JP6537121B1 - 傷病別医療費推計装置および方法並びにプログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】各医療行為情報と各傷病情報との連結を定義するマスタの整備および更新を必要とせず、より効率よく傷病別の医療費情報を推計することができる傷病別医療費推計装置および方法並びにプログラムを提供する。
【解決手段】患者の少なくとも1つの傷病情報、患者に対して施された少なくとも1つの医療行為情報および医療行為情報に関連する医療費情報を含む解析用情報を複数受け付け、その受け付けた複数の解析用情報に基づいて、各解析用情報に対するバランシングスコアを算出するバランシングスコア算出部12と、各解析用情報に対するバランシングスコアに基づいて、傷病情報毎の医療費情報を推計する医療費推計部13とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、レセプトなどに基づいて、傷病別の医療費を推計する傷病別医療費推計装置および方法並びにプログラムに関するものである。
近年、医療保険制度を用いた医療費が年々増加傾向にあり、国、保険者および患者それぞれに対する負担が大きくなっている。今後、医療保険制度を健全な状態で維持するためには、傷病の予防、傷病の早期発見および早期治療を行い、医療費を抑制する必要がある。
そして、医療費の抑制をより効率的に行うためには、どの傷病に対してどの程度の医療費がかかっているかを的確に把握する必要がある。
そこで、たとえば特許文献1および特許文献2においては、患者の傷病の情報、患者に対する医療行為の情報および医療費の情報を含むレセプトを用いて、傷病別の医療費を算出することが提案されている。
特許第5953411号公報 特許第4312757号公報
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の手法は、レセプトに含まれる医療行為情報によって発生した医療費情報が、どの傷病によって発生したものなのかを判定したり、もしくはレセプトに含まれる複数の傷病情報に対する医療費情報の按分を判定したりして、集計する手法である。
そのため、各医療行為情報と各傷病情報との連結を定義するマスタの整備とその更新が必要であった。たとえば新しい診療行為が増えたり、診療報酬制度が変更される度に新しいマスタに更新する必要があった。
また、医療行為情報が複数の傷病情報と関連性がある場合の処理や、傷病と関連性がない医療行為情報の処理も同様のロジックで集計されるため、結果の信ぴょう性に課題がある。
本発明は、上記の問題に鑑み、マスタの整備および更新を必要とせず、より効率よく傷病別の医療費情報を推計することができる傷病別医療費推計装置および方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
本発明の傷病別医療費推計装置は、患者の少なくとも1つの傷病情報、患者に対して施された少なくとも1つの医療行為情報および医療行為情報に関連する医療費情報を含む解析用情報を複数受け付け、その受け付けた複数の解析用情報に基づいて、各解析用情報に対するバランシングスコアを算出するバランシングスコア算出部と、各解析用情報に対するバランシングスコアに基づいて、傷病情報毎の医療費情報を推計する医療費推計部とを備える。
また、上記本発明の傷病別医療費推計装置においては、複数の解析用情報の中にレセプト情報を含むことができる。
また、上記本発明の傷病別医療費推計装置においては、複数の解析用情報の中に電子カルテ情報を含むことができる。
また、上記本発明の傷病別医療費推計装置においては、解析用情報から傷病情報を抽出する傷病情報抽出部を備えることができ、バランシングスコア算出部は、傷病情報抽出部によって抽出された傷病情報を用いてバランシングスコアを算出することができる。
また、上記本発明の傷病別医療費推計装置においては、解析用情報から医療行為情報を抽出する医療行為情報抽出部を備えることができ、バランシングスコア算出部は、医療行為情報抽出部によって抽出された医療行為情報を用いてバランシングスコアを算出することができる。
また、上記本発明の傷病別医療費推計装置においては、解析用情報から医療費情報を抽出する医療費情報抽出部を備えることができ、バランシングスコア算出部は、医療費情報抽出部によって抽出された医療費情報を用いてバランシングスコアを算出することができる。
また、上記本発明の傷病別医療費推計装置においては、バランシングスコア算出部が、患者の健康診断情報および検診情報のうちの少なくとも一方を受け付け、その少なくとも一方の情報を用いてバランシングスコアを算出することができる。
また、上記本発明の傷病別医療費推計装置においては、バランシングスコアとして、傾向スコアを用いることができる。
本発明の傷病別医療費推計方法は、患者の少なくとも1つの傷病情報、患者に対して施された少なくとも1つの医療行為情報および医療行為情報に関連する医療費情報を含む解析用情報を複数準備し、演算装置を用いて、複数の解析用情報に基づいて、各解析用情報に対するバランシングスコアを算出するとともに、その算出した各解析用情報に対するバランシングスコアに基づいて、傷病情報毎の医療費情報を推計する。
本発明の傷病別医療費推計プログラムは、コンピュータを、患者の少なくとも1つの傷病情報、患者に対して施された少なくとも1つの医療行為情報および医療行為情報に関連する医療費情報を含む解析用情報を複数受け付け、その受け付けた複数の解析用情報に基づいて、各解析用情報に対するバランシングスコアを算出するバランシングスコア算出部と、各解析用情報に対するバランシングスコアに基づいて、傷病情報毎の医療費情報を推計する医療費推計部として機能させる。
本発明の傷病別医療費推計装置および方法並びにプログラムによれば、患者の少なくとも1つの傷病情報、患者に対して施された少なくとも1つの医療行為情報および医療行為情報に関連する医療費情報を含む解析用情報を複数受け付け、その受け付けた複数の解析用情報に基づいて、各解析用情報に対するバランシングスコアを算出し、各解析用情報に対するバランシングスコアに基づいて、傷病情報毎の医療費情報を推計するようにしたので、従来の手法のようにマスタの整備および更新を行う必要がなく、より効率よく傷病別の医療費情報を推計することができる。
本発明の傷病別医療費推計装置の一実施形態を用いた傷病別医療費推計システムの概略構成を示すブロック図 レセプト情報、電子カルテ情報および診療記録情報の概略を示す図 レセプト情報に基づいて傾向スコアを算出する方法を説明するための説明図
以下、本発明の傷病別医療費推計装置および方法並びにプログラムの一実施形態を用いた傷病別医療費推計システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態の傷病別医療費推計システム1の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態の傷病別医療費推計システム1は、医療行為によって発生した医療費について、どの傷病によって発生した医療費なのかを解析し、傷病別の医療費を推計するシステムである。そして、本実施形態の傷病別医療費推計システム1は、従来のようなマスタを用いて傷病別医療費を推計するシステムとは異なり、患者のレセプト情報および電子カルテ情報などに基づいて、バランシングスコアの手法を用いて傷病別の医療費を推計するものである。具体的には、本実施形態の傷病別医療費推計システム1は、図1に示すように、傷病別医療費推計装置10(本発明の演算装置に相当する)と、入力装置20と、表示装置30とを備えている。
傷病別医療費推計装置10は、中央処理装置(CPU(Central Processing Unit))、半導体メモリ、およびハードディスクやSSD(Solid State Drive)等のストレージデバイスを備えたコンピュータから構成されるものであり、コンピュータにインストールされた傷病別医療費推計プログラムが中央処理装置によって実行されることによって、図1に示す解析用情報取得部11、バランシングスコア算出部12、医療費推計部13および表示制御部14が動作する。
傷病別医療費推計プログラムは、DVD(Digital Versatile Disc)およびCD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの記録媒体に記録されて配布され、その記録媒体からコンピュータにインストールすることができる。または、傷病別医療費推計プログラムは、ネットワークに接続されたサーバコンピュータの記憶装置もしくはネットワークストレージに対して、外部からアクセス可能な状態で記憶される。そして、外部からの要求に応じてコンピュータにダウンロードされ、インストールすることができる。
傷病別医療費推計装置10の解析用情報取得部11は、バランシングスコアの一種である傾向スコアの算出およびその傾向スコアに基づく傷病別の医療費情報の推計に用いられる解析用情報を取得するものである。
解析用情報としては、たとえば図2に示すようなレセプト情報、電子カルテ情報および診療記録情報などがある。レセプト情報は、患者が受けた保険診療について、医療機関が保険者(国民健康保険組合や健康保険組合等)に請求する医療報酬の明細書(レセプト)の情報のことである。レセプトは、医科および歯科の場合には診療報酬明細書、薬局における調剤の場合には調剤報酬明細書、訪問看護の場合には訪問看護療養費明細書ともいう。なお、図2に示すレセプト情報は、診療報酬明細書の情報の概略を示すものであり、レセプト情報には、患者の少なくとも1つの傷病情報、患者に対して施された少なくとも1つの医療行為情報およびその医療行為情報に関連する医療費情報が含まれる。
傷病情報とは、患者が罹患している疾病または外傷などの傷病を示す情報である。また、医療行為情報とは、患者に対して施された処置、手技、検査および手術などの診療内容を示す診療情報、患者に対して投与された薬剤を示す情報や、患者に使用された機器を示す情報などが含まれる。また、医療費情報とは、患者に対する診療内容、患者に投与された薬剤および患者に使用された機器などに要した医療費を示す情報である。医療費の情報としては、いわゆる売り上げの金額を示す情報でも良いし、医療原価を示す情報でもよいし、保険診療の点数を示す情報でもよい。
電子カルテ情報は、医師が患者を診察した際に、コンピュータなどを用いて情報を入力することによって作成される情報である。電子カルテ情報にも、図2に示すように、患者の少なくとも1つの傷病情報および患者に対して施された少なくとも1つの医療行為情報が含まれる。傷病情報および医療行為情報については、上述したとおりである。また、電子カルテ情報には、問診結果、所見、画像所見および検査値を示す情報なども含まれる。
診療録情報は、情報の内容としては、基本的には電子カルテ情報と同様であるが、電子カルテ情報が、医療機関が有する電子カルテシステムによって定められたフォーマットから作成されたものであるのに対し、診療録情報は、電子カルテ情報のような定型のフォーマットから作成されたものではなく、たとえば医師などが手書きで紙などの記録媒体に記録した傷病情報および医療行為情報をコンピュータなどに入力することによって作成されたものでもよいし、上述した記録媒体をスキャナなどで光学的に読み取って取得された電子データでもよい。なお、診療記録情報としては、医師法に規定されている内容を含むことができる。
また、解析用情報取得部11における解析用情報の取得方法としては、たとえばレセプト情報や電子カルテ情報については、レセプト情報が記憶されているレセプトサーバおよび電子カルテシステムにおいて電子カルテ情報が記憶されている電子カルテサーバなどから、インターネット回線またはLANなどの通信回線を介して取得するようにしてもよいし、入力装置20を用いて設定入力するようにしてもよい。また、診療録情報についても、レセプト情報および電子カルテ情報と同様に、診療録情報が記憶された所定のサーバから読み出して取得してもよいし、入力装置20を用いて設定入力するようにしてもよいし、上述したようにスキャナなどを用いて読み取られた電子データを取得するようにしてもよい。
また、解析用情報取得部11によって取得される解析用情報は、必ずしも1つの医療機関内に保存されているものでなくてもよく、一人の患者の解析用情報を複数の異なる医療機関から収集して取得するようにしてもよい。また、投薬された薬剤を示す情報については、調剤薬局などのサーバに保存された情報を取得するようにしてもよい。
また、解析用情報取得部11によって取得される解析用情報の範囲としては、たとえば患者単位、医療施設の単位、保険者の単位、地域単位または所定の属性の単位の範囲で解析用情報を取得するようにすればよい。患者単位で解析用情報を取得する場合には、患者毎に設定された識別情報をレセプト情報、電子カルテ情報および診療記録情報などの解析用情報にそれぞれ付与しておき、その識別情報を用いて、患者単位での解析用情報を収集するようにすればよい。患者毎に設定される識別情報としては、たとえば診療券番号または被保険者番号、もしくはこれらと生年月日および/または性別などを組み合わせた情報などがあるが、個人を特定できる情報であれば如何なる情報でもよい。なお、患者単位で解析用情報を取得する場合には、一人の患者ではなく、ある一定の人数からなる集団の単位で解析用情報が取得される。
医療施設単位で解析用情報を取得する場合には、医療施設毎に設定された識別情報をレセプト情報、電子カルテ情報および診療記録情報などの解析用情報にそれぞれ付与しておき、その識別情報を用いて、医療施設単位での解析用情報を収集するようにすればよい。医療施設毎に設定される識別情報としては、たとえば医療機関番号などがあるが、医療施設を特定できる情報であれば如何なる情報でもよい。
また、月単位および年単位などといった時間の範囲も設定して解析用情報を取得するようにしてもよい。この場合、解析用情報に対してその作成年月日などの時間を特定できる情報を付与しておくようにすればよい。
バランシングスコア算出部12は、上述した解析用情報を複数受け付け、その受け付けた複数の解析用情報に基づいて、バランシングスコアを算出するものである。本実施形態においては、バランシングスコアとして傾向スコアを算出する。傾向スコアは、上述したレセプト情報、電子カルテ情報および診療記録情報などの各解析用情報に対してそれぞれ算出される。
バランシングスコア算出部12は、図1に示すように情報抽出部12aを備えている。本実施形態において、情報抽出部12aは、本発明の傷病情報抽出部、医療行為情報抽出部および医療費情報抽出部に相当するものである。情報抽出部12aは、解析用情報取得部11によって取得された複数の解析用情報のそれぞれから傷病情報、医療行為情報および医療費情報を抽出するものである。
解析用情報から傷病情報を抽出する方法としては、たとえばICD10(国際疾病分類第10版)や標準病名番号などの傷病を特定するコードを解析用情報から抽出するようにしてもよいし、文字認識処理などを用いて傷病名自体を抽出するようにしてもよい。また、医療行為情報についても、同様に、各医療行為に対して予め設定されたコード情報を抽出するようにしてもよいし、医療行為を示す文字自体を抽出するようにしてもよい。また、医療費情報については、レセプト情報のように予め定められたフォーマットで作成され、医療費の情報が記入された部分が特定できる場合には、その部分から医療費情報を抽出するようにすればよい。
また、上述したように電子カルテ情報および診療記録情報には、基本的には医療費情報は含まれていない。したがって、電子カルテ情報および診療記録情報については、たとえば電子カルテ情報および診療記録情報と、これらに対応する医療費の情報を含む会計情報とを予め設定された番号などを介して紐づけしておき、会計情報が保存された会計サーバから読み出すことによって、電子カルテ情報および診療記録情報に対応する医療費情報を取得するようにすればよい。
そして、バランシングスコア算出部12は、上述したようにして情報抽出部12aによって抽出された傷病情報、医療行為情報および医療費情報を用いて、各解析用情報に対する傾向スコアを算出する。以下、傾向スコアの算出方法に具体例として、糖尿病の医療費を推計するために用いる傾向スコアの算出方法について説明する。
まず、解析用情報の中に、着目する傷病である糖尿病が含まれているか否かを示す傷病別変数として、z=0(糖尿病なし)およびz=1(糖尿病あり)を設定する。
次に、解析用情報に含まれる可能性のある医療行為情報のうち、着目する傷病(ここでは糖尿病)と医療費の両方に関連のある医療行為情報で、傷病と1対1で対応するものは除外して、交絡因子として適切だと思われる医療行為情報を共変量x=(x,x,x,・・・)として選び出す。この交絡因子に相当する、医療行為情報を示す変数(共変量)は、0または1でもよいし、連続変数を用いるようにしてもよい。まは、この医療行為情報を示す変数は通常、x,x,x,・・・というように複数である。
そして、解析用情報に含まれる医療費情報をyとして、糖尿病なしの場合の医療費をy、糖尿病ありの場合の、医療費yとして設定する。
そして、上述したような事前準備の下、実際に取得された解析用情報に含まれる各情報に基づいて、傾向スコアを算出する。
図3は、解析用情報がレセプト情報1である場合におけるx,y,zの値について説明する図である。図3に示すレセプト情報1である場合には、傷病情報である「傷病1」および「傷病2」の中に糖尿病が含まれる場合にはz=1となり、糖尿病が含まれない場合にはz=0となる。また、医療行為情報である「診療行為A」、「診療行為B」、「診療行為C」および「薬品D」(投薬された薬剤)の中に、交絡因子に相当する医療行為情報が含まれるか否かによって、共変量x=(x,x,x,・・・)の各変数の値が設定される。また、医療費情報である「医療費Y円」のYがyの値として設定される。
図3に示すレセプト情報1と同様にして、その他のレセプト情報、電子カルテ情報および診療記録情報などの解析用情報についても、x,y,zの値が設定される。
そして、解析用情報取得部11によって取得された複数の解析用情報を用いて、xを説明変数とし、zを被説明変数とするようにして、ロジスティック回帰分析を行い、具体的にはニュートン・ラフソン法などの数値計算により、各係数βを推定する。その後で、下式から、各解析用情報iに対する傾向スコアeを算出する。
Figure 0006537121
図1に戻り、医療費推計部13は、バランシングスコア算出部12において算出された各解析用情報に対する傾向スコアに基づいて、傷病情報毎の医療費情報を推計するものである。本実施形態の医療費推計部13は、マッチング法を用いて傷病毎の医療費情報を推計する。
具体的には、まず、着目する傷病(ここでは糖尿病)に対して、z=1の群とz=0の群に分けて、各群から同じ傾向スコアになった対象を選び出してペアを作る。なお、傾向スコアが厳密に同じ値になる事は難しいので、どれほど傾向スコアの値が近い場合に同じ値のペアとみなすかについては、予め設定しておけばよい。また、傾向スコアが同じ値のペアが1対1ではなく多対多となった場合にどうするかは、事前に決めておけばよい。具体的には、2点間距離が最も短いものをペアとする最近傍マッチングや、予め設定した距離以上離れている場合にはペアとしないキャリパーマッチングなどを用いるようにすればよい。
また、もし所定の傾向スコアについて、ペアとなる対象がない場合は、後述する医療費の差の計算は行わず、ペアのないデータ自体を破棄する。
ここでは、ペアjが合計でN組出来たとし、同じ傾向スコアのペアjについて、下式のとおり医療費の差(y1j−y0j)を計算する。
Figure 0006537121
そして、下式のとおり、差Wの平均値E(y1−y0)を算出し、これを着目する傷病(ここでは糖尿病)の医療費情報の推計値とする。
Figure 0006537121
なお、上記の例では、糖尿病の医療費情報を推計するようにしたが、その他の傷病についても、その傷病が解析用情報に含まれているか否かを示す傷病別変数として、z=0(着目する傷病なし)およびz=1(着目する傷病あり)を設定することによって、傷病情報毎の医療費情報を推計することができる。
表示制御部14は、医療費推計部13によって推計された傷病情報毎の医療費情報の値を表示装置30に表示させるものである。また、表示制御部14は、解析用情報取得部11によって取得されたレセプト情報、電子カルテ情報および診療記録情報、並びにバランシングスコア算出部12において算出すれた傾向スコアを表示装置30に表示させるものである。
入力装置20は、キーボードおよびマウスなどのデバイスを備えたものである。表示装置30は、液晶ディスプレイなどのデバイスを備えたものである。入力装置20と表示装置30をタッチパネルから構成して兼用するようにしてもよい。
上記実施形態の傷病別医療費推計システムによれば、患者の少なくとも1つの傷病情報、患者に対して施された少なくとも1つの医療行為情報および医療行為情報に関連する医療費情報を含む解析用情報を複数受け付け、その受け付けた複数の解析用情報に基づいて、各解析用情報に対するバランシングスコアを算出し、各解析用情報に対するバランシングスコアに基づいて、傷病情報毎の医療費情報を推計するようにしたので、従来の手法のようにマスタの整備および更新を行う必要がなく、より効率よく傷病別の医療費情報を推計することができる。
なお、上記実施形態の傷病別医療費推計システム1においては、交絡因子として適切だと思われる医療行為情報を共変量x=(x,x,x,・・・)として選び出すようにしたが、解析用情報が、上述した電子カルテ情報や診療記録情報である場合には、問診結果、所見、画像所見および検査値を示す情報も含まれているので、これらについても共変量に含めるようにしてもよい。問診結果および所見については、たとえば「咳がある」などといった症状の有無の情報を数値として共変量としたり、画像所見については、たとえば画像内に「腫瘤がある」などといった疾病の有無の情報を数値として共変量とすればよい。
また、逆に、レセプト情報については、上述したような問診結果、所見、画像所見および検査値を示す情報は含まれていないので、たとえばレセプト情報の対象患者の健康診断情報および検診情報のうちの少なくとも一方を別途取得し、その情報から問診結果、所見、画像所見および検査値を示す情報などを抽出し、共変量に含めるようにしてもよい。これにより共変量の情報を増やすことができるので、より適切な傾向スコアを算出することができ、傷病情報毎の医療費情報をより高精度に推計することができる。
また、レセプト情報には、患者に医療を提供するための医療機関の機能に関する情報が含まれる。この情報は医療の提供体制や疾病に関連する機能も含まれるため、レセプト情報からこの情報を抽出し、共変量に含めるようにしてもよい。
また、上記実施形態の傷病別医療費推計システム1においては、ロジスティック回帰分析を用いて傾向スコアを算出するようにしたが、傾向スコアの算出方法としては、これに限られるものではない。傾向スコアとしては、基本的に、下式で定義されるeであれば如何なる算出方法でもよい。下式におけるxは、解析用情報iの共変量の値であり、zは割り当て変数(上記実施形態では傷病別変数、傷病の有無によって1 or 0)の値であり、群1へ割り当てられる確率eが傾向スコアである。
Figure 0006537121
たとえば上記実施形態のようなロジスティック回帰モデルではなく、プロビット回帰モデルを用いるようにしてもよい。また、LASSO(スパース推定)を用いた方法およびカーネル回帰モデルから求める方法なども用いることができる。
また、上記実施形態の傷病別医療費推計システム1においては、各解析用情報の傾向スコアを算出した後、マッチング法を用いて傷病情報毎の医療費情報を推計するようにしたが、傷病別情報毎の医療費情報の推計の手法としてはマッチング法に限らず、その他の如何なる手法を用いてもよい。
具体的には、層別解析および共分散分析を用いた方法などを用いることができる。層別解析では、傾向スコアによってK個のサブクラス(サブクラスのサイズは同じにする)に分けて、マッチングと同様のことを行い、最後に差分の平均値を取ることで医療費の差分の推定値とする。また、共分散分析を用いた方法は、傷病あり群となし群の割り付け変数zと傾向スコアeを説明変数として、目的変数を医療費として線形回帰分析を行う方法である。また、IPW(Inverse probability weighting)法およびDR(Doubly Robust)法を用いることもできる。さらに、たとえばIPW法を用いた場合には、医療費情報として、傷病ありの群の平均医療費y1および傷病なしの群の平均医療費y0並びにその分散などを推計するようにしてもよい。
なお、どの手法を用いて傷病情報毎の医療費情報を推計するかについては、着目した傷病情報と、入手できた解析用情報のデータの性質やデータ構造、およびその利用目的(傷病ありとなしの差分だけでよいのか、個別に推定したいのかなど)から、適宜選択される。
また、上記実施形態の傷病別医療費推計システム1においては、バランシングスコアとして傾向スコアを用いるようにしたが、傾向スコアに限らず、その他のバランシングスコアを用いるようにしてもよい。
具体的には、傷病あり群(z=1)となし群(z=0)に対して、それらを特徴づければ互いに独立となるような全ての共変量xをそのまま「ベクトル」としてバランシングスコアとしてもよい。すなわち、上記実施形態においては、選択した共変量xを使って、傷病あり群(z=1)へのロジスティック回帰分析をして傾向スコアを算出するようにしたが、この作業を省き、(x, x, … , x)というベクトルをそのままバランシングスコアとして、全く同じベクトルを持つペアを着目する傷病ありなし群から選び出し、マッチングを行うようにしてもよい。
バランシングスコアについては、たとえば「“Causal Inference for Statistics, Social, and Biomedical Sciences: An Introduction” Guido W. Imbens,Donald B. Rubin著」において定義されるバランシングスコアを用いることができる。
1 傷病別医療費推計システム
10 傷病別医療費推計装置
11 解析用情報取得部
12 バランシングスコア算出部
12a 情報抽出部
13 医療費推計部
14 表示制御部
20 入力装置
30 表示装置

Claims (10)

  1. 患者の少なくとも1つの傷病情報、前記患者に対して施された少なくとも1つの医療行為情報および前記医療行為情報に関連する医療費情報を含む解析用情報を複数受け付け、該受け付けた解析用情報に基づいて、前記各解析用情報に所定の前記傷病情報が含まれるか否かを示す被説明変数を有し、前記各解析用情報に含まれる医療行為情報を共変量とするバランシングスコアを算出するバランシングスコア算出部と、
    前記所定の傷病情報を含むことを示す被説明変数を有する前記解析用情報の群と、前記所定の傷病情報を含まないことを示す被説明変数を有する前記解析用情報の群とに分け、該分けられた2つの群に属する解析用情報の前記医療費情報のうちの少なくとも前記所定の傷病情報を含むことを示す被説明変数を有する解析用情報の医療費情報と、少なくとも前記所定の傷病情報を含むことを示す被説明変数を有する解析用情報のバランシングスコアとを用いて、前記傷病情報毎の前記医療費情報を推計する医療費推計部とを備えた傷病別医療費推計装置。
  2. 前記複数の解析用情報の中にレセプト情報が含まれる請求項1記載の傷病別医療費推計装置。
  3. 前記複数の解析用情報の中に電子カルテ情報が含まれる請求項1または2記載の傷病別医療費推計装置。
  4. 前記解析用情報から前記傷病情報を抽出する傷病情報抽出部を備え、
    前記バランシングスコア算出部が、前記傷病情報抽出部によって抽出された傷病情報を用いて前記バランシングスコアを算出する請求項1から3いずれか1項記載の傷病別医療費推計装置。
  5. 前記解析用情報から前記医療行為情報を抽出する医療行為情報抽出部を備え、
    前記バランシングスコア算出部が、前記医療行為情報抽出部によって抽出された医療行為情報を用いて前記バランシングスコアを算出する請求項1から4いずれか1項記載の傷病別医療費推計装置。
  6. 前記解析用情報から前記医療費情報を抽出する医療費情報抽出部を備え、
    前記バランシングスコア算出部が、前記医療費情報抽出部によって抽出された医療費情報を用いて前記バランシングスコアを算出する請求項1から5いずれか1項記載の傷病別医療費推計装置。
  7. 前記バランシングスコア算出部が、前記患者の健康診断情報および検診情報のうちの少なくとも一方を受け付け、該少なくとも一方の情報を用いて前記バランシングスコアを算出する請求項1から6いずれか1項記載の傷病別医療費推計装置。
  8. 前記バランシングスコアが、傾向スコアである請求項1から7いずれか1項記載の傷病別医療費推計装置。
  9. 患者の少なくとも1つの傷病情報、前記患者に対して施された少なくとも1つの医療行為情報および前記医療行為情報に関連する医療費情報を含む解析用情報を複数準備し、
    演算装置を用いて、前記各解析用情報に所定の前記傷病情報が含まれるか否かを示す被説明変数を有し、前記各解析用情報に含まれる医療行為情報を共変量とするバランシングスコアを算出し、
    前記所定の傷病情報を含むことを示す被説明変数を有する前記解析用情報の群と、前記所定の傷病情報を含まないことを示す被説明変数を有する前記解析用情報の群とに分け、該分けられた2つの群に属する解析用情報の前記医療費情報のうちの少なくとも前記所定の傷病情報を含むことを示す被説明変数を有する解析用情報の医療費情報と、少なくとも前記所定の傷病情報を含むことを示す被説明変数を有する解析用情報のバランシングスコアとを用いて、前記傷病情報毎の前記医療費情報を推計する傷病別医療費推計方法。
  10. コンピュータを、
    患者の少なくとも1つの傷病情報、前記患者に対して施された少なくとも1つの医療行為情報および前記医療行為情報に関連する医療費情報を含む解析用情報を複数受け付け、該受け付けた解析用情報に基づいて、前記各解析用情報に所定の前記傷病情報が含まれるか否かを示す被説明変数を有し、前記各解析用情報に含まれる医療行為情報を共変量とするバランシングスコアを算出するバランシングスコア算出部と、
    前記所定の傷病情報を含むことを示す被説明変数を有する前記解析用情報の群と、前記所定の傷病情報を含まないことを示す被説明変数を有する前記解析用情報の群とに分け、該分けられた2つの群に属する解析用情報の前記医療費情報のうちの少なくとも前記所定の傷病情報を含むことを示す被説明変数を有する解析用情報の医療費情報と、少なくとも前記所定の傷病情報を含むことを示す被説明変数を有する解析用情報のバランシングスコアとを用いて、前記傷病情報毎の前記医療費情報を推計する医療費推計部として機能させる傷病別医療費推計プログラム。
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