関連出願の相互参照
本出願は、2014年2月13日出願の米国仮特許出願第61/939,363号明細書(本出願をもって参照によりその全体が組み込まれる)に基づく利益および優先権を主張する。
ある特定の薬剤(たとえば、特定の組織もしくは細胞型を標的とするかまたは正常組織を標的とせずに特異的罹患組織を標的とする薬剤)を患者に送達するシステムまたは薬剤の放出を制御するシステムは、有益なものとして長い間認識されてきた。
たとえば、活性薬剤を含み、かつたとえば特定の組織もしくは細胞型を標的とするかまたは正常組織を標的とせずに特異的罹患組織を標的とする治療剤は、標的とならない生体組織内の薬剤量を低減することができる。このことは、周囲の非癌組織を死滅させることなく細胞傷害用量の薬剤を癌細胞に送達することが望ましい癌などの病態を治療する場合にとくに重要である。有効な薬剤標的化は、抗癌治療によく見られる望ましくない命にかかわることもある副作用を低減することができる。そのほかに、かかる治療剤は、他の方法では到達不能と思われるある特定の組織への薬剤の到達を可能にする。
制御放出および/または標的治療を提供する治療剤はまた、他のナノ粒子送達システムで限界があることが知られている有効量の薬剤を送達可能でなければならない。たとえば、有利な送達性をもたせるのに十分な程度にナノ粒子のサイズを小さく維持しつつ、各ナノ粒子に会合させた適切量の薬剤を有するナノ粒子システムを作製することは、難題であるかもしれない。
少なくとも1個の塩基性窒素原子を含有する治療剤(すなわち、プロトン化可能な窒素含有治療剤)は、一群の重要な治療剤を提供する。しかし、この一群の薬剤のナノ粒子製剤は、バースト放出プロファイルや不十分な薬剤負荷などの望ましくない性質により妨害されることが多い。
したがって、癌などの疾患を治療するために治療レベルのプロトン化可能な窒素含有治療剤を送達可能であるとともに患者の副作用を低減可能なナノ粒子治療剤およびかかるナノ粒子の製造方法の必要性が存在する。
本明細書には、プロトン化可能な窒素含有治療剤を含むポリマーナノ粒子ならびにかかる治療用ナノ粒子の製造方法および使用方法が記載されている。
一態様では、治療用ナノ粒子の調製プロセスが提供される。プロセスは、第1の有機相と第1の水性溶液とを組み合わせて第2の相を形成する工程と、第2の相を乳化してエマルジョン相を形成する工程であって、エマルジョン相が、第1のポリマーと、プロトン化可能な窒素を有する塩基性治療剤と、パモ酸とを含む、工程と、エマルジョン相をクエンチすることによりクエンチ相を形成する工程とを含む。
いくつかの実施形態では、エマルジョン相のクエンチングは、エマルジョン相と、約2〜約8のpHを有する第2の水性溶液と、の混合を含む。
他の態様では、治療用ナノ粒子の調製プロセスが提供される。プロセスは、第1の有機相と第1の水性溶液とを組み合わせて第2の相を形成する工程と、第2の相を乳化してエマルジョン相を形成する工程であって、エマルジョン相が、第1のポリマーと、プロトン化可能な窒素を有する塩基性治療剤と、実質的に疎水性の酸とを含む、工程と、エマルジョン相をクエンチすることによりクエンチ相を形成する工程であって、エマルジョン相のクエンチングが、エマルジョン相と、約4〜約7のpHを有する第2の水性溶液との混合を含む、工程とを含む。
いくつかの実施形態では、プロセスは、クエンチ相を濾過して治療用ナノ粒子を回収する工程をさらに含む。
いくつかの実施形態では、プロセスは、第2の相の乳化前に第2の相で塩基性治療剤と酸とを組み合わせる工程をさらに含む。たとえば、いくつかの実施形態では、塩基性治療剤および酸は、第2の相の乳化前に疎水性イオン対を形成する。他の実施形態では、塩基性治療剤および酸は、第2の相の乳化前、乳化時に疎水性イオン対を形成する。
いくつかの実施形態では、プロセスは、第2の相の乳化と実質的に同時に第2の相で塩基性治療剤と酸とを組み合わせる工程をさらに含む。たとえば、いくつかの実施形態では、第1の有機相は塩基性治療剤を含み、かつ第1の水性溶液は酸を含む。
いくつかの実施形態では、塩基性治療剤は、プロトン化時に第1のpKaを有し、酸は、第2のpKaを有し、かつエマルジョン相は、第1のpKaと第2のpKaとの間のpKa単位に等しいpHを有する水性溶液でクエンチされる。たとえば、いくつかの場合には、クエンチ相は、第1のpKaと第2のpKaとの間のpKa単位に等しいpHを有する。いくつかの実施形態では、塩基性治療剤は、プロトン化時に第1のpKaを有し、酸は、第2のpKaを有し、かつ第1の水性溶液は、第1のpKaと第2のpKaとの間のpKa単位に等しいpHを有する。いくつかの実施形態では、pH(たとえば、クエンチ相または第1の水性溶液のpH)は、第1のpKaおよび第2のpKaからほぼ等距離にあるpKa単位に等しい。
さらに他の態様では、治療用ナノ粒子が提供される。治療用ナノ粒子は、第1のポリマーと、プロトン化可能な窒素を有する塩基性治療剤と、パモ酸とを含む第1の有機相を乳化することによりエマルジョン相を形成する工程と、エマルジョン相をクエンチすることによりクエンチ相を形成する工程と、により調製される。
いくつかの実施形態では、エマルジョン相のクエンチングは、エマルジョン相と、約2〜約8のpHを有する水性溶液と、の混合を含む。
さらに他の態様では、治療用ナノ粒子が提供される。治療用ナノ粒子は、第1のポリマーと、プロトン化可能な窒素を有する塩基性治療剤と、実質的に疎水性の酸とを含む第1の有機相を乳化することによりエマルジョン相を形成する工程と、エマルジョン相をクエンチすることによりクエンチ相を形成する工程であって、エマルジョン相のクエンチングが、エマルジョン相と、約4〜約7のpHを有する水性溶液と、の混合を含む、工程と、により調製される。
いくつかの実施形態では、意図される水性溶液(たとえば、第1または第2の水性溶液)のpHは、約4〜約7、たとえば、約4〜約5または約6〜約7である。
いくつかの実施形態では、意図される水性溶液は、リン酸、クエン酸、またはリン酸とクエン酸との混合物を含む。いくつかの実施形態では、第2の水性溶液は、ホウ酸とリン酸と酢酸との混合物を含む。
いくつかの実施形態では、治療用ナノ粒子の意図される調製プロセスは、クエンチ相を濾過して治療用ナノ粒子を回収する工程をさらに含む。
いくつかの実施形態では、クエンチ相は、エマルジョン相と実質的に同一のpHを有する。いくつかの実施形態では、クエンチ相は、約4〜約7、たとえば、約4〜約5または約6〜約7のpHを有する。
さらに他の態様では、治療用ナノ粒子が提供される。治療用ナノ粒子は、約0.05〜約30重量パーセントのパモ酸と、約0.2〜約20重量パーセントの、プロトン化可能な窒素を有する塩基性治療剤と、約50〜約99.75重量パーセントの、ジブロックポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたはジブロックポリ(乳酸−co−グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーとを含み、治療用ナノ粒子は、約10〜約30重量パーセントのポリ(エチレン)グリコールを含む。
さらに他の態様では、治療用ナノ粒子が提供される。治療用ナノ粒子は、約0.2〜約20重量パーセントの、プロトン化可能な窒素を有する塩基性治療剤と、パモ酸と塩基性治療剤とのモル比が約0.25:1〜約2:1である、パモ酸と、約50〜約99.75重量パーセントの、ジブロックポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたはジブロックポリ(乳酸−co−グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーとを含み、治療用ナノ粒子は、約10〜約30重量パーセントのポリ(エチレン)グリコールを含む。
いくつかの実施形態では、パモ酸と塩基性治療剤とのモル比は、約0.5:1〜約1.5:1、たとえば、約0.75:1〜約1.25:1である。
いくつかの実施形態では、塩基性治療剤のpKaは、パモ酸のpKaよりも少なくとも約1.0pKa単位大きいか、パモ酸のpKaよりも少なくとも約2.0pKa単位大きいか、またはパモ酸のpKaよりも少なくとも約4.0pKa単位大きい。
さらに他の態様では、治療用ナノ粒子が提供される。治療用ナノ粒子は、パモ酸と少なくとも1つのイオン化可能なアミン部分を有する治療剤とを含む疎水性イオン対と、約50〜約99.75重量パーセントのジブロックポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーとを含み、ポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、約15kDa〜約20kDaの数平均分子量のポリ(乳酸)と、約4kDa〜約6kDaの数平均分子量のポリ(エチレン)グリコールとを有する。
いくつかの実施形態では、塩基性治療剤のpKaとパモ酸のpKaとの差は、少なくとも約1.0pKa単位、少なくとも約2.0pKa単位、または少なくとも約4.0pKa単位である。
いくつかの実施形態では、意図される治療用ナノ粒子は、約0.05〜約30重量パーセントのパモ酸を含む。
いくつかの実施形態では、パモ酸および塩基性治療剤は、意図される治療用ナノ粒子中で疎水性イオン対を形成する。
いくつかの実施形態では、意図される治療用ナノ粒子は、約2〜約20重量パーセントまたは約4〜約20重量パーセントまたは約10〜約20重量パーセントまたは約4〜約10重量パーセントのプロトン化可能な窒素含有治療剤を含む。
いくつかの実施形態では、治療剤はキナーゼ阻害剤である。たとえば、いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、スニチニブ、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ、ポナチニブ、バフェチニブ、およびそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択されるチロシンキナーゼ阻害剤である。
いくつかの実施形態では、意図される治療用ナノ粒子の流体力学的直径は、約60〜約150nmまたは約90〜約140nmまたは約90〜約120nmである。
いくつかの実施形態では、意図される治療用ナノ粒子は、37℃のリン酸緩衝溶液中に配置されたときに少なくとも1分間にわたり治療剤を実質的に保持する。
いくつかの実施形態では、意図される治療用ナノ粒子は、37℃のリン酸緩衝溶液中に配置されたときに治療剤の約30%未満を実質的に即時放出する。
いくつかの実施形態では、意図される治療用ナノ粒子は、37℃のリン酸緩衝溶液中に配置されたときに約1時間にわたり治療剤の約10〜約45%を放出する。
いくつかの実施形態では、意図される治療用ナノ粒子は、脂肪酸も胆汁酸も含有していないこと以外は治療用ナノ粒子と実質的に同一の対照ナノ粒子の放出プロファイルと実質的に同一の放出プロファイルを有する。
いくつかの実施形態では、ポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、約0.6〜約0.95または約0.6〜約0.8または約0.75〜約0.85または約0.7〜約0.9のポリ(乳)酸数平均分子量分率を有する。
いくつかの実施形態では、意図される治療用ナノ粒子は、約10〜約25重量パーセントのポリ(エチレン)グリコールまたは約10〜約20重量パーセントのポリ(エチレン)グリコールまたは約15〜約25重量パーセントのポリ(エチレン)グリコールまたは約20〜約30重量パーセントのポリ(エチレン)グリコールを含む。
いくつかの実施形態では、ポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、約15kDa〜約20kDaの数平均分子量のポリ(乳酸)と、約4kDa〜約6kDaの数平均分子量のポリ(エチレン)グリコールとを有する。
いくつかの実施形態では、意図される治療用ナノ粒子は、約0.2〜約30重量パーセントの、標的化リガンドで機能化されたポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーをさらに含む。いくつかの実施形態では、意図される治療用ナノ粒子は、約0.2〜約30重量パーセントの、標的化リガンドで機能化されたポリ(乳)酸−co−ポリ(グリコール)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーをさらに含む。たとえば、いくつかの実施形態では、標的化リガンドはポリ(エチレン)グリコールに共有結合される。
いくつかの実施形態では、意図される治療用ナノ粒子は、パモ酸と実質的に疎水性の酸との混合物を含む。
さらに他の態様では、薬学的に許容可能な組成物が提供される。組成物は、複数の意図される治療用ナノ粒子と薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。
いくつかの実施形態では、意図される薬学的に許容可能な組成物は、スクロース、トレハロース、それらの混合物などの糖をさらに含む。
いくつかの実施形態では、意図される薬学的に許容可能な組成物は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、ヘプタキス−(2,3,6−トリ−O−ベンジル)−β−シクロデキストリン、それらの混合物などのシクロデキストリンをさらに含む。
さらに他の態様では、必要とされる患者において癌を治療する方法が提供される。方法は、意図される治療用ナノ粒子を含む治療上有効量の組成物を患者に投与する工程を含む。
いくつかの実施形態では、癌は慢性骨髄性白血病である。いくつかの実施形態では、癌は、慢性骨髄単球性白血病、好酸球増加症候群、腎細胞癌、肝細胞癌、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病、非小細胞肺癌、膵臓癌、乳癌、固形腫瘍、およびマントル細胞性リンパ腫からなる群から選択される。
さらに他の態様では、必要とされる患者において胃腸間質腫瘍を治療する方法が提供される。方法は、意図される治療用ナノ粒子を含む治療上有効量の組成物を患者に投与する工程を含む。
図1は、開示されたナノ粒子を形成するための乳化プロセスのフロー図である。
図2Aおよび2Bは、開示された乳化プロセスのフロー図を示している。
図3は、スニチニブ含有ナノ粒子製剤のインビトロ放出プロファイルを示している。
図4は、イマチニブ含有ナノ粒子製剤のインビトロ放出プロファイルを示している。
図5は、イマチニブ含有ナノ粒子製剤のインビトロ放出プロファイルを示している。
図6は、イマチニブ含有ナノ粒子製剤のインビトロ放出プロファイルを示している。
図7は、ダサチニブ含有ナノ粒子製剤のインビトロ放出プロファイルを示している。
図8は、ダサチニブ含有ナノ粒子製剤のインビトロ放出プロファイルを示している。
図9は、ダサチニブ含有ナノ粒子製剤のインビトロ放出プロファイルを示している。
発明の詳細な説明
本明細書には、プロトン化可能な窒素を有する塩基性治療剤(たとえば、プロトン化可能な窒素含有治療剤)を含むポリマーナノ粒子ならびにかかる治療用ナノ粒子の製造方法および使用方法が記載されている。いくつかの実施形態では、開示されたナノ粒子への実質的に疎水性の酸(たとえばパモ酸)の組込み(すなわちドーピング)および/またはナノ粒子調製プロセスへの組込みは、改善された薬剤負荷を含むナノ粒子をもたらすことができる。さらに、ある特定の実施形態では、疎水性の酸を含むおよび/またはその存在下で調製されたナノ粒子は、改善された制御放出性を呈すことができる。たとえば、開示されたナノ粒子は、疎水性の酸の不在下で調製されたナノ粒子と比較してプロトン化可能な窒素含有治療剤をより遅く放出することができる。
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、疎水性の酸(たとえば、脂肪酸および/または胆汁酸)を含む開示されたナノ粒子製剤は、アミンなどを有する治療剤と酸との疎水性イオン対(HIP)の形成を介して、有意に改善された製剤の性質(たとえば、薬剤負荷および/または放出プロファイル)を有すると考えられる。本明細書で用いられる場合、HIPとは、クーロン引力により一体的に保持された一対の反対荷電のイオンのことである。同様にいかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、いくつかの実施形態では、HIPは、イオン化可能な基(たとえばアミン)を含有する治療剤の疎水性を増加するために使用可能である。いくつかの実施形態では、疎水性が増加した治療剤は、ナノ粒子製剤に有益であるとともに、有機溶媒への治療剤のより高い溶解度を提供することができるHIP形成をもたらす。本明細書で意図されるHIP形成は、たとえば増加した薬剤負荷を有するナノ粒子をもたらすことができる。また、ナノ粒子からの治療剤のより遅い放出は、たとえばいくつかの実施形態では、水性溶液への治療剤の溶解度の減少に起因して起こるかもしれない。さらに、治療剤と大きな疎水性対イオンとの複合体化は、ポリマーマトリックス内の治療剤の拡散を遅くすることができる。有利には、HIP形成は、疎水性基と治療剤との共有結合を必要とすることなく起こる。
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、HIPの濃度は、意図されるナノ粒子の薬剤負荷および放出速度に影響を及ぼすと考えられる。たとえば、HIPの濃度は、以下でより詳細に考察されるように、プロトン化可能な窒素含有治療剤のpKaと疎水性の酸のpKaとの差を増加させることにより増加させることができる。同様にいかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、イオン対形成の条件は、意図されるナノ粒子の薬剤負荷および放出速度に影響を及ぼすと考えられる。
本明細書に開示されたナノ粒子は、1、2、3種以上の生体適合性および/または生分解性ポリマーを含む。たとえば、意図されるナノ粒子は、約35〜約99.75重量パーセント、いくつかの実施形態では約50〜約99.75重量パーセント、いくつかの実施形態では約50〜約99.5重量パーセント、いくつかの実施形態では約50〜約99重量パーセント、いくつかの実施形態では約50〜約98重量パーセント、いくつかの実施形態では約50〜約97重量パーセント、いくつかの実施形態では約50〜約96重量パーセント、いくつかの実施形態では約50〜約95重量パーセント、いくつかの実施形態では約50〜約94重量パーセント、いくつかの実施形態では約50〜約93重量パーセント、いくつかの実施形態では約50〜約92重量パーセント、いくつかの実施形態では約50〜約91重量パーセント、いくつかの実施形態では約50〜約90重量パーセント、いくつかの実施形態では約50〜約85重量パーセント、いくつかの実施形態では約60〜約85重量パーセント、いくつかの実施形態では約65〜約85重量パーセントおよびいくつかの実施形態では約50〜約80重量パーセントの、生分解性ポリマーとポリ(エチレングリコール)(PEG)とを含む1種以上のブロックコポリマーと、約0〜約50重量パーセントの生分解性ホモポリマーとを含むことができる。
開示されたナノ粒子は、プロトン化可能な窒素含有治療剤を含むことができる。本明細書で用いられる場合、「プロトン化可能な窒素含有治療剤」は、少なくとも1個のプロトン化可能な窒素含有官能基を含有する任意の医薬活性剤を含む。プロトン化可能な窒素含有治療剤は、1、2、3個以上プロトン化可能な窒素含有官能基を含有むことができる。プロトン化可能な窒素含有官能基の例としては、限定されるものではないが、脂肪族アミノ基(たとえば、第1級アミン、第2級アミン、および第3級アミン)、窒素含有ヘテロアリール基(たとえば、ピリジン、イミダゾール、トリアゾール、およびテトラゾール)、およびグアニジノ基が挙げられる。
いくつかの実施形態では、開示されたナノ粒子は、約0.2〜約35重量パーセント、約0.2〜約20重量パーセント、約0.2〜約10重量パーセント、約0.2〜約5重量パーセント、約0.5〜約5重量パーセント、約0.75〜約5重量パーセント、約1〜約5重量パーセント、約2〜約5重量パーセント、約3〜約5重量パーセント、約1〜約20重量パーセント、約2〜約20重量パーセント、約4〜約20重量パーセント、約5〜約20重量パーセント、約10〜約20重量パーセント、約1〜約15重量パーセント、約2〜約15重量パーセント、約3〜約15重量パーセント、約4〜約15重量パーセント、約5〜約15重量パーセント、約1〜約10重量パーセント、約2〜約10重量パーセント、約3〜約10重量パーセント、約4〜約10重量パーセント、約5〜約10重量パーセント、約10〜約30重量パーセント、または約15〜約25重量パーセントのプロトン化可能な窒素含有治療剤を含むことができる。
ある特定の実施形態では、開示されたナノ粒子は、疎水性の酸(たとえば、脂肪酸および/または胆汁酸)を含み、かつ/または疎水性の酸を含むプロセスにより調製される。かかるナノ粒子は、疎水性の酸を含まないプロセスにより調製されたナノ粒子よりも高い薬剤負荷を有することができる。たとえば、疎水性の酸を含むプロセスにより調製された開示されたナノ粒子の薬剤負荷(たとえば重量基準)は、疎水性の酸を含まないプロセスにより調製された開示されたナノ粒子の約2倍〜約10倍とすることができる。いくつかの実施形態では、疎水性の酸を含む第1のプロセスにより調製された開示されたナノ粒子の薬剤負荷(重量基準)は、第2のプロセスが疎水性の酸を含まないこと以外は第2のプロセスが第1のプロセスと同じである第2のプロセスにより調製された開示されたナノ粒子の少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、またはより少なくとも約10倍とすることができる。
任意の好適な疎水性の酸が意図される。いくつかの実施形態では、疎水性の酸は、カルボン酸(たとえば、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸など)、スルフィン酸、スルフェン酸、またはスルホン酸とすることができる。いくつかの場合には、意図される疎水性の酸は2種以上の酸の混合物を含むことができる。たとえば、ある特定の実施形態では、疎水性の酸は、2種の実質的に疎水性の酸の混合物、いくつかの実施形態では3種の実質的に疎水性の酸の混合物、いくつかの実施形態では4種の実質的に疎水性の酸の混合物、またはいくつかの実施形態では5種の実質的に疎水性の酸の混合物を含むことができる。
いくつかの場合には、疎水性の酸の塩が製剤で使用することができる。
たとえば、開示されたカルボン酸は、脂肪族カルボン酸(たとえば、環式または非環式の分岐状または非分岐状の炭化水素鎖を有するカルボン酸)とすることができる。開示されたカルボン酸は、いくつかの実施形態では、限定されるものではないがハロゲン(すなわち、F、Cl、Br、およびI)、スルホニル、ニトロ、およびオキソをはじめとする1個以上の官能基で置換することができる。ある特定の実施形態では、開示されたカルボン酸は非置換としてもよい。
例示的なカルボン酸は、置換または非置換の脂肪酸(たとえば、C6〜C50脂肪酸)を含むことができる。いくつかの場合には、脂肪酸はC10〜C20脂肪酸とすることができる。他の場合には、脂肪酸はC15〜C20脂肪酸とすることができる。いくつかの場合には、脂肪酸は飽和とすることができる。他の実施形態では、脂肪酸は不飽和とすることができる。たとえば、脂肪酸はモノ不飽和脂肪酸またはポリ不飽和脂肪酸とすることができる。いくつかの実施形態では、不飽和脂肪酸基の二重結合はcis配座とすることができる。いくつかの実施形態では、不飽和脂肪酸の二重結合はtrans配座とすることができる。不飽和脂肪酸としては、限定されるものではないが、ω−3、ω−6、およびω−9脂肪酸が挙げられる。
飽和脂肪酸の例としては、限定されるものではないが、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘンエイコサン酸、ベヘン酸、トリコサン酸、リグノセリン酸、ペンタコサン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、ノナコサン酸、メリシン酸、ヘナトリアコンタン酸、ラクセロン酸、フィリン酸、ゲダ酸、セロプラスチン酸、ヘキサトリアコンタン酸、およびそれらの組合せが挙げられる。
不飽和脂肪酸の例としては、限定されるものではないが、ヘキサデカトリエン酸、α−リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ヘンエイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、エイコサジエン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサジエン酸、アドレン酸、ドコサペンタエン酸、テトラコサテトラエン酸、テトラコサペンタエン酸、オレイン酸(pKa=約4〜5、logP=6.78)、エイコセン酸、ミード酸、エルカ酸、ネルボン酸、ルメン酸、α−カレンド酸、β−カレンド酸、ジャカル酸、α−エレオステアリン酸、β−エレオステアリン酸、カタルプ酸、プニカ酸、ルメレン酸、α−パリナリン酸、β−パリナリン酸、ボセオペンタエン酸、ピノレン酸、ポドカルピン酸、パルミトレイン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、およびそれらの組合せが挙げられる。
他の疎水性の酸の例としては、限定されるものではないが、芳香族酸、たとえば、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(すなわちキシナホ酸)(pKa=約2〜3、logP=2.97)、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸(pKa=−2、logP=1.3)、ナフタレン−2−スルホン酸(pKa=−1.8、logP=2.1)、パモ酸(pKa=2.4)、ケイ皮酸、フェニル酢酸、(±)−カンファー−10−スルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸(pKa=−1.8、logP=6.6)、およびそれらの組合せが挙げられる。他の疎水性の酸の例としては、限定されるものではないが、ドデシル硫酸(pKa=−0.09、logP=4.5)、ジオクチルスルホコハク酸(すなわちドキュセート酸)(pKa=−0.8、logP=5.2)、ジオレオイルホスファチジン酸(pKa=約2)、およびビタミンD3硫酸(pKa=−1.5)が挙げられる。
いくつかの実施形態では、疎水性の酸は胆汁酸とすることができる。胆汁酸の例としては、限定されるものではないが、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、デオキシコール酸(pKa=4.65、logP=3.79)、ヒコール酸、β−ムリコール酸、コール酸(pKa=約4.5、logP=2.48)、タウロコール酸、コレステリル硫酸(pKa=−1.4)、リトコール酸、アミノ酸抱合胆汁酸、およびそれらの組合せが挙げられる。アミノ酸抱合胆汁酸は任意の好適なアミノ酸に抱合されてもよい。いくつかの実施形態では、アミノ酸抱合胆汁酸はグリシン抱合胆汁酸またはタウリン抱合胆汁酸である。
ある特定の場合には、疎水性の酸は高分子電解質とすることができる。たとえば、高分子電解質は、ポリスルホン酸(たとえば、ポリ(スチレンスルホン酸)もしくはデキストラン硫酸)またはポリカルボン酸(たとえば、ポリアクリル酸もしくはポリメタクリル酸)とすることができる。
いくつかの場合には、意図される酸は、約1000Da未満、いくつかの実施形態では約500Da未満、いくつかの実施形態では約400Da未満、いくつかの実施形態では約300Da未満、いくつかの実施形態では約250Da未満、いくつかの実施形態では約200Da未満、およびいくつかの実施形態では約150Da未満の分子量を有することができる。いくつかの場合には、酸は、約100Da〜約1000Da、いくつかの実施形態では約200Da〜約800Da、いくつかの実施形態では約200Da〜約600Da、いくつかの実施形態では約100Da〜約300Da、いくつかの実施形態では約200Da〜約400Da、いくつかの実施形態では約300Da〜約500Da、およびいくつかの実施形態では約300Da〜約1000Daの分子量を有することができる。ある特定の実施形態では、意図される酸は、約300Da超、いくつかの実施形態では400Da超、およびいくつかの実施形態では500Da超の分子量を有することができる。ある特定の実施形態では、ナノ粒子からの治療剤の放出速度は、ナノ粒子製剤で使用される疎水性の酸の分子量を増加させることにより遅くすることが可能である。
いくつかの実施形態では、疎水性の酸は、少なくとも部分的には酸の強度に基づいて選択することができる。たとえば、疎水性の酸は、25℃で決定したときに約−5〜約7、いくつかの実施形態では約−3〜約5、いくつかの実施形態では約−3〜約4、いくつかの実施形態では約−3〜約3.5、いくつかの実施形態では約−3〜約3、いくつかの実施形態では約−3〜約2、いくつかの実施形態では約−3〜約1、いくつかの実施形態では約−3〜約0.5、いくつかの実施形態では約−0.5〜約0.5、いくつかの実施形態では約1〜約7、いくつかの実施形態では、約2〜約7、いくつかの実施形態では約3〜約7、いくつかの実施形態では約4〜約6、いくつかの実施形態では約4〜約5.5、いくつかの実施形態では約4〜約5、およびいくつかの実施形態では約4.5〜約5の水中での酸解離定数(pKa)を有することができる。いくつかの実施形態では、酸は、25℃で決定したときに約7未満、約5未満、約3.5未満、約3未満、約2未満、約1未満、または約0未満のpKaを有することができる。
ある特定の実施形態では、疎水性の酸は、少なくとも部分的には疎水性の酸のpKaとプロトン化窒素含有治療剤のpKaとの差に基づいて選択することができる。たとえば、いくつかの場合には、疎水性の酸のpKaとプロトン化窒素含有治療剤のpKaとの差は、25℃で決定したときに約1pKa単位〜約15pKa単位、いくつかの実施形態では約1pKa単位〜約10pKa単位、いくつかの実施形態では約1pKa単位〜約5pKa単位、いくつかの実施形態では約1pKa単位〜約3pKa単位、いくつかの実施形態では約1pKa単位〜約2pKa単位、いくつかの実施形態では約2pKa単位〜約15pKa単位、いくつかの実施形態では約2pKa単位〜約10pKa単位、いくつかの実施形態では約2pKa単位〜約5pKa単位、いくつかの実施形態では約2pKa単位〜約3pKa単位、いくつかの実施形態では約3pKa単位〜約15pKa単位、いくつかの実施形態では約3pKa単位〜約10pKa単位、いくつかの実施形態では約3pKa単位〜約5pKa単位、いくつかの実施形態では約4pKa単位〜約15pKa単位、いくつかの実施形態では約4pKa単位〜約10pKa単位、いくつかの実施形態では約4pKa単位〜約6pKa単位、いくつかの実施形態では約5pKa単位〜約15pKa単位、いくつかの実施形態では約5pKa単位〜約10pKa単位、いくつかの実施形態では約5pKa単位〜約7pKa単位、いくつかの実施形態では約7pKa単位〜約15pKa単位、いくつかの実施形態では約7pKa単位〜約9pKa単位、いくつかの実施形態では約9pKa単位〜約15pKa単位、いくつかの実施形態では約9pKa単位〜約11pKa単位、いくつかの実施形態では約11pKa単位〜約13pKa単位、およびいくつかの実施形態では約13pKa単位〜約15pKa単位とすることができる。
いくつかの場合には、疎水性の酸のpKaとプロトン化窒素含有治療剤のpKaとの差は、25℃で決定したときに少なくとも約1pKa単位、いくつかの実施形態では少なくとも約2pKa単位、いくつかの実施形態では少なくとも約3pKa単位、いくつかの実施形態では少なくとも約4pKa単位、いくつかの実施形態では少なくとも約5pKa単位、いくつかの実施形態では少なくとも約6pKa単位、いくつかの実施形態では少なくとも約7pKa単位、いくつかの実施形態では少なくとも約8pKa単位、いくつかの実施形態では少なくとも約9pKa単位、いくつかの実施形態では少なくとも約10pKa単位、およびいくつかの実施形態では少なくとも約15pKa単位とすることができる。
いくつかの実施形態では、疎水性の酸は、約2〜約15、いくつかの実施形態では約5〜約15、いくつかの実施形態では約5〜約10、いくつかの実施形態では約2〜約8、いくつかの実施形態では約4〜約8、いくつかの実施形態では約2〜約7、またはいくつかの実施形態では約4〜約7のlogPを有することができる。いくつかの場合には、疎水性の酸には、約2超、約4超、約5超、または6超のlogPを有することができる。
いくつかの実施形態では、意図される疎水性の酸は、たとえば治療用ナノ粒子の性質を改良するのに有利な相転移温度を有することができる。たとえば、酸は、約300℃未満、いくつかの場合には約100℃未満、およびいくつかの場合には約50℃未満の融点を有することができる。ある特定の実施形態では、酸は、約5℃〜約25℃、いくつかの場合には約15℃〜約50℃、いくつかの場合には約30℃〜約100℃、いくつかの場合には約75℃〜約150℃、いくつかの場合には約125℃〜約200℃、いくつかの場合には約150℃〜約250℃、およびいくつかの場合には約200℃〜約300℃の融点を有することができる。いくつかの場合には、酸は、約15℃未満、いくつかの場合には約10℃未満、またはいくつかの場合には約0℃未満の融点を有することができる。ある特定の実施形態では、酸は、約−30℃〜約0℃またはいくつかの場合には約−20℃〜約−10℃の融点を有することができる。
たとえば、本明細書に開示された方法およびナノ粒子で使用される酸は、少なくとも部分的には酸を含む溶媒へのプロトン化可能な窒素含有治療剤の溶解度に基づいて選択することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、酸を含む溶媒に溶解されたプロトン化可能な窒素含有治療剤は、約15mg/mL〜約200mg/mL、約20mg/mL〜約200mg/mL、約25mg/mL〜約200mg/mL、約50mg/mL〜約200mg/mL、約75mg/mL〜約200mg/mL、約100mg/mL〜約200mg/mL、約125mg/mL〜約175mg/mL、約15mg/mL〜約50mg/mL、約25mg/mL〜約75mg/mLの溶解度を有することができる。いくつかの実施形態では、酸を含む溶媒に溶解されたプロトン化可能な窒素含有治療剤は、約10mg/mL超、約50mg/mL超、または約100mg/mL超の溶解度を有することができる。いくつかの実施形態では、疎水性の酸を含む溶媒に溶解されたプロトン化可能な窒素含有治療剤(たとえば、治療剤と溶媒と疎水性の酸とからなる第1の溶液)は、プロトン化可能な窒素含有治療剤が疎水性の酸を含有しない溶媒に溶解された場合(たとえば、治療剤と溶媒とからなる第2の溶液の場合)の少なくとも約2倍、いくつかの実施形態では少なくとも約5倍、いくつかの実施形態では少なくとも約10倍、いくつかの実施形態では少なくとも約20倍、いくつかの実施形態では約2倍〜約20倍、またはいくつかの実施形態では約10倍〜約20倍の溶解度を有することができる。
いくつかの場合には、薬剤溶液(すなわち、プロトン化可能な窒素含有治療剤の溶液)中の酸の濃度は、約1重量パーセント〜約30重量パーセント、いくつかの実施形態では約2重量パーセント〜約30重量パーセント、いくつかの実施形態では約3重量パーセント〜約30重量パーセント、いくつかの実施形態では約4重量パーセント〜約30重量パーセント、いくつかの実施形態では約5重量パーセント〜約30重量パーセント、いくつかの実施形態では約6重量パーセント〜約30重量パーセント、いくつかの実施形態では約8重量パーセント〜約30重量パーセント、いくつかの実施形態では約10重量パーセント〜約30重量パーセント、いくつかの実施形態では約12重量パーセント〜約30重量パーセント、いくつかの実施形態では約14重量パーセント〜約30重量パーセント、いくつかの実施形態では約16重量パーセント〜約30重量パーセント、いくつかの実施形態では約1重量パーセント〜約5重量パーセント、いくつかの実施形態では約3重量パーセント〜約9重量パーセント、いくつかの実施形態では約6重量パーセント〜約12重量パーセント、いくつかの実施形態では約9重量パーセント〜約15重量パーセント、いくつかの実施形態約12重量パーセント〜約18重量パーセントおよびいくつかの実施形態では約15重量パーセント〜約21重量パーセントとすることができる。ある特定の実施形態では、薬剤溶液中の疎水性の酸の濃度は、少なくとも約1重量パーセント、いくつかの実施形態では少なくとも約2重量パーセント、いくつかの実施形態では少なくとも約3重量パーセント、いくつかの実施形態では少なくとも約5重量パーセント、いくつかの実施形態では少なくとも約10重量パーセント、いくつかの実施形態では少なくとも約15重量パーセントおよびいくつかの実施形態では少なくとも約20重量パーセントとすることができる。
ある特定の実施形態では、疎水性の酸とプロトン化可能な窒素含有治療剤とのモル比(たとえば、ナノ粒子の初期製剤時および/またはナノ粒子中)は、約0.25:1〜約6:1、いくつかの実施形態では約0.25:1〜約5:1、いくつかの実施形態では約0.25:1〜約4:1、いくつかの実施形態では約0.25:1〜約3:1、いくつかの実施形態では約0.25:1〜約2:1、いくつかの実施形態では約0.25:1〜約1.5:1、いくつかの実施形態では約0.25:1〜約1:1、いくつかの実施形態では約0.25:1〜約0.5:1、いくつかの実施形態では約0.5:1〜約6:1、いくつかの実施形態では約0.5:1〜約5:1、いくつかの実施形態では約0.5:1〜約4:1、いくつかの実施形態では約0.5:1〜約3:1、いくつかの実施形態では約0.5:1〜約2:1、いくつかの実施形態では約0.5:1〜約1.5:1、いくつかの実施形態では約0.5:1〜約1:1、いくつかの実施形態では約0.5:1〜約0.75:1、いくつかの実施形態では約0.75:1〜約2:1、いくつかの実施形態では約0.75:1〜約1.5:1、いくつかの実施形態では約0.75:1〜約1.25:1、いくつかの実施形態では約0.9:1〜約1.1:1、いくつかの実施形態では約0.95:1〜約1.05:1、いくつかの実施形態では約1:1、いくつかの実施形態では約0.75:1〜約1:1、いくつかの実施形態では約1:1〜約6:1、いくつかの実施形態では約1:1〜約5:1、いくつかの実施形態では約1:1〜約4:1、いくつかの実施形態では約1:1〜約3:1、いくつかの実施形態では約1:1〜約2:1、いくつかの実施形態では約1:1〜約1.5:1、いくつかの実施形態では約1.5:1〜約6:1、いくつかの実施形態では約1.5:1〜約5:1、いくつかの実施形態では約1.5:1〜約4:1、いくつかの実施形態では約1.5:1〜約3:1、いくつかの実施形態では約2:1〜約6:1、いくつかの実施形態では約2:1〜約4:1、いくつかの実施形態では約3:1〜約6:1、いくつかの実施形態では約3:1〜約5:1、およびいくつかの実施形態では約4:1〜約6:1とすることができる。
いくつかの場合には、疎水性の酸とプロトン化可能な窒素含有治療剤との初期モル比(すなわち、ナノ粒子の製剤時)は、ナノ粒子中の疎水性の酸とプロトン化可能な窒素含有治療剤とのモル比(すなわち、カプセル化されていない疎水性の酸およびプロトン化可能な窒素含有治療剤の除去後)とは異なるかもしれない。他の場合には、疎水性の酸とプロトン化可能な窒素含有治療剤との初期モル比(すなわち、ナノ粒子の製剤時)は、ナノ粒子中の疎水性の酸とプロトン化可能な窒素含有治療剤とのモル比(すなわち、カプセル化されていない疎水性の酸およびプロトン化可能な窒素含有治療剤の除去後)と本質的に同一とすることができる。
いくつかの場合には、プロトン化可能な窒素含有治療剤を含有する溶液は、ポリマーを含有する溶液とは独立して調製することができるとともに、次いで2つの溶液は、ナノ粒子の製剤前に組み合わせることができる。たとえば、一実施形態では、第1の溶液は、プロトン化可能な窒素含有治療剤と疎水性の酸とを含有し、かつ第2の溶液は、ポリマーと任意選択で疎水性の酸とを含有する。第2の溶液が疎水性の酸を含有しない製剤は、プロセスで使用される疎水性の酸の量を最小限に抑えたり、またはいくつかの場合には疎水性の酸とたとえば疎水性の酸の存在下で分解可能なポリマーとの接触時間を最小限に抑えたりするうえで、有利とすることができる。他の場合には、プロトン化可能な窒素含有治療剤とポリマーと疎水性の酸とを含有する単一の溶液を調製することができる。
いくつかの実施形態では、疎水性イオン対は、ナノ粒子の製剤前に形成することができる。たとえば、疎水性イオン対を含有する溶液は、意図されるナノ粒子の製剤前に調製することができる(たとえば、好適量のプロトン化可能な窒素含有治療剤と疎水性の酸とを含有する溶液を調製することにより)。他の実施形態では、疎水性イオン対は、ナノ粒子の製剤時に形成することができる。プロトン化可能な窒素含有治療剤を含有する第1の溶液および疎水性の酸を含有する第2の溶液は、ナノ粒子を調製するプロセス工程時(たとえば、エマルジョン形成前および/またはエマルジョン形成時)に組み合わせることができる。ある特定の実施形態では、疎水性イオン対は、意図されるナノ粒子中にプロトン化可能な窒素含有治療剤と疎水性の酸とをカプセル化する前に形成することができる。他の実施形態では、疎水性イオン対は、たとえば、プロトン化可能な窒素含有治療剤と疎水性の酸とをカプセル化した後にナノ粒子中で形成することができる。
ある特定の実施形態では、疎水性の酸は、25℃で決定したときに約2g/水100mL未満、いくつかの実施形態では約1g/水100mL未満、いくつかの実施形態では約100mg/水100mL未満、いくつかの実施形態では約10mg/水100mL未満、およびいくつかの実施形態では約1mg/水100mL未満の溶解度を有することができる。他の実施形態では、酸は、25℃で決定したときに約1mg/水100mL〜約2g/水100mL、いくつかの実施形態では約1mg/水100mL〜約1g/水100mL、いくつかの実施形態では約1mg/水100mL〜約500mg/水100mL、およびいくつかの実施形態では約1mg/水100mL〜約100mg/水100mLの溶解度を有することができる。いくつかの実施形態では、疎水性の酸は、25℃の水に本質的に不溶とすることができる。
いくつかの実施形態では、開示されたナノ粒子は、ナノ粒子の調製時に使用される疎水性の酸を本質的に含まないものとすることができる。他の実施形態では、開示されたナノ粒子は疎水性の酸を含むことができる。たとえば、いくつかの実施形態では、開示されたナノ粒子中の酸含有率は、約0.05重量パーセント〜約35重量パーセント、いくつかの実施形態では約0.05重量パーセント〜約30重量パーセント、いくつかの実施形態では約0.5重量パーセント〜約30重量パーセント、いくつかの実施形態では約1重量パーセント〜約30重量パーセント、いくつかの実施形態では約2重量パーセント〜約30重量パーセント、いくつかの実施形態では約3重量パーセント〜約30重量パーセント、いくつかの実施形態では約5重量パーセント〜約30重量パーセント、いくつかの実施形態では約7重量パーセント〜約30重量パーセント、いくつかの実施形態では約10重量パーセント〜約30重量パーセント、いくつかの実施形態では約15重量パーセント〜約30重量パーセント、いくつかの実施形態では約20重量パーセント〜約30重量パーセント、いくつかの実施形態では約0.05重量パーセント〜約0.5重量パーセント、いくつかの実施形態では約0.05重量パーセント〜約5重量パーセント、いくつかの実施形態では約1重量パーセント〜約5重量パーセント、いくつかの実施形態では約3重量パーセント〜約10重量パーセント、いくつかの実施形態では約5重量パーセント〜約15重量パーセントおよびいくつかの実施形態では約10重量パーセント〜約20重量パーセントとすることができる。
いくつかの実施形態では、開示されたナノ粒子は、たとえば、室温(たとえば25℃)および/または37℃のリン酸緩衝溶液中に配置された場合、プロトン化可能な窒素含有治療剤の約2%未満、約5%未満、約10%未満、約15%未満、約20%未満、約25%未満、約30%未満、または40%未満を実質的に即時放出する(たとえば、約1分間〜約30分間、約1分間〜約25分間、約5分間〜約30分間、約5分間〜約1時間、約1時間、または約24時間にわたり)。ある特定の実施形態では、プロトン化可能な窒素含有治療剤を含むナノ粒子は、たとえば25℃および/または37℃の水性溶液(たとえばリン酸緩衝溶液)中に配置された場合、約1時間にわたりプロトン化可能な窒素含有治療剤の約0.01〜約50%、いくつかの実施形態では約0.01〜約25%、いくつかの実施形態では約0.01〜約15%、いくつかの実施形態では約0.01〜約10%、いくつかの実施形態では約1〜約40%、いくつかの実施形態では約5〜約40%、およびいくつかの実施形態では約10〜約40%の放出に実質的に対応する速度で、プロトン化可能な窒素含有治療剤を放出することができる。いくつかの実施形態では、プロトン化可能な窒素含有治療剤を含むナノ粒子は、たとえば25℃および/または37℃の水性溶液(たとえばリン酸緩衝溶液)中に配置された場合、約4時間にわたりプロトン化可能な窒素含有治療剤の約10〜約70%、いくつかの実施形態では約10〜約45%、いくつかの実施形態では約10〜約35%、またはいくつかの実施形態では、約10〜約25%の放出に実質的に対応する速度で、プロトン化可能な窒素含有治療剤を放出することができる。
いくつかの実施形態では、開示されたナノ粒子は、37℃のリン酸緩衝溶液中に配置された場合、たとえば、少なくとも約1分間、少なくとも約1時間、またはそれ以上にわたり、プロトン化可能な窒素含有治療剤を実質的に保持することができる。
一実施形態では、開示された治療用ナノ粒子は、標的化リガンド、たとえば、低分子量リガンドを含むことができる。ある特定の実施形態では、低分子量リガンドは、ポリマーにコンジュゲートされ、かつナノ粒子は、リガンドコンジュゲートポリマー(たとえば、PLA−PEG−リガンド)と非機能化ポリマー(たとえば、PLA−PEGまたはPLGA−PEG)とのある特定の比を含む。ナノ粒子は、有効量のリガンドが癌などの疾患または障害の治療のためのナノ粒子に会合されるように、これらの2種のポリマーの最適比を有することができる。たとえば、リガンド密度を増加させると標的結合(細胞結合/標的取込み)が増加することができるため、ナノ粒子は「標的特異的」となり得る。他の選択肢として、ある特定の濃度のナノ粒子中の非機能化ポリマー(たとえば、非機能化PLGA−PEGコポリマー)は、炎症および/または免疫原性(すなわち、免疫反応の誘発能)を制御可能であり、かつ疾患または障害の治療に適した循環半減期をナノ粒子にもたせることが可能である。さらに、非機能化ポリマーは、いくつかの実施形態では、細網内皮系(RES)を介して循環系からのクリアランス速度を低下させることができる。したがって、非機能化ポリマーは、投与時に粒子が生体内を移動しうる特徴をナノ粒子に提供することができる。いくつかの実施形態では、非機能化ポリマーは、それ以外に高濃度のリガンドをバランス調整することができる。そうでなければ、被験者によるクリアランスが加速されて標的細胞への送達の低下をもたらすことができる。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されたナノ粒子は、ナノ粒子の全ポリマー組成物(すなわち、機能化ポリマー+非機能化ポリマー)の約0.1〜50、たとえば0.1〜30、たとえば0.1〜20、たとえば0.1〜10モルパーセントを占めるリガンドにコンジュゲートされた機能化ポリマーを含むことができる。そのほかに、他の実施形態では、1種以上の低分子量リガンドがコンジュゲートされた(たとえば、共有結合された(すなわち、リンカー(たとえばアルキレンリンカー)または結合を介して))ポリマーを含むナノ粒子が本明細書に開示されている。全ポリマーを基準にした低分子量リガンドの重量パーセントは、約0.001〜5、たとえば約0.001〜2、たとえば約0.001〜1である。
いくつかの実施形態では、開示されたナノ粒子は、生物学的存在物、たとえば、特定の膜成分または細胞表面レセプターに効率的に結合または他の形で会合させることができる。治療剤の標的化(たとえば、正常組織に対してではなく、特定の組織または細胞型、特異的罹患組織に対して)は、固形腫瘍癌(たとえば前立腺癌)などの組織特異的疾患の治療に望ましい。たとえば、細胞傷害性抗癌剤の全身送達とは対照的に、本明細書に開示されたナノ粒子は、作用剤による健常細胞の死滅を実質的に阻止することができる。そのほかに、開示されたナノ粒子は、(開示されたナノ粒子や製剤を用いることなく投与された有効量の作用剤と比較して)より低用量の作用剤の投与を可能にするため、伝統的な化学療法によく見られる望ましくない副作用を低減することができる。
一般に、「ナノ粒子」とは、1000nm未満、たとえば、約10nm〜約200nmの直径を有する任意の粒子を意味する。開示された治療用ナノ粒子は、約60〜約120nm、または約70〜約120nm、または約80〜約120nm、または約90〜約120nm、または約100〜約120nm、または約60〜約130nm、または約70〜約130nm、または約80〜約130nm、または約90〜約130nm、または約100〜約130nm、または約110〜約130nm、または約60〜約140nm、または約70〜約140nm、または約80〜約140nm、または約90〜約140nm、または約100〜約140nm、または約110〜約140nm、または約60〜約150nm、または約70〜約150nm、または約80〜約150nm、または約90〜約150nm、または約100〜約150nm、または約110〜約150nm、または約120〜約150nmの直径を有するナノ粒子を含むことができる。
ポリマー
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、ポリマーのマトリックスと治療剤とを含むことができる。いくつかの実施形態では、治療剤および/または標的化部分(すなわち低分子量リガンド)は、ポリマーマトリックスの少なくとも一部分に会合可能である。たとえば、いくつかの実施形態では、標的化部分(たとえばリガンド)は、ポリマーマトリックスの表面と共有結合可能である。いくつかの実施形態では、共有結合はリンカーにより媒介される。治療剤は、ポリマーマトリックスの表面との会合、その内部へのカプセル化、それによる包囲、および/またはその全体にわたる分散が可能である。
多種多様なポリマーおよびそれからの粒子の形成方法は、薬剤送達の技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも2種の高分子を含むナノ粒子に関する。第1の高分子は、低分子量リガンド(たとえば標的化部分)に結合された第1のポリマーを含み、かつ第2の高分子は、標的化部分に結合されない第2のポリマーを含む。ナノ粒子は、任意選択で、1種以上の追加の非機能化ポリマーを含むことができる。
任意の好適なポリマーを開示されたナノ粒子で使用することが可能である。ポリマーは、天然ポリマーまたは非天然(合成)ポリマーとすることができる。ポリマーは、ホモポリマーとすることができるかまたは2種以上のモノマーを含むコポリマーとすることができる。配列に関して、コポリマーは、ランダム配列、ブロック配列とすることができるか、またはランダム配列とブロック配列との組合せを含むことができる。典型的には、ポリマーは有機ポリマーである。
本明細書で用いられる「ポリマー」という用語は、当技術分野で用いられるその通常の意味が与えられる。すなわち、分子構造は、共有結合により接続された1つ以上の繰返し単位(モノマー)を含む。繰返し単位はすべて同一とすることができるか、またはいくつかの場合には、2種以上の繰返し単位がポリマー内に存在するかもしれない。いくつかの場合には、ポリマーは、生物学的に誘導可能なもの、すなわち、バイオポリマーである。限定されるものではないが、例としては、ペプチドまたはタンパク質が挙げられる。いくつかの場合には、追加の部分は、ポリマー、たとえば、以下に記載されるような生物学的部分に存在していてもよい。2種以上の繰返し単位がポリマー内に存在する場合、ポリマーは「コポリマー」であると言われる。ポリマーを利用する実施形態のいずれでも、利用されているポリマーはいくつかの場合にはコポリマーとすることができることを理解すべきである。コポリマーを形成する繰返し単位は、任意の方式で配置されていてもよい。たとえば、繰返し単位は、ランダムな順序で、交互の順序で、またはブロックコポリマーとして、すなわち、それぞれ第1の繰返し単位(たとえば第1のブロック)を含む1つ以上の領域、それぞれ第2の繰返し単位(たとえば第2のブロック)を含む1つ以上の領域などを含んで、配置されていてもよい。ブロックコポリマーは、2個(ジブロックコポリマー)、3個(トリブロックコポリマー)、またはそれ以上の数の個別ブロックを有することができる。
開示された粒子はコポリマーを含むことができる。コポリマーは、いくつかの実施形態では、2種以上のポリマーが通常は共有結合で一体化されることにより互いに会合された2種以上のポリマー(たとえば、本明細書に記載のもの)を表す。したがって、コポリマーは、一体的にコンジュゲートされてブロックコポリマーを形成した第1のポリマーと第2のポリマーとを含むことができる。第1のポリマーは、ブロックコポリマーの第1のブロックとすることができるとともに、第2のポリマーは、ブロックコポリマーの第2のブロックとすることができる。ブロックコポリマーは、いくつかの場合には、複数のブロックのポリマーを含有することができる及び本明細書で用いられる「ブロックコポリマー」は、単一の第1のブロックと単一の第2のブロックとのみを有するブロックコポリマーのみに限定されるものではないことが当業者であれば理解されよう。たとえば、ブロックコポリマーは、第1のポリマーを含む第1のブロック、第2のポリマーを含む第2のブロック、第3のポリマーまたは第1のポリマーを含む第3のブロックなどを含むことができる。いくつかの場合には、ブロックコポリマーは、第1のポリマーの任意の数の第1のブロック、第2のポリマーの任意の数の第2のブロック(ある特定の場合には、第3のブロック、第4のブロックなど)を含有することができる。そのほかに、ブロックコポリマーは、いくつかの場合には、他のブロックコポリマーからも形成可能であることに留意すべきである。たとえば、第1のブロックコポリマーを他のポリマー(ホモポリマー、バイオポリマー、他のブロックコポリマーなどとすることができる)にコンジュゲートして複数種のブロックを含有する新しいブロックコポリマーを形成したり、かつ/または他の部分(たとえば非ポリマー部分)にコンジュゲートすることができる。
いくつかの実施形態では、ポリマー(たとえばコポリマー、たとえばブロックコポリマー)は両親媒性とすることができる。すなわち、親水性部分と疎水性部分とを有していてもよいし、または比較的親水性部分と比較的疎水性部分とを有していてもよい。親水性ポリマーは、一般に水を求引するものであり、かつ疎水性ポリマーは、一般に水を反撥するものである。親水性ポリマーまたは疎水性ポリマーは、たとえば、ポリマーのサンプルを調製してその水との接触角を測定することにより同定可能である(典型的には、ポリマーは60°未満の接触角を有し、一方、疎水性ポリマーは約60°超の接触角を有するであろう)。いくつかの場合には、2種以上のポリマーの親水性は互いを基準にして測定してもよい。すなわち、第1のポリマーは第2のポリマーよりも親水性とすることができる。たとえば、第1のポリマーは第2のポリマーよりも小さい接触角を有していてもよい。
一群の実施形態では、本明細書で意図されるポリマー(たとえばコポリマー、たとえばブロックコポリマー)は、生体適合性ポリマー、すなわち、典型的には生存被験者に挿入または注入した場合に有害反応を誘発しないポリマー、たとえば、有意な炎症および/またはたとえばT細胞反応を介する免疫系によるポリマーの急性拒絶を伴わないポリマーを含む。したがって、本明細書で意図される治療用粒子は非免疫原性とすることができる。本明細書で用いられる非免疫原性という用語は、通常は循環抗体、T細胞、または反応性免疫細胞を誘導しないかまたはごくわずかなレベルで誘導しかつ通常は個体において自己免疫反応を誘発しない天然の状態の内因性成長因子について言及する。
生体適合性とは、典型的には、免疫系の少なくとも一部による材料の急性拒絶について言及するものである。すなわち、被験者内に留置された非生体適合性材料は、免疫系による材料の拒絶が適正に制御できないほど重篤でありかつしばしば材料を被験者から除去しなければならないほどである免疫反応を被験者において誘発する。生体適合性を決定する簡易検査の1つは、インビトロでポリマーを細胞に暴露してもよい。すなわち、生体適合性ポリマーとは、典型的には、中程度の濃度で、たとえば、50マイクログラム/106細胞の濃度で有意な細胞死をもたらさないポリマーのことである。たとえば、生体適合性ポリマーは、線維芽細胞や上皮細胞などの細胞に暴露された場合、たとえ貪食されたりさもなければかかる細胞により取り込まれたりしても約20%未満の細胞死を引き起こすかもしれない。種々の実施形態に役立つ生体適合性ポリマーの例としては、限定されるものではないが、ポリジオキサノン(PDO)、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(グリセロールセバケート)、ポリグリコリド(すなわちポリ(グリコール)酸)(PGA)、ポリラクチド(すなわちポリ(乳)酸)(PLA)、ポリ(乳)酸−co−ポリ(グリコール)酸(PLGA)、ポリカプロラクトン、またはこれらのおよび/もしくは他のポリマーを含むコポリマーもしくは誘導体が挙げられる。
ある特定の実施形態では、意図される生体適合性ポリマーは生分解性とすることができる。すなわち、ポリマーは、生体内などの生理学的環境内で化学的および/または生物学的に分解されうる。本明細書で用いられる場合、「生分解性」ポリマーとは、細胞に導入されたときに細胞機構(生物学的に分解可能)によりおよび/または加水分解などの化学プロセス(化学的に分解可能)により細胞に有意な傷害作用を及ぼすことなく細胞による再使用または処分が可能な成分に分解されるポリマーのことである。一実施形態では、生分解性ポリマーおよびその分解副産物は生体適合性とすることができる。
本明細書に開示された粒子は、PEGを含有するものまたは含有しないものとすることができる。そのほかに、ある特定の実施形態は、ポリ(エステル−エーテル)を含有するコポリマー、たとえば、エステル結合(たとえば、R−C(O)−O−R’結合)およびエーテル結合(たとえば、R−O−R’結合)により連結された繰返し単位を有するポリマーに関するものとすることができる。いくつかの実施形態では、カルボン酸基を含有する加水分解性ポリマーなどの生分解性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)繰返し単位にコンジュゲートさせてポリ(エステル−エーテル)を形成することができる。ポリ(エチレングリコール)繰返し単位を含有するポリマー(たとえばコポリマー、たとえばブロックコポリマー)は、「PEG化」ポリマーとしても参照することができる。
たとえば、意図されるポリマーは、水への暴露時に(たとえば被験者内で)自然に加水分解するものであってもよいし、またはポリマーは、熱(たとえば約37℃の温度)への暴露時に分解するものであってもよい。ポリマーの分解は、使用されるポリマーまたはコポリマーに依存してさまざまである速度で起こるかもしれない。たとえば、ポリマーの半減期(ポリマーの50%がモノマーおよび/または他の非ポリマー部分に分解される時間)は、ポリマーに依存して、何日間、何週間、何ヵ月間、または何年間かとすることができる。ポリマーは、たとえば、酵素活性または細胞機構により、いくつかの場合には、たとえば、リゾチーム(たとえば、比較的低いpHを有するもの)への暴露により、生物学的に分解することができる。いくつかの場合には、ポリマーは、モノマーおよび/または細胞に有意な傷害作用を及ぼすことなく細胞による再使用もしくは処分が可能な他の非ポリマー部分に分解されうる(たとえば、ポリラクチドは加水分解されて乳酸を形成することができ、ポリグリコリドは加水分解されてグリコール酸を形成することができるなど)。
いくつかの実施形態では、ポリマーは、乳酸単位とグリコール酸単位とを含むコポリマー、たとえば、本明細書ではまとめて「PLGA」として参照されるポリ(乳酸−co−グリコール酸)およびポリ(ラクチド−co−グリコリド)を含めて、ポリエステル、ならびに本明細書では「PGA」として参照されるグリコール酸単位を含むホモポリマー、および本明細書ではまとめて「PLA」として参照されるポリL−乳酸、ポリD−乳酸、ポリD,L−乳酸、ポリL−ラクチド、ポリD−ラクチド、ポリD,L−ラクチドなどの乳酸単位を含むホモポリマーとすることができる。いくつかの実施形態では、例示的なポリエステルとしては、たとえば、ポリヒドロキシ酸、ラクチドおよびグリコリドのPEG化ポリマーおよびPEG化コポリマー(たとえば、PEG化PLA、PEG化PGA、PEG化PLGA、およびそれらの誘導体)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリエステルとしては、たとえば、ポリアンヒドリド、ポリ(オルトエステル)PEG化ポリ(オルトエステル)、ポリ(カプロラクトン)、PEG化ポリ(カプロラクトン)、ポリリシン、PEG化ポリリシン、ポリ(エチレンイミン)、PEG化ポリ(エチレンイミン)、ポリ(L−ラクチド−co−L−リシン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)、ポリ[α−(4−アミノブチル)−L−グリコール酸]、およびそれらの誘導体が挙げられる。
いくつかの実施形態では、ポリマーはPLGAとすることができる。PLGAは、乳酸とグリコール酸との生体適合性かつ生分解性のコポリマーであり、PLGAの種々の形態は、乳酸:グリコール酸の比により特徴付け可能である。乳酸は、L−乳酸、D−乳酸、またはD,L−乳酸とすることができる。PLGAの分解速度は、乳酸−グリコール酸の比を変化させることにより調整可能である。いくつかの実施形態では、PLGAは、約85:15、約75:25、約60:40、約50:50、約40:60、約25:75、または約15:85の乳酸:グリコール酸の比により特徴付け可能である。いくつかの実施形態では、粒子中のポリマー(たとえば、PLGAブロックコポリマーまたはPLGA−PEGブロックコポリマー)の乳酸モノマー対グリコール酸モノマーの比は、種々のパラメーターを最適化するように選択することができる。たとえば、水の取込み、治療剤の放出、および/またはポリマーの分解速度を最適化することが可能である。
いくつかの実施形態では、ポリマーは1種以上のアクリルポリマーとすることができる。ある特定の実施形態では、アクリルポリマーとしては、たとえば、アクリル酸およびメタクリル酸のコポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸)、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、グリシジルメタクリレートコポリマー、ポリシアノアクリレートおよび以上のポリマーの1種以上を含む組合せが挙げられる。アクリルポリマーは、低含有率の第四級アンモニウム基を有するアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの完全重合コポリマーを含むことができる。
いくつかの実施形態では、ポリマーはカチオン性ポリマーとすることができる。一般に、カチオン性ポリマーは、核酸(たとえば、DNA、RNA、またはそれらの誘導体)の負荷電鎖を濃縮および/または保護することが可能である。アミン含有ポリマー、たとえば、ポリ(リシン)、ポリエチレンイミン(PEI)、およびポリ(アミドアミン)のデンドリマーは、いくつかの実施形態では、開示された粒子での使用が意図される。
いくつかの実施形態では、ポリマーは、カチオン性側鎖を有する分解性ポリエステルとすることができる。これらのポリエステルの例としては、ポリ(L−ラクチド−co−L−リシン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)が挙げられる。
PEGは、末端に存在することができるとともに、たとえば、PEGがリガンドにコンジュゲートされない場合、末端基を含んでいてもよい。たとえば、PEGは、ヒドロキシル基、メトキシ基もしくは他のアルコキシル基、メチル基もしくは他のアルキル基、アリール基、カルボン酸、アミン基、アミド基、アセチル基、グアニジノ基、またはイミダゾール基が末端に存在することができる。他の意図される末端基としては、アジド部分、アルキン部分、マレイミド部分、アルデヒド部分、ヒドラジド部分、ヒドロキシルアミン部分、アルコキシアミン部分、またはチオール部分が挙げられる。
たとえば、EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)とNHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)とを用いてアミンが末端に存在するPEG基にポリマーを反応させることにより、開環重合技術(ROMP)などにより、ポリマーをPEG化する方法および技術については、当業者の知るところであろう。
一実施形態では、本明細書に開示さるように、有効な治療を行うために、ポリマーの分子量(またはたとえばコポリマーの異なるブロックのたとえば分子量比)を最適化することが可能である。たとえば、ポリマーの分子量は、粒子の分解速度(たとえば、生分解性ポリマーの分子量を調整可能である場合)、溶解度、水の取込み、および薬剤の放出速度に影響を及ぼすかもしれない。たとえば、ポリマーの分子量(またはたとえばコポリマーの異なるブロックのたとえば分子量比)は、治療される被験者において粒子が合理的な時間内(数時間から1〜2週間、3〜4週間、5〜6週間、7〜8週間などまでに及ぶ)で生分解するように調整可能である。
開示された粒子は、たとえば、PEGとPL(G)Aとのジブロックコポリマーを含むことができる。たとえば、PEG部分は、約1,000〜20,000、たとえば約2,000〜20,000、たとえば約2〜約10,000の数平均分子量を有することができるとともに、PL(G)A部分は、約5,000〜約20,000または約5,000〜100,000、たとえば約20,000〜70,000、たとえば約15,000〜50,000の数平均分子量を有することができる。
たとえば、本明細書には、約10〜約99重量パーセントのポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーもしくはポリ(乳)酸−co−ポリ(グリコール)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー、または約20〜約80重量パーセント、約40〜約80重量パーセント、約30〜約50重量パーセント、もしくは約70〜約90重量パーセントのポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーもしくはポリ(乳)酸−co−ポリ(グリコール)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーを含む例示的な治療用ナノ粒子が開示されている。例示的なポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、約15〜約20Daまたは約10〜約25kDaの数平均分子量のポリ(乳)酸と約4〜約6または約2kDa〜約10kDaの数平均分子量のポリ(エチレン)グリコールとを含むことができる。
いくつかの実施形態では、ポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、約0.6〜約0.95、いくつかの実施形態では約0.7〜約0.9、いくつかの実施形態では約0.6〜約0.8、いくつかの実施形態では約0.7〜約0.8、いくつかの実施形態では約0.75〜約0.85、いくつかの実施形態では約0.8〜約0.9、およびいくつかの実施形態では約0.85〜約0.95のポリ(乳)酸数平均分子量分率を有することができる。ポリ(乳)酸数平均分子量分率は、コポリマーのポリ(乳)酸成分の数平均分子量をポリ(乳)酸成分の数平均分子量とポリ(エチレン)グリコール成分の数平均分子量との和で除算することにより計算され得ることを理解すべきである。
開示されたナノ粒子は、任意選択で、約1〜約50重量パーセントのポリ(乳)酸もしくはポリ(乳)酸−co−ポリ(グリコール)酸(PEGを含まない)を含むことができるか、または任意選択で、約1〜約50重量パーセントもしくは約10〜約50重量パーセントもしくは約30〜約50重量パーセントのポリ(乳)酸もしくはポリ(乳)酸−co−ポリ(グリコール)酸を含むことができる。たとえば、ポリ(乳)酸またはポリ(乳)酸−co−ポリ(グリコール)酸は、約5〜約15kDaまたは約5〜約12kDaの数平均分子重量を有することができる。例示的なPLAは、約5〜約10Daの数平均分子量を有することができる。例示的なPLGAは、約8〜約12Daの数平均分子量を有することができる。
治療用ナノ粒子は、いくつかの実施形態では、約10〜約30重量パーセント、いくつかの実施形態では約10〜約25重量パーセント、いくつかの実施形態では約10〜約20重量パーセント、いくつかの実施形態では約10〜約15重量パーセント、いくつかの実施形態では約15〜約20重量パーセント、いくつかの実施形態では約15〜約25重量パーセント、いくつかの実施形態では約20〜約25重量パーセント、いくつかの実施形態では約20〜約30重量パーセント、もしくはいくつかの実施形態では約25〜約30重量パーセントのポリ(エチレン)グリコールを含有することができる。ポリ(エチレン)グリコールは、ポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー、ポリ(乳)酸−co−ポリ(グリコール)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー、またはポリ(エチレン)グリコールホモポリマーとして存在することができる。ある特定の実施形態では、ナノ粒子のポリマーは脂質にコンジュゲート可能である。ポリマーは、たとえば脂質末端PEGとすることができる。
標的化部分
本明細書には、いくつかの実施形態では、任意選択の標的化部分、すなわち、膜成分、細胞表面レセプター、抗原などの生物学的存在物に結合または他の形で会合させることができる部分を含むことができるナノ粒子が提供される。粒子の表面上に存在する標的化部分は、特定の標的部位、たとえば、腫瘍、疾患部位、組織、器官、ある種の細胞などに粒子を局在化させることができる。このため、ナノ粒子は、その場合、「標的特異的」とすることができる。いくつかの場合には、薬剤または他のペイロードは、次いで粒子から放出されて特定の標的部位と局所的に相互作用させることができる。
一実施形態では、開示されたナノ粒子は標的化部分(すなわち低分子量リガンド)を含む。本明細書で用いられる「結合(bindまたはbinding)」という用語は、典型的には、限定されるものではないが生化学的、生理学的、および/または化学的な相互作用をはじめとする特異的または非特異的な結合または相互作用に起因して、相互の親和性または結合能を呈する対応する分子対間またはその一部間の相互作用を意味する。「生物学的結合」とは、タンパク質、核酸、糖タンパク質、炭水化物、ホルモンなどを含む分子対間で起こる相互作用のタイプを規定するものである。「結合パートナー」という用語は、特定の分子との結合を起こすことができる分子を意味する。「特異的結合」とは、他の類似の生物学的存在物よりも実質的に高度に結合パートナー(または限られた数の結合パートナー)に結合可能なまたはそれを認識可能なポリヌクレオチドなどの分子を意味する。一群の実施形態では、標的化部分は、約1マイクロモル未満、少なくとも約10マイクロモル、または少なくとも約100マイクロモルの親和性(解離定数により測定される)を有する。
たとえば、標的化部分は、使用する標的化部分に依存して、被験者の生体内の腫瘍(たとえば固形腫瘍)、疾患部位、組織、器官、ある種の細胞などに粒子を局在化させることができる。たとえば、低分子量リガンドは、固形腫瘍、たとえば、乳房腫瘍または前立腺腫瘍または癌細胞に局在化させることができる。被験者は、ヒトまたは非ヒト動物とすることができる。被験者の例としては、限定されるものではないが、イヌ、ネコ、ウマ、ロバ、ウサギ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス、モルモット、ハムスター、霊長動物、ヒトなどの哺乳動物が挙げられる。
意図される標的化部分は低分子を含むことができる。ある特定の実施形態では、「低分子」という用語は、天然に存在するかまたは人工的に(たとえば化学合成により)形成されるかにかかわらず、比較的低分子量を有しかつタンパク質でもポリペプチドでも核酸でもでない有機化合物を意味する。低分子は、典型的には複数の炭素−炭素結合を有する。ある特定の実施形態では、低分子は、約2000g/mol未満のサイズである。いくつかの実施形態では、低分子は、約1500g/mol未満または約1000g/mol未満である。いくつかの実施形態では、低分子は、約800g/mol未満または約500g/mol未満、たとえば約100g/mol〜約600g/molまたは約200g/mol〜約500g/molである。
いくつかの実施形態では、低分子量リガンドは、式I、II、III、またはIV:
で示されるもの、およびそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体であり、
式中、mおよびnは、それぞれ独立して、0、1、2、または3であり、pは、0または1であり、
R1、R2、R4、およびR5は、それぞれ独立して、置換または非置換のアルキル(たとえば、C1〜10−アルキル、C1〜6−アルキル、またはC1〜4−アルキル)、置換または非置換のアリール(たとえば、フェニルまたはピリジニル)、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択され、かつR3は、HまたはC1〜6−アルキル(たとえばCH3)である。
式I、II、III、およびIVで示される化合物では、R1、R2、R4、またはR5は、ナノ粒子への結合点、たとえば、開示されたナノ粒子の一部を形成するポリマーたとえばPEGへの結合点を含む。結合点は、共有結合、イオン結合、水素結合、化学吸着および物理吸着を含む吸着により形成される結合、ファンデルワールス結合または分散力により形成される結合により形成することができる。たとえば、R1、R2、R4、またはR5がアニリン基またはC1〜6−アルキル−NH2基として定義される場合、これらの官能基の任意の水素(たとえばアミノ水素)は、低分子量リガンドがナノ粒子のポリマーマトリックス(たとえば、ポリマーマトリックスのPEGブロック)に共有結合されるように除去可能である。本明細書で用いられる場合、「共有結合」という用語は、少なくとも1つの電子対を共有することにより形成される2個の原子間の結合を意味する。
式I、II、III、またはIVの特定の実施形態では、R1、R2、R4、およびR5は、それぞれ独立して、C1〜6−アルキルもしくはフェニルまたはC1〜6−アルキルもしくはフェニルの任意の組合せであり、これらは、独立して、OH、SH、NH2、またはCO2Hで1回以上置換され、かつアルキル基は、N(H)、S、またはOが介在していてもよい。他の実施形態では、R1、R2、R4、およびR5は、それぞれ独立して、CH2−Ph、(CH2)2−SH、CH2−SH、(CH2)2C(H)(H2)CO2H、CH2C(H)(NH2)CO2H、CH(NH2)CH2CO2H、(CH2)2C(H)(SH)CO2H、CH2−N(H)−Ph、O−CH2−Ph、またはO−(CH2)2−Phであり、各Phは、独立して、OH、NH2、CO2H、またはSHで1回以上置換されていてもよい。これらの式では、NH2基、OH基、またはSH基は、ナノ粒子への共有結合点(たとえば、−N(H)−PEG、−O−PEG、または−S−PEG)として機能する。
例示的なリガンドは、
およびそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体を含む。式中、NH2基、OH基、またはSH基は、ナノ粒子への共有結合点(たとえば、−N(H)−PEG、−O−PEG、もしくは−S−PEG)として機能するか、または
は、ナノ粒子への結合点を表し、nは、1、2、3、4、5、または6であり、Rは、独立して、NH2、SH、OH、CO2H、C1〜6−アルキル(NH2、SH、OH、またはCO2Hで置換されたもの)、およびフェニル(NH2、SH、OH、またはCO2Hで置換されたもの)からなる群から選択され、かつRは、ナノ粒子への共有結合点(たとえば、−N(H)−PEG、−S−PEG、−O−PEG、またはCO2−PEG)として機能する。これらの化合物は、NH2、SH、OH、CO2H、C1〜6−アルキル(NH2、SH、OH、またはCO2Hで置換されたもの)、またはフェニル(NH2、SH、OH、またはCO2Hで置換されたもの)でさらに置換していてもよく、これらの官能基は、ナノ粒子への共有結合点としても機能することができる。
いくつかの実施形態では、前立腺癌腫瘍や乳癌腫瘍などの固形腫瘍に関連する細胞を標的とするのに使用することができる低分子標的化部分は、PSMAペプチダーゼ阻害剤、たとえば、2−PMPA、GPI5232、VA−033、フェニルアルキルホスホンアミデート、ならびに/またはそれらのアナログおよび誘導体を含む。いくつかの実施形態では、前立腺癌腫瘍に関連する細胞を標的とするのに使用することができる低分子標的化部分は、チオール誘導体およびインドールチオール誘導体、たとえば、2−MPPAおよび3−(2−メルカプトエチル)−1H−インドール−2−カルボン酸誘導体を含む。いくつかの実施形態では、前立腺癌腫瘍に関連する細胞を標的とするのに使用することができる低分子標的化部分は、ヒドロキサメート誘導体を含む。いくつかの実施形態では、前立腺癌腫瘍に関連する細胞を標的とするのに使用することができる低分子標的化部分は、ZJ43、ZJ11、ZJ17、ZJ38、ならびに/またはそれらのアナログおよび誘導体、PBDA−およびウレア系阻害剤、アンドロゲンレセプター標的化剤(ARTA)、ポリアミン、たとえば、プトレシン、スペルミン、およびスペルミジン、NAAGペプチダーゼまたはNAALADアーゼとしても知られる酵素グルタメートカルボキシラーゼII(GCPII)の阻害剤を含む。
他の実施形態では、標的化部分は、Her2、EGFR、葉酸レセプター、またはtollレセプターを標的とするリガンドとすることができる。他の実施形態では、標的化部分は、ホレート、葉酸、またはEGFR結合分子である。
たとえば、意図される標的化部分は、核酸、ポリペプチド、糖タンパク質、炭水化物、または脂質を含むことができる。たとえば、標的化部分は、細胞型特異的マーカーに結合する核酸標的化部分(たとえばアプタマー、たとえばA10アプタマー)とすることができる。一般に、アプタマーは、ポリペプチドなどの特定の標的に結合するオリゴヌクレオチド(たとえば、DNA、RNA、またはそれらのアナログまたは誘導体)である。いくつかの実施形態では、標的化部分は、細胞表面レセプターに対する天然に存在するまたは合成のリガンド、たとえば、成長因子、ホルモン、LDL、トランスフェリンなどとすることができる。標的化部分は抗体とすることができるとともに、この用語は抗体フラグメンとを含むことが意図される。抗体の特徴的部分、一本鎖標的化部分は、たとえばファージディスプレイなどの手順を用いて同定可能である。
標的化部分は、約50残基までの長さを有する標的化ペプチドまたは標的化ペプチドミメティックとすることができる。たとえば、標的化部分は、アミノ酸配列AKERC、CREKA、ARYLQKLN、またはAXYLZZLNを含むことができる。式中、XおよびZは、可変アミノ酸もしくは保存変異体またはそれらのペプチドミメティックである。特定の実施形態では、標的化部分、アミノ酸配列AKERC、CREKA、ARYLQKLN、またはAXYLZZLNを含むペプチドである。式中、XおよびZは、可変アミノ酸であり、かつ20、50、または100残基未満の長さを有する。CREKA(CysArgGluLysAla)ペプチドもしくはそのペプチドミメティックまたはオクタペプチドAXYLZZLNもまた、標的化部分として意図され、コラーゲンIVとの結合もしくはそれとの複合体の形成を行うかまたは組織基底膜(たとえば、血管の基底膜)を標的とするペプチドもしくは保存変異体またはそれらのペプチドミメティックも同様である。例示的な標的化部分は、ICAM(細胞間接着分子、たとえばICAM−1)を標的とするペプチドを含む。
本明細書に開示された標的化部分は、いくつかの実施形態では、開示されたポリマーまたはコポリマー(たとえば、PLA−PEG)にコンジュゲート可能であり、かかるポリマーコンジュゲートは、開示されたナノ粒子の一部を形成することができる。
いくつかの実施形態では、治療用ナノ粒子は、ポリマー−薬剤コンジュゲートを含むことができる。たとえば、薬剤は、開示されたポリマーまたはコポリマー(たとえば、PLA−PEG)にコンジュゲート可能であり、かかるポリマー−薬剤コンジュゲートは、開示されたナノ粒子の一部を形成することができる。たとえば、開示された治療用ナノ粒子は、任意選択で、約0.2〜約30重量パーセントのPLA−PEGまたはPLGA−PEGを含むことができる。PEGは薬剤で機能化される(たとえば、PLA−PEG−薬剤)。
開示されたポリマーコンジュゲート(たとえば、ポリマー−リガンドコンジュゲート)は、任意の好適なコンジュゲーション技術を用いて形成することができる。例として、2種の化合物、たとえば、標的化部分または薬剤と生体適合性ポリマー(たとえば、生体適合性ポリマーとポリ(エチレングリコール))は、EDC−NHS化学(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩およびN−ヒドロキシスクシンイミド)、チオール官能基化、アミン官能基化、または同様に官能基化されたポリエーテルの一方の末端にコンジュゲート可能なマレイミドまたはカルボン酸が関与する反応などの技術を用いて一体的にコンジュゲートさせることができる。標的化部分または薬剤をポリマーにコンジュゲートすることによるポリマー−標的化部分コンジュゲートまたはポリマー−薬剤コンジュゲートの形成は、有機溶媒、たとえば、限定されるものではないが、ジクロロメタン、アセトニトリル、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトンなどの中で行うことが可能である。特異的反応条件は、当業者であればルーチンの実験の域を出ることなく決定可能である。
他の一連の実施形態では、コンジュゲーション反応は、カルボン酸官能基を含むポリマー(たとえば、ポリ(エステル−エーテル)化合物)と、アミンを含むポリマーまたは他の部分(たとえば、標的化部分または薬剤)とを反応させることにより行うことができる。例として、低分子量リガンドなどの標的化部分またはダサチニブなどの薬剤をアミンと反応させてアミン含有部分を形成し、次いで、それをポリマーのカルボン酸にコンジュゲートすることが可能である。かかる反応は単一工程反応として行うことができる。すなわち、コンジュゲーションは、N−ヒドロキシスクシンイミドやマレイミドなどの中間体を用いることなく行われる。いくつかの実施形態では、薬剤をアミン含有リンカーと反応させてアミン含有薬剤を形成し、次いで、それを以上に記載のようにポリマーのカルボン酸にコンジュゲートすることが可能である。アミン含有部分とカルボン酸末端ポリマー(たとえば、ポリ(エステル−エーテル)化合物)との間のコンジュゲーション反応は、一群の実施形態では、有機溶媒、たとえば(限定されるものではないが)、ジクロロメタン、アセトニトリル、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ピリジン、ジオキサン、またはジメチルスルホキシドの中に可溶化されたアミン含有部分を、カルボン酸末端ポリマーを含有する溶液に添加することにより達成することができる。カルボン酸末端ポリマーは、有機溶媒、たとえば、限定されるものではないが、ジクロロメタン、アセトニトリル、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、またはアセトンの中に含ませることができる。アミン含有部分とカルボン酸末端ポリマーとの反応は、いくつかの場合には自然に起こるかもしれない。未コンジュゲート反応剤は、かかる反応後に洗浄除去することができる。また、ポリマーは、溶媒、たとえば、エチルエーテル、ヘキサン、メタノール、エタノールなどの中で沈殿させることができる。ある特定の実施形態では、アルコール含有部分とポリマーのカルボン酸官能基との間でコンジュゲーとを形成することができる。これは、アミンとカルボン酸とのコンジュゲートについて以上に説明したのと同様に達成可能である。
ナノ粒子の調製
本開示の他の態様は、開示されたナノ粒子の作製システムおよび作製方法に関する。いくつかの実施形態では、2つ以上の異なるポリマー(たとえばコポリマー、たとえばブロックコポリマー)をさまざまな比で用いてポリマー(たとえばコポリマー、たとえばブロックコポリマー)から粒子を作製することにより、粒子の性質が制御される。たとえば、1種のポリマー(たとえばコポリマー、たとえばブロックコポリマー)は、低分子量リガンドを含むことができるが、他のポリマー(たとえばコポリマー、たとえばブロックコポリマー)は、その生体適合性および/または得られる粒子の免疫原性をする制御するその能力に関して選択することができる。
いくつかの実施形態では、ナノ粒子の調製プロセス(たとえば、以下で考察されるナノ沈殿プロセスまたはナノエマルジョンプロセス)で使用される溶媒は、疎水性の酸を含むことができる。これにより、プロセスを用いて調製されるナノ粒子に有利な性質を付与することができる。以上で考察したように、いくつかの場合には、疎水性の酸は、開示されたナノ粒子の薬剤負荷を改善することができる。さらに、いくつかの場合には、疎水性の酸を用いることにより開示されたナノ粒子の制御放出性を改善することができる。いくつかの場合には、疎水性の酸は、たとえば、プロセスで使用される有機溶液または水性溶液に組み込むことができる。一実施形態では、薬剤は、有機溶液および疎水性の酸および任意選択で1種以上のポリマーと組み合わされる。薬剤を溶解するために使用される溶液中の疎水性の酸の濃度は以上で考察されており、たとえば、約1重量パーセント〜約30重量パーセントなどとすることができる。
一群の実施形態では、粒子は、1種以上のポリマーを含む溶液を提供する工程と、溶液をポリマー非溶媒に接触させて粒子を生成する工程と、により形成される。溶液は、ポリマー非溶媒に対して混和性または非混和性とすることができる。たとえば、アセトニトリルなどの水混和性液体は、ポリマーを含有することができるとともに、たとえば、アセトニトリルを制御速度で水中に注加することによりアセトニトリルをポリマー非溶媒である水に接触させると、粒子が形成される。その際、溶液中に含有されるポリマーは、ポリマー非溶媒に接触させると沈殿してナノ粒子などの粒子を形成することができる。2種の液体は、周囲温度および周囲圧力で一方が他方に少なくとも10重量%のレベルまで可溶でない場合、互いに「非混和性」または「混和性でない」と言われる。典型的には、有機溶液(たとえば、ジクロロメタン、アセトニトリル、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ピリジン、ジオキサン、ジメチルスルホキシドなど)および水性液体(たとえば、水、または溶解された塩もしくは他の種、細胞もしくは生体媒質、エタノールなどを含有する水)は、互いに非混和性である。たとえば、第1の溶液を第2の溶液中に(好適な割合または速度で)注加することができる。いくつかの場合には、第1の溶液を非混和性の第2の液体に接触させるとナノ粒子などの粒子が形成することができる。たとえば、第1の溶液を第2の液体中に注加しながら接触によりポリマーを沈殿させるとナノ粒子が形成され、いくつかの場合には、たとえば、導入速度を注意深く制御して比較的低速に維持した場合、ナノ粒子が形成することができる。かかる粒子形成の制御は、当業者であればルーチンの実験のみを用いて容易に最適化可能である。
表面機能性、表面電荷、サイズ、ゼータ(ζ)電位、疎水性、免疫原性制御能などの性質は、開示されたプロセスを用いて高度に制御することができる。たとえば、粒子のライブラリーを合成してスクリーニングし、粒子の表面上に存在する特異的密度の部分(たとえば、低分子量リガンド)を粒子にもたせる特定比のポリマーを有する粒子を同定することができる。これにより、過度の労力をかけることなく、1つ以上の特異的性質を有する粒子、たとえば、特異的サイズおよび特異的表面密度の部分を有する粒子を調製されることが可能になる。したがって、ある特定の実施形態は、かかるライブラリーを用いたスクリーニング技術、さらにはかかるライブラリーを用いて同定された任意の粒子に関する。そのほかに、同定は、任意の好適な方法により行うことができる。たとえば、同定は、直接的もしくは間接的とすることができるか、または定量的もしくは定性的に行うことができる。
いくつかの実施形態では、すでに形成されたナノ粒子は、リガンド機能化ポリマーコンジュゲートの作製について記載したのと類似した手順を用いて標的化部分で機能化される。たとえば、第1のコポリマー(PLGA−PEG、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)およびポリ(エチレングリコール))をプロトン化可能な窒素含有治療剤と混合して粒子を形成する。次いで、粒子を低分子量リガンドに会合させて癌の治療に使用可能なナノ粒子を形成する。ナノ粒子のリガンド表面密度を制御することによりナノ粒子の治療特性を変化させるために、粒子をさまざまな量の低分子量リガンドに会合させることが可能である。さらに、たとえば、分子量、PEGの分子量、ナノ粒子の表面電荷などのパラメーターを制御することにより、非常に精密に制御された粒子が得られる。
他の実施形態では、ナノエマルジョンプロセス、たとえば、図1、2A、および2Bに示されるプロセスが提供される。たとえば、プロトン化可能な窒素含有治療剤(たとえばダサチニブ)、疎水性の酸、第1のポリマー(たとえば、いずれも任意選択でリガンドに結合することができるPLA−PEGやPLGA−PEGなどのジブロックコポリマー)、および任意選択の第2のポリマー(たとえば、(PL(G)A−PEGまたはPLA)を有機溶液と組み合わせて、第1の有機相を形成することができる。かかる第1の相は、約1〜約50重量%の固体、約5〜約50重量%の固体、約5〜約40重量%の固体、約1〜約15重量%の固体、または約10〜約30重量%の固体を含むことができる。第1の有機相を第1の水性溶液と組み合わせて第2の相を形成することができる。有機溶液は、たとえば、トルエン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、エチルアセテート、イソプロピルアルコール、イソプロピルアセテート、ジメチルホルムアミド、メチレンクロリド、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、ベンジルアルコール、Tween80、Span80など、およびそれらの組合せを含むことができる。実施形態では、有機相は、ベンジルアルコール、エチルアセテートおよびそれらの組合せを含むことができる。第2の相は、固体が約0.1〜50重量%、約1〜50重量%、約5〜40重量%、または約1〜15重量%とすることができる。水性溶液は、任意選択でナトリウムコレート、エチルアセテート、ポリビニルアセテートをよびベンジルアルコールの1つ以上と組み合わされた水とすることができる。いくつかの実施形態では、水性相のpHは、プロトン化塩基性治療剤のpKaおよび/または疎水性の酸のpKaを基づいて選択することができる。たとえば、ある特定の実施形態では、塩基性治療剤は、プロトン化された場合、第1のpKaを有し、疎水性の酸は、第2のpKaを有し、かつ水性相は、第1のpKaと第2のpKaとの間のpKa単位に等しいpHを有することができる。特定の実施形態では、水性相のpHは、第1のpKaおよび第2のpKaからほぼ等距離にあるpKa単位と等しいものとすることができる。
たとえば、油または有機相では、非溶媒(水)に対して部分的に混和性であるにすぎない溶媒を使用することができる。したがって、十分に低い比で混合した場合および/または有機溶媒であらかじめ飽和させた水を使用した場合、油相は液体状態を維持する。油相は、水性溶液中に乳化することができるとともに、たとえば、ホモジナイザーやソニケーターなどの高エネルギー分散システムを用いて、液体ドロップレットとしてナノ粒子に剪断することができる。「水相」としても知られるエマルジョンの水性部分は、エチルアセテートおよびベンジルアルコールであらかじめ飽和されたナトリウムコレートからなる界面活性剤溶液とすることができる。いくつかの場合には、有機相(たとえば、第1の有機相)は塩基性治療剤を含むことができる。そのほかに、ある特定の実施形態では、水性溶液(たとえば、第1の水性溶液)は実質的に疎水性の酸を含むことができる。他の実施形態では、塩基性治療剤および実質的に疎水性の酸の両方を有機相に溶解させることができる。
第2の相を乳化してエマルジョン相を形成する工程は、たとえば、1工程または2工程の乳化工程で行うことができる。たとえば、一次エマルジョンを調製し、次いで、乳化して微細エマルジョンを形成することができる。一次エマルジョンは、たとえば、単純混合、高圧ホモジナイザー、プローブソニケーター、撹拌子、またはローターステーターホモジナイザーを用いて形成可能である。一次エマルジョンは、たとえば、プローブソニケーターまたは高圧ホモジナイザーを用いて、たとえば、ホモジナイザーに1、2、3回以上通して、微細エマルジョンとして形成することができる。たとえば、高圧ホモジナイザーを使用する場合、使用される圧力は、約30〜約60psi、約40〜約50psi、約1000〜約8000psi、約2000〜約4000psi、約4000〜約8000psi、または約4000〜約5000psi、たとえば、約2000、2500、4000、または5000psiとすることができる。
いくつかの場合には、エマルジョン中のドロップレットの非常に高い表面積対体積比により特徴付け可能な微細エマルジョン条件は、プロトン化可能な窒素含有治療剤および疎水性の酸の溶解度を最大化しかつ所望のHIPを形成するように選択可能である。ある特定の実施形態では、微細エマルジョン条件下で溶存成分の平衡化を非常に迅速に、すなわち、ナノ粒子の凝固よりも速く行うことが可能である。したがって、たとえば、プロトン化可能な窒素含有治療剤と疎水性の酸とのpKa差に基づいてHIPを選択する工程、または微細エマルジョンのpHおよび/またはクエンチ溶液のpHなどの他のパラメーターを調整する工程は、たとえば、ナノ粒子中のプロトン化可能な窒素含有治療剤および/または疎水性の酸の拡散とは対照的なナノ粒子中のHIPの形成を決定付けることにより、ナノ粒子の薬剤負荷および放出性に有意な影響を及ぼすことができる。
いくつかの実施形態では、塩基性治療剤(たとえば、プロトン化可能な窒素含有治療剤)および実質的に疎水性の酸は、第2の相の乳化前に第2の相で組み合わすことができる。いくつかの場合には、塩基性治療剤および実質的に疎水性の酸は、第2の相の乳化前に疎水性イオン対を形成することができる。他の実施形態では、塩基性治療剤および実質的に疎水性の酸は、第2の相の乳化時に疎水性イオン対を形成するかもしれない。たとえば、塩基性治療剤および実質的に疎水性の酸は、第2の相の乳化と実質的に同時に第2の相で組み合わすことができる。たとえば、塩基性治療剤および実質的に疎水性の酸は、個別の溶液(たとえば、2種の実質的に不混和性の溶液)に溶解させることができるとともに、次いで、これは乳化時に組み合わされる。他の例では、塩基性治療剤および実質的に疎水性の酸は、個別の混和性溶液に溶解させることができるとともに、次いで、乳化時に第2の相に供給される。
溶媒の抽出を終了しかつ粒子を凝固させるために、溶媒蒸発または希釈のいずれかを用いてもよい。抽出速度のより良い制御のためにおよびより拡張性のあるプロセスのために、水性クエンチによる溶媒希釈を使用することができる。たとえば、有機溶媒のすべてを溶解させるのに十分な濃度にエマルジョンを冷水中に希釈して、クエンチ相を形成することが可能である。いくつかの実施形態では、クエンチングは、少なくとも部分的には約5℃以下の温度で行うことができる。たとえば、クエンチングで使用される水は、室温(たとえば、約0〜約10℃または約0〜約5℃)未満の温度とすることができる。
ある特定の実施形態では、クエンチは、たとえば、放出プロファイルなどのナノ粒子の性質を改善することにより、または薬剤負荷などのナノ粒子パラメーターを改善することにより、エマルジョン相をクエンチするのに有利なpHを有するように選択することができる。クエンチのpHは、酸もしくは塩基の滴定によりまたはたとえば緩衝剤の適切な選択により、調整することができる。
いくつかの実施形態では、クエンチのpHは、プロトン化塩基性治療剤のpKaおよび/または疎水性の酸のpKaを基づいて選択することができる。たとえば、ある特定の実施形態では、塩基性治療剤は、プロトン化された場合、第1のpKaを有し、疎水性の酸は、第2のpKaを有し、かつエマルジョン相は、第1のpKaと第2のpKaとの間のpKa単位に等しいpHを有する水性溶液でクエンチすることができる。いくつかの実施形態では、得られるクエンチ相もまた、第1のpKaと第2のpKaとの間のpKa単位に等しいpHを有することができる。特定の実施形態では、pHは、第1のpKaおよび第2のpKaからほぼ等距離にあるpKa単位と等しいものとすることができる。
いくつかの実施形態では、クエンチは、約2〜約12、いくつかの実施形態では約3〜約10、いくつかの実施形態では約3〜約9、いくつかの実施形態では約3〜約8、いくつかの実施形態では約3〜約7、いくつかの実施形態では約4〜約8、いくつかの実施形態では約4〜約7、いくつかの実施形態では約4〜約6、いくつかの実施形態では約4〜約5、いくつかの実施形態では約4.2〜約4.8、いくつかの実施形態では約6〜約10、いくつかの実施形態では約6〜約9、いくつかの実施形態では約6〜約8、いくつかの実施形態では約6〜約7のpHを有することができる。ある特定の実施形態では、クエンチは約4.5のpHを有することができる。緩衝溶液のpHは、温度の関数として変化しうることを理解すべきである。とくに明記されていない限り、本明細書で参照される緩衝溶液のpHは23℃のpHである。
いくつかの実施形態では、クエンチは、緩衝剤を含む水性溶液(すなわち緩衝溶液)とすることができる。任意の好適な緩衝剤を使用することができる。緩衝剤の例としては、限定されるものではないが、リン酸、クエン酸、酢酸、ホウ酸、イミダゾール、MES(4−モルホリンエタンスルホン酸)、ビス−トリス(ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン)、ADA(N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸)、ACES(N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸)、PIPES(1,4−ピペラジンジエタンスルホン酸)、MOPSO(3−モルホリノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)、ビス−トリスプロパン(1,3−ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパン)、BES(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、MOPS(3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸)、TES(2−[(2−ヒドロキシlおよびlビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]エタンスルホン酸)、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−エタンスルホン酸)、DIPSO(3−(N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル]アミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)、MOBS(4−(N−モルホリノ)ブタンスルホン酸)、TAPSO(2−ヒドロキシ−3−[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸)、トリズマ(2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール)、HEPPSO(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸))、POPSO(ピペラジン−N,N’−ビス(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸))、TEA(トリエチルアミン)、EPPS(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸)、トリシン(N−[Tris(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン)、Gly−Gly(ジグリシン)、ビシン(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン)、HEPBS(N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(4−ブタンスルホン酸))、TAPS(N−[Tris(ヒドロキシメチル)メチル]−3−アミノプロパンスルホン酸)、AMPD(2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール)、TABS(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−4−アミノブタンスルホン酸)、AMPSO(N−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)、CHES(2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸)、CAPSO(3−(シクロヘキシルアミノ)−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸)、AMP(β−アミノイソブチルアルコール)、CAPS(3−(シクロヘキシルアミノ)−1−プロパンスルホン酸)、CABS(4−(シクロヘキシルアミノ)−1−ブタンスルホン酸)、ならびにそれらの組合せが挙げられる。緩衝剤は酸と塩基とを平衡状態で含むことを理解すべきである(たとえば、酸と共役塩基および/または塩基と共役酸)。したがって、簡潔さを期して、本明細書では、緩衝溶液または緩衝剤は、遊離酸(たとえばリン酸)もしくはその共役塩基(たとえばリン酸イオン)の名称または遊離塩基(たとえばイミダゾール)もしくはその共役酸(たとえばイミダゾリウム)の名称により参照されることをさらに理解すべきであるが、当業者であれば緩衝剤の2種以上の異なるプロトン化種間(たとえば、H3PO4、H2PO4 -、HPO4 2-、およびPO4 3-)に平衡が存在することが理解されよう。いくつかの実施形態では、クエンチは、2種以上の緩衝剤を含むことができる。たとえば、クエンチは、2、3、4、または5種の緩衝剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、クエンチは、リン酸およびクエン酸の混合物を含むことができる。他の実施形態では、クエンチは、ホウ酸、リン酸、および酢酸の混合物(たとえば、所望のpHに調整された0.04M H3BO3、0.04M H3PO4、および0.04M CH3COOHを含むブリトン・ロビンソン緩衝液)を含むことができる。
いくつかの実施形態では、緩衝溶液(すなわち、クエンチ)は、特定のpH範囲内の好適な緩衝能を有することができる。例示的な緩衝溶液のpH範囲は、限定されるものではないが、以下の表Aに提供される。ある特定の実施形態では、緩衝溶液は、約0.001M〜約1M、いくつかの実施形態では約0.001M〜約0.5M、いくつかの実施形態では約0.01M〜約0.5M、いくつかの実施形態では約0.05M〜約0.5M、いくつかの実施形態では約0.1M〜約0.5M、いくつかの実施形態では約0.01M〜約0.2M、いくつかの実施形態では約0.05M〜約0.15M、およびいくつかの実施形態では約0.075M〜約0.125Mの緩衝剤濃度を有することができる。
いくつかの実施形態では、クエンチは、実質的なpH変化に耐えるのに十分な緩衝剤濃度を有することができる。たとえば、クエンチ相は、いくつかの実施形態では、エマルジョン相のpHとの差が1pH単位未満、いくつかの実施形態では0.5pH単位未満、0.2pH単位未満、いくつかの実施形態では、0.1pH単位未満、およびいくつかの実施形態では、0.05pH単位未満であるpHを有することができる。いくつかの実施形態では、クエンチ相のpHは、エマルジョン相(すなわち、クエンチング前)のpHと実質的に同一とすることができる。
いくつかの実施形態では、クエンチ相は、約2〜約12、いくつかの実施形態では約3〜約10、いくつかの実施形態では約3〜約9、いくつかの実施形態では約3〜約8、いくつかの実施形態では約3〜約7、いくつかの実施形態では約4〜約8、いくつかの実施形態では約4〜約7、いくつかの実施形態では約4〜約6、いくつかの実施形態では約4〜約5、いくつかの実施形態では約4〜約6、いくつかの実施形態では約4.2〜約4.8、いくつかの実施形態では約6〜約10、いくつかの実施形態では約6〜約9、いくつかの実施形態では約6〜約8、いくつかの実施形態では約6〜約7のpHを有することができる。ある特定の実施形態では、クエンチ相は約4.6のpHを有することができる。
所望のpHの緩衝溶液(たとえばクエンチ)は、当業者であれば容易に調製可能である。たとえば、緩衝剤を含有する溶液を強酸(たとえばHCl)または強塩基(たとえばNaOH)で調整することにより、所望のpHの緩衝溶液を調製することが可能である。他の選択肢として、弱酸(たとえばクエン酸)とその共役塩基(たとえばクエン酸ナトリウム)とを組み合わせることによりまたは弱塩基(たとえばイミダゾール)とその共役酸(たとえばイミダゾリウムクロリド)とを組み合わせることにより、所望のpHの緩衝溶液を調製することが可能である。当業者であれば、ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式を用いることにより、緩衝溶液の調製で使用する弱酸または弱塩基および対応する共役体の量を決定することが可能である。
ある特定の実施形態では、HIP形成は、たとえば、微細エマルジョンの平衡状態の結果として、乳化時または乳化後に行うことができる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、有機溶性対イオン(すなわち、疎水性の酸)は、HIP形成の結果としてエマルジョンのナノ粒子中への親水性治療剤の拡散を促進可能であると考えられる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、ナノ粒子へのHIPの溶解度がエマルジョンの水性相および/またはクエンチへのHIPの溶解度よりも高いので、HIPはナノ粒子の凝固前にナノ粒子中に残留させることができる。たとえば、塩基性治療剤のpKaと疎水性の酸のpKaとの間のクエンチのpHを選択することにより、イオン化塩基性治療剤と疎水性の酸との形成を最適化することができる。しかし、あまりにも高いpHを選択するとナノ粒子からの疎水性の酸の拡散を引き起こしやすくなりうるのに対して、あまりにも低いpHを選択するとナノ粒子からの塩基性治療剤の拡散を引き起こしやすくすることができる。
いくつかの実施形態では、ナノ粒子製剤プロセスで使用される水性溶液(たとえば、限定されるものではないが、水性相、エマルジョン相、クエンチ、およびクエンチ相を含む)のpHは、独立して、選択することができるとともに、約1〜約3、いくつかの実施形態では約2〜約4、いくつかの実施形態では約3〜約5、いくつかの実施形態では約4〜約6、いくつかの実施形態では約5〜約7、いくつかの実施形態では約6〜約8、いくつかの実施形態では約7〜約9、およびいくつかの実施形態では約8〜約10とすることができる。ある特定の実施形態では、ナノ粒子製剤プロセスで使用される水性溶液のpHは、約3〜約4、いくつかの実施形態では約4〜約5、いくつかの実施形態では約5〜約6、いくつかの実施形態では約6〜約7、いくつかの実施形態では約7〜約8、およびいくつかの実施形態では約8〜約9とすることができる。
いくつかの実施形態では、プロトン化可能な窒素含有治療剤は、この段階で粒子中にすべてカプセル化されるとは限らず、可溶化相を形成するためにクエンチ相に薬剤可溶化剤が添加される。薬剤可溶化剤は、たとえば、Tween80、Tween20、ポリビニルピロリドン、シクロデキストラン、ナトリウムドデシルスルフェート、ナトリウムコレート、ジエチルニトロソアミン、酢酸ナトリウム、尿素、グリセリン、プロピレングリコール、グリコフロール、ポリ(エチレン)グリコール、bris(ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル、安息香酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、またはそれらの組合せとすることができる。たとえば、Tween−80をクエンチされたナノ粒子サスペンジョンに添加することにより、遊離薬剤を可溶化して薬剤結晶の形成を防止することができる。いくつかの実施形態では、薬剤可溶化剤とプロトン化可能な窒素含有治療剤との比は、約200:1〜約10:1、またはいくつかの実施形態では約100:1〜約10:1である。
可溶化相を濾過してナノ粒子を回収することができる。たとえば、限外濾過膜を用いてナノ粒子サスペンジョンを濃縮し、かつ有機溶媒、遊離薬剤(すなわち、カプセル化されていない治療剤)、薬剤可溶化剤、および他の処理助剤(界面活性剤)を実質的に排除することができる。例示的な濾過は、タンジェンシャルフロー濾過システムを用いて行うことができる。たとえば、溶質、ミセル、および有機溶媒を通過させつつナノ粒子を保持するのに好適な細孔サイズを有する膜を用いることにより、ナノ粒子を選択的に分離することが可能である。約300〜500kDa(約5〜25nm)の分画分子量を有する例示的な膜を用いることが可能である。
透析濾過(ダイア フィルトレーション)は、定体積法を用いて行うことができる。このことは、濾液をサスペンジョンから除去するのと同じ速度で透析濾過(ダイア フィルトレーション)液(冷脱イオン水、たとえば、約0〜約5℃または0〜約10℃)を供給サスペンジョンに添加することができることを意味する。いくつかの実施形態では、濾過は、約0〜約5℃または0〜約10℃の第1の温度および約20〜約30℃または15〜約35℃の第2の温度を用いる第1の濾過を含むことができる。いくつかの実施形態では、濾過は、いくつかの場合には、約1〜約30、約1〜約15、またはいくつかの場合には1〜約6透析体積の処理を含むことができる。たとえば、濾過は、約0〜約5℃で約1〜約30またはいくつかの場合には約1〜約6透析体積を処理する工程と、約20〜約30℃で少なくとも1透析体積(たとえば、約1〜約15、約1〜約3、または約1〜約2透析体積)を処理する工程とを含むことができる。いくつかの実施形態では、濾過は、異なる個別の温度で異なる透析体積を処理する工程を含む。
ナノ粒子サスペンジョンの精製および濃縮を行った後、粒子は、1、2以上の滅菌フィルターおよび/またはデプスフィルターに通して、たとえば、約0.2μmデプスプレフィルターを用いて、処理することができる。たとえば、滅菌濾過工程は、制御速度で濾過トレインを用いた治療用ナノ粒子の濾過を含むことができる。いくつかの実施形態では、濾過トレインは、デプスフィルターおよび滅菌フィルターを含むことができる。
ナノ粒子の調製の他の実施形態では、プロトン化可能な窒素含有治療剤とポリマー(ホモポリマー、コポリマー、およびリガンドを有するコポリマー)との混合物で構成された有機相を形成する。有機相を約1:5の比(油相:水性相)で水性相と混合する。水性相は、界面活性剤およびなんらかの溶解溶媒で構成される。単純混合下でまたはローターステーターホモジナイザーを用いて2つの相を組み合わせることにより一次エマルジョンを形成する。次いで、高圧ホモジナイザーを用いて一次エマルジョンを微細エマルジョンの形態にする。次いで、混合下で脱イオン水に添加することにより微細エマルジョンをクエンチする。いくつかの実施形態では、クエンチ:エマルジョン比は、約2:1〜約40:1、いくつかの実施形態では約5:1〜約15:1である。いくつかの実施形態では、クエンチ:エマルジョン比は約8.5:1である。次いで、全体で約2%のTweenとなるようにTween(たとえばTween80)の溶液をクエンチに添加する。これは、遊離のカプセル化されていないプロトン化可能な窒素含有治療剤を溶解させる働きをする。次いで、遠心分離または限外濾過/透析濾過(ダイア フィルトレーション)のいずれかによりナノ粒子を単離する。
製剤の調製で使用されるポリマー、プロトン化可能な窒素含有治療剤、および疎水性の酸の量は、最終製剤とは異なっていてもよいことが分かるであろう。たとえば、プロトン化可能な窒素含有治療剤のいくつかは、ナノ粒子に完全に組み込まれるとは限らず、かかる遊離のプロトン化可能な窒素含有治療剤は、たとえば、濾過により除去することができる。たとえば、実施形態では、約9%の第1の疎水性の酸(たとえば脂肪酸)を含有する第1の有機溶液中に約11重量パーセントの理論負荷のプロトン化可能な窒素含有治療剤を含有する第1の有機溶液、約89重量パーセントのポリマー(たとえば、ポリマーは、約2.5molパーセントの、ポリマーにコンジュゲートされた標的化部分と、約97.5molパーセントのPLA−PEGとを含むことができる)を含有する第2の有機溶液、および約0.12%の第2の疎水性の酸(たとえば胆汁酸)を含有する水性溶液を製剤の調製に使用することができる。この結果、たとえば、2重量パーセントのプロトン化可能な窒素含有治療剤と、約97.5重量パーセントのポリマー(ポリマーは、約1.25molパーセントの、ポリマーにコンジュゲートされた標的化部分と、約98.75molパーセントのPLA−PEGとを含むことができる)と、合計約0.5%の疎水性の酸とを含む最終ナノ粒子が得られる。かかるプロセスは、患者への投与に好適な最終ナノ粒子を提供することができる。最終ナノ粒子は、約1〜約20重量パーセントの治療剤、たとえば、約1、約2、約3、約4、約5、約8、約10、または約15重量パーセントのプロトン化可能な窒素含有治療剤を含む。
治療剤
プロトン化可能な窒素含有治療剤は、その製薬上許容される塩形、遊離塩基形、水和物、異性体、およびプロドラッグなどの代替形を含むことができる。いくつかの実施形態では、プロトン化可能な窒素含有治療剤は、公知の作用剤のリスト、たとえば、すでに合成された作用剤のリスト、被験者、たとえば、ヒト被験者もしくは哺乳動物被験者にすでに投与された作用剤のリストFDAにより承認された作用剤のリスト、または作用剤の過去のリスト、たとえば、製薬会社の過去のリストなどから選択することができる。公知の作用剤の好適なリストは当業者に周知であり、限定されるものではないが、Merck IndexおよびFDA Orange Book(それぞれ参照により本明細書に組み込まれる)を含む。いくつかの場合には、2種以上のプロトン化可能な窒素含有治療剤(たとえば、2、3種以上のプロトン化可能な窒素含有治療剤)の組合せを開示されたナノ粒子製剤で使用することができる。
いくつかの実施形態では、プロトン化可能な窒素含有治療剤はチロシンキナーゼ阻害剤とすることができる。たとえば、チロシンキナーゼは、多標的レセプターチロシンキナーゼ阻害剤(たとえばスニチニブ(pKa=7.07))とすることができる。他の例では、プロトン化可能な窒素含有治療剤は、Bcr−Ablチロシンキナーゼ阻害剤(たとえば、イマチニブ(pKa=8.38)、ニロチニブ、ダサチニブ(pKa=7.07)、ボスチニブ、ポナチニブ、およびバフェチニブ)とすることができる。いくつかの実施形態では、Bcr−Ablチロシンキナーゼ阻害剤は、Srcチロシンキナーゼをも阻害することができる。したがって、いくつかの実施形態では、プロトン化可能な窒素含有治療剤は、Bcr−AblおよびSrcチロシンキナーゼ阻害剤とすることができる。Bcr−AblおよびSrcチロシンキナーゼ阻害剤の例は、限定されるものではないがダサチニブである。
プロトン化可能な窒素含有治療剤の他の例としては、限定されるものではないが、化学治療剤、たとえば、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ゲムシタビン(ゲムザール)、ダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、ビノレルビン、ビンカアルカロイド、たとえば、ビンブラスチンまたはビンクリスチン(pKa=7.08)、ブレオマイシン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT−11、10−ヒドロキシ−7−エチルカンプトテシン(SN38)、ダカルバジン、S−Iカペシタビン、UFT、デオキシシチジン、5−アザシトシン、5−アザデオキシシトシン、アロプリノール、2−クロロアデノシン、トリメトレキセート、アミノプテリン、メチレン−10−デアザアミノプテリン(MDAM)、エピルビシン、9−アミノカンプトテシン、10,11−メチレンジオキシカンプトテシン、カレニテシン、9−ニトロカンプトテシン、TAS103、ビンデシン、L−フェニルアラニンカラシナ、エポチロンA〜E、トムデックス、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アムサクリン、カレニテシン、アシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル、アマンタジン、リマンタジン、ラミブジン、およびそれらの組合せが挙げられる。
一群の実施形態では、ペイロードは、薬剤または2種以上の薬剤の組合せである。かかる粒子は、薬剤を含有する粒子を被験者内の特定の局所位置に方向付けるために、たとえば、薬剤の局所送達を可能にするために標的化部分を使用することができる実施形態に有用とすることができる。
医薬製剤
本明細書に開示されたナノ粒子は、他の態様によれば、医薬組成物を形成するために薬学的に許容可能な担体と組み合わせることができる。当業者であれば分かるであろうが、担体は、以下に記載の投与経路、標的組織の位置、送達される薬剤、薬剤送達の時間経過などに基づいて選択することができる。
医薬組成物は、経口経路および非経口経路を含む当技術分野で公知の任意の手段により患者に投与可能である。本明細書で用いられる「患者」という用語は、ヒト、さらにはたとえば哺乳動物、トリ、爬虫動物、両生動物、およびサカナをはじめとするヒトを意味する。たとえば、非ヒトは、哺乳動物(たとえば、齧歯動物、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、霊長動物、またはブタ)とすることができる。ある特定の実施形態では、消化管に見いだされる消化酵素との接触が回避されることから、非経口経路が望ましい。かかる実施形態によれば、本発明の組成物は、注射(たとえば、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射)により、経直腸的に、経腟的に、局所的に(たとえば、粉末剤、クリーム剤、軟膏剤、もしくは滴剤により)、または吸入により(たとえば、スプレーにより)投与することができる。
特定の実施形態では、ナノ粒子は、全身的に、たとえば、IV注入または注射により必要とされる被験者に投与される。
注射用製剤、たとえば、無菌注射用の水性または油性のサスペンジョン剤は、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて公知の技術に従って製剤化することができる。無菌注射用製剤はまた、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤中または溶媒中の無菌注射用の溶液剤、サスペンジョン剤、またはエマルジョン剤、たとえば、1,3−ブタンジオール中の溶液剤とすることができる。利用することができる媒体および溶媒としては、水、リンゲル液(米国薬局方)、および生理食塩液がある。そのほかに、無菌固定油が溶媒または懸濁媒体として従来から利用されている。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性固定油を利用することが可能である。それに加えて、オレイン酸などの脂肪酸が注射剤の調製に使用される。一実施形態では、本発明のコンジュゲートは、1%(w/v)のナトリウムカルボキシメチルセルロースと0.1%(v/v)のTWEEN(商標)80とを含む担体流体中に懸濁される。注射用製剤は、たとえば、細菌保持フィルターに通して濾過することにより、または使用前に無菌水または他の無菌注射用媒体に溶解可能または分散可能な無菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことにより、滅菌可能である。
経口投与に供される固形製剤としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末剤、および顆粒剤が挙げられる。かかる固形製剤では、カプセル化コンジュゲートまたは非カプセル化コンジュゲートは、少なくとも1種の不活性な薬学的に許容可能な賦形剤または担体、たとえば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、および/または(a)充填剤または増量剤、たとえば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸、(b)結合剤、たとえば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアカシアなど、(c)湿潤剤、たとえば、グリセロール、(d)崩壊剤、たとえば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム、(e)溶解遅延剤、たとえば、パラフィン、(f)吸収促進剤、たとえば、第4級アンモニウム化合物、(g)湿潤剤、たとえば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなど、(h)吸収剤、たとえば、カオリンおよびベントナイトクレー、および(i)滑沢剤、たとえば、タルク、カルシウムステアレート、マグネシウムステアレート、固体ポリエチレングリコール、ナトリウムラウリルスルフェートおよびそれらの混合物と混合される。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、製剤は緩衝剤も含むことができる。
プロトン化可能な窒素含有治療剤を含有するナノ粒子の厳密な投与量は、治療される患者を考慮して個々の医師により選択され、一般に、投与量および投与は、治療された患者に有効量のプロトン化可能な窒素含有治療剤ナノ粒子を提供するように調整されることが分かるであろう。本明細書で用いられる場合、プロトン化可能な窒素含有治療剤を含有するナノ粒子の「有効量」とは、所望の生物学的反応を引き出すのに必要な量を意味する。当業者であれば分かるであろうが、プロトン化可能な窒素含有治療剤を含有するナノ粒子の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、送達される薬剤、標的組織、投与経路などの因子に依存してさまざまとすることができる。たとえば、プロトン化可能な窒素含有治療剤を含有するナノ粒子の有効量は、所望の期間にわたり所望の量の腫瘍サイズ減少をもたらす量とすることができる。考慮されうる追加の因子としては、疾患の重症度状態、治療される患者の年齢、体重、および性別、食事、投与時間、および投与頻度、薬剤の組合せ、反応感受性、ならびに治療に対する耐性/反応が挙げられる。
ナノ粒子は、投与が容易になるようにかつ投与量が均一になるように投与ユニット製剤として製剤化することができる。本明細書で用いられる「投与ユニット製剤」という表現は、治療される患者に適したナノ粒子の物理的に個別のユニッとを意味する。しかし、組成物の1日合計使用量は、健全な医学的判断の範囲内で担当医により決定されることが理解されよう。任意のナノ粒子に対して、治療上有効用量は、細胞培養アッセイで、または動物モデルで、通常は、マウス、ウサギ、イヌ、もしくはブタで、初期に推定可能である。動物モデルはまた、望ましい濃度範囲および投与経路を達成するためにも使用される。次いで、かかる情報は、ヒトにおいて有用な投与用量および投与経路を決定するために使用可能である。ナノ粒子の治療有効性および毒性は、標準的な薬学的手順により、たとえば、ED50(集団の50%で治療上有効な用量)およびLD50(集団の50%で致死的な用量)により、細胞培養物または実験動物で決定可能である。毒性作用と治療効果との用量比は治療指数であり、LD50/ED50の比として表現可能である。大きな治療指数を呈する医薬組成物は、いくつかの実施形態に有用とすることができる。細胞培養アッセイおよび動物試験から得られるデータは、ヒトで使用するための投与量範囲の策定に使用可能である。
実施形態では、本明細書に開示された組成物は、約10ppm未満のパラジウムまたは約8ppm未満もしくは約6ppm未満のパラジウムを含むことができる。たとえば、本明細書には、ポリマーコンジュゲートを有するナノ粒子を含む組成物が提供され、組成物は約10ppm未満のパラジウムを有する。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されたナノ粒子と凍結に好適な溶液とを含む凍結に好適な組成物が意図される。たとえば、単糖、二糖、多糖などの糖、たとえば、スクロースおよび/もしくはトレハロース、ならびに/または塩、ならびに/またはシクロデキストリン溶液がナノ粒子サスペンジョンに添加される。糖(たとえば、スクロースまたはトレハロース)は、たとえば、凍結時の粒子の凝集を防止するための凍結保護剤として作用させることができる。本明細書には、たとえば、複数の開示されたナノ粒子と、スクロースと、イオン性ハロゲン化物と、水とを含むナノ粒子製剤が提供され、ナノ粒子/スクロース/水/イオン性ハロゲン化物は、約3〜40%/10〜40%/20〜95%/0.1〜10%(w/w/w/w)、または約5〜10%/10〜15%/80〜90%/1〜10%(w/w/w/w)である。たとえば、かかる溶液は、本明細書に開示されたナノ粒子と、約5重量%〜約20重量%のスクロースと、約10〜100mM濃度の塩化ナトリウムなどのイオン性ハロゲン化物とを含むことができる。他の例では、本明細書には、複数の開示されたナノ粒子と、トレハロースと、シクロデキストリンと、水とを含むナノ粒子製剤が提供され、ナノ粒子/トレハロース/水/シクロデキストリンは、約3〜40%/1〜25%/20〜95%/1〜25%(w/w/w/w)、または約5〜10%/1〜25%/80〜90%/10〜15%(w/w/w/w)である。
たとえば、意図される溶液は、本明細書に開示されたナノ粒子と、約1重量%〜約25重量%の二糖、たとえば、トレハロースまたはスクロース(たとえば、約5重量%〜約25重量%のトレハロースもしくはスクロース、たとえば、約10重量%のトレハロースもしくはスクロース、または約15重量%のトレハロースもしくはスクロース、たとえば、約5重量%のスクロース)と、約1重量%〜約25重量%の濃度のシクロデキストリン、たとえば、β−シクロデキストリン(たとえば、約5重量%〜約20重量%、たとえば、10重量%、または約20重量%、または約15重量%〜約20重量%のシクロデキストリン)とを含むことができる。意図される製剤は、複数の開示されたナノ粒子(たとえば、PLA−PEGと活性剤とを有するナノ粒子)と、約2重量%〜約15重量%(または約4重量%〜約6重量%、たとえば、約5重量%)のスクロースと、約5重量%〜約20重量%(たとえば、約7%重量パーセント〜約12重量%、たとえば、約10重量%)のシクロデキストリン、たとえば、HPbCDとを含むことができる。
本開示は、部分的には、再構成時の大きな凝集体の量を最小限に抑えた凍結乾燥医薬組成物に関する。かかる大きな凝集体は、約0.5μm超、約1μm超、または約10μm超のサイズを有することができるものであり、再構成溶液では望ましくないものとすることができる。凝集体サイズは、米国薬局方32<788>(本出願をもって参照により組み込まれる)に示されるものを含めてさまざまな技術を用いて測定可能である。USP32<788>に概説される試験は、光遮蔽粒子カウント試験、微視的粒子カウント試験、レーザー回折、および単一粒子光学センシングを含む。一実施形態では、所与のサンプルの粒子サイズは、レーザー回折および/または単一粒子光学センシングを用いて測定される。
光遮蔽粒子カウント試験によるUSP32<788>には、サスペンジョンの粒子サイズをサンプリングするためのガイドラインが示されている。100mL以下の溶液では、≧10μmの存在する粒子の平均数が1容器当たり6000個を超えない場合かつ≧25μmのものが1容器当たり600個を超えない場合、調製物は試験に適合する。
USP32<788>に概説されるように、微視的粒子カウント試験には、接眼マイクロメーターを有する100±10×の倍率に調整された双眼顕微鏡を用いて粒子量を決定するためのガイドラインが示されている。接眼マイクロメーターは、100×の倍率で見たときに10μmおよび25μmを表す黒色参照円を有する四分区画に分割された円からなる円径グラティキュールである。線形スケールはグラティキュールの下に提供される。10μmおよび25μmを基準にした粒子数は、視覚的に計算される。100mL以下の溶液では、≧10μmの存在する粒子の平均数が1容器当たり3000個を超えない場合かつ≧25μmのものが1容器当たり300個を超えない場合、調製物は試験に適合する。
いくつかの実施形態では、開示された組成物の再構成時の10mLの水性サンプルは、10ミクロン以上のサイズを有する粒子が1ml当たり600個未満であり、かつ/または25ミクロン以上のサイズを有する粒子が1ml当たり60個未満である。
動的光散乱(DLS)を用いて粒子サイズを測定することができるが、この技術はブラウン運動に基づくものなので、いくつかのより大きな粒子を検出できないおそれがある。レーザー回折は、粒子と懸濁媒体との屈折率差に基づくものである。この技術は、サブミクロン〜ミリメートルの範囲で粒子を検出が可能である。比較的少量(たとえば約1〜5重量%)のより大きな粒子をナノ粒子サスペンジョンで決定可能である。単一粒子光学センシング(SPOS)では、希釈サスペンジョンの光遮蔽を用いて約0.5μmの個別粒子をカウントする。測定サンプルの粒子濃度が分かれば、凝集体の重量パーセントまたは凝集体の濃度(粒子/mL)の計算が可能である。
凝集体の形成は、粒子の表面の脱水に起因して凍結乾燥時に起こりうる。この脱水は、凍結乾燥前のサスペンジョンで二糖などの凍結乾燥保護剤により回避可能である。好適な二糖としては、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、またはセロビオース、および/またはそれらの混合物が挙げられる。他の意図される二糖としては、コージビオース、ニゲロース、イソマルトース、β,β−トレハロース、α,β−トレハロース、ソホロース、ラミナリビオース、ゲンチオビオース、ツラノース、マルツロース、パラチノース、ゲンチオビウロース、マンノビオース、メリビオース、メリビウロース、ルチノース、ルチヌロース、およびキシロビオースが挙げられる。再構成は、出発サスペンジョンと比較したときに等価なDLSサイズ分布を示す。しかし、レーザー回折によりいくつかの再構成溶液で>10μmのサイズの粒子を検出可能である。さらにまた、SPOSによりFDAのガイドライン(>10μmの粒子について104〜105粒子/mL)の濃度を超える濃度で>10μmのサイズの粒子を検出することができる。
いくつかの実施形態では、スクロース、トレハロース、それらの混合物などの糖への追加の凍結乾燥保護剤として、1種以上のイオン性ハロゲン化物塩を使用することができる。糖は、二糖、単糖、三糖、および/または多糖を含むことができるとともに、他の賦形剤、たとえば、グリセロールおよび/または界面活性剤を含むことができる。任意選択で、追加の凍結乾燥保護剤としてシクロデキストリンを含むことができる。シクロデキストリンは、イオン性ハロゲン化物塩の代わりに添加することができる。他の選択肢として、シクロデキストリンは、イオン性ハロゲン化物塩に加えて添加することができる。
好適なイオン性ハロゲン化物塩としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛、またはそれらの混合物が挙げることができる。追加の好適なイオン性ハロゲン化物塩としては、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化アンモニウム、臭化ナトリウム、臭化カルシウム、臭化亜鉛、臭化カリウム、臭化マグネシウム、臭化アンモニウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化カリウム、ヨウ化マグネシウム、またはヨウ化アンモニウム、および/またはそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、約1〜約15重量パーセントのスクロースをイオン性ハロゲン化物塩と共に使用することができる。一実施形態では、凍結乾燥医薬組成物は、約10〜約100mMの塩化ナトリウムを含むことができる。他の実施形態では、凍結乾燥医薬組成物は、約100〜約500mMの塩化カルシウムや塩化亜鉛などの2価イオン性塩化物を含むことができる。さらに他の実施形態では、凍結乾燥されるサスペンジョンは、シクロデキストリンをさらに含むことができる。たとえば、約1〜約25重量パーセントのシクロデキストリンを使用することができる。
好適なシクロデキストリンとしては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、またはそれらの混合物が挙げることができる。本明細書に開示された組成物での使用が意図される例示的なシクロデキストリンとしては、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPbCD)、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、ジメチル−β−シクロデキストリン、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン、カルボキシメチルエチル−β−シクロデキストリン、ジエチル−β−シクロデキストリン、トリ−O−アルキル−β−シクロデキストリン、グルコシル−β−シクロデキストリン、およびマルトシル−β−シクロデキストリンが挙げられる。一実施形態では、約1〜約25重量パーセントのトレハロース(たとえば、約10重量%〜約15重量%、たとえば、5〜約20重量%)をシクロデキストリンと共に使用することができる。一実施形態では、凍結乾燥医薬組成物は、約1〜約25重量パーセントのβ−シクロデキストリンを含むことができる。例示的な組成物は、PLA−PEGを含むナノ粒子と、活性剤/治療剤と、約4%〜約6%(たとえば、約5重量%)のスクロースと、約8〜約12重量パーセント(たとえば、約10重量%)のHPbCDとを含むことができる。
一態様では、開示されたナノ粒子を含む凍結乾燥医薬組成物が提供される。約100mL以下の水性媒体中に約50mg/mLのナノ粒子濃度で凍結乾燥医薬組成物を再構成すると、非経口投与に好適な再構成された組成物は、6000個未満、たとえば3000個未満の10ミクロン以上のマイクロ粒子を含み、かつ/または600個未満、たとえば300個未満の25ミクロン以上のマイクロ粒子を含む。
マイクロ粒子の数は、光遮蔽粒子カウント試験によるUSP32<788>、微視的粒子カウント試験によるUSP32<788>、レーザー回折、単一粒子光学センシングなどの手段により決定可能である。
態様では、疎水性ポリマーセグメントと親水性ポリマーセグメントとを有するコポリマーをそれぞれ含む複数の治療用粒子と、活性剤と、糖と、シクロデキストリンとを含む、再構成時に非経口使用に好適な医薬組成物が提供される。
たとえば、コポリマーは、ポリ(乳)酸−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーとすることができる。再構成時、100mLの水性サンプルは、6000個未満の10ミクロン以上のサイズを有する粒子を含み、かつ600個未満の25ミクロン以上のサイズを有する粒子を含む。
二糖とイオン性ハロゲン化物塩とを添加する工程は、約5〜約15重量パーセントのスクロースまたは約5〜約20重量パーセントのトレハロース(たとえば、約10〜約20重量パーセントのトレハロース)と、約10〜約500mMのイオン性ハロゲン化物塩とを添加する工程を含むことができる。イオン性ハロゲン化物塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、および塩化亜鉛から選択することができるか、またはそれらの混合物とすることができる。実施形態では、約1〜約25重量パーセントのシクロデキストリンも添加される。
他の実施形態では、二糖とシクロデキストリンとを添加する工程は、約5〜約15重量パーセントのスクロースまたは約5〜約20重量パーセントのトレハロース(たとえば、約10〜約20重量パーセントのトレハロース)と、約1〜約25重量パーセントのシクロデキストリンとを添加する工程を含むことができる。実施形態では、約10〜約15重量パーセントのシクロデキストリンが添加される。シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンン、またはそれらの混合物から選択することができる。
他の態様では、再構成時のナノ粒子の凝集を防止するために凍結乾燥製剤に糖および塩を添加する工程を含む、医薬ナノ粒子組成物中の粒子の実質的な凝集を防止する方法が提供される。実施形態では、シクロデキストリンもまた凍結乾燥製剤に添加される。さらに他の態様では、再構成時のナノ粒子の凝集を防止するために凍結乾燥製剤に糖およびシクロデキストリンを添加する工程を含む、医薬ナノ粒子組成物中の粒子の実質的な凝集を防止する方法が提供される。意図される凍結乾燥組成物は、約40mg/mL超の治療用粒子濃度を有することができる。非経口投与に好適な製剤は、10mLの用量で約600個未満の10ミクロン超のサイズを有する粒子を有することができる。凍結乾燥は、約−40℃超またはたとえば約−30℃未満の温度で組成物を凍結させて凍結組成物を形成する工程と、凍結乾燥組成物を乾燥させて凍結組成物を形成する工程とを含むことができる。乾燥工程は、約−25〜約−34℃または約−30〜約〜−34℃の温度で約50mTorrで行うことができる。
治療方法
いくつかの実施形態では、標的化ナノ粒子は、疾患、障害、および/または病態を治療、軽減、改善、緩和したり、その発症を遅延したり、その進行を阻害したり、その重症度を低減したり、かつ/またはその1つ以上の症状もしくは特徴の出現を低減したりするために使用することができる。いくつかの実施形態では、標的化ナノ粒子は、固形腫瘍、たとえば、癌および/または癌細胞を治療するために使用することができる。ある特定の実施形態では、標的化ナノ粒子は、必要とされる被験者において、癌細胞の表面上で、または前立腺固形腫瘍もしくは非前立腺固形腫瘍の血管新生を含めて腫瘍血管新生で、PSMAが発現される任意の癌を治療するために使用することができる。PSMA関連適応症の例としては、限定されるものではないが、前立腺癌、乳癌、非小細胞肺癌、結腸直腸癌、および膠芽細胞腫が挙げられる。
「癌」という用語は、前悪性癌さらには悪性癌を含む。癌としては、限定されるものではないが、血液癌(たとえば、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病、マントル細胞性リンパ腫)、前立腺癌、胃癌、結腸直腸癌、皮膚癌、たとえば、黒色腫または基底細胞癌、肺癌(たとえば、非小細胞肺癌)、乳癌、頭頸部癌、気管支癌、膵臓癌、膀胱癌、脳癌または中枢神経系癌、末梢神経系癌、食道癌、口腔癌または咽頭癌、肝臓癌(たとえば、肝細胞癌)、腎臓癌(たとえば、腎細胞癌)、精巣癌、胆道癌、小腸癌または虫垂癌、胃腸間質腫瘍、唾液腺癌、甲状腺癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、血液学的組織癌などが挙げられる。「癌細胞」は、腫瘍の形態とすることができるか(すなわち、固形腫瘍)、被験者内に単独で存在しうるか(たとえば、白血病細胞)、または癌に由来する細胞系とすることができる。
癌はさまざまな身体症状に関連しうる。癌の症状は、一般に腫瘍のタイプおよび位置に依存する。たとえば、肺癌は、咳、息切れ、および胸痛を引き起こすことができるが、結腸癌は、多くの場合、下痢、便秘、および糞便中の血液を引き起こす。しかし、わずかではあるが例を挙げると、次の症状、すなわち、発熱、悪寒、寝汗、咳、呼吸困難、体重減少、食欲減退、拒食症、悪心、嘔吐、下痢、貧血、黄疸、肝腫大、喀血、疲労、倦怠感、認知機能不全、鬱病、ホルモン障害、好中球減少症、疼痛、非治癒性潰瘍、リンパ節腫大、末梢神経症、および性機能不全は、多くの場合、一般に多くの癌に関連する。
一態様では、癌(たとえば白血病)の治療方法が提供される。いくつかの実施形態では、癌の治療は、所望の結果を達成するのに必要な量および時間で、必要とされる被験者に治療上有効量の本発明の標的化粒子を投与することを含む。ある特定の実施形態では、本発明の標的化粒子の「治療上有効量」は、癌を治療、軽減、改善、緩和したり、その発症を遅延したり、その進行を阻害したり、その重症度を低減したり、その1つ以上の症状および/または特徴の出現を低減したりするのに有効な量である。
一態様では、癌(たとえば白血病)に罹患している被験者に本発明の組成物を投与する方法が提供される。いくつかの実施形態では、粒子は、所望の結果(すなわち、癌の治療)を達成するのに必要な量および時間で被験者に投与することができる。ある特定の実施形態では、本発明の標的化粒子の「治療上有効量」は、癌を治療、軽減、改善、緩和したり、その発症を遅延したり、その進行を阻害したり、その重症度を低減したり、その1つ以上の症状および/または特徴の出現を低減したりするのに有効な量である。
本発明の治療プロトコルは、健常者(すなわち、癌の症状をなんら示さない被験者および/または癌と診断されていない被験者)に治療上有効量の本発明の標的化粒子を投与することを含む。たとえば、健常者は、癌の発生前および/または癌の症状の出現前に本発明の標的化粒子で「免疫」されうる。リスク個体(たとえば、癌の家族歴を有する患者、癌の発生に関連する1つ以上の遺伝子突然変異を有する患者、癌の発生に関連する遺伝子多型を有する患者、癌の発生に関連するウイルスが感染した患者、癌の発生に関連する嗜癖および/または生活習慣を有する患者など)は、癌の症状の出現と実質的に同時に(たとえば、その48時間以内、24時間以内、または12時間以内)治療可能である。当然ながら、癌を有することが知られている個体は、本発明の治療をいつでも受けることができる。
他の実施形態では、開示されたナノ粒子は、癌細胞、たとえば、骨髄性白血病癌細胞の成長を阻害するために使用可能である。本明細書で用いられる場合、「癌細胞の成長を阻害する」という用語は、癌細胞の成長の速度が未治療の対照癌細胞の成長の観測速度または予測速度と比較して低減されるように、癌細胞の増殖および/または遊走の速度をいくらかでも減速したり、癌細胞の増殖および/または遊走を停止させたり、または癌細胞を死滅させたりすることを意味する。「成長を阻害する」という用語はまた、癌細胞または腫瘍のサイズの減少または消失、さらにはその転移能の低減も意味する。好ましくは、細胞レベルでのかかる阻害は、患者において癌のサイズの低減、成長の抑止、侵攻性の低減、または転移の防止もしくは阻害をもたすかもしれない。当業者であれば、癌細胞の成長が阻害されるかをさまざまな好適な指標のいずれかにより容易に決定可能である。
癌細胞の成長の阻害は、たとえば、細胞周期の特定期での癌細胞の停止により、たとえば、細胞周期のG2/M期での停止により、実証することができる。癌細胞の成長の阻害はまた、癌細胞または腫瘍のサイズの直接的または間接的な測定により実証可能である。ヒト癌患者では、かかる測定は、一般に、磁気共鳴イメージング、コンピューター横断断層撮影、X線などの周知のイメージング法を用いて行われる。癌細胞の成長はまた、癌細胞の成長に関連する循環癌胎児性抗原、前立腺特異的抗原、または他の癌特異的抗原のレベルを決定することなどにより、間接的に決定可能である。癌の成長の阻害はまた、一般に、被験者の長期間生存および/または健康増進および幸福に関連する。
また、本明細書には、活性剤を含む本明細書に開示されたナノ粒子を患者に投与する方法も提供される。患者に投与すると、かかるナノ粒子は、作用剤単独(すなわち、開示されたナノ粒子としてでない)の投与と比較して、実質的に分布容積を低減し、かつ/または遊離Cmaxを実質的に低減する。
「薬剤担持ポリマーナノ粒子ならびにその製造方法および使用方法」という名称で2012年6月26日に発行された米国特許第8,206,747号明細書は、本出願をもって参照によりその全体が組み込まれる。
本発明について現時点では一般的に説明されているが、以下の実施例を参照すれば、より容易に理解されよう。これらの実施例は、ある特定の態様および実施形態を単に例示するために含まれているにすぎず、本発明をなんら限定することを意図したものではない。
実施例1:スニチニブ含有ナノ粒子の調製
有機相の調製。(工程1、ポリマー溶液の調製)第1の7mLガラスバイアルにポリ(乳酸)−ポリ(エチレングリコール)ジブロックコポリマー(PLA−PEG)とエチルアセテートとを添加する。ポリマーが溶解するまで混合物をボルテックスする。(工程2、薬剤溶液の調製)スニチニブの入った第2の7mLガラスバイアルに適切量のベンジルアルコールを添加し、スニチニブが溶解するまで混合物をボルテックスする。他の選択肢として、適切量のオレイン酸をベンジルアルコールに添加して3〜15%(w/w)の溶液を作製し、次いで、これをスニチニブの入った第2の7mLガラスバイアルに添加し、スニチニブが溶解するまで混合物をボルテックスする。(工程3)ポリマー溶液と薬剤溶液とを組み合わせ、ナノ粒子の製剤前に数分間ボルテックスする。
水性相の調製。(0.07%のナトリウムコレート溶液の場合)1Lボトルにナトリウムコレート(SC)(0.7)とDI水(959.3g)とを添加する。溶解するまで混合物を撹拌プレート上で撹拌する。ナトリウムコレート/水にベンジルアルコール(40g)を添加し、溶解するまで混合物を撹拌プレート上で撹拌する。(0.25%のナトリウムコレート溶液の場合)1Lボトルにナトリウムコレート(SC)(2.5g)とDI水(957.5g)とを添加する。溶解するまで混合物を撹拌プレート上で撹拌する。ナトリウムコレート/水にベンジルアルコール(40g)を添加し、溶解するまで混合物を撹拌プレート上で撹拌する。
エマルジョンの形成。水性相対有機相の比は5:1である。有機相を水性相に注加し、ハンドホモジナイザーを用いて混合物を室温で10秒間ホモジナイズすることにより粗エマルジョンを形成する。粗エマルジョンをゲージで40〜45psiの圧力に設定された高圧ホモジナイザー(110S)に供給して慎重に1回通過させることによりナノエマルジョン(微細エマルジョン)を形成する。
ナノ粒子の形成。撹拌プレート上で撹拌しながらナノエマルジョンを5℃未満のクエンチ(D.I.水)に注加することによりクエンチ相を形成する。クエンチ対エマルジョンの比は8:1である。150:1のTween80対薬剤の比でクエンチ相に水中Tween80(35%(w/w))を添加する。
タンジェンシャルフロー濾過(TFF)によるナノ粒子の濃縮。300kDa Pallカセット(2メンブレン)を用いてTFFによりクエンチ相を濃縮して約100mLのナノ粒子濃縮物を形成する。約20透析体積(2L)の冷DI水を用いてナノ粒子濃縮物を透析濾過(ダイア フィルトレーション)する。透析濾過(ダイア フィルトレーション)されたナノ粒子濃縮物の体積は最小体積に低減される。冷水(100mL)を容器に添加し、ポンプ操作でメンブレンに通して濯ぎ、スラリーを形成する。スラリー(100〜180mL)をガラスバイアルに捕集する。より小さいTFF装置を用いてスラリーをさらに濃縮し、最終体積10〜20mLの最終スラリーにする。
未濾過最終スラリーの固形分濃度の決定。風袋測定済み20mLシンチレーションバイアルに一定量の最終スラリーを添加し、凍結乾燥機/オーブン上で真空乾燥させる。乾燥スラリーの体積中のナノ粒子の重量を決定する。最終スラリーに濃縮スクロース(0.666g/g)を添加して10%のスクロースを達する。
0.45μmの濾過最終スラリーの固形分濃度の決定。スクロースの添加前に最終スラリーサンプルの一部を0.45μmシリンジフィルターに通して濾過する。風袋測定済み20mLシンチレーションバイアルに一定量の濾過サンプルを添加し、凍結乾燥機/オーブンを用いて真空乾燥させる。スクロースを含む未濾過最終スラリーの残りのサンプルを凍結させる。
オレイン酸ドーピングを用いてまたは用いずに11種のスニチニブ製剤を作製した。オレイン酸ドーピングを用いずに作製した製剤の理論負荷、固形分濃度、観測負荷、および粒子サイズを表1に列挙する。
表1から分かるように、水を含むまたは含まない(プレーン16/5PLA/PEG)16/5PLA/PEG製剤の場合、ナノ粒子内の薬剤負荷は3%未満であった。オレイン酸ドーピングを用いて作製された製剤のスニチニブ溶解に使用したオレイン酸濃度、理論負荷、固形分濃度、観測負荷、および粒子サイズを表2に列挙する。
表2から分かるように、オレイン酸を有機溶媒中のスニチニブに添加した場合、ナノ粒子中のスニチニブ負荷は、製剤で使用したオレイン酸の濃度に依存して10%超まで有意に増加した。オレイン酸を用いることなく作製された製剤が3%未満の薬剤負荷を有していたことと比較して(表1参照)、オレイン酸を含有する製剤で観測される薬剤負荷の増加は有意であった。
図3は、オレイン酸ドーピングを用いたまたは用いないスニチニブ含有ナノ粒子のインビトロ放出プロファイルを示している。オレイン酸ドーピングを用いたナノ粒子は、オレイン酸を用いずに作製されスニチニブナノ粒子に類似した放出プロファイルを示した。したがって、特定の固形分濃度では、オレイン酸は、オレイン酸を用いずに作製された製剤と対比してスニチニブナノ粒子の放出プロファイルに有意に影響を及ぼさない。
実施例2:イマチニブ含有ナノ粒子の調製
有機相の調製。(工程1、ポリマー溶液の調製)第1の7mLガラスバイアルにポリ(乳酸)−ポリ(エチレングリコール)ジブロックコポリマー(PLA−PEG)とエチルアセテートとを添加する。ポリマーが溶解するまで混合物をボルテックスする。(工程2、薬剤溶液の調製)適切量のベンジルアルコールをイマチニブの入った第2の7mLガラスバイアルに添加し、イマチニブが溶解するまで混合物をボルテックスする。他の選択肢として、適切量のオレイン酸をベンジルアルコールに添加して9%(w/w)の溶液を作製し、次いで、これをイマチニブの入った第2の7mLガラスバイアルに添加し、イマチニブが溶解するまで混合物をボルテックスする。(工程3)ポリマー溶液と薬剤溶液とを組み合わせ、ナノ粒子の製剤前に約10〜30秒間ボルテックスする。
水性相の調製。DI水中にナトリウムコレートを溶解させることにより、水中の0.05〜0.5%のナトリウムコレート/4%のベンジルアルコール溶液(w/w)を調整し、次いで、水性ナトリウムコレート溶液にベンジルアルコールを溶解させる。
エマルジョンの形成。水性相対有機相の比は5:1である。有機相を水性相に注加し、ハンドホモジナイザーを用いて混合物を室温で5〜10秒間ホモジナイズすることにより粗エマルジョンを形成する。粗エマルジョンをゲージで44〜50psiの圧力に設定された高圧ホモジナイザー(M110S)に供給して慎重に1回通過させることによりナノエマルジョン(微細エマルジョン)を形成する。
ナノ粒子の形成。撹拌プレート上で撹拌しながらナノエマルジョンを5℃未満のクエンチ(D.I.水)に注加することによりクエンチ相を形成する。クエンチ対エマルジョンの比は10:1である。オレイン酸含有製剤では150:1のTween80対薬剤の比でおよびオレイン酸を含まない製剤では50:1のTween80対薬剤の比で、水中のTween80(35%(w/w))をクエンチ相に添加する。
タンジェンシャルフロー濾過(TFF)によるナノ粒子の濃縮。300kDa Pallカセット(2メンブレン)を用いてTFFによりクエンチ相を濃縮することにより約200mLのナノ粒子濃縮物を形成する。ナノ粒子濃縮物は、冷DI水(5℃未満)の約20透析体積(4L)を有して透析濾過(ダイア フィルトレーション)される。透析濾過(ダイア フィルトレーション)されたナノ粒子濃縮物の体積は最小体積に低減される。冷水(30〜75mL)を容器に添加し、ポンプ操作でメンブレンに通して濯ぎ、最終スラリーを形成する。最終スラリー(50〜100mL)をガラスバイアルに捕集する。
最終スラリーに濃縮スクロース(0.666g/g)を添加して10%のスクロースを達成し、次いで、これを凍結して−20℃で貯蔵する。
オレイン酸ドーピングを用いてまたは用いずに11種のイマチニブ製剤を作製した。オレイン酸ドーピングを用いずに作製された製剤の理論負荷、固形分濃度、観測負荷、粒子サイズ、ナトリウムコレート(SC)の濃度、ホモジナイザー通過回数、および対応する圧力を表3に列挙する。
表3から分かるように、4.7%および15%の固形分でオレイン酸を用いずに調製された製剤は、それぞれ約0.4〜1%および約7〜8%の薬剤負荷をもたらした。固形分濃度の増加は薬剤負荷の増加をもたらした。
オレイン酸ドーピングを用いて作製された製剤の理論負荷、固形分濃度、観測負荷、粒子サイズ、ナトリウムコレート(SC)の濃度、ホモジナイザー通過回数、および対応する圧力を表4に列挙する。
表4から分かるように、オレイン酸を用いて調製された製剤は、試験したすべての固形分濃度およびオレイン酸対薬剤のモル比で約6〜9%の薬剤負荷をもたらした。
図4は、さまざまな固形分濃度を有しかつオレイン酸ドーピングを用いないイマチニブ含有ナノ粒子のインビトロ放出プロファイルを示している。インビトロ放出は、より高い固形分濃度で遅くなるが(グラフ上の実線)、より低い固形分でのより大きな粒子サイズもまた、放出を遅くする(グラフ上の点線)。
図5は、オレイン酸を用いて調製されたイマチニブ製剤のインビトロ放出プロファイルを示している。インビトロ放出プロファイルは類似しており、4時間で約68〜75%の範囲内の薬剤が放出される。
図6に示されるように、酸を含まない製剤の放出プロファイルとオレイン酸を含む製剤の放出プロファイルと比較した場合、より高い固形分濃度(たとえば、固形分15%)を含みかつ酸を用いない製剤の放出プロファイルは類似していることが観測される。しかし、より低い固形分濃度(たとえば、4.7%)では、オレイン酸を含む製剤は、オレイン酸を含まない製剤と比較してより遅い放出プロファイルを示す。したがって、製剤へのオレイン酸の組込みは、所与の固形分濃度でオレイン酸を含まない製剤と比較して、製剤の放出プロファイルに影響を及ぼすことができる。
実施例3:ダサチニブ含有ナノ粒子の調製−乳化プロセス1
有機相の調製。20mLガラスバイアルにポリ(乳酸)−ポリ(エチレングリコール)ジブロックコポリマー(PLA−PEG)(950mg)とベンジルアルコール(9g)とを添加する。混合物を一晩ボルテックスしてポリマー−BA溶液を与える。ナノ粒子の製剤前に50mgのダサチニブをポリマー−BA溶液に添加し、ダサチニブが溶解するまで混合物をボルテックスする。
水性相の調製。1Lボトルにナトリウムコレート(SC)(4.75g)とDI水(955.25g)とを添加する。溶解するまで混合物を撹拌プレート上で撹拌する。ナトリウムコレート/水にベンジルアルコール(40g)を添加し、溶解するまで混合物を撹拌プレート上で撹拌する。
エマルジョンの形成。水性相対有機相の比は5:1である。有機相を水性相に注加し、ハンドホモジナイザーを用いて混合物を室温で10秒間ホモジナイズすることにより粗エマルジョンを形成する。粗エマルジョンをゲージで46psiの圧力に設定された高圧ホモジナイザー(110S)に供給して個別に2回通過させることによりナノエマルジョン(微細エマルジョン)を形成する。(注:1回目の通過後、5%のSCを微細エマルジョンにドープして0.5%の最終SC濃度を達成する。)
ナノ粒子の形成。撹拌プレート上で撹拌しながらナノエマルジョンを5℃未満のクエンチ(D.I.水)に注加することによりクエンチ相を形成する。クエンチ対エマルジョンの比は10:1である。100:1のTween80対薬剤の比でクエンチ相に水中Tween80(35%(w/w))を添加する。
タンジェンシャルフロー濾過(TFF)によるナノ粒子の濃縮。300kDa Pallカセット(2メンブレン)を用いてTFFによりクエンチ相を濃縮することにより約200mLのナノ粒子濃縮物を形成する。約20透析体積(4L)の冷DI水を用いてナノ粒子濃縮物を透析濾過(ダイア フィルトレーション)する。透析濾過(ダイア フィルトレーション)されたナノ粒子濃縮物の体積は最小体積に低減される。冷水(100mL)を容器に添加し、ポンプ操作でメンブレンに通して濯ぎ、スラリーを形成する。最終スラリー(約100mL)をガラスバイアルに捕集する。
未濾過最終スラリーの固形分濃度の決定。風袋測定済み20mLシンチレーションバイアルに一定量の最終スラリーを添加し、凍結乾燥機/オーブン上で真空乾燥させる。乾燥スラリーの体積中のナノ粒子の重量を決定する。最終スラリーに濃縮スクロース(0.666g/g)を添加して10%のスクロースを達する。
0.45μmの濾過最終スラリーの固形分濃度の決定。スクロースの添加前に最終スラリーサンプルの一部を0.45μmシリンジフィルターに通して濾過する。風袋測定済み20mLシンチレーションバイアルに一定量の濾過サンプルを添加し、凍結乾燥機/オーブンを用いて真空乾燥させる。スクロースを含む未濾過最終スラリーの残りのサンプルを凍結させる。
実施例4:ダサチニブ含有ナノ粒子の調製−乳化プロセス2
有機相の調製。第1の20mLガラスバイアルにポリ(乳酸)−ポリ(エチレングリコール)ジブロックコポリマー(PLA−PEG)(890mg)とエチルアセテート(16.22g)とを添加する。混合物を一晩ボルテックスしてポリマー−EA溶液を与える。第2の20mLガラスバイアルに110mgのダサチニブと4.06gの新たに調製されたベンジルアルコール(BA)中9%のオレイン酸を添加し、混合物を一晩ボルテックスして薬剤−酸−BA溶液を与える。ナノ粒子の製剤前にポリマー−EA溶液を薬剤−酸−BA溶液に添加し、混合物をボルテックスして有機相を形成する。
水性相の調製。1Lボトルにナトリウムコレート(SC)(1.2g)とDI水(955g)とを添加する。溶解するまで混合物を撹拌プレート上で撹拌する。ナトリウムコレート/水にベンジルアルコール(40g)を添加し、溶解するまで混合物を撹拌プレート上で撹拌する。
エマルジョンの形成。水性相対有機相の比は5:1である。有機相を水性相に注加し、ハンドホモジナイザーを用いて混合物を室温で10秒間ホモジナイズすることにより粗エマルジョンを形成する。粗エマルジョンをゲージで46psiの圧力に設定された高圧ホモジナイザー(110S)に供給して1回通過させることによりナノエマルジョン(微細エマルジョン)を形成する。
ナノ粒子の形成。撹拌プレート上で撹拌しながらナノエマルジョンを5℃未満のクエンチ(D.I.水)に注加することによりクエンチ相を形成する。クエンチ対エマルジョンの比は10:1である。100:1のTween80対薬剤の比でクエンチ相に水中Tween80(35%(w/w))を添加する。
タンジェンシャルフロー濾過(TFF)によるナノ粒子の濃縮。300kDa Pallカセット(2メンブレン)を用いてTFFによりクエンチ相を濃縮することにより約200mLのナノ粒子濃縮物を形成する。約20透析体積(4L)の冷DI水を用いてナノ粒子濃縮物を透析濾過する。透析濾過(ダイア フィルトレーション)されたナノ粒子濃縮物の体積は最小体積に低減される。冷水(100mL)を容器に添加し、ポンプ操作でメンブレンに通して濯ぎ、スラリーを形成する。最終スラリー(約100mL)をガラスバイアルに捕集する。
未濾過最終スラリーの固形分濃度の決定。風袋測定済み20mLシンチレーションバイアルに一定量の最終スラリーを添加し、凍結乾燥機/オーブン上で真空乾燥させる。乾燥スラリーの体積中のナノ粒子の重量を決定する。最終スラリーに濃縮スクロース(0.666g/g)を添加して10%のスクロースを達する。
0.45μmの濾過最終スラリーの固形分濃度の決定。スクロースの添加前に最終スラリーサンプルの一部を0.45μmシリンジフィルターに通して濾過する。風袋測定済み20mLシンチレーションバイアルに一定量の濾過サンプルを添加し、凍結乾燥機/オーブンを用いて真空乾燥させる。スクロースを含む未濾過最終スラリーの残りのサンプルを凍結させる。
実施例5:オレイン酸/ベンジルアルコール溶液へのダサチニブの溶解度
表5に示されるように、ベンジルアルコールにオレイン酸をドープするとダサチニブの溶解度は約2〜3倍改善することができる。ベンジルアルコール、エチルアセテートおよびオレイン酸とベンジルアルコールとの混合物へのダサチニブの溶解度は、HPLCを用いて定量した。
実施例6:オレイン酸がドープされたダサチニブ含有ナノ粒子製剤
オレイン酸ドーピングを用いてまたは用いずに11種のダサチニブ製剤を作製した。製剤条件および特徴付けを表6に提供する。ダサチニブ製剤は、オレイン酸ドーピングを用いないプレーンナノ粒子またはオレイン酸がドープされたナノ粒子として作製した。4.7%および10%の2つの固形分濃度を使用した。プレーン製剤(ロット170−51−1)では有機溶媒としてBAのみを使用したが、オレイン酸製剤ではすべて、有機溶媒として20/80BA/EA(w/w)混合物を使用した。乳化直前にEAをオレイン酸−BA混合物中にあらかじめ溶解された薬剤溶液に添加した。
表6に示されるように、すべての製剤の粒子サイズが100〜130nmの範囲内に良好に制御された。類似の粒子サイズの達成を目標とする類似の条件下で、有機溶媒としてオレイン酸−BAを含むロットは、オレイン酸を含まないロットよりもかなり少ないナトリウムコレーとを使用する傾向があった。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、この結果は、エマルジョンの安定化を支援しうる脂肪酸(たとえば、オレイン酸)の部分的な界面活性剤作用によるものとすることができる。3%のオレイン酸は0.20%の薬剤負荷を与えた。これは、対照ロット(オレイン酸を含まない製剤)の0.87%と比較して改善されなかった。しかし、6%のオレイン酸を使用すると、4.7%の固形分および9%の理論薬剤負荷で>1%の薬剤負荷が達成された。オレイン酸濃度をBA中9%に増加させると、薬剤負荷は対照ロットの負荷の約2倍の約2%に増加された。
インビトロ放出プロファイルを以下の図7および8に示した。(ダサチニブは37℃の放出緩衝液中で24時間後に分解したので、6時間までの放出データを報告した。)図7に示されるように、3%のオレイン酸のロットは、オレイン酸を用いずに製剤された対照ナノ粒子および6%のオレイン酸を用いて製剤されたナノ粒子と比較して、最も大きいバーストおよび最も速い放出を与えた。6%のオレイン酸のロットは、対照ナノ粒子のバーストに類似した約10%のバーストを与えた。最も大きい薬剤負荷の2つのロット(ロット170−100−3および170−139−8)は、対照ロットよりも比較的遅い放出を与え、それらの4時間累積放出は、対照ロットの60.99%に対してそれぞれ34.2%および43.5%であった。
図8に示されるように、9%のオレイン酸を用いると、バーストは、<5%まで大幅に抑制され、放出速度も遅くなった。4時間での薬剤放出は、約29%〜約38%の範囲内であり、6%のオレイン酸の2つの遅放ロット170−100−3および170−139−8よりもわずかに遅い。
以上の製剤は、薬剤負荷の改善および薬剤放出速度の低減の両方を行うBA中9%のオレイン酸の能力を実証する。
実施例7:コール酸がドープされたダサチニブ含有ナノ粒子製剤
コール酸がドープされた9種のダサチニブ製剤を作製した。製剤条件および特徴付けを表7に提供する。2.0および3.0%の2つの固形分濃度を使用した。製剤中の酸/薬剤モル比を変化させた。
表7に示されるように、製剤の粒子サイズは、一般に120〜150nmの範囲内に良好に制御された。3種のコール酸のそれぞれを用いて、ナノ粒子の類似の性質を得た。しかし、コール酸の代わりにリトコール酸誘導体を用いると、ナノ粒子の類似の性質を得るのに使用される酸を1/4に減らすことが可能であった。6%のデオキシコール酸を使用すると、さまざまな条件下で良好に制御された粒子サイズおよび薬剤負荷が得られた。
インビトロ放出プロファイルを表8および図9に示す。(ダサチニブは37℃の放出緩衝液中で24時間後に分解したので、6時間までの放出データを報告した。)表8および図9に示されるように、3%のリトコール酸を用いると、バーストは<7%であり、放出速度は良好に制御された。4時間薬剤放出は約22%〜約34%の範囲内であった。水性相で最大量のナトリウムコレートを用いた145−54−3製剤は、最小量のバースト放出(<5%)を生じた。145−54−3Rおよび145−107−3製剤は、より高いバースト放出を有し、かつ全体的にわずかに速いダサチニブの長期放出を有していた。
以上の製剤は、酸を用いずに調製したナノ粒子と比較して、薬剤負荷の改善および薬剤放出速度の低減の両方を行うBA中3%のオレイン酸の能力を実証する。
実施例8:ダサチニブ含有ナノ粒子の調製−乳化プロセス3
緩衝液の調製。1000mLの0.5Mリン酸(pKa2=7.2)緩衝液:pH=6.5を作製するために、約900mLの純水中に68.995gのNaH2PO4H2O(Mr=137.99)を溶解する。必要に応じてNaOH強塩基を用いて25℃の実験室温度でpH6.49に調整する。純水を用いて体積を1000mLにする。1000mLの0.37Mリン酸(pKa2=7.2)緩衝液:pH=6.5を作製するために、約900mLの純水中に46.92gのNaH2PO4H2O(Mr=137.99)を溶解する。必要に応じてNaOH強塩基を用いて25℃の実験室温度でpH6.49に調整する。純水を用いて体積を1000mLにする。1000mLの0.17Mリン酸(pKa2=7.2)緩衝液:pH=6.5を作製するために、約900mLの純水中に23.46gのNaH2PO4H2O(Mr=137.99)を溶解する。必要に応じてNaOH強塩基を用いて25℃の実験室温度でpH6.49に調整する。純水を用いて体積を1000mLにする。
パモ酸溶液の調製。容器内で2.9gのパモ酸と7.1gのDMSOとを混合することにより、DMSO中29%(w/w)のパモ酸溶液を調製した。パモ酸がすべて溶解するまで、70〜80℃の加熱オーブン内で容器を加熱した。
8%TFA/7.5%水/84.5%ベンジルアルコール(重量%)溶液の調製。トリフルオロ酢酸(TFA)(3.2g)、脱イオン(DI)水(3.0g)、およびベンジルアルコール(BA)(33.8g)を組み合わせて、8%TFA/7.5%水/84.5%ベンジルアルコール(重量%)溶液を調製した。
有機相の調製。第1の20mLガラスバイアルにポリ(乳酸)−ポリ(エチレングリコール)ジブロックコポリマー(PLA−PEG)(700mg)とエチルアセテートアルコール(7.583g)とを添加する。混合物を一晩ボルテックスしてポリマー−EA溶液を与える。第2の20mLガラスバイアルに、300mgの薬剤(ダサチニブ)と、1.736gの上記の8%TFA/7.5%水/BA溶液と、792mgの上記の29%パモ酸/DMSO溶液とを添加し、透明薬剤溶液が得られるまで混合物をボルテックスして薬剤−酸−BA溶液を与える。ナノ粒子の製剤前にポリマー−EA溶液を薬剤−酸−BA溶液に添加し、混合物をボルテックスして有機相を形成する。
水性相(0.09%のBrij100、水中4%のベンジルアルコール)の調製。1LボトルにBrij100(0.9g)とDI水(959.1g)とを添加する。溶解するまで混合物を撹拌プレート上で撹拌する。Brij/水にベンジルアルコール(40g)を添加し、溶解するまで混合物を撹拌プレート上で撹拌する。
エマルジョンの形成。水性相対油相の比は5:1である。有機相を水性相に注加し、ハンドホモジナイザーを用いて混合物を室温で10秒間ホモジナイズすることにより粗エマルジョンを形成する。粗エマルジョンをゲージで約11,000psiの圧力に設定された高圧ホモジナイザー(110S)に供給して慎重に1回通過させることによりナノエマルジョン(微細エマルジョン)を形成する。
ナノ粒子の形成。撹拌プレート上で撹拌しながらナノエマルジョンを5℃未満のクエンチ(適切モルのpH6.5リン酸緩衝液)に注加することによりクエンチ相を形成する。クエンチ対エマルジョンの比は10:1である。100:1のTween80対薬剤の比でクエンチ相に水中Tween80(35%(w/w))を添加する。
タンジェンシャルフロー濾過(TFF)によるナノ粒子の濃縮。300kDa Pallカセット(2×0.1m2)を用いてTFFによりクエンチ相を濃縮することにより約200mLのナノ粒子濃縮物を形成する。約20透析体積(4L)の冷DI水を用いてナノ粒子濃縮物を透析濾過(ダイア フィルトレーション)する。透析濾過(ダイア フィルトレーション)されたナノ粒子濃縮物の体積は最小体積に低減される。冷水(100mL)を容器に添加し、ポンプ操作でメンブレンに通して濯ぎ、スラリーを形成する。最終スラリー(約100mL)をガラスバイアルに捕集する。
未濾過最終スラリーの固形分濃度の決定。風袋測定済み20mLシンチレーションバイアルに一定量の最終スラリーを添加し、凍結乾燥機/オーブン上で真空乾燥させる。乾燥スラリーの体積中のナノ粒子の重量を決定する。最終スラリーに濃縮スクロース(0.666g/g)を添加して10%のスクロースを達成する。
0.45μmの濾過最終スラリーの固形分濃度の決定。スクロースの添加前に最終スラリーサンプルの一部を0.45μmシリンジフィルターに通して濾過する。風袋測定済み20mLシンチレーションバイアルに一定量の濾過サンプルを添加し、凍結乾燥機/オーブンを用いて真空乾燥させる。スクロースを含む未濾過最終スラリーの残りのサンプルを凍結させる。
実施例9:薬剤負荷に及ぼすクエンチpHの影響
実施例8のプロトコルを用いてパモ酸がドープされた8種のダサチニブ製剤を作製した。製剤条件および特徴付けを表9および10に提供する。製剤条件は、クエンチとしてクエン酸/リン酸緩衝液(pH4.5)またはクエンチとしてDI水のいずれかを含む。溶液は、製剤時間中、透明かつ安定であり、エマルジョンは製剤時、十分に安定であった。
表9および10に示されるように、クエン酸/リン酸緩衝液クエンチを含む製剤は、DI水クエンチを含む製剤と比較して、2倍超の薬剤負荷であった。さらに、SQ保持の結果、2〜3%の薬剤負荷損失(たとえば、14%超から約11%への低減)を生じた。
DI水クエンチを含むパモ酸製剤もまた、パモ酸の代わりにオレイン酸またはコール酸がドープされた類似の製剤と比較して、より高い薬剤負荷を有していた(上記の表6および7を参照されたい)。
均等物
当業者であれば、本明細書に記載の具体的な実施形態の多くの均等物を認識し確認することができるであろう。このような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
参照による組込み
本明細書で引用されたすべての特許、公開特許出願、ウェブサイトおよび他の参照文献
の全内容は、本出願をもって参照によりその全体が明示的に本明細書に組み込まれる。
非限定的に、本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
第1の有機相と第1の水性溶液とを組み合わせて第2の相を形成する工程と、
前記第2の相を乳化してエマルジョン相を形成する工程であって、前記エマルジョン相が、第1のポリマーと、プロトン化可能な窒素を有する塩基性治療剤と、パモ酸とを含む、工程と、
前記エマルジョン相をクエンチすることによりクエンチ相を形成する工程と、
を含む、治療用ナノ粒子の製造方法。
[態様2]
前記エマルジョン相をクエンチする工程が、前記エマルジョン相と、約2〜約8のpHを有する第2の水性溶液と、の混合を含む、態様1に記載の製造方法。
[態様3]
第1の有機相と第1の水性溶液とを組み合わせて第2の相を形成する工程と、
前記第2の相を乳化してエマルジョン相を形成する工程であって、前記エマルジョン相が、第1のポリマーと、プロトン化可能な窒素を有する塩基性治療剤と、実質的に疎水性の酸とを含む、工程と、
前記エマルジョン相をクエンチすることによりクエンチ相を形成する工程であって、前記エマルジョン相のクエンチングが、前記エマルジョン相と、約4〜約7のpHを有する第2の水性溶液と、の混合を含む、工程と、
を含む、治療用ナノ粒子の製造方法。
[態様4]
前記クエンチ相を濾過して前記治療用ナノ粒子を回収する工程をさらに含む、態様1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
[態様5]
前記第2の相の乳化前に前記第2の相で前記塩基性治療剤と前記酸とを組み合わせる工程をさらに含む、態様1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
[態様6]
前記塩基性治療剤および前記酸が、前記第2の相の乳化前に疎水性イオン対を形成する、態様5に記載の製造方法。
[態様7]
前記塩基性治療剤および前記酸が、前記第2の相の乳化前、乳化時に疎水性イオン対を形成する、態様6に記載の製造方法。
[態様8]
前記第2の相の乳化と実質的に同時に前記第2の相で前記塩基性治療剤と前記酸とを組み合わせる工程をさらに含む、態様1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
[態様9]
前記第1の有機相が前記塩基性治療剤を含み、かつ前記第1の水性溶液が前記酸を含む、態様8に記載の製造方法。
[態様10]
前記塩基性治療剤がプロトン化時に第1のpKaを有し、前記酸が第2のpKaを有し、
かつ前記エマルジョン相が、前記第1のpKaと前記第2のpKaとの間のpKa単位に等しいpHを有する水性溶液を用いてクエンチされる、態様1に記載の製造方法。
[態様11]
前記クエンチ相が、前記第1のpKaと前記第2のpKaとの間のpKa単位に等しいpHを有する、態様10に記載の製造方法。
[態様12]
前記塩基性治療剤がプロトン化時に第1のpKaを有し、前記酸が第2のpKaを有し、
かつ前記第1の水性溶液が、前記第1のpKaと前記第2のpKaとの間のpKa単位に等しいpHを有する、態様1〜11のいずれか一項に記載の製造方法。
[態様13]
前記pHが、前記第1のpKaおよび前記第2のpKaからほぼ等距離にあるpKa単位と等しい、態様10〜12のいずれか一項に記載の製造方法。
[態様14]
前記第2の水性溶液のpHが約4〜約7である、態様2または4〜13のいずれか一項に記載の製造方法。
[態様15]
前記第2の水性溶液のpHが約4〜約5である、態様2〜13のいずれか一項に記載の製造方法。
[態様16]
前記第2の水性溶液のpHが約6〜約7である、態様2〜13のいずれか一項に記載の製造方法。
[態様17]
前記第2の水性溶液がリン酸を含む、態様2〜16のいずれか一項に記載の製造方法。
[態様18]
前記第2の水性溶液がクエン酸を含む、態様2〜16のいずれか一項に記載の製造方
法。
[態様19]
前記第2の水性溶液がリン酸とクエン酸との混合物を含む、態様2〜16のいずれか一項に記載の製造方法。
[態様20]
前記第2の水性溶液がホウ酸とリン酸と酢酸との混合物を含む、態様2〜16のいずれか一項に記載の製造方法。
[態様21]
前記クエンチ相が前記エマルジョン相と実質的に同一のpHを有する、態様1〜20のいずれか一項に記載の製造方法。
[態様22]
前記クエンチ相が約4〜約7のpHを有する、態様1〜20のいずれか一項に記載の製造方法。
[態様23]
前記クエンチ相が約4〜約5のpHを有する、態様1〜20のいずれか一項に記載の製造方法。
[態様24]
前記クエンチ相が約6〜約7のpHを有する、態様1〜20のいずれか一項に記載の製造方法。
[態様25]
第1のポリマーと、プロトン化可能な窒素を有する塩基性治療剤と、パモ酸とを含む第1の有機相を乳化することによりエマルジョン相を形成する工程と、
前記エマルジョン相をクエンチすることによりクエンチ相を形成する工程と、
により調製される治療用ナノ粒子。
[態様26]
前記エマルジョン相をクエンチする工程が、前記エマルジョン相と、約2〜約8のpHを有する水性溶液と、の混合を含む、態様25に記載の治療用ナノ粒子。
[態様27]
第1のポリマーと、プロトン化可能な窒素を有する塩基性治療剤と、実質的に疎水性の酸とを含む第1の有機相を乳化することによりエマルジョン相を形成する工程と、
前記エマルジョン相をクエンチすることによりクエンチ相を形成する工程であって、前記エマルジョン相のクエンチングが、前記エマルジョン相と、約4〜約7のpHを有する水性溶液と、の混合を含む、工程と、
により調製される治療用ナノ粒子。
[態様28]
前記水性溶液のpHが約4〜約7である、態様26に記載の治療用ナノ粒子。
[態様29]
前記水性溶液のpHが約4〜約5である、態様26または27に記載の治療用ナノ粒
子。
[態様30]
前記水性溶液のpHが約6〜約7である、態様26または27に記載の治療用ナノ粒子。
[態様31]
前記水性溶液がリン酸を含む、態様26〜30のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様32]
前記水性溶液がクエン酸を含む、態様26〜30のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様33]
前記水性溶液がリン酸とクエン酸との混合物を含む、態様26〜30のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様34]
前記水性溶液がホウ酸とリン酸と酢酸との混合物を含む、態様26〜30のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様35]
前記クエンチ相を濾過して前記治療用ナノ粒子を回収する工程をさらに含む、態様25〜34のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様36]
前記クエンチ相が前記エマルジョン相と実質的に同一のpHを有する、態様25〜35のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様37]
前記クエンチ相が約4〜約7のpHを有する、態様25〜35のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様38]
前記クエンチ相が約4〜約5のpHを有する、態様25〜35のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様39]
前記クエンチ相が約6〜約7のpHを有する、態様25〜35のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様40]
約0.05〜約30重量パーセントのパモ酸と、
約0.2〜約20重量パーセントの、プロトン化可能な窒素を有する塩基性治療剤と、
約50〜約99.75重量パーセントの、ジブロックポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたはジブロックポリ(乳酸−co−グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーと、
を含む治療用ナノ粒子であって、前記治療用ナノ粒子が約10〜約30重量パーセントのポリ(エチレン)グリコールを含む、治療用ナノ粒子。
[態様41]
約0.2〜約20重量パーセントの、プロトン化可能な窒素を有する塩基性治療剤と、
パモ酸であって、前記パモ酸と前記塩基性治療剤とのモル比が約0.25:1〜約2:1である、パモ酸と、
約50〜約99.75重量パーセントの、ジブロックポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたはジブロックポリ(乳酸−co−グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーと、
を含む治療用ナノ粒子であって、前記治療用ナノ粒子が約10〜約30重量パーセントのポリ(エチレン)グリコールを含む、治療用ナノ粒子。
[態様42]
前記パモ酸と前記塩基性治療剤とのモル比が約0.5:1〜約1.5:1である、態様41に記載の治療用ナノ粒子。
[態様43]
前記パモ酸と前記塩基性治療剤とのモル比が約0.75:1〜約1.25:1である、態様41に記載の治療用ナノ粒子。
[態様44]
前記塩基性治療剤のpKaが前記パモ酸のpKaよりも少なくとも約1.0pKa単位大きい、態様40〜43のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様45]
前記塩基性治療剤のpKaが前記パモ酸のpKaよりも少なくとも約2.0pKa単位大きい、態様40〜43のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様46]
前記塩基性治療剤のpKaが前記パモ酸のpKaよりも少なくとも約4.0pKa単位大きい、態様40〜43のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様47]
パモ酸と少なくとも1つのイオン化可能なアミン部分を有する治療剤とを含む疎水性イオン対と、
約50〜約99.75重量パーセントのジブロックポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーであって、前記ポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーが、約15kDa〜約20kDaの数平均分子量のポリ(乳酸)と、約4kDa〜約6kDaの数平均分子量のポリ(エチレン)グリコールとを有する、ジブロックポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーと、
を含む治療用ナノ粒子。
[態様48]
前記塩基性治療剤のpKaと前記パモ酸のpKaとの差が少なくとも約1.0pKa単位である、態様47に記載の治療用ナノ粒子。
[態様49]
前記塩基性治療剤のpKaと前記パモ酸のpKaとの差が少なくとも約2.0pKa単位である、態様47に記載の治療用ナノ粒子。
[態様50]
前記塩基性治療剤のpKaと前記パモ酸のpKaとの差が少なくとも約4.0pKa単位である、態様47に記載の治療用ナノ粒子。
[態様51]
約0.05〜約30重量パーセントのパモ酸を含む、態様47〜50のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様52]
前記パモ酸と前記塩基性治療剤とが前記治療用ナノ粒子中で前記疎水性イオン対を形成する、態様40〜51のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様53]
約2〜約20重量パーセントの前記プロトン化可能な窒素含有治療剤を含む、態様40〜52のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様54]
約4〜約20重量パーセントの前記プロトン化可能な窒素含有治療剤を含む、態様40〜52のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様55]
約10〜約20重量パーセントの前記プロトン化可能な窒素含有治療剤を含む、態様40〜52のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様56]
約4〜約10重量パーセントの前記プロトン化可能な窒素含有治療剤を含む、態様40〜52のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様57]
前記治療剤がキナーゼ阻害剤である、態様40〜56のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様58]
前記キナーゼ阻害剤が、スニチニブ、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ、ポナチニブ、バフェチニブ、およびそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択されるチロシンキナーゼ阻害剤である、態様57に記載の治療用ナノ粒子。
[態様59]
前記治療用ナノ粒子の流体力学的直径が約60〜約150nmである、態様40〜58のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様60]
前記流体力学的直径が約90〜約140nmである、態様40〜58のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様61]
前記流体力学的直径が約90〜約120nmである、態様40〜58のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様62]
前記治療用ナノ粒子が、37℃のリン酸緩衝溶液中に配置されたときに少なくとも1分間にわたり前記治療剤を実質的に保持する、態様40〜61のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様63]
前記治療用ナノ粒子が、37℃のリン酸緩衝溶液中に配置されたときに前記治療剤の約30%未満を実質的に即時放出する、態様40〜62のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様64]
前記治療用ナノ粒子が、37℃のリン酸緩衝溶液中に配置されたときに約1時間にわたり前記治療剤の約10〜約45%を放出する、態様40〜62のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様65]
前記治療用ナノ粒子が、脂肪酸も胆汁酸もを含有していないこと以外は前記治療用ナノ粒子と実質的に同一の対照ナノ粒子の放出プロファイルと実質的に同一の放出プロファイルを有する、態様40〜64のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様66]
前記ポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーが約0.6〜約0.95のポリ(乳)酸数平均分子量分率を有する、態様40〜65のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様67]
前記ポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーが約0.6〜約0.8のポリ(乳)酸数平均分子量分率を有する、態様40〜65のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様68]
前記ポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーが約0.75〜約0.85のポリ(乳)酸数平均分子量分率を有する、態様40〜65のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様69]
前記ポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーが約0.7〜約0.9のポリ(乳)酸数平均分子量分率を有する、態様40〜65のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様70]
前記治療用ナノ粒子が約10〜約25重量パーセントのポリ(エチレン)グリコールを
含む、態様40〜69のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様71]
前記治療用ナノ粒子が約10〜約20重量パーセントのポリ(エチレン)グリコールを含む、態様40〜69のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様72]
前記治療用ナノ粒子が約15〜約25重量パーセントのポリ(エチレン)グリコールを
含む、態様40〜69のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様73]
前記治療用ナノ粒子が約20〜約30重量パーセントのポリ(エチレン)グリコールを含む、態様40〜69のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様74]
前記ポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーが、約15kDa〜約20kDaの数平均分子量のポリ(乳酸)と、約4kDa〜約6kDaの数平均分子量のポリ(エチレン)グリコールとを有する、態様40〜73のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様75]
標的化リガンドで機能化された約0.2〜約30重量パーセントのポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーをさらに含む、態様40〜74のいずれか1項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様76]
標的化リガンドで機能化された約0.2〜約30重量パーセントのポリ(乳)酸−co−ポリ(グリコール)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーをさらに含む、態様40〜75のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様77]
前記標的化リガンドがポリ(エチレン)グリコールに共有結合される、態様75または76に記載の治療用ナノ粒子。
[態様78]
パモ酸と実質的に疎水性の酸との混合物を含む、態様40〜77のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
[態様79]
態様25〜78のいずれか一項に記載の複数の治療用ナノ粒子と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む薬学的に許容可能な組成物。
[態様80]
糖をさらに含む、態様79に記載の薬学的に許容可能な組成物。
[態様81]
シクロデキストリンをさらに含む、態様79または80に記載の薬学的に許容可能な組成物。
[態様82]
前記糖が、スクロースまたはトレハロースまたはそれらの混合物からなる群から選択される二糖である、態様80に記載の薬学的に許容可能な組成物。
[態様83]
前記シクロデキストリンが、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、ヘプタキス−(2,3,6−トリ−O−ベンジル)−β−シクロデキストリン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、態様81に記載の薬学的に許容可能な組成物。
[態様84]
癌の治療のための、態様25〜78のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子を含む組成物。
[態様85]
前記癌が慢性骨髄性白血病である、態様84に記載の組成物。
[態様86]
前記癌が、慢性骨髄単球性白血病、好酸球増加症候群、腎細胞癌、肝細胞癌、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病、非小細胞肺癌、膵臓癌、乳癌、固形腫瘍、およびマントル細胞性リンパ腫からなる群から選択される、態様84に記載の組成物。
[態様87]
胃腸間質腫瘍の治療のための、態様25〜78のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子を含む組成物。