種しなかった宿主との間の本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンがある程度もたらす差異、及びコイタマダニ属のダニ寄生の結果を観察することを含む。
本発明によるワクチンの更なる有利な効果は、地理的領域又は集団におけるコイタマダニ属のダニの伝播の抑制又は減少であり、これは、水平伝播又は環境寄生である。その結果、本発明によるワクチンの使用は、コイタマダニ属のダニの有病率の減少をもたらす。
したがって、好ましい実施形態では、本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンは、地理的領域におけるコイタマダニ属のダニの有病率を減少することができる。
「薬学的に許容可能な構成成分」は、ワクチンが投与される標的の健康に(重度の)副作用を引き起こすことなく、ワクチンの効果的な投与に役立つ。かかる溶液は、例えば、滅菌水又は滅菌生理学的塩溶液であってもよい。より複雑な形態では、溶液は、例えば、安定化剤、防腐剤、又はアジュバント等の更なる添加剤を含み得るバッファーであってもよい。詳細及び例は周知のハンドブックに記載される。
本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンは、例えば、分解されやすい成分を保護するため、又はワクチンの貯蔵寿命を高めるために安定化剤を含んでもよい。一般的に、安定化剤は、脂質、糖質、又はタンパク質等の高分子量の大きな分子であり、例えば、ミルク粉末、ゼラチン、血清アルブミン、ソルビトール、トレハロース、スペルミジン、デキストラン又はポリビニルピロリドン、及びリン酸アルカリ金属等のバッファーである。安定化剤は動物起源の化合物を含まないことが好ましい。
本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンは、チメロサール、メルチオレート、フェノール化合物、及び/又はゲンタマイシン等の防腐剤を含んでもよい。
必要とされる、又は本発明によるワクチンの薬学的安定性又は有効性に有益な他の添加剤を混合することもまた、本発明に含まれることは言うまでもない。
本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンがエマルジョンの形態でない場合、例えば、本発明による組成物の第1及び第2の単離されたタンパク質が別々の薬学的担体に含まれる実施形態では、ワクチンは水溶液であってもよい。その場合、ワクチンはその安定性を高めるために凍結乾燥され、凍結よりも高い温度での長期の保存を可能にすることができる。
凍結乾燥の手順は当業者に知られており、種々のスケールの凍結乾燥用の装置は商業的に入手可能である。
したがって、より好ましい実施形態では、本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンは、凍結乾燥形態のワクチンであることを特徴とする。
凍結乾燥ワクチン組成物を再構成するため、薬学的に許容可能な希釈剤にそれを懸濁する。これは、通常、ワクチンの最良の品質を確実にするため、投与の直前に行われる。希釈剤は、例えば、滅菌水、又は生理学的塩溶液であってもよい。ワクチンを再構成するため使用される希釈剤は、それ自体が、アジュバント等の追加の化合物を含んでもよい。別の実施形態では、凍結乾燥ワクチンは、EP382.271に概説されるエマルジョンに懸濁されてもよい。
本発明による凍結乾燥ワクチンの更なる実施形態では、ワクチン用の希釈剤は、活性なワクチン組成物を含む凍結乾燥ケーキから別々に供給される。この場合、凍結乾燥ワクチン及び希釈剤組成物は、共に本発明を具体化する部品のキットを形成する。
したがって、本発明によるコイタマダニ属のダニに対する凍結乾燥ワクチンの好ましい実施形態では、ワクチンは、凍結乾燥ワクチンを含む1つの容器、及び水性希釈剤を含む1つの容器の少なくとも2種類の容器を備えた部品のキットに含まれる。
本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンの標的は、明らかに、上述のコイタマダニ属のダニに対して寄生されやすい、ヒト又は動物の宿主である。しかしながら、健康な標的にワクチン接種すること、また寄生を抑制するためできるだけ早くワクチン接種することが好ましいことは明らかであるものの、ワクチン接種される標的の年齢、体重、性別、免疫学的状態、及び他のパラメーターは重要ではない。コイタマダニ属のダニによる寄生が若年において既に確立され得るため、本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンを生後最初の2週間以内に適用してもよい。
本発明によるワクチンの好ましい標的は、コイタマダニ属のダニに寄生されやすい任意のコンパニオン動物又は家畜動物宿主である。標的動物は、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、ヒツジ又はシカであることがより好ましい。標的動物は、ウシであることが更に好ましく、標的動物はタウリンウシ、コブウシ、バッファロー、バイソン、ヤク、又はヨーロッパバイソンであることが最も好ましい。
本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンを、予防的又は治療的処置として同等に使用することができ、コイタマダニ属のダニによる寄生及びその結果の確立及びその進行の両方を干渉する。
本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンは、プライミングワクチン接種として有効にはたらき、その後、コイタマダニ属のダニに対する同じ又は別のワクチンのいずれかを用いる1又は複数の追加免疫ワクチン接種が続き、それにより増幅され得る。
本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンの投与スケジュールは、その標的に対する他のワクチンの既存のワクチン接種スケジュールに統合されることが好ましい。
本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンは、年間用量として適用されることが好ましい。しかしながら、コイタマダニ属のダニ寄生が高い地域では、より短い間隔で、例えば6か月後の再度のワクチン接種が必要な場合がある。
本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンは、各々1μg〜1000μgの本発明による組成物の第1及び第2の単離されたタンパク質を含有する用量で投与され得る。原則として、より小さい又はより大きな用量を使用することができ、ワクチン用量は、2つのタンパク質の各々を10μg〜1000μgで含有することが好ましい。
一連のin vivoセロコンバージョン実験において、種々の比率のBm86抗原及びSubolesin抗原を試験した。2つの抗原の量は必ずしも同一でなくてもよいことがわかり、実際に、1用量当たりBm86タンパク質よりも多い動物用量のSubolesin抗原を有するのが好ましいことがわかった。
1用量当たり等量のBm86抗原とSubolesin抗原を含む特定の製剤と比較すると、Subolesinに対して仔ウシで得られる抗体力価は、Bm86よりも多い量のSubolesin抗原を含む同様の製剤を使用した場合に改善され得、これはBm86に対する力価に影響しなかった。
したがって、或る実施形態では、本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンは、第1及び第2の単離されたタンパク質を含み、それによって、1用量当たりの各タンパク質のマイクログラム量は5%を超えて異なる。
本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンの好ましい実施形態では、1用量当たりの2つのタンパク質のうち1つのマイクログラム量は、他のタンパク質の約2倍である。
好ましい実施形態では、本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンは、約25μg/用量のBm86及び約50μg/用量のSubolesinを含む。
タンパク質比率のかかる差異を含む本発明によるワクチンは、両方のタンパク質を1用量当たり同等のマイクログラム量で含むワクチンに対して、増強された効力を実証した。
本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンは、標的に許容可能な容量で投与される。例えば、1回のワクチン投薬量の容量は、0.1ml〜10mlであってもよい。1用量の容量は0.25ml〜5mlであることが好ましい。
本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンは、当該技術分野で知られる方法に従って標的に投与され得る。好ましい適用は、皮膚への又は皮膚を通る任意の注射経路、例えば、筋肉内、静脈内、腹腔内、皮内、粘膜下、又は皮下等の非経口経路による。
本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンに対して好ましい適用経路は、筋肉内又は皮下の注射による。
最適な適用経路は使用される具体的なワクチン製剤、及び標的の特定の特性に依存することは言うまでもない。
本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンを更に最適化することは当業者であれば十分容易に到達し得る。一般的に、これは、十分な免疫防御を提供するように、ワクチンの効力の微調整を含む。これは、ワクチンの投与量、容量、若しくは抗原の含有量を適合することにより、ワクチンを別の形態若しくは製剤で使用することにより、ワクチンの他の構成成分(例えば、安定化剤、又はアジュバント)を適合することにより、又は異なる経路若しくは方法により適用することによって行われ得る。
本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンは、アジュバント、追加の抗原、サイトカイン等の他の化合物を更に含んでもよい。代替的には、本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンは、有利には、抗生物質、ホルモン、又は抗炎症薬等の医薬成分と組み合わされてもよい。
好ましい実施形態では、本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンは、アジュバントを含むことを特徴とする。
「アジュバント」は、非特異的な方法で標的の免疫応答を賦活するよく知られたワクチン成分である。多くの異なるアジュバントが当該技術分野で知られている。アジュバントの例は、フロイント完全及び不完全アジュバント、ビタミンE、硫酸デキストラン、カルボポール及びピラン等の非イオンブロックポリマー及びポリアミン、リン酸アルミニウム又は水酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物、サポニン等である。
さらに、ムラミルジペプチド、ジメチルグリシン、タフトシン等のペプチドがアジュバントとしてしばしば使用され、鉱物油、例えば、Bayol(商標)若しくはMarkol(商標)、Montanide(商標)若しくは軽パラフィン油、植物油、又はSeppicによるISA(商標)若しくはDiluvacForte(商標)等の配合剤を有利に使用することができる。
アジュバント、並びにそれらの用途及び効果に関するハンドブックは、「Vaccine adjuvants」(Methods in molecular medicine,vol.42,D.O’Hagan ed.,2000,Humana press,NJ,ISBN−10:0896037355)である。
本発明による組成物の構成成分によって既に提供され得る可能な促進効果の他に、本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンは、サポニンアジュバントを含むことが好ましい。
したがって、好ましい実施形態では、本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンはサポニンを含む。
本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンの更に好ましい実施形態では、ワクチンはエマルジョンであり、サポニンは水相の少なくとも1つに含まれる。
更に好ましい実施形態では、本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンは、油中水型エマルジョンであり、Montanide ISA 50V2が油相に含まれ、サポニンQuil Aが水相の少なくとも1つに含まれる。
Montanideアジュバント及びサポニンアジュバントの両方の併用は、これらを単独で使用した場合と比較して、より効果的な免疫応答を誘導することがわかった。
「サポニン」は、よく知られた表面活性グリコシド化合物である。商品は、Quil A(商標)(Brenntag)、Q−vac(商標)(Biolang)、VaxSap(商標)(Desert King)、及びAbisco100(商標)(Isconova)である。サポニンが親水性であることから、本発明によるワクチンの水相の1又は複数に容易に含むことができる。サポニンアジュバントは、10μg/ml〜10.000μg/ml、より好ましくは50μg/ml〜5000μg/ml、更により好ましくは100μg/ml〜1000μg/mlのレベルで本発明によるワクチンに含まれることが好ましい。
(追加の)アジュバントとしてのサポニンの包含は、本発明によるワクチンを用いて誘導され得る抗体レベルを強力に押し上げることがわかった。これは、サポニンによらずに作製されるIgG1型抗体に加えて発現されるIgG2a型抗体の増加によって部分的に説明された。コイタマダニ属のダニに対するワクチンに関して、IgG2a型抗体の作製は、これらの抗体がIgG1型抗体よりも細胞損傷効果に対する補体因子にあまり依存しないと考えられることから、さらに好ましい。
本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンは、別の抗原、例えば、別の病原体に由来する抗原、又は免疫学的に活性な化合物と有利に組合せられ得る。
したがって、好ましい実施形態では、本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンは、追加の免疫活性成分を含む。
「追加の免疫活性成分」は、抗原、及び/又は免疫増強物質であってもよく、これらのいずれかはアジュバントを含んでもよい。
追加の免疫活性成分は、抗原の形態の場合、獣医学的に重要な任意の抗原成分からなってもよい。例えば、追加の免疫活性成分は、タンパク質、糖質、リポ多糖、又はタンパク性抗原をコードする核酸分子等の生物学的又は合成分子を含む。また、かかる核酸を含む宿主細胞、又はかかる核酸分子を含有するLRC微生物が、核酸分子又は追加の免疫活性成分を送達する方法であってもよい。代替的には、追加の免疫活性成分は、寄生生物、細菌又はウイルス等の分画された又は殺傷された微生物を含んでもよい。
追加の(1又は複数の)免疫活性成分は、例えば、ケモカイン等の免疫増強物質、又はCpGモチーフを含む免疫賦活核酸の形態であってもよい。代替的には、本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンは、それ自体がワクチンに添加されてもよい。
好ましい実施形態では、追加の免疫活性成分は、本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンの標的でもあるヒト又は動物に感染性の微生物であるか、又はそれから得られる。
かかる混合ワクチンの利点は、コイタマダニ属のダニに対する免疫応答を誘導するのみならず、ワクチン接種に必要な標的の操作が一度であり、それにより、標的へのワクチン接種ストレスを減少すると共に、時間費用及び労働費用を減少しながら、他の病原体に対しても免疫応答を誘導することである。
かかる追加免疫活性成分の例は、原則として、本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンの標的でもあるヒト又は動物のワクチン接種に適用可能な、全てのウイルス、細菌、及び寄生性病原体、又はそれらに由来する抗原である。
例えば、ブタに対しては、豚サーコウイルス、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、ブタパルボウイルス、豚コレラウイルス、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ、ローソニア・イントラセルラーリス、大腸菌、連鎖球菌、サルモネラ菌、クロストリジウム、アクチノバチルス・プルロニューモニエ、パスツレラ、ヘモフィルス、豚丹毒、ボルデテラ、トキソプラズマ、イソスポラ、旋毛虫等である。
ウシに対しては、ネオスポラ、ディクチオカウルス、クリプトスポリジウム、オステルタジア、バベシア、タイレリア、アナプラズマ、トリパノソーマ、コウドリア、トキソプラズマ、ウシロタウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス、ウシコロナウイルス、ウシ伝染性鼻気管炎ウイルス(ウシヘルペスウイルス)、ウシパラミクソウイルス、ウシパラインフルエンザウイルス、ウシ呼吸器合胞体ウイルス、狂犬病ウイルス、ブルータングウイルス、パスツレラヘモリチカ、大腸菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、マイコバクテリウム、ブルセラ、クロストリジウム、マンヘミア、ヘモフィルス、フゾバクテリウム等である。
ヒツジ又はヤギに対しては、トキソプラズマ、ネオスポラ、コウドリア、バベシア、タイレリア、アナプラズマ、アイメリア、トリパノソーマ、小反芻獣疫ウイルス、ブルータングウイルス、シュマーレンベルグウイルス、マイコバクテリウム、ブルセラ、クロストリジウム、コクシエラ、大腸菌、クラミジア、クロストリジウム、パスツレラ、マンヘミア等である。
イヌに対しては、エーリキア、ドノバンリーシュマニアコンプレックス、ネオスポラ、アナプラズマ、ディロフィラリア、条虫、イヌパルボウイルス、イヌジステンパーウイルス、イヌアデノウイルス1型又は2型、イヌ肝炎ウイルス、イヌコロナウイルス、イヌパラインフルエンザウイルス、狂犬病ウイルス、ネコカリシウイルス、ネコヘルペスウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、クロストリジウム、ヘパトゾーン症、ボレリアブルグドルフェリ、気管支敗血症菌、クラミジア、バベシア、タイレリア等である。
本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンは、当業者によく知られる手段によって調製される。
したがって、更なる態様では、本発明は、本発明により組成物と薬学的に許容可能な構成成分を混合することを含む、コイタマダニ属のダニに対するワクチンを調製する方法に関する。
本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンは、当業者によって容易に適用可能な、本明細書に記載される方法によって調製され得る。例えば、本発明について記載される第1及び第2の単離されたタンパク質は、発現系において、より小さな又はより大きな容量で工業生産され得る。上記タンパク質は、発現培養物の細胞又は上清から採取される。生物学的安全性の理由のため必要であれば、採取したタンパク質生成物を最初に生物学的に不活性化してもよい。
これは、ホルマリン、ベータ−プロピオラクトン、バイナリーエチレン、又はベータ−エタノールアミンによる等、幾つかの方法で、通常、化学的不活性化によって行われ得る。
溶解液は、物理的手段(フレンチプレス、ソニファイアー)により、又は化学的手段(洗浄剤、カオトロピック剤)により産生され得る。懸濁液を、例えば、遠心分離又は濾過によって、更に精製又は濃縮してもよい。その後、得られた抗原調製物を、薬学的に許容可能な構成成分と合わせてワクチンに製剤化し、適切な大きさの容器に充填する。製造工程の様々な段階を適当な試験、例えば、抗原の品質及び量について免疫学的試験により、不活性化、無菌性又は外来の作用物質の不在について微生物学的試験、及び最終的にはワクチンの有効性及び安全性を確認する動物試験によりモニターする。これらの全てが当業者によく知られている。品質、量及び無菌性に関する試験の完了後、かかるワクチン製品を販売する。
ワクチンの調製に適用される一般的な技術及び考慮は、当該技術分野において周知であり、例えば、政府規制(薬局方)及び周知のハンドブックに記載される。
本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンは、非経口注入に適した形態、すなわち、懸濁液、溶液、分散液、又はエマルジョン等の注射可能な液体へと製剤化されることが好ましい。通常、かかるワクチンは、無菌の生理学的pHで調製される。
更に好ましい実施形態では、本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンは、第1の単離されたタンパク質として、25μg/用量のバキュロウイルス/昆虫細胞発現Bm86、及び第2の単離されたタンパク質として、50μg/用量の大腸菌発現Subolesinを含み、各単離されたタンパク質は、油中水型エマルジョンの別々の水相に含まれ、そのため、各水相はサポニンQuil Aを含み、油相はMontanide ISA 50V2を含む。
記載されるように、本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンは、コイタマダニ属のダニの寄生しやすい宿主であるヒト又は動物の標的に有利に適用され得る。
したがって、更なる態様では、本発明は、本発明によるコイタマダニ属のダニに対するワクチンの標的に投与することを含む、コイタマダニ属のダニに対する標的のワクチン接種の方法に関する。
この発見は、今般、実質的には2つの方法、すなわち、単回投与により、又は二重投与により、コイタマダニ属のダニに対するワクチンにおける有利な用途をもたらすことができる。
2つのタンパク質が単回投与で適用される場合、それらは、上述のように最終ワクチン組成物において互いに分離したままにある方法で製剤化されなければならない。
代替的には、2つのタンパク質は、寄生するコイタマダニ属のダニに対する免疫防御反応を誘導するため、標的の免疫系に対して別々に提示するための二重投与において適用され得る。これは、身体の異なる場所において、異なる経路により、又は異なる方法により標的に投与することによって有利に達成され得る。
したがって、更なる態様では、本発明は、本発明について記載される第2の単離されたタンパク質と同時に第1の単離されたタンパク質が投与されるが、身体の異なる場所において、異なる経路による、又は異なる方法によることを特徴とする、コイタマダニ属のダニに対する標的のワクチン接種に対する、本発明について記載される第1の単離されたタンパク質に関する。
また、更なる態様では、本発明は、本発明について記載される第1のタンパク質と同時に第2の単離されたタンパク質が投与されるが、身体の異なる場所において、異なる経路による、又は異なる方法によることを特徴とする、コイタマダニ属のダニに対する標的のワクチン接種に対する、本発明について記載される第2の単離されたタンパク質に関する。
更なる態様では、本発明は、上記タンパク質が同時であるが、身体の異なる場所において、異なる経路による、又は異なる方法によることを特徴とする、コイタマダニ属のダニに対する標的のワクチン接種に対する、本発明について記載される第1及び第2の単離されたタンパク質の使用に関する。
更なる態様では、本発明は、本発明について記載される第1及び第2の単離されたタンパク質の標的に投与することを含み、タンパク質の投与が同時であるが、身体の異なる場所において、異なる経路による、又は異なる方法によることを特徴とする、コイタマダニ属のダニに対する標的のワクチン接種の方法に関する。
「同時」の用語は、本発明について記載される第1及び第2の単離されたタンパク質の両方が標的に投与されている必要がある場合、一定期間が存在することを示す。この標的免疫系への同時(又は別々の)投与の目的は、各タンパク質に対して強力な液性免疫応答を誘導することである。哺乳動物における液性免疫応答は、発現するまで14日間を要する場合があることから、約14日の期間内に両方のタンパク質を標的に投与する必要がある。その結果、本発明について、「同時」は、約14日間以内を意味する。
同時投与の期間はより短いことが好ましく、したがって、好ましい実施形態では、「同時」は、好ましくは12日間、10日間、8日間、7日間、6日間、5日間、4日間、3日間、又は2日間の期間内を意味する。同時は、1日以内の期間を意味することが最も好ましい。
本発明について、本発明に関して記載される第1及び第2の単離されたタンパク質の標的への投与は、「身体の異なる場所において、異なる経路による、又は異なる方法による」ことでなくてはならない。これは、標的の免疫系への2つのタンパク質の別々の提示を保証するのに役立つ。
本発明について、「身体の異なる場所」は、標的の身体への本発明に関して記載される第1及び第2の単離されたタンパク質(を含有すりワクチン)の投与用の適用部位が物理的に離れていることを意味する。或る一つの実施形態では、これは、各々がいずれかのタンパク質を含有する別々のシリンジの使用に関し、これらは、その後、標的の身体の別々の場所、好ましくは、典型的には1cm超離れた場所、好ましくは少なくとも5cm、8cm、10cm、15cm、20cm、又は少なくとも30cm離れた場所で別々の注射を与えるため使用される。
代替の実施形態では、これは、マルチポイントインジェクション装置、すなわち、本発明に関して記載される第1又は第2の単離されたタンパク質のいずれか(を含むワクチン)を含む別々のチャンバー又は容器に各々接続された、2以上のインジェクションポイントを有する装置を指す場合がある。かかるマルチポイントインジェクション装置は、当該技術分野において周知である。例えば、或る一つの実施形態では、これは、別々のチャンバーを伴うシリンジの組み合せ又は二重のシリンジに関する場合があり、ここで、各チャンバーは別々の針に対応し、針は或る一定距離、例えば約0.1cm〜2cm離れている。
マルチポイントインジェクション装置の使用は単回の投与動作のみを必要とするが、それにもかかわらず、本発明によるワクチンのかかる投与は、本発明に関しては二重投与である。これは、本発明に関して記載される第1及び第2の単離されたタンパク質が標的の身体の異なる場所において投与されるためである。
この実施形態は、上記のシングルポイントインジェクション装置の使用とは異なる。
本発明に関し、「種々の経路により」は、当該技術分野において既知であり、具体的な標的に適した経路、例えば、
注射による:筋肉内、静脈内、腹腔内、皮内、粘膜下、若しくは皮下、
眼、鼻、口、肛門、若しくは膣の粘膜上皮に対して、又は外皮の表皮上に対して、点眼薬、スプレー、ゲル、若しくは軟膏としての局所適用による、
エアロゾル、若しくは粉末としてスプレーによる、
例えば、粉末、液体、若しくは錠剤として、食物、餌、又は飲水と組合せることにより消化経路を介する、又は
液体、ゲル、錠剤、若しくはカプセル剤として口への、又は坐剤として肛門への直接投与による、
から選択される2つの異なる投与経路の使用を意味する。
好ましい実施形態では、種々の経路は皮下及び筋肉内の適用を含む。
また、「種々の方法により」は、本発明に関して記載される第1及び第2の単離されたタンパク質が製剤化され得る様々な方法に関する。かかる方法の多くは、種々の経路に関する選択肢において既に列挙され、例えば、液体、ゲル、軟膏、粉末、錠剤、又はカプセル剤である。これに関して、液体は懸濁液、分散物又はエマルジョンであり得る。
好ましい実施形態では、種々の方法は、エマルジョン、懸濁液、及び分散物から選択される。
当業者に明らかなように、有利には、種々の適用方法(場所、経路、及び方法)を組合せることができる。したがって、好ましい実施形態では、本発明に記載される第1及び第2の単離されたタンパク質は、適用方法の相違の組み合せを介して標的に投与される。
二重投与に関連する本発明の実施形態について、本明細書に記載される第1及び第2の単離されたタンパク質は、簡便には、両方のタンパク質が、それらの具体的な薬学的調製物において別々の容器で提供される形態で販売用に売り出され得る。使いやすいように、2つの容器は1つの包装において、任意には、希釈剤、及び/又はそれらの投与に関する一組の指示書と共に、提供され得る。
したがって、更なる態様では、本発明は、少なくとも2つの容器を備えた部品のキットであって、一方の容器が本発明に記載される第1の単離されたタンパク質を含み、別の容器が本発明に記載される第2の単離されたタンパク質を含むキットに関する。
本発明を以下の非限定的な実施例を参照して、ここに更に説明する。
[実施例]
1.一般的な方法及び材料
1.1.Bm86抗原及びSUBOLESIN抗原の産生
Bm86抗原及びSubolesin抗原を使用して行われる様々なin vivo及びin vitro研究に対して、幾つかの異なる組換え発現系を使用した。全ての場合において、タンパク質発現は、特殊な修飾を必要とすることなく検出可能であった。また、全ての抗原は原核生物系又は真核生物系のいずれかから、また高等又は下等の真核生物系のいずれかから産生され、抗原はいずれも、抗原が特異的なウシ抗血清によって常に認識され、例えば、ダニの人工給餌に対するアッセイにおいて、免疫学的に活性であった。これは、使用された上記タンパク質、Bm86及びSubolesinが免疫防御性となるために複雑な翻訳後修飾を必要としないことを示す。抗原と発現系の幾つかの組み合せを以下に詳述する。
1.1.1.大腸菌発現系によるSubolesinの発現:
エシェリヒア・コリ細菌からの発現のため、市販のpET14.bpプラスミドに基づく、トランスファー/クローニングプラスミドを使用した。大腸菌において発現されたSubolesin遺伝子をメキシコ由来のR.(ボーフィルス)ミクロプルスダニから得て、その全長をGenBankアクセッション番号:ABA62327に提示する。発現タンパク質はC末端切断147アミノ酸型であり、配列番号2に実質的に示される。
精製及び検出を容易にするように、Subolesin遺伝子のpETプラスミドへの簡易なサブクローニングのため、またN末端6×His融合ペプチドと共にそれを提供するため、DNAプライマーを構築した。標準的な市販のアンピシリン含有LB系培地を使用して、標準的な市販のBL21(DE3)(商標)大腸菌(Invitrogen)を発現に使用した。培養は37℃、200rpmで終夜行った。
pET型プラスミドを過剰発現用に設定するにしたがい、Subolesin抗原を細胞内の封入体中に見出した。これらを細胞の遠心分離の後、超音波処理によって採取した。次に、Subolesin封入体を6M Ureumバッファーを使用して変性した。その後、上記タンパク質をHis−Trapカラム、例えば、Profinia(商標)IMACカートリッジ(BioRad Bio Scale)を使用して精製した。溶離したSubolesin抗原を遠心分離により5.0 MWCO PESフィルター(Vivaspin)上で濃縮し、MWCO 3.5 kDa透析膜(SpectraPore)上においてpH5.8で50mM MESバッファー(モルフォリノ−エタンスルホン酸)に対して再生するため透析した。
この精製したSubolesin抗原を幾つかの技術を使用して更に特性評価した。SDS−PAGE及びクーマシーブルー染色の後、精製したSubolesinは、20kDaの1つの主なバンド、及びいくつかの小さなバンド、40kDa、60kDa、及び80kDaのおそらくは多量体を示した。ウェスタンブロットでは、ポリクローナルウシ抗Subolesin抗血清を使用して、20kDa、40kDa、及び60kDaのバンドを特異的に認識した。
抗原Elisaでは、このSubolesinに対する特異的結合を抗原の滴定により希釈できた。His−Trapカラム精製の後、Subolesin抗原は、その量が標準的なBCAタンパク質アッセイ(Pierce)において特定され得るほど高精度であり、これは、約100mg/lの濃度のSubolesinが通例で得られたことを示す。単離したタンパク質を使用するまで−70℃で保存した。
1.1.2.ピキア発現系によるSubolesin又はBm86の発現
ピキアにおけるSubolesin又はBm86の抗原の発現を、実質的に記載されるように(いずれも上述のAlmazan et al.2010、及びCanales et al.,2008)行った。要するに、コーディング遺伝子を市販のpPICZαプラスミド(Invitrogen)をトランスファーベクターとして使用して発現した。これをE.コリにおいて構築して増幅した後、コンピテントX−33P.pastoris細胞の形質転換に使用した。このトランスファーベクターは、AOX1プロモーターの制御下のピキア染色体へと安定な統合を提供する。遺伝子インサートの数に応じて、具体的な細胞クローンはより高い又はより低い発現能力を有することができる。発現を標準的な条件で行い、すなわち、最初に酵母及び大豆タンパク質抽出物、並びにグリセロールを含む基本培地上で細胞を増幅した。増幅後、2%メタノール培地へと培地を交換することにより、培養物を誘導してAOXプロモーターから発現し、インキュベーションを更に48時間続けた。
いずれの抗原もピキア特異的シグナル配列(MATアルファプレプロ)を使用して発現され、Bm86は膜貫通配列を全く有しなかった。その結果、上記タンパク質は培養上清中に産生され、そこからそのタンパク質を濃縮し、特性評価及びワクチン製剤化に使用した。
1.1.3.バキュロウイルス発現系によるBm86の発現
バキュロウイルス−昆虫細胞発現系におけるBm86タンパク質の発現のため、メキシコ由来のR.(ボーフィルス)ミクロプルスダニのBm86遺伝子を得た。その配列はGenBankアクセッション番号ADQ19685のものと同じである。コードされるヌクレオチド配列を最適化して、全ての突然変異がサイレントとなるように、コードされるタンパク質を変更することなく、バキュロウイルスのコドン使用頻度に適合した。バキュロウイルスによって発現された遺伝子はBm86シグナル配列を含んだが、膜貫通領域は含まず、この方法では、上記タンパク質は昆虫細胞から分泌されて細胞膜に結合されたままとなる。得られた成熟バキュロウイルス発現Bm86タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を有した。
クローニング及び発現に使用したトランスファーベクタープラスミドは、ポリヘドリン遺伝子プロモーターからの発現を提供する市販のpVL1393プラスミドであった。形質導入の後、組換えバキュロウイルスを数回のプラーク精製により選択した。1つの組換え体を安定で生産性が高いことから選択し、これをスケールアップ及びタンパク質産生に使用した。典型的には、Sf9又はSf21昆虫細胞を市販のSF900培地で培養し、約0.1m.o.i.で感染し、4日間〜5日間の28℃でのインキュベーションの後タンパク質を採取した。昆虫細胞培養上清から得たBm86タンパク質を遠心分離、組換えバキュロウイルスの不活性化及びVivaspin(商標)膜に対する濃縮によって採取した。
幾つかの技術、すなわち、サンドイッチElisa、及び約80kDaのバンドに対するSDS−PAGE/ウェスタンブロットにより、精製したBm86抗原をウサギ又は仔ウシ由来の特異的抗Bm86抗血清を使用して更に特性評価した。Bm86のタンパク質量の測定は、このタンパク質の高システイン含量のためある程度問題があり、したがって、標準的なBCA又はローリーアッセイは不正確な量をもたらした。しかしながら、標準的なブラッドフォードアッセイ又はCBBアッセイはいずれも信頼性のある測定を示し、通常、約400μg/mlのBm86タンパク質抗原をバキュロウイルス発現系において産生できることを示した。
1.1.4.タンパク質特性評価
発現系によって産生されたBm86タンパク質及びSubolesinタンパク質の同定を確認するため、クロマトグラフィー及び質量分析を使用するトリプシン性断片のタンパク質配列分析に供した(オランダ、ナイメーヘンのRadboud University Proteomics Centre)。簡潔には、予備SDS−PAGEに由来するゲルストリップを含有するタンパク質を切り出した。タンパク質をin−gelでトリプシンにより消化し、溶離して、サイクロトロン共鳴質量分析計に連結した液体クロマトグラフィーカラムで分析した。見出されたタンパク質配列を既知のバックグラウンド及び汚染について分析し、Bm86タンパク質及びSubolesinタンパク質の配列を組み立てた。Bm86及びSubolesinは両方ともそれらの各試料において単一ドメインタンパク質として見出された。Subolesinタンパク質配列に対する被覆範囲は88%であり、Bm86に対しては68%であった。それにもかかわらず、見出された結果は、発現が意図されたアミノ酸配列と完全に一致した。
1.2.血清学的アッセイ
一連の実験において使用された様々な血清学的アッセイに対して、酵素結合免疫吸着測定法(Elisa’s)を使用した。これらを標準的なサンドイッチ(捕捉)Elisaとして行い、抗体又は抗原を含有する試料のいずれかの分析用に設定した。それらの基本的なレイアウトは常に同じであり、要するに、捕捉抗体を終夜インキュベーションによって滴定プレートのウェルに対して被覆した。その後、プレートを洗浄し、捕捉抗体によって特異的に認識される抗原と共にインキュベートした。インキュベーション及び洗浄の後、これもまた抗原を認識し得る、二次の異なる抗体を添加した。インキュベーション及び洗浄の後、二次抗体のIgG型に特異的な三次抗体を添加した。三次抗体を、好適なElisa読取り機において読み取ることにより、任意の抗原が結合したかどうかを明らかにするための呈色反応を可能とするセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)酵素と接合した。
Bm86タンパク質又はその抗体の検出のため、Elisaは捕捉用にウサギIgG抗Bm86(ピキア)、ウシ抗Bm86(バキュロ)二次抗体、及びヤギ抗ウシIgG−HRP抱合体を採用した。
Subolesinタンパク質又はその抗体の検出のため、Elisaは捕捉用に市販の抗Hisタグ抗体、ウシ抗Subolesin二次抗体、及び複合体としてヤギ抗ウシIgG−HRPを採用した。
使用した全ての手順は標準的であるか、又は供給業者によって推奨され、同様に、プレート、被覆、インキュベーション、線状、又はブロッキングのため使用したバッファー、呈色基質等の使用した全ての材料は標準的であった。可能であれば、Elisaプレートの洗浄、読み取り及び結果の計数を自動化された方法及び機器により行った。
Elisaが、ワクチン接種研究による動物血清等の試料における抗体の検出及び定量(効力Elisa)が意図される場合であれば、使用される抗原は参照抗原であり、参照二次抗体と並行して、試験血清を二次抗体として滴定した。対照的に、Elisaが、発現系から産生されたような試料中の抗原物質の検出及び定量(抗原性質量Elisa)が意図される場合であれば、参照抗原試料に次いで試験抗原をプレートに滴定し、二次抗体は参照抗体であった。
Elisaが、抗体がIgG1型又はIgG2型かどうかを決定することに関連する場合であれば、選択的抱合抗体、例えば、市販のヒツジ抗ウシIgG1、又はヒツジ抗ウシIgG2aを使用した。
これらのElisaアッセイの結果は任意の力価値であり、それらの数値が特異的な参照試料及び使用された希釈方法に依存することを意味する。したがって、それらの正確な値は、異なる参照試料を使用してかかるElisaを行う他の方法が異なる値をもたらすことから、適切ではない。しかしながら、これらの実験の全ての試料を同じ方法で試験したことから、それらの関連する値は適切であり、同じアッセイによって分析された試料間の抗原又は抗体の力価の比較を可能とする。
1.3.ワクチンの製剤化
具体的な機器又は容量の要求を適応するため微調整を行いながら、原則は供給業者の指示書に従ってエマルジョン及びゲルを調製した。要するに、
Montanide(商標)ISA50V2エマルジョンを全面的に供給業者(Seppic)の指示書に従って調製した。Montanideを、室温で約10分間、高剪断混合によって50:50でPBS中のタンパク質の水相と混合した。約35℃を超えないように温度をモニターした。Montanideを使用前に滅菌濾過した。色及び均一性についてエマルジョンを目視及び顕微鏡(1000倍に拡大)で検証した。
エマルジョン化の前にQuilA(商標)サポニンをタンパク質含有水相に添加すること以外は、上述の通りMontanide ISA50V2+サポニンのエマルジョンを調製した。最初にQuilAをPBSに10%溶液まで取り、滅菌濾過した。これを1:10でPBS中の抗原の水相と混合し、Montanideと50:50で乳化した。最終エマルジョンは500μg/mlのサポニンを含有した。
油としてMarcol(商標)又はDrakeol(商標)を使用する軽鉱物油エマルジョンを、標準的な高剪断条件下でPBS中のタンパク質を用いて40:60のw/oエマルジョンとして調製した。使用した界面活性剤は5%Span80(商標)及び1%Tween80(商標)(最終エマルジョン中)であった。
アルミニウム系ゲルを(最終)0.15%水酸化アルミニウム又は0.1%リン酸アルミニウムのゲル及びPBS中のタンパク質を用いて調製した。
アルミニウム−油複合エマルジョンを、水相中の抗原及び油相中のMontanide ISA50V2を含む水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウムのゲルを含む、上述の組成物のw/oの組み合せとして調製した。
2.二重投与計画においてBm86抗原及びSubolesin抗原を使用するワクチン接種チャレンジ研究
2.1.研究計画
上記研究は、動物5匹/群の種々の治療群に無作為に割り当てられた、ダニのいない地域から得られたHerford/Holstein雑種の若い雄の仔ウシ(4カ月齢〜6か月齢)を使用する無作為化試験であった。対照群を除き、1用量の被験物質は1mlの容量のw/oエマルジョン中に100μgの組換え抗原を含有した。頸部における注射により皮下に注射を行った。1より多いタンパク質でワクチン接種した動物は、別々の部位に注射を受けた。最初のワクチン接種を3週間の間隔で2回追加免疫した。
最後の追加免疫から3週間後に動物を共通の囲いから個別の仕切りの飼育場に移し、各々両側で、2種のコイタマダニ属のダニを用いて脇腹にパッチチャレンジを受けた。寄生部位を毎日確認し、落ちた充血した雌がいれば収集した。各数の収集したダニをインキュベートして産卵させた。その後、ダニの卵塊をインキュベートして生存率の測定として幼虫の出現を測定した。
2.2.方法
2.2.1.被験物質
この試験に使用したアジュバントは、標準条件下で水相を用いて50:50w/oエマルジョンに乳化されたMontanide ISA50V2(フランスのSeppic社)であった。対照群では、水相は標準的な滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)から構成された。上記ワクチンは、以下を含む水相を含有した。
ピキア発現系を使用して産生された100μgのBm86タンパク質。挿入されたBm86遺伝子は、その本来のシグナル配列又は膜貫通領域を伴わない、メキシコR.(ボーフィルス)ミクロプルスダニに由来した。
大腸菌発現系を使用して産生された100μgのSubolesinタンパク質。挿入されたSubolesin遺伝子は、メキシコR.(ボーフィルス)ミクロプルスダニに由来し(147アミノ酸)、N末端6×His融合ペプチドと共に提供された。
ワクチンエマルジョンを無菌に製造し、使用するまで2℃〜8℃でガラス容器において維持した。
2.2.2.動物
使用した仔ウシは健康な動物であり、アナプラズマ及びバベシアがおらず、ワクチン接種前に4週間の順化期間を有した。動物は識別用の特有の番号の耳標を有した。飼料及び水の供給は標準的であった。獣医により任意の異常について全ての動物を毎日観察した。
2.2.3.治療
16ゲージ針を備えた3mlシリンジを使用して1ml用量で頸部皮下に全てのワクチン接種を行った。注射前に注射部位を剃毛した。首の左側と右側で交互に、その後の注射を行った。同日に、頸部の左側と右側で二重のワクチンを投与した。
ワクチン接種の日毎に採決を行ったが、血清の調製のため、ワクチンの投与前、及びチャレンジ寄生の前に10mlの血液を頸静脈から採取した。使用するまで試料を−20℃で保存した。
一過性の局所浮腫は、注射後約72時間までワクチン接種部位において共通して観察された。
2.2.4.ダニチャレンジ
チャレンジダニはメキシコ単離株に由来するR.(ボーフィルス)ミクロプルス、及びテキサス単離株に由来するR.(ボーフィルス)・アニュラタスであった。ダニを若い仔ウシに対して給餌することによって実験室コロニーとして維持した。充血したダニを収集し、12時間−12時間の明暗サイクル、22℃〜25℃、及び80%の相対湿度の湿度チャンバーにおいて産卵及び孵化のためインキュベートした。
ダニチャレンジ寄生のため、上記研究のウシを、幼虫を置くことができる綿のセルを糊で取り付けるため、両脇腹を剃毛した。パッチ寄生を保証するため、保護綿ネットを接種部位の周りに取り付けた。次の日、右脇腹に250mg(約5000匹)の幼虫のR.(ボーフィルス)ミクロプルスを用い、左脇腹に同じ量のR.(ボーフィルス)・アニュラタス幼虫を用いて動物に寄生させた。その後、上記ネットを閉じたままにした。寄生の2日後、付着していない幼虫を除去した。その後、寄生部位をダニの成長について毎日調査した。落ちた充血ダニを収集し、計数し、計量し、27℃の加湿(80%)雰囲気でインキュベートして産卵、成長及び幼虫の出現を可能とした。
2.2.5.結果の評価
抗体力価
動物血清学的判定を記載される抗体サンドイッチElisaにより行った。
寄生虫学的パラメーター
寄生期間中に各個別の仔ウシ(及び寄生部位)から回収された充血ダニの総数を特定した。これらの数を、パラメトリック分析による統計学的分析を可能とする正規分布したデータセットを得るため対数変換した。1群当たり、平均対数(充血した雌の数)及びその群の平均の対数平均を算出した。群の差異の統計学的有意性を分散分析及びDuncanの対比較により算出した。防御を、対照値と比較したダニの数の減少として算出し、パーセントで表した。
各々の回収したダニの重量を特定し、グラムで表した。回収したダニ毎に産生された卵塊(産卵)を特定し、ミリグラムで表した。卵の生存能力(生殖能力)を回収した幼虫集団を計量することによって特定した。生殖能力を、その卵の塊に対する幼虫集団として表し、比率で表した。
「全有効性」と呼ばれる、チャレンジダニ及びそれらの子孫に対するワクチン接種の最終の複合効果を、充血したダニの数の減少、卵塊の減少、及び生殖能力の減少の組み合せから算出し、生存可能な子孫の減少割合として表した。
2.3.結果
2.3.1.血清学
結果が経時的な増加を示したことから、ワクチン接種した抗原に対する液性免疫応答はいずれも有意であり、抗原特異的であることを証明した。表1は、チャレンジ直前の力価値を提示する。
2.3.2.ダニチャレンジ応答
R.(ボーフィルス)ミクロプルス、同様にR.(ボーフィルス)・アニュラタスの両方のダニチャレンジ寄生に対して、ワクチン接種群における充血ダニの強い減少を伴って、上記実験群間で充血ダニ数の明確な顕微鏡的差異が存在した。数匹のワクチン接種動物は、充血したダニを全く示さないのに対し、ワクチン接種していない仔ウシについては、充血ダニ数が時に600超に達した。この差異の拡大を説明するため、図1は、一方はPBSを含むアジュバントを使用して疑似ワクチン接種し、他方は二重適用計画においてBm86及びSubolesinの両方でワクチン接種した、チャレンジ後23日目における本研究による仔ウシの脇腹の写真を提示する。
実験群から回収され得た充血ダニの数に基づき、見られた差異は統計学的に有意(対数変換データに対して、それぞれp=0.0164、p=0.0354)であった。
疑似的にワクチン接種した仔ウシと比較して、両種のチャレンジのダニ数の合計の平均減少%は、Bm86のみでワクチン接種されたウシにおいて約79%であったのに対し、Bm86及びSubolesinの両方でワクチン接種された群については上記チャレンジ減少は約97%であった。
生存可能な子孫における減少割合の減少を組み込む、この非常に印象的なチャレンジ防御は、成虫期までダニが成熟するのを抑制することによる、充血しているダニの数の減少に主に起因し、これはダニの生殖能力に強く影響を及ぼした。
Figure 0006586077
2.4.考察及び結論
このin vivoワクチン接種チャレンジ研究による結果は、Bm86抗原のみを使用するダニ寄生に対するウシのワクチン接種の防御効果が改善されたことを示す。本研究では、Bm86抗原の防御効果は、充血ダニ数の79%の減少に反映される。上記研究のこの部分は比較実験であり、TickGARD等の市販の単独Bm86抗原ワクチンについて長く知られている効果を再現した。しかしながら、この場合、おそらくはより多い用量(50μgに代えて100μg)、及びより集中的なワクチン接種スケジュール(合計で2回に代えて3回のワクチン接種)を使用したため、上記防御は従来技術で通常観察されるレベル(50%〜70%の減少)を上回っていた。
しかしながら、この単回ワクチン接種の防御効果は、ウシが二重投与計画においてSubolesin抗原でもワクチン接種される場合には、ダニ数が97%まで減少され顕著に改善され得る。これらの結果は、ただ標準的な投薬及び製剤を使用して得られた。
観察されたチャレンジ防御は、Bm86抗原及びSubolesin抗原に対する抗体応答のレベルと相関した。2つの異なる種のチャレンジダニに対する全体的な防御効果(生存可能な子孫の減少)は100%近くであり、これはダニ種レベルを超える。実際のところ、これは群れの寄生圧力の効果的な減少を意味する。
3.単回投与計画においてBm86抗原及びSubolesin抗原を使用するワクチン接種−血清学研究
3.1.要約
上述のものとほぼ同じ設定でin vivoワクチン研究を行ったが、ここでは、仔ウシの血清学をそれらの免疫応答、及びチャレンジ寄生を克服する可能性として測定した。使用したワクチン抗原は、異なる発現系から得られたBm86タンパク質及びSubolesinタンパク質であり、異なる構成に乳化された。
各5匹のウシの群を1ヶ月間隔で(皮下に)3回ワクチン接種した。全てのワクチン調製物をMontanide ISA 50V2アジュバントと共に50:50のw/oエマルジョンへと製剤化した。1つの群(T1)を、頸部の左右に注入される別々のワクチンとして製剤化された、ピキア・パストリスで発現されたBm86、及び大腸菌で発現されたSubolesinでワクチン接種した。第2群(T2)を同様に治療したが、抗原はバキュロウイルス発現系由来であった。第3群(T3)を、アジュバントによる製剤化の前に単一の水相において混合されたバキュロウイルス発現Bm86抗原及びSubolesin抗原でワクチン接種した。ワクチンを、頸部の左右に注射される2つの等量のアリコートに分けた。第4群(T4)を、各々がw/oエマルジョンの別々の水相にある、バキュロウイルス発現Bm86タンパク質及びSubolesinタンパク質でワクチン接種した。上記ワクチンを頸部の左右に注射される2つの等量のアリコートに分けた。対照として、1つの群(C)をアジュバントのみでワクチン接種した。
3.2.方法
3.2.1.被験物質
試験群1:
別々の部位におけるBm86抗原及びSubolesin抗原の二重投与。これは、動物の別々の部位に注射された、1用量(1mL)当たり50μgのP.パストリスで産生されたBm86、及び1用量(1mL)当たり50μgのエシェリキア・コリで産生されたSubolesinを使用した。Bm86の配列はR.(ボーフィルス)ミクロプルスのオーストラリアダニ分離株に由来した。
試験群2:
動物の別々の部位に注射された、1用量(1mL)当たり50μgのバキュロウイルスで産生されたBm86、及び1用量(1mL)当たり50μgのバキュロウイルスで産生されたSubolesinを使用する、別々の部位におけるBm86抗原及びSubolesin抗原の二重投与。
試験群3:
2ml当たり50μgのBm86及び50μgのSubolesinを使用する、同じ部位におけるBm86抗原及びSubolesin抗原の単回投与。各抗原をバキュロウイルスによって産生し、その後、抗原を単一の水相へと複合し、乳化した後、動物に対して別々の部位における2つの等容量の注射に分けた。
試験群4:
2ml当たり50μgのBm86及び50μgのSubolesinを使用する、同じ部位におけるBm86抗原及びSubolesin抗原の単回投与。各抗原をバキュロウイルスによって別々に産生した後、別々のw/oエマルジョンへと乳化した。実際、使用したw/oエマルジョンは、T2群にも使用されたものであり、これらのw/oエマルジョンの等しい部分をワクチン接種の直前に手で混合した。これにより、同じw/oエマルジョン中であるが、各々別々の水相にある2つの抗原を提供した。その後、ワクチン容量を、動物の別々の部位における2つの同じ容量の注射に分けた。
対照群:
疑似ワクチン群は、アジュバントのみの注射を受けた。注射部位それ自体の影響を抑制するため、動物の別々の部位において1mlで2回のワクチン接種を行った。
3.2.2.動物
エアシャー品種の仔ウシの雌雄を使用した。仔ウシは約3か月齢であり、臨床的に健康であった。順化期間中に動物を計量し、重量でランク付けした群から無作為に選抜することによって治療群に割り当てた。最終結果は、類似の平均重量(約80キロ)の治療群への動物の無作為割当てであった。
全てのワクチン及び対照について、適用は、首の尾外側中央部の対側の皮下注射により、1注射部位当たり1mlの投薬容量であった。
3.2.3.統計学
データセットのより大きな正規性を確実にするため、全ての抗体力価データを対数変換した。これは、群値のパラメトリック統計分析の使用を可能とする。その結果、算出される全ての平均は、特に記述がない限り、幾何平均である。
3.2.4.採血及び加工処理
全ての群の血液試料を18週目まで毎週収集した。およそ10mlの血液を、左右の外頸静脈から血清チューブに収集した。凝塊の形成後、血液試料を遠心分離し、各チューブ由来の血清を、ラベル付きのクライオチューブに傾斜して静かに移すか、ピペットで移した。その後、血清試料を約−40℃で保存し、Bm86及びSubolesinに特異的な抗体力価のElisa分析のためドライアイス上に移した。
3.3.結果
3.3.1.セロコンバージョン
抗体捕捉Elisaを使用して、免疫化に使用したタンパク質に対する仔ウシの抗体応答を測定した。ワクチン製剤に応じて、上記各抗原に対する種々の抗体応答が見られた。二次追加免疫の2週間後のBM86に対する抗体力価は、一般的に全てのワクチン接種動物群で低く、(任意のLog2 Elisa力価で)7.2〜10.8の範囲であった。最も高い抗体力価は、T3群の仔ウシで見られ、続いて高い順にT4群、T1群及びT2群で見られた(表2)。
Subolesinに対する最も高い抗体力価がT1群、続いて高い順にT4群、T2群及びT3群において見られた。重要なことに、T2群、T3群及びT4群の動物にワクチン接種するため使用したBm86抗原及びSubolesin抗原が各々単一のバッチ由来であることから、これらの群間の抗体力価の差異は、ワクチン製剤に関連する。抗原を油アジュバント中に乳化する前に水相中で混合した場合(T3群)、Subolesinに対する応答はわずかであったが、Bm86に対する応答は増加した。これらの抗体に対する応答性のそのような干渉は、上記抗原を各々それら自体の水相中に製剤化した場合(T4群)見られず、この群の応答は二重投与ワクチンとしてこれらの抗原でワクチン接種したウシ(T2群)の応答に非常に類似した。
ピキアで産生されたBm86に対するウシ(T1群)の応答は、バキュロウイルスによって産生されたBm86を受けたウシ(T2群)の応答に類似した。しかしながら、大腸菌によって産生されたSubolesin抗原に対するウシの応答は、バキュロウイルスによって産生されたSubolesinでワクチン接種されたウシの応答よりもはるかに高かった(T2群;p=0.05、一元配置分散分析/Duncan)。
Figure 0006586077
3.4.考察及び結論
このin vivo血清学研究では、Bm86−Subolesin複合ワクチンの幾つかの態様を試験した。
まず初めに、単独の投薬形態とした2つの抗原Bm86及びSubolesinの組み合せの効果を研究した。結果は、Bm86及びSubolesinが単一の水相において複合されると(T3)、その後にSubolesinが十分に認識されず、免疫応答はBm86に対する抗体の産生に偏ったことを示す。この群では、Bm86に対する抗体応答は、別々の投与として製剤化された各抗原を用いてワクチン接種されたウシ(T1、T2)のものよりも統計学的に有意に高かった。対照的に、Subolesin抗原に対する抗体応答は、2つの抗原により別々にワクチン接種されたウシのものよりも低かった。この効果は望ましいものではなく、すなわち、Bm86に対してより高い抗体応答を有することに肯定的であり得るものの、これは、部分的なチャレンジ防御を提供するに過ぎない。ワクチン接種チャレンジ研究(実施例2)において示されたように、強力な防御応答は、Bm86及びSubolesinの両方に対して高レベルの抗体を必要とする。したがって、2つの抗原の単純な混合によってもたらされるSubolesin力価の減少によって、効果的な免疫防御は何ら得られ得ない。
しかしながら、意外なことに、これらの抗原が各々、別々の水相に存在する場合(T4)、抗体応答の干渉又は偏りは全く見られず、Bm86及びSubolesinの両方が特異的抗体の公平な力価を誘導した。これは、二重投与(T2)の後に観察された応答に酷似した。その結果、これは、原則的に、単一のワクチン投与計画のみを使用することにより2つの抗原の各々に対する抗体応答を生じることが可能であるが、標的免疫系へのそれらの別々の実体としての提示に関して特別な注意が必要であることを示した。
第2の目標は、発現系の効果を評価することであった。したがって、組換えBm86タンパク質を、ピキア又はバキュロウイルスの発現のいずれかによって産生し、Subolesinを大腸菌又はバキュロウイルスによって産生した。特別な要求を必要とせずに、使用した全ての発現系が公平な量の抗原をもたらしたことを発見するのを改めて保証した。標準的な抗原性質量Elisaを使用して、産生された抗原の相対量を査定し、選択されたBm86の量は、実施例2の研究において使用した用量に等しい、約50μgであった。
Subolesin抗原のワクチン接種のため、初期の研究で使用した量のおよそ半分の1用量当たり50μgを使用した。大腸菌産生Subolesinに対する血清学的応答は、バキュロウイルス産生Subolesinに対するものよりも良好であった。また、Bm86に対する抗体応答も以前の試験におけるものより幾分少なかった。なぜかはすぐに明らかではなかったが、バキュロウイルス産生抗原により得られたBm86に対する抗体応答がピキア産生抗原による免疫化の後の抗体応答に匹敵することから、これは選択された発現系と無関係であった。
上記発現系は決定的ではないが、例えば、抗原用量及びアジュバントの種類に関する最適化研究に基づいて得られる防御抗体力価のレベルを改善する余地が存在すると結論付けられた。
4.in vitroダニ給餌アッセイ
血液試料中における抗Bm86及び/又は抗Subolesinのレベルのチャレンジ防御能力の評価を容易にする方法として、仔ウシ血液の試験試料を餌とするコイタマダニ属のダニについて、人工給餌アッセイを設定した。上記アッセイは、具体的な血液試料に対して給餌するために置かれたダニの総数のうち充血したダニの数の相違を検出し、それを試験される血液試料の抗原力価に相関させることを目的とする。
これらのアッセイの使用は、必要な実験動物の数を減少するのに役立った。さらに、in vitroアッセイは、血液中のBm86及びSubolesinに対する抗体レベルに直接的に関連することから、ダニチャレンジに対する防御を評価する迅速で信頼性のある方法であることが証明された。
4.1方法
24ウェルプレート設定を使用してKrober & Guerin(2007,Trends in Paras.,vol.23,p.445)による記載に基づいて、自作の装置を使用してアッセイを行った。標準的な条件下において飼育株で維持されていた雌性成体からの卵を孵化することによりコイタマダニ属のダニの幼虫を得た。約3週齢の時、50μlの担体液中の約0.3グラムの幼虫を1ウェル毎に置き、これは50匹〜100匹の幼虫を表し、各試料を6ウェルで試験した。試験チャンバーの片側を網で覆って幼虫が逃げるのを防止し、もう片側を血液又は血清の試料への接近をもたらすフィーディング膜で覆った。その後、自然状況と同じように、幼虫は口器で膜を突き抜け、血液を摂取した。保存のため、試験試料を抗生物質及び抗菌化合物と混合した。その後、試験装置を標準的な37℃、5%CO、及び80%相対湿度のCOインキュベーションチャンバーに置いた。
約72時間のインキュベーションの後、上記チャンバーを−20℃に置いて幼虫を殺傷し、その後、顕微鏡により読み取った。ダニが明らかに充血しているか、又は充血していないかを決定すること、また、各試験チャンバーについてこれら2群の数を計数することにより採点を行った。重要なことには、上記採点を行う者は試験された血液又は血清の試料の背景情報について知らされていなかった。これらの計数により、特定の試料を餌とした後に充血したダニの割合の最終数をもたらした。
4.2.結果
人工給餌アッセイの結果、試験された具体的な血液又は血清試料に対する充血したダニの数の任意の減少が、試験した試料のBm86又はSubolesinの抗体力価と良好に相関することが見出された。図2は、人工ダニ給餌血清における試験仔ウシ血清の結果を表す。仔ウシは、後述のように用量を見出す研究及びアジュバントの最適化研究におけるBm86又はSubolesinの抗原のいずれかで免疫化されていた。図2に提示される特定の試験において、血清は2回のワクチン接種の後に得られた。
Bm86及びSubolesinの両方に対する抗体によるダニへの同時効果を試験するため、これらの抗体を含む血清の試料を個別に1:1で混合した。正確な比較のため、Bm86のみまたSubolesinのみの抗体を含む試験試料を0日目の(ワクチン接種の前に採取した)ウシ血清を使用して1:1に希釈した。0日目の血清試料について見出された充血したダニ数を0%阻害を表すため設定した。
結果は、Bm86とSubolesinの抗血清の組み合せによってダニ充血の阻害における強い増加を示す。Bm86抗血清単独またSubolesin抗血清単独で誘導される阻害の差異は統計学的に有意ではなかった。
これらの結果は、ダニの血液の食餌中にBm86及びSubolesinの両方に対する抗体が十分高レベルで存在する場合、ダニ充血に対して累積的影響が得られることを重ねて反映する。
5.ワクチン最適化研究
様々な抗原用量を試験し、使用されるエマルジョン及びアジュバントを最適化するために幾つかのin vivoワクチン接種研究を行った。それらの研究を血清学的な方法及びダニ人工給餌アッセイにおける試験により評価した。上記研究は、非常に高い抗体レベルを誘導したという情報をもたらした。
1つのアプローチは、上記ワクチンエマルジョンの水相に含まれるアジュバントとしてのサポニンの使用を試験することであった。その後、サポニンは、本発明によるエマルジョンを作製するために使用された標準的な油相により既に誘導される促進効果に加えて作用する。これらの研究では、任意の追加の促進効果がより目立つように、上記タンパク質を準最適なレベルで使用した。
並行して、種々の量の抗原の効果を試験するため、用量を見出す研究を行った。
これら全ての研究に対して、ワクチン接種し、6週間後に追加免疫した5匹の仔ウシ(6ヶ月齢〜8ヶ月齢、雌雄を含むFrysian/Holstein種)の群において基本的な設定を試験した。血清を毎週試験した。
Bm86について、25μg/用量、50μg/用量、100μg/用量及び200μg/用量の抗原量を使用した。種々の製剤を50μg/用量のBm86を用いて試験した。試験した種々のw/o製剤を、Montanide ISA 50V2、Montanide ISA 50V2+サポニン、白色鉱物油、水酸化アルミニウムゲル、又はリン酸アルミニウムゲルを使用して調製した。Bm86抗原を、記載されるバキュロウイルス発現系により発現した。
Subolesinについて、12.5μg/用量、25μg/用量、50μg/用量、及び100μg/用量の抗原量を使用した。種々の製剤(Bm86について使用したものと同じ種類)を25μgのSubolesin抗原を用いて試験した。Subolesin抗原を、記載されるN末端Hisタグを伴って、大腸菌発現系により発現した。
疑似ワクチン接種群は、既にこれらが関連する抗体を発現しなかったことから、必要ではなかった。
両方の抗原について、最も高い血清応答は、Montanide ISA 50V2+サポニン、又はリン酸アルミニウムゲルアジュバントのいずれかを使用して見出された。これらのアジュバントによって実証されるIgGプロファイルを調査することによってこれを説明することができ、IgG2a抗体応答はIgG1応答に加えてもたらされて、産生される特異的抗体の合計レベルを上昇する。
抗原用量を見出す研究による最も高い抗体レベルは、Bm86について50μg/用量、Subolesinについて100μg/用量であった。
標準的な抗体Elisaアッセイを使用して、これらの最適化研究において得られた最大抗体力価を、Bm86について19Log2、及びSubolesinについて18Log2のElisa単位と決定した。
ワクチン接種標的におけるこれらの抗体レベルが、ワクチン接種チャレンジ研究において防御を証明した約10Log2 Elisa単位(これらの実験において適用される)のレベルをはるかに上回ることを考慮すると、かかるワクチン接種動物は効果的に防御されたと考えられた。
これらの研究に由来する血清を上述のin vitroダニ給餌アッセイにおいて使用した。
6.最適化ワクチンを使用する現在進行中のin vivoワクチン接種研究
最適なアジュバントを含むワクチン製剤を最適な抗原用量との組み合せで試験する、in vivoワクチン接種研究が現在進行中である。最適化研究におけるものと実質的に同じ設定を使用して、5匹の仔ウシ6群を種々のワクチンで免疫して、それらの血清学的免疫応答をモニターする。試験群は以下の通りである。
Bm86のみ:
サポニンを含むMontanide ISA 50 V2中に製剤化されたバキュロウイルスで発現された50μ/用量のBm86抗原。
Subolesinのみ:
サポニンを含むMontanide ISA 50 V2中に製剤化された大腸菌で発現された50μ/用量のSubolesin抗原。
Bm86+Subolesin二重:
片側に投与されたサポニンを含むMontanide ISA 50 V2中に製剤化されたバキュロウイルスで発現された50μ/用量のBm86抗原、及び同時にもう片側に投与されたサポニンを含むMontanide ISA 50 V2中に製剤化された大腸菌で発現された50μ/用量のSubolesin抗原。
Bm86+Subolesin単回、別々の水相、3群:
w/oエマルジョンに基づくMontanide ISA 50 V2の1つの水相においてサポニンと共にバキュロウイルス発現されたBm86抗原、同じw/oエマルジョンの別の水相のサポニンを含む、大腸菌発現されたSubolesin抗原。この製剤を各抗原量、すなわち25μg/ml、50μg/ml、又は100μg/mlのBm86又はSubolesinの各々の3つの組み合せを用いて試験する。
両方の抗原を別々の水相に含む単回投与ワクチンは、ワクチン接種の直前に、Bm86とSubolesinの単一のw/oワクチンを等量で混合することにより調製される。
7.最適化されたワクチンを使用するin vivoワクチン接種研究の予定
さらに、製品開発目的のin vivoワクチン接種研究が計画されている。これらは、本質的には同じ設定を有するが、in vivoダニチャレンジ寄生を含む。採用されるワクチンは、以前の研究において決定されたBm86抗原及びSubolesin抗原の最適化された用量及び製剤を使用する。また、これらは、標的の免疫系に対して別々にBm86タンパク質とSubolesinタンパク質を提示することの必要性を確認する。
充血しているR.(ボーフィルス)ミクロプルスダニの数に対するBm86抗原及びSubolesin抗原によるワクチン接種の効果。
R.(ボーフィルス)ミクロプルス幼虫によるチャレンジ寄生に供された、チャレンジから23日後のウシの対側中心の写真である。
上部パネル:アジュバントコントロールワクチン接種
下部パネル:Bm86抗原及びSubolesin抗原を二重投与で受けた、ワクチン接種したウシ。この動物において、完全なノックダウンが観察された。目に見えるネットは、パッチとして局在化されたチャレンジ寄生を維持するためである。
Bm86抗原又はSubolesin抗原による2つのワクチン接種後にウシに由来する血清試料を使用して得られた、ダニの充血の阻害レベルを表す、人工的なダニ摂食アッセイによる結果である。
試料:
0日目:ワクチン接種前の血清、
Bm86:0日目の血清と1:1で混合した、Bm86抗原によるワクチン接種及び追加免疫後の血清。
Subolesin:これも0日目の血清と1:1で混合した、Subolesin抗原によるワクチン接種及び追加免疫後の血清。
Bm86+Subo:Bm86血清とSubolesin血清の1:1の組み合せ

Claims (12)

  1. 第1及び第2の単離されたタンパク質を含む、コイタマダニ属のダニに対するワクチン用の組成物であって、
    前記第1の単離されたタンパク質が配列番号1によるアミノ酸配列と少なくとも71%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、Bm86タンパク質またはその類縁体であり
    前記第2の単離されたタンパク質が配列番号2によるアミノ酸配列と少なくとも96%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
    前記2つのタンパク質が物理的に互いに分離されている、第1及び第2の単離されたタンパク質を含む組成物。
  2. 前記組成物が、連続する油相と少なくとも2つの分離した水相とを含む油中水型エマルジョンであり、
    前記水相の1つが請求項1に記載される第1の単離されたタンパク質を含み、
    別の水相が請求項1に記載される第2の単離されたタンパク質を含む、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記組成物が、油相を含む連続する外部水相を含む水中油中水型エマルジョンであって、
    該油相が少なくとも1つの内部水相を含み、
    請求項1に記載される第1及び第2の単離されたタンパク質から選択される1つのタンパク質が前記外部水相に含まれ、
    請求項1に記載される第1及び第2の単離されたタンパク質からの他のタンパク質が内部水相に含まれる、請求項1に記載の組成物。
  4. 請求項1に記載される前記第1及び第2の単離されたタンパク質が各々、別々の薬学的担体に含まれる、請求項1に記載の組成物。
  5. 前記薬学的担体の少なくとも1つが、アルミニウム化合物又は巨大分子構造体である、請求項4に記載の組成物。
  6. 請求項1に記載される第1又は第2の単離されたタンパク質のいずれかを含む溶液又は薬学的担体を調製する工程と、
    前記組成物が請求項1に記載される第1及び第2の単離されたタンパク質の両方を含むように、これらの溶液及び/又は薬学的担体を1つの組成物に複合する工程と、
    を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載される組成物の調製方法。
  7. 前記第1の工程が、
    第1又は第2の単離されたタンパク質をコードする核酸配列を発現系において発現させること、及び
    前記発現されたタンパク質を採取し、単離すること、
    を含む、請求項6に記載の方法。
  8. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物と、薬学的に許容可能な構成成分とを含む、コイタマダニ属のダニに対するワクチン。
  9. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物と、薬学的に許容可能な構成成分とを混合することを含む、コイタマダニ属のダニに対するワクチンの調製方法。
  10. コイタマダニ属のダニに対するワクチンの製造のための請求項1に記載される第1の単離されたタンパク質の使用であって、
    前記ワクチンは、請求項1に記載される第2の単離されたタンパク質と同時であるが、身体の異なる場所において、異なる経路で又は異なる方法により投与されることを特徴とする、当該第1の単離されたタンパク質の使用。
  11. コイタマダニ属のダニに対するワクチンの製造のための請求項1に記載される第2の単離されたタンパク質の使用であって、
    前記ワクチンは、請求項1に記載される第1の単離されたタンパク質と同時であるが、身体の異なる場所において、異なる経路で又は異なる方法により投与されることを特徴とする、当該第2の単離されたタンパク質の使用。
  12. 少なくとも2つの容器を含む部品のキットであって、
    1つの容器が請求項1に記載される第1の単離されたタンパク質を含み、
    別の容器が請求項1に記載される第2の単離されたタンパク質を含む、少なくとも2つの容器を含む部品のキット。
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