いくつかの実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
各実施形態では、サーバなどの電算機が配置されたデータセンターの空調に用いられる空気調和システムを開示する。しかしながら、各実施形態の空気調和システムの用途は電算機が配置された空間の空調に限定されず、種々の空間の空調に用いることができる。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る空気調和システム1の概略的な構成図である。この図においては、空気調和システム1による空調の対象空間Sに配置される要素を平面的に示している。対象空間Sには、多数の電算機100が配置されている。図1の例では、複数の電算機100が2列に亘って直線状に並んでいる。例えば、これら電算機100は、対象空間Sの床側から天井側に亘って複数段に分けられたラックの各段に載置されている。以下の説明においては、図1中の上側の電算機100の列を第1列L1と呼び、下側の列を第2列L2と呼ぶ。
空気調和システム1は、複数の室内ユニット2A〜2Fを備えている。図1の例では、第1列L1の両端にそれぞれ室内ユニット2A,2Bが配置され、第1列L1の中間に室内ユニット2Cが配置されている。同様に、第2列L2の両端にそれぞれ室内ユニット2D,2Eが配置され、第2列L2の中間に室内ユニット2Fが配置されている。以下の説明において、各室内ユニット2A〜2Fを特に区別しない場合には、単に室内ユニット2と呼ぶことがある。室内ユニット2の数や配置態様は図1の例に限られない。
対象空間Sにおいて、第1列L1と第2列L2の間の領域は、コールドアイルCAに相当する。また、対象空間Sにおいて、第1列L1よりも図中の上側の領域はホットアイルHA1に相当し、第2列L2よりも図中の下側の領域はホットアイルHA2に相当する。コールドアイル及びホットアイルは、それぞれコールドエリア及びホットエリアと呼ばれることもある。
各電算機100は、吸気面と、排気面と、冷却ファンとを有し、冷却ファンの回転により吸気面から吸気した空気を排気面から排気する。排気面から排気される空気は、電算機100の内部で発生した熱のために、吸気面から吸気される空気よりも高温となる。各列L1,L2の電算機100の吸気面は、いずれもコールドアイルCAに面している。第1列L1の電算機100の排気面はホットアイルHA1に面し、第2列L2の電算機100の排気面はホットアイルHA2に面している。
各室内ユニット2は吸込口(後述の8a,9a)と吹出口(後述の8b,9b)を有しており、吸込口から吸い込んだ空気を冷却して吹出口から吹き出す。室内ユニット2A,2B,2Cの吸込口はホットアイルHA1に面し、室内ユニット2D,2E,2Fの吸込口はホットアイルHA2に面している。室内ユニット2A〜2Eの吹出口は、いずれもコールドアイルCAに面している。
図1においては、各室内ユニット2A〜2E及び各電算機100を代表して、室内ユニット2C,2F及びこれら室内ユニット2C,2Fの両隣に配置された各電算機100に関する空気の流れを矢印で示している。実線の矢印が暖気の流れを示し、破線の矢印が冷気の流れを示す。この空気の流れから分かるように、図1の例では、各電算機100が排気する暖気によりホットアイルHA1,HA2が高温となり、各室内ユニット2A〜2Eが吹き出す冷気によりコールドアイルCAが低温となる。
空気調和システム1は、ホットアイルHA1,HA2及びコールドアイルCAに配置された複数の第1温度センサ3A〜3Iを備えている。図1の例では、コールドアイルCAに第1温度センサ3A,3B,3Cが配置され、ホットアイルHA1に第1温度センサ3D,3E,3Fが配置され、ホットアイルHA2に第1温度センサ3G,3H,3Iが配置されている。以下の説明において、第1温度センサ3A〜3Iを特に区別しない場合には、単に第1温度センサ3と呼ぶことがある。
第1温度センサ3A,3B,3Cは、コールドアイルCAの温度TCAを検知する。第1温度センサ3D,3E,3FはホットアイルHA1の温度THA1を検知し、第1温度センサ3G,3H,3IはホットアイルHA2の温度THA2を検知する。温度TCA,THA1,THA2は、第1温度の一例である。
電算機100の配列方向(図中の左右方向)において、第1温度センサ3A,3D,3Gは室内ユニット2A,2Cの間(室内ユニット2D,2Fの間)に位置し、第1温度センサ3B,3C,3E,3F,3H,3Iは室内ユニット2B,2Cの間(室内ユニット2E,2Fの間)に位置している。但し、第1温度センサ3の配置態様はこの例に限られない。空気調和システム1が備える第1温度センサ3の数は、より多数或いは少数であっても良い。
空気調和システム1は、第1コントローラ4をさらに備えている。第1コントローラ4は、空気調和システム1の全体を制御する中央制御装置として機能する。
空気調和システム1は、それぞれ独立した冷凍サイクルを有する複数の空気調和装置ACを備えている。図2は、空気調和装置ACの構成例を示す図である。図示した空気調和装置ACは、上述の室内ユニット2と、2台の室外機5,6と、冷媒配管71,72とを備えている。さらに、室内ユニット2は、2台の室内機8,9を備えている。例えば、室内機9は対象空間Sの床面に載置され、室内機8は室内機9の上に載置されている。室外機5,6は、対象空間Sの外部、例えば建物の屋外に配置されている。
図示した例において、冷媒配管71,72は、室外機5と室内機8とを接続している。さらに、室外機5,6は冷媒配管71,72によって互いに接続され、室内機8,9は冷媒配管73,74によって互いに接続されている。
図1に示した室内ユニット2A〜2Fは、いずれも以上のような空気調和装置ACの一部である。すなわち、本実施形態における空気調和システム1は、室内ユニット2A〜2Fをそれぞれ含む6つの空気調和装置ACを備えている。
図3は、空気調和装置ACの冷凍サイクルに適用し得る概略的な配管系統を示す図である。室外機5は、室外熱交換器51と、圧縮機52と、アキュームレータ53とを備えている。室外機6は、室外熱交換器61と、圧縮機62と、アキュームレータ63とを備えている。
室外機5において、圧縮機52の冷媒入口がアキュームレータ53の冷媒出口に接続され、圧縮機52の冷媒出口が室外熱交換器51の冷媒入口に接続されている。さらに、室外熱交換器51の冷媒出口が冷媒配管71に接続され、アキュームレータ53の冷媒入口が冷媒配管72に接続されている。室外機6における室外熱交換器61、圧縮機62、及びアキュームレータ63の接続態様も室外機5と同様である。このように、図3の例では、室外熱交換器51、圧縮機52、及びアキュームレータ53と、室外熱交換器61、圧縮機62、及びアキュームレータ63とが、冷媒配管71,72によって、互いに並列に接続されている。
室外機5は、室外熱交換器51に送風する室外ファン54と、圧縮機52を制御するインバータ55とをさらに備えている。室外機6は、室外熱交換器61に送風する室外ファン64と、圧縮機62を制御するインバータ65とをさらに備えている。
圧縮機52,62は、それぞれアキュームレータ53,63を経た冷媒を吸い込み、吸い込んだ冷媒を圧縮して冷媒出口から吐出する。圧縮機52,62は、それぞれインバータ55,65の出力により動作する。インバータ55,65は、電源からの交流電圧を直流電圧に変換し、その直流電圧を所定の周波数及び振幅の交流電圧に変換し出力する。インバータ55,65の出力を調整することで、圧縮機52,62の容量を、最小容量から最大容量までの間で可変的に制御することができる。例えば、圧縮機52,62の最小容量は同じであり、圧縮機52,62の最大容量は同じである。
室内機8は、室内熱交換器81と、膨張弁82とを備えている。室内機9は、室内熱交換器91と、膨張弁92とを備えている。膨張弁82,92は、開度を調整可能な電磁弁であり、絞り装置の一例である。
膨張弁82の冷媒入口が冷媒配管73に接続され、膨張弁82の冷媒出口が室内熱交換器81の冷媒入口に接続されている。室内熱交換器81の冷媒出口は、冷媒配管72に接続されている。室内機9における室内熱交換器91及び膨張弁92の接続態様も室内機8と同様である。このように、図3の例では、室内熱交換器81及び膨張弁82と、室内熱交換器91及び膨張弁92とが、室内機8,9内の冷媒配管73,74によって、互いに並列に接続されている。
室内機8は、室内熱交換器81に送風する室内ファン83を備えている。この室内ファン83の回転により、室内機8の吸込口8aから吹出口8bに向けた空気の流れが生成される。同様に、室内機9は、室内熱交換器91に送風する室内ファン93を備えている。この室内ファン93の回転により、室内機9の吸込口9aから吹出口9bに向けた空気の流れが生成される。
室内機8は、第2温度センサ84と、第3温度センサ85とをさらに備えている。第2温度センサ84は、吸込口8aから取り込まれる空気の温度である吸込温度TINを検知する。第3温度センサ85は、吹出口8bから排出される空気の温度である吹出温度TOUTを検知する。
室内機9は、第2温度センサ94と、第3温度センサ95とをさらに備えている。第2温度センサ94は、吸込口9aから取り込まれる空気の温度である吸込温度TINを検知する。第3温度センサ95は、吹出口9bから排出される空気の温度である吹出温度TOUTを検知する。
第2温度センサ84,94により検知される吸込温度TINは第2温度の一例であり、第3温度センサ85,95により検知される吹出温度TOUTは第3温度の一例である。
空気調和装置ACは、第2コントローラ10をさらに備えている。第2コントローラ10は、室外機5,6及び室内機8,9の各要素、例えば室外ファン54,64、インバータ55,65、膨張弁82,92、及び室内ファン83,93などを制御する。また、第2コントローラ10は、第1コントローラ4と通信接続されており、第1コントローラ4から空気調和装置ACの制御のための各種コマンドを受信する。
以上のような構成の空気調和装置ACは、対象空間Sを冷房する冷房運転を実行可能である。なお、空気調和装置ACは、対象空間Sを除湿する除湿運転や対象空間Sを暖房する暖房運転をさらに実行可能であっても良い。また、空気調和装置ACは、対象空間Sを加湿する加湿器をさらに備えても良い。
図3においては、冷房運転時の冷媒の流れ方向を、実線矢印にて示している。圧縮機52,62から吐出された冷媒は、それぞれ室外熱交換器51,61を経て合流し、冷媒配管71に流入する。冷媒配管71を流れる冷媒の一部が冷媒配管73を介して膨張弁82および室内熱交換器81に流入し、他の一部が膨張弁92および室内熱交換器91に流入する。室内熱交換器81,91を経た冷媒は合流し、冷媒配管74を介して冷媒配管72に流入する。冷媒配管72を流れる冷媒の一部はアキュームレータ53を経て圧縮機52に戻り、他の一部はアキュームレータ63を経て圧縮機52に戻る。
このような冷房運転においては、室外熱交換器51,61が凝縮器として機能し、室内熱交換器81,91が蒸発器として機能する。室内熱交換器81を流れる冷媒の量は、膨張弁82の開度を大きくすることで増加し、小さくすることで減少する。室内熱交換器91を流れる冷媒の量も、膨張弁92の開度を変化させることにより調整できる。また、当該冷凍サイクルを流れる冷媒の量は、圧縮機52,62の容量を高めることで増加し、これら容量を小さくすることで減少する。
対象空間Sにおいては、電算機100の配置態様や稼働状況に応じて、局所的に熱負荷が大きい領域や小さい領域が存在し得る。これにより、対象空間Sの温度分布にバラつきが生じる。一方で、この温度分布のバラつきを解消すべく、熱負荷が大きい領域の近傍に配置された室内ユニット2を含む空気調和装置ACの冷房能力を高めた場合には、空気調和システム1に含まれる各空気調和装置ACの運転時間が偏ってしまう。
そこで、本実施形態に係る空気調和システム1は、停止している空気調和装置ACのうち、予め設定された温度範囲を外れる第1温度を検知した第1温度センサ3の近くに室内ユニット2(室内機8,9)が配置された空気調和装置ACの圧縮機52,62を、最大容量未満の初期容量で起動する。起動した空気調和装置ACは、第1温度センサ3、第2温度センサ84,94、及び第3温度センサ85,95が検知する温度に基づいて、圧縮機52,62の容量、膨張弁82,92の開度、及び室内ファン83,93の回転数などを制御する。
一方で、空気調和システム1は、各第1温度センサ3が検知した第1温度がいずれも上記温度範囲内にある場合、各空気調和装置ACの累積運転時間に基づいて、空調に使用する空気調和装置ACを決定する。
以下、このような冷房運転の制御方法の一例を説明する。但し、図1乃至図3に示した構成の空気調和装置ACを用いた冷房運転は以下の例に限られず、種々の制御方法により実現できる。
図4は、第1コントローラ4が実行する処理のフローチャートである。先ず。第1コントローラ4は、第1温度センサ3A〜3Iにより第1温度(TCA、THA1、THA2)を検知する(ステップS101)。
続いて、第1コントローラ4は、検知した第1温度において、予め設定された温度範囲を外れるものが存在するかを判定する(ステップS102)。ここで、この温度範囲は、例えばコールドアイルCA及びホットアイルHA1,HA2の温度として許容可能な範囲を示す。冷房運転を想定した本実施形態において、この温度範囲は、コールドアイルCAの上限値TCMAXとホットアイルHA1,HA2の上限値THMAX(>TCMAX)によって定めることができる。
コールドアイルCAにおいて上限値TCMAX以上となる温度TCAが存在せず、且つホットアイルHA1,HA2において上限値THMAX以上となる温度THA1,THA2が存在しない場合、第1コントローラ4は、上記温度範囲を外れる第1温度が存在しないと判定する(ステップS102のNO)。この場合、第1コントローラ4は、空調に必要な空気調和装置ACの運転台数を決定する(ステップS103)。例えば、この運転台数は、温度センサ3A〜3Iが検知した第1温度により求められる対象空間Sの熱負荷が大きいほど多く、小さいほど少なく定めることができる。
運転台数を決定した後、第1コントローラ4は、各空気調和装置ACの累積運転時間に基づき、運転対象の空気調和装置ACを決定する(ステップS104)。累積運転時間は、例えば空気調和システム1が設置された後に空気調和装置ACが冷房運転を実施した合計時間である。累積運転時間は、第1コントローラ4がカウントしても良いし、各空気調和装置ACの第2コントローラ10がカウントして適宜のタイミングで第1コントローラ4が受信しても良い。第1コントローラ4は、例えば累積運転時間が短い順に、ステップS103で決定した運転台数の空気調和装置ACを、運転対象に決定する。
その後、第1コントローラ4は、ステップS104で決定した運転対象の空気調和装置ACのうち現時点で起動していないものを起動するとともに、現時点で起動しているが運転対象から外れている空気調和装置ACを停止する(ステップS105)。
なお、対象空間Sの温度分布のバラつきを抑えるために、できるだけ多くの空気調和装置ACを運転して、ホットアイルHA1,HA2とコールドアイルCAとの間で空気を循環させると有利である。この観点から、ステップS103においては、空気調和装置ACを極力小さい初期容量で運転することを前提に、温度分布に応じた熱負荷に見合った空気調和装置ACの運転台数を決定すると好ましい。初期容量は、圧縮機52,62の最大容量未満の値であり、例えば圧縮機52,62の最小容量とすることができる。この場合、ステップS105において起動した空気調和装置ACは、圧縮機52,62を最小容量にて運転する。
ステップS105の後、第1コントローラ4は、既定時間(例えば5分)を待機する(ステップS106)。その後、第1コントローラ4の動作はステップS101に戻る。
ステップS102において、上限値TCMAX以上となる温度TCAが存在するか、或いは上限値THMAX以上となる温度THA1,THA2が存在する場合、第1コントローラ4は、上記温度範囲を外れる第1温度が存在すると判定する(ステップS102のYES)。この場合、ステップS103〜S105に代えてステップS107,S108が実行される。
すなわち、第1コントローラ4は、ステップS101で検知した第1温度に基づき、新たに起動する空気調和装置ACを決定する(ステップS107)。例えば、第1コントローラ4は、停止している空気調和装置ACのうち、上記温度範囲を外れる第1温度を検知した第1温度センサ3の近くに室内ユニット2が配置された空気調和装置ACを新たに起動する空気調和装置ACに決定する。さらに、第1コントローラ4は、ステップS105と同じく、起動対象に決定した空気調和装置ACを上述の初期容量で起動する(ステップS108)。
ここで、図1を参照してステップS107,S108の具体例を挙げる。例えば第1温度センサ3Dが検知した温度THA1がホットアイルHA1の上限値THMAXを超えている場合において、仮に第1温度センサ3Dに最も近い室内ユニット2Aを含む空気調和装置ACが停止しているならば、当該空気調和装置ACが起動対象に決定される。一方で、室内ユニット2Aを含む空気調和装置ACが既に運転しており、且つ第1温度センサ3Dに次に近い室内ユニット2Cを含む空気調和装置ACが停止しているならば、当該空気調和装置ACが起動対象に決定される。
また、例えば第1温度センサ3Aが検知した温度TCAがコールドアイルCAの上限値TCMAXを超えている場合において、仮に第1温度センサ3Aに最も近い室内ユニット2Dを含む空気調和装置ACが停止しているならば、当該空気調和装置ACが起動対象に決定される。一方で、室内ユニット2Dを含む空気調和装置ACが既に運転しており、且つ第1温度センサ3Aに次に近い室内ユニット2Aを含む空気調和装置ACが停止しているならば、当該空気調和装置ACが起動対象に決定される。
以上の具体例においては、各第1温度センサ3に対して、起動すべき空気調和装置ACの優先順位を、室内ユニット2が各第1温度センサ3に近い順に予め定めている。但し、第1温度センサ3と室内ユニット2の距離以外の要素をさらに勘案して優先順位を定めても良い。
例えば、第1温度センサ3A〜3Cのいずれかが検知する温度TCAがコールドアイルCAの上限値TCMAXを超えている場合に、ホットアイルHA1,HA2の温度分布を考慮して起動する空気調和装置ACを決定しても良い。すなわち、ホットアイルHA1の温度が相対的に高いならば第1列L1に配置された室内ユニット2A〜2Bのいずれかを含む空気調和装置ACを起動対象とし、ホットアイルHA2の温度が相対的に高いならば第2列L2に配置された室内ユニット2D〜2Eのいずれかを含む空気調和装置ACを起動対象とする。
ここで述べた他にも、起動対象の空気調和装置ACの決定方法としては種々の方法を採用し得る。ステップS108の後、第1コントローラ4は、既定時間(例えば5分)を待機する(ステップS106)。その後、第1コントローラ4の動作はステップS101に戻る。
ステップS105,S108にて起動された空気調和装置ACは、初期容量で圧縮機52,62を駆動し、さらに室外ファン54,64を所定の回転数で回転させる。また、この空気調和装置ACは、室内ファン83,93を所定の回転数で回転させるとともに膨張弁82,92を所定の開度で開く。
このように運転を開始した空気調和装置ACの第2コントローラ10は、図5のフローチャートに沿って動作する。すなわち、先ず第2コントローラ10は、自機の最も近くに配置されたコールドアイルCAの第1温度センサ3により、温度TCAを検知する(ステップS201)。さらに、第2コントローラ10は、第2温度センサ84,94により吸込温度TINを検出するとともに(ステップS202)、第3温度センサ85,95により吹出温度TOUTを検出する(ステップS203)。
続いて、第2コントローラ10は、温度TCA,TOUTの平均温度TAVEを算出する(ステップS204)。ここでは例えば、第3温度センサ85,95がそれぞれ検知した吹出温度TOUTについて、温度TCAとの平均温度TAVEを算出する。平均温度TAVEは、例えば温度TCA,TOUTの単純平均である。但し、平均温度TAVEは、温度TCAを検知した第1温度センサ3と吹出口8bとの距離などに応じて温度TCA,TOUTを重み付けした加重平均であっても良い。
そして、第2コントローラ10は、温度TCA,TOUT,TIN,TAVEや対象空間Sの目標温度などに基づいて、室内ファン83,93、膨張弁82,92、及び圧縮機52,62などを制御する(ステップS205)。例えば、第2コントローラ10は、室内機8の吹出温度TOUTと平均温度TAVEとの温度差が一定となるように、室内ファン83の回転数を制御する。室内機9の室内ファン93についても同様の制御を適用できる。
また、第2コントローラ10は、温度TCAと目標温度との温度差に応じて圧縮機52,62の容量を制御する。例えば、第2コントローラ10は、この温度差が大きいほど圧縮機52,62の容量を上げて冷房能力を向上させ、小さいほど圧縮機52,62の容量を下げて冷房能力を低下させる。
ここで述べた例に限られず、空気調和装置ACの制御には、温度TCA,TOUT,TINや目標温度を用いた種々の既知の方法を適用できる。ステップS205の後、第2コントローラ10の動作はステップS201に戻る。
このような制御方法によれば、複数の空気調和装置ACをバランス良く運転することができる。すなわち、仮に空気調和装置ACが温度TCAを考慮せずに自機の温度TIN,TOUTや目標温度のみを考慮して圧縮機52,62の容量や室内ファン83,93の回転数を制御する場合、過剰に冷房能力を高めてしまう可能性がある。一方で、温度TCAは、自機の吹出温度TOUTだけでなく他機の吹出温度TOUTの影響も受けて変化する。したがって、温度TCAや平均温度TAVEをパラメータとして取り入れることで、同時に稼働する複数の空気調和装置ACの協調性が高まり、結果としてこれら空気調和装置ACの容量のバランスが良くなる。
以上の本実施形態においては、各第1温度センサ3A〜3Iが検知する第1温度において予め設定された温度範囲を外れるものが存在するならば、ステップS107,S108により当該第1温度を検知した第1温度センサ3の近くに室内ユニット2が配置された空気調和装置ACが初期容量で起動される。起動された空気調和装置ACは、図5の制御例のように自機の冷房能力を調整する。この結果、ステップS106で既定時間を待機する間に温度分布が十分改善したならば、ステップS103〜S105の通常制御が実行される。依然として温度分布が改善しないならば、ステップS107,S108により新たな空気調和装置ACが初期容量で起動される。
このような動作が繰り返されることで、極力多くの空気調和装置ACが小容量で運転されることになる。これにより、対象空間Sで良好に空気が循環し、温度分布のバラつきが抑制される。
また、温度分布が良好である間はステップ103〜S105により累積運転時間に応じて運転対象の空気調和装置ACが選定されるので、各空気調和装置ACの累積運転時間のバラつきも抑制できる。
また、空気調和装置ACは、第1コントローラ4により起動された後は自機の第2コントローラ10の制御の下で最適な動作を実現するため、空気調和システム1の中央計装を簡略化できる。
さらに、室内ユニット2が2台の室内機8,9を備え、各室内機8,9に膨張弁82,92と室内ファン83,93が設けてあるので、室外機5,6の出力を適宜に分散することができる。これにより、より多くの室内機を稼働させることになり、温度分布のバラつきが一層抑制される。
以上の他にも、本実施形態からは種々の好適な効果を得ることができる。
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。ここでは第1実施形態との相違点に着目し、第1実施形態と重複する説明は省略する。
図6は、第2実施形態に係る空気調和システム1の概略的な構成図であり、図1と同じく空調の対象空間Sに配置される要素を平面的に示している。この図の例では、電算機100が第1列L1、第2列L2、第3列L3、及び第4列L4の4列で配置されている。
第1列L1と第2列L2の間の領域がホットアイルHA1に相当し、第3列L3と第4列L4の間の領域がホットアイルHA2に相当する。また、第1列L1よりも図中の左側の領域がコールドアイルCA1に相当し、第2列L2と第3列L3の間の領域がコールドアイルCA2に相当し、第4列L4よりも右側の領域がコールドアイルCA3に相当する。
さらに、図中の下側の電算機100が配置されていない領域は、対象空間Sと壁を隔てて設けられる機械室であり、ホットアイルHA3に相当する。ホットアイルHA1,HA2及びコールドアイルCA1〜CA3は各列L1〜L4の延出方向と平行に延びているが、ホットアイルHA3はこの延出方向と垂直に交わる方向に延びている。
ホットアイルHA1〜HA3は、例えば隔壁によって他の領域とは区切られた領域である。ホットアイルHA3は、ホットアイルHA1,HA2とそれぞれダクト200を介して接続されている。ダクト200は、例えば対象空間Sの天井や床下を通すことができる。
第1列L1の電算機100の吸気面はコールドアイルCA1に面し、排気面はホットアイルHA1に面している。第2列L2の電算機100の吸気面はコールドアイルCA2に面し、排気面はホットアイルHA1に面している。第3列L3の電算機100の吸気面はコールドアイルCA2に面し、排気面はホットアイルHA2に面している。第4列L4の電算機100の吸気面はコールドアイルCA3に面し、排気面はホットアイルHA2に面している。ホットアイルHA1,HA2の空気は、ダクト200を介してホットアイルHA3に流れる。
ホットアイルHA3には、室内ユニット2A,2B,2Cが配置されている。すなわち、空気調和システム1は、これら室内ユニット2A,2B,2Cをそれぞれ含む3台の空気調和装置を備えている。これら空気調和装置の構成は、第1実施形態における空気調和装置ACと同様である。
室内ユニット2A,2B,2Cの吸込口はホットアイルHA3に位置し、吹出口はホットアイルHA3の壁に設けられた開口部を介して対象空間Sに面している。室内ユニット2Aが吹き出す空気は主にコールドアイルCA1に供給され、室内ユニット2Bが吹き出す空気は主にコールドアイルCA2に供給され、室内ユニット2Cが吹き出す空気は主にコールドアイルCA3に供給される。
さらに、コールドアイルCA1に第1温度センサ3Aが配置され、コールドアイルCA2に第1温度センサ3Bが配置され、コールドアイルCA3に第1温度センサ3Cが配置されている。
図6においては、各室内ユニット2A〜2C及び各電算機100の一部に関する空気の流れを矢印で示している。実線の矢印が暖気の流れを示し、破線の矢印が冷気の流れを示す。この空気の流れから分かるように、図6の例では、各電算機100が排気する暖気によりホットアイルHA1〜HA3が高温となり、各室内ユニット2A〜2Cが吹き出す冷気によりコールドアイルCA1〜CA3が低温となる。
以上のような構成の空気調和システム1においても、第1実施形態と同様の制御方法を適用できる。なお、図6の例ではホットアイルHA1〜HA3に第1温度センサ3が配置されていないが、ホットアイルHA1〜HA3に第1温度センサ3を配置しても良い。また、例えば各室内ユニット2A〜2Cの第2温度センサ84,94が検知する吸込温度TINをホットアイルHA1〜HA3の温度THA1、THA2、THA3として用いて、上述のステップS102の判定を行っても良い。
図6の構成においては、室内ユニット2A〜2Cが冷気を吹き出す方向がコールドアイルCA1〜CA3の延出方向と一致しているので、当該冷気がコールドアイルCA1〜CA3の端まで行き亘る。これにより、対象空間Sの温度分布のバラつきが一層抑制される。その他にも、本実施形態からは第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
以上の第1実施形態及び第2実施形態にて開示したコールドアイルCA、ホットアイルHA、第1温度センサ3、及び室内ユニット2の数や配置態様は一例に過ぎず、これらの数や設置位置は適宜に変更することができる。
また、各実施形態では室内ユニット2が2台の室内機を備える場合を例示したが、室内ユニット2は室内機を1台のみ備えても良いし、3台以上の室内機を備えても良い。室外機の数についても同様である。
また、各実施形態では冷房運転を行う空気調和システム1とその制御方法を開示したが、同様の制御方法は暖房運転にも適用できる。暖房運転においては、室外熱交換器が蒸発器として機能し、室内熱交換器が凝縮器として機能する。この場合、ステップS102の判定に用いる温度範囲は、例えば対象空間或いはその一部の温度として許容可能な下限値により定めることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。