JP6560527B2 - 抗菌作用および植物生長促進作用に優れた新規微生物 - Google Patents

抗菌作用および植物生長促進作用に優れた新規微生物 Download PDF

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Description

本発明は、抗菌作用および植物生長促進作用に優れた新規微生物に関し、詳細には、トリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)に属する新規微生物trichoderma atroviride S・R−06株ならびにその培養物および/または菌体を有効成分とする微生物農薬および植物生長促進剤に関する。
トリコデルマ属の微生物は、土壌中に広く見出される糸状菌であり、他の菌類等の生育を妨げる性質や植物の生長を促進する性質を有することから、主として農業の分野で用いられる微生物製剤として利用されている。
従来、トリコデルマ属の微生物を利用した製剤としては、例えば、トリコデルマ ハルジアナムSK−55を有効成分とする植物病害防除剤(特許文献1)や、トリコデルマ・ヴィリデ T−3菌株、トリコデルマ・ヴィレンス T04398菌株、トリコデルマ・ヴィレンス T04401菌株、トリコデルマ・ヴィレンス T04464菌株またはそれらの変異株を有効成分とする、ダイズにおける茎疫病の防除剤(特許文献2)、トリコデルマ・アトロビリデ SKT−1菌株、トリコデルマ・アトロビリデ SKT−2菌株、トリコデルマ・アトロビリデ SKT−3菌株から選ばれる少なくともひとつを有効成分とする植物種子発芽率向上剤(特許文献3)が開示されている。
特許第3046167号公報 特許第5052873号公報 特開2006−124280号公報
しかしながら、これらの微生物製剤の効果は未だ十分なものでは無く、より抗菌作用や植物生長促進作用に優れたトリコデルマ属微生物が求められていた。そこで、本発明は、抗菌作用や植物生長促進作用に優れたトリコデルマ属の微生物ならびにその培養物および/または菌体を有効成分とする微生物農薬および植物生長促進剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、北海道日高支庁静内町の土壌から単離した菌株が、トリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)に属する新規微生物であり、トリコデルマ属微生物の基準株などと比較して、菌糸伸長速度が顕著に速く、広範な種類の病原体に対して高い生育抑制効果を奏すること、および植物の生長を顕著に促進することを見出し、下記の各発明を完成した。
(1)本発明に係る新規微生物は、trichoderma atroviride S・R−06株(受託番号:NITE P−02029)である。
(2)本発明に係る微生物農薬は、trichoderma atroviride S・R−06株(受託番号:NITE P−02029)の培養物および/または菌体を有効成分とする。
(3)本発明に係る植物生長促進剤は、trichoderma atroviride S・R−06株(受託番号:NITE P−02029)の培養物および/または菌体を有効成分とする。
trichoderma atroviride S・R−06株によれば、広範な種類の病原体に対して効果的にその生育を抑制することができる。したがって、trichoderma atroviride S・R−06株は、植物病害を防除するための微生物農薬の有効成分とすることができるほか、人畜の病気を予防ないし治療するための医薬の製造に利用することができる。
また、trichoderma atroviride S・R−06株によれば、植物の生長を顕著に促進することができる。したがって、trichoderma atroviride S・R−06株は、植物生長促進剤の有効成分として利用することができる。
さらに、トリコデルマ属の微生物は土壌中に普通に見出される菌であることから、trichoderma atroviride S・R−06株によれば、環境負荷が小さく、安全性が高い、微生物農薬や植物生長促進剤などの微生物製剤を製造することができる。
アポロンDB−FU(ITS)データベースVer7.0におけるBLAST検索の結果、SIID13819株のITS領域の塩基配列と相同率が高かった上位30を示す表である。 国際塩基配列データベースにおけるBLAST検索の結果、SIID13819株のITS領域の塩基配列と相同率が高かった上位30を示す表である。 SIID13819株のITS領域の塩基配列、および、図1において※で示した株のITS領域の塩基配列を用いて作成した分子系統樹を示す図である。 SIID13819株のコロニーを示す写真である。 SIID13819株の栄養菌糸を示す写真である。 SIID13819株の分生子柄を示す写真である。 SIID13819株の分生子柄を示す写真である。 SIID13819株の分生子柄を示す写真である。 SIID13819株の分生子形成細胞を示す写真である。 SIID13819株の分生子形成細胞を示す写真である。 SIID13819株の分生子を示す写真である。 SIID13819株の厚膜胞子を示す写真である。 15℃、20℃、25℃、30℃および35℃の各温度条件下で培養したSIID13819株のコロニーを示す写真、ならびに、コロニー径および色素産生の有無を示す表である。 種々の病原体と拮抗菌(S・R−06株および101776株)との対峙培養を行い、病原体に対する生育抑制効果を評価した結果を示す写真である。 種々の病原体と拮抗菌(S・R−06株および101776株)との対峙培養を行い、病原体に対する生育抑制効果を評価した結果を示す写真である。
以下、trichoderma atroviride S・R−06株ならびに本発明に係る微生物農薬および植物生長促進剤について詳細に説明する。trichoderma atroviride S・R−06株(以下、単に「S・R−06株」という場合がある。)は、後述の実施例1に示すように、平成27年3月27日に、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に受託番号NITE P−02029として寄託したため、この機関より入手することができる。
S・R−06株は、寒天培地において20〜30℃で数日間、静置培養することにより、培養ないし増殖させることができる。寒天培地としては、例えば、Poteto Sucrose Agar(PSA培地)、Cornmeal Dextrose Agar(CMD培地;Samuels et.al.、1998年)、ポテトデキストロース寒天培地(PDA培地;「ダイゴ」日本製薬社)、Synthetischer nahrstoffarmer agar(SNA培地;Nirenberg、1976年)などを用いることができる。
ここで、PSA培地は次の手順で作成することができる。まず、ジャガイモを水道水で洗浄した後、皮をむいて1cm角に切り、水道水で素早く洗浄する。続いて、ジャガイモ(皮をむいて切った1cm角に切ったもの)200g当たり1Lの蒸留水で20分間ゆでる。これを潰した後、綿布の袋(muslin bag)に入れて絞り、液体分を回収する。ここにスクロース20gを加えて溶解する。pHを5.6に調整した後、寒天20gを加えて、最終容量が1Lとなるよう蒸留水を加える。これを、オートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)に供して121℃で15分間滅菌する。
また、S・R−06株は、液体培地において20〜30℃で数日間、振盪培養することにより、培養ないし増殖させることもできる。液体培地としては、例えば、ポテト−デキストロース液体培地(DIFCO社)や、麦芽エキス培地(麦芽エキス20g、ペプトン1g、ブドウ糖20g、蒸留水1000ml)やブドウ糖ブイヨン培地(肉エキス10g、NaCl5g、ペプトン10g、ブドウ糖10g、蒸留水1000ml)などを用いることができる。
S・R−06株は、後述の実施例に示すように抗菌作用および植物生長促進作用に優れることから、その培養物や菌体を、微生物農薬や植物生長促進剤などの、主として農業の分野で用いられる微生物製剤の有効成分として利用することができる。すなわち、本発明に係る微生物農薬および植物生長促進剤は、S・R−06株の培養物および/または菌体を有効成分とする。
本発明に係る微生物製剤(微生物農薬、植物生長促進剤)の製造の手順は特に限定されないが、例えば、下記の手順により製造することができる。まず、ふすまに等量の水を加えて120℃加熱殺菌を行ってふすま培地を作成する。これを常温まで冷却した後、上述の方法で培養ないし増殖させたS・R−06株を種菌として加える。続いて、S・R−06株を加えたふすま培地を、5cm以下の深さとなるようトレーに平坦に入れ、25℃にて7日間培養する。その後、40℃以下の除湿空気で水分が8%以下となるまで乾燥を行う。続いて、80メッシュパスの粒度まで粉砕して、得られた粉末を微生物製剤(微生物農薬、植物生長促進剤)とする。この手順で製造した粉末状の微生物製剤1g中には、通常、1×10〜1×1011個の分生子が含まれる。
本発明に係る微生物製剤(微生物農薬、植物生長促進剤)の製造の手順として、他には、S・R−06株を上述の寒天培地にて培養し、形成した分生子を滅菌した蒸留水に懸濁して、これを液体状の微生物製剤(微生物農薬、植物生長促進剤)としてもよい。
次に、本発明に係る微生物製剤(微生物農薬、植物生長促進剤)の施用手順もまた、特に限定されないが、例えば、下記の手順により施用することができる。すなわち、粉末状の微生物製剤であれば所要量を水に懸濁して、液体状の微生物製剤であればそのまま、対象となる植物を生育させるための土壌に散布する。ここで、本発明に係る微生物製剤の所要量は少量である場合が多く、均一に散布することが困難であるため、必要に応じて、水や土、肥料、土壌改良材などに希釈し、全体量を増量させた上で散布することが好ましい。固体を用いて希釈ないし増量させた場合は、本発明に係る微生物製剤を散布した後に水を散布して、S・R−06株の土壌への定着を促すことが望ましい。なお、本発明に係る微生物製剤の所要量としては、粉末状であれば土壌1m当たり3〜5gを、液体状であれば土壌1m当たり1×10個の分生子量を、それぞれ目安にすることができる。
本発明に係る微生物製剤(微生物農薬、植物生長促進剤)の施用手順として、他には、土壌に散布することに代えて、対象となる植物の種子に混合し、これを播種することにより施用してもよい。
以下、trichoderma atroviride S・R−06株ならびに本発明に係る微生物農薬および植物生長促進剤について、実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
<実施例1>菌株の単離および同定
(1)菌株の単離
北海道日高支庁静内町の土壌から、ツチアオカビの形態を有する菌を単離し、これをSIID13819株とした。
(2)ITS領域の塩基配列を用いた同定
株式会社テクノスルガ・ラボに委託して、SIID13819株の内部転写スペーサー領域(Internal Transcribed Spacer region;ITS領域)の塩基配列を解析し、帰属の同定を行った。具体的には、下記の試薬、装置およびプログラムを用いて解析を行った。
DNA抽出;物理的破壊およびMarmur(1961年)の改変法
PCR;PrimeSTAR HS DNA Polymerase(タカラバイオ社)
サイクルシーケンス;BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing kit(Applied Biosystems社)
配列決定;ChromasPro 1.5(Technelysium Pty Ltd.社)
解析ソフトウェア;アポロン2.0(テクノスルガ・ラボ社)
相同性検索;Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(NCBI http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)
検索データベース;アポロンDB−FU(ITS)データベースVer7.0(テクノスルガ・ラボ社);国際塩基配列データベース(GenBnk/DDBJ/EMBL)
BLAST検索の結果、SIID13819株のITS領域の塩基配列(配列番号1)と相同率が高かった上位30を、図1(アポロンDB−FU(ITS)データベースVer7.0)および図2(国際塩基配列データベース)に示す。また、SIID13819株のITS領域の塩基配列(配列番号1)と、図1において※で示した株のITS領域の塩基配列とを用いて作成した分子系統樹を図3に示す。
図1〜3に示すように、SIID13819株のITS領域の塩基配列(配列番号1)は、Hypocrea atroviridisおよびトリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)のものと100%一致し、これらの種と同じ分類群に帰属した。なお、Hypocrea atroviridisとトリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)とは、テレオモルフ(有性時代)とアナモルフ(無性時代)の関係にある。
(3)形態観察による同定
SIID13819株を、Cornmeal Dextrose Agar培地(Samuels et.al.、1998年;以下「CMD培地」という)、ポテトデキストロース寒天培地(ダイゴ;日本製薬社;以下「PDA培地」という)およびSynthetischer nahrstoffarmer agar(Nirenberg、1976年;以下「SNA培地」という)において、25℃で7日間培養し、光学顕微鏡(BX51;オリンパス社)を用いて形態観察を行った。なお、マウント液はラクトフェノール液およびラクトフェノールコットンブルー液を用いた。コロニーの観察結果を図4に、栄養菌糸の観察結果を図5に示す。また、無性生殖器官の観察結果として、分生子柄の観察結果を図6〜8に、分生子形成細胞の観察結果を図9および10に、分生子の観察結果を図11に、厚膜胞子の観察結果を図12に、それぞれ示す。なお、SIID13819株を同条件にて約4週間培養した結果、有性生殖器官の形成は認められず、無性時代であることが明らかになった。
図4に示すように、CMD培地、PDA培地およびSNA培地のいずれにおいても、コロニーの直径は65〜70mmであり、表面性状はビロード状であった。また、コロニーの色調は、CMD培地およびPDA培地では、深緑色(Deep green;27E−8)および緑色(Green;27B−8)ないし白色(White;27A−1)であり、SNAでは緑色および黄緑色(Light green;27A−5)ないし白色(White;27A−1)であった。ここで、()内の数値は、Kornerup and Wanscher(1978年)で用いられている、「色」のコード番号を示す。また、いずれの培地においても、可溶性色素の産生は観察されなかった。
また、図5に示すように、栄養菌糸は、寒天表面上もしくは寒天内に形成された。菌糸の形状は細い形ないしやや太く膨らんだ形であり、菌糸の幅は1.5〜5μmで、菌糸の色調は無色であった。また、有隔壁菌糸の形成が認められた。
また、図6および図7に示すように、分生子柄は栄養菌糸より直立し、規則または不規則的に分岐していた。また、図8に示すように、分生子柄は、集合して羊毛上の塊(房)を形成するのが認められた。
また、図9および図10に示すように、分生子形成細胞であるフィアライドの形状はアンプル形(紡錘形)で先端部が細く、大きさは長径6〜10μm×短径1.8〜3μmであり、分生子柄の先端部に形成される様子が観察された。
また、図11に示すように、分生子はフィアロ型で、色調は無色〜緑色であった。また、形は球形〜亜球形で、1細胞であった。また、大きさは長径2.5〜3.5μm×短径2〜3μmであり、表面は平滑であった。
また、図12に示すように、厚膜胞子は栄養菌糸の先端あるいは途中に形成され、形は球形〜亜球形、色調は無色で、1細胞性であった。
以上の本実施例1(3)で観察された形態的特徴は、トリコデルマ アトロビリデの特徴(Dodd et al.、2003年、Trichoderma Online)にほぼ一致していた。
以上の本実施例1(2)および(3)の結果から、SIID13819株は、子嚢菌門フンタマカビ綱ボタンタケ亜綱ボタンタケ目ボタンタケ科トリコデルマ属トリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)に属することが明らかになった。
(4)生育温度試験
SIID13819株をPDA培地に接種し、15℃、20℃、25℃、30℃および35℃の各温度条件下で培養し、培養3日目にコロニー径の測定および色素産生の有無について観察を行った。その結果を図13に示す。
図13に示すように、15℃、20℃、25℃および30℃ではコロニーが生育したが、35℃ではコロニーの生育が認められなかった。また、コロニー径は、15℃では30〜32mm、20℃では55mm、25℃では60mm、30℃では50〜55mmであった。色素産生は、15℃、20℃、25℃、30℃および35℃のいずれの温度条件下でも認められなかった。すなわち、SIID13819株は、35℃でコロニーの生育が認められなかった点で、トリコデルマ アトロビリデの特徴(Dodd et al.、2003年、Trichoderma Online)と相違していた。この結果ならびに本実施例1(2)および(3)の結果から、SIID13819株は、トリコデルマ アトロビリデに属する新規菌株であることが明らかになった。
そこで、SIID13819株をtrichoderma atroviride S・R−06と命名し、平成27年3月27日に、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に受託番号NITE P−02029として寄託した。以下、trichoderma atroviride S・R−06を「S・R−06株」と略記する場合がある。
<実施例2>菌糸伸長速度の評価
S・R−06株とトリコデルマ アトロビリデの有性時代の基準株であるHypocrea atroviridis NBRC 101776(以下、「101776株」という。)とで、菌糸伸長速度の比較を行った。具体的には、S・R−06株と101776株とを、PDA培地にて27℃で3日間平面培養した。続いて、コロニーの先端部分を直径6mmのコルクボーラーで打ち抜き、PDA培地に置いて、27℃で2日間培養した。培養1日目および2日目にコロニーの半径を測定し、培養2日目のコロニー半径から1日目のコロニー半径を減じた値を、1日当たりの菌糸伸長速度(mm/日)とした。同様の実験を5回行い、平均値を算出した。その結果を表1に示す。
表1に示すように、菌糸伸長速度の平均値は、S・R−06株では21.4mm/日であったのに対して、101776株では18.0mm/日であった。すなわち、S・R−06株の菌糸伸長速度は、101776株の菌糸伸長速度と比較して、20%近く大きかった。この結果から、trichoderma atroviride S・R−06は、トリコデルマ属微生物の基準株と比較して、菌糸の伸長が顕著に速いことが明らかになった。ここで、菌糸伸長速度は、病原体の生育抑制にあたっての重要な因子であり、菌糸伸長速度が大きいほど病原体の生育抑制能が高く、抗菌作用に優れていると考えられる。このことから、trichoderma atroviride S・R−06は、トリコデルマ属微生物の基準株と比較して病原体の生育抑制能が高く、抗菌作用に優れていると考えられた。
<実施例3>抗菌作用の評価
病原体および拮抗菌として表2に示すものを用意し、PDA培地にて、表2に示す温度および培養日数で平面培養した。
続いて、平面培養した各病原体および拮抗菌のコロニーを直径6mmのコルクボーラーで打ち抜き、PDA培地の入った直径90mmのシャーレの端から30mmの位置に各病原体を置き、他方の端から30mmの位置に拮抗菌を置いて、27℃で5日間、対峙培養を行った。なお、Rhizopus chinensis NBRC 31988(イネ苗立枯病の病原体)については、拮抗菌としてS・R−06株との対峙培養のみ行った。コントロールとして、病原体のみを置いたものを同様に培養した。その後、各シャーレにおいて病原体が生育している面積(病原体生育面積)を測定し、式1により病原体生育抑制率(%)を算出した。その結果を図14および図15に示す。
式1;病原体生育抑制率(%)={(コントロールにおける病原体生育面積−各シャーレにおける病原体生育面積)/コントロールにおける病原体生育面積}×100
図14に示すように、Fusarium oxysporum NBRC 7152(植物の萎凋病や腐敗を引き起こす病原体)に対する病原体生育抑制率は、S・R−06株では80%であったのに対して、101776株では64%であった。また、Rhizoctonia solani NBRC 30944(リゾクトニア病の病原体)、Sclerotinia sclerotiorum NBRC 30965(菌核病の病原体)およびColletotrichum acutatum NBRC 32850(炭疽病の病原体)に対する病原体生育抑制率は、S・R−06株および101776株のいずれも100%であった。
また、図15に示すように、Helicobasidium mompa NBRC 31651(紫モンパ病の病原体)に対する病原体生育抑制率は、S・R−06株では89%であったのに対して、101776株では69%であった。また、Rosellinia necatrix NBRC 32538(白モンパ病の病原体)に対する病原体生育抑制率は、S・R−06株では100%であったのに対して、101776株では87%であった。また、Armillaria mellea NBRC 31621(ナラタケ病の病原体)に対する病原体生育抑制率は、S・R−06株および101776株のいずれも100%であった。また、Athelia rolfsii NBRC 31215(白絹病の病原体)に対する病原体生育抑制率は、S・R−06株では74%であったのに対して、101776株では70%であった。また、Rhizopus chinensis NBRC 31988(イネ苗立枯病の病原体)に対するS・R−06株の病原体生育抑制率は100%であった。
すなわち、S・R−06株は、Rhizoctonia solani NBRC 30944(リゾクトニア病の病原体)、Sclerotinia sclerotiorum NBRC 30965(菌核病の病原体)、Colletotrichum acutatum NBRC 32850(炭疽病の病原体)およびArmillaria mellea NBRC 31621(ナラタケ病の病原体)に対しては、101776株と同様に100%の病原体生育抑制率を示し、Fusarium oxysporum NBRC 7152(植物の萎凋病や腐敗を引き起こす病原体)、Helicobasidium mompa NBRC 31651(紫モンパ病の病原体)、Rosellinia necatrix NBRC 32538(白モンパ病の病原体)およびAthelia rolfsii NBRC 31215(白絹病の病原体)に対しては、101776株よりも高い病原体生育抑制率を示した。
すなわち、trichoderma atroviride S・R−06は、トリコデルマ属微生物の基準株と比較して、広範な種類の病原体に対して高い生育抑制効果を奏することから、抗菌作用に優れていることが明らかになった。
<実施例4>微生物農薬の製造および施用
(1)微生物農薬の製造
S・R−06株を液体培地で振盪培養して種菌を作成した。一方、ふすま10kg、水10Lおよび36%の濃塩酸50mLを混合し、トロンメル方式の殺菌釜にて120℃で30分間加熱殺菌を行った。ここに、作成したS・R−06株の種菌100mLを加えることにより植菌した。これをアルミ製の培養トレー(450×700×80mm)20枚に等量ずつ入れ、25±1℃、相対湿度90%の条件下で7日間培養を行った。培養開始から4日目以後は、分生子形成を促すために一日に一回撹拌操作を行った。培養終了後、35℃に加温した除湿空気下で、水分が4%以下となるまで約12時間乾燥させて、7.3kgの乾燥物を得た。得られた乾燥物を衝撃式粉砕機に供して、80メッシュパスの粒度となるまで粉砕を行い、得られた乾燥粉末を微生物農薬とした。この乾燥粉末1g中には、約8×10個の分生子が含まれていた。
(2)微生物農薬の施用
本実施例4(1)の微生物農薬を、水1L当たり1.5gの割合となるよう希釈した。これを、リゾクトニア ソラニ(Rhizoctonia solani)を病原体とする褐色パッチが発生しているゴルフ場の芝草に、1m当たり2Lの割合で散布し、経過を観察した。その結果、2日後には病徴の進行は止り、12日後には完全にもとの状態に回復した。この結果から、trichoderma atroviride S・R−06を有効成分とする微生物農薬は、植物病害を効果的に防除できることが明らかになった。
<実施例5>植物生長促進作用の評価
(1)植物生長促進剤の製造
PDA培地にS・R−06株を塗布し、25℃で10日間培養を行い、分生子を形成させた。続いて、分生子を滅菌した蒸留水に懸濁して分生子液を調製し、これを植物生長促進剤とした。
(2)植物生長促進作用の評価
赤玉土7L、腐葉土2L、パーミキュライト1L、石灰15gおよび化学肥料15gを混合して栽培用土を調製し、プランターに入れて、試験区と対照区を設定した。本実施例5(1)の植物生長促進剤を、散布量が1m当たり1×10個の分生子となるよう、試験区に散布した。対照区には何も散布しなかった。続いて、試験区および対照区に小松菜種子を播種して、同条件にて28日間栽培した。その後、各区から小松菜を10株ずつランダムに採取して草丈を計測し、平均値を算出した。
その結果、対照区の草丈の平均値は16.8cmであったのに対して、試験区の草丈の平均値は20.5cmであった。すなわち、本発明に係る植物生長促進剤を散布した区では、散布しなかった区と比較して、小松菜の草丈が顕著に大きかった。この結果から、trichoderma atroviride S・R−06を有効成分とする植物生長促進剤は、植物の生長を顕著に促進することが明らかになった。

Claims (3)

  1. trichoderma atroviride S・R−06株(受託番号:NITE P−02029)。
  2. trichoderma atroviride S・R−06株(受託番号:NITE P−02029)の培養物および/または菌体を有効成分とする、微生物農薬。
  3. trichoderma atroviride S・R−06株(受託番号:NITE P−02029)の培養物および/または菌体を有効成分とする、植物生長促進剤。
JP2015089809A 2015-04-24 2015-04-24 抗菌作用および植物生長促進作用に優れた新規微生物 Active JP6560527B2 (ja)

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