JP6576725B2 - 簡易なパラメータを用いた多孔性食品の食感評価方法及び評価システム - Google Patents
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Description
例えば、シャープネス及び/又はラフネスといった心理音響評価量を用いて、多孔性食品の食感を評価する方法は既に知られている(特許文献1)。このように、心理音響評価量を用いて、多孔性食品の食感を評価する方法は既に公知といえるが、心理音響評価量は一般に測定誤差が生じやすく、1回の測定で正確な評価を行うことは難しい。大抵の場合は、複数回の測定を行い、その平均値を取って評価する必要性があるという問題があった。また、心理音響評価量との相関分析から導かれる評価結果と、複数のパネラーによる官能検査の評価結果とをさらに整合性を良くする技術も望まれていた。このようなことから、より一層迅速かつ精度の高い、心理音響評価量を用いた食感評価方法を開発することが求められていた。
また、本発明の好ましい一態様によれば、上記変数に係数がかけあわされることがない、前記方法を提供することができる。
また、本発明の好ましい一態様によれば、上記サクミ指標が、以下の(1)〜(12)の式から選ばれる、前記方法を提供することができる。
(1)N×R、(2)L×S×R、(3)L×R、(4)S×R、(5)S×R×F、(6)L×R×F、(7)R×F、(8)(L×S)/(R×F)、(9)S/R、(10)L/R、(11)S/(R×F)、(12)L/(R×F)
また、本発明の一態様によれば、上記サクミ指標の数値が、対応する以下の不等式(1)〜(12)をそれぞれ満たすときにサクミがあると評価する、前記方法を提供することができる。
(1)N×R>1.5、(2)L×S×R>41、(3)L×R>28、(4)S×R>0.7、(5)S×R×F>0.14、(6)L×R×F>5.8、(7)R×F>0.10、(8)(L×S)/(R×F)<750、(9)S/R<2.9、(10)L/R<110、(11)S/(R×F)<13、(12)L/(R×F)<550
また、本発明の好ましい一態様によれば、多孔性食品を製造するために用いられる油脂が、菜種油又はパーム油のいずれかから選ばれる、上記方法を提供することができる。
また、本発明の好ましい一態様によれば、上記方法により評価された、多孔性食品を提供することができる。
また、本発明の好ましい一態様によれば、上記方法を含む、多孔性食品の製造方法を提供することができる。
また、本発明の一態様によれば、多孔性食品の破砕又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動を取得する手段、前記音及び/又は振動に基づいて、ラウドネス(N)、ラウドネスレベル(L)、シャープネス(S)、ラフネス(R)及び変動強度(F)からなる群から選ばれる2以上の心理音響評価量を決定する手段、及び、前記決定された心理音響評価量を変数とする掛け算及び/又は割り算で表される式をサクミ指標として用い、前記サクミ指標の数値を算出する手段を含む、官能検査試験を必要としない、多孔性食品の食感評価システム(ただし、該式において、音の大きさに関係するグループ(N、L、S)と音の変化に関するグループ(R、F)とに分け、同じグループ内の心理音響評価量が分母と分子の両方に現れる場合を除く。)を提供することができる。
また、本発明の好ましい一態様によれば、上記変数に係数がかけあわされることがない、前記システムを提供することができる。
また、本発明の好ましい一態様によれば、上記サクミ指標が、以下の(1)〜(12)の式から選ばれる、前記システムを提供することができる。
(1)N×R、(2)L×S×R、(3)L×R、(4)S×R、(5)S×R×F、(6)L×R×F、(7)R×F、(8)(L×S)/(R×F)、(9)S/R、(10)L/R、(11)S/(R×F)、(12)L/(R×F)
また、本発明の一態様によれば、上記サクミ指標の数値が、対応する以下の不等式(1)〜(12)をそれぞれ満たすときにサクミがあると評価する、前記システムを提供することができる。
(1)N×R>1.5、(2)L×S×R>41、(3)L×R>28、(4)S×R>0.7、(5)S×R×F>0.14、(6)L×R×F>5.8、(7)R×F>0.10、(8)(L×S)/(R×F)<750、(9)S/R<2.9、(10)L/R<110、(11)S/(R×F)<13、(12)L/(R×F)<550
また、本発明の好ましい一態様によれば、多孔性食品を製造するために用いられた油脂が、菜種油又はパーム油のいずれかから選ばれる、前記システムを提供することができる。
<多孔性食品>
本発明における「多孔性食品」とは、材料中の蒸発成分の拡散、又は材料に注入したガスの微細気泡の膨化により生じた多孔性組織を有する食品のことであり、例えば、ビスケット、クラッカー、プレッシェル、クッキー、コーンパフ、コーンフレーク、ポップコーン及びポテトチップス等のスナック菓子、せんべい、あられ等の米菓、天ぷら、かき揚げ、コロッケ、トンカツ、エビフライ等のフライ食品が挙げられる。特に、コロッケ、天ぷら、かき揚げが好ましい。
食品の食感は、通常、ハードネス(硬さ)、スプリンジネス(弾力性)、ブリットルネス(脆さ)、チューイネス(咀嚼性)、スティキッネス(粘り)、クリスプネス(サクミ)等で評価される。多孔性食品の場合、上記食感のうち、特にサクミが重要であり、本発明において、「多孔性食品の食感」とは、特に断りがなければ、原則、サクミのことを指す。
本発明の多孔性食品の食感評価方法は、多孔性食品の破砕又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動を音響解析し、該音響解析により得られた2つ以上の心理音響評価量を決定し、これら心理音響評価量を変数とする掛け算及び/又は割り算で表される式を用いることを特徴とする。
特に、本発明は、サクミ指標の数値を計算するに当たって、心理音響評価量(変数)に係数をかけあわす必要がなく、簡便に評価できる利点があるので、上記係数を用いることなく評価できることをその特徴とする。すなわち、以下の式(1)〜(12)において、変数に係数がかけあわされることがないことを特徴とする。
さらに本発明では、以下の式(1)〜(12)で表されるサクミ指標を用いて、多孔性食品の食感を評価することが好ましい。なお、後述するように、音の大きさに関係するグループ(N、L、S)と、音の変化に関係するグループ(R、F)とに分けて、同じグループ内の心理音響評価量が分母と分子の両方に現れる場合は、互いの効果が打ち消されてしまうので、このような場合は本発明から除かれる。
なお、以下の式のうち、式(1)〜(4)及び(11)〜(12)のサクミ指標を用いることがより好ましい。また、式中、「×」は掛け算、「/」は割り算を意味する。
(1)N×R、
(2)L×S×R、
(3)L×R、
(4)S×R、
(5)S×R×F、
(6)L×R×F、
(7)R×F、
(8)(L×S)/(R×F)、
(9)S/R、
(10)L/R、
(11)S/(R×F)、
(12)L/(R×F)
また好ましくは、上記(1)〜(12)の式に、音響解析により得られた心理音響評価量の値を代入し、その結果の値が、以下の不等式をそれぞれ満たしている場合にサクミがあると評価することを特徴とする。
なお、以下の式のうち、式(1)〜(4)及び(11)〜(12)のサクミ指標を用いることがより好ましい。また、式中、「×」は掛け算、「/」は割り算を意味する。
(1)N×R>1.5
(2)L×S×R>41
(3)L×R>28
(4)S×R>0.7
(5)S×R×F>0.14
(6)L×R×F>5.8
(7)R×F>0.10
(8)(L×S)/(R×F)<750
(9)S/R<2.9
(10)L/R<110
(11)S/(R×F)<13
(12)L/(R×F)<550
なお、このような評価は、他の式(2)〜(12)についても同様に行うことができる。以上により、式(1)〜(12)へ心理音響評価量の値を代入することで、多孔性食品の食感、すなわち、サクミという食感を客観的に評価することができる。そして、式(1)〜(12)のサクミ指標の変数に、それぞれ係数がかけあわされていなくてもよいことが、本発明の利点である。
本発明の多孔性食品の食感評価方法において多孔性食品を破砕するには食品破砕装置を用いる。食品破砕装置とは、食品を圧縮及び切断する装置の総称であり、その装置は食品を圧縮、切断する際に破砕音を発生させ、装置に音や振動を伝えるものである。本発明において用いられる食品破砕装置の一例としては、特許第4111723号公報に開示されている食品破砕装置やレオメーターが挙げられる。前記公報において詳しく説明されているので、ここでは詳細を割愛する。なお、前記公報の内容は、本明細書の中に取り込まれる。以下、本発明の食品破砕装置の特徴を要約して説明する。
特許第4111723号公報に開示されている食品破砕装置には、コンタクトマイクが備え付けられているか、食品破砕部の近くにこのようなマイクが設置されている。これにより、食品破砕時の音及び/又は振動を測定することができる。食品破砕部はアダプター式となっており、食品の種類に応じて形状を任意に変えることができる。一例を挙げると、アダプターは格子型又はフォーク型のものが挙げられる。格子型のアダプターは、コロッケ及び天ぷら等を破砕する際によく用いられ、フォーク型のアダプターは春巻き及びクッキー等を破砕する際によく用いられる。また、このような食品破砕装置としては、破砕音を正確に測定するため、破砕音を測定する際の振動音ができるだけ小さいものが好ましい。アダプターの押し込み速度は20〜300mm/秒で測定することが好ましい。
また、本発明において用いられる食品破砕装置の一種としてはレオメーターも用いることができる。レオメーターとは、物質の力学的性状を測定する装置であり、レオメーターによれば、圧縮破砕強度(荷重)、引張強度、切断強度、弾性、粘弾性、脆さ、粘着性、応力緩和及びクリーム等の測定が可能である。本発明においては、レオメーターを用いて、多孔性食品をプランジャーにより一定の速度で押し潰し、その荷重を測定する単軸圧縮破砕強度試験を行うと共に、多孔性食品を押し潰す際に発生する音及び/又は振動の収集し解析する。上述したレオメーターを用いた単軸圧縮破砕試験において、プランジャーの押込み速度を0.1〜10mm/秒として測定することが好ましく、プランジャーの形状は特に制限されない。また、データ収集間隔(距離分離能)は特に制限されないが、データ収集間隔が小さく、データ収集数が多い方が好ましい。例えばデータ収集間隔としては0.01〜0.001mmであることが好ましい。
本発明の多孔性食品の食感評価方法においては、多孔性食品を破砕する際に発生する音及び/又は振動を収音して音響解析を行う。音及び/又は振動を収音する装置としては録音装置が用いられる。用いられる録音装置としては、音を評価するための試験において通常に用いられるものが使用可能である。例えば、マイクロフォン、パーソナルコンピューター及び記録媒体からなる。マイクロフォンとは、マイク及びコンタクトマイクを含み、前記マイクとは騒音計をも含む概念である。
<ラウドネス>
本発明において音響解析を行う「ラウドネス」とは、人が感じる音の大きさ、すなわち“音の大きさ感”(単位:sone)であり、定常音については、ISO532Bで規格化されている。音の強度を表す物理量である音圧とは区別されるものであり、例えば、同じ音圧レベルでも周波数が異なれば音の大きさに違いが生じる。ラウドネス(本明細書では「N」ともいう。)は、例えば、音質評価ソフトウェアWS−5160((株)小野測器社製)を用いて算出することができる。
本発明において音響解析を行う「ラウドネスレベル」とは、ラウドネスを対数表示したものであり、人が感じる音の大きさ、すなわち“音の大きさ感”(単位:phon)を表す点は上記ラウドネスと同じである。なお、ラウドネスレベル(本明細書では「L」ともいう。)は、次の式で表すことができる。L=10・log2(N)+40。ラウドネスレベルは、例えば、音質評価ソフトウェアWS−5160((株)小野測器社製)を用いて算出することができる。
本発明において音響解析を行う「シャープネス」とは、いわゆる“音の鋭さ感(甲高さ)”(単位:acum)のことであり、低域と高域の音のバランスが高域側に偏った時に感じるものである。周波数成分に依存する評価量であり、低周波数、高周波数間におけるスペクトルバランスを示す。シャープネス(本明細書では「S」ともいう。)は、例えば、音質評価ソフトウェアWS−5160((株)小野測器社製)を用いて算出することができる。
すなわち、分母はトータルラウドネスである。
g(z):臨界帯域番号に依存する重み関数
z :臨界帯域番号
すなわち上記は、g(z)にて重みのかかったN’を臨界帯域番号軸に並べた時の重心位置を表わす。
本発明において音響解析を行う「ラフネス」とは、いわゆる“音の粗さ感(ざらざら、ぶるぶる感)”(単位:asper)のことであり、ラウドネスが短い周期で変動する時に感じるものである。音が早く変動する際のその変動を知覚することができないために生じる粗さ感の評価量である。ラフネス(本明細書では「R」ともいう。)は、例えば、音質評価ソフトウェアWS−5160((株)小野測器社製)を用いて算出することができる。
ラフネス(R)の定義式を以下に示す。
ri 各臨界帯域番号におけるラフネス
Δz 臨界帯域幅
ki-1 臨界帯域番号iとi-1番目とのラウドネスの時間変化の相関係数
k1 臨界帯域番号iとi+1番目とのラウドネスの時間変化の相関係数
g(z) 臨界帯域番号に依存する重み係数
m 時間包絡信号の時間変動に依存する係数
本発明において音響解析を行う「変動強度」とは、人が感じる音の大きさの変動であり、いわゆる“変動感、滑らかさ感の逆”(単位:vacil)のことであり、ラウドネスがゆっくりとした周期で変動する時に感じるものである。変動強度(本明細書では「F」ともいう。)は、例えば、音質評価ソフトウェアWS−5160((株)小野測器社製)を用いて算出することができる。
<官能検査>
官能検査は、熟練したパネラーにより行なう。官能評価用紙を用いて、サクミを1〜5の5段階で採点する。これを油ちょう完了後から一定時間後に複数回行う。次いで、パネラーの平均点を算出し、所定の判断基準に従ってサクミを評価する。平均点が3.0以上のものをサクミがあるものと評価する。
上記官能検査に用いた多孔性食品と同時に製造されたものを音響解析に供する。音響解析では、食品破砕装置により多孔性食品を破砕した際に生じる音又は振動を、マイク又はコンタクトマイクを通じてパーソナルコンピューターに取り込み、データをラウドネス、ラウドネスレベル、シャープネス、ラフネス、変動強度という心理音響評価量を解析し、それぞれの値を求める。
本発明において使用する「油脂」は特に制限されないが、例えば、大豆油、菜種油、パーム油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、胡麻油、月見草油、エゴマ油、アマニ油、ぶどう種子油等の植物性油脂、並びに、それらの油脂の硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂が例示できる。本発明で使用する「油脂」として、最も好ましいものは、菜種油とパーム油である。
本発明の多孔性食品データ処理装置は、多孔性食品の破砕及び/又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動からラウドネス、ラウドネスレベル、シャープネス、ラフネス、変動強度からなる群から選ばれる2以上(より好ましくは3以上)の心理音響評価量を決定し、前記心理音響評価量を変数とする掛け算及び/又は割り算で表される式をサクミ指標として用いて多孔性食品の食感を評価する手段を有する。音及び/又は振動からラウドネス、ラウドネスレベル、シャープネス、ラフネス及び/又は変動強度を決定するソフトウェア等は市販されており、これらを用いて心理音響評価量を誰でも容易に決定することができる。また、例えば、本発明の式(1)〜(13)で表されるサクミ指標に心理音響評価の値を代入すれば、サクミ指標の数値を容易に算出することができる。したがって、このような手段を有するデータ処理装置は誰でも容易に作成することができる。
本発明の多孔性食品評価システムは、上述した本発明の多孔性食品データ処理装置を備えることを特徴とする。本発明の多孔性食品評価システムによれば、多孔性食品を破砕、又は咀嚼した際に発生する音及び/又は振動からラウドネス、ラウドネスレベル、シャープネス、ラフネス、変動強度からなる群から構成される2以上(より好ましくは3以上)の心理音響評価量を決定し、前記心理音響評価量を変数とする掛け算及び/又は割り算で表される式をサクミ指標として用い、前記心理音響評価量の値を前記式に代入することにより、前記サクミ指標の数値を算出する。このことにより、多孔性食品の食感、特にサクミについての客観的な評価が可能となる。
1Lのフライヤーに1kgの菜種油を入れ、180℃で5分間、市販の冷凍コロッケを油ちょう調理して、揚げたてのコロッケを製造した。製造後、1時間経過したものについて、熟練のパネラー7名による官能検査を行なった。下記表1の判断基準に基づいて、コロッケのサクミを1〜5の5段階で採点した。また、このような官能検査は1時間経過したものについて行うだけでなく、3時間経過したもの、5時間経過したものについても同様に行った。次いで、パネラーの点数から平均点を算出し、各時間後のコロッケのサクミとした。その結果を下記表2に示した。
(1)破砕試験
コロッケの破砕試験は、特許第4111723号公報に開示されている食品破砕装置を用いて行った。コロッケの破砕条件は、油圧シリンダーの抵抗により一定速度で運動する装置に、重量6kgの重りを搭載し、試料(コロッケ)に約10kgの力が加わるようにしてコロッケを破砕した。コロッケを破砕するアダプターとしては、先端が尖ったプランジャーを使用し、コロッケを咀嚼することを想定した測定を行った。
(2)音響解析
上記破砕試験における破砕音を騒音計(リオン(株)製NL−15)を用い、音質評価ソフトウェアWS−5160((株)小野測器社製)を使用して、パーソナルコンピューター内蔵ハードディスク内にデータを収集した。当該データを解析し、ラウドネス、ラウドネスレベル、シャープネス、ラフネス、変動強度の値をそれぞれ決定した。
(3)まとめ
以上の破砕試験及び音響解析を、コロッケ製造後、1時間後、3時間後、5時間後の各段階において、それぞれ10個のコロッケについて行った。その結果をまとめて下記表3に示した。なお、N(sone)はラウドネス、L(phon)はラウドネスレベル、S(acum)はシャープネス、R(asper)はラフネス、F(vacil)は変動強度をそれぞれ表す(以下同様)。
次に、油ちょう調理に用いる油脂を、菜種油からパーム油に代えて、実施例1と同様に官能検査を行った。パネラーの採点の平均点を算出し、各時間後のコロッケのサクミを官能評価した。その結果を下記表4に示した。
(1)破砕試験
パーム油を用いて製造したコロッケの破砕試験及び音響解析は、実施例2と同様に行った。その結果を下記表5に示した。
上記表3及び表5に示された各サンプルコロッケ(合計60個)における心理音響評価量の測定値を用いて、サクミの有無を判定できるサクミ指標(パラメータ)を確立することを試みた。サクミがないと評価されるサンプル(官能評価が3.0未満)は、表3の「菜種油5時間後」だけであることを考慮し、これらのサンプルが他のサンプルと区別されるような、心理音響評価量を変数とする新たな式(サクミ指標)の開発に取り組んだ。
次に、サクミ音の大きさに関係する、ラウドネス(N)、ラウドネスレベル(L)及びシャープネス(S)と、音の変動に関係するラフネス(R)及び変動強度(F)とに分けて検討した。その理由は、表3及び5の結果から、音の大きさに関係する心理音響評価量の大きさは、サクミの官能評価とある程度直線性を有しているのに対し、音の変動に関係する心理音響評価量の大きさはサクミの官能評価と直線性を有していないと考えられたためである。また、同じような性質を有する心理音響評価量が分母と分子の両方に現れた場合、その効果は互いに相殺され、「菜種油5時間後」のサンプルと他のサンプルとを明確に区別することが難しくなると予測された。実際、R/F及びS/Lをサクミ指標とした場合は、「菜種油5時間後」のサンプルと他のサンプルとを明確に区別することができなかった。以上の結果を、下記表6〜9にまとめて示した。なお、表6〜9中、「*」は掛け算、「/」は割り算を表す。
図1〜12の結果から明らかであるように、上記で作成した式のうち、以下の式(1)〜(12)で表されるものは、通し番号(#021)を除いて計算すると、サクミが無と評価される「菜種油5時間」のものとそれ以外のものとを明確に(エラー率0%で)区別できるものであった(本発明では、これを実施例1〜12として挙げる。)。
(1)N×R
(2)L×S×R
(3)L×R
(4)S×R
(5)S×R×F
(6)L×R×F
(7)R×F
(8)(L×S)/(R×F)
(9)S/R
(10)L/R
(11)S/(R×F)
(12)L/(R×F)
一方、図13〜14の結果から明らかであるように、残りの式、R/F及びS/Lは、係数を用いても用いなくても、「菜種油5時間」のものとそれ以外のものと明確に区別することができなかった(本発明では、これを比較例1〜2として挙げる。)。この理由は、同じ音の大きさに関係する心理音響評価量であるN、L、Sが分母と分子の両方にあるため、互いの効果が相殺され、「菜種油5時間」のものを他のサンプルから区別できなくなったと考えられる。したがって、音の大きさに関係するグループ(N、L、S)と音の変化に関するグループ(R、F)とに分け、同じグループ内の心理音響評価量が分母と分子の両方に現れていないものをサクミ指標として使用する必要がある。すなわち、本発明の式(1)〜(12)は、同じグループ内の心理音響評価量が分母と分子の両方に現れていないので、サクミ指標として用いることができるものであり、これを用いれば、官能評価を行うことなく、誰でも簡単に多孔性食品のサクミを客観的に評価することができる。もちろん、同じグループ内の心理音響評価量が分母と分子の両方に現れていなければよいので、本発明の式(1)〜(12)以外の式であっても、サクミ指標として用いられるものはあるが、外れ値を1つ除いて、エラー率が0%となるサクミ指数は式(1)〜(12)に限定されると思われる。
(1)N×R>1.5
(2)L×S×R>41
(3)L×R>28
(4)S×R>0.7
(5)S×R×F>0.14
(6)L×R×F>5.8
(7)R×F>0.10
(8)(L×S)/(R×F)<750
(9)S/R<2.9
(10)L/R<110
(11)S/(R×F)<13
(12)L/(R×F)<550
Claims (11)
- 多孔性食品の破砕又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動を音響解析し、該音響解析により得られた心理音響評価量を用いて多孔性食品の食感を評価する方法であって、ラウドネス(N)、ラウドネスレベル(L)、シャープネス(S)、ラフネス(R)及び変動強度(F)からなる群から選ばれる2以上の心理音響評価量を決定し、これら心理音響評価量を変数とする掛け算及び/又は割り算で表される式をサクミ指標として用いることを特徴とする、官能検査試験を必要としない、前記方法(ただし、該式において、音の大きさに関係するグループ(N、L、S)と音の変化に関するグループ(R、F)とに分け、同じグループ内の心理音響評価量が分母と分子の両方に現れる場合を除く。)。
- 上記変数に係数がかけあわされることがない、請求項1に記載の方法。
- 上記サクミ指標が、以下の(1)〜(12)の式から選ばれることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
(1)N×R
(2)L×S×R
(3)L×R
(4)S×R
(5)S×R×F
(6)L×R×F
(7)R×F
(8)(L×S)/(R×F)
(9)S/R
(10)L/R
(11)S/(R×F)
(12)L/(R×F) - 上記サクミ指標の数値が、対応する以下の不等式(1)〜(12)をそれぞれ満たすときにサクミがあると評価することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
(1)N×R>1.5
(2)L×S×R>41
(3)L×R>28
(4)S×R>0.7
(5)S×R×F>0.14
(6)L×R×F>5.8
(7)R×F>0.10
(8)(L×S)/(R×F)<750
(9)S/R<2.9
(10)L/R<110
(11)S/(R×F)<13
(12)L/(R×F)<550 - 多孔性食品を製造するために用いられる油脂が、菜種油又はパーム油のいずれかから選ばれることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法を含む、多孔性食品の製造方法。
- 多孔性食品の破砕又は咀嚼時に発生する音及び/又は振動を取得する手段、前記音及び/又は振動に基づいて、ラウドネス(N)、ラウドネスレベル(L)、シャープネス(S)、ラフネス(R)及び変動強度(F)からなる群から選ばれる2以上の心理音響評価量を決定する手段、及び、前記決定された心理音響評価量を変数とする掛け算及び/又は割り算で表される式をサクミ指標として用い、前記サクミ指標の数値を算出する手段(ただし、該式において、音の大きさに関係するグループ(N、L、S)と音の変化に関するグループ(R、F)とに分け、同じグループ内の心理音響評価量が分母と分子の両方に現れる場合を除く。)を含むことを特徴とする、官能検査試験を必要としない、多孔性食品の食感評価システム。
- 上記変数に係数がかけあわされることがない、請求項7に記載のシステム。
- 上記サクミ指標が、以下の(1)〜(12)の式から選ばれることを特徴とする、請求項7又は8に記載のシステム。
(1)N×R
(2)L×S×R
(3)L×R
(4)S×R
(5)S×R×F
(6)L×R×F
(7)R×F
(8)(L×S)/(R×F)
(9)S/R
(10)L/R
(11)S/(R×F)
(12)L/(R×F) - 上記サクミ指標の数値が、対応する以下の不等式(1)〜(13)をそれぞれ満たすときにサクミがあると評価することを特徴とする、請求項9に記載のシステム。
(1)N×R>1.5
(2)L×S×R>41
(3)L×R>28
(4)S×R>0.7
(5)S×R×F>0.14
(6)L×R×F>5.8
(7)R×F>0.10
(8)(L×S)/(R×F)<750
(9)S/R<2.9
(10)L/R<110
(11)S/(R×F)<13
(12)L/(R×F)<550 - 多孔性食品を製造するために用いられる油脂が、菜種油又はパーム油のいずれかから選ばれることを特徴とする、請求項7ないし10のいずれか1項に記載のシステム。
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