JP6570802B1 - 酸素還元触媒 - Google Patents

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Abstract

硫黄原子を特定の量の範囲で含有することにより酸素還元能の高いコバルト化合物である酸素還元触媒を提供する。本発明の酸素還元触媒は、X線回折測定において四酸化三コバルト(Co3O4)の結晶構造が確認され、かつ硫黄原子含有量が1.0〜15.0質量%である。

Description

本発明は、硫黄原子を含むコバルト化合物酸素還元触媒に関する。
四酸化三コバルト(Co34)等をはじめとするコバルト化合物には、触媒特性を有するものがあり、様々な用途の触媒として用いられている。
特許文献1においては、燃料電池触媒に用いる担体として、希土類硫酸塩に遷移金属酸化物を担持することで、強酸下における溶解が抑制された複合体担体が開示されており、コバルト酸化物粒子を含む場合があることが記載されているが、コバルト化合物を触媒として用いることについての検討はなされていない。
また、特許文献2においては、酸素還元および酸素発生をすることができる2機能性触媒を含む2次空気電池用の2機能性空気電極が開示されており、酸素還元触媒としてCo34やCoOを含む場合があることが記載されている。
特開2012−076013号公報 特表2009−518795号公報
上記の従来の技術においては、硫黄原子を特定量含むことにより酸素還元特性を向上させたコバルト化合物を酸素還元触媒として用いる記載や示唆はない。
本発明は以下に示す構成を備える。
[1]X線回折測定において四酸化三コバルト(Co34)の結晶構造が確認され、かつ硫黄原子含有量が1.0〜15.0質量%であることを特徴とするコバルト化合物である酸素還元触媒。
[2]コバルト化合物の結晶中の四酸化三コバルト(Co34)の含有量が20.0%以上であることを特徴とする前項1に記載の酸素還元触媒。
[3]X線回折測定において一酸化コバルト(CoO)の結晶構造がさらに確認されることを特徴とする前項1または2に記載の酸素還元触媒。
[4]コバルト化合物の結晶中の一酸化コバルト(CoO)の含有量が80.0%以下であることを特徴とする前項3に記載の酸素還元触媒。
[5]前項1〜4のいずれか一項に記載の酸素還元触媒からなる燃料電池用電極触媒。
[6]前項5に記載の燃料電池用電極触媒を含む触媒層を有する燃料電池用電極。
[7]カソードと、アノードと、当該カソードと当該アノードとの間に配置された高分子電解質膜とを有する膜電極接合体であって、前記カソードが前項6に記載の燃料電池用電極である膜電極接合体。
[8]前項7に記載の膜電極接合体を備える燃料電池。
本発明のコバルト化合物である酸素還元触媒は、硫黄原子を含有することにより酸素還元能が高く、例えば、カソード電極の燃料電池触媒として用いたとき、発電特性の高い燃料電池を得ることができる。
実施例1で作製した酸素還元触媒(1)のX線回折スペクトルである。回折ピークのうち、四酸化三コバルト(Co34)および一酸化コバルト(CoO)に対応するピークのうちの最も強い回折強度のピークをそれぞれ○および△で示す。 実施例2で作製した酸素還元触媒(2)のX線回折スペクトルである。回折ピークのうち、四酸化三コバルト(Co34)および一酸化コバルト(CoO)に対応するピークのうちの最も強い回折強度のピークをそれぞれ○および△で示す。 実施例3で作製した酸素還元触媒(3)のX線回折スペクトルである。回折ピークのうち、四酸化三コバルト(Co34)および一酸化コバルト(CoO)に対応するピークのうちの最も強い回折強度のピークをそれぞれ○および△で示す。 実施例4で作製した酸素還元触媒(4)のX線回折スペクトルである。回折ピークのうち、四酸化三コバルト(Co34)および一酸化コバルト(CoO)に対応するピークのうちの最も強い回折強度のピークをそれぞれ○および△で示す。 比較例1で作製した酸素還元触媒(c1)のX線回折スペクトルである。回折ピークのうち、一酸化コバルト(CoO)、Co98および一硫化コバルト(CoS)にそれぞれ対応するピークのうちの最も強い回折強度のピークをそれぞれ△、●および▲で示す。 比較例2で作製した酸素還元触媒(c2)のX線回折スペクトルである。回折ピークのうち、一酸化コバルト(CoO)、Co98および一硫化コバルト(CoS)にそれぞれ対応するピークのうちの最も強い回折強度のピークをそれぞれ△、●および▲で示す。 比較例3で作製した酸素還元触媒(c3)のX線回折スペクトルである。回折ピークのうち、Co98、一硫化コバルト(CoS)および四硫化三コバルト(Co34)にそれぞれ対応するピークのうちの最も強い回折強度のピークをそれぞれ●、▲および■で示す。 比較例4で用意した酸素還元触媒(c4)のX線回折スペクトルである。回折ピークのうち、Co98、一硫化コバルト(CoS)および四硫化三コバルト(Co34)にそれぞれ対応するピークのうちの最も強い回折強度のピークをそれぞれ●、▲および■で示す。 比較例5で用意した酸素還元触媒(c5)のX線回折スペクトルである。回折ピークのうち、四酸化三コバルト(Co34)に対応するピークのうちの最も強い回折強度のピークを○で示す。 比較例6で用意した酸素還元触媒(c6)のX線回折スペクトルである。回折ピークのうち、一酸化コバルト(CoO)に対応するピークのうちの最も強い回折強度のピークを△で示す。
以下、本発明の酸素還元触媒について詳細に説明する。
(酸素還元触媒)
本発明の酸素還元触媒は、X線回折測定において四酸化三コバルト(Co34)の結晶構造が確認され、かつ硫黄原子含有量が1.0〜15.0質量%であることを特徴とするコバルト化合物である。いいかえると、本発明の酸素還元触媒は、特定のコバルト化合物からなる酸素還元触媒ともいえる。ただ、このことは、本発明の酸素還元触媒における不純物の存在を厳密に排除するものでなく、原料および/または製造過程などに起因する不可避不純物、その他、触媒の特性を劣化させない範囲内の不純物が本発明の酸素還元触媒に含まれることは差し支えない。
本発明の酸素還元触媒は、コバルト酸化物を主成分とするが、他の遷移金属元素の酸素含有化合物を含んでもよい。遷移金属元素としては、周期表における4族元素、5族元素、6族元素、鉄族元素が挙げられる。鉄族元素は、鉄、コバルトおよびニッケルの元素種を含む。
(四酸化三コバルト(Co34)の結晶構造)
本発明の酸素還元触媒は、X線回折(XRD)測定において四酸化三コバルト(Co34)の結晶構造を有することが確認される。四酸化三コバルト(Co34)の結晶構造は、リファレンスコード98−002−4210にあるとおりXRDスペクトルにおいて回折角2θが36.9°の位置に、最も強い回折強度のピークが現れる。本発明の酸素還元触媒は、四酸化三コバルト(Co34)の結晶構造を有することにより強酸性下における耐酸性が高い。
(硫黄原子含有量)
本発明の酸素還元触媒は、硫黄原子含有量が1.0〜15.0質量%である。硫黄原子含有量の下限は、好ましくは1.5質量%であり、より好ましくは1.6質量%である。硫黄原子含有量の上限は、好ましくは12.0質量%であり、より好ましくは10.0質量%である。硫黄原子含有量が上記の範囲であると、後述する自然電位が高い。硫黄原子含有量は、誘導結合プラズマ質量分析法やガス化した成分を対象として赤外線吸収法で定量することができる。例えば赤外線吸収法を用いた炭素・硫黄分析装置EMIA−920V(堀場製作所製)を用いて求めることができる。
(四酸化三コバルト(Co34)の含有量)
本発明の酸素還元触媒は、X線回折(XRD)測定において確認されるコバルト化合物の結晶中の四酸化三コバルト(Co34)結晶の含有量(以下、「四酸化三コバルト含有率」ということがある)として20.0%以上含まれる。四酸化三コバルト含有率は、後述するとおり、X線回折(XRD)によって得られるXRDスペクトルのピーク強度の比率から求めた値である。すなわち、ピーク比から求めた%である。
四酸化三コバルト含有率は、好ましくは20.0〜95.0%であり、より好ましくは20.0〜90.0%であり、さらに好ましくは20.0〜85.0%である。四酸化三コバルトを上述した範囲で有することにより、後述する自然電位が高い。
(一酸化コバルト(CoO)の結晶構造)
本発明の酸素還元触媒は、X線回折測定において一酸化コバルト(CoO)の結晶構造が確認されることが好ましい。一酸化コバルト(CoO)の結晶構造は、リファレンスコード98−017−4027にあるとおりXRDスペクトルにおいて回折角2θが42.4°の位置に、最も強い回折強度のピークが現れる。
(一酸化コバルト(CoO)の含有量)
本発明の酸素還元触媒は、X線回折(XRD)測定において確認されるコバルト化合物の結晶中の一酸化コバルト(CoO)結晶の含有量(以下、「一酸化コバルト含有率」ということがある)として80.0%以下含まれることが好ましい。一酸化コバルト含有率は、後述するとおり、X線回折(XRD)によって得られるXRDスペクトルのピーク強度の比率から求めた値である。
一酸化コバルト含有率は、好ましくは5.0〜80.0%であり、より好ましくは10.0〜80.0%であり、さらに好ましくは15.0〜80.0%である。四酸化三コバルトを上述した範囲で有することにより、後述する自然電位が高い。
後述する実施例中の比較例において示すように、四酸化三コバルト(Co34)または一酸化コバルト(CoO)の単体の結晶のみでは、十分な酸素還元特性は得られず、これらを単純に混ぜ合わせたとしても本願発明の酸素還元触媒が有する酸素還元特性には及ばない。四酸化三コバルト(Co34)および/または一酸化コバルト(CoO)の結晶構造に何らかの形で硫黄原子がドープされるとともに、酸素欠陥を構成することにより酸素還元特性を向上させていることが考えられる。後述する実施例において、四酸化三コバルト含有率が大きい方が硫黄原子がドープされたときの自然電位が高いことから、本願発明の酸素還元触媒は、少なくとも四酸化三コバルト(Co34)の結晶構造に硫黄原子がドープされている構造を有するものと考えられる。
(その他のコバルト化合物の結晶構造)
本発明の酸素還元触媒は、X線回折(XRD)測定において硫酸コバルト(II)(CoSO4)の結晶構造を有することが確認される場合がある。硫酸コバルトの結晶構造では、リファレンスコード98−007−4161にあるとおりXRDスペクトルにおいて回折角2θが25.2°の位置に、最も強い回折強度のピークが現れる。詳細は後述するが、本願明細書記載の製造方法において、酸素還元触媒は、硫酸コバルト(II)(CoSO4)を含む場合がある。硫酸コバルト(II)(CoSO4)は水溶性であり、製造工程の焼成後の水洗処理により、得られる酸素還元触媒からは基本的に除去される。仮に酸素還元触媒が硫酸コバルト(II)(CoSO4)を含んでいたとしても、燃料電池用電極触媒として用いた場合、燃料電池の運転中に電極触媒中から硫酸コバルト(II)(CoSO4)のみが溶出することが起きるだけであって、本願発明の酸素還元触媒の構成は維持され、触媒特性や運転性能に特段の影響はない。
また、本発明の酸素還元触媒は、上述したコバルト化合物の結晶構造に加えて、後述する製造方法の条件によっては、Co98、一硫化コバルト(CoS)および四硫化三コバルト(Co34)の結晶構造を含んでもよい。
Co98の結晶構造では、リファレンスコード98−003−1753にあるとおりXRDスペクトルにおいて回折角2θが52.1°の位置に、最も強い回折強度のピークが現れる。
一硫化コバルト(CoS)の結晶構造では、リファレンスコード98−062−4857にあるとおりXRDスペクトルにおいて回折角2θが46.9°の位置に、最も強い回折強度のピークが現れる。
四硫化三コバルト(Co34)の結晶構造では、リファレンスコード98−010−6489にあるとおりXRDスペクトルにおいて回折角2θが31.5°の位置に、最も強い回折強度のピークが現れる。
上述の硫酸コバルト(II)(CoSO4)も含めて、これらの結晶構造は、耐久性が低い、および/または酸素還元特性が低いため含まないことが好ましい。
(電極触媒・膜電極接合体・燃料電池)
上述した本発明の酸素還元触媒は、特に用途に制限があるわけではないが、特に燃料電池用電極触媒として好適に用いることができる。
(燃料電池用電極)
本発明の好適な態様の1つとして、上述した本発明の酸素還元触媒を含む触媒層を有する燃料電池用電極が挙げられる。この態様では、燃料電池用電極は、本発明の酸素還元触媒からなる燃料電池用電極触媒を含むことになる。
燃料電池用電極を構成する触媒層には、アノード触媒層、カソード触媒層があるが、本発明の酸素還元触媒はいずれにも用いることができる。本発明の酸素還元触媒は、高い酸素還元能を有するので、カソード触媒層に用いることが好ましい。
ここで、前記触媒層は、好ましくは高分子電解質をさらに含む。前記高分子電解質としては、燃料電池用触媒層において一般的に用いられているものであれば特に限定されない。具体的には、スルホ基を有するパーフルオロカーボン重合体(例えば、ナフィオン(NAFION(登録商標))、スルホ基を有する炭化水素系高分子化合物、リン酸などの無機酸をドープさせた高分子化合物、一部がプロトン伝導性の官能基で置換された有機/無機ハイブリッドポリマー、高分子マトリックスにリン酸溶液や硫酸溶液を含浸させたプロトン伝導体などが挙げられる。これらの中でも、ナフィオン(NAFION(登録商標)が好ましい。前記触媒層を形成する際のナフィオン(NAFION(登録商標))の供給源としては、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE521、デュポン社)などが挙げられる。
また、前記触媒層は、必要に応じて、炭素、導電性高分子、導電性セラミックス、金属または酸化タングステンもしくは酸化イリジウム等の導電性無機酸化物などからなる電子伝導性粒子をさらに含んでいてもよい。
触媒層の形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜採用しうる。
前記燃料電池用電極は、上記触媒層に加えて、さらに、多孔質支持層を有していてもよい。
多孔質支持層とは、ガスを拡散する層(以下「ガス拡散層」とも記す。)である。ガス拡散層としては、電子伝導性を有し、ガスの拡散性が高く、耐食性の高いものであれば何であっても構わないが、一般的にはカーボンペーパー、カーボンクロスなどの炭素系多孔質材料が用いられる。
(膜電極接合体)
本発明の膜電極接合体は、カソードと、アノードと、当該カソードと当該アノードとの間に配置された高分子電解質膜とを有する膜電極接合体であって、カソードおよびアノードのうちの少なくともいずれか一方が上述した本発明の燃料電池用電極である。このとき、本発明の燃料電池用電極を採用しなかった方の電極として、従来公知の燃料電池用電極、例えば、白金担持カーボンなど白金系触媒を含む燃料電池用電極を用いることができる。本発明の膜電極接合体の好適な態様の一例として、少なくとも前記カソードが本発明の燃料電池用電極であるものが挙げられる。
ここで、本発明の燃料電池用電極がガス拡散層を有する場合、本発明の膜電極接合体においてこのガス拡散層は、高分子電解質膜から見て、触媒層の反対側に配置される。
高分子電解質膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系を用いた電解質膜または炭化水素系電解質膜などが一般的に用いられるが、高分子微多孔膜に液体電解質を含浸させた膜または多孔質体に高分子電解質を充填させた膜などを用いてもよい。
本発明の膜電極接合体は、従来公知の方法を用いて適宜形成することができる。
(燃料電池)
本発明の燃料電池は、上述した膜電極接合体を備える。ここで、本発明の典型的な態様において、本発明の燃料電池は、膜電極接合体を挟む態様でさらに2つの集電体を備える。集電体は、燃料電池用に一般的に採用される従来公知のものとすることができる。
(酸素還元触媒の製造方法)
本発明の酸素還元触媒の製造方法は、上記の構成の範囲内の酸素還元触媒が得られる限り特に限定されない。例えば、コバルト原子および硫黄原子を含有する化合物を原料として酸素ガス含有雰囲気下で焼成する方法(製造方法1)や、コバルト化合物と硫黄源とを混合して酸素ガス含有雰囲気下で焼成する方法(製造方法2)が挙げられる。以下、製造方法1について詳細に説明する。
製造方法1では、コバルト原子および硫黄原子を含有する化合物を原料として酸素ガス含有雰囲気下で焼成する。
コバルト原子および硫黄原子を含有する化合物としては、特に限定はされないが、無機化合物としては、一硫化コバルト(CoS)、二硫化コバルト(CoS2)、四硫化三コバルト(Co34)、Co98などのコバルト硫化物を挙げることができる。これらのコバルト硫化物は1種単独でもよく、2種以上併用してもよい。酸素原子が含有しやすいことから一硫化コバルト(CoS)もしくは四硫化三コバルト(Co34)を用いることが好ましい。
酸素ガス含有雰囲気は、窒素ガスおよび/またはアルゴンガスと酸素ガスの混合ガス雰囲気であることがより好ましい。酸素ガス含有雰囲気の酸素ガス含有率は0.1〜10.0体積%が好ましく、0.1〜5.0体積%がより好ましい。焼成温度としては、450℃〜850℃の範囲が好ましく、500〜800℃がより好ましい。600〜700℃付近で焼成すると四酸化三コバルト(Co34)が生じやすい。900℃以上にすると、四酸化三コバルト(Co34)は高温においてより安定な一酸化コバルト(CoO)に変化しやすく、一方で、硫黄原子が系外へ流出してしまいやすい。焼成時間は、1〜15時間が好ましく、1〜12時間が好ましい。酸素ガス含有雰囲気の気流下、焼成時間が前述の範囲より長いと、硫黄原子が系外へ流出してしまい、硫黄原子含有量が上述した構成の範囲よりも小さくなりやすい。焼成の時間と温度は互いに合わせて調整される。
焼成後に得られる焼成物は、硫酸コバルト(II)を含む場合がある。硫酸コバルト(II)は水溶性であり、焼成処理により得られた焼成物を水洗する水洗処理を行うことが好ましい。水洗の方法としては、例えば、焼成物を室温の純水中に入れてマグネティックスターラーを用いて撹拌処理する方法が挙げられる。撹拌処理の条件としては、回転速度100〜300rpmで5〜20時間撹拌することが挙げられる。撹拌処理された焼成物は、ろ過して70〜120℃で30分間〜5時間乾燥することが好ましい。
このようにして本願発明の酸素還元触媒を得ることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。また、実施例および比較例における電気化学評価、粉末X線回折測定および硫黄原子含有量分析は、以下の方法および手順により行った。
実施例1:
(1)酸素還元触媒の作製
一硫化コバルト(CoS)(和光純薬工業製)0.5gを秤量し、石英インナーケースに入れ、回転焼成炉(モトヤマ社製)を用いて窒素ガス(ガス流量95mL/分)および酸素ガス(ガス流量5mL/分)の混合ガス雰囲気下で昇温速度10℃/分で600℃まで昇温し、600℃において12時間焼成を行った。次に、焼成して得られた焼成物を純水中に入れて、マグネティックスターラーを用いて室温、14時間200rpmの条件で撹拌して水洗処理した。水洗処理されたものをろ過して得た粉末を、90℃で2時間乾燥させて酸素還元触媒(1)を得た。
(2)電気化学評価
(触媒電極作製)
酸素還元触媒を含む触媒層を備える燃料電池用電極(以下「触媒電極」)の作製は次のように行った。得られた酸素還元触媒(1)15mg、2−プロパノール1.0mL、イオン交換水1.0mLおよびナフィオン(NAFION(登録商標)、5%ナフィオン水溶液、和光純薬工業製)62μLを含む溶液に超音波を照射して攪拌し、懸濁液を得た。この懸濁液20μLをグラッシーカーボン電極(東海カーボン社製、直径:5.2mm)に塗布し、70℃で1時間乾燥して、酸素還元触媒活性測定用の触媒電極を得た。
(酸素還元触媒活性測定)
酸素還元触媒(1)の酸素還元活性触媒能の電気化学評価を次のように行った。上記触媒電極作製において作製した触媒電極を、酸素ガス雰囲気および窒素ガス雰囲気のそれぞれにおいて、30℃0.5mol/dm3の硫酸水溶液中、5mV/秒の電位走査速度で分極し、電流―電位曲線を測定した。また、酸素ガス雰囲気で分極していない状態の自然電位(開回路電位)を得た。その際、同濃度の硫酸水溶液中での可逆水素電極を参照電極とした。
前記電気化学評価で得た電流―電位曲線のうち酸素ガス雰囲気での還元電流曲線と窒素ガス雰囲気での還元電流曲線との差分から10μAにおける電極電位(以下、単に電極電位とも記す。)を得た。また、前記電極電位と前記自然電位を用いて酸素還元触媒(1)の酸素還元触媒能を評価した。酸素還元活性の指標として得られた自然電位を表1に示す。
(3)粉末X線回折(XRD)測定
粉末X線回折測定装置パナリティカルMPD(スペクトリス株式会社製)を用いて、酸素還元触媒(1)の粉末X線回折測定を行った。X線回折測定条件としては、Cu−Kα線(出力45kV、40mA)を用いて回折角2θ=10〜70°の範囲で測定を行い、酸素還元触媒(1)のX線回折スペクトルを得た。得られたX線回折(XRD)スペクトルを図1に示す。XRDスペクトルにおいて四酸化三コバルト(Co34)および一酸化コバルト(CoO)の結晶構造のみが確認された。回折ピークのうち、四酸化三コバルト(Co34)および一酸化コバルト(CoO)にそれぞれ対応するピークのうちの最も強い回折強度のピークをそれぞれ○および△で示す。
四酸化三コバルト(Co34)結晶に対応するピークのうちの最も強い回折ピークの強度(H1)および一酸化コバルト(CoO)結晶に対応するピークのうちの最も強い回折ピークの強度(H2)を求め、下記の計算式により、作製した酸素還元触媒中における四酸化三コバルト(Co34)の含有量を求めた。同様に、一酸化コバルト(CoO)の含有量を求めた。なお、回折ピークの強度は、装置付属のソフトウェアHighScore Plusを用いてバックグラウンド指定処理(処理条件、バックグラウンド指定:自動、粒状度:20、ベンディングファクタ:17)したうえで、回折ピークの強度とした。
四酸化三コバルト含有率(%)={H1/(H1+H2)}×100
一酸化コバルト含有率(%)={H2/(H1+H2)}×100
酸素還元触媒(1)のXRDスペクトルでは、確認された上記各回折ピーク強度が表1記載のとおりに観測され、四酸化三コバルト含有率および一酸化コバルト含有率がそれぞれ82.9%、17.1%と求められた。XRD測定において確認された上記各回折ピークの強度、四酸化三コバルト含有率、一酸化コバルト含有率、および自然電位を併せて表1に示す。
(4)硫黄原子含有量
酸素還元触媒(1)10mgをセラミックるつぼに秤量し、助燃剤としてタングステン粉およびスズ粉を適当量加えて、炭素・硫黄分析装置(型番:EMIA−920V、堀場製作所製)を用いて酸素ガス気流下で昇温して赤外線吸収法で測定した。ここで得られた硫黄原子含有量(質量%)を表1に併せて示す。
実施例2:
(酸素還元触媒の作製)
焼成する時間を6時間に変更した以外は、実施例1と同様にして酸素還元触媒(2)を得た。
(電気化学測定、XRD測定、硫黄原子含有量)
電気化学測定、XRD測定および硫黄原子含有量は、それぞれ実施例1と同様に測定および分析を行った。酸素還元触媒(2)のXRDスペクトルを図2に示す。XRDスペクトルにおいて四酸化三コバルト(Co34)および一酸化コバルト(CoO)の結晶構造のみが確認された。回折ピークのうち、四酸化三コバルト(Co34)および一酸化コバルト(CoO)にそれぞれ対応するピークのうちの最も強い回折強度のピークをそれぞれ○および△で示す。
酸素還元触媒(2)のXRDスペクトルでは、確認された上記各回折ピーク強度が表1記載のとおりに得られ、四酸化三コバルト含有率および一酸化コバルト含有率がそれぞれ74.7%、25.3%と求められた。XRD測定において確認された上記各回折ピークの強度、四酸化三コバルト含有率、一酸化コバルト含有率、自然電位および硫黄原子含有量を併せて表1に示す。
実施例3:
(酸素還元触媒の作製)
焼成する時間を3時間に変更した以外は、実施例1と同様にして酸素還元触媒(3)を得た。
(電気化学測定、XRD測定、硫黄原子含有量)
電気化学測定、XRD測定および硫黄原子含有量は、それぞれ実施例1と同様に測定および分析を行った。酸素還元触媒(3)のXRDスペクトルを図3に示す。XRDスペクトルにおいて四酸化三コバルト(Co34)および一酸化コバルト(CoO)の結晶構造のみが確認された。回折ピークのうち、四酸化三コバルト(Co34)および一酸化コバルト(CoO)にそれぞれ対応するピークのうちの最も強い回折強度のピークをそれぞれ○および△で示す。
酸素還元触媒(3)のXRDスペクトルでは、確認された上記各回折ピーク強度が表1記載のとおりに得られ、四酸化三コバルト含有率および一酸化コバルト含有率が62.3%、37.7%と求められた。XRD測定において確認された上記各回折ピークの強度、四酸化三コバルト含有率、一酸化コバルト含有率、自然電位および硫黄原子含有量を併せて表1に示す。
実施例4:
(酸素還元触媒の作製)
焼成において用いた混合ガス雰囲気を、窒素ガス(ガス流量97mL/分)および酸素ガス(ガス流量3mL/分)の混合ガス雰囲気に変更した以外は、実施例3と同様にして酸素還元触媒(4)を得た。
(電気化学測定、XRD測定、硫黄原子含有量)
電気化学測定、XRD測定および硫黄原子含有量は、それぞれ実施例1と同様に測定および分析を行った。酸素還元触媒(4)のXRDスペクトルを図4に示す。XRDスペクトルにおいて四酸化三コバルト(Co34)および一酸化コバルト(CoO)の結晶構造のみが確認された。回折ピークのうち、四酸化三コバルト(Co34)および一酸化コバルト(CoO)にそれぞれ対応するピークのうちの最も強い回折強度のピークをそれぞれ○および△で示す。
酸素還元触媒(4)のXRDスペクトルでは、確認された上記各回折ピーク強度が表1記載のとおりに得られ、四酸化三コバルト含有率および一酸化コバルト含有率がそれぞれ20.4%、79.6%と求められた。XRD測定において確認された上記各回折ピークの強度、四酸化三コバルト含有率、一酸化コバルト含有率、自然電位および硫黄原子含有量を併せて表1に示す。
比較例1:
(酸素還元触媒の作製)
焼成において用いた混合ガス雰囲気を、窒素ガス(ガス流量99mL/分)および酸素ガス(ガス流量1mL/分)の混合ガス雰囲気に変更した以外は、実施例3と同様にして酸素還元触媒(c1)を得た。
(電気化学測定、XRD測定、硫黄原子含有量)
電気化学測定、XRD測定および硫黄原子含有量は、それぞれ実施例1と同様に測定および分析を行った。得られたXRDスペクトルを図5に示す。XRDスペクトルにおいて一酸化コバルト(CoO)、Co98および一硫化コバルト(CoS)の結晶構造のみが確認された。回折ピークのうち、一酸化コバルト(CoO)、Co98および一硫化コバルト(CoS)にそれぞれ対応するピークのうちの最も強い回折強度のピークをそれぞれ△、●および▲で示す。確認された結晶の最も強い回折ピークの強度が表1記載のとおりに得られた。一酸化コバルト含有率は100%と求められた。酸素還元触媒(c1)のXRDスペクトルでは四酸化三コバルト(Co34)の結晶構造は確認されず、四酸化三コバルト含有率は0%と求められた。XRD測定において確認された上記各回折ピークの強度、四酸化三コバルト含有率、一酸化コバルト含有率、自然電位および硫黄原子含有量を併せて表1に示す。
比較例2:
(酸素還元触媒の作製)
焼成において用いた混合ガス雰囲気を、窒素ガス(ガス流量100mL/分)および酸素ガス(ガス流量0.5mL/分)の混合ガス雰囲気に変更した以外は、実施例3と同様にして酸素還元触媒(c2)を得た。
(電気化学測定、XRD測定、硫黄原子含有量)
電気化学測定、XRD測定および硫黄原子含有量は、それぞれ実施例1と同様に測定および分析を行った。得られたXRDスペクトルを図6に示す。XRDスペクトルにおいて、一酸化コバルト(CoO)、Co98および一硫化コバルト(CoS)の結晶構造のみが確認された。回折ピークのうち、一酸化コバルト(CoO)、Co98および一硫化コバルト(CoS)にそれぞれ対応するピークのうちの最も強い回折強度のピークをそれぞれ△、●および▲で示す。確認された上記各回折ピークの強度が表1記載のとおりに得られた。一酸化コバルト含有率は100%と求められた。酸素還元触媒(c2)のXRDスペクトルでは四酸化三コバルト(Co34)の結晶構造は確認されず、四酸化三コバルト含有率は0%と求められた。XRD測定において確認された上記各回折ピーク強度、四酸化三コバルト含有率、一酸化コバルト含有率、自然電位および硫黄原子含有量を併せて表1に示す。
比較例3:
(酸素還元触媒の作製)
焼成する温度を400℃に変更した以外は、比較例2と同様にして酸素還元触媒(c3)を得た。
(電気化学測定、XRD測定、硫黄原子含有量)
電気化学測定、XRD測定および硫黄原子含有量は、それぞれ実施例1と同様に測定および分析を行った。得られたXRDスペクトルを図7に示す。XRDスペクトルにおいて、Co98、一硫化コバルト(CoS)および四硫化三コバルト(Co34)の結晶構造が確認された。回折ピークのうち、Co98、一硫化コバルト(CoS)および四硫化三コバルト(Co34)にそれぞれ対応するピークのうちの最も強い回折強度のピークをそれぞれ●、▲および■で示す。確認された結晶の最も強い回折ピークの強度が表1記載のとおりに得られた。酸素還元触媒(c3)のXRDスペクトルでは四酸化三コバルト(Co34)の結晶構造は確認されず、四酸化三コバルト含有率および一酸化コバルト含有率はともに0%と求められた。XRD測定において確認された上記各回折ピーク強度、四酸化三コバルト含有率、一酸化コバルト含有率、自然電位および硫黄原子含有量を併せて表1に示す。
比較例4:
(酸素還元触媒)
実施例1で原料として用いた一硫化コバルト(CoS)をそのまま酸素還元触媒(c4)として用いた。
(電気化学測定、XRD測定、硫黄原子含有量)
電気化学測定、XRD測定および硫黄原子含有量は、それぞれ実施例1と同様に測定および分析を行った。得られたXRDスペクトルを図8に示す。XRDスペクトルにおいて、Co98、一硫化コバルト(CoS)および四硫化三コバルト(Co34)の結晶構造のみが確認された。回折ピークのうち、Co98、一硫化コバルト(CoS)および四硫化三コバルト(Co34)にそれぞれ対応するピークのうちの最も強い回折強度のピークをそれぞれ●、▲および■で示す。確認された上記各回折ピークの強度が表1記載のとおりに得られた。酸素還元触媒(c4)のXRDスペクトルでは四酸化三コバルト(Co34)および一酸化コバルト(CoO)の結晶構造はいずれも確認されず、四酸化三コバルト含有率および一酸化コバルト含有率はともに0%と求められた。XRD測定において確認された上記各回折ピーク強度と、四酸化三コバルト含有率、一酸化コバルト含有率、自然電位、および硫黄原子含有量とを併せて表1に示す。
比較例5:
(酸素還元触媒)
市販の四酸化三コバルト(Co34)(キシダ化学製、有機元素分析用グレード)をそのまま酸素還元触媒(c5)として用いた。
(電気化学測定、XRD測定、硫黄原子含有量)
電気化学測定、XRD測定および硫黄原子含有量は、それぞれ実施例1と同様に測定および分析を行った。
酸素還元触媒(c5)のXRDスペクトルを図9に示す。XRDスペクトルにおいて、四酸化三コバルト(Co34)に対応するピークのうちの最も強い回折強度のピークを○で示す。酸素還元触媒(c5)のXRDスペクトルでは、四酸化三コバルト(Co34)のみが確認され、四酸化三コバルト含有率は100%と求められた。一酸化コバルト含有率は0%と求められた。
酸素還元触媒(c5)の四酸化三コバルト含有率、一酸化コバルト含有率、自然電位および硫黄原子含有量を表1に併せて示す。
比較例6:
(酸素還元触媒)
市販の一酸化コバルト(CoO)(和光純薬工業製)をそのまま酸素還元触媒(c6)として用いた。
(電気化学測定、XRD測定、硫黄原子含有量)
電気化学測定、XRD測定および硫黄原子含有量は、それぞれ実施例1と同様に測定および分析を行った。
酸素還元触媒(c6)のXRDスペクトルを図10に示す。XRDスペクトルにおいて、一酸化コバルト(CoO)に対応するピークのうちの最も強い回折強度のピークを△で示す。酸素還元触媒(c6)のXRDスペクトルでは、一酸化コバルト(CoO)のみが確認され、一酸化コバルト含有率は100%と求められ、四酸化三コバルト含有率は0%と求められた。
酸素還元触媒(c6)の四酸化三コバルト含有率、一酸化コバルト含有率、自然電位および硫黄原子含有量を表1に併せて示す。
Figure 0006570802
実施例の結果より、四酸化三コバルト(Co34)の結晶構造を有するとともに、硫黄原子含有量が1.0〜15.0質量%の範囲の酸素還元触媒は、自然電位が高い。
本発明の酸素還元触媒は、四酸化三コバルト(Co34)の結晶構造を有するとともに、硫黄原子を特定の量の範囲で含有することにより酸素還元能が高く、酸素還元触媒を含む触媒層を有する燃料電池用電極に好適に用いることができる。

Claims (8)

  1. X線回折測定において四酸化三コバルト(Co34)の結晶構造が確認され、かつ硫黄原子含有量が1.0〜15.0質量%であることを特徴とするコバルト化合物である酸素還元触媒。
  2. コバルト化合物の結晶中の四酸化三コバルト(Co34)の含有量が20.0%以上であることを特徴とする請求項1に記載の酸素還元触媒。
  3. X線回折測定において一酸化コバルト(CoO)の結晶構造がさらに確認されることを特徴とする請求項1または2に記載の酸素還元触媒。
  4. コバルト化合物の結晶中の一酸化コバルト(CoO)の含有量が80.0%以下であることを特徴とする請求項3に記載の酸素還元触媒。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の酸素還元触媒からなる燃料電池用電極触媒。
  6. 請求項5に記載の燃料電池用電極触媒を含む触媒層を有する燃料電池用電極。
  7. カソードと、アノードと、当該カソードと当該アノードとの間に配置された高分子電解質膜とを有する膜電極接合体であって、前記カソードが請求項6に記載の燃料電池用電極である膜電極接合体。
  8. 請求項7に記載の膜電極接合体を備える燃料電池。
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