JP6548265B2 - エマルション - Google Patents
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Description
このように、エマルションは、乳化剤(界面活性物質)の助けを借りて、油滴が水中で分散したり、水滴が油中で分散したりしたものである。
本発明は、水と油のみからなるエマルションを長時間にわたって分散安定化させることを可能にするエマルションを提供することを目的とする。
また、前記電解質としてNaClとMgCl 2 のいずれかを使用することができ、これらの電解質の濃度を0.05〜1.00(mol/L)の範囲に設定することにより、効果的にエマルションの分散安定性を向上させることができる。
図1は、水溶性添加剤をまったく加えていない油中水滴型(W/O)エマルションの分散安定性を調べるため、飽和炭化水素であるヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカンを分散媒とし、水を分散質としてエマルションを調製し、調整後のエマルションの分散安定性の時間経過を測定した結果を示す。エマルションの分散安定性は、分光光度計を用いて700nmの光透過率の経時変化を測定する方法で行った。エマルションの分散性が良い場合には光透過率が低く、分散性が低下すると水と油が分離して光透過率が高くなる。
図1の実験結果から、パラフィン油の炭化水素鎖が長くなると、エマルションの分散安定性が向上することがわかる。
水溶性添加剤を加えることによる分散安定性の変動を調べる実験では、分散安定性に対する作用(増減)をみるため、分散安定性に優れているヘキサデカンを分散媒として実験した。
油中水滴型(W/O)エマルションは、分散媒である油に分散質として水滴が分散したエマルションである。油中水滴型エマルションの分散安定性に対する水溶性添加剤の影響をみるため、水溶性添加剤として塩化ナトリウム(NaCl)、塩化マグネシウム(MgCl2)、尿素(CH4N2O)、ホルムアミド(CH3NO)、エタノール(C2H5OH)、グリセリン(C3H8O3)を使用して実験した。
塩化ナトリウムと塩化マグネシウムは一価と二価の塩(電解質)であり、尿素はアミノ基が一つ、ホルムアミドはアミノ基が二つの水素結合性分子、エタノールは一価、グリセリンは三価のアルコール類である。
エマルションのサンプルは、水溶性添加剤ごとに、添加剤の濃度を0.05、0.10、0.20、0.40、0.60、0.80、1.00、2.00、3.00、4.00(mol/L)とした水溶液を100μLずつ添加して調製した(10サンプル)。比較例として、水溶性添加剤をまったく加えていない水溶液を100μL、ヘキサデカンに添加してエマルションを調製した。
エマルションの分散安定性については、波長700nmの光を容器に投射し、溶液を透過する光の透過率の経時変化を測定することによって測定した。
図3(a)は水溶性添加剤として塩化ナトリウムを使用した場合、図3(b)は塩化マグネシウムを使用した場合の透過率の経時変化を示す。
図3(a)、(b)に示すように、塩化ナトリウムと塩化マグネシウムが分散安定性に十分に寄与する結果が得られ、添加剤の濃度が比較的低い範囲において、分散安定性の向上に効果的に寄与することがわかる。図3で黒菱形が水溶性添加剤を加えていないものの測定結果であり、水溶性添加剤を加えていないものと比較して透過率が低いものは分散性が向上したことを示す。
図6は添加剤の添加量に対する透過率の変化量(0〜6h)を示すグラフである。図6から、尿素とホルムアミドは、添加量が0.05〜4.00(mol/L)の濃度範囲において分散を安定化させる効果が見られ、尿素は、0.05〜1.00(mol/L)の範囲でとくに効果的な作用が認められる。
図8から、エタノールを添加剤とする場合は、添加量が2.00〜4.00(mol/L)の濃度範囲においては、分散安定性の向上にはさほど寄与せず、0.05〜1.00(mol/L)の濃度範囲で一定の分散安定性への寄与が認められる。グリセリンは、0.05〜4.00(mol/L)の濃度範囲で、エタノールよりも効果的な分散安定性への寄与が認められる。
次に、油中水滴型(W/O)エマルションの分散安定性に寄与する物性値として、水滴の粒子径とエマルションの分散安定性との関係について調べた。
エマルション中の水滴の沈降速度vは、次のStokesの式によって与えられる。
v=2a2(ρ0−ρ)g/9η
a:粒子径、ρ0:分散媒の密度(gm-3)、ρ:分散質の密度(gm-3)、g:重力加速度(cms-2)、η:連続相の粘度(gm-1s-1)
エマルション中の水滴は、粒子径が小さくなると沈降速度が遅くなり、エマルションの分散安定性の向上に寄与すると考えられる。以下に、それぞれの水溶性添加剤について、粒子径と分散安定性との相関関係について実験した結果を示す。水滴の粒子径は、粒度分布測定装置を用いて行った。
図9(b)において、塩化ナトリウムについては、濃度が増大するとともに水滴の粒子径が徐々に減少する。したがって、添加剤の濃度が増加すると、粒子径が小さくなって、分散安定性は向上すると想定される。しかしながら、図9(a)に示すように、濃度が増えると塩化ナトリウムの分散安定性は低下している。したがって、塩化ナトリウムの場合、粒子径とエマルションの分散安定性との間には相関関係がないと考えられる。
図10(b)で、尿素については、添加剤の濃度が2.00〜4.00(mol/L)の範囲で徐々に粒子径が減少する傾向がみられるが、分散安定性を示す図10(a)では、濃度が2.00〜4.00(mol/L)の範囲で分散安定性が向上する傾向は見られない。
また、ホルムアミドについては、濃度が変化しても粒子径が変化せず、分散安定性を示す図10(a)とも相関が認められない。
すなわち、尿素とホルムアミドの場合は、水滴の粒子径とエマルションの分散安定性との間には相関関係がないと考えられる。
図11(b)に示すように、エタノールについては、濃度を変えた場合でも水滴の粒子径については大きな変化はみられず、図11(a)の分散安定性との相関関係も見られない。グリセリンについては濃度が増大すると、若干、水滴の粒子径が減少する傾向が見られ、図11(a)の濃度が増大すると分散安定性が増加する傾向と若干の相関関係が見られる。
上述した水滴の粒子径と分散安定性についての測定結果は、塩化マグネシウムを添加剤とする場合を除いて、明確な相関関係が認められない結果となった。
次に、水と油の界面張力と分散安定性との相関関係について実験した結果について示す。界面における自由エネルギーΔGsは、次式によって与えられる。
ΔGs=γΔA γ:界面張力(mNm-1)、界面の面積の変化量(m2)
上式から、水と油の界面張力が低下すると自由エネルギーは低下し、したがってエマルションを安定化させるように作用する。逆に、界面張力が増大するとエマルションは不安定化し、水と油が分離するように作用する。したがって、水溶性添加剤を加えたときの界面張力を調べることにより、水溶性添加剤がどのように作用しているかを推測することができる。水と油の界面張力は、Wihelmy法を利用して測定した。
図12(b)に示すように、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムともに、添加剤の濃度を変えても界面張力はほとんど変化していない。一方、図12(a)に示すように、エマルションの分散安定性は、添加剤の濃度を増大させていくと、分散安定性がいったん向上し、徐々にエマルションの分散安定性が低下するというプロフィールを示す。この実験結果は、塩化ナトリウムと塩化マグネシウムの場合、界面張力と分散安定性との間には相関関係がないことを示すものと考えられる。
図13(b)に示すように、尿素とホルムアミドの濃度を増大させると界面張力はやや減少する傾向があるのに対し、図13(a)に示すように分散安定性は向上していない。したがって、尿素とホルムアミドについて界面張力と分散安定性との間には相関関係がないと考えられる。
図14(b)で、エタノールについては、濃度を増加させると界面張力が大きく減少する結果が得られたが、図14(a)の分散安定性を見ると、濃度が増加して界面張力が減少しても分散安定性が向上する傾向は見られない。また、図14(b)で、グリセリンは濃度を変えても界面張力には大きな差異がなく、分散安定性との相関関係が見られない。すなわち、エタノールとグリセリンの場合も界面張力と分散安定性との間に相関関係は見られないと考えられる。
油中水滴型(W/O)エマルションの分散安定性に寄与する物性値として水滴の粘度(硬度)が考えられる。水滴の粘度が高い(硬度が高い)ということは、水滴同士が近づいたときに合一しにくい(水滴間の相互作用が小さい)ということであり、水滴の粘度が増加するとエマルションの分散安定性が向上すると推定される。そこで、エマルション中の水滴の粘度と分散安定性について測定した。水滴の粘度の測定は振動型粘度計を用いて行った。
図15(b)に示すように、塩化ナトリウムでは濃度が増加するとともに若干粘度が上昇する傾向を示すのに対して、塩化ナトリウムの分散安定性は濃度が増加するともに減少している。
また、塩化マグネシウムは濃度が増加するとともに粘度が大きく増大している。したがって、濃度が増加するとともに分散安定性が向上すると考えられるが、図15(a)に示すように塩化マグネシウムでは濃度が増加すると分散安定性が徐々に減少している。すなわち、塩化ナトリウムと塩化マグネシウムでは、水滴の粘度(硬度)と分散安定性との間には相関関係がないと考えられる。
図16(b)に示すように、尿素とホルムアミドでは、濃度を変えても水滴の粘度は大きく変化しない。また、尿素とホルムアミドの透過率の変化量のグラフ(図16(a))から、尿素とホルムアミドは、少量添加するだけで分散安定性が向上している。したがって、尿素とホルムアミドの場合、水滴の粘度と分散安定性との間には相関関係がないと考えられる。
一方、エマルションの分散安定性と相関関係があると考えられる物性値である粒子径、界面張力、粘度については、分散安定性との間には、塩化マグネシウムについての粒子径、粘度との関係を除いて、明確な相関関係を見出すことができなかった。
前述した油中水滴型(W/O)エマルションについて分散安定性を調べる実験においてはヘキサデカンを分散媒としてW/Oエマルションの分散安定性を調べた。
以下では、脂肪酸もしくは脂肪酸の混合油を分散媒とし、水溶性添加剤として塩化ナトリウム(NaCl)を添加してW/Oエマルションの分散安定性を調べた結果について説明する。
エマルションの調製は、分散媒(油)25mLと分散質(水)100μLを容器に収容し、バス型超音波装置を用いて超音波(28kHz、300W)を5分間照射する方法で行った。水溶性添加剤を加える場合は純水に添加した。
図19、20で使用したサンプルは、分散媒(高級脂肪酸)25mLと分散質(水)100μLを容器に収容し、バス型超音波装置を用いて超音波(28kHz、300W)を5分間照射して調製した。水溶性添加剤のNaClは、添加濃度を0.10(mol/L)、1.00(mol/L)として純水に添加した。
図20の植物油についてみると、オレイン酸とリノール酸と比較して、NaClを添加しない場合でも、さらに分散安定性に優れ、NaClを加えることによってより一層、分散安定性が向上している。NaClの添加量としては添加濃度が0.10(mol/L)のものの方が添加濃度1.00(mol/L)のものよりも分散安定性が優れる。
図18、19、20で見たように、W/Oエマルションの分散安定性は油の種類によって異なる。以下では、ヘキサデカン(C16H34:飽和炭化水素)、1-ヘキサデセン(C16H32:不飽和炭化水素)、オレイン酸(C18H34O2:不飽和脂肪酸)を油剤として、W/Oエマルションの分散安定性を調べた結果について説明する。
なお、エマルションの調製は、上述した各実施例と同様に、分散媒として油剤25mL、分散質として水溶性添加剤を添加した純水100μLを容器に収容し、バス型超音波装置を用いて超音波(28kHz、300W)を5分間照射する方法によって行った。
図21は、水溶性添加剤としてNaClを添加したときに、NaClの添加濃度による分散安定性を調べた結果である。図21から、NaClを添加しない場合と比較してNaClを添加することでエマルションの分散安定性がはっきりと向上し、NaClを添加したときの分散安定性はオレイン酸が最も優れ、1-ヘキサデセンとヘキサデカンの分散安定性は同程度である。
図23に示すように、ヘキサデカンと1-ヘキサデセンの場合は、NaCl、NaOH、NaBrのいずれについても大きな相違は見られない。すなわち、ヘキサデカンと1-ヘキサデセンについては、分散安定性について水溶性添加剤のアニオンの影響を受けないと考えられる。一方、オレイン酸については、NaClの場合が最も分散安定性が高く、NaCl>NaOH>NaBrの順にエマルションの分散安定性が低くなっている。すなわち、オレイン酸の場合は水溶性添加剤のアニオンによる影響があると考えられる。
また、オレイン酸については、水溶性添加剤を添加することによりヘキサデカンと1-ヘキサデセンと比較してさらにエマルションの分散安定性が向上し、分散安定性について、添加剤のカチオンの価数は大きく影響しない一方、添加剤のアニオンの種類によって分散安定性に対する影響が異なるということができる。
次に、W/Oエマルションの分散を安定化する機構について考察する。炭化水素と脂肪酸について、水溶性添加物(電解質)を添加したときの分散安定性に対する作用効果は、上述したように、炭化水素と脂肪酸とで異なる。したがって、以下では、ヘキサデカン及び1-ヘキサデセン(炭化水素)と、オレイン酸(脂肪酸)とに分けて分散安定化機構を考察する。
図24は油剤としてヘキサデカンと1-ヘキサデセンを使用した場合の分散安定化機構を示す。ヘキサデカンと1-ヘキサデセンに電解質を添加することにより分散安定性が向上する作用は次のように説明することができる。
図24はエマルション中の水滴と油剤との界面近傍を拡大して示す。水滴中にはH+イオンとOH-イオンが存在する。
添加剤としてNaClを添加すると、カチオンはアニオンよりも水和力が強いことから、カチオン(Na+イオン)は水滴の内部側に、アニオン(Cl-イオン)は水滴と油剤との界面側に配向する。水滴の界面にCl-イオンとOH-イオンが偏在する結果、水滴は実効的にマイナスにチャージし、このマイナスチャージの静電的な作用により水滴が相互に反発し、水滴の分散性が向上すると考えられる。油剤であるヘキサデカンと1-ヘキサデセンは電気的に中性であり、水滴に対して電気的な作用は及ぼさない。
図25でこの作用を説明する。図25に示すように、NaClの添加濃度が低い場合には、水滴と油剤との界面にCl-イオンとOH-イオンが偏在し、水滴がマイナスにチャージする。しかしながら、NaClの添加濃度が高くなると、水滴中におけるNa+とCl-の密度が高まり、電荷が遮蔽されることにより、静電的な反発力による水滴の分散作用が弱められ、その結果、エマルションの分散安定性が低下すると考えられる。
図26はオレイン酸についての分散安定化機構を示す。油剤がオレイン酸の場合に、ヘキサデカンや1-ヘキサデセンとは異なり、W/Oエマルションの分散安定性がきわめて優れることと、電解質のアニオンによる作用が異なる理由として、オレイン酸イオンと水滴中のカチオンとの結合作用を考慮する。
オレイン酸イオンと水滴中のカチオンとの結合作用を考慮する際には、水滴の界面におけるアニオンの吸着性を考慮する必要がある。
表2にCl-イオン、OH-イオン、Br-イオンについて、それぞれのイオン半径や水和力等を示す。
Br-イオンは水滴表面での配向性が高いことから、水滴の界面強度が強く、オレイン酸イオンと水滴内のカチオンとは結合しにくくなる。一方、Cl-イオンとOH-イオンの場合は、水滴の界面強度はBr-イオンよりも弱いため、オレイン酸イオンと水滴内のカチオンとが結合することができると考えられる。水滴内のカチオンとオレイン酸イオンとが結合すると、水滴の表面と脂肪酸との親和性が向上しW/Oエマルションの分散安定性が向上する。
オレイン酸では水溶性添加剤(電解質)のアニオンがBr-イオンのときは、分散安定性が阻害されるという実験結果が得られた。この作用効果も上述した水滴内のカチオンとオレイン酸イオンとの結合性を考慮することによって説明することができる。
水中油滴型(O/W)エマルションは、分散媒の水の中に分散質として油滴が分散したエマルションである。水中油滴型エマルションの分散安定性を調べるため、水溶性添加剤として塩化ナトリウム、尿素、ホルムアミド、エタノール、グリセリンを加えたエマルションを調製し、エマルションの透過率の経時変化を測定する実験を行った。
エマルションのサンプルの調製は、水溶性添加剤として、塩化ナトリウム、尿素、ホルムアミド、エタノール、グリセリンを溶解した水溶液(25mL)にドデカン(C12H26)を100μL加え、バス型超音波装置を用いて超音波(28kHz、300W)を5分間照射する方法で行った。
図28は、添加剤を入れていない場合は、7日間経過した時点で漸く透過率が略100%に近づくのに対し、塩化ナトリウムを添加した場合は、0.05(mol/L)程度の低濃度でもエマルションを調製した後、1日経過する前に透過率が80〜90%近くまで上昇することを示す。すなわち、塩化ナトリウムは、分散安定性を著しく低下させるように作用している。
図30は、添加剤をグリセリンとしたときの透過率の経時変化を測定した結果を示す。グリセリンを添加した場合は、分散安定性が若干向上する結果が得られた。
図32は、添加剤をホルムアミドとしたときの透過率の経時変化を測定した結果を示す。ホルムアミドを添加した場合は、濃度を増加させていくと、分散安定性が添加剤を入れていない場合よりも低下する結果となった。
図33は、添加剤を尿素とホルムアミドとし、添加剤の濃度を変えたときの油滴の粒子径と分散安定性との関係を示す。図33(a)は、エマルションを調製した直後の透過率と、3日経過時の透過率の変化量(ΔT)を示す。図33(b)は、粒度分布測定装置を用いて測定した油滴の粒子径を示す。
図33(b)からは添加剤の濃度が増加しても粒子径については大きな変化は見られない。図33(a)では、ホルムアミドの場合、濃度が増大すると分散安定性が顕著に低下するが、粒子径との相関関係は見られない。
図35は、添加剤を尿素とホルムアミドとしたときの界面張力と分散安定性との関係を示す。図35(b)は、添加剤の濃度を変えて界面張力を測定した結果を示す。この界面張力についての測定結果は、濃度を変えても界面張力は大きく変わらないことを示している。分散安定性を示すグラフ(図35(a))との相関関係も見られないことから、界面張力と分散安定性との間に相関関係があるとは言えないと考えられる。
図37は、添加剤を尿素とホルムアミドとしたときの、油滴の粘度と分散安定性との関係を示す。図37(b)に示すように、油滴の粘度は尿素の濃度を増加させると粘度が増大する傾向が見られるのに対して、ホルムアミドの場合はほとんど粘度は変動しない。
尿素の場合は濃度を増加させると粘度が増大するから、分散安定性が向上すると考えられるが、図37(a)に示すように、尿素の濃度を増大させても分散安定性はほとんど変化しない。また、ホルムアミドは、濃度を変えたときに粘度はほとんど変動しないにもかかわらず、分散安定性は濃度を増大させると向上する傾向が見られる。
この測定結果から、尿素とホルムアミドについては、油滴の粘度(硬度)と分散安定性との間には相関関係はないと考えられる。
図38は、添加剤を尿素とホルムアミドとしたときの、油滴のゼータ電位と分散安定性との関係を示す。図38(b)は、添加剤の濃度を変えたときの油滴のゼータ電位を測定した結果を示すグラフであり、尿素については濃度を増大させることによりゼータ電位が大きく増大し(マイナス電位)、ホルムアミドについてはゼータ電位が大きく変化しないことを示す。
このゼータ電位についての測定結果は、尿素とホルムアミドとを比較したときに、尿素では、油滴間の静電反発力が増大してエマルションの分散安定性が向上し、ホルムアミドでは分散安定性の向上に寄与しない理由を示すものと考えられる。
添加剤としてエタノール、グリセリン、尿素を使用することによりエマルションの分散安定化を向上させることができる。
エマルションの分散安定性に寄与する物性値として、油滴の粒子径、界面張力、粘度、ゼータ電位のうち、エタノールについては界面張力の低下が分散安定性に寄与し、尿素については、粘度の増大とゼータ電位の増大が分散安定化の向上に寄与し、塩化ナトリウムについては粒子径の増大が分散安定性を低下させることと相関関係があることと考えられる。
これら以外の相関関係についても測定を行ったが、前記物性値と分散安定性との間に明確な相関関係を見出すことができなかった。
Claims (4)
- 分散質が水、分散媒が油である油中水滴型(W/O)エマルションであって、
前記分散質及び分散媒と、エマルションを分散安定化させる水溶性添加剤である電解質のみからなることを特徴とするエマルション。 - 前記分散媒が炭化水素あるいは脂肪酸であることを特徴とする請求項1記載のエマルション。
- 前記電解質が、NaClまたはMgCl 2 であることを特徴とする請求項1または2記載のエマルション。
- 前記電解質の濃度が、0.05〜1.00(mol/L)の範囲にあることを特徴とする請求項3記載のエマルション。
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