JP6421398B2 - 亜鉛欠乏推定装置、プログラム及び記録媒体 - Google Patents

亜鉛欠乏推定装置、プログラム及び記録媒体 Download PDF

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Description

本発明は、血清中の亜鉛の欠乏状態を推定する亜鉛欠乏推定装置、プログラム及び記録媒体に関するものである。
発明者らは、これまで病院と協力して栄養に関する共同研究を行ってきており、一般的な病院給食は、複数の栄養素が厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」を満たしておらず、これらの食事だけを長期に摂取するとビタミンやミネラルが欠乏する危険性を明らかにしてきた(非特許文献1−7参照)。
一般に、高齢者は、食欲の低下や固形食を忌避する傾向があるため、献立の栄養価から予想される以上の栄養欠乏が危惧される。例えば、高齢者や長期療養者には亜鉛欠乏者が多く、研究によっては対象集団の50%を超える欠乏者数を報告しているものがある。
そこで発明者らは、被験者本人と家族の書面による同意を得る等の手続きを経て、1年以上の入院患者43名を対象に、血清中の亜鉛濃度の測定(以下、血清中の亜鉛濃度を「亜鉛濃度」といい、その測定を「亜鉛濃度実測検査」という。)を行った。その結果、43名中の21名、つまり、対象とした入院患者の48.8%が亜鉛不足であると判明した。
対象とした病院では、比較的良質な食事が提供されている。それにも関わらず亜鉛欠乏状態の入院患者が多かったことから、他の病院の長期療養者は更にひどい欠乏状態に陥っている可能性があると推測される。したがって、亜鉛の欠乏状態を把握することは非常に重要である。
通常、亜鉛の欠乏状態の診断には、症状の有無に関わらず、亜鉛濃度実測検査が最も重要な手段である。しかし、一般的には亜鉛濃度実測検査が定期的に行われることはなく、入院中の定期検査に組み込まれることも極めて少ない(図10の[I])。
また、亜鉛濃度実測検査の平成27年度診療報酬検査料金は1460円であり、一般の血液検査(例:アルブミン濃度検査は110円)より検査料金が高価である。そのため、長期療養者に適用される包括診療(どのような医療を行っても毎月の診療報酬は定額)では、実施されにくい検査である。また、精神疾患や認知症などの慢性疾患による長期療養者、あるいは、わが国の人口の24%を超える老年者全員に画一的に医療費を支出し、亜鉛濃度実測検査を実施することも実用的ではない。
亜鉛濃度実測検査が行われる場合としては、長期の経静脈高カロリー輸液実施時の亜鉛欠乏状態の把握、腸性肢端皮膚炎の診断とその治療効果の判定、亜鉛欠乏症の診断とその治療効果の判定に限定されている(非特許文献8)。亜鉛欠乏症の典型的な症状は、口角炎、皮膚炎、脱毛症、味覚障害などである。
しかし、病初期の亜鉛欠乏症は、自覚的所見又は他覚的所見を欠くことがあるため、日常診療において見逃されることが多い(図10の[II])。
そこで、亜鉛については、多くの食品中の亜鉛含有量が判明しているため、食事のアセスメントにより、亜鉛欠乏の高リスク者を早期に推定する方法が提案されている(非特許文献9、10)。摂取した食事の内容から亜鉛摂取量を算出し、亜鉛摂取量が少ない者を亜鉛欠乏の高リスク者と推定する。推定された高リスク者に対し、更に亜鉛濃度実測検査、爪・毛髪等の精密検査、総合的栄養評価を行うことで、亜鉛欠乏の診断がなされる(図10の[III])。
森山耕成、外13名、「Nutritive values of energy-control hospital menus in the Munakata area」、Bulletin of Nakamura Gakuen University、2015年3月、第47号、p.173-181 森山耕成、外3名、「病院食での貝類の活用と食感染予防に関する予備調査」、中村学園大学・中村学園大学短期大学部研究紀要、2015年3月、第47号、p.169-172 森山耕成、外12名、「病院で実施された一般食献立の栄養価」、臨床と研究、2013年10月、第90巻、第10号、p.1379-1385 森山耕成、外5名、「肥満治療のための1200 kcal献立集に掲載された栄養価とその調理の工夫」、中村学園大学・中村学園大学短期大学部研究紀要、2012年3月、第44号、p.243-250 森山耕成、外10名、「Nutritive values of standard and energy-restricted menus of hospitals in the Munakata area」、Clinical Nutrition、2012年、第7巻、S124 森山耕成、外5名、「市販のエネルギー制限食献立集に掲載されている食事の栄養価の検証」、中村学園大学・中村学園大学短期大学部研究紀要、2011年3月、第43号、p.251−258 森山耕成、外11名、「ビタミンが充足し満腹感の得られる肥満治療食の提案」臨床と研究、2010年10月、第87巻、第10号、p.1482−1488 櫻林郁之介、外7名、「最新 臨床検査項目辞典」、医歯薬出版株式会社、2008年3月、p282 Barbara Harland、外1名、「A NON-INVASIVE TOOL FOR PREDICTING HUMAN ZINC DEFICIENCY」、The FASEB Journal、アメリカ、2013年、第27巻、860.1 Sarah Cadet、外2名、An examination of certain foods which may predict a zinc deficiency. The FASEB Journal、アメリカ、2012年、第26巻、812.5
しかしながら、亜鉛摂取量に基づく亜鉛欠乏高リスク者の推定方法は、献立の栄養価計算とともに摂取した食事の種類と量を詳細に記録することを要するため、手間がかかり、高齢者自身や医療スタッフが恒常的に実施することは極めて難しい。また、個人の年齢、活動量又は健康状態等に応じて亜鉛の必要量や代謝量は変わってくるため、推定の精度が高くない。そのため、より高精度かつ簡便な亜鉛欠乏の推定方法が望まれている。
本発明は、容易に実施でき、安価でありながら高感度に亜鉛欠乏を推定する亜鉛欠乏推定装置等を提供することを目的とする。
本発明の第1の観点は、血清中の亜鉛の欠乏状態を推定する亜鉛欠乏推定装置であって、亜鉛濃度実測検査とは異なる検査項目の判定値を記憶する判定値記憶手段と、前記検査項目の実測値を記憶する実測値記憶手段と、亜鉛の欠乏状態であるか否かを推定する推定手段を備え,前記検査項目には、検体検査に基づく検査項目である検体検査項目が含まれ、前記推定手段は、前記実測値記憶手段に記憶された実測値のうち、1つ以上の検査項目において、前記判定値記憶手段に記憶された判定値よりも低いならば、亜鉛の欠乏状態であると推定する、亜鉛欠乏推定装置である。
本発明の第2の観点は、第1の観点の亜鉛欠乏推定装置であって、前記検体検査項目は、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット、アルブミン濃度、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度、又は、塩素イオン濃度である、亜鉛欠乏推定装置である。
ここで、ヘモグロビン濃度、及び、ヘマトクリットは全血中、アルブミン濃度、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度、及び、塩素イオン濃度は血清中における濃度又は割合であり、略号としては、Hb、Ht、Alb、T-Chol、TG、Na、Clをそれぞれ用いる。
本発明の第3の観点は、第1の観点の亜鉛欠乏推定装置であって、前記判定値が、健常者の前記検体検査項目の実測値に基づいて定められた既知の基準範囲の下限値である、亜鉛欠乏推定装置である。
本発明の第4の観点は、第1から第3の観点のいずれかに記載の亜鉛欠乏推定装置であって、前記検査項目には、前記検体検査項目が2つ以上含まれる、亜鉛欠乏推定装置である。
本発明の第5の観点は、第1から第4の観点のいずれかに記載の亜鉛欠乏推定装置であって、前記検査項目のうちの特定項目における第1判定値である特定項目第1判定値を記憶する特定項目第1判定値記憶手段と、
前記特定項目における第2判定値である特定項目第2判定値を記憶する特定項目第2判定値記憶手段を備え、
前記実測値記憶手段は、前記特定項目の実測値である特定項目実測値を記憶する特定項目実測値記憶手段を備え、
前記特定項目第2判定値は、前記特定項目第1判定値よりも高いものであり、
前記推定手段は、
前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値未満の場合、
前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値以上かつ前記特定項目第2判定値未満の場合であって、前記特定項目以外の1つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のとき、
又は、
前記特定項目実測値が前記特定項目第2判定値以上の場合であって、前記特定項目以外の2つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のときに、亜鉛の欠乏状態であると推定する。
本発明の第6の観点は、第5の観点の記載の亜鉛欠乏推定装置であって、前記検体検査項目は、ヘモグロビン濃度、アルブミン濃度、及び、中性脂肪濃度であり、前記特定項目は、前記中性脂肪濃度である、亜鉛欠乏推定装置である。
本発明の第7の観点は、第5の観点の亜鉛欠乏推定装置であって、前記検体検査項目は、ヘモグロビン濃度、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、及び、塩素イオン濃度であり、前記特定項目は、前記中性脂肪濃度である、亜鉛欠乏推定装置である。
本発明の第8の観点は、第5の観点の亜鉛欠乏推定装置であって、前記検体検査項目は、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、及び、塩素イオン濃度であり、前記特定項目は、前記中性脂肪濃度である、亜鉛欠乏推定装置である。
本発明の第9の観点は、第5の観点の亜鉛欠乏推定装置であって、前記検体検査項目は、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット、アルブミン濃度、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度、及び、塩素イオン濃度であり、前記特定項目は、前記中性脂肪濃度であり、
前記推定手段は、
前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値未満の場合、
前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値以上かつ前記特定項目第2判定値未満の場合であって、前記特定項目以外の1つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のとき、
又は、
前記特定項目実測値が前記特定項目第2判定値以上の場合であって、
前記特定項目以外の2つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のとき、
ヘモグロビン濃度の実測値が判定値未満のとき、
若しくは、アルブミン濃度の実測値が判定値未満のときに、亜鉛の欠乏状態であると推定する、亜鉛欠乏推定装置である。
本発明の第10の観点は、第5の観点の亜鉛欠乏推定装置であって、前記検体検査項目は、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット、アルブミン濃度、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度、及び、塩素イオン濃度であり、前記特定項目は、前記中性脂肪濃度であり、
前記推定手段は、
前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値未満の場合、
前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値以上かつ前記特定項目第2判定値未満の場合であって、前記特定項目以外の1つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のとき、
又は、
前記特定項目実測値が前記特定項目第2判定値以上の場合であって、
前記特定項目以外の2つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のとき、
若しくは、ヘマトクリットの実測値が判定値未満のときに、亜鉛の欠乏状態であると推定する、亜鉛欠乏推定装置である。
本発明の第11の観点は、第5の観点の亜鉛欠乏推定装置であって、前記検体検査項目は、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット、アルブミン濃度、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度、及び、塩素イオン濃度であり、前記特定項目は、前記中性脂肪濃度であり、
前記推定手段は、
前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値未満の場合、
前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値以上かつ前記特定項目第2判定値未満の場合であって、前記特定項目以外の1つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のとき、
又は、
前記特定項目実測値が前記特定項目第2判定値以上の場合であって、
前記特定項目以外の2つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のとき、
若しくは、アルブミン濃度の実測値が判定値未満のときに、亜鉛の欠乏状態であると推定する、亜鉛欠乏推定装置である。
本発明の第12の観点は、第5の観点の亜鉛欠乏推定装置であって、前記検体検査項目は、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット、アルブミン濃度、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度、及び、塩素イオン濃度であり、前記特定項目は、前記中性脂肪濃度である、亜鉛欠乏推定装置である。
本発明の第13の観点は、第1から第12の観点のいずれかに記載の亜鉛欠乏推定装置であって、
前記実測値記憶手段に記憶された実測値と前記判定値記憶手段に記憶された判定値とを比較する項目比較手段と、
前記項目比較手段による比較結果に基づいて、前記検査項目のそれぞれにおいて、項目点数を決定する決定手段と、
前記検査項目のそれぞれの項目点数を加算して合計点数を算出する算出手段と、
前記合計点数に対応し、亜鉛の欠乏状態であるか否かを推定する分岐点となる最終判定点数を記憶する最終判定点数記憶手段と、
前記合計点数と前記最終判定点数とを比較する点数比較手段とを備え、
前記推定手段は、前記点数比較手段の比較結果に基づいて、亜鉛の欠乏状態であると推定する。
本発明の第14の観点は、第13の観点の亜鉛欠乏推定装置であって、
前記算出手段は、前記検査項目のそれぞれの項目点数を重み付けて加算して合計点数を算出する、亜鉛欠乏推定装置である。
本発明の第15の観点は、
血清中の亜鉛の欠乏状態を推定する亜鉛欠乏推定装置であって、
亜鉛濃度実測検査とは異なる検査項目の判定値を表示させる判定値表示手段と、
前記検査項目のそれぞれについて、実測値が前記判定値以上であるか否かの入力を受け付ける入力受付手段と、
亜鉛の欠乏状態であるか否かを推定する分岐点となる最終判定点数を記憶する最終判定点数記憶手段と、
亜鉛の欠乏状態を推定する推定手段を備え、
前記検査項目には、検体検査に基づく検査項目である検体検査項目が含まれ、
前記推定手段は、前記入力受付手段に入力された入力内容と前記最終判定点数に基づいて亜鉛の欠乏状態であるか否かを推定する。
本発明の第16の観点は、
印刷装置を制御するためのコンピュータを、
前記印刷装置に、第1から第15の観点のいずれかに記載の推定手段による推定結果を印刷させる推定結果印刷制御手段として機能させるためのプログラムである。
本発明の第17の観点は、
コンピュータを、
亜鉛濃度実測検査とは異なる検査項目の判定値を記憶する判定値記憶手段と、
前記検査項目のそれぞれに対応する実測値を記憶する実測値記憶手段と、
亜鉛の欠乏状態であるか否かを推定する推定手段として機能させるためのプログラムであって、
前記検査項目には、検体検査に基づく検査項目である検体検査項目が含まれ、
前記推定手段は、前記実測値記憶手段に記憶された実測値のうち、1つ以上の前記検査項目において、前記判定値記憶手段に記憶された判定値よりも低いならば、亜鉛の欠乏状態であると推定する、プログラムである。
本発明の第18の観点は、第16又は第17の観点のプログラムを記録するコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
本発明の第19の観点は、血清中の亜鉛の欠乏状態を推定する亜鉛欠乏推定方法であって、亜鉛濃度実測検査とは異なる検査項目において、実測値が判定値よりも低いならば、亜鉛の欠乏状態であると推定する推定ステップを含む、ビタミンA欠乏推定方法である。なお、本発明の第19の観点の推定方法における推定ステップでは、亜鉛欠乏推定装置が備える推定手段が推定するものであってもよい。さらに、本発明の第20の観点は、コンピュータに、第19の観点の亜鉛欠乏推定方法における推定ステップを実行させるためのプログラムである。さらに、本発明の第21の観点は、第21の観点のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な、一時的でない記録媒体である。
本発明の各観点によれば、高価な亜鉛濃度実測検査をすることなく、精度よく亜鉛の欠乏状態であるか否かを推定することが可能となる。亜鉛濃度実測検査とは異なる検査項目に基づいて、亜鉛欠乏を推定できる亜鉛欠乏推定装置等は、本発明の発明者らによって初めて提案されたものである。
従来、亜鉛濃度の基準範囲内においては、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット又はアルブミン濃度が、亜鉛濃度との有意な正の相関を有することが複数の学術雑誌に報告されていた。しかし、当該相関を報告した論文では、亜鉛濃度が基準範囲の人のデータが大部分であり、亜鉛欠乏とされる低濃度範囲でどのような相関になるかは明らかにされていなかった。また、本発明の発明者らが、亜鉛濃度及びヘモグロビン濃度等のデータを用いて、直線回帰式を作成し、亜鉛の欠乏状態の推定を試みたところ、亜鉛低濃度範囲では回帰直線から大きく外れることを見出した。さらに、重回帰分析においては、亜鉛濃度実測値が低いほど、回帰式で高く算出されてしまい、実測値が小さいほど予測式による値との残差が大きいことを見出した。つまり、直線回帰や重回帰では、真の亜鉛欠乏者の推定値が高く見積もられ、亜鉛濃度が正常と誤診されてしまう可能性があることが判明した。これらのことが、ヘモグロビン濃度等の検査項目に基づいて亜鉛の欠乏状態の推定を行うことの阻害要因となっていたと考えられる。
また、本発明の各観点によれば、亜鉛欠乏者を高感度・高特異度で推定することが可能である。この検査としての顕著な有用性は、実施例で示すように本発明の発明者らによって初めて実証された。高感度・高特異度で亜鉛欠乏を推定することが可能な本発明は、亜鉛濃度が基準範囲内の人では、ヘモグロビン濃度等が亜鉛濃度と相関を有するとの公知の知見のみから、当業者が容易に想到できるものではなく、現在まで実施されていない。
また、本発明の各観点によれば、日常診療で実施されている検査項目単独又はそれを組み合わせて推定することができるため、亜鉛濃度実測検査という追加の経済および身体的負担なく、極めて精度良く亜鉛欠乏の高リスク者を推定することが可能となる。また、日常診療において一般的な血液検査の結果がでるたびに、亜鉛の欠乏の推定ができる。そのため、担当医が患者の欠乏症状を見逃していても、又は、欠乏症状の出現前に、亜鉛の欠乏状態か否かを推定可能となる。つまり、一般的な血液検査には含まれない亜鉛濃度実測検査を早期に必要十分なだけ実施することが可能となる(図11)。
ここで、本発明の第2の観点の効果に関連して、発明者らの研究により、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット、アルブミン濃度、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度、及び、塩素イオン濃度の各検査項目は、約90の検査項目や内服状況についてそれぞれ、判定値を超えるか否か、及び、亜鉛が低値か否かの2×2の分割表によるχ2乗検定で有意な偏りがあったものを選択することにより抽出された。t検定や重回帰分析では抽出できない検査項目を抽出できたことが、本発明のポイントの1つである。
本発明の第2の観点によれば、高感度かつ高特異度に、亜鉛の欠乏状態か否かを推定することが容易となる。
本発明の第3の観点によれば、判定値を定めるための予備調査を行うことなく、亜鉛の欠乏状態を推定することが可能となる。
JCCLSでは、一定の基準を満たす健常者を基準個体として、その測定値の中央95%の区間を基準範囲と定めている。亜鉛欠乏と関連なく設定された基準範囲を用いても、高い精度で亜鉛欠乏を推定可能であることは、当業者が容易に想到できることではない。
本発明の第4の観点によれば、複数の検体検査項目を組み合わせることにより、さらに精度よく亜鉛の欠乏状態か否かを推定することが可能となる。
一般に、検査の有用性を示す指標として、受信者操作特性(Receiver Operating Characteristic:ROC)を表すROC曲線のAUCが用いられる。AUCとは、ROC曲線の下の面積(Area Under Curve:AUC)の値であり、0.5から1の範囲の値をとり、1に近いほど検査としての有用性は高い。例えば、ヘモグロビン濃度のみを検査項目とし、ヘモグロビン濃度が判定値以下であれば亜鉛の欠乏状態であると推定する亜鉛欠乏推定装置のAUCは0.76である。ヘモグロビン濃度と塩素イオン濃度の2項目を検査項目とし、どちらか一方でも判定値以下であれば亜鉛の欠乏状態であると推定する亜鉛欠乏推定装置のAUCは0.84に上がる。このように、複数の検査項目を組み合わせることで、さらに精度よく亜鉛の欠乏状態であるか否かを推定することが可能となる。
本発明の第5の観点によれば、検査項目のうち特定項目に着目して2つの判定値を設定することにより、判定値を1つしか設定しない場合よりも、さらに精度よく亜鉛の欠乏状態であるか否かを推定することが可能となる。
本発明の第6の観点によれば、65歳以上の患者43名の対象群うち実際に亜鉛欠乏状態である患者を、感度100%、特異度77.3%の精度で亜鉛欠乏と推定できた。同じく本発明の第6の観点によれば、感度90.5%、特異度90.9%の精度で推定できた。このように、高感度かつ高特異度で亜鉛欠乏状態を推定可能となる。
なお、本発明の第6から第12の観点に関連して、総コレステロール濃度が低値を示すのは、甲状腺亢進症や肝障害、タンジール病などであるが、特定のミネラル欠乏症と関連付けられた研究は行われていなかった。むしろ、これらの観点の亜鉛欠乏推定装置の検査項目に含まれる中性脂肪濃度及び総コレステロール濃度の検査項目は、一般的には脂質異常症の診断に用いられ、多くは高栄養状態の者に実施されている検査項目であった。そのため、それらを亜鉛欠乏等の低栄養状態の者のための検査項目として用いるには阻害要因があった。
さらに、本発明の第13の観点によれば、定量的な推定を行うことが容易となる。
本発明の第14の観点によれば、それぞれの検査項目に異なる点数を重み付けすることにより、推定精度を高めることが容易となる。
さらに本発明の第15の観点によれば、亜鉛欠乏の推定に関して定量的な臨床検査報告書や電子カルテを作成することが容易となる。
さらに、本発明の第16の観点によれば、自動検査装置を備える医療施設や検査場において、この評価票を一般検査報告書の印刷装置にプログラムとして組み込むことにより、全く異なる疾患を目的として検査した場合でも、自動的に「亜鉛欠乏の可能性あり」を印字、報告することが可能となる。
実施例1に係る亜鉛欠乏推定装置1の概要を示すブロック図である。 (a)ヘモグロビン濃度、(b)ヘマトクリット、(c)アルブミン濃度、(d)総コレステロール濃度、(e)中性脂肪濃度、(f)ナトリウムイオン濃度、及び、(g)塩素イオン濃度の各項目と亜鉛濃度との相関の有無を示す散布図である。 (a)ヘモグロビン濃度を検査項目として用いた亜鉛欠乏推定方法のROC曲線を示す図である。 (b)ヘマトクリット、(c)アルブミン濃度、(d)総コレステロール濃度、(e)中性脂肪濃度、(f)ナトリウムイオン濃度、及び、(g)塩素イオン濃度の各項目を検査項目として用いた亜鉛欠乏推定方法のROC曲線を示す図である。 塩素イオン濃度及びヘモグロビン濃度の2項目を検査項目として用いた亜鉛欠乏推定方法のROC曲線を示す図である。 図2の7つの検査項目の中から、3項目以上を検査項目として用いた亜鉛欠乏推定方法のROC曲線を示す図である。 検査項目の組合せは同一で、中性脂肪濃度の判定値の数が異なる2パターンの亜鉛欠乏推定方法のROC曲線を示す図である。 図2の7つの検査項目の中から、3項目以上を検査項目として用い、異なる重み付けを行った場合の亜鉛欠乏推定方法のROC曲線を示す図である。 亜鉛欠乏の推定票又は電子カルテに表示される画面を例示した図である。 従来の亜鉛欠乏診断の流れを表す図である。 本発明の亜鉛欠乏推定装置を用いた亜鉛欠乏診断の流れを表す図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施例について述べる。なお、本発明の実施の形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
亜鉛欠乏推定装置
図1は、本発明の実施例に係る、亜鉛の欠乏を推定する亜鉛欠乏推定装置1(本願請求項に記載の「亜鉛欠乏推定装置」の一例)の概要を示すブロック図である。
亜鉛欠乏推定装置1は、医療施設で頻繁に実施される血液一般検査の一部(ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット、アルブミン濃度、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度及び塩素イオン濃度)の実測値(本願請求項に記載の「実測値」の一例)を組み合せることにより、一般的には実測されない亜鉛濃度とは異なる成分の実測値に基づいて、亜鉛濃度が正常値(基準範囲の下限値)を下回っていること(65μg/dL未満)を推定する推定装置である。上記において、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット、アルブミン濃度、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度及び塩素イオン濃度は、それぞれ本願請求項に記載の「検査項目」及び「検体検査項目」の一例である。
図1を参照して、亜鉛欠乏推定装置1は、記憶部3と、比較部5と、決定部7(本願請求項に記載の「決定手段」の一例)と、算出部9(本願請求項に記載の「算出手段」の一例)と、推定部11(本願請求項に記載の「推定手段」の一例)と、表示部13と、印刷制御部15(本願請求項に記載の「推定結果印刷制御手段」の一例)とを備える。比較部5は、項目比較部17(本願請求項に記載の「項目比較手段」の一例)と、点数比較部19(本願請求項に記載の「点数比較手段」の一例)とを備える。算出部9は、加算部21と、重み付け部23とを備える。推定部11は、第1推定部25と、第2推定部27と、第3推定部29とを備える。表示部13は、項目表示部31と、判定値表示部33(本願請求項に記載の「判定値表示手段」の一例)と、点数表示部35と、最終判定点数表示部37と、強調表示部39とを備える。記憶部3は、判定値記憶部41(本願請求項に記載の「判定値記憶手段」の一例)と、実測値記憶部43(本願請求項に記載の「実測値記憶手段」の一例)と、最終判定点数記憶部45(本願請求項に記載の「最終判定点数記憶手段」の一例)とを備える。
判定値記憶部41は、検査項目ごとの判定値を記憶する個別判定値記憶部411、412、・・・、41を備える。本実施例では、ヘモグロビン判定値記憶部と、ヘマトクリット判定値記憶部と、アルブミン判定値記憶部と、総コレステロール判定値記憶部と、第1中性脂肪判定値記憶部と、第2中性脂肪判定値記憶部と、ナトリウムイオン判定値記憶部と、塩素イオン判定値記憶部とを備える。実測値記憶部は、ヘモグロビン実測値記憶部と、ヘマトクリット実測値記憶部と、アルブミン実測値記憶部と、総コレステロール実測値記憶部と、中性脂肪実測値記憶部(本願請求項に記載の「特定項目実測値記憶手段」の一例である)と、塩素イオン実測値記憶部と、ナトリウムイオン実測値記憶部を備える。ヘモグロビン判定値記憶部は、ヘモグロビン濃度における判定値であるヘモグロビン判定値を記憶する。ヘマトクリット判定値記憶部は、ヘマトクリットにおける判定値であるヘマトクリット判定値を記憶する。アルブミン判定値記憶部は、アルブミン濃度における判定値であるアルブミン判定値を記憶する。総コレステロール判定値記憶部は、総コレステロール濃度における判定値である総コレステロール判定値を記憶する。第1中性脂肪判定値記憶部(本願請求項に記載の「特定項目第1判定値記憶手段」の一例である)は、中性脂肪濃度における第1の判定値である第1中性脂肪判定値(本願請求項に記載の「特定項目第1判定値」の一例である)を記憶する。第2中性脂肪判定値記憶部(本願請求項に記載の「特定項目第2判定値記憶手段」の一例である)は、中性脂肪濃度における第2の判定値である第2中性脂肪判定値(本願請求項に記載の「特定項目第2判定値」の一例である)を記憶する。ここで、第2中性脂肪判定値は、第1中性脂肪判定値よりも高いものである。なお、本実施例において、中性脂肪濃度は、本願請求項に記載の「特定項目」の一例である。ナトリウムイオン判定値記憶部は、ナトリウムイオン濃度における判定値であるナトリウムイオン判定値を記憶する。塩素イオン判定値記憶部は、塩素イオン濃度における判定値である塩素イオン判定値を記憶する。
実測値記憶部43は、測定される各成分の実測値を記憶する個別実測値記憶部431、432、・・・、43を備える。本実施例では、ヘモグロビン実測値記憶部と、ヘマトクリット実測値記憶部と、アルブミン実測値記憶部と、中性脂肪実測値記憶部と、総コレステロール実測値記憶部と、ナトリウムイオン実測値記憶部と、塩素イオン実測値記憶部を備える。ヘモグロビン実測値記憶部は、血液で実測されたヘモグロビン濃度であるヘモグロビン実測値を記憶する。ヘマトクリット実測値記憶部は、血液で実測されたヘマトクリットであるヘマトクリット実測値を記憶する。アルブミン実測値記憶部は、血液で実測されたアルブミン濃度であるアルブミン実測値を記憶する。中性脂肪実測値記憶部は、血液で実測された中性脂肪濃度である中性脂肪実測値を記憶する。総コレステロール実測値記憶部は、血液で実測された総コレステロール濃度である総コレステロール実測値を記憶する。ナトリウムイオン実測値記憶部は、血液で実測されたナトリウムイオン濃度であるナトリウムイオン実測値を記憶する。塩素イオン実測値記憶部は、血液で実測された塩素イオン濃度である塩素イオン実測値を記憶する。
比較部5は、2つの数値を比較する。特に、項目比較部17は、実測する検査項目ごとに、実測値と判定値とを比較する。決定部7は、項目比較部17の比較結果に基づいて、検査項目ごとの項目点数を決定する。算出部9は、決定部7が決定した項目点数の計算を行う。加算部21は、検査項目ごとの項目点数を合計して合計点数(本願請求項に記載の「合計点数」の一例)を算出する。重み付け部23は、必要に応じて検査項目ごとの項目点数に重みを付ける。点数比較部19は、算出部9が算出した合計点数と最終判定点数とを比較する。
推定部11は、点数比較部19における比較結果に基づいて、合計点数が最終判定点数以上であれば、血液における亜鉛の欠乏状態であると推定する。第1推定部25は、中性脂肪実測値が第1中性脂肪判定値よりも低い場合に、血液における亜鉛が欠乏状態であると推定する。
第2推定部27は、中性脂肪実測値が第1中性脂肪判定値以上で、第2中性脂肪判定値以下の場合であって、中性脂肪以外の1つ以上の成分の実測値が判定値よりも低いときに、血液における亜鉛の欠乏状態であると推定する。
第3推定部29は、中性脂肪実測値が第2中性脂肪判定値よりも高い場合であって、中性脂肪濃度以外の2つ以上の成分の実測値が判定値よりも低いときに、血液における亜鉛の欠乏状態であると推定する。
上記のように、中性脂肪実測値によって亜鉛の欠乏状態と推定する是非を場合分けする理由は、後述するように、発明者らの研究によって推定の感度及び特異度が特に高いことが判明したためである。
検査項目の抽出
本発明の発明者らは、65歳以上の患者43名を対象として、通常実施されている血液一般検査に加え、高価な亜鉛濃度実測検査を行った。その結果、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット、アルブミン濃度、中性脂肪濃度、総コレステロール濃度、ナトリウムイオン濃度、及び、塩素イオン濃度の7項目は、約90の検査項目や内服状況についてそれぞれ、判定値を超えるかどうか及び亜鉛が低値かどうかの2×2の分割表によるχ2乗検定で有意な偏りがあったものを選択することにより抽出された。t検定や重回帰分析では抽出できない検査項目を今回抽出できたことが、本発明のポイントの1つである。
この7項目につき、亜鉛濃度との相関を図2に示す。図2は、(a)ヘモグロビン濃度、(b)ヘマトクリット、(c)アルブミン濃度、(d)総コレステロール濃度、(e)中性脂肪濃度、(f)ナトリウムイオン濃度、及び、(g)塩素イオン濃度の各項目と亜鉛濃度との相関を示す散布図である。それぞれの散布図は、有意な相関を示した。
1つの検査項目に基づく亜鉛欠乏推定装置
次に、上記7項目のうちの1項目を検査項目とし、その検査項目の実測値に基づいて、亜鉛欠乏を推定する能力を示すROC曲線を図3及び図4に示す。図3のROC曲線は、(a)ヘモグロビン濃度の実測値と、亜鉛濃度実測結果とを突き合わせることにより得た。図4は、それぞれ、(b)ヘマトクリット、(c)アルブミン濃度、(d)総コレステロール濃度、(e)中性脂肪濃度、(f)ナトリウムイオン濃度、又は、(g)塩素イオン濃度の実測値と、亜鉛濃度実測結果とを突き合わせることにより得た。図3の(a-1)に、ヘモグロビン濃度から血清亜鉛低値を検出するROC曲線を描き、判定値を決定する方法を示す。この集団では、ヘモグロビン濃度11.9g/dLを判定値とし、これ以下の人を「亜鉛欠乏」と推定した場合、集団全体の真の欠乏者のうち86.7%を検出し(感度)、欠乏と推定した集団の中で89.5%が真の欠乏者(特異度)である。この基準値を大小ずらして集計すると表(a-2)ができる。これをプロットしたものがa-1のROC曲線である。点(x=0,y=1)(すなわち、感度(陽性度)=100%、1−特異度(偽陽性度)=0%の点)から最も近い点Rでの検査結果(基準点)を亜鉛欠乏推定装置の判定値とする。図3及び図4に示される通り、各ROC曲線のAUCは大きく、これらを検査項目とした亜鉛欠乏推定装置は、単独でも高い感度・特異度が確保できることが分かる。本発明では、ナトリウムイオン濃度のみを検査項目とした亜鉛欠乏推定装置が最も推定精度が低く、その感度は62%、特異度は73%であった。なお、便潜血1日法による大腸がん検査の感度は56%、特異度97%とする調査がある。したがって亜鉛欠乏の推定の精度の観点からも、上記7項目のいずれか1つのみを検査項目とする、本発明の亜鉛欠乏推定装置は十分有用であるといえる。
また、この図3及び図4のROC曲線からは、点(x=0、y=1)に近いROC曲線上の点Rを、最も精度の良い境界値に対応する点として導くことができる。境界値は、亜鉛欠乏か否かの推定の分岐点とする検査項目の濃度である。点Rに対応する境界値(境界値R)を判定値とすることで、最も精度良く亜鉛欠乏を推定することが可能となる。
2つの検査項目を組み合わせた亜鉛欠乏推定
続いて、図5(A)に、3本のROC曲線(i)、(ii)、(iii)を示す。ROC曲線(i)は、ヘモグロビン濃度の判定値以下であれば1点加点とし、0点か1点の項目点数を与えて亜鉛欠乏か否かを推定する場合の感度及び特異度を表すROC曲線である。ROC曲線(ii)は、塩素イオン濃度が判定値以下であれば1点とし、0点か1点を与えた場合のROC曲線であり、ROC曲線(iii)は、ヘモグロビン濃度が判定値以下であれば1点とし、更に塩素イオン濃度が判定値以下であれば1点を加点し、合計で0点か1点か2点を与えた場合のROC曲線である。ROC曲線(i)、(ii)、(iii)のAUCはそれぞれ、0.736、0.620、0.840であり、ROC曲線(iii)にて最も大きいAUCをとった。つまり、1項目よりも2項目以上の検査項目を用いた方が、推定精度が高く、推定方法として優れていた。
複数の検査項目のうち1項目でも判定値以下であれば亜鉛欠乏と推定すると、感度が上がり、特異度が下がる。全項目で判定値以下であれば亜鉛欠乏と推定すると、感度が下がり、特異度が上がる。このように、複数の検査項目を用いることで、感度と特異度の調整が可能となることが、推定精度が向上した要因である。
なお、図5(A)では、日本臨床検査標準協議会(JCCLS)が定めた各検査項目の「共用基準範囲の下限値」(本願請求項に記載の「既知の基準範囲」の一例である。既知の基準範囲は、JCCLSの定めたものに限らず、各施設で定められた基準範囲でも良い。)を判定値として用いた。それ以外にも、判定値として、図3のような各検査項目の実測値に基づくROC曲線から得られる「境界値」を用いても良い。図5(B)に、境界値Rを判定値とした場合のROC曲線を示す。その場合も、(A)と同様に、1項目よりも2項目の検査項目を用いた方が、推定精度が高く、推定方法として優れていた。
判定値としては、JCCLS等の「基準範囲の下限値」よりも「境界値R」の方が理論的には優れている。ただし、施設ごとに無作為に抽出した10名以上の対象者に図3のようなROC曲線を作成し、境界値Rを定めるための予備調査が必要となる。一方、JCCLS又は施設で定められている基準範囲の下限値を用いれば、予備調査を行うことなく、亜鉛の欠乏状態を推定することが可能である。
3つ以上の検査項目を組み合わせた亜鉛欠乏推定
血液一般検査に含まれている上記の7つの検査項目の検査結果を様々に組み合わせた推定結果と、亜鉛濃度実測検査の結果とを突き合わせることにより、図6に示すROC曲線を得た。この図6のROC曲線は、7つの検査項目について、各々の基準値(正常値)を下回った場合に、項目に応じて1点、2点又は3点の項目点数を加点あるいは減点し(重みづけし)、その合計点数により血清亜鉛低値者を検出するためのものである。また、図6のROC曲線から最適な検査項目の組合せ、重み付け及び最終判定点数を求め、図9に例示する亜鉛欠乏推定票を作成した。
亜鉛欠乏推定票の使用方法について述べる。まず、各検査項目において実測値と判定値の比較を行い、実測値が判定値よりも低ければその検査項目の項目点数を与える。次に、それぞれの検査項目の項目点数を加算し、合計点数を算出する。最後に、その推定票で設定された最終判定点数と合計点数を比較し、最終判定点数よりも合計点数が大きければ、亜鉛の欠乏状態であると推定する。なお、図9に示す推定票では項目点数を整数としているが、項目点数の重みづけは整数でなくても良い。ここで、項目点数を整数にした理由は、このシステムがコンピュータのみならず、病院のベッドサイドで医療スタッフの手計算により判定できるようにするためである。
検査項目の組合せ、項目数、項目点数を変えることで、様々なパターンの推定票が作成される。発明者らは、100を超えるパターンの推定票について、それぞれの推定票に基づいてROC曲線を作成し、そのROC曲線のAUC、感度及び特異度から各推定票の精度を比較し、最適な推定票を検討した。
図6に示すROC曲線は、亜鉛欠乏の推定票において、特に高いAUCが得られた7つのパターンの推定票に基づくものである。また、7つのパターンの推定票における、検査項目の組合せ及び項目点数については、それぞれ表1に示す。
図6からも分かるように、7パターンのいずれにおいても、AUCが大きく、良好な結果が得られた。中でも、パターン(6)及び(7)の場合に、特にAUCが大きかった。パターン(6)及び(7)に対応する推定票を、それぞれ亜鉛欠乏推定票1、2として図9の(a)、(b)に示している。
図9においては、亜鉛が欠乏状態であると推定するか否か判断の分岐点となる最終判定点数を1点とした。感度と特異度はそれぞれ、推定票1では100%、77.3%であり、推定票2では90.5%、90.9%であった。つまり、推定票1及び2を用いて亜鉛欠乏を推定すれば、実際に亜鉛欠乏である患者を、上記のように高感度・高特異度で抽出することができる。
なお、最終判定点数の設定によって、感度及び特異度は変動する。最も高感度かつ高特異度な検査結果が得られる最終判定点数は、ROC曲線上で点(x=0,y=1)に最も近い点の点数である。また、感度と特異度は、一方を上げると他方が下がるという相反関係になる場合がある。感度が高く特異度が低い場合には検査の無駄が生じ、感度が低く特異度が高い場合には真の欠乏者を取りこぼしてしまう。栄養欠乏者の推定においては、取りこぼしが少ない方が望ましいため、特異度は低くても感度がより高くなる点、つまり、縦軸の陽性率が最も高い点を最終判定点数に設定するなど、推定を行う目的や状況に応じて、最終判定点数を変更しても良い。
中性脂肪濃度(本願請求項の「特定項目」の一例)の判定値
中性脂肪濃度については、第1判定値以下であれば1点加点、第2基準値以上であれば1点減点とし、2つの判定値を設定した。ここで、図7に、中性脂肪濃度について、第1判定値及び第2判定値を設定した場合(i)、並びに、第1判定値のみを設定した場合(ii)のROC曲線を示す。中性脂肪濃度以外の検査項目については、同一条件である。(ii)よりも(i)の方がAUCは大きいことから、第2判定値を設けた方が推定精度は高くなることが明らかとなった。なお、図7では、JCCLSが定めた中性脂肪濃度の基準範囲の「下限値」を第1判定値とし、「上限値」を第2判定値として用いた。
項目点数の重み付け
図8は、同一の検査項目を用い、各項目点数について異なる重み付けを行った場合のROC曲線の変化を示す図である。図8に示す通り、項目点数の重み付けによってROC曲線のAUCは変動する。各検査項目の項目点数をAUCが最大となる時の値に設定することで、亜鉛欠乏の推定の精度は向上することが明らかとなった。
亜鉛欠乏推定装置の表示部
続いて、図9を参照して亜鉛欠乏推定装置1の表示部13について述べる。図9(a)、(b)は、それぞれ表1のパターン(6)及び(7)に対応した亜鉛欠乏の推定票又は電子カルテに表示される画面を例示した図である。項目表示部31は、紙面又は電磁媒体上に、早朝空腹時のヘモグロビン濃度、ヘマトクリット、アルブミン濃度、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度、及び、塩素イオン濃度等の検査項目を表示する。判定値表示部33は、検査項目ごとの判定値を表示する。点数表示部35は、検査項目ごとに所定の条件下で加算される項目点数を表示する。最終判定点数表示部37は、亜鉛欠乏の可能性が高いか否かの閾値(本願請求項に記載の「最終判定点数」の一例)を表示する。
電子カルテとして機能する場合、亜鉛欠乏推定装置1は、実測値が判定値を下回った項目について、強調表示部39は、文字色若しくは欄の背景色を変える、マーカーを付す、文字や欄を丸などで囲む等といった強調表示を行う。また、点数表示部35は、合計点数を表示する。さらに、強調表示部39は、最終推定結果として合計点数が1点以上の場合の「亜鉛欠乏の可能性が高い」等の推定結果の表示に対して強調表示を行う。
さらに、表示部13は、図9に例示した推定票の一部のみを表示するものであってもよい。また、表示部13に、検査項目ごとに実測値が判定値を下回ったか否かを入力するためのチェックボックス又はその他の入力受付部(本願請求項における「入力受付手段」の一例)を表示してもよい。
図9を紙媒体の簡易推定票と見れば、実測値が判定値を下回った項目について、文字色若しくは欄の背景色を変える、マーカーを付す、丸などで囲む等といった強調表示を医師又は血液検査担当者が行う。同様に、合計点数の記入や推定結果の強調表示も医師又は血液検査担当者が行う。表示部13は、項目、判定値及び最終判定点数を紙媒体に表示する。
なお、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット、アルブミン濃度、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、塩素イオン濃度、及び、ナトリウムイオン濃度の判定値は、実施例で例示した数値でなくともよい。対象集団ごとに、あるいは、病院ごとに採用されている検査の判定値に変更可能であり、老若男女の多彩な患者集団に応用可能である。
また、本発明が適用可能な地域としては、日常検査(いわゆるルーチン検査)にヘモグロビン濃度、ヘマトクリット、アルブミン濃度、中性脂肪濃度、総コレステロール濃度、ナトリウムイオン濃度、及び、塩素イオン濃度の検査を実施している国々として先進諸国が想定される。しかし、他の地域においてもヘモグロビン濃度、ヘマトクリット、アルブミン濃度、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度、及び、塩素イオン濃度の検査を実施できればよく、それらの国に限定されない。
さらに、本発明が適用される場面として、例えば、病院、長期療養施設、人間ドックなどの検診等が挙げられる。
なお、本発明による亜鉛欠乏推定装置は、日常検査の結果から疑われる貧血等の他の疾患を否定するものではない。
貧血は「ヘモグロビン濃度が基準値を下回ること」と定義されているため、一般検査でのヘモグロビン濃度が基準範囲未満の場合は、すべて貧血と診断される。従来、貧血患者は、ヘモグロビン濃度/赤血球数、ヘマトクリット/赤血球数、ヘモグロビン濃度/ヘマトクリットから、大球正高色素性貧血、正球性貧血、小球性低色素性貧血などに分類されたうえで、ビタミンB12欠乏、葉酸欠乏、鉄欠乏性、腎性、再生不良性、骨髄増殖性疾患によるものなどについての原因精査が行われる。亜鉛欠乏性貧血もこれに含まれる。また、鉄欠乏と亜鉛欠乏など複数の栄養素不足による貧血もあり得る。
この亜鉛欠乏推定装置を用いると、ヘモグロビン濃度が低い人(貧血患者)の多くが亜鉛欠乏と推定される。申請者らが行った、43人の長期療養者を対象とした精査では、亜鉛欠乏と推定された患者のうち過半数が亜鉛欠乏性の貧血であり、鉄欠乏性貧血を合併していた人は1人であった。
同様に、本発明の亜鉛欠乏推定装置では、アルブミン濃度が低い患者の多くが、亜鉛欠乏状態にあると推定されるが、低アルブミン血症をきたす他の疾患(ネフローゼ症候群や肝硬変など)を否定するものではない。その他、抗利尿ホルモン分泌異常症(SIADH)や塩分摂取不足は、ナトリウムイオン濃度や塩素イオン濃度が低値を示すが、本発明の亜鉛欠乏推定装置はこれらを否定するものではない。
1・・・亜鉛欠乏推定装置、3・・・記憶部、5・・・比較部、7・・・決定部、9・・・算出部、11・・・推定部、13・・・表示部、15・・・印刷制御部、17・・・項目比較部、19・・・点数比較部、21・・・加算部、23・・・重み付け部、25・・・第1推定部、27・・・第2推定部、29・・・第3推定部、31・・・項目表示部、33・・・判定値表示部、35・・・項目点数表示部、37・・・最終判定点数表示部、39・・・強調表示部、41・・・判定値記憶部、43・・・実測値記憶部、45・・・最終判定点数記憶部

Claims (12)

  1. 血清中の亜鉛の欠乏状態を推定する亜鉛欠乏推定装置であって、
    亜鉛濃度実測検査とは異なり、かつ、検体検査に基づく検査項目である検体検査項目が含まれる検査項目の判定値を記憶する判定値記憶手段と、
    前記検査項目の実測値を記憶する実測値記憶手段と、
    亜鉛の欠乏状態であるか否かを推定する推定手段と、
    前記検査項目のうちの特定項目における第1判定値である特定項目第1判定値を記憶する特定項目第1判定値記憶手段と、
    前記特定項目における第2判定値である特定項目第2判定値を記憶する特定項目第2判定値記憶手段と、を備え、
    前記実測値記憶手段は、前記特定項目の実測値である特定項目実測値を記憶する特定項目実測値記憶手段を有し、
    前記特定項目第2判定値は、前記特定項目第1判定値よりも高いものであり、
    前記検体検査項目は、ヘモグロビン濃度、アルブミン濃度、及び、中性脂肪濃度であり、
    前記特定項目は、前記中性脂肪濃度であり、
    前記推定手段は、
    前記実測値記憶手段に記憶された実測値のうち、1つ以上の検査項目において、前記判定値記憶手段に記憶された判定値よりも低いならば、亜鉛の欠乏状態であると推定すると共に、
    前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値未満の場合、
    前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値以上かつ前記特定項目第2判定値未満の場合であって、前記特定項目以外の1つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のとき、
    又は、
    前記特定項目実測値が前記特定項目第2判定値以上の場合であって、前記特定項目以外の2つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のときに、亜鉛の欠乏状態であると推定する、亜鉛欠乏推定装置。
  2. 血清中の亜鉛の欠乏状態を推定する亜鉛欠乏推定装置であって、
    亜鉛濃度実測検査とは異なり、かつ、検体検査に基づく検査項目である検体検査項目が含まれる検査項目の判定値を記憶する判定値記憶手段と、
    前記検査項目の実測値を記憶する実測値記憶手段と、
    亜鉛の欠乏状態であるか否かを推定する推定手段と、
    前記検査項目のうちの特定項目における第1判定値である特定項目第1判定値を記憶する特定項目第1判定値記憶手段と、
    前記特定項目における第2判定値である特定項目第2判定値を記憶する特定項目第2判定値記憶手段と、を備え、
    前記実測値記憶手段は、前記特定項目の実測値である特定項目実測値を記憶する特定項目実測値記憶手段を有し、
    前記特定項目第2判定値は、前記特定項目第1判定値よりも高いものであり、
    前記検体検査項目は、ヘモグロビン濃度、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、及び、塩素イオン濃度であり、
    前記特定項目は、前記中性脂肪濃度であり、
    前記推定手段は、
    前記実測値記憶手段に記憶された実測値のうち、1つ以上の検査項目において、前記判定値記憶手段に記憶された判定値よりも低いならば、亜鉛の欠乏状態であると推定すると共に、
    前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値未満の場合、
    前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値以上かつ前記特定項目第2判定値未満の場合であって、前記特定項目以外の1つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のとき、
    又は、
    前記特定項目実測値が前記特定項目第2判定値以上の場合であって、前記特定項目以外の2つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のときに、亜鉛の欠乏状態であると推定する、亜鉛欠乏推定装置。
  3. 血清中の亜鉛の欠乏状態を推定する亜鉛欠乏推定装置であって、
    亜鉛濃度実測検査とは異なり、かつ、検体検査に基づく検査項目である検体検査項目が含まれる検査項目の判定値を記憶する判定値記憶手段と、
    前記検査項目の実測値を記憶する実測値記憶手段と、
    亜鉛の欠乏状態であるか否かを推定する推定手段と、
    前記検査項目のうちの特定項目における第1判定値である特定項目第1判定値を記憶する特定項目第1判定値記憶手段と、
    前記特定項目における第2判定値である特定項目第2判定値を記憶する特定項目第2判定値記憶手段と、を備え、
    前記実測値記憶手段は、前記特定項目の実測値である特定項目実測値を記憶する特定項目実測値記憶手段を有し、
    前記特定項目第2判定値は、前記特定項目第1判定値よりも高いものであり、
    前記検体検査項目は、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、及び、塩素イオン濃度であり、
    前記特定項目は、前記中性脂肪濃度であり、
    前記推定手段は、
    前記実測値記憶手段に記憶された実測値のうち、1つ以上の検査項目において、前記判定値記憶手段に記憶された判定値よりも低いならば、亜鉛の欠乏状態であると推定すると共に、
    前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値未満の場合、
    前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値以上かつ前記特定項目第2判定値未満の場合であって、前記特定項目以外の1つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のとき、
    又は、
    前記特定項目実測値が前記特定項目第2判定値以上の場合であって、前記特定項目以外の2つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のときに、亜鉛の欠乏状態であると推定する、亜鉛欠乏推定装置。
  4. 前記検体検査項目は、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット、アルブミン濃度、総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、ナトリウムイオン濃度、及び、塩素イオン濃度である、請求項1から3のいずれか1つに記載の亜鉛欠乏推定装置。
  5. 前記判定値が、健常者の前記検体検査項目の実測値に基づいて定められた共用基準範囲の下限値である、請求項1から4のいずれか1つに記載の亜鉛欠乏推定装置。
  6. 前記推定手段は、
    前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値未満の場合、
    前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値以上かつ前記特定項目第2判定値未満の場合であって、前記特定項目以外の1つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のとき、
    又は、
    前記特定項目実測値が前記特定項目第2判定値以上の場合であって、
    前記特定項目以外の2つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のとき、
    ヘモグロビン濃度の実測値が判定値未満のとき、
    若しくは、
    アルブミン濃度の実測値が判定値未満のときに、亜鉛の欠乏状態であると推定する、請求項4に記載の亜鉛欠乏推定装置。
  7. 前記推定手段は、
    前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値未満の場合、
    前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値以上かつ前記特定項目第2判定値未満の場合であって、前記特定項目以外の1つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のとき、
    又は、
    前記特定項目実測値が前記特定項目第2判定値以上の場合であって、
    前記特定項目以外の2つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のとき、
    若しくは、
    ヘマトクリットの実測値が判定値未満のときに、亜鉛の欠乏状態であると推定する、請求項4に記載の亜鉛欠乏推定装置。
  8. 前記推定手段は、
    前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値未満の場合、
    前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値以上かつ前記特定項目第2判定値未満の場合であって、前記特定項目以外の1つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のとき、
    又は、
    前記特定項目実測値が前記特定項目第2判定値以上の場合であって、
    前記特定項目以外の2つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のとき、
    若しくは、
    アルブミン濃度の実測値が判定値未満のときに、亜鉛の欠乏状態であると推定する、請求項4に記載の亜鉛欠乏推定装置。
  9. 前記実測値記憶手段に記憶された実測値と前記判定値記憶手段に記憶された判定値とを比較する項目比較手段と、
    前記項目比較手段による比較結果に基づいて、前記検査項目のそれぞれにおいて、項目点数を決定する決定手段と、
    前記検査項目のそれぞれの項目点数を加算して合計点数を算出する算出手段と、
    前記合計点数に対応し、亜鉛の欠乏状態であるか否かを推定する分岐点となる最終判定点数を記憶する最終判定点数記憶手段と、
    前記合計点数と前記最終判定点数とを比較する点数比較手段とを備え、
    前記推定手段は、前記点数比較手段の比較結果に基づいて、亜鉛の欠乏状態であると推定する、請求項1から8のいずれか1つに記載の亜鉛欠乏推定装置。
  10. 前記算出手段は、前記検査項目のそれぞれの項目点数を重み付けて加算して合計点数を算出する、請求項9に記載の亜鉛欠乏推定装置。
  11. コンピュータを、
    亜鉛濃度実測検査とは異なり、かつ、検体検査に基づく検査項目である検体検査項目が含まれる検査項目の判定値を記憶する判定値記憶手段と、
    前記検査項目の実測値を記憶する実測値記憶手段と、
    亜鉛の欠乏状態であるか否かを推定する推定手段と、
    前記検査項目のうちの特定項目における第1判定値である特定項目第1判定値を記憶する特定項目第1判定値記憶手段と、
    前記特定項目における第2判定値である特定項目第2判定値を記憶する特定項目第2判定値記憶手段と、して機能させるためのプログラムであって、
    前記実測値記憶手段は、前記特定項目の実測値である特定項目実測値を記憶する特定項目実測値記憶手段を有し、
    前記特定項目第2判定値は、前記特定項目第1判定値よりも高いものであり、
    前記検体検査項目は、ヘモグロビン濃度、アルブミン濃度、及び、中性脂肪濃度であり、
    前記特定項目は、前記中性脂肪濃度であり、
    前記推定手段は、
    前記実測値記憶手段に記憶された実測値のうち、1つ以上の検査項目において、前記判定値記憶手段に記憶された判定値よりも低いならば、亜鉛の欠乏状態であると推定すると共に、
    前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値未満の場合、
    前記特定項目実測値が前記特定項目第1判定値以上かつ前記特定項目第2判定値未満の場合であって、前記特定項目以外の1つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のとき、
    又は、
    前記特定項目実測値が前記特定項目第2判定値以上の場合であって、前記特定項目以外の2つ以上の前記検査項目の実測値が判定値未満のときに、亜鉛の欠乏状態であると推定する、プログラム
  12. 請求項11に記載のプログラムを記録するコンピュータ読み取り可能な記録媒体
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