JP6568061B2 - 改変藻類株及び同株を用いるトリアシルグリセロール蓄積の方法 - Google Patents

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Description

本発明は、タンパク質CGI−58又はそのホモログの1つの活性が、油、有利にはトリアシルグリセロールの蓄積を可能にするために改変されている改変藻類株に関する。
より正確に言えば、本発明の好ましい実施形態の1つでは、CGI−58遺伝子又はそのホモログ遺伝子の発現がサイレンシング又は減衰されている。さらに本発明は、前記改変株を用いるトリアシルグリセロール蓄積の方法に関する。
珪藻は、海洋、淡水、及び多様な土壌生息地の植物プランクトン生物多様性の主要な門である。珪藻は最大で地球上の一次生産力の25%を担っている。真核生物のこのグループは、集中的な取り組みがゲノムシーケンシングに向けられ、トランスクリプトーム及び全細胞プロテオーム研究のための参照データを規定し、最終的には機能分析を迅速化する分子ツールを開発してきた2つの種、すなわち羽状珪藻のモデルのフェオダクチラム・トリコルヌタム及び海産中心型珪藻のモデルのタラシオシラ・シュードナナにおける近年の進歩の恩恵を受けてきた。よって分子ツールにより、得られた遺伝子組み換え株の遺伝子ノックダウン技術(RNAi)及び機能の特徴付けによるタンパク質の役割の解読が可能になる。羽状及び中心型珪藻の両方に対してモデルが利用可能であることは、これらの2つのグループの共通の特徴又は特有の特徴を扱うのに欠かせない。
他の微細藻類と同様に、珪藻はニュートラルなC02バランスを有する利点をもち、C02と水が光合成によってバイオマスに効率的に変換でき、炭素代謝を制御して、その結果珪藻はエネルギー的に豊富なトリアシルグリセロール(TAG、油(oil)とも呼ばれる)を蓄積しうるとういう仮説に基づいて、化石燃料に替わる妥当な代替的な炭化水素源とみなされている。P.トリコルヌタムを含むクロムアルベオラータ上門の種々の植物プランクトン生物は、工業的過程での実行に有望な初期収量並びに適切な構造安定性及び物理的性質をもち、TAGを蓄積する能力が注目されてきた。現在のところ、P.トリコルヌタムはオメガ−3 ポリ不飽和脂肪酸の工業生産に使用されているが、バイオ燃料のための工業的な実行は、TAG蓄積が窒素飢餓などの従来の栄養分飢餓方法を用いて引き起こされる場合、増殖遅延及びバイオマスの低収量によって制限されたままである。P.トリコルヌタムは、珪素の不在化で増殖する能力又は採集技法に役立ちうる細胞の沈殿などの工業的な実行にとって興味深い性質を示す。したがって、遺伝子組み換え及び養殖性能(farming performances)の進歩が、バイオ燃料への適用に必要である。TAG蓄積を促進する試みは、脂肪酸及びTAG生合成の刺激、炭素を代替的な代謝経路に転じる経路の遮断、及び最終的にはTAG異化の停止を含む、組み合せ可能なさまざまな方法に依存できる。
油滴に結合し、エネルギー、膜生合成、又はシグナリングに使われるTAGの保存又は放出を制御するタンパク質が多くある。CGI−58(comparative gene identification 58)は元来α/βヒドロラーゼ型タンパク質であり、哺乳類においてTAG加水分解に関与するこれらの脂質滴タンパク質の1つである。マウスでは、CGI−58ノックダウンは肝細胞の4倍の増加を誘発した。CGI−58ホモログは被子植物に存在し、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)でのそのホモログのノックダウンは、通常は脂質を貯えない葉組織での油滴の蓄積につながった。哺乳類では、CGI−58の活性はペリリピンと呼ばれるタンパク質によって調節される。このタンパク質ホモログは被子植物では同定されていない。シロイヌナズナ属では、CGI−58がペルオキシソームの表面で脂肪酸トランスポーターPXA1と相互作用してペルオキシソームのβ−酸化異化経路に補給することが示された。よって、CGI−58は、油滴の表面に局在し、動物から植物までさまざまなタンパク質パートナー(protein partners)と相互作用し、TAG異化に関与するタンパク質として現れる。したがって、CGI−58の作用は、種によって異なるタンパク質パートナー(例えば、哺乳類でのペリリピンや被子植物でのPXA1)とともにさまざまな生物のさまざまな機構によって起こる。珪藻の潜在的なタンパク質パートナーは明らかにされていない。
本発明は、タンパク質CGI−58又はそのホモログの1つの活性は、油の蓄積、有利にはトリアシルグリセロールの蓄積を可能にするために改変されている改変原生生物株に関する。
本明細書本文では、「改変された」とは、CGI−58タンパク質活性を活性化又は減少させるために、究極的には完全に阻害するために藻類株に手を加えることを意味する。好ましくは、本発明によれば、CGI−58タンパク質の活性は減少又は完全に阻害される。
タンパク質の発現を変化させるのに多くの技法が知られている。例えば、変異、挿入、削除、RNAi阻害によるタンパク質をコードする遺伝子又はその発現を変化させる技法を挙げることができる。これらの種類の技法は「遺伝子組み換え」という用語の下に分類できる。
また、遺伝子の転写又は遺伝子の転写物に由来するRNAの翻訳を変化させる技法も挙げることができる。
また、タンパク質の活性を、例えば、タンパク質に結合することによって変化させることになる化学化合物又は生体化合物(例えば抗体)などの少なくとも化合物を使用する技法も挙げることができる。
本発明によれば、CGI−58タンパク質の活性を改変することを可能にする全ての公知の方法が使用できる。
本発明によれば、好ましい方法の1つは、少なくともその発現を減衰するために、好ましくは発現をサイレンシングするためにCGI−58遺伝子又はそのホモログ遺伝子の発現を遺伝学的に改変することである。
好ましくは、原生生物又は原生生物株はクロムアルベオラータ界に属する。
すなわち、本発明は、CGI−58タンパク質又はそのホモログの1つが、株中の油の蓄積、有利にはトリアシルグリセロールの蓄積を可能にするために改変されているクロムアルベオラータ界に属する種の改変株に関する。本発明によれば、前記タンパク質の活性は弱められ、少なくとも減らされ、優先的には消滅させられる。
本発明の1つの実施形態では、CGI−58遺伝子又はそのいずれのホモログ遺伝子の発現は減衰又はサイレンシングされる(例えば、ノックダウンによる)。
遺伝子がサイレンシングされた場合、遺伝子発現もCGI−58タンパク質合成もない。
遺伝子が減衰された場合、遺伝子の発現及びCGI−58タンパク質の合成は、少なくとも50%、好ましくは、少なくとも70%、より好ましくは、少なくとも90%減少する。
より好ましくは、改変株はそれぞれ、珪藻又は珪藻株、さらにより好ましくは、羽状珪藻又は羽状珪藻株である。
有利には、羽状珪藻又は羽状珪藻株は、フェオダクチラム属、より好ましくは、フェオダクチラム・トリコルヌタム株である。
フェオダクチラム・トリコルヌタム株の例は、フェオダクチラム・トリコルヌタム(Pt1)Bohlin株8.6CCMP2561(海洋植物プランクトンカルチャーコレクション(Culture Collection of Marine Phytoplankton)、現在ではNCMA:国立海洋藻類及びミクロビオームセンター(National Center for Marine Algae and Microbiota)として知られる)である。
本明細書で使用される場合、「相同配列」は、トリアシルグリセロール(TAG)異化に関与し、CGI−58配列と類似性又は同一性、好ましくは同一性をもつ配列を指す。相同性は当該技術分野において公知である標準的な技術を用いて決定できる。
ホモサピエンスCGI−58配列に関して「%同一性」は、配列をアライメントし、必要ならば、最大の%割合配列同一性を達成するためにギャップを導入した後、配列同一性の一部としていずれの保存的置換を考慮することなく、CGI−58配列のアミノ酸残基と同一である候補配列のアミノ酸残基の%割合として本明細書では定義される。本明細書で使われる%同一性値はEMBOSS(6.3.1)(The European Molecular Biology Open Software Suite (2000) Rice, P. Longden.l. and Bleasby, A. Trends in Genetics 16, (6) pp276-277)によって作られる。
ホモサピエンスCGI−58配列に関して「%類似性」は、ホモサピエンスCGI−58配列のアミノ酸残基と比較して、配列をアライメントし、必要ならば、最大の%割合配列類似性を達成するためにギャップを導入した後に保存されている候補配列のアミノ酸残基の%割合として本明細書では定義される。よって「%類似性」は、保存的置換(conserved substitution)(すなわち:グルタミン酸に対するアスパラギン酸)の%割合を加えた「%同一性」である。本明細書で使われる%類似性値はEMBOSS(6.3.1)によって作られる。
好ましくは、CGI−58のホモログ遺伝子は、ホモサピエンスCGI−58配列と少なくとも15%の類似性、少なくとも20%の類似性、より好ましくは、少なくとも25%の類似性、及びさらにより好ましくは、少なくとも30%の類似性を示す。
好ましくは、CGI−58のホモログ遺伝子は、ホモサピエンスCGI−58配列と少なくとも15%の同一性、より好ましくは、少なくとも20%の同一性を示す。
一例として、ホモサピエンスCGI−58遺伝子及びその種々のホモログ遺伝子に関する以下のデータを挙げることができる。
−ホモサピエンス(CAD2731)/シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(ABM06019):同一性26.8%、類似性41.5%
−ホモサピエンス(CAD12731)/フェオダクチラム・トリコルヌタム(XP_002183583):同一性21.6%、類似性32.2%
−ホモサピエンス(CAD12731)/タラシオシラ・シュードナナ(XP_002294083)不完全配列:同一性19.3%、類似性32.1%
−シロイヌナズナ(ABM06019)/フェオダクチラム・トリコルヌタム(XP_002183583):同一性26%、類似性42.6%
−シロイヌナズナ(ABM06019)/タラシオシラ・シュードナナ(XP_002294083)不完全配列:同一性20%、類似性29.1%
−フェオダクチラム・トリコルヌタム(XP_002183583)/タラシオシラ・シュードナナ(XP_002294083)不完全配列:同一性30.9%、類似性41.2%
代替的に、類似性を評価するための参照CGI−58配列は上記フェオダクチラム・トリコルヌタム配列であることができる。
本発明に係る改変株は、対応する野生型株のトリアシルグリセロール含有量の少なくとも1.5倍、好ましくは4倍を蓄積又は含有できる。
「対応する野生型株」は、CGI−58タンパク質活性、好ましくは、CGI−58遺伝子又はそのいずれのホモログ遺伝子の発現をサイレンシング又は減衰させることを目的とする改変前の株(すなわち非形質転換生物又は非形質転換株)を意味する。
実際に、発明者らはサイレンシング構築物をもつ原生生物が、より多くの油(>1.5倍の増加)を含有することを示した。特に、本発明は4倍の増加に達することを可能にする。くわえて、発明者らはまた以下も示した:
−サイレンシング構築物をもつ原生生物は、窒素含有成長培地(ESAWなど)(「窒素強化培地」とも呼ばれる、0.05g/Lの硝酸ナトリウム、NaNO3又は0.034g/LのN元素など)又は窒素枯渇培地(窒素無添加)中で、野生型の非形質転換細胞と比べて多くの油を含有する;
−サイレンシング構築物をもつ原生生物は野生型の非形質転換細胞と比べて多くの油を含有する;
−サイレンシング構築物をもつ原生生物は野生型の非形質転換細胞と比べて早く油を蓄積する;
−油の蓄積は増殖の初期対数期に起こる;
−油の蓄積は増殖の遅延と相関しない。
さらに本発明は、CGI−58遺伝子又はそのいずれのホモログ遺伝子の発現を標的とするように設計されたRNAi構築物を発現するベクターで生物を形質転換することを含む、本発明に係る遺伝子組み換え生物又は株の調製方法を開示する。
有利には、ベクターは、微粒子銃方法(粒子銃(particle bombardment))又はエレクトロポーレーションによって生物に導入される。
形質転換後、CGI−58遺伝子又はそのいずれのホモログ遺伝子の発現が減衰又はサイレンシングされる生物が選択され、培養される。
さらに本発明は、クロムアルベオラータ界に属する生物中のCGI−58遺伝子又はそのいずれのホモログ遺伝子の発現をサイレンシングする工程を含む前記生物のトリアシルグリセロール蓄積方法を開示する。
有利には、前記蓄積方法では、生物は窒素含有培地又は代替的に窒素枯渇培地で培養される。
培養培地中で1日(好ましくは3日)後、遺伝子組み換え生物を集め、トリアシルグリセロールを回収する。
さらに本発明は、トリアシルグリセロールの生成のための本発明に係る遺伝子組み換え生物又は株の使用を包含する。
本発明のさらなる詳細及び特異性が以下の例及び図で明らかになるであろう。
図1は、本発明で用いたフェオダクチラム・トリコルヌタムCGI−58のサイレンシング方法を記載する。図1Aは形質転換に用いたhla−CGI−58構築物の略図を示す。 図1BはCGI−58アンチセンス配列をもつベクターの完全配列を示す。 図2は、フェオダクチラムの遺伝子形質転換のポリメラーゼ連鎖反応検証の概略図を記載する。矢印は実験で用いたPCRプライマーを表わす。増幅された断片(1800pb及び700pb)が、形質転換した細胞でのみ観察され、形質導入しなかった細胞で見られない。 pH4:H4プロモーター; AS:CGI−58に対応するアンチセンス断片; Ter:ターミネーター配列 図3は、ナイルレッド特異的蛍光強度に基づく、CGI−58アンチセンス構築物で形質転換したフェオダクチラム・トリコルヌタムのスクリーニングを記載する。1_1、1_10:「CGI−58サイレンシング用の遺伝子構築」に従って得られたCGI−58アンチセンス発現ベクターでP.トリコルヌタム野生型株を形質転換した後、本発明に従って得られたCGI−58アンチセンス発現株。 WT:P.トリコルヌタム野生型 (+N):窒素富強培養培地 (−N):窒素欠乏培養培地 図4:CGI−58アンチセンス構築物を用いて形質転換したフェオダクチラム・トリコルヌタムの増殖及び油体の蓄積 図4A経時的な増殖曲線及び油蓄積増殖の間に油を測定した。P.トリコルヌタム野生型(WT)(−◆−)を用いて得られた結果と比較したCGI−58アンチセンスを含有するP.トリコルヌタムについて得られた結果が(−■−)である。 図4Bナイルレッドプローブを用いた油蓄積の顕微観察
実施例1:CGI−58遺伝子発現をサイレンシングすることによるP.トリコルヌタムの形質転換及び油の蓄積
1.材料及び方法
フェオダクチラム・トリコルヌタム株及び増殖条件
フェオダクチラム・トリコルヌタム(Pt1)Bohlin株8.6CCMP2561(海洋植物プランクトンカルチャーコレクション、現在ではNCMA:国立海洋藻類及びミクロビオームセンターとして知られる)を全ての実験で使用した(Berges JA et al., 2001, J Phycol 37: 1138-1 145)。Pt1は強化人工海水(ESAW)培地を用いて20℃にて250mLフラスコで育てた。細胞は12:12光(450μE-1-1)/暗サイクルで培養した。前培養の1/5を用いて新鮮培地に播種することによって細胞を毎週継代培養した。窒素欠乏N(−)培地は窒素源を含有しなかった。窒素豊富N(+)培地は0.05g/L NaNO3を含有した。
CGI−58サイレンシング用の遺伝子構築
フェオダクチラム・トリコルヌタムPt1株からゲノムDNAを以下の手順で抽出した:100mgの新鮮なPt細胞を液体窒素中で急速に冷凍し、400μlの抽出バッファー(200mM トリスHCl、pH7.5;250mM NaCl;25mM EDTA;0.5%重量/体積 SDS)中でホモジナイゼーションした。10,000×gで5分間遠心分離した後、上澄みを同量のイソプロパノールに移してDNAを沈殿させた。10,000×gでさらに15分間遠心分離した後、ペレットを70%エタノールで洗浄し、乾燥して水に溶かした。DNA濃度を、ナノドロップ2000分光光度計(サーモサイエンティフィック社)を用いて測定し、DNAの質をアガロースゲルでの電気泳動でチェックした。ゲノムDNAを基材(matrix)として用いて、XM002183547(Pt CGI.58ホモログ)から設計した、EcoRI及びXbal制限酵素切断部位(下線配列)をそれぞれもつ以下のプライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって436pbの配列を増幅した:Pt.CGI−58.AS.F TCGAATTCTTGCAGGGTCGTCTGATGTA、Pt.CGI−58.AS.R CTAGATCTAGATGGCCCGACTTACTCACT。PCRは、Phusionハイフィデリティーポリメラーゼ(サーモサイエンティフィック社)を用いてS1000(商標)サーマルサイクラー(バイオ・ラッド・ラボラトリー社)で製造業者の取扱説明書に従って行なった。PCR産物をEcoRI及びXbaIで切り、精製し、線形化した発現ベクターにクローニングした。
サイレンシングのために用いた発現ベクターは、アンチセンスベクターhla(De Riso及び共同研究者の初版(princeps)文献での名称:「h」はプロモーターH4を、「I」「このプロモーターの長い断片」を、「a」は以前に開発されたアンチセンスを表わす(De Riso Vet al, 2009, Nucleic Acids Res 37:e96))から作れら、β−グルクロニダーゼ(GUS)リポーター配列をもつ。
GUSの250pb断片をEcoRI及びXbaIを用いてhlaから切り取った。次に、切断して線形にしたhlaベクターと436pbのCGI−38アンチセンス断片のライゲーション混合物をDH5a大腸菌に形質転換した。陽性コロニーをPCRで特定し、続いて産物をシーケンスした。
形質転換の第1の方法:微粒子銃形質転換
1,550psi(約10,687,250パスカル)ラプチャーディスクを備え付けた微粒子銃PDS−1000/ヘリウムパーティクルデリバリーシステム(バイオ・ラッド、ハーキュリーズ、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)を用いて微粒子銃(micro-particle bombardment)で以前に記載の通り(Falciatore A et al., 1999, Mar Biotechnol (NY) 1:239-251)、ベクターをP.トリコルヌタムに導入した。タングステン粒子(M−17)をPvuIIで予め線形化した1μgのプラスミドDNAでCaCl2及びスペルミジンの存在下で被覆した。粒子を当てる1時間前に、約5.107細胞を、20mlの固形培養培地(ESAW培地、寒天1%)の入ったプレートの中央に播いた。粒子を当てるためにプレートを微粒子銃チャンバー内の二段目に置いた。次に、粒子を当てた細胞を48時間回復させた後、1mLのESAW培地に懸濁した。500μlのこの懸濁液を75μg/mLのゼオシンを含有する固形培地に播いた。20℃にて白色光で2〜4週間インキュベーションした後(175pmol m-2.s-1;12時間光周期)、個々の耐性コロニーを集め、75μg.mL-1のゼオシンを補充した新鮮なESAW寒天プレートにストリークし、さらなる分析のために液体ESAW培地に播いた。フェオダクチラム・トリコルヌタム中のトランスジーンの存在は、最終的に耐性コロニーのゲノムDNAを用いるPCR増幅によって確認した。
形質導入の第2の方法:エレクトロポーレーション
Miyahara et al (2013) Biosci. Biotechnol. Biochem, 77: 120936-1-3に記載の方法に従って、多重パルスを用いたエレクトロポーレーションによってベクトルをP.トリコルヌタムに導入した。多重パルスを用いる他のエレクトロポーレーション方法を用いることができる。
油滴のナイルレッド染色
以前に記載されたように(Cooksey KE et al, 1987, J. Microbiol. Meth. 6:333-345)、ナイルレッド(シグマアルドリッチ)蛍光染色(485nmの励起波長;525nmの蛍光)で油滴の蓄積をモニターした。手短に説明すると、細胞を希釈し、ナイルレッド蛍光と線形的に相関する細胞密度に調整した。ナイルレッド溶液(40μlの100%DMSO中2.5μg/mLの原液濃度)を160μlの細胞懸濁液に加えた。ナイルレッド蛍光強度を細胞の数で割ることによって特異的蛍光を決定した。次に、ナイルレッドで染色された油体を、ツァイスAxioScope.A1顕微鏡(FITCフィルター;488nmの励起波長;519nmの蛍光)を用いて可視化した。
トリアシルグリセロール(TAG)抽出、薄層クロマトグラフィーによる分離、定量、及び分析
脂質分解を防ぐためにDomergue F et al., 2003, Plant Physiol 131: 1648-1660に従って200mgの凍結乾燥したフェオダクチラム・トリコルヌタム細胞からトリアシルグリセロールを抽出した。手短に説明すると、細胞を採取直後に液体窒素中で凍らせた。凍結乾燥した細胞ペレットを4mLの沸騰エタノールで5分間再懸濁し、その後2mLのメタノール及び8mLのクロロホルムを室温で加えた。次に、混合物をアルゴンで飽和し、室温で1時間撹拌した。グラスウールを通して濾過した後、3mLの2:1(体積/体積)のクロロホルム/メタノールで残った細胞を洗った。二相形成を起こすために、次に5mLの1%NaClを濾過液に加えた。クロロホルム相をアルゴン下で乾燥した後、純クロロホルムに脂質抽出物を再溶解した。TAGを単離するために、脂質をヘキサン:ジエチルエーテル:酢酸(70:30:1、体積/体積)を用いてシリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)プレート(メルク)にかけた。次に、メタノール中2%での8−アニリノ−1−ナフタレンスルホン酸の粉砕後、脂質をUV下で可視化した。次にさらなる分析のために、それら脂質をTLCプレートから削り落とした。TAGのアシルプロフィリング及び定量のために、脂肪酸をメタノール中の3mLの2.5%H2SO4を用いて100℃で1時間メチル化した(21:0の標準量を含む)。3mLの水及び3mLのヘキサンを加えることによって反応を止めた。ヘキサン相をBPX70(SGE)カラムでガス液体クロマトグラフィー(パーキンエルマー)によって分析した。その保持時間を標準の保持時間と比較することによってメチル化脂肪酸を特定し、校正用の21:0を用いて表面ピーク法(surface peak method)によって定量した。抽出及び定量は少なくとも3回行なった。
2.結果
CGI−38アンチセンス構築物を発現するフェオダクチラム・トリコルヌタムの作製
従来のBlastP類似検索によって、ただ1つのCGI−58ホモログの単一遺伝子コーディング(ジェンバンクXM_002183547;Phatrdraft54974)がP.トリコルヌタムゲノムで予測された(Altschul SF et al., 1990, Journal of Molecular Biology 215:403-410)。Phatrdraft54974サイレンシングを働かすために、発現がH4プロモーターの制御下にあるベクターを構築した(De Riso Vet al, 2009, Nucleic Acids Res 37:e96)。サイレンシングに用いた発現ベクターは、アンチセンスベクターhla(De Riso及び共同研究者の初版文献での名称:「h」はプロモーターH4を、「I」「このプロモーターの長い断片」を、「a」は以前に開発されたアンチセンスを表わす(De Riso Vet al, 2009, Nucleic Acids Res 37:e96))から作製した。このhlaベクターを改変して、ベクターが最初に含有したGUS断片に対応するアンチセンス断片を除去し、CGI−58に対応するアンチセンス断片を導入している。サイレンシングの標的領域はPhatrdraft54974/CGI−58配列の末端部に対応した(図1)。
パーティクルガン又はエレクトロポーレーションを用いたフェオダクチラムの形質転換に続いて、形質転換された細胞をゼオシン選択圧の下で選択し、サイレンシングを受けたと推定されたクローンを選択した。次に、全長転写物に対応するプライマーを用いて定量的RT‐PCRによって内在性CGI−58遺伝子のノックダウンを制御した。
特異的な抗体が存在しない状況では、CGI−58レベルの実際のレベルを評価できなかった。それでもなお、簡単な細胞に基づいたアッセイにより、油体の異化におけるCGI−58の機能分析を可能になる。つまり、形質転換された細胞を、ナイルレッドアッセイを用いてスクリーニングし、窒素富強(+N)又は欠乏(−N)培地での細胞内の油の蓄積を直接モニタリングした(図3)。ナイルレッド染色の量の増加を野生型レベルと比較して観察する(図3)。非常に興味深いことに、窒素富強及び窒素欠乏の両方の条件で、1_10株などのCGI−58アンチセンス発現株に蓄積する油のレベルがより高いことが観察された。
CGI−58アンチセンス構築物でのP.トリコルヌタムの形質転換に続いて、細胞を5日間成長させ、次いで窒素を含有する培地又はこの栄養素を欠く培地に新たに継代培養した。細胞を、窒素を含むESAW培地又は窒素を含まないESAW培地で2日間培養した後に分析した。ナイルレッド(NR)蛍光を、蛍光光度計を用いて測定し、細胞106個あたりで表わした。GUSアンチセンス(hla)を発現する最初のベクターをベクター対照として用いた。WTと違いを示さなかった。WTは非形質転換野生型細胞。
我々はESAW培地で同時並行にモニターした形質転換細胞及び非形質転換細胞の増殖を比較した。図4Aに示されるように、増殖に遅延はなく、形質転換細胞と非形質転換細胞とで同等である。
次に我々は、細胞の表現型及び形質転換細胞と非形質転換細胞の油滴を分析した。図4Bに示されるように、油滴は増殖初期に出現し、複数の液滴の形成を伴い、液滴は集結して2つの大きな液滴を核の各々の側に形成するようである。

Claims (10)

  1. CGI−58タンパク質の活性が、株中の油の蓄積、有利にはトリアシルグリセロールの蓄積を可能にするために改変されているクロムアルベオラータ界に属する種の改変株であって、前記株が、前記CGI−58遺伝子の発現がサイレンシング又は減衰されている遺伝子組み換え株であり、前記株が、フェオダクチラム・トリコルヌタムであることを特徴とする株。
  2. 対応する野生型株のトリアシルグリセロール含有量の少なくとも1.5倍を蓄積又は含有する請求項1に記載の改変株。
  3. 対応する野生型株のトリアシルグリセロール含有量の少なくとも4倍を蓄積又は含有する請求項に記載の改変株
  4. クロムアルベオラータ界の前記株を前記CGI−58遺伝子の発現を標的とするように設計されるRNAi構築物を発現するベクターで形質転換することを含む請求項1〜のいずれか一項に記載の改変株を調製する方法。
  5. 前記ベクターが、粒子銃又はエレクトロポーレーションによって前記株に導入される請求項に記載の方法。
  6. GI−58遺伝子の発現を減衰又はサイレンシングする工程を含むクロムアルベオラータ界に属する株のトリアシルグリセロールの蓄積を増加させる方法であって、前記株が、フェオダクチラム・トリコルヌタムであることを特徴とする、方法
  7. 前記株が窒素富化培地で培養される請求項に記載の方法。
  8. 前記株が窒素枯渇培地で培養される請求項に記載の方法。
  9. トリアシルグリセロールの生成のための請求項1〜のいずれか一項に記載の改変株の使用。
  10. 請求項1〜のいずれか一項に記載の改変株を培養培地中で培養する工程、前記改変株を採取する工程、及びトリアシルグリセロールを回収する工程を含む、トリアシルグリセロールの製造のための方法。
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