JP6572090B2 - 観察窓付き混練装置及び混練観察方法 - Google Patents

観察窓付き混練装置及び混練観察方法 Download PDF

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Description

本発明は、シリンダ中でスクリューを回転させて混練する混練装置において内部の混練状態を観察する観察窓付き混練装置及びその装置を用いた混練観察方法に関する。
押出機や、射出機等のように混練シリンダ中でスクリューを回転させて一または複数の被混練材料を混練する混練部分を有する装置が多く用いられている。しかるに混練過程は複雑で、被混練材料の熱的性質、物理的性質、シリンダ内の温度、圧力、スクリュー形状、スクリューの回転数や回転トルク等により異なる挙動をとる。しかるに結果は押出物や射出物等を分析測定する方法でしかわからず、それでは不十分なため混練過程を直接観察することが重要である。
ところが通常シリンダは高温と高い抗張力、耐腐食性を備えた金属製のため、内部を観察することができない。
このため、内部の状態を直接観察するため、押出機のシリンダ側面に透明な観察窓を設置し外部から樹脂の溶融混練状態を観察する試みがなされている(特許文献1、2、非特許文献1、2、3)。
しかしながら、これらの方法ではスクリューが反射してシンリンダ内の樹脂が良く見えず観察が困難であり、特に画像解析用に処理する際に反射光が影響すると、色の判別が正しく出来なくなるという問題があった。
しかも、窓材が混練中に割れたり、窓材の内面に樹脂が付着して内部が観察できなくなったりするという問題があった。
このように、上記従来技術では、シリンダ内部で起こる混練状態の観察が十分にできないという問題があった。
そこで、シリンダ中でスクリューを回転させて混練する混練装置において内部の混練状態を、上記問題無く、観察できる観察窓付き混練装置及びその装置を用いた混練観察方法が要望されていた。
特開平2−235715号公報 特開平9−300419号公報
中川他「単軸可塑化スクリュー解析と実験の比較と精度改善」日本製鋼所技報No.63(2012.10)p.34−p.40 安江他「可視化観察による成形不良現象の解明」日本製鋼所技報No.64 (2013.10) p.75−p.78 辻村他「押出機内の発泡剤挙動の可視化」プラスチック成形加工学会第13回(平成14年度)年次大会予稿集「成形加工'02」p101−p102
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シリンダ中でスクリューを回転させて混練する混練装置において内部の混練状態を良好に観察できる観察窓付き混練装置及びその装置を用いた混練観察方法を提供することである。
請求項1に記載の観察窓付き混練装置は、シリンダ中にスクリューが挿通されスクリューによってシリンダ内部の被混練材を混練する、シリンダの一部が切り欠かれその切り欠き部に透明な窓材が嵌められてシリンダ内部が透視できる観察窓を有する観察窓付き混練装置において、挿通されているスクリューの表面が黒色であり、窓材のスクリュー側の面が、切り欠いたシリンダ内面に相当する面よりも0.5〜2.0mm外側に位置することを特徴とする観察窓付き混練装置である。
請求項2に記載の観察窓付き混練装置は、窓を通してシリンダ内部が見える位置にカメラが備えられ、シリンダ内部を照射する照明装置が付帯したことを特徴とする請求項1記載の観察窓付き混練装置である。
請求項3に記載の観察窓付き混練装置は、挿通されるスクリュー表面が硬質ブラッククロムメッキされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の観察窓付き混練装置である。
請求項4に記載の混練観察方法は、請求項1乃至3記載の観察窓付き混練装置により被混練材料を混練し、観察窓からシリンダ内の被混練材料が混練される状態を観察する混練観察方法である。
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明における混練装置とは、単に混練する装置に留まらず、樹脂の溶融混練や反応を伴うシンリンダ内の変化を解析し操作条件を最適化するためにも用いられるので、少なくとも混練の機能を有しているが混練だけの機能に限定されず、混練以外にも加熱手段等を有し樹脂の混練溶融や反応、成形等が観察できる混練装置であることが好ましい。
本発明における混練装置は、筒状体のシリンダ(バレルと称する事もある)の内部に、軸に螺旋状のフライトが付設されたスクリューが挿通されており、シリンダ内に、シリンダに設けたホッパー等から被混練材料を投入し、シリンダ内でスクリューを回転させて被混練材料を混練する装置をいう。溶融や反応、成形等を詳細に観察分析するにはシリンダ内の温度をより詳細に制御するとともに樹脂等の温度の精密な測定ができることが好ましい。
シリンダの材料は強度、耐熱性、耐腐食性から金属製であることが好ましく、特に鋼製であることが好ましい。
シリンダは単筒(単軸)であっても筒が合わされたもの(二軸等)であってもよい。
シリンダは内部の被混練材料を加熱するため、その外側にヒーター等が付帯されていてもよい。また誘導加熱装置や熱媒加熱装置等が付帯されていてもよい。
被混練材料とは熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応性樹脂、金属粉、食品等やその添加剤、等を言う。投入時には固体であっても液体であってもかまわない。
シリンダに窓を設けるためには、本来のシリンダの筒状部を切り欠いてもよいし、窓部以外の筒状体の残余を合わせて接合して窓部を形成してもよい。
窓部は、混練工程の重要な位置にあるシリンダに一又は複数個外部から観察しやすい位置に設けられる。混練は時間経過を伴ってシリンダ中の位置を変えて内部被混練材の様相が変化するので窓部はシリンダに複数個設け観察することが好ましい。窓部の大きさは大きい方が混練状態が全体的に把握しやすいため好ましく、内視鏡を取り付けて得られる視野よりも広い視覚情報が得られる大きさであることがが好ましい。
ここで観察とは、人間が肉眼で行ってもよいが、カメラで撮影し画像処理することにより、より上質の情報が得られるので好ましい。特に現象を精密に解析するために高速カメラで撮影することが好ましい。一つの窓につきカメラを複数個視野角をずらして配置し画像情報処理してもよい。更に、サーモグラフィラフィにより窓を通じて内部の温度を観察すると温度分布がより精密に行うことができ好適である。
シリンダ内部を可視光で観察するためには外部照明により光が均一に照射されていることが好ましく、窓部毎に照明装置が付帯されていることが好ましい。照明器具の光源は限定されず、白熱灯、蛍光灯、LED灯、EL灯、LD等が上げられるが、コスト、コンパクト性、長寿命性からLED灯が好ましい。
形状は限定されないが棒状、円状、円環状が好ましく、特に、円環状に発光するものが窓内を均一に照射し、カメラへの反射光が邪魔されず直接観察できるため好ましい。
照明器具の位置は限定されないが、窓を通してシリンダ内部が見える位置にカメラが備えられるので、カメラのレンズの鏡胴の周縁に付帯されていることが、光学上も混練作業上も邪魔にならず好ましい。円環状の発光体の場合は、カメラのレンズの光軸に、円環状の発光体の回転対称中心軸が重なる様に配置されることが好ましい。
窓材の材質は赤外線、可視光、紫外線を通すものであればよいが、特に可視光の透過率が高く、しかも内部屈折や光散乱のないものが好ましく、耐熱性が高く、屈折率が均一で、機械強度が強いものが好ましい。石英や、パイレックス(登録商標)等の強化ガラス、サファイア中でも可視領域で吸収のないカラーレスサファイアが例示される。石英は比較的安価で1000℃までの高温に耐えるが、外部からの機械的刺激により内部が濁ることがある。パイレックス(登録商標)は強度が高いが、使用温度は常用温度としては260℃以下、最高温度で290℃以下が好ましい。サーモビュアーで窓から内部の温度状態を観察する場合は、石英やサファイアが好ましい。数百℃までの赤外線に対応する波長域に吸収がないため窓を介した内部の温度観察が可能だからである。しかしパイレックス(登録商標)等の強化ガラスは赤外線の透過画像が判然としないためサーモビュアー観察には適さない。サファイアは価格が高い。このため窓材は使用目的に応じて適宜選択される。
窓部の側面の外観形状は特に限られないが、観察に好適で強度も高い円形、子判状やシリンダの中心軸に平行な辺をもつ四角形等が好ましい。
窓材のシリンダ側の面は、シリンダの中心軸を中心とする円筒の側面形状をしており、当該窓部が設けられるシリンダの当該部分の半径よりも僅かに大きい曲率半径の円筒状面が好ましい。光学的に歪みが少なく、スクリューのフライトの先端が当たったり、樹脂等が間隙にたまりにくく、窓材に圧力がかかり破損したりするのを防ぐためである。
窓材のスクリュー側の面が、切り欠いたシリンダ内面に相当する面よりも0.5〜2.0mm外側に位置することが必要である。スクリューはシリンダの中心軸を中心に回転するため、シリンダ内側面は円柱又は僅かに傾斜した円錐の側面の形状を為す。したがって想定されるシリンダの想定面とは、窓材が設けられるシリンダの半径の円柱側面または稀には円錐台の側面に相当する。すなわち窓材のスクリュー側の面は想定される元のシリンダ面から間隙(d)を保って、観察側(外側)にある。換言すれば当該窓部の設けられている箇所のシリンダ内壁から間隙(d)だけ外側に窓材の内面が離れて位置することが必要である。
間隙(d)は0.5mm以上2.0mm以下であることが必要である。間隙(d)が0.5mmよりも小さいと被混練材からの圧力変動で窓材が破損しやすくなる。窓材が破損すると観察に不具合が生じる。更に、砕けた窓材の破片がスクリューやシリンダ内壁を傷つけるおそれがある。また、小さい傷でも放置していれば、窓の大きな破損につながるおそれがある。小さな傷がつく毎に高価な窓材を交換するのは不経済である。
間隙(d)が2.0mmよりも大きいと混練機を樹脂の流動観察に用いる場合に樹脂のペレットが窓材との間隙内に入り込み動かなくなり、内部の観察に邪魔になる。因みにペレットとは、樹脂を、加工しやすいように3〜5mm程度の粒状にした加工用原料をいう。
被混練材料によっても異なるが、その窓が取り付けられている位置も関係する。窓位置がホッパーに近く混練初期過程におけるものと、窓位置が先端に近く、混練が十分進展したものの場合では特に(d)の上限値について定める要因が異なる。
運転条件により、樹脂が溶融した状態で窓が位置する場合は間隙(d)が1.0mmよりも大きいと樹脂等の流動が、本来の樹脂の流れ方とは違う流れをするようになり、つまり間隙に樹脂が入り込んで流れるような特異な樹脂流動を示す場合がある。
窓材のスクリュー側の面と、切り欠いたシリンダ内面に相当する面との間隙に樹脂が流入することでリークを起こし部分的に圧力が下がったり混練が変わり、押出量が変化することがあり、更に樹脂等が間隙に滞留したり、運転条件によれば、焦げやすい樹脂等の材質の場合には焦げ付くこともあって、内部観察に邪魔になる場合がある。
一方運転条件により、樹脂が未溶融の状態で窓が位置する場合は間隙(d)が2.0mmよりも大きくなると未溶融ペレットが窓材のスクリュー側の面と、切り欠いたシリンダ内面に相当する面との間隙、すなわち、スクリューの外端と窓の間の間隙を通じて入りこむこと等が起こり、本来の流動状態の観察が妨げられる。
したがって、主に樹脂を原料とする溶融混練状態を観察するためには、樹脂の熱、機械特性および運転条件を設定しその観察したい状態により、窓の所定の間隙(d)を0.5〜2.0mmの間に適宜設定することにより、混練過程を好的に観察することができる。
挿通されて用いられるスクリューの材質は限定されない。鋼やステンレスが多く用いられる。しかし表面は硬質クロムメッキ等の表面処理が施される場合が多く表面が研磨されているので、光を反射するため、スクリューからの反射光が混練状態の観察の邪魔になる。
したがって、本発明では、スクリューの表面は黒色に被覆したものを用いる。黒色層の厚みは限定されない。黒色層には黒光沢、黒半光沢、黒無光沢があるが、黒無光沢が反射しないため最も好ましい。
黒色化の手段は限定されず、塗装、メッキ、電解発色法等が挙げられるが、硬質ブラッククロムメッキが、耐熱性、強度、耐摩耗性を有する上に十分な黒度を有するため好ましい。
硬質ブラッククロムメッキは電気めっきの一種で、主な薬品である無水クロム酸を化学反応(酸化反応)させて黒色にするメッキである。通常のシルバークロムメッキと同様に、耐食性、耐摩耗性、耐熱性、外観に優れているが、ムラや傷が目立ちやすく高度な技術が必要である。膜厚を0.1〜10μmと薄く処理をする方法が一般的である。本発明においてはメッキ層の厚みは数μm〜10μmが好ましい。
以上説明したように、本発明では窓材のシリンダ側の面は切り欠いた部分の元のシリンダ面から0.5〜2.0mm外側(観察側)にあるためスクリュー回転により生じる圧力変動が小さいため窓材が破損しにくく、一方未溶融ペレットが窓材のスクリュー側の面と、切り欠いたシリンダ内面に相当する面との間隙に入りこむことがないため内部の観察に邪魔にならず、スクリュー表面が反射しないため、シリンダ内の混練状態の観察が良好にできる。
実施例1の押出機の模式的な斜視外観図である。 実施例1の押出機の押出機本体のみの正面図である。 光学系の配置を示す図である。 実施例1の窓材の形状を表す図面である。 実施例1の押出機のシリンダに窓材を取り付けた部分のホッパー側から見た断面図である。 LF405Mのペレットを正面から写した写真である。 LF405Mのペレットを側面正面から写した写真である。 実施例1のスクリューを用いた場合の窓からの観察写真である。 比較例1のスクリューを用いた場合の窓からの観察写真である。 比較例2のスクリューを用いた場合の窓からの観察写真である。 実施例2の第1窓からの観察写真である。 実施例2の第2窓からの観察写真である。 実施例2の第3窓からの観察写真である。 実施例2の第4窓からの観察写真である。 比較例6の条件で破損した窓材の写真である。 図15中の拡大丸数字1の部分の拡大写真である。 図15中の拡大丸数字2の部分の拡大写真である。 図15中の拡大丸数字3の部分の拡大写真である。 図15中の拡大丸数字4の部分の拡大写真である。 図15中の拡大丸数字5の部分の拡大写真である。 図15中の拡大丸数字6の部分の拡大写真である。 スクリュー回転数30rpmと90rpmにおける間隙(d)と圧力変動値の関係を示すグラフである。 実施例5の160時間運転後の窓部の写真(一部)である。 実施例5の160時間運転後の窓部の写真(一部)である。 実施例5の160時間運転後の窓部の写真(一部)である。
以下、本発明の実施例を挙げて本発明を更に説明する。
図1に混練機が単軸押出機である例を示す。図1は発明を理解しやすくするための模式的斜視図である。図2は押出機の押出機本体のみの正面図である。押出機はφ40mm単軸押出機を用いた。L/D=24のスクリューを用いた。
押出機1の窓部6がシリンダ2の片側に、並んで、6個設けられ、それぞれの窓6に対向したハイスピードカメラ20でシリンダ内での混練の状態を撮影する様になっている。
照明光源23はカメラ本体20にレンズ21を付したレンズ21の先端より前方に環状の白色LEDを付設して用いた。光学系の模式図を3に示す。シリンダ2、スクリュー4、窓部6は断面図で示している。全体配置を示す目的のため、窓部の断面図では後述のパッキング等は省略している。
ハイスピードカメラ本体20にはオムロン株式会社製FH−SC04を用い、レンズ21には、オムロン株式会社製3Z4S−LE VS−5018H1(CCTVレンズ 焦点距離50mm 絞りF1.8―CloseCマウント)を装着して用いた。照明器具22としてはシーシーエス株式会社製のLEDリング照明HPR2−150SWを用いた。HPR2−150SWのLED発光色は白色で寸法は外径φ166mm、内径φ116mm、高さ26.4mmである。
光学系の配置を図3に示す。円環状の発光体の場合は、カメラのレンズの光軸に、円環状の発光体の回転対称中心軸が重なる様に配置している。
ガラス窓30の裏面と、カメラ本体20との距離は390mm、同じくガラス窓30の裏面とLEDリング照明の前面(ガラス窓側)との距離は240mmとした。
本実験に用いた窓部は、ホッパー3の芯から325mm下流の位置に設けられたものを使った。
得られた画像情報は独自の装置で別個に解析してもよいが、本実施例では押出機1の制御装置50にとりこみ、被混練材料の情報、押出機のシリンダ2やダイス11等の設定温度、同実測値、圧力等設定値、同実測値、スクリュー回転数、回転トルク等の種々の混練条件と共に記憶され、解析されるようにした。ハイスピードカメラ以外にも本実験では肉眼観察及びデジタルビデオカメラ撮影を行った。尚、図1、図2において各種信号線は省略している。
窓材30は、高耐圧の強化パイレックス(登録商標)製にてなる。窓材30の形状を図4に示す。図4は第三角法にて表した正面図、上面図、下面図、右側面図である。但しかくれ線は省略している。
91.0mm長さ、51.0mm幅、厚み33.0mmの厚い小判様の形状の面取りしたシリンダ外から観察する方に位置する上部と、スクリューの軸側に向けて配設される69.8mm長さ、29.8mm幅、11.0mm高さの下部にてなる上下一体物である。
下部は右側面図に表すように半径21mmの円筒側面状に窪んだ形状をしている。窪んだ部分をスクリュー4のフライトが回転して通過するためである。窪み部以外は必要に応じて面と面の交線は面とり又はRが適宜付されている。尚、図5の正面図と右側面図には立体感を強調するためのグラデーションをあえて付している。製図的にはグラデーションはないものとして図形を読み取ればよい。窓材30は、窓材30の上部と下部が収まる僅かな隙間を設けたガラス窓押さえ31により、シリンダ2に押しつけて取り付けられる。
図5は実施例1の押出機1のシリンダ2に窓材30(ガラス窓30)を取り付けた部分の断面図であり、実施例1の押出機のシリンダに窓材を取り付けた部分のホッパー側から見た断面図である。
ドーナツ形状のシリンダの一部が切り欠かれ窓材30が嵌められている。窓材30(ガラス窓30)は、開口したガラス窓押さえ31により、シリンダ2に押しつけて取り付けられており、シリンダ2とガラス窓30の鍔部とはメタルオーリング32で封じられ、ガラス窓押さえ31とシリンダの間にはパッキング1 33が介在され、ガラス窓30の裏面とガラス窓押さえ31の間にはパッキング2 34が介在されている。
窓材30(ガラス窓30)の突出部のスクリュー側面は、ガラス窓30の嵌めこまれるシリンダは既に切り欠かれて無いが、切り欠く前にあったと想定されるシリンダ内面から間隙(d)を空けて設けられており、本実施例では間隙(d)は0.5mmになるように設置されている。
窒化鋼製のシリンダ2の外周には加熱用のヒーター7が取り付けられている。シリンダにはシリンダの中心軸に垂直に圧力測定センサが納められた挿通型圧力センサ8がシリンダ2を挿通して設けられており、同様にシリンダ2の中心軸に垂直に温度測定センサを挿通する孔9が空けられ温度測定センサがシリンダ2の途中の深さまで埋め込まれている。シリンダ2の中央部には中心軸を共通してスクリュー4が挿通されている。
尚、図1、図2では挿通型圧力センサ8は代表的なもののみに引き出し線と符号を付している。
上述のように圧力変動を測定するため、シリンダに直接孔を空け樹脂圧力センサ8を設置し、圧力変動データを採取した。サンプリング周期は5msで1分間採取し、安定領域における任意の10秒での平均値を求めた。
スクリューはSCM440製で供給部、圧縮部、計量化部の3ゾーンに分かれるが、表面を黒化するため、硬質ブラッククロムメッキ、がメッキ厚5〜8μmに施されている。このため無光沢黒色である。
スクリューからの反射光を観察する混練実験には混練材料として日本ポリエチレン株式会社のノバテック(登録商標)低密度ポリエチレン(LF405M)を用いた。LF405Mのペレットの写真を図6、図7に示す。ペレットは肉厚やや白味がかった半透明な碁石状であって直径が約3.5mm、厚さが約2mmであった。因みにペレットとは、樹脂を、加工しやすいように3〜5mm程度の粒状にした加工用原料をいう。
押し出し条件としてスクリュー回転数とシリンダ温度をそれぞれ30rpm、170℃にて運転し条件安定後約10分した第1窓部から内部を撮影した写真を図8に示す。上記条件では第1窓部(ホッパーに最も近い窓)は供給部と溶融部の間に位置しており、溶融樹脂と未溶融樹脂(ペレット)が観察された。ここで透明部は溶融樹脂で、白色部は未溶融樹脂である。尚写真の左から右へ樹脂が送られている。このようにスクリューを硬質ブラッククロムメッキしたものではスクリューからの反射が少なく混練状態が十分観察できた。
(比較例1〜2)
スクリューの表面が、硬質クロムメッキ処理したスクリューを用いたものを比較例1とし、硬質クロムメッキの後ショットブラストによるRa2.0μm処理したスクリューを用いたものを比較例2とした。スクリューの表面被覆状態が異なるスクリューを用いた以外は実施例1のスクリューの反射を見る混練実験と同様に押出を行い観察した。
硬質クロムメッキしたスクリューを用いた第1窓の観察写真を図9に、硬質クロムメッキの後ショットブラストによるRa2.0μm処理したスクリューを用いた第1窓の観察写真を図10に示す。
比較例1では図9に表れているように反射光が白樹脂、透明樹脂部と全範囲にわたって見られる為、樹脂流の観察がし難いものであった。
比較例2では図10に表れているようにスクリューのブラスト部で光が拡散し白い樹脂と同じ色に判定されるため観察に不適であった。
実施例1と押し出し条件をスクリュー回転数とシリンダ温度をそれぞれ120rpm、170℃にした以外は同じ条件で混練した場合の第1窓部〜第4窓部から内部を撮影した写真を図11〜図14に示す。条件安定後約10分の観察である。
第1窓ではペレットの形状がそのまま見え未溶融であり、第2窓ではペレットが融合しだしている様子がわかるが、スクリューのフライトの後方から樹脂が溶融し始めていることが確認できる。第3、第4窓ではブレークアップ現象が発生していて、固相樹脂の塊と溶融樹脂が混在した状態になっている。
ここでブレークアップ現象とは固相樹脂の間に液相樹脂が入り込む現象をいう。ソリッドベッドが途中で分断されて先の方へ流れていってしまう現象であり、この現象が起こると、先へ流れていったソリッドベッドの切れ端は、メルトプール中に浮遊しているため周りからの伝熱で溶けるしか方法がなく、樹脂温度の不均一等様々な不具合の原因となり好ましくないとされている。
窓材の間隙(d)に対する実験については、実施例1と同じ装置にて樹脂と成形条件をEVOH樹脂を用い、成形温度 C1:180℃、C2〜C3、H、AD:210℃、スクリュー回転数 30rpmにした以外は実施例1同様にして押出した。間隙(d)は0.5mmである。
スクリュー回転数30rpmでスクリュー先端圧力は10MPaであった。5分間運転したが、窓材の破損は無かった。圧力の変動の幅を示すため一定の時間内の最大圧力値から最小圧力値を引いた値を圧力変動値として示す(以下同じ)が、圧力変動値は2.48MPaであった。窓部の間隙に特異な樹脂流が観察されることもなく、観察に支障は生じなかった。尚、窓材の破損が発生する場合は運転開始後すぐの場合が多いことと、運転条件が多いことから5分間運転における確認とした。尚、圧力変動とはスクリューフライトの通過によるサージ圧、すなわち間歇的な圧力の変動のことで、これが大きいと窓材の破損につながると推測される。
窓材の破損の有無と圧力変動値等につき表1に示す。
想定されるシリンダ内面から間隙(d)を、1.0mmに変えた以外は実施例3と同様にして押出した。
1時間連続運転したが、窓材の破損は無く、圧力変動値は1.93MPaであった。窓部の間隙に特異な樹脂流が観察されることもなく、観察に支障は生じなかった。窓材の破損の有無と圧力変動値等につき表1に示す。
(比較例3〜7)
想定されるシリンダ内面から間隙(d)を、0.05mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mmに変えた以外は実施例1の窓材の間隙(d)に対する実験と同様に行った。
5分間運転したが、0.4mm以外はすべて窓材の破損を生じた。
圧力変動値はそれぞれ3.65MPa、3.70MPa、3.00MPa、3.02MPa、3.16MPaであった。
比較例6(間隙(d)が0.3mmのもの)の窓部の破損の状態の写真を図15に示す。図15は窓材をとりはずして裏側(シリンダ内部側)から写真撮影したものである。破損は窓材の片側に一列に並んで生じており、スクリューにより樹脂が窓部に押しつけられる出口側の角部に生じている。
微細な傷部分である図15中の拡大(丸数字1)〜拡大(丸数字6)、部分については、拡大(丸数字1)は図16に、拡大(丸数字2)は図17に、拡大(丸数字3)は図18に、拡大(丸数字4)は図19に、拡大(丸数字5)は図20に、拡大(丸数字6)は図21に拡大写真を示す。写真撮影は窓材のガラスの裏側(シリンダ内部側)から株式会社キーエンス製マイクロスコープVH-8000を用いて接写することにより行った。それぞれの破損状態は表面が剥離したような欠け傷であった。
間隙(d)が、0.05mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mmのものにおいては窓部の間隙中に特異な樹脂流が観察されることはなかった。窓材の破損の有無と圧力変動等につき表1に示す。
(比較例8〜9)
窓材の想定されるシリンダ内面から間隙(d)を2.5mm、3.0mmに変えた以外は実施例3の窓材の間隙(d)に対する実験と同様に行った。
5分間運転したが、窓材はすべて破損は生じなかった。圧力変動値は1.61MPa、1.66MPaであった。比較例8、9共にペレットが間隙に入り込んではさかりそのまま滞留したため観察の邪魔になった。比較例3〜7、実施例3〜5ではペレットは間隙に入りこまず、実施例6では入り込むが数が少なく移動するため観察に邪魔になる滞留はみられなかった。
比較例7について、窓材の破損の有無については破損無しであった。しかし圧力変動値が、間隙(d)が0.4〜0.5mmになる間で、図22に示すように急激に変化することから、安全をみて適正間隙を0.5〜1.0mmとした。尚 図22は間隙(d)を横軸に圧力変動値を縦軸にとり間隙(d)に対する圧力変動値の変化を表したものである。
スクリュー回転速度を90rpmに変えただけで実施例3の窓材の間隙(d)に対する実験と同様に行い、30rpmで行った結果に加えて図22に示す。図22中シム厚とは間隙(d)を意味する。横軸は窓材の間隙(d)、縦軸は圧力変動(MPa)である。間隙(d)が小さい時は30rpm時に比し90rpm時の方が圧力変動値が大きい。
したがって、0.4mmよりも間隙(d)が小さければ回転数が大きいと破損しやすいと思われる。
しかし、間隙(d)が0.5mmでは逆転し、90rpm時の方が圧力変動値は小さい。
実施例1の窓材の形状を変更し、91.8mm長さ、51.8mm幅、厚み33.0mmの厚い小判様の形状での面取りした上部と、69.0mm長さ、29.0mm幅、10.63mm高さの下部にてなり、下部は右側面図に表すように半径21mmの円筒側面状に窪んだ形状をした上下一体物とした。窓材30は、窓材30の上部と下部が収まる僅かな隙間を設けた実施例1で用いたガラス窓押さえ31により、実施例1に準じてシリンダ2に押しつけて取り付けた。
想定されるシリンダ内面からの間隙(d)は1.4mmとした。以下の種々な条件で運転した。
・回転数領域:1〜137rpm
・成形温度帯:120℃〜330℃
・樹脂:LDPE(低密度ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PA66(6−6ナイロン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)等
・押出量:1〜40kg/h
・樹脂圧力:0〜40MPa
合計160時間運転後の窓を三分割して撮影した写真を図23〜25に示す。比較例6におけるような窓体の破損は発生していなかった。
本発明の観察窓付き混練装置によれば、混練の状態が反射光による妨害がなく観察できまた、窓材が割れず、窓材との間隙に被混練物が溜まることもないので、シリンダ内における混練状態が良好に観察できる。したがって可視化装置として押出機、射出機その他シリンダ内で混練を行う可視化混練装置に好適に使用することができる。
本発明の混練観察方法によれば、シリンダ内の混練状態が良好に観察できるので、プロセスの最適化、条件の検討等に好適に用いることができる。
1 押出機
2 シリンダ
3 ホッパー
4 スクリュー
5 モーター
6 可視化窓
7 バンドヒーター
8 圧力サンサー
9 熱電対用孔
11 金型
20 ハイスピードカメラ
21 レンズ
22 照明器具
30 窓材
31 ガラス窓押さえ
32 リング
33 パッキング1
34 パッキング2
35 パッキング3
36 カートリッジヒーター
d 間隙

Claims (4)

  1. シリンダ中にスクリューが挿通されスクリューによってシリンダ内部の被混練材を混練する、シリンダの一部が切り欠かれその切り欠き部に透明な窓材が嵌められてシリンダ内部が透視できる観察窓を有する観察窓付き混練装置において、挿通されているスクリューの表面が黒色であり、窓材のスクリュー側の面が、切り欠いたシリンダ内面に相当する面よりも0.5〜2.0mm外側に位置することを特徴とする観察窓付き混練装置。
  2. 窓を通してシリンダ内部が見える位置にカメラが備えられ、シリンダ内部を照射する照明装置が付帯したことを特徴とする請求項1記載の観察窓付き混練装置。
  3. 挿通されるスクリュー表面が硬質ブラッククロムメッキされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の観察窓付き混練装置。
  4. 請求項1乃至3記載の観察窓付き混練装置により被混練材料を混練し、観察窓からシリンダ内の被混練材料が混練される状態を観察する混練観察方法。
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