以下、本発明に係る蒸気タービン設備の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態の蒸気タービン設備は、図1に示すように、蒸気タービン10と、蒸気タービン10に供給する蒸気が流れる蒸気管40と、蒸気止め弁46と、蒸気加減弁47と、蒸気止め弁46及び蒸気加減弁47の動作を制御する制御装置50と、を備えている。
蒸気タービン10は、軸線Arを中心として回転するロータ11と、ロータ11を回転可能に覆うケーシング21と、を有している。なお、以下の説明の都合上、軸線Arが延びている方向を軸方向Da、軸線Arに対して垂直で且つ水平な方向を横方向Dh(図2参照)とし、軸線Arを基準とした径方向を単に径方向Dr、軸線Arを中心とした周方向を単に周方向Dcとする。また、軸方向Daの一方側を上流側、軸方向Daの他方側を下流側とする。
ロータ11は、軸線Arを中心として軸方向Daに延在しているロータ軸12と、ロータ軸12の外周に取り付けられている複数の動翼段13とを有している。複数の動翼段13は、軸方向Daに並んでいる。1つの動翼段13は、周方向Dcに並ぶ複数の動翼14を有している。
ケーシング21には、外部からの蒸気が流入するノズル室22と、ノズル室22からの蒸気が流れる蒸気主流路室23と、蒸気主流路室23から流れた蒸気を排出する排気室24と、が形成されている。ノズル室22は、複数の動翼段13のうちで最も上流側の動翼段13aよりも上流側に形成されている。蒸気主流路室23は、ロータ軸12の外周側であって軸方向Daで複数の動翼段13が存在する領域に形成されている環状の空間である。排気室24は、蒸気主流路室23よりも下流側、言い換えると、複数の動翼段13のうちで最も下流側の動翼段13dよりも下流側に形成されている。
ノズル室22内であって蒸気主流路室23との境界部分には、調速段ノズル25aが設けられている。調速段ノズル25aは、周方向Dcに並ぶ複数の調速静翼26aを有している(図2参照)。複数の動翼段13のうち、最も上流側の動翼段13は、軸方向Daで調速段ノズル25aと対向する調速動翼段13aを成している。複数の動翼段13のうち、調速動翼段13aよりも下流側に隣接している動翼段13が第一動翼段13bを成し、第一動翼段13bの下流側に隣接している動翼段13が第二動翼段13cを成し、最も下流側の動翼段13が最終動翼段13dを成す。
蒸気主流路室23内であって、第一動翼段13bから最終動翼段13dまでの各動翼段13の上流側には、静翼段25が配置されている。複数の静翼段25は、いずれもケーシング21の内周側に取り付けられている。1つの静翼段25は、周方向Dcに並ぶ複数の静翼26を有している。
ケーシング21の軸方向Daの端には、ケーシング21の内周側とロータ軸12の外周側との間をシールするシール装置29が設けられている。ロータ11の軸方向Daの両端部は、軸受装置30により支持されている。
軸受装置30は、図3に示すように、ロータ軸12の外周側に周方向Dcに並んでいる4つの軸受パッド31と、軸受パッド31を支持するパッドサポート32と、軸受パッド31及びパッドサポート32を覆う軸受ケース33と、を有する。軸受パッド31は、円弧状を成している。この軸受パッド31の内周面31iの半径は、ロータ軸12中で軸受パッド31が配置されている位置におけるロータ軸12の半径よりも大きい。軸受パッド31の外周面31oであって、軸受パッド31の周方向Dcの中間部は、パッドサポート32に接している。パッドサポート32は、円筒状の軸受ケース33の内周面に固定されている。軸受パッド31は、以上のようにパッドサポート32に支持されることで、軸線Arに対して垂直な仮想平面内において、パッドサポート32との接触位置を中心として搖動できる。さらに、軸受パッド31は、パッドサポート32との接触位置及び軸線Arを含む仮想平面内で、パッドサポート32との接触位置を中心として搖動できる。
ロータ11を回転させる際には、各軸受パッド31の内周面31iとロータ軸12の外周面との間に油を存在させる。滑り軸受では、オイルホイップ現象が問題となることがある。このオイルホイップ現象とは、回転軸の質量のアンバランス、回転軸に対する軸受装置の組み立て公差等に起因して、油に発生する不安定振動のとこである。本実施形態では、搖動する軸受パッド31を有する軸受装置30、つまりティルティング軸受装置を用いることで、このオイルホイップ現象の発生を抑えている。
本実施形態のケーシング21には、図2に示すように、4つのノズル室22が形成されている。4つのノズル室22は、軸線Arを中心として、周方向Dcに並んでいる。ここで、4つのノズル室22のうちの1つのノズル室22を第一ノズル室22Aとし、この第一ノズル室22Aに対して、周方向Dcでロータ11の回転方向Rと逆方向の側である回転反対側Rcに隣接しているノズル室22を第二ノズル室22Bとする。さらに、この第二ノズル室22Bに対して、周方向Dcの回転反対側Rcに隣接しているノズル室22を第三ノズル室22Cとし、第三ノズル室22Cに対して、周方向Dcの回転反対側Rcに隣接しているノズル室22を第四ノズル室22Dとする。すなわち、本実施形態において、4つのノズル室22は、周方向Dcの回転反対側Rcに向かって、第一ノズル室22A、第二ノズル室22B、第三ノズル室22C、第四ノズル室22Dの順で並んでいる。
第一ノズル室22A及び第四ノズル室22Dは軸線Arよりも上側に配置され、第二ノズル室22B及び第三ノズル室22Cは軸線Arよりも下側に配置されている。また、第一ノズル室22A及び第二ノズル室22Bは、軸線Arよりも横方向Dhの一方側に配置され、第三ノズル室22C及び第四ノズル室22Dは軸線Arよりも横方向Dhの他方側に配置されている。
蒸気管40は、ボイラー等の蒸気供給源からの蒸気が流れる蒸気主管41と、蒸気主管41に接続されている2本の蒸気分岐管42a,42bと、蒸気分岐管42a,42bに接続されている4本のノズル室蒸気管43a,43b,43c,43dと、を有する。すなわち、本実施形態の蒸気管40は、蒸気主管41が2つに分岐して、一方が第一蒸気分岐管42aを成し、他方が第二蒸気分岐管42bを成す。さらに、第一蒸気分岐管42aが2つに分岐して、一方が第一ノズル室蒸気管43aを成し、他方が第三ノズル室蒸気管43cを成し、第二蒸気分岐管42bが2つに分岐して、一方が第二ノズル室蒸気管43bを成し、他方が第四ノズル室分岐管42dを成す。
4本のノズル室蒸気管43a,43b,43c,43dのうち、第一ノズル室蒸気管43aは、第一ノズル室22Aに接続されている。第二ノズル室蒸気管43bは第二ノズル室22Bに接続され、第三ノズル室蒸気管43cは第三ノズル室22Cに接続され、第四ノズル室蒸気管43dは第四ノズル室22Dに接続されている。
4本のノズル室蒸気管43a,43b,43c,43dのそれぞれには、蒸気止め弁46及び蒸気加減弁47が設けられている。
第一ノズル室蒸気管43aに設けられている第一蒸気止め弁46A及び第一蒸気加減弁47Aは、第一ノズル室22Aと同様に、軸線Arを基準として、横方向Dhの一方側に配置されている。第二ノズル室蒸気管43bに設けられている第二蒸気止め弁46B及び第二蒸気加減弁47Bは、第二ノズル室22Bと異なり、軸線Arを基準として横方向Dhの他方側に配置されている。第三ノズル室蒸気管43cに設けられている第三蒸気止め弁46C及び第三蒸気加減弁47Cは、第三ノズル室22Cと異なり、軸線Arを基準として横方向Dhの一方側に配置されている。第四ノズル室蒸気管43dに設けられている第四蒸気止め弁46D及び第四蒸気加減弁47Dは、第四ノズル室22Dと同様に、軸線Arを基準として横方向Dhの他方側に配置されている。
各蒸気止め弁46及び各蒸気加減弁47は、いずれも制御装置50からの指令により動作する。この制御装置50は、各種指示や各種検知データ等を受け付ける受付部51と、受付部51が受け付けた各種指示や各種検知データ等に基づいて、各蒸気止め弁46及び各蒸気加減弁47に対して弁開度指令を出力する指令出力部52と、を有する。
次に、以上で説明した蒸気タービン設備の動作、及び各弁のテスト方法について説明する。
制御装置50の受付部51は、上位装置等から蒸気タービン起動の指示を受け付けると、例えば、予め定められた起動時開度パターンに従った弁開度を示す弁開度指令を、各蒸気止め弁46及び各蒸気加減弁47に出力する。なお、起動時における各蒸気止め弁46及び各蒸気加減弁47の開度は、例えば、蒸気主管41内を通る蒸気の温度に応じて定めてもよい。
図4に、各蒸気加減弁47の起動時開度パターンを示す。なお、図4中の横軸は蒸気タービン出力(%)で、縦軸は弁開度(%)である。蒸気タービン出力(%)は、この蒸気タービン10の定格出力(MW)に対するそのときの蒸気タービン10の実際の出力(MW)の割合である。各蒸気止め弁46は、対応する蒸気加減弁47が開き始める前に開状態にされる。
制御装置50の指令出力部52は、受付部51が蒸気タービン起動の指示を受け付けると、第一蒸気加減弁47A及び第二蒸気加減弁47Bに対して、弁開度を徐々に開ける旨を示す弁開度指令を出力する。制御装置50の指令出力部52は、第一蒸気加減弁47A及び第二蒸気加減弁47Bの弁開度がほぼ50%になると、第三蒸気加減弁47Cに対しても、弁開度を徐々に開ける旨を示す弁開度指令を出力する。
制御装置50の指令出力部52は、第一蒸気加減弁47A、第二蒸気加減弁47B、第三蒸気加減弁47Cに対して、弁開度を徐々に開ける旨を示す弁開度指令を出力している過程で、第一蒸気加減弁47A及び第二蒸気加減弁47Bの弁開度がほぼ75%になり、且つ第三蒸気加減弁47Cの弁開度がほぼ25%になると、第四蒸気加減弁47Dに対しても、弁開度を徐々に開ける旨を示す弁開度指令を出力する。
本実施形態では、第一蒸気加減弁47A及び第二蒸気加減弁47Bの弁開度が100%になり、第三蒸気加減弁47Cの弁開度が50%になり、且つ第四蒸気加減弁47Dの弁開度が10%になると、蒸気タービン出力が100%になる、言い換えると、定格出力になる。
蒸気タービン出力が定格出力になった以降、本実施形態では、基本的に、例えば、第三蒸気加減弁47Cの弁開度のみを変更して、負荷変動等に対応する。このため、本実施形態では、蒸気タービン出力が定格出力より低い場合、基本的に、第一蒸気加減弁47A及び第二蒸気加減弁47Bが全開(開度100%)で、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dが微開になっている。
ところで、図7に示すように、比較例における4つのノズル室28が、周方向Dcでロータの回転方向の側であるロータ回転側Rrに向かって、第一ノズル室28A、第二ノズル室28B、第四ノズル室28D、第三ノズル室28C、の順で並んでいるとする。さらに、第一ノズル室28A及び第二ノズル室28Bが軸線Arよりも下側に配され、第三ノズル室28C及び第四ノズル室28Dが軸線Arよりも上側に配置されているとする。また、第二ノズル室28B及び第四ノズル室28Dが軸線Arよりも横方向Dhの一方側に配置され、第一ノズル室28A及び第三ノズル室28Cが軸線Arよりも横方向Dhの他方側に配置されているとする。
この比較例で、蒸気タービンの起動時を含め、蒸気タービン出力が定格出力より低く、第一蒸気加減弁47A及び第二蒸気加減弁47Bが全開(開度100%)で、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dが微開又は全閉になっている場合、軸線Arよりも下側に配置されている第一ノズル室28A及び第二ノズル室28Bには、多くの流量の蒸気が供給され、軸線Arよりも上側に配置されている第三ノズル室28C及び第四ノズル室28Dには、ほとんど蒸気が供給されない。
このように、実質的に下半のノズル室28A,28Bのみからの蒸気により、ロータ11が回転する場合、ロータ11には、軸線Arの真下の位置で、ロータ回転側Rrに向かう蒸気力Fcが、ロータ11を回転させる力として作用する。このロータ11には、この蒸気力Fcの他に、重力Wが鉛直下方に作用する。よって、ロータ11には、蒸気力Fcと重力Wとの合力として、下方に向かいつつ横方向Dhの一方側に向かう斜め下方向の力Cがかかる。
よって、比較例では、蒸気タービン出力が定格出力より低い場合、このロータ11を回転可能に支持する軸受装置30の4つの軸受パッド31のうち、軸線Arを基準にして斜め下方向に位置する軸受パッド31aが、ロータ11にかかる力Cのほとんどを受けることになる。つまり、軸受装置30に偏荷重がかかる。この結果、4つの軸受パッド31のうちの一の軸受パッド31aのメタル温度のみが高まり、この軸受パッド31aが他の軸受パッド31よりも早く摩耗する。また、4つの軸受パッド31のうちの一の軸受パッド31aが他の軸受パッド31よりも早く摩耗すると、ロータ11の振動にもつながる。
一方、本実施形態では、蒸気タービン10の起動時を含め、蒸気タービン出力が定格出力より低く、第一蒸気加減弁47A及び第二蒸気加減弁47Bが全開(開度100%)で、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dが微開又は全閉になっている場合、軸線Arよりも横方向Dhの一方側に配置されている第一ノズル室22A及び第二ノズル室22Bには、多くの流量の蒸気が供給され、軸線Arよりも横方向Dhの他方側に配置されている第三ノズル室22C及び第四ノズル室22Dには、ほとんど蒸気が供給されない。
このように、実質的に横半のノズル室22A,22Bのみからの蒸気により、ロータ11が回転する場合、ロータ11には、軸線Arの真横の位置で、ロータ回転側Rrに向かう蒸気力Fが、ロータ11を回転させる力として作用する。このロータ11には、この蒸気力Fの他に、重力Wが鉛直下方に作用する。よって、ロータ11には、蒸気力Fと重力Wとが互いに打ち消し合って、これらの合力として、蒸気力や重力よりも小さい力Cが鉛直方向に作用する。
よって、本実施形態では、4つの軸受パッド31のうち、特定の軸受パッド31に対して多大な荷重がかかるのを抑えることができる。つまり、本実施形態では、軸受装置30にかかる荷重が偏荷重になることを抑えることができる。この結果、各軸受パッド31の寿命が平均化して、各軸受パッド31の寿命を長くすることができる上に、軸受装置30の偏摩耗によるロータ11の振動も抑えることができる。
また、別の比較例について考察する。この比較例では、図9に示すように、第一ノズル室22A及び第一蒸気加減弁47Aが、共に軸線Arを基準として横方向Dhの一方側に配置され、且つ第二ノズル室22B及び第二蒸気加減弁47Bも、共に軸線Arを基準として横方向Dhの一方側に配置されている。
この比較例では、蒸気タービン出力が定格出力より低く、第一蒸気加減弁47A及び第二蒸気加減弁47Bが全開(開度100%)で、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dが微開又は全閉になっている場合、蒸気主管41に接続されている2本の蒸気分岐管42a,42bのうち、横方向Dhの一方側に配置されて、第一蒸気加減弁47A及び第二蒸気加減弁47Bに蒸気を供給する第一蒸気分岐管42aには多くの蒸気が流れ、横方向Dhの他方側に配置されて、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dに蒸気を供給する第二蒸気分岐管42bにはほとんど蒸気が流れない。
このように、蒸気がほとんど流れず、蒸気が滞留してしまう蒸気管42bが存在すると、この蒸気管42bにドレンが溜まり、この蒸気管42bに多くの蒸気を流したときに、蒸気管42b中のドレンが蒸気タービン10に流れ込み、動翼や静翼等の損傷原因となる。
そこで、本実施形態では、図2を用いて前述したように、第一ノズル室22A及び第一蒸気加減弁47Aが、共に軸線Arを基準として横方向Dhの一方側に配置され、第二ノズル室22Bが、軸線Arを基準にして横方向Dhの一方側に配置されているものの、第二蒸気加減弁47Bが、軸線Arを基準にして横方向Dhの他方側に配置されている。
このため、本実施形態では、蒸気タービン出力が定格出力より低く、第一蒸気加減弁47A及び第二蒸気加減弁47Bが全開(開度100%)で、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dが微開又は全閉になっている場合でも、蒸気主管41に接続されている2本の蒸気分岐管42a,42bのうち、横方向Dhに一方側に配置されて、第一蒸気加減弁47Aに蒸気を供給する第一蒸気分岐管42aと、横方向Dhの他方側に配置されて、第二蒸気加減弁47Bに蒸気を供給する第二蒸気分岐管42bとの双方に、比較的多くの流量の蒸気が流れる。よって、本実施形態では、2本の蒸気分岐管42a,42bのいずれか一方に、蒸気のドレンが溜まることを抑えることができる。
以上のように、本実施形態では、軸受装置30の寿命延長、ロータ11の振動低減、及び蒸気管40中のドレン抑制の観点から、4つのノズル室22、4つの蒸気加減弁47、4つの蒸気止め弁46の配置を図2に示す配置にしている。
しかしながら、4つのノズル室22、4つの蒸気加減弁47、4つの蒸気止め弁46の配置を図2に示す配置にした結果、本実施形態では、弁テスト時のダブルショックを抑えるために、第一ノズル室蒸気管43aと第二ノズル室蒸気管43bとを連結管で接続することが困難になっている。
そこで、本実施形態では、連結管を設けなくても、弁テスト時のダブルショックを抑えるための弁操作を行う。
本実施形態の弁テストでは、例えば、蒸気タービン10が定格出力のときに、第一蒸気加減弁47A、第二蒸気加減弁47B、第三蒸気加減弁47C、第四蒸気加減弁47Dの順で、これら弁をテストする。この弁テストでは、制御装置50からテスト対象の弁に対して、全閉を示す弁開度指令が出力された後に、このテスト対象の弁が実際に全閉状態になったか否かを確認する。
蒸気タービン10が定格出力のとき、図4を用いて前述したように、第一蒸気加減弁47A及び第二蒸気加減弁47Bの全開(弁開度100%)で、第三蒸気加減弁47Cの弁開度が50%で、第四蒸気加減弁47Dの弁開度が10%である。ここで、図5及び図6に示すように、蒸気タービン10が定格出力のときの4つの蒸気加減弁47の状態を第0状態とする。なお、図6において、ノズル室22中の白色領域の面積がそのノズル室22に流入する蒸気流量を示している。
第一蒸気加減弁47Aをテストする場合、第一蒸気加減弁47A及び第二蒸気加減弁47Bが全開の状態である。一方で、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dの弁開度を25%にする(第1状態)。第0状態から第1状態への移行過程では、制御装置50の指令出力部52が第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dに対して弁開度揃え指令を出力し、第三蒸気加減弁47Cの弁開度と第四蒸気加減弁47Dの弁開度とを揃える開度揃え工程を実行する。この開度揃え工程の実行の前後で、蒸気タービン10に流入する蒸気流量が実質的に変わらないように、第三蒸気加減弁47Cが僅かに閉じられて、第三蒸気加減弁47Cの弁開度が50%から25%になり、第四蒸気加減弁47Dが僅かに開けられて、第四蒸気加減弁47Dの弁開度が10%から25%になる。なお、本実施形態では、蒸気タービン10に流入する蒸気流量が実質的に変わらないとは、蒸気流量の変動が10%以内であることである。
次に、第二蒸気加減弁47Bを全開状態のままで、テスト対象である第一蒸気加減弁47Aを全閉にする対象弁全閉工程を実行する。この際、制御装置50の指令出力部52は、この第一蒸気加減弁47Aに対して全閉を示すテスト開度指令を出力する。さらに、制御装置50の指令出力部52は、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dに対して対象外弁開度変更指令を出力し、対象弁全閉工程に同期させて、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dの弁開度を75%にする開度同期変更工程を実行する。
開度同期変更工程では、テスト対象である第一蒸気加減弁47Aが閉動作を開始するタイミングに合わせて、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dの開動作が開始し、第一蒸気加減弁47Aが全閉になるタイミングに合わせて、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dの開動作が終了する。さらに、この開度同期変更工程では、第三蒸気加減弁47Cの弁開度と第四蒸気加減弁47Dの弁開度とが揃っている状態を維持して、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dの弁開度を変更する。また、対象弁全閉工程及び開度同期変更工程の実行の前後で、蒸気タービン10に流入する蒸気流量が実施的に変わらないように、第一蒸気加減弁47Aの弁開度を100%から0%にするにあたって、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dの弁開度を25%から75%に変更する。
対象弁全閉工程及び開度同期変更工程の実行で、4つの蒸気加減弁47は、第2状態になる。この第2状態で、テスト対象の第一蒸気加減弁47Aが実際に全閉状態になったか否かを確認する。
以上のように、本実施形態の弁テストでは、テスト対象の第一蒸気加減弁47Aが全閉状態になった時点で、第一蒸気加減弁47Aを除く他の全ての蒸気加減弁47、つまり第二〜第四蒸気加減弁47B,47C,47Dが開状態になっている。このため、弁テスト時には、4つのノズル室22のうち、1つのノズル室22Aには蒸気が供給されてないものの、他の三つのノズル室22B,22C,22Dの全てに蒸気が供給されるので、弁テスト時のダブルショックの発生を抑えることができる。
さらに、本実施形態では、対象弁全閉工程に同期して実行される開度同期変更工程では、第三蒸気加減弁47Cの弁開度と第四蒸気加減弁47Dの弁開度とが揃っている状態を維持しつつ、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dの弁開度を変更するので、この工程中における第三ノズル室22Cに流入する蒸気流量と第四ノズル室22Dに流入する蒸気流量とが同じになる。このため、本実施形態では、ロータ11が一回転する間に、ロータ11の動翼14が第三ノズル室22Cから流出した蒸気から受ける力と、第四ノズル室22Dから流出した蒸気から受ける力とが同じになり、第1状態から第2状態への移行過程、及び第2状態でのロータ11にかかるショックを低減することができる。
なお、以上において、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dに対して実行する開度揃え工程及び開度同期変更工程が、対象外弁開工程となる。
次に、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dの弁開度を75%に維持して、第二蒸気加減弁47Bを全開から全閉に変更する(対象弁全閉工程)。この対象弁全閉工程に同期させて第一蒸気加減弁47Aを全閉から全開に変更する(開度同期変更工程、対象外弁開工程)。
これら対象弁全閉工程及び開度同期変更工程の実行で、4つの蒸気加減弁47は、第2状態から第3状態になる。この第3状態で、テスト対象の第二蒸気加減弁47Bが実際に全閉状態になったか否かを確認する。
以上のように、本実施形態の弁テストでは、テスト対象の第二蒸気加減弁47Bが全閉状態になった時点で、第二蒸気加減弁47Bを除く他の全ての蒸気加減弁47が開状態になっている。このため、第二蒸気加減弁47Bの弁テスト時においても、ダブルショックの発生を抑えることができる。
さらに、本実施形態の弁テストでは、第2状態から第3状態への移行過程、及び第3状態で、第三ノズル室22Cに流入する蒸気流量と第四ノズル室22Dに流入する蒸気流量とが同じになる。よって、第2状態から第3状態への移行過程、及び第3状態でも、ロータ11にかかるショックを低減することができる。
次に、4つの蒸気加減弁47を第4状態にした後に、第5状態にして、第三蒸気加減弁47Cが実際に全閉状態になったか否かを確認する。
4つの蒸気加減弁47を第3状態から第4状態にする際には、第一蒸気加減弁47Aを全開に、第三蒸気加減弁47Cの弁開度を75%に維持して、第二蒸気加減弁47B及び第四蒸気加減弁47Dの弁開度を38%にする(開度揃え工程)。この開度揃え工程でも、開度揃え工程の実行の前後で、蒸気タービン10に流入する蒸気流量が実質的に変わらないように、第二蒸気加減弁47B及び第四蒸気加減弁47Dの弁開度を変更する。
4つの蒸気加減弁47を第4状態から第5状態にする際、第一蒸気加減弁47Aが全開の状態である。この状態で、弁開度が75%の第三蒸気加減弁47Cを全閉にすると共に(対象弁全閉工程)、この対象弁全閉工程に同期させて、第二蒸気加減弁47B及び第四蒸気加減弁47Dの弁開度を75%にする(開度同期変更工程)。
以上のように、本実施形態の弁テストでは、テスト対象の第三蒸気加減弁47Cが全閉状態になった時点で、第三蒸気加減弁47Cを除く他の全ての蒸気加減弁47が開状態になっている。このため、第三蒸気加減弁47Cの弁テスト時においても、ダブルショックの発生を抑えることができる。
さらに、本実施形態の弁テストでは、第4状態から第5状態への移行過程、及び第5状態で、第二ノズル室22Bに流入する蒸気流量と第四ノズル室22Dに流入する蒸気流量とが同じになる。よって、第4状態から第5状態への移行過程、及び第5状態でも、ロータ11にかかるショックを低減することができる。
次に、4つの蒸気加減弁47を第6状態にした後に、第7状態にして、第四蒸気加減弁47Dが実際に全閉状態になったか否かを確認する。
4つの蒸気加減弁47を第5状態から第6状態にする際には、第一蒸気加減弁47Aを全開に、第四蒸気加減弁47Dの弁開度を75%に維持して、第二蒸気加減弁47B及び第三蒸気加減弁47Cの弁開度を38%にする(開度揃え工程)。この開度揃え工程でも、開度揃え工程の実行の前後で、蒸気タービン10に流入する蒸気流量が実質的に変わらないように、第二蒸気加減弁47B及び第三蒸気加減弁47Cの弁開度を変更する。
4つの蒸気加減弁47を第6状態から第7状態にする際、第一蒸気加減弁47Aが全開の状態である。この状態で、弁開度が75%の第四蒸気加減弁47Dを全閉にすると共に(対象弁全閉工程)、この対象弁全閉工程に同期させて、第二蒸気加減弁47B及び第三蒸気加減弁47Cの弁開度を75%にする(開度同期変更工程)。
以上のように、本実施形態の弁テストでは、テスト対象の第四蒸気加減弁47Dが全閉状態になった時点で、第四蒸気加減弁47Dを除く他の全ての蒸気加減弁47が開状態になっている。このため、第四蒸気加減弁47Dの弁テスト時においても、ダブルショックの発生を抑えることができる。
さらに、本実施形態の弁テストでは、第6状態から第7状態への移行過程、及び第7状態で、第二ノズル室22Bに流入する蒸気流量と第三ノズル室22Cに流入する蒸気流量とが同じになる。よって、第6状態から第7状態への移行過程、及び第7状態でも、ロータ11にかかるショックを低減することができる。
以上で、4つの蒸気加減弁47全てのテストが終了する。なお、以上では、蒸気加減弁47の動作のみを説明したが、蒸気止め弁46は、対応する蒸気加減弁47が全閉になった直後に全閉になり、対応する蒸気加減弁47が開き始める前に全開になる。
以上、本実施形態の弁テストでは、連結管を設けなくても、テスト対象の蒸気加減弁47が全閉状態になった時点で、テスト対象の蒸気加減弁47を除く他の全ての蒸気加減弁47を開状態にしているので、連結管を設けなくても、弁テスト時のダブルショックの発生を抑えることができる。従って、弁テスト時のダブルショックの発生を抑えつつも、設備コストの増加を抑えることができる。
なお、以上では、第一蒸気加減弁47A、第二蒸気加減弁47B、第三蒸気加減弁47C、第四蒸気加減弁47Dの順で弁テストする例について説明したが、この順は適宜変更可能である。
また、本実施形態における蒸気タービン設備では、4つのノズル室22と、各ノズル室22に流入する蒸気流量を調節する蒸気加減弁47とを備えている。しかしながら、ノズル室22の数量が4つでない、例えば、8つの場合でも、以上で説明したテスト方法を実行することで、弁テスト時のダブルショックの発生を抑えつつも、設備コストの増加を抑えることができる。
また、蒸気タービン10の出力が定格出力より小さい場合では、軸受装置30にかかる荷重が偏荷重になることを抑えることができる。このため、軸受装置30の寿命を長くすることができる上に、軸受装置30の偏摩耗によるロータ11の振動も抑えることができる。
なお、本実施形態の軸受装置30は、複数の軸受パッド31が搖動するティルティング軸受装置である。しかしながら、軸受パッドが搖動しないタイプの軸受装置であっても、4つのノズル室及び4つの蒸気止め弁の配置を図2に示すように配置することで、蒸気タービンの出力が定格出力より小さい場合に、軸受装置にかかる荷重が偏荷重になることを抑えることができる。