以下、本発明の電気泳動粒子、電気泳動分散液、電気泳動シート、電気泳動装置および電子機器を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
まず、本発明の電気泳動粒子について説明する。
<電気泳動粒子>
<<第1実施形態>>
図1は、本発明の電気泳動粒子の第1実施形態を示す縦断面図、図2は、本発明の電気泳動粒子の第1実施形態が有するブロックコポリマーの模式図である。
電気泳動粒子1は、母粒子(粒子)2と、母粒子2の表面に設けられた被覆層3とを有している。
母粒子2には、例えば、顔料粒子、樹脂粒子またはこれらの複合粒子のうちの少なくとも1種が好適に用いられる。これらの粒子は、製造が容易である。
顔料粒子を構成する顔料としては、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック、チタンブラック等の黒色顔料、二酸化チタン、三酸化アンチモン、硫酸バリウム、硫化亜鉛、亜鉛華、二酸化珪素等の白色顔料、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン、黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、アンチモン等の黄色顔料、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドンレッド、クロムバーミリオン等の赤色顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、紺青、群青、コバルトブルー等の青色顔料、フタロシアニングリーン等の緑色顔料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、樹脂粒子を構成する樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスチレン、ポリエステル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、複合粒子としては、例えば、顔料粒子の表面を樹脂材料で被覆することでコート処理されたもの、樹脂粒子の表面を顔料で被覆することでコート処理されたもの、顔料と樹脂材料とを適当な組成比で混合した混合物で構成される粒子等が挙げられる。
なお、母粒子2として用いる顔料粒子、樹脂粒子および複合粒子の種類を適宜選択することにより、電気泳動粒子1の色を所望のものに設定することができる。
なお、母粒子2は、後述するブロックコポリマー39の結合部31が備える第2のモノマーM2(以下、単に「モノマーM2」ともいう)が有する第2の官能基と結合(反応)し得る第1の官能基をその表面に備えている(露出している)必要がある。しかしながら、顔料粒子、樹脂粒子および複合粒子の種類によっては官能基を有していない場合があるため、この場合、予め、酸処理、塩基処理、UV処理、オゾン処理、プラズマ処理等の官能基導入処理を施して、母粒子2の表面に第1の官能基が導入されている。
なお、母粒子2の表面に備える第1の官能基と、モノマーM2が備える第2の官能基との組み合わせとしては、互いに反応して連結し得るものであれば特に限定されないが、例えば、イソシアネート基と水酸基またはアミノ基との組み合わせ、エポキシ基、グリシジル基またはオキセタン基とカルボキシル基、アミノ基、チオール基、水酸基またはイミダゾール基との組み合わせ、アミノ基とCl、Br、Iのようなハロゲン基との組み合わせ、アルコキシシリル基と水酸基またはアルコキシシリル基との組み合わせ等が挙げられるが、中でも、第1の官能基が水酸基であり第2の官能基がアルコキシシリル基である組み合わせが好ましい。
この組み合わせとなっている母粒子2およびモノマーM2は、それぞれ、比較的容易に用意することができるとともに、母粒子2の表面に強固にモノマーM2(後述するブロックコポリマー)を連結させることができることから好ましく用いられる。
そこで、以下では、母粒子2の表面に備える第1の官能基が水酸基であり、モノマーM2が備える第2の官能基がアルコキシシリル基である組み合わせを一例に説明する。
母粒子2は、その表面の少なくとも一部(図示の構成では、ほぼ全体)が被覆層3により被覆されている。
被覆層3は、ブロックコポリマー39(以下、単に「ポリマー39」ともいう)を複数含む構成をなしている(図2参照。)。
ブロックコポリマー39は、分散媒中への分散性に寄与する部位(基)を有する第1のモノマーM1(以下、単に「モノマーM1」ともいう)と、第1の官能基と反応性を有する第2の官能基を有する第2のモノマーM2(以下、単に「モノマーM2」ともいう)と、酸性基と、この酸性基と塩を形成する環状構造とを有する第3のモノマーM3(以下、単に「モノマーM3」ともいう)とを、第1のモノマーM1と第2のモノマーM2とを共重合させることなく、重合させることで形成されたものである。そして、モノマーM2に由来するユニットにおいて、第1の官能基と第2の官能基とが反応することで前記粒子に連結している。
ブロックコポリマー39をかかる構成のものとすることで、モノマーM1に由来するユニット(以下、分散ユニットともいう)により分散性が付与され、また、モノマーM2に由来するユニット(以下、結合ユニットともいう)により母粒子2に対して連結され、さらに、モノマーM3に由来するユニット(以下、帯電ユニットともいう)により帯電したものとなる。そのため、かかる構成のブロックコポリマー39を備える、電気泳動粒子1は、電気泳動分散液中において均一な分散能および帯電性を発揮し得るものとなる。
このブロックコポリマー39は、本実施形態では、第1のモノマーM1が重合した(に由来する)分散部32と、第3のモノマーが重合した帯電部33と、第2のモノマーM2が重合した結合部31とがこの順で連結したものである。かかる構成のブロックコポリマー39において、分散部32はモノマーM1が重合することで形成され、モノマーM1に由来する分散ユニットを複数含み、また、帯電部33はモノマーM3が重合することで形成され、モノマーM3に由来する帯電ユニットを複数含み、さらに、結合部31はモノマーM2が重合することで形成され、モノマーM2に由来する結合ユニットを複数含む。このブロックコポリマー39が有する結合部31において、第1の官能基と第2の官能基とが反応することで母粒子2とブロックコポリマー39とが化学的に結合する。
以下、このブロックコポリマー39を構成する、分散部32、結合部31および帯電部33について説明する。
分散部32は、後述する電気泳動分散液中において、電気泳動粒子1に分散性を付与するために、被覆層3中において、母粒子2の表面に設けられる。
この分散部32は、電気泳動分散液中において、重合後は分散媒中への分散性に寄与する側鎖となる部位を有するモノマーM1が複数重合することで形成され、モノマーM1に由来する分散ユニットが複数連結している。
モノマーM1は、リビングラジカル重合(ラジカル重合)により重合し得るように1つの重合基を備え、さらに重合後は非イオン性の側鎖となる部位を備えるペンダント型の単官能モノマーである。
モノマーM1として、非イオン性の側鎖を備えるものを用いることで、リビングラジカル重合により形成される分散部32は、後述する電気泳動分散液に含まれる分散媒に対して、優れた親和性を示すこととなる。そのため、電気泳動分散液中において、かかる分散部32を備える電気泳動粒子1は、凝集することなく優れた分散性をもって分散するものとなる。
また、モノマーM1が有する1つの重合基としては、例えば、ビニル基、スチリル基、(メタ)アクリロイル基のような炭素−炭素2重結合を含むものが挙げられる。
このようなモノマーM1としては、例えば、ビニルモノマー、ビニルエステルモノマー、ビニルアミドモノマー、(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリルエステルモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、スチリルモノマー等が挙げられ、より具体的には、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロ(メタ)アクリレート、下記一般式(I)で表されるシリコーンマクロモノマー等のアクリル系モノマー、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2−プロピルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、2−イソプロピルスチレン、3−イソプロピルスチレン、4−イソプロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン等のスチレン系モノマーが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合せて用いることができる。
[式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、R3は、炭素数1〜6までのアルキル基およびエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドのエーテル基のうちの1種を含む構造、nは0以上の整数を表す。]
これらの中でも、モノマーM1としては、上記一般式(I)で表されるシリコーンマクロモノマーであることが好ましい。このようなモノマーM1を重合して得られる分散部は、非極性の分散媒に対して優れた分散性を示す。すなわち、後述する電気泳動分散液中に含まれる分散媒として、シリコーンオイルを主成分とするものが用いられるが、このシリコーンオイルのように炭化水素系の溶媒を用いた場合であっても、分散媒に対して優れた親和性を示す。このため、モノマーM1が重合することで得られる分散部32を備える電気泳動粒子1を優れた分散性をもって分散媒中に分散させることができる。
モノマーM1として上記一般式(I)で表されるシリコーンマクロモノマーを用いる場合、その重量平均分子量は、1,000以上60,000以下程度であることが好ましく、3,000以上30,000以下程度であることがより好ましく、5,000以上20,000以下程度であることがさらに好ましい。これにより、モノマーM1が重合することで得られる分散部32を備える電気泳動粒子1をより優れた分散性をもって分散媒中に分散させることができる。
また、分散部32の重量平均分子量は、10,000以上100,000以下であることが好ましく、10,000以上60,000以下であることがより好ましい。特に、モノマーM1として、前記一般式(I)で表されるようなシリコーンマクロモノマーを用いた場合、あるいは炭化水素系モノマーを用いた場合、分散部32の重量平均分子量は、8,000以上50,000以下であることが好ましく、10,000以上35,000以下であることがより好ましい。これにより、電気泳動粒子1の電気泳動分散液中における分散性をより優れたものとすることができる。
さらに、1つのポリマー中において、分散部32に含まれる分散ユニットの個数は、1以上20以下であることが好ましく、2以上10以下であることがより好ましい。これにより、電気泳動粒子1の電気泳動分散液中における分散性を確実に付与することができる。
また、分散部32はその分子量分布が1.2以下となっていることが好ましく、1.1以下であることがより好ましく、1.05以下であることがさらに好ましい。
ここで、分散部32の分子量分布とは、分散部32の数平均分子量(Mn)と分散部32の重量平均分子量(Mw)との比(Mw/Mn)を表し、この分散部32の分子量分布が前記範囲内であることで、複数の電気泳動粒子1において露出する分散部32がほぼ均一な長さのものとなっていると言える。そのため、電気泳動分散液中において、各電気泳動粒子1は、均一な分散能を発揮することとなる。このような数平均分子量(Mn)や重量平均分子量(Mw)は、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法を用いて、ポチスチレン換算分子量として測定することができる。
さらに、分散部32は、結合部31に連結する基端部側の分散ユニットの分子量が先端部側の分散ユニットの分子量よりも小さくなっていることが好ましい。より具体的には、基端部側に位置する分散ユニットの前駆体となるモノマーM1が備える側鎖の分子量が、先端部側に位置する分散ユニットの前駆体となるモノマーM1が備える側鎖の分子量よりも小さくなっていることが好ましい。これにより、電気泳動粒子1の電気泳動分散液中における分散性をより優れたものとすることができるとともに、分散部32を母粒子2の表面に高密度に結合させることができる。
なお、このような側鎖の分子量の変化は、基端側から先端側に向かって連続的に大きくなるものであっても良いし、基端側から先端側に向かって段階的に大きくなるものであっても良い。
結合部31は、電気泳動粒子1が備える被覆層3中において、母粒子2の表面に結合しており、これにより、ポリマー39を母粒子2に連結させる。
この結合部31は、本発明では、母粒子2がその表面に備えた水酸基と反応して共有結合を形成し得る、官能基を有する第2のモノマーM2が複数重合することで形成されたものであり、モノマーM2に由来する結合ユニット(構成単位)が複数連なっている。
このように、各々が官能基を有する結合ユニットを複数有する結合部31を備えるポリマー39を用いることで、電気泳動粒子1の分散性をより優れたものとすることができる。すなわち、ポリマー39は、複数の官能基を含むのみならず、複数の官能基が結合部31に集中して存在している。さらに、結合部31は複数の結合ユニットが連結しているため、結合ユニットが一つしかない場合に比べて母粒子2と反応可能な部位が大きい。そのため、ポリマー39を、複数のモノマーM2が重合することにより形成された結合部31において、母粒子2の表面に確実に結合したものとすることができる。
なお、本実施形態では、前述の通り、母粒子2の表面に水酸基を備え、モノマーM2が備える官能基がアルコキシシリル基となっている。このような水酸基とアルコキシシリル基との組み合わせとすることで、これら同士の反応が優れた反応性を示すことから、結合部31における、母粒子2の表面への結合をより確実に形成することができる。
このようなモノマーM2は、官能基として、下記一般式(II)で表されるアルコキシシリル基を1つ備え、さらに、リビングラジカル重合により重合し得るように1つの重合基を備えるものである。
[式中、Rは、それぞれ、独立して、炭素数1〜4のアルキル基、nは1〜3の整数を表す。]
モノマーM2として、かかる構成のものを用いることで、リビングラジカル重合によりモノマーM2が重合された結合部31とすることができ、さらに、リビングラジカル重合により形成された結合部31は、母粒子2の表面に位置する水酸基に対して、優れた反応性を示すものとなる。
また、モノマーM2が有する1つの重合基としては、モノマーM1と同様に、例えば、ビニル基、スチリル基、(メタ)アクリロイル基のような炭素−炭素2重結合を含むものが挙げられる。
このようなモノマーM2としては、例えば、それぞれ、上記一般式(II)で表されるアルコキシシリル基を1つ備えるビニルモノマー、ビニルエステルモノマー、ビニルアミドモノマー、(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリルエステルモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、スチリルモノマー等が挙げられ、より具体的には、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシ(メトキシ)シラン、ビニルトリエトキシ(メトキシ)シラン、4−ビニルブチルトリエトキシ(メトキシ)シラン、8−ビニルオクチルトリエトキシ(メトキシ)シラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリエトキシ(メトキシ)シラン、10−アクリロイルオキシデシルトリエトキシ(メトキシ)シラン等のケイ素原子を含有するシラン系モノマーが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合せて用いることができる。
また、1つのポリマー中において、結合部31に含まれる結合ユニットの個数は、1以上10以下であることが好ましく、2以上10以下であることがより好ましく、3以上6以下であることがさらに好ましい。前記上限値を超えると、結合部31は分散媒に対する親和性が分散部32と比較して低いため、モノマーM2の種類によっては、電気泳動粒子1の分散性を低下させたり、部分的に結合部31同士で反応したりするおそれがある。また、前記下限値よりも少ないと、モノマーM2の種類によっては、母粒子2との結合を十分に進行させることができず、これに起因して電気泳動粒子1の分散性が低下するおそれがある。
また、結合部31に含まれる結合ユニットの数は、NMRスペクトル、IRスペクトル、元素分析、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)等の汎用分析機器を用いる分析により求めることができる。なお、ポリマー39において、結合部31、分散部32および帯電部33は高分子重合体であるため、ともにある分子量分布を有している。したがって、上記のような分析の結果が、全てのポリマー39に当てはまるとは限らないが、少なくとも上記手法で求めた結合ユニット数が2〜8であれば、ポリマー39と母粒子2との反応性と、電気泳動粒子1の分散性および電気泳動性(帯電性)とを両立させることができる。
また、帯電部33は、酸性基、および前記酸性基と塩を形成する環状構造を有する、負に帯電する第3のモノマーM3が複数重合することで形成された重合体であり、モノマーM3に由来する帯電ユニットが複数連なっている。
かかる構成の帯電部33は、帯電ユニットを備えることで、電気泳動分散液中において、電気泳動粒子1に負の帯電性を付与する機能を発揮する。
したがって、分散部32および結合部31の他に、さらに、帯電部33を備えることで、ブロックコポリマー39は、電気泳動粒子1に負の帯電性を確実に付与することができる。
特に、帯電部33が、各々が負に帯電している帯電ユニットを複数有することで、帯電部33は複数の帯電ユニットが連結しているため、帯電ユニットを1つのみしか有しない場合と比較して、電気泳動粒子1の帯電性をより優れたものとすることができる。すなわち、後述する電気泳動分散液中において、かかる帯電部33を備えるポリマー39を有する電気泳動粒子1は、優れた負帯電性を備える電気泳動粒子(負電気泳動粒子)となる。
モノマーM3は、前述の通り、酸性基と、この酸性基と塩を形成する環状構造を有するリビングラジカル重合(ラジカル重合)により重合し得るように1つの重合基を備え、さらに重合後は前記酸性基を備える側鎖となる部位を備えるペンダント型の単官能モノマー成分と、前記酸性基と塩を形成する環状構造を有するものである。
モノマーM3を、酸性基を有するものとすることで、帯電部33を確実に負に帯電するものとすることができる。また、環状構造を有し、この環状構造が酸性基と塩を形成するものとすることで、後述する電気泳動粒子の製造方法において、モノマーM3を溶媒中に優れた溶解性をもって溶解させることができる。さらに、電気泳動分散液中において、環状構造の一部が酸性基から解離し、これに起因して、より優れた分散性をもって、電気泳動粒子1を電気泳動分散液中に分散させることができる。
この酸性基としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基およびアルコキシド基等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、カルボキシ基、リン酸基およびスルホン酸基であることが好ましい。これにより、環状構造との間で確実に塩を形成することができる。
これらのうち、カルボキシ基またはスルホン酸基を有する単官能モノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸、2−ブテン酸(クロトン酸)、3−ペンテン酸、4−ペンテン酸、4−メチル−4−ペンテン酸、4−ヘキセン酸、5−ヘキセン酸、5−ヘプテン酸、6−ヘプテン酸、6−オクテン酸、7−メチル−7−オクテン酸、7−ノネン酸、8−ノネン酸、3−フェニル−2−プロペン酸(ケイ皮酸)、カルボキシメチル(メタ)アクリレート、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ビニル安息香酸、ビニルフェニル酢酸、マレイン酸、フマル酸、スチレンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スルホメチル(メタ)アクリレート、2−プロペン−1−スルホン酸、3−ブテン−1−スルホン酸等が挙げられる。
また、環状構造(イオノフォア)は、Na、Kのようなアルカリ金属、Mg、Caのようなアルカリ土類金属等の金属イオンを捕捉した状態で、単官能モノマー成分が有する酸性基と、塩を形成する。このような環状構造が酸性基と塩を形成することにより、電気泳動粒子1におけるブロックコポリマー39の分散性をより向上させることができるとともに、ブロックコポリマー39を確実に負に帯電するものとすることができる。
このイオノフォア(環状構造)としては、例えば、酸素原子、窒素原子および硫黄原子のうちの少なくとも1種を含むもの(すなわち、メチレン基同士を、酸素原子、窒素原子または硫黄原子で結合したもの)、メチレン基のみで構成されたもの(炭化水素環)等が挙であるのが好ましいが、特に、メチレン基同士を、酸素原子、窒素原子または硫黄原子(ヘテロ原子)で結合したものが好ましい。このようなイオノフォアは、金属イオンを捕捉する捕捉能が極めて高い構造であることから好ましい。また、環(内側空間)の大きさや、環の柔軟性を調整し易く、かかるイオノフォアの合成を比較的容易に行うことができるという利点もある。
このようなヘテロ原子を含むイオノフォアとしては、例えば、クラウンエーテル系、アザクラウン系、クリプタンド系、スルフィド系(チオエーテル系)、プロピレングリコール系等のものが挙げられる。
なお、クラウンエーテル系のイオノフォアとしては、例えば、12−クラウン−4−エーテル、2−ヘキシル−12−クラウン−4−エーテル、2−オクチル−12−クラウン−4−エーテル、2−デシル−12−クラウン−4−エーテル、2−ドデシル−12−クラウン−4−エーテル、2−テトラデシル−12−クラウン−4−エーテル、15−クラウン−5−エーテル、2−ブチル−15−クラウン−5−エーテル、2−ヘキシル−15−クラウン−5−エーテル、2−ドデシル−15−クラウン−5−エーテル、2−テトラデシル−15−クラウン−5−エーテル、18−クラウン−6−エーテル、2−ヘキシル−18−クラウン−6−エーテル、2−オクチル−18−クラウン−6−エーテル、2−テトラデシル−18−クラウン−6−エーテル、2、3−ジオクチル−18−クラウン−6−エーテル、21−クラウン−7−エーテル、2−デシル−21−クラウン−7−エーテル、24−クラウン−8−エーテル、2−デシル−24−クラウン−8−エーテル、2−ドデシル−24−クラウン−8−エーテル等が挙げられる。
また、アザクラウン系のイオノフォアとしては、例えば、1、4、7−トリプロピル−1、4、7−トリアザシクロノナン、2−デシル−1、4、7−トリプロピル−1、4、7−トリアザシクロノナン、1、4、7−トリブチル−1、4、7−トリアザシクロノナン、1、4、7、10−テトラオクチル−1、4、7、10−テトラアザシクロドデカン、1、4、7、10−テトラ(デシル)−1、4、7、10−テトラアザシクロドデカン、1、4、7、10−テトラ(ドデシル)−1、4、7、10−テトラアザシクロドデカン、1、4、7、10−テトラ(ヘキサデシル)−1、4、7、10−テトラアザシクロドデカン、1、4、7、10、13−ペンオクチル−1、4、7、10、13−ペンタアザシクロペンタデカン、1、4、7、10、13−ペンタ(デシル)−1、4、7、10、13−ペンタアザシクロペンタデカン、1、4、7、10、13、16−ヘキサ(デシル)−1、4、7、10、13、16−ヘキサアザシクロオクタデカン、1、4、7、10、13、16−ヘキサ(テトラデシル)−1、4、7、10、13、16−ヘキサアザシクロオクタデカン、1、4、7、10、13、16−ヘキサ(ヘキサデシル)−1、4、7、10、13、16−ヘキサアザシクロオクタデカン等が挙げられる。
さらに、クリプタンド系のイオノフォアとしては、例えば、4、10、15−トリオキサ−1、7−ジアザビシクロ[5.5.5]ヘプタデカン、3−テトラデシル−4、10、15−トリオキサ−1、7−ジアザビシクロ[5.5.5]ヘプタデカン、4、7、13、18−テトラオキサ−1、10−ジアザビシクロ[8.5.5]エイコサン、5−デシル−4、7、13、16、21−ペンタオキサ−1、10−ジアザビシクロ[8.8.5]トリコサン、4、7、13、16、21、24−ヘキサオキサ−1、10−ジアザビシクロ[8.8.8]ヘキサコサン、5−テトラデシル−4、7、13、16、21、24−ヘキサオキサ−1、10−ジアザビシクロ[8.8.8]ヘキサコサン、4、7、10、16、19、24、27−ヘプタオキサ−1、13−ジアザビシクロ[11.8.8]ノナコサン等が挙げられる。
さらに、1つのポリマー中において、帯電部33に含まれる帯電ユニットの個数は、1以上8以下であることが好ましく、2以上5以下であることがより好ましい。前記上限値を超えると、帯電部33は分散媒に対する親和性が分散部32と比較して低いため、モノマーM3の種類によっては、電気泳動粒子1の分散性を低下させるおそれがある。また、前記下限値よりも少ないと、モノマーM3の種類によっては、電気泳動粒子1を十分に帯電させることができず、これに起因して電気泳動粒子1の電気泳動性が低下するおそれがある。
また、帯電部33に含まれる帯電ユニットの数は、NMRスペクトル、IRスペクトル、元素分析、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)等の汎用分析機器を用いる分析により求めることができる。なお、前述の通り、ポリマー39において、結合部31、分散部32および帯電部33は高分子重合体であるため、ともにある分子量分布を有している。したがって、上記のような分析の結果が、全てのポリマー39に当てはまるとは限らないが、少なくとも上記手法で求めた帯電ユニット数が1〜8であれば、ポリマー39と母粒子2との反応性と、電気泳動粒子1の分散性および電気泳動性(帯電性)とを両立させることができる。
このようなポリマー39は、結合部31、分散部32および帯電部33がそれぞれ個別に設けられたトリブロック共重合体である。そのため、母粒子2に対する結合性、電気泳動粒子1の分散性、および、電気泳動粒子1の帯電性(電気泳動性)を、それぞれ独立して、ポリマー39に付与することができるため、電気泳動粒子1は、優れた分散性および帯電性を発揮するものとなる。
このポリマー39は、後述する製造方法により得られる。例えば後述する可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)を用いると、比較的均一なポリマーを得ることができる。従って、連鎖移動剤に対して2〜8モル当量のモノマーM2を添加して重合すれば、結合部31における結合ユニット数を上記範囲とすることができ、さらに連鎖移動剤に対して1〜8モル当量のモノマーM3を添加して重合すれば、帯電部33における帯電ユニット数を上記範囲とすることができる。
これにより、電気泳動粒子1を、ポリマー39を備える構成とすることにより効果を確実に発揮させることができ、電気泳動粒子1は電気泳動分散液中において優れた分散性および電気泳動性(帯電性)を有するものとなる。
以上のような、結合部31と分散部32と帯電部33とを有するポリマー39が母粒子2の表面に結合部31において連結している本実施形態の電気泳動粒子1は、例えば、次のようにして製造することができる。
<電気泳動粒子の製造方法>
電気泳動粒子1の製造方法は、リビング重合により、モノマーM1とモノマーM2とモノマーM3とを、モノマーM1とモノマーM2とが共重合することなく、重合させることでブロックコポリマー39を得る第1の工程と、母粒子2が備える第1の官能基と、モノマーM2が有する第2の官能基とを反応させることにより、複数のブロックコポリマー39が母粒子2に連結した被覆層3を形成する第2の工程とを有している。
なお、本実施形態では、第1の工程において、結合部31と帯電部33と分散部32とがこの順で連結した複数のブロックコポリマー39を得る場合について説明する。
また、この第1の工程では、重合開始剤を用いたリビングラジカル重合により、1)第1のモノマーM1が重合した分散部32を形成した後、第3の官能基を有する第3のモノマーM3が重合した帯電部33を形成し、その後、第2の官能基を有する第2のモノマーM2が重合した結合部31を形成してもよいし、2)結合部31、帯電部33および分散部32をこの順で形成してもよいが、ここでは、1)の方法で、複数のブロックコポリマー39を形成する場合について説明する。
以下、各工程について詳述する。
[1] まず、分散部32と帯電部33と結合部31とがこの順で連結した複数のブロックコポリマー39を生成する(第1の工程)。
[1−1] まず、重合開始剤を用いたリビング重合により、第1のモノマーM1が重合した分散部32を形成する。
このリビング重合法としては、リビングラジカル重合、リビングカチオン重合またはリビングアニオン重合等が挙げられるが、中でも、リビングラジカル重合が好ましい。リビングラジカル重合とすることで、反応系で生じる反応液等を簡便に用いることができ、さらに、反応の制御性も良くモノマーM1を重合させることができる。
さらに、リビングラジカル重合によれば、分散部32における分子量分布を容易に1.2以下に設定することができ、その結果、得られる電気泳動粒子1を電気泳動分散液中において均一な分散能を発揮し得るものとすることができる。
また、リビングラジカル重合法としては、原子移動ラジカル重合(ATRP)、ニトロキシドを介するラジカル重合(NMP)、有機テルルを用いるラジカル重合(TERP)および、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)等が挙げられるが、中でも、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)を用いることが好ましい。可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)によれば、金属触媒を用いず金属汚染の心配がなく、さらに、モノマーM1の重合時における重合を簡便に進行させることができる。また、分散部32における分子量分布をより容易に1.2以下に設定することができる。
重合開始剤(ラジカル重合開始剤)としては、特に限定されないが、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2.4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2.4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル 2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]のようなアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムのような過硫酸塩等が挙げられる。
また、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)とする場合、重合開始剤の他に、連鎖移動剤(RAFT剤)が用いられる。この連鎖移動剤としては、特に限定されないが、例えば、ジチオエステル基、トリチオカルバメート基、ザンテート基、ジチオカルバメート基等の官能基を有する硫黄化合物があげられる。
具体的には、連鎖移動剤としては、下記化学式(1)〜(7)で表される化合物が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの化合物は、比較的入手が容易であり、反応の制御を容易に行い得ることから好ましく用いられる。
これらの中でも、連鎖移動剤は、上記化学式(6)で表される2-シアノ-2-プロピルベンドジチオエートであることが好ましい。これにより、反応の制御をより容易に行うことができるようになる。
さらに、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)を用いる場合、モノマーM1、重合開始剤、連鎖移動剤の比率は、形成すべき分散部32の重合度やモノマーM1等の化合物の反応性を考慮して適宜決定されるが、これらのモル比がモノマー:重合開始剤:連鎖移動剤=500〜5:5〜0.25:1であること好ましい。これにより、モノマーM1が重合することで得られる分散部32の長さ(重合度)を適切な大きさに設定することができるとともに、この分散部32を、その分子量分布を容易に1.2以下として、高効率に生成することができる。
また、リビングラジカル重合によりモノマーM1を重合させる溶液を調製するための溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノールのようなアルコール類、ヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の炭化水素類、ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼンのようなハロゲン化芳香族炭化水素類等が挙げられ、これらを単独または混合溶媒として用いることができる。
また、前記溶液(反応液)は、重合反応を開始する前に、脱酸素処理を行っておくのが好ましい。脱酸素処理としては、例えば、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスによる真空脱気後の置換やパージ処理等が挙げられる。
また、モノマーM1の重合反応に際して、前記溶液の温度を所定の温度まで加熱(加温)することにより、モノマーの重合反応をより迅速かつ確実に行うことができる。
この加熱の温度は、モノマーM1の種類等によっても若干異なり、特に限定されないが、30〜100℃程度であるのが好ましい。また、加熱の時間(反応時間)は、加熱の温度を前記範囲とする場合、5〜48時間程度であるのが好ましい。
なお、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)を用いた際には、分散部32の片末端(先端部)には使用した連鎖移動剤の断片が存在している。そして、この断片を備える分散部32が次工程[1−2]において、分散部32に帯電部33を重合させる反応における連鎖移動剤として作用する。
[1−2] 次いで、分散部32に連結するように、負に帯電する第3のモノマーM3が重合した帯電部33を形成する。
これにより、分散部32と帯電部33とが連結されたジブロックコポリマーが生成される。
なお、本工程[1−2]における、モノマーM2を用いた帯電部33の形成に先立って、必要に応じて、前記工程[1―1]で用いた未反応のモノマーM1や溶媒、重合開始剤等の不純物を除去し、分散部32を単離精製する精製処理(除去処理)を行なうようにしても良い。これにより、次工程[1−3]で得られるポリマー39がより均一で、純度の高いものとすることができる。この精製処理としては、特に限定されず、例えば、カラムクロマトグラフィー法、再結晶法、再沈殿法等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて行うことができる。
また、前述の通り、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)を用いた際には、分散部32の片末端には使用した連鎖移動剤の断片が存在している。このため、かかる構成の帯電部33は、前記工程[1−1]が完了して得られた分散部32と、モノマーM3と、重合開始剤とを含有する溶液を調製し、この溶液中で、再度リビング重合を行うことで形成される。
なお、本工程に用いる溶媒としては、前記工程[1−1]で挙げたのと同様のものを用いることができ、また、溶液中でモノマーM3を重合させる際の条件は、前記工程[1−1]において溶液中でモノマーM1を重合させる際の条件として挙げたのと同様にすることができる。
さらに、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)を用いた際には、帯電部33の片末端(先端部)には使用した連鎖移動剤の断片が存在している。そして、この断片を備える帯電部33が次工程[1−3]において、帯電部33に結合部31を重合させる反応における連鎖移動剤として作用する。
[1−3] 次いで、分散部32と帯電部33とが連結したジブロックコポリマーが備える帯電部33に連結するように、母粒子2が備える第1の官能基と反応性を有する、第2の官能基を有する第2のモノマーM2が重合した結合部31を形成する。
これにより、分散部32と帯電部33と結合部31とがこの順で連結されたトリブロックコポリマーで構成されるポリマー39が生成される。
なお、本工程[1−3]における、モノマーM2を用いた結合部31の形成に先立って、必要に応じて、前記工程[1―2]で用いた未反応のモノマーM3や溶媒、重合開始剤等の不純物を除去し、分散部32と帯電部33とが連結したジブロックコポリマーを単離精製する精製処理(除去処理)を行なうようにしても良い。これにより、本工程[1−3]で得られるポリマー39がより均一で、純度の高いものとなる。この精製処理としては、特に限定されず、例えば、カラムクロマトグラフィー法、再結晶法、再沈殿法等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて行うことができる。
また、前述の通り、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)を用いた際には、帯電部33の片末端には使用した連鎖移動剤の断片が存在している。このため、かかる構成の結合部31は、前記工程[1−2]が完了して得られた分散部32と帯電部33とが連結したジブロックコポリマーが備える帯電部33と、モノマーM2と、重合開始剤とを含有する溶液を調製し、この溶液中で、再度リビング重合を行うことで形成される。
なお、本工程に用いる溶媒としては、前記工程[1−1]で挙げたのと同様のものを用いることができ、また、溶液中でモノマーM2を重合させる際の条件は、前記工程[1−1]において溶液中でモノマーM1を重合させる際の条件として挙げたのと同様にすることができる。
[2] 次に、母粒子2が備える第1の官能基と、結合部31が有する複数の第2の官能基とを反応させて、これら同士の間で化学結合を形成することにより、複数のブロックコポリマー39を母粒子2に連結させる(第2の工程)。
これにより、母粒子2の少なくとも一部が被覆層3で被覆された電気泳動粒子1が得られる。このようなプロセスとしては、以下に示す乾式法、湿式法が挙げられる。
<<乾式法>>
乾式法では、まず、ポリマー39と、母粒子2とを適切な溶媒中で混合して溶液を調製する。なお、溶液中には、ポリマー39が備えるアルコキシシリル基の加水分解を促すため、必要に応じて微量の水、酸、塩基を添加してもよい。また、必要に応じて加熱、光照射等をおこなってもよい。
このとき、母粒子2の体積に対して、溶媒の体積は1体積%程度以上、20体積%程度以下であることが好ましく、5体積%程度以上、10体積%程度以下であることがより好ましい。これにより、母粒子2に対するポリマー39の接触機会を増大させることができるため、結合部31をより確実に母粒子2の表面に結合させることができる。
次いで、超音波照射による分散や、ボールミル、ビーズミル等を用いた撹拌等を行うことで、ポリマー39を母粒子2の表面に高効率に吸着させたのち、溶媒を除去する。
次いで、溶媒を除去することで得られた粉体を、好ましくは100℃〜200℃、1時間以上の条件で加熱してアルコキシシリル基を分解することで、母粒子2の表面に露出する水酸基と化学結合を形成させることで電気泳動粒子1を得る。
次いで、遠心分離器を用いながら再度溶媒中で数回洗浄することで、化学結合を形成することなく母粒子2の表面に吸着した余分なポリマー39を除去する。
以上のような工程を経ることで、精製された電気泳動粒子1を得ることができる。
<<湿式法>>
湿式法では、まず、ポリマー39と、母粒子2とを適切な溶媒中で混合して溶液を調製する。なお、溶液中には、ポリマー39が備えるアルコキシシリル基の加水分解を促すため、必要に応じて微量の水、酸、塩基を添加してもよい。また、必要に応じて加熱、光照射等をおこなってもよい。
このとき、母粒子2の体積に対して、溶媒の体積は1体積%程度以上、20体積%程度以下であることが好ましく、5体積%程度以上、10体積%程度以下であることがより好ましい。これにより、母粒子2に対するポリマー39の接触機会を増大させることができるため、結合部31をより確実に母粒子2の表面に結合させることができる。
次いで、超音波照射による分散やボールミル、ビーズミル等を用いた撹拌等を行うことで、ポリマー39を母粒子2の表面に高効率に吸着させたのち、この状態で溶液を、好ましくは100℃〜200℃、1時間以上の条件で加熱してアルコキシシリル基を分解することで、母粒子2の表面に露出する水酸基と化学結合を形成させることで電気泳動粒子1を得る。
次いで、遠心分離器を用いながら再度溶媒中で数回洗浄することで、化学結合を形成することなく母粒子2の表面に吸着した余分なポリマー39を除去する。
以上のような工程を経ることで、精製された電気泳動粒子1を得ることができる。
なお、ポリマー39を構成するモノマーM1の種類によっては、電気泳動粒子1を乾燥させてしまうと分散溶媒に分散しなくなる場合がある。このような場合には、洗浄作業の際には反応溶媒を分散溶媒に少しずつ置換していく(乾燥工程を経ない)溶媒置換法で行うことが好ましい。
なお、本工程に用いる溶媒としては、前記工程[1−1]で挙げたのと同様のものを用いることができる他、後述する電気泳動分散液が備える分散液として挙げる脂肪族炭化水素類(流動パラフィン)およびシリコーンオイル等を用いることができる。
<<第2実施形態>>
次に、本発明の電気泳動粒子の第2実施形態について説明する。
図3は、本発明の電気泳動粒子の第2実施形態が有するブロックコポリマーの模式図である。
以下、第2実施形態の電気泳動粒子について、前記第1実施形態の電気泳動粒子との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態の電気泳動粒子1は、図3に示すように、母粒子2に結合するブロックコポリマー39の構成が異なること以外は、図2に示す前記第1実施形態の電気泳動粒子1と同様である。
すなわち、第2実施形態の電気泳動粒子において、ブロックコポリマー39は、第1のモノマーM1が重合した分散部32と、第2のモノマーM2と第3のモノマーM3とが共重合した結合・帯電部34とが連結したものである。かかる構成のブロックコポリマー39において、分散部32はモノマーM1が重合することで形成され、モノマーM1に由来する分散ユニットを複数含み、また、結合・帯電部34はモノマーM2とモノマーM3とが共重合することで形成され、モノマーM2に由来する結合ユニットとモノマーM3に由来する帯電ユニットとを複数含む。このブロックコポリマー39が有する結合・帯電部34において、母粒子2が備える第1の官能基と結合ユニットが備える第2の官能基とが反応することで母粒子2とブロックコポリマー39とが化学的に結合する。
結合・帯電部34は、本発明では、母粒子2がその表面に備えた第1の官能基と反応して共有結合を形成し得る、第2の官能基を有する第2のモノマーM2と、負に帯電する第3のモノマーM3とが複数共重合することで形成されたランダム共重合体であり、モノマーM2に由来する結合ユニットと、モノマーM3に由来する帯電ユニットとがランダムに複数連なっている。
かかる構成の結合・帯電部34は、結合ユニットを備えることで、電気泳動粒子1が備える被覆層3中において、母粒子2の表面に結合する機能を発揮するとともに、帯電ユニットを備えることで、電気泳動分散液中において、電気泳動粒子1に負の帯電性を付与する機能を発揮する。
すなわち、結合・帯電部34は、前記第1実施形態で説明した、結合部31および帯電部33が備える機能を併せ持つ。したがって、分散部32および結合・帯電部34を備える本実施形態のブロックコポリマー39は、分散部32、帯電部33および結合部31を備える前記第1実施形態のブロックコポリマー39と同様の機能を発揮する。
1つのポリマー39中において結合・帯電部34に含まれる結合ユニット数は2以上10以下であることが好ましく、3以上6以下であることがより好ましい。さらに、帯電ユニット数は1以上8以下であることが好ましく、2以上5以下であることがより好ましい。
また、分散部32および結合・帯電部34を備える本実施形態のブロックコポリマー39を有する電気泳動粒子は、前記第1実施形態で説明した電気泳動粒子の製造方法の前記第1の工程を、分散部32と結合・帯電部34とが連結した複数のブロックコポリマー39を生成する工程(第1の工程)とすることで得られるが、以下、本実施形態における第1の工程について説明する。
なお、この第1の工程では、重合開始剤を用いたリビングラジカル重合により、1B)第1のモノマーM1が重合した分散部32を形成した後、第2のモノマーM2と第3のモノマーM3とが共重合した結合・帯電部34を形成してもよいし、2B)結合・帯電部34および分散部32をこの順で形成してもよいが、ここでは、1B)の方法で、複数のブロックコポリマー39を形成する場合について説明する。
以下、各工程について詳述する。
[1B−1] まず、第1のモノマーM1が重合した分散部32を形成する。
この分散部32を形成する方法としては、前記第1実施形態の工程[1−1]で説明したのと同様の方法が用いられる。
なお、分散部32を重合させる方法として、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)を用いた際には、分散部32の片末端(先端部)には使用した連鎖移動剤の断片が存在している。そして、この断片を備える分散部32が次工程[1B−2]において、分散部32に結合・帯電部34を重合させる反応における連鎖移動剤として作用する。
[1B−2] 次いで、分散部32に連結するように、母粒子2が備える第1の官能基と反応性を有する第2の官能基を有する第2のモノマーM2と、負に帯電する第3のモノマーM3とが共重合した結合・帯電部34を形成する。
これにより、分散部32と結合・帯電部34とが連結されたジブロックコポリマーで構成されるポリマー39が生成される。
なお、本工程[1B−2]における、モノマーM2およびモノマーM3を用いた結合・帯電部34の形成に先立って、必要に応じて、前記工程[1B−1]で用いた未反応のモノマーM1や溶媒、重合開始剤等の不純物を除去し、分散部32を単離精製する精製処理(除去処理)を行なうようにしても良い。これにより、本工程[1B−2]で得られるポリマー39がより均一で、純度の高いものとすることができる。この精製処理としては、特に限定されず、例えば、カラムクロマトグラフィー法、再結晶法、再沈殿法等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて行うことができる。
また、前述の通り、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)を用いた際には、分散部32の片末端には使用した連鎖移動剤の断片が存在している。このため、かかる構成の結合・帯電部34は、前記工程[1B−1]が完了して得られた分散部32と、モノマーM2およびモノマーM3と、重合開始剤とを含有する溶液を調製し、この溶液中で、再度リビング重合を行うことで形成される。
なお、本工程に用いる溶媒としては、前記第1実施形態の工程[1−1]で挙げたのと同様のものを用いることができ、また、溶液中でモノマーM2およびモノマーM3を重合させる際の条件は、前記第1実施形態の工程[1−1]において溶液中でモノマーM1を重合させる際の条件として挙げたのと同様にすることができる。
以上のような工程[1B−1]、[1B−2]とすることで、分散部32および結合・帯電部34を備える本実施形態のブロックコポリマー39を2工程で生成することができる。
このような分散部32と結合・帯電部34とが連結されたブロックコポリマー39を備える第2実施形態の電気泳動粒子によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
<<第3実施形態>>
次に、本発明の電気泳動粒子の第3実施形態について説明する。
図4は、本発明の電気泳動粒子の第3実施形態が有するブロックコポリマーの模式図である。
以下、第3実施形態の電気泳動粒子について、前記第1実施形態の電気泳動粒子との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態の電気泳動粒子1は、図4に示すように、母粒子2に結合するブロックコポリマー39の構成が異なること以外は、図2に示す前記第1実施形態の電気泳動粒子1と同様である。
すなわち、第3実施形態の電気泳動粒子において、ブロックコポリマー39は、第1のモノマーM1が重合した分散部32と、第2のモノマーM2が重合した結合部31と、第3のモノマーM3が重合した帯電部33とが、この順で、連結したものである。
すなわち、本実施形態では、ブロックコポリマー39において、結合部31と、分散部32と、帯電部33とが連結する順序が第1実施形態とは異なり、結合部31を中心として、分散部32と、帯電部33とを両端に備える構成となっている。
かかる構成のブロックコポリマー39において、分散部32はモノマーM1が重合することで形成され、モノマーM1に由来する分散ユニットを複数含み、また、結合部31はモノマーM2が重合することで形成され、モノマーM2に由来する結合ユニットを複数含み、さらに、帯電部33はモノマーM3が重合することで形成され、モノマーM3に由来する帯電ユニットを複数含んでいる。
このブロックコポリマー39が有する結合部31において、母粒子2が備える第1の官能基と結合ユニットが備える第2の官能基とが反応することで母粒子2とブロックコポリマー39とが化学的に結合する。また、分散部32は、分散ユニットを備えることで、電気泳動分散液中において、電気泳動粒子1に分散性を付与する機能を発揮する。さらに、帯電部33は、帯電ユニットを備えることで、電気泳動分散液中において、電気泳動粒子1に負の帯電性を付与する機能を発揮する。
したがって、分散部32と結合部31と帯電部33とが、この順で、連結した本実施形態のブロックコポリマー39は、分散部32と帯電部33と結合部31とが、この順で、連結した前記第1実施形態のブロックコポリマー39と同様の機能を発揮する。
また、分散部32と結合部31と帯電部33とをこの順で備える本実施形態のブロックコポリマー39を有する電気泳動粒子は、前記第1実施形態で説明した電気泳動粒子の製造方法の前記第1の工程を、分散部32と結合部31と帯電部33とがこの順で連結した複数のブロックコポリマー39を生成する工程(第1の工程)とすることで得られるが、以下、本実施形態における第1の工程について説明する。
なお、この第1の工程では、重合開始剤を用いたリビングラジカル重合により、1C)第1のモノマーM1が重合した分散部32を形成した後、第2のモノマーM2が重合した結合部31を形成し、その後、第3のモノマーM3が重合した帯電部33を形成してもよいし、2C)帯電部33、結合部31および分散部32をこの順で形成してもよいが、ここでは、1C)の方法で、複数のブロックコポリマー39を形成する場合について説明する。
この場合、前記第1実施形態で説明した電気泳動粒子の製造方法の前記第1の工程における、工程[1−1]〜工程[1−3]を、工程[1−1]、工程[1−3]、工程[1−2]の順で実施すること、すなわち、工程[1−2]と工程[1−3]との順を逆転させることで、本実施形態におけるブロックコポリマー39を形成することができる。
このような分散部32と帯電部33と結合部31とが、この順で、連結したブロックコポリマー39を備える第3実施形態の電気泳動粒子によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
<電気泳動分散液>
次に、本発明の電気泳動分散液について説明する。
電気泳動分散液は、少なくとも1種の電気泳動粒子(本発明の電気泳動粒子)を分散媒(液相分散媒)に分散(懸濁)してなるものである。
分散媒としては、沸点が100℃以上であり、比較的高い絶縁性を有するものが好ましく用いられる。かかる分散媒としては、例えば、各種水(例えば、蒸留水、純水等)、ブタノールやグリセリン等のアルコール類、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、酢酸ブチル等のエステル類、ジブチルケトン等のケトン類、ペンタン等の脂肪族炭化水素類(流動パラフィン)、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、キシレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、ピリジン等の芳香族複素環類、アセトニトリル等のニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、カルボン酸塩、シリコンオイルまたはその他の各種油類等が挙げられ、これらを単独または混合物として用いることができる。
中でも、分散媒としては、脂肪族炭化水素類(流動パラフィン)またはシリコンオイルを主成分とするものが好ましい。流動パラフィンまたはシリコンオイルを主成分とする分散媒は、電気泳動粒子1の凝集抑制効果が高いことから、図5に示す電気泳動表示装置920の表示性能が経時的に劣化するのを抑制することができる。また、流動パラフィンまたはシリコンオイルは、不飽和結合を有しないため耐候性に優れ、さらに安全性も高いという利点を有している。
また、分散媒としては、比誘電率が1.5以上3以下であるものが好ましく用いられ、1.7以上2.8以下であるものがより好ましく用いられる。このような分散媒は、電気泳動粒子1の分散性に優れるとともに、電気絶縁性も良好である。このため、消費電力が小さく、コントラストの高い表示が可能な電気泳動表示装置920の実現に寄与する。なお、この誘電率の値は、50Hzにおいて測定された値であり、かつ、含有する水分量が50ppm以下、温度25℃である分散媒について測定された値である。
また、分散媒中には、必要に応じて、例えば、電解質、界面活性剤(アニオン性またはカチオン性)、金属石鹸、樹脂材料、ゴム材料、油類、ワニス、コンパウンド等の粒子からなる荷電制御剤、潤滑剤、安定化剤、各種染料等の各種添加剤を添加するようにしてもよい。
また、電気泳動粒子の分散媒への分散は、例えば、ペイントシェーカー法、ボールミル法、メディアミル法、超音波分散法、撹拌分散法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて行うことができる。
このような電気泳動分散液中において、被覆層3が有するポリマー39の作用により、電気泳動粒子1は、優れた分散能を発揮するものとなる。
<電気泳動表示装置>
次に、本発明の電気泳動シートが適用された電気泳動表示装置(本発明の電気泳動装置)について説明する。
図5は、電気泳動表示装置の実施形態の縦断面を模式的に示す図、図6は、図5に示す電気泳動表示装置の作動原理を示す模式図である。なお、以下では、説明の都合上、図5および図6中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
図5に示す電気泳動表示装置920は、電気泳動表示シート(フロントプレーン)921と、回路基板(バックプレーン)922と、電気泳動表示シート921と回路基板922とを接合する接着剤層98と、電気泳動表示シート921と回路基板922との間の間隙を気密的に封止する封止部97とを有している。
電気泳動表示シート(本発明の電気泳動シート)921は、平板状の基部92と基部92の下面に設けられた第2の電極94とを備える基板912と、この基板912の下面(一方の面)側に設けられ、マトリクス状に形成された隔壁940と電気泳動分散液910とで構成された表示層9400とを有している。
一方、回路基板922は、平板状の基部91と基部91の上面に設けられた複数の第1の電極93とを備える対向基板911と、この対向基板911(基部91)に設けられた、例えばTFT等のスイッチング素子を含む回路(図示せず)と、このスイッチング素子を駆動させる駆動IC(図示せず)とを有している。
以下、各部の構成について順次説明する。
基部91および基部92は、それぞれ、シート状(平板状)の部材で構成され、これらの間に配される各部材を支持および保護する機能を有する。
各基部91、92は、それぞれ、可撓性を有するもの、硬質なもののいずれであってもよいが、可撓性を有するものであるのが好ましい。可撓性を有する基部91、92を用いることにより、可撓性を有する電気泳動表示装置920、すなわち、例えば電子ペーパーを構築する上で有用な電気泳動表示装置920を得ることができる。
また、各基部(基材層)91、92を可撓性を有するものとする場合、これらは、それぞれ、樹脂材料で構成するのが好ましい。
このような基部91、92の平均厚さは、それぞれ、構成材料、用途等により適宜設定され、特に限定されないが、20〜500μm程度であるのが好ましく、25〜250μm程度であるのがより好ましい。
これらの基部91、92の隔壁940側の面、すなわち、基部91の上面および基部92の下面に、それぞれ、層状(膜状)をなす第1の電極93および第2の電極94が設けられている。
第1の電極93と第2の電極94との間に電圧を印加すると、これらの間に電界が生じ、この電界が電気泳動粒子(本発明の電気泳動粒子)95に作用する。
本実施形態では、第2の電極94が共通電極とされ、第1の電極93がマトリックス状(行列状)に分割された個別電極(スイッチング素子に接続された画素電極)とされており、第2の電極94と1つの第1の電極93とが重なる部分が1画素を構成する。
各電極93、94の構成材料としては、それぞれ、実質的に導電性を有するものであれば特に限定されない。
このような電極93、94の平均厚さは、それぞれ、構成材料、用途等により適宜設定され、特に限定されないが、0.05〜10μm程度であるのが好ましく、0.05〜5μm程度であるのがより好ましい。
なお、各基部91、92および各電極93、94のうち、表示面側に配置される基部および電極(本実施形態では、基部92および第2の電極94)は、それぞれ、光透過性を有するもの、すなわち、実質的に透明(無色透明、有色透明または半透明)とされる。
電気泳動表示シート921では、第2の電極94の下面に接触して、表示層9400が設けられている。
この表示層9400は、電気泳動分散液(上述した本発明の電気泳動分散液)910が隔壁940により画成された複数の画素空間9401内に収納(封入)された構成となっている。
隔壁940は、対向基板911と基板912との間に、マトリクス状に分割するように形成されている。
隔壁940の構成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂のような熱可塑性樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂のような熱硬化性樹脂等の各種樹脂材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
画素空間9401内に収納された電気泳動分散液910は、本実施形態では、着色粒子95bと白色粒子95aとの2種(少なくとも1種の電気泳動粒子1)を分散媒96に分散(懸濁)してなるものであり、前述した本発明の電気泳動分散液が適用される。
このような電気泳動表示装置920では、第1の電極93と第2の電極94との間に電圧を印加すると、これらの間に生じる電界にしたがって、着色粒子95b、白色粒子95a(電気泳動粒子1)は、いずれかの電極に向かって電気泳動する。
本実施形態では、白色粒子95aとして正荷電を有するものが用いられ、着色粒子(黒色粒子)95bとして負荷電のものが用いられている。すなわち、白色粒子95aとして、母粒子2がプラスに帯電している電気泳動粒子1が用いられ、着色粒子95bとして、母粒子2がマイナスに帯電している電気泳動粒子1が用いられる。
このような電気泳動粒子1を用いた場合、第1の電極93を正電位とすると、図6(A)に示すように、白色粒子95aは、第2の電極94側に移動して、第2の電極94に集まる。一方、着色粒子95bは、第1の電極93側に移動して、第1の電極93に集まる。このため、電気泳動表示装置920を上方(表示面側)から見ると、白色粒子95aの色が見えること、すなわち、白色が見えることになる。
これとは逆に、第1の電極93を負電位とすると、図6(B)に示すように、白色粒子95aは、第1の電極93側に移動して、第1の電極93に集まる。一方、着色粒子95bは、第2の電極94側に移動して、第2の電極94に集まる。このため、電気泳動表示装置920を上方(表示面側)から見ると、着色粒子95bの色が見えること、すなわち、黒色が見えることになる。
このような構成において、白色粒子95a、着色粒子95b(電気泳動粒子1)の帯電量や、電極93または94の極性、電極93、94間の電位差等を適宜設定することにより、電気泳動表示装置920の表示面側には、白色粒子95aおよび着色粒子95bの色の組み合わせや、電極93、94に集合する粒子の数等に応じて、所望の情報(画像)が表示される。
また、電気泳動粒子1の比重は、分散媒96の比重とほぼ等しくなるように設定されているのが好ましい。これにより、電気泳動粒子1は、電極93、94間への電圧の印加を停止した後においても、分散媒96中において一定の位置に長時間滞留することができる。すなわち、電気泳動表示装置920に表示された情報が長時間保持されることとなる。
なお、電気泳動粒子1の平均粒径は、0.1〜10μm程度であるのが好ましく、0.1〜7.5μm程度であるのがより好ましい。電気泳動粒子1の平均粒径を前記範囲とすることにより、電気泳動粒子1同士の凝集や、分散媒96中における沈降を確実に防止することができ、その結果、電気泳動表示装置920の表示品質の劣化を好適に防止することができる。
本実施形態では、電気泳動表示シート921と回路基板922とが、接着剤層98を介して接合されている。これにより、電気泳動表示シート921と回路基板922とをより確実に固定することができる。
接着剤層98の平均厚さは、特に限定されないが、1〜30μm程度であるのが好ましく、5〜20μm程度であるのがより好ましい。
基部91と基部92との間であって、それらの縁部に沿って、封止部97が設けられている。この封止部97により、各電極93、94、表示層9400および接着剤層98が気密的に封止されている。これにより、電気泳動表示装置920内への水分の浸入を防止して、電気泳動表示装置920の表示性能の劣化をより確実に防止することができる。
封止部97の構成材料としては、上述した隔壁940の構成材料として挙げたものと同様のものを用いることができる。
<電子機器>
次に、本発明の電子機器について説明する。
本発明の電子機器は、前述したような電気泳動表示装置920を備えるものである。
<<電子ペーパー>>
まず、本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態について説明する。
図7は、本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態を示す斜視図である。
図7に示す電子ペーパー600は、紙と同様の質感および柔軟性を有するリライタブルシートで構成される本体601と、表示ユニット602とを備えている。
このような電子ペーパー600では、表示ユニット602が、前述したような電気泳動表示装置920で構成されている。
<<ディスプレイ>>
次に、本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態について説明する。
図8は、本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態を示す図である。このうち、図8中(a)は断面図、(b)は平面図である。
図8に示すディスプレイ(表示装置)800は、本体部801と、この本体部801に対して着脱自在に設けられた電子ペーパー600とを備えている。
本体部801は、その側部(図8(a)中、右側)に電子ペーパー600を挿入可能な挿入口805が形成され、また、内部に二組の搬送ローラ対802a、802bが設けられている。電子ペーパー600を、挿入口805を介して本体部801内に挿入すると、電子ペーパー600は、搬送ローラ対802a、802bにより挟持された状態で本体部801に設置される。
また、本体部801の表示面側(図8(b)中、紙面手前側)には、矩形状の孔部803が形成され、この孔部803には、透明ガラス板804が嵌め込まれている。これにより、本体部801の外部から、本体部801に設置された状態の電子ペーパー600を視認することができる。すなわち、このディスプレイ800では、本体部801に設置された状態の電子ペーパー600を、透明ガラス板804において視認させることで表示面を構成している。
また、電子ペーパー600の挿入方向先端部(図8(a)中、左側)には、端子部806が設けられており、本体部801の内部には、電子ペーパー600を本体部801に設置した状態で端子部806が接続されるソケット807が設けられている。このソケット807には、コントローラー808と操作部809とが電気的に接続されている。
このようなディスプレイ800では、電子ペーパー600は、本体部801に着脱自在に設置されており、本体部801から取り外した状態で携帯して使用することもできる。
また、このようなディスプレイ800では、電子ペーパー600が、前述したような電気泳動表示装置920で構成されている。
なお、本発明の電子機器は、以上のようなものへの適用に限定されず、例えば、テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、電子新聞、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等を挙げることができ、これらの各種電子機器の表示部に、電気泳動表示装置920を適用することが可能である。
以上、本発明の電気泳動粒子、電気泳動分散液、電気泳動シート、電気泳動装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
電気泳動粒子の製造、電気泳動分散液の調製、電気泳動分散液の評価
[実施例1]
1.分散部の合成
フラスコに、分子量5,000のシリコーンマクロモノマー(JNC株式会社製「サイラプレーン FM−0721」):60g、2−シアノ−2−プロピルベンゾジチオエート:250mg、アゾビスイソブチロニトリル:100mgを加え、系を窒素置換した後に、さらに酢酸エチル22.5mLを加え、その後、75℃で8時間加熱撹拌してシリコーンマクロモノマーを重合した。これを室温まで冷却して反応を終了し、溶媒を除去してシリコーンポリマー反応溶液を得た。
得られた反応溶液を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を展開溶媒としてシリカゲルカラムで精製し、不純物を除去してシリコーンポリマーを単離した。トルエンを展開溶媒としたゲル浸透クロマトグラフィーによって、得られたシリコーンポリマーの重量平均分子量(Mw)を測定した結果、42,000であることを確認した。
2.帯電部の合成
フラスコに、上記で得られたシリコーンポリマー:10gに、アゾビスイソブチロニトリル:27.5mg、メタクリル酸ナトリウム:100mg、18−Crown−6: 1.2gを加え、系を窒素置換した後に、さらにエタノール−酢酸エチル混合溶媒を加え、その後、75℃で4時間加熱撹拌して重合を行った。これを室温まで冷却して反応を終了し、溶媒を除去して分散部に帯電部が連結したブロックコポリマーを得た。
3.結合部の合成
フラスコに、上記で得られた分散部に帯電部が連結したブロックコポリマー:10gに、アゾビスイソブチロニトリル:27.5mg、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(信越シリコーン社製、「KBE-503」):200gを加え、系を窒素置換した後に、さらにエタノール−酢酸エチル混合溶媒を加え、その後、75℃で4時間加熱撹拌して重合を行った。これを室温まで冷却して反応を終了し、溶媒を除去して分散部と帯電部と結合部とが連結したブロックコポリマーを得た。
4.電気泳動分散液の調整
フラスコに、上記で得られたブロックコポリマー:10g、チタニア粒子(石原産業社製「CR50」):60gを、シリコーンオイル(信越化学製「KF−96−20cs」)に加え、1時間超音波処理した後、180℃で8時間加熱撹拌してブロックコポリマーを粒子に結合させて電気泳動粒子を得た。反応後の溶液から、未反応のブロックコポリマーを除去し、シリコーンオイルを信越化学製「KF−96−2cs」に置換して良好な分散性を示す白色の電気泳動分散液を得た。
[実施例2]
分子量10,000のシリコーンマクロモノマー(JNC株式会社製「サイラプレーン FM−0725」)を用いて分散部の合成を行い、さらに、ブロックコポリマーを結合させる粒子としてチタニア粒子(石原産業社製、「CR97」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の電気泳動分散液を調整した。なお、得られたシリコーンポリマーの重量平均分子量(Mw)を測定した結果、55,000であることを確認した。
[実施例3]
分子量16,000のシリコーンマクロモノマー(JNC株式会社製「サイラプレーン FM−0726」)を用いて分散部の合成を行い、さらに、ブロックコポリマーを結合させる粒子としてチタニア粒子(石原産業社製「CR90」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例3の電気泳動分散液を調整した。なお、得られたシリコーンポリマーの重量平均分子量(Mw)を測定した結果、48,000であることを確認した。
[実施例4]
メタクリル酸ナトリウムと、15−Crown−5とを用いて帯電部の合成を行い、さらに、ブロックコポリマーを結合させる粒子としてチタニア粒子(石原産業社製、「CR97」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例4の電気泳動分散液を調整した。なお、得られたシリコーンポリマーの重量平均分子量(Mw)を測定した結果、42,000であることを確認した。
[実施例5]
メタクリル酸カリウムと、18−Crown−6とを用いて帯電部の合成を行い、さらに、ブロックコポリマーを結合させる粒子としてチタニア粒子(石原産業社製、「CR97」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例5の電気泳動分散液を調整した。なお、得られたシリコーンポリマーの重量平均分子量(Mw)を測定した結果、43,000であることを確認した。
[比較例1]
帯電部の合成の際に、18−Crown−6の添加を省略したこと以外は、実施例4と同様にして比較例1の電気泳動分散液を調整した。なお、得られたシリコーンポリマーの重量平均分子量(Mw)を測定した結果、42,000であることを確認した。
5.電気泳動分散液の評価
各実施例および各比較例の電気泳動分散液について、以下のような分散性および泳動性の評価を行った。
<分散性評価>
すなわち、まず、ガラス基板上に、電極間距離が100μmとなっている櫛歯電極が形成された評価用櫛歯電極基板を用意した。
次いで、電気泳動分散液を電気泳動粒子の含有率が1wt%となるように希釈した後、この希釈された電気泳動分散液を評価用櫛歯電極基板の櫛歯電極上に滴下した。
次いで、この滴下された電気泳動分散液を、顕微鏡を用いて観察した。
その結果を、以下に示す評価基準に基づいて評価した。
<<評価基準>>
◎:電気泳動分散液に、電気泳動粒子の凝集が認められず、電気泳動粒子が電気泳動分散液中に一様に広がっている。
○:電気泳動分散液に、電気泳動粒子の凝集が認められず、電気泳動粒子が電気泳動分散液中に不均一に広がっている。
△:電気泳動分散液に、電気泳動粒子の凝集がわずかに認められ、電気泳動粒子が電気泳動分散液中に不均一に広がっている。
×:電気泳動分散液に、電気泳動粒子の凝集が認められる。
<泳動性評価>
次いで、櫛歯電極上に電気泳動分散液が滴下された状態で、櫛歯電極間に15Vを印加し、その際の、電気泳動粒子の泳動性を、顕微鏡を用いて観察した。
その結果を、以下に示す評価基準に基づいて評価した。
<<評価基準>>
◎:電気泳動分散液中において、電気泳動粒子が電圧の印加に応答して一様に泳動している。
○:電気泳動分散液中において、電気泳動粒子が電圧の印加に応答して不均一に泳動している。
△:電気泳動分散液中において、電気泳動粒子が電圧の印加に応答して不均一に泳動し、一部の電気泳動粒子が電極上もしくはガラスに固着ている。
×:電気泳動分散液中において、電気泳動粒子が電圧の印加に応答しないあるいは電極上もしくはガラスに固着している。
これらの評価結果を、表1に示す。
表1から明らかなように、各実施例の電気泳動分散液では、電気泳動粒子は、電気泳動分散液中において、優れた分散性、泳動性を示すものであった。
これに対して、比較例1の電気泳動分散液では、帯電部において、環状構造である18−Crown−6の添加が省略されていることに起因して、電気泳動粒子は、分散性および泳動性に優れたものとは言えない結果を示した。