JP6574292B2 - 間葉系幹細胞を用いたアトピー性皮膚炎治療における治療効果予測判定法 - Google Patents

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Description

本発明は,アトピー性皮膚炎に罹患した患者の中から,間葉系幹細胞移植により症状の改善が見込まれる患者群を検出するためのコンパニオン診断法などに関する。
間葉系幹細胞は,炎症や過剰な自己免疫反応を背景とする様々な疾患に対する治療効果が期待されている。中でも,既存の薬剤療法による治療が困難であった領域の疾患群に対して,精力的な開発が進められている。間葉系幹細胞は,脂肪や臍帯,軟骨などの中にわずかに存在することが知られ,それらの組織から分離された後に,治療に必要な細胞数まで培養を経て調製される。調製された間葉系幹細胞は,疾患の種類に合わせた投与経路で移植され,一般的には静脈投与が選択される。
本邦においては,JCRファーマ株式会社のヒト他家間葉系幹細胞製剤である「テムセルHS注」が,急性GVHDを対象とした再生医療等製品として,2015年に製造販売承認され脚光を浴びているが,その他にも,様々な国内企業が,再生医療等製品としての間葉系幹細胞の開発に着手している。
間葉系幹細胞が再生医療等製品として開発される背景としては,間葉系幹細胞が有する抗炎症作用,抗線維化や免疫調節作用が,様々な疾患に応用できることが一因としてある。炎症性腸疾患,肝硬変,多発性硬化症,関節リウマチ,脳梗塞などの他にも,アトピー性皮膚炎に関する報告も存在する。動物実験において,間葉系幹細胞がアトピー性皮膚炎モデルマウスの症状を改善するとの報告や(非特許文献1),特許事例も存在する(特許文献1)。臨床的にアトピー性皮膚炎は,「増悪・寛解を繰り返す,そう痒のある湿疹を主病変とする疾患」と定義され,診断や重症度判定のための参考値として,血清IgE値,TARC値などが指標とされている。
現時点において,有効性と安全性が十分に検討されたアトピー性皮膚炎の薬物としては,ステロイド外用薬とタクロリムス軟膏(一般名)が存在する。アトピー性皮膚炎の炎症に対しては,速やかに,且つ確実に鎮静させることが重要である。大多数はこれらの薬剤により症状の改善を達成可能であるが,寛解導入に成功した場合においても,タキフィラキシー等による症状の再燃が問題となり寛解維持が難しくなる場合や,難治性症例となることがある。また,ステロイドやタクロリムスの長期使用により,皮膚表面の免疫系の機能減衰に伴う皮膚感染症リスクの上昇,表皮の菲薄化などが広く知られる副作用として存在する。
そのため,既存の薬物に依存した標準治療法で効果が十分に維持できず,患者の生活の質(QOL)が著しく低下する場合等においては,ステロイド外用剤やタクロリムス軟膏によらない新規な治療剤が必要とされる。しかし,現時点でそのような有望な治療剤は存在せず,新規な治療剤として,間葉系幹細胞が注目されている。日本において,間葉系幹細胞が治療に使用されるには,2つの方法がある。1つは,「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づく特定細胞加工物としての利用,もう1つは,「医薬品医療機器等法」に基づく,再生医療等製品としての利用である。いずれの方法によっても,用いられる間葉系幹細胞は,清浄度管理区域を有する無菌性が確保されたセルプロセシングセンター(CPC)で製造される事が通常である。その製造設備の設置及び運用に必要な高額な費用等との兼ね合いにより,間葉系幹細胞は,従来の低分子薬と比較して,高額な治療剤とならざるを得ないのが現状である。
このように,間葉系幹細胞のみならず再生医療等製品や特定細胞加工物は,非常に医療費が高額になることが,広く医療として普及する上で,避けて通れない課題である。その解決手段として,製薬企業による製造及び品質管理のコストダウンは,再生医療の産業化と再生医療の普及のために必須である。もう1つ重要な費用対策手段として,治療の事前検査として,その再生医療による治療効果を得られる対象と,得られない対象を判定した上で,治療効果が得られると判定された群に対してのみ,再生医療を提供することが対策となる。
つまり,特定の医薬品等の有効性を一層高めるために,その使用対象者に該当するかについて,予め検査する目的で使用される診断方法としてのコンパニオン診断が,再生医療においても有効になることが期待される。これにより,不必要な治療を実施することによる経済的損失を回避する一助となる。
特許 2008-088641 (アトピー性皮膚炎治療剤)
Stem Cells. 2015 Apr;33(4):1254-66. doi: 10.1002/stem.1913.Human umbilical cord blood mesenchymal stem cell-derived PGE2 and TGF-β1 alleviate atopic dermatitis by reducing mast cell degranulation.Kim HS1, Yun JW, Shin TH, Lee SH, Lee BC, Yu KR, Seo Y, Lee S, Kang TW, Choi SW, Seo KW, Kang KS.
本発明は,間葉系幹細胞移植によるアトピー性皮膚炎の治療を行なう対象患者として,改善群と非改善群を治療前に適切に判定し,間葉系幹細胞が奏功すると判定された患者に対してのみ,間葉系幹細胞を投与することを補助するための,例えばコンパニオン診断法としての判定技術やその判定基準の確立方法及びそのための診断用キットを提供することを目的とする。
本明細書に記載される解決手段は,基本的には,血液中のベヘン酸,グルコサミン,及びマンノサミンのいずれか又は2種以上の測定値が高い患者は,間葉系幹細胞移植を行った際のアトピー性皮膚炎症状に対する治療効果が高いという実施例による知見に基づく。
本明細書に開示される第1の側面は,アトピー性皮膚炎症状に対する治療効果を事前に予測する方法に関する。
この方法は,対象から採取された血液サンプル中の,ベヘン酸,グルコサミン,及びマンノサミンのいずれか1つまたは2つ以上である対象物質の成分量を測定する工程と,
対象物質の成分量を用いて,対象に間葉系幹細胞移植を行った際の,アトピー性皮膚炎症状に対する治療効果を診断する工程と,を含む。
アトピー性皮膚炎症状は,例えば,アトピー性皮膚炎患者が発症する身体的又は精神的な症状である。具体的なアトピー性皮膚炎症状の例は,そう痒,湿疹病変,紅斑,湿潤性紅斑,丘疹,漿液性丘疹,鱗屑,痂皮,浸潤性紅斑,苔癬化病変,痒疹,鱗屑,及び痂皮のいずれかまたは複数の症状である。
間葉系幹細胞移植の例は,対象(患者)の静脈からの全身性投与による間葉系幹細胞移植である。間葉系幹細胞の種類やその調製法は問わない。皮下脂肪組織、臍帯組織、骨髄、胎盤、臍帯血、歯髄、及びその他にも、間葉系幹細胞が調製可能なあらゆる組織に由来する間葉系幹細胞であってもよい。また、それらの間葉系幹細胞の調製には、MSCGM-CD(LONZA)などの市販の培地を用いても良いし、基本培地に牛胎児血清を添加した培地など、間葉系幹細胞を培養可能な如何なる培地を用いても良い。
本明細書に開示される第2の側面は,間葉系幹細胞移植の治療効果を予測するための判定基準を得る方法に関する。
この方法は,血液サンプル中の,ベヘン酸,グルコサミン,及びマンノサミンのいずれか1つまたは2つ以上である対象物質の成分量を測定する工程と,
対象物質の成分量を用いて,間葉系幹細胞移植の治療効果を予測するための判定基準を得る工程を含む。
本明細書に開示される第3の側面は,アトピー性皮膚炎症状に対する治療効果を事前に予測するための診断用キットに関する。このキットは,対象から採取された血液サンプル中の,ベヘン酸,グルコサミン,及びマンノサミンのいずれか1つまたは2つ以上である対象物質の成分量を測定する手段を含む。
本発明によれば,間葉系幹細胞移植によるアトピー性皮膚炎の治療を行なう対象患者として,治療前に改善群と非改善群を治療前に適切に判定できる。すると,間葉系幹細胞が奏功すると判定された患者に対してのみ,間葉系幹細胞を投与することができることとなる。
図1は,登録者情報を示す図である。 図2は,間葉系幹細胞移植と血漿サンプリングポイントを説明するための図である。 図3は,間葉系幹細胞移植による奏功群と無効群の分類(Skindex-16)を示す図である。 図4は,間葉系幹細胞移植による奏功群と無効群の分類(皮膚病理所見)を示す図面に替わる写真である。 図5は,健常人,奏功群及び無効群における3つの成分の血漿濃度測定結果(数値)を示す図である。 図6は,健常人,奏功群及び無効群における3つの成分の血漿濃度測定結果(グラフ)を示す図面に替わるグラフである。
本明細書に開示される第1の側面は,アトピー性皮膚炎症状に対する治療効果を事前に予測する方法に関する。
「アトピー性皮膚炎症状に対する治療効果を事前に予測する」とは,対象となる患者(ヒト又は非ヒト哺乳動物)に,間葉系幹細胞を移植するまえに行う治療効果を予測することに関しており,間葉系幹細胞を移植した場合に治療効果があるか否か,治療効果がある群に属するか又は治療効果に乏しい群に属するかを判断することを意味する。
アトピー性皮膚炎症状は,例えば,アトピー性皮膚炎患者が発症する身体的又は精神的な症状である。具体的なアトピー性皮膚炎症状の例は,そう痒,湿疹病変,紅斑,湿潤性紅斑,丘疹,漿液性丘疹,鱗屑,痂皮,浸潤性紅斑,苔癬化病変,痒疹,鱗屑,及び痂皮のいずれかまたは複数の症状である。
間葉系幹細胞移植の例は,対象(患者)の静脈からの全身性投与による間葉系幹細胞移植である。間葉系幹細胞移植は,上記の例に限定されず,対象へ間葉系幹細胞を移植する様々な態様に適用できる。間葉系幹細胞移植自体は公知なので,間葉系幹細胞移植は,公知の態様であってもよい。例えば特許5998265号公報には,間葉系幹細胞とトレハロース類及びデキストラン類とを含む移植用細胞含有生理的水溶液(「移植用細胞含有液」)が記載されている。本明細書における間葉系幹細胞移植の例は,移植用細胞含有液を用いた間葉系幹細胞移植である。
この方法は,対象から採取された血液サンプル中の,ベヘン酸,グルコサミン,及びマンノサミンのいずれか1つまたは2つ以上である対象物質の成分量を測定する工程を含む。
血液サンプルの例は,血漿又は血清である。必要な血液サンプルの量は,分析機器等の精度によって変動する。一般的には,血液サンプルは,0.01mL以上10mL以下でよい。ベヘン酸,グルコサミン,及びマンノサミンのいずれか1つまたは2つ以上である対象物質は,血液サンプル中に,前駆体や塩の状態で含まれていてもよい。また,置換基が導入された誘導体の形で含まれていてもよい。これらは,例えば液体高速クロマトグラフィー(LC)を用いることで,存在の有無やある程度の定量分析を行うことができる。
次に,この方法は,対象物質の成分量を用いて,対象に間葉系幹細胞移植を行った際の,アトピー性皮膚炎症状に対する治療効果を診断する工程を含む。
後述するように,健常人の血液サンプルからベヘン酸,グルコサミン,及びマンノサミンの平均濃度を測定しておく。この平均濃度を判定基準値とする。そして,対象の血液サンプルにおけるベヘン酸,グルコサミン,及びマンノサミンのいずれか1種以上,2種以上,3種,又は2種以上の平均値のいずれかが,判定基準値の所定の閾値以上の場合,間葉系幹細胞移植を行った際の,アトピー性皮膚炎症状に対する治療効果があると判断する。所定の閾値の例は,0.5〜2に含まれるいずれかの数値でもよいし,0.5〜0.95でもよいし,0.6〜1でもよいし,0.6〜1でもよいし,0.65〜0.95でもよいし,0.6〜0.9でもよいし,0.6〜0.8でもよい。
一方,対象の血液サンプルにおけるベヘン酸,グルコサミン,及びマンノサミンのいずれか1種以上,2種以上,3種,又は2種以上の平均値のいずれかが,判定基準値の所定の閾値以下の場合,間葉系幹細胞移植を行った際の,アトピー性皮膚炎症状に対する治療効果がないと判断する。所定の閾値の例は,0.5〜0.1に含まれるいずれかの数値でもよいし,0.6〜0.2でもよいし,0.5〜0.2でもよいし,0.55〜0.4でもよい。
ベヘン酸については,健常人の血中濃度に対して,0.68以上であるアトピー性皮膚炎患者においては,間葉系幹細胞移植によるアトピー性皮膚炎症状の緩和が認められる対象患者と判定してもよい。また,健常人の血中濃度に対して,0.38以下であるアトピー性皮膚炎患者においては,間葉系幹細胞移植によるアトピー性皮膚炎症状の緩和が認められない,もしくは十分な治療効果が期待できない対象患者と判定してもよい。上記の具体的な数値については,上下15%,10%又は5%の幅を設け,その幅のいずれかの数値を閾値としてもよい。以下同様である。
また,グルコサミンについては,健常人の血中濃度に対して,0.84以上であるアトピー性皮膚炎患者においては,間葉系幹細胞移植によるアトピー性皮膚炎症状の緩和が認められる対象患者と判定してもよい。また,健常人の血中濃度に対して,0.5以下であるアトピー性皮膚炎患者においては,間葉系幹細胞移植によるアトピー性皮膚炎症状の緩和が認められない,もしくは十分な治療効果が期待できない対象患者と判定してもよい。
マンノサミンについては,健常人の血中濃度に対して,0.82以上であるアトピー性皮膚炎患者においては,間葉系幹細胞移植によるアトピー性皮膚炎症状の緩和が認められる対象患者と判定してもよい。また,健常人の血中濃度に対して,0.45以下であるアトピー性皮膚炎患者においては,間葉系幹細胞移植によるアトピー性皮膚炎症状の緩和が認められない,もしくは十分な治療効果が期待できない対象患者と判定してもよい。
本明細書に開示される第2の側面は,間葉系幹細胞移植の治療効果を予測するための判定基準を得る方法に関する。
この方法は,健常人及びアトピー性皮膚炎患者のいずれか又は両方から採取された血液サンプル中の,ベヘン酸,グルコサミン,及びマンノサミンのいずれか1つまたは2つ以上である対象物質の成分量を測定する工程と,対象物質の成分量を用いて,間葉系幹細胞移植の治療効果を予測するための判定基準を得る工程を含む。健常人の血液サンプルと,血液サンプルに含まれる上記の3つの成分のいずれか又は二つ以上の成分量や濃度を求めることで判定基準の基本となる値を得ることができる。また,複数の間葉系幹細胞移植を行う前の患者の血液サンプルから,対象物質の成分量を測定しておく。その後,それら複数の患者に間葉系幹細胞移植を行い,治療効果があった群となかった群における対象成分の成分量を求める。すると,対象成分の健常人の血液サンプル中の濃度を基準値として求めることができる。また,その基準値との関係で,間葉系幹細胞移植の治療効果を予測するための判定基準となる閾値を得ることができる。
本明細書に開示される第3の側面は,アトピー性皮膚炎症状に対する治療効果を事前に予測するための診断用キットに関する。このキットは,対象から採取された血液サンプル中の,ベヘン酸,グルコサミン,及びマンノサミンのいずれか1つまたは2つ以上である対象物質の成分量を測定する手段を含む。例えば,血液サンプル中のベヘン酸,グルコサミン,及びマンノサミンの成分量を測定する方法の例は,液体高速クロマトグラフィーなので,そのクロマトグラフィーに用いられる血液を採取できるキットは, ベヘン酸,グルコサミン,及びマンノサミンの成分量を測定するための装置を利用することで,アトピー性皮膚炎症状に対する治療効果を事前に予測するための診断用キットとして機能することとなる。このキットは,ベヘン酸,グルコサミン,及びマンノサミンの成分量を測定するチップ等であってもよい。
医療法人社団みき会において,ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞の静脈投与を受ける患者から,医療従事者による事前の説明により,血漿サンプルをメタボローム解析に供するための研究試料としての提供などについて,患者の自由意思による同意を取得した。本研究に参加した被験者は,健常者が4名とアトピー性皮膚炎患者が5名であった。なお,本研究は,再生医療等の安全性の確保等に関する法律(以下,再生医療新法という)が施行される以前に実施された。まず,参加時点における被験者の情報を図1に示す。被験者には全て登録IDが割り当てられた。健常人の年齢と性別は,40歳(男性),67歳(男性),37歳(女性),44歳(女性)であり,アトピー性皮膚炎患者は,44歳(女性),30歳(男性),33歳(男性),22歳(女性),48歳(女性)であった。
本研究デザインを図2に示す。被験者は,初回の細胞投与前に,研究に関するインフォームドコンセントを取得した後,同日に血漿を7mL採取した。血漿の採取には、21Gの注射針とベネディクトII真空採血管(テルモ)を使用し、その後、2,500×g, 10分間の遠心分離に供し、上澄みを血漿画分とした。なお、血漿採取前8〜12時間を絶食期間と設定した。次に、血漿採取の1から2週間後,ヒト脂肪組織由来間葉系の静脈投与を受けた。さらにその後,1週間から2週間の間隔を空け,合計で3回のヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞の投与を実施した。1回当たりの細胞の投与数は,9×107個を基準とした。なお,細胞投与日の細胞投与前に,アトピー性皮膚炎の重症度判定や問診などを行なった。
ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞を調製するにあたり,本研究に参加した9名の被験者それぞれより,局部麻酔下において,カニューレによる吸引採取法にて皮下脂肪組織を採取し,細胞培養加工施設で皮下脂肪組織を受入れた。その後,コラゲナーゼ溶液による酵素分散により細胞を分散させ,400×g,5分間の遠心分離を行い,間質細胞画分(以下,SVFという)を回収した。回収したSVFはPBS(−)に懸濁し,70μmメッシュサイズのセルストレーナーに供し,通液画分を再度400×g,5分間の遠心分離を行い,洗浄済みSVFを得た。最終的にSVFはsf−DOT(登録商標)培地(株式会社バイオミメティクスシンパシーズ製)で懸濁され,CellBIND(登録商標)フラスコ(Corning社)に播種した。Sf−DOT(登録商標)培地は,ヒト及び動物由来成分を含有しない,間葉系幹細胞用の無血清培地である。細胞は,37℃,5% CO2濃度のインキュベーターにて培養し,3日に1回の培地交換を基本として,セミコンフルエントになるまで培養した。継代培養においては,TrypLE(登録商標) Express Enzyme(ThermoFisher社)で37℃,5分間処理する事で細胞を分散し,PBS(−)で懸濁した後,400×g,5分間の遠心分離に供した。ペレット画分をsf−DOT(登録商標)培地で懸濁し,トリパンブルー染色法によるセルカウントを行なった後,6.5×103個/cm2を基準として,新しいフラスコに播種を行なった。この一連の培養工程を繰り返し,継代培養数5に到達した時点で,投与用細胞として凍結保存を行なった。細胞の凍結保存には,STEM−CELLBANKER(日本全薬工業株式会社)を使用し,液体窒素タンクでの保管とした。
細胞投与においては,液体窒素タンクから取り出した細胞が入ったバイアルを室温で速やかに解凍し,250 mLの乳酸リンゲル液が入った輸液バックに懸濁した。安全のために輸血用フィルターを介して,静脈から点滴により約20分間で投与した。なお1回あたりの投与細胞数は次の通りとした。
Figure 0006574292
初回の細胞投与から約2週間後に,1回目と同様の方法により、第2回目の細胞投与を実施した。さらに,2回目の細胞投与から約1〜2週間後に,1回目,2回目と同様の方法により3回目の細胞投与を実施した。アトピー性皮膚炎の臨床評価は,Skindex−16,痒みスコア,医師による重症度判定の3つの方法により,細胞投与日に実施した。その結果を図3に示す。PAT3及びPAT5は細胞投与の効果が十分に確認されず無効と判定され,PAT4,PAT10,PAT11は細胞の治療効果が有効と判定された。図4には,細胞投与前後の皮膚症状写真を掲載する。ここに示される皮膚症状と,図3で示された臨床症状は良好な相関が認められた。
次に,初回の細胞投与日の投与前に採取した血漿を検体とし,そこに含有される成分をメタボローム解析により一斉解析に供した。検出対象としては,リン脂質,リゾリン脂質,脂肪酸,エイコサノイド,スフィンミエリン,ステロイド,カテコールアミン,アミノ酸,糖,ヌクレオチドとした。測定には,GC−MS,GC−FID,LC−MS/MSを使用した。及び測定対象の代謝産物の総計は656種類となる。その内,検出された代謝産物の数は441種類となり,それらについて,アトピー性皮膚炎の無効群,改善群,及び健常者の群間比較を行なった。その結果,図5及び図6に示す通り,アトピー性皮膚炎患者において,細胞投与の効果が認められなかった無効群と,効果が確認された改善群との比較において,無効群で血漿中濃度が低く,改善群で血漿中濃度が高い3成分を同定した。つまり,間葉系幹細胞を治療のためにアトピー性皮膚炎患者に投与する際に,事前に患者から採血を行い,ベヘン酸,グルコサミン,マンノサミンのいずれかまたはそれらを複数測定することにより,間葉系幹細胞治療の効果性を判定することが可能であると示された。
本発明によると,間葉系幹細胞移植によるアトピー性皮膚炎患者の改善率を向上させることが可能となる。それにより,非改善群と判定される患者への不必要な間葉系幹細胞移植を回避することが可能となり,再生医療等製品として承認された場合においては,不要な医療費国庫負担を削減することができる。さらに,製薬企業にとっては,自社製剤の治療改善率を効率に達成することができる。

Claims (5)

  1. 対象から採取された血液サンプル中の,グルコサミンまたはマンノサミンの濃度を測定する工程と,
    前記対象の間葉系幹細胞移植によるアトピー性皮膚炎症状に対する治療効果を予測するために用いられる前記血液サンプル中のグルコサミンまたはマンノサミンの濃度に関する情報を提供する工程と,を含む
    アトピー性皮膚炎症状に対する治療効果を事前に予測する方法。
  2. 請求項1に記載の方法であって,
    前記アトピー性皮膚炎症状は,
    アトピー性皮膚炎患者が発症する身体的又は精神的な症状である,方法。
  3. 請求項1に記載の方法であって,
    前記アトピー性皮膚炎症状は,
    そう痒,湿疹病変,紅斑,湿潤性紅斑,丘疹,漿液性丘疹,鱗屑,痂皮,浸潤性紅斑,苔癬化病変,痒疹,鱗屑,及び痂皮のいずれかまたは複数の症状である,方法。
  4. 請求項1に記載の方法であって,
    前記間葉系幹細胞移植が,前記対象の静脈からの全身性投与による間葉系幹細胞移植である方法。
  5. 血液サンプル中のグルコサミンまたはマンノサミンの濃度を測定する工程と,
    前記血液サンプル中のグルコサミンまたはマンノサミンの濃度を用いて,間葉系幹細胞移植の治療効果を予測するための判定基準を得る工程を含む,
    間葉系幹細胞移植の治療効果を予測するための判定基準を得る方法。
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