JP6555718B2 - ガスケット - Google Patents

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Description

本発明は、高温高圧の機器または配管の継手部に用いられる、流体をシールするためのガスケットに関する。
従来、高温および高圧の流体が管内を流れる配管の継手部において、流体をシールするためのガスケットとして、渦巻型ガスケットおよびメタルジャケット型ガスケット等が提案されている。渦巻型ガスケットは、例えば、特許文献1に記載されているように、テープ状の金属製のフープ材と、膨張黒鉛または石綿紙等のフィラー材とを重ね合わせて、渦巻き状に巻回して環状に形成した本体部と、本体部の内周および外周にそれぞれ装着された内輪および外輪とを含んで成る。渦巻型ガスケットを構成するフープ材およびフィラー材は一般に、屈曲部を有するV字型断面を有し、当該屈曲部が径方向で重なるように巻回されて、本体を形成している。なお、特許文献1では、フィラー材として、膨張黒鉛テープを金属箔で被覆した複合フィラー材を使用することが提案されている。
あるいは、特許文献2では、継手部にて高温および高圧の流体をシールするためのガスケットとして、渦巻き状に巻回した金属製の中芯部材と、中芯部材を被覆する金属製の被覆部材とを有し、中芯部材は、ガスケットの径方向に対して垂直方向に切断した断面視において径方向側に屈曲又は/及び湾曲している部位を有し、かつ屈曲又は/及び湾曲している部位がガスケットの径方向に沿って重なるように巻回されており、中芯部材が被覆部材により被覆された状態では、ガスケットの径方向に対して垂直方向に切断した断面視において、中芯部材の径方向外側及び内側と被覆部材との間に空間部が形成されている、ガスケットが提案されている。特許文献2で提案されているガスケットは、渦巻型ガスケットを中芯部材とするメタルジャケット型ガスケットというべきものである。
特許文献2のガスケットは、高温環境下や、高温−常温−高温のように温度変化が生じる熱サイクル環境下で使用した場合でも、有機分の硬化や熱減量による応力緩和が生じないため、長期間にわたって、中芯部材の所定の弾力性を維持することができ、中芯部材が所定の残留応力を保持することができる。その結果、高温環境下や熱サイクル環境下においても、中芯部材からフランジ面に接触応力を作用させることができ、フランジ面間のシール機能を維持することができる。
実用新案登録第2536682号公報 特許第4674055号公報
特許文献2で提案されたガスケットは、渦巻き状に巻回した金属製の中芯部材を、金属製の被覆部材で被覆する構成とすることによって、中芯部材の弾力性および被覆部材の気密性を利用して、優れたシール性を達成している。しかしながら、特許文献2で提案されたガスケットは、中芯部材が被覆部材により被覆された状態では、ガスケットの径方向に対して垂直方向に切断した断面視において、中芯部材の径方向外側及び内側と被覆部材との間に空間部が形成されていることを要求する。この空間部には中芯部材が存在しないため、当該空間部が形成された部分は、シール機能を発揮することができず、ガスケットのシール領域は中芯部材が形成された部分に限定される。すなわち、空間部が形成された部分に、締め付け圧力が加わったときには、当該部分では金属製の被覆部材が塑性変形し、変形した部分は復元しないため、当該部分のシール機能は著しく低い。
また、特許文献2の図1や図3のように比較的大きい空間部が形成されると、当該空間部は一種の「空気溜め」となり、酸素や窒素が存在することとなる。高温下でガスケットを使用する場合には、酸素や窒素がメタルジャケットや金属製フープ材の金属原子と結合して、酸化物や窒化物を形成しやすくなるところ、酸化物や窒化物の形成は素材の機械的強度の低下を招き、被覆部材や金属製フープ材の破壊をもたらす。特に、金属製フープ材を渦巻き状に巻回するにあたっては、巻き始め及び巻き終わりの数周分をスポット溶接により固定して中芯部材を一体化させるが、酸化物や窒化物の形成はスポット溶接の破壊を招きやすく、中芯部材の一体性を損なうことがある。また、ガスケットの使用に際し、締め付け圧力が加わったときには、特に径方向外側の空気溜めが被覆部材を外側へ押し出す作用をするため、被覆部材がフランジの外にはみ出るほど変形することもあるが、そのような変形は酸化物や窒化物の形成と相俟って、被覆部材の劣化をより進行させる。
本発明は、金属製フープ材のみを渦巻き状に巻回してなる芯材、または金属製フープ材とフィラー材とを重ね合わせて渦巻き状に巻回してなる芯材を、メタルジャケットで被覆する構成のガスケットであって、シール性に優れたガスケットを提供することを目的とする。
本発明は、一つの要旨において、
金属製フープ材が渦巻き状に巻回されてなる芯材を、メタルジャケットで包み込んでなる、ガスケットであって、
前記金属製フープ材が、その幅の略中央に長手方向に沿って延びる屈曲部および/または湾曲部を有し、
前記芯材において、前記金属製フープ材は、前記屈曲部および/または前記湾曲部が、前記ガスケットの径方向に沿って重なるように巻回されており、
前記メタルジャケットが、前記ガスケットの内周および外周のいずれか一方または両方において、最内周または最外周に位置する前記金属製フープ材の前記屈曲部および/または前記湾曲部と略一致する屈曲部および/または湾曲部を有する、
ガスケットを提供する。
本発明は、別の要旨において、
金属製フープ材およびフィラー材を重ね合わせたものが渦巻き状に巻回されてなる芯材を、メタルジャケットで包み込んでなる、ガスケットであって、
前記金属製フープ材および前記フィラー材が、その幅の略中央に長手方向に沿って延びる屈曲部および/または湾曲部を有し、
前記芯材において、前記金属製フープ材および前記フィラー材は、前記屈曲部および/または前記湾曲部が、前記ガスケットの径方向に沿って重なるように巻回されており、
前記メタルジャケットが、前記ガスケットの内周および外周のいずれか一方または両方において、最内周または最外周に位置する、前記金属製フープ材または前記フィラー材の前記屈曲部および/または前記湾曲部と略一致する屈曲部および/または湾曲部を有する、
ガスケットを提供する。
本発明のガスケットは、金属製フープ材、または金属製フープ材とフィラー材とを重ね合わせたもの(以下、便宜的にこれらを総称して「巻回部材」と呼ぶ)が巻回されてなる芯材をメタルジャケットが被覆する構成であって、その内周および/または外周において、メタルジャケットが最内周および/または最外周に位置する巻回部材の屈曲部および/または湾曲部と略一致するように、屈曲および/または湾曲している。そのため、ガスケットの主面に対して垂直な方向(すなわち、ガスケットの軸方向)に力が加わって、巻回部材の屈曲部の屈曲角度および/または湾曲部の曲率半径がより小さくなるように芯材が変形したときに、その変形に追随してメタルジャケットの内周および外周のいずれか一方または両方が変形する。すなわち、本発明のガスケットは、メタルジャケットの内周および外周のいずれか一方または両方も弾性変形するため、ガスケットのほぼ全面をシール領域として使用することができ、高いシール性を示す。また、本発明のガスケットによれば、ガスケットの径方向において、芯材とメタルジャケットとの間に実質的に空隙を存在させない構成とすることができ、空隙が存在することによる芯材またはメタルジャケットの劣化を抑制できる。
本発明の第1の実施形態に係るガスケットを示す平面図である。 図1に示すガスケットを線分α−α’に沿って切断した部分断面図である。 図1に示すガスケットの一変形例を示す部分断面図である。 本発明の第2の実施形態に係るガスケットを示す部分断面図である。 本発明の第3の実施形態に係るガスケットを示す部分断面図である。 本発明の第4の実施形態に係るガスケットを示す部分断面図である。 本発明の第5の実施形態に係るガスケットを示す部分断面図である。
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。なお、図面はいずれも模式図であって、理解の容易のため、各構成要素は必ずしも同一縮尺で表示されていない。また、複数の図面において、同じ符号で示された要素は、同じ機能を奏する要素である。
(第1の実施形態)
図1および図2はそれぞれ、本実施形態のガスケットの平面図および部分断面図である。図2は図1のガスケットを線分α−α’に沿って切断した部分断面図である。
図1および図2に示すガスケット100は、金属製フープ材12が渦巻き状に巻回されてなる芯材14を、メタルジャケット20で包み込んでなるものであり、全体として環状の形状を有する。図示した形態において、芯材14は、メタルジャケットの本体部材22(以下、「本体部材」とも略す)、およびメタルジャケットの蓋部材24(以下、「蓋部材」とも略す)によって包まれている。本体部材22は、内周部および外周部にて折り返されて折り返し部22bを形成し、蓋部材24と係合している。
図示したガスケット100は、例えば、外径が120cm〜1cm程度、内径が110cm〜0.2cm程度の環状であり、折り返し部の幅は1mm〜200mm程度である。ガスケットの形状ならびに外径および内径の寸法は、ガスケットが配置される継手部の形状および寸法等に応じて適宜選択される。例えば、ガスケットは、略正方形または略長方形の形状を有する、額縁状のものであってよい。
以下、本実施形態のガスケットを構成する各要素について説明する。
[金属製フープ材]
金属製フープ材12は、その幅の略中央に長手方向に沿って延びる屈曲部および/または湾曲部12aを有する帯状物または条である。すなわち、金属製フープ材は、その幅方向に沿って切断したときに、例えば、V字型、M字型、C字型またはU字型の断面形状を有する。図2に示すように、金属製フープ材12は、その屈曲部および/または湾曲部12aがガスケット100の径方向に沿って重なるように、渦巻き状に巻回されて、芯材14を構成している。図示した形態においては、屈曲部および/または湾曲部12aの突出した部分(すなわち、屈曲部および/または湾曲部12aの先端)が外周側に向くように、金属製フープ材12が巻回されている。変形例においては、屈曲部および/または湾曲部12aの突出した部分が内周側に向くように、金属製フープ材12が巻回されていてよい。
屈曲部および/または湾曲部12aを、ガスケットの径方向に沿って重なるように巻回することにより、ガスケットの主面に対して直交する方向(軸方向、図2において両矢印Xで示す方向)で力が加わった時、特にガスケットを圧縮する方向に力が加わった時に、芯材14が弾性変形して、継手部、特にフランジ面間でシール機能を発揮する。
金属製フープ材12は、例えば、幅1mm〜200mm程度、厚さ0.1mm〜5.0mm程度の金属製の帯状物または条に、屈曲部および/または湾曲部12aを形成することにより得られる。例えば、断面がV字型となるように屈曲部を形成する場合、屈曲部の角度は、10°〜170°としてよい。
金属製フープ材12の材料としては、例えば、冷間圧延鋼板(SPCC)やステンレス鋼板(例えば、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L等)が挙げられる。あるいは、耐熱耐食性ステンレス鋼、ニッケル基耐熱合金、またはコバルト系合金からなる薄い板(もしくはシート)または条を用いてよい。あるいはまた、銅系バネ用合金、チタン、チタン合金、アルミニウム、またはアルミニウム合金からなる薄い板または条を用いてよい。
前記耐熱耐食性ステンレス鋼としては、例えば、高クロム高ニッケル低カーボンステンレス鋼があり、市販品では、SUS310、SUS309S、SUS321、SUS347、インコロイ(登録商標)800等が挙げられる。また、ニッケル基耐熱合金としては、Cr15〜30%、Ni10〜80%、C0.4%以下、Mo10%以下を含んでなるニッケル基耐熱合金がある。ニッケル基耐熱合金は、インコネル(登録商標)600、同601、同625、同718、同X750等として市販されている。
銅系バネ用合金としては、銅、黄銅材、リン青銅、バネ用リン青銅、ベリリウム銅、チタン銅、銅ニッケル合金(モネルを含む)が市販されている。チタンおよびチタン合金としては、工業用純チタン、耐食チタン合金(JISH4600(2012年)で定める11種〜25種、50種)、高強度で耐食性のよいα−β合金(同60種、60E種、61種、61F種)およびβ合金(同80種)が市販されている。
アルミニウムおよびアルミニウム合金としては、JISH4000(2014年)で定めるA1100、A2014P、A2014AP、A2014PC、A2017P、A2017AP、A2219P、A2024、A2124、A3004P、A3104P、A3005P、A3105P、A5110AP、A5021P、A5052P、A5154P、A5456P、A5082P、A5182P、A5083P、A5083PS、A5086P、A6061P、A6082P、A7204P、A7050P、A7475P、A7178P、A8021P、A8079Pが市販されている。
芯材14は、異なる金属からなる、2種類以上の金属製フープ材12を重ねて、渦巻き状に巻回してなるものであってよい。あるいは、芯材14は、幅の異なる2種類以上の金属製フープ材12を重ねて、渦巻き状に巻回してなるものであってよい。あるいはまた、芯材14は、幅および金属の種類が異なる、2種類以上の金属製フープ材12を重ねて、渦巻き状に巻回してなるものであってよい。あるいは、芯材14は、ある金属製フープ材12を所定周だけ巻回した後、別の金属製フープ材12をさらに所定周だけ巻回することにより形成してよい。
異なる2種類以上の金属製フープ材12を用いる場合、屈曲部および/または湾曲部12aは互いに略一致するように形成してよい。具体的には、例えば、断面がV字型の複数種類の金属製フープ材12を用いる場合、各金属製フープ材12の屈曲角度はすべて同じ角度としてよい。あるいは、各金属製フープ材12の屈曲部および湾曲部は、互いに一致しないものであってよい。その場合、後述するメタルジャケットの屈曲部および/または湾曲部は、最も内周側または外周側に位置する金属製フープ材12の屈曲部および/または湾曲部と略一致するように形成される。
芯材14は、巻回した金属製フープ材12がバラバラにならないように、適宜固定してよい。例えば、最初に3〜5周巻回した時点で、例えばスポット溶接(図においては省略)により固定した後、さらに所定の数の周だけ巻回し、最後の周を巻き終えてから、スポット溶接(図においては省略)により固定してよい。
[メタルジャケット]
メタルジャケット20は、前述のとおり、本体部材22と、蓋部材24とからなり、本体部材22の内周および外周は折り返し部分(またはグロメット)22bを形成して、蓋部材24と係合している。本体部材22および蓋部材24とも薄い金属板であり、その材料および寸法(特に厚さ)は特に限定されず、用途等に応じてメタルジャケットを構成するものとして公知の金属板から任意に選択される。
具体的には、メタルジャケット20の材料としては、先に金属製フープ材12の材料として例示したものから選択してよく、本体部材20および蓋部材24とも、その厚さは0.1〜4.0mmの板(またはシート)としてよい。本体部材20と蓋部材24は同じ材料からなる、同じ厚さのものであってよく、あるいは、同じ材料からなる、異なる厚さのものであってよく、あるいはまた、異なる材料からなる、同じ厚さのものであってよく、あるいはまた、異なる材料からなる、異なる厚さのものであってよい。
図示した形態において、本体部材22は、ガスケット100の内周および外周において、金属製フープ材12の屈曲部および/または湾曲部12aと略一致する屈曲部および/または湾曲部22aを有する。本体部材22が内周および外周に屈曲部および/または湾曲部22aを有することにより、ガスケット100に図2において軸方向(両矢印Xで示す方向)、特にガスケット100を圧縮する方向に力が加わった時に、本体部材22は、芯材14に追随して弾性変形することができ、芯材14とともに継手部のシール性を高める役割を果たし得る。本明細書において、屈曲部が「略一致する」とは、複数の屈曲部を一方向に沿って重ねたときに、屈曲部の間で空隙が実質的に生じないことをいい、屈曲部が互いに合同又は相似であることをいう。湾曲部が「略一致する」とは、複数の湾曲部を一方向に沿って重ねたときに、湾曲部の間で空隙が実質的に生じないことをいい、湾曲部が互いに合同又は相似であることをいう。
本体部材22に屈曲部および/または湾曲部22aを設けることによるシール性向上がより実効のあるものとなるように、図2に示すとおり、ガスケット100を径方向に沿って切断したときの断面視で、ガスケット100の内周および外周にて、本体部材22に設けられた屈曲部および/または湾曲22aと、金属製フープ材12の屈曲部および/または湾曲部12aとの間に実質的に空隙が存在しないように、本体部材22および芯材14の寸法等を適宜選択することが好ましい。すなわち、本体部材22が、金属製フープ材12を巻回して形成される芯材14の恰も最初の周と最終の周となるように、本体部材22と芯材14(厳密には芯材14の最初の周および最終の周を形成する金属製フープ材12)とが接触するように、本体部材22が配置されることが好ましい。そのような構成によれば、ガスケット100の略全面をシール領域として使用することができる。なお、そのような構成によれば、芯材14を構成する最内周および最外周の金属製フープ材12と、本体部材22とが接しても、芯材14と本体部材22とが同じように弾性変形するので、両者の接触に起因する破損等が生じない又は生じにくい。そして、空隙が存在しないことにより、空気溜まりが発生しないから、金属製フープ材12および/または本体部材22において酸化および/または窒化が生じにくくなり、芯材14およびメタルジャケット20の変質による劣化および破損が抑制される。
本体部材22において、ガスケットの内周および外周に設ける屈曲部および/または湾曲部22aは、あらかじめ本体部材22に設けられたものであってよく、あるいは、芯材14を包み込んだ後で、本体部材22を曲げ加工することにより設けられたものであってよい。いずれの段階で屈曲部および/または湾曲部22aが設けられる場合でも、当該部分は曲げられることにより、他の部分と比較して機械的強度等が弱くなることがあり、他の部分よりも劣化が生じやすくなることがある。そのような不都合を避けるためには、曲げられたときでも、機械的強度の低下の少ない材料、例えば、鉄および鉄合金軟質材、銅および銅合金の軟質材、アルミニウムおよびアルミニウム合金の軟質材、SUS軟質材、銅ニッケル合金軟質材、リン青銅軟質材、ベリリウム銅軟質材、チタン銅軟質材、工業用純チタン軟質材から選択される材料で本体部材22を形成してよく、あるいは、屈曲部および/または湾曲部22aを、別の部材で補強して、当該部分が二重構造となるようにしてよい。
図示した形態においては、本体部材22の内周および外周の両方に、金属製フープ材12の屈曲部および/または湾曲部12aと略一致する屈曲部および/または湾曲部22aが設けられている。変形例においては、本体部材22の屈曲部および/または湾曲部22aは内周のみ、または外周のみに設けられていてよい。その場合でも、内周または外周にのみ設けられた屈曲部および/または湾曲部22aが、金属製フープ材12に追随して弾性変形して、ガスケット100の内周または外周のシール性を向上させる。
(変形例:金属製リング)
一つの変形例において、内周および外周のいずれか一方に、金属製のリングを本体部材と芯材との間に配置してよい。図3に、内周に金属製のリング26を配置した構成を示す。金属製のリング26は、位置決め部材として機能し、ガスケット10の製造中または使用中に、芯材14が所定位置からずれること、または芯材14が所定の形状から大幅に変形することを抑制し得る。金属製リング26を配置する場合には、本体部材22の内周は金属製フープ材12の屈曲部および/または湾曲部12aに略一致するように、屈曲および/または湾曲させてもよく、あるいはさせなくてもよい。図示した変形例においては、本体部材22の内周は、金属製フープ材12の屈曲部および/または湾曲部12aと略一致する屈曲部および/または湾曲部を有しておらず、ガスケットの中心に向かって湾曲しているだけである。また、金属製リングは、内周ではなく、外周に配置してもよく、その場合、本体部材22の外周は、金属製フープ材12の屈曲部および/または湾曲部12aと略一致する屈曲部および/または湾曲部を有していてもよく、あるいは有していなくてよい。
金属製リング26は、その断面形状が円形、矩形、正方形、三角形、または楕円形等、いずれの形状のものであってよい。金属製リング26の材料は特に限定されず、金属製フープ材の材料として例示したものから任意に選択してよい。金属製リング26は、金属製フープ材12と同じ材料からなるものであってよく、異なる材料からなるものであってもよい。
(第2の実施形態)
第2の実施形態として、メタルジャケットが二重被覆型であるガスケット200を、図4を参照して説明する。本実施形態においては、メタルジャケット30が、下側本体部材32と上側本体部材34とからなる。図示した形態においては、下側本体部材32を構成する金属製の板(またはシート)が芯材14の下側に配置され、内周及び外周にて芯材14の上面側にて折り返し部32bを形成して、芯材14を包み込んでいる。上側本体部材34を構成する金属製の板(またはシート)が下側本体部材32で包み込まれた芯材14の上側に配置され、内周及び外周にて芯材14の下面側にて折り返し部34bを形成して、下側本体部材32で包み込まれた芯材14を包み込んでいる。
本実施形態においては、下側本体部材32および上側本体部材34がともに、ガスケット200の内周および外周にて、屈曲部および/または湾曲部32a,34aを有していて、芯材14に追随して弾性変形できるようになっている。この形態においては、二つの本体部材32、34の屈曲部および/または湾曲部32a、34aが内周および外周において重なり合っていて、二重構造となっている。そのため、メタルジャケット30全体としては、第1の実施形態のメタルジャケット20と比較して、曲げに対してより高い耐性を示し得る。
図示した形態の変形例において、メタルジャケット30は、上側本体部材34が芯材14をまず包み込み、下側本体部材32が、上側本体部材34で包み込まれた芯材14を包み込む構成であってよい。
二重被覆型のメタルジャケットを用いる場合であっても、本体部材32、34の材料は、第1の実施形態にて金属製フープ材12の材料として例示したものから任意に選択できる。また、この実施形態においても、本体部材32、34の厚さは、例えば、0.1〜4.0mmとしてよい。下側本体部材32と上側本体部材34は同じ材料からなる、同じ厚さのものであってよく、あるいは、同じ材料からなる、異なる厚さのものであってよく、あるいはまた、異なる材料からなる、同じ厚さのものであってよく、あるいはまた、異なる材料からなる、異なる厚さのものであってよい。下側本体部材32と上側本体部材34を同じ材料からなる、同じ厚さのものとすれば、ガスケットの軸方向に力が加わったときに同じように弾性変形する。
その他の部材等の構成は、先に第1の実施形態に関連して説明したとおりであるから、ここではその詳細な説明を省略する。また、この実施形態においても、内周および外周のいずれか一方にて、メタルジャケットと芯材との間に金属製リングを配置してよい。
(第3の実施形態)
第3の実施形態として、芯材を構成する巻回部材が金属製フープ材とフィラー材とを重ね合わせたものであるガスケット300を、図5を参照して説明する。本実施形態においては、芯材44は、金属製フープ材42とフィラー材43とが重ね合わされたものが渦巻き状に巻回されてなる。金属製フープ材42は、先に第1の実施形態に関連して説明したとおりである。フィラー材43は、例えば、無機系のセラミック製フィラー材、マイカ製フィラー材、もしくは膨張黒鉛フィラー材、または有機系のポリテトラフルオロエチレンテープである。
本実施形態においては、金属製フープ材42およびフィラー材43がともに、その幅の略中央に長手方向に沿って延びる屈曲部および/または湾曲部42a、43aをそれぞれ有する。図示した形態において、屈曲部および/または湾曲部42a、43aはともにV字型であり、ほぼ同じ角度である。屈曲部および/または湾曲部42aと屈曲部および/または湾曲部43aは互いに異なるものであってよい。
金属製フープ材42の寸法等は、第1の実施形態に関連して説明したとおりである。また、第1の実施形態に関連して説明した金属製フープ材12の寸法等は本実施形態のフィラー材43にもあてはまる。金属製フープ材42とフィラー材43の幅(渦巻き状に巻回したときの高さ)は互いに異なるものであってよい。また、金属製フープ材42を2種類以上使用し、ならびに/あるいはフィラー材43を2種類以上使用し、3以上の帯状物または条を重ね合わせて渦巻き状に巻回して芯材44を形成してよい。いずれの場合も、金属製フープ材42とフィラー材43の屈曲部および/または湾曲部42a、43aは互いに一致するものであってよく、あるいは互いに一致しなくてよい。その場合、メタルジャケット22の屈曲部および/または湾曲部は、最も内周側または外周側に位置する金属製フープ材42もしくはフィラー材43の屈曲部および/または湾曲部と略一致するように形成される。
金属製フープ材42とフィラー材43とを重ね合わせて巻回して芯材44とする場合にも、巻回部材がバラバラにならないように適宜固定してよい。例えば、最初に金属製フープ材42のみを3〜5周(図5では3周)巻回した時点で、例えばスポット溶接(図5では省略)により固定した後、金属製フープ材42とフィラー材43とを重ね合わせて所定の数の周だけ巻回し、さらに金属製フープ材42のみを3〜5周(図5では3周)巻回してスポット溶接(図5では省略)により固定してよい。
その他の部材等の構成は、先に第1の実施形態に関連して説明したとおりであるから、ここではその詳細な説明を省略する。また、この実施形態においても、内周および外周のいずれか一方にて、メタルジャケットと芯材との間に金属製リングを配置してよい。
(第4の実施形態)
第4の実施形態として、芯材14の下側主表面および上側主表面に緩衝材として機能する金属板50、52を配置したガスケット400を、図5を参照して説明する。本実施形態においては、芯材14の下側主表面および上側主表面において、メタルジャケット20を構成する金属板と芯材14との間に、緩衝材として機能する金属板50、52がそれぞれ配置されている。金属板50、52は、芯材14を構成する金属製フープ12の側縁部(フープの幅方向の端部)が、メタルジャケットを構成する比較的薄い金属板を変形させる、あるいは破損することを防止するために設けられる。
渦巻き状に巻回した金属製フープを含む芯材は、ガスケットの主表面を画定する二つの主表面を有し、芯材の主表面には、巻回部材の幅方向の端部、すなわち側縁部が主表面に対して傾斜して露出している。したがって、図示するように、渦巻き状に巻回した金属製フープを含む芯材をメタルジャケットで被覆すると、図示するように屈曲部を形成している金属製フープの側縁部のコーナー(約90度の角度を有する)が、メタルジャケットの主表面を構成する金属板と接した状態となる。
そのため、ガスケットをフランジ間に配置して高い締め付け圧力を加えると、比較的硬い金属製フープ材の側縁部がメタルジャケットに強い力を及ぼして、メタルジャケットを変形させ、あるいは場合により破損させることがある。より具体的には、金属製フープの側縁部がメタルジャケットの主表面を構成する金属板に押しつけられると、メタルジャケットの主表面に金属製フープ材の渦巻き形状に対応して、渦巻き状の凹凸が形成される。このような凹凸が形成されると、ガスケットとフランジ面との間で隙間が生じ、継手部において流体の漏れが生じ、シール性が著しく低下することがある。あるいは、締め付け圧力によっては、変形の結果、メタルジャケットが破損することもあり、破損が生じるとシール機能はほぼゼロとなる。
このような不都合を避けるために、本実施形態では、金属板50を芯材14と本体部材22との間に配置し、金属板52を芯材14と蓋部材24との間に配置している。これらの金属板50および52は一種の緩衝材の役割を果たして、芯材14が強く押しつけられる(または芯材14を強く押しつける)ことによるメタルジャケット20の変形および破損を防止する。
金属板50、52は、比較的柔らかい金属、具体的には、例えば、タングステン、モリブデン合金、SUS316L、SUS304S、純銅、銅合金、軟鉄、アルミニウム(軟質および硬質)、ならびにアルミニウム合金(軟質および硬質)から選択される金属で形成されたものであることが好ましい。例えば、金属板50、52は、金属製フープ材12よりも硬度(ブリネル硬さまたはビッカース硬さ)が低い金属からなるものとしてよい。金属板50、52の厚さは、例えば、本体部材22および蓋部材24を0.2〜3mmの厚さとする場合には、0.5〜3mm程度とすることにより、メタルジャケットの変形および破損を効果的に抑制できる。金属板50、52はそれぞれ、好ましくは本体部材22および蓋部材24よりも大きい厚さを有する。また、金属板50、52はそれぞれ、複数枚の金属板を重ねる構成としてよい。
図示した形態においては、金属板50、52がともに設けられているが、必要に応じていずれか一方の金属板のみを設ける構成としてよい。特に、本体部材22の側(図において下側)は、締め付け圧力が加わって変形しやすく、あるいは変形したときに流体の漏れを生じさせやすいので、少なくとも本体部材22の側に金属板50を設けることが好ましい。
高い締め付け圧力が加わったときに芯材14によるメタルジャケット20の変形を防止する手法としては、金属板50、52を設ける方法以外に、金属製フープ材12の側縁部の角を丸くする方法がある。本実施形態の変形例においては、この方法を、金属板50、52を設けることに加えて、またはこれに代えて用いてよい。また、金属板50、52は、図3ないし図5に示す形態においても設けてよい。
(第5の実施形態)
第5の実施形態として、メタルジャケット20の蓋部材24’が本体部材22の折り返し部22bの上に配置された構成のガスケット500を、図7を参照して説明する。本実施形態は、蓋部材24’の構成および位置を除いては、図6に示すガスケットと同じである。このような構成の蓋部材24’は、折り返し部22bを覆う構成であるため、本体部材22との嵌まり合いがより確実なものとなる。蓋部材24’は本体部材22の外周と内周で折られて、下向きに延びる。折られて下向きに延びる部分の長さは、例えば、1mm〜5mmとしてよい。
本実施形態で示す蓋部材24’が他の実施形態にも適用できることはいうまでもない。
本発明は以下の態様のものを含む。
(態様1)
金属製フープ材が渦巻き状に巻回されてなる芯材を、メタルジャケットで包み込んでなる、ガスケットであって、
前記金属製フープ材が、その幅の略中央に長手方向に沿って延びる屈曲部および/または湾曲部を有し、
前記芯材において、前記金属製フープ材は、前記屈曲部および/または前記湾曲部が、前記ガスケットの径方向に沿って重なるように巻回されており、
前記メタルジャケットが、前記ガスケットの内周および外周のいずれか一方または両方において、最内周または最外周に位置する前記金属製フープ材の前記屈曲部および/または前記湾曲部と略一致する屈曲部および/または湾曲部を有する、
ガスケット。
(態様2)
金属製フープ材およびフィラー材を重ね合わせたものが渦巻き状に巻回されてなる芯材を、メタルジャケットで包み込んでなる、ガスケットであって、
前記金属製フープ材および前記フィラー材が、その幅の略中央に長手方向に沿って延びる屈曲部および/または湾曲部を有し、
前記芯材において、前記金属製フープ材および前記フィラー材は、前記屈曲部および/または前記湾曲部が、前記ガスケットの径方向に沿って重なるように巻回されており、
前記メタルジャケットが、前記ガスケットの内周および外周のいずれか一方または両方において、最内周または最外周に位置する、前記金属製フープ材または前記フィラー材の前記屈曲部および/または前記湾曲部と略一致する屈曲部および/または湾曲部を有する、
ガスケット。
(態様3)
前記ガスケットを径方向に沿って切断したときの断面視で、前記メタルジャケットに設けられている前記屈曲部および/または前記湾曲部と、前記金属製フープ材または前記フィラー材の前記屈曲部および/または湾曲部との間に、実質的に空隙が存在しない、態様1または2のガスケット。
(態様4)
前記芯材の二つの主表面のいずれか一方または両方と、前記メタルジャケットとの間に、金属板が位置する、態様1ないし3のいずれか1項に記載のガスケット。
本発明のガスケットは、屈曲部および/または湾曲部を有する巻回部材が渦巻き状に巻回されてなる芯材をメタルジャケットが被覆した構成のガスケットにおいて、メタルジャケットが内周および外周のいずれか一方または両方にて、巻回部材の屈曲部および/または湾曲部と略一致する屈曲部および/または湾曲部を有していて、メタルジャケットが芯材と同じように弾性変形することができるので、ガスケットのシール領域を大きくすることができ、また、向上したシール性能を発揮する。よって、本発明のガスケットは、火力発電所および石油精製プラント等、高温高圧の流体が通過する配管等の継手に使用するのに適している。
100,200,300,400,500 ガスケット
12 金属製フープ材
12a 屈曲部および/または湾曲部
14 芯材
20 メタルジャケット
22 メタルジャケット本体部材
24,24’ メタルジャケット蓋部材
22a 屈曲部および/または湾曲部
22b 折り返し部
26 金属製リング
30 メタルジャケット
32 メタルジャケット下側本体部材
34 メタルジャケット上側本体部材
32a 屈曲部および/または湾曲部
34a 屈曲部および/または湾曲部
32b 折り返し部
34b 折り返し部
42 金属製フープ材
42a 屈曲部および/または湾曲部
43 フィラー材
43a 屈曲部および/または湾曲部
44 芯材
50、52 金属板

Claims (4)

  1. 金属製フープ材が渦巻き状に巻回されてなる芯材を、メタルジャケットで包み込んでなる、ガスケットであって、
    前記金属製フープ材が、その幅の略中央に長手方向に沿って延びる屈曲部および/または湾曲部を有し、
    前記芯材において、前記金属製フープ材は、前記屈曲部および/または前記湾曲部が、前記ガスケットの径方向に沿って重なるように巻回されており、
    前記メタルジャケットが、前記ガスケットの内周および外周のいずれか一方または両方において、最内周または最外周に位置する前記金属製フープ材の前記屈曲部および/または前記湾曲部と略一致する屈曲部および/または湾曲部を有する、
    ガスケット。
  2. 金属製フープ材およびフィラー材を重ね合わせたものが渦巻き状に巻回されてなる芯材を、メタルジャケットで包み込んでなる、ガスケットであって、
    前記金属製フープ材および前記フィラー材が、その幅の略中央に長手方向に沿って延びる屈曲部および/または湾曲部を有し、
    前記芯材において、前記金属製フープ材および前記フィラー材は、前記屈曲部および/または前記湾曲部が、前記ガスケットの径方向に沿って重なるように巻回されており、
    前記メタルジャケットが、前記ガスケットの内周および外周のいずれか一方または両方において、最内周または最外周に位置する、前記金属製フープ材または前記フィラー材の前記屈曲部および/または前記湾曲部と略一致する屈曲部および/または湾曲部を有する、
    ガスケット。
  3. 前記ガスケットを径方向に沿って切断したときの断面視で、前記メタルジャケットに設けられている前記屈曲部および/または前記湾曲部と、前記金属製フープ材または前記フィラー材の前記屈曲部および/または前記湾曲部との間に、実質的に空隙が存在しない、請求項1または2に記載のガスケット。
  4. 前記芯材の二つの主表面のいずれか一方または両方と、前記メタルジャケットとの間に、金属板が位置する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスケット。
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