以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本実施形態に係るセンサ装置100の構成例を、電流導体10および固定基板20と共に示す。図1は、センサ装置100が電流導体10を流れる電流を検出する電流センサとして用いられる例を示す。電流導体10は、一例として、Y軸方向に延伸し、+Y方向または−Y方向の電流を流す。当該電流は、電流導体10を中心としたXZ面と平行な面において、当該電流に対して右回りの(時計回りの)磁場を発生させる。図1の電流導体10は電流が流れる方向に対して断面視したときにZ方向が厚み方向となる(Z方向が短辺となる)形状であるが、同断面視したときにZ方向以外が(例えばX方向またはY方向が)厚み方向となる形状であってもよい。また、電流導体10の電流が流れる方向に対する断面形状は、四角形、正方形、台形、多角形、円形、楕円形状等でよく、また、これらの組み合わせであってもよい。
センサ装置100は、当該磁場が入力する位置に配置される。センサ装置100は、例えば、固定基板20の一方の面に設けられる。センサ装置100は、固定基板20の電流導体10を向く面に配置されてよく、これに代えて、固定基板20の電流導体10とは反対側の面に配置されてもよい。固定基板20は、回路等が形成され、センサ装置100と電気信号等を授受してよい。また、固定基板20は、センサ装置100と、GNDライン、コモン電源ライン等が接続されてよい。これに代えて、固定基板20は、センサ装置100と無線接続または光接続されてもよい。固定基板20は、プリント基板等でよい。
センサ装置100は、電流導体10といった電流路を流れる電流を検出する。センサ装置100は、予め定められた方向に入力する磁場を検出する。図1は、センサ装置100がX軸と略平行な方向に入力する磁場を検出する例を示す。即ち、図1は、センサ装置100が電流導体10の+Y方向に流れる電流に応じて発生する磁場のうち、−X方向の成分を検出する例を示す。
図2は、本実施形態に係るセンサ装置100の断面の構成例を示す。図2は、図1の線分A−A'を通るXZ面と略平行な面の断面図の例を示す。センサ装置100は、磁気センサ110と、基板120と、導電板130と、パッケージ部140とを備える。
磁気センサ110は、電流導体10の延伸方向である電流路が配置されるべき位置に対向して設けられ、当該電流路を流れる電流によって生じる磁場を検出する。ここで対向とは、磁気センサ110の平面(図2においてはXY平面)に対して垂直な方向に当該電流路の少なくとも一部が配置される位置関係を意味する。磁気センサ110は、電流路とは略垂直な方向の磁場を検出してよい。磁気センサ110は、ホール素子を有してよい。ホール素子は、ホール効果によって、予め定められた方向に入力される磁場を検出する素子である。なお、ホール素子は、不純物がドープされたウェル領域によって形成されてよい。また、磁気センサ110は、GMR(Giant Magneto Resistive)素子を有してもよい。
基板120は、磁気センサ110が形成される。基板120は、一方の面に磁気センサ110が形成されてよく、これに代えて、内部に磁気センサ110が形成されてもよい。基板120は、シリコン等を有する半導体基板でよく、この場合、当該半導体基板に不純物等をドープすることにより磁気センサ110が形成されてよい。基板120は、表面および/または内部に、磁気センサ110と電気的に接続される配線部を有する。基板120は、ICチップであってよく、この場合、端子を備え、外部の基板、回路、および配線等と電気的に接続されてよい。
導電板130は、電流導体10の電流路が配置されるべき位置および磁気センサ110に面して設けられる。導電板130は、磁気を発生させない材料で形成されることが望ましい。導電板130は、例えば、非磁性の銅合金を含んでよい。導電板130は、基板120と接して形成されてよく、また、基板120を支持してもよい。この場合、導電板130は基板120を支持できる程度の大きさを有してよい。導電板130は、リードフレームとして機能してよく、当該センサ装置100の外部と、磁気センサ110とを電気的に接続してよい。この場合、導電板130は、外部と電気的に接続されるリード部を有してよい。
パッケージ部140は、磁気センサ110、基板120、および導電板130を内蔵する。パッケージ部140は、磁気を発生させない材料で形成されることが望ましい。パッケージ部140は、樹脂を含んでよく、磁気センサ110、基板120、および導電板130を覆うように形成されてよい。パッケージ部140は、導電板130がリード部を有する場合、当該リード部の少なくとも一部を外部に露出させて、当該導電板130を覆ってよい。
なお、図2は、導電板130の電流導体10を向く面に基板120が形成され、当該基板120の電流導体10を向く面に磁気センサ110が形成され、当該磁気センサ110、基板120、および導電板130をパッケージ部140が覆う例を示した。これに代えて、導電板130の電流導体10とは反対側の面に基板120が形成され、当該基板120の電流導体10とは反対側の面に磁気センサ110が形成されてもよい。
これに代えて、または、これに加えて、パッケージ部140は、電流導体10を覆ってもよい。この場合、固定基板20側から+Z方向に向けて、導電板130、基板120、磁気センサ110、電流導体10の順にこれらが配列され、パッケージ部140が全体を覆ってよい。これに代えて、導電板130、基板120、電流導体10、磁気センサ110の順にこれらが配列され、パッケージ部140が全体を覆ってもよい。これに代えて、磁気センサ110、基板120、導電板130、電流導体10の順にこれらが配列され、パッケージ部140が全体を覆ってもよい。
以上のセンサ装置100を組み立て、電流導体10に流れる電流に応じた磁場を検出すると、磁場検出の過渡応答特性に劣化が生じる場合があった。そして、過渡応答特性の劣化は、オーバーシュートが発生する場合と、遅延が発生する場合とが発生し、原因が不明であった。そこで、まず、当該過渡応答特性の劣化の原因を解明した。そして、本実施形態のセンサ装置100は、当該原因に基づいて、導電板130の配置を最適化し、磁場検出の過渡応答特性を向上させる。ここで、磁場検出における過渡応答特性の劣化に対して解明した原因を、図3から図6を用いて説明する。
図3は、電流導体10と導電板130の第1の配置例を示す。図3において、電流導体10はY軸方向と略平行に延伸し、導電板130は当該電流導体10に面して設けられる例を示す。即ち、導電板130はXY平面と略平行に配置され、長手方向がX軸方向と略平行となる例を示す。この場合、磁気センサ110は、導電板130の電流導体10側の面に形成され、図中の点線で示される位置に配置される場合を説明する。
電流導体10の電流路の+Y方向に電流が流れると、当該電流路を中心として、XZ面と平行な右回りの磁場が発生する。そして、発生した磁場の一部は、導電板130に入力し、その後、導電板130から出力する。図3には、入力磁場をBinとして示す。この場合、過渡的に電流路に電流が流れて急峻に電流値が立ち上がると、入力磁場Binも同様に立ち上がる。このような急激な磁場の変化に応じて、導電板130内部に入力磁場Binを中心とした渦電流Ieddyが発生する。また、導電板130から出力する磁場も急峻な磁場となるので、当該導電板130内部に出力磁場を中心とした渦電流Ieddyが発生する。
図3に示すように、渦電流Ieddyは、磁場の進行方向に対して反時計回り(左回り)に発生する。入力磁場および出力磁場の向きは互いに逆向きであることから、導電板130に発生する2つの渦電流は、互いに逆回りの電流となる。そして、当該2つの渦電流によって、過渡的な磁場Beddyが発生する。当該磁場Beddyは、2つの渦電流の略中心を通過するように発生し、図中の点線で示される磁気センサ110が配置される位置においては、電流導体10に流れる電流によって当該磁気センサ110に入力する磁場と略同一方向(即ち、−X方向)の磁場となる。
即ち、図3に示すような配置で電流センサが形成されると、磁気センサ110は、磁場の急峻な立ち上がりの入力に応じて、当該入力磁場に過渡的な磁場Beddyが更に加わった磁場を検出することになる。したがって、磁気センサ110は、導電板がない場合よりも渦電流が流れている間は過渡的に増加した信号を出力することになり、過渡応答特性が劣化する。
図4は、磁気センサ110に過渡的に検出磁場が増加した場合の、過渡応答特性の一例を示す。図4の横軸は時間を示し、縦軸は入力磁場の強度および磁気センサ110の出力信号強度を示す。急峻な立ち上がりの入力磁場に対して、磁気センサ110の出力信号強度は、過渡的な磁場Beddyが加わり、オーバーシュートが発生して過渡応答特性が劣化することがわかる。
図5は、電流導体10と導電板130の第2の配置例を示す。図5において、電流導体10はY軸方向と略平行に延伸し、導電板130は当該電流導体10に面して設けられる例を示す。即ち、導電板130はXY平面と略平行に配置され、長手方向がX軸方向と略平行となる例を示す。この場合、磁気センサ110は、導電板130の電流導体10とは反対側の面に形成され、図中の点線で示される位置に配置される場合を説明する。
電流導体10の電流路の+Y方向に電流が流れると、当該電流路を中心として、XZ面と平行な右回りの磁場が発生する。そして、発生した磁場の一部は、導電板130に入力し、その後、導電板130から出力する。図5には、入力磁場をBinとして示す。この場合、過渡的に電流路に電流が流れて急峻に電流値が立ち上がると、入力磁場Binも同様に立ち上がる。このような急激な磁場の変化に応じて、導電板130内部に入力磁場Binを中心とした渦電流Ieddyが発生する。また、導電板130から出力する磁場も急峻な磁場となるので、当該導電板130内部に出力磁場を中心とした渦電流Ieddyが発生する。
図5に示すように、渦電流Ieddyは、磁場の進行方向に対して反時計回り(左回り)に発生し、入力磁場および出力磁場の向きは互いに逆向きであることから、導電板130に発生する2つの渦電流は、互いに逆回りの電流となる。そして、当該2つの渦電流によって、過渡的な磁場Beddyが発生する。当該磁場Beddyは、2つの渦電流の略中心を通過するように発生し、図中の点線で示される磁気センサ110が配置される位置においては、電流導体10に流れる電流によって当該磁気センサ110に入力する磁場と略反対方向(即ち、−X方向)の磁場となる。
即ち、図5に示すような配置で電流センサが形成されると、磁気センサ110は、磁場の急峻な立ち上がりの入力に応じて、当該入力磁場に過渡的な磁場Beddyを差し引いた磁場を検出することになる。したがって、磁気センサ110は、導電板がない場合よりも渦電流が流れている間は過渡的に減少した信号を出力することになり、過渡応答特性が劣化する。
図6は、磁気センサ110に過渡的に検出磁場が減少した場合の、過渡応答特性の一例を示す。図6の横軸は時間を示し、縦軸は入力磁場の強度および磁気センサ110の出力信号強度を示す。急峻な立ち上がりの入力磁場に対して、磁気センサ110の出力信号強度は、過渡的な磁場Beddyが差し引かれ、遅延が発生して過渡応答特性が劣化することがわかる。
以上のように、過渡応答特性の劣化は、電流導体10、磁気センサ110、および導電板130の配置に応じて生じることが判明した。そこで、本実施形態に係るセンサ装置100は、判明した劣化の原因に基づき、導電板130を適切に配置して、過渡応答特性の劣化を防止する。このようなセンサ装置100について、図7および図8を用いて説明する。
図7は、本実施形態に係るセンサ装置100の構成例を示す。図7は、図1および2に示したセンサ装置100のXY平面と略平行な面による断面図の一例である。即ち、図7は、固定基板20から電流導体10に向けて、導電板130、基板120、磁気センサ110の順に配置される例を示す。磁気センサ110は、電流導体10との位置合わせを容易に実行すべく、パッケージ部140の略中央に配置されることが望ましい。また、磁気センサ110は、導電板130の略中央に配置されることが望ましい。なお、磁気センサ110のXY面上の配置は、これに限定されるものではない。
導電板130は、複数のリード部150を有する。図7は、導電板130の+Y方向側および−Y方向側の辺に、それぞれ4つのリード部150が配置された例を示す。リード部150のそれぞれは、一端がパッケージ部140の外側に露出し、他端がパッケージ部140の内部で導電板130、基板120、または磁気センサ110と電気的に接続される。即ち、リード部150の一端は、当該センサ装置100の端子となる。また、リード部150の他端は、ワイヤボンディング等で各部と電気的に接続されてよい。また、リード部150は導電板130と接触または接続されなくてよい。
導電板130は、XY平面における面内において電流導体10の電流路の延伸方向に対応する第1方向の長さが、面内において第1方向と垂直な第2方向の長さよりも大きい。導電板130は、例えば、XY平面において略長方形の形状を有し、長手方向が電流導体10の延伸方向(即ち、X軸方向)と略平行に配置される。この場合、電流路の延伸方向に対応する第1方向は、導電板130の長手方向であり、第2方向は短手方向となる。このように配置された導電板130に発生する渦電流について、図8を用いて説明する。
図8は、本実施形態に係る導電板130に発生する渦電流の一例を示す。図8は、図7に示したセンサ装置100の導電板130のリード部150を除いた矩形部分を示す。電流導体10の電流路に電流が流れると、図8において電流方向とした+X方向(長手方向)に電流が流れ、磁気センサ110はY方向(短手方向)の磁場を検出する。図8は、磁気センサ110が導電板130の略中央に配置され、電流導体10の電流路が、当該磁気センサ110の配置に対応して、導電板130の短手方向の略中央をX軸方向に延伸するように配置される例を示す。
以上の本実施形態に係る導電板130は、図3で説明したように、急峻な磁場の入力に応じて、2つの渦電流Ieddyを発生させる。当該渦電流Ieddyは、電流路で分割された2つの領域のそれぞれに発生し、電流路を挟んで互いに逆向きとなる。そして、当該2つの渦電流Ieddyの発生に応じて、過渡的な磁場Beddyが発生する。磁場Beddyが磁気センサ110に入力する方向は、電流路に電流が流れることに応じて磁気センサ110に入力する磁場の方向(即ち、+Y方向)と略同一の方向となる。
しかしながら、図8に示す導電板130は、短手方向の長さよりも長手方向の長さが大きいので、発生する2つの渦電流Ieddyは、長軸の向きが長手方向と略平行となるような長円形状となる。したがって、電流路を流れる電流と反対向きに流れる2つの渦電流Ieddyが、当該電流路を流れる電流と並走することになる。
ここで、磁気センサ110に入力される過渡的な磁場Beddyは、主に電流路と平行に並走する(すなわち図8のx方向に流れる)渦電流Ieddyによって引き起こされるものである。そして、磁場入力から一定時間後に、この渦電流Ieddyが、電流路に流れる電流の方向と垂直な導電板130の断面を流れる量は、導電板130が長手方向(すなわち図8のx方向)の長さが長くなってもほとんど変わらない。一方、短手方向(すなわち図8のy方向)の長さが長くなれば大きくなる。そのため、図8に示すように導電板130が電流路の電流方向に長くなり、電流方向と垂直な方向に短くなることにより、渦電流Ieddyの発生を低減させることができる。つまりこの場合、後述のように導電板130を90°回転させた場合(図9)と比較して、渦電流Ieddyの発生量を低減でき、過渡的な磁場Beddyの発生を低減させることができる。
このように、本実施形態に係る導電板130は、磁気センサ110に入力する過渡的な磁場Beddyの大きさを低減させる。したがって、本実施形態に係るセンサ装置100は、急峻な立ち上がりの入力磁場に対して、磁気センサ110の出力信号強度に発生するオーバーシュートを低減させ、過渡応答特性の劣化を防止することができる。
図9は、図8に示した本実施形態に係る導電板130を、90°回転させた場合に発生する渦電流の一例を示す。即ち、図9は、電流導体10の電流路の延伸方向に対応する第1方向(X方向)の長さが、面内において第1方向と垂直な第2方向(Y方向)の長さよりも小さい場合の例を示す。
この場合、導電板130に発生する2つの渦電流Ieddyの長軸の長さは、図8に示す長円の長軸よりも小さくなる。この場合においても、電流路を流れる電流と反対向きに流れる2つの渦電流Ieddyが、当該電流路を流れる電流と並走するが、当該並走する距離は、図8の例と比較して短くなり、電流方向と垂直な方向が長くなるので、渦電流Ieddyの発生を抑制する効果が低減してしまう。即ち、発生する渦電流Ieddyの大きさを小さくすることができないので、過渡的な磁場Beddyの大きさも小さくすることができない。
同様に、発生する2つの渦電流Ieddyによって発生する過渡的な磁場Beddyは、図8の例と比較して大きくなり、磁気センサ110に入力する過渡的な磁場Beddyを低減させることができない。したがって、本実施形態に係る導電板130とは異なる配置の導電板130は、磁気センサ110に入力する過渡的な磁場Beddyの大きさを低減させることができない。このような配置の導電板130は、センサ装置の実装形態、リード端子からの電気信号の授受に基づく固定基板上の当該センサ装置の配置等によって、通常に設計される配置であり、即ち、従来のセンサ装置の配置である。
図10は、本実施形態に係るセンサ装置100の過渡応答特性をシミュレートした結果の一例を示す。図10の横軸は時間、縦軸は入力磁場の強度および磁気センサ110の出力信号強度を示す。図10は、入力磁場の波高値の最大値(または最終目標値)を100としたシミュレーション結果である。当該シミュレーションは、導電板130のサイズを4.2mm×2.5mmとし、電流路は導電板130より2.6mm離間した位置に配置され、磁気センサ110は導電板130の中央から400μm離間した位置に配置されたことを条件とした。なお、図10は、図3に示すように、+Z方向に向けて順に導電板130、基板120、磁気センサ110、電流導体10の順にこれらが配列されているものとしている。
当該シミュレーションより、電流路を流れる電流の方向と導電板130の短手方向とを略平行にした場合(即ち、図9に示す配置の場合)、入力磁場に対してオーバーシュートを発生することがわかる(「短手平行」と示された波形)。これに対し、電流路を流れる電流の方向と導電板130の長手方向とを略平行にした場合(即ち、図8に示す本実施形態に係る配置の場合)、当該オーバーシュートを改善する結果が得られた(「長手平行」と示された波形)。例えば、波高値の最大値は、短手平行の111(11%のオーバーシュート)に対して、長手平行が107となり、30%以上の改善を確認できた。
以上のように、本実施形態に係るセンサ装置100は、検出すべき電流が流れる電流路と導電板130とを、渦電流の発生を低減させるように配置することで、過渡応答特性を向上させる。なお、以上において、導電板130は、XY平面における面内において電流導体10の電流路の延伸方向に対応する第1方向の長さを、面内において第1方向と垂直な第2方向の長さよりも大きくすることを説明した。
この第1方向の長さは、垂直な第2方向の長さと比較して、好ましくは1.1倍以上であり、より好ましくは1.3倍以上であり、さらにより好ましくは1.7倍以上であり、さらにより好ましくは2.5倍以上である。
なお、図8の配置と図9の配置の比較で、第2方向の長さ(短手方向の長さ)を2.5mmとし、第1方向の長さ(長手方向の長さ)を変化させた同様のシミュレーションでは、第1方向の長さが第2方向の長さと比較して、1.1倍の場合、略10%のオーバーシュート改善効果が、1.3倍の場合、略20%のオーバーシュート改善効果が1.7倍の場合、略30%のオーバーシュート改善効果が、2.5倍の場合、略50%のオーバーシュート改善効果が得られた。
これに代えて、または、これに加えて、導電板130は、長手方向が電流導体10の延伸方向に対して予め定められた角度を有して配置されてもよい。この場合、導電板130は、電流路の延伸方向に対応する第1方向における平均の長さが、第2方向における平均の長さよりも大きく配置される。この場合、第1方向は、電流路の延伸方向と略一致してよい。導電板130の長手方向は、X軸方向と+45°から−45°程度の範囲に配置されてよい。好ましくは、導電板130の長手方向が+30°から−30°の範囲に配置されてよい。より好ましくは、導電板130の長手方向が+10°から−10°の範囲に配置されてよい。導電板130の長手方向が+5°から−5°の範囲に配置されると、なおよい。
また、導電板130は、略長方形の形状であることに限定されず、多角形であってもよい。この場合、導電板130に含まれる最大矩形における第1方向の長さが、最大矩形における第2方向の長さよりも大きく配置される。この場合、第1方向は、電流路の延伸方向と略一致してよい。本実施形態に係るセンサ装置100は、以上のように、導電板130の配置および形状に自由度を持たせても、発生する渦電流の長軸を電流の流れる方向に合わせ、過渡応答特性を向上させることができる。
図11は、本実施形態に係るセンサ装置100の変形例を示す。図11は、本変形例のセンサ装置100のYZ面と平行な面における断面の構成例を示す。本変形例のセンサ装置100において、図1および図2に示された本実施形態に係るセンサ装置100の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。図11は、センサ装置100に+Y方向の磁場が入力する例を示す。センサ装置100は、磁気センサ110と、磁気センサ112と、基板120と、磁気収束板160と、磁気収束板162とを備える。
磁気センサ110および磁気センサ112は、XY平面に略平行に形成され、Z軸方向と略平行な磁場を検出する。即ち、当該2つの磁気センサは、電流路に面して設けられ、当該磁気センサの面に対して垂直方向の磁場をそれぞれ検出する。磁気センサ110および磁気センサ112は、一例として、ホール効果を発生させるホール素子である。磁気センサ110および磁気センサ112は、半導体等で形成されてよく、また、略同一形状に形成されてよい。
図11は、磁気センサ110および磁気センサ112がY軸に略平行に配置される例を示す。このように、本変形例のセンサ装置100は、第2方向に離間して設けられた複数の磁気センサを備える。なお、図11に示す複数の磁気センサは、Z方向の磁場を検出するように基板120に形成されるので、図1および図2で説明したX方向の磁場を検出する磁気センサ110と略同一のセンサが形成される場合であっても、異なる向きに形成されることになる。
磁気収束板160および磁気収束板162は、電流路の周囲に生じる磁場の向きを変えて、磁気センサの面に対する垂直方向の磁場成分を生じさせる。磁気収束板160および磁気収束板162は、磁性材料等で形成され、例えば、X軸方向および/またはY軸方向の磁場を、Z軸方向の成分が発生するように曲げ、Z軸方向に感度を有する磁気センサ110および磁気センサ112にそれぞれ入力させる。図11は、磁気収束板160および磁気収束板162が、+Y方向に入力する磁場を曲げ、磁気センサ110に+Z方向の磁場を、磁気センサ112に−Z方向の磁場をそれぞれ発生させて入力させる例を示す。
図12は、本実施形態に係るセンサ装置100の変形例の上面の構成例を示す。即ち、図12は、図11におけるXY平面を示し、+Z方向側からセンサ装置100を見た平面視の一例を示す。本変形例の磁気収束板160および磁気収束板162は、XY平面において、台形形状を有する例を示す。なお、当該形状は、台形に限定されるものではなく、磁気センサ110および磁気センサ112の垂直方向に磁場を曲げて供給するように、長方形、円形、楕円形等の形状で設けられてよい。
例えば、電流導体10の電流路の延伸方向(+X方向)に電流が流れることにより、+Y方向の磁場がセンサ装置100に入力する。磁気収束板160は、+Y方向に入力した磁場を曲げて磁気センサ110に+Z方向の磁場を入力させ、磁気収束板162は、+Y方向に入力した磁場を曲げて磁気センサ112に−Z方向の磁場を入力させる。このようなセンサ装置100の導電板130に発生する渦電流について、図13を用いて説明する。
図13は、本変形例に係る導電板130に発生する渦電流の一例を示す。図13は、センサ装置100の導電板130のリード部150を除いた矩形部分を示す。なお、本変形例においても、導電板130は、XY平面における面内において電流導体10の電流路の延伸方向に対応する第1方向の長さが、面内において第1方向と垂直な第2方向の長さよりも大きくなるように配置される。即ち、導電板130は、例えば、XY平面において略長方形の形状を有し、長手方向が電流導体10の延伸方向(即ち、X軸方向)と略平行に配置される。
したがって、本変形例に係る導電板130は、図3で説明したように、急峻な磁場の入力に応じて、2つの渦電流Ieddyを発生させる。当該渦電流Ieddyは、電流路で分割された2つの領域のそれぞれに発生し、電流路を挟んで互いに逆向きとなる。そして、当該2つの渦電流Ieddyの発生に応じて、過渡的な磁場Beddyが発生する。磁場Beddyが磁気センサ110に入力する方向は、電流路に電流が流れることに応じて磁気センサ110に入力する磁場の方向(即ち、+Y方向)と略同一の方向となる。そして、本変形例の導電板130においても、磁気センサ110に入力する過渡的な磁場Beddyの大きさを低減させる。
なお、本変形例のセンサ装置100は、磁気収束板160および磁気収束板162を備えるので、当該磁気収束板160および磁気収束板162が、導電板130に垂直に入力する磁場の成分を、当該導電板130と平行な成分に曲げる。即ち、本変形例のセンサ装置100に発生する渦電流Ieddyは、導電板130の垂直方向に入力する磁場に応じて発生するので、図8で説明した渦電流Ieddyと比較して、より減少することになる。
図14は、図13に示した本変形例に係る導電板130を、90°回転させた場合に発生する渦電流の一例を示す。即ち、図14は、電流導体10の電流路の延伸方向に対応する第1方向(X方向)の長さが、面内において第1方向と垂直な第2方向(Y方向)の長さよりも小さい場合の例を示す。
本変形例の場合においても、図9の説明と同様に、導電板130に発生する2つの渦電流Ieddyの長軸の長さは、図13に示す長円の長軸よりも小さくなる。したがって、電流路を流れる電流と反対向きに流れる2つの渦電流Ieddyは、当該電流路を流れる電流と並走し、当該並走する距離は、図13の例と比較して短くなり、電流方向と垂直な方向が長くなるので、渦電流Ieddyの発生を抑制する効果が低減してしまう。即ち、発生する渦電流Ieddyの大きさを小さくすることができないので、過渡的な磁場Beddyの大きさも小さくすることができない。また、磁気センサ110に入力する過渡的な磁場Beddyの大きさを低減させることもできない。
なお、本変形例のセンサ装置100は、磁気収束板160および磁気収束板162を備えるので、図14において発生する渦電流Ieddyも、図9で説明した渦電流Ieddyと比較して、より減少することになる。
図15は、本変形例に係るセンサ装置100の過渡応答特性をシミュレートした結果の一例を示す。図15の横軸は時間、縦軸は入力磁場の強度および磁気センサ110の出力信号強度を示す。図15は、入力磁場の波高値の最大値(または最終目標値)を100としたシミュレーション結果である。当該シミュレーションの条件は、図10のシミュレーションの条件と略同一である。また、磁気収束板160および磁気収束板162は、上辺を400μm、下辺を1100μm、高さを1100μmとした台形形状で、厚さを30μmとした。
当該シミュレーションより、電流路を流れる電流の方向と導電板130の短手方向とを略平行にした場合(即ち、図14に示す配置の場合)、入力磁場に対して出力信号強度が増加することがわかる(「短手平行」と示された波形)。これに対し、電流路を流れる電流の方向と導電板130の長手方向とを略平行にした場合(即ち、図13に示す本実施形態に係る配置の場合)、当該出力信号強度の増加を改善する結果が得られた(「長手平行」と示された波形)。例えば、波高値の最大値は、短手平行の105に対して、長手平行が102となった。
以上のように、本変形例のセンサ装置100の「長手平行」の結果は、図10に示す磁気収束板のないセンサ装置100の「短手平行」の結果と比較して、略80%の改善を確認できた。即ち、電流路に流れる電流によって発生する磁場を、磁気収束板160および磁気収束板162で曲げ、かつ、導電板130の長手方向を電流路に流れる電流と平行にすることで、センサ装置100の過渡応答特性をより向上させることができる。
以上のように、本実施形態に係るセンサ装置100が、磁気センサ110が導電板130および電流導体10の間に設けられた場合において、過渡的に立ち上がる電流路の電流に応じて発生する出力信号のオーバーシュートを低減させる例を説明した。当該センサ装置100は、過渡的に立ち上がる電流路の電流に応じて、導電板130に発生する渦電流を抑制することができるので、出力信号のオーバーシュートだけでなく、遅延による劣化も低減させることができる。即ち、センサ装置100は、磁気センサ110が導電板130の電流導体10とは反対側の面に設けられた場合において、過渡的に立ち上がる電流路の電流に応じて発生する出力信号の遅延を低減できる。
図16は、本実施形態に係るセンサ装置100の過渡応答特性をシミュレートした結果の別の一例を示す。図16の横軸は時間、縦軸は入力磁場の強度および磁気センサ110の出力信号強度を示す。図16は、入力磁場の波高値の最大値(または最終目標値)を100としたシミュレーション結果である。当該シミュレーションは、導電板130のサイズを4.2mm×2.5mmとし、電流路は導電板130より1.44mm離間した位置に配置され、磁気センサ110は導電板130の中央から400μm離間した位置に配置されたことを条件とした。なお、図16は、図5に示すように、+Z方向にむけて順に電流導体10、導電板130、基板120、磁気センサ110の順にこれらが配列されているものとしている。
図16に示すように、当該シミュレーションより、電流路を流れる電流の方向と導電板130の短手方向とを略平行にした場合(即ち、図9に示す配置の場合)、入力磁場に対して遅延を発生することがわかる(「短手平行」と示された波形)。これに対し、電流路を流れる電流の方向と導電板130の長手方向とを略平行にした場合(即ち、図8に示す本実施形態に係る配置の場合)、当該遅延を改善する結果が得られた(「長手平行」と示された波形)。
図17は、本実施形態に係るセンサ装置100の過渡応答特性をシミュレートした結果の一例を示す。図17の横軸は時間、縦軸は入力磁場の強度および磁気センサ110の出力信号強度を示す。図17は、入力磁場の波高値の最大値(または最終目標値)を100としたシミュレーション結果である。図17は、図16の配置のセンサ装置100に、磁気収束板160および磁気収束板162を有した場合を示す。なお、磁気収束板160および磁気収束板162は、図15にて説明したものと同じ形状である。
磁気収束板160および磁気収束板162を有した場合においても、当該シミュレーションより、電流路を流れる電流の方向と導電板130の短手方向とを略平行にした場合(即ち、図14に示す配置の場合)、入力磁場に対して遅延を発生することがわかる(「短手平行」と示された波形)。これに対し、電流路を流れる電流の方向と導電板130の長手方向とを略平行にした場合(即ち、図13に示す本実施形態に係る配置の場合)、当該遅延を改善する結果が得られた(「長手平行」と示された波形)。
したがって、本実施形態に係るセンサ装置100は、電流導体10の近傍に設けられ、過渡応答特性を劣化させずに電流センサとして用いることができる。これに加えて、センサ装置100は、電流が流れることによって磁気センサ110に磁場を印加するように配置される電流導体10の電流路と、一体に形成されてもよい。この場合、電流導体10およびセンサ装置100は、電流センサとして機能してよい。
以上において、センサ装置100に設けられる導電板130の形状を、長方形として説明したが、当該形状は、長手方向および短手方向で長さが異なる形状であれば、長方形に限定されるものではない。当該導電板130の形状は、台形、菱形、多角形等であってよい。また、当該導電板130の形状は、リード部150等の部材と一体に形成されてもよい。
図18は、本実施形態に係る導電板130の第1の変形例を示す。第1の変形例の導電板130は、凸多角形形状を有する。即ち、導電板130は、凸部を有する。当該凸部は、リード部132またはリード部132の一部であり、導電板130と一体に形成され、導電板130から当該センサ装置100の端子へと延伸する。これに代えて、当該リード部132の端部が当該センサ装置100の端子であってもよい。
また、導電板130は、凹部を有してもよい。図19は、本実施形態に係る導電板130の第2の変形例を示す。第2の変形例の導電板130は、凹部134および凹部136を有する。このように、本実施形態のセンサ装置100は、導電板130に凸状および/または凹状の部位等が形成されても、入力する磁場に応じて発生する渦電流の大きさ等に影響を及ばさない程度の形状であれば、過渡応答特性を向上させ、電流路に流れる電流の急峻な立ち上がりおよび立ち下がり等を正確に検出することができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。