以下、本明細書記載の本発明の様々な側面及び実施形態について説明する。ただし、特定の実施形態により本発明の範囲が規定されるわけではない。むしろ、これらの実施形態は、開示の発明の範囲に含まれる様々な構成要素及び方法の非限定的な例にすぎない。以下の説明は、当業者にそうした観点から読まれるべきものである。したがって、当業者に周知の事項は必ずしも含まれていない。
[定義]
以下の用語及び語句は、本明細書中では、特に断りがない限り、次のような意味を有する。ただし、本開示では、本明細書中に特に規定されていない他の用語及び語句が用いられることもある。そうした他の用語及び語句は、本開示の文脈内で当業者に理解されるような意味を有するものとする。場合によっては、用語又は語句は単数形又は複数形で規定されることがある。そうした場合、明白な断りがない限り、単数形の用語は、その複数形の対応するものを含有し得る。また、複数形の用語は、その単数形の対応するものを含有し得る。
本明細書で用いられるとき、文脈上特に明白に断りがない限り、単数形の語は、複数の指示物を含む。例えば、「置換基」と言う場合、それは単一の置換基及び2以上の置換基等を包含する。
本明細書で用いられるとき、「例えば」、「のような」、「といった」又は「含む」という用語は、より一般的な主題を更に明らかにする例を紹介することを意図している。特に断りがない限り、これらの例は、本開示で説明されている本願の理解を補助するためのものとして提示されているにすぎず、いかなる形でも限定を意図したものではない。また、こうした用語は、開示の実施形態のいかなる好適例を示すものでもない。
本明細書で用いられるとき、「ポリマー」とは、当該ポリマーに比べて分子質量が比較的低い物質から成る構成単位の複数の繰り返しを含む化学構造を有する物質を指す。「ポリマー」という用語は、繰り返し単位の鎖を含む可溶性及び/又は可融性の分子、並びに、不溶性及び不融性のネットワークを包含する。
本明細書で用いられるとき、「モノマー」とは、重合反応され、それによりポリマーの化学構造に構成単位を寄与することができる物質を指す。
本明細書で用いられるとき、「コポリマー」とは、2種以上のモノマーから形成される構成単位を有するポリマーを指す。
本明細書で用いられるとき、「反応」及び「化学反応」とは、用いられる試薬又は機序に関係なく、ある物質を生成物へと変換させることをいう。
本明細書で用いられるとき、「反応生成物」とは、1又は複数の反応物質の化学反応により生成される物質を指す。
本明細書で用いられるとき、「収率」とは、反応で形成される反応生成物の量を指す。パーセント(%)単位で表されるとき、収率との用語は、実際に形成される反応生成物量を、全ての限界反応物質が生成物に変換された場合に形成され得る反応生成物量の百分率比として指す。
本明細書で用いられるとき、「混合」、「混合された」又は「混合物」とは概して、2以上の組成の任意の組み合わせを指す。こうした2以上の組成は、同一の物理的状態である必要はない。つまり、固体を液体と「混合」し、例えば、スラリー、懸濁液又は溶液を生成することができる。また、これらの用語は、組成の均質度又は均一度を何ら必要とするものではない。したがって、そうした「混合物」は、均質であっても不均質であっても、又は、均一であっても不均一であってもよい。また、これらの用語は、工業用ミキサーといった、混合を行うための特別な機器の使用を必要とするものではない。
本明細書で用いられるとき、「メタセシス触媒」とは、オレフィンメタセシス反応に触媒作用を及ぼす任意の触媒又は触媒系を包含する。
本明細書で用いられるとき、「天然油」、「天然原料」又は「天然油原料」とは、植物又は動物から得られる油類を指す。これらの用語は、特に指示がない限り、天然油誘導体を含む。また、これらの用語は、特に指示がない限り、(例えば、遺伝子組み換え植物又は遺伝子組み換え動物といった)変性植物源又は変性動物源を含む。天然油の例として、以下に限定されるわけではないが、植物油、藻類油、魚油、動物脂肪、タル油、これらの油類の誘導体及びこれらの油類の任意の組み合わせ等が挙げられる。植物油の代表的な非限定的な例として、菜種油(カノーラ油)、ココナツ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、パーム油、落花生油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油、ヒマワリ油、亜麻仁油、パーム核油、桐油、ジャトロファ油、マスタード油、グンバイナズナ油、ツバキ油、麻美油及びヒマシ油が挙げられる。動物脂肪の典型的かつ非限定的な例として、ラード、獣脂、家禽脂肪、イエローグリース及び魚油がある。タル油は木材パルプ製造の副産物である。いくつかの実施形態では、天然油又は天然油原料は、1又は複数の不飽和グリセリド類(例えば、不飽和トリグリセリド類)を含む。いくつかのそうした実施形態では、天然油原料は、天然油原料の全重量に基づいて、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%又は少なくとも99重量%の1又は複数の不飽和トリグリセリド類を含む。
本明細書で用いられるとき、「天然油の誘導体」とは、当分野で知られている方法の1つ又は組み合わせを用いて天然油から誘導された化合物又は化合物の混合物を指す。そうした方法として、以下に限定されるわけではないが、鹸化、油脂分解、エステル交換、エステル化、(部分的、選択的又は完全な)水素化、異性化、酸化及び還元が挙げられる。天然油誘導体の典型的かつ非限定的な例として、天然油のガム類、リン脂質類、ソーダ油滓、ダーク油、蒸留物又は蒸留スラッジ、脂肪酸類、脂肪酸アルキルエステル(例えば、非限定的な例として、2‐エチルヘキシルエステル)及びこれらのヒドロキシ置換した変種が挙げられる。例えば、天然油誘導体は、天然油のグリセリドから誘導された脂肪酸メチルエステル(FAME)であってもよい。いくつかの実施形態では、原料の例として、カノーラ油又は大豆油が挙げられ、非限定的な例として、精製され、漂白され、そして脱臭された大豆油(すなわち、RBD大豆油)が挙げられる。大豆油は典型的には、約95重量%以上(例えば99重量%以上)の脂肪酸類のトリグリセリドを含む。大豆油のポリオールエステル類中の主な脂肪酸類には、飽和脂肪酸類及び不飽和脂肪酸類があり、飽和脂肪酸類の非限定的な例として、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)及びステアリン酸(オクタデカン酸)が挙げられ、不飽和脂肪酸類の非限定的な例として、オレイン酸(9‐オクタデセン酸)、リノール酸(9,12‐オクタデカジエン酸)及びリノレン酸(9,12,15‐オクタデカトリエン酸)が挙げられる。
本明細書中の「メタセシス」及び「メタセシス化」とは、メタセシス触媒の存在下で原料を反応させて、新たなオレフィン化合物、すなわち、「メタセシスされた」化合物を含む「メタセシスされた生成物(メタセシス生成物)」を形成することをいう。メタセシス化とは、特定のタイプのオレフィンメタセシスに限定されず、交差メタセシス(通称コーメタセシス)、自己メタセシス、開環メタセシス、開環メタセシス重合(ROMP)、閉環メタセシス(RCM)及び非環式ジエンメタセシス(ADMET)のことを言及し得る。いくつかの実施形態では、メタセシス化とは、触媒の存在下での、天然原料の中に存在している2つのトリグリセリド類の反応(自己メタセシス)のことを言及することができ、ここでそれぞれのトリグリセリドは不飽和の炭素‐炭素二重結合を有し、それにより、トリグリセリドダイマーを含み得るオレフィン類とエステル類との新たな混合物を形成する。そうしたトリグリセリドダイマー類は、2以上のオレフィン結合を有することができ、それにより高次のオリゴマー類が形成され得る。また、いくつかの他の実施形態では、メタセシス化とは、オレフィン(例えば、エチレン)と1以上の不飽和の炭素‐炭素二重結合を有する天然原料のトリグリセリドとを反応させることにより、新たなオレフィン分子及び新たなエステル分子を形成すること(交差メタセシス)を言及し得る。
本明細書で用いられるとき、「エステル」又は「エステル類」とは、R‐COO‐R’の一般式を有する化合物を指し、ここで、R及びR’は、ヘテロ原子を含む置換基を有するものといった任意の有機基(例えば、アルキル基、アリール基又はシリル基)を指す。特定の実施形態では、R及びR´は、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルコール基を指す。特定の実施形態では、「エステル類」という用語は、上記の一般式を有する化合物の群を指すことがあり、これらの化合物は様々な炭素鎖長を有する。
本明細書で用いられるとき、「アルコール」又は「アルコール類」とは、R‐OHの一般式を有する化合物を指し、ここで、Rは、ヘテロ原子を含む置換基を有するものといった任意の有機部分(例えば、アルキル基、アリール基又はシリル基)を指す。特定の実施形態では、Rは、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルコール基を指す。特定の実施形態では、「アルコール」又は「アルコール類」という用語は、上記の一般式を有する化合物の群を示すことがあり、これらの化合物は様々な炭素鎖長を有する。「ヒドロキシル」という用語は、‐OH部分を指す。
本明細書で用いられるとき、「アルデヒド」又は「アルデヒド類」とは、R‐CHOの一般式を有する化合物を指し、ここで、Rは、ヘテロ原子を含む置換基を有するものといった任意の有機部分(例えば、アルキル基、アリール基又はシリル基)を指す。特定の実施形態では、Rは、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルコール基を指す。特定の実施形態では、「アルデヒド類」という用語は、上記の一般式を有する化合物の群を指すことがあり、これらの化合物は様々な炭素鎖長を有する。「ホルミル」という用語は、‐CHO部分を指す。
本明細書で用いられるとき、「酸」又は「酸類」とは、R‐COOHの一般式を有する化合物を指し、ここで、Rは、ヘテロ原子を含む置換基を有するものといった任意の有機部分(例えば、アルキル基、アリール基又はシリル基)を指す。特定の実施形態では、Rは、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルコール基を指す。特定の実施形態では、「酸類」という用語は、上記の一般式を有する化合物の群を指すことがあり、これらの化合物は様々な炭素鎖長を有する。「カルボキシル」という用語は、‐COOH部分を指す。「カルボキシル化」との用語は、「カルボキシル」基が別の基又は化合物に形成されることをいう。
本明細書で用いられるとき、「アミン」又は「アミン類」とは、R‐N(R’)(R”)の一般式を有する化合物を指し、ここで、R、R’及びR”は、ヘテロ原子を含む置換基を有するものといった水素部分又は有機部分(例えば、アルキル基、アリール基又はシリル基)を指す。特定の実施形態では、R、R’及びR”は、水素基、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルコール基を指す。特定の実施形態では、「アミン類」という用語は、上記の一般式を有する化合物の群を指すことがあり、これらの化合物は様々な炭素鎖長を有する。「アミノ」という用語は、-N(R)(R’)部分を指す。
本明細書で用いられるとき、「炭化水素」は、炭素及び水素から成る有機基を指す。こうした有機基は、飽和であっても不飽和であってもよく、芳香族基を有することができる。「ヒドロカルビル」という用語は、一価又は多価の炭化水素部分を指し得る。
本明細書で用いられるとき、「オレフィン」及び「オレフィン類」とは、1以上の炭素‐炭素二重結合を有する炭化水素化合部を指す。特定の実施形態では、「オレフィン類」という用語は、様々な炭素鎖長を有する不飽和の炭素‐炭素二重結合化合物の群を指す。特に断りのない限り、「オレフィン」及び「オレフィン類」という用語は、2以上の炭素‐炭素二重結合を有する「多価不飽和オレフィン類」又は「ポリオレフィン類」を包含する。本明細書で用いられるとき、「一価不飽和オレフィン類」又は「モノオレフィン類」とは、炭素‐炭素二重結合を1のみ有する化合物を指す。
いくつかの場合には、オレフィンは、「アルケン」であってもよく、これは、2〜30の炭素原子及び1又は複数の炭素‐炭素二重結合を有する直鎖又は枝分れ鎖の非芳香族炭化水素を指し、後述するように、様々な程度の置換が許容され得る。「一価不飽和のアルケン」は、1の炭素‐炭素二重結合を有するアルケンを指し、「多価不飽和のアルケン」は、2以上の炭素‐炭素二重結合を有するアルケンを指す。また、本明細書で用いられるとき、「低級アルケン」は、2〜8の炭素原子を有するアルケンを指す。
本明細書で用いられるとき、「α‐オレフィン」は、末端炭素‐炭素二重結合を有する(先に定義されている)オレフィンを指す。いくつかの実施形態では、α‐オレフィンは、末端アルケンであり、これは、末端炭素−炭素二重結合を有する(先に定義されている)アルケンである。他の炭素‐炭素二重結合も存在し得る。
本明細書で用いられるとき、「エステル‐アルケン分子」とは、(末端及び内部アルケン類、並びに、多価不飽和アルケン類を含む)アルケンを指し、これは、エステル官能基(すなわち、‐C(=O)‐OR、ここで、Rは、有機基である)をさらに有する。本明細書で用いられるとき、「α‐エステル‐alk(アルキ)‐ω‐ene(エン)分子」とは、(先に定義されているように)末端アルケンを指し、これは、エステル官能基(すなわち、‐C(=O)‐OR、ここで、Rは、有機基である)をさらに有する。ここで、末端炭素‐炭素二重結合の非末端炭素と、エステル官能基のカルボニル炭素との間には、1以上の飽和炭素が存在する。1以上の飽和炭素は、置換されていても無置換であってもよい。非限定的な例として、3‐ブテン酸アルキルエステル類、4‐ペンテン酸アルキルエステル類、6‐ヘプテン酸アルキルエステル類、9‐デセン酸アルキルエステル類及び12‐トリデセン酸アルキルエステル類といった化合物が挙げられる。同様に、本明細書で用いられるとき、「α‐(カルボキシル酸)‐alk‐ω‐ene分子」とは、(先に定義されているように)末端アルケンを指し、これは、カルボキシル官能基(すなわち、‐CO2H)をさらに有する。ここで、末端炭素‐炭素二重結合の非末端炭素と、カルボキシル官能基のカルボニル炭素との間には、1以上の飽和炭素が存在する。本明細書で用いられるとき、「alk‐ω‐ene分子」とは、(先に定義されている)末端アルケンを指し、これは、別の官能基(例えば、アミン、ヒドロキシル及びアルデヒド等)をさらに有する。ここで、末端炭素‐炭素二重結合の非末端炭素と、官能基(例えば、カルボニル含有官能基のカルボニル炭素、又は、非カルボニル含有官能基のヘテロ原子)との間には、1以上の飽和炭素が存在する。
本明細書で用いられるとき、「アルキル」は、1〜30の炭素原子を有する直鎖又は枝分れ鎖の飽和炭化水素を指し、後述するように、任意選択的には様々な程度の置換が許容され得る。本明細書で用いられる「アルキル」の例として、以下に限定されるわけではないが、メチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、イソブチル、n‐ブチル、sec‐ブチル、tert‐ブチル、イソペンチル、n‐ペンチル、ネオペンチル、n‐ヘキシル及び2‐エチルヘキシルが挙げられる。アルキル基中の炭素原子数は、「Cx‐yアルキル」という語句で表され、これは、本明細書では、x以上y以下の炭素原子を有するアルキル基を指すものとして定義される。したがって、「C1‐6アルキル」は、1〜6の炭素原子、並びに、例えば、以下に限定されるわけではないが、メチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、イソブチル、n‐ブチル、sec‐ブチル、tert‐ブチル、イソペンチル、n‐ペンチル、ネオペンチル及びn‐ヘキシルを有するアルキル鎖を表す。いくつかの場合には、「アルキル」基は二価であり、この場合、当該基は代替的に「アルキレン」基ということもできる。また、いくつかの場合には、アルキル基中の1又は複数の炭素原子は、(例えば、可能であれば、N‐オキシド類、サルファオキシド類及びサルファダイオキサイド類を含む窒素、酸素又は硫黄から選択される)ヘテロ原子に置き換えることができ、「ヘテロアルキル」基といわれる。
本明細書で用いられるとき、「アルケニル」は、2〜30の炭素原子及び1又は複数の炭素‐炭素二重結合を有する直鎖又は枝分れ鎖の非芳香族炭化水素を指し、後述するように、任意選択的には様々な程度の置換が許容され得る。本明細書で用いられる「アルケニル」の例として、以下に限定されるわけではないが、エテニル、2‐プロペニル、2‐ブテニル及び3‐ブテニルが挙げられる。アルケニル基中の炭素原子数は、「Cx‐yアルケニル」という語句で表され、これは、本明細書では、x以上y以下の炭素原子を有するアルケニル基を指すものとして定義される。したがって、「C2‐6アルケニル」は、2〜6の炭素原子、並びに、例えば、以下に限定されるわけではないが、エテニル、2‐プロペニル、2‐ブテニル及び3‐ブテニルを有するアルケニル鎖を表す。いくつかの場合には、「アルケニル」基は二価であり、この場合、当該基は代替的に「アルケニレン」基ということもできる。また、いくつかの場合には、アルケニル基中の1又は複数の飽和炭素原子は、(例えば、可能であれば、N‐オキシド類、サルファオキシド類及びサルファダイオキサイド類を含む窒素、酸素又は硫黄から選択される)ヘテロ原子に置き換えることができ、「ヘテロアルケニル」基といわれる。
本明細書で用いられるとき、「アルキニル」とは、2〜30の炭素原子及び1又は複数の炭素‐炭素三重結合を有する直鎖又は枝分れ鎖の非芳香族炭化水素を指し、後述するように、任意選択的には様々な程度の置換が許容され得る。本明細書で用いられる「アルキニル」の例として、以下に限定されるわけではないが、エチニル、2‐プロピニル、2‐ブチニル及び3‐ブチニルが挙げられる。アルキニル基中の炭素原子数は、「Cx‐yアルキニル」という語句で表され、これは、本明細書では、x以上y以下の炭素原子を有するアルキニル基を指すものとして定義される。したがって、「C2‐6アルキニル」は、2〜6の炭素原子、並びに、例えば、以下に限定されるわけではないが、エチニル、2‐プロピニル、2‐ブチニル及び3‐ブチニルを有するアルキニル鎖を表す。いくつかの場合には、「アルキニル」基は二価であり、この場合、当該基は代替的に「アルキニレン」基ということもできる。また、いくつかの場合には、アルキニル基中の1又は複数の飽和炭素原子は、(例えば、可能であれば、N‐オキシド類、サルファオキシド類及びサルファダイオキサイド類を含む窒素、酸素又は硫黄から選択される)ヘテロ原子に置き換えることができ、「ヘテロアルキニル」基といわれる。
本明細書で用いられるとき、「アリール」は、6〜30員の環状芳香族炭化水素を指し、後述するように、任意選択的には様々な程度の置換が許容され得る。本明細書で用いられる「アリール」基の例として、以下に限定されるわけではないが、フェニル及びナフチルが挙げられる。本明細書で用いられるとき、「アリール」という用語はさらに、フェニル基又はナフチル基が1〜3の非芳香族の飽和又は不飽和の環状炭素と任意選択的に縮合した環構造を包含する。例えば、「アリール」は、(1又は複数の)芳香族環又は非芳香族環に結合を有するインデンといった環構造を有し得る。本明細書で用いられるとき、「アリールアルキル」とは、(先に定義されている)アルキル置換基を指し、アルキル置換基はさらに、1又は複数の(例えば、1〜3の)(本明細書で定義されている)アリール基で置換される。類似して、「アルキルアリール」とは、アリール置換基を指し、アリール置換基はさらに、1又は複数の(例えば、1〜5の)アルキル基で置換される。
本明細書で用いられるとき、「ヘテロアリール」という用語は、5〜30員の単環構造又は多環構造を指し、これは、1以上の芳香族環及び1又は複数のヘテロ原子を含む。こうした「ヘテロアリール」基は、後述するように、任意選択的には様々な程度の置換が許容され得る。1以上の芳香族環と1以上の非芳香族環とを有する多環状の「ヘテロアリール」基において、(1又は複数の)芳香族環は、ヘテロ原子を含んでいなくてもよい。したがって、例えば、「ヘテロアリール」は、本明細書で用いられるとき、インドリニルを包含し得る。また、結合点は、当該結合点を有する環が芳香族であるかヘテロ原子を含むか否かに関わらず、環構造内の任意の環とすることができる。したがって、例えば、「ヘテロアリール」は、本明細書で用いられるとき、インドリン‐1‐イル、インドリン‐3‐イル及びインドリン‐5‐イルを包含し得る。ヘテロ原子の例として、可能であれば、N‐オキシド類、サルファオキシド類及びサルファダイオキサイド類を含む窒素原子、酸素原子又は硫黄原子が挙げられる。本明細書で用いられるとき、「ヘテロアリール」基の例として、以下に限定されるわけではないが、フリル、チオフェニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、1,2,4‐トリアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾ[b]チオフェニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、プテリジニル及びフェナジニルが挙げられ、結合は、化学的に実現可能でありさえすれば上記環の任意の点で生じることができる。したがって、例えば、「チアゾリル」とは、Thiaz(チアゾ)‐2‐il(イル)、Thiaz‐4‐il及びThiaz‐5‐ilを指す。本明細書で用いられるとき、「ヘテロアリールアルキル」とは、(先に定義されている)アルキル置換基を指し、アルキル置換基はさらに、1又は複数の(例えば、1〜3の)(本明細書で定義されている)ヘテロアリール基で置換される。類似して、「アルキルヘテロアリール」とは、アリール置換基を指し、アリール置換基はさらに、1又は複数の(例えば、1〜5の)アルキル基で置換される。
本明細書で用いられるとき、「アルコキシ」とは、‐ORを指し、ここで、Rは、(先に定義されているように)アルキル基である。アルキル基中の炭素原子数は、「Cx‐yアルコキシ」という語句で表され、これは、本明細書では、x以上y以下の炭素原子を有するアルキル基を含むアルコキシ基を指すものとして定義される。
本明細書で用いられるとき、「ハロゲン」又は「ハロ」とは、フッ素、塩素、臭素及び/又はヨウ素を指す。いくつかの実施形態ではこれらの用語は、フッ素及び/又は塩素を指す。本明細書で用いられるとき、「ハロアルキル」又は「ハロアルコキシ」とはそれぞれ、1又は複数のハロゲン原子で置換された、アルキル基又はアルコキシ基を指す。「ペルフルオロアルキル」又は「ペルフルオロアルコキシ」とはそれぞれ、全ての可能な水素がフッ素で置換されたアルキル基及びアルコキシ基を指す。
本明細書で用いられるとき、「置換された」とは、所定部分の1又は複数の水素の、特定の置換基又は複数の置換基との置換を指し、置換により安定的又は化学的に実現可能な化合物が得られれば、特に記載のない限り、様々な程度の置換が許容される。安定的な化合物又は化学的に実現可能な化合物とは、湿気若しくはその他の化学反応条件の非存在下で、少なくとも1週間、約−80℃〜約+40℃の温度で保管した場合に、化学構造が実質的に変化しないもの、又は、患者への治療投与又は予防投与に適する程十分長い間、完全性を維持することができるものをいう。本明細書で用いられるとき、「1又は複数の・・・で置換された」又は「1回又は複数回置換された」という語句は、上述した安定かつ化学的に実現可能な条件が満たされた場合の、1から、存在する結合サイト数に基づく最大置換基数までの置換基数を指す。
本明細書で用いられるとき、「任意選択的」とは、その後に記載される(1又は複数の)イベントが生じても生じなくてもよいことを意味する。いくつかの実施形態では、任意選択的なイベントは生じない。また、いくつかの実施形態では、任意選択的なイベントは1回又は複数回生じる。
本明細書で用いられるとき、「有する」、「含む」、「備える」又は「から成る」とは、オープンな群を指し、つまり、明示的に記載されたものに加えてそれ以外の余計な要素も含まれることを意味する。例えば、「Aを有する」という語句は、Aは必須に存在するが、その他の要素も存在し得ることを意味する。「持つ」、「有し」、「含み」及びこれらの文法的変化形も同様の意味を有する。逆に、「から構成される」等はクローズドな群を指す。例えば、「Aから構成される」という語句は、Aのみが存在することを意味する。
本明細書で用いられるとき、「又は」は、合理的な最も広い解釈がなされるべきであり、いずれか一方との解釈に限定されるものではない。したがって、「A又はBを有する」という語句は、BでなくAが存在しても、AでなくBが存在しても、又は、A及びBの両方が存在してもよいことを意味する。また、Aが、例えば、複数の要素(例えば、A1及びA2)を含むクラスを規定する場合、そのクラスの1又は複数の要素が同時に存在することもあり得る。
本明細書で用いられるとき、例えば、特定温度で測定される「動粘度」とは、米国材料試験協会(ASTM)(米国ペンシルバニア州ウエスト・コーンショホッケン)から出版の試験方法であるASTM D445‐11aに基づいて動粘度を測定した場合に得られる値を指す。
本明細書で用いられるとき、例えば、特定温度で測定される「ブルックフィールド粘度」とは、ASTM(米国ペンシルバニア州ウエスト・コーンショホッケン)から出版の試験方法であるASTM D2983‐09に基づいてブルックフィールド粘度を測定した場合に得られる値を指す。
本明細書で用いられるとき、「粘度指数」とは、ASTM(米国ペンシルバニア州ウエスト・コーンショホッケン)から出版の試験方法であるASTM D2270に基づいて測定された、材料粘度の温度に対する変化を指す。
本明細書で用いられるとき、「アニリン点」とは、ASTM(米国ペンシルバニア州ウエスト・コーンショホッケン)から出版の試験方法であるASTM D611‐12に基づいて測定された、等量のアニリンと試験材料(例えば、油)とを混合することができる温度を指す。
本明細書で用いられるとき、範囲で表された特性値は、特性が、記載の限界点及びそれらの間の任意の値を持ち得ることを意味する。例えば、「100℃における動粘度は25〜100センチストークである」との語句は、100℃において、動粘度は、25センチストーク以上かつ100センチストーク以下の任意の値であり得ることを意味する。ただし、こうした範囲の記載は、均等論の適用を何ら制限するものではない。
いくつかの場合には、特性値は、オープンエンドの範囲を用いて表すことができる。例えば、「100℃における動粘度は少なくとも40センチストークである」との語句は、100℃において、動粘度は、40センチストーク以上の任意の値であり、当業者には理解されるように、組成物が意図された有用性を果たさなくなる値未満の値であり得ることを意味する。
本明細書で表される様々な官能基は、ハイフン若しくはダッシュ(‐)又はアステリスク(*)を持つ官能基に結合点を有するものとして理解されたい。すなわち、‐CH2CH2CH3の場合、結合点は最も左のCH2基であると理解されるだろう。基がアステリスク又はダッシュを付さずに記載されていれば、結合点はその基の一般的かつ通常の意味により示されるものである。
本明細書で用いられるとき、多原子二価種は、左から右へ読まれるべきものである。例えば、明細書又は特許請求の範囲に、A‐D‐Eであって、Dは、‐OC(O)‐と定義される、と記載されている場合、Dを置き換えて得られる基は、A‐C(O)O‐EでなくA‐OC(O)‐Eである。
その他の語句については、本明細書のこの小節には記載されていないが他の部分で定義される。
再生可能な原料を由来とする化合物を含む潤滑剤
例えば、従来の基油又は多くの合成基油に用いられる石油系材料は再生不可能性であるため、潤滑剤組成物のいくつかの成分を特定の再生可能な原料から得られることが望ましいと考えられる。例えば、いくつかの実施形態では、基油の1又は複数の成分は、天然油及びそれらの誘導体といった特定の再生可能原料から得られる。
オレフィンメタセシスは、ある天然油原料を、様々な用途に用いることができるか、又は、さらに化学的変化させて様々な用途に用いることができるオレフィン類及びエステル類に変換する方法の1つである。いくつかの実施形態では、例えば、天然油及び/又はそれらの脂肪酸若しくは脂肪酸エステル誘導体のメタセシス反応により形成される再生可能原料といった再生可能原料から、組成物(又は組成物の成分)を形成することができる。炭素‐炭素二重結合を有する化合物がメタセシス触媒の存在下でメタセシス反応すると、元の炭素‐炭素二重結合は解消され、新たな炭素‐炭素二重結合が形成される。こうしたメタセシス反応の生成物は、様々な箇所に炭素‐炭素二重結合を有しており、それにより、有用な化学特性を有する不飽和有機化合物が得られる。
潤滑剤の再生可能原料として、例えば、重合可能な炭素‐炭素二重結合を有する不飽和化合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、重合可能な炭素‐炭素二重結合は末端位置にある。こうした不飽和化合物は、オレフィン炭化水素及びオレフィンエステル化合物といった様々な化合物を含み得る。こうした不飽和化合物を、重合反応におけるモノマー類として、単独で又はその他のモノマー類及び添加剤と組み合わせて用いることにより、例えば、潤滑剤の基油又は添加剤といった特定用途に用いられる高分子量物質が得られる。不飽和化合物を単独で重合してホモポリマー類を形成しても、その他のコモノマー類と重合してコポリマー類を形成してもよい。その他のコモノマー類の例として、従来の石油化学原料から形成される物質が挙げられる。こうした化合物はさらに、特定のパーソナルケア用途、例えば、軟化剤、乳化剤及び溶解剤等に利用することができる。
オレフィンメタセシス
いくつかの実施形態では、天然油又は天然油誘導体をメタセシスすることにより、1又は複数の不飽和モノマー類を製造することができる。「メタセシス」又は「メタセシス化」という用語は、以下に限定されるわけではないが、交差メタセシス、自己メタセシス、開環メタセシス、開環メタセシス重合(ROMP)、閉環メタセシス(RCM)及び非環式ジエンメタセシス(ADMET)といった多種多様な反応を指し得る。所望の生成物又は生成混合物によって任意の適切なメタセシス反応を用いることができる。
いくつかの実施形態では、天然油原料の任意選択的な前処理の後に、天然油原料をメタセシス触媒の存在下のメタセシス反応器で反応させる。いくつかの他の実施形態では、不飽和エステル(例えば、不飽和トリグリセリドといった不飽和グリセリド)をメタセシス触媒の存在下のメタセシス反応器で反応させる。これらの不飽和エステル類は、天然油原料の成分であっても、その他の原料(例えば、事前に行われたメタセシス反応で生成されたエステル類)由来のものであってもよい。特定の実施形態では、メタセシス触媒の存在下で、天然油又は不飽和エステルはそれ自体と自己メタセシス反応する。他の実施形態では、天然油又は不飽和エステルは、低分子量オレフィン又は中質(mid‐weight)オレフィンと交差メタセシス反応する。自己メタセシス反応及び/又は交差メタセシス反応によってメタセシス生成物が形成される。メタセシス生成物はオレフィン類及びエステル類を含む。
いくつかの実施形態では、低分子量オレフィンは、C2‐6の範囲である。非限定的な例として、一実施形態では、低分子量オレフィンは、エチレン、プロピレン、1‐ブテン、2‐ブテン、イソブテン、1‐ペンテン、2‐ペンテン、3‐ペンテン、2‐メチル‐1‐ブテン、2‐メチル‐2‐ブテン、3‐メチル‐1‐ブテン、シクロペンテン、1,4‐ペンタジエン、1‐ヘキセン、2‐ヘキセン、3‐ヘキセン、4‐ヘキセン、2‐メチル‐1‐ペンテン、3‐メチル‐1‐ペンテン、4‐メチル‐1‐ペンテン、2‐メチル‐2‐ペンテン、3‐メチル‐2‐ペンテン、4‐メチル‐2‐ペンテン、2‐メチル‐3‐ペンテン及びシクロヘキセンのうち少なくとも1つを含んでいてもよい。いくつかの場合には、高分子量オレフィンを用いることもできる。
いくつかの実施形態では、メタセシスは、天然油原料(又は別の不飽和エステル)をメタセシス触媒の存在下で反応させるステップを含む。いくつかの実施形態では、メタセシスは、1又は複数の不飽和グリセリド類(例えば、不飽和トリグリセリド類)をメタセシス触媒の存在下の天然油原料中で反応させるステップを含む。いくつかの実施形態では、不飽和グリセリドは、オレイン酸、リノール酸、リノール酸又はこれらの組み合わせから成る1又は複数のエステル類を含む。いくつかの他の実施形態では、不飽和グリセリドは、(先述したような)別の不飽和グリセリドの部分的水素化及び/又はメタセシスの生成物である。いくつかのこうした実施形態では、メタセシスは、上述した不飽和トリグリセリド種のうち任意のものと、別のオレフィン、例えば、アルケンとの交差メタセシスである。また、いくつかのこうした実施形態では、交差メタセシスに用いられるアルケンは、低級アルケン、例えば、エチレン、プロピレン、1‐ブテン及び2‐ブテン等である。いくつかの実施形態では、アルケンは、エチレンである。いくつかの他の実施形態では、アルケンは、プロピレンである。いくつかの別の実施形態では、アルケンは、1‐ブテンである。いくつかのさらに別の実施形態では、アルケンは、2‐ブテンである。
メタセシス反応を、本明細書中に記載の方法で利用すれば、様々な有用な生成物を得ることができる。例えば、末端オレフィン類及び内部オレフィン類は、高価な組成物のみならず、天然油原料を由来とすることができる。また、いくつかの実施形態では、メタセシス触媒の存在下での、天然油原料の自己メタセシス反応、又は、天然油原料と低分子量オレフィン若しくは中質オレフィンとの交差メタセシス反応により、多数の高価な組成物を目標物とすることができる。そうした高価な組成物として、燃料組成物、洗剤、界面活性剤及びその他の特殊化学品が挙げられる。また、エステル交換生成物(すなわち、アルコールの存在下で、エステルをエステル交換することで生成される生成物)を目標物とすることもでき、その非限定的な例として、脂肪酸メチルエステル類(「FAMEs」);バイオディーゼル;9‐デセン酸(「9DA」)エステル類、9‐ウンデセン酸(「9UDA」)エステル類及び/又は9‐ドデセン酸(「9DDA」)エステル類;9DA、9UDA及び/又は9DDA;9DA、9UDA及び/又は9DDAのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩;エステル交換生成物のダイマー類;これらの混合物が挙げられる。
また、いくつかの実施形態では、本明細書で記載の方法で複数のメタセシス反応を利用することができる。いくつかの実施形態では、複数のメタセシス反応は、同一の反応器中で連続的に行われる。例えば、リノール酸を含むグリセリドを、末端低級アルケン(例えば、エチレン、プロピレン及び1‐ブテン等)とメタセシスして1,4‐デカジエンを形成し、形成された1,4‐デカジエンを末端低級アルケンで再びメタセシスして1,4‐ペンタジエンを形成することができる。他の実施形態では、複数のメタセシス反応を連続的に行わず、最初のメタセシスステップと次のメタセシスステップとの間に1以上の他のステップ(例えば、エステル交換及び水素化等)を行ってもよい。こうした様々なメタセシスの手順を利用すれば、入手可能な出発原料を用いて、1回のメタセシス反応では容易に得られることができない生成物を得ることができる。例えば、いくつかの実施形態では、複数のメタセシスは、自己メタセシスと、その後の交差メタセシスとを伴い、メタセシスダイマー及びメタセシストライマー等を得ることができる。いくつかの他の実施形態では、複数のメタセシスを用いて、天然油トリグリセリドと典型的な低級アルケン類(例えば、エチレン、プロピレン及び1‐ブテン等)との1回のメタセシス反応からは得られない鎖長を有するオレフィン成分及び/又はエステル成分を得ることができる。こうした複数のメタセシスは、異なるアルケンを用いるために反応器を改変するよりも複数のメタセシスを行う方が容易であろう工業規模の反応器において有用であり得る。
メタセシスプロセスは、所望のメタセシス生成物の製造に足りる任意の条件で行うことができる。例えば、当業者であれば、所望の生成物を製造し、不要な副生成物を最少限にするために、化学量論、雰囲気、溶媒、温度及び圧力を選択することができる。いくつかの実施形態では、メタセシスプロセスを不活性雰囲気下で行うことができる。同様に、試薬がガスとして供給される実施形態では、不活性なガス希釈剤オーガース流に用いることができる。そうした実施形態では、不活性雰囲気又は不活性なガス希釈剤は典型的には不活性ガスであり、これは、そのガスがメタセシス触媒と相互作用しないことによって実質的に触媒作用を妨げないことを意味する。例えば、不活性ガスの非限定的な例として、ヘリウム、ネオン、アルゴン及び窒素を単独若しくは組み合わせて用いたもの、又は、これらと他の不活性ガス類と組み合わせて用いたものが挙げられる。
メタセシス反応の反応器設計は、例えば、以下に限定されるわけではないが、反応規模、反応条件(熱及び圧力等)、触媒の独自性、反応器中で反応する材料の独自性及び用いられる原料の性質といった様々な要因に応じて変更することができる。当業者であれば、関連要素に応じて、適切な反応器を設計し、本明細書中に記載されているような精製プロセスに組み入れることができるだろう。
本明細書中に記載のメタセシス反応は通常、1又は複数のメタセシス触媒の存在下で生じる。そうした方法は、任意の適切なメタセシス触媒を用いることができる。また、ここでの反応のメタセシス触媒とは、メタセシス反応に触媒作用を及ぼす任意の触媒又は触媒系を包含する。いかなる公知のメタセシス触媒が単独で、又は、1種又は複数種の更なる触媒と組み合わせて使用できる。メタセシス触媒及びプロセス条件の例は、米国特許出願公開第2011/0160472号に記載されており、この文献の全内容を参照により本明細書に組み込むものとする。ただし、本明細書と矛盾する記載又は定義がある場合は、本明細書中の記載又は定義が優先するものとする。米国特許出願公開第2011/0160472号に記載のメタセシス触媒の多くは、Materia社(カリフォルニア州パサデナ)から現在入手可能である。
いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、Grubbsオレフィンメタセシス触媒及び/又はその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、第1世代のGrubbsオレフィンメタセシス触媒及び/又はその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、第2世代のGrubbsオレフィンメタセシス触媒及び/又はその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、第1世代のHoveyda‐Grubbsオレフィンメタセシス触媒及び/又はその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、第2世代のHoveyda‐Grubbsオレフィンメタセシス触媒及び/又はその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、カリフォルニア州パサデナのMateria社から販売されている1又は複数のルテニウムカルベンメタセシス触媒及び/又はこれら触媒の1又は複数の誘導体を含む。本教示に従って用いられるMateria社の代表的なメタセシス触媒として、例えば、以下に限定されるわけではないが、以下の製品番号で販売されているもの及びこれらの組み合わせが挙げられる。製品番号C823(CAS番号172222‐30‐9)、製品番号C848(CAS番号246047‐72‐3)、製品番号C601(CAS番号203714‐71‐0)、製品番号C627(CAS番号301224‐40‐8)、製品番号C571(CAS番号927429‐61‐6)、製品番号C598(CAS番号802912‐44‐3)、製品番号C793(CAS番号927429‐60‐5)、製品番号C801(CAS番号194659‐03‐9)、製品番号C827(CAS番号253688‐91‐4)、製品番号C884(CAS番号900169‐53‐1)、製品番号C833(CAS番号1020085‐61‐3)、製品番号C859(CAS番号832146‐68‐6)、製品番号C711(CAS番号635679‐24‐2)及び製品番号C933(CAS番号373640‐75‐6)。
いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、モリブデン及び/若しくはタングステンカルベン錯体並びに/又はこれら錯体の誘導体を含む。いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、Schrockオレフィンメタセシス触媒及び/又はその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、モリブデンの高酸化状態のアルキリデン錯体及び/又はその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、タングステンの高酸化状態のアルキリデン錯体及び/又はその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、モリブデン(VI)を含む。いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、タングステン(VI)を含む。いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、以下の学術雑誌(a)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,2003,42,4592‐4633、(b)Chem.Rev.,2002,102,145‐179及び/又は(c)Chem.Rev.,2009,109,3211‐3226の1又は複数に掲載のタイプのモリブデン及び/又はタングステンを含有するアルキリデン錯体を含む。なお、これら文献の全内容を参照により本明細書に組み込むものとする。ただし、本明細書と矛盾する記載又は定義がある場合は、本明細書中の記載又は定義が優先するものとする。
特定の実施形態では、メタセシス触媒は、メタセシス反応を行う前に溶媒中に溶解される。そうした特定の実施形態で選択される溶媒は、メタセシス触媒に対して実質的に不活性であるように選択することができる。例えば、実質的に不活性な溶媒として、以下に限定されるわけではないが、ベンゼン、トルエン及びキシレン等といった芳香族炭化水素類;クロロベンゼン及びジクロロベンゼンといったハロゲン化芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン及びシクロヘキサン等といった脂肪族溶媒類;ジクロロメタン、クロロホルム及びジクロロエタン等といった塩素化アルカン類が挙げられる。いくつかの実施形態では、溶媒はトルエンを含む。
他の実施形態では、メタセシス触媒は、メタセシス反応を行う前に溶媒に溶解させない。その代わり、触媒は、例えば、天然油又は不飽和エステルを用いてスラリー化することができ、この場合、天然油又は不飽和エステルは液体状である。こうした条件下では、溶媒(例えば、トルエン)をプロセスから省き、溶媒を分離する際の下流オレフィンの損失を防ぐことができる。他の実施形態では、メタセシス触媒は、(スラリー化でなく)固体状態で天然油又は不飽和エステル(例えば、オーガー式供給装置)に加えることができる。
メタセシス反応温度は、場合に応じて、律速変化することができ、この場合、温度は、許容可能な速度で所望の生成物が得られるように選択される。特定の実施形態では、メタセシス反応温度は、-40℃超、-20℃超、0℃超又は10℃超である。特定の実施形態では、メタセシス反応温度は、200℃未満、150℃未満又は120℃未満である。いくつかの実施形態では、メタセシス反応温度は、0℃〜150℃又は10℃〜120℃である。
メタセシス反応は、任意の所望の圧力下で実施することができる。いくつかの場合には、溶液中の交差メタセシス試薬を保持するのに十分な程高い総圧力を維持することが好ましいだろう。したがって、交差メタセシス試薬の分子量が増加すると、交差メタセシス試薬の沸点が上昇するため、低圧力範囲は通常低下する。総圧力として、0.01気圧超、0.1気圧(10kPa)超、0.3気圧(30kPa)超又は1気圧(100kPa)超を選択することができる。いくつかの実施形態では、反応圧力は、約70気圧(7000kPa)以下又は約30気圧(3000kPa)以下である。いくつかの実施形態では、メタセシス反応の圧力範囲は、約1気圧(100kPa)〜約30気圧(3000kPa)である。
再生可能原料のオレフィンメタセシス
上述したように、オレフィンメタセシスを用いて、本明細書中に記載のポリマー類に使用可能な1又は複数のモノマー類を製造することができる。いくつかの実施形態では、こうした1又は複数のモノマー類は、天然油のメタセシスにより製造される。任意の適切な天然油又は天然油誘導体を用いることができる。天然油の例として、以下に限定されるわけではないが、植物油、藻類油、魚油、動物性脂肪、トール油、これらの油の誘導体及びこれらの油の任意の組み合わせ等が挙げられる。植物油の代表的な非限定的な例として、菜種油(カノーラ油)、ココナツ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、パーム油、落花生油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油、ヒマワリ油、亜麻仁油、パーム核油、桐油、ジャトロファ油、マスタード油、グンバイナズナ油、ツバキ油、麻美油及びヒマシ油が挙げられる 動物脂肪の典型的かつ非限定的な例として、ラード、獣脂、家禽脂肪、イエローグリース及び魚油がある。タル油は木材パルプ製造の副産物である。いくつかの実施形態では、天然油又は天然油原料は、1又は複数の不飽和グリセリド類(例えば、不飽和トリグリセリド類)を含む。そうした実施形態では、天然油原料は、天然油原料の全重量に基づいて、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%又は少なくとも99重量%の1又は複数の不飽和トリグリセリド類を含む。
天然油は、例えば、精製され、漂白され、そして脱臭された大豆油(すなわち、RBD大豆油)といったカノーラ油又は大豆油を含み得る。大豆油は典型的には、約95重量%以上(例えば99重量%以上)の脂肪酸類のトリグリセリド類を含む。大豆油のポリオールエステル類中の主な脂肪酸類には、以下に限定されるわけではないが、飽和脂肪酸類及び不飽和脂肪酸類があり、飽和脂肪酸類の例として、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)及びステアリン酸(オクタデカン酸)が挙げられ、不飽和脂肪酸類の例として、オレイン酸(9‐オクタデセン酸)、リノール酸(9,12‐オクタデカジエン酸)及びリノレン酸(9,12,15‐オクタデカトリエン酸)が挙げられる。
メタセシス(された)天然油の例として、以下に限定されるわけではないが、メタセシス植物油、メタセシス藻類油、メタセシス動物性脂肪、メタセシスタル油、これらの油のメタセシス誘導体及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。例えば、メタセシス植物油の例として、メタセシスカノーラ油、メタセシス菜種油、メタセシスココナツ油、メタセシスコーン油、メタセシス綿実油、メタセシスオリーブ油、メタセシスパーム油、メタセシス落花生油、メタセシスベニバナ油、メタセシスゴマ油、メタセシス大豆油、メタセシスヒマワリ油、メタセシス亜麻仁油、メタセシスパーム核油、メタセシス桐油、メタセシスジャトロファ油、メタセシスマスタード油、メタセシスツバキ油、メタセシスグンバイナズナ油、メタセシスヒマシ油、これらの油のメタセシス誘導体及びこれらの組み合わせが挙げられる。別の例では、メタセシス天然油の例として、例えば、メタセシスラード、メタセシス獣脂、メタセシス家禽脂肪、メタセシス魚油及びこれらの油のメタセシス誘導体といったメタセシス動物性脂肪が挙げられる。
こうした自然油は、様々な不飽和脂肪酸類のエステル類(例えば、トリグリセリド類)を含有し得る。脂肪酸類の独自性及び濃度は、油原料及び、いくつかの場合には、その種類により異なる。いくつかの実施形態では、天然油は、オレイン酸、リノール酸、リノール酸又はこれらの組み合わせの1又は複数のエステル類を含む。こうした脂肪酸エステル類をメタセシスすると、新たな化合物が形成される。例えば、メタセシスに短鎖オレフィン類、例えば、エチレン、プロピレン又は1‐ブテンを用い、天然油がオレイン酸のエステル類を含んでいる実施形態では、他の生成物に混じって或る量の1‐デセンが形成される。例えば、アルキルアルコールを用いてエステル交換した後、或る量の9‐デセン酸メチルエステルが形成される。いくつかのこうした実施形態では、メタセシスとエステル交換との間に、アルケン類をエステル類から分離する分離ステップを行うことができる。いくつかの他の実施形態では、エステル交換は、メタセシスの前に行うことができ、メタセシスはエステル交換生成物に対して行われる。
後述するように、本明細書中に記載のコポリマー類は、α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子といったエステル‐アルケン分子から形成される繰り返し単位を含み得る。こうしたモノマー類の幾らかの量は、天然油を精製することにより製造することができる。エステル‐アルケン分子は、不飽和ポリオールエステル類を含有する天然油のメタセシス反応、例えば、天然油又は天然油誘導体とα‐オレフィン又はエチレンとの交差メタセシス反応により形成することができる。エステル‐アルケン分子は、不飽和ポリオールエステル類を含有するメタセシス天然油のメタセシス反応、例えば、メタセシス天然油とα‐オレフィン又はエチレンとの交差メタセシス反応により形成することができる。末端アルケニル基を有する物質を生成することができる、天然油、天然油誘導体及び/又はメタセシス天然油の交差メタセシス反応の例については、米国特許出願公開第2010/0145086号及び米国特許出願公開第2012/0071676号に記載されている。なお、これら文献の全内容を参照により本明細書に組み込むものとする。ただし、本明細書と矛盾する記載又は定義がある場合は、本明細書中の記載又は定義が優先するものとする。
エステル‐アルケン分子(例えば、α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子)は、不飽和ポリオールエステル類を含有する天然油、天然油誘導体及び/又はメタセシス天然油と、末端アルケニル基を含有する有機化合物又はエチレンとの交差メタセシス反応により形成することができる。末端アルケニル基を含有する有機化合物とは、アルケン基を有する化合物であり、ここで、アルケン基の第1炭素は置換されておらず、アルケン基の第2炭素は1又は2の非水素置換基で置換されている。化合物は、3〜約20、約10、約6又は約3の炭素原子を有し得る。交差メタセシス反応は、末端アルケニル基を有する1種の化合物を必要としても、数種の化合物の組み合わせを必要としてもよい。
一例として、交差メタセシスに用いられる、末端アルケニル基を有する化合物は、H2C=C(Ra)(Rb)の構造を有し、ここで、Ra及びRbはそれぞれ独立して、水素、炭化水素基又はヘテロアルキル基である。ただし、Ra及びRbの少なくとも一方は水素ではない。ヘテロアルキル基のヘテロ分子は、官能基置換基の一部として存在し得る。Ra及びRbは、結合して環状構造を形成することができる。いくつかの実施形態では、Ra及びRbは、それぞれ独立して、C1‐20アルキル、C2‐20アルケニル、C2‐20アルキニル、C1‐20ヘテロアルキル、C2‐20 ヘテロアルケニル、C2‐20ヘテロアルキニル、C6‐24アリール、C6‐24アルキルアリール、C6‐24アリールアルキル、C5‐24ヘテロアリール、C6‐24ヘテロアルキルアリール及びC6‐24ヘテロアリールアルキルから選択される。
交差メタセシスに用いられる、末端アルケニル基を有する化合物の例として、1‐プロペン、1‐ブテン、1‐ペンテン、1‐ヘキセン、1‐ヘプテン、1‐オクテン、1‐ノネン、1‐デセン、1‐ウンデセン、1‐ドデセン、1‐トリデセン、1‐テトラデセン、1‐ペンタデセン、1‐ヘキサデセン、1‐ヘプタデセン、1‐オクタデセン、1‐ノナデセン、1‐エイコセン、及び、より大きなα‐オレフィン類;2‐プロペノール、3‐ブテノール、4‐ペンテノール、5‐ヘキセノール、6‐ヘプテノール、7‐オクテノール、8‐ノネノール、9‐デセノール、10‐ウンデセノール、11‐ドデセノール、12‐トリデセノール、13‐テトラデセノール、14‐ペンタデセノール、15‐ヘキサデセノール、16‐ヘプタデセノール、17‐オクタデセノール、18‐ノナデセノール、19‐エイコセノール、及び、より大きなα‐アルケノール類;2‐プロペニルアセテート、3‐ブテニルアセテート、4‐ペンテニルアセテート、5‐ヘキセニルアセテート、6‐ヘプテニルアセテート、7‐オクテニルアセテート、8‐ノネニルアセテート、9‐デセニルアセテート、10‐ウンデセニルアセテート、11‐ドデセニルアセテート、12‐トリデセニルアセテート、13‐テトラデセニルアセテート、14‐ペンタデセニルアセテート、15‐ヘキサデセニルアセテート、16‐へプタデセニルアセテート、17‐オクタデセニルアセテート、18‐ノナデセニルアセテート、19‐エイコセニルアセテート、及び、より大きなα‐アルケニルアセテート類;2‐プロペニルクロリド、3‐ブテニルクロリド、4‐ペンテニルクロリド、5‐ヘキセニルクロリド、6‐ヘプテニルクロリド、7‐オクテニルクロリド、8‐ノネニルクロリド、9‐デセニルクロリド、10‐ウンデセニルクロリド、11‐ドデセニルクロリド、12‐トリデセニルクロリド、13‐テトラデセニルクロリド、14‐ペンタデセニルクロリド、15‐ヘキサデセニルクロリド、16‐へプタデセニルクロリド、17‐オクタデセニルクロリド、18‐ノナデセニルクロリド、19‐エイコセニルクロリド、及び、より大きなα‐アルケニルクロリド類、ブロミド類、並びに、ヨージド類;アリルシクロヘキサン、アリルシクロペンタン;その他が挙げられる。交差メタセシスに用いられる、末端アルケニル基を有する二基置換の化合物の例として、イソブチレン、2‐メチルブタ‐1‐エン、2‐メチルペンタ‐1‐エン、2‐メチルヘキサ‐1‐エン、2‐メチルヘプタ‐1‐エン及び2‐メチルオクタ‐1‐エン等が挙げられる。
末端アルケニル基を含有するこれら化合物の任意の組み合わせを、不飽和ポリオールエステル類を含有する天然油、天然油誘導体及び/又はメタセシス天然油との交差メタセシス反応に用いて、α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子を得ることができる。いくつかの実施形態では、エチレン、1‐プロペン及び1‐ブテン等と、不飽和ポリオールエステル類を含有する天然油、天然油誘導体及び/又はメタセシス天然油とを交差メタセシスさせることにより、α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子である9‐デセン酸メチルエステル(9‐DAME)を含む組成物を調製することができる。例えば、オレイン酸及び/又はメチルオレートと、末端アルケンとを交差メタセシスさせて、9‐DAMEを含む組成物を得ることができる。交差メタセシス反応の化学量論により、生成物組成物は、或る量のその他のエステル類を含有することがある。例えば、プロピレンをオレートとの交差メタセシスに用いた場合は、9‐ウンデセン酸のエステル類が形成される。また、1‐ブテンを用いた場合は、9‐ドデセン酸のエステル類が形成される。
いくつかの実施形態では、α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子は、次の式(I)の化合物であり、
(I)
式中、R1は、R2からそれぞれ独立に選択される置換基で1回又は複数回任意選択的に置換されたC1‐12のアルキルであり、
R2は、ハロゲン、‐OH、C1‐6のアルコキシ、‐NH2、‐NH(C1‐6のアルキル)、‐N(C1‐6のアルキル)2、C1‐6のハロアルキル又はC1‐6のハロアルコキシであり、
X1は、R2からそれぞれ独立に選択される置換基で1回又は複数回任意選択的に置換された、C1‐24のアルキレン又はC2‐24のアルケニレンである。
いくつかのそうした実施形態では、R1は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec‐ブチル、イソブチル、tert‐ブチル、ペンチル、イソアミル、ネオペンチル、ヘキシル、オクチル又は2‐エチルへキシルである。いくつかの別のそうした実施形態では、R1は、メチル、エチル又はイソプロピルである。また、いくつかの別のそうした実施形態では、R1は、メチルである。
いくつかの実施形態では、X1は、‐(CH2)7‐又は‐(CH2)9‐である。いくつかの他の実施形態では、X1は、‐(CH2)7‐である。
α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子の非限定的な例として、9‐デセン酸メチルエステル、9‐デセン酸エチルエステル、9‐デセン酸プロピルエステル、9‐デセン酸ブチルエステル、9‐デセン酸ペンチルエステル、10‐ウンデセン酸メチルエステル、10‐ウンデセン酸エチルエステル、10‐ウンデセン酸プロピルエステル、11‐ドデセン酸メチルエステル、11‐ドデセン酸エチルエステル及び11‐ドデセン酸プロピルエステルが挙げられる。
後述するように、本明細書中に記載のコポリマー類は、α‐オレフィンから形成される繰り返し単位を含み得る。α‐オレフィンは、H2C=C(Rc)(Rd)の構造で表すことができ、ここで、Rcは、第1炭化水素基であり、Rdは、水素基又は第2炭化水素基である。Rc及びRdがそれぞれ炭化水素基である場合は、Rc及びRdは、同一であっても異なっていてもよい。Rc及び/又はRdが3以上の炭素原子を有する場合は、Rc及びRdは、それぞれ独立して、炭素原子の直鎖を有するか、又は、枝分れ鎖を有することができる。いくつかの実施形態では、α‐オレフィンモノマーは8〜18の炭素原子を有する末端アルケンである。
α‐オレフィンモノマー類の例として、以下に限定されるわけではないが、プロペン、1‐ブテン、1‐ペンテン、1‐ヘキセン、1‐ヘプテン、1‐オクテン、1‐ノネン、1‐デセン、1‐ウンデセン、1‐ドデセン、1‐トリデセン、1‐テトラデセン、1‐ペンタデセン、1‐ヘキサデセン、1‐ヘプタデセン、1‐オクタデセン、1‐ノナデセン及び1‐エイコセンといった直鎖α‐オレフィン類が挙げられる。一置換のα‐オレフィンモノマー類の例として、以下に限定されるわけではないが、ブテン、1‐ペンテン、1‐ヘキセン、1‐ヘプテン、1‐オクテン、1‐ノネン、1‐デセン、1‐ウンデセン、1‐ドデセン、1‐トリデセン、1‐テトラデセン、1‐ペンタデセン、1‐ヘキサデセン、1‐ヘプタデセン、1‐オクタデセン、1‐ノナデセン、又は、1‐エイコセン、イソブチレン、2‐メチルブタ‐1‐エン、2‐メチルペンタ‐1‐エン、2‐メチルヘキサ‐1‐エン、2‐メチルヘプタ‐1‐エン、2‐メチルオクタ‐1‐エン等;2‐エチルブタ‐1‐エン、2‐エチルペンタ‐1‐エン、2‐エチルヘキサ‐1‐エン、2‐エチルヘプタ‐1‐エン、2‐エチルオクタ‐1‐エン等;2‐プロピルペンタ‐1‐エン、2‐プロピルヘキサ‐1‐エン、2‐プロピルヘプタ‐1‐エン、2‐プロピルオクタ‐1‐エン等;2‐ブチルヘキサ‐1‐エン、2‐ブチルヘプタ‐1‐エン、2‐ブチルオクタ‐1‐エン等の置換誘導体といった分岐α‐オレフィン類が挙げられる。
いくつかの場合には、これらの化合物は、天然油のメタセシスにより生成することができる。いくつかの実施形態では、エチレン、1‐プロペン及び1‐ブテン等と、不飽和ポリオールエステル類を含有する天然油、天然油誘導体及び/又はメタセシス天然油とを交差メタセシスさせることにより、α‐オレフィンである1‐デセンを含む組成物を調製することができる。例えば、オレイン酸及び/又はメチルオレートと、末端アルケンとを交差メタセシスさせて、1‐デセンを含む組成物を得ることができる。交差メタセシス反応の化学量論により、生成物組成物は、或る量のその他のα‐オレフィン類を含有することがある。例えば、プロピレンをオレエートとの交差メタセシスに用いた場合は、2‐ウンデセンも形成される。また、1‐ブテンを用いた場合は、3‐ドデセンも形成される。
α‐オレフィンコポリマー類
少なくとも一側面において、本開示は、組成物であって、2種以上のモノマー類から成る構成単位を有するコポリマーを含み、当該2種以上のモノマー類は、α‐オレフィンである第1モノマーと、α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子といったエステル‐アルケン分子である第2モノマーとを含む組成物を提供する。
開示の組成物は、2種以上のモノマー類から成る構成単位を有するコポリマー類を含む。開示のコポリマー類は、特定の配列の構成単位に限定されるものではない。例えば、いくつかの実施形態では、2種以上のモノマー類は、ABABABAB、AABAABAAB及びAAABAAABAAAB等といった規則的パターンで配列される。一方、いくつかの他の実施形態では、2種以上のモノマー類は、ランダム又はセミランダムな形で配列される。あるいは、いくつかの他の実施形態では、モノマー類は、AAAAAAAABBBBAAAAAAABBBBBB等といったブロックで配列される。
α‐オレフィンは、上述した実施形態のいずれかによるα‐オレフィンとすることができる。いくつかの実施形態では、α‐オレフィンは、8〜18の炭素原子を有する。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンは、C8‐18の末端アルケン、C9‐18末端のアルケン、C10‐18の末端アルケン、C11‐18の末端アルケン、C12‐18の末端アルケン、C8‐16の末端アルケン、C9‐16の末端アルケン、C10‐16 の末端アルケン、C8‐14の末端アルケン、C9‐14の末端アルケン、C10‐14の末端アルケン又はC10‐12の末端アルケンである。いくつかの実施形態では、α‐オレフィンは、1‐オクテン、1‐ノネン、1‐デセン、1‐ウンデセン、1‐ドデセン又はこれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、α‐オレフィンは、1‐デセン、1‐ドデセン又はこれらの任意の組み合わせである。いくつかの他の実施形態では、α‐オレフィンは、1‐デセンである。いくつかの実施形態では、α‐オレフィンは、1‐ドデセンである。
α‐オレフィン類は、任意の適切な原料から得ることができる。いくつかの実施形態では、α‐オレフィン類又はα‐オレフィン類の一部は、石油系原料を由来とするものである。例えば、いくつかの実施形態では、コポリマーに含まれるα‐オレフィンの全重量に基づいて、少なくとも50重量パーセント、少なくとも60重量パーセント、少なくとも70重量パーセント、少なくとも80重量パーセント、少なくとも90重量パーセント又は少なくとも95重量パーセントのα‐オレフィン類は、石油系原料を由来とするものである。一方、いくつかの他の実施形態では、α‐オレフィン類又はα‐オレフィン類の一部は、1又は複数の再生可能原料を由来とするものであり、例えば、(上述したような)天然油又は天然油誘導体のメタセシス、天然油の発酵、又は、生物有機体による天然油のその他の改変等を介したものである。例えば、いくつかの実施形態では、コポリマーに含まれるα‐オレフィンの全重量に基づいて、少なくとも20重量パーセント、少なくとも30重量パーセント、少なくとも40重量パーセント、少なくとも50重量パーセント、少なくとも70重量パーセント又は少なくとも90重量パーセントのα‐オレフィン類は、再生可能原料を由来とするものである。
いくつかの実施形態では、エステル‐アルケンは、エステルで官能化されたアルケンであり、アルケンは、(エステルのカルボニル基中の炭素原子を除いて)3〜24の炭素原子を有する。いくつかの他の実施形態では、アルケンは、直鎖アルケンである。いくつかのそうした実施形態では、アルケンは、内部アルケン(すなわち、内部炭素‐炭素二重結合を有するアルケン)である。そうした化合物の非限定的な例として、9‐ウンデセン酸アルキルエステル、9‐ドデセン酸アルキルエステル、9‐オクタデセン二酸モノアルキルエステル及び9‐オクタデセン二酸ジアルキルエステル等が挙げられる。いくつかのそうした実施形態では、アルキルエステルは、メチルエステル類、エチルエステル類又はイソプロピルエステル類である。いくつかのそうした実施形態では、エステル‐アルケンは、直鎖アルケンであり、これは、末端アルケン(すなわち、末端炭素‐炭素二重結合を有するアルケン)である。いくつかの実施形態では、アルケン‐エステル分子は、α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子である。
いくつかの実施形態では、α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子は、上述した実施形態のいずれかによるα‐エステル‐alk‐ω‐ene分子である。いくつかの実施形態では、α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子は、次の式(I)の化合物であり、
(I)
式中、R1は、R2からそれぞれ独立に選択される置換基で1回又は複数回任意選択的に置換されたC1‐12のアルキルであり、
R2は、ハロゲン、‐OH、C1‐6のアルコキシ、‐NH2、‐NH(C1‐6のアルキル)、‐N(C1‐6のアルキル)2、C1‐6のハロアルキル又はC1‐6のハロアルコキシであり、
X1は、R2からそれぞれ独立に選択される置換基で1回又は複数回任意選択的に置換された、C1‐24のアルキレン又はC2‐24のアルケニレンである。
いくつかのそうした実施形態では、R1は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec‐ブチル、イソブチル、tert‐ブチル、ペンチル、イソアミル、ネオペンチル、ヘキシル、オクチル又は2‐エチルへキシルである。いくつかの別のそうした実施形態では、R1は、メチル、エチル又はイソプロピルである。また、いくつかの別のそうした実施形態では、R1は、メチルである。
いくつかの実施形態では、X1は、‐(CH2)7‐又は‐(CH2)9‐である。いくつかの他の実施形態では、X1は、‐(CH2)7‐である。
α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子の非限定的な例として、9‐デセン酸メチルエステル、9‐デセン酸エチルエステル、9‐デセン酸プロピルエステル、9‐デセン酸ブチルエステル、9‐デセン酸ペンチルエステル、10‐ウンデセン酸メチルエステル、10‐ウンデセン酸エチルエステル、10‐ウンデセン酸プロピルエステル、11‐ドデセン酸メチルエステル、11‐ドデセン酸エチルエステル及び11‐ドデセン酸プロピルエステルが挙げられる。
いくつかの実施形態では、α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子は、9‐デセン酸メチルエステル、9‐デセン酸エチルエステル、9‐デセン酸イソプロピルエステル又はこれらの組み合わせである。いくつかの他の実施形態では、α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子は、9‐デセン酸メチルエステルである。
α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子は、任意の適切な原料から得ることができる。いくつかの実施形態では、α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子又はα‐エステル‐alk‐ω‐ene分子の一部は、石油系原料を由来とするものである。例えば、いくつかの実施形態では、コポリマーに含まれるα‐エステル‐alk‐ω‐ene分子の全重量に基づいて、少なくとも20重量パーセント、少なくとも30重量パーセント、少なくとも40重量パーセント、少なくとも50重量パーセント、少なくとも70重量パーセント又は少なくとも90重量パーセントのα‐エステル‐alk‐ω‐ene分子は、石油系原料を由来とするものである。一方、いくつかの他の実施形態では、α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子又はα‐エステル‐alk‐ω‐ene分子の一部は、1又は複数の再生可能原料を由来とするものであり、例えば、(上述したような)天然油又は天然油誘導体のメタセシス、天然油の発酵、又は、生物有機体による天然油のその他の改変等を介したものである。例えば、いくつかの実施形態では、コポリマーに含まれるα‐エステル‐alk‐ω‐ene分子の全重量に基づいて、少なくとも50重量パーセント、少なくとも60重量パーセント、少なくとも70重量パーセント、少なくとも80重量パーセント、少なくとも90重量パーセント又は少なくとも95重量パーセントのα‐エステル‐alk‐ω‐ene分子は、再生可能原料を由来とするものである。
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載のコポリマー類は、第1モノマー及び第2モノマーからだけでなく、第3モノマー、第4モノマー及び第5モノマー等から成る構成単位を有することができる。ただし、いくつかの実施形態では、α‐オレフィンコポリマー中の少なくとも80重量パーセント、少なくとも85重量パーセント、少なくとも90重量パーセント又は少なくとも95重量パーセントの構成単位は、第1モノマー及び第2モノマーから成る。いくつかの実施形態では、構成単位は、第1モノマー及び第2モノマーのみから成る。そうした追加的なモノマー類は、炭素‐炭素二重結合を有する任意の重合可能物質を含み得る。いくつかの実施形態では、1又は複数の追加的なモノマー類は、1以上の非共役炭素‐炭素二重結合、例えば、末端炭素‐炭素二重結合を有する。いくつかの実施形態では、コポリマーの構成単位は、例えば、アクリル酸及びそのエステル類、並びに、メタクリル酸及びそのエステル類等のように、末端炭素‐炭素二重結合がカルボニル基にに共役したモノマー類から成ることはない。いくつかの実施形態では、α‐オレフィンコポリマー中の5重量パーセント未満、3重量パーセント未満、2重量パーセント未満又は1重量パーセント未満の構成単位は、末端炭素‐炭素二重結合がカルボニル基に共役したモノマー類から成る。
そうした不飽和の重合可能物質の例として、α‐アルケノール類、α‐アルケニルアセテート類、α‐アルケニルハライド類(塩化物、ブロミド類又はヨージド類)、並びに、交差メタセシスに用いられる末端アルケニル基を有する一置換化合物に関連して先述したα‐アルケノール及びアリルシクロペンタンが挙げられる。いくつかの実施形態では、そうした不飽和の重合可能物質として、エチレン;スチレン及びメチルスチレンといったスチレン類;ビニルクロリド、ビニリデンクロリド及びテトラフルオロエチレンといったハロゲン化ビニル化合物類;アクリレート類;アクリルアミド;アクリロニトリル;N‐ビニルピロリドン;これらの置換された誘導体類が含まれる。アクリレートモノマー類の例として、ブチルアクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート及びこれらモノマー類のメタクリレート誘導体類が挙げられる。アクリルアミドモノマー類の例として、アクリルアミド、N,N‐ジメチルアクリルアミド、N‐エチルアクリルアミド、N‐イソプロピルアクリルアミド及びヒドロキシメチルアクリルアミド、並びに、これらモノマー類のメタクリルアミド誘導体類が挙げられる。
いくつかの実施形態では、コポリマーは、(上述したような)α‐オレフィン、エステル‐アルケン分子(例えば、上述したように、α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子)、及び、少なくとも1種の他のモノマーから成る構成単位を有し、少なくとも1種のその他のモノマーは、いくつかの実施形態では、α‐(カルボキシル酸)alk‐ω‐ene分子である。いくつかの実施形態では、α‐(カルボキシル酸)alk‐ω‐ene分子は、化学式:HO‐C(=O)‐(Re)‐CH=CH2を有し、ここで、Reは、C2‐20のアルキルである。α‐(カルボキシル酸)alk‐ω‐ene分子の例として、以下に限定されるわけではないが、9‐デセン酸、10‐ウンデセン酸及び11‐ドデセン酸が挙げられる。α‐(カルボキシル酸)alk‐ω‐ene分子は、α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子を加水分解又は鹸化することにより形成することができる。
コポリマーは、少なくとも部分的には、反応混合物中のモノマー類を反応させることにより形成できる。反応混合物は、第1モノマー(α‐オレフィン)と、第2モノマー(α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子)と、任意選択的には少なくとも1種のその他のモノマー(例えば、α‐(カルボキシル酸)alk‐ω‐ene分子)とを含む。いくつかの実施形態では、反応混合物は、こうしたモノマー類のみを含む。ただし、いくつかの他の実施形態では、反応混合物は、例えば、溶媒、緩衝剤及び塩等といった1又は複数のその他の物質を含み得る。溶媒の非限定的な例として、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)及びブタノールといったプロトン性溶媒類;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジメチルフォルムアミド(DMF)、トルエン及びキシレンといった非プロトン性溶媒類が挙げられる。いくつかの実施形態では、溶媒は、実質的に水を含んでいない。このことは、溶媒が、容量で5%未満、3%未満又は1%未満の水を含んでいることを意味する。
重合反応は、任意の適切な方法又は方法の組み合わせで生じさせることができる。いくつかの実施形態では、コポリマーの構成単位は、付加重合により形成される。いくつかの他の実施形態では、コポリマーの構成単位は、フリーラジカル重合により形成される。いくつかの他の実施形態では、コポリマーの構成単位のうちいくつかは、付加重合により形成され、コポリマーの構成単位のうち別のいくつかはフリーラジカル重合により形成される。あるいは、逆の場合もある。
反応混合物は、任意の適切な方法で形成することができる。いくつかの実施形態では、第1モノマーと、第2モノマーと、任意選択的には少なくとも1種のその他のモノマーとを含む反応混合物の形成は、モノマー類を付加重合開始剤と結合させるステップを含む。付加重合開始剤の非限定的な例として、フリーラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤及びアニオン重合開始剤が挙げられる。ただし、付加重合は、熱、可視光若しくは紫外線といった電磁放射、又は、その他の適切な手段で開始することができるため、重合開始剤は反応混合物に必要ではない。
いくつかの実施形態では、第1モノマーと、第2モノマーと、任意選択的には少なくとも1種のその他のモノマーとを含む反応混合物の形成は、モノマー類をフリーラジカル付加重合開始剤と結合させるステップを含む。特定のフリーラジカル重合開始剤を、例えば、以下に限定されるわけではないが、重合温度、コモノマー類のタイプ、及び、溶媒が反応混合物に存在するか否かといった多くの要素に応じて選択することができる。フリーラジカル重合開始剤の非限定的な例として、過酸化水素といったペルオキシド類;様々な有機ペルオキシド類が挙げられ、これらの例として、以下に限定されるわけではないが、ジ‐t‐ブチルペルオキシド、ジ‐t‐アミルペルオキシド、ジラウロリルペルオキシド及び2,5‐ビス(t‐ブチルペルオキシ)‐2,5‐ジメチルヘキサンといったアルキルペルオキシド類;アクリルペルオキシド類;ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド及びt‐ブチルペルオキシベンゾエートといったアリールペルオキシド類;t‐ブチルヒドロペルオキシドといったヒドロペルオキシド類等が挙げられる。フリーラジカル重合開始剤の別の非限定的な例として、2,2´‐アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2´‐アゾビス(2‐メチルブチロニトリル)、2,2´‐アゾビス(2,4‐メジメチルバレロニトリル)、2,2´‐アゾビス(2‐アミジノプロパン)‐ジヒドロクロリド及び2,2´‐アゾビス(N,N´‐ジメチレンイソブチルアミジン)といったアゾ化合物類が挙げられる。フリーラジカル重合開始剤の別の非限定的な例として、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウムといった過硫酸塩類が挙げられる。フリーラジカル重合開始剤のその他の非限定的な例として、ヒドロペルオキシド類、過酸化エステル類及び光重合開始剤類が挙げられる。また、組み合わせての利用に適していれば、様々な組み合わせのフリーラジカル重合開始剤を利用することができる。
重合開始剤が存在する場合、その量は、存在するコモノマー類の全モルに基づいて、例えば、0.01〜25モル%、1〜20モル%、2〜18モル%、3〜15モル%、2〜10モル%、7〜18モル%又は10〜15モル%の範囲とすることができる。
フリーラジカル重合が用いられるいくつかの実施形態では、反応混合物はさらに、連鎖移動剤を含む。当業者の知識に基づいて、任意の適切な連鎖移動剤を用いることができる。いくつかの実施形態では、連鎖移動剤は、2〜20の炭素原子、2〜16の炭素原子、2〜12の炭素原子、2〜10の炭素原子、2〜8の炭素原子又は2〜6の炭素原子を有する末端アルケンである。いくつかの実施形態では、連鎖移動剤は、コポリマーに含まれる第1モノマーよりも1以上少ない炭素原子を有するα‐オレフィンである。いくつかの他の実施形態では、連鎖移動剤は、例えば、以下に限定されるわけではないが、ステアリルチオール、ドデシルチオール、オクチルチオール及びtert‐ノニルチオール等を含むアルキルチオールといったチオール化合物である。いくつかの他の実施形態では、連鎖移動剤は、例えば、以下に限定されるわけではないが、ブロモトリクロロメタン、オクチルブロマイド及びtert‐アミルブロマイド等を含むアルキルハライドといったハロゲン化物である。いくつかの他の実施形態では、連鎖移動剤は、例えば、以下に限定されるわけではないが、オクチルアルコール及びtert‐アミルアルコール等を含むアルキルヒロドキシドといったアルコールである。いくつかの他の実施形態では、連鎖移動剤は、シクロヘキサジエン、テルピノレン及びγ‐テルピネン等といった環状不飽和炭化水素である。連鎖移動剤は、コポリマーに含まれるモノマー類の全モルに基づいて、例えば、20モル%以下、10モル%以下又は5モル%以下といった任意の適切な量で用いることができる。
いくつかの実施形態では、第1モノマーと、第2モノマーと、任意選択的にはその他のモノマー類から成る構成単位を有するコポリマーとを含む生成混合物の形成は、反応混合物を加熱するステップを含む。反応混合物少はなくとも約30℃の温度、例えば、以下に限定されるわけではないが、約30℃〜約250℃、約40℃〜約200℃、約50℃〜約175℃又は約60℃〜約160℃の温度に加熱することができる。反応混合物は、少なくとも約30℃の温度、例えば、以下に限定されるわけではないが、約30℃〜約250℃、約40℃〜約200℃、約50℃〜約175℃又は約60℃〜約160℃の温度まで加熱することができる。
いくつかの実施形態では、第1モノマーと、第2モノマーと、任意選択的にはその他のモノマー類とから成る構成単位を有するコポリマーを含む生成混合物の形成は、コポリマーを分離するステップを含む。いくつかのそうした実施形態では、コポリマーを分離するステップは、揮発性出発原料及び/又は副生成物を、減圧下及び/又は加熱下で除去するステップを含み得る。いくつかのそうした実施形態では、コポリマーを分離するステップは、コポリマーを溶媒中で溶解させて溶液を形成するステップと、当該溶液をコポリマーの非溶媒と接触させることによりコポリマーを沈殿させるステップとを含む。いくつかのそうした実施形態では、コポリマーを分離するステップは、コポリマーを溶媒中で溶解させて溶液を形成するステップと、当該溶液に対して透析を行うことにより低分子量種を除去するステップとを含み得る。また、その他の分離方法を用いてもよい。
本明細書中に記載のコポリマー類を、特定の収率で形成する必要は全くない。ただし、いくつかの実施形態では、コポリマーの収率は、少なくとも25%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%である。
図2は、開示の実施形態のいずれかに従った、コポリマーの形成方法200の一例にかかる化学構造及び反応スキームを示す図である。方法200は、α‐オレフィンである第1モノマー212と、α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子である第2モノマー214と、任意選択的にはα‐(カルボキシル酸)alk‐ω‐ene分子216といった少なくとも1種のその他のモノマーとを含む反応混合物210を形成するステップを含む。方法200はさらに、モノマー類212、214、及び、任意選択的にはモノマー216から成るコポリマー222を含む生成混合物220を形成するステップを含む。α‐オレフィンモノマー212及びコポリマー222において、x’は、0〜20の整数とすることができる。α‐エステル‐alk‐ω‐eneモノマー214及びコポリマー222において、y’は、1〜19の整数とすることができる。任意選択的なα‐(カルボキシル酸)‐alk‐ω‐eneモノマー216及びコポリマー222において、z’は、1〜19の整数とすることができる。コポリマー222において、x+y+z=1であり、ここで、xは、0.01〜0.99、yは、0.01〜0.99、zは、0〜0.98とすることができる。例えば、xは、0.5〜0.9、yは、0.1〜0.5、zは、0〜0.4とすることができる。好ましくは、xは、0.65〜0.9、yは、0.1〜0.35、zは、0〜0.25である。xとyとの比率は、少なくとも2:1であることが好ましく、xと(y+z)との比率は、少なくとも2:1であることが好ましい。コポリマー222において、nは、2〜100、3〜50又は4〜25とすることができる。
一例では、α‐オレフィンモノマー212は、1‐オクテン(x’=5)、1‐デセン(x’=7)若しくは1‐ドデセン(x’=9)等、又は、これらの組み合わせであり;α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子214は、9‐デセン酸メチルエステル(9‐DAME)(y’=6)である。別の例では、α‐オレフィンモノマー212は、1‐オクテン(x’=5)、1‐デセン(x’=7)若しくは1‐ドデセン(x’=9)等、又は、これらの組み合わせであり;α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子214は、9‐DAME(y’=6)等であり、α‐(カルボキシル酸)‐alk‐ω‐eneモノマー216は、9‐デセン酸(z’=6)等である。これらの3種のモノマー類(212、214及び216)から成るコポリマー222は、モノマー類212及び214のみを重合し、その後、α‐エステル‐alk‐ω‐eneモノマー214から成る構成単位のメチルエステル基を部分的加水分解することにより形成することもできる。
コポリマーは、任意の適切な第1モノマー(α‐オレフィン)と第2モノマー(α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子)との比率を有することができる。いくつかの実施形態では、第1モノマー対第2モノマーのモル対モル比は、0.1:99.9 〜99.9:0.1、1:99〜99:1、1:3〜25:1、1:2〜15:1、1:2〜2:1、2:1〜5:1又は5:1〜15:1である。
コポリマーの形成に第3モノマー(例えば、α‐(カルボキシル酸)‐alk‐ω‐ene)が用いられる実施形態では、第3モノマーは、任意の適切な量で存在し得る。いくつかの実施形態では、第2モノマー対第3モノマーのモル対モル比は、0.1:99.9〜99.9:0.1、1:99〜99:1、1:3〜25:1、1:2〜15:1、1:2〜2:1、2:1〜5:1又は5:1〜15:1である。
いくつかの実施形態では、組成物は、例えば、100℃において高い動粘度を有する。いくつかのそうした実施形態では、組成物の100℃における動粘度は25〜200センチストークである。いくつかの他のそうした実施形態では、組成物の100℃における動粘度は25〜150センチストークである。いくつかの他の実施形態では、組成物の100℃における動粘度は、30〜150センチストーク、35〜150センチストーク、25〜100センチストーク、30〜100センチストーク、35〜100センチストーク、40〜80センチストーク、25〜60センチストーク、30〜60センチストーク、35〜60センチストーク、25〜50センチストーク、30〜50センチストーク、35〜50センチストーク、35〜45センチストーク又は38〜42センチストークである。いくつかの実施形態では、組成物の100℃における動粘度は、30〜44センチストーク、32〜42センチストーク、34〜42センチストーク又は34〜40センチストークである。いくつかの実施形態では、組成物の100℃における動粘度は、75〜125センチストーク、80〜120センチストーク、90〜110センチストーク又は95〜105センチストークである。
いくつかのそうした実施形態では、組成物は、低温、例えば、約−26℃で粘性が高くなりすぎることはない。例えば、いくつかの実施形態では、組成物の−26℃におけるブルックフィールド粘度は、110,000cP以下、105,000cP以下、100,000cP以下、95,000cP以下、90,000cP以下、85,000cP以下、80,000cP以下又は75,000cP以下である。いくつかの実施形態では、組成物の−26℃におけるブルックフィールド粘度は、20,000cP〜100,000cP、30,000cP〜95,000cP又は35,000cP〜95,000cPである。
いくつかの実施形態では、組成物は、他の基油類に比べて優れた粘度指数を示す。例えば、いくつかの実施形態では、組成物の粘度指数は、少なくとも150、少なくとも152、少なくとも154、少なくとも156、少なくとも158又は少なくとも160である。いくつかのそうした実施形態では、組成物の粘度指数は、150〜170、150〜165又は155〜165である。
有利な粘度特性を示すことに加えて、組成物は、特定の実施形態では、望ましい極性を示す。いくつかの場合には、優れた極性により、特定の潤滑剤用途の組成物にエステル系添加剤を混合する必要が少なくとも部分的には無くなる。そうした場合には、所望の粘度特性と所望の極性特性とを同時に保持することができる。なぜなら、エステル系添加剤はしばしば、混合された組成物の粘度及び粘度指数を低下させてしまうためである。例えば、いくつかの実施形態では、組成物のアニリン点は、120℃以下、118℃以下、116℃以下、114℃以下、112℃以下、110℃以下、108℃以下、106℃以下、104℃以下又は102℃以下である。いくつかのそうした実施形態では、組成物のアニリン点は、95〜118℃又は97〜115℃である。いくつかの実施形態では、組成物のアニリン点は、25℃以下、35℃以下、50℃以下、70℃以下又は90℃以下である。いくつかの実施形態では、組成物のアニリン点は、0〜120℃又は20〜118℃である。
組成物に含まれるα‐オレフィンコポリマー類は、任意の適切な分子量を有することができる。いくつかの実施形態では、数平均分子量Mnは、1900〜3000Da、1950〜3000Da、2000〜3000Da、2050〜3000Da、2100〜3000Da、2000〜2800Da、2000〜2600Da、2000〜2400Da、2050〜2800Da、2050〜2600Da、2050〜2400Da、2100〜2800Da、2100〜2600Da又は2100〜2400Daである。
いくつかの実施形態では、組成物に含まれるα‐オレフィンコポリマー類は、任意選択的に、ストリッピングすることができ、それにより、低分子量部分の数を減少させて、数平均分子量(及び、重量平均分子量)を増加させることができる。ストリッピングは、任意の従来通りの方法により適切な温度で行うことができる。いくつかの実施形態では、ストリッピングは、150〜350℃、150〜325℃、150〜300℃、175〜325℃、175〜300℃又は200〜325℃の温度で行われる。
いくつかの実施形態では、α‐オレフィンコポリマー及びエステル‐アルケン分子(例えば、α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子)を含む反応混合物から形成されるコポリマーは、例えば、炭素‐炭素二重結合の形の不飽和を或る程度有する。いくつかの実施形態では、α‐オレフィンコポリマーはさらに、部分的に水素化され、それにより、不飽和の少なくとも一部が除去され、部分的水素化又は水素化されたα‐オレフィンコポリマーが生じる。いくつかの実施形態では、α‐オレフィンコポリマーのヨウ素価は、25以下、20以下、15以下、10以下、5以下、3以下又は1以下である。
潤滑剤組成物、製造方法及び使用方法
(上述した実施形態のいずれかに従った)α‐オレフィンコポリマーを含む組成物は、潤滑剤組成物として使用することができ、あるいは、いくつかの他の実施形態では、潤滑剤組成物に使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本開示は、(上述した実施形態のいずれかに従った)α‐オレフィンコポリマー組成物と、1又は複数のその他の材料とを含む潤滑剤組成物を提供する。
開示のα‐オレフィンコポリマー類は、任意の適切な組み合わせで潤滑剤組成物に含まれ得る。例えば、いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物は、様々な比率のα‐オレフィン及びエステル‐アルケン(例えば、α‐エステル‐alk‐ω‐ene)から成る2種以上のα‐オレフィン類を含むことができる。いくつかの実施形態では、組成物は、2種以上の様々なα‐オレフィンコポリマー類を含み、それぞれのα‐オレフィン対α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子のモル対モル比は0.1:1〜20:1である。いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物は、(a)α‐オレフィン対α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子のモル対モル比が0.1:1〜2.5:1である反応混合物から成るα‐オレフィンコポリマー;(b)α‐オレフィン対α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子のモル対モル比が2.5:1〜6:1である反応混合物から成るα‐オレフィンコポリマー;(c)α‐オレフィン対α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子のモル対モル比が6:1〜20:1である反応混合物から成るα‐オレフィンコポリマーのうち2以上を含む。上述した実施形態のいずれかに従ったα‐オレフィン及びα‐エステル‐alk‐ω‐ene分子を使用することができる。いくつかの実施形態では、α‐オレフィンは、1‐デセン、1‐ドデセン又はこれらの組み合わせである。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンは、1‐デセンである。いくつかの他のそうした実施形態では、α‐オレフィンは、1‐ドデセンである。いくつかの実施形態では、α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子は、9‐デセン酸のアルキルエステル、10‐ウンデセン酸のアルキルエステル、11‐ドデセンのアルキルエステル又はこれらの組み合わせである。いくつかのそうした実施形態では、α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子は、9‐デセン酸のアルキルエステル、例えば、メチルエステル、エチルエステル及びイソプロピルエステル等である。いくつかの他のそうした実施形態では、α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子は、10‐ウンデセン酸のアルキルエステル、例えば、メチルエステル、エチルエステル及びイソプロピルエステル等である。いくつかの他のそうした実施形態では、α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子は、11‐ドデセン酸のアルキルエステル、例えば、メチルエステル、エチルエステル及びイソプロピルエステル等である。
図1は、潤滑剤組成物の製造方法100を示す図である。方法100は、α‐オレフィンである第1モノマー112と、α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子である第2モノマー114と、任意選択的には少なくとも1種のその他のモノマー116とを含む反応混合物110を形成するステップ101と;モノマー類112、114、及び、任意選択的にはモノマー116から成る構成単位を有するコポリマー122を含む生成混合物120を形成するステップ102と;任意選択的には、コポリマー122を少なくとも1種のその他の材料130と混合するステップ103とを含む。
方法100により、再生可能原料から潤滑剤組成物を生成することができ、効果的には、石油化学原料から潤滑剤組成物を生成する従来の方法に比べて、より簡潔及び/又は低コストな生成、ばらつきの低減、優れたソーシング、並びに、高いバイオ再生可能性が実現される。また、方法100により形成される潤滑剤組成物は、例えば、以下に限定されるわけではないが、高い粘度指数、酸化安定性、熱安定性及び加水分解安定性といった有用な性質の組み合わせを有し得る。
1又は複数のその他の材料は、潤滑剤組成物に含ませるのに適した任意の材料とすることができる。いくつかの実施形態では、1又は複数のその他の材料は、希釈剤である。任意の適切な希釈剤を用いることができる。いくつかの実施形態では、希釈剤は、公知の基油、例えば、以下に限定されるわけではないが、鉱油又はその他の石油留分を含む。いくつかの実施形態では、希釈剤は、米国石油協会(API)によるグループI基油、APIグループII基油、APIグループIII基油、ポリ(α‐オレフィン)(PAO)といったAPIグループIV基油;エステル(例えば、ジエステル又はポリエステル)といったAPIグループV基油;これらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、希釈剤は、PAOといったAPIグループIV基油である。いくつかの実施形態では、希釈剤は、APIグループII基油、APIグループIII基油、APIグループIV基油又はこれらの混合物である。いくつかのそうした実施形態では、希釈剤はAPIグループII基油である。いくつかの他のそうした実施形態では、希釈剤はAPIグループIII基油である。いくつかの実施形態では、希釈剤はAPIグループIV基油である。
いくつかの場合には、本明細書中に記載のα‐オレフィンコポリマー組成物は、PAOといった特定の従来の基油類よりも高い極性を有する。したがって、潤滑剤組成物にα‐オレフィンコポリマー組成物を使用することにより、組成物に特定の極性成分を含有させる必要が少なくとも部分的には無くなる。いくつかの別の実施形態では、潤滑剤組成物は、(α‐オレフィンコポリマー組成物の他に)5重量パーセント以下、4重量パーセント以下、3重量パーセント以下、2重量パーセント以下又は1重量パーセント以下のエステル化合物類を含む。
希釈剤が用いられる実施形態では、希釈剤は、任意の適切な量で配合することができる。いくつかの場合には、希釈剤の配合は、「混合」ということができ、ここで、希釈剤は、潤滑剤組成物の1又は複数の性質を特定の所望用途に応じて適合させる機能を有する。混合量は、例えば、以下に限定されるわけではないが、α‐オレフィンコポリマー組成物の性質、希釈剤又は希釈剤混合物の性質、その他の任意の含有添加物の性質及び量、並びに、所望の混合特性等といった様々な要素に応じて決定することができる。いくつかの実施形態では、α‐オレフィンコポリマー対希釈剤の重量対重量比は、1:99〜99:1、1:90〜90:1、1:50〜50:1、1:10〜10:1又は1:5〜5:1である。いくつかの実施形態では、潤滑剤は、潤滑剤組成物の粘度を低下させる程十分な量の希釈剤を含む。例えば、α‐オレフィンコポリマー組成物の100℃における動粘度が34〜100センチストーク(又は、34〜42センチストーク)であるいくつかの他の実施形態では、潤滑剤組成物はさらに、潤滑剤組成物の100℃における動粘度を27〜32センチストーク、23〜27センチストーク、17〜21センチストーク、14〜17センチストーク、9〜13センチストーク、5〜10センチストーク、7〜9センチストーク又は5〜7センチストークに調節する量の希釈剤を含む。
いくつかの実施形態では、α‐オレフィンコポリマー及び希釈剤を含む潤滑剤組成物は、自動車技術者協会(SAE)J300規格の動粘度グレードを有し得る。いくつかの実施形態では、これらの滑剤組成物は、乗用車モーター油(PCMO)として使用するのに適していると考えられる。
いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物のSAE J300粘度グレードは5Wであり、潤滑剤組成物は、(上述した実施形態のいずれかに従った)α‐オレフィンコポリマー及び希釈剤を含む。いくつかのそうした実施形態では、潤滑剤組成物は5W‐30乗用車モーター油である。いくつかの他のそうした実施形態では、潤滑剤組成物は5W‐40重質ディーゼル油である。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンコポリマーは、(a)1‐デセン、1‐ドデセン又はこれらの混合物;(b)9‐デセン酸のアルキルエステル(例えば、メチル、エチル又はイソプロピルエステル類)を含む反応混合物から成るコポリマーである。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンコポリマーは、1‐ドデセン及び9‐デセン酸メチルエステルを含む反応混合物から成るコポリマーである。いくつかのそうした実施形態では、1‐ドデセン対9‐デセン酸メチルエステルのモル対モル比は、1:2〜2:1、2:1〜6:1又は6:1〜15:1である。例えば、以下に限定されるわけではないが、APIグループI基油、APIグループII基油、APIグループIII基油、APIグループIV基油又はこれらの任意の混合物といった任意の適切な希釈剤又は希釈剤の組み合わせを用いることができる。いくつかのそうした実施形態では、希釈剤はAPIグループII基油である。いくつかの他の実施形態では、希釈剤はAPIグループIII基油である。いくつかの他の実施形態では、希釈剤はAPIグループIV基油である。
いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物のSAE J300粘度グレードは10Wであり、潤滑剤組成物は、(上述した実施形態のいずれかに従った)α‐オレフィンコポリマー及び希釈剤を含む。いくつかのそうした実施形態では、潤滑剤組成物は、10W‐30乗用車モーター油である。いくつかの他のそうした実施形態では、潤滑剤組成物は10W‐40重質ディーゼル油である。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンコポリマーは、(a)1‐デセン、1‐ドデセン又はこれらの混合物;(b)9‐デセン酸のアルキルエステル(例えば、メチル、エチル若しくはイソプロピルエステル類、又は、これらの組み合わせ)を含む反応混合物から成るコポリマーである。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンコポリマーは、1‐ドデセン及び9‐デセン酸メチルエステルを含む反応混合物から成るコポリマーである。いくつかのそうした実施形態では、1‐ドデセン対9‐デセン酸メチルエステルのモル対モル比は、1:2〜2:1、2:1〜6:1又は6:1〜15:1である。例えば、以下に限定されるわけではないが、APIグループI基油、APIグループII基油、APIグループIII基油、APIグループIV基油又はこれらの任意の混合物といった任意の適切な希釈剤又は希釈剤の組み合わせを用いることができる。いくつかのそうした実施形態では、希釈剤はAPIグループII基油である。いくつかの他の実施形態では、希釈剤はAPIグループIII基油である。いくつかの他の実施形態では、希釈剤はAPIグループIV基油である。
いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物のSAE J300粘度グレードは15Wであり、潤滑剤組成物は、(上述した実施形態のいずれかに従った)α‐オレフィンコポリマー及び希釈剤を含む。いくつかのそうした実施形態では、潤滑剤組成物は、15W‐40重質ディーゼル油(HDDO)である。いくつかの他のそうした実施形態では、潤滑剤組成物は、15W‐50重質ディーゼル油である。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンコポリマーは、(a)1‐デセン、1‐ドデセン又はこれらの混合物;(b)9‐デセン酸のアルキルエステル(例えば、メチル、エチル若しくはイソプロピルエステル類、又は、これらの組み合わせ)を含む反応混合物から成るコポリマーである。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンコポリマーは、1‐ドデセン及び9‐デセン酸メチルエステルを含む反応混合物から成るコポリマーである。いくつかのそうした実施形態では、1‐ドデセン対9‐デセン酸メチルエステルのモル対モル比は、1:2〜2:1、2:1〜6:1又は6:1〜15:1である。例えば、以下に限定されるわけではないが、APIグループI基油、APIグループII基油、APIグループIII基油、APIグループIV基油又はこれらの任意の混合物といった任意の適切な希釈剤又は希釈剤の組み合わせを用いることができる。いくつかのそうした実施形態では、希釈剤はAPIグループII基油である。いくつかの他の実施形態では、希釈剤はAPIグループIII基油である。いくつかの他の実施形態では、希釈剤はAPIグループIV基油である。
いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物のSAE J306粘度グレードは75Wであり、潤滑剤組成物は、(上述した実施形態のいずれかに従った)α‐オレフィンコポリマー及び希釈剤を含む。いくつかのそうした実施形態では、潤滑剤組成物は、75W‐90乗用車ギア油である。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンコポリマーは、(a)1‐デセン、1‐ドデセン又はこれらの混合物;(b)9‐デセン酸のアルキルエステル(例えば、メチル、エチル若しくはイソプロピルエステル類、又は、これらの組み合わせ)を含む反応混合物から成るコポリマーである。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンコポリマーは、1‐ドデセン及び9‐デセン酸メチルエステルを含む反応混合物から成るコポリマーである。いくつかのそうした実施形態では、1‐ドデセン対9‐デセン酸メチルエステルのモル対モル比は、1:2〜2:1、2:1〜6:1又は6:1〜15:1である。例えば、以下に限定されるわけではないが、APIグループI基油、APIグループII基油、APIグループIII基油、APIグループIV基油又はこれらの任意の混合物といった任意の適切な希釈剤又は希釈剤の組み合わせを用いることができる。いくつかのそうした実施形態では、希釈剤はAPIグループII基油である。いくつかの他の実施形態では、希釈剤はAPIグループIII基油である。いくつかの他の実施形態では、希釈剤はAPIグループIV基油である。
いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物のSAE J306粘度グレードは80Wであり、潤滑剤組成物は、(上述した実施形態のいずれかに従った)α‐オレフィンコポリマー及び希釈剤を含む。いくつかのそうした実施形態では、潤滑剤 組成物は、80W‐90ギア油である。いくつかの他のそうした実施形態では、潤滑剤組成物は80W‐140ギア油である。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンコポリマーは、(a)1‐デセン、1‐ドデセン又はこれらの混合物;(b)9‐デセン酸のアルキルエステル(例えば、メチル、エチル若しくはイソプロピルエステル類、又は、これらの組み合わせ)を含む反応混合物から成るコポリマーである。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンコポリマーは、1‐ドデセン及び9‐デセン酸メチルエステルを含む反応混合物から成るコポリマーである。いくつかのそうした実施形態では、1‐ドデセン対9‐デセン酸メチルエステルのモル対モル比は、1:2〜2:1、2:1〜6:1又は6:1〜15:1である。例えば、以下に限定されるわけではないが、APIグループI基油、APIグループII基油、APIグループIII基油、APIグループIV基油又はこれらの任意の混合物といった任意の適切な希釈剤又は希釈剤の組み合わせを用いることができる。いくつかのそうした実施形態では、希釈剤はAPIグループII基油である。いくつかの他の実施形態では、希釈剤はAPIグループIII基油である。いくつかの他の実施形態では、希釈剤はAPIグループIV基油である。
いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物のSAE J306粘度グレードは85Wであり、潤滑剤組成物は、(上述した実施形態のいずれかに従った)α‐オレフィンコポリマー及び希釈剤を含む。いくつかのそうした実施形態では、潤滑剤組成物は85W‐90ギア油である。いくつかの他のそうした実施形態では、潤滑剤組成物は85W‐140ギア油である。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンコポリマーは、(a)1‐デセン、1‐ドデセン又はこれらの混合物;(b)9‐デセン酸のアルキルエステル(例えば、メチル、エチル若しくはイソプロピルエステル類、又は、これらの組み合わせ)を含む反応混合物から成るコポリマーである。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンコポリマーは、1‐ドデセン及び9‐デセン酸メチルエステルを含む反応混合物から成るコポリマーである。いくつかのそうした実施形態では、1‐ドデセン対9‐デセン酸メチルエステルのモル対モル比は、1:2〜2:1、2:1〜6:1又は6:1〜15:1である。例えば、以下に限定されるわけではないが、APIグループI基油、APIグループII基油、APIグループIII基油、APIグループIV基油又はこれらの任意の混合物といった任意の適切な希釈剤又は希釈剤の組み合わせを用いることができる。いくつかのそうした実施形態では、希釈剤はAPIグループII基油である。いくつかの他の実施形態では、希釈剤はAPIグループIII基油である。いくつかの他の実施形態では、希釈剤はAPIグループIV基油である。
いくつかの他の実施形態では、潤滑剤組成物は、ISO(国際標準化機構)規格の粘度グレードに適合した粘度を有する。例えば、いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物のISO粘度グレードは、VG46、VG68、VG100、VG150、VG220、VG320、VG460又はVG680であり、潤滑剤組成物は、(上述した実施形態のいずれかに従った)α‐オレフィンコポリマー及び希釈剤を含む。いくつかのそうした実施形態では、潤滑剤組成物は85W‐90ギア油である。いくつかの他のそうした実施形態では、潤滑剤組成物は85W‐140ギア油である。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンコポリマーは、(a)1‐デセン、1‐ドデセン又はこれらの混合物;(b)9‐デセン酸のアルキルエステル(例えば、メチル、エチル若しくはイソプロピルエステル類、又は、これらの組み合わせ)を含む反応混合物から成るコポリマーである。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンコポリマーは、1‐ドデセン及び9‐デセン酸メチルエステルを含む反応混合物から成るコポリマーである。いくつかのそうした実施形態では、1‐ドデセン対9‐デセン酸メチルエステルのモル対モル比は、1:2〜2:1、2:1〜6:1又は6:1〜15:1である。例えば、以下に限定されるわけではないが、APIグループI基油、APIグループII基油、APIグループIII基油、APIグループIV基油又はこれらの任意の混合物といった任意の適切な希釈剤又は希釈剤の組み合わせを用いることができる。いくつかのそうした実施形態では、希釈剤はAPIグループII基油である。いくつかの他の実施形態では、希釈剤はAPIグループIII基油である。いくつかの他の実施形態では、希釈剤はAPIグループIV基油である。
いくつかの他の実施形態では、潤滑剤組成物は、AGMA(米国歯車製造業者協会)規格の(レギュラー)粘度グレードに適合した粘度を有する。例えば、いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物のAGMA(レギュラー)粘度グレードは、1、2、3、4、5、6、7又は8であり、潤滑剤組成物は、(上述した実施形態のいずれかに従った)α‐オレフィンコポリマー及び希釈剤を含む。いくつかのそうした実施形態では、潤滑剤 組成物は85W‐90ギア油である。いくつかの他のそうした実施形態では、潤滑剤組成物は85W‐140ギア油である。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンコポリマーは、(a)1‐デセン、1‐ドデセン又はこれらの混合物;(b)9‐デセン酸のアルキルエステル(例えば、メチル、エチル若しくはイソプロピルエステル類、又は、これらの組み合わせ)を含む反応混合物から成るコポリマーである。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンコポリマーは、1‐ドデセン及び9‐デセン酸メチルエステルを含む反応混合物から成るコポリマーである。いくつかのそうした実施形態では、1‐ドデセン対9‐デセン酸メチルエステルのモル対モル比は、1:2〜2:1、2:1〜6:1又は6:1〜15:1である。例えば、以下に限定されるわけではないが、APIグループI基油、APIグループII基油、APIグループIII基油、APIグループIV基油又はこれらの任意の混合物といった任意の適切な希釈剤又は希釈剤の組み合わせを用いることができる。いくつかのそうした実施形態では、希釈剤はAPIグループII基油である。いくつかの他の実施形態では、希釈剤はAPIグループIII基油である。いくつかの他の実施形態では、希釈剤はAPIグループIV基油である。
上述した潤滑剤組成物では、それぞれのSAEグレードに適合した粘度特性を有する潤滑剤組成物を製造するために、任意の適切な量のα‐オレフィンコポリマー及び希釈剤を用いることができる。いくつかの実施形態では、潤滑剤は乗用車モーター油(PCMO)であり、潤滑剤組成物は、30〜70重量パーセント、35〜65重量パーセント又は40〜60重量パーセントのα‐オレフィンコポリマーを含む。いくつかの実施形態では、潤滑剤は重質ディーゼル油(HDDO)であり、潤滑剤組成物は、30〜95重量パーセント、35〜90重量パーセント又は40〜85重量パーセントのα‐オレフィンコポリマーを含む。いくつかの実施形態では、潤滑剤はギア油であり、潤滑剤組成物は、40〜85重量パーセント、45〜80重量パーセント、50〜70重量パーセント、70〜99重量パーセント、75〜95重量パーセント又は80〜85重量パーセントのα‐オレフィンコポリマーを含む。いくつかの実施形態では、潤滑剤は工業用油でありであり、潤滑剤組成物は、35〜99重量パーセント又は40〜99重量パーセントのα‐オレフィンコポリマーを含む。
上述したように、本明細書中に記載のα‐オレフィンコポリマー類は、低粘度基油類といったその他の基油類に比べて、優れた粘度特性を有することができる。そのため、いくつかの実施形態では、α‐オレフィンコポリマー類を希釈剤(例えば、APIグループII基油又はAPIグループIII基油といった低粘度基油)に混合することにより、希釈剤の粘度の向上及び/又は所望の粘度目標(例えば、マルチグレードの高低粘度目標)の達成が可能となる。このように、特定の側面では、本開示は、基油の粘弾性を増加させる方法を提供し、この方法は、基油を提供するステップと;(上述した実施形態のいずれかによる)α‐オレフィンコポリマー組成物を基油に混合するステップとを含む。いくつかの実施形態では、基油は、APIグループI基油、APIグループII基油、APIグループIII基油、APIグループIV基油又はこれらの混合物である。いくつかの実施形態では、希釈剤は、APIグループII基油、APIグループIII基油、APIグループIV基油又はこれらの混合物である。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンコポリマー組成物は、(a)1‐デセン、1‐ドデセン又はこれらの混合物;(b)9‐デセン酸のアルキルエステル(例えば、メチル、エチル若しくはイソプロピルエステル類、又は、これらの組み合わせ)を含む反応混合物から成るコポリマーである。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンコポリマーは、1‐ドデセン及び9‐デセン酸メチルエステルを含む反応混合物から成るコポリマーである。いくつかのそうした実施形態では、1‐ドデセン対9‐デセン酸メチルエステルのモル対モル比は、1:2〜2:1、2:1〜6:1又は6:1〜15:1である。
いくつかの実施形態では、1又は複数のその他の材料は、例えば、潤滑剤組成物に典型的に用いられる添加剤といった1又は複数の添加剤を含むことができる。そうした添加剤の例として、以下に限定されるわけではないが、分散剤、洗剤、耐磨耗剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、極圧(EP)添加剤、粘度指数向上剤といった粘度調整剤、流動点降下剤、腐食抑制剤、摩擦係数調整剤、着色剤、消泡剤、防曇剤、抗乳化剤、有機モリブデン化合物類及び亜鉛ジアルキルジチオホスフェート類が挙げられる。例えば、ギア油としての使用に適するように潤滑剤組成物が混合されるいくつかの実施形態では、潤滑剤組成物は、標準添加剤パッケージ、例えば、GL‐4又はGL‐5のギア油の添加物パッケージを含む。
1又は複数のその他の添加剤は、任意の適切な量で潤滑剤組成物に用いることができる。用いる添加剤の量及び組み合わせは、例えば、以下に限定されるわけではないが、基油の性質、選択された添加剤の性質、及び、結果として得られる組成物に所望される特性といった様々な要素に応じて決定することができる。いくつかの実施形態では、1又は複数の添加剤は、0.1〜50重量パーセント、0.1〜40重量パーセント、0.1〜30重量パーセント、0.1〜20重量パーセント又は0.1〜15重量パーセントを構成する。
いくつかの場合には、本明細書中に記載のα‐オレフィンコポリマー組成物は、APIグループII基油又はグループIII基油といった特定の従来の基油類に比べて、優れた粘度特性(例えば、粘度指数)を有する。したがって、いくつかの実施形態では、α‐オレフィンコポリマー組成物を使用することにより、潤滑剤組成物に1又は複数の粘度調整剤を含有させる必要が少なくとも部分的には無くなる。そのため、いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物は、実質的に粘度調整剤を含んでいない。例えば、いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の全重量に基づいて、5重量パーセント以下、3重量パーセント以下、1重量パーセント以下、0.5重量パーセント以下、0.3重量パーセント以下又は0.1重量パーセント以下の粘度調整剤を含む。
いくつかの場合には、α‐オレフィンコポリマー組成物は、APIグループII基油又はグループIII基油といった特定の従来の基油類に比べて、優れた低温特性を有する。したがって、いくつかの実施形態では、α‐オレフィンコポリマー組成物を使用することにより、潤滑剤組成物に1又は複数の流動点降下剤を含有させる必要が少なくとも部分的には無くなる。そのため、いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物は、実質的に流動点降下剤を含んでいない。例えば、いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の全重量に基づいて、5重量パーセント以下、3重量パーセント以下、1重量パーセント以下、0.5重量パーセント以下、0.3重量パーセント以下又は0.1重量パーセント以下の流動点降下剤を含む。
方法100により、100℃における動粘度が少なくとも25cSt、少なくとも30cSt、少なくとも35cSt又は少なくとも40cStである高粘度の潤滑剤組成物を得ることができる。例えば、第1モノマー112は、8〜18の炭素原子を有する、例えば、1‐デセン又は1‐ドデセンといった第1α‐オレフィンであり、第2モノマー114は、例えば、9‐DAMEといったα‐エステル‐alk‐ω‐ene分子であり得る。反応混合物110はさらに、重合開始剤として有機ペルオキシド(例えば、ジ‐tert‐ブチルペルオキシド又はジ‐tert‐アミルペルオキシド)を含むことができる。方法100はさらに、コポリマー組成物を、200℃以上の温度でかつ0.5〜1torrの真空下で第1ストリッピングに供するステップと、その後、コポリマー組成物を200℃以上の温度でかつ0.1〜1torrの真空下で第2ストリッピングに供するステップとを含むことができる。また、方法100はさらに、コポリマー及び有機ペルオキシドを含む第2反応混合物を形成するステップと、第2コポリマーを含む第2生成混合物を形成するステップとを含むことができる。この第2コポリマーは、第1モノマー及び第2モノマーから成る構成単位を有し、元のコポリマーの少なくとも2倍の重量平均分子量を有することが好ましい。
本明細書中に記載の潤滑剤組成物は、様々な場面で使用することができる。例えば、以下に限定されるわけではないが、モーター油、トランスミッション液、ギア油、工業用潤滑油、金属加工油、作動液、掘削泥水、グリース、コーンプレッサー油、切削剤及びミリング液が挙げられる。いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物は、内燃エンジン、ディーゼルエンジン、2サイクルエンジン、クランク室、変速機、1又は複数のベアリング又はトランスミッションを潤滑するために使用することができる。
このように、本開示は、特定の側面においては様々な機械系を潤滑する方法を提供し、この方法は、上述した実施形態のいずれかに従ったα‐オレフィンコポリマー組成物を含む潤滑剤組成物を機械系に供給するステップを含む。
いくつかの実施形態では、本開示は、トランスミッションケース、差動装置ケース又はトランスファケースを潤滑する方法を提供し、この方法は、上述した実施形態のいずれかに従ったα‐オレフィンコポリマー組成物を含む潤滑剤組成物をトランスミッションケース、差動装置ケース又はトランスファケースに供給するステップを含む。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンコポリマーは、(a)1‐デセン、1‐ドデセン又はこれらの混合物;(b)9‐デセン酸のアルキルエステル(例えば、メチル、エチル又はイソプロピルエステル類)を含む反応混合物から成るコポリマーである。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンコポリマーは、1‐ドデセン及び9‐デセン酸メチルエステルを含む反応混合物から成るコポリマーである。いくつかのそうした実施形態では、1‐ドデセン対9‐デセン酸メチルエステルのモル対モル比は、1:2〜2:1、2:1〜6:1又は6:1〜15:1である。いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物は希釈剤を含む。任意の適切な希釈剤又は希釈剤の組み合わせ、例えば、以下に限定されるわけではないが、APIグループI基油、APIグループII基油、APIグループIII基油、APIグループIV基油又はこれらの混合物を用いることができる。いくつかのそうした実施形態では、希釈剤はAPIグループII基油である。いくつかの他の実施形態では、希釈剤はAPIグループIII基油である。いくつかの他の実施形態では、希釈剤はAPIグループIV基油である。
いくつかの実施形態では、本開示は、内燃エンジンを潤滑する方法を提供し、この方法は、上述した実施形態のいずれかに従ったα‐オレフィンコポリマー組成物を含む潤滑剤組成物を内燃エンジンに供給するステップを含む。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンコポリマーは、(a)1‐デセン、1‐ドデセン又はこれらの混合物;(b)9‐デセン酸のアルキルエステル(例えば、メチル、エチル又はイソプロピルエステル類)を含む反応混合物から成るコポリマーである。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンコポリマーは、1‐ドデセン及び9‐デセン酸メチルエステルを含む反応混合物から成るコポリマーである。いくつかのそうした実施形態では、1‐ドデセン対9‐デセン酸メチルエステルのモル対モル比は、1:2〜2:1、2:1〜6:1又は6:1〜15:1である。いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物は希釈剤を含む。任意の適切な希釈剤又は希釈剤の組み合わせ、例えば、以下に限定されるわけではないが、APIグループI基油、APIグループII基油、APIグループIII基油、APIグループIV基油又はこれらの混合物を用いることができる。いくつかのそうした実施形態では、希釈剤はAPIグループII基油である。いくつかの他の実施形態では、希釈剤はAPIグループIII基油である。いくつかの他の実施形態では、希釈剤はAPIグループIV基油である。
いくつかの実施形態では、本開示は、ディーゼルエンジンを潤滑する方法を提供し、この方法は、上述した実施形態のいずれかに従ったα‐オレフィンコポリマー組成物を含む潤滑剤組成物をディーゼルエンジンに供給するステップを含む。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンコポリマーは、(a)1‐デセン、1‐ドデセン又はこれらの混合物;(b)9‐デセン酸のアルキルエステル(例えば、メチル、エチル又はイソプロピルエステル類)を含む反応混合物から成るコポリマーである。いくつかのそうした実施形態では、α‐オレフィンコポリマーは、1‐ドデセン及び9‐デセン酸メチルエステルを含む反応混合物から成るコポリマーである。いくつかのそうした実施形態では、1‐ドデセン対9‐デセン酸メチルエステルのモル対モル比は、1:2〜2:1、2:1〜6:1又は6:1〜15:1である。いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物は希釈剤を含む。任意の適切な希釈剤又は希釈剤の組み合わせ、例えば、以下に限定されるわけではないが、APIグループI基油、APIグループII基油、APIグループIII基油、APIグループIV基油又はこれらの任意の混合物を用いることができる。いくつかのそうした実施形態では、希釈剤はAPIグループII基油である。いくつかの他の実施形態では、希釈剤はAPIグループIII基油である。いくつかの他の実施形態では、希釈剤はAPIグループIV基油である。
ただし、こうした組成物の用途は必ずしも潤滑剤に限定されず、様々なその他の場面で使用することが可能である。例えば、本明細書中に記載のα‐オレフィンコポリマー類の組成物は、様々なパーソナルケア製品、例えば、クリーム、軟膏剤及びエマルジョン等に使用することができる。
α‐オレフィンコポリマー類の誘導体類
少なくとも一側面では、本開示は、2種以上のモノマー類からなる構成単位を有するコポリマーを含み、当該2種以上のモノマー類は、α‐オレフィンである第1モノマーと、エステル‐アルケン分子(例えば、α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子)である第2モノマーとを含み、エステル‐アルケン分子のエステル基類の少なくとも一部は別の官能基に化学的に変換されている組成物を提供する。これは、任意の適切な方法で実施することができる。いくつかの実施形態では、α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子の少なくとも一部を、α位に別の官能基を有するalk‐ω‐ene化合物に変換できるように、反応は重合の前に行われる。こうした意味では、化学的に変換されたα‐エステル‐alk‐ω‐ene分子は、第1モノマー(α‐オレフィン)及び第2モノマー(α‐エステル‐alk‐ω‐ene分子)と反応してコポリマーを形成することができる第3モノマーである。いくつかの他の実施形態では、エステル基類は、重合の後に化学的に変換される。
いくつかのそうした実施形態では、コポリマー中のエステル基類の全て又は略全て(99%以上)が別の官能基に化学的に変換される。いくつかの他の実施形態では、エステル基類の一部のみが変換される。例えば、いくつかの実施形態では、1%〜99%、1%〜90%、1%〜80%、1%〜70%、1%〜60%、1%〜50%、1%〜40%、1%〜30%、1%〜20%、1%〜10%、90%〜99%、80%〜99%、70%〜99%、60%〜99%、50%〜99%、40%〜99%、30%〜99%、20%〜99%、10%〜99%、40%〜60%、30%〜70%、20%〜80%又は10%〜90%が変換される。
あらゆる適切な化学変換を利用することができる。形成することができる新たな官能基類の非限定的な例として、(上述したような)カルボキシル酸基類;例えば、リチウム、ナトリウム、カルシウム、カリウム又はマグネシウムの塩類といったカルボン酸塩基類;ヒドロキシル基類;チオール基類;ハロゲン基類;例えば、第1級アミン類、並びに、他の有機基類が結合した第2級及び第3級アミン類といったアミノ基類;第1級アミン類のアミド類、並びに、他の有機基類が結合した第2級及び第3級アミン類のアミド類といったアミド類;他の有機基類が結合したエーテル基又はチオエーテル基類;アルデヒド基類;アシルハライド基類;他の有機基類が結合したケトン類;他の有機基類が結合した炭酸塩類;ニトリル基類;イソシアネート基類;他の有機基類が結合したイミン類;他の有機基類が結合した二硫化物類;他の有機基類が結合したスルフォキシド類;他の有機基類が結合したスルホン類;スルフィン酸基類;スルホン酸基類;イソチオシアネート基類;これらの任意の組み合わせが挙げられる。
いくつかの他の実施形態では、化学変換には、エステル官能基類の少なくとも一部をあるエステルから別のエステルへと変換するエステル交換が含まれ得る。いくつかのそうした実施形態では、エステル基類の少なくとも一部が長鎖アルコールのエステル基類に変換される。例えば、短鎖エステル類(例えば、メチルエステル類、エチルエステル類及びイソプロピルエステル類等)は、長鎖エステル類(例えば、ペンチルエステル類、イソアミルエステル類、ネオペンチルエステル類、ヘキシルエステル類、オクチルエステル類及び2‐エチルヘキシルエステル類等)にエステル交換される。いくつかの実施形態では、エステル交換は、メチルジクリコール及びメチルトリグリコール等といったエーテル結合を有するアルコール類を用いて行うことができる。いくつかの実施形態では、1価アルコール類のエステル類の少なくとも一部を、多価アルコール類(例えば、ネオペンチルグリコール等といったジオール類;グリセリン及び1,1,1‐トリス(ヒドロキシメチル)プロパン等といったトリオール類;エリトリトール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール及びキシリトール等といった高次のポリオール類)のエステル類に変換することができる。いくつかの実施形態では、エステル交換は重合の後に行われる。ただし、いくつかの他の実施形態では、エステル‐アルケンモノマー類は重合の前にエステル交換される。
いくつかの実施形態では、化学変換は、例えば、エステルと水素とを熱及び/又は触媒の存在下で反応させることにより、コポリマーのアルキルエステル基類の少なくとも一部をヒドロキシル基類に変換するステップを含み得る。このように、様々な場面で有用であり得るポリオール、例えば、食品添加物を、ポリウレタン等の軟質セグメント等として合成することができる。
いくつかの他の実施形態では、化学変換は、結果として得られる組成物に特定の所望特性を付与することができる部分の付加を含み得る。そうした部分として、以下に限定されるわけではないが、酸化抑制部分、分散性添加部分及び洗剤添加部分が挙げられる。例えば、いくつかの実施形態では、化学変換は、ヒンダードフェノール部分、ジアリールアミン部分又はこれらの組み合わせの付加を含む。いくつかの他の実施形態では、化学変換は、例えば、分散性をさらに高めるために、ポリアルキレンポリアミンの付加を含む。いくつかの他の実施形態では、化学変換は、例えば、洗浄性をさらに高めるために、アルカリ又はアルカリ土類金属塩の付加を含む。
いくつかの実施形態では、化学変換は、他のポリマー鎖類、又は、同一のポリマー鎖の他の部分に架橋する部分の付加を含み得る。任意の適切な架橋剤を用いることができる。いくつかの実施形態では、化学変換は、(同一のポリマー鎖又は別個のポリマー鎖類の)2の別個の構成単位のエステル基へのポリアルキレンポリアミンの付加を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリアルキレンポリアミンはトリエチレンテトラアミンである。いくつかのそうした実施形態では、ポリアルキレンポリアミンの分子量は、50〜1000g/mol又は100〜500g/molである。
先述したように、炭素‐炭素二重結合は、重合後もコポリマーに残存し得る。そのため、いくつかの実施形態では、これらの炭素‐炭素二重結合に特定の基を付加する、例えば、エン反応により、α‐オレフィンコポリマー類をさらに官能化することができる。オレフィン結合を伴う反応を介して付加されるものであればいかなる適切な部分を付加してもよい。エン反応を介して官能化が行われる実施形態では、任意の適切なエノファイル、例えば、以下に限定されるわけではないが、アルケン類、アセチレン類、ベンザイン類、並びに、カルボニル基類及びチオカルボニル基類等といった、炭素とヘテロ原子との間に二重結合を有する化合物を用いることができる。いくつかの実施形態では、エノファイルは、無水マレイン酸又はそのエステル類である。α‐オレフィンコポリマー中の炭素‐炭素二重結合の任意の適切な部分を官能化することができる。例えば、いくつかの実施形態では、官能化前のα‐オレフィンコポリマー中の炭素‐炭素二重結合の合計数に基づいて、α‐オレフィンコポリマー中の10%以下、25%以下、50%以下、75%以下、99%以下又は100%の炭素‐炭素二重結合を、例えば、エン反応を介して官能化することができる。エノファイルが酸基、又は、無水マレイン酸といった酸無水物である実施形態では、酸官能基又は無水物官能基を任意の適切な基とさらに反応させて、さらなる官能基を形成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、酸又は無水物をアルコールと反応させて、1又は複数のエステル基類を形成することができる。いくつかの他の実施形態では、酸又は無水物をアミンと反応させて、1又は複数のアミド基類を形成することができる。
以下、本発明の1又は複数の好ましい実施形態を例示するための実施例を記載する。ただし、以下の実施例には、本発明の範囲内において様々な変更を加えることができる。
材料及び方法
プロトン核磁気共鳴分析法(1H‐NMR)を用いて、コモノマー類の取り込み割合(percent incorporation)を評価した。残留モノマーを、DB‐5HT毛細カラム(J&W Scientific社製)及び水素炎イオン化型検出器を用いて、クロマトグラフィ(GC)により量化した。GCによる測定値により、残留したダイマー、トライマー及びテトラマーを定性分析することもできた。ZORBAX Eclipse Plus C18カラム、及び、示差屈折率検出器又はUV?可視光検出器を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、残留モノマー及び反応副生成物を分離及び量化した。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、及び、移動相としてテトラヒドロフラン(THF)を用いて、ポリマー類の分子量を測定した。GPC分析に用いたカラムは、ガードカラム(VARIAN社製PLgel 5μmガードカラム)、第1分離カラム(200〜400,000ダルトン;VARIAN社製PLgel 5 μm MIXED‐D)及び第2分離カラム(<30,000ダルトン;VARIAN社製PLgel 3 μm MIXED‐E)であった。
温度制御された油浴を用いて、40℃及び/又は100℃の動粘度を測定した。いくつかのコポリマー類の動粘度により決定されるBrookfield動粘度として、いくつかの試料の動粘度をBrookfield動粘度測定から算出した。動粘度(KV)はセンチストーク(cSt)の単位で報告される。動粘度測定は、ASTMによるD445‐11a試験法に従っておこなった。
実施例1:1‐デセンと9‐DAMEとの共重合
α‐オレフィン モノマー(1‐デセン)とα‐エステル‐alk‐ω‐eneモノマー(9‐DAME)とを反応させることにより、コポリマー類を形成した。最初の重合反応では、1‐デセン対9‐DAMEのモル比が10:1である反応混合物が形成された。この混合物に、ジ‐t‐ブチルペルオキシド又はジ‐t‐アミルペルオキシドを重合開始剤として加えた。反応混合物にペルオキシドを10等分して加えた。1回目のペルオキシドを加え終わるまでは反応混合物を室温で維持し、その後は、反応混合物を150℃まで加熱した。いくつかの場合には、モノマー類の反応前のスパージ、開始剤を付加する前の反応混合物の加熱、及び/又は、反応中の不活性ガスの流れを許容するような、凝縮器の入口と出口ではなく、頂部の入口を用いた静的不活性ガス雰囲気の形成がなされた。反応の間中、ペルオキシド分解生成物類が生成され、揮発性のアルカン類、ケトン類及びアルコール類が生成された。これらの分解生成物が反応混合物に残ると反応温度を冷却することがあるため、ディーン・スターク・トラップを用いて揮発性生成物を除去及び適度に収集した。ビグリューカラムによりトラップを反応容器から隔離し、収率の低下につながるモノマー及び/又はペルオキシドのトラップへの持ち越しを防止した。
一実施例では、250グラム(g)の1‐デセン(Aldrich社製;1.78mol)、33g(0.178mol)の9‐DAME、及び、16.25ミリリットル(mL)(0.8グラム毎ミリリットル(g/mL)の濃度;13g;0.089mol)のジ‐t‐ブチルペルオキシドを混合して、磁気攪拌棒、ガス入口、ガス出口、温度計、ディーン・スターク・トラップ及び凝縮器を備えた1リットル3ネック丸底フラスコに反応混合物を形成した。フラスコには、低流量の窒素ガスの流れが形成され、反応混合物は150℃まで加熱された。混合物が150℃になると、反応混合物に対して、さらに16.25mL(13g;0.089mol)のジ‐t‐ブチルペルオキシドを加えた。反応におけるジ‐t‐ブチルペルオキシドの全モル量は、9‐DAMEのモル量と等しく、これは、全反応(モル ペルオキシド/(モル ペルオキシド+モル モノマー類=0.0833)の8.3モルパーセント(モル%)に相当するものであった。反応混合物を150℃で5〜10時間攪拌し、ディーン・スターク・トラップ中の液体を定期的に除去した。得られた透明な生成物を室温でかつ窒素流下で冷却し、短行程蒸留装置に移した後、真空ストリッピングして未反応のモノマー(1‐デセン及び/又は9‐DAME)を除去した。蒸留装置のポットに残った生成物の収率は約66%であった。
別の実施例では、112.86gの1‐デセン(Aldrich社製;0.80mol)及び14.83gの9‐DAME(0.08mol)を混合して、磁気攪拌棒、ガス入口、ガス出口、熱電対制御加熱マントール、ディーン・スターク・トラップ及び凝縮器を備えた250mL3ネック丸底フラスコにモノマー混合物を形成した。モノマー混合物を窒素で1時間以上スパージし、それから、低流量の窒素ガス下で150℃まで加熱した。混合物が150℃になると、反応混合物に対して、10分の1量のジ‐t‐ブチルペルオキシドをシリンジで加えて、反応混合物を形成した。反応に用いたジ‐t‐アミルペルオキシド開始剤の合計量は24.54g(30mL;0.82g/mLの濃度;0.14mol)であり、それぞれ追加された10分の1量の開始剤は3.0mLであった。アリコートの3.0mLのジ‐t‐アミルペルオキシドを、30分毎に反応混合物に加えた。その結果、開始剤の追加時間は、合計4.5時間となった。反応混合物は通常、開始剤を3回又は4回追加後に還流し始め、液体は通常、開始剤を6回追加後にトラップに収集され始める。開始剤全てを追加した後、反応混合物を150℃で4時間攪拌し、それから、生成混合物を室温まで冷却した。フラスコは、ストリッピング用の短行程蒸留装置を備えており、熱電対制御加熱を用いて生成混合物を真空下で200℃まで徐々に加熱した。200〜205℃かつ2torr未満の圧力でのストリッピングにより、残留モノマーは、生成物中0.25%未満程度まで除去された。その結果、無色乃至は淡黄色で僅かに曇った生成物がフラスコに残った。中程度の粗さの紙フィルター又は粗いフリットフィルターを用いてこの生成物を保温ろ過(〜70〜100℃)した。淡黄色生成物の収率は、85%以上であった。1,504.85g(10.73mol)の1‐デセン、197.70g(1.07mol)の9‐DAME、及び、400mLのジ‐t‐アミルペルオキシド(1.88mol)を用いて、5Lフラスコで反応を行うことにより、本実施例をスケールアップした。また、3,762.12g(26.82mol)の1‐デセン、494.25g(2.68mol)の9‐DAME、及び、1Lのジ‐t‐アミルペルオキシド(4.69mol)を用いて、512Lフラスコで反応を行うことにより、本実施例をさらにスケールアップした。
実施例2:1‐デセンと9‐DAMEとの共重合−水の影響
ヒドロペルオキシド開始剤、又は、ジ‐t‐ブチルペルオキシド開始剤を単独又は水と組み合わせて用いることにより、1‐デセンと9‐DAMEとの共重合に対する水の影響を調べた。1‐デセン対9‐DAMEのモル比が10:1の反応混合物を用いて、155.4℃の反応温度で上述のとおりの重合反応を行った。開始剤は、t‐ブチルヒドロペルオキシド溶液(70重量%水溶液)、水と混合したジ‐t‐ブチルペルオキシド、又は、純粋なジ‐t‐ブチルペルオキシドであった。それぞれの重合における開始剤は、モル ペルオキシド/(モル ペルオキシド+モル モノマー類として算出し、かつ、ペルオキシド含有量がt‐ブチルヒドロペルオキシド溶液の70重量%であると想定して、13.7モル%のペルオキシドであった。表1には、共重合反応の開始剤のタイプ、反応収率、及び、100℃における動粘度(KV)が示されている。反応混合物に水を加えると、コポリマーの収率及び動粘度の両方が低下すると考えられる。
実施例3:1‐デセンと9‐DAMEとの共重合−ペルオキシド配合量の影響
様々な量のジ‐t‐アミルペルオキシド又はジ‐t‐ブチルペルオキシドを開始剤として用いて、α‐オレフィンモノマーである1‐デセンと、α‐エステル‐alk‐ω‐eneモノマーである9‐DAMEとを反応させることにより、コポリマー類を形成した。1‐デセン対9‐DAMEのモル比が10:1の反応混合物を用いて、ジ‐t‐アミルペルオキシドを用いた共重合は149.5℃の反応温度で、ジ‐tert‐ブチルペルオキシドを用いた共重合は155℃の反応温度で、実施例1で説明したとおりに共重合反応を行った。表2には、共重合反応の開始剤の量、反応収率、及び、100℃における動粘度(KV)が示されている。開始剤の配合量が増加すると、反応収率及び動粘度の両方が増加した。また、開始剤のタイプがコポリマー類の粘度に影響を与えた。ジ‐t‐アミルペルオキシドは、ジ‐t‐ブチルペルオキシド開始剤よりも低粘度コポリマーの生成に有効であった。
実施例4:9‐DAMEと1‐デセン以外のα‐オレフィン類との共重合
α‐エステル‐alk‐ω‐eneモノマー(9‐DAME)と、α‐オレフィンモノマーである1‐デセン又は1‐ドデセンとを反応させることにより、コポリマー類を形成した。α‐オレフィン(類)対9‐DAMEのモル比を、10:1、3:1又は1:1に変化させた。ペルオキシド開始剤は、ジ‐t‐アミルペルオキシド又はジ‐t‐ブチルペルオキシドであり、開始剤の配合量は、13.7モル%又は約8.4モル%であった。表3には、共重合反応のモノマー類、モノマー比、開始剤のタイプ、開始剤の配合量、反応収率、及び、100℃における動粘度(KV)が示されている。また、表には、α‐オレフィンの独自性のみが異なる類似の共重合反応における収率及び動粘度の差が示されている。1‐ドデセンを1‐デセンの代わりに共重合に用いることの影響は、用いたペルオキシド、ペルオキシドの量、及び、α‐オレフィン対9‐DAMEのモル比に応じて変化した。
実施例5:1‐デセンと9‐DAMEとの共重合−ペルオキシドのタイプ及び配合量の影響
1‐デセンの代わりに1‐ドデセンをα‐オレフィンモノマーとして用いて共重合を行った。α‐エステル‐alk‐ω‐eneモノマーは9‐DAMEであり、様々な量のジ‐t‐ブチルペルオキシド開始剤を用いて、1‐ドデセンと9‐DAMEとを反応させることにより、コポリマー類を形成した。1‐ドデセン対9‐DAMEのモル比が10:1の反応混合物を用いて、155℃の反応温度で、実施例1で説明したとおりに共重合反応を行った。ジ‐t‐ブチルペルオキシド開始剤の量は、4.0モル%〜13.7モル%まで変化させた。表4には、共重合反応の開始剤の量、反応収率、及び、100℃における動粘度(KV)が示されている
様々なペルオキシド開始剤を用いて、1‐ドデセンと9‐DAMEとを10:1のモル比で反応させることにより、コポリマー類を形成した。ジ‐t‐ブチルペルオキシド及びジ‐t‐アミルペルオキシドに加えて、2,5‐ビス(t‐ブチルペルオキシ)‐2,5‐ジメチルヘキサン及びt‐ブチルペルオキシベンゾエートを重合開始剤として用いた。2,5‐ビス(t‐ブチルペルオキシ)‐2,5‐ジメチルヘキサン開始剤は、1分子当たり2当量の基を生成し得るため、理論的には、重合に必要な開始剤は半分で済む。表5には、共重合反応の開始剤の量、反応収率、及び、100℃における動粘度(KV)が示されている。
図3は、反応収率とコポリマーの粘度とを、開始剤の配合量の関数として示すグラフである。図中の標本値群は表5から得られたものである。開始剤の配合量が増加すると、反応収率及び動粘度の両方が増加した。また、開始剤のタイプがコポリマー類の粘度に影響を与えた。図3に示されているように、ジ‐t‐ブチルペルオキシドを用いて形成されたコポリマー類は、開始剤の配合量の増加に伴う動粘度(KV)の増加率が、ジ‐t‐アミルペルオキシドを用いて形成されたコポリマー類に比べて高かった。ジ‐t‐ブチルペルオキシドは高粘度コポリマーの生成に有効であり、ジ‐t‐アミルペルオキシドは低粘度コポリマーの生成に有効であった。
2,5‐ビス(t‐ブチルペルオキシ)‐2,5‐ジメチルヘキサン開始剤を用いた共重合の収率は、ジ‐t‐ブチルペルオキシドを用いた共重合の収率に比べて僅かに低かったが、両タイプの共重合で同様の100℃における動粘度を有するコポリマー類が生成された。t‐ブチルペルオキシベンゾエート開始剤も収率は低く、得られたコポリマー類は淡黄色であった。また、t‐ブチルペルオキシベンゾエートを用いて形成されたコポリマー類の分離は、その他の共重合よりも困難であった。これは、反応の安息香酸副生成物が蒸留凝縮器で凝固することがあるためである。
実施例6:1‐ドデセンと9‐DAMEとの共重合生成物を含む高粘度潤滑剤組成物−ストリッピングの影響
1又は複数の追加的なストリッピング手順により、特定のコポリマー類の粘度を増加させた。分析対象のコポリマー類は、ジ‐t‐ブチルペルオキシドを重合開始剤として用いて、155℃の反応温度で、1‐ドデセンと9‐DAMEとを3:1のモル比で反応させることにより形成されたものである。少量の8.3モル%ペルオキシドを用いて形成されたコポリマーを250℃でかつ0.25torrの真空下でストリッピングし、その後、300℃でかつ0.5torrの真空下でさらにストリッピングした。また、量を増加させた13.7モル%ペルオキシドを用いて形成されたコポリマーを250℃でかつ0.25torrの真空下でストリッピングした。表6には、開始剤の量、コポリマーの収率、100℃における動粘度(KV)、40℃における動粘度(KV)、及び、粘度指数が示されている。
少量の8.3モル%ペルオキシドを用いて形成されたコポリマーを250℃でかつ0.25torrでストリッピングすることにより、100℃における動粘度は21.38から28.29cStに増加した。また、この追加のストリッピングにより、全収率は72.8%から65.0%に減少した。大量の13.7モル%ペルオキシドを用いて形成されたコポリマーを250℃でかつ0.25torrでストリッピングすることにより、100℃における動粘度は38.93から48.01cStに増加した。また、この追加のストリッピングにより、全収率は90.6%から84.1%に減少した。
コポリマー類のストリッピングにより、元のコポリマー類の低動粘度の一因であった低分子量分画が除去された。高ペルオキシド(13.7モル%ペルオキシド)の試料では、100℃における動粘度は、40cSt超まで増加した。粘度は、追加的なストリッピングにより多少は低下したものの、比較的高い状態のままであった。
8モル%ジ‐t‐ブチルペルオキシドを重合開始剤として用いて、1‐ドデセンと9‐DAMEとを9:1又は3:1のモル比で反応させることにより、コポリマー類を形成した。200℃でかつ1torrの真空下でストリッピングした後、得られたコポリマー類の分子量、40℃及び100℃における動粘度、並びに、粘度指数を分析した。ストリッピングプロセス及び分析は、250℃、260℃及び275℃と連続的に温度を上昇させて3回繰り返した。表7には、コモノマー比、ストリッピング温度、コポリマーの収率、分子量(Mn)及び多分散度(PDI)、100℃及び40℃における動粘度(KV)、並びに、粘度指数が示されている。
ストリッピング温度が上昇すると、コポリマー類の分子量及び動粘度は増加し、多分散度及び粘度指数は低下した。それぞれのストリッピングプロセスで得られた留出液を分析したところ、ダイマー及び低級オリゴマー類がコポリマーから除去され、それにより、コポリマーの平均分子量が増加し、多分散度が低下したことが分かった。
11.3モル%ジ‐t‐ブチルペルオキシドを重合開始剤として用いて、1‐ドデセンと9‐DAMEとを9:1、3:1又は1:1のモル比で反応させることにより、コポリマー類を形成した。このペルオキシド開始剤の配合量は、上述した共重合で用いた8〜8.5モル%ペルオキシド配合量と13.7モル%ペルオキシド配合量との中間配合量として選択されたものである。8〜8.5モル%及び13.7モル%ペルオキシドを用いた共重合の結果、それぞれ40cSt未満及び40cSt超の100℃における動粘度が得られたため、中間的なペルオキシド配合量では40cStに近い100℃における動粘度が得られることが予想された。共重合生成物を200℃でかつ1torrの真空下でストリッピングし、その後、分子量、40℃及び100℃における動粘度、粘度指数、並びに、流動点を分析した。ストリッピングプロセス及び分析は、250℃及び275℃と連続的に温度を上昇させて2回繰り返した。表8には、コモノマー比、ストリッピング温度、コポリマーの収率、分子量(Mn)及び多分散度(PDI)、100℃及び40℃における動粘度(KV)、並びに、粘度指数が示されている。
ストリッピング温度が上昇すると、コポリマー類の分子量及び動粘度は概して増加し、多分散度及び粘度指数は概して低下した。しかし、それでも100℃における動粘度は40cSt未満であった。表8のエントリ(品目)1、2、4及び5のコポリマー類について、それぞれ、−48℃、−42℃、−45℃及び−39℃の流動点を測定した。ストリッピング温度が上昇すると流動点は上昇するが、全ての測定値は比較的低く、市販の高粘度ポリ(α‐オレフィン類)で典型的に観測されている−22℃〜−47℃の範囲内であった。
実施例7:1‐ドデセンと9‐DAMEとの共重合生成物を含む高粘度潤滑剤組成物−ペルオキシド配合量及び反応温度の影響
12モル%、14モル%又は16モル%のジ‐t‐ブチルペルオキシドを重合開始剤として用いて、155℃、165℃又は175℃の反応温度で、α‐オレフィンモノマー(1‐ドデセン)とα‐エステル‐alk‐ω‐eneモノマー(9‐DAME)とを9:1のモル比で反応させることにより、コポリマー類を形成した。開始剤は10等分ではなく8等分して加えたため、反応時間が1時間短縮した。共重合生成物を200℃でかつ1torrの真空下でストリッピングし、その後、40℃及び100℃における動粘度、並びに、粘度指数を分析した。表9には、共重合反応の反応温度、ペルオキシド配合量、反応収率、100℃及び40℃における動粘度(KV)、並びに、粘度指数が示されている。
13.4モル%又は14.5モル%のジ‐t‐ブチルペルオキシドを重合開始剤として用いて、155℃又は175℃の反応温度で、1‐ドデセンと9‐DAMEとを別のモル比4:1で反応させることにより、コポリマー類を形成した。開始剤は10等分して加えた。共重合生成物を200℃でかつ1torrの真空下でストリッピングし、その後、40℃及び100℃における動粘度、並びに、粘度指数を分析した。表10には、共重合反応の反応温度、ペルオキシド配合量、反応収率、100℃及び40℃における動粘度(KV)、並びに、粘度指数が示されている。
13.5モル%〜15モル%のジ‐t‐ブチルペルオキシド重合開始剤を用いて、1‐ドデセンと9‐DAMEとを9:1又は4:1のモル比で反応させることにより、コポリマー類を形成した。共重合生成物を200℃でかつ1torrの真空下でストリッピングし、その後、40℃及び100℃における動粘度、並びに、粘度指数を分析した。表11には、共重合反応のモノマー類のモル比、ペルオキシド配合量、反応収率、100℃及び40℃における動粘度(KV)、並びに、粘度指数が示されている。
175℃の高温で形成されたコポリマー類が低粘度であったのは、反応の間中この温度を維持するのが困難であったことが原因であると考えられる。こうした高温で少量のペルオキシド開始剤を用いることの利点は、40cStの高動粘度の実現を犠牲にして成り立つものであると考えられる。14モル%のペルオキシドを用いた165℃での共重合では、動粘度の値が36.7〜40.3cSt(表9のエントリ6及び7を参照のこと)が得られたが、同量(14モル%)のペルオキシドを用いた175℃での共重合では、動粘度の値が37.3〜38.3cSt(表11のエントリ3及び4を参照のこと)と低いコポリマー類が得られた。これら2つのタイプの共重合の収率は同様であり、14モル%ペルオキシド/165℃での共重合の収率は90.8〜92.1%、14モル%ペルオキシド/175℃での共重合の収率は92.3〜92.6%であった。
実施例8:1‐ドデセンと9‐DAMEとの共重合生成物を含む高粘度潤滑剤組成物−水素化の影響
14.3モル%〜14.5モル%のジ‐t‐ブチルペルオキシド重合開始剤を用いて、165℃の反応温度で、α‐オレフィンモノマー(1‐ドデセン)とα‐エステル‐alk‐ω‐eneモノマー(9‐DAME)とを9:1又は4:1のモル比で反応させることにより、コポリマー類を形成した。共重合生成物をストリッピングし、その後、分子量、40℃及び100℃における動粘度、粘度指数、流動点、並びに、酸化開始温度(OOT;ASTM E2009)を分析した。4:1での共重合では92.0%のコポリマーが得られ、数平均分子量(Mn)は2,498、多分散度指数(PDI)は1.93であった。一方、9:1での共重合では91.7%のコポリマーが得られ、数平均分子量(Mn)は2,633、多分散度指数(PDI)は1.87であった。それから、これらのコポリマー類を水素化して炭素‐炭素二重結合を除去し、その後、同様に分析した。表12には、コポリマー類のモル比、ペルオキシド配合量、100℃及び40℃における動粘度(KV)、粘度指数、分子量、流動点、並びに、酸化開始温度(OOT)が示されている。
粘度及び粘度指数は水素化による影響をあまり受けなかったが、流動点は水素化により増加した。水素化は、OOTにより測定されるコポリマー類の酸化安定性を向上させた。非水素化コポリマー類を0.5%のジアルキルジフェニルアミン酸化防止剤に混合すると、それぞれのコポリマーのOOTは220℃超まで上昇した。
実施例9:1‐ドデセンと9‐DAMEとの共重合生成物を含む高粘度潤滑剤組成物−ペルオキシド配合量の増加及び反応温度の影響
14〜20モル%のジ‐t‐ブチルペルオキシド重合開始剤を用いて、155℃又は165℃の反応温度で、α‐オレフィンモノマー(1‐ドデセン)とα‐エステル‐alk‐ω‐eneモノマー(9‐DAME)とを1:1のモル比で反応させることにより、コポリマー類を形成した。共重合生成物の40℃及び100℃における動粘度、並びに、粘度指数を分析した。表13には、共重合反応の反応温度、ペルオキシド配合量、反応収率、100℃及び40℃における動粘度(KV)、並びに、粘度指数が示されている。
図4は、コポリマーの粘度を、ジ‐t‐ブチルペルオキシドの配合量の関数として示すグラフである。標本値群は表13から得られたものである。グラフのダイヤモンド記号は、反応温度155℃に該当し、正方形記号は反応温度165℃に該当する。ポリマー類の100℃における動粘度は、38〜186cStの範囲にあり、概して、開始剤配合量の増加に従って増加した。
実施例10:1‐ドデセンと9‐DAMEとの共重合生成物を含む高粘度潤滑剤組成物−2段階共重合の影響
8モル%又は14モル%のジ‐t‐ブチルペルオキシド重合開始剤を用いて、155℃の反応温度で、α‐オレフィンモノマー(1‐ドデセン)とα‐エステル‐alk‐ω‐eneモノマー(9‐DAME)とを1:1のモル比で反応させることにより、コポリマー類を形成した。8モル%開始剤反応から得られた共重合生成物の一部を第2段階目の共重合に供した。第2段階目では、共重合生成物を追加のジ‐t‐ブチルペルオキシド重合開始剤と混合し、165℃で加熱した。追加の開始剤は165℃で4回に分けて追加し、それから、混合物を165℃で4時間保持した。第2段階目の共重合で用いたジ‐t‐ブチルペルオキシド重合開始剤量は、第1段階目の共重合で用いた8モル%の開始剤量の11.3%、22.4%、33.7%又は44.9%であった。したがって、第2段階目で第1段階目の共重合の開始剤量の44.9%が用いられた2段階共重合における開始剤の合計使用量は、14モル%の開始剤が用いられた1段階共重合における開始剤量と等しかった。
1段階反応及び2段階反応の両方から得られた共重合生成物の40℃及び100℃における動粘度、粘度指数、並びに、分子量を分析した。表14には、共重合反応の反応条件、反応収率、100℃及び40℃における動粘度(KV)、粘度指数、並びに、分子量が示されている。2段階反応における反応収率は、両段階における全収率である。ただし、第2段階目の収率は概略的に量化したものである。
ペルオキシド配合量が最大(A+さらに44.9%の開始剤)の2段階反応で得られた100℃における動粘度は、75.16cStであった。この動粘度は、同量の開始剤を1段階反応で用いることにより得られる動粘度(「C」;100℃における動粘度=38.35cSt)より高かった。驚くべきことに、この1段階反応による粘度と略同じ粘度を、追加の開始剤量のたった半分を用いることにより得ることができた。これは、「A生成物+さらに22.4%の開始剤」と識別されている2段階反応(100℃における動粘度=38.23cSt)に該当する。
「A生成物+さらに33.7%の開始剤」と識別されている2段階反応では、100℃における動粘度は54.07cStであった。この粘度は、表13で報告されている、16モル%開始剤を165℃で用いた反応の粘度(100℃における動粘度=55.59及び57.87cSt)と同様であるが、この2段階共重合で用いた開始剤は、1段階共重合よりも16.4%少なくて済んだ。
驚くべきことに、2段階共重合を用いて形成されたコポリマー類の粘度指数は低下しなかった。第1段階目のストリッピングの後に残存する低分子量種は、第2段階目で反応し易いため、現在のところ、2段階生成物の揮発性は、1段階生成物よりも低いと考えられている。
実施例11:1‐ドデセンと、様々なエステル基類を有するα‐エステル‐alk‐ω‐ene類との共重合生成物を含む高粘度潤滑剤組成物
約14モル%のジ‐t‐ブチルペルオキシド重合開始剤を用いて、155℃の反応温度で、α‐オレフィンモノマー(1‐ドデセン)とα‐エステル‐alk‐ω‐eneモノマーとを4:1のモル比で反応させることにより、コポリマー類を形成した。モル比4:1のα‐オレフィン(1‐ドデセン)(90.05g)とα‐エステル‐alk‐ω‐eneモノマー(2‐プロピル9デセノエート)(28.40g)とを、磁気攪拌棒、加熱マントール及びディーン・スターク・トラップを備えた250mL3ネックフラスコ中で155℃まで加熱した。30分間隔で2mLドーズ量のジ‐t‐ブチルペルオキシドを、合計で20mL(15.92g)のペルオキシドになるように加えた。ペルオキシドを加え終わると、反応を155℃でさらに4時間の間攪拌した。反応混合物を0.5torrでかつ200℃でストリッピングしたところ、粘性のある淡黄色の生成物が得られた。同様の手順により、メチル、n‐ペンチル、4‐メチル、ブチル、n‐オクチル及び2‐エチルヘキシルといったα‐エステル‐alk‐ω‐eneモノマー類の複数種を用いて、モル比4:1のコポリマー類を形成した。共重合生成物の40℃及び100℃における動粘度、並びに、粘度指数を分析した。表15には、共重合反応のペルオキシド配合量、反応収率、100℃及び40℃における動粘度(KV)、並びに、粘度指数が示されている。
驚くべきことに、ペンチルエステルコモノマー類を用いて形成された2種のコポリマー類は、14モル%開始剤を用いて9‐DAMEコモノマーから形成された対照コポリマーに比べて、100℃における動粘度(KV)及び粘度指数が高かった。また、n‐ペンチルエステルコモノマーは、対照コポリマーに比べて、100℃における動粘度(KV)が高く、40℃における動粘度(KV)が低かった。直鎖エステル類を用いたコポリマー類は、それらの枝分れした対応物に比べて、粘度指数が高かった。自動車用潤滑剤といった幅広い温度での利用が見込まれる潤滑剤組成物においては、粘度指数を変化させる一方で、100℃における動粘度(KV)を僅かにのみ変化させることが望ましいと考えられる。
実施例12:40センチストークのPAOとの比較
α‐オレフィン(1‐ドデセン)と、α‐エステル‐alk‐ω‐eneモノマー(9‐DAME)とを様々な比率、すなわち、9:1、3:1及び1:1のモル比で用いて、それぞれ試料1、2及び3と識別されている3種のα‐オレフィンコポリマーの試料を調製した。試料1については、1‐ドデセン(1‐DD)(443.83g)と9‐デセン酸メチルエステル(9‐DAME)(53.99g)との混合物を、磁気攪拌棒、加熱マントール及びディーン・スターク・トラップを備えた1000mL3ネックフラスコ中で160℃まで加熱した。30分間隔で7mLドーズ量のジ‐t‐ブチルペルオキシドを、合計で84mL(66.86g)のペルオキシドになるように加えた。ペルオキシドを加え終わると、反応を160℃でさらに4時間の間攪拌した。反応混合物を0.6torrでかつ200℃でストリッピングしたところ、粘性のある淡黄色の生成物が得られた。同様に、1‐DD対9‐DAMEのモル比を3:1にして試料2を形成し、1‐DD対9‐DAMEのモル比を1:1にして試料3を形成した。試料1、2及び3をそれぞれ、40センチストーク規定の商用銘柄のポリ(α‐オレフィン)(PAO)と比較した。比較のため、以下の変数:100℃における動粘度(KV)、40℃における動粘度(KV)、粘度指数(VI)、流動点、NOACK揮発性、アニリン点、誘電率、及び、−26℃におけるブルックフィールド粘度について試験を行った。比較試験の結果を以下の表16に示す。
実施例 13:α‐オレフィンコポリマーのエステル交換
2種の別個のポリオール類:ネオペンチルグリコール(NPG)及び1,1,1‐トリス(ヒドロキシメチル)プロパン(TMP)を用いて、実施例12の試料1のα‐オレフィンコポリマーをエステル交換した。NPGで変性されたコポリマー類(「NPG‐Mod」)については、100gの試料1、5.31gのNPG、及び、2〜3gのp−トルエンスルホン酸を、攪拌棒、ディーン・スターク・トラップ、凝縮器、窒素バブラ、熱電対及び加熱マントールを備えた3ネック500mL丸底フラスコに入れた150mLのオクテン中で混合した。フラスコを1時間の間徐々に130℃まで加熱し、その後1時間にわたって145℃まで上昇させた。それから2時間にわたって160℃まで上昇させ、さらに3時間にわたって最終温度の180℃まで上昇させた。その後、フラスコを室温まで冷却し、2〜3gのK2CO3を加えて1〜1.5時間の間攪拌した。この物質をそれから2torrでかつ170℃で2時間蒸留し、その後セライトでろ過した。68.2%の収率が得られた。TMPで変性されたコポリマー類については、100gの試料1、4.43gのTMP(「TMP‐Mod‐1」)又は2.40gのTMP(「TMP‐Mod‐2」)、及び、2〜3gのp−トルエンスルホン酸を、攪拌棒、ディーン・スターク・トラップ、凝縮器、窒素バブラ、熱電対及び加熱マントールを備えた3ネック500mL丸底フラスコに入れた150mLのオクテン中で混合した。フラスコを徐々に130℃まで1〜1.5時間かけて加熱し、その後6時間かけて145℃まで上昇させた。最後の1時間の間、窒素流は液面下に位置付けた。その後、フラスコを室温まで冷却し、2〜3gのK2CO3をフラスコに加えて1〜1.5時間の間攪拌した。この物質をそれから2torrでかつ170℃で2時間蒸留し、その後セライトでろ過した。70%の収率が得られた。以下の表17には、NPG‐Mod試料及びTMP‐Mod試料の40℃及び100℃における動粘度、粘度指数、流動点、並びに、誘電率が示されている。
実施例14:ポリアルキレンポリアミンを用いたα‐オレフィンコポリマーの変性
実施例12の試料1のα‐オレフィンコポリマーとジエチレントリアミンとを反応させた。詳細には、200gの試料1及び10.3gのジエチレントリアミンを170℃まで加熱し、反応混合物をこの温度で5時間保持しつつ、残留メタノール副生成物を除去した。この時間の最後に、真空を利用して全ての残留揮発物を除去し、生成物をセライトでろ過した。生成物として、深い琥珀色の粘性のある物質が80%の収率で得られた。物質の100℃における動粘度は52.9cStであり、40℃における動粘度は552.8cStであり、粘度指数は158であった。
実施例15:高次エステル類の共重合
約14モル%のジ‐t‐ブチルペルオキシド重合開始剤及び155℃の反応温度を用いて、α‐オレフィンモノマーとα‐エステル‐alk‐ω‐eneモノマーとを9:1のモル比で反応させることにより、コポリマー類を形成した。モル比9:1のα‐オレフィン(1‐オクテン)(86.57g)とα‐エステル‐alk‐ω‐eneモノマー(9‐DAME)(15.80g)とを、磁気攪拌棒、加熱マントール及びディーン・スターク・トラップを備えた250mL3ネックフラスコ中で、155℃まで加熱した。30分間隔で2.5mLドーズ量のジ‐t‐ブチルペルオキシドを、合計で25mL(19.90g)のペルオキシドになるように加えた。ペルオキシドを加え終わると、反応を155℃でさらに4時間の間攪拌した。反応混合物を0.5torrでかつ200℃でストリッピングしたところ、粘性のある淡黄色の生成物が得られた。同様の手順により、1‐デセン、1‐ドデセン、1‐テトラデセン、1‐ヘキサデセン及び1‐オクタデセンといったα‐オレフィンモノマー類と9‐DAMEとを用いて、モル比9:1のコポリマー類を形成した。
共重合生成物の40℃及び100℃における動粘度、並びに、粘度指数を分析した。表18には、共重合反応のペルオキシド配合量、反応収率、100℃及び40℃における動粘度(KV)、並びに、粘度指数が示されている。
実施例16:1‐ドデセン/9‐DAMEコポリマー組成物のスケールアップ
1‐ドデセンと9‐DAMEとを3:1のモル比で100‐Lステンレス鋼反応器で反応させることにより、コポリマー類を形成した。反応器に30.38kgの1‐ドデセン及び11.17kgの9‐DAMEを注入した。窒素で一晩スパージした後、反応器を密封し、混合物を160℃まで加熱した。反応混合物の液面下で開始剤を供給するための加圧容器及び吐出ラインを用いて、12等分した合計5.37kgのジ‐t‐ブチルペルオキシドを30分間隔で反応混合物に加えた。開始剤全てを追加した後、反応混合物を160℃で4時間攪拌し、それから、周囲温度まで冷却した。拭き取り膜式蒸発器を用いて、生成物混合物を30〜35mL/分の流速及び1〜5torrの圧力を用いて200℃でストリッピングすることにより、残留モノマーは、生成物中0.25%未満程度まで除去された。得られた淡黄色の生成物を、中程度の粗さの紙フィルターを用いて70℃でろ過した。生成物の収率は、92.1%であった。表19には、スケールアップした試料の特性、及び、40cStのPAOとの比較が示されている。表19には、スケールアップした試料の特性、及び、40cStのPAOとの比較が示されている。
実施例17:スケールアップした1‐ドデセン/9‐DAMEコポリマー組成物の水素化
N2雰囲気下で、600mLオートクレーブに、基質に対して2.0重量%の10%パラジウム‐炭素触媒(Aldrich、品番330108、Sigma‐Aldrich社(米国ミズーリ州セントールイス)製)を注入した(350gの基質当たり7.0gの触媒)。それから、実施例16の約350gの組成物を容器に加え、圧力ヘッドにアセンブリを取り付けた。密封したオートクレーブに対して、N2パージ及び圧力チェックを行った。その後、H2(高純度(UHP)、Airgas社(米国ペンシルベニア州ラドナー)製)を用いて、容器を50psiまで加圧した。この時点で、混合物を1000rpmになるように攪拌した。温度及び水素圧力を徐々に、そえぞれ最高200℃/350psiに上昇させた。これらの条件を、水素が吸収されなくなるまで、又は、飽和が理論的な最大量に達するまで維持した。反応の完了が判断されると、N2パージを行って水素をオートクレーブから排出した。触媒/生成物スラリーを反応器から取り出した。それから、この混合物をN2雰囲気下でセライト床でろ過して、触媒を除去した。水素化を経た試料のヨウ素価は2.88cg/gであることが分かった。表20には、水素化を経たスケールアップした試料のその他の特性、及び、40cStのPAOとの比較が示されている。
本発明の様々な実施形態について説明したが、他の実施形態及び実施方法も本発明の範囲内で可能であることは、当業者には明らかだろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されるものである。