JP6570439B2 - スパークプラグの評価装置、および、スパークプラグの評価方法 - Google Patents

スパークプラグの評価装置、および、スパークプラグの評価方法 Download PDF

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Description

本発明は、スパークプラグの評価装置、および、スパークプラグの評価方法に関する。
放電を発生させるためにスパークプラグが用いられる場合がある。発生した放電は、燃料への着火等に用いられる。
関連する技術として、特許文献1には、電気機器の部分放電監視装置が記載されている。特許文献1に記載の部分放電監視装置は、検出手段(アコースティックエミッションセンサ)と、判別手段とを備える。検出手段は、監視対象物から発せられる音波を検知する。判別手段は、検出手段からの電気出力信号を、当該電気出力信号の大きさと、当該電気出力信号の継続時間および連続性とに基づいて、パターン化する。判別手段は、電気出力信号のパターンに基づいて、部分放電の有無を判別する。なお、特許文献1に記載の部分放電監視装置では、複数種類の異常放電を評価することができない。特に、特許文献1に記載の部分放電監視装置では、放電距離の変化を伴う異常放電について評価することができない。
(発明者によって認識された事項)
次に、スパークプラグの評価方法に関し、発明者によって認識された事項を説明する。図1は、人間の目または人間の耳を用いて、スパークプラグの放電を評価する例を模式的に示す図である。図1に記載のスパークプラグ1は、第1電極10と、第2電極20と、電極囲い体30とを含む。図1において、「A」は、正常な放電を示し、「B」は、電極囲い体30の内部における異常な放電を示し、「C」は、電極囲い体30の外部における異常な放電を示す。
人間の目を用いて、スパークプラグ1の放電を評価する場合には、電極囲い体30に、点検孔35を設ける必要がある。点検孔35を設ける場合、スパークプラグ1の形状は複雑化し、スパークプラグ1の製造コストが増加する。また、点検孔35を開けると、スパークプラグ1の内部の清浄度が悪化する可能性がある。さらに、人間の目を用いて、スパークプラグ1の放電を評価する場合には、評価が主観的となるおそれがある。例えば、正常放電Aと、異常放電Bとの区別を客観的に行うことは難しい。
人間の耳を用いて、スパークプラグ1の放電を評価する場合には、放電のタイミング異常の検出が可能である。しかし、人間の耳を用いて、スパークプラグ1を評価する場合には、放電の生じた場所の特定は困難である。このため、放電が、正常放電Aであるのか、電極囲い体30の内部における異常放電Bであるのか、あるいは、電極囲い体30の外部における異常放電Cであるのかを判別することは困難である。
図2は、センサを用いて、スパークプラグの放電を評価する例を模式的に示す図である。光センサ42(フォトダイオード等)を用いて、放電の際に発生する光を検出し、光センサ42からの電気的出力を記録することを想定する。光センサ42を用いて、スパークプラグの放電を評価する場合、電極囲い体30に、点検孔35を設ける必要がある。点検孔35を設ける場合、スパークプラグ1の形状は複雑化し、スパークプラグ1の製造コストが増加する。また、点検孔35を開けると、スパークプラグ1の内部の清浄度が悪化する可能性がある。また、光センサ42を用いてスパークプラグの放電を評価する場合、正常放電Aと、異常放電Bとの区別を行うことが難しい。
代替的に、オゾンセンサ44を用いて、放電の際に発生するオゾンを検出し、オゾンセンサ44からの電気的出力を記録することを想定する。オゾンセンサ44を用いて、スパークプラグの放電を評価する場合、電極囲い体30に、点検孔35を設ける必要がある。また、オゾンセンサ44を用いてスパークプラグの放電を評価する場合、正常放電Aと、異常放電Bとの区別を行うことが難しい。また、オゾンの伝播速度が遅いため、放電検知に時間を要する可能性がある。
代替的に、音響センサ50を用いて、放電の際に発生する音を検出し、音響センサ50からの電気的出力を記録することを想定する。この場合、点検孔35を設ける必要はない。しかし、現在知られている技術では、正常放電Aと異常放電Bとを区別することが困難である。さらに、異常放電Bと異常放電Cとを区別することも困難である。
特開平4−194675号公報
本発明の目的は、スパークプラグの評価を、より正確に実施可能な評価装置、および、評価方法を提供することにある。
また、いくつかの実施形態における任意付加的な目的は、放電距離の変化を伴う異常放電について評価することが可能なスパークプラグの評価装置、および、スパークプラグの評価方法を提供することにある。
さらに、いくつかの実施形態における任意付加的な目的は、複数種類の異常放電(例えば、2種類あるいは3種類の異常放電)を評価可能なスパークプラグの評価装置、および、スパークプラグの評価方法を提供することにある。
この発明のこれらの目的とそれ以外の目的と利益とは以下の説明と添付図面とによって容易に確認することができる。
以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係の一例を示すために、参考として、括弧付きで付加されたものである。よって、括弧付きの記載により、特許請求の範囲は、限定的に解釈されるべきではない。
いくつかの実施形態におけるスパークプラグの評価装置は、スパークプラグの電極囲い体(30)に取り付けられる音響センサ(50)と、演算装置(60)と、出力装置(70)とを具備する。前記演算装置(60)は、前記音響センサ(50)から音響データを受け取る。前記演算装置(60)は、前記音響データに基づいて、放電初期における音の高周波成分の音圧である放電初期音圧(Ape)を算出する。前記演算装置(60)は、算出された前記放電初期音圧(Ape)あるいは前記放電初期音圧(Ape)から導出される放電距離(de)が、閾値(TH1;TH2)以上である時、前記スパークプラグの放電が、第1形態の異常放電であると判定する。前記演算装置(60)は、判定結果を、前記出力装置(70)に送信する。
上記スパークプラグの評価装置において、前記演算装置(60)は、前記放電初期音圧(Ape)と前記放電距離(de)との関係に基づいて、前記放電初期音圧(Ape)から前記放電距離(de)を導出し、導出された前記放電距離(de)が前記閾値(TH2)以上である時、前記放電が、第1形態の異常放電であると判定してもよい。
上記スパークプラグの評価装置において、前記出力装置(70)は、前記放電距離(de)を表示してもよい。
上記スパークプラグの評価装置において、前記演算装置(60)は、正常なスパークプラグの放電初期における音の高周波成分の音圧(Aps)、あるいは、正常なスパークプラグの放電距離(ds)に基づいて、前記閾値(TH1;TH2)を算出してもよい。
上記スパークプラグの評価装置において、前記演算装置(60)は、算出された前記放電初期音圧(Ape)あるいは前記放電距離(de)が、前記閾値(TH1;TH2)以上である時、前記放電は、前記電極囲い体(30)の内部での異常放電であると判定してもよい。前記演算装置(60)は、前記音響データに対応する音圧(Ape2)が、前記閾値(TH1;TH2)とは異なる第4閾値(TH4)以下である時、前記放電は、前記電極囲い体(30)の外部での異常放電であると判定してもよい。
上記スパークプラグの評価装置において、前記演算装置(60)は、スパークプラグ作動トリガーの発生から、実際に放電が発生するまでの時間が、第5閾値(TH5)よりも小さい時、あるいは、第6閾値(TH6)よりも大きい時、放電タイミングが異常であると判定してもよい。
いくつかの実施形態におけるスパークプラグの評価方法は、スパークプラグ(1)に音響センサ(50)を取り付ける工程と、前記音響センサ(50)から演算装置(60)に音響データを送信する工程と、前記演算装置(60)が、前記音響データに基づいて、放電初期における音の高周波成分の音圧である放電初期音圧(Ape)を算出する工程と、前記演算装置(60)が、算出された前記放電初期音圧(Ape)あるいは前記放電初期音圧(Ape)から導出される放電距離(de)に基づいて、前記スパークプラグの放電が、第1形態の異常放電であるか否かを判定する工程と、前記演算装置(60)から出力装置(70)に、判定結果を送信する工程と、前記出力装置(70)が、前記判定結果を表示する工程とを具備する。
本発明により、スパークプラグの評価を、より正確に実施可能な評価装置、および、評価方法を提供することができる。
図1は、人間の目または人間の耳を用いて、スパークプラグの放電を評価する例を模式的に示す図である。 図2は、センサを用いて、スパークプラグの放電を評価する例を模式的に示す図である。 図3は、スパークプラグの概略斜視図である。 図4は、スパークプラグの概略斜視図である。 図5は、スパークプラグの評価装置の機能を模式的に示す機能ブロック図である。 図6は、放電音の生データを示すグラフである。 図7は、放電音に対応する音響データを、ウェーブレット変換することにより得られるデータを示すグラフである。 図8は、パッシェンの法則を示すグラフである。 図9は、放電電圧の時間変化を示すグラフである。 図10は、放電距離と、放電初期音圧(高周波成分)との関係を示す実験データである。 図11Aは、基準値(基準音圧または第1閾値、基準放電距離または第2閾値等)の算出方法を示すフローチャートである。 図11Bは、スパークプラグの評価方法を示すフローチャートである。 図12は、スパークプラグの概略斜視図である。 図13は、音圧と、放電位置との関係を説明するための概念図である。 図14は、第2形態の異常放電の発生により、放電音の音圧が低下している様子を示すグラフである。 図15Aは、基準値(基準音圧または第1閾値、基準放電距離または第2閾値等)の算出方法を示すフローチャートである。 図15Bは、スパークプラグの評価方法を示すフローチャートである。 図16は、スパークプラグの概略断面図である。
以下、実施形態に係るスパークプラグの評価装置、および、スパークプラグの評価方法に関して、添付図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図3乃至図11Bを参照して、第1の実施形態におけるスパークプラグの評価装置100について説明する。図3および図4は、スパークプラグ1の概略斜視図である。また、図5は、スパークプラグの評価装置100の機能を模式的に示す機能ブロック図である。
まず、図3を参照して、スパークプラグ1について説明する。図3に記載のスパークプラグ1は、第1電極10と、第2電極20と、電極囲い体30とを含む。電極囲い体30は、第1電極10および第2電極20を囲む。電極囲い体30により規定される空間は、密閉される空間である必要はない。すなわち、電極囲い体30は、第1電極10および第2電極20を部分的に囲んでいればよい。第1電極10は、陰極であり、第2電極20は、陽極であってもよい。代替的に、第1電極10が陽極であり、第2電極20が陰極であってもよい。
一般的なスパークプラグは、陰極(例えば、第1電極10)と陽極(例えば、第2電極20)との間の距離が最も短くなるような、陰極の部分と陽極の部分との間で放電が発生するように設計されている。換言すれば、第1電極10の設計上の電子放出位置10A(又は電子受取位置)と、第2電極20の設計上の電子受取位置20A(又は電子放出位置)との間の距離は、第1電極10の電子放出位置10A以外の位置と、第2電極20の電子受取位置20A以外の位置との間の距離よりも短い。図3における放電Aは、電子放出位置10Aと電子受取位置20Aとの間における放電、すなわち、正常放電を示している。
次に、図4を参照して、第1の実施形態において想定されるスパークプラグの異常放電について説明する。第1電極10または第2電極20の電極表面に、炭素等の堆積物が堆積した場合、あるいは、電極囲い体30の内部に異物が混入した場合、放電距離が、設計上の放電距離(設計上の電子放出位置10Aと設計上の電子受取位置20Aとの間の距離)よりも長くなる。図4に記載の例では、第1電極10の表面に堆積物11が堆積しているため、放電距離が、設計上の放電距離よりも長くなっている。第1の実施形態では、放電距離の変化に基づいて、電極囲い体30の内部で発生する異常放電(以下、「第1形態の異常放電」という。)を検出する。すなわち、第1形態の異常放電は、電極囲い体30内における導電体間の放電であって、かつ、設計上意図されていない部位間での放電である。
図5を参照して、第1形態の異常放電を検出可能なスパークプラグの評価装置100について説明する。スパークプラグの評価装置100は、スパークプラグの電極囲い体30に取り付けられる音響センサ50と、演算装置60と、出力装置70とを含む。スパークプラグ1の評価装置100は、記憶装置80を含んでいてもよい。
(音響センサ)
音響センサ50は、電極囲い体30の内部で発生する放電音(例えば、正常放電Aの音、または、異常放電Bの音)、あるいは、電極囲い体30の外部で発生する放電音(例えば、異常放電Cの音)を検出する。音響センサ50は、音響データDA(電気信号または光信号等)を演算装置60に送信する。音響センサ50は、音響データDA(放電音に対応する音響データ)を、有線または無線によって、演算装置60に送信する。
音響センサ50から演算装置60に送信される音響データDAには、音が検出された時間を示す時間情報と、検出された音の周波数を示す周波数情報と、検出された音の音圧を示す音圧情報とが含まれる。図6は、放電音の生データを示し、図7は、放電音に対応する音響データを、ウェーブレット変換することにより得られるデータ(グラフ)を示す。図6の横軸は、時間を示し、図6の縦軸は、音の振幅(音圧に対応)を示す。また、図7の横軸は、時間を示し、図7の縦軸は、音の周波数を示し、図7のハッチングは、音圧を示す。図7を参照すると、音圧は、時間と音の周波数とに依存すること、換言すれば、音圧は、時間と、音の周波数の関数であることが把握される。第1の実施形態では、放電初期における音の高周波成分に対応する音圧を用いて、異常放電が検出される。詳細については、後述される。
(演算装置)
演算装置60は、CPU等のハードウェアプロセッサを含む。演算装置60は、音響センサ50から音響データDAを受け取る。音響センサ50からの音響データDAは、演算装置60との間で情報伝達可能な記憶装置80に保存されてもよい。演算装置60は、記憶装置80に記憶されたプログラムを実行することにより、高周波成分抽出手段62、放電距離算出手段64、判定手段66として機能する。高周波成分抽出手段62(演算装置60)は、音響データDAから、放電初期における音の高周波成分を抽出する。なお、高周波成分抽出手段62は、ハイパスフィルタ62’(フィルタ回路)によって代替されてもよい。そして、演算装置60は、抽出された音の高周波成分に基づいて、当該音の高周波成分の音圧を算出する。判定手段66(演算装置60)は、算出された音圧(放電初期音圧)に基づいて、放電が異常放電であるか否かを判定する。より具体的には、判定手段66は、算出された音圧(放電初期音圧)が、第1閾値TH1以上である時、異常放電であると判定する。
代替的に、あるいは、付加的に、演算装置60(放電距離算出手段64)は、抽出された音の高周波成分に対応する音圧(放電初期音圧)に基づいて放電距離を算出してもよい。放電距離を算出する場合、判定手段66(演算装置60)は、算出された放電距離に基づいて、放電が異常放電であるか否かを判定する。より具体的には、判定手段66は、算出された放電距離が第2閾値TH2以上である時、異常放電であると判定する。なお、高周波成分抽出手段62による抽出処理、放電距離算出手段64による算出処理、および、判定手段66による判定処理の詳細については、後述される。
(出力装置)
演算装置60は、判定手段66による判定結果を示すデータを、有線または無線によって出力装置70に送信する。出力装置70は、例えば、表示装置である。出力装置70は、判定結果を、出力する。出力装置70が表示装置である場合、出力装置70は、判定結果を、ユーザーが認識可能な形態にて表示する。
(音響データから高周波成分を抽出することの技術的意義)
以下、音響データから高周波成分を抽出することの技術的意義について説明する。放電の際の放電距離(電子放出位置と電子受取位置との間の距離)と、放電電圧との関係は、下記の式(1)によって示されるパッシェンの法則に従うことが知られている。
Figure 0006570439
ここで、Vcは放電電圧、pは気圧、dは放電距離である。
図8は、パッシェンの法則を示すグラフである。上述の式(1)、あるいは、図8のグラフから把握されるように、気圧が一定であるとき、放電電圧Vcは、放電距離dの関数となる(式(2))。
Figure 0006570439
また、大気圧が、概ね760torrであり、一般的なスパークプラグの放電距離が、数ミリから数センチ程度であることを考慮すると、図8から、大気圧下におけるスパークプラグの放電距離と、放電電圧との関係は、概ね線形関係であることが把握される。
したがって、大気圧下におけるスパークプラグの放電距離dと、放電電圧Vcとの関係を、下記の式(3)によって、近似的に表すことが可能である。
Figure 0006570439
ここで、a1およびb1は、係数である。係数a1およびb1は、例えば、図8に基づいて、算出することができる。式(1)または式(3)、あるいは、図8を参照すると、大気圧下では、放電距離dが長くなるにつれて、放電開始時の電圧(放電電圧)が高くなることがわかる。
また、放電エネルギーEtotalは、式(4)に示されるように、容量エネルギーEcと、誘導エネルギーEiの和で表される。
Figure 0006570439
さらに、容量エネルギーEcは、下記式(5)によって表される。
Figure 0006570439
ここで、Cは静電容量、Vcは放電電圧(放電開始時の電圧)、εは誘電率、Sは放電面積(放電する部分の面積)である。
また、誘導エネルギーEiは、下記式(6)によって表される。
Figure 0006570439
ここで、Iiは誘導電流、Viは誘導電圧である。
図9に示される放電波形の特徴を考慮して、放電初期の放電エネルギー、特に、放電初期の放電電圧の高周波成分に対応するエネルギー(当該エネルギーは、放電初期の音の高周波成分の音圧に比例する。)が、容量エネルギーEcに比例すると仮定する。当該仮定に基づいて、下記式(7)が導出される。式(7)は、放電距離dと、放電初期の音の高周波成分の音圧Ap(放電初期音圧)との間の関係を示す。
Figure 0006570439
ここで、αは、容量エネルギーから音圧への変換係数である。また、式(3)を式(7)に代入すると、式(8)が得られる。
Figure 0006570439
式(7)または式(8)から、大気圧下では、放電距離dが長くなるにつれて、放電初期の音の高周波成分の音圧Ap(放電初期音圧)が単調増加することが把握される。よって、演算装置60(判定手段66)は、放電初期の音の高周波成分の音圧Apが、予め設定される閾値(第1閾値TH1)以上である時、放電は、第1形態の放電異常(放電距離が、許容値以上であることに対応する放電異常)であると判定する。代替的に、あるいは、付加的に、演算装置60(放電距離算出手段64)は、式(7)または式(8)を用いて、放電初期の音の高周波成分の音圧Apに基づいて、放電距離dを導出してもよい。この場合、演算装置60(判定手段66)は、導出された放電距離dが、予め設定される閾値(第2閾値TH2)以上である時、放電は、第1形態の放電異常であると判定する。
図10は、実際に計測した放電音に基づいて、演算装置60が、放電初期の音の高周波成分の音圧Apを算出した例を示す。図10から、放電距離が長くなるにつれて、音圧Apが増加することが把握される。
(スパークプラグの評価方法)
図11Aおよび図11Bを参照して、第1の実施形態におけるスパークプラグの評価方法について説明する。図11Aは、基準値(基準音圧または第1閾値、基準放電距離または第2閾値等)の算出方法を示すフローチャートである。図11Bは、スパークプラグの評価方法を示すフローチャートである。
第1ステップS1において、正常なスパークプラグ1(例えば、製造直後の検査に合格したスパークプラグ)を抽出する。第2ステップS2において、当該正常なスパークプラグ1における計測点を決定する。計測点は、電極囲い体30上の点である。
第3ステップS3において、計測点に、音響センサ50を取り付ける。なお、音響センサ50と、演算装置60とは、有線または無線によって、情報伝達可能に接続されている。
第4ステップS4において、音響センサ50が、スパークプラグ1の放電音(音響データ)を取得する。取得された音響データは、演算装置60に送信される。
第5ステップS5において、高周波成分抽出手段(演算装置60の高周波成分抽出手段62またはハイパスフィルタ62’等)は、音響データに基づいて、放電初期における音の高周波成分を抽出する。放電初期における音の高周波成分は、図9における放電電圧波形の第1パルスに対応する成分である。放電初期における音の高周波成分の抽出方法は、任意である。例えば、音響センサ50と演算装置60との間に、ハイパスフィルタ62’を配置し、当該ハイパスフィルタ62’を用いて、音響センサ50によって取得された音響データの低周波成分をカットすることにより、放電初期における音の高周波成分を抽出してもよい。ハイパスフィルタ62’による遮断周波数の値(ベースラインである第3閾値TH3の値)は、具体的なスパークプラグの特性等に応じて、設定される。ハイパスフィルタ62’による遮断周波数の値は、例えば、第1パルスより後のパルスがカットされるような値に設定されてもよい。なお、ハイパスフィルタ62’によって実現される低周波成分カット機能は、演算装置60の高周波成分抽出手段62によって実現される低周波成分カット機能によって、代替されてもよい。なお、放電初期における音の高周波成分に関し、すべての低周波成分が除去されている必要はない。放電初期における音の高周波成分は、放電初期の放電エネルギーの大きさに対応するものであれば、低周波成分あるいはノイズ等が含まれていてもよい。
放電初期における音の高周波成分の抽出方法の他の一例において、放電初期の期間が具体的に求められてもよい。すなわち、高周波成分抽出手段(演算装置60の高周波成分抽出手段62またはハイパスフィルタ62’等)は、求められた放電初期の期間における音の高周波成分を抽出してもよい。なお、放電初期は、放電開始から所定時間Tsを経過するまでの期間であってもよい。放電開始の時点は、例えば、放電電圧が閾値を超えた時点に設定されてもよいし、放電音の音圧が閾値を超えた時点に設定されてもよい。代替的に、あるいは、付加的に、所定時間Tsは、例えば、図9における放電電圧波形の第1パルスが含まれるように設定されてもよい。音の高周波成分は、例えば、音の周波数が第3閾値以上である成分である。高周波成分抽出手段(演算装置60の高周波成分抽出手段62またはハイパスフィルタ62’等)は、音響データから、音の周波数が第3閾値未満である成分を除外することにより、音の高周波成分を抽出してもよい。
第6ステップS6において、演算装置60は、抽出された音の高周波成分に基づいて、音の高周波成分の音圧(放電初期における音の高周波成分の音圧)を算出する。例えば、演算装置60は、各周波数の音の音圧を加算することにより、放電初期における音の高周波成分の音圧を算出してもよい。算出された音圧は、基準音圧Apsとして、記憶装置80に記憶されてもよい。演算装置60は、基準音圧Apsに基づいて、上述の第1閾値TH1を算出してもよい。第1閾値TH1は、例えば、基準音圧Aps×係数K1(係数K1は、1よりおおきな数)に設定されてもよいし、基準音圧Aps+係数K2(係数K2は、0より大きな数)に設定されてもよい。なお、第1閾値TH1が算出される場合、当該第1閾値TH1は、記憶装置80に記憶される。
第7ステップS7において、演算装置60(放電距離算出手段64)は、放電初期における音の高周波成分の音圧に基づいて、放電距離dを算出する。放電距離dの算出は、上述の式(7)に基づいて行われてもよいし、上述の式(8)に基づいて行われてもよい。算出された放電距離dは、基準放電距離dsとして、記憶装置に記憶されてもよい。演算装置60は、基準放電距離dsに基づいて、上述の第2閾値TH2を算出してもよい。第2閾値TH2は、例えば、基準放電距離ds×係数K3(係数K3は、1よりおおきな数)に設定されてもよいし、基準放電距離ds+係数K4(係数K4は、0より大きな数)に設定されてもよい。なお、第2閾値TH2が算出される場合、当該第2閾値TH2は、記憶装置80に記憶される。
なお、上述の基準音圧(または第1閾値TH1)あるいは基準放電距離(または第2閾値TH2)が予め取得されている場合には、上述の第1ステップS1乃至第7ステップS7は、省略されてもよい。例えば、基準音圧(または第1閾値TH1)あるいは基準放電距離(または第2閾値TH2)が、数値計算あるいは実験に基づいて、予め取得されている場合には、上述の第1ステップS1乃至第7ステップS7は、省略されてもよい。
なお、上述の第1ステップS1乃至第7ステップS7は、新たな種類のスパークプラグが開発された時に、1回だけ実行されてもよい。代替的に、上述の第1ステップS1乃至第7ステップS7は、新たな種類のスパークプラグが開発された時に、複数回実行され、得られたデータ(基準音圧、基準放電距離等)の平均値等に基づいて、閾値(第1閾値、第2閾値等)が決定されてもよい。
第8ステップS8乃至第16ステップS16の各々は、スパークプラグの評価方法における工程である。第8ステップS8乃至第16ステップS16は、スパークプラグ1の評価を行う際に実行される。例えば、第1ステップS1乃至第7ステップS7が実行された後、特定のスパークプラグ1について、1回目の評価を行うために、第8ステップS8乃至第16ステップS16が実行されてもよい。その後、当該スパークスラグ1が実際に使用された後、当該スパークプラグ1について、2回目の評価を行うために、第8ステップS8乃至第16ステップS16が実行されてもよい。なお、2回目の評価の前に、第1ステップS1乃至第7ステップS7は、再度実行されなくてもよい。
第8ステップS8において、評価対象のスパークプラグ1を抽出する。評価対象のスパークプラグ1は、例えば、第1ステップS1において抽出されたスパークプラグ1と同種のスパークプラグであってもよい。代替的に、評価対象のスパークプラグ1は、第1ステップS1において抽出されたスパークプラグ1そのものであってもよい(例えば、スパークプラグ1を、使用後、あるいは、所定期間経過後に再評価する場合等が想定される。)。
第9ステップS9において、評価対象のスパークプラグ1における計測点を決定する。計測点は、電極囲い体30上の点である。第9ステップS9において決定される計測点の位置は、第2ステップS2において決定される計測点の位置と同じであってもよい。代替的に、計測位置の変更に伴う音の減衰評価が可能である場合には、第9ステップS9において決定される計測点の位置は、第2ステップS2において決定される計測点の位置と異なっていてもよい。この場合、減衰評価に基づいて、上述の第1閾値TH1または第2閾値TH2の値を補正すればよい。
第10ステップS10において、決定された計測点に、音響センサ50を取り付ける。なお、音響センサ50と、演算装置60とは、有線または無線によって、情報伝達可能に接続されている。
第11ステップS11において、音響センサ50が、評価対象のスパークプラグ1の放電音を取得する。取得された音響データは、演算装置60に送信される。
第12ステップS12において、高周波成分抽出手段(演算装置60の高周波成分抽出手段62またはハイパスフィルタ62’等)は、音響データに基づいて、放電初期における音の高周波成分を抽出する。放電初期における音の高周波成分は、図9における放電電圧波形の第1パルスに対応する成分である。放電初期における音の高周波成分の抽出方法は、任意である。例えば、音響センサ50と演算装置60との間に、ハイパスフィルタ62’を配置し、当該ハイパスフィルタ62’を用いて、音響センサ50によって取得された音響データの低周波成分をカットすることにより、放電初期における音の高周波成分を抽出してもよい。ハイパスフィルタ62’による遮断周波数の値(ベースラインである第3閾値TH3の値)は、具体的なスパークプラグの特性等に応じて、設定される。ハイパスフィルタ62’による遮断周波数の値は、例えば、第1パルスより後のパルスがカットされるような値に設定されてもよい。なお、ハイパスフィルタ62’によって実現される低周波成分カット機能は、演算装置60の高周波成分抽出手段62によって実現される低周波成分カット機能によって、代替されてもよい。なお、放電初期における音の高周波成分に関し、すべての低周波成分が除去されている必要はない。放電初期における音の高周波成分は、放電初期の放電エネルギーの大きさに対応するものであれば、低周波成分あるいはノイズ等が含まれていてもよい。
放電初期における音の高周波成分の抽出方法の他の一例において、放電初期の期間が具体的に求められてもよい。すなわち、高周波成分抽出手段(演算装置60の高周波成分抽出手段62またはハイパスフィルタ62’等)は、求められた放電初期の期間における音の高周波成分を抽出してもよい。なお、放電初期は、放電開始から所定時間Tsを経過するまでの期間であってもよい。放電開始の時点は、例えば、放電電圧が閾値を超えた時点に設定されてもよいし、放電音の音圧が閾値を超えた時点に設定されてもよい。代替的に、あるいは、付加的に、所定時間Tsは、例えば、図9における放電電圧波形の第1パルスが含まれるように設定されてもよい。音の高周波成分は、例えば、音の周波数が第3閾値以上である成分である。すなわち、高周波成分抽出手段(演算装置60の高周波成分抽出手段62またはハイパスフィルタ62’等)は、音響データから、音の周波数が第3閾値未満である成分を除外することにより、音の高周波成分を抽出してもよい。
第13ステップS13において、演算装置60は、抽出された音の高周波成分に基づいて、音の高周波成分の音圧(放電初期における音の高周波成分の音圧)を算出する。例えば、演算装置60は、各周波数の音の音圧を加算することにより、放電初期における音の高周波成分の音圧を算出してもよい。算出された音圧は、評価対象音圧Apeとして、記憶装置80に記憶されてもよい。
第14ステップS14において、演算装置60(放電距離算出手段64)は、放電初期における音の高周波成分の音圧に基づいて、放電距離dを算出する。放電距離dの算出は、上述の式(7)に基づいて行われてもよいし、上述の式(8)に基づいて行われてもよい。算出された放電距離dは、評価対象放電距離deとして、記憶装置80に記憶されてもよい。
第15ステップS15において、演算装置60(判定手段66)は、評価対象音圧Apeが第1閾値TH1以上であるとき、放電は、第1形態の異常放電であると判定する。また、演算装置60(判定手段66)は、評価対象音圧Apeが第1閾値未満であるとき、放電は、第1形態の異常放電でないと判定する。なお、評価対象音圧Apeと第1閾値TH1とに基づいて、第1形態の異常放電の有無を判定する場合には、上述の第7ステップS7および第14ステップS14は、省略されてもよい。
代替的に、第15ステップS15において、演算装置60(判定手段66)は、評価対象放電距離deが第2閾値TH2以上であるとき、放電は、第1形態の異常放電であると判定する。また、演算装置60(判定手段66)は、評価対象放電距離deが第2閾値未満であるとき、放電は、第1形態の異常放電でないと判定する。判定の結果は、出力装置70に送信される。
第16ステップS16において、出力装置70は、判定結果(例えば、放電が、第1形態の異常放電であるか否か)を表示する。代替的に、あるいは、付加的に、評価対象放電距離de(第14ステップにおいて算出された放電距離)そのものが、出力装置70に送信され、出力装置70が、当該評価対象放電距離deを表示してもよい。評価対象放電距離deが表示される場合、ユーザーは、当該評価対象放電距離deに基づいて、異常放電が起こった場所を推定することができる。
第1の実施形態では、放電初期における音の高周波成分の音圧(放電初期音圧)に基づいて、第1形態の異常放電の有無を判定する。このため、第1の実施形態では、スパークプラグの評価を、より正確に実施することが可能である。また、第1の実施形態では、現在目視確認により実施しているスパークプラグの評価を、電極囲い体の外での音響計測によって代替的に実施することが可能となる。このため、スパークプラグの形状の単純化、スパークプラグの重量の軽減、スパークプラグの製造コストの低減、および、スパークプラグの信頼性の向上が実現される。
(第2の実施形態)
図3乃至図15Bを参照して、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態で説明した構成を全て含む。加えて、第2の実施形態では、第1形態の異常放電の検出に加え、第2形態の異常放電の検出が可能である。なお、第2実施形態のスパークプラグの評価装置において、第1の実施形態のスパークプラグの評価装置の構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ図番を付与し、繰り返しの説明を省略する。
図12を参照して、第2形態の異常放電について説明する。第2形態の異常放電は、電極囲い体30の外部で放電が発生する場合に対応する異常放電である。図12に記載の例では、電極囲い体30の外部である昇圧回路32において、異常放電が発生している。電極囲い体30の外部で放電が発生する場合、点火のためのエネルギー付与等のスパークプラグの機能が発揮できない可能性がある。第2形態の異常放電が発生する場合、正常放電が発生する場合と比較して、放電音の発生位置から音響センサ50までの距離が変化する。また、第2形態の異常放電が発生する場合、電極囲い体30の材質と、電極囲い体30以外の部材(例えば、昇圧回路)の材質とが異なることに起因して、検出される放電音の音圧が低下する。第2の実施形態では、これらの現象を考慮して、第2形態の異常放電を検出する。
図13を参照して、ノミナル位置L1(設計上の放電位置L1)と音響センサ50との間の距離をD1、ノミナル位置とは異なる位置L2と音響センサとの間の距離をD2、ノミナル位置L1で発生した放電音の音響センサ50による計測音圧をAp1、位置L2で発生する放電音の音圧予測値(音響センサ50により検出される音の音圧予測値)をAp2と定義すると、音圧予測値Ap2は、距離D1、距離D2、計測音圧Ap1を用いて、下記式(9)のように表される。
Figure 0006570439
式(9)に関し、正常なスパークプラグにおいて、音響センサ50によって検出される音の音圧(計測音圧Ap1)、および、ノミナル位置L1と音響センサ50との間の距離D1を予め求めておく。そうすると、評価対象のスパークプラグに関し、音響センサ50によって検出される音の音圧(Ap2)に基づいて、現実の放電位置L2と音響センサ50との間の距離D2を算出することが可能である。
音響センサ50は、ノミナル位置L1の近傍に配置される。したがって、評価対象のスパークプラグについての音圧Ap2の低下は、現実の放電位置L2と音響センサ50との間の距離D2の増加を意味する。よって、評価対象のスパークプラグについての音圧Ap2が、第4閾値TH4以下である時、演算装置60は、第2形態の異常放電が発生していると判定することが可能である。なお、第4閾値TH4は、スパークプラグの特性に応じて設定すればよい。図14は、第2形態の異常放電の発生により、放電音の音圧が低下している様子を示すグラフである。図14の左側のグラフは、正常放電時の放電音の生データを示し、図14の右側のグラフは、第2形態の異常放電の発生時の放電音の生データを示す。図14から、第2形態の異常放電の発生時には、正常放電の発生時と比較して、音圧が約10dB低下していることが把握される。
図13に記載の例では、部材34の材質と、部材34’の材質とが異なる。放電音の発生位置L3と音響センサ50の設置位置との間において、部材の材質が変化すると、材質が変化している位置で、音の反射あるいは音の減衰が誘起される。一般に、材質が変化している位置を通過する音の透過率Tは、下記式(10)で表される。
Figure 0006570439
ここで、ρ1は、部材34’の密度、ρ2は、部材34の密度、c1は、部材34’の材料中での音速、c2は、部材34の材料中での音速である。
式(10)から、材質の変化により、音圧の低下が誘起されることが把握される。よって、上述の第4閾値TH4の設定に際しては、材質の変化を考慮して第4閾値TH4を設定するとよい。すなわち、材質の変化を考慮して第4閾値TH4を設定すれば、材質が変化する部位が存在する場合であっても、第2形態の異常放電の発生を判定することが可能となる。すなわち、演算装置60(判定手段66)は、評価対象スパークプラグについての音圧Ap2が、第4閾値TH4以下である時、第2形態の異常放電が発生していると判定することが可能となる。
(スパークプラグの評価方法)
図15Aおよび図15Bを参照して、第2の実施形態におけるスパークプラグの評価方法について説明する。図15Aは、基準値(基準音圧または第1閾値、基準放電距離または第2閾値等)の算出方法を示すフローチャートである。図15Bは、スパークプラグの評価方法を示すフローチャートである。
第2の実施形態におけるスパークプラグの評価方法に関し、第1ステップS1乃至第15ステップS15は、第1の実施形態における第1ステップS1乃至第15ステップS15を含む。よって、第1ステップS1乃至第15ステップS15に関し、第1の実施形態にて既に説明されている内容について、繰り返しとなる説明は省略する。
第2の実施形態では、第6ステップS6において、付加的に、演算装置60は、音響データに基づいて、正常なスパークプラグの放電音の音圧を算出する。算出された音圧は、第2基準音圧Aps2として、記憶装置80に記憶されてもよい。なお、第2基準音圧Aps2として、上述の基準音圧Aps(放電初期の音の高周波成分の音圧)を採用してもよい。代替的に、第2基準音圧Aps2として、放電音全体の音圧を採用してもよい。演算装置60は、第2基準音圧Aps2に基づいて、上述の第4閾値TH4を算出してもよい。第4閾値TH4は、例えば、第2基準音圧Aps2×係数K5(係数K5は、1より小さな数)に設定されてもよいし、第2基準音圧Aps2+係数K6(係数K6は、0より小さな数)に設定されてもよい。なお、第4閾値TH4が算出される場合、当該第4閾値は、記憶装置80に記憶される。第4閾値TH4は、スパークプラグの特性(例えば、電極囲い体30のサイズ、電極囲い体30の材質、電極囲い体以外の部材の材質等)を考慮して決定される。
また、第2の実施形態では、第13ステップS13において、付加的に、演算装置60は、演算装置60は、音響データに基づいて、評価対象のスパークプラグの放電音の音圧を算出する。算出された音圧は、第2の評価対象音圧Ape2として、記憶装置80に記憶されてもよい。なお、第2の評価対象音圧Ape2として、上述の評価対象音圧Apeをそのまま用いてもよい。代替的に、第2の評価対象音圧Ape2として、評価対象のスパークプラグの放電音全体の音圧を用いてもよい。
さらに、第2の実施形態では、第15ステップS15において、付加的に、演算装置60(判定手段66)は、第2の評価対象音圧Ape2が第4閾値TH4以下であるとき、放電は、第2形態の異常放電であると判定する。また、演算装置60(判定手段66)は、第2の評価対象音圧Ape2が第4閾値TH4より大きいとき、放電は、第2形態の異常放電でないと判定する。
また、第2の実施形態では、第16ステップS16において、出力装置70は、判定の結果(例えば、放電が、第2形態の異常放電であるか否か)を表示する。代替的に、あるいは、付加的に、出力装置70は、現実の放電位置L2と、音響センサ50との間の距離D2を表示してもよい。距離D2を表示する場合、距離D2の算出は、上述の式(9)(あるいは、上述の式(9)および式(10))を用いて、演算装置60によって行われる。算出された距離D2を示すデータは、演算装置60から出力装置70に送信される。距離D2が表示される場合、ユーザーは、当該距離D2に基づいて、異常放電が起こった場所を推定することができる。
第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。加えて、第2の実施形態では、放電音の音圧に基づいて、第2形態の異常放電の有無を判定する。このため、第2の実施形態では、第1形態の異常放電の発生と、第2形態の異常放電の発生とを区別することが可能である。よって、異常放電の種類に応じた、対策の選択が可能となる。
(第3の実施形態)
図3乃至図15を参照して、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、第1の実施形態または第2の実施形態で説明した構成を全て含む。加えて、第3の実施形態では、第1形態の異常放電の検出(あるいは、第1形態の異常放電の検出、および、第2形態の異常放電の検出)に加え、第3形態の異常放電の検出が可能である。なお、第3の実施形態のスパークプラグの評価装置において、第1の実施形態または第2の実施形態のスパークプラグの評価装置の構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ図番を付与し、繰り返しの説明を省略する。
第3形態の異常放電は、本来放電が発生しないはずの意図せぬタイミングで放電が発生する異常放電、あるいは、本来放電が発生すべきタイミングで放電が発生しない異常放電である。正常なスパークプラグでは、昇圧回路32に対する昇圧指令等のスパークプラグ作動トリガーの発生から、実際に放電が発生するまでの時間は、所定の閾値(第5閾値TH5)以上、所定の閾値(第6閾値TH6)以下である。これに対し、スパークプラグ作動トリガーの発生から、実際に放電が発生するまでの時間が、第5閾値TH5よりも小さい時、あるいは、第6閾値TH6よりも大きい時、放電が適切なタイミングで発生しているとは言えない。よって、演算装置60(判定手段66)は、スパークプラグ作動トリガーの発生から、実際に放電が発生するまでの時間が、第5閾値TH5よりも小さい時、あるいは、第6閾値TH6よりも大きい時、放電は、第3形態の異常放電であると判定する。なお、演算装置60は、例えば、スパークプラグ作動トリガーの発生の時刻(タイミング)と、音響データから算出される放電発生時刻(タイミング)とに基づいて、スパークプラグ作動トリガーの発生から、実際に放電が発生するまでの時間を算出することが可能である。
第3の実施形態は、第1の実施形態または第2の実施形態と同様の効果を奏する。加えて、第3の実施形態では、放電タイミングに基づいて、第3形態の異常放電の有無を判定する。このため、第3の実施形態では、第1形態の異常放電の発生と、第3形態の異常放電の発生とを区別することが可能である。よって、異常放電の種類に応じた、対策の選択が可能となる。
なお、実施形態におけるスパークプラグの評価装置、および、スパークプラグの評価方法は、液体ロケットエンジンのスパークプラグの評価、あるいは、自動車のスパークプラグの評価、その他のスパークプラグの評価に用いることが可能である。図16に、液体ロケットエンジンのスパークプラグ1の一例を示す。図16に示されるように、電極囲い体30の内部には、燃料が導入されてもよい。
本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。また、各実施形態で用いられる種々の技術は、技術的矛盾が生じない限り、他の実施形態にも適用可能である。
1 :スパークプラグ
10 :第1電極
10A :電子放出位置
11 :堆積物
20 :第2電極
20A :電子受取位置
30 :電極囲い体
32 :昇圧回路
34 :部材
34' :部材
35 :点検孔
42 :光センサ
44 :オゾンセンサ
50 :音響センサ
60 :演算装置
62 :高周波成分抽出手段
62’ :ハイパスフィルタ
64 :放電距離算出手段
66 :判定手段
70 :出力装置
80 :記憶装置
100 :評価装置

Claims (7)

  1. スパークプラグの電極囲い体に取り付けられる音響センサと、
    演算装置と、
    出力装置と
    を具備し、
    前記演算装置は、前記音響センサから音響データを受け取り、
    前記演算装置は、前記音響データに基づいて、放電初期における音の高周波成分の音圧である放電初期音圧を算出し、
    前記演算装置は、算出された前記放電初期音圧あるいは前記放電初期音圧から導出される放電距離が、閾値以上である時、前記スパークプラグの放電が、第1形態の異常放電であると判定し、
    前記演算装置は、判定結果を、前記出力装置に送信する
    スパークプラグの評価装置。
  2. 前記演算装置は、前記放電初期音圧と前記放電距離との関係に基づいて、前記放電初期音圧から前記放電距離を導出し、導出された前記放電距離が前記閾値以上である時、前記放電が、第1形態の異常放電であると判定する
    請求項1に記載のスパークプラグの評価装置。
  3. 前記出力装置は、前記放電距離を表示する
    請求項1または2に記載のスパークプラグの評価装置。
  4. 前記演算装置は、正常なスパークプラグの放電初期における音の高周波成分の音圧、あるいは、正常なスパークプラグの放電距離に基づいて、前記閾値を算出する
    請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスパークプラグの評価装置。
  5. 前記演算装置は、算出された前記放電初期音圧あるいは前記放電距離が、前記閾値以上である時、前記放電は、前記電極囲い体の内部での異常放電であると判定し、
    前記演算装置は、前記音響データに対応する音圧が、前記閾値とは異なる第4閾値以下である時、前記放電は、前記電極囲い体の外部での異常放電であると判定する
    請求項1乃至4のいずれか一項に記載のスパークプラグの評価装置。
  6. 前記演算装置は、スパークプラグ作動トリガーの発生から、実際に放電が発生するまでの時間が、第5閾値よりも小さい時、あるいは、第6閾値よりも大きい時、放電タイミングが異常であると判定する
    請求項1乃至5のいずれか一項に記載のスパークプラグの評価装置。
  7. スパークプラグに音響センサを取り付ける工程と、
    前記音響センサから演算装置に音響データを送信する工程と、
    前記演算装置が、前記音響データに基づいて、放電初期における音の高周波成分の音圧である放電初期音圧を算出する工程と、
    前記演算装置が、算出された前記放電初期音圧あるいは前記放電初期音圧から導出される放電距離に基づいて、前記スパークプラグの放電が、第1形態の異常放電であるか否かを判定する工程と、
    前記演算装置から出力装置に、判定結果を送信する工程と、
    前記出力装置が、前記判定結果を表示する工程と
    を具備する
    スパークプラグの評価方法。
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