以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による排気装置60を備えるエンジン1の概略構成図である。
図1に示すエンジン1は、例えば車両に搭載される直列4気筒内燃機関である。エンジン1は、シリンダブロック10と、シリンダブロック10の上部に固定されるシリンダヘッド20とを備える。
シリンダブロック10は、シリンダ部10Aと、当該シリンダ部10Aの下部に形成されるクランクケース10Bとから構成されている。
シリンダ部10Aには、4つのシリンダ11が形成される。シリンダ11内には、ピストン12が摺動自在に配設される。ピストン12は、混合気燃焼時の燃焼圧力を受けて、シリンダ11に沿って往復運動する。
クランクケース10Bは、1本のクランクシャフト13を回転自在に支持する。各ピストン12にはコンロッド14が連結され、これらコンロッド14の下端はクランクシャフト13に連結される。ピストン12の往復運動は、コンロッド14及びクランクシャフト13を介して回転運動に変換される。
シリンダヘッド20は、シリンダブロック10の上部に取り付けられる。シリンダヘッド20の下面、シリンダ11の側面、及びピストン12の冠面により、燃焼室15が形成される。
また、シリンダヘッド20には、燃焼室15と連通する吸気ポート30及び排気ポート40が形成されている。1つの燃焼室15に対して、2つの吸気ポート30と2つの排気ポート40が設けられる。
吸気ポート30には、吸気弁31が設けられる。吸気弁31は、可変動弁機構32の揺動カムによって駆動され、ピストン12の上下動に応じて吸気ポート30を開閉する。可変動弁機構32は、吸気弁31のリフト量や作動角等のバルブ特性を変更可能に構成されている。
排気ポート40には、排気弁41が設けられる。排気弁41は、可変動弁機構42の揺動カムによって駆動され、ピストン12の上下動に応じて排気ポート40を開閉する。可変動弁機構42は、排気弁41のリフト量や作動角等のバルブ特性を変更可能に構成されている。
吸気ポート30と排気ポート40の間のシリンダヘッド20には、点火プラグ27が設けられている。点火プラグ27は、エンジン1の燃焼室15ごとに一つ設けられる。点火プラグ27は、所定のタイミングで燃焼室15内の混合気に着火する。
シリンダブロック10のシリンダ部10A及びシリンダヘッド20には、シリンダ11及び燃焼室15の周りを冷却するための冷却水(冷却流体)が循環する通路としてのウォータジャケット16,17が設けられている。
エンジン1は、吸気(新気)を当該エンジン1に導く吸気装置50と、当該エンジン1から排出された排気を外部へ導く排気装置60とをさらに備えている。
吸気装置50は、吸気管21と、吸気マニホールド22と、エアクリーナ23と、エアフローメータ24と、電子制御式のスロットルバルブ25と、燃料噴射弁26とを備える。
吸気管21は、吸気を流す通路である。吸気マニホールド22は、吸気管21と吸気ポート30とを連通する。吸気マニホールド22は、エンジン1の各気筒に吸気を分配する。これら吸気管21及び吸気マニホールド22は、エンジン1に吸気を導く吸気通路として機能する。
吸気管21の上流端には、エアクリーナ23が設けられる。エアクリーナ23は、外部から取り込んだ吸気に含まれる塵や埃等の異物を除去する。
エアクリーナ23よりも下流の吸気管21には、エアフローメータ24が設置される。エアフローメータ24は、吸気管21内を流れる吸気の流量を検出し、検出信号をコントローラ200に対して出力する。
エアフローメータ24よりも下流の吸気管21には、スロットルバルブ25が設けられる。スロットルバルブ25は、吸気管21の通路断面積を連続的又は段階的に変化させることで、各燃焼室15に導入される吸気量を調整する。スロットルバルブ25はスロットルアクチュエータ25Aによって開閉駆動され、スロットル開度はスロットルセンサ25Bによって検出される。
吸気マニホールド22には、エンジン1の気筒毎に燃料噴射弁26が設けられる。つまり、吸気マニホールド22の各ブランチ管に、燃料噴射弁26は一つずつ設けられる。燃料噴射弁26は、エンジン運転状態に応じた量の燃料を所定のタイミングで吸気マニホールド22内に噴射する。燃料噴射弁26に供給される燃料は、図示しない燃料タンクに貯蔵されている。
排気装置60は、当該エンジン1から排出された排気を浄化して外部へと導出する装置である。排気装置60は、排気管61と、排気マニホールド62と、マニホールド触媒コンバータ63と、床下触媒コンバータ64と、排熱回収器70とを備える。
排気マニホールド62の上流端はシリンダヘッド20に接続され、排気マニホールド62の下流端は排気管61に接続される。排気マニホールド62は、各排気ポート40から排出された排気を集合させ、排気管61へと導く。これら排気マニホールド62及び排気管61は、エンジン1から排出された排気を外部へ導く排気通路として機能する。
排気マニホールド62の合流管62Aには、マニホールド触媒コンバータ63が設けられる。マニホールド触媒コンバータ63は、排気を浄化する排気浄化部63Aを備えている。
排気浄化部63Aは、格子状の担体、つまり排気が通過可能な複数の貫通孔を有する円筒状部材として構成されている。貫通孔は、排気浄化部63Aの一方の端面から他方の端面まで軸方向に貫通している。排気浄化部63Aは、貫通孔の断面形状が六角形であるハニカム構造体として構成されてもよい。なお、排気浄化部63Aの貫通孔の断面形状は、四角形や六角形に限られず、円形や三角形等のその他の形状でもよい。
排気浄化部63Aの表面には、排気を浄化する三元触媒が担持されている。排気浄化部63Aは、貫通孔を通過する排気に含まれる炭化水素や窒素酸化物、一酸化炭素等の有害物質を三元触媒によって浄化する。排気浄化部63Aの貫通孔は、排気の流れを一定方向(通路延在方向)に整える機能も有している。このように、マニホールド触媒コンバータ63は、排気の流れを整流する排気浄化部63A(整流部)を有する整流器として構成されている。
排気マニホールド62の合流管62Aの下流端には、排気管61の上流端が接続される。排気管61は、排気マニホールド62を通過した排気を外部へと導く通路である。排気管61には、床下触媒コンバータ64と排熱回収器70とが上流側から順に配置される。
床下触媒コンバータ64は、排気を浄化する排気浄化部64Aを備えている。
図2に示すように、排気浄化部64Aは、格子状の担体、つまり排気が通過可能な複数の貫通孔64Bを有する円筒状部材として構成されている。貫通孔64Bは、排気浄化部64Aの一方の端面から他方の端面まで軸方向に貫通している。排気浄化部64Aは、貫通孔64Bの断面形状が六角形であるハニカム構造体として構成されてもよい。なお、貫通孔64Bの断面形状は、四角形や六角形に限られず、円形や三角形等のその他の形状でもよい。
排気浄化部64Aの表面には、排気を浄化する三元触媒が担持されている。排気浄化部64Aは、貫通孔64Bを通過する排気に含まれる炭化水素や窒素酸化物、一酸化炭素等の有害物質を三元触媒によって浄化する。排気浄化部64Aの貫通孔64Bは、排気の流れを一定方向(通路延在方向)に整える機能も有している。このように、床下触媒コンバータ64は、排気の流れを整流する排気浄化部64A(整流部)を有する整流器として構成されている。
図1に示すように、排熱回収器70は、床下触媒コンバータ64の下流側に設けられている。排熱回収器70は、床下触媒コンバータ64の排気浄化部64Aを通過した排気の熱を回収する装置である。排熱回収器70によって回収された熱は、エンジン1の暖機や暖房等に利用される。
エンジン1から排気装置60に排出された排気は、マニホールド触媒コンバータ63及び床下触媒コンバータ64で浄化され、排熱回収器70で排気の熱が回収された後に、排気管61を通じて外部へと導かれる。
上記したエンジン1は、コントローラ200によって制御される。コントローラ200は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。
コントローラ200には、エアフローメータ24やスロットルセンサ25Bからの検出信号のほか、ウォータジャケット16を流れる冷却水の温度を検出する温度センサ201、クランク角に基づいてエンジン回転速度を検出するエンジン回転速度センサ202、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルセンサ203等のエンジン運転状態を検出する各種センサからの検出信号が入力する。
コントローラ200は、検出したエンジン1の運転状態に基づいて、スロットル開度や燃料噴射量、点火時期等を最適に制御する。
次に、図3、図4及び図5を参照して、排気装置60に設けられる排熱回収器70の構成について説明する。図3は排気通路の延在方向に対して直交する方向に沿う排熱回収器70の、図4は排気通路の延在方向に沿う排熱回収器70の各断面図である。図5は図4のX−X線断面図である。ただし、図5では支持部材101のみを示している。
図3及び図4に示すように、排熱回収器70は、排気の熱を回収する排熱回収部71と、冷却水(冷却流体)を介して排熱回収部71を冷却する冷却部75とを備える。
冷却部75は、冷却部本体76、冷却部本体76の上流側の端、下流側の端に形成される2つのフランジ80,81で構成される。以下、「上流側」とは排気流れの上流側(図4で左側)を、「下流側」とは排気流れの下流側(図4で右側)をいうものとする。
冷却部本体76は円筒部材であって、冷却部本体76の内周76Aに円筒状の排熱回収部71が配置されている。冷却部本体76の内径は排熱回収部71の外径よりも僅かに小さく形成され、排熱回収部71は冷却部本体76内に圧入によって嵌め込まれている。冷却部本体76は、排熱回収部71を収容した状態で排気管61に介装される。冷却部本体76の内周76Aは、排気を流す排気通路の一部として構成されている。
排熱回収部71は、排気管61や排気マニホールド62を形成する材料よりも高熱伝導率の材料、例えば炭化ケイ素(SiC)といったセラミックによって形成されている。排熱回収部71は、排気が排気の流れ方向に沿って通過可能な複数の貫通孔72を有する格子状の円筒部材である。貫通孔72は、排熱回収部71の一方の上流側端面から他方の下流側端面まで軸方向に貫通している。排熱回収部71は、貫通孔72の断面形状が六角形であるハニカム構造体として構成されてもよい。なお、貫通孔72の断面形状は、四角形や六角形に限られず、円形や三角形等のその他の形状でもよい。
排熱回収部71は、多数の貫通孔72を通過する排気により加熱される。したがって、排熱回収部71を通過した後の排気の温度は、排熱回収部71を通過する前の排気の温度よりも低くなる。
冷却部本体76と2つのフランジ80,81とは同一の材料(例えば金属材料)で一体に形成されている。冷却部本体76の内部には、排熱回収部71の外周に沿う環状のウォータジャケット(冷却流体通路)77が形成される。冷却水は円筒状のウォータジャケット77内を排熱回収部71の外周に沿って流れる。その冷却水の流れ方向に直交するウォータジャケット77の流路断面は、図4にも示したように長方形である。ウォータジャケット77の流路断面は、長方形に限られず、四角形、六角形、三角形、円形、楕円形等のその他の形状でもよい。
ウォータジャケット77には、図3にも示したように冷却水を導入する導入口78と、ウォータジャケット77から冷却水を排出する排出口79とを備える。導入口78と排出口79とは、排熱回収部71の周方向に180度ずらして配置されている。
導入口78及び排出口79には、例えばフレキシブルホース66,67が接続される。なお、図3では、冷却水通路を一点鎖線で示している。フレキシブルホース66,67はこの冷却水通路の一部を構成する。
冷却部75を介装する位置で排気管61を切断し、切断した2つの排気管61,61との接続のため、冷却部75の上流側の端と下流側の端に各フランジ80,81を備える。以下、上流側の端を単に「上流端」と、下流側の端を単に「下流端」というものとする。
冷却部75上流端のフランジ80に対向して上流側の排気管61の下流端にフランジ61Aが、冷却部75下流端のフランジ81に対向して下流側の排気管61の上流端にフランジ61Bが設けられている。上流側で対向する2つのフランジ61A,80の間にはガスケット82が挿入され、これら対向する一対のフランジ61A,80をボルト85及びナット86によって複数箇所で接続する。同様に、下流側で対向する2つのフランジ61B,81の間にガスケット83が挿入され、これら対向する一対のフランジ61B,81をボルト87及びナット88によって複数箇所で接続する。
冷却部本体76内のウォータジャケット77には、図3にも示したようにエンジン1のウォータポンプ65により圧送される冷却水が導入口78の開口端78Aから流入する。冷却水は、ウォータジャケット77内を導入口78から二手に分かれて流れ、排熱回収部71を外周側から冷却する。ウォータジャケット77を通過する冷却水は、排熱回収部71が受け取った排気からの熱によって暖められ、排出口79の手前で合流する。合流した冷却水は排出口79の開口端79Aから冷却部本体76の外へ排出される。冷却部本体76から排出された冷却水は、シリンダブロック10及びシリンダヘッド20のウォータジャケット16,17や図示しない暖房装置に供給され、エンジン1の暖機や車室内の暖房に利用される。
上記した排熱回収器70は、排気の熱を排熱回収部71により奪い、高温となった排熱回収部71を、冷却部本体76内を流れる冷却水により冷却することで、排熱の一部を冷却水に伝達する構造となっている。
さて、上記の排熱回収部71は熱膨張率の相対的に小さな材料(例えばセラミック)、冷却部75(冷却部本体76)は熱膨張率の相対的に大きな材料(例えば金属)で構成している。つまり、排熱回収部71と冷却部75の両者で熱膨張率が異なるため、両者を高温にすると、冷却部75のほうが径方向外側に向けて排熱回収部71より余計に膨張し、冷却部75の内径が排熱回収部71の外径より大きくなる。この結果、冷却部75の内周に排熱回収部71を挿入することができる。その後、冷却部75と排熱回収部71の両者が冷えれば、冷却部75が径方向内側に向けて排熱回収部71よりも大きく収縮し冷却部75の内径が排熱回収部71の外径より小さくなり、両者75,71が締結される。圧入によって排熱回収部71が冷却部75の内周に保持されるわけである。
このため、排熱回収部71と冷却部75が機械的に締結されていなくても、エンジンの運転中に冷却部75が予め定められた温度範囲で使用される限りなんら問題は生じ得ない。排熱回収部71からの熱を受けて冷却部75の温度が上昇しようとしても、冷却部75の熱はウォータジャケット77内部の冷却水に速やかに伝えられ、暖まった冷却水は冷却部75の外部に運ばれるので、冷却部75が予め定められた温度範囲を超えることはない。
しかしながら、エンジンの運転中に不測の事態、例えばウォータポンプ65が故障して作動を停止したときにウォータジャケット77内を冷却水が流れなくなる。また、ウォータジャケット77の導入口78に接続されるフレキシブルホース66に穴が開いたりすることでも、冷却部75内の冷却水が流れなくなる。こうして、ウォータジャケット77内で冷却水が滞留すると、冷却部75が予め定められた温度範囲を超えて高温となることがある。
すると、冷却部75が径方向外側に向かって熱膨張し、冷却部75の内径が排熱回収部71の外径より大きくなり、両者75,71の締結が緩くなる。エンジンの運転中は、排熱回収部71が下流側に向けて排気の圧力を受け続けている。このため、両者75,71の締結が緩くなると、排熱回収部71が排気に押されて冷却部75から外れ(ずれ)、排熱回収器70における熱回収性能が低下する事態が生じ得る。
これについてさらに説明すると、排熱回収部71で受け取った排気の熱は、排熱回収部71の外周73から冷却部本体76の内部に流入する。この場合に、排熱回収部71の外周73からウォータジャケット77を流れる冷却水に熱が効率的に伝わるように、排熱回収部71の軸方向幅W1よりもウォータジャケット77の軸方向幅W2を大きくしている。この理由は次の通りである。すなわち、排熱回収部71の外周73に到達した熱は、一方向にのみ伝わるのではなく、冷却部本体76の内部に向けて放射状に伝わる。そこで、ウォータジャケット77の軸方向幅W2を排熱回収部71の軸方向幅W1より大きくすることで、冷却部本体76の内部を放射状に伝わる熱を少しでも多くウォータジャケット77内の水に伝えさせるためである。このため、排熱回収部71の外周73から冷却部本体76の内部に流入した熱は排熱回収部71の外周73とウォータジャケット77の間の部位を通ってウォータジャケット77内の冷却水に伝えられる。上記の軸方向幅W1,W2の値は、最終的には適合により定められる。
しかしながら、ウォータポンプ65の故障やフレキシブルホース66の穴開き(以下、「ウォータポンプ65の故障停止等」という。)に伴い、冷却部75が予め定められた温度範囲を外れて高温になると、排熱回収部71と冷却部75の締結が緩くなる。すると、排熱回収部71が排気の圧力に押されて下流側にずれる。このずれが大きいと、排熱回収部71が冷却部75から外れる事態が生じ得る。排熱回収部71が冷却部75から外れたのでは、排熱回収部71の受け取った排気の熱がウォータジャケット77内の冷却水に効率よく伝えられなくなり、排熱回収器70における熱回収性能が低下してしまう。
そこで、排熱回収部71が冷却部75から外れることに伴う排熱回収器70における熱回収性能の低下を抑制する対策を予め講じておくことが必要である。このため、本発明の第1実施形態では、排熱回収部71のすぐ下流に支持部材101を設ける。支持部材101は、排気流れの大きな抵抗とならないよう、流入口101Aと排出口101Bを有する筒状に形成している。
図4では、冷却部75前後の排気管61,61は、排気流れに直交する断面が円である場合を考えている。このため、前後の排気管61,61と接続する冷却部75も全体として円筒状であり、冷却部75の内周に設ける排熱回収部71も円筒状であるが、これに限定されるものでない。前後の排気管61,61の排気流れに直交する断面が楕円であるときには、前後の排気管61,61と接続する冷却部75の排気流れに直交する断面も楕円状となり、冷却部75の内周に設ける排熱回収部71の排気流れに直交する断面も楕円状となり得る。
支持部材101は、ベース部102,先端部103,ラッパ状部104で構成されている。上記ベース部102,先端部103,ラッパ状部104の3つの部位は同じ材料を用いて一体で形成する。このため、ベース部102,先端部103,ラッパ状部104の各厚さはほぼ同様である。支持部材101は、後述するように第2の熱源となり得るので、支持部材101の厚さが厚くなるほど支持部材101が受け取る熱の量が多くなってゆく。このため、支持部材101が受け取る熱が熱回収器70の冷却性能に影響を与えることがないように、かつ排熱回収部71が下流へと移動してきたときに支持部材101が潰れない適度な強度を保ち得るように、支持部材101の厚さを定める。
ベース部102及び上流側に延び出す先端部103は円筒状に形成され、先端部103はベース部102の外径より小さい外径を有している。先端部103の上流端103Aはテーパー状に形成されている。上流端103Aがテーパー状に形成されている場合に限定されるものでない。たとえば、上流端103Aを排気流れに直交する面で形成してもかまわない。ラッパ状部104は先端部103とベース部102を連絡している。これによって、排熱回収部71から流れ出す排気は、支持部材101の流入口101Aから流入し、流入した排気は支持部材101の排出口101Bから下流側へと排出される。
支持部材101のベース部102を冷却部75の下流端のフランジ81に、例えば溶接することによって、支持部材101と冷却部75を接合(固定)する。支持部材101は、溶接によって接合される冷却部下流端のフランジ81と同じ材質である。冷却部本体76と一体で形成される下流端のフランジ81の材料は金属であるので、支持部材101の材料も下流端のフランジ81と同じ金属である。冷却部75及び支持部材101の材質は金属に限られず、金属と同等の性質を有する金属以外の材料であってもかまわない。
なお、ベース部102の冷却部75への溶接箇所は下流端のフランジ81に限定されるものでない。例えば、冷却部下流端のフランジ81より上流側の冷却部本体76にはみ出て溶接されていてもかまわない。
排熱回収部71の直ぐ下流に支持部材101を設けることで、エンジンの運転中にウォータポンプ65の故障停止等があっても、排熱回収部71が冷却部75から外れ排熱回収器70における熱回収性能が低下することを抑制できる。
さて、排熱回収器70を設計する際には、排熱回収部71を唯一の熱源として考慮するのであり、排熱回収部71以外の第2の熱源の存在は考慮しない。しかしながら、排熱回収部71の直ぐ下流に支持部材101を設けるとなると、支持部材101が排気の熱を受け取り、受け取った熱が支持部材101から冷却部75へと伝わり、さらにウォータジャケット77内の冷却水に伝達され得る(図4の右側矢印参照)。排熱回収部71を第1の熱源とすると、支持部材101が第2の熱源となり得るのである。しかしながら、支持部材101を第2の熱源とする熱回収は予定外である。このため、第2の熱源からの熱回収の分を考慮しないとなれば、ウォータポンプ65の故障停止等時に第2の熱源からの熱回収の分だけ冷却部75の熱膨張が大きくなる。これによって、冷却部75と排熱回収部71の締結が緩くなる時期(つまり熱回収器70における熱回収性能が低下する時期)を早めてしまう。
このように、排熱回収部71のすぐ下流に支持部材101が置かれるときには、排気の流れを邪魔しないことや第2の熱源からの熱回収を抑制すること等の別の対策が有ると好ましい。このため、図4,図5にも示したように支持部材101と排熱回収部71との間や、支持部材101と冷却部75との間に所定の隙間D,Cと所定の間隔Aを設けるものとしている。以下、D,C,Aについて個別に詳述する。
まず、先端部103の上流端103Aと排熱回収部71の下流端74との間には、所定の隙間D(正の値)を設ける。ここで、隙間Dを設けた理由は次の通りである。すなわち、本実施形態との比較のため、比較例1を図6に示すと、図6は排気通路の延在方向に沿う比較例1の排熱回収器70の断面図である。図4と同一部分には同一の符号を付している。図6に示したように隙間Dがゼロの場合、つまり、先端部103の上流端103Aが排熱回収部71の下流端74に当接している支持部材101を有する比較例1を考える。
比較例1では、エンジン運転中のウォータポンプ65の故障停止等に伴い排熱回収部71が冷却部75に対して下流側に移動しようとしても、この排熱回収部71に下流側から当接している支持部材101によって、排熱回収部71の下流側への移動が阻止される。このため、一見すると、排熱回収部70における熱回収性能が低下することはないように思える。
この場合、排熱回収部71に設けている多数の貫通孔72の入口や出口に目封じすることはしておらず、多数の貫通孔72の入口から入った排気は、そのまま貫通孔72を流れて出口から排出されることを期待している。それなのに、先端部103の上流端103Aが排熱回収部71の下流端74に当接している状態は、当接部位より外周側に存在する貫通孔72の出口に目封じしたのと同じになる。比較例1では、エンジン運転中のウォータポンプ65の故障停止等が生じていないときにおいても、排熱回収部71で当接部位より外周側の部分が閉塞されるため、当接部位より外周側の部分では排気が流れることができない(排気の閉塞)。以下、エンジン運転中のウォータポンプ65の故障停止等が生じていないときを「正常時」という。言い換えると、比較例1では正常時でありながら、当接部位より外周側の面積分だけ、排熱回収部71を流れる排気の面積(有効面積)が減少する。排熱回収部71の全ての貫通孔72を上流側から下流側に向けて排気がよどみなく流れる場合に、排熱回収部71から熱を効率よく回収できるのであるから、有効面積が減少すると、排熱回収器70における熱回収性能が低下してしまうのである。
また、材料がセラミックである排熱回収部71と、材料が金属である先端部103が当接している状態でエンジンや車体からの振動を受けると、セラミックである排熱回収部71の下流端74が金属である先端部103の上流端103Aによって削られる。削られた排熱回収部71の破片はコンタミとして下流側に排出されてしまう。このように比較例1では、正常時でありながら、排熱回収部71を流れる排気の有効面積の減少及び振動によるコンタミ発生が生じる。
一方、本実施形態では、先端部103の上流端103Aと排熱回収部71の下流端74との間に所定の隙間Dを設けている。隙間Dを設けているので、正常時でありながら比較例1で生じていた排熱回収部71を流れる排気の有効面積の減少に伴う排熱回収器70における熱回収性能の低下を抑制できる上に、振動によるコンタミ発生を防止することができる。詳細には本実施形態によれば、多数の貫通孔72の入口から入り出口から出る排気は、先端部103と排熱回収部71の下流端74との間の隙間Dを通って下流側へと排出されるので、排気を閉塞することはない。このため、排熱回収部71を流れる排気の有効面積が減少することがない。また、先端部103の上流端103Aと排熱回収部71の下流端74とが当接していないので、エンジンや車体からの振動を受けても、セラミックである排熱回収部71の下流端74が金属である先端部103の上流端103Aによって削られることはないのである。
また、本実施形態では、先端部103の上流端103Aの外径を排熱回収部71の外径より小さくし、先端部103の外周103Bと、先端部103の外周103Bに対向する冷却部本体76の内周76Aとの間に所定の隙間C(正の値)を設ける。ここで、隙間Cを設けた理由は次の通りである。すなわち、本実施形態との比較のため、参考例1を図7に示すと、図7は排気通路の延在方向に沿う参考例1の排熱回収器70の断面図である。図4と同一部分には同一の符号を付している。図7に示したように、隙間Dはあるものの、隙間Cがゼロの場合、つまり、先端部103の外周103Bが冷却部本体76の内周76Aに当接している支持部材101を有する参考例1を考える。
参考例1では、図7のように支持部材101の排気流れ方向に沿う断面積が第1実施形態の場合より大きい分だけ、第2の熱源としての支持部材101が受け取る熱の量が多くなる。しかも、先端部101の外周103Bが冷却部本体76の内周76Aと当接しているために、支持部材101からウォータジャケット77内の冷却水に伝わる熱のルートが第1実施形態の場合より短い(図7の右側矢印参照)。この2つの理由から、 ウォータポンプ65の故障停止等時に第2の熱源からの熱回収の分だけ冷却部75の熱膨張が大きくなり、冷却部75と排熱回収部71の締結が緩くなる時期を第1実施形態の場合より早めてしまう。
一方、第1実施形態では、先端部103と、先端部103に対向する冷却部本体76との間に所定の隙間Cを設けている。これによって、先端部103の厚さが参考例1の場合より薄くなり、そのぶん第2の熱源としての支持部材101が受け取る熱の量が減少する。また、支持部材101が受け取った熱は、ベース部102から冷却部75下流端のフランジ81へと伝わる。言い換えると、熱が先端部103から直接冷却部本体76に伝わることがない。かつ、ベース部102からフランジ81へとしか熱が伝わらないために、支持部材101からウォータジャケット77内の冷却水に伝わる熱のルートが参考例1の場合より長くなる(図4の右側矢印参照)。この2つの理由から、エンジン運転中のウォータポンプ65の故障停止等時に第2の熱源としての支持部材101からウォータジャケット77内の冷却水への伝熱を参考例1の場合より抑制することができる。
次に、先端部103の上流端103Aは、ウォータジャケット77の排気流れ方向の下流端77B(図4で右端)より上流側に存在するものとする。ここで、「ウォータジャケット77の下流端」と表記した場合、この「下流端」は、ウォータジャケット77を流れる冷却水方向からみて下流端であると誤解される可能性がある。そこで、「ウォータジャケットの排気流れ方向の下流端」と表記することで、この「下流端」は排気流れ方向からみて下流端であることを意味させている。
言い換えると、先端部103の上流端103Aと、これより下流側のウォータジャケット77の排気流れ方向の下流端77Bとの間に、所定の間隔A(正の値)を設ける。ここで、間隔Aを設けた理由は次の通りである。すなわち、本実施形態との比較のため、参考例2を図8に示すと、図8は排気通路の延在方向に沿う参考例2の排熱回収器70の断面図である。図4と同一部分には同一の符号を付している。図8に示したように、先端部103の上流端103Aがウォータジャケット77の排気流れ方向の下流端77Bより下流側に存在する参考例2を考える。
参考例2では、エンジン運転中のウォータポンプ65の故障停止等に伴い、排熱回収部71の下流端74がウォータジャケット77の排気流れ方向の下流端77Bと一致する位置を超えて移動し、排熱回収部71が支持部材101の近傍に位置している。このため、参考例2では先端部103の上流端103Aが、ウォータジャケット77の排気流れ方向の下流端77B(図8で右端)より下流側に存在している。言い換えると、先端部103の上流端103Aと、これより上流側のウォータジャケット77の排気流れ方向の下流側端77Bとの間に所定の間隔A’(正の値)が存在する。
このように、排熱回収部71の下流端74がウォータジャケット77の排気流れ方向の下流端77Bと一致する位置を超えることとなった場合でも、排熱回収部71が受け取った熱は排熱回収部71の外周73から冷却部本体76の内部に放射状に伝達される。このため、排熱回収部71が受け取る熱の一部はウォータジャケット77内の冷却水に向かうと考えられる(図8の左側矢印参照)。しかしながら、排熱回収部71が受け取った熱のうちにはウォータジャケット77内の冷却水に向かわず、脇へと向かうものが存在する(図8の右側矢印参照)。排熱回収部71が受け取った熱のうち脇へと向かう熱についてはウォータジャケット内の冷却水に伝達されないのである。
一方、第1実施形態では、先端部103の上流端103Aがウォータジャケット77の排気流れ方向の下流端77Bより上流側に存在している。これによって、排熱回収部71が受け取った熱を漏れなくウォータジャケット77内の冷却水が受け取ることができるようにすることができる。
第1実施形態では、先端部103の上流端103Aがウォータジャケット77の排気流れ方向の下流端77Bより上流側に存在している場合であるが、この場合に限られない。熱回収部71の下流端74がウォータジャケット77の排気流れ方向の下流端77Bと一致する位置にあってもかまわない。この場合であれば、エンジン運転中のウォータポンプ65の故障停止等に伴い、排熱回収部71が下流側に移動したときに、排熱回収部71がウォータジャケット77に隣接する位置にとどまる。排熱回収部71がウォータジャケット77に隣接する位置にとどまることで、排熱回収部71が受け取った熱を参考例2の場合よりウォータジャケット77内の冷却水が受け取ることができるようにすることができる。上記のD,C,Aの各値は最終的には適合により定める。
ここで、本実施形態の作用効果をまとめて説明する。
本実施形態では、エンジンから出された排気を外部へと導く排気通路を備えるエンジンの排気装置であって、排熱回収器70と、筒状の支持部材101とを備えている。上記排熱回収器70は排気通路を流れる排気の熱を回収する排熱回収部71、及び冷却水(冷却流体)を介して排熱回収部71を外周側から冷却する冷却部75を有する。上記筒状の支持部材101は排熱回収部71から流れ出す排気を通過させる。そして、支持部材101に上流側に延び出す先端部103を形成し、排熱回収部71の下流端74と先端部103の上流端103Aとの間に所定の隙間Dを設けている。本実施形態によれば、エンジン運転中のウォータポンプ65の故障停止等に伴い、排熱回収部71と冷却部75の締結が緩み、排熱回収部71が下流側にずれることがあっても、その下流側へのずれを支持部材101によって規制することができる。さらに、隙間Dを設けることがなければ生じる出あろう、正常時の排熱回収部71の有効面積の減少による熱回収性能の低下を抑制することができる。また、隙間Dを設けることがなければ生じる出あろう、振動によるコンタミ発生を防止することができる。
本実施形態では、先端部103の上流端103Aの径を排熱回収部71の外径より小さくし、先端部103と冷却部75の内周との間に所定の隙間Cを設けている。本実施形態によれば、エンジン運転中のウォータポンプ65の故障停止等時に第2の熱源としての支持部材101からウォータジャケット77内の冷却水への伝熱を参考例1の場合より抑制することができる。
本実施形態では、冷却部75が、冷却部本体76と、ウォータジャケット77(本体の内部に形成され冷却流体が流れるウォータジャケット)とで構成される場合に、先端部103の上流端103Aは、ウォータジャケット77の排気流れ方向の下流端77Bより上流側に存在する。本実施形態によれば、排熱回収部71が受け取った熱を漏れなくウォータジャケット77内の冷却水が受け取ることができるようにすることができる。
次に、支持部材101の形状は図5に示したものに限られず、図14,図15,図16,図17に示したものであってよい。ここで、図14,図15は第1実施形態の支持部材101の変形例1,2で、図14,図15は図5に置き換わるものである。また、図16は変形例3の支持部材を含む、排気通路の延在方向に沿う排熱回収器70の断面図、図17は図16のX−X線断面図である。
まず、支持部材101の変形例1では、図14に示したようにラッパ状部104に、ほぼ楕円状の同じ形状の6個の貫通孔141A,141B,141C,141D,141E,141Fが周方向に沿う均等な位置に設けられている。支持部材101の変形例2では、図15に示したようにラッパ状部104に、長孔状の同じ形状の4個の貫通孔151A,151B,151C,151Dが周方向に沿う均等な位置に設けられている。このようにラッパ状部104に貫通孔141A〜141F,151A〜151Dを設けることで、排気流れに対する抵抗を、貫通孔を設けていない場合より減らすことができる。なお、貫通孔の形状、貫通孔の個数及び貫通孔を設ける位置は図14,図15に示すものに限定されることはない。
次に、支持部材101の変形例3では、図16,図17に示したように、支持部材101の先端部103が同じ形状の3つの棒状部161,162,163で構成されている。すなわち、支持部材101の変形例3ではラッパ状部104にリング状の上流端104Aが形成されている。3つの棒状部161,162,163はこのリング状の上流端104Aに沿う120度ずつ離れた均等な位置に配置されている。かつ、3つの棒状部161,162,163はこの上流端104Aから上流側に向けて延び出すように、つまり排気流れに沿う方向に設けられている。
ここで、先端部103を3つの棒状部161,162,163で構成する理由は、エンジン運転中のウォータポンプ65の故障停止等時に、下流側へと移動する排熱回収部71の下流端74をこれら3つの部材で支持するためである。詳述すると、排熱回収部71の下流端74は、全体として円状の平面となっている。この全体として円状の平面である排熱回収部71の下流端74を支持するには少なくとも3点あればよいので、周方向に均等に3つ設けた棒状部161,162,163で支持するものとしたのである。
このように、3つの棒状部161,162,163で先端部103を構成する場合にも、第1実施形態の先端部103と同様の作用効果が得られる。
(第2実施形態)
図9は第2実施形態の排気通路の延在方向に沿う排熱回収器70の断面図、図10は図9のX−X線断面図である。ただし、図10では支持部材101のみを示している。第1実施形態の図4,図5と同一部分には同一の符号を付している。
第2実施形態の排熱回収器70では、図9に示したように、冷却部本体76と冷却部下流端のフランジ81とが別部材で構成され、冷却部本体76と冷却部下流端のフランジ81との間に延設部材111が追加されている。詳細には、延設部材111の上流端111Aが冷却部本体76の下流端76Bと、延設部材111の下流端111Bが冷却部下流端のフランジ81の上流端81Aと当接している。冷却部本体76と延設部材111との間、延設部材111と冷却部下流端のフランジ81の間は、たとえば溶接により接合する。延設部材111を冷却部本体76に溶接するには、延設部材111を冷却部本体76及びフランジ81と同じ材料(金属)とする。
なお、第2実施形態でも冷却部75前後の排気管61,61、冷却部75、冷却部75の内周に設ける排熱回収部71、延設部材111とも全体として円筒状である場合を考えている。ただし、この場合に限定されるものでない。ここで、冷却部75前後の排気管61,61、冷却部75、冷却部75の内周に設ける排熱回収部71、延設部材111とも、軸心を同一としている。
そして、第2実施形態では、冷却部本体76の内径R1より延設部材111の内径R2が大きい場合を前提とする。冷却部本体76の内径R1より延設部材111の内径R2が小さい場合を前提としないのは次の理由からである。すなわち、この場合には、エンジン運転中のウォータポンプ65の故障停止等に伴い、排熱回収部71が下流側に移動するとき、排熱回収部71の下流端74が延設部材111の上流端111Aと当接する位置で排熱回収部71の動きが止まる。冷却部本体76の内径R1より延設部材111の内径R2が小さい場合には、排熱回収部71の下流端74が延設部材111の上流端111Aと当接する位置で排熱回収部71の動きが止まるので、支持部材を改めて設ける必要がないためである。
第2実施形態では、冷却部本体76の内径R1より内径R2が大きい延設部材111を冷却部本体76の下流端76Bに有する排熱回収器70に対して、支持部材101を設ける。支持部材101の例えばベース部102を延設部材111に固定する。ベース部102の外径を、延設部材111の内径R2よりわずかに小さくし、ベース部102の外周102Aと延設部材111の内周111Cを溶接により固定する。支持部材101を延設部材111に溶接するには、支持部材101を延設部材111と同じ材料(金属)とする。
この場合に、先端部103の上流端103Aは、冷却部本体76の下流端76Bより上流側に存在するものとする。言い換えると、先端部103の上流端103Aと、これより下流側の冷却部本体76の下流端76Bとの間に、所定の間隔B(正の値)を設ける。
ここで、間隔Bを設けた理由は次の通りである。すなわち、第2実施形態との比較のため、参考例3を図11に示すと、図11は排気通路の延在方向に沿う参考例3の排熱回収器70の断面図である。図9と同一部分には同一の符号を付している。図11に示したように、先端部103の上流端103Aが冷却部本体76の下流端76Bより下流側に存在する参考例3を考える。
参考例3では、エンジン運転中のウォータポンプ65の故障停止等に伴い、排熱回収部71の下流端74が冷却部本体76の下流端76Bと一致する位置を超えて移動し排熱回収部71の外周73が延設部材111に対向している。このように、冷却部本体76の内径R1より内径R2が大きい延設部材111を有するものでは、エンジン運転中のウォータポンプ65の故障停止等時に排熱回収部71が冷却部本体76から外れてしまう事態が起こり得る。このため、参考例3では先端部103の上流端103Aが、冷却部本体76の下流端76Bより下流側に存在している。言い換えると、先端部103の上流端103Aと、これより上流側の冷却部本体76の下流端76Bとの間に所定の間隔B’(正の値)が存在している。
極端な話をすると、排熱回収部71の下流端74が冷却部本体76の下流端76Bより下流側にはみ出ても、排熱回収部71の外周73の一部が冷却部本体76の内周76Aに当接している限り、排熱回収部71から熱がウォータジャケット77内の冷却水に伝わる。しかしながら、図11に示したように排熱回収部71が冷却部本体76から下流側に外れてしまったときには、排熱回収部71が受け取った熱は支持部材101から延設部材111へ、延設部材111から冷却部本体76へと伝わる。一方、排熱回収部71が冷却部本体76から外れなければ、排熱回収部71が受け取った熱は支持部材101から直接に冷却部本体76へと伝わる。参考例3では、延設部材111が金属で構成されていても、延設部材111の分だけ、排熱回収部71からウォータジャケット77までの熱のルートが長くなり、排熱回収器70における熱回収性能が低下してしまうのである。したがって、冷却部本体76の内径R1より内径R2が大きい延設部材111を有するものでは、エンジン運転中のウォータポンプ65の故障停止等時に排熱回収部71を冷却部本体76から外さないことがポイントになる。
次に、上記のように排熱回収部71の下流端74が冷却部本体76の下流端76Bより下流側にはみ出た状態では、はみ出ない状態より排熱回収器70における熱回収性能が低下してしまう。したがって、排熱回収部71を冷却部本体76から外さないようにすることに加えて、なるべくなら排熱回収器70における熱回収性能の低下を最小限にとどめることが好ましい。
そこで、第2実施形態では、先端部103の上流端103Aを冷却部本体76の下流端76Bより上流側に存在させる。これによって、エンジン運転中のウォータポンプ65の故障停止等時に排熱回収部71の下流端74が冷却部本体76の下流端76Bより下流側にはみ出ることがない。これによって、排熱回収部71の下流端74が冷却部本体76の下流端76Bより下流側にはみ出る状態の場合より排熱回収器70における熱回収性能の低下を抑制することができる。
第2実施形態では、冷却部75が、冷却部本体76(排熱回収部を外周側から囲う本体)と、ウォータジャケット77(この本体の内部に形成され冷却流体が流れるウォータジャケットとで)構成されている。そして、冷却部本体76の下流側に接続される延設部材111の内径R2が冷却部本体76の内径R1より大きい場合に、先端部103の上流端103Aは、冷却部本体76の下流端76Bより上流側に存在している。これによって、排熱回収部71の下流端74が冷却部本体76の下流端76Bより下流側にはみ出る状態の場合より排熱回収器70における熱回収性能の低下を抑制することができる。
(第3実施形態)
図12は排気通路の延在方向に沿う第3実施形態の排熱回収器70の断面図である。図13は図12のX−X線断面図である。ただし、図13では支持部材121のみを示している。第1実施形態の図4,図5と同一部分には同一の符号を付している。
ほぼ同じ径を有する円筒型の2つの部品を嵌め合わせて組み立てるときには、適正なセンタリングを得る必要がある。一方の円筒型部品に、その一方の円筒型部品の内径より小さい外径の円筒部材を、他方の円筒型部品との当接面に向け突出させて取り付ける。そして、他方の円筒型部品を、突出させた円筒部材をガイドとして一方の円筒型部品と嵌め合わせることで、ほぼ同じ径を有する2つの円筒型部品の軸心を正確に合わせる(センタリングする)ことができる。このように一方の円筒型部品と他方の円筒型部品を接続する際に、他方の円筒型部品から突出させた円筒部材をインロー継手として機能させることができ、2つの円筒型部品の軸心を正確に合わせる(センタリングする)ことができる。以下、上記他方の円筒型部品から突出させた円筒部材を「インロー部材」という。
上記一方の円筒型部品として排熱回収器70が、上記他方の円筒型部品として排熱回収器70の下流側に接続される排気管61がある。このため、例えば図12に示したように、排熱回収器70と下流側の排気管61とを接続する際に、下流側の排気管61のフランジ61Bにフランジ61Bの内径よりもわずかに小さい外径を有する円筒部材131(支持部材)を取り付ける。
インロー部材としての円筒部材131は、フランジ61Bの内径よりもわずかに小さい外径を有する円筒状のベース部132と、上流側に向けて縮小するラッパ状部133とで構成する。ベース部132のうち下流側を、下流側の排気管61のフランジ61Bに溶接で固定するが、ベース部132のうち上流側はフランジ61Bの上流端より上流に向かって突出させておく。インロー部材としての円筒部材131は排気管61に溶接するので、円筒部材131の材料は、排気管61の材料と同じ金属である。そして、ラッパ状部133と、ベース部132のうち上流に向かって突出する部位とをガイドとして、排熱回収器70の下流側のフランジ81を下流側の排気管61と嵌め合わせる。嵌め合わせた後には、排熱回収器70と下流側の排気管61とをボルト87、ナット88によって締結する。これによって、排熱回収器70と下流側の排気管61を接続する際に、下流側の排気管61から突出させた円筒部材131をインロー継手として機能させることができ、排熱回収器70と下流側の排気管61の軸心を正確に合わせる(センタリングする)ことができる。
第3実施形態では、このように排熱回収器70と下流側の排気管61を接続する際に、下流側の排気管61から突出させた円筒部材131をインロー継手として機能させるものを前提とする。そして、第3実施形態では、円筒部材131のラッパ状部133から、上流側に延びる円筒状の先端部134を追加して設ける。円筒部材131と先端部134とは一体で形成する。つまり、円筒部材131と先端部134とを同一部品とする。円筒部材131と先端部134の全体で第1実施形態の支持部材101と同じ機能の支持部材121を構成するのである。
ここで、先端部134と排熱回収部71との位置関係、先端部134と冷却部本体76との位置関係は第1実施形態と同様である。すなわち、先端部134の上流端134Aと排熱回収部71の下流端74との間には、所定の隙間D(正の値)を設ける。先端部134の外周134Bと、先端部134に対向する冷却部本体76との間には、所定の隙間C(正の値)を設ける。先端部134の上流端134Aは、ウォータジャケット77の下流側端77Bより上流側に存在するものとする。言い換えると、先端部134の上流側端134Aとウォータジャケット77の下流側端77Bとの間に所定の間隔A(正の値)を設ける。
第3実施形態では、排気管61から上流側に円筒部材131(支持部材)が突出するように円筒部材131を排気管61に取り付けている。そして、排気管61を冷却部65の下流端に接続する場合に、排気管61に取り付けられる円筒部材131と先端部134を一体で形成している。これによって、第3実施形態においても、第1実施形態の作用効果と同様の作用効果を有する。さらに第3実施形態では、円筒部材131と先端部134とを一体で形成することで、コストダウンを図ることができる。
さらに第3実施形態では、排気管61に取り付けられる円筒部材131(支持部材)はインロー部材であるので、コストダウンを図ることができる。
さて、第1実施形態では、支持部材101が下流側のフランジ81を含む冷却部75に取り付けられているため、支持部材101の受け取る熱が下流側のフランジ81を含む冷却部75を介してウォータジャケット77内の冷却水に伝達される。これは、前述したように支持部材101が第2の熱源となるためである。このため、第1実施形態では所定の隙間Cを設けることで、第2の熱源からの熱の伝達ルートが長くなるようにして第2の熱源からの熱回収量を低減し、これによってウォータジャケット77内の冷却水への余計な熱の流入を抑制している。
一方、第3実施形態においても、支持部材121が受け取る熱が下流側の排気管61のフランジ61Bから、下流端のフランジ81を含む冷却部75を介してウォータジャケット77内の冷却水に伝わろうとする。この場合、第3実施形態では、ベース部132のうち下流側だけが下流側の排気管61に溶接されている。このため、支持部材121が受け取った熱は溶接部位から下流側の排気管61に伝わり、さらに冷却部下流端のフランジ81に伝わろうとする。しかしながら、下流側の排気管61のフランジ61Bと冷却部下流端のフランジ81との間にはガスケット83が介装されているため、下流側の排気管61のフランジ61Bから冷却部下流端のフランジ81への熱の伝達が遮断される(図12の右側矢印参照)。また、支持部材121のベース部132のうち上流側は溶接されていない。熱は溶接部位を介して主に伝達されるのであるから、ベース部132と下流側フランジ81を含む冷却部75とが密着していない部分では熱の伝達が十分には行われない。これら2つの理由によって、第2の熱源(支持部材121)からのウォータジャケット77内の冷却水への熱の流入を、第1実施形態の場合よりも低減することができる。
ここで、第1実施形態と第3実施形態の関係を述べると、第3実施形態では、インロー部材(131)が下流側の排気管61に取り付けてあるものを前提とした。そして、このものを前提として先端部134を追加して設けた。一方、第1実施形態は、インロー部材が下流側の排気管61にそもそも取り付けてないものを前提としているために、インロー部材に相当する部材(102,104)と先端部103を一体とした支持部材101を新たに設けたものである。
第3実施形態では、排熱回収器70と下流側の排気管61を接続する際に、下流側の排気管61から突出させた円筒部材131をインロー継手として機能させるものを前提とする場合で説明したが、この場合に限定されるものでない。たとえば、下流側の排気管61から上流側に突出する円筒状の部材を設けているが、この円筒状の部材にインロー継手としての機能がないものがあれば、このものを前提とすることができる。このものを前提とする場合には、円筒状の部材の上流側に先端部を追加して設けるのである。この場合、上流側に突出する円筒状の部材と先端部を一体で形成する。これによって、下流側の排気管61から上流側に突出する円筒状の部材を設けているが、この円筒状の部材にインロー継手としての機能がないものを前提とする場合においても、コストダウンを図ることができる。
実施形態では排熱回収部71がセラミックで構成されている場合で説明したが、この場合に限定されるものでない。排熱回収部はセラミック以外の材料で構成されていてもよい。