JP6547608B2 - 水素脆性評価装置および水素脆性評価方法 - Google Patents

水素脆性評価装置および水素脆性評価方法 Download PDF

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本発明は、水素脆性評価装置および水素脆性評価方法に関する。
高強度鋼、ニッケル合金またはチタン合金等の金属材料では、環境から侵入した水素により破壊が生じることが知られている(水素脆化)。このときの破壊形態は、結晶粒界での破壊となる場合が多い。また、介在物などの第2相と母相との境界(異相界面)が破壊起点になる場合も報告されている。したがって、耐水素脆化性を向上させるには、結晶粒界または異相界面の剥離強度に及ぼす水素の影響を評価する技術が必要とされている。なお、以下の説明において、結晶粒界(双晶界面、ランダム粒界等も含む。)および異相界面等の金属組織内に現れる境界面を総称して、「ミクロ組織界面」ということがある。
例えば、特許文献1には、粒界を含む柱状の支持梁部を備えた測定用試験片に荷重を加えて曲げ試験を行い、測定用試験片が破壊された時の荷重から破壊特性を算出する結晶粒界破壊特性の測定方法が開示されている。
特開2014−174036号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、主にセラミックス試料を対象としたものであり、水素脆化性の評価については一切検討がなされていない。
また、剥離原因を明確化する上で、曲げ回転軸(曲げの中心となる軸)に垂直な面の塑性変形状態および歪み状態を知ることは重要である。しかし、特許文献1に記載の方法を採用した場合、支持梁部は、試験片の内側に向かって曲げられる。そのため、配置的に電子線後方散乱回折(EBSD)または原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、曲げ回転軸に垂直な面の塑性変形状態および歪み状態を知ることはできない。
本発明は、上記の問題を解決し、ミクロ組織界面の剥離強度に及ぼす水素の影響を評価することが可能な水素脆性評価装置および水素脆性評価方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、下記の水素脆性評価装置および水素脆性評価方法を要旨とする。
(1)固定端から自由端に向かって一方向に延びる微小片持ち梁が形成された試験片の水素脆化特性を評価する装置であって、
前記試験片は、前記微小片持ち梁の前記固定端と前記自由端との間を通るミクロ組織界面を1つのみ有し、
前記ミクロ組織界面が前記一方向に略垂直であり、
前記微小片持ち梁は、前記試験片の表面に形成された第1面と、前記第1面に略垂直で、かつ、前記一方向に略平行な第2面とを有し、
前記微小片持ち梁を電解液に浸漬する電解液槽と、
前記電解液に浸漬される対極と、
前記試験片と前記対極との間に電位差を生じさせる外部電源と、
前記第2面の前記ミクロ組織界面より自由端側に、前記第2面と略垂直な方向に荷重を負荷する圧子と、
前記圧子の変位および荷重を測定する測定部と、
を備える、水素脆性評価装置。
(2)前記試験片が、前記微小片持ち梁の長さ方向中心点より固定端側に前記ミクロ組織界面を有する、上記(1)に記載の水素脆性評価装置。
(3)前記第2面と前記ミクロ組織界面との交線に沿って、前記交線の一端から他端まで延びるように切欠きが形成されている、上記(1)または(2)に記載の水素脆性評価装置。
(4)前記試験片に前記微小片持ち梁が複数形成され、
各微小片持ち梁を通る前記ミクロ組織界面が同一である、上記(1)から(3)までのいずれかに記載の水素脆性評価装置。
(5)前記電解液槽が、底部に貫通孔を有し、前記貫通孔の裏面を囲繞するシール材を介して、前記試験片の前記表面の上に載せられ、前記微小片持ち梁を電解液に浸漬する、上記(1)から(4)までのいずれかに記載の水素脆性評価装置。
(6)前記試験片の温度を調整する温度調整部をさらに備える、上記(1)から(5)までのいずれかに記載の水素脆性評価装置。
(7)試験片の水素脆化特性を評価する方法であって、
(a)固定端から自由端に向かって一方向に延び、前記試験片の表面に形成された第1面と、前記第1面に略垂直で、かつ、前記一方向に略平行な第2面とを有する微小片持ち梁を、前記試験片が有するミクロ組織界面が前記固定端と前記自由端との間を1つのみ通り、かつ、前記ミクロ組織界面が前記一方向に略垂直となるように形成する工程と、
(b)前記微小片持ち梁を電解液に浸漬する工程と、
(c)前記試験片と、前記電解液に浸漬される対極との間に電位差を生じさせて、前記微小片持ち梁に電気化学的に水素を導入する工程と、
(d)圧子を用いて、前記第2面の前記ミクロ組織界面より自由端側に、前記第2面と略垂直な方向に荷重を負荷する工程と、
(e)前記圧子の変位および荷重を測定する工程と、
を備える、水素脆性評価方法。
(8)前記(a)の工程において、前記第2面と前記ミクロ組織界面との交線に沿って、前記交線の一端から他端まで延びるように切欠きを形成する、上記(7)に記載の水素脆性評価方法。
(9)前記(a)の工程において、前記固定端と前記自由端との間に前記ミクロ組織界面を1つのみ有する複数の微小片持ち梁を、各微小片持ち梁を通る前記ミクロ組織界面が同一となるように形成する、上記(7)または(8)に記載の水素脆性評価方法。
(10)前記複数の微小片持ち梁のうちの一の微小片持ち梁について、前記(a)〜(e)の工程を経て測定された変位および荷重と、
前記複数の微小片持ち梁のうちの他の微小片持ち梁について、前記(a)、(d)および(e)の工程によって測定された変位および荷重とを比較して、
試験片の水素脆化特性を評価する、上記(9)に記載の水素脆性評価方法。
(11)前記複数の微小片持ち梁のうちの一の微小片持ち梁について、前記(a)〜(e)の工程によって測定された変位および荷重と、
前記複数の微小片持ち梁のうちの他の微小片持ち梁について、前記(a)、(b)、(d)および(e)の工程によって測定された変位および荷重とを比較して、
試験片の水素脆化特性を評価する、上記(9)または(10)に記載の水素脆性評価方法。
本発明によれば、結晶粒界または異相界面等の境界面における剥離強度に及ぼす水素の影響を評価することができ、かつ、曲げ回転軸と垂直な面の塑性変形状態および歪み状態等を測定することが可能となる。
本発明の一実施形態に係る水素脆性評価装置の一例を模式的に示した図である。 本発明の一実施形態に係る微小片持ち梁の形状および荷重の負荷方向を模式的に示した図である。 比較例における微小片持ち梁の形状および荷重の負荷方向を模式的に示した図である。 比較例における切欠きの形成方法を模式的に説明するための図である。 ビーム軸方向および切欠きの延びる方向のなす角度と切欠き底における硬さとの関係を示した図である。 本発明の一実施形態における切欠きの形成方法を模式的に説明するための図である。 切欠きの形状の一例を模式的に示した図である。 圧子の形状の一例を模式的に示した図である。 実施例において、試験片の表面に加工した微小片持ち梁の寸法を示した図である。 AFMで観察されるすべり線を模式的に示した図である。
添付した図面を参照して、本発明の一実施形態に係る水素脆性評価装置およびそれを用いた評価方法について、詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る水素脆性評価装置100の一例を模式的に示した図である。また、図2に微小片持ち梁10の形状を模式的に示す。本発明の一実施形態に係る水素脆性評価装置100は、固定端10aから自由端10bに向かって一方向(図2中におけるY方向)に延びる微小片持ち梁10が形成された試験片1の水素脆化特性を評価する装置である。微小片持ち梁10は試験片1の表面1aに形成された第1面10cと、第1面10cに略垂直で、かつ、Y方向に略平行な第2面10dとを有する。試験片1の材質については特に制限は設けず、例えば、鋼材、合金材等を用いることができる。
図1に示すように、水素脆性評価装置100は、電解液槽2と対極3と外部電源4と圧子5と測定部6とを備える。すなわち、本発明の一実施形態に係る評価方法では、上述の第1面10cおよび第2面10dを有する微小片持ち梁10を形成した後(工程a)、微小片持ち梁10を電解液槽2内の電解液20に浸漬し(工程b)、外部電源4を用いて試験片1と対極3との間に電位差を生じさせて、微小片持ち梁10に電気化学的に水素を導入した状態において(工程c)、第2面10dに対して、圧子5で第2面10dと略垂直な方向に荷重を負荷し(工程d)、圧子5の変位および荷重を測定部6によって測定する(工程e)ことによって、試験片の水素脆化特性を評価することが可能である。各構成要素について以下に詳しく説明する。
図2に示すように、微小片持ち梁10は、試験片1が有するミクロ組織界面1bが、固定端10aと自由端10bとの間を1つのみ通り、かつ、ミクロ組織界面1bがY方向に略垂直となるように形成されている。試験片1が有するミクロ組織界面1bは、微小片持ち梁10の長さ方向中心点より固定端10a側に存在することが好ましく、固定端部に存在することがより好ましい。
ここで、本発明における「ミクロ組織界面」とは、鋼材または合金材等の金属組織内に現れる不連続面を意味し、例えば、結晶粒界(双晶界面、ランダム界面等を含む。)、異相界面等が含まれる。
微小片持ち梁10を形成する方法について特に制限はないが、例えば、レーザー加工、集束イオンビーム(FIB)加工を用いることができる。また、微小片持ち梁10の断面形状についても、第1面10cおよび第2面10dが形成される形状であれば特に制限は設けない。上記の方法を用いて形成する場合、図2に示すような直角三角形にすると、加工時間を短縮できるため好ましい。
さらに、微小片持ち梁10の寸法についても制限は設けない。上述のように、微小片持ち梁10の固定端10aと自由端10bとの間を通るミクロ組織界面1bが1つのみとなる必要があるため、試験片1の結晶粒径または介在物等の第2相の大きさに応じた寸法とすることが好ましい。
曲げ試験の際にミクロ組織界面1bでの剥離が生じやすくなるように、第2面10dとミクロ組織界面1bとの交線に沿って、交線の一端から他端まで延びるように切欠き10eが形成されていてもよい。本発明に係る構成では、試験片1の表面1aに略垂直な第2面10dに切欠き10eを形成するため、切欠き底に損傷を与えることを防止できるだけでなく、切欠きの形状を精確な寸法で付与することが可能になる。これらの効果について、以下に詳しく説明する。
図3に示すように、本発明に係る構成とは異なり、試験片1の表面1aに形成された第1面10cに対して、圧子5で第1面10cと略垂直な方向に荷重を負荷する場合を考える。この構成では、図4に模式図を示すように、ミクロ組織界面1bでの剥離が生じやすくなるように、第1面10cとミクロ組織界面1bとの交線に沿って、例えば、FIB加工を用いて、切欠き10eを形成することとなる。
そのため、FIBのビーム軸の方向(図4におけるZ方向)と切欠き10eの延びる方向(図4におけるX方向)とは、ほぼ垂直となる。その結果、切欠き底にはイオンビームが照射されたことにより、転位等の格子欠陥が導入され、試験精度が低下するという問題が生じる。ビーム軸方向および切欠き10eの延びる方向のなす角度と、切欠き底に付与される転位の影響との関係をより詳細に説明する。
図5は、ビーム軸方向および切欠きの延びる方向のなす角度を0°、45°および90°として切欠きを形成した時の、切欠き底における微小硬さ試験を行った結果を示した図である。なお、切欠きの形成はFIB加工を用い、上記のいずれの角度においても20μm四方の領域内を約100nm掘り下げるようにビーム照射を行った。また、微小硬さ試験はナノインデンテーション装置を用いて行い、圧子の押込み深さが30nmのときの硬さを測定した。
図5から分かるように、電解研磨を行った試料表面の硬さと比較して、ビーム軸方向および切欠きの延びる方向のなす角度が大きくなるほど硬さが増す傾向がある。このことは、切欠き底にはイオンビームが照射されたことにより、転位等の格子欠陥が導入されることを示している。これに対して、本発明に係る構成では、図6に模式図を示すように、FIBのビーム軸の方向と切欠き10eの延びる方向とが平行(図6におけるZ方向)になるため、切欠き底の損傷は最低限に抑えることが可能となる。
また、イオンビームの照射時間、加速電圧、電流等を変更することによって、切欠きの深さを調整することとなるが、試験片の強度は均一でない場合が多く、ミクロ組織界面を挟んで両側で強度が異なる場合もあるため、意図した寸法の切欠きを形成することは困難である。また切欠き形状についても、図4に示すような矩形に限定されてしまう。
図7に示すように、矩形には角部が存在するため、曲げ試験の際に、角部に応力が集中してしまうという問題がある。本発明に係る構成を採用すれば、ミクロ組織界面1bの位置に一点だけ応力の集中部を持つU字形状またはV字形状とすることができるようになるだけでなく、寸法精度も大幅に向上する。
電解液槽2は、微小片持ち梁10を電解液20に浸漬し、微小片持ち梁10に電気化学的に水素を導入するためのものである。電解液槽2の構造について特に制限はないが、図1に示すように、底部に貫通孔2aを有し、貫通孔2aの裏面を囲繞するシール材2bを介して、試験片1の表面1aの上に載せられ、微小片持ち梁10を電解液20に浸漬する構成とすることができる。
対極3は、電解液20に浸漬されている。そして、外部電源4を用いて試験片1と対極3との間に電位差を生じさせ、試験片1を対極3に対して負電位にすることによって、微小片持ち梁10に電気化学的に水素を導入する。対極3の材質について特に制限はないが、例えば白金を用いることができる。
図1に示すように、必要に応じて、参照極7を対極3とともに電解液20に浸漬させてもよい。対極3のみでは電流制御でしか微小片持ち梁10に水素を導入できないが、参照極7を用いることによって、電位制御でも水素を導入することが可能となる。
試験片1、対極3および参照極7はそれぞれ導線40を介して外部電源4に接続されている。水素の導入を電位制御で行う場合には、外部電源4にポテンショスタットを用いる。一方、水素の導入を電流制御で行う場合には、外部電源4にガルバノスタットを用い、参照極7は省略する。
そして、圧子5を用いて微小片持ち梁10に荷重を負荷することによって、曲げ試験を実施する。ミクロ組織界面1bにおける剥離強度を評価することを目的としているため、微小片持ち梁10のミクロ組織界面1bより自由端10b側に荷重を負荷する必要がある。また、本発明に係る構成では、第2面10dに対して、第2面10dと略垂直な方向(図2におけるX方向)に荷重を負荷する。そのため、試験片1の表面1aに形成された第1面10cが、曲げ回転軸の方向(図2におけるZ方向)と略垂直な面となる。これにより、曲げ回転軸に垂直な面の塑性変形状態および歪み状態を容易に調査することが可能になる。塑性変形状態および歪み状態の調査方法については特に制限はなく、例えば、EBSDまたはAFMを用いた測定を行うことができる。
圧子5の先端形状について特に制限はないが、例えば、図8に示すように先端が円柱状の圧子(a)、開き角が60°以下の円錐形状の圧子(b)、または稜線の1つがZ方向と略平行な三角錐形状の圧子(c)を用いることができる。また、圧子5の材質についても特に制限はなく、例えば、ダイヤモンド製またはセラミックス製の圧子を用いることができる。
曲げ試験の際の圧子5の変位および荷重は、測定部6によって測定される。ミクロ組織界面1bが剥離すると記録された荷重−変位関係に不連続変化が生じる。この不連続変化が発生した荷重から、水素環境中のミクロ組織界面1bの剥離強度を評価する。
なお、本発明の一実施形態に係る装置は、試験片1の温度を調整する図示しない温度調整部をさらに備えていてもよい。温度調整部を備えることによって、全ての実験において温度を同一として、実験条件を揃えたり、または、温度を変えて種々の実験を繰り返すことによって、ミクロ組織界面1bの剥離強度に及ぼす温度の影響を評価したりすることが可能となる。
試験片1の表面1aには、微小片持ち梁10が複数形成されていてもよい。複数の微小片持ち梁10について上記の曲げ試験を実施することによって、例えば、同一の実験を複数回実施した場合における結果のばらつきを調査して分析精度の検証を行ったり、または、異なる環境下での試験結果を比較することで、水素の影響をより詳細に評価したりすることが可能となる。ただし、複数の微小片持ち梁10を形成する場合には、実験条件を統一するため、各微小片持ち梁10を通るミクロ組織界面1bが同一の境界面となるようにする必要がある。
例えば、上記のように複数の微小片持ち梁を形成した場合においては、そのうちの1つの微小片持ち梁については、電解液に浸漬し水素を導入した状態(上記の工程a〜eを経た状態)で曲げ試験を実施し、他の微小片持ち梁については、大気中(上記の工程a、dおよびeを経た状態)または電解液に浸漬するだけで水素を導入しない状態(上記の工程a、b、dおよびeを経た状態)で曲げ試験を実施し、それぞれの試験で測定された変位および荷重を比較することによって試験片の水素脆化特性をより詳細に評価することが可能となる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1の化学組成を有するJIS SCM435鋼の旧オーステナイト(γ)粒界およびNi−Cr合金の双晶界面について、剥離強度に及ぼす水素の影響を評価した。SCM435鋼は旧γ粒径が40μmで引張強度が1488MPaのものを、そして、Ni−Cr合金は粒径が50μmで引張強度が600MPaのものを用いた。
Figure 0006547608
電子線後方散乱回折およびFIB装置を用いて、試験片の表面と垂直に交差する旧γ粒界・双晶界面を探した。そして、それぞれの試験片について、FIB装置を用いて、同一の旧γ粒界・双晶界面のみが含まれるように複数の微小片持ち梁を加工した。加工した微小片持ち梁の寸法を図9に示す。微小片持ち梁の自由端から固定端までの長さは20μmとし、微小片持ち梁の断面形状は、第1面および第2面の幅が4μmとなる直角二等辺三角形とした。また、旧γ粒界・双晶界面と微小片持ち梁の固定端との距離は2μmとし、第2面と旧γ粒界・双晶界面との交線上にV字形状の切欠き(開き角60°、切欠き深さ1.5μm、切欠き底半径0.5μm)を付与した。
試験片への水素の導入は電解液に白金の対極を浸漬することで行った。電解液にはホウ酸緩衝液(pH:8.6)を用い、電流密度は5.1A/mとし、電流制御で水素を導入した。また、圧子には、直径5μmの円柱形のダイヤモンド圧子を用いた。微小片持ち梁の先端から3μmの位置に、変位制御で最大変位2μmまで圧子を変位させ、荷重と圧子変位の関係を測定した。曲げ試験はそれぞれの試験片において、大気雰囲気および水素雰囲気で実施した。
表2に曲げ試験によるき裂発生の有無を示す。SCM435鋼では、大気雰囲気で曲げを付与した場合には、最大変位までき裂の発生は認められず、水素雰囲気で曲げを付与した場合には、弾性領域で旧γ粒界にき裂が発生した。一方、Ni−Cr合金では、大気雰囲気および水素雰囲気の双方において最大変位までき裂の発生は認められなかった。このように、SCM435鋼の旧γ粒界は、水素により剥離強度が低下することが判明した。また、Ni−Cr合金の双晶界面は、水素雰囲気でも十分に高い剥離強度を有することが判明した。
Figure 0006547608
さらに、曲げ試験後の微小片持ち梁に対し、曲げの回転軸と垂直な面をAFMとEBSDで測定を試みた。その結果、測定面が試験片表面と平行であるため、AFM像、EBSD像ともに容易に得られた。この結果、例えば、水素環境中で曲げたNi−Cr合金の微小片持ち梁では、図10に模式図を示すように、取得されたAFM像より、双晶界面を挟んだ両側の結晶粒内にすべり線が形成されることが分かった。また、取得されたEBSD像より、双晶界面付近の結晶粒内で特に大きく塑性変形していることが分かった。
本発明によれば、結晶粒界または異相界面等の境界面における剥離強度に及ぼす水素の影響を評価することができ、かつ、曲げ回転軸と垂直な面の塑性変形状態および歪み状態等を測定することが可能となる。

Claims (11)

  1. 固定端から自由端に向かって一方向に延びる微小片持ち梁が形成された試験片の水素脆化特性を評価する装置であって、
    前記試験片は、前記微小片持ち梁の前記固定端と前記自由端との間を通るミクロ組織界面を1つのみ有し、
    前記ミクロ組織界面が前記一方向に略垂直であり、
    前記微小片持ち梁は、前記試験片の表面に形成された第1面と、前記第1面に略垂直で、かつ、前記一方向に略平行な第2面とを有し、
    前記微小片持ち梁を電解液に浸漬する電解液槽と、
    前記電解液に浸漬される対極と、
    前記試験片と前記対極との間に電位差を生じさせる外部電源と、
    前記第2面の前記ミクロ組織界面より自由端側に、前記第2面と略垂直な方向に荷重を負荷する圧子と、
    前記圧子の変位および荷重を測定する測定部と、
    を備える、水素脆性評価装置。
  2. 前記試験片が、前記微小片持ち梁の長さ方向中心点より固定端側に前記ミクロ組織界面を有する、請求項1に記載の水素脆性評価装置。
  3. 前記第2面と前記ミクロ組織界面との交線に沿って、前記交線の一端から他端まで延びるように切欠きが形成されている、請求項1または請求項2に記載の水素脆性評価装置。
  4. 前記試験片に前記微小片持ち梁が複数形成され、
    各微小片持ち梁を通る前記ミクロ組織界面が同一である、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の水素脆性評価装置。
  5. 前記電解液槽が、底部に貫通孔を有し、前記貫通孔の裏面を囲繞するシール材を介して、前記試験片の前記表面の上に載せられ、前記微小片持ち梁を電解液に浸漬する、請求項1から請求項4までのいずれかに記載の水素脆性評価装置。
  6. 前記試験片の温度を調整する温度調整部をさらに備える、請求項1から請求項5までのいずれかに記載の水素脆性評価装置。
  7. 試験片の水素脆化特性を評価する方法であって、
    (a)固定端から自由端に向かって一方向に延び、前記試験片の表面に形成された第1面と、前記第1面に略垂直で、かつ、前記一方向に略平行な第2面とを有する微小片持ち梁を、前記試験片が有するミクロ組織界面が前記固定端と前記自由端との間を1つのみ通り、かつ、前記ミクロ組織界面が前記一方向に略垂直となるように形成する工程と、
    (b)前記微小片持ち梁を電解液に浸漬する工程と、
    (c)前記試験片と、前記電解液に浸漬される対極との間に電位差を生じさせて、前記微小片持ち梁に電気化学的に水素を導入する工程と、
    (d)圧子を用いて、前記第2面の前記ミクロ組織界面より自由端側に、前記第2面と略垂直な方向に荷重を負荷する工程と、
    (e)前記圧子の変位および荷重を測定する工程と、
    を備える、水素脆性評価方法。
  8. 前記(a)の工程において、前記第2面と前記ミクロ組織界面との交線に沿って、前記交線の一端から他端まで延びるように切欠きを形成する、請求項7に記載の水素脆性評価方法。
  9. 前記(a)の工程において、前記固定端と前記自由端との間に前記ミクロ組織界面を1つのみ有する複数の微小片持ち梁を、各微小片持ち梁を通る前記ミクロ組織界面が同一となるように形成する、請求項7または請求項8に記載の水素脆性評価方法。
  10. 前記複数の微小片持ち梁のうちの一の微小片持ち梁について、前記(a)〜(e)の工程を経て測定された変位および荷重と、
    前記複数の微小片持ち梁のうちの他の微小片持ち梁について、前記(a)、(d)および(e)の工程を経て測定された変位および荷重とを比較して、
    試験片の水素脆化特性を評価する、請求項9に記載の水素脆性評価方法。
  11. 前記複数の微小片持ち梁のうちの一の微小片持ち梁について、前記(a)〜(e)の工程を経て測定された変位および荷重と、
    前記複数の微小片持ち梁のうちの他の微小片持ち梁について、前記(a)、(b)、(d)および(e)の工程を経て測定された変位および荷重とを比較して、
    試験片の水素脆化特性を評価する、請求項9に記載の水素脆性評価方法。
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