JP6563364B2 - 二次電池用負極 - Google Patents

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Description

本発明は、正極と負極の間をLiイオンのような電荷担体イオンが行き来する二次電池
用負極に関する。
近年、携帯電話やノートブック型パーソナルコンピュータ等のモバイル型の電子機器が
情報社会の重要な役割を果たしている。これらの電子機器は長時間駆動が求められており
、必然的に駆動電源である二次電池の高エネルギー密度化が望まれてきた。
これらの電子機器や車両等の搬送機器の電源として、軽量で高エネルギー密度が得られ
るリチウムイオン二次電池の高性能化が求められている。リチウムイオン二次電池は、リ
チウム塩を非水溶媒に溶解させた電解液やリチウム固体電解質が負極活物質と正極活物質
との間に挟まれた構造とされており、負極活物質と正極活物質との間をリチウムイオンが
行き来することによって充電及び放電が行われている。
リチウムイオン二次電池用の負極活物質として、従来、グラファイトが用いられている
が、理論容量372mAh/gと制限されており、現状以上の高容量化は望めない。理論的に
はカーボン系負極材料以上の充放電容量が得られるシリコン、シリコンを主体とする合金
、シリコン酸化物等が負極材料として注目されている。シリコンはリチウムと合金化する
ため負極活物質として用いることができ、しかも、グラファイトと比べてリチウムを多く
取り込むことができることから、電池の高容量化を期待できるからである(例えば、非特
許文献1、特許文献1、2)。
リチウム系二次電池の負極材料としては主に炭素・黒鉛系、酸化物系、合金系、リチウ
ム金属が知られているが、炭素・黒鉛系物質の層間へのLiイオンのインターカレーショ
ンを利用したLiイオン二次電池が普及している。カーボンナノチューブを負極活物質と
するLiイオン二次電池(特許文献3,4)は、多数のカーボンナノチューブの間隙にL
iイオンがインターカレーションするものである。
リチウム金属を負極材料とするリチウム二次電池は高い理論容量が得られる電池として
古くから研究されている。しかしながら、リチウム金属を用いる場合には、充電時に負極
にデンドライトが析出するため、充放電を繰り返すことによりデンドライトが正極側に達
して内部短絡が起きるという問題があり、リチウム金属を負極材料とするリチウム二次電
池はいまだ信頼性が低く、広く実用化される段階には達していない。
リチウムイオン二次電池に替わる次世代二次電池として、全固体二次電池の他、Naイ
オン二次電池、Mgイオン二次電池、Caイオン二次電池、Alイオン二次電池、Li−
硫黄二次電池、金属−空気二次電池などが研究開発されている。また、非水電解液の非水
溶媒としてイオン性液体を用いたリチウムイオン二次電池も開発されている(特許文献5
)。
本発明者らは、新しいタイプの二次電池として、Liイオン、Naイオン、Mgイオン
、又はCaイオンのような電荷担体イオンが通過可能なサイズの開口を有する篩を設けた
カプセル型構造体を用い、その内部に篩を介して電荷担体イオンが出入りすることを許容
し、且つ、該内部に異物(電解液の構成成分、固体電解質に由来する無機粒子等)が侵入
することを抑制するようにした二次電池用電極に係る発明について特許出願し(特許文献
6、7)、また、前記篩について、計算科学により単層CNTにリチウムイオン3個まで
は、リチウム金属の析出なく挿入できること、エチレンカーボネート等の溶媒が通過でき
ない条件等について報告した(非特許文献2,3)。
ナノメーターサイズの細孔を有する多孔質セラミックス膜としてはガス分離膜や高分子
(タンパク質)の分離膜が知られているが、このような金属酸化物、金属炭化物、金属ホ
ウ化物などのセラミックス材料からなる多孔質膜を、スパッタ法、蒸着法、CVD法、レ
ーザーアブレーション法あるいは分子線エピタキシー法などの気相成膜法で形成すること
ができる(特許文献8)。
特開2003−077529号公報 特開2007−194204号(特許第4671950号)公報 特開2005−293850号公報 特開2010−129169号公報 特開2009−140918号(特許第5382414号)公報 特開2007−141520号(特許第5062989号)公報 特開2008−181751号(特許第5134254号)公報 特開平09−157062号(特許第3135110号)公報
Uday Kasavajjula ,et al.,"Nano-and bulk-silicon-based insertion anodes for lithium-ion secondary cells",Journal of Power Sources,163,(2007),1003-1039 佐野 茂他、第50回電討論会講演要旨集、平成21年11月30日、3A21,74頁 佐野 茂他、第51回電討論会講演要旨集、平成22年11月8日、2B14,115頁
高容量化とサイクル寿命を両立させた負極材料の開発はリチウムイオン二次電池の性能
を高めるのに重要である。シリコンを負極活物質として用いるには、充放電による体積変
化を吸収するための機構が必要である。また、シリコンは導電性がないため集電体との導
電パスを確保するために炭素等の導電性を持つ導電助剤との混合が必要となる。
本発明者らが発明した上記の電荷担体イオンが通過可能なサイズの開口を有する篩を設
けた構造体を用いる電極(特許文献6,7)は、構造体の内部に電荷担体イオンを収容す
る空間が必要であり多数のカプセル型構造体を用いるものであった。そのため、構造体と
して主にカーボンナノチューブのように3次元の構造体を用いるが、電荷担体イオンが出
入りすることを許容するような微小な貫通孔を持つ構造体を集電体基板上に形成すること
が困難であった。
リチウムイオン二次電池はポータブル機器の電源から電気自動車などの大型の電池まで
20年以上に亘り多くの改良がなされてきた。さらに、高いエネルギー密度、より優れた
寿命特性、より高い安全性のポストリチウムイオン二次電池と称される次世代二次電池の
実現が求められている。
しかし、Naイオン、Caイオンはイオン半径が大きくグラファイトと層間化合物を作
り難くホスト材料への可逆挿入脱離が難しく、Mgイオンは固相内で拡散しにくく、Al
イオンはアニオンとの相互作用が極めて大きいという課題がある。最近、アニオンとカチ
オンで構成される液状イオン性物質であるイオン液体のリチウムイオン二次電池への応用
が考えられているが、現行の炭素系負極を用いると、通常、リチウムイオンを炭素層間に
挿入できないことが知られている。そのため、特許文献5では特殊な負極活物質を用いる
ことを開示している。
また、従来のグラファイト負極は電解質として優れた性質を有するプロピレンカーボー
ネート(PC)が脱溶媒和時にグラファイトと反応してグラファイトの剥離を生じるとい
う問題がある。これらの課題を解決できる新たな負極材の提供が求められている。
本発明者等は、特許文献6,7に開示したような、電荷担体イオンを選択透過する篩を
設けたカプセル型構造を利用する二次電池の研究を鋭意進めている過程で二次元の多孔質
膜によって該カプセル型構造と同様の機能が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、負極集電体基板と該基板表面に形成した多孔質膜とからなり、該
多孔質膜は、該基板面側に電荷担体イオンが該多孔質膜の孔を通じて透過することが許容
されるサイズであり、かつ二次電池の電解液を構成する溶媒分子、及び電解質支持塩を構
成するイオンであって電荷担体イオンとは逆極性のイオン、が透過することを実質的に阻
止し得るサイズの孔を備えており、該集電体基板面と該多孔質膜の対向面の間は該電荷担
体イオンの出入りを許容する領域をなすことを特徴とする二次電池用負極、である。
該多孔質膜は、該集電体基板表面と該多孔質膜との対向面間を充電時に電荷担体イオン
を充填する空隙層として機能させる膜である。該多孔質膜は、該基板表面に接して形成さ
れていてもよい。該多孔質膜は、該集電体基板表面に物理気相成膜法又は化学気相成膜法
により堆積された薄膜層でもよい。該多孔質膜は、好ましくは炭化ケイ素膜などの無機化
合物からなる。該多孔質膜は、ナノ多孔質分離膜でもよい。該多孔質膜の膜厚は、好まし
くは100nm〜1000nmである。
本発明の二次電池用負極は、電荷担体イオンの種類、電解液、溶媒、正極材料の種類等
による制約が少なく各種の二次電池の負極として用いることができる。
本発明の二次電池用負極は、初充電で正極活物質中及び電解質中等に含まれる電荷担体
イオンを集電体表面と多孔質膜の対向面の間に移動させて活物質とする機能を有するもの
であるが、電荷担体イオンの金属が析出しない電位範囲で機能させることができるので、
従来技術に基づく充電制御方法で充電すれば、デンドライトは生成しない。
図2は、実施例2において電荷担体イオンとしてリチウムイオンを用いた場合のOCV
測定結果について、各充電電圧までの充電後の回路電圧を示している。図2に見られるよ
うに、リチウム金属析出電圧よりも高い0.02V〜1.6Vで、定電圧充電すると、各
電圧で電流が収束されて充電が完了し、Li金属の場合の0Vではない電圧で開回路電圧
が得られる。このことは、各電圧で蓄電できていること、つまり、リチウム金属でなく、
リチウムイオンの状態で集電体表面と多孔質膜の対向面の間に存在していると考えられる
。このような電荷担体イオンの透過現象は、前記非特許文献2,3による本発明者らの単
層CNTについての報告と整合する。
本発明の二次電池用負極は、集電体基板の表面に多孔質膜を形成した負極材を用いるだ
けで、放電容量が大きく、サイクル寿命に優れる二次電池を構成することができる。従来
の導電助剤やバインダを用いた負極作製プロセスが不要となる。また、金属リチウムを負
極材としない二次電池であるため、安全性に優れる。さらに、電解液の物質に関しての制
約がない二次電池を実現できる。
本発明の二次電池用負極の多孔質膜の機能原理を示す概念断面図であり、(A)は電池製造時、(B)は充電初期の状態、(C)は充電中の状態、(D)は充電完了時の状態、(E)は放電完了時の状態を示す。 実施例2で作製したハーフセルの各電位まで充電後のOCV測定結果を示すグラフである。 実施例1で作製したハーフセルの充放電特性の測定結果を示すグラフである。 実施例1で作製したハーフセルの充電時の負極断面のSEM像を示す図面代用写真である。 実施例1で作製したハーフセルの放電時の負極断面のSEM像を示す図面代用写真である。 実施例2で作製したハーフセルの充放電特性の測定結果を示すグラフである。 実施例1,2で作製したハーフセルのサイクル特性を示すグラフである。
本発明は、二次電池において、負極に多孔質膜を用いることを特徴とする。この孔は電
荷担体イオンを透過させるために開放孔である必要があるが、一次元的に直進する構造の
孔に限られず、膜の両側へ電荷担体イオンが通り抜けるように不規則に連続した孔であれ
ばよい。
この多孔質膜は、集電体基板面側に電荷担体イオンが該多孔質膜の孔を通じて透過する
ことが許容されるサイズであり、かつ二次電池の電解液を構成する溶媒分子、及び電解質
支持塩を構成するイオンであって電荷担体イオンとは逆極性のイオン、が透過することを
実質的に阻止し得るサイズの孔を備えている。すなわち、該多孔質膜(以下「篩膜」とい
う場合がある)はイオンの選択透過膜やナノ多孔質分離膜と同等の膜として機能する。
なお、細孔の大きさは、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemi
stry)では触媒分野において、直径2nm以下の細孔をマイクロ孔(ミクロ孔、マイクロ
細孔、マイクロポアともいう)、直径2nm〜50nmの細孔をメソ孔、直径50nm以
上の細孔をマクロ孔と定義されており、この定義にしたがえば、篩膜の孔はマイクロ孔か
それよりやや大きいサイズの孔である。大きさが2nm程度より小さい孔を有する膜はイ
オン、分子を分離するナノ多孔質分離膜として知られている。
本発明で使用する篩膜は、具体的にはマイクロ孔程度の大きさの孔のサイズは、電荷担
体イオンのイオン半径の2倍以上であればよく、溶媒分子は理論的にはファンデルワース
半径の2倍以下を基準とするが、溶媒分子の会合を考慮すればその3〜4倍程度であって
も良いと考えられるので、使用する電解液によって好適な値を求めればよい。また、イオ
ン液体を用いる二次電池では、電荷担体イオンと逆極性のイオン、例えば、イミダゾニウ
ムイオンのような巨大分子の有機物のイオンでリチウムイオン塩となり、溶媒なしで常温
で液体状態になり、リチウムイオンを移動させることができる。この系では、イオン液体
が溶媒の代わりとなり、電極表面で分解してSEIを形成する。本件明細書では、このよ
うなイオン液体を溶媒の概念に含めるものとする。
本発明の負極においては、集電体基板面と篩膜の対向面の間は該電荷担体イオンの出入
りを許容する領域をなす。これにより、初充電の際に電荷担体イオンは篩膜の電解液側の
面にて脱溶媒し、電荷担体イオンのみが篩膜を集電体表面側へ通過し、溶媒分子及び陰イ
オンは実質的に阻止されて通過しない。なお、ここで、実質的に阻止というのは、溶媒分
子及び陰イオンが電荷担体イオンに対してはるかに少なければ、例えば1/10程度以下
であれば電荷担体イオンの充填への影響は少ないので、100%完全に阻止しなくてもよ
いことを意味する。
篩膜と集電体基板との対向面の間は、電荷担体イオンの出入りを許容する領域をなして
いるので、電荷担体イオンはこの領域に侵入し集合して体積を増すことになる。この領域
を形成するために集電体基板面と篩膜との間にはわずかな隙間を設けて形成してもよい。
また、基板表面に接して形成された篩膜であっても、図1(A)〜(E)に示すように、
充電時に前記領域の電荷担体イオンの増加に対応して変形すれば、電荷担体イオンが集電
体表面に引き寄せられる力によって変形し隙間が生じて、そこに電荷担体イオンが充填さ
れ電荷担体イオンからなる活物質層として存在することになる。放電に際しては、電荷担
体イオンが放出されてしまうことにより篩膜は元の形態に戻る。したがって、可撓性の多
孔性膜であれば好ましい。2回目以降の充電に際しては、電荷担体イオンは、初充電時に
形成された隙間領域の空隙に吸蔵される。
このように集電体基板表面に接して篩膜が形成された場合であっても電荷担体イオンが
篩膜を透過する現象は、初充電時に集電体と電解液中の電荷担体イオンが静電的に引き合
い、電荷担体イオンが篩膜を集電体側に通過し、電荷担体イオンによる物理的な体積が生
じ、引きはがす方向に応力が篩膜に発生することにより、篩膜が集電体表面から部分的に
剥離して、隙間領域が形成される、と推測される。
放電の際には、前記活物質層中の電荷担体イオンは篩膜を通過して電解液中に放出され
て前記活物質層は消失し隙間領域は縮小する。篩膜中の電荷担体イオンも電解液中に放出
されて篩膜中の電荷担体イオンの比率は低下する。2サイクル目以降はそれを繰り返す。
電荷担体イオンは、例えば、Liイオン(イオン半径0.073nm)、Naイオ
ン(同0.113nm)、Kイオン(同0.152nm)、Agイオン(同0.11
5nm)、Cuイオン(同0.96nm)等の一価のカチオン;Mg2+イオン(イオ
ン半径0.071nm)、Ca2+イオン(同0.114nm)、Ti2+イオン(同0
.100nm)等の二価のカチオン;Al3+イオン(イオン半径0.053nm)等の
三価のカチオン;等である。
本発明の負極を用いた二次電池は、電荷担体イオンの金属が析出しない電位範囲で機能
させることができるので、従来技術に基づく充電制御方法で充電すれば、デンドライトは
生成しない。
図1(A)は、本発明の負極の電池作製時の初充電前の状態を示す。篩膜は集電体基板
表面に形成されている。図1(B)は、充電初期状態を概念的に示したものであり、篩膜
の電解液面側の表面で脱溶媒和した電荷担体イオンが篩膜を通過して集電体と篩膜との対
向面の隙間領域に入り込むことにより篩膜が部分的に剥離して空隙が形成される。溶媒は
篩膜を透過しないためこの空隙内に溶媒は存在しない。電解液が集電体表面と接触しない
ので、電解液の分解は空隙内では発生しない。充電中は、図1(C)に示すように、電荷
担体イオンの入り込みにより、空隙が徐々に拡大し、電荷担体イオンの体積が増加する。
図1(D)は、充電が完了した状態を示し、脱溶媒和した電荷担体イオンが集電体基板表
面と篩膜の対向面の間に充填され、集電体に自由に動き回れる電子が蓄電される。なお、
電荷担体イオンとは逆極性のイオン、たとえば、PF6 -のようなアニオンが少量侵入して
も、特に影響はない。図1の(E)は放電完了状態を示したものであるが、隙間領域内の
電荷担体イオンは篩膜を通過して電解液中に放出されて溶媒和する。
負極集電体としては、電気伝導性が良い銅系材料、アルミニウム材料、耐食性が高いス
テンレス鋼も挙げられる。ステンレス鋼は通常不動態皮膜により黒鉛等の活物質層との間
の接触抵抗が増大してしまう問題があるが、本発明の負極においては、特に不動態皮膜の
除去処理を行わなくてもよい。なお、電荷担体イオンの種類、電解液の種類を最適化すれ
ば軽量化やコストの面でアルミニウム系材料が集電体として最適である。
この多孔質膜は、通常、100nm〜1000nm、好ましくは300nm〜800n
m、特に好ましくは300nm〜600nmの厚みであればよい。多孔質膜としては、S
iC,TiN,Al23、SiN、アモルファスダイヤモンドライクカーボン(DLC)
膜等のスパッタリング、真空蒸着などの物理気相成膜法(PVD)やプラズマCVD法等
の化学気相蒸着(CVD)法で薄膜として堆積可能な無機化合物が好ましい。一般に気相
から薄膜を堆積する場合、基板上に核が多数形成され、その核が互いに接触して島状、柱
状構造となり多孔質膜が形成されることになる。孔の大きさは膜材料、成膜条件により異
なるが、用いる電荷担体イオンの篩膜として機能する膜を選択使用する。空孔率は少なく
とも5%程度以上あればよく、篩膜の強度を考慮すれば70%程度以下が望ましい。
本発明の負極は、正極及び負極間の電荷担体イオンの往復運動を利用する二次電池用の
構成要素として用いることができる。すなわち、本発明の負極と、電荷担体イオンの化合
物等を活物質とする正極と、この正負極間に配置される電解液と、正負極間を隔離するセ
パレータと、から二次電池を形成することができる。電解液を構成する有機溶媒と電解質
、正極、セパレータ、並びにこの二次電池を構成する外容器の構造や大きさ等については
、特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。
前記正極集電体は、例えば、アルミニウム、ニッケル又はステンレス鋼などでよい。セ
パレータは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのポリオレフィン製の
多孔質膜、セラミック製の多孔質膜でよい。
非水有機溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネ
ート、ジエチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートが好適である。電解液の難燃
性を向上させるためにフルオロエーテルを用いてもよい。非水有機溶媒は有機珪素化合物
などの添加剤を含有してもよい。
かかる二次電池に具備される電解質としては、上記電荷担体イオンの種類に応じて、該
イオンを伝導する性質を有する各種材料を特に限定なく使用することができる。ここに開
示される技術は、液状の電解質(電解液)を備える電池にもゲル系有機高分子固体電解質
を備える電池にも適用可能である。このようなゲル系有機高分子固体電解質は、一種のみ
を使用してもよく、組成の異なる二種以上のゲル系有機高分子固体電解質を併用(例えば
混合して使用)してもよい。
電解質がゲル系有機高分子固体電解質の場合、上記塩類をポリエチレンオキシド,ポリ
プロピレンオキシド,ポリホスファゼン,ポリアジリジン,ポリエチレンスルフィド,ポ
リビニルアルコール等やこれらの誘導体、混合物、複合体等に混合して使用される。この
ゲル系有機高分子固体電解質は、正極と負極とのセパレータを兼ねる。
以下、本発明の実施例について説明するが多孔質膜の材料や製造方法は各種の方法が採
用可能であって、本発明の範囲は以下の実施例によって制約されるものではない。
(負極の作製)
集電体として用いるステンレス鋼箔(フェライト系ステンレス SUS430,50mm×50m
m、厚さ50μm)にプラズマCVD装置(株式会社広島製)を用いて原料ガスを分解しSi
と炭素を同時に堆積し、非晶質SiC膜を形成した。ステンレス鋼箔表面の不動態被膜の
除去処理は行わなかった。なお、SiCは、電気化学的に不活性であり、絶縁物である。
Si成分の原料ガスとして四塩化ケイ素(SiCl4)ガスを用い、C成分の原料ガスと
してメタン(CH4)ガスを用い、流量比でSiCl4ガス:CH4:H2=6:36:8と
した。基板温度750℃、圧力16.7Pa、RF出力200W、成膜時間90分、で成
膜した。膜厚は500nmであった。膜のXPS分析から求められたSiの全量がSiC
であると推定して、膜の質量とSiCの真密度から求めた空孔率は約6%と見積もられた
上記の方法で形成した負極でハーフセル(2032コインセル)を作製して負極特性を
評価した。負極サイズをφ16mmとし、対極をLi金属とし、電解液は1mol/L
LiPF6,EC:DMC(1:2v/v%)(添加剤なし)、セパレータはPP系で厚
さ25μm、評価温度25℃一定(恒温槽)とした。
図3に、初期充放電特性を示す。初期10サイクルは0.1Cの充放電レートにて初期
性能を評価し、その後、1Cレートにてサイクル特性を評価した。1サイクル目の容量は
1018mAh/gであり、8サイクル目は1225mAh/gであった。
図4に、充電後の負極断面のSEM像を示す。集電体表面からSiC膜が剥離し、集電
体とSiC膜の対向面の間の隙間領域にSiC膜の厚みより厚い電荷イオン充填層が形成
されており、SiC膜が多量の電荷イオンを選択透過する可撓性の多孔質膜であることが
わかる。電荷イオン充填層は、電荷イオンの集合物であると推測される。
また、図5に、放電時の負極断面のSEM像を示す。放電後には電荷イオン充填層中の
電荷担体イオンは多孔質膜を通過し電解液中に放出され、電荷イオン充填層は見られなく
なり、充電時に形成された集電体表面と多孔質膜の対向面の間の隙間領域は縮小する。
充電時には充電層が形成され、放電時には電荷イオン充電層は消失している。このような
現象が見られることから負極集電体表面側に移動した電荷担体イオンは電荷イオン充電層
を形成していることが分る。
Si成分の原料ガスとしてヘキサメチルジシロキサンを気化させたガスを用い、C成分
の原料ガスとしてメタン(CH4)ガスを用い、流量比にてヘキサメチルジシロキサン気化
ガス:CH4:H2=16:12:12とし、RF出力400W、成膜時間45分とした以
外は実施例1と同条件でSiとCを堆積して成膜した。均一で緻密な約500nmの膜が
形成された。膜のXPS分析から求められたSiの全量がSiCであると推定して膜の質
量とSiCの真密度から求めた空孔率は約29%と見積もられた。
上記の方法で形成した負極でハーフセルを作製して実施例1と同じ条件で負極特性を評
価した。結果を図6に示す。1サイクル目の容量(初期容量)は961mAh/gであり
、10サイクル目は954mAh/gであった。また、1.6〜0.6Vは0.2V刻み
、0.6〜0.1Vは0.1V刻み、0.05Vと0.02Vの各電位まで充放電を実施
、その後3時間のOCV測定を実施した。充放電条件は、2032コインセル(対極リチ
ウム)を用い、充電:CC充電−100μA、CV充電、OCV測定:3時間(1.6Vは
1時間、1.4Vは2時間)、放電:CC放電100μA、CV放電、OCV測定:3時間
、とした。OCV測定の結果を表1及び図2に示す。
Figure 0006563364
実施例1,2の充放電モード:CC−CV,カットオフ電圧:0.02−2.1V,1
Cレートでのサイクル特性を図7に示す。500サイクル後、実施例1は982mAh/
gの高容量であり、容量低下率は6.7%であった。実施例2は767mAh/gの高容
量であり、容量低下率は1.7%であった。
本発明は、新タイプの二次電池を提供するものであり、従来のリチウムイオン二次電池
に限らず種々開発されている新たな電池材料を用いた新タイプの二次電池の実現に寄与す
るものと期待される。

Claims (6)

  1. 負極集電体基板と該基板表面に物理気相成膜法又は化学気相成膜法により堆積された炭化ケイ素膜からなる多孔質膜とからなり、
    該多孔質膜は、該基板面側に電荷担体イオンが該多孔質膜の孔を通じて透過することが許容されるサイズであり、かつ二次電池の電解液を構成する溶媒分子、及び電解質支持塩を構成するイオンであって電荷担体イオンとは逆極性のイオン、が透過することを実質的に阻止し得るサイズの孔を備えており、
    該集電体基板面と該多孔質膜の対向面の間は該電荷担体イオンの出入りを許容する領域をなす
    ことを特徴とする二次電池用負極。
  2. 該多孔質膜は、該集電体基板表面と該多孔質膜との対向面間を充電時に電荷担体イオンを充填する空隙層として機能させる膜であることを特徴とする請求項1記載の二次電池用負極。
  3. 該多孔質膜は、該基板表面に接して形成されていることを特徴とする請求項1記載の二次電池用負極。
  4. 該多孔質膜は、ナノ多孔質分離膜からなることを特徴とする請求項1記載の二次電池用負極。
  5. 該多孔質膜の膜厚は、100nm〜1000nmであることを特徴とする請求項1記載の二次電池用負極。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載した負極を有する二次電池。
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