JP6566422B2 - ビタミンa欠乏推定装置、プログラム及び記録媒体 - Google Patents

ビタミンa欠乏推定装置、プログラム及び記録媒体 Download PDF

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Description

本発明は、血清中のビタミンAの欠乏状態を推定するビタミンA欠乏推定装置、プログラム及び記録媒体に関するものである。
発明者らは、これまで病院と協力して栄養に関する共同研究を行ってきており、一般的な病院給食は、複数の栄養素が厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」を満たしておらず、これらの食事だけを長期に摂取するとビタミンやミネラルが欠乏する危険性を明らかにしてきた(非特許文献1−7参照)。
ビタミンA欠乏症は、世界中の貧困地域に見られる。アジアでは、緑黄色野菜の摂取量の少ない、インド、ミャンマー、バングラデシュ、スリランカなどに多く、集団によっては半数近くが欠乏状態にある。1歳から6歳までに、ビタミンAの欠乏が多く見られる。成人では摂取量が不十分でも、肝疾患、吸収不良症候群、妊娠や授乳による必要量の増大がない限りは症状がでないことが多い。
一般に、高齢者は、食欲の低下や固形食を忌避する傾向があるため、献立の栄養価から予想される以上の栄養欠乏が危惧される。しかし、これまでに、高齢者や長期療養者を対象としたビタミンAの欠乏状態に関する充分な疫学調査は行われていない。先進国における数少ない調査結果のひとつとして、グラナダにおいて高齢者のビタミンA欠乏は約10%であったと報告されている。
そこで発明者らは、被験者本人と家族の書面による同意を得る等の手続きを経て、1年以上の入院患者43名を対象に、血清中のビタミンA濃度の測定(以下、血清中のビタミンA濃度を「ビタミンA濃度」といい、その測定を「ビタミンA濃度実測検査」という。)を行った。その結果、43名中の9名、つまり、対象とした入院患者の21%がビタミンA不足であることを見出した。
対象とした病院では、比較的良質な食事が提供されている。それにも関わらずビタミンA欠乏状態の入院患者が多かったことから、他の病院の長期療養者は更にひどい欠乏状態に陥っている可能性があると推測される。したがって、日本においても、広く可能な限り多くの長期療養者のビタミンAの欠乏状態を把握することは非常に重要である。
通常、ビタミンAの欠乏状態の診断には、症状の有無に関わらず、ビタミンA濃度実測検査が最も重要な手段である。一般的には、血清中のビタミンA濃度が97 IU/dL(29.1 μg/dL)未満であるとき「血清ビタミンAが低値」と診断される。これは、肝臓等の臓器に貯蔵されているビタミンAも含めた、全身のビタミンA欠乏の診断における最も重要な検査所見である。
ビタミンA濃度実測検査は、欠乏症や過剰証が疑われるときに実施される。ビタミンA欠乏症の典型的な症状は、夜盲症、皮膚や粘膜の乾燥化(眼球乾燥症、ビトー斑、視力低下、失明、毛包周囲の角化、角膜軟化症)等である。
なお、食事で摂取すべきビタミンAの量は、厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」に示されている。
森山耕成、外13名、「Nutritive values of energy-control hospital menus in the Munakata area」、Bulletin of Nakamura Gakuen University、2015年3月、第47号、p.173-181 森山耕成、外3名、「病院食での貝類の活用と食感染予防に関する予備調査」、中村学園大学・中村学園大学短期大学部研究紀要、2015年3月、第47号、p.169-172 森山耕成、外12名、「病院で実施された一般食献立の栄養価」、臨床と研究、2013年10月、第90巻、第10号、p.1379-1385 森山耕成、外5名、「肥満治療のための1200 kcal献立集に掲載された栄養価とその調理の工夫」、中村学園大学・中村学園大学短期大学部研究紀要、2012年3月、第44号、p.243-250 森山耕成、外10名、「Nutritive values of standard and energy-restricted menus of hospitals in the Munakata area」、Clinical Nutrition、2012年、第7巻、S124 森山耕成、外5名、「市販のエネルギー制限食献立集に掲載されている食事の栄養価の検証」、中村学園大学・中村学園大学短期大学部研究紀要、2011年3月、第43号、p.251−258 森山耕成、外11名、「ビタミンが充足し満腹感の得られる肥満治療食の提案」臨床と研究、2010年10月、第87巻、第10号、p.1482−1488 櫻林郁之介、外7名、「最新 臨床検査項目辞典」、医歯薬出版株式会社、2008年3月、p254-256
図11は、上述の従来技術から想定されるビタミンA欠乏の診断のフロー図である。点線矢印で示すフローは、実施されていない、又は、実施されていたとしても感度が低いため、従来の診断ではビタミンA欠乏者が見逃されてしまうことが多かった。
一般的にはビタミンA濃度実測検査が定期的に行われることはなく、入院中の定期検査に組み込まれることもない。また、ビタミンA濃度実測検査は、平成27年度診療報酬の対象検査ではない。私費あるいは病院負担で実施する場合の目安は1,200円であり、一般の血液検査(例:アルブミン濃度検査は110円)より検査料金が高価である。そのため、長期療養者に適用される包括診療(どのような医療を行っても毎月の診療報酬は定額)では、実施されにくい検査である。また、精神疾患や認知症などの慢性疾患による長期療養者、あるいは、わが国の人口の24%を超える老年者全員に画一的に医療費を支出し、ビタミンA濃度実測検査を実施することも実用的ではない(図11の[I])。
さらに、病初期のビタミンA欠乏症は、自覚的所見又は他覚的所見を欠くことがあるため、日常診療において見逃されることが多い(図11の[II])。
また、ビタミンAの摂取量の基準はあるが、ビタミンA欠乏症を発症していない人を対象に、食事のアセスメントに基づいて血中ビタミンA濃度の低値を推定する取り組みはなされていない。もしビタミンA摂取量に基づく推定を試みたとしても、献立の栄養価計算とともに摂取した食事の種類と量を詳細に記録することを要するため、手間がかかり、対象者自身や医療スタッフが恒常的に実施することは極めて難しい。また、個人の年齢、活動量又は健康状態等に応じてビタミンAの必要量や代謝量は変わってくるため、推定の精度が高くない(図11の[III])。
そこで、本発明は、容易に実施でき、安価でありながら高感度にビタミンAの欠乏を推定するビタミンA欠乏推定装置等を提供することを目的とする。
本発明の第1の観点は、血清中のビタミンAの欠乏状態を推定するビタミンA欠乏推定装置であって、ビタミンA濃度実測検査とは異なる検査項目の判定値を記憶する判定値記憶手段と、前記検査項目の実測値を記憶する実測値記憶手段と、ビタミンAの欠乏状態であるか否かを推定する推定手段を備え、前記検査項目には、検体検査に基づく検査項目である検体検査項目が含まれ、前記推定手段は、前記実測値記憶手段に記憶された実測値のうち、1つ以上の前記検査項目において、前記判定値記憶手段に記憶された判定値よりも低いならば、ビタミンAの欠乏状態であると推定する、ビタミンA欠乏推定装置である。
本発明の第2の観点は、第1の観点のビタミンA欠乏推定装置であって、前記検査項目が、6か月間の体重変化率、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度、又は、尿酸濃度を含む、ビタミンA欠乏推定装置である。
本発明の第3の観点は、第1の観点のビタミンA欠乏推定装置であって、前記検査項目が、6か月間の体重変化率、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度、尿酸濃度、赤血球数、血小板数、塩素イオン濃度、又は、血糖値であり、前記検査項目が、2項目以上含まれる、ビタミンA欠乏推定装置である。
本発明の第4の観点は、第3の観点のビタミンA欠乏推定装置であって、前記検体検査項目が、ナトリウムイオン濃度、及び、塩素イオン濃度を含む、ビタミンA欠乏推定装置である。
本発明の第5の観点は、第1から第4のいずれかの観点のビタミンA欠乏推定装置であって、前記判定値が、健常者の前記検体検査項目の実測値に基づいて定められた既知の基準範囲の下限値である、ビタミンA欠乏推定装置である。
本発明の第6の観点は、第1から第5のいずれかの観点のビタミンA欠乏推定装置であって、
前記検査項目のうちの特定項目における第1判定値である特定項目第1判定値を記憶する特定項目第1判定値記憶手段と、
前記特定項目における第2判定値である特定項目第2判定値を記憶する特定項目第2判定値記憶手段を備え、
前記実測値記憶手段は、前記特定項目の実測値である特定項目実測値を記憶する特定項目実測値記憶手段を備え、
前記特定項目第2判定値は、前記特定項目第1判定値よりも高いものであり、
前記推定手段は、
前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値未満の場合であって、前記特定項目以外の1つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のとき、
前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値以上かつ前記特定項目第2判定値未満の場合であって、前記特定項目以外の2つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のとき、
又は、
前記特定項目実測値が前記特定項目第2判定値以上の場合であって、前記特定項目以外の3つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のときに、ビタミンAの欠乏状態であると推定する、ビタミンA欠乏推定装置である。
本発明の第7の観点は、第6の観点のビタミンA欠乏推定装置であって、前記検査項目が、6か月間の体重変化率、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度、及び、塩素イオン濃度を含み、前記特定項目が、前記中性脂肪濃度であり、
前記推定手段は、
前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値未満の場合であって、前記特定項目以外の2つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のとき、
前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値以上かつ前記特定項目第2判定値未満の場合であって、前記特定項目以外の3つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のとき、
又は、
前記特定項目実測値が前記特定項目第2判定値以上の場合であって、前記特定項目以外の4つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のときに、ビタミンAの欠乏状態であると推定する、ビタミンA欠乏推定装置である。
本発明の第8の観点は、第6の観点のビタミンA欠乏推定装置であって、前記検査項目が、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度、及び、塩素イオン濃度を含み、前記特定項目が、前記中性脂肪濃度である、ビタミンA欠乏推定装置である。
本発明の第9の観点は、第3の観点のビタミンA欠乏推定装置であって、前記検査項目が、6か月間の体重変化率、赤血球数、ナトリウムイオン濃度、及び、塩素イオン濃度を含み、前期推定手段は、3つ以上の前記検査項目において、前記判定値記憶手段に記憶された判定値よりも低いならば、ビタミンAの欠乏状態であると推定する、ビタミンA欠乏推定装置である。
本発明の第10の観点は、第3の観点のビタミンA欠乏推定装置であって、前記検査項目が、赤血球数、ナトリウムイオン濃度、及び、塩素イオン濃度を含み、前期推定手段は、2つ以上の前記検査項目において、前記判定値記憶手段に記憶された判定値よりも低いならば、ビタミンAの欠乏状態であると推定する、ビタミンA欠乏推定装置である。
本発明の第11の観点は、第2の観点のビタミンA欠乏推定装置であって、前記検査項目は、中性脂肪濃度を含み、前期推定手段は、中性脂肪濃度について、前記判定値記憶手段に記憶された判定値よりも低いならば、ビタミンAの欠乏状態であると推定する、ビタミンA欠乏推定装置である。
本発明の第12の観点は、第2の観点のビタミンA欠乏推定装置であって、前記検査項目は、総コレステロール濃度を含み、前期推定手段は、総コレステロール濃度について、前記判定値記憶手段に記憶された判定値よりも低いならば、ビタミンAの欠乏状態であると推定する、ビタミンA欠乏推定装置である。
本発明の第13の観点は、第2の観点のビタミンA欠乏推定装置であって、前記検査項目は、ナトリウムイオン濃度を含み、前期推定手段は、ナトリウムイオン濃度について、前記判定値記憶手段に記憶された判定値よりも低いならば、ビタミンAの欠乏状態であると推定する、ビタミンA欠乏推定装置である。
本発明の第14の観点は、第2の観点のビタミンA欠乏推定装置であって、前記検査項目は、尿酸濃度を含み、前期推定手段は、尿酸濃度について、前記判定値記憶手段に記憶された判定値よりも低いならば、ビタミンAの欠乏状態であると推定する、ビタミンA欠乏推定装置である。
本発明の第15の観点は、血清中のビタミンAの欠乏状態を推定するビタミンA欠乏推定装置であって、ビタミンA濃度実測検査とは異なる検査項目の判定値を記憶する判定値記憶手段と、前記検査項目の実測値を記憶する実測値記憶手段と、ビタミンAの欠乏状態であるか否かを推定する推定手段を備え、前記検査項目には、6か月間の体重変化率が含まれ、前記推定手段は、6か月間の体重変化率について、前記判定値記憶手段に記憶された判定値よりも低いならば、ビタミンAの欠乏状態であると推定する、ビタミンA欠乏推定装置である。
本発明の第16の観点は、第1から第15のいずれかの観点のビタミンA欠乏推定装置であって、前記実測値記憶手段に記憶された実測値と前記判定値記憶手段に記憶された判定値とを比較する項目比較手段と、前記項目比較手段による比較結果に基づいて、前記検査項目のそれぞれにおいて、点数を決定する決定手段と、前記検査項目のそれぞれの点数を加算して合計点数を算出する算出手段と、前記合計点数に対応し、ビタミンAの欠乏状態であると推定する基準となる最終判定点数を記憶する最終判定点数記憶手段と、前記合計点数と前記最終判定点数とを比較する点数比較手段とを備え、前記推定手段は、前記点数比較手段の比較結果に基づいて、ビタミンAの欠乏状態であると推定する、ビタミンA欠乏推定装置である。
本発明の第17の観点は、第16の観点のビタミンA欠乏推定装置であって、前記算出手段は、前記検査項目のそれぞれの点数を重み付けて加算して合計点数を算出する、ビタミンA欠乏推定装置である。
本発明の第18の観点は、血清中のビタミンAの欠乏状態を推定するビタミンA欠乏推定装置であって、ビタミンA濃度実測検査とは異なる検査項目の判定値を表示させる判定値表示手段と、前記検査項目のそれぞれについて、測定値が前記判定値以上であるか否かの入力を受け付ける入力受付手段と、ビタミンAの欠乏状態であると推定する基準となる最終判定点数を記憶する最終判定点数記憶手段と、ビタミンAの欠乏状態を推定する推定手段を備え、前記検査項目には、検体検査に基づく検査項目である検体検査項目が含まれ、前記推定手段は、前記入力受付手段に入力された入力内容と前記最終判定点数に基づいてビタミンAの欠乏状態であるか否かを推定する、ビタミンA欠乏推定装置である。
本発明の第19の観点は、印刷装置を制御するためのコンピュータを、前記印刷装置に、第1から第18のいずれかの観点に記載の推定手段による推定結果を印刷させる推定結果印刷制御手段として機能させるためのプログラムである。
本発明の第20の観点は、コンピュータを、ビタミンA濃度実測検査とは異なる検査項目の判定値を記憶する判定値記憶手段と、前記検査項目のそれぞれに対応する実測値を記憶する実測値記憶手段と、ビタミンAの欠乏状態であるか否かを推定する推定手段として機能させるためのプログラムであって、前記検査項目には、検体検査に基づく検査項目である検体検査項目が含まれ、前記推定手段は、前記実測値記憶手段に記憶された実測値のうち、1つ以上の前記検査項目において、前記判定値記憶手段に記憶された判定値よりも低いならば、ビタミンAの欠乏状態であると推定する、プログラムである。
本発明の第21の観点は、第19又は20の観点のプログラムを記録するコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
本発明の第22の観点は、血清中のビタミンAの欠乏状態を推定するビタミンA欠乏推定方法であって、ビタミンA濃度実測検査とは異なる検査項目において、実測値が判定値よりも低いならば、ビタミンAの欠乏状態であると推定する推定ステップを含む、ビタミンA欠乏推定方法である。なお、本発明の第22の観点の推定方法における推定ステップでは、ビタミンA欠乏推定装置が備える推定手段が推定するものであってもよい。さらに、本発明の第23の観点は、コンピュータに、第22の観点のビタミンA欠乏推定方法における推定ステップを実行させるためのプログラムである。さらに、本発明の第24の観点は、第23の観点のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な、一時的でない記録媒体である。
本発明の各観点によれば、高価なビタミンA濃度実測検査をすることなく、精度よくビタミンAの欠乏状態であるか否かを推定することが可能となる。ビタミンA濃度実測検査とは異なる検査項目に基づいて、ビタミンA欠乏を推定できるビタミンA欠乏推定装置等は、本発明の発明者らによって初めて提案されたものである。
従来、ビタミンA濃度の基準範囲内においては、血清レチノール結合蛋白濃度及び血清トランスサイレチン濃度が、ビタミンA濃度との有意で良好な正の相関を有することが複数の学術雑誌に報告されていた。しかし、血清レチノール結合蛋白と血清トランスサイレチン濃度の検査は、一般血液検査いわゆるルーチン検査としては実施されていない。また、一般血液検査の検査項目の中で、ビタミンAと有意な相関がある検査項目は明らかにされていなかった。
さらに、本発明の発明者らが、ビタミンA濃度に対して、T−Chol、TG等の一般血液検査の各データの直線回帰式を作成し、ビタミンAの欠乏状態の推定を試みたところ、ビタミンA低濃度範囲では回帰直線から大きく外れることを見出した。つまり、直線回帰や重回帰では、ビタミンA欠乏者のビタミンA濃度が真の値より推定値が高く見積もられ、ビタミンA濃度が正常と誤診されてしまう可能性があることが判明した。これらのことが、ヘモグロビン濃度等のルーチン検査項目に基づいてビタミンAの欠乏状態の推定を行うことの阻害要因となっていたと考えられる。
また、本発明の各観点によれば、ビタミンA欠乏者を高感度・高特異度で推定することが可能である。この検査としての顕著な有用性は、実施例で示すように本発明の発明者らによって初めて実証された。
また、本発明の各観点によれば、日常診療で実施されている検査項目単独又はそれを組み合わせて推定することができるため、ビタミンA濃度実測検査という追加の経済および身体的負担なく、極めて精度良くビタミンA欠乏の高リスク者を推定することが可能となる。また、日常診療において一般的な血液検査の結果がでるたびに、ビタミンAの欠乏の推定ができる。そのため、担当医が患者の欠乏症状を見逃していても、又は、欠乏症状の出現前に、ビタミンAの欠乏状態か否かを推定可能となる。つまり、一般的な血液検査には含まれないビタミンA濃度実測検査を早期に必要十分なだけ実施することが可能となる(図12)。
ここで、本発明の第2の観点の効果に関連して、発明者らの研究により、最近6か月間の体重変化率、赤血球数、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度、塩素イオン濃度、及び、尿酸濃度の各検査項目は、約90の検査項目や内服状況についてそれぞれ、判定値を超えるか否か、及び、ビタミンAが低値か否かの2×2の分割表によるχ2乗検定で有意な偏りがあったものを選択することにより抽出された。t検定や重回帰分析では抽出できない検査項目を抽出できたことが、本発明のポイントの1つである。
本発明の第2の観点によれば、高感度かつ高特異度に、ビタミンAの欠乏状態か否かを推定することが容易となる。
本発明の第3の観点によれば、複数の検体検査項目を組み合わせることにより、さらに精度よくビタミンAの欠乏状態か否かを推定することが可能となる。
一般に、検査の有用性を示す指標として、受信者操作特性(Receiver Operating Characteristic:ROC)を表すROC曲線のAUCが用いられる。AUCとは、ROC曲線の下の面積(Area Under the Curve:AUC)の値であり、0.5から1の範囲の値をとり、1に近いほど検査としての有用性は高い。例えば、図6(a)のように塩素イオン濃度のみを検査項目とし、塩素イオン濃度が判定値以下であればビタミンAの欠乏状態であると推定するビタミンA欠乏推定装置のAUCは0.748である。塩素イオン濃度と中性脂肪の2項目を検査項目とし、どちらか一方でも判定値以下であればビタミンAの欠乏状態であると推定するビタミンA欠乏推定装置のAUCは0.871に上がる。このように、複数の検査項目を組み合わせることで、さらに精度よくビタミンAの欠乏状態であるか否かを推定することが可能となる。
本発明の第4の観点によれば、特に高感度かつ高特異度に、ビタミンAの欠乏状態か否かを推定することが容易となる。高精度な推定結果が得られた検査項目の組合せを後述の実施例にて示すが、それらは共通してナトリウムイオン濃度及び塩素イオン濃度の2項目を含んでいた。検査可能な項目が膨大にある中で、これらの項目の組み合わせがビタミンA欠乏の推定に特に有用である点は、本発明の発明者らが世界で初めて見出した知見であり、当業者にとって容易に想到しえなかった点である。
本発明の第5の観点によれば、判定値を定めるための予備調査を行うことなく、ビタミンAの欠乏状態を推定することが可能となる。
特定非営利活動法人日本臨床検査標準協議会(JCCLS)では、一定の基準を満たす健常者を基準個体として、その測定値の中央95%の区間を基準範囲と定めている。ビタミンA欠乏と関連なく設定されたナトリウムイオン濃度などの一般血液検査の基準範囲を、判定値として用いても、高い精度でビタミンA欠乏を推定可能であることは、当業者が容易に想到できることではない。
本発明の第6の観点によれば、検査項目のうち特定項目に着目して2つの判定値を設定することにより、判定値を1つしか設定しない場合よりも、さらに精度よくビタミンAの欠乏状態であるか否かを推定することが可能となる。
本発明の第7の観点によれば、65歳以上の患者43名の対象群うち実際にビタミンA欠乏状態である患者を、感度89%、特異度98%の精度でビタミンA欠乏と推定できた。同じく本発明の第8の観点によれば、感度89%、特異度82%、第9の観点によれば、感度78%、特異度100%、第10の観点によれば、感度78%、特異度88%、第11の観点によれば、感度78%、特異度88%、第12の観点によれば、感度78%、特異度65%、第13の観点によれば、感度78%、特異度77%、第14の観点によれば、感度89%、特異度65%、第15の観点によれば、感度67%、特異度88%の精度で推定できた。このように、高感度かつ高特異度でビタミンA欠乏状態を推定可能となる。
なお、本発明の第7〜第15の観点に関連して、総コレステロール濃度が低値を示すのは、甲状腺亢進症や肝障害、タンジール病などであるが、特定のミネラル欠乏症と関連付けられた研究は行われていなかった。むしろ、これらの観点のビタミンA欠乏推定装置の検査項目に含まれる中性脂肪濃度及び総コレステロール濃度の検査項目は、一般的には脂質異常症(脂質の過剰)の診断に用いられ、高栄養状態の者に実施されている検査項目であった。そのため、それらをビタミンA欠乏等の低栄養状態の者のための検査項目として用いるには阻害要因があった。同様に、ナトリウムイオンと塩素イオンは、本来、血中電解質の検査の一部として、代謝疾患や腎疾患等の検査として実施される。尿酸値は、痛風などの代謝疾患の検査項目である。
さらに、本発明の第16の観点によれば、定量的な推定を行うことが容易となる。
本発明の第17の観点によれば、それぞれの検査項目に異なる点数を重み付けすることにより、推定精度を高めることが容易となる。
さらに本発明の第18の観点によれば、ビタミンA欠乏の推定に関して定量的な臨床検査報告書や電子カルテを作成することが容易となる。
さらに、本発明の第19の観点によれば、自動検査装置を備える医療施設や検査場において、この評価票を一般検査報告書の印刷装置にプログラムとして組み込むことにより、全く異なる疾患を目的として検査した場合でも、自動的に「ビタミンA欠乏の可能性あり」を印字、報告することが可能となる。
実施例1に係るビタミンA欠乏推定装置1の概要を示すブロック図である。 (a)総コレステロール濃度を検査項目として用いたビタミンA欠乏推定方法のROC曲線を示す図である。 (b)中性脂肪濃度、(c)ナトリウムイオン濃度、(d)尿酸濃度、(e)6か月間の体重変化率の各項目を検査項目として用いたビタミンA欠乏推定方法のROC曲線を示す図である。 ALT(GPT)を検査項目として用いたビタミンA欠乏推定方法のROC曲線を示す図である。 (i)6か月間の体重変化率、(ii)赤血球数、(iii)総コレステロール濃度、(iv)中性脂肪濃度、(v)ナトリウムイオン濃度、(vi)塩素イオン濃度、及び、(vii)尿酸濃度の各項目とビタミンA濃度との相関の有無を示す散布図である。 検査項目数が1及び2のビタミンA欠乏推定方法のROC曲線を示す図である。 検査項目の組合せは同一で、重み付けが異なる2パターンのビタミンA欠乏推定方法のROC曲線を示す図である。 良好なAUCが得られた4パターンのビタミンA欠乏推定方法のROC曲線を示す図である。 ビタミンA欠乏の推定票又は電子カルテに表示される画面を例示した図である。 検査項目の組合せは同一で、中性脂肪濃度の判定値の数が異なる2パターンのビタミンA欠乏推定方法のROC曲線を示す図である。 従来技術から想定されるビタミンA欠乏診断の流れを表す図である。 本発明のビタミンA欠乏推定装置を用いたビタミンA欠乏診断の流れを表す図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施例について述べる。なお、本発明の実施の形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
ビタミンA欠乏推定装置
図1は、本発明の実施例に係る、ビタミンAの欠乏を推定するビタミンA欠乏推定装置1(本願請求項に記載の「ビタミンA欠乏推定装置」の一例)の概要を示すブロック図である。
ビタミンA欠乏推定装置1は、医療施設で頻繁に実施される一般検査の一部(6か月間の体重変化率、赤血球数、血小板数、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度、塩素イオン濃度、血糖値、及び、尿酸濃度)の実測値(本願請求項に記載の「実測値」の一例)を組み合せることにより、一般的には実測されないビタミンA濃度とは異なる成分の実測値に基づいて、ビタミンA濃度が正常値(基準範囲の下限値:97 IU/dL(29.1 μg/dL))を下回っていることを推定する推定装置である。上記において、6か月間の体重変化率、赤血球数、血小板数、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度、塩素イオン濃度、血糖値、及び、尿酸濃度は、それぞれ本願請求項に記載の「検査項目」の一例である。さらに、赤血球数、血小板数、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度、塩素イオン濃度、血糖値、及び、尿酸濃度は、それぞれ本願請求項に記載の「検体検査項目」の一例である。
図1を参照して、ビタミンA欠乏推定装置1は、記憶部3と、比較部5と、決定部7(本願請求項に記載の「決定手段」の一例)と、算出部9(本願請求項に記載の「算出手段」の一例)と、推定部11(本願請求項に記載の「推定手段」の一例)と、表示部13と、印刷制御部15(本願請求項に記載の「推定結果印刷制御手段」の一例)とを備える。比較部5は、項目比較部17(本願請求項に記載の「項目比較手段」の一例)と、点数比較部19(本願請求項に記載の「点数比較手段」の一例)とを備える。算出部9は、加算部21と、重み付け部23とを備える。推定部11は、第1推定部25と、第2推定部27と、第3推定部29とを備える。表示部13は、項目表示部31と、判定値表示部33(本願請求項に記載の「判定値表示手段」の一例)と、点数表示部35と、最終判定点数表示部37と、強調表示部39とを備える。記憶部3は、判定値記憶部41(本願請求項に記載の「判定値記憶手段」の一例)と、実測値記憶部43(本願請求項に記載の「実測値記憶手段」の一例)と、最終判定点数記憶部45(本願請求項に記載の「最終判定点数記憶手段」の一例)とを備える。
判定値記憶部41は、検査項目ごとの判定値を記憶する個別判定値記憶部411、412、・・・、41を備える。本実施例では、6か月間の体重変化率判定値記憶部と、赤血球数判定値記憶部と、血小板数判定値記憶部と、総コレステロール濃度判定値記憶部と、第1中性脂肪濃度判定値記憶部と、第2中性脂肪濃度判定値記憶部と、ナトリウムイオン濃度判定値記憶部と、塩素イオン濃度判定値記憶部と、血糖値判定値記憶部と、尿酸濃度判定値記憶部とを備える。実測値記憶部は、6か月間の体重変化率実測値記憶部と、赤血球数実測値記憶部と、血小板数実測値記憶部と、総コレステロール濃度実測値記憶部と、中性脂肪濃度実測値記憶部(本願請求項に記載の「特定項目実測値記憶手段」の一例である)と、ナトリウムイオン濃度実測値記憶部と、塩素イオン濃度実測値記憶部と、血糖値実測値記憶部と、尿酸濃度実測値記憶部とを備える。6か月間の体重変化率判定値記憶部は、6か月間の体重変化率における判定値である、6か月間の体重変化率判定値を記憶する。赤血球数判定値記憶部は、赤血球数における判定値である赤血球数判定値を記憶する。血小板数判定値記憶部は、血小板数における判定値である血小板数判定値を記憶する。総コレステロール濃度判定値記憶部は、総コレステロール濃度における判定値である総コレステロール濃度判定値を記憶する。第1中性脂肪濃度判定値記憶部(本願請求項に記載の「特定項目第1判定値記憶手段」の一例である)は、中性脂肪濃度における第1の判定値である第1中性脂肪濃度判定値(本願請求項に記載の「特定項目第1判定値」の一例である)を記憶する。第2中性脂肪濃度判定値記憶部(本願請求項に記載の「特定項目第2判定値記憶手段」の一例である)は、中性脂肪濃度における第2の判定値である第2中性脂肪濃度判定値(本願請求項に記載の「特定項目第2判定値」の一例である)を記憶する。ここで、第2中性脂肪濃度判定値は、第1中性脂肪判定値よりも高いものである。なお、本実施例において、中性脂肪濃度は、本願請求項に記載の「特定項目」の一例である。ナトリウムイオン濃度判定値記憶部は、ナトリウムイオン濃度における判定値であるナトリウムイオン濃度判定値を記憶する。塩素イオン濃度判定値記憶部は、塩素イオン濃度における判定値である塩素イオン濃度判定値を記憶する。血糖値判定値記憶部は、血糖値における判定値である血糖値判定値を記憶する。尿酸濃度判定値記憶部は、尿酸濃度における判定値である尿酸濃度判定値を記憶する。
実測値記憶部43は、測定される各成分の実測値を記憶する個別実測値記憶部431、432、・・・、43を備える。本実施例では、6か月間の体重変化率実測値記憶部と、赤血球数実測値記憶部と、血小板数実測値記憶部と、総コレステロール濃度実測値記憶部と、中性脂肪濃度実測値記憶部と、ナトリウムイオン濃度実測値記憶部と、塩素イオン濃度実測値記憶部と、血糖値実測値記憶部と、及び、尿酸濃度実測値記憶部とを備える。6か月間の体重変化率実測値記憶部は、6か月間の体重変化率である6か月間の体重変化率実測値を記憶する。赤血球数実測値記憶部は、血液で実測された赤血球数である赤血球数実測値を記憶する。血小板数実測値記憶部は、血液で実測された血小板数である血小板数実測値を記憶する。総コレステロール濃度実測値記憶部は、血液で実測された総コレステロール濃度である総コレステロール濃度実測値を記憶する。中性脂肪実測値記憶部は、血液で実測された中性脂肪濃度である中性脂肪濃度実測値を記憶する。ナトリウムイオン濃度実測値記憶部は、血液で実測されたナトリウムイオン濃度であるナトリウムイオン濃度実測値を記憶する。塩素イオン濃度実測値記憶部は、血液で実測された塩素イオン濃度である塩素イオン濃度実測値を記憶する。血糖値実測値記憶部は、血液で実測された血糖値である血糖値実測値を記憶する。尿酸濃度実測値記憶部は、血液で実測された尿酸濃度である尿酸濃度実測値を記憶する。
比較部5は、2つの数値を比較する。特に、項目比較部17は、実測する検査項目ごとに、実測値と判定値とを比較する。決定部7は、項目比較部17の比較結果に基づいて、検査項目ごとの項目点数を決定する。算出部9は、決定部7が決定した項目点数の計算を行う。加算部21は、検査項目ごとの項目点数を合計して合計点数(本願請求項に記載の「合計点数」の一例)を算出する。重み付け部23は、必要に応じて検査項目ごとの項目点数に重みを付ける。点数比較部19は、算出部9が算出した合計点数と最終判定点数とを比較する。
推定部11は、点数比較部19における比較結果に基づいて、合計点数が最終判定点数以上であれば、血液におけるビタミンAの欠乏状態であると推定する。第1推定部25は、中性脂肪濃度実測値が第1中性脂肪濃度判定値よりも低い場合であって、中性脂肪濃度以外の1つ以上の成分の実測値が判定値よりも低いときに、血液におけるビタミンAが欠乏状態であると推定する。
第2推定部27は、中性脂肪濃度実測値が第1中性脂肪濃度判定値以上で、第2中性脂肪濃度判定値以下の場合であって、中性脂肪濃度以外の2つ以上の成分の実測値が判定値よりも低いときに、血液におけるビタミンAの欠乏状態であると推定する。
第3推定部29は、中性脂肪濃度実測値が第2中性脂肪濃度判定値よりも高い場合であって、中性脂肪濃度以外の3つ以上の成分の実測値が判定値よりも低いときに、血液におけるビタミンAの欠乏状態であると推定する。
上記のように、中性脂肪濃度実測値によってビタミンAの欠乏状態と推定する是非を場合分けする理由は、後述するように、発明者らの研究によって推定の感度及び特異度が特に高いことが判明したためである。
検査項目の抽出
本発明の発明者らは、65歳以上の患者43名を対象として、体格指数(BMI)、1か月間の体重変化率、6か月間の体重変化率、及び、一般血液検査(ルーチン検査)の22項目に加え、高価なビタミンA濃度実測検査を行った。それらの実測値とビタミンAの実測結果とを突き合わせることによりROC曲線を描いた。
(a)総コレステロール濃度、(b)中性脂肪濃度、(c)ナトリウムイオン濃度、(d)尿酸濃度、及び、(e)6か月間の体重変化率のROC曲線を図2及び図3に示す。各ROC曲線のAUCは大きいことから、(a)−(e)の5つの検査項目であれば、検査項目が1項目のみからなるビタミンA欠乏推定装置でも高い感度・特異度が確保できることが分かる。
図4には、良好な検出感度と特異度が得られなかった例として、ALT(GPT)のROC曲線を示している。図2及び図3のROC曲線に比べ、AUCが0.54と小さく、この検査項目に基づいたビタミンA欠乏の推定は期待できない。
また、図2に示すように、ROC曲線からは、点(x=0、y=1)(すなわち、感度(陽性度)=100%、1−特異度(偽陽性度)=0%の点)に近いROC曲線上の点Rを、最も精度の良い境界値に対応する点として導くことができる。境界値は、ビタミンA欠乏か否かの推定の分岐点とする検査項目の濃度である。図2及び図3の点Rに対応する境界値(境界値R)を判定値とすることで、最も精度良くビタミンA欠乏を推定することが可能となる。
AUCが0.6以上の一般検査項目について、点(x=0、y=1)に最も近いROC曲線上の点を点Rとした。そして、ビタミンA濃度が低値の9名と正常値の34名の2群において、点Rに対応する境界値R以下の低値者と非低値者の人数の偏りについて、2×2分割表のχ2乗検定を行った。その結果、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度、尿酸濃度、6か月間の体重変化率の5つの検査項目において、高い感度と特異度でビタミンA低値者(ビタミンA濃度が97 IU/dL未満の者)を検出できることが判明した。ビタミンA低値者を検出する感度及び特異度は下記の表1の通りである。「真陽性」及び「偽陽性(1−特異度)」の列には、それぞれの検査項目における、ビタミンA低地者9名のうち境界値R未満の人数、及び、ビタミンA非低値者34名のうちの境界値R未満の人数を示している。なお、表1の(a)―(e)は、それぞれ図2及び図3の(a)―(e)に対応する。
表1に示すように、抽出された5つの検査項目の感度はいずれも65%を超えており、特異度も64%を超えている。例えば、便潜血1日法による大腸がん検査の感度は56%、特異度97%とする調査がある。すなわち、これらの検査項目は、単独でも、ビタミンA欠乏を推定する検査として充分に有用である。
t検定や重回帰分析では抽出できなかった、高感度・高特異度の検査項目を抽出できたことが、本発明のポイントの1つである。
また、2×2分割表のχ2乗検定において、境界値Rの代わりに、JCCLSの共用基準範囲を基にした施設基準範囲(いわゆる病院検査室が定めている検査の正常値範囲)の下限値又は上限値を用いた場合にも、下記表2に示す通り、7項目をビタミンA欠乏推定装置に有用な検査項目を抽出することができた。表2の「真陽性」及び「偽陽性」の列には、それぞれの検査項目における、ビタミンA低地者9名のうち判定値未満又は超過の人数、及び、ビタミンA非低値者34名のうちの判定値未満又は超過の人数を示している。
特に、ナトリウムイオン濃度は、感度・特異度が高く、単独の検査項目としても、ビタミンA欠乏を推定する検査として充分に有用である。一方、赤血球数、血小板数、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、塩素イオン濃度、早朝空腹時血糖値もχ2乗検定で抽出されているので、単独では感度が低くても、他の検査項目と組み合わせることにより、全体の感度、特異度を上げることができる可能性がある。検査項目の組み合わせについては、段落番号0084以降で説明する。
臨床検査値の基準範囲(正常値)については、従来、施設毎に様々な基準が採用され共通の基準範囲はなかった。最近、病診連携の推進により患者の検査結果情報の共有化とともに「基準範囲」の共通化が望まれ、JCCLSの共用基準範囲を採用する病院が増えつつある。本実施例の対象施設では、JCCLSの共用基準範囲に準じた基準値が用いられていた。なお、JCCLSの基準範囲、及び、施設が定める基準範囲は、本願請求項に記載の「既知の基準範囲」の一例である。
以上で抽出された検査項目9つのうち、(i)6か月間の体重変化率、(ii)赤血球数、(iii)総コレステロール濃度、(iv)中性脂肪濃度、(v)ナトリウムイオン濃度、(vi)塩素イオン濃度、(vii)尿酸濃度について、ビタミンA濃度との相関を表す散布図を図5に示す。
それぞれの散布図は、有意な相関を示すが、回帰直線から離れた点もある。このようにt検定や重回帰分析では抽出できない検査項目を、2×2の分割表によるχ2乗検定で有意な偏りがあった検査項目を選択することで抽出できたことが、本発明のポイントの1つである。
なお、図5(i)の斜線部上には全くプロットがなく、6か月間体重が減少しなかった人にはビタミンA低値者がいないことが明らかになった。また、図5(iv)の斜線部に示されるように、中性脂肪が100mg/dL以上の人にもビタミンA低値者はいなかった。
2つの検査項目を組み合わせたビタミンA欠乏の推定
図6の3本のROC曲線(I、II、III)は、次のように決定された「項目点数又は合計点数」と、ビタミンA濃度実測検査に基づく「実際の欠乏者数」の結果から得られたROC曲線である。図6のI、IIは、それぞれ、塩素イオン濃度、中性脂肪濃度の実測値が、各判定値未満であれば項目点数1点、各判定値以上であれば項目点数が0点として決定された項目点数に基づくROC曲線である。図6のIIIは、塩素イオン濃度及び中性脂肪濃度について、上記と同様に項目点数を与え、それら項目点数を合算することで決定された合計点数に基づくROC曲線である。
なお、図2は、図6と同様に各検査項目のデータと、ビタミンA実測検査のデータから得られたROC曲線である。しかし、図2では各検査項目の「実測値」を用い、図6では「項目点数又は合計点数」を用いた点において、図2と図6は異なる。
図6のROC曲線(I、II、III)のAUCはそれぞれ、0.748、0.748、0.871であり、ROC曲線IIIにて最も大きいAUCをとった。さらに、点(x=0,y=1)からROC曲線上の点Rまでの最短距離も短くなった。つまり、1項目よりも2項目以上の検査項目を用いた方が、推定精度が高く、推定方法として優れていた。
複数の検査項目のうち1項目でも判定値以下であればビタミンA欠乏と推定すると、感度が上がり、特異度が下がる。全項目で判定値以下のときビタミンA欠乏と推定すると、感度が下がり、特異度が上がる。このように、複数の検査項目を用いることで、感度と特異度の調整が可能となることが、推定精度が向上した要因である。
項目点数の重み付け
図7は、検査項目の組合せは同一だが、塩素イオン濃度について項目点数の重み付けが異なる2パターンのROC曲線を示す図である。図7に示す通り、項目点数の重み付けによってROC曲線のAUCは変動する。各検査項目の項目点数をAUCが最大となる時の値に設定することで、ビタミンA欠乏の推定の精度は向上することが明らかとなった。
3つ以上の検査項目を組み合わせたビタミンA欠乏の推定
検査項目の組合せ、項目数、項目点数(重み付け)を変えることで、様々なパターンの推定票が作成される。本願では、推定票とは、ビタミンAの推定に用いる票であって、1つ以上の検査項目と、各検査項目の判定値と、項目点数と、最終判定点数が記載された票を指す。発明者らは、100を超えるパターンの推定票について、それぞれの推定票に基づいてROC曲線を作成し、そのROC曲線のAUC、感度及び特異度から各推定票の精度を比較し、最適な推定票を検討した。
最適な推定票を作成するにあたり、まず、表1及び表2に示す2×2分割表のχ2乗検定で抽出した9つの検査項目(6か月間の体重変化率、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度、尿酸濃度、赤血球数、血小板数、塩素イオン濃度、及び、血糖値)の検査項目を様々に組み合わせた。組合せの一例を下記の表3に示す。
続いて、表3に示す通り、各検査項目の項目点数を設定した。なお、検査結果を使用しない検査項目については、項目点数を空欄にした。そして、各項目において実測値が各判定値未満又は上回った場合に項目点数を加点し、合計点数を算出した。この合計点数と、ビタミンA濃度実測検査の結果とを突き合わせることによりROC曲線を作成した。様々なパターンのなかで、AUCが特に高く、点Rが点(x=0、y=1)に特に近かったROC曲線4本を図8に示す。図8の4本のROC曲線は、表3のパターン[A]から[D]にそれぞれ対応しており、これらの推定票であればいずれも、高感度・高特異度でビタミンAの欠乏を推定することが可能である。
図8のパターン[A]のROC曲線は、表3の推定票[A]に示す6か月間の体重変化率、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度、及び、塩素イオン濃度の各項目点数の合計点数から得た。
図8のパターン[B]のROC曲線は、表3の推定票[B]に示す総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度、及び、塩素イオン濃度の各項目点数の合計点数から得た。
図8のパターン[C]のROC曲線は、表3の推定票[C]に示す6か月間の体重変化率、赤血球数、ナトリウムイオン濃度、及び、塩素イオン濃度の各項目点数の合計点数から得た。
図8のパターン[D]のROC曲線は、表3の推定票の[D]に示す赤血球数、ナトリウムイオン濃度、及び、塩素イオン濃度の各項目点数の合計点数から得た。
感度と特異度はそれぞれ、パターン[A]では89%、98%であり、パターン[B]では89%、82%であり、パターン[C]では78%、100%であり、パターン[D]では78%、88%であった。
パターン[A]に示すように、パターン[B]に最近6か月間の体重変化率の項目を加えると感度89%のまま、特異度は82%から98%に上がった。パターン[C]も同様である。しかし、体重変化率は長期入院患者では測定可能であるが、初診患者や定期健診ではこの情報を獲得し難いため、パターン[A]とパターン[C]の推定票の使用範囲は限定的である。
赤血球数は、通常の入院時一般採血では、必ず測定する。通常の血液一般検査においては、中性脂肪を測定する場合は、総コレステロールとHDLコレステロールを同時に評価する。血清ナトリウムイオン濃度は塩素イオン濃度と一緒に測定し評価することが多い。病状や検診などの目的により、これらの脂質を測定する場合と、イオン(電解質)を測定する場合がある。したがって、検査前からビタミンA欠乏を推定することが目的であれば、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度、塩素イオン濃度の4項目を測定することが最良である。一方、人間ドックなどで費用の制限がある場合や、加入健康保険の定める検査項目だけでビタミンA欠乏を並行して判定したい場合には、パターン[C]若しくは[D]、又は、表1の5つの検査項目のうちいずれか1項目のみを用いた推定票を活用できる。
なお、最終判定点数の設定によって、感度及び特異度は変動する。最も高感度かつ高特異度な検査結果が得られる最終判定点数は、ROC曲線上で点(x=0,y=1)に最も近い点に相当する点数である。また、感度と特異度は、一方を上げると他方が下がるという相反関係になる場合がある。感度が高く特異度が低い場合には検査の無駄が生じ、感度が低く特異度が高い場合には真の欠乏者を取りこぼしてしまう。栄養欠乏者の推定においては、取りこぼしが少ない方が望ましいため、特異度は低くても感度がより高くなる点、つまり、縦軸の陽性率が最も高い点を最終判定点数に設定するなど、推定を行う目的や状況に応じて、最終判定点数を変更しても良い。
なお、図8及びこれに対応する表3では、「日本臨床検査標準協議会(JCCLS)が定めた基準に基づき対象病院が定めた検査基準範囲の下限値」を判定値として用いた。それ以外にも、判定値として、各検査項目の実測値に基づくROC曲線から得られる「境界値R」を用いても良い。
1つの検査項目を用いた場合の判定値としては、JCCLS等の「基準範囲の下限値」よりも「境界値R」の方が理論的には優れている。ただし、今回求めた境界値Rは、対象者の健康状態や年齢構成の同じ集団にはそのまま適用できるが、年齢構成の大きく異なる集団に、このビタミンA欠乏推定装置を用いる場合は、施設ごとに無作為に10名以上を抽出して検査を行い図2のようなROC曲線を作成し、境界値Rを定める予備調査とその妥当性の確認が望ましい。一方、JCCLS又は施設で定められている基準範囲の下限値を用いれば、予備調査を行うことなく、ビタミンAの欠乏状態を推定することが可能である。発明者らの、近隣の病院での検討では、1つの検査結果を用いた場合のビタミンA低値の推定には、ROC曲線により抽出した検査項目とその判定値を用いた推定票が優れていた。複数の検査項目を組み合わせることができる場合は、施設基準値でのχ2乗検定により抽出した検査項目を用いた推定票が優れていた。
中性脂肪濃度(本願請求項の「特定項目」の一例)の判定値
中性脂肪濃度については、第1判定値以下であれば1点加点、第2基準値以上であれば1点減点とし、2つの判定値を設定した。ここで、図10に、中性脂肪濃度について、第1判定値及び第2判定値を設定した場合(I)、並びに、第1判定値のみを設定した場合(II)のROC曲線を示す。中性脂肪濃度以外の検査項目については、同一条件である。感度が同じ1.0(100%)のとき、IIよりもIの方が、特異度が大きいことから、第2判定値を設けた方が推定精度は高くなる。なお、図10では、JCCLSが定めた中性脂肪濃度の基準範囲の「下限値」を第1判定値とし、「上限値」を第2判定値として用いた。
ビタミンA欠乏推定装置の表示部
続いて、図9を参照してビタミンA欠乏推定装置1の表示部13について述べる。図9は、表3のパターン[A]に対応したビタミンA欠乏の推定票又は電子カルテの表示画面を例示した図である。項目表示部31は、紙面又は電磁媒体上に、各一般検査項目(ルーチン検査項目)を表示する。判定値表示部33は、検査項目ごとの判定値を表示する。点数表示部35は、検査項目ごとに所定の条件下で加算される項目点数を表示する。最終判定点数表示部37は、ビタミンA欠乏の可能性が高いか否かの閾値(本願請求項に記載の「最終判定点数」の一例)を表示する。
ここで、ビタミンA欠乏推定票の使用方法について述べる。まず、各検査項目において実測値と判定値の比較を行い、実測値が判定値よりも低ければその検査項目の項目点数を与える。続いて、それぞれの検査項目の項目点数を加算し、合計点数を算出する。最後に、その推定票で設定された最終判定点数と合計点数を比較し、最終判定点数よりも合計点数が大きければ、ビタミンAの欠乏状態であると推定する。
また、ビタミンA欠乏推定装置1の実施にあたって、検査項目の実測値が全て揃わないことも想定される。その場合には、実測値が得られた検査項目の組合せを用いて実施すればよい。
例えば、まず表3のパターン[A]の検査項目の実測値が判明している場合は、各項目の項目点数を合計した合計点数が最終判定値3点以上であればビタミンA欠乏と推定する。パターン[A]の6か月体重変化率だけ実測値が得られなかった場合は、パターン[B]について実施し、合計点数が2点以上であればビタミンA欠乏と推定する。
総コレステロール濃度又は中性脂肪濃度の実測値が得られず、表3のパターン[C]の検査項目の実測値が判明している場合は、各項目の項目点数を合計した合計点数が最終判定値3点以上であればビタミンA欠乏と推定する。パターン[C]の6か月間の体重変化率だけ実測値が得られなかった場合は、パターン[D]について実施し、合計点数が2点以上であればビタミンA欠乏と推定する。
パターン[A]から[D]のような、複数の検査項目の組み合わせによるビタミンA欠乏の推定では、検体検査項目の判定値には「既知の基準範囲の下限値」又は「境界値R」のどちらも用いても良い。どちらも高感度・高特異度な推定結果が得られたが、JCCLSの基準範囲の下限値を用いた場合の推定結果の方が優れていた。
複数の検査項目の実測値が得られず、6か月間の体重変化率、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、尿酸濃度、又は、ナトリウムイオン濃度のいずれか1つの実測値が判明している場合は、その検査項目の判定値より実測値が低ければ、ビタミンA欠乏と推定する。ただし、1つの検体検査項目に基づいて実施する場合は、ナトリウムイオン濃度の判定値にはJCCLSの基準範囲の下限値を用いても良いが、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、及び、尿酸濃度の判定値には、予備調査で求めた「境界値R」を用いる必要がある。
なお、図9に示す推定票では項目点数を整数としているが、項目点数の重みづけは整数でなくても良い。ここで、項目点数を整数にした理由は、このシステムがコンピュータのみならず、病院のベッドサイドで医療スタッフの手計算により判定できるようにするためである。
また、電子カルテとして機能する場合、ビタミンA欠乏推定装置1は、実測値が判定値を下回った項目について、強調表示部39は、文字色若しくは欄の背景色を変える、マーカーを付す、文字や欄を丸などで囲む等といった強調表示を行う。また、点数表示部35は、合計点数を表示する。さらに、強調表示部39は、最終推定結果として合計点数が1点以上の場合の「ビタミンA欠乏の可能性が高い」等の推定結果の表示に対して強調表示を行う。
さらに、表示部13は、図9に例示した推定票の一部のみを表示するものであってもよい。例えば、6か月間の体重変化率、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度、尿酸濃度の検査項目であれは、1つの検査項目についてのみ表示され、推定に用いられる場合でも高感度・高特異度の推定ができる。また、表示部13に、検査項目ごとに実測値が判定値を下回ったか否かを入力するためのチェックボックス又はその他の入力受付部(本願請求項における「入力受付手段」の一例)を表示してもよい。
図9を紙媒体の簡易推定票と見れば、実測値が判定値を下回った項目について、文字色若しくは欄の背景色を変える、マーカーを付す、丸などで囲む等といった強調表示を医師又は血液検査担当者が行う。同様に、合計点数の記入や推定結果の強調表示も医師又は血液検査担当者が行う。表示部13は、項目、判定値及び最終判定点数を紙媒体に表示する。
なお、各検査項目の判定値は、実施例で例示した数値でなくともよい。対象集団ごとに、あるいは、病院ごとに採用されている検査の判定値に変更可能であり、老若男女の多彩な患者集団に応用可能である。
また、本発明が適用可能な地域としては、日常の一般血液検査(いわゆるルーチン検査)に、赤血球数、血小板数、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度、塩素イオン濃度、血糖値、ヘモグロビン濃度、アルブミン濃度、及び、尿酸濃度の検査を実施している国々として先進諸国が想定される。しかし、他の地域においても各検査項目の測定を実施できればよく、それらの国に限定されない。
さらに、本発明が適用される場面として、例えば、病院、長期療養施設、人間ドックなどの検診等が挙げられる。
なお、本発明によるビタミンA欠乏推定装置は、一般検査の結果から疑われる貧血等の他の疾患を否定するものではない。
貧血は「ヘモグロビン濃度が基準値を下回ること」と定義されているため、一般検査でのヘモグロビン濃度が基準範囲未満の場合は、すべて貧血と診断される。従来、貧血患者は、ヘモグロビン濃度/赤血球数、ヘマトクリット/赤血球数、ヘモグロビン濃度/ヘマトクリットから、大球正高色素性貧血、正球性貧血、小球性低色素性貧血などに分類されたうえで、ビタミンB12欠乏、葉酸欠乏、鉄欠乏性、腎性、再生不良性、骨髄増殖性疾患によるものなどについての原因精査が行われる。このビタミンA欠乏推定装置のヘモグロビン濃度だけを用いる方法では、ヘモグロビン濃度が低い人(貧血患者)の一部がビタミンA欠乏と推定される。ビタミンA欠乏による貧血は知られていない。
同様に、本発明のビタミンA欠乏推定装置では、アルブミン濃度が低い患者の多くが、ビタミンA欠乏状態にあると推定されるが、低アルブミン血症をきたす他の疾患(ネフローゼ症候群や肝硬変など)を否定するものではない。その他、抗利尿ホルモン分泌異常症(SIADH)や塩分摂取不足は、ナトリウムイオン濃度や塩素イオン濃度が低値を示すが、本発明のビタミンA欠乏推定装置はこれらを否定するものではない。また、中性脂肪の低下やコレステロールの低下、血小板の増加や早朝空腹時血糖の高値をきたす疾患を否定するものではない。
1・・・ビタミンA欠乏推定装置、3・・・記憶部、5・・・比較部、7・・・決定部、9・・・算出部、11・・・推定部、13・・・表示部、15・・・印刷制御部、17・・・項目比較部、19・・・点数比較部、21・・・加算部、23・・・重み付け部、25・・・第1推定部、27・・・第2推定部、29・・・第3推定部、31・・・項目表示部、33・・・判定値表示部、35・・・項目点数表示部、37・・・最終判定点数表示部、39・・・強調表示部、41・・・判定値記憶部、43・・・実測値記憶部、45・・・最終判定点数記憶部

Claims (13)

  1. 血清中のビタミンAの欠乏状態を推定するビタミンA欠乏推定装置であって、
    ビタミンA濃度実測検査とは異なる検査項目の判定値を記憶する判定値記憶手段と、
    前記検査項目の実測値を記憶する実測値記憶手段と、
    ビタミンAの欠乏状態であるか否かを推定する推定手段を備え、
    前記検査項目には、検体検査に基づく検査項目である検体検査項目が含まれ、
    前記検体検査項目は、ナトリウムイオン濃度、塩素イオン濃度、中性脂肪濃度及び総コレステロール濃度であり、
    前記推定手段は、前記実測値記憶手段に記憶された実測値について、所定の判定値を設定して、前記検査項目の実測値が、前記所定の判定値に基づく条件を満たす場合に、ビタミンAの欠乏状態であると推定する、ビタミンA欠乏推定装置。
  2. 血清中のビタミンAの欠乏状態を推定するビタミンA欠乏推定装置であって、
    ビタミンA濃度実測検査とは異なる検査項目の判定値を記憶する判定値記憶手段と、
    前記検査項目の実測値を記憶する実測値記憶手段と、
    ビタミンAの欠乏状態であるか否かを推定する推定手段を備え、
    前記検査項目には、検体検査に基づく検査項目である検体検査項目が含まれ、
    前記検体検査項目は、ナトリウムイオン濃度、塩素イオン濃度及び赤血球数であり、
    前記推定手段は、前記実測値記憶手段に記憶された実測値について、所定の判定値を設定して、前記検査項目の実測値が、前記所定の判定値に基づく条件を満たす場合に、ビタミンAの欠乏状態であると推定する、ビタミンA欠乏推定装置
  3. 血清中のビタミンAの欠乏状態を推定するビタミンA欠乏推定装置であって、
    ビタミンA濃度実測検査とは異なる検査項目の判定値を記憶する判定値記憶手段と、
    前記検査項目の実測値を記憶する実測値記憶手段と、
    ビタミンAの欠乏状態であるか否かを推定する推定手段を備え、
    前記検査項目には、6か月間の体重変化率、及び、検体検査に基づく検査項目である検体検査項目が含まれ、
    前記検体検査項目は、ナトリウムイオン濃度、塩素イオン濃度、中性脂肪濃度及び総コレステロール濃度であり、
    前記推定手段は、前記実測値記憶手段に記憶された実測値について、所定の判定値を設定して、前記検査項目の実測値が、前記所定の判定値に基づく条件を満たす場合に、ビタミンAの欠乏状態であると推定する、ビタミンA欠乏推定装置
  4. 血清中のビタミンAの欠乏状態を推定するビタミンA欠乏推定装置であって、
    ビタミンA濃度実測検査とは異なる検査項目の判定値を記憶する判定値記憶手段と、
    前記検査項目の実測値を記憶する実測値記憶手段と、
    ビタミンAの欠乏状態であるか否かを推定する推定手段を備え、
    前記検査項目には、6か月間の体重変化率、及び、検体検査に基づく検査項目である検体検査項目が含まれ、
    前記検体検査項目は、ナトリウムイオン濃度、塩素イオン濃度及び赤血球数であり、
    前記推定手段は、前記実測値記憶手段に記憶された実測値について、所定の判定値を設定して、前記検査項目の実測値が、前記所定の判定値に基づく条件を満たす場合に、ビタミンAの欠乏状態であると推定する、ビタミンA欠乏推定装置
  5. 前記判定値が、健常者の前記検体検査項目の実測値に基づいて定められた既知の基準範囲の下限値である、請求項1から4のいずれかに記載のビタミンA欠乏推定装置
  6. 前記実測値記憶手段に記憶された実測値と前記判定値記憶手段に記憶された判定値とを比較する項目比較手段と、
    前記項目比較手段による比較結果に基づいて、前記検査項目のそれぞれにおいて、点数を決定する決定手段と、
    前記検査項目のそれぞれの点数を加算して合計点数を算出する算出手段と、
    前記合計点数に対応し、ビタミンAの欠乏状態であると推定する基準となる最終判定点数を記憶する最終判定点数記憶手段と、
    前記合計点数と前記最終判定点数とを比較する点数比較手段とを備え、
    前記推定手段は、前記点数比較手段の比較結果に基づいて、ビタミンAの欠乏状態であると推定する、請求項1から5のいずれかに記載のビタミンA欠乏推定装置
  7. 前記算出手段は、前記検査項目のそれぞれの点数を重み付けて加算して合計点数を算出する、請求項6に記載のビタミンA欠乏推定装置
  8. 印刷装置を制御するためのコンピュータを、前記印刷装置に、請求項1から7のいずれかに記載の推定手段による推定結果を印刷させる推定結果印刷制御手段として機能させるためのプログラム
  9. コンピュータを、
    ビタミンA濃度実測検査とは異なる検査項目の判定値を記憶する判定値記憶手段と、
    前記検査項目のそれぞれに対応する実測値を記憶する実測値記憶手段と、
    ビタミンAの欠乏状態であるか否かを推定する推定手段として機能させるためのプログラムであって、
    前記検査項目には、検体検査に基づく検査項目である検体検査項目が含まれ、
    前記検体検査項目は、ナトリウムイオン濃度、塩素イオン濃度、中性脂肪濃度及び総コレステロール濃度であり、
    前記推定手段は、前記実測値記憶手段に記憶された実測値について、所定の判定値を設定して、前記検査項目の実測値が、前記所定の判定値に基づく条件を満たす場合に、ビタミンAの欠乏状態であると推定する、プログラム
  10. コンピュータを、
    ビタミンA濃度実測検査とは異なる検査項目の判定値を記憶する判定値記憶手段と、
    前記検査項目のそれぞれに対応する実測値を記憶する実測値記憶手段と、
    ビタミンAの欠乏状態であるか否かを推定する推定手段として機能させるためのプログラムであって、
    前記検査項目には、検体検査に基づく検査項目である検体検査項目が含まれ、
    前記検体検査項目は、ナトリウムイオン濃度、塩素イオン濃度及び赤血球数であり、
    前記推定手段は、前記実測値記憶手段に記憶された実測値について、所定の判定値を設定して、前記検査項目の実測値が、前記所定の判定値に基づく条件を満たす場合に、ビタミンAの欠乏状態であると推定する、プログラム
  11. コンピュータを、
    ビタミンA濃度実測検査とは異なる検査項目の判定値を記憶する判定値記憶手段と、
    前記検査項目のそれぞれに対応する実測値を記憶する実測値記憶手段と、
    ビタミンAの欠乏状態であるか否かを推定する推定手段として機能させるためのプログラムであって、
    前記検査項目には、6か月間の体重変化率、及び、検体検査に基づく検査項目である検体検査項目が含まれ、
    前記検体検査項目は、ナトリウムイオン濃度、塩素イオン濃度、中性脂肪濃度及び総コレステロール濃度であり、
    前記推定手段は、前記実測値記憶手段に記憶された実測値について、所定の判定値を設定して、前記検査項目の実測値が、前記所定の判定値に基づく条件を満たす場合に、ビタミンAの欠乏状態であると推定する、プログラム
  12. コンピュータを、
    ビタミンA濃度実測検査とは異なる検査項目の判定値を記憶する判定値記憶手段と、
    前記検査項目のそれぞれに対応する実測値を記憶する実測値記憶手段と、
    ビタミンAの欠乏状態であるか否かを推定する推定手段として機能させるためのプログラムであって、
    前記検査項目には、6か月間の体重変化率、及び、検体検査に基づく検査項目である検体検査項目が含まれ、
    前記検体検査項目は、ナトリウムイオン濃度、塩素イオン濃度及び赤血球数であり、
    前記推定手段は、前記実測値記憶手段に記憶された実測値について、所定の判定値を設定して、前記検査項目の実測値が、前記所定の判定値に基づく条件を満たす場合に、ビタミンAの欠乏状態であると推定する、プログラム
  13. 請求項8から12に記載のプログラムを記録するコンピュータ読み取り可能な記録媒体
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