JP6583819B2 - 一重項酸素累積濃度のシミュレーション法 - Google Patents

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Description

本発明は、光線力学的治療法(photodynamic therapy:PDT)における一重項酸素累積濃度のシミュレーション法に関する。
PDTは、腫瘍に選択的に集積した光感受性物質への光照射により発生する活性酸素種によって、がん細胞を選択的に死滅させる低侵襲な治療法である。現在、日本国内では、PDTによるがん治療用の光感受性物質としてポルフィマーナトリウム(フォトフリン;ファイザー社製)及びタラポルフィンナトリウム(レザフィリン;Meiji Seika ファルマ社製)が厚生労働省から承認を得ている。しかし、これらの光感受性物質は人工的に合成された物質であり、術後、体内に残留した光感受性物質による光線過敏症を避けるために、数週間から1カ月間は暗室内で過ごさなければならないという課題があった。
一方、5−アミノレブリン酸(5−ALA)の投与によって体内で生成され、がん細胞に選択的に蓄積するプロトポルフィリンIX(PpIX)は、光感受性物質としてがんのPDT治療に用いられている(特許文献1〜3)。PpIXは術後の光線過敏症が軽度であることから、PDTにおいて、ポルフィマーナトリウムやタラポルフィンナトリウムに代わる光感受性物質として期待されている。
5−ALA由来PpIXによるPDTを始めとして、新規光感受性物質、及び新規光源を用いたPDTの実用化のためには、照射する光の波長、照射光強度、照射時間、腫瘍組織内の光感受性物質の濃度等の条件を変えて、培養細胞による基礎実験、動物を用いた非臨床試験、及びヒトを対象とした臨床実験を行い、最適な治療条件を把握するとともに、安全性・有効性を示す必要があり、膨大な費用と時間が必要となる。新規PDTをスムーズかつ合理的に実用化へ導くためには、精度の高い計算機シミュレーションモデルを構築し、必要となる実験の条件を絞り込んだ上で、少数例の非臨床試験や臨床試験を行い、治療条件の妥当性や安全性・有効性を評価することが有効であると考えられる。
PDTで用いられる可視波長域において生体組織のほとんどは強い散乱体であるため、生体組織内部に入射した光は、散乱と吸収の両者の影響を受けながら伝搬する。生体組織内における光の散乱と吸収を物理学的に扱い、生体組織と光との相互作用を解析する手法は生体組織光学(tissue optics)とよばれる(非特許文献1)。しかし、PDTを始めとしたレーザー医療を基礎研究から臨床応用へ橋渡しする上で、生体組織光学的なアプローチは未だ根付いておらず、結果として、昨今のレーザー・光医学の急速な進歩に対し、この恩恵を患者が受けるには数年以上のタイムラグが生じてくる。このタイムラグを短くするには、生体組織光学に基づいた精度の高いシミュレーションモデルの開発が喫緊の課題であった。
特許第2731032号公報 特開2006−124372号公報 特表2002−512205号公報
R. K. Gupta: Tissue Optics, Current Sci. 76, pp.1341-1347 (1999)
本発明の課題は、腫瘍組織内に存在する光感受性物質に、励起光照射した場合に生成される一重項酸素の累積濃度を、精度よくシミュレーションする方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を続けている。その過程において、光感受性物質から生成される一重項酸素生成量子収率や、腫瘍組織内の光感受性物質濃度に加え、腫瘍組織内の励起光強度や光感受性物質のモル吸光係数を、励起光の各波長での効果を加味し、腫瘍組織内における一重項酸素の累積濃度をより厳密にシミュレーションしたところ、シミュレーションで得られた結果が、実際の治療効果を反映したものであることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕以下の工程(a)〜(c)を備えた、光線力学的治療法(photodynamic therapy:PDT)における一重項酸素累積濃度のシミュレーション法。
(a)波長λ1〜λn(nは自然数)の励起光の各波長について、モンテカルロコードを用いたシミュレーションにより、腫瘍組織内における励起光強度を算出し、算出した各波長の励起光強度を積算し、腫瘍組織内の励起光強度データを取得する工程;
(b)前記励起光の照射による光感受性物質の褪色因子、一重項酸素生成量子収率、腫瘍組織内の光感受性物質濃度、及び前記波長λ1〜λnにおける光感受性物質のモル吸光係数を取得する工程;
(c)工程(a)で取得した腫瘍組織内の励起光強度データ、工程(b)で取得した光感受性物質の褪色因子、一重項酸素生成量子収率、腫瘍組織内の光感受性物質濃度、及び光感受性物質のモル吸光係数、並びに、前記励起光のビーム径及び照射時間を基に、腫瘍組織内における、光感受性物質から生成される一重項酸素の累積濃度をシミュレーションする工程;
〔2〕光感受性物質が、タラポルフィンナトリウム、インドシアニングリーン、又はプロトポルフィリンIX(PpIX)である、上記〔1〕に記載のシミュレーション法。
〔3〕工程(c)において、腫瘍組織内の励起光強度(Φ)、腫瘍組織内の光感受性物質の濃度(C)、及び光感受性物質の褪色因子(β)を基に、励起光照射開始後の時間(t)における、腫瘍組織内の光感受性物質の濃度(C)を、以下の式で表す、上記〔1〕又は〔2〕に記載のシミュレーション法。
[式中、C(r,z,t=0)は、励起光照射開始直後(t=0)の、腫瘍組織内の位置(r,z)における光感受性物質の濃度を表し、Φは腫瘍組織内の励起光強度を表し、βは褪色因子を表す]
〔4〕工程(c)において、一重項酸素の累積濃度(A)を、以下の式を用いてシミュレーションする、上記〔3〕に記載のシミュレーション法。
[式中、A(r,z,t)は、励起光照射開始後の時間(t)の、腫瘍組織内の位置(r,z)における一重項酸素の累積濃度を表し、C(r,z,t=0)は、励起光照射開始直後(t=0)の、腫瘍組織内の位置(r,z)における光感受性物質の濃度を表し、Φ(r,z,λ)は、腫瘍組織内の位置(r,z)における波長λの励起光強度を表し、Tは励起光照射時間を表し、βは褪色因子を表し、λ1は、発光スペクトルの短波長側端の波長を表し、λ2は、発光スペクトルの長波長側端の波長を表し、ε(λ)は、前記波長λにおける光感受性物質のモル吸光係数を表し、λは励起光の波長を表し、hはプランク定数を表し、cは真空中の光速を表し、Nはアボガドロ定数を表し、φは一重項酸素生成量子収率を表し、rは、励起光の中心位置から腫瘍組織までの水平方向への距離を表し、zは励起光の中心位置から腫瘍組織までの深さ方向への距離を表す]
本発明によると、腫瘍組織内の任意の部位に存在する光感受性物質に、励起光照射した場合に生成される一重項酸素の累積濃度を、精度よくシミュレーションできるため、腫瘍中のがん細胞を死滅させるのに必要十分な一重項酸素を生成させるための治療計画を、信頼性の高いものとして策定することができる。
治療計画ソフトフローチャートを示す図である。 励起光分布のシミュレーションに用いる腫瘍組織のモデル図である。 腫瘍組織内における3種類の励起光(緑色LED、赤色LED、及び赤色レーザー)強度(後述する式1中の「Φ」に相当)と、腫瘍組織の深さ(後述する式1中の「z」に相当)との関係を、モンテカルロコードを用いてシミュレーションした結果を示す図である。 緑色LEDと赤色LEDを励起光として用いた場合の、腫瘍組織内に産生される一重項酸素の累積濃度(後述する式1中の「A」に相当)をシミュレーションし、腫瘍組織の深さとの関係を示す図である。各グラフにおける点は、上から順に、500、400、300、200、及び100(秒)励起光を照射したときの結果を示す。 赤色LEDと赤色レーザーを励起光として用いた場合の、腫瘍組織内に産生される一重項酸素の累積濃度をシミュレーションし、腫瘍組織の深さとの関係を示す図である。各グラフにおける点は、上から順に、500、400、300、200、及び100(秒)励起光を照射したときの結果を示す。 3種類の励起光(緑色LED、赤色LED、及び赤色レーザー)の照射時間(後述する式1中の「T」に相当)と、腫瘍組織の深さ方向において生成される一重項酸素の分布との関係を示す図である。 図7Aは、緑色LEDと赤色LEDを励起光として用いた場合の、腫瘍組織内に産生される一重項酸素の累積濃度をシミュレーションし、腫瘍組織の深さとの関係を示す図である。励起光(緑色及び赤色LED)の照射パワー密度は100 mW/cmであり、照射時間は500(秒)とした。図7Bは、かかるシミュレーション結果を基に、腫瘍モデルを緑色LEDと赤色LEDを用いてALA−PDT治療した結果を示す図である。図中の「*」は、統計学的に有意差(P<0.05)があることを示す。
本発明のPDTにおける一重項酸素()累積濃度のシミュレーション法としては、波長λ1〜λn(nは自然数)の励起光の各波長について、モンテカルロコードを用いたシミュレーションにより、腫瘍組織内における励起光強度を算出し、算出した各波長の励起光強度を積算し、腫瘍組織内の励起光強度データを取得する工程(a);前記励起光の照射による光感受性物質の褪色因子、一重項酸素生成量子収率、腫瘍組織内の光感受性物質濃度、及び前記波長λ1〜λnにおける光感受性物質のモル吸光係数を取得する工程(b);工程(a)で取得した腫瘍組織内の励起光強度データ、工程(b)で取得した光感受性物質の褪色因子、一重項酸素生成量子収率、腫瘍組織内の光感受性物質濃度、及び光感受性物質のモル吸光係数、並びに、前記励起光(入射光)のビーム径及び照射時間を基に、腫瘍組織内における、光感受性物質から生成される一重項酸素の累積濃度をシミュレーションする工程;の工程(a)〜(c)を備えた方法(以下、単に「本件シミュレーション法」ということがある)であれば特に制限されない。本件シミュレーション法を用いると、腫瘍組織内の任意の部位(通常表層から10mm以内の部位、好ましくは5mm以内の部位)に存在する光感受性物質に励起光照射した場合に生成される一重項酸素の累積濃度を、精度よくシミュレーションできるため、腫瘍中のがん細胞を死滅させるのに必要十分な一重項酸素を生成させるための治療計画(条件)(例えば、図1参照)を、信頼性の高いものとして策定することができる。このため、本件シミュレーション法は、PDTによるがん治療計画を策定するためのデータを収集する方法において、有利に用いることができる。
上記光感受性物質としては、例えばヘマトポルフィリン誘導体、ポルフィマーナトリウム、タラポルフィンナトリウム、プロトポルフィリンIX(PpIX)、フェオホルバイデ(Pheophorbidea)、インドシアニングリーン、アルミニウム・フタロシアニンテトラサルフェート(A1PcS4)、スズ・エチオプルプリン(SnET2)、亜鉛(II)・オクタデシルフタロシアニン(ZnOPPc)、プルプリンイミド、アザクロリン、亜鉛・エチオプルプリン(ZnET2)、フタロシアニン(Pc)、カドミウム・テクサフィリン(CdTX)、テクサフィリン、亜鉛・テトラフィプタロポルフィリン(ZnTNP)、ベルデイン、ベンゾポルフィリン誘導体モノ酸リングA(BPDMA)、プルプリン、亜鉛・テトラスルホネーテッドフタロシアニン(ZnTSPc)、ガリウム・フタロシアニン(Ga−Pc)、インジウムフタロシアニン(In−Pc)、ベンゾポルフィリン誘導体(BPD)、カルシウム・スルホネーテッドフタロシアニン(Ca−SPc)、亜鉛・フタロシアニン誘導体(ZnPc)、アルミニウム・スルホネーテッドフタロシアニン(AlSPc)、ベンゾポルフィリン派生体、N‐アスパルチルクロリンe6(Npe6)、メチレンブルー、ベルテポルフィン、ローダミン、テモポルフィリン、ポルフィセン、ハイペルシン等を挙げることができ、タラポルフィンナトリウム、インドシアニングリーン、又はPpIXが好ましい。
工程(a)
工程(a)において、まず、波長(λ1〜λn:nは自然数)の励起光の各波長について、モンテカルロコードを用いたシミュレーションにより、腫瘍組織内における励起光強度を算出する。モンテカルロコードを用いたシミュレーションは、例えば文献「Comput. Methods Programs Biomed., 47, 131-146, 1995.」や「Comput. Methods Programs Biomed., 54, 141-150, 1997.」に記載の方法にしたがって、励起光の発光特性(発光スペクトル)や、腫瘍組織内における吸収係数(吸光係数)、散乱係数、散乱角等を基に行うことができる。上記励起光の発光特性は、分光光度計を用いて自ら測定したものを用いてもよいし、第三者が測定した結果(データ)を用いてもよい。次いで、算出した各波長の励起光強度をλ1〜λnの波長について積算することにより、腫瘍組織内の励起光強度データを取得する。ここで各波長の励起光強度の積算は、例えばMicrosoft Excel等の市販の解析ソフトを用いて行うことができる。
工程(b)
工程(b)において、前記励起光の照射による光感受性物質の褪色因子(定数)は、例えば、光照射により光感受性物質を褪色させ、その光感受性薬剤の蛍光強度を解析することにより取得する。すなわち、前記励起光の照射による光感受性物質の褪色因子は、蛍光が初期強度のe−1に達するまでのエネルギー密度を指数関数でフィッティングすることにより取得する。褪色因子は、自ら測定したものを用いてもよいし、第三者が測定した結果(データ)を用いてもよい。例えば、光感受性物質がPpIXである場合、文献「Dysart et al., Photochem. Photobiol. Sci. 5, 73 (2006).」を参考にして褪色因子44.1を用いることができる。
工程(b)において、一重項酸素生成量子収率は、例えば、光感受性物質に励起光を照射後、光感受性物質から生成される一重項酸素の発光を、分光光度計を用いて測定し、得られた測定値(発光強度)と標準物質由来の値(発光強度)とを比較することにより取得する。また、第三者が測定した一重項酸素生成量子収率を用いてもよい。
工程(b)において、腫瘍組織内の光感受性物質濃度は、例えば、腫瘍組織内に存在する光感受性物質に励起光を照射後、光感受性物質由来の蛍光強度を、分光光度計を用いて測定し、得られた測定値(発光強度)と、校正曲線(光感受性物質濃度と発光強度の関連性を示すもの)とを比較することにより取得する。また、上記腫瘍組織内の光感受性物質濃度は、腫瘍組織の光感受性物質を抽出し、高速液体クロマトグラフィー等で直接測定してもよい。
工程(b)において、前記波長λ1〜λnにおける光感受性物質のモル吸光係数は、例えば、励起光の波長(λ1〜λn)における光感受性物質の吸光度を、分光光度計を用いて測定し、ランベルト・ベールの式により算出し取得する。
工程(c)
工程(c)において、腫瘍組織内における、光感受性物質から生成される一重項酸素の累積濃度は、工程(a)で取得した腫瘍組織内の励起光強度データ、工程(b)で取得した光感受性物質の褪色因子、一重項酸素生成量子収率、腫瘍組織内の光感受性物質濃度、及び光感受性物質のモル吸光係数、並びに、前記励起光のビーム径及び照射時間を基に、励起光照射により腫瘍組織内の光感受性物質が褪色(減少)する点を考慮し、量子化学的アプローチによりシミュレーションする。励起光照射開始後の時間(t)における、腫瘍組織内の光感受性物質の濃度(C)は、腫瘍組織内の励起光強度(Φ)、腫瘍組織内の光感受性物質の濃度(C)、及び光感受性物質の褪色因子(β)を基に、以下の式で表わされることが好ましい。
[式中、C(r,z,t=0)は、励起光照射開始直後(t=0)の、腫瘍組織内の位置(r,z)における光感受性物質の濃度を表し、Φは腫瘍組織内の励起光強度を表し、βは褪色因子を表す]
一重項酸素の累積濃度のシミュレーションは、より具体的には、以下の式を用いて行うことができる。
[式中、A(r,z,t)は、励起光照射開始後の時間(t)の、腫瘍組織内の位置(r,z)における一重項酸素の累積濃度を表し、C(r,z,t=0)は、励起光照射開始直後(t=0)の、腫瘍組織内の位置(r,z)における光感受性物質の濃度を表し、Φ(r,z,λ)は、腫瘍組織内の位置(r,z)における波長λの励起光強度を表し、Tは励起光照射時間を表し、βは褪色因子を表し、λ1は、発光スペクトルの短波長側端の波長を表し、λ2は、発光スペクトルの長波長側端の波長を表し、ε(λ)は、前記波長λにおける光感受性物質のモル吸光係数を表し、λは励起光の波長を表し、hはプランク定数を表し、cは真空中の光速を表し、Nはアボガドロ定数を表し、φは一重項酸素生成量子収率を表し、rは、励起光の中心位置から腫瘍組織までの水平方向への距離を表し、zは励起光の中心位置から腫瘍組織までの深さ方向への距離を表す]
上記プランク定数(h)としては、6.626070040(81)×10−34(Js)、及び4.135667662(25)×10−34(eVs)の他、これらの近似値(6.6×10−34[Js]、4.13×10−34[eVs]等)を挙げることができる。
上記真空中の光速(c)としては、299792458(m/s)の他、かかる値の近似値(300000000[m/s]、299800000[m/s]等)を挙げることができる。
上記アボガドロ定数(N)としては、6.022140857×1023(mol−1)の他、かかる値の近似値(6.022×1023[mol−1]等)を挙げることができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
PDTにより産生される一重項酸素()の累積濃度は、以下の式(以下、「式1」ということがある)を用いてシミュレーションする方法を考案した。以下、かかる式1について詳細に説明する。
A(r,z,t):励起光照射時間開始後の時間(t)の、腫瘍組織内の位置(r,z)における一重項酸素の累積濃度[mol/L]、C(r,z,t=0):励起光照射開始直後(t=0)の、腫瘍組織内の位置(r,z)における光感受性物質の濃度[mol/L]、Φ(r,z,λ):腫瘍組織内の位置(r,z)における波長λの励起光強度[W/cm]、T:励起光照射時間[s]、β:褪色因子[J/cm]、λ1:発光スペクトルの短波長側端の波長、λ2:発光スペクトルの長波長側端の波長、ε(λ):励起光の波長λにおける光感受性物質のモル吸光係数[(mol/L)−1cm−1]、λ:波長[cm]、h:プランク定数[J s]、c:真空中の光速[cm/s]、N:アボガドロ定数、φ: 一重項酸素の量子効率[-]、r:励起光の中心位置から腫瘍組織までの水平方向への距離[cm]、z:励起光の中心位置から腫瘍組織までの深さ(垂直)方向への距離[cm](以下、同じ)
[光感受性物質の褪色]
一重項酸素の生成は、薬剤の励起によって生じることから、一重項酸素濃度の累積濃度をシミュレーションするためには、PDT中の光感受性物質の変化を再現することが重要である。励起光照射による光感受性物質の褪色は、光のエネルギー密度に依存して指数関数的に減少するため、この点を考慮して、励起光照射後の腫瘍組織内における光感受性物質の実質的な濃度(C(Φt))を、以下の式(以下、「式2」ということがある)で表わした。
:式1の「C(r,z,t=0)」に相当
式2において、がん組織には光感受性物質が一様に分布していると仮定した。また、光感受性物質は光照射により褪色すると考えられており、実際に、5−ALA投与後のマウス乳腺癌細胞株において、光照射によりPpIX(光感受性物質)が褪色することを確認した。なお、褪色によりPpIXの濃度C(r,z,t)[mol/L]は指数関数的に減少し、その減少はフルエンスレート(励起光強度に同じ)Φ(r,z)[W/cm又はW/m]に依存することが知られている(Armand J L Jongen and Henricus J C M Sterenborg: Mathematical description of photobleaching in vivo describing the influence of tissue optics on measured fluorescence signals.Phys. Med. Biol. 42 (1997) 1701-1716.)
[光感受性物質のモル吸光係数、及び励起光の強さの波長依存性]
光感受性物質のモル吸光係数の波長依存性、及び励起光の強さの波長依存性を考慮して、式1中において、それぞれε(λ)及びΦ(r,z,λ)とした。
[対象腫瘍組織内における励起光の強さの分布]
対象腫瘍組織は、文献(Honda N. et al :Optical properties of tumor tissues grown on the chorioallantoic membrane of chicken eggs measured with a double integrating sphere and inverse Monte Carlo method in the wavelength range of 350-1000 nm. Proc. of SPIE, Vol. 8579, 85790T-1-85790T-9, 2013)に記載の方法にしたがって、受精鶏卵の漿尿膜にマウス乳腺がん細胞株(EMT6)を移植することにより作製した。多層構造の腫瘍モデルに対応させるために、MCML(Monte Carlo Modeling of Light Transport in Multi-layered Tissue)と呼ばれ、かつ多層構造モデルに対応したモンテカルロコードを用いたシミュレーションを行った(Comput. Methods Programs Biomed., 47, 131-146, 1995.)。上記腫瘍モデルに対して直径5mmで光の強さ100 mW/cmの3種類の励起光(緑色LED、赤色LED、及び赤色レーザー[波長630nm])が、図2の上方から下部にかけて照射される際の光の深さ分布を計算した。シミュレーションは、厚さ0.2 mmの漿尿膜の下に、厚さ4.8 mmのがん組織を配置した幅10 mmの領域を、メッシュ幅100μmで分割したジオメトリにおいて行った(図2参照)。また、組織内での光子の吸収、散乱、及び散乱角は、組織の光学特性値により定めた。光学特性値は、組織毎に均一に一様であると仮定した。また、腫瘍組織内における励起光の発光スペクトル幅の影響を考慮するため、各波長において算出した励起光強度を積算したものを、腫瘍組織内における励起光強度とした。結果を図3に示す。
図3の結果から、光源(励起光の種類)によらず、パワー密度は深さ0.35 mmで最大となり,深部では,光源の違いよる光の強さの違いが確認された。すなわち、緑色LEDは、赤色LEDや赤色レーザーと比べ、深部において減衰されやすいことが確認された。一方、赤色LEDと赤色レーザーの減衰レベルは同程度であった。かかる結果を基に、組織内での一重項酸素の累積濃度分布を計算した。なお、光感受性物質として5−ALAより生成されたPpIXを仮定し、一重項酸素の量子効率(φ)は、PpIXにおける値(0.56)とし、褪色因子(β)は、文献「Dysart et al., Photochem. Photobiol. Sci. 5, 73 (2006).」を参考にして44.1とし、腫瘍組織内におけるPpIXの初期濃度(C)は、腫瘍組織内PpIXを抽出し、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した実測値2.3[mol/L]とした。PpIXのモル吸光係数(ε(λ))は、PpIX水溶液の吸光度を、分光光度計を用いて測定し、ランベルト・ベールの式により算出した。結果を図4〜6に示す。
緑色LEDを用いてPpIXを励起した場合、赤色LEDを用いた場合と比べ、一重項酸素の累積濃度が高いことが明らかとなった(図4参照)。この原因としては、励起光の強度自体は緑色LEDよりも赤色LEDの方が高いものの、緑色LEDの方がPpIXに吸収されやすかったことが影響したためと考えられる。
また、赤色レーザーを用いてPpIXを励起した場合、赤色LEDを用いた場合と比べ、一重項酸素の累積濃度が高いことが明らかとなった(図5参照)。この原因としては、PpIXは波長635nmに吸収ピークがあるため、かかる吸収ピークを狙った赤色レーザー(波長630nm)の方が、効率よく励起できたためと考えられる。
以上の結果をまとめると、緑色LED、赤色レーザー、赤色LEDの順に励起効率が高いことが示された。
次に、励起光の照射時間と、腫瘍組織の深さとの関係を調べたところ、3種類の励起光(緑色LED、赤色LED、及び赤色レーザー)を用いた場合、いずれもが照射時間の増加とともに、治療可能な腫瘍組織の深さは増加したものの、緑色LEDを用いた場合、赤色LEDや赤色レーザーを用いた場合と比べ、より短時間の照射でがん治療効果が得られることが明らかとなった(図6参照)。特に、表層から深さ1 mmまでの腫瘍であれば,緑色LEDが最も有効であることがわかった。この結果は、表層から深さ1 mmまでの部位においては、緑色LED、赤色レーザー、赤色LEDの順に一重項酸素の生成効率が高いため、かかる部位における腫瘍を治療する場合、用いる励起光としては、3種類の励起光(緑色LED、赤色LED、及び赤色レーザー)のうち緑色LEDが最適であることを示している。
次に、一重項酸素の累積濃度のシミュレーション結果、すなわち、緑色LEDを用いてPpIXを励起した場合、赤色LEDを用いた場合と比べ、一重項酸素の累積濃度が高いという結果(図7A参照)が、実際の治療効果を反映したものであるかどうか確認した。シミュレーション結果を基に、腫瘍の大きさが5mmの腫瘍モデルを、緑色LEDと赤色LEDを用いてALA−PDT治療したところ、赤色LEDを用いた場合よりも、緑色LEDを用いた場合の方が、ALA−PDT治療効果が高かった(図7B参照)。この結果は、一重項酸素の累積濃度のシミュレーション結果が、実際の治療効果を反映したものであることを示している。
本発明は、光感受性物質を用いたPDTによる腫瘍治療に資するものである。

Claims (4)

  1. 以下の工程(a)〜(c)を備えた、光線力学的治療法(photodynamic therapy:PDT)における一重項酸素累積濃度のシミュレーション法。
    (a)波長λ1〜λn(nは自然数)の励起光の各波長について、モンテカルロコードを用いたシミュレーションにより、腫瘍組織内における励起光強度を算出し、算出した各波長の励起光強度を積算し、腫瘍組織内の励起光強度データを取得する工程;
    (b)前記励起光の照射による光感受性物質の褪色因子、一重項酸素生成量子収率、腫瘍組織内の光感受性物質濃度、及び前記波長λ1〜λnにおける光感受性物質のモル吸光係数を取得する工程;
    (c)工程(a)で取得した腫瘍組織内の励起光強度データ、工程(b)で取得した光感受性物質の褪色因子、一重項酸素生成量子収率、腫瘍組織内の光感受性物質濃度、及び光感受性物質のモル吸光係数、並びに、前記励起光のビーム径及び照射時間を基に、腫瘍組織内における、光感受性物質から生成される一重項酸素の累積濃度をシミュレーションする工程;
  2. 光感受性物質が、タラポルフィンナトリウム、インドシアニングリーン、又はプロトポルフィリンIX(PpIX)である、請求項1に記載のシミュレーション法。
  3. 工程(c)において、腫瘍組織内の励起光強度(Φ)、腫瘍組織内の光感受性物質の濃度(C)、及び光感受性物質の褪色因子(β)を基に、励起光照射開始後の時間(t)における、腫瘍組織内の光感受性物質の濃度(C)を、以下の式で表す、請求項1又は2に記載のシミュレーション法。
    [式中、C(r,z,t=0)は、励起光照射開始直後(t=0)の、腫瘍組織内の位置(r,z)における光感受性物質の濃度を表し、Φは腫瘍組織内の励起光強度を表し、βは褪色因子を表す]
  4. 工程(c)において、一重項酸素の累積濃度(A)を、以下の式を用いてシミュレーションする、請求項3に記載のシミュレーション法。
    [式中、A(r,z,t)は、励起光照射開始後の時間(t)の、腫瘍組織内の位置(r,z)における一重項酸素の累積濃度を表し、C(r,z,t=0)は、励起光照射開始直後(t=0)の、腫瘍組織内の位置(r,z)における光感受性物質の濃度を表し、Φ(r,z,λ)は、腫瘍組織内の位置(r,z)における波長λの励起光強度を表し、Tは励起光照射時間を表し、βは褪色因子を表し、λ1は、発光スペクトルの短波長側端の波長を表し、λ2は、発光スペクトルの長波長側端の波長を表し、ε(λ)は、前記波長λにおける光感受性物質のモル吸光係数を表し、λは励起光の波長を表し、hはプランク定数を表し、cは真空中の光速を表し、Nはアボガドロ定数を表し、φは一重項酸素生成量子収率を表し、rは、励起光の中心位置から腫瘍組織までの水平方向への距離を表し、zは励起光の中心位置から腫瘍組織までの深さ方向への距離を表す]
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